説明

ヒストンデアセチラーゼ阻害活性を有する新規ピロール誘導体

本発明は、式Iピロール類から誘導された新規化合物、それらを得るための方法、および特定のヒストンデアセチラーゼにおいて、それらの阻害活性に基づく癌の治療用の医薬組成物における薬物としてのそれらの適用について記載する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、ピロール類から誘導された新規化合物、それらの製造方法、および特定のヒストンデアセチラーゼにおいて、それらの阻害作用に基づく医薬組成物における癌の治療用の薬物としてのその使用に関する。
【0002】
背景技術
三および四置換ピロール環の化学的合成は、直線的または収束的合成の方法論を用いて、いくつかの手法により行える(Sundberg,in Comprehensive Heterocyclic Chemistry,Katrizki,A.and Rees,C.W.Eds.,Pergamon:Oxford,1984,Vol.4,p.313)。一つの十分な一般的な製造手法は、置換ピロリジン類の芳香族化からなる(Fejes et al.,Tetrahedron,2000,56,8645、Gupta et al.,Synth.Commun.,1998,28,3151)。更に、後者のヘテロ環類は、アルケン類と、アゾメチンイリド類とのシクロ付加を用いて収束的に製造しうる(Ayerbe et al.,J.Org.Chem.,1998,63,1795、Vivanco et al.,J.Am.Chem.Soc.,2000,122,6078)。カルボン酸類の誘導体と、ヒドロキシルアミンとのカップリング反応はヒドロキサム酸類の形成をもたらし(Reddy et al.,Tetrahedron Lett.,2000,41,6285)、並びに置換アミン類と、ホスゲンおよびチオホスゲン誘導体との反応は、中間イソシアネート類およびチオシアネート類の形成を経て、対応するN-ヒドロキシ尿素類、N-ヒドロキシチオ尿素類、N-(アルキル)アミノ尿素類、およびN-(アルキル)アミノチオ尿素類を生産することも知られている(Jain et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.,2003,13,4223)。
【0003】
他方、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)の阻害剤は、特定の腫瘍の成長メカニズムを妨げることにより、癌治療のために有望な手法を示すことが知られている(McLaughin et al.,Biochem.Pharm.,2004,68,1139、Kramer et al.,Trends Endocrin.Met.,2001,12,294、Archer et al.,Curr.Opin.Genet.Dev.,1999,9,171)。前記阻害剤の治療作用の詳細なメカニズムはよく知られていないが、p21サイクリン依存性キナーゼのような細胞周期制御タンパク質をコードするDNAのある領域に局在しているヒストンのアセチル化による転写因子へのある遺伝子の接近を、HDACの活性中心の阻害が促す、という一般的な合意がなされている(Archer et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1998,95,6791)。この治療ターゲットのもう一つの利点は、mRNAへのDNAの転写のわずか約2%がHDAC阻害剤により修飾されるにすぎない(McLaughin et al.,Biochem.Pharm.,2004,68,1139)、と考えられることであり、そうでなければ臨床試験で観察されたこれら阻害剤の低毒性に影響を有するはずである(Van Lint et al.,Gen.Express,1996,5,245、Glaser et al.,Mol.Cancer Ther.,2003,2,151)。同様に、他の治療との相乗的な組合せで、耐性への進化を難しくする遺伝子転写プロファイルを改善することにより、HDAC阻害剤の臨床有用性が増大しうると考えられる(Keen et al.,Cancer Res.Treat.,2003,81,177、Egger et al.,Nature,2004,429,457)。
【0004】
HDAC阻害剤の様々なファミリーが知られており、その一般的な特徴が様々な総説に見られる(Villar-Garea and Esteller,Int.J.Cancer,2004,112,171 and Curr.Drug Metab.,2003,4,11、Grozinger et al.,Chem.Biol.,2002,9,3、McLaughlin et al.,Drug Discov.Today,2003,8,793、Monneret,Eur.J.Med.Chem.,2005,40,1、Biel et al.,Angew.Chem.Int.Ed.,2005,44,3186)。一般的には、最も活性な阻害剤の構造は、HDACの活性中心の金属イオンへ配位されうる単位へ、炭素スペーサー鎖により結合された、主に疎水性の環式または多環式部分を有することにより特徴づけられる。特に、3‐(4‐アロイル‐1‐メチル‐1H‐2-ピロリル)‐N‐ヒドロキシ‐2-プロペンアミド類の合成がHDACの阻害剤として記載されていた(Mai et al.,J.Med.Chem.,2004,47,1098参照)。この場合に、スペーサー鎖は不飽和であり、ピロール環の3位および5位は置換されず、直線的分子配列となる。
【0005】
合成により得られる阻害剤の量にかかわらず、それらの治療有用性は問題が無いというわけではなく、それらの中で挙げられねばならないものは様々なHDACの阻害選択性であり、その一部は腫瘍学、毒性、および化学的不安定性の点において有用な治療標的を構成しない。この関係において、本発明は、化学的に安定な分子となる様々な官能基を導入しうる可能性を包含して、様々な多環式系、スペーサーの大きさ、および阻害する酵素の金属原子への配位単位を有した、新規HDAC阻害剤の合成の一般的方法について記載している。
【0006】
したがって、本発明により提起される問題は、腫瘍過程の亢進および進行と関連した様々なHDACの阻害に際する高い選択性、高い化学的安定性、および低毒性を有した化合物並びに組成物を提供することである。提案される解決法は、一般式Iのピロール誘導体の使用である。これらの化合物は、3位および5位にアリールまたはヘテロアリール置換基、並びに多様な種類のスペーサーからなる電子求引基、例えば4位の硝酸基および2位の異種(heterogeneous)基を有し、HDACの金属イオンへ配位するようにN-ヒドロキシ尿素、N-アルキルアミノ(アリール)尿素、N-ヒドロキシチオ尿素、およびN-アルキルアミノ(アリール)チオ尿素基を用いている。これらのピロール誘導体は、細胞増殖および腫瘍成長を阻害する大きな能力を示す。
【0007】
すなわち、本発明は、例えば優れた薬理学的性質、固相および溶液中の安定性、それら化学的合成の容易性および効率性と出発化合物の入手容易性および多様性のような利点を有し、現在のヒストンデアセチラーゼ阻害剤における現存する欲求を解決するものである。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、目的として一般式Iのピロール誘導体を有する:
【化1】

