説明

パーソナルケア組成物

第1の態様によれば、水中油型エマルションを含むパーソナルケア組成物であって、前記エマルションが定義された水溶性乳化ポリマーを含む、パーソナルケア組成物が提供される。第2の態様によれば、第1の態様のパーソナルケア組成物の製造方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、定義された水中油型エマルションを含むパーソナルケア組成物、及び該パーソナルケア組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エマルションは一般に適当な乳化界面活性剤によって安定化され、該界面活性剤は、その両親媒性(amphiphillic)構造のために、油/水境界面に存在し、それ故に、分散された液滴を安定化する。しかしながら、これら界面活性剤は通常、皮膚、目及び頭皮に浸透して、場合により、それらを刺激して、一般的にはよくない肌触りを与えるといった不利益を発現する。さらに、エマルションを製造するための従来の界面活性剤の使用は、通常は、プロセス中に熱を付与することを必要とし、このことが、感熱成分を包含する可能性を制限し得る点、及び当該製造方法が実行されてよい場所のタイプをも制限することがある点で、不利益でもあり得る。例えば、安全性や他の懸念事項が、特定の望ましい場所でのエマルションの製造を妨げるかもしれない。
【0003】
アルコキシル化界面活性剤を包含する従来の界面活性剤の別の不利益は、それらが、エマルションの崩壊後に材料の再乳化を引き起こすかもしれないことである。エマルションの崩壊は乳化物質を放出させるが、洗浄/シャワー中にパーソナルクレンジング組成物を皮膚へ適用した後のような、再乳化は、所望の効果を低減させることがある(この例では、乳化された皮膚軟化剤及び活性物質が皮膚から洗い流されるためである)。
従来の界面活性剤のさらなる不利益は、高い溶解度パラメータを有する油のような極性油を満足に乳化できないことである。
【0004】
米国特許第4,640,709号は、水溶性アルキル化ポリビニルピロリドン乳化剤類を用いた水中油型エマルションの製造を教示している。これらの水中油型エマルションは、水不混和性材料を封入しつつある中間体に相当し、前記封入は、アルキル化PVPと追加の構成成分とを反応させて重縮合性の(polycondensate)「シェル壁」を水不混和性材料の周囲に形成することによって達成される。米国特許第4,640,709号は、除草剤、殺虫剤及び他の農薬の封入に関する。
【0005】
非常に不連続な相を有する濃厚なエマルションは、この不連続な相が例えば油又は水を含む場合、既知であり、また燃料、化粧品及び食物のように、多数の技術における適用が見出されている。これらのエマルションの凡例は、マヨネーズである(これは通常、水中に約70%の植物油を含むことがある)。これら濃厚なエマルションはまた、その濃縮物が、例えば高濃度の皮膚軟化剤、保湿剤及び日焼け止め剤を安定に含有し得ることから、化粧用領域にも適用が見出されており、該エマルションはその後、所望の最終製品を得るために単純な冷却混合を用いて希薄化する(diluted down)ことができる。米国特許第4,606,913号及び米国特許第5,976,604号が参照として挙げられ、これらは濃厚なエマルションを示唆している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の考慮すべき事柄を考察して、ヒトの皮膚及び細胞膜を刺激する可能性が低く、かつ改善された肌触りを与える水中油型エマルション系のパーソナルケア組成物を開発することは有益であろう。それに加えて、ヒトの皮膚又は布地のように、適用される基材により実質的なものであって、一度崩壊したら再乳化し難い傾向を示すパーソナルケア組成物を開発するのが有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、エマルションを含むパーソナルケア組成物であって、前記エマルションが水性連続相、不連続油相及び乳化剤を含み、該乳化剤が、少なくとも3000ダルトンの分子量を有する非アルコキシル化水溶性乳化ポリマーを含み、該水溶性乳化ポリマーの0.1重量%水溶液が、約25℃で測定したときに15〜60mN/m(15〜60dyn/cm)の表面張力を有する、パーソナルケア組成物が提供される。
【0008】
本明細書で使用するとき、「パーソナルケア」という用語には、皮膚保湿用途、スキンクレンジング用途、メークアップ用途、防臭剤及び制汗剤用途並びに上質の芳香剤用途のような化粧用途及びパーソナルクレンジング用途が包含されるが、これらに限定されない。
【0009】
本明細書で使用するとき、前記水溶性乳化ポリマーに関する「非アルコキシル化」という用語は、アルコキシ基を含まないポリマー、すなわち分子中にもポリマー主鎖中にも−OR基(ここで、Rはアルキル部分を包含する)がないか、又はそれらにも他の場所にもペンダントとしての−OR基がないポリマーを意味する。
