説明

パワーシートスライド装置

【課題】シート位置に適した速度でシートを移動可能とすることにより、シート位置移動の利便性を向上することができるパワーシートスライド装置を提供する。
【解決手段】アッパーレール6には、アッパーレール6側のモータ12にて回転する多段ギヤ28が設けられる。多段ギヤ28は、大径歯車29及び小径歯車30を有する。一方、ロアレール5には、多段ギヤ28の各ギヤと選択的に噛み合う多段ラック37が設けられる。多段ラック37は、小径歯車30と噛み合う第1ラック38と、大径歯車29と噛み合う第2ラック39と、これらラック38,39を繋ぐ継ぎ目ラック40とを有する。小径歯車30と第1ラック38とが噛み合うとき、シートが低速でスライド移動し、大径歯車29と第2ラック39とが噛み合うとき、シートが高速でスライド移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動でシートをスライド移動させることが可能なパワーシートスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートを電動で前後方向にスライド移動させる車両用のパワーシートスライド装置が周知である。パワーシートスライド装置は、車内フロアに設けられたロアレールと、シートの裏面に設けられたアッパーレールとを備え、例えばモータの動力によってアッパーレールをロアレールに沿ってスライド移動させることにより、シートを車体前後方向で位置調整する。この種のパワーシートスライド装置としては、例えば特許文献1〜3の技術が周知である。
【0003】
特許文献1は、モータの回転力を、ラック及びピニオンによってシートの車体前後方向の移動力に変換する技術である。特許文献2は、モータの回転力を、ウォームギヤ機構によってシートの車体前後方向の移動力に変換する技術である。特許文献3は、ロアレールに配索されたワイヤーケーブルを、アッパーレールに設けられた回転ドラムによって巻き取ることにより、アッパーレールが車体前後方向にスライド移動する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平5−84255号公報
【特許文献2】特許第3131394号公報
【特許文献3】特許第4392611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ワンボックス車やミニバン車などの場合、例えば2列目シートに搭載されるロングスライド型のパワーシートスライド装置に望まれることは、乗員の着座位置付近では、位置調整し易い程々のスピードを持ち、3列目シートへの乗降や2列目シート後方の荷室を広げるときには、速いスピードで動くことである。しかし、特許文献1,2は、シートのストローク全域に亘り速度が一定であるので、着座位置付近でのシート速度と着座位置付近外でのシート速度とが同じになり、どちらかの使用性を犠牲にしなければならない問題があった。
【0006】
また、特許文献3は、乗員の着座位置付近において、回転ドラムとモータ駆動機構とをクラッチにより切断し、シート位置調整を手動操作にて行い、着座位置付近外において、ウォークイン作動スイッチをオンにして、手動操作のロック機構解除→クラッチ接続→モータ駆動機構作動を順に実行させ、シートをモータにて自動でスライド移動させる技術である。特許文献3は、乗員の着座付近位置とそれ以外とでシートの移動速度を切り換えることが可能であるが、着座付近での位置調整が手動操作であるので、利便性がよくないという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、シート位置に適した速度でシートを移動可能とすることにより、シート位置移動の利便性を向上することができるパワーシートスライド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記問題点を解決するために、本発明では、シート及びシート取り付け面の一方に形成された第1レール部材が、他方に形成された第2レール部材に対してスライド移動するレールユニットを複数設け、駆動手段の駆動力によって前記第1レール部材及び前記第2レール部材の一方を他方に対してスライド移動させることにより、前記シートの位置を調整するパワーシートスライド装置において、前記第1レール部材及び前記第2レール部材の一方に設けられ、ピッチ径が異なる複数の歯車を有する多段ギヤと、前記第1レール部材及び前記第2レール部材の他方に設けられ、前記多段ギヤの前記歯車と選択的に噛み合う複数のラックを有する多段ラックとを備えた動力伝達機構を備え、当該動力伝達機構は、前記第1レール部材と前記第2レール部材との間の位置に応じて、前記多段ギヤのどの歯車が前記多段ラックのどのラックと噛み合うのかを選択的に変えることにより、前記シートの速度を切り換えることを要旨とする。
【0009】
本発明の構成によれば、シートを電動によりスライド移動させる際の移動速度を動力伝達機構によって切り換え可能としたので、例えばシートが着座領域にある際、シートの移動速度を低速にし、シートが着座不可領域にある際、シートの移動速度を高速にすることが可能となる。このため、シートを電動でスライド移動させる場合に、シートが着座領域に位置するときと、シートが着座不可領域に位置するときとで、シートの移動速度を、それぞれ好適な速度に設定することが可能となる。