【0009】
同様に、本発明の別の目的は、一般式Iからこれらの化合物を製造するための方法である。
【0010】
本発明の別の追加目的は、特定のヒストンデアセチラーゼの作用の阻害を通して、腫瘍成長を抑制することによる、様々な形の癌の治療のためのこれら誘導体の使用である。
【0011】
最後に、この発明は、一般式Iからいずれかのピロール誘導体と少なくとも一種の薬学上許容される賦形剤とを含有しうる医薬組成物の製造を、目的として有する。
【発明の具体的説明】
【0012】
第一に、本発明は下記式Iを有する、ピロールから誘導された特定の化合物を提供する:
【化2】

上記式中:
およびRは、独立して、フェニル基、環の異なる位置における一または多置換フェニル、またはO、N、もしくはSの少なくとも一つのヘテロ原子を含むC5‐C10ヘテロアリール基を表し、
は、水素原子または電子求引基、例えばニトロ基、またはアミンもしくはアミド基を表し、
は、水素原子または直鎖、分岐、もしくは環式C1‐C6アルキル基を表し、
nは、1〜8のメチレン基の数を表し、
Xは、二級アミン基、酸素原子、またはイオウイオンを表し、
Yは、メチレン、置換メチレン、および二級アミンから選択される基を表し、
Zは、酸素またはイオウの原子を表し、および
Wは、ヒドロキシル、ヒドロキシアミン、ヒドラジン、およびアルキル、アリールまたはヘテロアリール‐ヒドラジンから選択される基を表す。
【0013】
好ましい態様において、一般式Iの化合物は以下である:
・下記構造式の6‐(3,5‐ジフェニル‐1H‐ピロール‐2‐カルボキサミド)ヘキサン酸:
【化3】

・下記構造式の6‐(4‐ニトロ‐3,5‐ジフェニル‐1H‐ピロール‐2‐カルボキサミド)ヘキサン酸:
【化4】

・下記構造式のN‐〔5‐(ヒドロキシカルバモイル)ペンチル〕‐3‐フェニル‐5‐(4‐メトキシカルボニル)‐1H‐ピロール‐2‐カルボキサミド:
【化5】

・下記構造式のN‐〔5‐(ヒドロキシカルバモイル)ペンチル〕‐5‐フェニル‐3‐(4‐メトキシカルボニル)‐1H‐ピロール‐2‐カルボキサミド:
【化6】

・下記構造式のN‐〔5‐(ヒドロキシカルバモイル)ペンチル〕‐3‐フェニル‐5‐(4‐メトキシカルボニル)‐4‐ニトロ‐1H‐ピロール‐2‐カルボキサミド:
【化7】

・下記構造式の1‐〔4‐〔3,5‐ビス(3,5‐ジメトキシフェニル)‐1H‐ピロール‐2‐カルボキサミド〕ブチル〕‐3‐ヒドロキシ尿素:
【化8】

・下記構造式の1‐〔4‐〔5‐(4‐メトキシフェニル)‐4‐ニトロ‐3‐(チオフェン‐2‐イル)‐1H‐ピロール‐2‐カルボキサミド〕ブチル〕‐3‐(2‐メチルアミノ)尿素:
【化9】

【0014】
本発明の別の態様は、一般式Iの化合物を得るための様々な工程に言及する。下記方法A〜Eは、我々が以下に見られるような、一般式(Ia)、(Ib)、(Ic)、および(Id)の化合物を得るための工程について記載する。これらの化合物(Ia)〜(Id)は、その一般式が一般式Iに属する化合物である。
【0015】
方法A
方法Aは、一般式(Ia)の化合物の製造のための工程を表す:
【化10】

(上記式中、R、R、R、R、X、およびnは、前記の意味を有する)、
a)式IIの1H‐ピロール‐2‐カルボン酸:
【化11】

b)式IIIの化合物:
HX‐(CH‐R (III)
(上記式中、Rはアルコキシカルボニルである)、
c)カルボキシル基の活性化のための試薬、および
d)C3‐C10炭素の環式または非環式脂肪族およびC9‐C15炭素のアルカノ‐芳香族から選択される三級アミン、
から構成される混合物を反応させ、得られた生成物を水酸化リチウムまたは水酸化ナトリウム、ジメトキシエタン、および水の混合物と反応させる。
【0016】
本発明の目的のために、フェーズa)〜d)の四種化合物から構成される反応混合物が、有機溶媒中−85℃〜+25℃の温度、好ましくは0℃付近の温度で、諸成分の一種を他の三種の前に混合物へ加えることにより得られる。次いで、環境温度に達するまで、それは反応を終了させるためにしばらく放置される。カップリング反応が終了した後、一般的方法に従った後に得られるエステルは、水酸化リチウムまたは水酸化ナトリウム、ジメトキシエタン、および水の混合物との反応に付され、こうして対応処理後に、一般式(Ia)の化合物を得る。
【0017】
方法B
方法Bは、一般式(Ib)の化合物の製造のための工程を表す:
【化12】

