説明

パーツフィーダの除電装置および方法

【課題】軽量粒状物としてのワークWを効果的に除電し得るパーツフィーダの除電装置および方法を提供すること。
【解決手段】粒状のワークWを所定経路に沿って搬送するインラインフィーダIF、および供給された前記ワークを少量ずつ連続的に前記インラインフィーダの所定個所に対して落とし込む回転ドラムDを有するパーツフィーダにおけるワークの帯電を除去するパーツフィーダの除電装置において、前記回転ドラムにおける前記インラインフィーダの所定位置近傍に設けられた+電極と−電極とを含む少なくとも一対の電極E1,E2と、直流高電圧電源Pと、前記電源から給電されて極性高電圧を形成し、前記+電極に正の、また前記−電極に負の電圧を印加する極性電圧形成回路とをそなえたことを特徴とするパーツフィーダの除電装置、および方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーツフィーダの除電装置および方法に係わり、とくにパーツフィーダにより搬送されるワークの帯電を除去する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に部品を実装する工程では、取り付けるべき部品をパーツフィーダで搬送し、順次回路基板に実装していく。この種の電子部品は、回路の小型化に伴い、相当に小型軽量化しており、+であれ−であれ、帯電するとパーツフィーダの接触面に静電的に吸着して移動しなくなる。
【0003】
このため、パーツフィーダは、これら電子部品すなわちワークの除電を如何に効果的に行えるかが課題であって除電のための種々の試みがなされており、例えばワークにプラズマを作用させることにより、プラズマイオンがワークの帯電電荷を中和することを期待した開発がなされている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−053221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、プラズマイオンを作用させるだけでは必ずしも十分な除電効果は得られない。このため、プラズマイオンによる方式以外の除電方式が求められている。
【0005】
本発明は上述の点を考慮してなされたもので、軽量粒状物としてのワークを効果的に除電し得るパーツフィーダの除電装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的達成のため、本発明では、
粒状のワークを所定経路に沿って搬送するインラインフィーダ、および供給された前記ワークを少量ずつ連続的に前記インラインフィーダの所定個所に対して落とし込む回転ドラムを有するパーツフィーダにおける、ワークの帯電を除去するパーツフィーダの除電装置において、
前記回転ドラムにおける前記インラインフィーダの所定位置近傍に設けられた+電極と−電極とを含む少なくとも一対の電極と、
直流電圧を発生する電源と、
前記電源から極性高電圧を形成し、前記+電極に正の、また前記−電極に負の高電圧を印加する極性電圧形成回路と
をそなえたことを特徴とするパーツフィーダの除電装置、
および
粒状のワークを所定経路に沿って搬送するインラインフィーダ、および供給された前記ワークを少量ずつ連続的に前記インラインフィーダの所定個所に対して落とし込む回転ドラムを有するパーツフィーダにおける、ワークの帯電を除去するパーツフィーダの除電方法において、
前記回転ドラムにおける前記インラインフィーダの所定位置近傍に+電極と−電極とを含む少なくとも一対の電極を配し、
高電圧を発生して正、負の極性高電圧を形成し、
前記+電極に正の、また前記−電極に負の高電圧を印加する
ことを特徴とするパーツフィーダの除電方法、
を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は上述のように、回転ドラムにおけるインラインフィーダの所定位置近傍に少なくとも一対の電極を配して+電極からは正の、−電極からは負の高電圧電界をワークに印加するようにしたため、+,−両電極からの高電圧電界の作用でワークの帯電が中和され、ワークが回転ドラムに吸着し難くなり、インラインフィーダに円滑に供給される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は、本発明を適用したインラインフィーダIFの構造を示している。このインラインフィーダIFは、直線状のシュートSの端部に回転ドラム式フィーダDFが配され、この回転ドラム式フィーダDFからワーク(図示せず)が連続的にシュートS上に供給される。
【0010】
回転ドラム式フィーダDFは、シュートSに対して軸方向がやや斜め上向きに配された樹脂製のドラムDがモータMによりローラRを介して駆動されるもので、ドラムDは内部にワークを掻き揚げるためのフィンが適宜間隔で配されている。これにより、モータMによってドラムDを回転させると、内部のフィンが外部から供給されたワークを掻き揚げてシュートS上に落下させる。
【0011】
その際、ドラムDの外周に配され、高電圧電源PにダイオードD1,D2を介して接続された+電極および−電極である一対の電極E1,E2から高電圧電界がワークに作用し、ワークがドラムDに吸着することを防止している。
【0012】
この電界は、+電極からは正の高電圧電界として、また−電極からは負の高電圧電界として形成され、ドラムD内のワークに作用する。そして、正に帯電したワークは−電極からの負の電界により中和され、負に帯電したワークは+電極からの正の電界により中和されて帯電除去される。
【0013】
図2(a),(b)は、回転ドラム式フィーダDFの部分を要部だけ描いたものである。この場合、ドラムDの外周近傍には、2対の電極位置a1,a2およびb1,b2が示されている。これは、実験データを取るために、+電極および−電極を含む一対の電極を第1の位置a1,b1に配した場合と、第2の位置a2,b2に配した場合とを想定したものである。
【0014】
第1の位置a1,b1は、ドラムDの端部寄りに配される場合、第2の位置a2,b2は、ドラムDのシュート寄りの位置に配される場合であり、何れの場合も電極間距離Wは同じで、ドラムDから電極までの距離が3通りである。
【0015】
そして、具体的には、電極E1,E2の相互間距離WがドラムDの直径とほぼ同寸法の100mm、ドラムDから電極E1,E2の先端までの距離が70mm、110mm、140mmの3通りとしてデータを採取した。
【0016】
図3は、電極E1,E2間に与えるべき高電圧を形成するための電源構成を示している。交流電源の出力を整流回路11で整流し平滑回路12に供給して直流電圧を形成し、昇圧器13で直流高電圧に変換し、高抵抗14を介して+電極E1、−電極E2に与える。電圧は、例えば10,000V程度である。
【0017】
このような構成およびその出力電圧を用いて除電を行った結果は、下表1および同2に示す通りであり、表1に示すとおり、位置A1,A2に配される電極E1は正、位置B1,B2に配される電極E2は負の極性であり、ワークは−(マイナス)帯電である。
【表1】