【0010】
本発明では、前記多段ギヤは、ピッチ径が各々異なる大径歯車と小径歯車とを備え、前記小径歯車が前記多段ラックの第1ラックに噛み合うと、前記シートの移動速度が低速となり、前記大径歯車が前記多段ラックの第2ラックに噛み合うと、前記シートの移動速度が高速となることを要旨とする。この構成によれば、多段ギヤの大径歯車と小径歯車のピッチ径にてシートの移動速度を切り換えるので、多段ラックの各ラックはラック高さのみ変えるだけでよい。このため、多段ラックの形状が簡素で済む。
【0011】
本発明では、前記多段ラックは、前記多段ギヤの一歯車と噛み合う第1ラックと、前記多段ギヤの他歯車と噛み合う第2ラックと、前記第1ラック及び前記第2ラックを繋ぐ継ぎ目ラックとを備えたことを要旨とする。この構成によれば、多段ギヤの噛み合いが第1ラックと第2ラックとで切り換わるとき、移動速度が変化するので、多段ギヤとラックの歯同士が干渉するが、第1ラックと第2ラックとを繋ぐ継ぎ目ラックにより、速度変化を起因とする歯同士の干渉が低減される。このため、歯車の噛み合いが切り換わるときの動作のスムーズさが確保される。
【0012】
本発明では、前記継ぎ目ラックは、前記第1ラックの1ギヤ歯を形成する第1ギヤ歯と、前記第2ラックの2ギヤ歯を形成する第2ギヤ歯とを備え、前記第1ギヤ歯は、前記第1ラックのギヤ歯よりも歯丈及び歯厚の少なくとも一方が小さく形成され、前記第2ギヤ歯は、前記第2ラックのギヤ歯よりも歯丈及び歯厚の少なくとも一方が小さく形成されていることを要旨とする。この構成によれば、継ぎ目ラックの形状を工夫するという簡素な構成によって、多段ギヤの噛み合いが第1ラックと第2ラックとで切り換わるときのスムーズさを確保することが可能となる。
【0013】
本発明では、前記動力伝達機構は、前記駆動手段の駆動力を減速して前記多段ギヤ及び前記多段ラックの一方に伝達することにより、前記第1レール部材及び第2レール部材の一方を他方に対して移動させる減速手段を備えたことを要旨とする。この構成によれば、仮にパワーシートスライド装置に衝撃が加えられたとしても、その衝撃荷重は減速手段にて吸収することが可能となる。このため、衝撃発生時のシート移動を生じ難くすることが可能となるので、シートに着座する乗員を保護することが可能となる。
【0014】
本発明では、前記シートのスライド位置を検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果を基に、前記駆動手段を制御する制御手段とを備えたことを要旨とする。この構成によれば、検出手段の検出結果を基にシートを種々の態様にて動作させることが可能となるので、例えばシート位置が着座領域にあるか否かを検出して、シートに乗員が着座可能かどうかを判定することが可能となる。
【0015】
本発明では、前記レールユニットは、シート幅方向において一対設けられ、前記動力伝達機構は、一対の前記レールユニットに各々に設けられるとともに、前記シート幅方向において対称配置されていることを要旨とする。この構成によれば、パワーシートスライド装置が駆動手段を中心に左右対称形状をとるので、装置の重量バランス等が確保される。
【0016】
本発明では、前記シート取り付け面に設けられた1つの前記第1レール部材に、車両前後方向に並ぶ複数の前記シートの前記第2レール部材を組み付けることにより、1つの前記第1レール部材を複数の前記第2レール部材にて共用することを要旨とする。この構成によれば、1つの第1レール部材に沿ってフロントシートや2列目シート等がスライド移動するロングスライド型に適用することが可能となるので、可動域が広いこの種のタイプにおいては、シートの移動速度が適宜切り換え可能となれば、利便性確保に一層効果が高くなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、シート位置に適した速度でシートを移動可能とすることにより、シート位置移動の利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一実施形態のパワーシートスライド装置の斜視図。
【図2】ロアレールからアッパーレールを取り外した状態の斜視図。
【図3】図4のII−II線断面図。
【図4】パワーシートスライド装置の平面図。
【図5】パワーシートスライド装置の分解斜視図。
【図6】図4のIII−III線断面図。
【図7】図4のIV−IV線断面図。
【図8】多段ラックを継ぎ目ラックにおいて拡大した斜視図。
【図9】パワーシートスライド装置の電気構成図。
【図10】パワーシートスライド装置の動作遷移図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を車両に具体化したパワーシートスライド装置の一実施形態を図1〜図10に従って説明する。
図1に示すように、例えばワンボックス車やミニバン車等の車両において、車内に設置されたシート(例えば、2列目シート)1は、シート1を電動により車体前後方向(図1のX方向)にスライド移動させるパワーシートスライド装置2を介して車内フロア4に取り付けられている。パワーシートスライド装置2は、乗員の着座位置付近及びそれ以外の領域において、シート1の車体前後方向位置を多段階に設定可能とする。
【0020】