【0010】
本明細書で使用するとき、「水中油型」又は「o/w」という用語は、水相が連続相であり、油相が不連続相であるように、油相が水相中に分散されていることを意味する。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、
(a)濃厚なエマルションを製造する工程であって、該エマルションがエマルションの少なくとも約50重量%の不連続油相、水性連続相及び乳化剤を含み、前記乳化剤が少なくとも約3000ダルトンの分子量を有する非アルコキシル化水溶性乳化ポリマーを含み、該水溶性乳化ポリマーの0.1重量%水溶液が、約25℃で測定したときに15〜60mN/m(15〜60dyn/cm)の表面張力を有する、エマルションを製造する工程;
(b)前記パーソナルケア組成物の他の構成成分全てのプレミックスを製造する工程;
(c)前記の濃厚なエマルションを前記プレミックスに連続して混合しながら添加する工程。
(d)一様なコンシステンシーのパーソナルケア組成物が得られるまで混合を続ける工程
を含むパーソナルケア組成物の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本明細書の全ての重量、測定値及び濃度は、特に指定のない限り、組成物全体に関して25℃で測定される。
特に指示のない限り、本明細書で言及する組成物の割合は全て、組成物全体(すなわち、存在する構成成分全ての和)の重量%であり、また全ての比は重量比である。
特に指示のない限り、ポリマーの分子量は全て重量平均分子量である。
特に指示のない限り、本文内で参照される全ての文献の内容は、その全てを本明細書に参考として組み込む。
【0013】
実際に測定した値の特定の例を提示する場合を除いて、本明細書で言及する数値は、「約」という言葉が付与されていると考えるべきである。
【0014】
本発明の前記油相は、周囲条件で液体の任意の水不混和性材料;周囲条件で固体であり、融点が100°C未満でかつ溶融すると水不混和性液体を形成する任意の材料;このような材料の混合物を含んでいてよい。
【0015】
前記油相に関して本明細書で使用するとき、「水不混和性」という用語には、ヒルデブランド溶解度パラメータが約5〜12cal/cc(209〜502kJ/m2)である材料が包含される。前記溶解度パラメータは、一分子から広がる全ての引力の和と定義される。ファン・デル・ワールス力の合計をヒルデブランド溶解度パラメータと言い、これは、沸点とMWデータを用いたヒルデブランド方程式を用いて計算され得る。ヒルデブランド溶解度パラメータを計算するための方法及びコンピュータプログラムは、CDボーガン(C.D.Vaughan)によって化粧品化学会誌(J.Cosmet.Chem.)36、319〜333(1985年9月/10月)に開示されている。
【0016】
油相内に含まれる材料は、いずれかの極性を有していてよく、また脂肪族又は芳香族炭化水素類、エステル類、アルコール類、エーテル類、カーボネート類、フッ化炭化水素類、シリコーン類、フルオロシリコーン類又はこれらの誘導体を包含していてよい。
【0017】
油相中に存在していてよい固体材料としては、ろう(waxes)が挙げられる。本明細書で使用するとき、「ろう」という用語には、天然及び合成のろうが包含される。天然ろうの部類としては、蜜蝋、ラノリン、セラックろう及びイボタろう(Chinese insect wax)のような動物ろう;カルナウバ、キャンデリラ、ヤマモモ及びサトウキビのような植物ろう;セレシン及びオゾケライトのような鉱ろう;微晶ろう及びペトロラタムのような石油化学製品ろうが挙げられる。合成ろうの部類としては、エチレン性ポリマー及びポリオールエーテル−エステル類、塩化ナフタレン類及びフィッシャー・トロプシュろうが挙げられる。より詳細には、レンプ化学百科事典(Rompp Chemie Lexikon)、ゲオルグ・ティエメ出版社(Georg Thieme Verlag)、シュトゥットガルト、第9版、1995年「ろう(Wachse)」の欄を参照のこと。
【0018】
有利なことに、前記油相中に含まれる材料は、溶融されたろうを包含し、0.005〜30,000cm2/s(0.5〜3,000,000cst)、好ましくは0.005〜20,000cm2/s(0.5〜2,000,000cst)、より好ましくは0.005〜3500cm2/s(0.5〜350,000cst)の範囲の粘度を有する。
【0019】
前記油相は、パーソナルケア組成物の数%〜90重量%までを構成していてよい。有利には、前記油相はパーソナルケア組成物の50重量%未満を構成している。
【0020】
