説明

パレット搬送装置

【課題】大きな駆動モータを用いることなく、ストックライン間においてパレット台車を移動させることができるパレット搬送装置を提供する。
【解決手段】固定フレーム5に対して回転自在に取り付けられた回転ブラケット6と、この回転ブラケット6の回転軸Oから離れた位置に取り付けられ、ワーク搬送用のパレット台車2を搭載可能に構成されたコンベヤ部4と、前記回転ブラケット6の回転軸Oを中心として前記コンベヤ部7の反対側に取り付けられたバランス重り8と、前記回転ブラケット6を回転駆動するアクチュエータ9とを備え、前記回転ブラケット6の回転軸Oからコンベヤ部7までの距離は、前記アクチュエータ9によって回転ブラケット6を180°回動駆動したときに、前記コンベヤ部7をパレット台車2の第1ストックライン4Aに連結させる第1位置P1および前記コンベヤ部7をパレット台車2の第2ストックライン4Bに連結させる第2位置P2の間で往復させることができる距離である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パレット搬送装置に関し、とりわけ、自動車のエンジンなど、施工対象に組み付けるワークを乗せた複数のパレット台車を搬送するストックラインと、ワークを降ろしたパレット台車を搬送するストックラインを備える搬送装置の各ストックラインに接続さっるパレット搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8は、特許文献1(特開2008−150205号公報)に記載されている従来のストック装置90の全体構成を示す図である。従来のストック装置90は例えばワークWを乗せた状態でパレット台車91を搬送方向Xに搬送する第1ストックライン92aと、ワークWを降ろしたパレット台車91を前記搬送方向Xと反対の方向に搬送する第2ストックライン92bと、両ストックライン92a,92bの始点と終点にそれぞれ連結可能とするコンベヤ部93aを備えパレット台車91を上下方向に昇降可能に構成された昇降装置93とを備える。
【0003】
また、前記特許文献1に記載のパレット台車91はモータを取り付けた自走台車構造であり、パレット台車の走行・停止の動作をトロリ線に供給する電源とパレット台車91の前後に設けたセンサによって制御し、進行方向に障害物がないときにはモータに電流が流れてパレットが走行し、進行方向前方に障害物があるときには停止するものである。
【0004】
図9は、昇降装置93の構成を示す図であり、この昇降装置93は駆動部にモータ94を使用し、パレット台車91を昇降装置93に搬入または搬出するコンベヤ部95と、このコンベヤ部95が取り付けられ支柱96に対してチェーン96aによって吊り下げられた状態で上下移動可能に取り付けられるブラケット部97とを有し、モータ94からの動力をチェーン94a,96aおよびスプロケット96b,96cに伝達させてパレット台車91の上下移動を行うものである。
【0005】
【特許文献1】特開2008−150205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記構成の昇降装置93はパレット台車91を上下移動するのに必要な力をブラケット部97に作用させるために、パレット台車91、コンベヤ部95、ブラケット97の総質量を吊り上げることができる程度の大きな駆動力(トルク)を出すことができるモータ94を必要としている。このため、昇降装置93の稼働中には大きな動力が各部に加わるため、何らかの異常を検知した場合にもブラケット部97の動作を瞬時に止めることができず、昇降装置93の破損を招くことがあるという問題がある。
【0007】
また、前記チェーン94a,96aには常に大きな力が加わっているため、その寿命を短くすることになり、メンテナンス周期を短くする必要があり、万一これらのチェーン94a,96aが切れてしまうとブラケット部97が落下してその他の部分の破損を招く可能性があるため、万一の場合に備えて落下防止用の機構(ストッパなど)を取り付ける必要があった。
【0008】
このため、従来のストック装置90および昇降装置93の周りには作業者の安全のために安全柵を設けることが好ましく、また、ストック装置90にパレット台車91を追加や削除するときは、ストック装置90を停止させる必要があった。