パワーシートスライド装置2には、シート幅方向(図1のY軸方向)に並ぶ一対のレールユニット3,3が設けられている。シート1は、一対のレールユニット3,3にて車内フロア4に支持されている。なお、本例の一対のレールユニット3,3は、図1の紙面手前側を左側レールユニット3aとし、図1の紙面奥側を右側レールユニット3bとする。左側レールユニット3aと右側レールユニット3bは、シート幅方向において対称配置されている。
【0021】
図1〜図3に示すように、各レールユニット3a,3bには、車内フロア4に取り付けられたロアレール5と、シート1の裏面に取り付けられたアッパーレール6とが、レール長手方向(図2のX軸方向)に沿って互いにスライド移動可能に設けられている。ロアレール5は、アッパーレール6の支持側になるので、アッパーレール6よりも長く形成されている。また、レールユニット3a,3bは、1つのロアレール5にフロントシートと2列目シートと3列目シートの各アッパーレール6が組み付けられている。なお、車内フロア4がシート取り付け面に相当し、ロアレール5が第1レール部材に相当し、アッパーレール6が第2レール部材に相当する。
【0022】
図2及び図3に示すように、アッパーレール6の前端及び後端においてレール両側には、ロアレール5に対するスライド移動を案内するローラ7が、アッパーレール6の側壁に突設されたローラ軸8に回動可能に軸支されている。ローラ7は、レール長手方向において左右に並ぶ一対が組をなした両持ち式をとる。本例のローラ7は、左右のアッパーレール6にそれぞれ4つずつ、シート1全体で見た場合、計8つ配置されている。
【0023】
ロアレール5の上面には、ロアレール5の長手方向(図2のX軸方向)に沿って一帯に通し溝9が凹設されている。また、ロアレール5の内部には、通し溝9と連通した空間部10が、通し溝9の両側に一対設けられている。アッパーレール6は、本体部分が通し溝9に通されるとともに、左側のローラ群が空間部10a内に配置され、右側のローラ群が空間部10b内に配置される。アッパーレール6は、ロアレール5に対し、通し溝9に沿ってローラ7がロアレール5の転動壁5b上を回りながら車体前後方向にスライド移動する。
【0024】
アッパーレール6には、ロアレール5との間のガタツキを抑制するシュー11が複数箇所取り付けられている。本例のシュー11は、左右の同じ側にある2つが、レール長手方向に並ぶ2つのローラ7,7の間に配置されるとともに、前側(図2の紙面手前側)が前端のローラ7の近傍に配置され、後側(図2の紙面奥側)が後端のローラ7の近傍に配置されている。シュー11の上部には、レール高さ方向(図2のZ軸方向)のガタツキを抑制する上側摺接片11aが設けられている。上側摺接片11aは、ロアレール5の上壁5dの内面に当接することにより、レール高さ方向のガタツキを吸収する。シュー11の側部には、レール横方向(図2のY軸方向)のガタツキを抑制する外側摺接片11bが設けられている。外側摺接片11bは、ロアレール5の側壁5cの内面に当接することにより、レール横方向のガタツキを吸収する。本例のシュー11は、左右のアッパーレール6にそれぞれ4つずつ、シート1全体で見た場合、計8つ配置されている。
【0025】
図4及び図5に示すように、パワーシートスライド装置2には、シートスライドの動力源となるモータ12が設けられている。モータ12は、モータブラケット13を介してシート1に取り付けられるともに、両側から駆動力を出力できるように両側にモータ軸12aが設けられている。シート幅方向においてモータ12の左右両側には、ギヤ及びラッチの選択的な噛み合いにより、シート1の移動速度を切り換える一対の動力伝達機構14,14が設けられている。動力伝達機構14,14は、左右で取り付け向きを変えることにより、左右において同一部品が使用されている。本例の場合、左右の動力伝達機構14,14は対称構造をとるので、図5では一方(左側)のみ図示する。なお、モータ12が駆動手段に相当する。
【0026】
続いて、動力伝達機構14の構成を説明する。モータ軸12aには、トルクケーブル15を介して駆動部16が連結されている。駆動部16は、モータ12の回転力をアッパーレール6の車体前後方向の直進力に変換するものである。駆動部16には、駆動部16の各種部品を収納するギヤケース17が設けられている。ギヤケース17は、第1ギヤケース17aと第2ギヤケース17bとの2部品からなる。駆動部16は、アッパーレール6に設けられた取付ブラケット18に、複数の締結部(ボルト等)18aによって固定されている。取付ブラケット18は、例えば溶接等によりアッパーレール6の上端に一体固定されている。
【0027】
図5及び図6に示すように、ギヤケース17の内部には、入力の回転力を略90度方向を変えて出力するウォームギヤ機構19が収納されている。ウォームギヤ機構19は、軸心L1(図5のX軸)回りに回動するウォーム20と、このウォーム20と連れ回り可能で、軸心L2(図5のY軸)回りに回動するウォームホイール21とからなる。ウォーム20の両端は、それぞれウォーム軸受22,22にて軸支されている。また、ウォームホイール21の両端は、それぞれスラストワッシャ23,23にて軸支されている。なお、ウォームギヤ機構19が減速手段に相当する。
【0028】