本発明のエマルションの前記水相は、水を含み、また、アルコール類;多価アルコール類(例えばグリセリン及びプロピレングリコール)を包含する、保湿剤;d−パンテノール、ビタミンB3及びその誘導体(ナイアシンアミドなど)並びに植物抽出物のような活性剤;増粘剤及び防腐剤のような、追加の水溶性構成成分を含んでいてもよい。
【0021】
本発明の水溶性乳化ポリマーが、少なくとも分子量3000ダルトンを有するのは、このレベル以下では、得られるエマルションの肌触りがよくないためである。肌触りは分子量が高くなるにつれて向上するのであって、本発明の水溶性乳化ポリマーは分子量が7500ダルトンを超える、より好ましくは9000ダルトンを超える、さらに好ましくは10,000ダルトンを超えることが好ましい。
【0022】
前記乳化ポリマーの分子量は、有利には、130キロダルトンを超えない。この点を超え、特に、通常使用される乳化ポリマーの濃度であって、内部の油相が当該エマルションの80重量%超の濃度で存在する場合に、水相の粘度が乳化を妨げるレベルに達することがある。
【0023】
有利には、当該エマルション内に含まれる乳化剤の総重量の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%は、1つ以上の非アルコキシル化水溶性乳化ポリマーからなる。非常に有利には、当該エマルション内に含まれる乳化剤は、本明細書に記載の1つ以上の非アルコキシル化水溶性乳化ポリマーのみからなる。
【0024】
驚くべきことに、定義された分子量及び表面張力の基準を満たすいずれかの非アルコキシル化水溶性ポリマーを使用して、本発明のエマルションを乳化してよく、しかも前記ポリマーは、先行技術に見受けられる問題を低減することが可能であることが分かった。このことは、水溶性ポリマーの化学的性質(chemical nature)に関わらず当てはまることから、広く様々な化学的性質(chemistries)のポリマーが使用されてよい。本発明で使用されてよい非限定的な水溶性ポリマーとしては、ISP社(ISP Corp.)から「ガネックス(Ganex)P904」として商品化されているブチル化ポリビニルピロリドンのような、アルキル化ポリビニルピロリドン;ISP社(ISP Corp.)から「EZスパース(EZ Sperse)」として商品化されている製品に包含されるようなポリ(メチルビニルマレイン酸ナトリウム塩)のモノブチルエステルを包含する、ポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸)ナトリウム塩のモノアルキルエステル類;ISP社(ISP Corp.)から「アクアフィックス(Aquafix)FX64」として商品化されている製品に包含されるような、イソブチレン/エチルマレイミド/ヒドロキシエチルコポリマー;ISP社(ISP Corp.)から「スタイレーゼ(Styleze)W20」として商品化されている製品に包含されるような、(3−ジメチルアミノプロピル)−メタクリルアミド/3−メタクリロイルアミドプロピル−ラウリル−ジムチル(dimthyl)−アンモニウムクロライドが挙げられる。
【0025】
有利には、本発明の非アルコキシル化水溶性ポリマーのうち少なくとも1つはフィルム形成性特性を有する。これらの特性は、より高分子量のポリマー、特に分子量が10,000ダルトンを超えるものに観察される。前記フィルム形成性特性は、アルコキシル化界面活性剤類を包含する、従来の界面活性剤に対して、基材上のエマルションの実体性(substantivity)をさらに高めることがある。アルコキシル化界面活性剤類を包含する、典型的な界面活性剤類を含む乾燥された(Dried-down)水中油型エマルションは、濡れると再乳化するかもしれないという不利益に悩まされているが、非アルコキシル化水溶性ポリマーは、そのようになり難い。理論に束縛されるものではないが、フィルム形成性ポリマーが油相上にフィルムを形成して基材に留まり得ることから、当該組成物の実体性(substantivity)は、ポリマーがフィルム形成性特性を示すとさらに高まることがあると考えられる。
【0026】
本発明のパーソナルケア組成物は、水溶性乳化ポリマーを0.001重量%〜5重量%、好ましくは0.01重量%〜2重量%、より好ましくは0.1重量%〜1重量%含んでいてよい。
【0027】
本発明のパーソナルケア組成物は、追加の構成成分を含んでいてもよい。これら他の構成成分の正確な性質は、最終製品の性質(例えば、それがローション、シャンプー、メークアップ、又は香料組成物であるか否か)に左右されることから、ここに完全なリストを与えることはできない。他の構成成分の非限定的な例としては、水を包含する溶媒;増粘剤;グリセリン及びプロピレングリコールを包含する、多価アルコール類のような保湿剤;有機及び無機顔料を包含する顔料;防腐剤;キレート化剤、抗菌剤、香料が挙げられる。非イオン性、アニオン性、カチオン性、双性イオン性及び両性界面活性剤のような界面活性剤も存在していてもよいが、上述のように、存在する乳化剤の大部分、又は実際は全てが前記定義された非アルコキシル化水溶性乳化ポリマーからなることが好ましい。