【0009】
本発明は上述の問題を考慮に入れてなされたものであり、大きな駆動モータを用いることなく、ストックライン間においてパレット台車を移動させることができるパレット搬送装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、固定フレームに対して回転自在に取り付けられた回転ブラケットと、この回転ブラケットの回転軸から離れた位置に取り付けられ、ワーク搬送用のパレット台車を搭載可能に構成されたコンベヤ部と、前記回転ブラケットの回転軸を中心として前記コンベヤ部の反対側に取り付けられたバランス重りと、前記回転ブラケットを回転駆動するアクチュエータとを備え、前記回転ブラケットの回転軸からコンベヤ部までの距離は、前記アクチュエータによって回転ブラケットを所定角度回動駆動したときに、前記コンベヤ部をパレット台車の第1ストックラインに連結させる第1位置および前記コンベヤ部をパレット台車の第2ストックラインに連結させる第2位置の間で往復させることができる距離であることを特徴とするパレット搬送装置を提供する。
【0011】
前記構成のパレット搬送装置は、回転ブラケットをアクチュエータ(モータ、油圧シリンダ、エアシリンダなど)によって正逆方向に回転駆動することにより、コンベヤ部を第1ストックラインに連結させた第1位置およびコンベヤ部を第2ストックラインに連結させた第2位置の間で往復移動させることができる。前記回転ブラケットの回転角度の範囲が180°である場合、回転ブラケットの回転軸からコンベヤ部の取付け位置までの距離は、パレット搬送装置による移動距離の半分である。つまり、回転ブラケットの回転軸からコンベヤ部の取付け位置までの距離はパレット台車の移動距離および回転ブラケットの回転角度の範囲に合わせて設定される。
【0012】
前記回転ブラケットの回転軸を中心としてコンベヤ部の反対側にバランス重りが取り付けられているので、アクチュエータはコンベヤ部を上下に搬送するときに小さな動力で回転ブラケットを回転させることができる。このコンベヤ部とバランス重りの取付け位置は回転ブラケットの回転軸を中心とする反対側、つまり180°異なる逆位相の位置であり、コンベヤ部とバランス重りが可能な限り釣り合うように取付けられることが好ましい。前記第1位置と第2位置は第1ストックラインと第2ストックラインの配置に依存するものであり、これらのストックラインを上下に並べて配置することにより省スペース化を図る場合には、第1位置と第2位置は上下に並べられ、パレット搬送装置は昇降装置として動作する。
【0013】
前記回転ブラケットは円板形状であり、前記アクチュエータは回転ブラケットの外周に当接する高摩擦抵抗部分を有する駆動用プーリーと、この駆動用プーリーを回転駆動する駆動モータとを備えることが好ましい(請求項2)。
【0014】
前記構成のパレット搬送装置は、駆動用プーリーが回転することにより、駆動用プーリーを介して所定の駆動力が回転ブラケットに伝達されてコンベヤ部を搬送することができる。また、モータを駆動源とするアクチュエータは一定速度で回転ブラケットを回転させる。コンベヤ部の動きを止めるような外力が加わったときには、駆動用プーリーが滑り、駆動用モータの駆動力が回転ブラケットに伝わらなくなり、その回転が停止する。前記高摩擦抵抗部分はゴムや合成樹脂からなるOリングを備えることが好ましく、駆動用プーリーはその外周にOリングを勘合させる溝を有することが好ましい。
【0015】
加えて、前記回転ブラケットの外周部などにプーリーまたはスプロケットを設け、このプーリーまたはスプロケットと前記駆動用プーリーまたは駆動モータに連結するスプロケットに無端ベルト、無端ロープ(索状体)またはチェーンを巻回して、回転ブラケットを駆動モータによって回転駆動することも考えられる。
【0016】
前記バランス重りは前記コンベヤ部にパレット台車の半分の質量の物体を搭載した状態で釣り合う質量を有するものである場合(請求項3)には、駆動源はパレット台を回転駆動するために必要な動力の半分の動力を供給すればよく、それだけ低出力のアクチュエータを用いることができる。
【0017】
前記コンベヤ部は回転ブラケットに回動自在に連結されるコンベヤ取付け軸を有し、かつ、