図5に示すように、トルクケーブル15は、アウターケーブル15aとインナーケーブル15bとの2層からなり、アウターケーブル15a内でインナーケーブル15bが回転可能である。インナーケーブル15bの両端には、それぞれ四角状の連結部15c,15cが設けられ、一方がモータ軸12aに取り付け固定され、他方がウォーム20に取り付け固定されている。モータ12が回転すると、トルクケーブル15がモータ12の回転力をウォーム20に伝達し、ウォーム20及びウォームホイール21が回転する。
【0029】
図5及び図6に示すように、ウォームホイール21には、ウォームホイール21と同一軸心回りに一体回動するピニオンギヤ24が、同一軸心位置に取り付け固定されている。図6に示すように、ピニオンギヤ24のギヤ部25は、第2ギヤケース17bの側壁に形成された開口孔17cからケース外に引き出されるとともに、取付ブラケット18の一対の軸受孔26,26に回動可能に枢支されることにより、取付ブラケット18内の収納空間27に配置されている。
【0030】
ピニオンギヤ24のギヤ部25には、複数のギヤを有する多段ギヤ28が一体回動可能に噛合されている。多段ギヤ28は、ピッチ円径の異なる複数(本例は2つ)の歯車(平歯車)29,30を同軸で重ね合わせて一体化したギヤであって、径の大きい側を大径歯車29とし、径の小さい側を小径歯車30とする。
【0031】
図6に示すように、多段ギヤ28は、アッパーレール6に取り付け固定されたギヤ取付部31のギヤシャフト32に、ギヤシャフト32の軸である軸心L3(図6のY軸)回りに回動可能に軸支されている。ギヤシャフト32は、多段ギヤ28の中央位置に形成された軸孔33に相対回動可能に挿通されるとともに、先端がアッパーレール6に貫設された軸孔34に枢支されている。多段ギヤ28は、取り付け状態においてアッパーレール6内の収納空間35に位置する。ギヤ取付部31は、図5に示す複数の締結部(ボルト等)36によって、アッパーレール6の側壁に取り付け固定されている。
【0032】
図5〜図7に示すように、ロアレール5には、多段ギヤ28の各歯車29,30が選択的に噛み合う多段ラック37が設けられている。多段ラック37は、細長い形状に形成されるとともに、ロアレール5の底壁5aに取付固定されている。本例の多段ラック37は、多段ギヤ28の小径歯車30と噛み合い可能な第1ラック38と、多段ギヤ28の大径歯車29と噛み合い可能な第2ラック39と、第1ラック38及び第2ラック39を繋ぐ継ぎ目ラック40とからなる。
【0033】
図5に示すように、これらラック38〜40は、ロアレール5のレール長手方向(図5のX軸方向)に沿って略一列に整列されている。但し、第1ラック38と第2ラック39とは、レール横方向(図5のY軸方向)において重なり合わない、つまりレール横方向においてずれて配置されている。これは、アッパーレール6のスライド位置、つまり多段ギヤ28の回転位置に応じて、第1ラック38を小径歯車30に噛み合わせ、第2ラック39を大径歯車29に噛み合わせるためである。
【0034】
第1ラック38の上面には、小径歯車30と噛み合うギヤ歯38aがラック長手方向(図5のX軸方向)に沿って等間隔に複数形成されている。第1ラック38は、小径歯車30に届くように、第2ラック39よりも高く形成されている。第1ラック38は、例えば金属等の強度の高い材料が使用され、溶接等によってロアレール5に強固に固定されている。第1ラック38は、底面においてラック長手方向に沿い等間隔に複数形成された係止突41,41…を、ロアレール5の底壁5aに複数形成された係止孔42,42…にそれぞれ係止することにより、ロアレール5に対して位置決めされている。
【0035】
第2ラック39の上面には、大径歯車29と噛み合うギヤ歯39aがラック長手方向(図5のX軸方向)に沿って等間隔に複数形成されている。第2ラック39は、大径歯車29と位置が合うように、第1ラック38よりも低く形成されている。第2ラック39も、例えば金属等の強度の高い材料が使用され、溶接等によってロアレール5に強固に固定されている。第2ラック39は、底面においてラック長手方向に沿い等間隔に複数形成された係止突43,43…を、ロアレール5の底壁5aに複数形成された係止孔44,44…にそれぞれ係止することにより、ロアレール5に対して位置決めされている。
【0036】
図7及び図8に示すように、継ぎ目ラック40には、多段ギヤ28の小径歯車30と噛み合い可能な小径歯車用ギヤ歯45と、多段ギヤ28の大径歯車29と噛み合い可能な大径歯車用ギヤ歯46と、小径歯車用ギヤ歯45及び大径歯車用ギヤ歯46を繋げる根元部47とが設けられている。継ぎ目ラック40は、例えば弾性部材(ゴム製)や樹脂部材(エラストマー製)により形成されている。なお、小径歯車用ギヤ歯45が第1ギヤ歯車に相当し、大径歯車用ギヤ歯46が第2ギヤ歯に相当する。
【0037】
小径歯車用ギヤ歯45は、第1ラック38のギヤ歯38aに連続的に並ぶように配置され、図8に示す歯丈H1や歯厚W1が第1ラック38のギヤ歯38aのそれらよりもよりも小さく形成されている。歯丈H1は、レール高さ方向(図8のZ軸方向)におけるラック底面からの歯先までの部材高さである。また、歯厚W1は、レール長手方向(図8のX軸方向)における歯部分の厚みである。大径歯車用ギヤ歯46は、第2ラック39のギヤ歯39aに連続的に並ぶように配置され、歯丈H2や歯厚W2が第2ラック39のギヤ歯39aよりも小さく形成されている。大径歯車用ギヤ歯46は、歯幅W3が第2ラック39のそれよりも大きく形成されている。歯幅W3は、レール横方向(図8のY行く方向)における歯部分の幅である。
【0038】