(上記式中、R、R、R、R、X、およびnは、前記の意味を有する)、
a)式IIの1H‐ピロール‐2‐カルボン酸:
【化13】

b)式IIIの化合物:
HX‐(CH‐R (III)
(上記式中、Rはアルコキシカルボニルである)、
c)カルボキシル基の活性化のための試薬、および
d)C3‐C10炭素の環式または非環式脂肪族およびC9‐C15炭素のアルカノ‐芳香族から選択される三級アミン、
から構成される混合物を反応させ、得られた生成物をメタノール中、過剰のナトリウムメトキシドの存在下において、塩酸ヒドロキシルアミンおよびフェノールフタレインの混合物へ加える。
【0018】
本発明の目的のために、フェーズa)〜d)の四種化合物から構成される反応混合物が、有機溶媒中−85℃〜+25℃の温度、好ましくは0℃付近の温度において、諸成分の一種を他の三種の前に混合物へ加えることにより得られる。次いで、環境温度に達するまで、それは反応を終了させるためにしばらく放置される。カップリング反応が終了した後、得られたエステルは、メタノール中、過剰のナトリウムメトキシドの存在下において、塩酸ヒドロキシルアミンおよびフェノールフタレインの混合物へ加えられる。反応が終了した後、対応処理後に、一般式(Ib)の化合物が得られる。
【0019】
方法C
方法Cは、一般式(Ic)の化合物の製造のための工程を表す:
【化14】

(上記式中、R、R、R、R、X、Z、およびnは前記の意味を有する)、
a)式IIの1H‐ピロール‐2‐カルボン酸:
【化15】

b)式IIIの化合物:
HX‐(CH‐R (III)
(上記式中、Rはt‐ブトキシカルバモイル(NHBoc)またはベンジルオキシカルバモイル(NHCBz)である)、
c)カルボキシル基の活性化のための試薬、および
d)C3‐C10炭素の環式または非環式脂肪族およびC9‐C15炭素のアルカノ‐芳香族から選択される三級アミン、
から構成される混合物を反応させ、得られた生成物を酸処理または加水分解を用いて脱保護し、それをホスゲンまたはそのアナログ、例えばジホスゲン、トリホスゲン、またはチオホスゲンと反応させて、イソシアネートまたはチオイソシアネートを得、これがヒドロキシルアミンにより処理される。
【0020】
本発明の目的のために、フェーズa)〜d)の四種化合物から形成される反応混合物が、有機溶媒中−85℃〜+25℃の温度、好ましくは0℃付近の温度において、諸成分の一種を他の三種の前に混合物へ加えることにより得られる。次いで、環境温度に達するまで、それは反応を終了させるためにしばらく放置される。化合物IIIにおけるRの意味に応じて、即ちRがt‐ブトキシカルバモイル(NHBoc)またはベンジルオキシカルバモイル(NHCBz)を表すかに応じて、その後の処理は異なる。RがNHBocである場合、得られた生成物は酸処理、好ましくは環境温度において、ハロゲン化溶媒中トリフルオロ酢酸との反応に付されねばならない。RがNHCBzを表す場合、得られた生成物は水素化分解、好ましくは溶媒として短鎖アルコール中、パラジウム不均一触媒の存在下において、水素ガスまたはギ酸アンモニウムとの反応に付される。双方の場合において、脱保護後に一級アミンが得られ、これがホスゲンまたはその誘導体の一つ、例えばジホスゲン、トリホスゲン、またはチオホスゲンにより処理される。反応がホスゲン、ジホスゲン、またはトリホスゲンとの場合であるとき、最終化合物(Ic)はZに酸素の原子を有する。他方で処理がチオホスゲンとの場合であるとき、Zはイオウ原子となる。
【0021】
ホスゲン(ジホスゲン、トリホスゲン)またはチオホスゲンとの反応後、対応するイソシアネート類またはチオイソシアネート類が得られ、これが式(Ic)の化合物を得るためにヒドロキシルアミンと、その場で(in situ)処理される。
【0022】
方法D
方法Dは、一般式(Id)の化合物の製造のための工程を表す:
【化16】

(上記式中、R、R、R、R、X、Z、およびnは前記の意味を有し、RはH、C1‐C6アルキル、アリールまたはO、N、もしくはSから選択されるヘテロ原子一以上を有する5または6員のヘテロアリールである)、
a)式IIの1H‐ピロール‐2‐カルボン酸:
【化17】

