説明

パーキンソン病治療のためのアッセイおよびそこにおいて有用な酵素的に活性のあるParkin調製物

本発明は、パーキンソン病の処置のために有用な作用物についてのアッセイを提供する。プロテアソーム機能に及ぼすParkinタンパク質の効果を調節する作用物についての細胞に基づくアッセイが含まれる。また本発明は、原核生物発現系、例えば、大腸菌細胞において生産される組み換え、酵素的に活性のある、Parkinタンパク質を提供する。Parkinタンパク質の精製方法もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年12月12日提出の米国暫定出願第60/749,964号の利益を請求するものであり、これの完全な内容は引用によって本明細書に組み入れられている。
【0002】
本発明は、パーキンソン病の処置のために有用な作用物についてのアッセイ、ならびにアッセイにおいて有用な組み換えParkinタンパク質に関する。本発明は、タンパク質精製、薬物発見および医薬の分野における応用を見出だす。
【背景技術】
【0003】
パーキンソン病(PD)は、黒質のドーパミンニューロンの喪失として神経病理学的に特徴付けられる神経学的障害である。このニューロン喪失は、運動緩徐、硬直および/または振せんのような運動における変調として臨床的に現れる(非特許文献1)。ヒトの遺伝データの分析は、PDの発生に結び付けられる遺伝子を特性決定するために使用されてきた。これらの遺伝子の1つは、1群の若年到来の患者を使用して染色体6に位置決定され、そしてParkinタンパク質として具体的に同定された(非特許文献2)。Parkinタンパク質は、ユビキチン−プロテアソーム系(UPS)において機能するE3リガーゼタンパク質であることが分かった(非特許文献3)。UPSは、分解のためのタンパク質の標的化除去に伴われる主要な細胞経路であり、そしてE3リガーゼは、細胞プロテアソーム(非特許文献4)またはリソソーム(非特許文献5)による分解のために基質を同定し、標識するために機能する。
【0004】
パーキンソン病を処置するための新規方法に対する切迫したニーズが存在する。本発明は、PD療法のため、ならびに他の用途のための作用物を同定および/または評価するために有用である方法および材料を提供する。
【非特許文献1】Gelb et al.,1999,Arch.Neurol.56:33−39
【非特許文献2】Kitada et al.,1998,Nature 392:605−608
【非特許文献3】Shimura,2000,Nature Genetics 25:302−305
【非特許文献4】Hereshko and Cienchanover,1998,Ann.Rev.Biochem.67:425−479
【非特許文献5】Hicke,1999,Trends in Cell Biology 9:107−112
【発明の開示】
【0005】
1つの態様では、本発明は、パーキンソン病(PD)の処置のために有用な化合物の同定、または化合物のスクリーニングのためのアッセイを提供する。1つの態様では、本発明は、(a)Parkinを発現する哺乳動物細胞を試験作用物に対して曝露し;そして(b)その細胞におけるプロテアソーム機能を、試験化合物に曝露されなかったParkinを発現する対応する哺乳動物細胞のプロテアソーム機能特性と比較すること;を含み、ここで、試験作用物に曝露された細胞におけるプロテアソーム機能の増大されたレベルが、その作用物がパーキンソン病の処置のための候補化合物であることを指示する、パーキンソン病の処置のための候補化合物を同定するための細胞に基づくアッセイを提供する。
【0006】
関連態様では、本発明は、(a)Parkinを発現する哺乳動物細胞を得て;(b)細胞を試験作用物に対して曝露し;そして(c)その細胞におけるプロテアソーム機能を、試験作用物に曝露されなかった細胞におけるプロテアソーム機能と比較すること;を含み、ここで、試験作用物に曝露された細胞におけるプロテアソーム機能の増大されたレベルが、その作用物がパーキンソン病の処置のための候補化合物であることを指示する、パーキンソン病の処置のための候補化合物を同定するための細胞に基づくアッセイを提供する。
【0007】
種々の方法がプロテアソーム機能を測定または検査するために使用することができる。1つの実施態様では、哺乳動物細胞はGFPuを発現し、そしてプロテアソーム機能は細胞におけるGFPuの量を測定することによって測定される。1つの実施態様では、細胞におけるGFPuの量はGFPu蛍光を測定することによって決定される。
【0008】
若干の場合には、また、細胞に基づくスクリーニング方法は、(i)変異Parkinを発現する哺乳動物細胞を候補化合物に対して曝露し;そして(ii)その細胞におけるプロテアソーム機能を、候補化合物に曝露されなかった変異Parkinを発現する細胞のプロテアソーム機能特性と比較すること;を含む、プロテアソーム機能アッセイを含む。
【0009】
若干の場合には、また、細胞に基づくスクリーニング方法は、(i)その他のタンパク質、例えばHuntingtinを発現する哺乳動物細胞を候補化合物に対して曝露し;そして(ii)その細胞におけるプロテアソーム機能を、候補化合物に曝露されなかった他のタンパク質を発現する細胞のプロテアソーム機能特性と比較すること;を含む、プロテアソーム機能アッセイを含む。
【0010】
若干の場合には、また、細胞に基づくスクリーニング方法は、(i)化合物の存在下で、精製Parkinタンパク質のオートユビキチネーション(autoubiquitination)活性を測定し;そして(ii)化合物の存在下での精製Parkinタンパク質のオートユビキチネーション活性を、化合物の不在下での精製Parkinタンパク質のオートユビキチネーション活性と比較すること;を含む、インビトロの活性アッセイを含む。
【0011】
若干の場合には、また、細胞に基づくスクリーニング方法は、(i)化合物を精製Parkinタンパク質と接触させ;そして(ii)存在する場合には、化合物とParkinタンパク質の結合を検出すること;を含む、インビトロの活性結合アッセイを含む。
【0012】
その他の態様では、本発明は精製Parkinタンパク質およびそのようなタンパク質を得る方法を提供する。1つの態様では、本発明は、(a)グアニジンHClの存在下で封入体を破壊し、そしてヒスチジン・タグされたParkinを含有する可溶性画分を回収し;(b)ヒスチジン・タグParkinのアフィニティークロマトグラフィーによってヒスチジン・タグParkinを精製し、ここで、クロマトグラフィーは、グアニジウム(guanidium)を含む溶液により結合タンパク質を溶出して、ヒスチジン・タグParkinとグアニジウムを含有する組成物を生成することを含み;(c)ヒスチジン・タグParkinとグアニジウムを含有する組成物を、高濃度のアルギニンと還元剤を含有する緩衝水溶液に対して透析して、第1の透析物を生成し;そして(d)アルギニンを実質的に含まない緩衝水溶液に対して第1の透析物を透析すること;によって、Parkinを発現する細菌細胞の封入体からヒスチジン・タグされたParkinを精製する方法を提供する。本方法の1つの実施態様では、塩酸グアニジンは場合によっては2M〜6Mの濃度で使用される。本方法の1つの実施態様では、イソチオシアン酸グアニジニ
ウムが使用される。本方法の若干の実施態様では、還元剤はβ−メルカプトエタノール、DTTまたはTCEPである。本方法の若干の実施態様では、緩衝水溶液中の高濃度のアルギニンは約0.1M〜1Mアルギニンである。本方法の若干の実施態様では、アルギニンを実質的に含まない緩衝水溶液は0.5mM未満のアルギニン、例えば0.1mM未満のアルギニンを含有する。
【0013】
1つの実施態様では、溶出溶液は、50mM HEPES,pH8.0、5.5M GuHCl、500mMイミダゾール、10mM β−ME、0.5mM EDTAであり;(c)における緩衝水溶液は、0.4Mアルギニン、50mM HEPES,pH8.0、10mM DTTであり;そして(d)における緩衝水溶液は、50mM HEPES,pH8.0、0.2M NaCl、10mM DTTである。
【0014】
ある態様では、本発明は、大腸菌E.coli)のような細菌の発現系からの精製組み換えParkinを提供する。1つの態様では、本発明は、ヒスチジン・タグを含んでなる酵素的に活性のある精製組み換えParkinを提供する。1つの態様では、本発明は、細菌発現系から得られる酵素的に活性のあるParkinを提供する。Parkin活性は、Parkinの酵素活性および/または生物学的機能を測定するすべてのアッセイを使用して例証することができる。細菌発現系から得られる酵素的に活性のあるParkinはヒスチジン・タグを含んでもよい。
【0015】
ある態様では、本発明は、高い比活性、例えば、少なくとも約0.1単位(U)、少なくとも約0.2U、少なくとも約0.25Uまたは少なくとも約1U/0.5μgParkinタンパク質を有する細菌発現系から得られる酵素的に活性のあるParkinを提供する(ここで、1単位は、ヒトGST−E1、UbcH7、ユビキチンおよびMg−ATPの存在下で15分間に50ngのユビキチンをParkinに転移する能力として定義されるか、あるいは同等には、1/4単位は、30分間に25ngのユビキチンをParkinに転移する能力である)。細菌発現系から得られる酵素的に活性のあるParkinはヒスチジン・タグを含んでもよい。
【0016】
I.序論
遺伝データは、ヒトにおいて、Parkinタンパク質の喪失が、黒質におけるドーパミン作動性ニューロンの進行性喪失と、最後にはパーキンソン病(「PD」)をもたらすことを確立した。ドーパミン作動性ニューロンにおける関連Parkin活性は、そのE3ユビキチンリガーゼ活性であると考えられる。本発明は、Parkinが活性コンホメーションを達成または維持するのを助けることができる治療学的作用物、例えば低分子を使用してParkinリガーゼ活性を回復または増大するための治療学的アプローチを意図している。1つの態様では、本発明は、パーキンソン病を処置するために有用な作用物の同定方法に関する。これらの方法は細胞に基づくおよびタンパク質に基づくアッセイを含む。
【0017】
その他の態様では、本発明は、組み換え細菌細胞において発現された酵素的に活性のあるParkinの精製方法を提供する。関連態様では、本発明はこれらの方法を使用して精製されるParkinを提供する。組み換えParkinは、本発明のスクリーニングアッセイにおいて、ならびに他の応用(例えば、Elisaアッセイのためのスタンダードを確立するため、モノクローナル抗体を生成するための免疫原としての用途、および科学者および医学者にとっては明らかであろう他の用途のために)のために使用されてもよい。
【0018】
本発明のこれらおよび他の態様が、以下において、より詳細に議論される。
【0019】
II.定義
用語「Parkin」および「Parkinタンパク質」は、互換性をもって使用され、そして野生型Parkinまたは変異Parkinを指す。
【0020】
「野生型Parkin」は、配列番号:2の配列を有するヒトParkinまたは配列番号:4の配列を有するマウスParkinを指す。また野生型Parkinは、Parkinのリガーゼ活性に影響を与えず、かつ細胞において発現された場合異なる表現型を与えない突然変異を有するParkin改変体(variant)を指してもよい。Parkinおよび他のタンパク質をコードしている核酸およびタンパク質の配列は、読者の便宜のために提供され、そしてまた科学文献において見出だすことができる。しかしながら、本発明の実行は、特定の配列提供物に限定されるものではない。改変体がまた提供される配列の代わりに使用されてもよいことは評価できる。
【0021】
「Parkin変異体」または「変異Parkin」は、1個以上の残基の置換、挿入または欠失によって配列番号:2から誘導され、そして野生型Parkinによって与えられるものとは異なる活性を有するか、または異なる表現型を与える配列をもつParkinタンパク質を指す。Parkin変異体に関する場合、慣用の命名法が使用される。例えば、R275W変異体は位置275におけるアルギニン(R)の代わりにトリプトファン(W)の置換を有する。一般に、「Parkin変異体」は、例えば、R42P、S167N、C212Y、T240M、R275W、C289GおよびP437Lを含む、天然に存在する変異タンパク質を指す。
【0022】
本明細書で使用されるように、「パーキンソン病を処置するために有用な作用物」または「パーキンソン病を処置するための候補化合物」に関しては、パーキンソン病を有する患者のために治療的または予防的利益を表す他の化合物よりも良好であろうとして同定された化合物、すなわち薬物候補を指す。薬物候補が患者に投与される前にさらなる試験(例えば、動物におけるインビボ試験)を受けてもよいことは、薬物発見の方法に親しい者によっては理解することができる。また、治療学的作用物が薬物候補の誘導体または化学的に改変された形態物であってもよいことは理解できる。