図7に示すように、継ぎ目ラック40は、底面に突出形成された係止突48を、ロアレール5の底壁5aに形成された係止孔49に係止することにより、ロアレール5に対して位置決めされている。継ぎ目ラック40は、ロアレール5に対し、例えば圧入、接着、ねじ等により取り付け固定されている。
【0039】
図7に示すように、多段ギヤ28は、小径歯車30が第1ラック38と噛み合い状態にある際、モータ12が1回転すると、短い距離(図7の距離M1)をスライド移動する。このため、多段ギヤ28が第1ラック38上を回転するとき、シート1が低速移動し、この低速移動領域がシート1にユーザが着座可能な着座領域となる。シート1が着座領域の際、シートベルト装置の取付金具がバックルに届くようになり、シート1に着座する乗員がシートベルト装着可能となる。
【0040】
また、多段ギヤ28は、大径歯車29が第2ラック39と噛み合い状態にある際、モータ12が1回転すると、長い距離(図7の距離M2)をスライド移動する。このため、多段ギヤ28が第2ラック39上を回転するとき、シート1が高速移動し、この高速移動領域がシート1にユーザが着差不可な着座不可領域となる。着座不可領域では、シートベルト装置の取付金具がバックルに届かず、シートベルトの装着が不可となる。
【0041】
図9に示すように、パワーシートスライド装置2には、パワーシートスライド装置2の動作を制御する制御部50が設けられている。制御部50には、モータ12と、シート1を前進又は後進させる際に操作する操作部51とが接続されている。また、制御部50には、シート1が着座領域に位置することを検出する着座領域検出センサ52と、シート1が着座不可領域に位置することを検出する着座不可領域検出センサ53とが接続されている。着座領域検出センサ52や着座不可領域検出センサ53は、例えば位置センサやリミットセンサ等が使用されている。制御部50には、シート1への人の着座有無を検出する着座センサ54が接続されている。なお、制御部50が制御手段に相当し、センサ52〜54が検出手段を構成する。
【0042】
制御部50は、操作部51においてシート後進の操作がなされたことを検出すると、例えばモータ12を正転することにより、シート1を車両後方にスライド移動させる。また、制御部50は、操作部51においてシート前進の操作がなされたことを検出すると、例えばモータ12を逆転することにより、シート1を車両前方にスライド移動させる。
【0043】
制御部50は、着座領域検出センサ52及び着座不可領域検出センサ53から入力する検出信号を基にシート位置を判定し、シート位置に応じた各種動作を実行する。例えば、制御部50は、シート1が着座領域に位置するとき、着座可能であることを表示部(インジケータ)55等によりユーザに通知する。また、制御部50は、着座センサ54で人の着座を検出するとき、仮にシート1が着座不可領域にあれば、モータ12の通電を行わず、シート1の電動移動を禁止する。
【0044】
次に、本例のパワーシートスライド装置2の動作を、図5及び図10を用いて説明する。
ここで、図10の実線で示すように、シート1が着座不可領域にあり、多段ギヤ28が大径歯車29で第2ラック39と噛み合っている状態のとき、操作部51においてシート後進の操作がなされたとする。このとき、制御部50は、操作部51においてシート後進操作が行われている間、モータ12を正転方向に通電し、シート1の車両後方への移動を実行する。
【0045】
モータ12が正転するとき、モータ12の正転方向の回転力は、トルクケーブル15によって駆動部16のウォーム20に伝達される。このとき、ウォーム20が一方向(図5の矢印A1方向)に回動するとともに、ウォームホイール21及びピニオンギヤ24が一体となって一方向(図10の矢印B1方向)に回転する。なお、ウォームホイール21の回転は、ウォームホイール21によって減速され、ピニオンギヤ24に入力される。ピニオンギヤ24が矢印B1方向に回転すると、ピニオンギヤ24に大径歯車29にて噛み合う多段ギヤ28が、ピニオンギヤ24と反対方向(図10の矢印C1方向)に回転する。
【0046】
シート1が着座不可領域にあるとき、多段ギヤ28は大径歯車29が第2ラック39に噛み合い状態にあるので、多段ギヤ28が矢印C1方向に回転すると、大径歯車29及び第2ラック39から決まる歯車ピッチに準ずる速度、つまり高速で、シート1が車両後方にスライド移動する。よって、シート1が着座不可領域にあるとき、シート1を車両後方に高速でスライド移動させることが可能である。
【0047】
多段ギヤ28が継ぎ目ラック40に到達すると、図10の一点鎖線で示すように、大径歯車29が継ぎ目ラック40の大径歯車用ギヤ歯46に噛み合い、小径歯車30が継ぎ目ラック40の小径歯車用ギヤ歯45に噛み合う状態となる。つまり、多段ギヤ28が第2ラック39から継ぎ目ラック40に噛み合う状態となる。ここで、本例の場合、継ぎ目ラック40を変形し易い材質により形成するとともに、小径歯車用ギヤ歯45及び大径歯車用ギヤ歯46の歯丈H1,H2や歯厚W1,W2を小さく形成したので、多段ギヤ28が第2ラック39から継ぎ目ラック40にスムーズに噛み合い、多段ギヤ28が安定して回転する。
【0048】
