説明

パレット清掃装置

【課題】ワークを搭載しワーク加工装置に搬入されるパレットの底面に付着するゴミを確実に取り除く。
【解決手段】パレット清掃装置401では、加工対象のワーク103を搭載したパレットが水平搬送されて、加工用テーブル203の上方に位置付けられる。ブラシ体402は、加工用テーブル203から上下に延びる空間領域204よりも外側で、かつ、パレット102の底面104よりも下方に設けられる。ブラシ体402は、回転軸403を有し、この回転軸403の軸回りに回転自在となっている。回転軸403は、パレット102の底面104に平行かつパレット102の搬送方向に直角になる向きに向いている。ブラシ体402は、パレット102の底面104に接触する部分がパレット102の移動方向とは反対の方向に移動するよう回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パレットを加工テーブル上に位置付けてこのパレットに搭載されたワークに対し加工を行うワーク加工装置に対して設けられ、加工用テーブルの上に搬入されるパレットを清掃するパレット清掃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パレットを加工用テーブルの上に搬入し、パレット上のワークに対し加工を行うワーク加工装置が普及している(例えば、特許文献1)。ワーク加工装置では、ワークを搭載したパレットが搬入出され、ワークに対する切断等の加工が次々と行われる。ところが、ワークやパレットにゴミが付着することがある。ここでいうゴミとは、例えば、ワークから切り落とされた金属断片、ワークから発生した金属粉、工場内で発生したホコリ、等である。このようなゴミがワークやパレットに付着している場合、ワークの加工作業のためにはこのゴミを取り除く必要がある。そして、このゴミを取り除く作業は、多くの時間を要し、製品の生産効率を下げてしまう。
【0003】
特許文献1には、レーザ加工機において、下段パレット上のワーク上面を清掃する清掃手段(ブラシ、エアーブローノズル等)を、上段パレットの下端に設けたり、パレットの保持部とレーザ加工機のワークの加工位置との間に設けたりすることが記載されている。そして、この清掃手段7は、上段のパレット2aから落下し下段のパレット2bのワーク3上面に載った切断チップ13を清掃排除する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−206977号公報(段落0029、0031、0035、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゴミは、磁気を帯びたり、油分を含んでいたりしていて、飛び散ってパレットの底面に付着することがある。パレットの底面に付着したゴミは、パレットが加工用テーブルの上に位置付けられると、加工用テーブルの上に落下し、ワーク加工装置に不具合を生じさせるおそれがある。
【0006】
図6は、ゴム製のワイパー901を用いてパレット903の底面を清掃する仮想例を示す模式図である。図6に示すように、ゴム製のワイパー901を加工用テーブル902の上面よりも上方に突出させて加工用テーブル902の端部に取り付け、このワイパー901に、水平移動して加工用テーブル902の上方に位置付けられるパレット903の底面を擦らせることを考える。この場合であっても、ワイパー901にゴミ904が付着したり、摩擦によってワイパー901が劣化したりして、パレット903の底面に対するワイパー901の密着力が弱まり、ワイパー901がゴミ904を全て取り除くことができず、パレット903の底面にゴミ904の残骸905が残ってしまう。
【0007】
本発明の目的は、ワークを搭載しワーク加工装置に搬入されるパレットの底面に付着するゴミを確実に取り除くことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のパレット清掃装置は、加工用テーブルを有し、ワークを搭載するパレットを水平に搬送して前記加工用テーブルの上方に位置付け前記ワークを加工するワーク加工装置に設けられるパレット清掃装置であって、(i)前記加工用テーブルから上下に延びる空間領域よりも外側かつ前記パレットの底面よりも下方に設けられ、前記パレットの底面に平行かつ前記パレットの搬送方向に直角に向く軸の軸回り方向に回転自在で、前記パレットの底面に接触するブラシ体と、(ii)前記ブラシ体における前記パレットの底面に接触する部分が前記パレットの移動方向とは反対の方向に移動するよう前記ブラシ体を回転する駆動部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、パレットの搬送方向に逆らう向きにブラシ体がパレットの底面を擦るので、ワークを搭載しワーク加工装置に搬入されるパレットの底面に付着するゴミを確実に取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ワーク加工装置を示す模式図である。
【図2】ワーク加工装置の一部の斜視図である。
【図3】パレット清掃装置の正面図である。
【図4】パレット清掃装置の側面図である。
【図5】パレット清掃装置の動作を示すための説明図である。
【図6】ゴム製のワイパーを用いてパレットの底面を清掃する仮想例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の一形態を、図1ないし図5に基づいて説明する。図1は、ワーク加工装置101を示す模式図である。図2は、ワーク加工装置101の一部の斜視図である。ワーク加工装置101は、パレット102に搭載されたワーク103(図2では図示せず)を加工するものである。ワーク加工装置101は、加工機201と、パレットチェンジャ装置301と、パレット清掃装置401とを備える。以下の説明では、加工機201がワーク103に対してレーザ加工を行うレーザ加工機である場合について説明するが、これに限られることはない。
