説明

パロノセトロン代謝産物先行出願との関連本出願は2009年11月13日に出願された米国仮出願第61/260,916号の優先権を主張する。

動物、特にヒトの治療に使用できる式(I)のパロノセトロンの代謝産物、またはその薬学的に許容できる塩もしくはプロドラッグが提供され、式中、RおよびRは独立してH、ヒドロキシル、またはカルボニルであり;ならびに式中、Rは式(II)または式(III)であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパロノセトロンの代謝産物に関する。
【背景技術】
【0002】
抗癌化学療法および放射線治療の悪心および催吐の副作用は、蔓延する長年の問題である。おそらくあまり知られていないが、見逃せないのは術後の悪心および嘔吐であり、これらは化学療法に見られる効果に関連する生理学的機序を有し得る。
【0003】
パロノセトロン塩酸塩は、最近、これらの状態に対する極めて有効な抗催吐剤および抗吐剤として浮上してきた。ヘルシン・ヘルスケア(Helsinn Healthcare)のPCT国際公開第2004/045615号および同第2004/073714号を参照のこと。パロノセトロン塩酸塩は、米国において、滅菌注射液としてアロキシ(ALOXI)(登録商標)のブランド名で0.075または0.25mgのパロノセトロン塩酸塩を含む滅菌単位用量バイアルで販売されている。パロノセトロン塩酸塩は、0.5mgのパロノセトロン塩酸塩を含む経口投与軟質ゲル剤形としても販売されている。
【0004】
パロノセトロン塩酸塩の公式化学名は、(3aS)−2−[(S)−l−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イル]−2,3,3a,4,5,6−ヘキサヒドロ−l−オキソ−lHベリズ(beriz)[de]イソキノリン塩酸塩(CAS第119904−90−4号)であり;その実験式はC1924O・HClであり、ならびにその分子量は332.87である。該化合物は下記の化学構造により表される:
【0005】
【化1】

パロノセトロンの合成法は、米国特許第5,202,333号および同第5,510,486号に記載されている。薬学的に許容できる剤形は、ヘルシン・ヘルスケアのPCT国際公開第2004/067005号および同第2008/049552号に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2004/045615号
【特許文献2】国際公開第2004/073714号
【特許文献3】米国特許第5,202,333号
【特許文献4】米国特許第5,510,486号
【特許文献5】国際公開第2004/067005号
【特許文献6】国際公開第2008/049552号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、パロノセトロンが哺乳類に投与されると新規な化合物に代謝されるという発見を前提とする。これらの発見に基づいて、動物、特にヒトの治療に有用性を示す代謝産物が合成された。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、一実施形態において、本発明は、式I:
【0009】
【化2】

を含む化合物またはその薬学的に許容できる塩もしくはプロドラッグを提供し、
式中、RおよびRは、独立して、H、ヒドロキシル、またはカルボニルであり;ならびに
式中、Rは、
【0010】
【化3】

であり得る。
【0011】
本発明の幾つかの実施態様において、RおよびRは、独立して、4、5または6位にあり得る。当業者は、Rがカルボニルであるならば、Rは同じ位を占めないことを理解する。また、当業者は、Rがカルボニルであるならば、Rは同じ位を占めないことも理解する。
【0012】
本発明のさらなる実施形態および利点は、以下の記載で部分的に説明され、一部は該記載から明白であり、または本発明の実施により理解し得る。本発明の実施形態および利点は、添付の特許請求の範囲で具体的に指摘された要素および組み合わせによって実現され達成される。前述の概要および下記の詳細な説明は、特許請求の範囲に記載されるように、両方とも例示および解説に過ぎず、本発明を限定するものではないと解釈されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、下記の定義、発明の好ましい実施形態の詳細な説明およびそこに含まれる非限定的な実施例を参照することにより容易に理解され得る。
用語の定義および使用
本明細書および以下の特許請求の範囲で用いられる場合、「a」、「an」および「the」による単数形は、内容が明らかにそうでないと示さない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「1つの成分」についての言及は成分の混合物を含み、「1つの活性医薬剤」についての言及は2以上の活性医薬剤を含む、などである。
【0014】
本明細書の記載および特許請求の範囲を通して、「含む(comprise)」という語、ならびに「含む(comprising)」および「含む(comprises)」などの該語の変形は、「を含むが限定されない」を意味し、例えば、他の添加剤、成分、整数または段階を排除することを意図しない。
【0015】
本明細書で用いられる場合に「治療する」および「治療」という用語は、疾患、病態、または障害を治す、改善する、安定させる、または予防する意図での患者の医療管理を指す。この用語は、積極治療、即ち、特に疾患、病態または障害の改善に向けた治療を含み、原因療法、即ち、関連する疾患、病態または障害の原因除去に向けた治療も含む。その上、この用語は、緩和治療、即ち、疾患、病態または障害の治癒よりむしろ症状の軽減を意図する治療;予防治療、即ち、関連する疾患、病態または障害の発症を最小限にするまたは部分的にもしくは完全に阻害することに向けた治療;ならびに支持療法、即ち、関連する疾患、病態または障害の改善に向けた他の特異的治療を補う治療を含む。
【0016】
「薬学的に許容できる」とは、一般に安全で非毒性の生物学的にも他の面でも悪くない医薬組成物の調製に有用であることを意味し、家畜用途にもヒトの製薬用途にも許容できることを含む。「薬学的に許容できる塩」とは、上記に定義したように薬学的に許容できる塩、および所望の薬理活性を保有する塩を意味する。このような塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸とで形成される酸付加塩;または酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、o−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2,−エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4−メチルビシクロ[2.2.2]オクト−2−エン−l−カルボン酸、グルコヘプトン酸、4,4’−メチレンビス(3−ヒドロキシ−2−エン−l−カルボン酸)、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などの有機酸とで形成される酸付加塩を含む。
【0017】
その上、薬学的に許容できる塩は、存在する酸性プロトンが無機塩基または有機塩基と反応できる場合に形成されてもよい。許容できる無機塩基は、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アルミニウムおよび水酸化カルシウムを含む。許容できる有機塩基は、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミンなどを含む。
【0018】
「離脱基」とは、合成有機化学において従来それと関連する意味を有し、即ち、アルキル化条件下で置換可能な原子または基を意味し、ハロゲンおよびメシルオキシ、エタンスルホニルオキシ、ベンゼンスルホニルオキシ、トシルオキシなどのアルカンまたはアレーンスルホニルオキシを含む。
【0019】
同一の分子式を有するが、原子の結合の性質もしくは配列または原子の空間配置において異なる化合物は、「異性体」と呼ばれる。原子の結合の性質または配列が異なる異性体は、「構造異性体」と呼ばれる。原子の空間配置のみが異なる異性体は、「立体異性体」と呼ばれる。互いの鏡像ではない立体異性体は、「ジアステレオマー」と呼ばれ、鏡像である立体異性体は「エナンチオマー」または時には「光学異性体」と呼ばれる。鏡像に重ね合わせることができる立体異性体は、「アキラル」と呼ばれ、重ね合わせることができないものは「キラル」と呼ばれる。4つの異なる基に結合した炭素原子は、「キラル中心」または代わりに「不斉炭素」と呼ばれる。
【0020】
化合物がキラル中心を有する場合、反対の対掌性である一対のエナンチオマーが可能である。エナンチオマーは、そのキラル中心の絶対配置を特徴とし、カーンおよびプレローグのR−およびS−順位則(即ち、(R)−および(S)−異性体として)により、または分子が偏光の平面を回転させる様式により説明でき、ならびに右旋性もしくは左旋性として表せる(即ち、それぞれ(+)−および(−)異性体として)。キラル化合物は、個々のエナンチオマーまたはそれらの混合物のいずれかとして存在し得る。均等な割合のエナンチオマーを含む混合物は、「ラセミ混合物」または「ラセミ体」と呼ばれ、それらの(RS)−または(+−)−混合物として記載され得る。
【0021】
他に示されない限り、本明細書および特許請求の範囲における特定化合物の記載または命名は、個々のエナンチオマーおよびそれらの混合物、ラセミ体または他の両方を含むことを意図する。立体化学命名法の慣習、立体化学の決定法および立体異性体の分離法は当分野で周知である(Chapter 4 of「Advanced Organic Chemistry」,3rd edition March,Jerry,John Wiley and Sons,New York,1985の論議を参照のこと)。
【0022】
式IおよびXIのある化合物は立体異性体として存在し得る。例えば、ある化合物は、アミド窒素に結合したR置換基の環炭素で、任意の結合がない場合は3a−位で、キラル中心を有するため、(R)−または(S)−異性体として存在し得る。その上、ある化合物は、例えばR置換基がl−アザビシクロ[3.3.1]ノン−4−イルである場合、(エンド)−または(エキソ)−異性体として存在し得る。
【0023】
式IまたはXIの化合物が1つのキラル中心を有する場合、一対のエナンチオマーが存在する。2つのキラル中心が式IIの化合物に存在する場合、4つの別個の立体異性体が存在する(即ち、2対の別個のエナンチオマー)。式IIの化合物が2つのキラル中心を有し且つエンドまたはエキソとして存在し得る場合、8つの別個の立体異性体が可能である(即ち、エンドまたはエキソ形態の2対の別個のエナンチオマー)。
【0024】
本出願の式I、Ia、XIおよびXIaについて言及する場合、R置換基とアミド窒素との共有結合を描く直線は、可能な幾何異性体およびエナンチオマー、またはそれらの混合物、ラセミ体もしくは他を表すと理解すべきである。同様に、任意の結合がない式IIについて言及する場合、炭素3aと4との共有結合を描く直線は、RもしくはS立体配置またはそれらの混合物、ラセミ体もしくは他を表す。本出願の目的上、名称でまたは式で化合物に言及し、立体配置が指定されない場合、該言及は可能なあらゆる形態についてであると解釈すべきである。
代謝産物
一実施形態において、本発明は、式I:
【0025】
【化4】