b)式IIIの化合物:
HX‐(CH‐R (III)
(上記式中、Rは、t‐ブトキシカルバモイル(NHBoc)またはベンジルオキシカルバモイル(NHCBz)である)、
c)カルボキシル基の活性化のための試薬、および
d)C3‐C10炭素の環式または非環式脂肪族およびC9‐C15炭素のアルカノ‐芳香族から選択される三級アミン、
から構成される混合物を反応させ、得られた生成物を酸処理または加水分解により脱保護し、それをホスゲンまたはそのアナログ、例えばジホスゲン、トリホスゲン、またはチオホスゲンと反応させて、イソシアネートまたはチオイソシアネートを得、これがヒドラジンまたはアルキル、アリールもしくはヘテロアリールヒドラジンにより処理される。
【0023】
本発明の目的のために、フェーズa)〜d)の四種化合物から形成される反応混合物が、有機溶媒中−85℃〜+25℃の温度、好ましくは0℃付近の温度において、諸成分の一種を他の三種の前に混合物へ加えることにより得られる。次いで、環境温度に達するまで、それは反応を終了させるためにしばらく放置される。化合物IIIにおけるRの意味に応じて、即ちRがt‐ベンジルオキシカルバモイル(NHBoc)またはベンジルオキシカルバモイル(NHCBz)を表すかに応じて、その後の処理は異なる。RがNHBocである場合、得られた生成物は酸処理、好ましくは環境温度において、ハロゲン化溶媒中トリフルオロ酢酸との反応に付されねばならない。RがNHCBzを表す場合、得られた生成物は水素化分解、好ましくは溶媒として短鎖アルコール中、パラジウム不均一触媒の存在下において、水素ガスまたはギ酸アンモニウムとの反応に付される。双方の場合において、脱保護後に一級アミンが得られ、これがホスゲンまたはその誘導体の一つ、例えばジホスゲン、トリホスゲン、またはチオホスゲンにより処理される。反応がホスゲン、ジホスゲン、またはトリホスゲンとの場合であるとき、最終化合物(Id)はZに酸素の原子を有する。他方で処理がチオホスゲンとの場合であるとき、Zはイオウ原子となる。
【0024】
ホスゲン(ジホスゲン、トリホスゲン)またはチオホスゲンとの反応後、対応するイソシアネート類またはチオイソシアネート類が得られ、これが式(Id)の化合物を得るためにヒドラジン類またはアルキルヒドラジン類と、その場で(in situ)処理される。
【0025】
方法E
方法Eは、一般式(Id)の化合物の製造のための追加工程を表す:
【化18】

(上記式中、R、R、R、R、X、Z、およびnは前記の意味を有し、RはH、C1‐C6アルキル、アリールまたはO、N、もしくはSから選択されるヘテロ原子一以上を有する5または6員のヘテロアリールである)
a)式IIの1H‐ピロール‐2‐カルボン酸:
【化19】

b)式IIIの化合物:
HX‐(CH‐R (III)
(上記式中、Rは、3‐ベンジルオキシウレイルまたは、3‐アルキル、アリールもしくはヘテロアリールウレイルである)、
c)カルボキシル基の活性化のための試薬、および
d)C3‐C10炭素の環式または非環式脂肪族およびC9‐C15炭素のアルカン芳香族から選択される三級アミン、
から構成される混合物の反応を含んでなる。
【0026】
先に詳細に記載されたカップリング反応がN‐ベンジルオキシ尿素類またはチオ尿素類で行なわれる場合、適切な触媒の存在下において、水素化分解により対応N‐ヒドロキシ尿素類またはチオ尿素類を遊離させることのみが必要である。N‐アルキル(アリール、ヘテロアリール)アミノ尿素類またはチオ尿素類の場合、該基が対応前駆体(III)で既に導入されている場合、カップリング反応により予想最終分子を直接的に生じる。
【0027】
方法A〜Eの共通要素として、カルボキシル基活性化試薬は、好ましくはフェニルジクロロホスフェート、ジエチルホスホロシアミデート(DEPC)、または1‐ヒドロキシベンゾトリアゾールと、N‐(3‐ジメチルアミノプロピル)‐N′‐エチルカルボジイミドとにより形成される系である。
【0028】
三級アミンは、それに関する限り、C3‐C10炭素の環式または非環式脂肪族およびC9‐C15炭素のアルカノ‐芳香族から選択される、方法AおよびBに共通の試薬である。この三級アミンは、好ましくはN‐メチルピロリジンまたはN‐メチルモルホリンから選択される。
【0029】
マイクロ波の照射を用いて方法A〜Eの各々で要素a)〜d)間の反応を行なうことも好ましい。
【0030】
式IIの前記化合物の製造は有機溶媒中またはその非存在下において、マイクロ波の照射により行なわれ、第一に:
a)下記式IVの(E)または(Z)立体配置のニトロアルケン:
N‐CH=CH‐R (IV)
(上記式中:
は前記の意味を有する)、
b)下記式Vの(E)または(Z)立体配置のイミン:
‐CH=N‐CH‐COOR (V)
(上記式中:
は前記の意味を有し、および
はC1‐C6アルキルまたはアリール基を表す)、
c)好ましくは過塩素酸リチウム、過塩素酸銀、または酢酸銀から選択される金属塩、および
d)C3‐C10炭素の環式または非環式脂肪族またはC9‐C15炭素のアルカノ‐芳香族から選択される三級有機塩基、
を含んでなる混合物を反応させる。
【0031】
本発明の目的のために、上記の四種成分から構成される反応混合物は、マイクロ波の照射を用いて、または有機溶媒中−25℃〜+25℃の温度、好ましくは+25℃付近の温度において、諸成分の一種を他の三種へ加えることにより得られる。シクロ付加反応終了後、各具体的反応向けに選択された置換基に対応する2‐アルコキシカルボニルピロリジン類の混合物が得られる。この混合物はテトラヒドロフランのような環式エーテルまたは“ジグリム”としても知られるビス(2‐メトキシエチル)エーテルのような高沸点非環式体に溶解され、二酸化マンガン、過酸化水素または2,3‐ジクロロ‐5,6‐ジシアノ‐1,4‐ベンゾキノンのような酸化剤が加えられる。+60℃〜+250℃の温度において特定の時間後、2‐アルコキシカルボニル‐NH‐ピロールおよび対応2‐アルコキシカルボニル‐4‐ニトロ‐NH‐ピロールから構成される混合物が得られ、その諸成分は分別結晶化またはクロマトグラフィーにより分離される。一般式IIの酸類は、前記エステルのアルカリ加水分解により、好ましくは水およびジメトキシエタンの混合物中水酸化リチウムまたは水酸化ナトリウムでそれらを処理することにより得られる。
【0032】
本発明の追加の態様は、癌の治療のための一般式Iのこれら化合物の使用に関する。これら化合物の作用メカニズムは、アポトーシスまたは成長および細胞増殖のような調節工程に関与するタンパク質の合成の阻止で獲得されるヒストンデアセチラーゼとの拮抗性に基づく。これらの性質は、デアセチラーゼおよび関連酵素複合体と、その天然基質(例えば、ヒストンの末端リジンのε位でN‐アセチル化されたリジンの残基)との結合を防止または阻止し、そのためこれらは一または多アセチル化状態において留まる。
【0033】
本発明の最終な態様は、一般式Iの化合物の少なくとも一種と、一種以上の許容される薬学上の賦形剤とからなる組成物に関する。本発明の式I化合物は純粋物質として並びに医薬処方物の形態により投与しうるが、組合せ形態での化合物の投与が好ましい。薬剤の組合せは、好ましくは:
i)式I化合物のみを含有し、
ii)一種以上の賦形剤および/またはトランスポーター物質を含有し、および
iii)いずれか追加の治療活性物質も含有しうる、
処方剤の形態をとる。
【0034】
賦形剤、トランスポーター物質、および補助物質は、それらが処方または製造の他成分と混合できて、治療される生物で副作用を生じないように、薬学上および生理学上許容されねばならない。
【0035】
処方剤には、経口または非経口投与(皮下、皮内、筋肉内、および静脈内を含む)に適したものを含むが、最良の投与経路は患者の状態に依存する。
【0036】
処方剤は簡単な剤形をとることができ、薬理分野において公知の方法に従い製造される。投与する活性物質の量は療法の特徴に応じて変化するが、それらは一回でまたは数回に分けて通常1mg〜500mg/日である。
【実施例】
【0037】
先の概念の更なる理解を助けるため、本発明の一部の実施例を以下に記載する。これらの例は単なる例示にすぎない。
【0038】
実施例1
下記構造式の5‐フェニル‐3‐(4‐メトキシフェニル)‐1H‐ピロール‐2‐カルボン酸:
【化20】