【0012】
加工機201は、加工ヘッド202を備える。また、加工機201は、加工用テーブル203を形成する。加工ヘッド202は、加工用テーブル203の上に配置されたパレット102上のワーク103に対してレーザ加工を施し、ワーク103を所望形状に切断加工する。
【0013】
パレットチェンジャ装置301は、加工機201の外側に配置され、加工機201に対してパレット102を搬入出する。より詳細には、パレットチェンジャ装置301は、パレット102を上下複数段に保持する。また、パレットチェンジャ装置301は、上下搬送部302と、水平搬送部303とを備える。上下搬送部302は、パレット102を上下搬送する。水平搬送部303は、パレット102を水平搬送して加工用テーブル203の上に位置付けたり、加工用テーブル203の上に位置付けられたパレット102を水平搬送して加工用テーブル203よりも外部に位置付ける。以下、水平搬送部303によるパレット102の移動方向を、搬送方向MVと呼ぶことがある。
【0014】
ワーク加工装置101では、パレットチェンジャ装置301は、パレット102の上下搬送及び水平搬送を順序立てて組合せて行い、所望のパレット102を加工用テーブル203上に位置付ける。加工機201は、加工用テーブル203上に位置付けられたパレット102に搭載されたワーク103に対して、レーザ加工を行う。
【0015】
パレット清掃装置401は、加工機201と加工用テーブル203との間に配置され、加工用テーブル203の側面に取り付けられる。パレット清掃装置401は、加工用テーブル203の上に搬入されるパレット清掃装置401の底面を清掃する。
【0016】
図3は、パレット清掃装置401の正面図である。図4は、パレット清掃装置401の側面図である。パレット清掃装置401の主体は、ブラシ体402である。ブラシ体402は、加工用テーブル203から上下に延びる空間領域204よりも外側、かつ、加工用テーブル203の上方に水平搬送されるパレット102の底面104よりも下方に設けられる。ブラシ体402は、円柱状の回転軸403を有する。回転軸403は、パレット102の底面104に平行、かつ、パレット102の搬送方向MVに対して直角に向いている。そして、回転軸403は、加工用テーブル203から延びるブラケット501に両端面を支持されて、軸回り方向に回転自在となっている。回転軸403の側面からは、放射状にブラシ毛404が延びている。ブラシ毛404のうち上方に位置する部分は、搬送方向MVに沿って移動するパレット102の底面104に接触する。
【0017】
ブラシ体402よりも加工用テーブル203から離れた位置には、ローラ405が配置される。ローラ405は、図4に示すように、パレット102の幅方向(搬送方向MVに直交する方向)の略中央に取り付けられる。そして、ローラ405は、ブラシ体402の回転軸403と平行な回転軸405aを有し、ホッパ411(後述)から延びるブラケット501aに両端を支持されて、回転軸405aの軸回り方向に回転自在となっている。ローラ405は、搬送方向MVに沿って移動するパレット102の底面104に接触し、パレット102の移動に伴って回転する。ローラ405には、スプロケット付ローラ406のローラ部406aが接触している。スプロケット付ローラ406も、ブラケット501aに両端を支持されて回動自在となっている。そして、ローラ405が回転すると、スプロケット付ローラ406が回転し、このスプロケット付ローラ406においてローラ部406aと同軸に設けられたローラ側スプロケット406bが回転する。また、ブラシ体402の回転軸403の略中央には、ブラシ側スプロケット407が取り付けられている。そして、ローラ側スプロケット406bとブラシ側スプロケット407とには、チェーン408が掛け渡されている。チェーン408は、垂直壁416(後述)に予め設けられた孔部(図示せず)を通過している。スプロケット付ローラ406とブラシ側スプロケット407とチェーン408とは、ローラ405の回転力をブラシ体402に伝達する回転力伝達機構409を構成する。また、ローラ405と回転力伝達機構409とは、駆動部410を構成する。
【0018】
ブラシ体402の下方には、ホッパ411が配置されている。ホッパ411は、ブラシ体402のブラシ毛404によって擦り落とされたゴミ502(図5参照)を受け止める。ホッパ411には孔が設けられていて、そこからパイプ412が延びている。パイプ412の先端には、吸引装置413が取り付けられている。吸引装置413は、ホッパ411に溜まったゴミ502を吸引する。
【0019】
ブラシ体402の回転軸403と加工用テーブル203の側面との間には、エアノズル414が配置されている。エアノズル414は、エアポンプ415から送り出される空気を、ブラシ体402とパレット102の底面104との接触箇所に向けて加工用テーブル203側から噴出する。
【0020】
ブラシ体402とスプロケット付ローラ406との間には、垂直壁416が配置される。この垂直壁416は、ホッパ411の縁部から上方に立ち上がっている。垂直壁416の上端からは、ブラシ体402側に向けて斜め上方に、遮蔽壁417が延びている。遮蔽壁417の上端には、ゴム体418が取り付けられている。ゴム体418は、搬送方向MVに沿って移動するパレット102の底面104に接触して、遮蔽壁417とパレット102との間に形成される隙間を塞ぐ。垂直壁416と遮蔽壁417とゴム体418とは、エアノズル414からの空気を下方に導く空気案内部419を構成する。