【0023】
III.パーキンソン病を処置するために有用な作用物の同定
細胞における野生型Parkinの過発現がプロテアソーム活性を阻害し、そしてParkinタンパク質の大きい不溶性封入体(inclusions)の沈着をもらすことが発見された(参照、下記実施例)。脳組織の分析は、PD患者では、Parkinレベルが健康な脳組織に較べて上昇され、そして不溶性画分において富有化されるように見えることを示した。参照、実施例5。特定のメカニズムに捕らわないことを意図すれば、実施例において記述された実験に一部基づいて、野生型Parkinタンパク質はミスフォールディング(misfolding)を起こしがちであり、ミスフォールドされたParkinの蓄積は、(1)プロテアソーム活性の損傷、(2)Parkinおよび他の細胞タンパク質を含有するaggresomeの生成、(3)細胞の罹病および(4)Parkin活性の喪失をもたらすことが信じられる。Parkin活性の喪失は、PDをもたらす直接的メカニズムであり(Kitada et al.,1998,Nature 392:605−608)、そしてこの研究において記述された点突然変異がまた、疾病をもたらすParkinの機能の喪失に関係しているのであろう(Foroud et al.,2003,Ann.Neurology 60:796−801)。
【0024】
さらに、Parkinを安定化する(すなわち、過発現された場合でも活性のある形態においてParkinを維持する)か、あるいはミスフォールドされたParkinの適当なフォールディングを誘導する作用物が、パーキンソン病の処置のための有用な治療学的作用物であることが発見された。本発明は、なかんずく、この発見に一部基づく薬物ス
クリーニングアッセイを提供する。
【0025】
本発明は、そのような治療学的作用物のための、細胞に基づくおよびタンパク質に基づく両アッセイを提供する。
【0026】
A.細胞に基づくアッセイ
実施例1〜3に記述されるように、野生型Parkinが過発現される細胞では、aggresome(または「Parkin封入体」)が形成され、そしてプロテアソーム活性が減少される。培養におけるHEK293細胞では、Parkinタンパク質が低レベルで内因的に発現される。この内因性の発現レベルにおいては、タンパク質はその正常なリガーゼ活性の遂行による外には、プロテアソーム経路には検出可能には影響を与えない。しかしながら、Parkinタンパク質が、異種のプロモーターによって作動されるcDNAから組み換え技術によって発現される(すなわち、正常な内因性発現に比較して、細胞において高レベルに発現される)場合には、少なくとも若干のParkinタンパク質はミスフォールドされ、かつ/または不溶性になり、プロテアソーム機能を妨害する。また、Parkinの発現レベルの高い発現のプロテアソーム抑制特性は、正常な発現条件下でははるかに低い、検出不可能なレベルで起きている可能性もある。脳細胞における不溶性画分としてのミスフォールドされたParkinタンパク質の徐々の蓄積が長期間(例えば、40〜80年)にわたって起きて病気をもたらすかも知れない。
【0027】
この発見に一部基づいて、本発明は、パーキンソン病の処置のための候補化合物を同定する細胞に基づくアッセイを提供する。本発明の1つのアッセイでは、Parkinを安定化するか、または適当なフォールディングを誘導する作用物は、細胞におけるaggresome形成および/またはプロテアソーム機能に及ぼす作用物の効果によって同定することができる。
【0028】
1つの実施態様では、本アッセイは、(a)Parkinを発現する哺乳動物細胞を得て;(b)細胞を試験作用物に対して曝露し;そして(c)試験作用物に曝露された細胞におけるプロテアソーム機能を、試験化合物に曝露されなかった類似の(対照)細胞におけるプロテアソーム機能と比較すること;によるパーキンソン病の処置のための候補化合物のスクリーニングを含む。対照細胞に較べて試験作用物に曝露された細胞におけるプロテアソーム機能の増大されたレベルは、その作用物がパーキンソン病の処置のための候補化合物であることを指示する。代表的なアッセイは実施例6において記述される。
【0029】
以下において、より詳細に記述されるように、このアッセイの種々の実施態様では、使用される細胞は野生型Parkinまたは変異Parkinを発現してもよい。好ましくは、発現のレベルは、アッセイにおいて使用される特定の細胞の正常なレベルよりも高い。組み換えParkinが安定にまたは一過性にトランスフェクトされた細胞において発現される場合に、発現レベルは、正常な細胞よりも必然的に常に高いであろう。このことは、細胞におけるParkinの内因性レベルは低く、そしてParkin発現が異種の(誘導性または構成性)プロモーターによって作動される組み換え発現は比較的に高いためである。トランスフェクトされたか、またはトランスフェクトされなかった細胞におけるParkin発現のレベルは日常的な方法(例えば、免疫染色)を使用して測定することができる。
【0030】
A.1 プロテアソーム機能アッセイ
細胞におけるプロテアソーム機能に及ぼす作用物の効果は、プロテアソーム機能のすべてのアッセイを使用して検査することができる。主なプロテアソーム機能は細胞内タンパク質の分解である。このアッセイの1つの実施態様では、Parkinは、レポーター−デグロン(degron)融合タンパク質をまた発現する細胞において発現され、そして
レポーターはプロテアソーム活性を測定するために使用される。融合タンパク質は、タンパク質のC末端(またはN末端)に付加された分解シグナル(「デグロン(degron)」)をもつ検出可能なポリペプチド配列を含む。具体的な説明のためには、そして限定されるものではないが、代表的なデグロン配列は、配列番号:9として提供される。分解シグナルは、ポリペプチドが分解されるプロテアソームに対してポリペプチドを標的化させるのに役立つ。プロテアソームの活性が損傷される場合、細胞におけるポリペプチドのレベルは、ポリペプチドが正常に機能するプロテアソームによって分解される細胞に較べて増大する。タンパク質レベルにおける増大は種々の方法において検出することができる。
【0031】
1つの実施態様では、プロテアソーム機能はGFPuレポーター系を用いて細胞においてアッセイされる。GFPuレポーター系では、タンパク質のC末端に付加された分解シグナルをもつ緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現する細胞が使用される(参照、Bence et al.,2001,Science 1552−55;Gilon et al.,1998,EMBO Journal 17:2759−66;配列番号:6および9)。先に説明されたように、プロテアソームの活性が損傷される場合、細胞におけるGFPのレベルが増大する。GFPレベルにおける増大は、生存細胞または細胞抽出物におけるGFP蛍光レベルを測定すること、および/またはELISA、イムノブロッティングなどによるGFUタンパク質のレベルを測定することを含む、種々の方法において検出することができる。
【0032】
他の類似するレポーター系が使用されてもよく、この系では、例えば、GFP以外のレポータータンパク質が使用され、そして/または異なるデグロンが使用される。参照、例えば、Dantuma et al.,2000,Nature Biotechnology 18:538−543。赤色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質(例えば、Living ColorTM Fluorescent Protein,Clontech,Mountain View,CA)、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼなどのようなレポータータンパク質を含む、種々の他のタンパク質が使用されてもよい。あるいはまた、活性(例えば、測定できる酵素活性)、抗原性(例えば、免疫学的に検出可能な)、放射能、化学発光または蛍光標識、または類似するものによって検出可能なすべてのポリペプチド配列。デグロンは当該技術分野において既知である(参照、例えば、Gilon et al.,1998,EMBO Journal 17:2759−66;Sheng et al.,2002,EMBO J.21:6061−71:Levyet al.,1999,Eur.J.Biochem.259:244−52;およびSuzuki and Varshavsky,1999,EMBO J.18:6017−26)。
【0033】
1つのバージョン(「基本アッセイ」)では、本発明の細胞に基づくアッセイは、(a)野生型Parkinをコードしている発現ベクターによりGFPu発現細胞を一過性にトランスフェクトし、(b)トランスフェクトされた細胞の一部を試験作用物と接触させ、そして(c)GFPuタンパク質の分解速度が増大され、そしてGFPuレベルが試験作用物と接触されなかった対照細胞に較べて試験作用物と接触された細胞において低下されたか否かを決定することを伴う。GFPuレベルを低下させる作用物は、さらなる分析および治療学的用途のための候補物である。GFPuレベルを減少させる少なくともいくつかの作用物は、Parkin構造を安定化して、ミスフォールドされたParkinの量を低下させることによって、そのようにすることが期待される。
【0034】
GFPuレポーターを発現する細胞系はATCCから入手できる(例えば、HEK−GFPu CRL−2794)。あるいはまた、GFPuレポーターまたは他のレポーター−デグロン融合タンパク質を発現する細胞は、この融合タンパク質をコードしているプラ
スミドにより細胞を形質転換することによってde novoで調製されてもよい。HEK293細胞(ATCC CRL−1573)、SHSY−5Y細胞(ATCC−2266)、COS細胞(CRL−1651);CHO細胞(ATCC−CCL−61)または他の哺乳動物細胞系を含む、種々の細胞のいずれが使用されてもよい。細胞は安定にまたは一過性にトランスフェクトすることができる。好ましくは、細胞は多数のアッセイをとおしての首尾一貫性のために安定なトタンスフェクタントである。
【0035】
その他の実施態様では、本アッセイは、Parkinを安定に発現し、そしてレポーター−デグロンタンパク質により一過性にトランスフェクトされた細胞を使用して、あるいはParkinおよびレポーターの両方により一過性にトランスフェクトされた細胞により実施できる。
【0036】
本発明の実行のために適当な、発現ベクター、一過性トランスフェクションの方法および細胞培養の方法は、当該技術分野において周知であり、そして本明細書ではごく簡単に記述される。周知のように、発現ベクターは、典型的にはコーディング配列(例えば、Parkinの)に操作可能に連結された真核生物の発現制御要素を含む組み換えポリヌクレオチド構築物である。発現制御要素は、プロモーター、リボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位および転写ターミネーター配列を含んでもよい。発現ベクターは、典型的には、エピソームか、または宿主染色体DNAの組み込み部分のいずれかとして宿主生物において複製される。哺乳動物発現ベクターの例は、pcDNA3.1(Invitrogen,San Diego,CA);pEAK(Edge Biosystems,Mountain View,CA)およびその他(参照、Ausubel et al.,Current Protocols In Molecular Biology,Greene Publishing and Wiley−Interscience,New York,as supplemented through 2005)を含む。通常は、発現ベクターは、所望のDNA配列により形質転換された細胞の検出を可能にするための選別マーカー、例えば、アンピシリン耐性またはハイグロマイシン耐性を含有する。「トランスフェクション」は、リン酸カルシウムもしくは塩化カルシウム共沈、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクションおよびエレクトロポレーションを含む、宿主細胞中に外来核酸(例えば、DNA)を導入する種々の技術的に認知された技術を指す。また細胞培養技術も周知である。方法については、参照、Sambrook et al.,1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory press;およびAusubel,1989,前出。