を含む化合物またはその薬学的に許容できる塩を提供し、
式中、RおよびRは、独立して、H、ヒドロキシル、またはカルボニルであり;ならびに
式中、Rは、
【0026】
【化5】

であり得る。
【0027】
本発明の幾つかの実施態様において、RおよびRは、独立して、4、5または6位にあり得る。当業者は、Rがカルボニルであるならば、Rは同じ位を占めないことを理解する。また、当業者は、Rがカルボニルであるならば、Rは同じ位を占めないことも理解する。
【0028】
本発明の幾つかの実施態様において、式Iは光学的に純粋であり得る。
【0029】
本発明の幾つかの実施態様において、RおよびRは独立してRまたはSエナンチオマーのいずれかであり得る。
【0030】
本発明の幾つかの実施態様において、RはR型で6位のヒドロキシル基であり得る。
【0031】
本発明の幾つかの実施態様において、RはS型で6位のヒドロキシル基であり得る。
【0032】
本発明の幾つかの実施態様において、RはR型で5位のヒドロキシル基であり、RはS型で6位のヒドロキシル基であり得る。
【0033】
本発明の幾つかの実施態様において、RはS型であり得る。
【0034】
本発明の幾つかの実施態様において、Rはカルボニルであり、RはHであり得る。
【0035】
本発明の幾つかの実施態様において、Rは6位のカルボニルであり得る。
【0036】
本発明の幾つかの実施態様において、RおよびRはHであり得る。
【0037】
他の実施形態において、本発明は、式II:
【0038】
【化6】

を含む化合物またはその薬学的に許容できる塩もしくはプロドラッグを提供する。
【0039】
他の実施形態において、本発明は、式III:
【0040】
【化7】

を含む化合物またはその薬学的に許容できる塩もしくはプロドラッグを提供する。
【0041】
他の実施形態において、本発明は、式IV:
【0042】
【化8】

を含む化合物またはその薬学的に許容できる塩もしくはプロドラッグを提供する。
【0043】
他の実施形態において、本発明は、式V:
【0044】
【化9】

を含む化合物またはその薬学的に許容できる塩もしくはプロドラッグを提供する。
【0045】
他の実施形態において、本発明は、式VI:
【0046】
【化10】

を含む化合物またはその薬学的に許容できる塩もしくはプロドラッグを提供する。
【0047】
他の実施形態において、本発明は、式VII:
【0048】
【化11】

を含む化合物またはその薬学的に許容できる塩もしくはプロドラッグを提供する。
【0049】
他の実施形態において、本発明は、式VIII:
【0050】
【化12】

を含む化合物またはその薬学的に許容できる塩もしくはプロドラッグを提供する。
【0051】
他の実施形態において、本発明は、式IX:
【0052】
【化13】

を含む化合物またはその薬学的に許容できる塩もしくはプロドラッグを提供する。
発明化合物の調製法
式Iの化合物は、反応スキームIで下記に示される反応順序により調製できる。
スキームI
【0053】
【化14】

