説明

パロキセチン含有フイルムコ−テイング経口製剤

【課題】 本発明は、パロキセチンまたはその生理学的に許容される塩(以下、単に「パロキセチン」と記載する。)を含有するフィルムコーティング経口製剤に関する。本発明の目的は、安定性の向上したフィルムコーティングを施したパロキセチン経口製剤を提供することである。
【解決手段】 本発明のパロキセチン経口製剤は、パロキセチン原薬または賦形剤等により製造された造粒物、素錠の表面に、実質的に可塑剤を含まないフィルムコーティング層を有するパロキセチン経口製剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パロキセチンまたはその生理学的に許容される塩(以下、単に「パロキセチン」と記載する。)を含有するフィルムコーティング経口製剤に関する。詳しくは、実質的に可塑剤を含有しないコーティング組成物を用いてフィルムコーティングを施したパロキセチン経口製剤に関する。より具体的には、本発明は、実質的にポリエチレングリコールを含有しないコーティング組成物を用いてフィルムコーティングを施したパロキセチン錠剤を含むものである。
【背景技術】
【0002】
パロキセチンは、米国特許第4007196号等に開示されている選択的セロトニン再取り込み阻害(Selective Serotonin Reuptake Inhibitor:SSRI)作用を有するうつ病、パニック障害、強迫性障害、社会不安障害の治療薬として用いられているものである。しかしながら、パロキセチンは、熱、湿度および光に不安定であることおよび苦味があることが知られている。すでに市販されている錠剤は、フィルムコーティングが施されており、上記の欠点を補うことを目的としていると考えられる。当該錠剤においては、通常のコーティング組成物、すなわち、ポリエチレングリコールを代表とする可塑剤が使用されている。これは、従来医薬品において、ポリエチレングリコール等の可塑剤が有効成分と相互作用しないとの考えに基づいていると思われる。
【背景技術】
【0003】
従来、可塑剤をフィルムコーティングに用いることは多く知られている。可塑剤としてポリエチレングリコールを含有している錠剤フィルムコーティング用組成物としては、下記のものが知られている。
特許文献1は、固体分散体のフィルムコーティングに関するものであり、コーティング液として水系コーティング液を用いたフィルムコーティング方法であり、水系コーティング液が、水溶性高分子化合物を含むものであり、水溶性高分子化合物の具体例としてポリエチレングリコールが記載されているものである。主薬のもつ不快な味や臭気の遮蔽、光や湿気に対する安定性向上を目的とした技術である。
特許文献2は、クエン酸モサプリドの保存安定性に優れた速溶性のフィルムコーティング錠に関するものであり、コーティング製剤化成分の具体例としてポリエチレングリコールが記載されているものである。
特許文献3は、糖衣を施さなくても、高い光沢性のある表面を有するフィルムコーティング錠に関するものであり、コーティング用組成物として、ポリエチレングリコールが具体的に記載されているものである。
【0004】
一方、パロキセチンのコーティングに関しては、特許文献4が知られている。
特許文献4に記載されているコーティング製剤は、放出制御型の剤形であって、パロキセチンを含むコアにポリエチレングリコール等を含むコーティング剤でフィルムコーティングを施したパロキセチン製剤である。
【先行技術文献】
【0005】
【特許文献1】 特開2008−81512号公報
【特許文献2】 特再WO06011638号公報
【特許文献3】 特開2008−201713号公報
【特許文献4】 特開2000−229846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、パロキセチンのフィルムコーティング経口製剤を検討したところ、意外にも、医薬品に通常用いられるポリエチレングリコールを含有したコーティング組成物を用いてフィルムコーティングを施したパロキセチン経口製剤が、光に対する安定性が極度に低下すること及び熱により変色することを見出した。従来、ポリエチレングリコール等の可塑剤がパロキセチンに対して悪影響を及ぼすことや配合変化を起こすという報告はされていないことから、まったく新しい知見である。本発明はこの知見に基づくものであり、したがって、本発明の目的は、安定性が低下することがないフィルムコーティングを施したパロキセチン経口製剤を提供することである。特に、熱や光に安定なパロキセチン錠剤を提供することを含むものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記結果から、鋭意検討した結果、良好なパロキセチン経口製剤を開発するに至った。すなわち、ポリエチレングリコールなどの可塑剤を含有しないコーティング組成物を用いてフィルムコーティングを施したパロキセチン経口製剤が、熱及び光に安定であることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下に示す通りである。