そして、継ぎ目ラック40に乗った多段ギヤ28が更に回転すると、図10の二点鎖線で示すように、今度は多段ギヤ28の小径歯車30が第1ラック38に噛み合う状態となる。これ以降、多段ギヤ28が矢印C1方向に回転すると、小径歯車30及び第1ラック38から決まる歯車ピッチに準ずる速度、つまり低速で、シート1が車両後方にスライド移動する。よって、シート1が着座領域にあるとき、シート1が低速移動するので、細かな位置合わせが可能となる。
【0049】
逆に、多段ギヤ28が小径歯車30で第1ラック38と噛み合っている状態のとき、操作部51においてシート前進の操作がなされたとする。このとき、制御部50は、操作部51においてシート前進操作が行われている間、モータ12を逆転方向に通電し、シート1の車両前方への移動を実行する。モータ12が逆転するとき、ウォーム20が他方向(図5の矢印A2方向)に回転するとともに、ウォームホイール21及びピニオンギヤ24が一体となって他方向(図10の矢印B2方向)に回転する。ピニオンギヤ24が矢印B2方向に回転すると、ピニオンギヤ24に小径歯車30にて噛み合う多段ギヤ28が、ピニオンギヤ24と反対方向(図10の矢印C2方向)に回転する。
【0050】
シート1が着座領域にあるとき、多段ギヤ28は小径歯車30が第1ラック38に噛み合う状態にあるので、シート1が低速で車両前方にスライド移動する。そして、多段ギヤ28が継ぎ目ラック40にてスムーズに第2ラック39と噛み合い、以降、多段ギヤ28は大径歯車29が第2ラック39に噛み合う状態となり、シート1が高速で車両前方にスライド移動する。
【0051】
以上により、本例においては、アッパーレール6に多段ギヤ28を設けて、これをアッパーレール6側のモータ12にて回動可能とし、更に、ロアレール5に多段ラック37を設け、シート1のスライド位置に応じて、多段ギヤ28の大径歯車29及び小径歯車30の一方を、多段ラック37の第1ラック38及び第2ラック39の一方に選択的に噛み合うようにする。このため、シート1のスライド移動の速度は、小径歯車30と第1ラック38とが噛み合うとき、小径歯車30のピッチ径に応じた速度となり、大径歯車29と第2ラック39とが噛み合うとき、大径歯車29のピッチ径に応じた速度となる。
【0052】
よって、小径歯車30と第1ラック38とが噛み合う領域、つまり着座領域では、シート1の移動速度が低速となるので、シート1を電動でスライド移動させる場合であっても、シート1の位置調整のし易さが確保される。また、大径歯車29と第2ラック39とが噛み合う領域、つまり着座不可領域では、シート1の移動速度が高速となるので、例えばウォークイン時や荷室範囲確保時に、シート移動を短い時間で行うことが可能となる。従って、シート1を電動式とした場合であっても、着座領域と着座不可領域とでシート1の移動速度を変えることが可能となるので、シート1の位置調整の際の利便性が確保される。
【0053】
また、多段ギヤ28が小径歯車30にて第1ラック38と噛み合うとき、入力荷重は小径歯車30で減速される。このため、着座領域においてシート1に乗員が着座していても、その重さによらず、シート1をスムーズにスライド移動させることが可能となる。また、仮に車両が衝突した場合であっても、このとき入力する衝撃荷重(慣性荷重)は小径歯車30にて減じられて駆動部16に入力されるので、駆動部16を強度の高い部品にしなくとも、その衝撃荷重に耐えることが可能となる。さらに、駆動部16にウォームギヤ機構19を用いたので、車両衝突時に入力される衝撃荷重は、ウォームギヤ機構19のセルフロック機能にて吸収される。このため、乗員が着座するシートが衝突時において移動してしまう状況が生じ難くなる。
【0054】
一方、多段ギヤ28が大径歯車29にて第2ラック39と噛み合うとき、入力荷重は減速されずにそのまま出力されることになるが、この範囲は着座不可領域であるので、シート1をモータ12で移動させるとき、シート1の重量のみが関係する。このため、シート1を移動させる負荷が小さく済むので、駆動部16を大型化することなく、シート1のスライド移動が可能となる。さらに、車両が衝突した際、シート1が着座不可領域にあれば、衝突荷重はシート1のみ関係するので、通常の駆動部16で充分に支持することが可能である。
【0055】
ところで、第1ラック38と第2ラック39の継ぎ目部分は、噛み合う多段ギヤ28の歯車の切り換わりによって速度が変わるので、ギヤ歯とラック歯とが干渉し、スムーズな移動に支障を来す可能性がある。そこで、本例の場合、この継ぎ目部分に継ぎ目ラック40を設けたので、ギヤ歯とラック歯との干渉が少なくなる。このため、多段ギヤ28において多段ラック37と噛み合う歯車が切り換わるとき、継ぎ目ラック40にて歯同士の干渉が低減されるので、シート1のスムーズなスライド移動を確保することが可能となる。
【0056】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)シート1の電動によるスライド移動の速度を、多段ギヤ28及び多段ラック37によって切り換え可能としたので、シート1が着座領域にある際、シート1の移動速度を低速にし、シート1が着座不可領域にある際、シート1の移動速度を高速に設定することができる。このため、シート1を電動でスライド移動させる場合に、シート1が着座領域に位置するときと、シート1が着座不可領域に位置するときとで、シート1の移動速度を、それぞれ好適な速度に設定することができる。また、着座領域におけるシート1の位置調整も電動で行うことが可能となるので、シート1の位置調節を楽に行うことができる。