式中、Rはヒドロキシ、アルコキシもしくはハロゲンでありならびにYは水素であり、またはRおよびYはともにオキサであり、ならびにRおよびRは独立して、H、ヒドロキシル、もしくはカルボニルである。
【0054】
およびRはXおよびXaのYに対して独立して、オルト、メタ、またはパラであり得る。当業者は、Rがカルボニルであるならば、RはYに対して同じ位を占めないことを理解する。当業者は、Rがカルボニルであるならば、RはYに対して同じ位を占めないことも理解する。
【0055】
式Iの化合物は、従来、2段階合成により調製され、該合成は、(1)式Xの酸もしくは酸誘導体または式Xaの縮合環二環式化合物を式XIの置換アミドに変換する工程、ならびに(2)該アミドをホルミル化剤と強塩基の存在下で反応させた後、酸性化し、式XIIの化合物(任意の結合が存在する化合物)を形成する工程を含む。式Iの化合物(任意の結合が存在しない化合物)は続いて還元により調製される。
【0056】
式Iの合成中、当業者はいつ保護基の使用が必要かおよび必要か否かを認識する。例えば、RおよびRがヒドロキシル基である場合、当業者は式Iの合成過程の間いつどのようにしてこのような基を保護するかが分かる。基を保護する技術および非限定的な例は、Michael B.Smith,Organic Synthesis 2nd Ed.McGraw−Hill Higher Education,New York,2002に見出せる。
段階1
式XIの化合物は、式Xの化合物と式NHの置換アミンと反応させることにより調製され、式中、Rは、
【0057】
【化15】

である。
【0058】
反応条件は、アミド形成(例えば、J.Advanced Organic Synthesis March 1985,3rd Ed.,370−376を参照)の標準的なものである。一般に、反応は20℃から200℃、好ましくは−10℃から20℃および周囲圧力で0.5から3時間好適な不活性有機溶媒(例えば、塩化メチレン、THFおよびトルエン)中で行う。
【0059】
あるいは、式XIの化合物は、フリーデル−クラフツ・アシル化により調製してもよく、該アシル化では、式C1C(0)NHRのクロロホルムアミドは、式Xaの化合物と、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、フッ化水素またはリン酸などのルイス酸の存在下で反応する。
【0060】
一般に、式XIの化合物の調製で使用される出発物質は、当業者に知られている、または当業者によって容易に合成できる。例えば、式Xの類似化合物は、Lowenthal,H.J.;Schatzmiller,S.J.Chem.Soc.Perkin Trans.I 1976,944により論議されている。非置換化合物は容易に入手できるまたは当分野で知られる方法に従って調製してもよい。
【0061】
式X(式中、RおよびYがともにオキサである)の化合物は、式
【0062】
【化16】

のアルコールから、強塩基(例えば、n−ブチルリチウム)を用いて不活性有機溶媒(例えば、ヘキサン)中で約20時間処理した後、二酸化炭素で約5時間バブリングすることにより調製できる。
【0063】
本発明化合物の調製に有用な他の出発物質は1−シアノ−4−アルコキシナフタレンであり、これは加水分解され、式X(式中、Rはヒドロキシである)の対応する出発物質に還元でき、ハロゲン置換テトラロンは周知であり、o−ハロフェニル酪酸から調製される。これらのテトラロンは適切なアルコールに還元でき、酸に変換され、ラクトンとしてのRNH化合物と反応し、式XIのアミドを形成する。
段階2
式XIIの化合物は、式XIのアミドとジアルキルホルムアミドとを強塩基の存在下で反応させた後、酸性化することにより調製される。反応は、不活性エーテル溶媒(例えば、ジエチルエーテル、ジメトキシエタンまたはテトラヒドロフラン(THF)、好ましくはTHF)で、−70℃から25℃、好ましくは−20℃から0℃の範囲の温度で、周囲圧力および不活性雰囲気(例えば、アルゴンまたは窒素、好ましくは窒素)下で実施する。ジアルキルホルムアミド、好ましくはジメチルホルムアミド(DMF)は一般に式XIのアミドに対してモル過剰で使用する。グリニャール試薬または適切なアルキルリチウム、好ましくはn−ブチルリチウムなどの任意の強塩基が使用できる。
【0064】
式Iの化合物は、式XIIの対応化合物の還元により調製してもよい。還元は、標準的な水素化条件下で適切な水素化触媒を用いて好適な極性有機溶媒中で行う。反応圧は大気圧から約15メガパスカル(mPa)まで変化し、温度は周囲温度から約100℃にわたり得る。任意の標準触媒(例えば、ロジウム担持アルミナなど)を使用してもよいが、特定の触媒が好ましい。好ましい触媒は、10%水酸化パラジウム、20%水酸化パラジウム担持炭素、パールマン触媒(50%HO−20%パラジウム含量)およびパラジウム/BaSOを含む。好適な溶媒は、エタノール、DMF、酢酸、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、トルエンなどを含む。
【0065】
選択される触媒、溶媒、圧力および温度に応じて、還元過程は完了するまでに数時間から数日かかり得る。一例として、20%水酸化パラジウムを含む酢酸および70%過塩素酸を用いて15kPaおよび85℃で実施する反応は、完全な還元が起きるまでに約24時間かかる。
【0066】
式XIIの化合物は非塩または塩の形態のいずれかで還元できる。光学活性試薬が式XII化合物の塩を形成するために使用される場合、一方のエナンチオマーを他方のエナンチオマーに対して形成することが好まれ得る。
【0067】
式XIIおよびIの化合物も、スキームIIで下記に示される反応順序により調製される。
スキームII
【0068】
【化17】

