説明

パーフルオロエラストマーのアルミニウムへの結合

アルミニウム基材の表面が陽極酸化される。硬化性パーフルオロエラストマー組成物は、陽極酸化されたアルミニウム表面に圧縮成形および加硫される。結合された部分を後硬化して、加硫したパーフルオロエラストマーの引張り特性と、アルミニウム基材表面への結合強度との両方を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム基材にパーフルオロエラストマーを結合する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーフルオロエラストマーのアルミニウム基材への結合または接着は、半導体製造、化学処理および分析機器に利用される設備に使用されるバルブシール、ピストンシールおよびダイアフラム等の特定の最終用途のために重要である。従来のパーフルオロエラストマーは、テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)およびニトリル基含有フルオロビニルエーテル、ニトリル基含有フルオロオレフィン、ヨウ素−または臭素−含有フルオロビニルエーテルあるいはヨウ素−または臭素−含有フルオロオレフィン等の硬化部位モノマーの共重合単位を含む。パーフルオロエラストマーの化学的不活性のために、アルミニウム基材表面への結合は難しい。
【0003】
接着プライマーまたは結合剤を用いて、パーフルオロエラストマーとアルミニウム基材との結合強度を改善することは、経済的な理由とプライマーまたは溶剤の特性の両方により望ましくない。接着剤および結合剤は、パーフルオロエラストマーが使用されることの多い高温、腐蝕性環境で分解してしまう。これによって、パーフルオロエラストマーはアルミニウム基材から分離し、同時に、シーリングが失われ、シールされている環境が汚染される。
【0004】
公開された日本国特許出願(特許文献1)には、表面処理済み金属プレートおよびスチレン熱可塑性エラストマー等の熱可塑性材料を含む射出成形製品が開示されている。金属プレートは、陽極酸化アルミニウム処理、未シール陽極酸化アルミニウム処理、酸エッチング、亜鉛めっきクロム処理またはサンドブラストのいずれかにより予め処理されている。
【0005】
公開された日本国特許出願(特許文献2)には、フルオロエラストマーを陽極酸化フィルム処理されたアルミニウム基材へ結合して、ガスケットを形成する方法が開示されている。フルオロエラストマーは、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、および任意でテトラフルロエチレンの共重合単位を含み、大量の水素原子を含有するため、パーフルオロエラストマーとは化学的に区別される。接着プライマーまたは結合剤を用いることなく、パーフルオロエラストマーのアルミニウム基材表面への接着力を改善するのが望ましい。
【0006】
【特許文献1】特開2000−127199A号公報
【特許文献2】特開2004−036739A号公報
【特許文献3】米国特許第5,674,959号明細書
【特許文献4】米国特許第5,717,036号明細書
【特許文献5】米国特許第4,694,045号明細書
【特許文献6】米国特許第3,467,638号明細書
【特許文献7】米国特許第4,243,770号明細書
【特許文献8】米国特許第3,332,907号明細書
【特許文献9】米国特許第5,565,512号明細書
【特許文献10】米国特許第6,281,296 B1号明細書
【特許文献11】米国特許第5,789,489号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アルミニウム基材表面にパーフルオロエラストマーを結合する方法に関する。本方法は、
a)アルミニウム基材の表面を陽極酸化して、多孔性表面を形成する工程と、
b)硬化性パーフルオロエラストマーを該多孔性表面に圧縮成形および加硫して、該アルミニウム基板に結合された架橋したパーフルオロエラストマー物品を形成する工程と