【0028】
本発明の第2の態様によれば、本発明のパーソナルケア組成物の製造方法が提供される。当該方法は、
(a)濃厚なエマルションを製造する工程であって、該エマルションがエマルションの少なくとも約50重量%の不連続油相、水性連続相及び乳化剤を含み、前記乳化剤が少なくとも約3000ダルトンの分子量を有する非アルコキシル化水溶性乳化ポリマーを含み、該水溶性乳化ポリマーの0.1重量%水溶液が、約25℃で測定したときに15〜60mN/m(15〜60dyn/cm)の表面張力を有する、エマルションを製造する工程;
(b)前記パーソナルケア組成物の他の構成成分全てのプレミックスを製造する工程;
(c)前記の濃厚なエマルションを前記プレミックスに連続して混合しながら添加する工程
(d)一様なコンシステンシーのパーソナルケア組成物が得られるまで混合を続ける工程
を含む。
【0029】
有利には、前記方法は、所望の油相粒径が得られるまで混合を続ける追加の工程(e)を含む。有益なことに、前記油相粒径は、1〜20μmの範囲である。
【0030】
工程(a)で調製される濃厚なエマルションは、前記パーソナルケア組成物の0.01〜30重量%、好ましくは0.25〜12重量%、より好ましくは0.25〜5重量%を構成する。
【0031】
前述の工程(a)は、濃厚なエマルションの製造を定義する。典型的な濃厚なエマルションは、1〜5%の水溶性乳化ポリマー及び6〜15%の水相を含有してよいが、これらの範囲は限定的ではない。通常は、前記水相は、水100%からなるか、又は水と他の水溶性構成成分との混合物からなる。好ましくは、前記水相の粘度は、2Pa・s(2000cps)を超えない。これは、この点を超えると乳化し難くなることがあるためである。
【0032】
工程(a)の実行に関するさらなる詳細は次の通りである。最初に、前記水溶性乳化ポリマーを混合しながら前記水相に添加する。この後で、油の総重量の2〜3%の別個のバッチを、穏やかに混合しながら、次のバッチを加える前に一様なコンシステンシーを得るために、水相に連続的に滴下する。油の総重量の約20%が添加されるまで、これを続ける。二番目の段階では、全ての油を含む均一なエマルションが得られるまで、残りの油を、より素早くかつ連続した様式でより激しく混合しながら添加する。三番目の段階では、所望の範囲の典型的な粒子を発現する一様なコンシステンシーが得られるまで、混合を続ける。得られる濃厚なエマルションは、通常は該エマルションの重量に対し70%超、大抵は80〜93%の内部油相を含み、貯蔵されても、他の場所に移されてもよい、安定な濃度を形成する。
【0033】
前記製造方法の工程(b)は、前記パーソナルケア組成物の他の構成成分全てのプレミックスを形成することを包含する。これら他の構成成分の正確な性質は、最終製品の性質に左右されることから、ここに完全なリストを与えることはできない。他の構成成分の非限定的な例としては、水を包含する溶媒;増粘剤;グリセリン及びプロピレングリコールを包含する、多価アルコール類のような保湿剤;有機及び無機顔料を包含する顔料;防腐剤;キレート化剤、抗菌剤、香料が挙げられる。非イオン性、アニオン性、カチオン性、双性イオン性及び両性界面活性剤のような界面活性剤も存在していてもよいが、上述のように、存在する乳化剤の大部分、又は実際は全てが前記定義された非アルコキシル化水溶性乳化ポリマーからなることが好ましい。
【0034】
前記製造方法の工程(c)〜(e)は、工程(a)の濃厚なエマルションを工程(b)のプレミックスへ添加すること、一様なコンシステンシーを達成するために混合すること、好ましくは、所望の粒径となるまでさらに混合することを包含する。前記混合工程は、いかなる特別な条件をも必要とせず、室温及び低い剪断混合で行われてよい。「冷却混合」、すなわち、熱を付与せずに周囲条件で混合することの可能性は、プロセス工程(b)〜(e)が行われてよい場所を非常に融通自在にすることから、本方法の重要な利点である。特に、冷却混合は、安全性への懸念をほとんど起こさない。
本発明の方法で製造され得るパーソナルケア組成物の例としては、手用ローション及び身体用ローション、シャンプー組成物、メークアップ、香料及び香料ジェル組成物が挙げられる。
【0035】
(測定方法)
(水溶性乳化ポリマーの溶解性試験)
前記乳化ポリマーに関して本明細書で使用するとき、「水溶性」という用語には、以下の条件を満たすポリマーが包含される:該ポリマーの1重量%脱イオン水溶液が、室温において、455〜800nmの範囲の波長の光の、少なくとも90%の透過率を与える。試験は、ポリマー溶液を、標準的な注射器フィルターから口径450nmを有する路長1cmのキュベットへ通過させて、390〜800nmにわたって走査して記録するように準備されたHP 8453分光光度計を用いて走査することにより行われた。濾過は、不溶性構成成分を取り除くために行われた。