式中、Rはヒドロキシ、アルコキシもしくはハロゲンでありならびにYは水素であり、またはRおよびYはともにオキサであり、Lは離脱基であり、R、RおよびRは本明細書の他の部分で定義される通りである。
【0069】
あるいは、式XIIおよびIの化合物は、3段階合成により調製され、該合成は、(1)式Aの酸または酸誘導体を式XIaの非置換アミドに変換する工程、(2)該アミドをホルミル化剤と強塩基の存在下で反応させた後、酸性化し、式XIIaの化合物(任意の結合が存在する式XIIの化合物)を形成する工程、(3)式XIIaの化合物を式Iaの化合物(任意の結合が存在しない式Iの化合物)に還元してもよい工程、ならびに(4)式Iaの化合物を適切なアルキル化剤で縮合し、式Iの化合物を形成する工程を含む。
段階1
式XIaの化合物は、スキームIの段階1のように進行するが、置換アミンをアンモニアに差し替えることにより調製される。
段階2
式XIIaの化合物は、スキームIの段階2のように進行するが、式XIの化合物の代わりに式XIaの化合物を用いることにより調製される。式XIIaの化合物は、式XIIの化合物の水素化について上記のように進行するが、式XIIaの化合物を置き換えることにより調製してもよい。
段階3
式Iの化合物は、強塩基の存在下で、式XIIaの化合物を式RL(式中、Rは本明細書の他の部分の通りであり、Lは離脱基である)のアルキル化剤と反応させることにより調製される。反応は標準アミドアルキル化条件(Luh,T.;Fung S.H.Synth.Commun.1979,9,757)下で不活性溶媒中20℃から100℃の反応温度で行う。適切な塩基はナトリウムおよび水素化ナトリウムを含み、通常モル過剰で使用される。好適な溶媒はテトラヒドロフランまたはN,N−ジメチルホルムアミドなどのN,N−ジアルキルホルムアミドを含む。
【0070】
あるいは、アルキル化は、相間移動触媒(PTC)技術により遂行してもよい。このような技術は、触媒の存在下、液液二相溶媒系(Gajda,T.;Zwierzak,A.Synthesis,Communications 1981,1005)、または好ましくは固液系(Yamawaki,J.;Ando,T.;Hanafusa,T.Chem,Lett.1981,1143;Koziara,A.;ZaWasZki,S;Zwierzak,A.Synthesis 1979,527,549)での反応の実施を含む。液液二相系は、濃縮水酸化アルカリ溶液(例えば、50%水性水酸化ナトリウム)から成る水性相、水と混和しない不活性有機溶媒を含む有機相、および適切な触媒を含む。固液系は有機溶媒に懸濁した粉末水酸化アルカリ/炭酸アルカリおよび触媒から成る。
【0071】
反応は、式Vの化合物を含むPTC系に式RLのアルキル化剤を10から50%まで過剰に徐々に添加することにより達成される。反応混合物は反応が完了するまで還流し続ける。混合物は次いで室温に冷却し、式Iの化合物は従来の方法により単離される。好適な有機溶媒は、ベンゼン、トルエンなどを含む。適切な触媒は、フッ化カリウムで被覆されたアルミナおよびテトラ−n−ブチル−アンモニウム硫酸水素塩などの第四級アンモニウム硫酸塩およびトリカプリルイルメチルアンモニウム・クロライドを含む。
【0072】
スキームIIの変形は、上記アルキル化法の1つにより式XIaの化合物を式XIの化合物に変換する工程、次いでスキームIの段階2の通りに進行し式Iの化合物を形成する工程を含む。
追加工程
式I(式中、RはXIVである)の化合物(Rの環状アミン部分はN−酸化物形態である式Iの化合物)は、式I(式中、RはXIV、好ましくは非塩形態である)の対応化合物の酸化により調製してもよい。酸化は、約0℃の反応温度で適切な酸化剤を用いて好適な不活性有機溶媒中で実施する。好適な酸化剤は、トリフルオロ過酢酸、過マレイン酸、過安息香酸、過酢酸、およびm−クロロ過安息香酸などのペルオキシ酸を含む。好適な溶媒は、ハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタンを含む。あるいは、式I(式中、RはXIVである)の化合物は、出発物質または中間体のN−酸化物誘導体を用いて調製してもよく、該誘導体は同様な様式で調製してもよい。
【0073】
式I(式中、RはXIIIである)の化合物(Rの環状アミン部分がN−酸化物形態でない式Iの化合物)は、また、式I(式中、RはXIVである)の対応化合物の還元によって調製される。還元は標準条件下で適切な還元剤を用いて好適な溶媒中で実施する。混合物は、反応温度が0℃から80℃の範囲にわたって次第に上昇する間に時折攪拌する。適切な還元剤は、硫黄、二酸化硫黄、トリアリールホスフィン(例えば、トリフェニルホスフィン)、ホウ素化水素アルカリ(例えば、ホウ素化水素リチウム、ホウ素化水素ナトリウムなど)、三塩化リンおよび三臭化リンを含む。好適な溶媒は、アセトニトリル、エタノールまたは水性ジオザン(diozane)を含む。
【0074】
当業者に明らかなように、式Iの化合物は個々の異性体または異性体の混合物として調製してもよい。ジアステレオマーである異性体は、異なる物理特性(例えば、融点、沸点、溶解度、反応性など)を有し、これらの相違点を利用することにより容易に分離される。例えば、ジアステレオマーは、クロマトグラフィーにより、または好ましくは溶解度の差異に基づく分離/溶解技術により、分離できる。
【0075】
光学異性体は、ラセミ混合物を光学活性分解剤と反応させて1対のジアステレオマー化合物を形成することにより分離できる。該異性体は次にジアステレオマーの分離について上述した技術のいずれかにより分離し、ラセミ化を生じない任意の実用的手段により分解剤とともに純粋な光学異性体を回収する。光学異性体の分解は式II化合物の共有結合ジアステレオマー誘導体を用いて実施できるが、解離錯体、例えば結晶ジアステレオマー塩が好ましい。好適な分解剤は、酒石酸、o−ニトロタルトラニル酸、マンデル酸、リンゴ酸、一般に2−アリールプロピオン酸、およびカンファースルホン酸を含む。
【0076】
式Iの化合物の個々の異性体は、直接結晶化もしくは選択的結晶化などの方法または当業者に知られる任意の他の方法によっても分離できる。式Iの化合物の立体異性体の分解に適用可能な技術のより詳細な説明は、Jean Jacques;Andre Collet;Samuel H.Wilen Enantiomers,Racemates and Resolutions 1981,John Wiley&Sons,Inc.に見出せる。あるいは、式IIの化合物の個々の異性体は、出発物質の異性体型を用いて調製できる。
【0077】
式Iの化合物は、薬学的に許容できる無機酸または有機酸を用いて、対応する酸付加塩に変換できる。式Iの化合物の薬学的に許容できる塩の調製に好適な無機および有機の酸および塩基は本出願の定義の節に記載される。
【0078】
酸付加塩形態の式Iの化合物は、水酸化アンモニウム溶液、水酸化ナトリウムなどの好適な塩基による処理により対応する遊離塩基に変換される。
【0079】
本出願に記載される式IIの化合物を合成する2つの方法のうち、スキームIが好ましい。式IIの化合物はスキームIIに記載される方法により合成されてもよいが、そのアルキル化段階は厳しい反応条件を要し、通常、一次アルキル化剤、例えばCHLによる非置換アミドのアルキル化に限定される。
【0080】
要するに、式Iの化合物の調製法は:
(1)式XIの化合物をホルミル化剤を用いて強塩基の存在下で反応させた後、酸性化し、式XIIの化合物を形成する工程、または式XIIaの化合物と式RLのアルキル化剤と反応させ式Iの化合物を形成する工程;
(2)任意で式XIIの化合物を水素化し、式Iの化合物を形成する工程;
(3)任意で式IIの化合物に存在する置換基と反応しまたは交換し、さらなる式Iの置換化合物を形成する工程;
(4)任意で式Iの化合物の塩を式Iの対応する化合物に変換する工程;
(5)任意で式Iの化合物を対応する薬学的に許容できる塩に変換する工程;
(6)任意で式I(式中、RはXIIIである)の化合物を酸化させ、対応するN−酸化物を形成する工程;
(7)任意で式Iの化合物のN−酸化物を対応する式I(式中、RはXIIIである)の化合物に還元する工程;または
(8)任意で式Iの化合物の異性体混合物を単一の異性体に分離する工程である。
【0081】
本発明の他の方法は以下に反応スキームIIIで示される。
スキームIII
【0082】
【化18】