このコンベヤ取付け軸に連結された水平保持用プーリーと、この水平保持用プーリーと同径であり回転ブラケットの回転軸と同心状に固定的に配置された固定プーリーと、この固定プーリーと前記水平保持用プーリーに巻回される無端ベルト体とを備える水平保持機構に接続されている場合(請求項4)には、回転ブラケットが回動しても無端ベルト体によって固定プーリーと接続されている水平保持用プーリーの回転方向を、固定プーリーと同じ方向に固定することができる。すなわち、水平保持用プーリーに連結されたコンベア取付け軸とコンベア部の水平を保つことができる。
【0018】
前記無端ベルト体は伸縮しないものであることが好ましく、高摩擦抵抗部部を備える者であってもよいが、滑り止め用の歯付ベルトであることがより好ましい。また、無端ベルト体は、コンベヤ部の水平状態を安定して保つために、しなやかに湾曲するものであることが好ましく、このためにベルトであることが好ましいが、無端ベルト体はプーリー間に巻回されてテンションを伝達するものであればその形状を限定するものではない。すなわち、チェーンや索状体を無端ベルト体として用いてもよい。また、水平保持用プーリーおよび固定プーリーに滑り止め用の歯を設けることが好ましい。
【0019】
前記第1ストックラインおよび第2ストックラインは前記パレット台車の走行軌道に沿って配置された少なくとも2本の電源レールを備える一方、前記パレット台車は、前記電源レールに電気的に接続する少なくとも2個の端子と、端子を介して供給される電力の極性によって決まる所定の走行方向に走行するための動力を供給する駆動モータと、パレット台車の前後にそれぞれ配置されて隣接する障害物の存在を検知するセンサと、これらのセンサに接続されて走行方向に障害物を検知しないときにパレットを走行するように駆動モータに電力を供給する制御回路とを備えるものであり、かつ、前記コンベヤ部は、第1ストックラインおよび第2ストックラインに連結したときにそれぞれ電源レールに接続されると共に電気的にもそれぞれに接続される切換電源レールを備えることが好ましい(請求項5)。
【0020】
より具体的には、前記センサは、障害物の存在を検知した状態で接点を解放するスイッチを備え、前記制御回路は、前記駆動モータの2本の電源線を前記2個の端子にそれぞれ接続すると共に駆動モータから端子の方向を順方向とするダイオードと、これらのダイオードにそれぞれ並列に接続された前記スイッチとからなることが考えられる。
【0021】
前記構成によれば、パレット台車の前後に設けたセンサが前後に隣接するパレット台車または障害物が無いことを検知し、制御回路がセンサによって走行方向に隣接するパレット台車などの障害物を検知しない場合に駆動モータに電力を供給するので、ストックライン上のパレット台車を所定の走行方向に走行させて互いに隣接した状態でストックすることができる。各パレット台車がそれぞれに設けた駆動モータによって自走するので、各駆動モータは一つのパレット台車に搭載するワークを搬送できる程度の動力を供給する。
【0022】
また、電源レールに供給される電力は端子を介して制御回路に供給し、制御回路を介して制御された電力を駆動モータに供給する。つまり、バッテリのような質量や寿命のある電源を動力源として用いることなく、すべてのパレット台車は一つの動力源から給電することができる。電源レールに供給する電力の極性によって走行方向を定めるので、パレットを回転することなく、その走行方向を切り換えることができる。
【0023】
加えて、コンベヤ部が第1ストックラインおよび第2ストックラインに連結したときにそれぞれ電源レールに接続されると共に電気的にもそれぞれに接続される切換電源レールを備えるので、パレット台車の移動方向をコンベヤ部が接続されるストックラインに合わせることができ、極めて簡単な構成でありながらコンベヤ部におけるパレット台車の搬入および搬出を行うことができる。
【0024】
また、コンベア部に設けた切換電源レールは、回転ブラケットの回転方向に対して垂直に設けることが好ましい。これにより、回転ブラケットの回転に伴ってパレット台車がコンベア部に対して移動することを防止でき、安定した動作を得ることができる。なお、回転ブラケットの回転方向と切換電源レールの方向を合わせることにより、パレット台車の搬入時の移動に伴う慣性の幾らかを利用して回転ブラケットを回転させたり、回転ブラケットの回転に伴う慣性の幾らかを利用してパレット台車を搬出するようにしてもよい。