を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で使用するパーフルオロエラストマーは、通常、少なくとも2つの主要パーフルオロ化モノマーの共重合単位を有するアモルファスポリマー組成物である。一般的に、主コモノマーの一方がパーフルオロオレフィンであり、他方がパーフルオロビニルエーテルである。代表的なパーフルオロ化オレフィンとしては、テトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンが挙げられる。好適なパーフルオロ化ビニルエーテルとしてはCF2=CFO(Rf'O)n(Rf''O)mf…(I)(式中、Rf'およびRf''は、炭素原子が2〜6個の異なる鎖状または分岐パーフルオロアルキレン基であり、mおよびnは独立して0〜10であり、Rfは炭素原子1〜6個のパーフルオロアルキル基である)が挙げられる。
【0009】
パーフルオロ化ビニルエーテルの好ましい部類としては、式CF2=CFO(CF2CFXO)nf…(II)(式中、XはFまたはCF3、nは0〜5、Rfは炭素原子1〜6個のパーフルオロアルキル基である)の組成物が挙げられる。
【0010】
最も好ましいパーフルオロ化ビニルエーテルは、nが0または1、Rfが炭素原子1〜3個を含有するものである。かかるパーフルオロ化エーテルとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)が例示される。その他の有用なモノマーとしては、式CF2=CFO[(CF2)mCF2CFZO]nf…(III)(式中、Rfは炭素原子1〜6個のパーフルオロアルキル基であり、m=0または1、n=0〜5およびz=FまたはCF3)が挙げられる。この部類の好ましい部類は、RfはC37、m=0およびn=1のものである。さらなるパーフルオロ化ビニルエーテルモノマーとしては式CF2=CFO[(CF2CFCF3O)n(CF2CF2CF2O)m(CF2p]Cx2x+1…(IV)(式中、mおよびn=1〜10、p=0〜3およびx=1〜5)の化合物が挙げられる。この部類の好ましい部類は、n=0〜1、m=0〜1、およびx=1の化合物が挙げられる。
【0011】
有用なパーフルオロ化ビニルエーテルとしては、CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2O)mn2n+1…(V)(式中、n=1〜5、m=1〜3、好ましくはn=1)がさらに例示される。
【0012】
好ましいパーフルオロエラストマーコポリマーは、テトラフルオロエチレンおよび主要モノマー単位として少なくとも1種類のパーフルオロ化ビニルエーテルを含む。かかるコポリマーにおいて、共重合パーフルオロ化エーテル単位は、ポリマー中約15〜50モルパーセントの合計モノマー単位から構成される。
【0013】
パーフルオロエラストマーは、少なくとも1つの硬化部位モノマーの共重合単位を、通常、0.1〜5モルパーセントの量でさらに含有する。この範囲は0.3〜1.5モルパーセントの間であるのが好ましい。2種類以上の硬化部位モノマーが存在していてよいが、最も一般的には、1種類の硬化部位モノマーを用い、少なくとも1つのニトリル置換基を含有している。好適な硬化部位モノマーとしては、ニトリル含有フルオロオレフィンおよびニトリル含有フルオロビニルエーテルが挙げられる。有用なニトリル含有硬化部位モノマーとしては、CF2=CF−O(CF2)n−CN…(VI)(式中、n=2〜12、好ましくは2〜6)、CF2=CF−O[CF2−CFCF3−O]n−CF2−CFCF3−CN…(VII)(式中、n=0〜4、好ましくは0〜2)およびCF2=CF−[OCF2CFCF3]x−O−(CF2)n−CN…(VIII)(式中、x=1〜2およびn=1〜4)が挙げられる。
【0014】
式(VIII)のものが好ましい。特に好ましい硬化部位モノマーは、ニトリル基とトリフルオロビニルエーテル基とを有するパーフルオロ化ポリエーテルである。最も好ましい硬化部位モノマーは、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CN…(IX)、例えば、パーフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン)または8−CNVEである。
【0015】
その他の硬化部位モノマーは、式R1CH=CR23で表されるオレフィンを含み、式中、R1およびR2は水素およびフッ素から独立して選択され、R3は水素、フッ素、アルキルおよびパーフルオロアルキルから独立して選択される。パーフルオロアルキル基は炭素原子を約12個まで含有していてよい。しかしながら、炭素原子4個までのパーフルオロアルキル基が好ましい。さらに、硬化部位モノマーは、3個以下の水素原子を有するのが好ましい。かかるオレフィンとしては、エチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、1−ヒドロペンタフルオロプロペンおよび2−ヒドロペンタフルオロプロペンが例示される。