1)実質的に可塑剤を含有しないフィルムコーティング組成物を用いてコーティングを施したパロキセチン経口製剤。
2)可塑剤がポリエチレングリコールであることを特徴とする1)記載のパロキセチン経口製剤。
3)フィルムコーティング組成物として、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、ポリビニルアルコールアクリル酸メチルメタクリレートコポリマー及びポリビニルアルコールポリエチレングリコールグラフトコポリマーから選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする1)乃至2)記載のパロキセチン経口製剤。
4)さらに、二酸化チタンおよび/または酸化鉄を含有することを特徴とする1)乃至3)記載のパロキセチン経口製剤。
5)実質的にポリエチレングリコールを含有しないフィルムコーティング組成物を用いてコーティングを施したパロキセチン錠剤。
6)実質的にポリエチレングリコールを含有しないパロキセチン経口製剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、安定性、特に、熱及び光に対する安定性が向上したパロキセチン含有フイルムコ−テイング経口製剤を得ることができる。したがって、本発明のパロキセチン含有フイルムコ−テイング経口製剤は医薬品として極めて有用である。すなわち、本発明のフィルムコーティング経口製剤によれば、パロキセチンが分解されにくく、安定な状態で保存することができる。特に錠剤においては、生産においても支障をきたすこともなく、さらに服用時に苦味を有することもないものである。したがって、高品質な医薬品を供給できるだけでなく、患者のQOL(Quality of Life)を改善する上で優れた医薬品を提供できる利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、さらに本発明を詳細に説明する。
本発明のパロキセチン経口製剤は、パロキセチン原薬または賦形剤等により製造された造粒物や素錠の表面に、実質的にポリエチレングリコール等の可塑剤を含まないフィルムコーティング層を有するパロキセチン経口製剤である。
【0010】
本発明のパロキセチン経口製剤は、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、トローチ剤などを挙げることができる。本発明のパロキセチン経口製剤は、錠剤が好ましい。特に、実質的にポリエチレングリコールを含有しないコーティング組成物を用いてフィルムコーティングを施したパロキセチン錠剤が好ましい。
【0011】
本発明のフィルムコーティング用組成物には、ポリエチレングリコール等の可塑剤を含有しないことを条件に、一般的なコーティング基剤を使用することができる。コーティング基剤の種類は特に限定されず、当業者が適宜選択可能である。そのようなコーティング基剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、ポリビニルアルコールアクリル酸メチルメタクリレートコポリマー及びポリビニルアルコールポリエチレングリコールグラフトコポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系水溶性コーティング基剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース等のセルロース系腸溶性コーティング剤、メタアクリル酸コポリマー、セラック等その他の腸溶性フィルムコーティング剤などが挙げられる。本発明においては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いることが好ましい。コーティング層中のフィルム基剤の割合としては、約5〜約99.5重量%、好ましくは約30〜約98重量%、より好ましくは、約50〜約93重量%が好ましい。
【0012】
本発明の可塑剤としては、ポリエチレングリコールの他、例えば、アセチル化モノグリセリド、ブチルフタリルブチルグリコレート、酒石酸ジブチル、フタル酸ジエチル等のフタル酸エステル、グリセリン、プロピレングリコール、トリアセチン、シトレート、トリプロピオイン、ジアセチン、アセチルモノグリセリド、ヒマシ油、クエン酸トリエチル、多価アルコール、グリセロール、酢酸エステル、三酢酸グリセロール、クエン酸アセチルトリエチル、アゼライン酸ジオクチル、エポキシ化タレート、トリメリット酸トリイソオクチル、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジブチルなどを挙げることができる。本発明は、これらの可塑剤をフィルムコーティング組成物に用いずにコーティングすることが必要である。