【0021】
ホッパ411の上面からは、ブラシ清掃体としての平ブラシ420が突出している。平ブラシ420は、ブラシ体402のブラシ毛404に入り込んでいて、ブラシ体402が回転することによりブラシ毛404内を移動するゴミ502(図5参照)を掻き落とす。
【0022】
図5は、パレット清掃装置401の動作を示すための説明図である。図3及び図5に基づいて、パレット清掃装置401の動きについて説明する。
【0023】
予め、吸引装置413及びエアポンプ415は、駆動している。この前提の下、パレット102が加工用テーブル203の上方に位置付けられるよう水平に移動すると、パレット102の底面104はローラ405の側面に接触する。さらにパレット102が水平に移動すると、ローラ405は、図5に示す矢印RAの向きに回転する。ローラ405の回転力は、スプロケット付ローラ406、チェーン408及びブラシ側スプロケット407を介して、ブラシ体402の回転軸403に伝わる。その結果、ブラシ体402は、図5に示す矢印RBの向きに回転する。つまり、ブラシ体402は、ブラシ毛404のうちパレット102の底面104に接触する部分がパレット102の移動方向とは反対の方向に移動するような向きに回転する。ブラシ体402が矢印RBの向きに回転することで、ブラシ毛404は、パレット102の底面104に付着したゴミ502を掻き取る。このとき、エアノズル414から送り出された空気ARは、図5に示す矢印RCの経路で流れて、パレット102の底面104や遮蔽壁417、垂直壁416の近傍を伝わり、パイプ412内を通過して吸引装置413に吸引される。このように流れるエアノズル414からの空気ARは、ブラシ毛404が掻き落としたゴミ502を矢印RCの向きに送り出す。
【0024】
ブラシ毛404に掻き取られたゴミ502は、基本的には、矢印RCの向きに送られ、吸引装置413に吸引される。ここで、掻き取られたゴミ502の一部には、ブラシ毛404内に滞留するものがある。滞留したゴミ502は、ブラシ体402が回転することによって矢印RBの向きに移動し、平ブラシ420によって掻き落とされ、ホッパ411に落ち、吸引装置413に吸引される。
【0025】
このように、本実施の形態のワーク加工装置101では、パレット清掃装置401によって、パレット102の搬送方向に逆らう向きにブラシ体402のブラシ毛404がパレット102の底面104を擦り、パレット102の底面104に付着するゴミ502が確実に取り除かれ、加工機201の加工用テーブル203にゴミ502が落下することを防止できる。
【0026】
なお、別の実施の形態として、ブラシ体402を駆動させる動力源としてモータ(図示せず)を用いてもよい。
【0027】
また、さらに別の実施の形態として、ゴム体418にパレット102の底面104が接触したことを検知するためのセンサ(図示せず)を取り付け、このセンサによってパレット102の底面104がゴム体418に接触したことを検知したときに吸引装置413及びエアポンプ415を駆動するようなシーケンス制御を組み込むようにしてもよい。
【符号の説明】
【0028】
102 パレット
104 パレットの底面
203 加工用テーブル
204 空間領域
401 パレット清掃装置
402 ブラシ体
405 ローラ
409 回転力伝達機構
410 駆動部
414 エアノズル
419 空気案内部
420 平ブラシ(ブラシ清掃体)
MV 搬送方向(パレットの移動方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工用テーブルを有し、ワークを搭載するパレットを水平に搬送して前記加工用テーブルの上方に位置付け前記ワークを加工するワーク加工装置に設けられるパレット清掃装置であって、
前記加工用テーブルから上下に延びる空間領域よりも外側かつ前記パレットの底面よりも下方に設けられ、前記パレットの底面に平行かつ前記パレットの搬送方向に直角に向く軸の軸回り方向に回転自在で、前記パレットの底面に接触するブラシ体と、
前記ブラシ体における前記パレットの底面に接触する部分が前記パレットの移動方向とは反対の方向に移動するよう前記ブラシ体を回転する駆動部と、
を備えるパレット清掃装置。
【請求項2】
前記駆動部は、
前記ブラシ体よりも前記加工用テーブルから離れた位置に配置され、前記ブラシ体と平行な回転軸の軸回り方向に回転自在で、前記パレットの底面に接触し前記パレットの移動に伴って回転するローラと、
前記ローラの回転力を前記ブラシ体に伝達する回転力伝達機構と、
を含む、
請求項1記載のパレット清掃装置。
【請求項3】
前記ブラシ体と前記パレットの底面との接触箇所に向けて前記加工用テーブル側から空気を噴出するエアノズルと、
前記ブラシ体に対して前記エアノズルとは反対側に設けられ、前記エアノズルからの空気を下方に導く空気案内部と、
を更に備える、請求項1又は2記載のパレット清掃装置。
【請求項4】
前記ブラシ体に入り込むブラシ清掃体を更に備える、
請求項1から3のいずれか一に記載のパレット清掃装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−104494(P2011−104494A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260638(P2009−260638)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】