【0016】
臭素またはヨウ素原子を含有する硬化部位モノマーは、フルオロオレフィンまたはフルオロビニルエーテルを含む。かかる硬化部位モノマーは業界では周知である。具体例としては、ブロモトリフルオロエチレン、4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1(BTFB)、および臭化ビニル、1−ブロモ−2,2−ジフルオロエチレン、パーフルオロ臭化アリル、4−ブロモ−1,1,2−トリフルオロブテン、4−ブロモ−1,1,3,3,4,4−ヘキサフルオロブテン、4−ブロモ−3−クロロ−1,1,3,4,4−ペンタフルオロブテン、6−ブロモ−5,5,6,6−テトラフルオロヘキセン、4−ブロモパーフルオロブテン−1および3,3−ジフルオロ臭化アリル等のその他のものが挙げられる。本発明に有用な臭化不飽和エーテル硬化部位モノマーとしては、2−ブロモ−パーフルオロエチルパーフルオロビニルエーテルおよびCF2BrCF2O−CF=CF2等のCF2Br−Rf−O−CF=CF2の部類のフルオロ化合物、およびCH3OCF=CFBrまたはCF3CH2OCF=CFBr等のROCF=CFBrまたはROCBr=CF2(式中、Rは低級アルキル基またはフルオロアルキル基である)のフルオロビニルエーテルが挙げられる。
【0017】
ヨウ化硬化部位モノマーはCHR=CH−Z−CH2CHR−Iを含む。式中、Rは−Hまたは−CH3であり、Zは、鎖状または分岐、任意で1つまたは複数のエーテル酸素原子を含有するC1〜C18(パー)フルオロアルキレンラジカル、または米国特許公報(特許文献3)に開示された(パー)フルオロポリオキシアルキレンラジカルである。有用なヨウ化硬化部位モノマーのその他の例は、米国特許公報(特許文献4)に開示されているような式I(CH2CF2CF2nOCF=CF2およびICH2CF2O[CF(CF3)CF2O]nCF=CF2の不飽和エーテル等(式中、n=1〜3)である。さらに、ヨードエチレン、4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1(ITFB)、3−クロロ−4−ヨード−3,4,4−トリフルオロブテン、2−ヨード−1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(ビニルオキシ)エタン、2−ヨード−1−(パーフルオロビニルオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエチレン、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヨード−1−(パーフルオロビニルオキシ)プロパン、2−ヨードエチルビニルエーテル、3,3,4,5,5,5−ヘキサフルオロ−4−ヨードペンテンおよびヨードトリフルオロエチレンをはじめとする好適なヨウ化硬化部位モノマーは、米国特許公報(特許文献5)に開示されている。ヨウ化アリルおよび2−ヨード−パーフルオロエチルパーフルオロビニルエーテルもまた有用な硬化部位モノマーである。
【0018】
本発明で使用されるパーフルオロエラストマーに組み込まれるその他の種類の硬化部位モノマーは、米国特許公報(特許文献6)に開示されているようなパーフルオロ(2−フェノキシプロピルビニルエーテル)および関連のモノマーである。
【0019】
特に好ましいパーフルオロエラストマーは、53.0〜79.9モルパーセントのテトラフルオロエチレン、20.0〜46.9モルパーセントのパーフルオロ(メチルビニル)エーテルおよび0.4〜1.5モルパーセントのニトリル含有硬化部位モノマーの共重合単位を含有する。
【0020】
あるいは、または硬化部位モノマーに加えて、パーフルオロエラストマーはパーフルオロエラストマーポリマー鎖の末端位置にヨウ素および/または臭素原子を含有していてもよい。かかる原子は、米国特許公報(特許文献7)に記載されているとおり、ヨウ素または臭素含有連鎖移動剤の反応により重合中に導入される。
【0021】