【0013】
上記コーティング基剤の他、滑沢剤、味質改善剤、着色剤、糖類等の添加剤をコーティング基剤に配合することができる。滑沢剤としては、例えばタルク、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。滑沢剤としてタルクを使用する場合、フィルムコーティング組成物中の重量として5〜50%となるよう添加するのが好ましく、10〜40%が特に好ましい。着色料は目的に応じたものを適宜選択可能であるが、例えば酸化チタン等の顔料が挙げられる。酸化チタンを添加する場合、フィルムコーティング組成物中の重量として10〜50%となるよう添加するのが好ましく、特に10〜40%が好ましい。味質改善剤としては、例えばソルビトール、エリスリトール等の糖アルコール類が挙げられる。糖類としては、単糖類、二糖類、多糖類および糖アルコール類が挙げられ、ショ糖、ソルビトール、乳糖、エリスリトール、マンニトール、キシリトール等が挙げられる。その他フィルムコーティング組成物として、ゲル化剤、界面活性剤、香料など通常の医薬品製造において使用される添加剤を加えることもできる。
【0014】
本発明においてフィルムコーティングを施す素錠は、有効成分であるパロキセチンを用いて、一般的な手法により素錠を得ることができる。製剤添加剤としては、薬学的に許容される担体、例えば賦形剤、結合剤、崩壊剤、崩壊補助剤、滑沢剤、流動化剤、光沢化剤、発泡剤、防湿剤、界面活性剤、安定化剤、乳化剤、抗酸化剤、充填剤、防腐剤、保存剤、甘味剤、矯味剤、清涼化剤、着香剤・香料、芳香剤、着色剤などが挙げられ、錠剤の製造に慣用されているものを用いることができる。
【0015】
本発明におけるフィルムコーティング製剤の製造方法としては、一般的な方法を用いて製造すればよく、当技術分野において周知の標準的なフィルムコーティング装置のいずれかを使用して、経口投与可能な剤形にコーティングされ得る。本発明に用いられるコーティング方法としては、それ自体公知の方法、例えば、パンコーティング法、流動コーティング法、転動コーティング法等が用いられる。例えば、素錠に対して少なくとも一層のコーティング剤でコーティングしたのち、乾燥、さらに必要に応じて、コーティングすることによって製造することができる。コーティングは層を重ねることもでき、目的によって各層の成分を変えることもできる。
【0016】
本発明におけるフィルムコーティング用組成物を錠剤にコーティングする量は、通常のフィルムコーティングの場合と同様とすることができる。具体的には、素錠1錠あたりに対して3〜10mg程度のフィルムコーティング量を用いることができ、5〜8mg程度がより好ましい。フィルム層の膜厚は、遮光性あるいは薬剤が有する苦味を効果的に低減できる厚さであれば特に制限はないが、通常下限は1μm以上、好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上、特に好ましくは20μm以上であり、上限は1000μm以下、好ましくは500μm以下、さらに好ましくは200μm以下、特に好ましくは100μm以下である。
【0017】
なお、本発明者らは、本発明のフィルムコーティングを施した錠剤は、服用時におけるぬめり感、べたつき感などなく、嚥下の困難な患者にも服用しやすい錠剤であることを確認している。
【実施例】
【0018】
以下に実施例及び比較例ならびに試験例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0019】
実施例1
(1)素錠の製造
パロキセチン塩酸塩1/2水和物8.75部、リン酸水素カルシウム水和物(商品名FF−100)88.75部を均一に混合した後、水を適宜添加して練合し、攪拌造粒機(パウレック製、VG−10)にて造粒した。造粒後、60℃で4時間乾燥を行い、次いで30メッシュのスクリーンでスクリーニングした。得られた造粒物97.5部にカルボキシメチルスターチナトリウム(ROQUETTE製)1.5部及びステアリン酸マグネシウム(大平化学産業製)1.0部を添加し、混合することにより、打錠用末を得た。この打錠用末をロータリー打錠機(RIVA S.A.製)により、圧縮成形して錠剤とした。
(2)フィルムコーティング錠の製造
(1)で得た素錠を用いたコーティング錠の製造例
フィルムコーティング錠を、以下の手順で製造した。