式中、Lは離脱基であり、Rは(Cl−C4)アルキルである。
【0083】
当業者は、スキームIIIの保護アルコールが4,5,または6位に位置し得ることを理解する。当業者は、式XXが4,5,または6位の構造に1以上のケトンを有し得ることを理解する。
【0084】
例えば、2−(l’−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3’−イル)−6−ヒドロキシ−2,3,3a,4,5,6−ヘキサヒドロ−lH−ベンズ[de]イソキノリン−l−オンXVのジアステレオマー混合物は、2−(1’−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3’−イル)−6−ヒドロキシ−2,4,5,6−テトラヒドロ−lH−ベンズ[de]イソキノリン−l−オンXVIの水素化により調製される。水素化は、3−および3a−位で水素化する任意の手段により6−位で脱ヒドロキシル化することなく実施できる。このような手段は、好適な触媒(例えば、10%パラジウム担持炭素(10%Pd/C)、5%パラジウム担持硫酸バリウム(5%Pd/BaSO)、5%パラジウム担持アルミナ(5%Pd/Al)、10%パラジウム担持炭酸ストロンチウム(10%Pd/SrCO)等、好ましくは5%Pd/BaSO)の存在下で、好適な有機溶媒で、通常、エーテル、アルコール、カルボン酸、エステル、アミド、芳香族炭化水素および好ましくはアルコール(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、エタノール、酢酸、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、トルエンなど、好ましくはエタノール)で、10℃から78℃、通常15℃から30℃、好ましくは約20℃で、0から200psig、通常0から100psig、好ましくはおおよそ大気圧での水素化を含み、24から80時間を要する。
【0085】
式XVIの化合物は、保護化Ν−(1’−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3’S−イル)−5−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタール・エネカルボキサミド(式XVII)を1から20モル当量、通常1から10モル当量、好ましくは約3モル当量のジアルキルホルムアミド、通常ジ(Cl−C4)アルキルホルムアミド、好ましくはDMFと反応させ、酸性化した後、脱保護化することにより調製される。ホルムアミドとの反応は、強塩基、通常水素化ナトリウムまたはアルキルリチウム塩基、好ましくはブチルリチウム(例えば、sec−ブチルリチウム、n−ブチルリチウム等、好ましくはsec−ブチルリチウム)の存在下で、好適な溶媒、通常エーテル(例えば、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン(THF)等、好ましくはTHF)で、不活性雰囲気(例えば、窒素またはアルゴン)下で、−20℃から−75℃、通常−65℃から−75℃、好ましくは約−74℃で実施し、0.5から5時間要する。反応混合物は次いで0℃から30℃、通常15℃から25℃、好ましくは約20℃に温め、過剰のモル当量の酸、通常5から15モル当量の酸、好ましくは約10モル当量の塩酸を添加し、酸性化された混合物は2から5時間攪拌する。
【0086】
脱保護は保護基を除去する任意の手段により実施でき、妥当な収率で所望の非保護生成物を生じる。例えば、便利な脱保護方法は、とりわけ保護基がtert−ブチルジフェニルシリルである場合、保護化合物をフッ化テトラブチルアンモニウムと、適切な溶媒、通常エーテル、好ましくはTHF中で反応させる工程を含む。脱保護は、適切な有機溶媒において、0℃から50℃、通常15℃から25℃、好ましくは約20℃で実施し、1から24時間を要する。保護基に適用可能な技術およびそれらの除去の詳細な説明は、Greene,T.W.;Protective Groups in Organic Synthesis 1981;John Wiley&Sons,Inc.に見出せる。
【0087】
式XVIIの化合物は、保護化5−ヒドロキシ−l,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフトエ酸誘導体(式XVIII)をl−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イルアミン(式XIX)と反応させることにより調製される。反応は、窒素雰囲気下、好適な不活性有機溶媒、通常、芳香族炭化水素、水素化炭化水素またはエーテル、好ましくは芳香族炭化水素(例えば、トルエン、塩化メチレン、THF等、好ましくはトルエン)中で、20℃から200℃、通常、90℃から130℃、好ましくは約120℃で実施し、10から72時間を要する。
【0088】
l−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イルアミンは、市販されており、または当業者に知られる方法により容易に調製できる。式XVIIIの化合物は、5−オキソ−l,2,3,4−テトラヒドロ−l−ナフトエ酸誘導体(式XX)を還元して対応する非保護化5−ヒドロキシ−l,2,3,4−テトラヒドロ−l−ナフトエ酸誘導体を生じた後、保護化することにより調製される。還元は、好適な還元剤、好ましくは水素化ホウ素アルカリ(例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウムなど、好ましくは水素化ホウ素ナトリウム)を用いて、好適な溶媒、通常、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等、好ましくはエタノール)で、−20℃から30℃、通常、−10℃から30℃、好ましくは約0℃で達成でき、1から5時間を要する。好適な保護基は、5−ヒドロキシ−l,2,3,4−テトラヒドロ−l−ナフトエ酸誘導体を1から5モル当量の好適な保護化剤(例えば、tert−ブチルジフェニルシリルクロライド、tert−ブチルジメチルシリルクロライド等、好ましくはtert−ブチルジフェニルシリルクロライド)と好適な溶媒(例えば、DMF、塩化メチレン等、好ましくはDMF)で反応させることにより作り出せる。例えば、式VXIII(式中、Pはtert−ブチルジフェニルシリルクロライドである)の化合物は、非保護化5−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフトエ酸誘導体をtert−ブチルジフェニルシリルクロライドとイミダゾールを含むDMFの存在下で反応させることにより調製される。反応は、0℃から60℃、通常、0℃から40℃、好ましくは約20℃で実施し、1から30時間を要する。
【0089】
式XX(式中、Lはヒドロキシまたは(Cl−C4)アルコキシである)の化合物は、2−メチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−2H−l−ベンゾピラン−5−オンをプロピオン酸または(C1−C4)アルキルプロピオール酸塩とそれぞれ反応させることにより調製できる。好ましくは、反応はプロピオール酸エチルと20℃から150℃、通常、50℃から140℃、好ましくは約115℃で実施し、1から5時間を要する。他の離脱基は、式XVIII(式中、Lはヒドロキシである)の化合物を適切な剤(例えば、塩化メタンスルホニル、塩化チオニル、五塩化リン、オキシ塩化リン等)で処理することにより調製できる。例えば、式XVIII(式中、Lはクロロである)の化合物は、5−オキソ−5,6,7,8−テトラヒドロ−l−ナフト塩酸を塩化チオニルと好適な溶媒、通常、芳香族炭化水素または水素化炭化水素(例えば、トルエン、塩化メチレン等、好ましくはトルエン)で、25℃から50℃、通常、40℃から50℃、好ましくは約50℃で反応させることにより調製でき、1から2時間を要する。
【0090】
2−メチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−2H−l−ベンゾピラン−5−オンは、1,3−シクロヘキサンジオンをクロトンアルデヒドと反応させることにより調製される。反応は、好適な溶媒(例えば、ピリジン、メチルピリジン、2,4−ルチジン、ピロリジン等、好ましくはピリジン)で、不活性雰囲気(例えば、アルゴンまたは窒素)下、100℃から130℃、通常110℃から120℃、好ましくは約115℃で実施し、1から24時間を要する。
【0091】