【0025】
なお、前記電源レールおよび端子は、少なくとも正極および負極の一対の電源レールおよび端子を必要としているが、このほかにも漏電防止のためのアース電源レールおよび端子を設けることが好ましい。また、電源レールは走行レールを兼ねることにより、構成をシンプルにする事ができるが、別途のトロリ電源線を配索してもよい。
【0026】
前記コンベヤ部は、前記第1ストックラインおよび第2ストックラインの所定位置に連結するように案内し位置固定するようにストックライン側に設けたカム受けに係合するカムフォロアを備えることが好ましい(請求項6)。
【0027】
前記構成によれば、コンベヤ部に設けたカムフォロアがカム受けに係合することにより、ストックラインとコンベヤ部の接続状態を確実に行ってこれをロックすることができ、このロック機構を設けたことによりコンベヤ部を安定して固定できるので信頼性が高くなる。カムフォロアは先端にカム受けとの接触抵抗を小さくするためのローラを備えることが好ましく、カム受けはカムフォロアを案内するスロープ部を備えることが好ましい。
【0028】
前記カムフォロアの位置は、前記カム受けに対するカムフォロアの固定時に、前記回転ブラケットの回転端に至る手前で一旦回転ブラケットの回転軸側に撓んだ後に回転ブラケットの回転端において撓みが無くなるまたは弱くなるような位置に配置されている場合(請求項7)には、回転ブラケットの回転端においてカム受けにカムフォロアが係合している状態でロック方向に加重を掛けることができ、ロック状態を安定して保つことができる。
【発明の効果】
【0029】
前述したように、本発明によれば、必要最低限の動力でパレット台車を移動させることができるので、駆動源に出力の小さいアクチュエータを用いることができる。従って、仮に動作中に使用者が誤って駆動部分に触れることがあったとしても使用者に大きな力が加わることがないので安全である。仮に駆動源のアクチュエータが完全に破損することがあったとしても、回転ブラケットは急激に回転することがなく、さらに安全性を確保できる。加えて、より少ない力でパレット台車を搬送できるので省エネルギーであり、装置を小さくすることができるので省資源である。
【0030】
回転ブラケットは固定フレームに対して回転自在に取付けられるものであれば、固定フレームとバランス重りを釣り合わせることができるのであるが、その形状が円板形状であることにより、その外周部に駆動用プーリーを当接してこれを容易に回転駆動することができる。駆動モータによる駆動は回転が安定するのでパレット台車の移動にムラが無く、それだけ安定した動作が期待できる。また、駆動モータによる駆動力は回転ブラケットに摩擦接触する駆動用プーリーを介して回転ブラケットに伝達するので、使用者が誤って装置に触れることがあっても、駆動用プーリーが空転して、装置の動きを止めることができるので安全である。
【0031】
ストックラインとコンベヤ部との接合部にカム受けとカムフォロアによるロック機構を設けた場合には、ストックラインとコンベヤ部との接合状態を安定させることができるので、より信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1〜図7は本発明の第1実施形態に係るパレット搬送装置1の構成を示す図であり、図1は全体構成を示す図である。図1に示すパレット搬送装置1はワークWとして例えばカムまたはクランクのような軸物を搭載する複数のパレット台車2…をワーク搬入部1aからワーク搬出部1bまで搬送するものである。すなわち、本実施形態のパレット搬送装置1はワーク搬入部1aとワーク搬出部1bのそれぞれに配置されてパレット台車2を上下方向に搬送するパレット昇降部3と、ワーク搬入部1aとワーク搬出部1bの間に配置された上下一対のストックライン4とを有する。
【0033】
前記パレット台車2はそれぞれ駆動モータ2aと、パレット台車2の前後にそれぞれ配置されて隣接する障害物の存在を検知するセンサ2bとを備え、自ら前後のパレット台車2に衝突することなく走行するものである。ゆえに、パレット台車2はストックライン4上に複数並べて待機させることができる