【0036】
(表面張力の測定)
流体の表面張力を測定するのに使用される方法は、いわゆる「ウィルヘルミー・プレート(Wilhelmy Plate)法」である。ウィルヘルミー・プレート法は、時間間隔をおいて表面張力を評価するのに特に好適な一般的な方法である。本質的には、既知の周長の垂直プレートをはかりに取り付けて、濡れに起因する力を測定する。より具体的には以下の通りである。
【0037】
水溶性乳化ポリマーの0.1重量%水溶液を脱イオン水で調製する。次に、このポリマー溶液を汚染されていない乾燥したガラス溶液に流し入れて、容器温度を25℃に制御する。汚染されていないアニールされたウィルヘルミー・プレートを前記液体の表面まで下げる。前記プレートが表面まで達したところで、前記液体からプレートを取り除くのに必要な力を測定する。
【0038】
用いられる設備及び付随する設定は以下の通りである。
装置:ドイツ−22453ハンブルグ、ボルシュテラー・チャウゼエ85−99a(Borsteler Chausee 85-99a,22453 Hamburg-Germany)のクリュス社(Kruss GmbH)製のクリュス(Kruss)張力計K12( HYPERLINK "http://www.kruess.com" www.kruess.comを参照のこと)。
プレート寸法:幅:19.9mm;厚さ:0.2mm;高さ:10mm
測定時の設定:液浸深さ2mm、表面検出感度0.01g、表面検出速度6mm/分、数値10、取得物 直線、最長測定時間60秒
前記プレートが前記流体中に浸されると、対応する表面張力値が装置のディスプレイに表示される。クリュス社(Kruss GmbH)ハンブルグ編のユーザマニュアル1996年バージョン2.1には複数の指示事項を見出すことができる。
【実施例】
【0039】
次の実施例は、本発明の範囲内の好ましい実施形態についてさらに説明し、実証するものである。本発明の範囲から逸脱することなく本発明の多くの変更が可能であるため、これら実施例は例示のみを目的とするものであって、本発明を制限するものとして解釈されるべきではない。
【0040】
(実施例1)手用ローション及び身体用ローション
【0041】
【表1】

1ダウ・コーニング(Dow Corning)1503流体は、ダウ・コーニング社(Dow Corning)製のジメチコン及びジメチコノールである。
2EZスパース(EZ Sperse)は、ポリ(メチルビニルマレイン酸ナトリウム塩)のモノブチルエステルの25%溶液であって、水/ブタノールと反応して半エステルを形成した無水マレイン酸とメチルビニルエーテルのコポリマーであり、これは水酸化ナトリウムで中和されている。EZスパース(EZ Sperse)は、ISP社(ISP Corp.)製である。
【0042】
(濃厚な水中油型エマルション1000gバッチの調製手順)
イソヘキサデカン、イソステアリン酸イソプロピル及びdl−酢酸トコフェリルを、キッチンエイド・ウルトラパワーミキサー(Kitchen Aid Ultra Power Mixer)を用いて均一になるまで混合した。水とEZスパース(EZ Sperse)を同様の方法で混合した。次に、イソヘキサデカン/イソステアリン酸イソプロピル/dl−酢酸トコフェリルを、付属パドルを付けたキッチンエイド・ウルトラパワーミキサー(Kitchen Aid Ultra Power Mixer)を用いて設定「4」で続けて混合しながら、水/EZスパース(EZ Sperse)に8g/分の速度で加えた。完全に添加した後、ダウ・コーニング(Dow Corning)1503を前記と同じ速度でこの混合物に加えて、均一な混合物が得られるまで前記と同様に混合した。
【0043】
【表2】

3ニッパ・ラボ社(Nipa Labs Inc.)製のフェノキシエタノール及びメチル−、エチル−、ブチル−、ポピル(Popyl)及びイソブチルパラベン。
4セッピゲル(Seppigel)305は、ポリアクリルアミドとC13〜14イソパラフィンとラウレス−7であって、セピック・グループ社(Seppic Group)から入手できる。
5システム(System)3 AM500は、コラボレイティヴ・ラボラトリーズ社(Collaborative Laboratories Inc.)から商品化されている、水と、ペトロラタムと、レシチンと、水添レシチンと、ポリホスホリルコリングリコールアクリレートとの混合物である。
6システム(System)3 AM900は、コラボレイティヴ・ラボラトリーズ社(Collaborative Laboratories Inc.)から商品化されている、水と、セテアリルアルコールと、水添ポリイソブテンと、レシチンと、水添レシチンと、ブチレングリコールとポリホスホリルコリングリコールアクリレートとの混合物である。
【0044】
(手用ローション及び身体用ローション1000gバッチの調製手順)