反応条件、単離/分離技術および出発物質に応じて、式XV、XVI、XVIIおよびXIXの化合物はそれらの非塩形態または塩形態に変換または調製され得る。従って、式XV、XVI、XVIIおよびXIXの化合物は、記載方法が本発明の範囲に含まれるために、非塩形態または塩形態として本発明の方法で利用でき、本発明は、化合物が非塩形態である方法および化合物が塩である方法を含む。従って、式XV、XVI、XVIIおよびXIXの化合物のある形態が好ましいが、他に示されない限り、本明細書または特許請求の範囲における特定の化合物の記載または命名は、それらの薬学的に許容できるまたは他の非塩形態および塩形態の両方を含むことを意図する。
【0092】
式XV、XVI、XVIIおよびXIXおよびXVIIIの化合物はそれぞれ1以上のキラル中心を含み、個々の立体異性体および/または立体異性体の混合物に分離または調製できる。従って、式XV、XVI、XVIIおよびXIXおよびXVIIIの化合物のある立体異性体または立体異性体の混合物が好ましいが、他に示されない限り、本明細書または特許請求の範囲における特定のキラル化合物の記載または命名は、それらの個々の立体異性体および混合物、ラセミ体または他を含むことを意図する。
【0093】
式XVの化合物の個々の立体異性体は、式XVの化合物の非エナンチオマー性ジアステレオマー混合物から、クロマトグラフィーにより、溶解度の差異に基づく分離/溶解技術により、直接結晶化もしくは選択的結晶化により、または当業者に知られる任意の他の方法により分離できる。例えば、2−(l’−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3’S−イル)−6R−ヒドロキシ−2,3,3aS,4,5,6−ヘキサヒドロ−lH−ベンズ[de]イソキノリン−1−オンは、2−(l’−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3’S−イル)−6R−ヒドロキシ−2,3,3a,4,5,6−ヘキサヒドロ−lH−ベンズ[de]イソキノリン−l−オンのジアステレオマー混合物から、シリカゲル・カラム・クロマトグラフィーにより容易に調製される。
【0094】
式XVの化合物の非エナンチオマー性ジアステレオマー混合物は、エナンチオマー性ジアステレオマー混合物を光学活性酸(例えば、酒石酸、マンデル酸、リンゴ酸、一般に2−アリールプロピオン酸、カンファースルホン酸など)と反応させジアステレオマー結晶塩を形成することにより調製できる。結晶塩の非エナンチオマー性混合物は次いで上記方法のいずれかにより個々のジアステレオマーに分離し、式XVの化合物の純粋なジアステレオマーは、光学活性酸とともに、ラセミ化を生じない任意の実用的手段により回収される。立体異性体の調製に適用可能な技術のより詳細な説明は、Jean Jacques,Andre Collet,Samuel H.Wilen,Enantiomers,Racemates and Resolutions,John Wiley&Sons,Inc.(1981)に見出せる。
【0095】
(6R,3aR,3’S)−、(6S,3aS,3’S)−、(6R,3aS,3’S)−および(6S,3aR,3’S)−ジアステレオマーを含む式XVの化合物の非エナンチオマー性ジアステレオマー混合物は、上記の通り進行し、2−(1’−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3’S−イル)−6−ヒドロキシ−2,4,5,6−テトラヒドロ−lH−ベンズ[de]イソキノリン−l−オンのジアステレオマー混合物を水素化することにより調製できる。(6S,3aR,3’S)−および(6S,3aS,3’S)−ジアステレオマーの混合物または(6R,3aR,3’S)−および(6R,3aS,3’S)−ジアステレオマーの混合物を含む式XV化合物のジアステレオマー混合物は、上記の通りに進行し、2−(1’−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3’S−イル)−6S−ヒドロキシ−2,4,5,6−テトラヒドロ−lH−ベンズ[de]イソキノリン−l−オンまたは2−(l’−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3’S−イル)−6R−ヒドロキシ−2,4,5,6−テトラヒドロ−lH−ベンズ[de]イソキノリン−l−オンをそれぞれ水素化することにより調製できる。式XVの化合物の個々のジアステレオマーは次いで上記の分離/溶解技術のいずれかにより分離できる。
【0096】
2−(l’−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3’S−イル)−6−ヒドロキシ−2,4,5,6−テトラヒドロ−lH−ベンズ[de]イソキノリン−l−オンは、上記の通りに進行し、保護化N−(l’−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3’S−イル)−5−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−l−ナフタレンカルボキサミドのジアステレオマー混合物をジアルキルホルムアミドと塩基の存在下で反応させ、酸性化した後、脱保護化することにより、ジアステレオマー混合物として調製できる。2−(1’−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3’S−イル)−6−ヒドロキシ−2,4,5,6−テトラヒドロ−lH−ベンズ[de]イソキノリン−l−オンの個々のジアステレオマーは、ジアステレオマー混合物から、上記の適用可能な分離/溶解技術のいずれかにより、または上記の通りに進行することにより調製でき、または保護化N−(l’−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3’S−イル)−5−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−l−ナフタレンカルボキサミドの対応する個々のジアステレオマーから調製できる。
【0097】
保護化N−(l’−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3’S−イル)−5−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−l−ナフタレンカルボキサミドのジアステレオマー混合物は、上記の通りに進行し、式XVIII化合物のエナンチオマー混合物を(S)−l−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イルアミンと反応させることにより調製できる。保護化Ν−(1’−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3’S−イル)−5−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−l−ナフタレンカルボキサミドの個々のジアステレオマーは、ジアステレオマーの混合物から、上記の分離/溶解技術のいずれかにより調製でき、または上記の通りに進行し、式XVIII化合物の個々のエナンチオマーを(S)−l−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イルアミンと反応させることにより調製できる。
【0098】
式5の化合物の個々のエナンチオマーは、対応する非保護化5−ヒドロキシ−l,2,3,4−テトラヒドロ−l−ナフトエ酸誘導体の個々のエナンチオマーから調製できる。非保護化5−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフトエ酸誘導体の個々のエナンチオマーは、エナンチオマー混合物を光学活性塩基と反応させることによりジアステレオマー結晶塩を形成し、クロマトグラフィーにより、溶解度の差異に基づく分離/溶解技術により、直接結晶化もしくは選択的結晶化により、または当業者に知られる任意の他の方法により、ジアステレオマー塩を分離し、次いでラセミ化を生じない任意の実用的手段により純粋なエナンチオマーを光学活性塩基とともに回収することにより調製できる(例えば、上記に引用したEnantiomers,Racemates and Resolutions 1981;John Wiley&Sons,Inc.を参照のこと)。
【0099】