本発明で使用するパーフルオロ化エラストマー組成物は硬化性である(加硫可能とも言われる)。すなわち、エラストマー鎖間に架橋を形成することができる。
【0022】
パーフルオロエラストマーがニトリル含有硬化部位モノマーの共重合単位を含有するときは、有機錫化合物に基づく硬化系を利用することができる。好適な有機錫化合物としては、アリル−、プロパルギル−、トリフェニル−およびアレニル錫硬化剤が挙げられる。テトラアルキル錫化合物またはテトラアリル錫化合物が、ニトリル置換硬化部位と組み合わせて用いるのに好ましい硬化剤である。使用する硬化剤の量は、必然的に、最終生成物に望ましい架橋度、同じくパーフルオロエラストマー中の反応性部分の種類および濃度に応じて異なる。通常、硬化剤のエラストマー100重量部(phr)当たり約0.5〜10重量部を用いることができ、大抵の目的について1〜4phrで十分である。ニトリル基を三量化して、有機錫等の硬化剤を存在させてs−トリアジン環を形成することにより、パーフルオロエラストマーを架橋するものと考えられる。架橋は、275℃以上の温度でも熱安定性がある。
【0023】
ニトリル含有硬化部位を含むパーフルオロエラストマーに有用である好ましい硬化系は、下式のビス(アミノフェノール)およびビス(アミノチオフェノール)、
【0024】
【化1】

【0025】
および下式のテトラアミンを利用する。
【0026】
【化2】

【0027】
式中、Aは、炭素原子1〜6個のSO2、O、CO、アルキル、炭素原子1〜10個のパーフルオロアルキレンまたは2つの芳香族環を結合する炭素−炭素結合である。上式XおよびXIのアミノおよびヒドロキシルまたはチオ基はベンゼン環で互い近接しており、基Aに対してメタおよびパラ位で交互に用いられる。好ましくは、硬化剤は、4,4’−[2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチリデン]ビス(2−アミノフェノール)、4,4’−スルホニルビス(2−アミノフェノール)、3,3’−ジアミノベンジジンおよび3,3’,4,4’−テトラアミノベンゾフェノンからなる群より選択される化合物である。これらのうち最初のものが最も好ましく、ビス(アミノフェノール)AFと呼ばれる。硬化剤は、アンジェロ(Angelo)に付与された米国特許公報(特許文献8)に開示されたとおりにして調製することができる。ビス(アミノフェノール)AFは、4,4’−[2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチリデン]−ビスフェノール(すなわち、ビスフェノールAF)の、好ましくは硝酸カリウムおよびトリフルオロ酢酸によるニトロ化の後、好ましくは溶剤としてエタノールおよび触媒量のパラジウムまたは触媒としての炭素による接触水素化により調製することができる。硬化剤のレベルを選択して、加硫物の所望の特性を最適化しなければならない。通常、パーフルオロエラストマーに存在する全ての硬化部位と反応するのに必要な量よりもやや過剰の硬化剤を用いる。一般的に、エラストマー100部当たり0.5〜5重量部の硬化剤が必要である。好ましい範囲は1〜2phrである。
【0028】
ニトリル硬化部位を有するパーフルオロエラストマーを加硫するのに好適なその他の硬化剤としては、アンモニア、米国特許公報(特許文献9)に開示されているような無機または有機酸のアンモニウム塩(例えば、アンモニウムパーフルオロオクタノエート)および米国特許公報(特許文献10)に開示されているように分解してアンモニアを生成する化合物(例えば、ウレア)が挙げられる。
【0029】
硬化部位がニトリル、ヨウ素または臭素基のときは特に、過酸化物もまた硬化剤として利用してもよい。有用な過酸化物は、硬化温度で遊離基を生成するようなものである。50℃を超える温度で分解するジアルキル過酸化物またはビス(ジアルキル過酸化物)が特に好ましい。多くの場合、パーオキシ酸素に付加した第三級炭素原子を有するジ−ターシャリーブチル過酸化物を用いるのが好ましい。このタイプの最も有用な過酸化物は、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)−ヘキシン−3および2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)−ヘキサンである。その他の過酸化物は、ジクミル過酸化物、ジベンゾイル過酸化物、ターシャリーブチルパーベンゾエートおよびジ[1,3−ジメチル−3−(t−ブチルパーオキシ)−ブチル]カーボネート等の化合物から選択することができる。通常、パーフルオロエラストマー100部当たり約1〜3部の過酸化物を用いる。