混合は全て、付属パドルを付けたキッチンエイド・ウルトラパワーミキサー(Kitchen Aid Ultra Power Mixer)を用いて、速度設定「2」で行った。
【0045】
脱イオン水、グリセリン、フェノニップ(Phenonip)及びd−パンテノールを、均一になるまで混合し、均一になった時点で、この混合物にセピゲル(Sepigel)305を分散させて、これらも均一になるまで混合した。この後、システム(System)3 AM900を混合物に加えて、均一になるまで混合し、システム(System)3 AM500を添加して均一になるまで混合し、最後に、濃厚な水中油型エマルションをこの混合物に加えて、一様なコンシステンシーの手用ローション及び身体用ローションが作製されるように混入した。
【0046】
(実施例2)メークアップファンデーション
【0047】
【表3】

1コボ・プロダクツ社(Kobo Products Inc.)、二酸化チタン及びトリイソステアリン酸イソプロピルチタン
2コボ・プロダクツ社(Kobo Products Inc.)、水和された酸化第二鉄及びトリイソステアリン酸イソプロピルチタン
3コボ・プロダクツ社(Kobo Products Inc.)、酸化第二鉄及びトリイソステアリン酸イソプロピルチタン
4コボ・プロダクツ社(Kobo Products Inc.)、酸化鉄及びトリイソステアリン酸イソプロピルチタン
5ISPコープ社(ISP Corp.,Inc.)から入手されるブチル化ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrollidone)
【0048】
(顔料プレミックス調製手順)
ガネックス(Ganex)P904と水を、キッチンエイド・ウルトラパワーミキサー(Kitchen Aid Ultra Power Mixer)を用いて均一になるまで混合した。次に、前記顔料をガネックス(Ganex)P904/水に添加して、チト・ウングエイター(Cito Unguator)ミキサーを用いて設定5で1分間混合した。
【0049】
【表4】

6ダウ・コーニング社(Dow Corning)製のシクロヘキシシロキサン(Cyclohexsiloxane)流体
7ダウ・コーニング社(Dow Corning)製のシクロペンタシロキサン流体
【0050】
(濃厚な水中油型エマルション1000gバッチの調製手順)
トリデシルネオペンタノエート、ダウ・コーニング(Dow Corning)245及び246を、キッチンエイド・ウルトラパワーミキサー(Kitchen Aid Ultra Power Mixer)を用いて均一になるまで混合した。水とEZスパース(EZ Sperse)を同様の方法で混合した。次に、付属パドルを付けたキッチンエイド・ウルトラパワーミキサー(Kitchen Aid Ultra Power Mixer)を用いて設定「4」で続けて混合しながら、トリデシルネオペンタノエート/ダウ・コーニング(Dow Corning)245及び246を、水/EZスパース(EZ Sperse)に8g/分の速度で添加した。
【0051】
【表5】

8ナショナル・スターチ・アンド・ケミカル社(National Starch & Chemical)から入手可能なオクチルコハク酸アルミニウムデンプン及び窒化ホウ素
【0052】
(メークアップファンデーションの調製手順)
混合は全て、付属パドルを付けたキッチンエイド・ウルトラパワーミキサー(Kitchen Aid Ultra Power Mixer)を用いて、速度設定「2」で行った。
【0053】
フェノニップ(Phenonip)を水に分散させて混合した。ドライ・フロー・エリート(Dry Flo Elite)BNをグリセリンに分散させて、均一になるまで混合し、次にグリセリン/ドライ・フロー・エリート(Dry Flo Elite)BNを、前記フェノニップ(Phenonip)/水に添加して、均一になるまで混合した。セッピゲル(Seppigel)305をこの混合物に添加して、滑らかで、かつ塊がなくなるまで、混合した。この時点で、前記顔料を混入して、色が均一になるまで混合を続けた。最後に、濃厚な水中油型エマルションを均一になるまで混入して、完成したメークアップファンデーションを作製した。
【0054】
(実施例3)香料ジェル
【0055】
【表6】

【0056】
(濃厚な水中油型エマルションの調製手順)
EZスパース(EZ Sperse)及び7.5重量%の水を、キッチンエイド・ウルトラパワーミキサー(Kitchen Aid Ultra Power Mixer)を用いて均一になるまで混合した。その後、付属パドルを付けたキッチンエイド・ウルトラパワーミキサー(Kitchen Aid Ultra Power Mixer)を用いて設定「4」で続けて混合しながら、芳香剤油を8g/分の速度で添加する。粘度が高いため、次に、付属パドルを付けたキッチンエイド・ウルトラパワーミキサー(Kitchen Aid Ultra Power Mixer)を用いて設定「4」で続けて混合しながら、エマルションを残りの水で希釈した。