あるいは、非保護化5−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフトエ酸誘導体の個々のエナンチオマーは、式XXの化合物のエナンチオ選択的還元により調製できる。エナンチオ選択的還元は、上記の通りに進行し、式6の化合物を好適なキラル補助基(例えば、アザオキサボロジン(azaoxaborodine))または選択的還元剤(例えば、クロロジイソピノカンフェイルボラン、リチウム・トリ−sec−ブチルボロハイドライドなど)の存在下で還元することにより実施する。例えば、非保護化5−ヒドロキシ−l,2,3,4−テトラヒドロ−l−ナフトエ酸誘導体(キラル炭素が(R)−立体配置にある)は、上記の通りに進行し、式XXの化合物をジボランと(S)−l−アザ−2−ボロ−3−オキサ−4,4−ジフェニル[3.3.0]ビシクロオクタンの存在下で還元することにより調製できる。同様に、非保護化5−ヒドロキシ−l,2,3,4−テトラヒドロ−l−ナフトエ酸誘導体(キラル炭素が(S)−立体配置にある)は、上記の通りに進行し、式6の化合物を(R)−l−アザ−2−ボロ−3−オキサ−4,4−ジフェニル[3.3.0]ビシクロオクタンの存在下で還元することにより調製できる。非対称ケトンのエナンチオ選択的還元に適用可能な技術のより詳細な説明については、Singh,V.K.;Synthesis 1992;7:605を参照のこと。
【0100】
(S)−l−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イルアミンは、上記の適用可能な分離/溶解技術のいずれかによって、アミンのエナンチオマー混合物から個々のエナンチオマーを分離することにより調製できる。あるいは、(S)−l−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イルアミンは、l−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−オンを(R)−α−アルキルベンジルアミンと、好ましくは(R)−l−フェニルエチルアミンと反応させて対応する(R)−N−(α−アルキルベンジル)−3−(l−アザビシクロ[2.2.2]オクタン)イミンを生じ、該イミンを還元して対応するN−(lR−フェニルアルキル)−l−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3S−イルアミンを生じ、次いで水素化分解することにより調製できる。(R)−α−アルキルベンジルアミンとの反応は、酸化リチウムの存在下、好適な有機溶媒、通常、エーテル、好ましくはTHF中で、10℃から40℃、通常15℃から30℃、好ましくは約20℃で実施し、12から84時間を要する。イミンの還元は、接触水素化により、または好適な化学還元剤で実施できる。
【0101】
イミンの水素化は、好適な触媒、好ましくは5%Pt/Cの存在下、好適な有機溶媒、通常、アルコール、好ましくはエタノール中で、10℃から40℃、通常、15℃から30℃、好ましくは約20℃で、および0から100psig、通常0から50psig、好ましくは約20psigで実施し、1から48時間を要する。あるいは、イミンは、好適な化学還元剤、好ましくは水素化ホウ素アルカリ(例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウムなど、好ましくは水素化ホウ素ナトリウム)を用いて、好適な有機溶媒、通常、アルコール、好ましくはエタノール中で、−15℃から50℃、通常、15℃から30℃、好ましくは約20℃で還元でき、15分から3時間を要する。
【0102】
水素化分解(hydrogenolyzation)は、好適な触媒(例えば、10%Pd/C、20%Pd/Cなど、好ましくは10%Pd/C)の存在下、好適な有機溶媒、通常アルコールと水の混合物、好ましくは5/1から2/1エタノール/水で、10℃から40℃、通常、15℃から30℃、好ましくは約20℃、および0から100psig、通常、0から20psig、好ましくは約5psigでN−(lR−フェニルアルキル)−l−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3S−イルアミンの水素化により達成され、5から48時間を要する。
有用性
本発明の化合物は、動物、とりわけヒトの広範な疾患の治療に有用性を示す。これらの化合物を用いて治療できる疾患の例は、嘔吐、胃腸障害、中枢神経系(CNS)障害、心血管障害または疼痛を含む。
【0103】
本発明の化合物は嘔吐の予防および治療に使用できる。このような嘔吐の原因は、外科麻酔、精神的ストレス、妊娠、特定の病態、放射線治療、放射能中毒、および毒性物質を含む。嘔吐を誘発することが知られる病態は、腸閉塞、頭蓋内圧の上昇、急性心筋梗塞、偏頭痛、副腎発症などの状態を含む。嘔吐を誘発する毒性物質は、異常な代謝産物形態の毒素、または肝性昏睡、腎不全、糖尿病性ケトアシドーシス、甲状腺機能亢進クリーゼ、上皮小体低下症および上皮小体亢進症、ならびにアジソン病などの状態に関連する天然に存在する物質の異常な蓄積の毒素を含む。嘔吐は、摂取毒素、例えばスタフィロコッカスに汚染された食物中のエンテロトキシンによって、または治療目的で投与された薬物、例えばジギタリス、エメチンおよび化学療法剤によっても引き起こされ得る。
【0104】
本発明の化合物は、放射能中毒により誘発される嘔吐の治療(とりわけ予防)、放射線治療もしくは細胞毒性剤を用いた化学治療による癌治療、または一般に主要な副作用が嘔吐である薬物治療、例えば免疫抑制患者を治療するアンフォテリシンB、AIDS治療のジドブジン(AZT)および癌治療のインターロイキンに特に価値があり得る。
【0105】
本発明の化合物は、胃腸病、即ち、胃、食道ならびに大腸および小腸の両方の疾患の治療に蠕動促進剤として有用であり得る。特定の疾患例は、消化不良(例えば、非潰瘍性消化不良)、胃の停滞、消化性潰瘍、逆流性食道炎、鼓腸、胆汁逆流胃炎、偽閉塞症候群、過敏性大腸症候群(慢性便秘および下痢につながり得る)、憩室疾患、胆管運動不全(biliary dysmotility)(オッディ括約筋機能障害および「スラッジ」、または胆嚢の微細な結晶につながり得る)、胃不全麻痺(例えば、糖尿病、術後または特発性)、過敏性腸症候群、および胃排出遅延を含むが、これらに限定されない。該化合物は放射線診断および腸挿管を促進するために短期蠕動促進剤としても使用できる。その上、該化合物は、下痢、特にコレラおよびカルチノイド症候群により誘発される下痢の治療に有用であり得る。
【0106】
本発明の化合物は中枢神経系の疾患治療にも有用であり得る。このような疾患のカテゴリーは、認知障害、精神病、妄想/強迫、および不安/鬱行動を含む。認知障害は、注意欠陥または記憶障害、認知症状態(アルツハイマー型および高齢化の老年性認知症を含む)、脳血管欠損症およびパーキンソン病を含む。該化合物を用いて治療できる精神病は、妄想症、統合失調症および自閉症を含む。該化合物を用いて治療できる妄想/強迫行動は、摂食障害、例えば過食症、食物への異常欲求および持続欲求が存在する状態を含む。
【0107】
典型的な治療可能な不安/鬱状態は、予期神経症(例えば、手術、歯科治療の前など)、鬱病、躁病、季節性情動障害(SAD)、ならびにアヘン剤、ベンゾジアザピン(benzodiazapines)、ニコチン、アルコール、コカイン、および他の乱用薬物などの常習性物質からの離脱により引き起こされる痙攣および不安を含む。
【0108】
本発明の化合物は心血管疾患の治療に有用であり得る。このような疾患は不整脈および高血圧を含む。
【0109】
5−HTアンタゴニストは特定の逆神経伝達を予防し、ならびに/または血管拡張を予防し、故に疼痛の知覚レベルを低減するのに有用であると考えられている。本発明の化合物は、従って、群発頭痛、偏頭痛、三叉神経痛および内臓痛(例えば、管腔臓器の異常な膨張により引き起こされるもの)に関連する疼痛など、疼痛の治療に使用できる。
【0110】
要するに、本発明の実施態様は、嘔吐、胃腸障害、CNS障害、心血管障害または疼痛を含む疾患を示す動物に治療上有効な量の本発明の化合物を投与することにより、このような動物、とりわけヒトを治療する方法である。
治療方法
さらなる実施形態において、本発明は、本明細書に記載する1以上の化合物を投与することにより嘔吐を治療する方法を提供する。該化合物は嘔吐を誘発する事象の直前に投与されることが好ましい(即ち該事象の2時間前以内)。嘔吐は急性期嘔吐(即ち、嘔吐誘発事象の約24時間以内の嘔吐)または遅発性嘔吐(即ち、急性期後だが、嘔吐誘発事象の7、6、5または4日以内の嘔吐)であり得る。嘔吐は、中等度または高度の嘔吐性化学療法からの化学療法誘発性の嘔気嘔吐(「CINV」)、放射線治療誘発性の嘔気嘔吐(「RINV」)、または術後の嘔気嘔吐(「PONV」)を構成し得る。
【0111】
本出願を通して、様々な刊行物が参照される。これらの刊行物の開示は、本出願が関連する技術分野の状態をより十分に説明するために、全体として参照により本出願に組み入れられる。様々な改変および変形が本発明の範囲または精神から逸脱することなく本発明において為され得ることは当業者に明らかである。本発明の他の実施形態は、本明細書に開示される発明の明細および実施の検討から当業者に明白である。該明細および実施例は、下記の特許請求の範囲により示される本発明の真の範囲および精神でもって、単なる例示とみなされることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