【0057】
(2)シート1を着座領域において低速にしたとき、入力荷重が多段ギヤ28の小径歯車30によって減速されるので、シート1に乗員が着座して重量が重くなっても、問題なくシート1をモータ12によってスライド移動させることができる。また、シート1に乗員が着座するとき、車両が衝突するなどして衝撃が発生しても、この衝撃荷重が小径歯車30にて減じられて駆動部16に入力される。このため、駆動部16を強度の高い部品として製造する必要がないので、構造の簡素化や部品低コスト化に効果が高くなる。
【0058】
(3)シート1が着座不可領域のとき、多段ギヤ28は大径歯車29にて第2ラック39と噛み合うので、入力荷重が減速されることはないが、着座負荷領域ではシート1に人は座らずシート1の重量のみが関係するので、シート1を移動させる際の負荷は小さく済む。このため、駆動部16を大型化させずに済み、部品コスト低減に効果が高くなる。
【0059】
(4)多段ギヤ28にピッチ径が各々異なる大径歯車29及び小径歯車30を設け、小径歯車30と第1ラック38とが噛み合うのか、又は大径歯車29と第2ラック39とが噛み合うのかを、モータ12の回転に応じて変えることにより、シート1の移動速度を切り換える。このため、多段ラック37の各ラック38,39は、ラック高さのみ変えるだけで、歯形状を同一とすることが可能となる。よって、多段ラック37の形状が簡素で済む。
【0060】
(5)第1ラック38と第2ラック39との間を、歯丈H1,H2や歯厚W1,W2が小さく変形し易い材質からなる継ぎ目ラック40により連結したので、多段ギヤ28の噛み合いが第1ラック38と第2ラック39とで切り換わるとき、シート1の移動速度が変化しても、多段ギヤ28と多段ラック37との間の歯同士の干渉を軽減することができる。このため、多段ギヤ28のギヤが切り換わるときの動作のスムーズさを確保することができる。
【0061】
(6)モータ12は、セルフロック機能を持つウォームギヤ機構19を介してピニオンギヤ24及び多段ギヤ28に連結される。このため、仮に車両が衝突するなどしてパワーシートスライド装置2に衝撃が加えられたとしても、その衝撃荷重がウォームギヤ機構19のセルフロック機能によって吸収される。よって、衝突発生時のシート移動を生じ難くすることが可能となるので、シート1に着座する乗員を保護することができる。
【0062】
(7)着座領域検出センサ52や着座不可領域検出センサ53や着座センサ54を設け、これらのセンサ出力を基に、パワーシートスライド装置2の動作を制御可能とした。このため、例えばシート位置が着座領域にあるか否かを検出してシート1に乗員が着座可能かどうかを判定したり、シート1が着座不可領域にあるときに着座を検出するとシート1の移動を禁止したりする動作を実施することができる。
【0063】
(8)モータ12を中心に動力伝達機構14,14が左右対称に配置されるので、パワーシートスライド装置2の重量バランスがよくなる。
(9)継ぎ目ラック40は、第1ラック38の1ギヤ歯を形成する小径歯車用ギヤ歯45と、第2ラック39の1ギヤ歯を形成する大径歯車用ギヤ歯46とを有し、かつ変形し易い材料により形成する。このため、継ぎ目ラック40の形状を工夫し、かつ継ぎ目ラック40を変形し易い材料とするという簡素な構成によって、多段ギヤ28の噛み合いが第1ラック38と第2ラック39とで切り換わるときのスムーズさを確保することができる。
【0064】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限定されず、以下の態様に変更してもよい。
・多段ギヤ28は、大径歯車29と小径歯車30が同一軸心上に一体に組み付けられた部品に限定されない。例えば、大径歯車29と小径歯車30とが別々の部品となっており、これがベルトによって連結され、モータ12により同期回転してもよい。
【0065】
・多段ギヤ28をロアレール5側に配置し、多段ラック37をアッパーレール6側に配置してもよい。
・アッパーレール6がシート1に取り付けられ、ロアレール5が車内フロア4に取り付けられることに限らず、これを逆にしてもよい。
【0066】
・1つのロアレール5が複数のアッパーレール6で共用されることに限定されない。例えば、ロアレール5及びアッパーレール6は、各々が1つずつ組となっていてもよい。
・レールユニット3は、左右に一対設けられることに限定されず、例えば3つ以上設けてもよい。
【0067】
・ローラ7やシュー11の配置位置や個数は、適宜変更可能である。
・駆動手段は、モータ12に限らず、例えばシリンダ等の他のアクチュエータを使用可能である。
【0068】
・検出手段は、着座領域検出センサ52、着座不可領域検出センサ53、着座センサ54に限定されず、シート1の使用状態を見ることができれば、他のセンサに変更可能である。
【0069】
・減速手段は、ウォームギヤ機構19に限定されず、他の種類のギヤに変更可能である。
・継ぎ目ラック40は、実施形態の部材に限定されず、例えば単なる板ばねなどの他の部材を使用可能である。
【0070】
・動力伝達機構14のギヤ数は、2段に限定されず、3段以上としてもよい。
・パワーシートスライド装置2は、モータ12を中心に動力伝達機構14,14が左右対称の配置形状をとることに限定されず、左右非対称でもよい。
【0071】
・シート取り付け面は、車内フロア4に限定されず、他の場所でもよい。