【0037】
A.2 Parkinを発現する細胞
好適なプロテアソーム機能アッセイでは、レポーター−デグロン融合タンパク質を発現する細胞は、前記のように、Parkinを発現する発現ベクターによりトランスフェクトされる。1つの実施態様では、発現ベクターは野生型Parkinをコードしている。例えば、ヒトParkin(NM004562)のためのcDNAは、このアッセイにおいて使用するためにベクターpcDNA3.1(Invitrogen,San Diego,CA)のHindIII/Xbal部位中に挿入することができる。
【0038】
その他の実施態様では、Parkin変異体をコードしている発現ベクターが使用される。実施例4に示されるように、ある種のParkin変異体の発現はプロテアソーム機能の抑制をもたらす。そのようなParkin変異体を用いるプロテアソーム機能アッセイは、細胞がParkin変異体をコードしている発現ベクターによりトランスフェクトされることを除いて、野生型Parkinについて先に記述されたように実施できる。このプロテアソーム機能アッセイは、変異Parkinを発現する哺乳動物細胞を試験化合
物に曝露し;試験化合物に曝露された細胞におけるプロテアソーム機能と試験化合物に曝露されなかった変異Parkinを発現する細胞のプロテアソーム機能特性とを比較することを伴う。代表的なParkin変異体は、S167N、C212Y、T240M、R275W、C289G、P437Lを含む(参照、表1)。ある実施態様では、使用されるParkin変異体は、R275W、C212YまたはC289Gである。Parkin変異体を使用するアッセイは、野生型Parkinを使用するアッセイの代替法として、またはそのアッセイと組み合わせて使用されてもよい。
【0039】
【表1】

【0040】
A.3 試験作用物に対する細胞の曝露
先に記述されたように、Parkin発現細胞が試験作用物に曝露されてプロテアソーム機能に及ぼす作用物の効果が決定される。もっともしばしば、レポーター融合タンパク質を発現する細胞(参照、例えば、実施例1)が増殖され、Parkinをコードしている発現構築物によりトランスフェクトされる。細胞は1〜10日間培養され、次いで試験作用物に曝露される。通常、細胞は、作用物への曝露(または曝露の開始)後2または3日試験作用物に曝露される。
【0041】
広い種類の試験作用物が使用できる。例えば、化合物の多数の天然および合成ライブラリーが使用されてもよい(参照、NCI Open Synthetic Compound Collection library,Bethesda,Md;Fodor et al.,1991,Science 251:767−773に記述された化学的に合成されたライブラリー;Medynski,1994,BioTechnology
12:709−710;Ohlmeyer et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:10922−10926;Erb et al.,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:11422−11426;Jayawickreme et al.,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:1614−1618;およびSalmon et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:11708−11712)。1つの実施態様では、作用物は、分子量1000未満、しばしば500未満をもつ分子のような低分子、例えば、「化学シャペロン」である。
【0042】
曝露の期間は変えることができるが、普通には1〜24時間、もっとも普通には4〜16時間である。同様に、種々の濃度の作用物が試験されてもよい。濃度は作用物の性質に応じて変えることができるが、典型的には1nM〜5uMの範囲内であると評価される。
典型的には、試験作用物のいくつかの異なる濃度が、ゼロ濃度の対照とともにアッセイされる(例えば、1nM、10nM、100nM、1μM、10μMおよび100μM)。
【0043】
試験作用物と接触されたParkin発現細胞のプロテアソーム機能は、Parkinを発現するが候補化合物に曝露されなかった細胞のプロテアソーム機能特性と比較することができる。典型的には、これは、試験作用物(種々の濃度において)に曝露された細胞と試験化合物に曝露されなかった細胞とを使用する並行実験を実施することによって達成される。すなわち、細胞におけるプロテアソーム機能は化合物の存在または不在下で測定される。あるいはまた、試験細胞におけるプロテアソーム機能は、細胞におけるプロテアソーム機能について既に得られた標準値に比較されてもよい。その他の変法では、プロテアソーム機能は試験作用物の添加前と、次いで添加後の同じ細胞において測定される。
【0044】
培養期間の最後に、プロテアソーム機能が測定されてもよい。例えば、GFPu発現細胞において、GFPu蛍光および/またはGFPu量が測定されてもよい。測定値は、定量的、半定量的および/または比較的であってもよい。
【0045】
基本アッセイの修飾ができることは読者には明らかであろう。例えば、種々の形式の培養プレート(例えば、6、24、96または384穴プレート)または他の高処理デバイスが、場合によっては、トランスフェクションにおけるプラスミド量の付随調節とともに、自動デバイスと組み合わせて使用されてもよい。
【0046】
本発明の1つの実施態様では、HEK293GFPu細胞は、6穴細胞培養プレートの培養ウェル(例えば、各ウェル直径約30mm)において75%密度まで増殖される。細胞は、1ウェル当たりプラスミド約2.5ugを用いて前記Parkin発現ベクターをトランスフェクトされ、そして細胞は試験作用物による分析前に約3日間(例えば、2〜5日)培養される。
【0047】
A.4 作用物の効果がParkinに対して特異的であるか否かを決定するためのプロテアソーム機能アッセイ
Parkinの特異性を確定するためのプロテアソーム機能アッセイは、細胞がミスフォールディングを起こしがちであると考えられる異なるタンパク質をコードしている発現ベクターによりトランスフェクトされる以外は、野生型Parkinについての前記基本アッセイを使用することによって実施できる。例えば、Huntingtin(Htt)タンパク質(配列番号:11)またはCFTR(配列番号:10;アクセッション番号NM000492)タンパク質が使用されてもよい。このアッセイにおいて使用されてもよいミスフォールディングを起こしがちな他のタンパク質は、SOD1、Rhodopsin、connexin43、Ub+1およびpresenilinを含む。このプロテアソーム機能アッセイは、非Parkinタンパク質(例えば、Huntingtin)を発現する哺乳動物細胞を候補作用物に曝露し、そしてその細胞におけるプロテアソーム機能を候補作用物に曝露されなかったHuntingtinを発現する細胞のプロテアソーム機能特性と比較することを伴う。Parkinを発現する細胞においてはプロテアソーム機能を安定化または増大するが、Huntingtinまたは他のタンパク質を発現する細胞では、そうではない作用物は、プロテアソームに及ぼすParkinの効果を多分特異的に調節しているであろう。Huntingtinまたは他のタンパク質を発現する細胞、ならびにParkinを発現する細胞においてプロテアソーム機能を安定化または増大する作用物は、非特異的に作用しているのであろう。
【0048】
A.5 Parkin凝集アッセイ
1つの実施態様では、アッセイは、(a)野生型または変異Parkinを発現する哺乳動物細胞を得て;(b)細胞を試験作用物に対して曝露し;そして(c)試験作用物に
曝露された細胞におけるParkin凝集を、試験作用物に曝露されなかった対照細胞のParkin凝集特性と比較すること;によるパーキンソン病の処置のための候補化合物のスクリーニングを含む。試験作用物の存在下のParkin凝集の低下されたレベルは、その作用物がパーキンソン病の処置のための候補化合物であることを指示する。1つの実施態様では、哺乳動物細胞は野生型Parkinを発現する。1つの実施態様では、哺乳動物細胞は変異Parkinを発現する。若干の例では、変異Parkinは、S167N、C212Y、T240M、R275W、C289G、P437Lである。好ましくは、R275W、C212YまたはC289Gが使用される。
【0049】
B.Parkin結合アッセイ
多くの化学シャペロンの期待される特性は、それらがタンパク質標的に結合することである。したがって、パーキンソン病の処置のために有用な候補作用物は、Parkin結合アッセイを使用して同定することができる。結合アッセイは、通常、精製Parkinタンパク質を1種以上の試験化合物と接触させ、そしてタンパク質と試験化合物が結合複合体を形成するために十分な時間放置することを伴う。形成されたすべての結合複合体は、多数の確立された分析技術のいずれかを使用して検出することができる。タンパク質結合アッセイは、限定されるものではないが、共沈、非変性SDS−ポリアクリルアミドゲルにおける共移動、およびウエスタンブロットにおける共移動を測定する方法を含む(参照、例えば、Bennet and Yamamura,1985,“Neurotransmitter,Hormone or Drug Receptor Binding Methods,”in Neurotransmitter,Receptor Binding(Yamamura,H.I.,et al.,eds),pp.61−89)。そのようなアッセイにおいて利用されるParkinタンパク質は、哺乳動物細胞(組み換えまたは天然に存在する)に由来するものであっても、または組み換え細菌細胞からの精製Parkinであってもよい。
【0050】
C.Parkin活性アッセイ
Parkinはユビキチンリガーゼである(Shimura et al.,2000,Nature Genetics 25:302)。ユビキチンリガーゼ活性は、特異的リガーゼ基質を認識し、そしてE2酵素と相互作用してユビキチン分子をE2から基質に転移するタンパク質の能力によって定義される。リガーゼ活性は、補助タンパク質によって調節されるが、またリガーゼ単独でも生じ得ることが示された(参照、Joazeiro and Weissmen,2000,Cell 102:549−52)。
【0051】
1つの実施態様では、候補作用物がパーキンソン病を処置するために有用であるか否かを決定するために使用されるインビトロアッセイは、Parkinリガーゼ活性に及ぼす効果を測定することを含む。ある実施態様では、リガーゼ活性は、化合物の存在下での精製Parkinタンパク質のオートユビキチネーション活性であり、そして化合物の存在下での精製Parkinタンパク質のオートユビキチネーション活性を、化合物の不在下での精製Parkinタンパク質のオートユビキチネーション活性と比較することである。オートユビキチネーション活性を増大する作用物の能力は、パーキンソン病を処置するために有用な作用物およびさらなる試験のための候補物の指標である。さらに、オートユビキチネーション活性を刺激する作用物は基質へのリガーゼの親和力を増大しても、またはParkinタンパク質の細胞内代謝回転を妨害してもよく、したがって、それらの活性については同様に興味深い。
【0052】
Parkinのオートユビキチネーション活性は、下記および実施例において記述されるように、溶液アッセイまたは固定化アッセイにおいてアッセイすることができる。
【0053】
C.1 固定化Parkinを使用するアッセイ
固定化アッセイでは、組み換えまたは精製Parkinが、表面(ミクロウェルプレート、セファロースビーズ、磁気ビーズなどのような)に固定化され、そしてユビキチンを含むリガーゼ反応混合液とともにインキュベートされる。アッセイ条件下のParkinのユビキチン化のレベルは、Parkinオートユビキチネーション活性の測定値として決定される。
【0054】
Parkin活性を妨害しないParkinのいかなる固定化方法も使用することができる。1つの実施態様では、Parkinは96穴または386穴ミクロウェルプレートのウェル中に固定化される。ミクロウェルプレートは、広く市販されている、例えば、Immulon(Waltham,MA)およびMaxisorb(Life Technologies,Karsruhe,Germany)から。Parkinは、Parkinを認識する抗体が表面上に固定化された抗体結合系を使用して固定化することができ、そしてParkinが添加され、抗体によって捕捉される。あるいはまた、抗体は、Parkinタンパク質に融合されたエピトープ・タグ(例えば、His、GST、Flag、Myc、MBP、など)を認識することができる。Parkinの酵素活性を妨害しない抗体が選ばれる。抗体に基づく固定化の方法および他の免疫アッセイは周知である(参照、例えば、Harlow and Lane,1988,Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Publications,New York)。他のアプローチでは、N末端Hisタグを有するParkinタンパク質がニッケル皮膜を施されたアッセイプレートを使用して固定化されてもよい。