【0030】
過酸化物硬化系の一部として組成物と通常ブレンドされるその他の材料は、過酸化物と協働して、有用な硬化を与えることのできる多価不飽和化合物から構成される助剤である。これらの助剤は、パーフルオロエラストマー100部当たり0.1〜10部、好ましくは2〜5phrの量で添加することができる。助剤は、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリ(メチルアリル)イソシアヌレート、トリス(ジアリルアミン)−s−トリアジン、トリアリルホスファイト、N,N−ジアリルアクリルアミド、ヘキサアルキルホスホルアミド、N,N,N’,N’−テトラアルキルテトラフタルアミド、N,N,N’,N’−テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、2,4,6−トリビニルメチルトリシロキサンおよびトリ(5−ノルボルネン−2−メチレン)シアヌレートのうち1つまたは複数であってよい。特に有用なのはトリアリルイソシアヌレートである。
【0031】
存在する硬化部位に応じて、二重硬化系を用いることもできる。例えば、ニトリル含有硬化部位モノマーの共重合単位を有するパーフルオロエラストマーは、有機硬化剤および助剤と組み合わせた過酸化物の混合物を含む硬化剤を用いて硬化することができる。通常、0.3〜5部の酸化物、0.3〜5部の助剤および0.1〜10部の有機硬化剤を用いる。
【0032】
パーフルオロエラストマー化合に一般的に用いられるフィラー(例えば、カーボンブラック、硫酸バリウム、シリカ、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウムおよび二酸化チタン)、安定剤、可塑剤、潤滑剤および処理助剤等の添加剤を、本発明で使用する硬化性パーフルオロエラストマー組成物に組み込むことができる。ただし、これらの添加剤が目的の使用条件にとって適切な安定性および純度を有する場合に限る。
【0033】
本発明で使用するアルミニウム基材を用いて、ドアシール、ゲートバルブ、振り子バルブ、ソレノイド先端、結合されたピストンシール、ダイアフラム、金属ガスケット等の結合された金属パーフルオロエラストマー部品を形成する。これらの部品は、半導体製造設備、化学処理設備および分析機器等、高温、腐蝕性環境で特に有用である。
【0034】
硬化性パーフルオロエラストマー組成物に結合されるアルミニウム基材の表面は、陽極酸化により予め処理して多孔性表面構造を形成する。アルミニウム表面を陽極酸化する好ましい手段は、リン酸陽極酸化である。このプロセスにおいて、アルミニウム基材の表面を、必要であれば、NaOH溶液等の塩基でまず洗浄する。洗浄した表面をASTM D3933〜98に準拠して陽極酸化して、多孔性表面を形成する。パーフルオロエラストマーを多孔性表面に結合する前にポアは充填しない。
【0035】
硬化性パーフルオロエラストマー組成物は、アルミニウム基材の多孔性表面に圧縮成形される。成形は、加圧下、高温で、少なくとも部分的にパーフルオロエラストマーを硬化(すなわち、加硫または架橋)させ、アルミニウム基材にそれを結合するのに十分な時間にわたって行う。結合は、架橋前、アルミニウム基材の多孔性表面構造に加圧下で流れるパーフルオロエラストマーにより強化される。任意で、得られるパーフルオロエラストマー−アルミニウム部分は、高温で、エラストマーの物理特性および硬化したエラストマーのアルミニウム基材への結合強度を改善するのに十分な時間にわたって後硬化してもよい。後硬化は、エアオーブン中または窒素ガス充填オーブン等の不活性雰囲気中で行われる。一般的な圧縮成形条件は180℃〜220℃の間の温度で4〜8分である。一般的な後硬化条件は250℃〜315℃の間の温度で5〜48時間である。
【0036】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を例示するものである。特に断りのない限り、部は全て重量基準である。
【実施例】
【0037】
(試験方法)
接着力、すなわち、アルミニウム基材から硬化したパーフルオロエラストマーを引っ張るのに必要な力を、ASTM D429、方法Bに準拠して測定した。