および下記構造式の5‐フェニル‐3‐(4‐メトキシフェニル)‐4‐ニトロ‐1H‐ピロール‐2‐カルボン酸の製造:
【化21】

アセトニトリル(800mL)中、N‐フェニルメチリデングリシン酸メチル(14.17g,80.0mmol)の混合物に、トリエチルアミン(12mL,80.0mmol)、酢酸銀(1.98g,11.9mmol)、および(E)‐2‐(4‐メトキシフェニル)‐1‐ニトロエテン(14.33g,80.0mmol)を連続的に加えた。反応の進行を薄層クロマトグラフィーで追跡した。反応終了後、混合物をセライト層で濾過し、飽和NHCl溶液(2×150mL)および水(2×150mL)で洗浄した。MgSOで乾燥させたら、溶液を減圧下で蒸発させ、5‐フェニル‐3‐(4‐メトキシフェニル)‐2‐メトキシカルボニル‐4‐ニトロピロリジンのジアステレオマーの混合物26.5gを得た。この混合物12.22g(34.27mmol)を不活性雰囲気下でビス(2‐メトキシエチル)エーテル(343mL)に溶解し、二酸化マンガン(29.8g,343mmol)を加えた。反応混合物を攪拌下で48時間還流した。この後、混合物を環境温度へ戻し、セライト層で濾過した。得られた溶液を減圧下で濃縮し、5‐フェニル‐3‐(4‐メトキシフェニル)‐2‐メトキシカルボニル‐4‐ニトロ‐1H‐ピロールおよび5‐フェニル‐3‐(4‐メトキシフェニル)‐2‐メトキシカルボニル‐1H‐ピロールからなる混合物7.93gを得た。フラッシュカラムクロマトグラフィーを用いて生成物を分離し、それらの各々を次に示されたように別々に加水分解した。10%NaOH(40mL,水溶液)をエタノール(100mL)中、対応エステル(4.0mmol)の溶液へ滴下し、混合物を還流下で攪拌した。反応の進行を薄層クロマトグラフィーで追跡した。反応終了後、混合物を0℃に冷却し、1N HClで中和し、塩化メチレン(3×50mL)で抽出した。合わせた有機フラクションをMgSOで乾燥し、減圧下で蒸発させ、対応するカルボン酸を得た。
5‐フェニル‐3‐(4‐メトキシフェニル)‐2‐メトキシカルボニル‐1H‐ピロール‐2‐カルボン酸:
収率,41%、m.p.198℃(分解)、IR3467,1643cm−1H‐NMR(δppm,DMSO‐d)11.72(s,1H),7.88(d,2H,J=7.7Hz),7.51(d,2H,J=8.4Hz),7.38(t,2H,J=7.6Hz),7.26(t,1H,J=7.2Hz),6.91(d,2H,J=8.4Hz),6.69(s,1H),3.78(s,3H),3.34(bs,1H);13C‐NMR(δppm,DMSO‐d)162.5,157.9,134.4,131.3,131.2,130.3,128.6,127.9,127.0,125.1,119.8,113.0,112.9,109.3,55.0,54.9;C1815NOの分析計算値:C,73.71;H,5.15;N,4.78.実測値:C,73.56;H,5.08;N,4.81%.
5‐フェニル‐3‐(4‐メトキシフェニル)‐4‐ニトロ‐1H‐ピロール‐2‐カルボン酸:
収率,28%、m.p.190℃(分解)、IR3437,1663,1493cm−1H‐NMR(δppm,DMSO‐d)7.57‐7.52(m,2H),7.48‐7.43(m,3H),7.24(d,2H,J=8.4Hz),6.90(d,2H,J=8.4Hz),3.79(s,3H);13C‐NMR(δppm,DMSO‐d)161.6,158.3,133.5,132.5,131.1,129.3,129.0,128.0,124.5,124.2,121.1,112.7,54.9;C1814の分析計算値:C,63.90;H,4.17;N,8.28.実測値:C,63.85;H,4.20;N,8.27%.
【0039】
実施例2
下記構造式の3‐フェニル‐5‐(4‐メトキシフェニル)‐1H‐ピロール‐2‐カルボン酸:
【化22】