【0055】
ブロッキング段階の後、E1(ユビキチン活性化酵素、場合によっては、GSTまたはHisによりエピトープがタグされた)、E2(ユビキチン複合酵素)、ATP−Mgおよびユビキチン(通常、標識されたユビキチン)を含むリガーゼ反応混合液が固定化Parkin(ParkinE3リガーゼ)と合わせられる。精製ユビキチン経路酵素は市販品(例えば、Boston Biochem Inc.,840 Memorial Drive,Cambridge,MA 02139より)を得ても、また報告された(Wee et al.,2000,J.Protein Chemistry 19:489−498)ように調製されてもよい。プレートへのE1の非特異的結合を低下させるためのブロッキングは、SuperBlock(Pierce Chemical Company,Rockford,IL);SynBlock(Serotec,Raleigh,NC);SeaBlock(CalBiochem,Darmstadt,Germany);金属キレートブロック(Pierce Chemical Company,Rockford,IL);1%カゼイン;グルタチオンおよび種々のこれらの組み合わせ物によってもよく、若干の実施態様では1%カゼインによるのが好適である。ブロッキング段階後、ウェルはSuperBlock洗浄液(Pierce Chemical Company,Rockford,IL)またはLigaseバッファー洗浄液(50mM HEPES/50mM NaCl)により洗浄されてもよい。1つの実施態様では、Immulon96または384穴プレートは、50mM HEPES/50mM NaCl中1%カゼインによりブロックされ、そして50mM HEPES/50mM NaCl/4mM DTTを用いて洗浄される。
【0056】
代表的な反応混合液は、
1:1 ビオチン:ユビキチン 500nM
GST−E1 2〜6nM
E2(UbcH7) 300nM
大腸菌Parkinタンパク質 2〜10ug
MgATP 10mM
バッファー 50mM HEPES/50mM Na
Cl/pH8.8
である。
【0057】
大腸菌Parkinタンパク質は、以下のIV節に記述されるように調製することができる。アッセイは37℃で1時間実施され、そして50mM HEPES/50mM NaClによりウェルを洗浄することによって停止される。ATPは、ネガティブ対照として、ある種のサンプルから除外されてもよい。1つの実施態様では、アッセイは96または384穴プレート形式において実施される。プレートは一定期間(例えば、室温で60分間または37℃で40〜60分間)インキュベートされる。プレートは可溶性試薬を除去するために洗浄され、そしてユビキチンの存在または量(オートユビキチネーションを受けたParkinのユビキチン成分)が決定される。
【0058】
ユビキチンの検出方法は使用される標識またはタグに応じて異なるであろう。例えば、プレートアッセイでは、フルオレセイン・タグされたユビキチンは蛍光プレートリーダーを使用して直接検出でき、ビオチン・タグされたユビキチンは標識されたstrepavidin(例えば、strepavidin−HRPまたは1:5000Neutravidin−HRP[Pierce Chemical Company,Rockford,IL])を使用して検出でき、そしてエピトープ・タグされたユビキチンは抗タグ抗体を使用するイムノアッセイにおいて検出することができる。エピトープ・タグはユビキチンのN末端に融合されるか、あるいはユビキチン化を妨害しない他の方法で結合される。これらのアッセイおよび他の有用なアッセイは、当該技術分野において周知である。
【0059】
C.2 溶液においてParkinを使用するアッセイ
別のアプローチでは、Parkinのためのオートユビキチネーションアッセイは、溶液において実施され、次いで、溶液(または一定分量)が定量用の捕捉(capture)プレートに移される。代表的な反応では、反応成分(下記)は50μl容量に集められ、そしてアッセイが10〜90分間(例えば、60分間)37℃で行われる。
【0060】
反応成分:
50mM HEPES/50mM NaCl/pH8.8
500nM 1:1 ビオチン:ユビキチン
2〜6nM GST−E1
300nM E2(UbcH7)
2〜10ug 大腸菌組み換えParkinタンパク質
10mM MgATP
最後に添加されて反応が開始できる。
【0061】
反応終了後、反応混合液は、Parkinを結合する固定化部分(例えば、抗Parkin抗体、His・タグParkinのためのニッケル、またはエピトープ・タグParkinのための抗エピトープ・タグ抗体、例えば抗flagGST、His、Myc、MBPなど)を含有する捕捉プレート(例えば、96または384穴プレート)に移される。ニッケルプレートが使用されてHis・タグParkinを固定化する場合は、反応は6MグアニジニウムHClの添加によって停止されてもよい。この捕捉プレートは1%カゼインによりブロックされてもよい。反応混合液は捕捉プレートにおいて60分間インキュベートされる。この時間後、プレートは50mM HEPES/50mM NaCl/4mM DTTにより3回洗浄される。検出は、ユビキチン部分に存在するタグに結合する試薬(例えば、strepavidin−HRP)を用いて実施され、そして標準操作を用いて処理される。
【0062】
D. アッセイの組み合わせ
前記の細胞に基づくおよびタンパク質に基づくアッセイは、独立にまたは種々の組み合わせにおいて使用されて、Parkinタンパク質を発現する細胞におけるプロテアソーム損傷を低下させるパーキンソン病の処置のための候補化合物が同定されてもよい。1つの実施態様では、野生型Parkinを発現する細胞におけるプロテアソーム機能の抑制を改善する作用物の「基本アッセイ」は、さらなるアッセイ、例えば(1)Parkin変異体を使用するプロテアソーム機能アッセイ、(2)Parkin凝集アッセイ、(3)Parkin特異性を確立するプロテアソーム機能アッセイ、(4)Parkin結合アッセイ、(5)インビトロのタンパク質活性アッセイ:との組み合わせにおいて使用されてもよい。組み合わせて使用される場合、これらのアッセイはいかなる順序で実施されてもよい。例えば、最初の高処理スクリーニングがインビトロのタンパク質アッセイを用いて実施され、そして基本の細胞に基づくアッセイが第2の選別法として使用されてもよい。あるいはまた、例えば、細胞に基づくアッセイが最初に実施され、そしてインビトロのタンパク質結合および活性アッセイが第2の選別法として使用されてもよい。アッセイの他の配列および組み合わせも読者には明らかであろう。
【0063】
1つの実施態様では、野生型Parkinを発現する細胞および変異Parkinを発現する細胞の両者のプロテアソーム機能を救済する作用物が、薬物候補を特に約束するものとして同定され、そしてさらなる試験にかけられる。1つの実施態様では、多数の細胞系、例えば、野生型Parkinおよび変異Parkin(例えば、R275W、C212YおよびC289G)から選ばれるタンパク質を発現する細胞において、プロテアソーム機能を救済する作用物が選択される。
【0064】
本発明の1つの態様では、種々の細胞に基づくアッセイおよびタンパク質に基づくアッセイの組み合わせが使用されて、パーキンソン病の処置のために有用な作用物について選別される。例えば、野生型Parkinを使用する基本の細胞に基づくアッセイは、前記アッセイのいずれか1つまたは組み合わせとともに使用されてもよい。単なる具体的な説明であって、限定されるものではないが、アッセイの代表的な組み合わせ(および代表的な、限定されるものではないが、有用であると考えられる作用物のプロフィル)が下記の表において示される。例えば、1つのスクリーニングアプローチ(C)は、2種のアッセイ:野生型Parkinによる細胞に基づくアッセイおよびParkin活性アッセイを含む。これらのアッセイはいかなる順序で実施されてもよい。
【0065】
【表2】

【0066】
IV.酵素的に活性のある組み換えParkinの発現および精製
野生型および変異Parkinタンパク質は、組み換え哺乳動物細胞(例えば、HEK−293細胞中に安定に組み込まれたpcDNA−Parkin発現ベクター)から発現され、そして精製することができる。あるいはまた、組み換えParkinはBaculoウイルス発現または細菌発現を使用して得られてもよい。しかしながら、今日まで、細菌細胞(例えば、大腸菌)において発現された酵素的に活性のあるParkinの効率的精製をもたらす技術は報告されていない。
【0067】
A.組み換えParkinタンパク質の発現
Parkinタンパク質は、形質転換、選別および培養の日常的方法を使用して、大腸菌および他の原核生物宿主における発現によって生産することができる。使用されてもよい代表的な大腸菌菌株は、BL21;BL21−pLysS;BL21−Star;BL21−Codon+;BL21(DE3);BL21(DE3)−Star;L21(DE3)−Codon+;およびBL21−A1を含む。他の有用な細菌発現系は、バチルス属(例えば、バチルス・ズブチルス(Bacillus subtilus))、他の腸内細菌科(例えば、サルモネラ属(Salmonella),セラチア属(Serratia),シュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)およびシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)または他の細菌宿主(例えば、ストレプトコッカス・クレモリス(Streptococcus cremoris)、ストレプトコッカス・ラクチス(Streptococcus lactis)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、ロイコノストック・シトロボラム(Leuconostoc
citrovorum)、ロイコノストック・メゼンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ラクチス(Lactobacillus lactis)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ブレブ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、およびイェルシニア・ペスチス(Yersinia pestis))を含む。
【0068】
Parkinは、精製を容易にするために親和力またはエピトープタグをもつ融合タンパク質として発現されてもよい。代表的なタグは、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、マルトース結合タンパク質(MBP)、6xヒスチジン[His]、キチン結合ドメイン(CBD)およびチオレドキシンを含む。好適なタグは、変性条件下で、例えば、6M塩酸グアニジニウム(GuHCl)の存在下で親和性リガンドによって結合することができるものである。好適なタグは、ポリ−ヒスチジン(例えば、[His])である。実施例1は、ニッケル媒介アフィニティークロマトグラフィーを用いる精製のための全長のHis−タグされたParkinの発現を記述している。
【0069】
B.組み換えParkinタンパク質の精製およびリフォールディング(refolding)
本発明者らは、大腸菌において発現された場合、Parkinが封入体に分配されることを見出だした。酵素的に活性のあるParkin、特にHis−タグされたParkinは、
1)封入体の精製
2)封入体の破壊
3)クロマトグラフィー
4)リフォールディング:
を伴う4段階工程を使用して大腸菌および他の原核生物の封入体から回収することができる。これらの段階の各々が以下に記述される。
【0070】
B.1 封入体の精製
種々の方法が、封入体の精製のために知られており、本発明の実行のために適当である。参照、例えば、Current Protocols in Protein Science(2003)Ch.6:“Preparation and extraction of insoluble(inclusion−body)protein from Escherichia coli.”