【0034】
前記パレット昇降部3は、床面Fに設置された固定フレーム5と、この固定フレーム5に対して回転自在に取り付けられた回転ブラケット6と、この回転ブラケット6の回転軸Oから離れた位置に取り付けられ、ワーク搬送用のパレット台車2を搭載可能に構成されたコンベヤ部7と、回転ブラケット6の回転軸Oを中心として前記コンベヤ部7の反対側に取り付けられたバランス重り8と、前記回転ブラケット6を回転駆動するアクチュエータ9とを備え、本実施形態のパレット搬送装置1ではストックライン4の両端にそれぞれパレット昇降部3を備える。なお、以下の説明において各パレット昇降部3を区別するときは第1パレット昇降部3A、第2パレット昇降部3Bという。
【0035】
前記ストックライン4は前記パレット台車2にワークWを搭載した状態でパレット台車2を図示右から左(ワーク搬入部1aからワーク搬出部1b)の搬送方向Xに搬送する第1ストックライン4Aと、この第1ストックライン4Aの下方に並べて配置されワークWを降ろしたパレット台車2をワーク搬出部1bからワーク搬入部1aに戻す搬送方向Yに搬送する第2ストックライン4Bとを備えている。また、両ストックライン4には前記パレット台車2に電力を供給するそれぞれ一対の電源レール4cを備える。これらの電源レール4c,4cに供給する電力の極性を変えるだけで、パレット台車2を搬送方向Xまたは搬送方向Yに移動させることができるように構成されている。
【0036】
したがって、本実施形態におけるパレット搬送装置1は、ストックライン4の両端にそれぞれ設けたパレット昇降部3が上下方向に配置されたストックライン4A,4Bに連結される第1位置P1,第2位置P2間においてパレット台車2を上下に搬送することにより、全体として、ループ状にパレット台車2を搬送することができるものである。なお、本実施形態において、パレット搬送装置1はパレット昇降部3のみならず、このパレット昇降部3が接続されるストックライン4を含むものであるが、本発明のパレット搬送装置1は少なくとも一台のパレット昇降部3を有するものであればよい。
【0037】
図2〜4は本発明のパレット搬送装置1の要部であるパレット昇降部3の詳細な構成を示す図であり、図2は側面図、図3は平面図、図4は一部を拡大してその詳細な構成を説明する図である。
【0038】
図2に示すように、前記固定フレーム5は高さ調節機構を備えて床面Fにしっかりと固定される脚5aと、前記ストックライン4側のフレームと接続された接続部5bとを備え、その上端部5c近傍に前記回転ブラケット6の回転軸Oを固定している。
【0039】
また、図3に示すように、固定フレームの5の適所に前記回転ブラケット6の回転動作の動作端を定める合成樹脂からなる当接部5d,5eを取り付けるためのステー5f,5gと、回転ブラケット6が動作端にある状態を検知するセンサ5h,5iを設けている。また、5jは前記コンベヤ部7に設けた各種センサ(後述する)を電気的に接続するための信号線を配線するための支軸である。なお、センサ5h,5iは光電管や磁気センサなどの非接触のセンサであることが好ましい。
【0040】
前記回転ブラケット6の形状は円板形状でありその中央部において回転軸Oに対してベアリングなどからなる軸受け6aによって回動自在に取り付けられており、図2に示すように、回転軸Oから距離d1離れた位置にコンベヤ取付け軸7aが回転軸Oと平行かつ回転ブラケット6に対して回動自在に取り付けられ、この回転軸Oを中心として180°反対側の距離d2離れた位置にバランス重り8が取り付けられている。
【0041】
なお、本実施形態では両距離d1,d2を同じにしており、バランス重り8の質量はコンベヤ部7にパレット台車2の半分の質量の物体を搭載した状態の質量である。つまり、バランス重り8は前記コンベヤ部7にパレット台車2の半分の質量の物体を搭載した状態で釣り合う質量を有するものである。従って、コンベヤ部7にパレット台車2が搭載されている状態ではコンベヤ部7側がパレット台車2の半分の質量分だけ重くなり、コンベヤ部7にパレット台車2が搭載されていない状態ではバランス重り8側がパレット台車2の半分の質量分だけ重くなるように構成されている。
【0042】