フィルムコーティング液:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(TC−5R、信越化学工業製)24.0g、二酸化チタン(CR−EL、石原産業製)14.4g、三二酸化鉄(癸巳化成製)微量、エタノール約200gおよび精製水約200gを含有する懸濁液を調製した。この液を、280号ふるいで篩過しフィルムコーティング液を得た。
フィルムコーティング錠:素錠をハイコーターLABO(フロイント産業製)に投入し、素錠130重量部に対して皮膜が乾燥状態で5重量部になるまでフィルムコーティング液を噴霧することでフィルムコーティング錠を得た。
【0020】
実施例2
実施例1の(1)で得られた素錠を用いて可塑剤を含まないフィルムコーティング錠を得た。
フィルムコーティング液:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(TC−5S、信越化学工業製)6.9g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(TC−5R、信越化学工業製)17.2g、タルク(クラウンタルクPP、松村産業製)20.6g、二酸化チタン(CR−EL、石原産業製)10.3g、三二酸化鉄(癸巳化成製)微量、エタノール約200gおよび精製水約200gを含有する懸濁液を調製した。この液を、280号ふるいで篩過しフィルムコーティング液を得た。
フィルムコーティング錠:素錠をハイコーターLABO(フロイント産業製)に投入し、素錠130重量部に対して皮膜が乾燥状態で5重量部になるまでフィルムコーティング液を噴霧することでフィルムコーティング錠を得た。
【0021】
比較例1
実施例1の(1)と同様の素錠を製し、ポリエチレングリコール6000を含有するフィルムコーティング錠を得た。
フィルムコーティング液:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(TC−5R、信越化学工業製)24.5g、ポリエチレングリコール6000(日本油脂製)7.5g、酸化チタン(CR−EL、石原産業製)10.7g、三二酸化鉄(癸巳化成製)微量、エタノール約200gおよび精製水約200gを含有する懸濁液を調製した。この液を、280号ふるいで篩過しフィルムコーティング液を得た。
フィルムコーティング錠:素錠をハイコーターLABO(フロイント産業製)に投入し、素錠130重量部に対して皮膜が乾燥状態で5重量部になるまでフィルムコーティング液を噴霧することでフィルムコーティング錠を得た。
【0022】
比較例2
実施例1の(1)で得られた素錠を用いてポリエチレングリコール6000を含有するフィルムコーティング錠を得た。
フィルムコーティング液:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(TC−5R、信越化学工業製)24.0g、ポリエチレングリコール6000(日本油脂製)10.3g、酸化チタン(CR−EL、石原産業製)20.6g、三二酸化鉄(癸巳化成製)微量、エタノール約200gおよび精製水約200gを含有する懸濁液を調製した。この液を、280号ふるいで篩過しフィルムコーティング液を得た。
フィルムコーティング錠:素錠をハイコーターLABO(フロイント産業製)に投入し、素錠130重量部に対して皮膜が乾燥状態で5重量部になるまでフィルムコーティング液を噴霧することでフィルムコーティング錠を得た。
【0023】
比較例3
実施例1の(1)で得られた素錠を用いてポリエチレングリコール400を含有するフィルムコーティング錠を得た。
フィルムコーティング液:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(TC−5R、信越化学工業製)24.0g、ポリエチレングリコール400(日本油脂製)3.7g、ポリソルベート80(日光ケミカルズ製)3.7g、酸化チタン(CR−EL、石原産業製)10.4g、三二酸化鉄(癸巳化成製)微量、エタノール約200gおよび精製水約200gを含有する懸濁液を調製した。この液を、280号ふるいで篩過しフィルムコーティング液を得た。
フィルムコーティング錠:素錠をハイコーターLABO(フロイント産業製)に投入し、素錠130重量部に対して皮膜が乾燥状態で5重量部になるまでフィルムコーティング液を噴霧することでフィルムコーティング錠を得た。
【0024】
比較例4
実施例1の(1)で得られた素錠を用いてポリエチレングリコール400を含有するフィルムコーティング錠を得た。