【0018】
また、ワーク排出個数を比べると、帯電前が40個であったところ、帯電後は下表2に示す通りである。つまり、帯電後、除電無しの第1回は半数の20個に低下したのに対し、除電した第2回ないし第4回は帯電前と略同数となったことが判る。
【表2】

【0019】
この結果、除電用の+電極E1、−電極E2の配置位置、ドラムDとの距離等による効果の相違は見られるが、除電をすることによりほぼ帯電前の排出量を維持できることが判る。また、インラインフィーダの選別部に落下するワークは、静電荷等により拘束されていない自然な姿勢を取るため、選別、整列が効率よく行われる。
【0020】
図4Aおよび図4Bは、ドラムDにおける除電前、後のワークWの吸着状況の変化を示したものである。除電前の状態を示す図5Aでは、除電無しでワークがドラムDの内面に静電吸着しているのに対し、除電後の状態を示す図5Bではほぼ全数が落下し僅かな数のワークWが残っているに過ぎないことが見て取れる。
【変形例】
【0021】
上記実施例では、極性高電圧を形成するために、交流電源、整流回路、平滑回路、昇圧器およびダイオードを用いているが、交流電源の電圧を適当に昇圧して倍電圧整流回路等により整流することとして回路構成を簡略化することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を適用したインラインフィーダの構成を示す説明図。
【図2】本発明に係る電極の、インラインフィーダにおける回転ドラム周囲への設置位置の説明図。
【図3】本発明の一実施例に用いる電源の構成を示すブロック線図。
【図4A】本発明による除電を行う前の回転ドラムへのワークの吸着状況を示す説明図。
【図4B】本発明による除電実施後の回転ドラムへのワークの吸着状況を示す説明図。
【符号の説明】
【0023】
IF インラインフィーダ、D 回転ドラム、R ローラ、M モータ、
S シュート、P 高電圧電源、E 電極、W ワーク。
11 整流回路、12 平滑回路、13昇圧器、14 高抵抗。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状のワークを所定経路に沿って搬送するインラインフィーダ、および供給された前記ワークを少量ずつ連続的に前記インラインフィーダの所定個所に対して落とし込む回転ドラムを有するパーツフィーダにおける、ワークの帯電を除去するパーツフィーダの除電装置において、
前記回転ドラムにおける前記インラインフィーダの所定位置近傍に設けられた+電極と−電極とを含む少なくとも一対の電極と、
直流電圧を発生する電源と、
前記電源から極性高電圧を形成し、前記+電極に正の、また前記−電極に負の高電圧を印加する極性電圧形成回路と
をそなえたことを特徴とするパーツフィーダの除電装置。
【請求項2】
請求項1記載のパーツフィーダの除電装置において、
前記電極は、針状電極であることを特徴とするパーツフィーダの除電装置。
【請求項3】
請求項1記載のパーツフィーダの除電装置において、
前記一対の電極は、前記インラインフィーダの所定経路を挟むように設けられたことを特徴とするパーツフィーダの除電装置。
【請求項4】
粒状のワークを所定経路に沿って搬送するインラインフィーダ、および供給された前記ワークを少量ずつ連続的に前記インラインフィーダの所定個所に対して落とし込む回転ドラムを有するパーツフィーダにおける、ワークの帯電を除去するパーツフィーダの除電方法において、
前記回転ドラムにおける前記インラインフィーダの所定位置近傍に+電極と−電極とを含む少なくとも一対の電極を配し、
高電圧を発生して正、負の極性高電圧を形成し、
前記+電極に正の、また前記−電極に負の高電圧を印加する
ことを特徴とするパーツフィーダの除電方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2008−254869(P2008−254869A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−98405(P2007−98405)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(592199065)株式会社産機 (6)
【Fターム(参考)】