図3に示すように、回転ブラケット6の適所に、その回転動作の動作端において前記当接部5d,5eの何れか一方に当接する当接片6bを備える。
【0043】
前記コンベヤ部7は前記コンベヤ取付け軸7aがベアリングなどの軸受け7bによって回転ブラケット6に回動自在に連結されることにより回転ブラケット6に取り付けられるものであり、このコンベヤ取付け軸7aには水平保持用プーリー7cが連結されている。一方、7dは前記回転ブラケット6の回転軸Oと同心状に固定的に配置された固定プーリーであり、この固定プーリー7dと前記水平保持用プーリー7cに無端ベルト体7eを巻回させることにより、無端ベルト体7eが伝達するテンションによって、固定プーリ7dと水平保持用プーリー7cを常に同じ方向(水平)を保たせることができる。つまり、前記各部材7a〜7eはコンベア部7の水平を保持することができる水平保持機構である。なお、無端ベルト体7eは内側に歯を設けて滑ることがないように構成されており、無端ベルト体7eに適正なテンションをかけ続けるようにローラ(図示していない)を当接させている。
【0044】
また、前記コンベヤ部7は、前記第1ストックライン4Aおよび第2ストックライン4Bに連結したときに各ストックライン4に設けた電源レール4cにそれぞれ接続されると共に電気的にもそれぞれに接続される切換電源レール7fと、コンベヤ部7内にパレット台車2が搭載された状態でこれを検知するセンサ7gと、コンベヤ部7を前記ストックライン4の所定位置に連結するように案内し位置固定するように設けたカムフォロア7hを備える。このカムフォロア7hが前記ストックライン4側に設けたカム受け4dに係合することにより、コンベヤ部7を前記ストックライン4に安定して連結することができる。
【0045】
加えて、電源レール4cと切換電源レール7fの当接面はこれが斜面となるように切断され、コンベヤ部7とストックライン4との接続に伴って当接する切断面Sであり、コンベヤ部7とストックライン4との連結状態において切換電源レール7fが電源レール4cに電気的に確実に接続できるように構成している。
【0046】
前記アクチュエータ9は、前記円板形状の回転ブラケット6の外周に当接する高摩擦抵抗部分を有する駆動用プーリー9aと、この駆動用プーリー9aを回転駆動する駆動モータ9bとを備えるものである。さらに、図2に示すように、駆動用プーリー9aの前記高摩擦抵抗部分はゴムや合成樹脂からなるOリング9cを備えることが好ましく、駆動用プーリー9aはその外周にOリング9cを勘合させる溝9dを有することが好ましい。駆動用モータ9bは回転ブラケット6を回転させることができる必要最小限の駆動力を供給するものである。
【0047】
図4は前記カム受け4dとカムフォロア7hの関係を説明する図であり、図4(A)は回転ブラケット6の回転軸Oに対して垂直な方向から見た側面図、図4(B)は前記回転軸Oの軸心方向から見た側面図である。
【0048】
図4に示すように、前記カム受け4dは、カムフォロア7hを案内するスロープ部10と、回転ブラケットの移動端において位置決め用当接部11とを有し、かつ、この位置決め用当接部11に当接するカムフォロア7hに安定して係合する凹部12を形成している。これにより、前記カムフォロア7hの位置は、前記カム受け4dに対するカムフォロア7hの固定時に、前記回転ブラケット6の回転端に至る手前で仮想線に示すようにカムフォロア7hが一旦回転ブラケット6の回転軸O側に撓んだ後に回転端において撓みが無くなるような位置に配置されている。
【0049】
図5〜図7は前記ストックライン4の構成を説明する図であり、図5は搬送方向Xに垂直な方向から見た側面図、図6は平面図、図7は前記パレット台車2を含む搬送方向Xから見た側面図である。
【0050】
すなわち、ストックライン4は高さ調節機構を備えて床面Fに安定して固定される脚4eを備えたフレーム4fを有し、かつ、少なくとも搬送方向Xの両端部にはそれぞれ、図7に示すように、パレット台車2を検出するセンサ4g,4hを取り付けている。また、図示を省略するが、本実施形態のパレット搬送装置1では、前記第1ストックライン4Aに設けた一対の電源レール4cおよび第2ストックライン4Bに設けた一対の電源レール4cに、極性の異なる電力を供給する電源部を備える。
【0051】