フィルムコーティング液:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(TC−5S、信越化学工業製)6.9g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(TC−5R、信越化学工業製)17.1g、ポリエチレングリコール400(日本油脂製)5.1g、ポリソルベート80(日光ケミカルズ製)5.1g、酸化チタン(CR−EL、石原産業製)20.6g、三二酸化鉄(癸巳化成製)微量、エタノール約200gおよび精製水約200gを含有する懸濁液を調製した。この液を、280号ふるいで篩過しフィルムコーティング液を得た。
フィルムコーティング錠:素錠をハイコーターLABO(フロイント産業製)に投入し、素錠130重量部に対して皮膜が乾燥状態で5重量部になるまでフィルムコーティング液を噴霧することでフィルムコーティング錠を得た。
【試験例】
【0025】
試験例1
安定性試験
実施例1(1)の素錠、実施例1及び2、比較例1及び2を各条件下に保存し、サンプリング後に純度試験を行った。
保存条件:保存条件は60万1x・hr並びに130万1x・hrに開放条件及びPTP包装条件で保存。
【0026】
類縁物質の測定方法
本品を粉末とし、表示量に従いパロキセチン塩酸塩10mgに対応する量をとり、水/テトラヒドロフラン混液(9:1)10mLを加えて振り混ぜた。この液を遠心分離し、上澄液を試料溶液とした。この液1mLを正確に量り、水/テトラヒドロフラン混液(9:1)を加えて正確に100mLとし、標準溶液とした。水/テトラヒドロフラン/トリフルオロ酢酸混液(180:20:1)を移動相Aとし、アセトニトリル/テトラヒドロフラン/トリフルオロ酢酸混液(180:20:1)を移動相Bとして、移動相A及び移動相Bの混合比を変えて濃度勾配制御した移動相を送液し、液体クロマトグラフィーにより試験を行った。試料溶液及び標準溶液それぞれの液の各々のピーク面積を自動積分法により測定した。
【0027】
結果
【表1】

【0028】
表1の結果から、可塑剤としてポリエチレングリコールを含有している比較例は、60万Lux・hr、130万Lux・hrのいずれにおいても、可塑剤を含有しない本発明の実施例より安定性が悪いことが認められた。
【0029】
試験例2
色差の測定
実施例1及び2並びに比較例1、2、3及び4のフィルムコーティング錠を無包装状態で40℃及び75%相対湿度のインキュベータに2週間、60℃及び75%相対湿度のインキュベータに2週間、70℃のインキュベータに4日間保存し、錠剤表面の色調変化を色彩色差計(機種名CR−300:ミノルタ製)にて測定した。
【0030】
結果
【表2】

【0031】
表1の結果から、いずれの実施例のΔE値はいずれの比較例よりも小さい値であり、変色は小さかった。このことから、可塑剤を含有しない本発明の実施例は、可塑剤としてポリエチレングリコールを含有している比較例よりも錠剤変色防止効果を有していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明により、安定性が向上したパロキセチン含有フイルムコ−テイング経口製剤を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に可塑剤を含有しないフィルムコーティング組成物を用いてコーティングを施したパロキセチン経口製剤。
【請求項2】
可塑剤がポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項1記載のパロキセチン経口製剤。
【請求項3】
フィルムコーティング組成物として、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、ポリビニルアルコールアクリル酸メチルメタクリレートコポリマー及びポリビニルアルコールポリエチレングリコールグラフトコポリマーから選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至2記載のパロキセチン経口製剤。
【請求項4】
さらに、二酸化チタンおよび/または酸化鉄を含有することを特徴とする請求項1乃至3記載のパロキセチン経口製剤。
【請求項5】
実質的にポリエチレングリコールを含有しないフィルムコーティング組成物を用いてコーティングを施したパロキセチン錠剤。
【請求項6】
実質的にポリエチレングリコールを含有しないパロキセチン経口製剤。

【公開番号】特開2011−236188(P2011−236188A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117775(P2010−117775)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(000169880)高田製薬株式会社 (33)
【Fターム(参考)】