B.2 封入体の破壊
種々の方法が、また、封入体の破壊のために知られている。参照、例えば、Current Protocols in Protein Science,前出およびClark,1998,Current Opinion in Biotechnology
9:157−163。本発明の好適な実施態様では、封入体は塩酸グアニジン(例えば、2〜6M GuHCl)および還元剤(例えば、1〜10mM DTT;4mM TCEP[Tris(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩];4〜10mM β−メルカプトエタノールなど)を用いて破壊される。例えば、封入体ペレットが5〜10容量の懸濁バッファー[50mM HEPES,pH8.5,6M GuHCl,10mM β−メルカプトエタノール]と合わせられ、そしてdounceホモジナーザー、音波処理または他の方法を使用して破壊できる。破壊後、何か残っている不溶性材料は遠心分離および/または濾過によって除去されてもよい。得られる可溶性画分はParkinを含有し、そして下記アフィニティークロマトグラフィーのために適当である。
【0071】
その他の実施態様では、塩酸グアニジニウム以外の変性剤が封入体の破壊のために使用されてもよい。1つの他の実施態様では、イソチオシアン酸グアニジニウム(例えば、2〜6M)が使用されてもよい。他のあまり好適ではない実施態様では、尿素[2〜8M];sarkosyl(N−ラウロイルサルコシン)[1〜2%];TritonX−100+sarkosyl[0.5〜2%+1〜2%];塩化N−セチルトリメチルアンモニウム[2〜5%];N−オクチルグルコシド[0.5〜2%];ドデシル硫酸ナトリウム[0.1〜0.5%];アルカリ性pH〜pH>9(例えば、NaOHの添加);前記の組み合わせ物、および他の変性剤のような変性剤。参照、Purification Handbook,Amersham Pharmacia Biotech p.71(1999)。一般には、洗浄された封入体が変性剤中に1〜60分間(特定の調製物、ならびに可溶化される封入体の量に応じて)再懸濁される。若干の場合には(例えば、8M尿素)、変性剤は通常、アフィニティークロマトグラフィーの前に少なくとも部分的に除去される。
【0072】
B.3 アフィニティークロマトグラフィー
使用されるアフィニティークロマトグラフィーの性質は使用されるタグに応じて異なるであろう。注意すべきは、固相(アフィニティー樹脂)とParkin融合タンパク質の間の親和性相互作用は、高濃度の塩酸グアニジニウム(例えば、2〜6M GuHCl)中で安定でなければならない。1つの実施態様では、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)が使用される。IMACは、アミノ酸ヒスチジンがキレート化された遷移金属イオン、例えば、ニッケル(Ni2+)、亜鉛(Zn2+)、銅(Cu2+)またはコバルト(Co2+)を結合する能力を利用する。通常、ニッケルまたはコバルトが使用される。クロマトグラフィーにおいて使用するための固定化されたニッケル生産物は、容易に入手できる(例えば、Ni−NTA樹脂(Qiagen,Inc))。クロマトグラフィーにおいて使用するための固定化されたコバルト生産物は、容易に入手できる(例えば、HIS−SelectTMCobalt Affinity Gel;Sigma−Aldrich Corp.)。
【0073】
アフィニティーカラムへの可溶性画分の適用に続いて、カラムは洗浄されて未結合材料が除去され、そしてParkin−His融合タンパク質が溶出される。便利には、融合タンパク質はイミダゾール(例えば、100〜500mM)を用いて溶出することができる。1つの実施態様では、溶出バッファーは、50mM HEPES,pH8.0、5.5M GuHCl,500mMイミダゾール、10mM β−ME、0.5mM EDTAである。標的タンパク質を含有するフラクションが回収される。場合によっては、還元剤がまた、フラクションが回収されるにつれて添加されてもよい(例えば、還元剤の濃度の増大は、回収フラクションを増加することができる(例えば、19mM β−MEまで))。
【0074】
B.3 リフォールディング
2つの透析段階がGuHCl含有溶液から活性Parkinを回収するために使用される。最初の透析段階では、溶出された材料は、アルギニンおよび還元剤を含有するバッファー溶液に対して透析される。アルギニンは範囲0.1〜1M、例えば範囲0.2〜0.8M、0.3〜0.6Mまたは0.35〜0.5Mにおいて存在してもよい。代表的な還元剤は、DTT(例えば、1〜10mM、例えば10mM);Tris(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP、例えば4mM TCEP);β−メルカプトエタノール(例えば、4〜10mM β−メルカプトエタノール)および類似の還元力をもつ薬剤を含む。代表的なバッファーは、0.4Mアルギニン、50mM HEPES,pH8.0、10mM DTTである。
【0075】
第2の透析段階では、段階1からの透析物が実質的にアルギニンを含まないバッファーに対して透析される。タンパク質が安定である(すなわち、ほとんどのタンパク質がそれらの構造および活性を保持する)いかなるバッファーが使用されてもよいが、バッファーは多くとも最小量のアルギニン(すなわち、0.5mM未満、好ましくは0.1mM未満、もっとも好ましくは全くアルギニンを含有しない)しか含有しない。代表的なバッファーは、50mM HEPES,pH8.0、0.2M NaCl、10mM DTTである。場合によっては、この透析段階の前にグリセロールがサンプルに添加されてもよい。所望であれば、さらなる透析段階が実施されてもよい。
【0076】
Parkinを含有する透析物が回収され、そして何かの沈殿物が除去されてもよい。精製タンパク質の活性はオートユビキチネーションアッセイを用いて決定することができる。参照、Lorick et al.,1999,“RING fingers mediated ubiquitin−conjugating enzyme(E2)−dependent ubiquitination”Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:11364−9および実施例10。好ましくは、精製Parkin材料(>95%Parkinタンパク質)の比活性は、少なくとも約0.1単位(Unit)/0.5μgParkinタンパク質である。例えば、比活性は、0.1単位/0.5μg〜5単位/0.5μgであってもよい。ある実施態様では、比活性は、少なくとも約0.2U、少なくとも約0.25Uまたは少なくとも約0.5U/0.5μgParkinタンパク質である。比活性に関しては、1単位(「Unit」)は、15分間に50ngユビキチンをParkinに転移するParkin調製物の能力として定義される(例えば、反応液中0.5〜10μg、通常、0.5μgのParkinタンパク質が使用される、下記実施例10において記述されるアッセイ条件下で)か、あるいは同等には、1/4単位は、30分間に25ngユビキチンをParkinに転移する能力である。下記実施例にしたがって調製されたHis−タグParkinは、約1/4単位/0.5μgParkinの比活性を有する(すなわち、25.2ngユビキチンが30分間に転移した)。あるいはまた、Parkin活性は、Parkinの酵素的活性および/または生物学的機能を測定するいずれのアッセイを使用して例証されてもよい。
【0077】
精製Parkinタンパク質は、スクリーニングアッセイ、免疫学的アッセイ、アッセイ標準およびその他を含む、種々の応用において使用することができる。Parkinタンパク質は、特定の応用のために必要なように修飾(例えば、他の化合物に複合され、そして/またはエピトープタグが除去される)または処理されてもよい。若干の実施態様では、Hisエピトープタグが除去される。例えば、Hisタグがトロンビンまたはエンテロキナーゼによる消化によって除去されてもよい、実施例7に記述されるプラスミドpET30aベクター(参照、配列番号:5)。
【実施例】
【0078】
V.実施例
例1:GFPu HEK293細胞
GFPu発現細胞系が次のように作成された:HEK293細胞(ATCCNo.CRL−1573)は、短いデグロンをコードしているオリゴヌクレオチド(Gilon et al.,1998,EMBO Journal 17:2759−66)がGFPのコーディング配列(Heim et al.,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:12501−504;Accession#P42212)に対してC末端に挿入された構築物を使用して形質転換された。細胞は2ugcDNAによりトランスフェクトされた。細胞は48時間培養され、形質転換株が1000ug/mlのG418(geneticin)を用いて選択された。さらなる7日後、細胞増殖培地(DMEN+1000ug/mlG418)は古い培地を除去し、そして新鮮な培地を添加することによって交換された。細胞は2週間成長を続けられて、G418に耐性である細胞について選択された。次いで、これらの細胞は回収され、そしてFACS技術によって選別されて、単細胞を同定かつ単離した。これらの単細胞は、96穴プレート中に個々に選別され、そして2週間にわたって成長かつ増殖された。次いで、細胞は2並列の96穴プレート中に入れられた。1つのプレートはFacScanによって分析され、他方のプレートは、FacScan分析によってポジティブとして同定されたクローンを拡大するために使用された。
【0079】
クローンは、プロテアソームインヒビター・epoxomicinの存在下で、GFPの非常に低いバックグラウンドレベルおよび蛍光の2 logユニット以上の増大について選択された。2種のGFPu発現細胞系、系60および61が、残りの実験において使用された。
【0080】
2種の細胞系からの細胞は6穴プレートにおいて75%密度まで増殖され、Parkin、Parkin変異体、SynucleinまたはSynuclein変異体をコードしているcDNA発現ベクターの2.5ug/ウェルによりトランスフェクトされた。細胞は2〜5日間培養され、そして蛍光検鏡法およびFACScanを用いて検査されてGFP蛍光が測定された。若干の場合には、epoxomicinは、GFPuレベルのポジティブ対照としてFACScanの5時間前に添加された。さらに、細胞抽出物がイムノブロッティングのために調製された。
【0081】
例2:野生型Parkinの発現はParkin封入体をもたらし、そしてGFPu発現細胞系においてプロテアソーム活性を減少させる