また、図7に示すように、前記パレット台車2は前記電源レール4cに搭載する導電体からなる車輪2cと、この車輪2cに接触することにより電源レール4cと電気的に接続される端子2dと、この端子2dおよび前記センサ2bに接続されて搬送方向X(または搬送方向Y)の前方に障害物がない場合に前記駆動モータ2aに電力を供給する制御回路(図示していない)と、前記ワークWを安定して受け止めるワーク支持部2eとを備える。
【0052】
前記構成のパレット搬送装置1によればワーク搬入部1aにおいてパレット台車2に搭載されるとパレット台車2が電源レール4cから給電された電力を用いてストックライン4A上を走行し、ストックライン4A上にストックされる。このとき、パレット台車2には別途のバッテリを取り付ける必要がなく電源レール4cを介してパレット搬送装置1全体の電源から電力供給を受けることができる。つまり、各パレット台車2に搭載された駆動モータはそれぞれのパレット台車2を搬送するのに必要な動力を確保できればよいので、小型であるから、走行中のパレット台車2に使用者の身体が当たったとしても怪我をするほど大きな力がかかることはない。
【0053】
また、前記切換電源レール7fは電源レール4cに電気的にも接続されるのであるから、コンベヤ部7に対するパレット台車2の搬入および搬出を、切換電源レール7fに電源を供給するだけで行うことができる。
【0054】
次いで、ワーク搬出部1bにおいてワークWが取り除かれると、アクチュエータ9によってパレット昇降部3Bの回転ブラケット6を180°回転させて、コンベヤ部7を第1ストックライン4Aに連結させる第1位置P1から第2ストックライン4Bに連結させる第2位置P2に移動させることができる。
【0055】
このとき、前記コンベヤ部7に設けたカムフォロア7hが第2ストックライン4Bに設けたカム受け4dに係合し、特にカム受け4dに設けた凹部12に嵌合するので、コンベヤ部7と第2ストックライン4Bの接続状態を安定させることができる。また、切換電源レール7fは第2ストックライン4Bの電源レール4に接続されるので、パレット台車2の搬送方向は逆向き(搬送方向Y)となり、パレット昇降部3Bからパレット台車2の搬出を容易に行うことができる。パレット台車2の搬出が完了すると前記アクチュエータ9が回転ブラケット6を逆方向に回転させて、次のパレット台車2を搬入するための調整を行うことができる。
【0056】
一方、第2ストックライン4Bに搬送したパレット台車2はワークWを搭載しない空の状態で第2ストックライン4Bの下流端の第2位置P2に待機しているコンベヤ部7まで移動(ワーク搬入)し、パレット昇降部3Aのアクチュエータ9によって回転ブラケット6を180°回転させて、コンベヤ部7を第2ストックライン4Bに連結させる第2位置P2から第1ストックライン4Aに連結させる第1位置P1に移動させ、再び元の位置に戻すように前記アクチュエータ9が回転ブラケット6を再び元の位置に戻す。
【0057】
前記回転ブラケット6の回転時に必要な動力が極弱い動力で十分であるから、使用者が誤って可動中の回転ブラケット6に触れることがあっても、前記駆動用プーリー9の高摩擦抵抗部分が滑って空転することにより回転ブラケット6の動きを容易に止めることができる。つまりそれだけ安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】第1実施形態に係るパレット搬送装置の全体構成を示す図である。
【図2】前記パレット搬送装置のパレット昇降部の構成を示す側面図である。
【図3】前記パレット搬送装置のパレット昇降部の平面図である。
【図4】前記パレット搬送装置の細部の構成を説明する図である。
【図5】前記パレット搬送装置のストックラインの構成を説明する図である。
【図6】前記パレット搬送装置のストックラインの平面図である。
【図7】前記パレット搬送装置のストックラインの構成を進行方向から見た縦断面図である。
【図8】従来のパレット搬送装置の構成を示す図である。
【図9】前記パレット搬送装置のパレット昇降部の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1 パレット搬送装置
2 パレット台車
2a 駆動モータ
2b センサ
2d 端子