【0038】
(実施例1)
使用したパーフルオロエラストマーは、米国特許公報(特許文献11)に記載された一般的方法に従って調製された68モルパーセント単位のTFE、31モルパーセント単位のPMVEおよび1モルパーセント単位のパーフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン)を含有するコポリマーであった。パーフルオロエラストマーをウレアおよびカーボンブラックと化合することにより硬化性組成物を作成した。
【0039】
用いたアルミニウム基材は、表面平滑度(陽極酸化前)Raが1.6〜3.2のタイプA6061であった。
【0040】
本発明の方法に従って作成した試料(試料1)は、ASTM D3933に準拠して清浄な60mm×25mm×2mmのアルミニウム基材の表面を陽極酸化して多孔性表面を形成することにより作成した。パーフルオロエラストマーと接触させる前はポアを充填しなかった。硬化性パーフルオロエラストマー組成物を陽極酸化アルミニウム表面上に4分間、190℃でプレス硬化した。得られた部分を305℃で10時間エアオーブンで後硬化した。
【0041】
試験方法に従って接着力を測定した。結果を表IIに示す。硬化したパーフルオロエラストマーは、陽極酸化アルミニウム基材からきれいに剥がれず、引裂かれた。
【0042】
アルミニウム基材の表面を陽極酸化しなかった以外は、対照(試料A)を試料1と同じやり方で作成した。接着力を測定し、結果を表Iに示してある。硬化したパーフルオロエラストマーは、アルミニウム基材からきれいに分離された。
【0043】
陽極酸化していないアルミニウム表面をケムロック(Chemlock)607(ロード社(Lord Corp.)より入手可能)で予備処理した以外は、第2の対照(試料B)を試料Aと同じやり方で作成した。ケムロック(Chemlock)607は、フルオロエラストマーを金属表面に接合するのに業界で一般的に用いられているアミノ−シラン結合剤である。接着力を測定し、結果を表Iに示してある。硬化したパーフルオロエラストマーは、アルミニウム基材からきれいに分離された。
【0044】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)アルミニウム基材の表面を陽極酸化して、多孔性表面を形成する工程と、
b)硬化性パーフルオロエラストマーを前記多孔性表面に圧縮成形および加硫して、前記アルミニウム基板に結合された架橋したパーフルオロエラストマー物品を形成する工程と
を含むことを特徴とする、アルミニウム基材表面に硬化性パーフルオロエラストマー組成物を結合する方法。
【請求項2】
前記陽極酸化がASTM D3933−98に準拠したリン酸によるものであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記圧縮成形が4〜8分間、180℃〜220℃の温度でなされることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
c)前記アルミニウム基材に結合された前記パーフルオロエラストマー物品を5〜48時間、250℃〜315℃の温度で後硬化する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記パーフルオロエラストマーが、53.0〜79.9モルパーセントのテトラフルオロエチレン、20.0〜46.9モルパーセントのパーフルオロ(メチルビニル)エーテルおよび0.4〜1.5モルパーセントのニトリル含有硬化部位モノマーの共重合単位を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2008−532808(P2008−532808A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501010(P2008−501010)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/008786
【国際公開番号】WO2006/099235
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(597035953)デュポン パフォーマンス エラストマーズ エルエルシー (44)
【Fターム(参考)】