【0057】
【表7】

【0058】
(香料ジェルの調製手順)
混合は全て、付属パドルを付けたキッチンエイド・ウルトラパワーミキサー(Kitchen Aid Ultra Power Mixer)を用いて、速度設定「2」で行った。
【0059】
セッピゲル(Seppigel)305を水に分散させて、滑らかなゲルが得られるまで混合し、(滑らかなゲルが得られた)時点で、香料o/wエマルションを添加し、一様なコンシステンシーの香料ジェルが製造されるまで混合した。
【0060】
(実施例8)ろうエマルション
この実施例は、ろうを主体とする油相を含む濃厚なエマルションの生成に関する。前記の濃厚なエマルションは、前述の実施例におけるもののような、本発明のパーソナルケア組成物へ組み込むのに適している。
【0061】
【表8】

【0062】
(水中油型エマルションの調製手順)
EZスパース(EZSperse)、水及びグリセリンを均一になるまで混合する。この混合物を70℃まで加熱した。単独で、ペトロラタムも70℃まで加熱した。次いで、ペトロラタムを前記水相にゆっくりと添加して、パドルブレードを装備したキッチンエイド・ミキサー(Kitchen Aid Mixer)を用いて連続して混合した。一様なコンシステンシーが得られるまで混合を続けた。
【0063】
本明細書に記載される実施例及び実施形態は、単に例示することが目的であり、本発明の範囲から逸脱することなくその種々の修正又は変更が当業者に提示されているものと理解される。
【0064】
「発明を実施するための最良の形態」で引用した全ての文献は、関連部分において本明細書に参考として組み込まれているが、いずれの文献の引用も、それが本発明に対する先行技術であるとの容認と解釈されるべきではない。
【0065】
本発明の特定の実施形態について説明し記載したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、他の様々な変更及び修正を実施できることが、当業者には明白であろう。従って、本発明の範囲内にあるそのような全ての変更及び修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エマルションを含むパーソナルケア組成物であって、前記エマルションが;
a)水性連続相;
b)不連続油相;
c)乳化剤
を含み;前記乳化剤が、少なくとも約3000ダルトンの分子量を有する非アルコキシル化水溶性乳化ポリマーを含み、前記水溶性乳化ポリマーの0.1重量%水溶液が、約25℃で測定したときに約15〜約60mN/m(約15〜約60dyn/cm)の表面張力を有する、パーソナルケア組成物。
【請求項2】
前記乳化剤の総重量の少なくとも約70%が、1以上の非アルコキシル化水溶性乳化ポリマーからなる、請求項1に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項3】
前記乳化剤が、少なくとも1つの非アルコキシル化水溶性乳化ポリマーからなる、請求項1に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項4】
前記油相が約5〜約12cal/cc(約209〜約502kJ/m2))のヒルデブランド溶解度パラメータを有する、請求項1に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項5】
前記油相が約0.005cm2/s〜約30,000cm2/sの粘度を有する、請求項1に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項6】
前記水溶性乳化ポリマーが約10,000ダルトンを超える平均分子量を有する、請求項1に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項7】
前記乳化ポリマーが約130キロダルトン未満の平均分子量を有する、請求項1に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項8】
前記乳化ポリマーの水溶性(the water-soluble of the emulsification polymer)を約0.001重量%〜約5重量%含む、請求項1に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項9】
前記水溶性乳化ポリマーを約0.1〜約1重量%含む、請求項1に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項10】