4 ストックライン
4A 第1ストックライン
4B 第2ストックライン
4c 電源レール
5 固定フレーム
6 回転ブラケット
7 コンベヤ部
7a コンベヤ取付け軸
7c 水平保持用プーリー
7d 固定プーリー
7e 無端ベルト
7f 切換電源レール
7h カムフォロア
8 バランス重り
9 アクチュエータ
9a 駆動用プーリー
9b 駆動モータ
d1 回転軸からコンベヤ部までの距離
O 回転軸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定フレームに対して回転自在に取り付けられた回転ブラケットと、
この回転ブラケットの回転軸から離れた位置に取り付けられ、ワーク搬送用のパレット台車を搭載可能に構成されたコンベヤ部と、
前記回転ブラケットの回転軸を中心として前記コンベヤ部の反対側に取り付けられたバランス重りと、
前記回転ブラケットを回転駆動するアクチュエータとを備え、
前記回転ブラケットの回転軸からコンベヤ部までの距離は、前記アクチュエータによって回転ブラケットを所定角度回動駆動したときに、前記コンベヤ部をパレット台車の第1ストックラインに連結させる第1位置および前記コンベヤ部をパレット台車の第2ストックラインに連結させる第2位置の間で往復させることができる距離であることを特徴とするパレット搬送装置。
【請求項2】
前記回転ブラケットは円板形状であり、前記アクチュエータは回転ブラケットの外周に当接する高摩擦抵抗部分を有する駆動用プーリーと、この駆動用プーリーを回転駆動する駆動モータとを備える請求項1に記載のパレット搬送装置。
【請求項3】
前記バランス重りは前記コンベヤ部にパレット台車の半分の質量の物体を搭載した状態で釣り合う質量を有するものである請求項1または請求項2に記載のパレット搬送装置。
【請求項4】
前記コンベヤ部は回転ブラケットに回動自在に連結されるコンベヤ取付け軸を有し、かつ、
このコンベヤ取付け軸に連結された水平保持用プーリーと、この水平保持用プーリーと同径であり回転ブラケットの回転軸と同心状に固定的に配置された固定プーリーと、この固定プーリーと前記水平保持用プーリーに巻回される無端ベルト体とを備える水平保持機構に接続されている請求項1〜請求項3の何れかに記載のパレット搬送装置。
【請求項5】
前記第1ストックラインおよび第2ストックラインは前記パレット台車の走行軌道に沿って配置された少なくとも2本の電源レールを備える一方、前記パレット台車は、前記電源レールに電気的に接続する少なくとも2個の端子と、端子を介して供給される電力の極性によって決まる所定の走行方向に走行するための動力を供給する駆動モータと、パレット台車の前後にそれぞれ配置されて隣接する障害物の存在を検知するセンサと、これらのセンサに接続されて走行方向に障害物を検知しないときにパレットを走行するように駆動モータに電力を供給する制御回路とを備えるものであり、かつ、
前記コンベヤ部は、第1ストックラインおよび第2ストックラインに連結したときにそれぞれ電源レールに接続されると共に電気的にもそれぞれに接続される切換電源レールを備える請求項1〜請求項4の何れかに記載のパレット搬送装置。
【請求項6】
前記コンベヤ部は、前記第1ストックラインおよび第2ストックラインの所定位置に連結するように案内し位置固定するようにストックライン側に設けたカム受けに係合するカムフォロアを備える請求項1〜請求項5に記載のパレット搬送装置。
【請求項7】
前記カムフォロアの位置は、前記カム受けに対するカムフォロアの固定時に、前記回転ブラケットの回転端に至る手前で一旦回転ブラケットの回転軸側に撓んだ後に回転ブラケットの回転端において撓みが無くなるまたは弱くなるような位置に配置されている請求項6に記載のパレット搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−24007(P2010−24007A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189376(P2008−189376)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(000191353)新明工業株式会社 (75)
【Fターム(参考)】