・歯車のピッチ径が異なるとは、歯車の歯数が異なることに限定されない。例えば、歯車のピッチ径が異なるとは、仮に歯車の歯数が同じであっても、歯車のモジュールが異なることとしてもよい。即ち、歯車の直径が異なっていればよい。
【0072】
・パワーシートスライド装置2は、車両に搭載されることに限定されず、他の機器や装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0073】
1…シート、2…パワーシートスライド装置、3(3a,3b)…レールユニット、4…シート取り付け面としての車内フロア、5…第1レール部材としてのロアレール、6…第2レール部材としてのアッパーレール、12…駆動手段としてのモータ、14…動力伝達機構、19…減速手段としてのウォームギヤ機構、28…多段ギヤ、29…歯車(一歯車)を構成する大径歯車、30…歯車(他歯車)を構成する小径歯車、37…多段ラック、38…ラックを構成する第1ラック、38a…ギヤ歯、39…ラックを構成する第2ラック、39a…ギヤ歯、40…ラックを構成する継ぎ目ラック、45…第1ギヤ歯としての小径歯車用ギヤ歯、46…第2ギヤ歯としての大径歯車用ギヤ歯、50…制御手段としての制御部、52…検出手段を構成する着座領域検出センサ、53…検出手段を構成する着座不可領域検出センサ、54…検出手段を構成する着座センサ、H1,H2…歯丈、W1,W2…歯厚。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート及びシート取り付け面の一方に形成された第1レール部材が、他方に形成された第2レール部材に対してスライド移動するレールユニットを複数設け、駆動手段の駆動力によって前記第1レール部材及び前記第2レール部材の一方を他方に対してスライド移動させることにより、前記シートの位置を調整するパワーシートスライド装置において、
前記第1レール部材及び前記第2レール部材の一方に設けられ、ピッチ径が異なる複数の歯車を有する多段ギヤと、前記第1レール部材及び前記第2レール部材の他方に設けられ、前記多段ギヤの前記歯車と選択的に噛み合う複数のラックを有する多段ラックとを備えた動力伝達機構を備え、
当該動力伝達機構は、前記第1レール部材と前記第2レール部材との間の位置に応じて、前記多段ギヤのどの歯車が前記多段ラックのどのラックと噛み合うのかを選択的に変えることにより、前記シートの速度を切り換える
ことを特徴とするパワーシートスライド装置。
【請求項2】
前記多段ギヤは、ピッチ径が各々異なる大径歯車と小径歯車とを備え、前記小径歯車が前記多段ラックの第1ラックに噛み合うと、前記シートの移動速度が低速となり、前記大径歯車が前記多段ラックの第2ラックに噛み合うと、前記シートの移動速度が高速となる
ことを特徴とする請求項1に記載のパワーシートスライド装置。
【請求項3】
前記多段ラックは、
前記多段ギヤの一歯車と噛み合う第1ラックと、
前記多段ギヤの他歯車と噛み合う第2ラックと、
前記第1ラック及び前記第2ラックを繋ぐ継ぎ目ラックと
を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のパワーシートスライド装置。
【請求項4】
前記継ぎ目ラックは、前記第1ラックの1ギヤ歯を形成する第1ギヤ歯と、前記第2ラックの2ギヤ歯を形成する第2ギヤ歯とを備え、
前記第1ギヤ歯は、前記第1ラックのギヤ歯よりも歯丈及び歯厚の少なくとも一方が小さく形成され、前記第2ギヤ歯は、前記第2ラックのギヤ歯よりも歯丈及び歯厚の少なくとも一方が小さく形成されている
ことを特徴とする請求項3に記載のパワーシートスライド装置。
【請求項5】
前記動力伝達機構は、前記駆動手段の駆動力を減速して前記多段ギヤ及び前記多段ラックの一方に伝達することにより、前記第1レール部材及び第2レール部材の一方を他方に対して移動させる減速手段を備えた
ことを特徴とすることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一項に記載のパワーシートスライド装置。
【請求項6】
前記シートのスライド位置を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果を基に、前記駆動手段を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか一項に記載のパワーシートスライド装置。
【請求項7】
前記レールユニットは、シート幅方向において一対設けられ、
前記動力伝達機構は、一対の前記レールユニットに各々に設けられるとともに、前記シート幅方向において対称配置されている
ことを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか一項に記載のパワーシートスライド装置。
【請求項8】
前記シート取り付け面に設けられた1つの前記第1レール部材に、車両前後方向に並ぶ複数の前記シートの前記第2レール部材を組み付けることにより、1つの前記第1レール部材を複数の前記第2レール部材にて共用する
ことを特徴とする請求項1〜7のうちいずれか一項に記載のパワーシートスライド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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