GFPu細胞系の両方(系60および61)において、Parkinの過発現は、イムノブロッティングおよび検鏡法によって決定されるように、Parkin凝集体の形成をもらした。また、Parkinトランスフェクションは、GFPuレベルにおける衝撃的増大をもらし、このことは、Parkinの発現または過発現がプロテアソーム活性を損傷させたことを示している。図1は細胞系60からのイムノブロットを示す。GFPu/293細胞が、pcDNA3.1ベクター(列1および2)またはpcDNA3.1−Parkin(列3および4)によりトランスフェクトされた。トランスフェクション48
時間後、細胞は可溶性タンパク質および不溶性タンパク質について抽出され、そしてこれらの抽出物がGFPu(下パネル)またはParkin(上パネル)についてイムノブロッティングによって分析された。可溶性タンパク質抽出物(列1および3);不溶性タンパク質抽出物(列2および4)。これらのデータは、Parkin発現後のGFPuタンパク質の明瞭な蓄積を例証し(列3&4と列1&2を比較する)、そしてまた、Parkin過発現後の不溶性タンパク質画分へのGFPuタンパク質の分配を例証する(列4と列3を比較する)。
【0082】
例3:Synucleinではなく、Parkinの過発現が、aggresomeをもたらす
図2は、Parkinタンパク質の発現が、GFPuのような他のプロテアソーム基質の安定化および凝集をもたらすことを具体的に説明するエピ蛍光および免疫蛍光画像を示す。Parkin cDNAは、単独で(パネルAおよびB)またはα−synucleinのcDNAおよびParkincDNAにより(パネルC,DおよびE)実施例1に記述されたようにGFPu 293細胞中にトランスフェクトされた。細胞は48時間後に固定され、そして免疫蛍光検鏡法のために処理された。Parkinタンパク質は、ヒトParkinタンパク質の残基85−96に対する抗体HPA1Aにより染色することによって位置決定され、α−synucleinは、syn−1抗体(Transduction labs,San Jose,CA)により染色することによって位置決定され、そしてGFPuはタンパク質の緑色蛍光に基づいて位置決定された。
【0083】
Parkinを発現する細胞では、Parkinタンパク質(パネルA,矢印)は、細胞において凝集体として見出だされ、そしてGFPuの凝集体または蓄積物と共に局在している(パネルB,矢印)。Parkinタンパク質を発現していない細胞(*)では、GFPuの蓄積はなかった。
【0084】
Parkinおよびα−synucleinの両方を発現する細胞では、α−synucleinは凝集せず、GFPuにおけるParkin媒介の増加のためには必要ではない。矢印は、両synucleinおよびParkinを発現する細胞では、Parkin(パネルC)およびGFPu(パネルD)の凝集体が見出だされるが、α−synuclein(パネルE)の凝集体は見出だされないことを示している。矢印の頭は、Parkinのみを発現する細胞を指示する。#印はα−synucleinを発現するがParkinを発現しない細胞を同定する。この細胞はGFPuにおける増加を有せず、synucleinがGFPuを増加させるのに十分ではないことを示している。GFPuがParkinを発現する細胞において蓄積/凝集され、そしてα−synucleinが要求されないことは、このことから明らかである。
【0085】
例4:変異Parkin異型接合・「優性」Parkin変異の発現
異型接合性がPDの発生と相関される(1)野生型Parkinまたは(2)変異Parkinをコードしている発現プラスミドが、HEK293/GFPu細胞中にトランスフェクトされて、プロテアソーム機能および凝集に及ぼす変異Parkinタンパク質の影響が検査された(参照、表1)。
【0086】
図3は、トランスフェクション2日後のFACscan分析の結果を示す。プロテアソーム活性の抑制は、野生型Parkinよりも変異体S167N、R275W、C212YおよびC289Gによって有意に高かった。変異体R275W、C212YおよびC289Gは、試験されたすべての時間およびトランスフェクション濃度においてプロテアソーム活性を有意に低下させた。
【0087】
図4は、HEK293/GFPu細胞のトランスフェクション5日後の各サンプルのエ
ピ蛍光画像を示す。画像は各サンプルについて同じカメラ設定を使用して記録されて、蛍光強度のレベル、細胞におけるGFPuレベルの直接測定値を反映させた。図において見られるように、Parkin変異体の発現はGFPuをaggresome形成へと促進することができる。図4において示され、そしてArrayScan(R)高処理スクリーニング装置を使用する実験において確認されたように(データ未掲載)、変異体S167N、R275W、C212YおよびC289Gの発現は、GFPレベルを増大した(すなわち、プロテアソーム活性を有意に低下させた)。
【0088】
例5:ヒト脳組織におけるParkin分布
散発性PD患者および健全な対照からのヒト脳組織におけるParkinタンパク質の局在場所および特性が、脳抽出物のイムノブロッティングによって決定された。
【0089】
方法: 散発性PDおよび正常な個人からの脳組織はUCLA脳バンクから得られた。各サンプルは、4カ所の脳領域:前頭皮質、尾状核、被殻および黒質からの組織からなった。後者の3脳領域は黒質線状体経路の構成成分である。各脳領域からの凍結脳組織はdounceによりホモジナイズされ、そして0.5mg組織/1mlのIPB抽出バッファー(50mM Tris7.5;300mM NaCl;0.05%デオキシコーレート;0.1%NP−40;5mM EDTA)の比で抽出された。氷上で20分後、ホモジネートは10,000xgで10分間回転された。この上澄液が除去され、そしてペレットは、同じ方法で再び抽出され、再び遠心分離された。この第2のIPB上澄液が除去され、そして最後に残っているペレットが、次に、室温で10分間1%SDS/10mM tris7.5中で可溶化され、続いて20秒間音波処理された。
【0090】
図5は、正常およびPD脳におけるParkinタンパク質の分布を示す。脳タンパク質は電気泳動によって分離され、そしてイムノブロッティングが、HPA1A、ヒトParkin残基85−95に対するポリクローナル抗体を用いて実施された。図5Aにおいて、前記のように、(I)はIPB画分であり、(S)はSDS画分である。PDサンプルでは、52−kDParkinタンパク質全体の量は増加され、そして不溶性Parkinの量もまた増加されていることは注目に値する。
【0091】
同じサンプルからの不溶性材料の直接比較は、図5Bにおいて提供される。図5Aに較べて、より高い分子量の材料の蓄積が見られるが、これは、多分、図5Aのゲルではなくて,図5Bのゲルに負荷する直前に音波処理されたからであろう。Parkinは両サンプルの前頭皮質においては増加されるが、それは、PD患者では、脳の黒質線状体部分(被殻、尾状核および黒質)のみで増加されている。図5のデータは、散発性PD患者では、Parkinレベルが、対照全体に較べて増加され、そして不溶性画分において富有化されることを示唆している。不溶性タンパク質は活性があるとはとても考えられない。
【0092】
例6:細胞に基づくアッセイ
プロテアソームに標的化される緑色蛍光タンパク質(GFP)を安定して発現するHEK293細胞が、野生型Parkinを発現する発現ベクターまたはベクターのみの対照(pEAK;Edge Biosystems,Mountain View,CA)により一過性にトランスフェクトされた。細胞は5%CO中37℃で16〜24時間維持された。続いて、細胞は3.7%ホルムアルデヒドで固定され、次いで、PBSにより2回洗浄された。次いで、細胞は1ug/mlのHoechst染料により室温で15分間染色され、次いでPBSにより2回洗浄して、ウェルにPBSの200ulを残した。細胞は、GFPに対して最適化されたXF100フィルターの設定を使用してArrayScanVTIにおいて造影された。データは少なくとも200細胞/ウェルから収集された。Target Activation Bioapplicationプログラムが使用されて、細胞内蛍光(「平均(mean)平均(average)強度」)が分析さ
れたが、ここで、マスクモディファイヤー(mask modifier)は2ピクセルに設定された。
【0093】
図6Aは、野生型Parkin(上方右)またはベクター対照(上方左)によりトランスフェクトされた細胞の画像を示している。対照のトランスフェクトされた細胞(ベクターのみ)では、非常に小さい蛍光強度であったが、Parkinをトランスフェクトされた細胞では、aggresome形成を示すGFP蛍光強度における顕著な増大が示された。
【0094】
同様の結果が多数の異なる実験において観察された。シグナル対バックグラウンドの比は、一貫して3対5であり、ここで,シグナルはParkinトランスフェクト細胞からの平均蛍光強度として定義され、そしてバックグラウンドは対照処理細胞からの平均蛍光強度である(図6B)。
【0095】
細胞はDNAにより一過性にトランスフェクトされたので、本発明者らは、ウェルからウェルへの測定された蛍光強度における変動は大きくなかったことを確認した。96穴プレートの各ウェルにおける細胞が野生型Parkinによりトランスフェクトされ、そして各ウェルからの平均平均蛍光強度が記録された。プレートをとおしての変動係数(CV)は全く低かったので、スクリーニングアッセイが信頼性のある一貫した結果を与えることが示された。
【0096】
パーキンソン病の処置のための候補化合物を同定するための特定の細胞に基づくアッセイは次のように実施することができる。プロテアソームに標的化される緑色蛍光タンパク質(GFP)を安定して発現するHek293細胞が得られ、そして野生型Parkinを発現する発現ベクターにより一過性にトランスフェクトされる(「試験細胞」)。ベクターのみの対照細胞もまた得られる。4個の等価のサブ培養物がベクターのみの細胞から調製され、そして16個の試験サブ培養物が各親培養物から得られる。試験作用物(「TA#100」)が培養培地中に溶解された。試験細胞は、0、1、10または100μgのTA#100を含有する新鮮な培養培地を提供され、そしてParkinが発現される条件下で培養される。2日後、細胞は固定され、そして前記のように処理される。細胞は、GFPに対して最適化されたフィルターを使用してArrayScanVTIにおいて造影された。データは少なくとも200細胞/ウェルから収集された。種々の量のTA#100に曝露された細胞における蛍光強度および分布が決定されるが、ここで、蛍光強度は細胞におけるプロテアソーム機能の測定値である。TA#100の存在下の蛍光における減少は、試験作用物に曝露された細胞におけるプロテアソーム機能の増大されたレベルの証拠であり、そしてその作用物がパーキンソン病の処置のための候補化合物であることを示している。さらなるアッセイが実施されて、効果の用量−応答性が決定される。この実施例が具体的に説明するためのものであることは評価することができ、そしてこの明細書によって導かれる読者は、この特定のアッセイの多数の改変物が存在することを評価できる。