の化合物またはその薬学的に許容できる塩もしくはプロドラッグであって、
式中、RおよびRが独立して、H、ヒドロキシル、またはカルボニルであり;ならびに
式中、Rが、
【化2】

である化合物またはその薬学的に許容できる塩もしくはプロドラッグ。
【請求項2】
式II:
【化3】

の化合物またはその薬学的に許容できる塩もしくはプロドラッグ。
【請求項3】
式III:
【化4】

の化合物またはその薬学的に許容できる塩もしくはプロドラッグ。
【請求項4】
式IV:
【化5】

の化合物またはその薬学的に許容できる塩もしくはプロドラッグ。
【請求項5】
式V:
【化6】

の化合物またはその薬学的に許容できる塩もしくはプロドラッグ。
【請求項6】
式VI:
【化7】

の化合物またはその薬学的に許容できる塩もしくはプロドラッグ。
【請求項7】
式VII:
【化8】

の化合物またはその薬学的に許容できる塩もしくはプロドラッグ。
【請求項8】
式VIII:
【化9】

の化合物またはその薬学的に許容できる塩もしくはプロドラッグ。
【請求項9】
式IX:
【化10】

の化合物またはその薬学的に許容できる塩もしくはプロドラッグ。

【公表番号】特表2013−510843(P2013−510843A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538428(P2012−538428)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【国際出願番号】PCT/IB2010/002893
【国際公開番号】WO2011/058427
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(512128449)ヘルシン ヘルスケア ソシエテ アノニム (2)
【Fターム(参考)】