および下記構造式の3‐フェニル‐5‐(4‐メトキシフェニル)‐4‐ニトロ‐1H‐ピロール‐2‐カルボン酸の製造:
【化23】

これらの物質は実施例1の場合と実質的に類似した方法を用いて製造し、標題の化合物を黄色固体物として得た。
3‐フェニル‐5‐(4‐メトキシフェニル)‐1H‐ピロール‐2‐カルボン酸:収率,52%、m.p.251℃、IR3457,3316,1618cm−1H‐NMR(δppm,DMSO‐d)10.67(bs,1H),7.88(d,2H,J=7.5Hz),7.70(d,2H,J=8.5Hz),7.23(t,2H,J=7.5Hz),7.11(t,1H,J=7.3Hz),6.87(d,2H,J=8.5Hz),6.52(s,1H),3.74(s,3H),3.38(bs,1H);13C‐NMR(δppm,DMSO‐d)166.1,157.5,137.1,129.7,128.9,127.9,126.9,125.3,125.2,124.7,113.9,106.4,54.9;C1815NOの分析計算値:C,73.71;H,5.15;N,4.78.実測値:C,73.48;H,5.11;N,4.79%.
3‐フェニル‐5‐(4‐メトキシフェニル)‐4‐ニトロ‐1H‐ピロール‐2‐カルボン酸:収率,35%、m.p.106‐107℃、IR3407,1668,1507,1351cm−1H‐NMR(δppm,CDCl)9.32(s,1H),7,54(d,2H,J=8.6Hz),7.42‐7.38(m,5H),7.01(d,2H,J=8.6Hz),3.88(s,3H);13C‐NMR(δppm,CDCl)163.4,161.1,135.2,133.2,130.8,130.3,129.7,128.7,128.2,127.8,127.6,120.6,114.3,114.2,55.4;C1814の分析計算値:C,63.90;H,4.17;N,8.28.実測値:C,63.77;H,4.19;N,8.30%.
【0040】
実施例3
下記構造式の5‐(4‐メトキシフェニル)‐3‐(チオフェン‐2‐イル)‐1H‐ピロール‐2‐カルボン酸:
【化24】

および下記構造式の5‐(4‐メトキシフェニル)‐4‐ニトロ‐3‐(チオフェン‐2‐イル)‐1H‐ピロール‐2‐カルボン酸の製造:
【化25】

これらの物質は実施例1の場合と実質的に類似した方法を用いて製造し、標題の化合物を黄色固体物として得た。
5‐(4‐メトキシフェニル)‐3‐(チオフェン‐2‐イル)‐1H‐ピロール‐2‐カルボン酸:収率,54%、m.p.153‐154℃、IR3424,3112,2964,1610cm−1H‐NMR(δppm,CDCl)8.29(bs,1H),7.41(d,2H,J=8.6Hz),7.10(d,1H,J=5.0Hz),7.07(d,1H,J=3.1Hz),7.02‐6.98(m,2H),6.92(d,2H,J=8.6Hz),6.58(s,1H),3.82(s,3H);13C‐NMR(δppm,CDCl)158.6,139.2,133.0,127.4,125.3,121.8,121.2,120.4,114.9,114.4,103.5,71.9,70.5,59.0,55.3;C1613NOSの分析計算値:C,64.20;H,4.38;N,4.68.実測値:C,64.11;H,4.35;N,4.70%.
5‐(4‐メトキシフェニル)‐4‐ニトロ‐3‐(チオフェン‐2‐イル)‐1H‐ピロール‐2‐カルボン酸:収率,28%、m.p.180‐181℃、IR3408,3120,1610,1511cm−1H‐NMR(δppm,DMSO‐d)7.54(d,1H,J=3.4Hz),7.49(d,2H,J=8.3Hz),7.03(bs,2H),7.00(d,2H,J=8.2Hz),3.81(s,3H);13C‐NMR(δppm,DMSO‐d)161.1,135.1,133.7,130.1,129.3,127.3,126.8,120.1,114.3,65.9,55.4,15.2;C1612Sの分析計算値:C,55.81;H,3.51;N,8.14.実測値:C,56.09;H,3.49;N,8.14%.
【0041】
実施例4
下記構造式の6‐(3,5‐ジフェニル‐1H‐ピロール‐2‐カルボキサミド)ヘキサン酸の製造:
【化26】