【0097】
例7:組み換えヒトParkinの発現および精製
この実施例は、組み換えヒトParkin−オリゴヒスチジン融合タンパク質(すなわち、His−Parkin)の発現および精製を記述する。実施例8は変性タンパク質をリフォールドさせて酵素的に活性のある生成物を得ることを記述する。高濃度アルギニンおよび強力な還元剤の使用は、変性組み換えParkinをリフォードして、活性酵素を生成することにおいて有効であった。実施例9は、精製において使用されてもよい任意のさらなるクロマトグラフィー段階を記述する。
【0098】
A.Parkin含有封入体の精製
ヒスチジン・タグに融合された全長ヒトParkinをコードしている配列(参照、配列番号:5)が、細菌発現プラスミドpET30a(Novagen,Madison,WI 53719)中にクローン化されて、pET30a−Parkinが生成された。N末端Hisタグはpet30aベクターによってコードされていて、そして5’および3’末端にそれぞれ付加されたBamHI/HindIII制限部位をもつParkin(NM004562)のPCRフラグメントが、またBamHI/HindIIIにより切断されたpet30aベクター中に挿入される場合に、Parkinに対してフレームN末端において融合される。大腸菌菌株B21(DE3)−pLysSが形質転換され、そして形質転換株がカナマイシンを含むLBプレートにおいて抗生物質耐性に基づいて選択された。
【0099】
pET30a−ParkinとともにB21(DE3)−pLysSの一夜培養物(1%グルコース、25ug/mlカナマイシンおよび35ug/mlクロラムフェニコールを含むLBにおいて増殖された)10mlが、LB+抗生物質の各々1リットルを含有する4個のフラスコに植菌するために使用された。培養物は0.55〜0.6のOD600まで増殖された。Parkin発現を誘導するために、IPTGが0.4mMまで添加され、そしてフラスコが振盪機に戻され、そして37℃で4時間増殖された。培養物を遠心によって回収(総ペレット湿潤重量=15.6g)し、次いで、−20Cで一夜凍結された。
【0100】
凍結ペレットは、溶解バッファー(50mM HEPES,pH8.0、500mM NaCl、1mM EDTA、10mM β−メルカプトエタノール)の140ml中に最懸濁され、そしてDNAを破壊するために3分間ホモジナイズされた。得られる粘性溶液はネブライザー(nebulizer)を4回通過された。得られる溶液を30kRCF(SS34ローター)において20分間遠心して清澄にされ、そしてペレット(封入体を含有する)が回収された。
【0101】
封入体は、200mlの洗浄バッファー#1[50mM HEPES,pH8.0、500mM NaCl、1%TritonX−100、10mM β−ME]中に懸濁され、2分間ホモジナーザーを使用して懸濁液が分散された。上澄液が分析のために回収され、封入体は30kRCFにおいて20分間遠心することによって再ペレット化された。
【0102】
封入体は、200mlの洗浄バッファー#2[50mM HEPES,pH8.0、1.0M NaCl、10mM β−ME]中に懸濁され、再びホモジナーザーを使用して固形物を分散した。上澄液がその後の分析のために回収され、封入体は30kRCFにおいて20分間遠心することによって再ペレット化された。封入体サンプルの重量は2.45gであった。
【0103】
封入体は、20mlの懸濁バッファー[50mM HEPES,pH8.5、6M GuHCl、10mM β−ME]中に再懸濁され、dounceホモジナーザーを使用して固形物塊がばらばらに壊された。濃い暗褐色であるサンプルは4℃で一夜放置された。翌朝、残っている不溶性材料が30kRCFにおいて20分間遠心することによって除去され、そして上澄液は、使用前に0.2μMTuffrynフィルターで濾過された。上澄液24.5mlが回収されたが、これは15.9mg/mlのタンパク質濃度を有した。
【0104】
B.Parkin融合タンパク質のアフィニティー精製
上記サンプルが、硫酸ニッケルを予め負荷された40mlのIMACカラム上に負荷された。クロマトグラフィーバッファーは、次のとおりであった:
バッファーA:50mM HEPES,pH8.0、5.5M GuHCl、10mM β−ME
バッファーB:50mM HEPES,pH8.0、5.5M GuHCl、500mMイミダゾール、10mM β−ME
全てが添加された後(使用直前に新たに添加されるβ−MEを除いて)pHが再チェックされた。サンプルは、サンプルを負荷するために使用される2カラム容量の総量をもつ1%バッファーBを用いて2ml/minにおいて負荷された。カラム容量対して2.5カラム容量の5%Bを用いる4ml/minにおけるさらなる洗浄。10mlフラクションが回収された。
【0105】
サンプルは、100%バッファーBの2カラム容量を用いて4ml/minで溶出された。10mlフラクションが回収された。各カラムが回収された後、さらなるβ−MEが20mMの最終濃度まで添加され、そして0.5M EDTAが0.5mMの最終濃度まで添加された。タンパク質濃度は洗浄および溶出中にモニターされ、そして溶出段階中に回収された4個の10−mlフラクションが蓄えられた(「プール3」)。プール3(50mM HEPES,pH8.0、5.5M GuHCL、500mMイミダゾール、10m Mβ−ME、0.5M EDTA)のタンパク質濃度は2.22mg/mlであった。
【0106】
例8:活性酵素を生成するための変性組み換えParkinのリフォールディング
実施例7からのプール3が、(50mM HEPES,pH8.0、10mM DTT)により約1.0mg/mlのタンパク質濃度まで希釈され、そして2X1mlのサンプルが、10kMWCO透析チューブを使用して500ml(1.5M GuHCl、50mM HEPES,pH8.0、10mM DTT)に対して4Cで一夜透析された。翌朝、肉眼的に明らかな沈殿はなかった。サンプルの1つは、(0.4Mアルギニン、50mM HEPES,pH8.0、10mM DTT)に対して4Cで一夜透析された。明らかな沈殿はなかった。透析物が回収され、そして濾過によって清澄化された。
【0107】
アルギニンは、4Cで一夜のサンプルのさらなる透析によって除去された。サンプル8B(500ul、1110ug/mlにおいて)は、〜10%グリセロールに作成され、次いで、1000容量の50mM HEPES,pH8.0、0.2M NaCl、10%グリセロールおよび10mM DTTに対して透析された。翌朝、いずれのサンプルにおいても肉眼的に沈殿は見られなかった。サンプルは、microfugeにおいて最高スピードで5分間遠心され、次いでタンパク質濃度についてアッセイされた。サンプル8Bの収量は78%であった。
【0108】
例9:任意のSEC精製
His−タグされたParkinは、実施例6、節Aに記述されたように、封入体から単離された。GuHCl−可溶化画分は−80℃で保存され、迅速解凍され、合わされた。新鮮DTTが10mMまで添加された。320mlのS200クロマトグラフィーカラムに負荷する前に、タンパク質サンプルは、10k MWCOを用いAmicon Ultra15を使用して濃縮された。最終濃度はSECバッファー(50mM HEPES,pH8.0、3M GuHCl、1mM DTT(実施直前に新しく添加される))を用いて10mg/mlに調節された。
【0109】
カラムは、1ml/min(21℃)におけるSECバッファーの640ml(2CV)により平衡化された。変性His−Parkin(5ml@10mg/ml)出発材料の50mgが、0.75ml/minにおいてカラムに負荷された。流速は、1.5ml/min 174mls into the runに増加された。5mlのフラクションが回収され、そしてさらなるDTTが10mMの最終まで添加された。フラクションは分析されるまで4℃で保存された。実施例7におけるようにリフォールドされた場合、得られるフラクション(「#8BSEC」)は、ほぼ同じ「#8B」材料の活性を有した。
【0110】
例10:精製Parkinの活性の例証
実施例6および7において記述されたように調製されたHis−Parkinを含有するアッセイ混合液が調製された。50ul容量アッセイは、次のものを含有した:
5μM His−Parkin
100nMヒトGST−E1(Boston Biochem
lot#0271485,7.35μM)
5μM UbcH7(Boston Biochem lot#1070224)
100μM ユビキチン
50mM HEPES,pH7.5
50mM NaCl
1mM Mg−ATP(対照からは除外される)
1mMメチル化ユビキチン(U−502,Boston Biochem lot#2880574,dHO中1mMに溶解された)の29.2μlが、ビオチン−ユビキチン(UB−560,Boston Biochem lot#2011584)の50μgを再懸濁するために使用された。これは、17%ビオチン化された1.17mMユビキチンの30μlをもたらす。
【0111】
反応液は37℃で0、15、30、60または90分間インキュベートされ、そして反応は6μlの5Xサンプルバッファー(250mM HEPES,pH7.5;250mM NaCl)+4μlの1M DTTを添加することによって終了された。
【0112】
アッセイ混合液の15μl分量が、12%ポリアクリルアミドゲルにおいて電気泳動され、そして一夜、ウエスタンブロットのためにフッ化ポリビニリデン(PVDF)メンブランに転移された(10mM CAPS,pH11,10%MeOH中25V,4℃)。メンブランはTBST+5%BSA中で2時間ブロックされ、そしてTBST+3%BSA中でNeutrAvidin−HRP(希釈:1:7,500)とともに室温で1時間インキュベートされた(室温で1時間)。メンブランは室温TBSTにより8X15分洗浄された。ゲルからメンブランへの均一な転移はPonceauS染色によって確認された。
【0113】
結果は図7において示される。His−Parkinは57kDaにおいて、UbcH7は18kDaにおいて、Ubは8.6kDaにおいて、そしてHis−Parkin−Ub複合体は65kDa超において移動することに注目。明瞭なバンド形成パターンは、ATPを含有する反応液において15分に始まる66kDa領域において見られた。リガーゼ依存性活性は、90分までのATP不在下では観察されなかった。若干のシグナルが、Parkin、E1、ユビキチンおよびATPが90分間インキュベートされた場合に、66kDa領域に観察された(列4)。
【0114】