前記乳化剤が、ポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸)ナトリウム塩のモノアルキルエステル類;アルキル化ポリビニルピロリドン;テレフタレートポリエステル類及び(3−ジメチルアミノプロピル)−メタクリルアミド/3−メタクリロイルアミドプロピル−ラウリル−ジムチル(dimthyl)−アンモニウムクロライド並びにこれらの混合物から成る群より選択される前記水溶性乳化ポリマーを含む、請求項1に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項11】
前記組成物が、ローション、シャンプー、メークアップ及び香料ジェルから成る群より選択される、請求項1に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項12】
前記ローションが、手用ローション及び身体用ローションである、請求項11に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項13】
エマルションを含むパーソナルケア組成物であって、前記エマルションが;
a)水性連続相;
b)不連続油相;
c)乳化剤
を含み;前記乳化剤が少なくとも1つの非アルコキシル化水溶性乳化ポリマーからなり、前記非アルコキシル化水溶性乳化ポリマーが少なくとも約10,000ダルトンの平均分子量を有し;前記水溶性乳化ポリマーの0.1重量%水溶液が、約25℃で測定したときに約15〜60mN/m(15〜60dyn/cm)の表面張力を有する、パーソナルケア組成物。
【請求項14】
エマルションを含むパーソナルケア組成物であって、前記エマルションが;
a)水性連続相;
b)不連続油相;
c)乳化剤
を含み;前記乳化剤が、ポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸)ナトリウム塩のモノアルキルエステル類;アルキル化ポリビニルピロリドン;テレフタレートポリエステル類及び(3−ジメチルアミノプロピル)−メタクリルアミド/3−メタクリロイルアミドプロピル−ラウリル−ジムチル(dimthyl)−アンモニウムクロライド並びにこれらの混合物から成る群より選択される少なくとも1つの水溶性乳化ポリマーを含む、パーソナルケア組成物。
【請求項15】
エマルションを含むパーソナルケア組成物であって、前記エマルションが;
a)水性連続相;
b)不連続油相;
c)乳化剤
を含み;前記乳化剤が少なくとも1つの非アルコキシル化水溶性乳化ポリマーを含み;前記非アルコキシル化水溶性乳化ポリマーが少なくとも約10,000ダルトンの平均分子量を有し;前記水溶性乳化ポリマーの0.1重量%水溶液が、約25℃で測定したときに約15〜60mN/m(15〜60dyn/cm)の表面張力を有し;前記水溶性乳化ポリマーの少なくとも1つがフィルム形成性ポリマーである、パーソナルケア組成物。
【請求項16】
パーソナルケア組成物の製造方法であって、前期方法が:
(a)濃厚なエマルションを製造する工程であって、前記エマルションがエマルションの少なくとも約50重量%の不連続油相、水性連続相及び乳化剤を含み、前記乳化剤が少なくとも約3000ダルトンの分子量を有する非アルコキシル化水溶性乳化ポリマーを含み、前記水溶性乳化ポリマーの0.1重量%水溶液が、約25℃で測定したときに約15〜約60mN/m(約15〜約60dyn/cm)の表面張力を有する、エマルションを製造する工程;
(b)前記パーソナルケア組成物の他の構成成分全てのプレミックスを製造する工程;
(c)前記の濃厚なエマルションを前記プレミックスに連続して混合しながら添加する工程
(d)一様なコンシステンシーのパーソナルケア組成物が得られるまで混合を続ける工程
を含む、方法。
【請求項17】
所望の油相粒径が得られるまで混合を続ける追加の工程(e)をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記油相粒径が約1〜約20μmである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
濃厚なエマルションが前記パーソナルケア組成物の約0.01〜約30重量%を構成する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
濃厚なエマルションが前記パーソナルケア組成物の約0.25〜約5重量%を構成する、請求項16に記載の方法。


【公表番号】特表2007−501787(P2007−501787A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522659(P2006−522659)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/024899
【国際公開番号】WO2005/016295
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】