DMF(7.5mL)中、3,5‐ジフェニル‐1H‐ピロール‐2‐カルボン酸(0.39g,1.5mmol)および6‐アミノヘキサン酸のメチルエステルのクロロヒドレート(0.25g,1.5mmol)の溶液を0℃に冷却した。トリエチルアミン(1.15mL,8.25mol)、1‐ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.22g,1.65mmol)、N‐(3‐ジメチルアミノプロピル)‐N′‐エチルカルボジイミドのクロロヒドレート(0.32g,1.65mmol)、およびN‐メチルモルホリン(0.165mL,1.5mmol)を連続的に加え、混合物を0℃で2時間、更に環境温度で96時間攪拌した。この後、酢酸エチル(300mL)を加え、得られた溶液を水(90mL)、1N Na(90mL,水溶液)、水(90mL)、NaHCO(90mL,飽和水溶液)、およびNaCl(90mL,飽和水溶液)で洗浄し、MgSOで乾燥し、減圧下で蒸発させ、0.47g(1.2mmol)のエステルを得た。
得られたメチルエステルをエチレングリコールジメチルエーテル(6mL)に溶解し、溶液を0℃に冷却した。次いで、1N LiOH(3.6mL)の溶液を滴下し、得られた混合物を0℃で攪拌した。反応の進行を薄層クロマトグラフィーで測定した。反応終了後、10%クエン酸の水溶液(pH=6)3.6mLを加えた。溶液を塩化メチレン(3×5mL)で抽出し、合わせた有機フラクションをMgSOで乾燥し、減圧下で蒸発させた。粗反応生成物をジエチルエーテルで摩砕し、0.42gの白色固体物を得た。
収率,74%、m.p.228‐229℃、IR3427,3246,1608cm−1H‐NMR(δppm,DMSO‐d)13.05(s,1H),8.73(s,1H),7.99(d,2H,J=7.7Hz),7.52(d,2H,J=7.5Hz),7.36‐7.29(m,4H),7.21(dd,2H,J=12.5Hz,J′=7.0Hz),6.65(s,1H),3.21(dd,2H,J=11.3Hz,J′=5.6Hz),2.05(t,2H,J=6.6Hz),1.54‐1.44(m,4H),1.36‐1.30(m,2H);13C‐NMR(δppm,DMSO‐d)177.5,160.8,136.1,132.7,131.8,129.0,128.5,128.3,127.6,126.5,125.9,124.6,123.3,108.3,37.3,28.8,26.6,25.5;C2324の分析計算値:C,73.38;H,6.43;N,7.44.実測値:C,73.45;H,6.41;N,7.44%.
【0042】
実施例5
下記構造式の6‐(4‐ニトロ‐3,5‐ジフェニル‐1H‐ピロール‐2‐カルボキサミド)ヘキサン酸の製造:
【化27】

この物質は、実施例4の場合と実質的に類似した方法を用いて製造し、標題の化合物を黄色固体物として得た。
収率,71%、m.p.153‐154℃、IR3417,3155,1638,1492cm−1H‐NMR(δppm,DMSO‐d)7.58(d,2H,J=7.2Hz),7.36(t,2H,J=7.2Hz),7.32‐7.23(m,7H),4.87(bs,2H),3.07(dd,2H,J=12.9Hz,J′=6.6Hz),2.09(t,2H,J=7.3Hz),1.46‐1.40(m,2H),1.35‐1.29(m,2H),1.18‐1.12(m,2H);13C‐NMR(δppm,DMSO‐d)176.0,161.9,136.8,134.4,133.4,131.8,130.1,129.0,127.5,127.4,127.3,126.3,122.8,71.0,64.8,57.9,38.2,35.0,28.8,26.0,24.7,15.1;C2323の分析計算値:C,65.55;H,5.50;N,9.97.実測値:C,65.37;H,5.44;N,10.01%.
【0043】
実施例6
下記構造式のN‐〔5‐(ヒドロキシカルバモイル)ペンチル〕‐3‐フェニル‐5‐(4‐メトキシカルボニル)‐1H‐ピロール‐2‐カルボキサミドの製造:
【化28】

不活性雰囲気下メタノール(1.25mL)中、ヒドロキシルアミンクロロヒドレート(0.26g,3.75mmol)およびフェノールフタレイン(1mg)の溶液に、恒久的桃色が溶液で観察されるまで、(不活性雰囲気下でメタノール3.3mL中、ナトリウムメトキシド0.65g,12.0mmolの溶液から得られる)メタノール中、ナトリウムメトキシドの一部を滴下する。実施例4の方法に従い、3‐フェニル‐5‐(4‐メトキシフェニル)‐1H‐ピロール‐2‐カルボン酸および6‐アミノヘキサン酸のメチルエステルのクロロヒドレートから製造された6‐〔3‐フェニル‐5‐(4‐メトキシフェニル)‐1H‐ピロール‐2‐カルボキサミド〕ヘキサン酸メチル(0.53g,1.25mmol)と、メタノール中、ナトリウムメトキシド(先に調製された溶液1.4mL,5.0mmol)とを連続的に加えた。混合物を26時間攪拌したところ、濃密沈殿物の形成が観察された。この後、水(3mL)を反応混合物へ加える。この溶液を氷酢酸で酸性化し、塩化メチレン(3×10mL)で抽出した。合わせた有機フラクションをMgSOで乾燥し、減圧下で蒸発させ、標題の生成物0.46gを白色固体物として得た。
収率,87%、m.p.157‐158℃、IR3407,3226,1663,1608cm−1H‐NMR(δppm,DMSO‐d)11.44(s,1H),10.34(s,1H),8.66(s,1H),7.73(d,2H,J=7.8Hz),7.49(d,2H,J=7.7Hz),7.36(t,2H,J=7.3Hz),7.30(t,1H,J=5.1Hz),7.26(t,2H,J=7.3Hz),6.97(d,2H,J=7.9Hz),6.56(s,1H),3.78(s,3H),3.16(dd,2H,J=12.0Hz,J′=5.9Hz),1.93(t,2H,J=7.2Hz),1.51‐1.45(m,2H),1.43‐1.38(m,2H),1.24‐1.17(m,2H);13C‐NMR(δppm,DMSO‐d)168.9,160.9,158.2,135.7,132.8,128.7,127.9,127.3,126.2,125.9,124.3,122.7,114.0,107.1,55.1,32.1,28.7,26.0,24.8;C2427の分析計算値:C,68.39;H,6.46;N,9.97.実測値:C,68.25;H,6.42;N,9.98%.
【0044】
実施例7
下記構造式のN‐〔5‐(ヒドロキシカルバモイル)ペンチル〕‐3‐フェニル‐5‐(4‐メトキシカルボニル)‐4‐ニトロ‐1H‐ピロール‐2‐カルボキサミドの製造:
【化29】