図7において示される結果は、15分の反応時間に始まる、大腸菌産生Parkinのリガーゼ活性を例証する他の実験と一致する。活性は60分で横ばいになるようである−生産物におけるさらなる増加は90分では見られなかった。60kDa領域における明瞭な二重の生産物(ならびに高分子量の染色(smear))の生成はATPを必要とし;これは、ユビキチンが非特異的方式でParkinと単純に共凝集している可能性を排除する。しかしながら、若干の反応生産物は、ParkinがE1およびユビキチンと90分間インキュベートされた場合、UbcH7の不在下で見られた。UbcH7不在下のParkinのこの明らかなユビキチン化は、ParkinとE1の間の非特異的相互作用であるともっとも考えられる。この反応において90分に生成された生産物量は、15分にUbcH7存在下で生成された生産物量よりもずっと少なかった(列4および12を比較せよ)。
【0115】
本明細書において引用された全公表物および特許文書(特許、公開された特許明細書および未公開特許明細書)は、各々のそのような公表物または文書が、具体的および個別に、引用によって本明細書に組み入れられているように、引用によって本明細書に組み入れられている。公表物および特許文書の引用は、いずれかのそのような文書が先行技術に関していることの是認を意図してなく、またそれが、同文書の内容または期日に関するいかなる是認をも構成しない。本発明は、記述された説明および実施例によって述べられた新規性を有し、当業者は、本発明が種々の実施態様において実行でき、そして前述の説明および実施例が具体的に説明することを目的とし、次に示す請求項を限定するものではないことを認識できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】Parkinの過発現がプロテアソーム活性の損傷をもたらすことを例証するイムノブロットを示す。
【図2A−E】Parkinタンパク質の発現がGFPuのような他のプロテアソーム基質の安定化および凝集をもたらすことを具体的に示すエピ蛍光(epifluorescent)および免疫蛍光画像を示す。
【図3】GFPuを発現し、そしてベクター発現ParkinまたはParkin変異体(2ugDNA)によりトランスフェクトされた細胞におけるGFPuレベルのFACscan分析を示す。棒グラフはトランスフェクション2日後のGFPuレベルを示す。変異体167、212、275および289は野生型Parkin(PKN)以上にプロテアソーム活性を減少させた。
【図4】HEK293/GFPu細胞における種々のParkin変異体cDNAの発現後のGFPu・aggresomeの形成を示す。細胞は2ugのcDNAによりトランスフェクトされ、そして5日後、各サンプルのエピ蛍光画像が、蛍光強度のレベルを反映するように各サンプルについて同じカメラ設定を用いて記録された。蛍光強度は細胞におけるGFPuレベルの直接測定値である。
【図5A−B】正常およびPD脳におけるParkinタンパク質の分布を示す。
【図6】ベクター対照(図6A、左)または野生型Parkin(図6A、右)によりトランスフェクトされた細胞の蛍光画像、および細胞からの平均蛍光強度を示す。
【図7】組み換え大腸菌からの精製ヒトParkinについての活性アッセイの結果を示す。イムノブロットにおける列は、(1)MWマーカー;(2)E1、UbcH7、ユビキチン、時間=90分;(3)E1、UbcH7、ユビキチン、ATP、時間=90分;(4)E1、ユビキチン、Parkin、ATP、時間=90分;(5)UbcH7、ユビキチン、Parkin、ATP、時間=90分;(6)E1、UbcH7、ユビキチン、Parkin、時間=0分;(7)E1、UbcH7、ユビキチン、Parkin、時間=15分;(8)E1、UbcH7、ユビキチン、Parkin、時間=30分;(9)E1、UbcH7、ユビキチン、Parkin、時間=60分;(10)E1、UbcH7、ユビキチン、Parkin、時間=90分;(11)E1、UbcH7、ユビキチン、Parkin、ATP、時間=0分;(12)E1、UbcH7、ユビキチン、Parkin、ATP、時間=15分;(13)E1、UbcH7、ユビキチン、Parkin、ATP、時間=30分;(14)E1、UbcH7、ユビキチン、Parkin、ATP、時間=60分;(15)E1、UbcH7、ユビキチン、Parkin、ATP、時間=90分に対する対応物を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)Parkinを発現する哺乳動物細胞を試験作用物に対して曝露し;
(b)その細胞におけるプロテアソーム機能と、試験化合物に曝露されなかったParkinを発現する対応する哺乳動物細胞のプロテアソーム機能特性とを比較すること;を含み、
ここで、試験作用物に曝露された細胞におけるプロテアソーム機能の増大されたレベルが、その作用物がパーキンソン病の処置のための候補化合物であることを指示する、パーキンソン病の処置のための候補化合物を同定するための細胞に基づくアッセイ。
【請求項2】
(a)Parkinを発現する哺乳動物細胞を得て;
(b)細胞を試験作用物に対して曝露し;
(c)その細胞におけるプロテアソーム機能を、試験作用物に曝露されなかった細胞におけるプロテアソーム機能と比較すること;を含み、
ここで、試験作用物に曝露された細胞におけるプロテアソーム機能の増大されたレベルが、その作用物がパーキンソン病の処置のための候補化合物であることを指示する、パーキンソン病の処置のための候補化合物を同定するための細胞に基づくアッセイ。
【請求項3】
哺乳動物細胞がGFPuを発現し、そしてプロテアソーム機能がその細胞におけるGFPuの量を測定することによって測定される、請求項1の方法。
【請求項4】
細胞におけるGFPuの量がGFPu蛍光を測定することによって決定される、請求項3の方法。
【請求項5】
(a)
(i)変異Parkinを発現する哺乳動物細胞を候補化合物に対して曝露し;
(ii)(a)(i)における細胞におけるプロテアソーム機能を、候補化合物に曝露されなかった変異Parkinを発現する細胞のプロテアソーム機能特性と比較すること;を含む、プロテアソーム機能アッセイ、および/または
(b)
(i)Huntingtinを発現する哺乳動物細胞を候補化合物に対して曝露し;
(ii)(b)(i)における細胞におけるプロテアソーム機能と、候補化合物に曝露されなかったHuntingtinを発現する細胞のプロテアソーム機能特性とを比較すること;を含む、プロテアソーム機能アッセイ、および/または
(c)
(i)化合物の存在下で、精製Parkinタンパク質のオートユビキチネーション(autoubiquitination)活性を測定し;そして
(ii)その化合物の存在下での精製Parkinタンパク質のオートユビキチネーション活性を、その化合物の不在下での精製Parkinタンパク質のオートユビキチネーション活性と比較すること;を含む、インビトロの活性アッセイ、および/または
(d)
(i)化合物を精製Parkinタンパク質と接触させ;
(ii)存在する場合には、その化合物とParkinタンパク質の結合を検出すること;を含む、インビトロの活性結合アッセイ、
をさらに含む、請求項1の細胞に基づくスクリーニング方法。
【請求項6】
(i)変異Parkinを発現する哺乳動物細胞を候補化合物に対して曝露し;(ii)その細胞におけるプロテアソーム機能と、変異Parkinを発現し、かつ候補化合物に曝露されなかった細胞のプロテアソーム機能特性とを比較すること;を含むプロテアソーム機能アッセイを含み、ここで、変異ParkinがR42P、S167N、C212Y、T240M、R275W、C289GまたはP437L Parkinである、請求項5の方法。
【請求項7】
方法が、
(a)封入体を破壊し、そしてヒスチジン・タグされたParkinを含有する可溶性画分を回収し;
(b)(a)からのヒスチジン・タグParkinのアフィニティークロマトグラフィーによってヒスチジン・タグParkinを精製し、該クロマトグラフィーが、グアニジン−HClを含む溶液により結合タンパク質を溶出して、ヒスチジン・タグParkinとグアニジン−HClを含んでなる組成物を生成することを含み;
(c)ヒスチジン・タグParkinとグアニジンを含んでなる組成物を、高濃度のアルギニンおよび還元剤を含有する緩衝水溶液に対して透析して、第1の透析物を生成し;そして
(d)アルギニンを実質的に含まない緩衝水溶液に対して第1の透析物を透析すること;を含む、
Parkinを発現する細菌細胞の封入体からヒスチジン・タグされたParkinを精製する方法。
【請求項8】
封入体が、グアニジンHClまたはイソチオシアン酸グアニジニウムの存在下で破壊される、請求項7の方法。
【請求項9】
封入体が2〜6M塩酸グアニジンの存在下で破壊される、請求項8の方法。
【請求項10】
還元剤が、β−メルカプトエタノール、DTTまたはTCEPである、請求項7の方法。
【請求項11】
高濃度のアルギニンを含有する緩衝水溶液中の高濃度のアルギニンが、約0.1M〜1Mアルギニンを含有する、請求項7の方法。
【請求項12】
アルギニンを実質的に含まない緩衝水溶液が0.5mM未満のアルギニンを含有する、請求項7の方法。
【請求項13】
アルギニンを実質的に含まない緩衝水溶液が0.1mM未満のアルギニンを含有する、請求項12の方法。
【請求項14】
(b)における溶出溶液が、50mM HEPES,pH8.0、5.5M GuHCl,500mMイミダゾール、10mMβ−ME、0.5mM EDTAであり;(c)における緩衝水溶液が、0.4Mアルギニン、50mM HEPES,pH8.0、10mM DTTであり;そして(d)における緩衝水溶液が、50mM HEPES,pH8.0、0.2M NaCl,10mM DTTである、請求項7の方法。
【請求項15】
ヒスチジン・タグを含む酵素的に活性のある精製組み換えParkinを含んでなる、組成物。
【請求項16】
Parkinが細菌発現系から得られる、請求項15の組成物。
【請求項17】
Parkinが、少なくとも約1単位(U)/0.5μgParkinタンパク質の比活性を有し、この場合、1単位が、ヒトGST−E1、UbcH7、ユビキチンおよびMg−ATPの存在下で15分間に50ngのユビキチンをParkinに転移する能力として定義される、細菌発現系から得られる酵素的に活性のあるParkinを含んでなる
組成物。
【請求項18】
Parkinがヒスチジン・タグを含む、請求項17の組成物。

【図1】
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【図2A−2E】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−519040(P2009−519040A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545762(P2008−545762)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/047515
【国際公開番号】WO2007/089334
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(506209846)エラン・フアーマシユーチカルズ・インコーポレーテツド (4)
【Fターム(参考)】