この物質は実施例6の場合と実質的に類似した方法を用いて製造し、標題の化合物を黄色固体物として得た。
収率,84%、m.p.126‐127℃、IR3397,3185,1668,1628,1507,1356cm−1H‐NMR(δppm,DMSO‐d)12.59(bs,1H),10.33(s,1H),8.66(s,1H),7.53(d,2H,J=8.5Hz),7.44‐7.39(m,3H),7.35(d,2H,J=7.0Hz),7.03(d,2H,J=8.5Hz),6.71(t,1H,J=4.4Hz),3.82(s,3H),3.03(dd,2H,J=11.9Hz,J′=6.0Hz),1.88(t,2H,J=7.3Hz),1.40‐1.34(m,2H),1.24‐1.18(m,2H),1.03‐0.96(m,2H);13C‐NMR(δppm,DMSO‐d)168.9,159.9,159.4,133.3,132.0,131.1,130.9,129.9,128.0,127.6,123.3,121.4,121.1,113.5,55.2,32.0,28.4,25.7,24.7;C2426の分析計算値:C,61.79;H,5.62;N,12.01.実測値:C,61.71;H,5.59;N,12.04%.
【0045】
これら最後の実施例で表された概念を理解しやすくさせる目的で、前記実施例の化合物に至る合成の様々な段階が、以下に含まれるスキーム1において示される:
【化30】

【0046】
実施例8
下記構造式のN‐〔5‐(ヒドロキシカルバモイル)ペンチル〕‐3‐(4‐メトキシフェニル)‐5‐フェニル‐1H‐ピロール‐2‐カルボキサミドの製造:
【化31】

この物質は実施例6の場合と実質的に類似した方法を用いて製造し、標題の化合物を薄黄色固体物として得た。収率,80%、m.p.142℃、IR3417,3256,1663,1613,1547,1306cm−1H‐NMR(δppm,DMSO‐d)12.59(bs,1H),10.33(s,1H),8.66(s,1H),7.53(d,2H,J=8.5Hz),7.44‐7.39(m,3H),7.35(d,2H,J=7.0Hz),7.03(d,2H,J=8.5Hz),6.71(t,1H,J=4.4Hz),3.82(s,3H),3.03(dd,2H,J=12.43Hz,J′=6.35Hz),1.94(t,2H,J=7.3Hz),1.54‐1.45(m,2H),1.45‐1.37(m,2H),1.28‐1.16(m,2H);13C‐NMR(δppm,DMSO‐d)169.0,161.0,158.0,132.6,131.6,129.9,128.6,127.8,127.2,126.6,124.5,123.1,113.4,108.1,55.0,32.2,28.8,26.1,24.9;C2427の分析計算値:C,68.39;H,6.46;N,9.97.実測値:C,68.27;H,6.43;N,9.99%.
【0047】
実施例9
下記構造式のN‐〔5‐(ヒドロキシカルバモイル)ペンチル〕‐3‐(4‐メトキシフェニル)‐5‐(フェニル)‐4‐ニトロ‐1H‐ピロール‐2‐カルボキサミドの製造:
【化32】

この物質は実施例6の場合と実質的に類似した方法を用いて製造し、標題の化合物を淡黄色固体物として得た。収率,94%、m.p.155℃、IR3397,3155,1638,1497,1356cm−1H‐NMR(δppm,DMSO‐d)11.59(s,1H),10.34(s,1H),8.68(s,1H),7.63‐7.53(m,2H),7.52‐7.41(m,3H),7.29(d,2H,J=8.5Hz),6.99(d,2H,J=8.5Hz),6.72(t,1H,J=4.4Hz),3.80(s,3H),3.05(dd,2H,J=12.02Hz,J′=6.24Hz),1.89(t,2H,J=7.3Hz),1.50‐1.33(m,2H),1.33‐1.16(m,2H),1.14‐0.98(m,2H);13C‐NMR(δppm,DMSO‐d)168.9,159.4,158.8,133.0,131.6,131.2,129.3,129.1,129.0,128.0,123.5,121.0,113.5,55.0,32.0,28.3,25.7,24.6;C2426の分析計算値:C,61.79;H,5.62;N,12.01.実測値:C,61.40;H,5.77;N,11.80%.
【0048】
実施例10
下記構造式の4‐(4‐アミノブチル)‐1‐メチルセミカルバジドの製造:
【化33】

メタノール(30mL)中、ジ-tert-ブチルジカーボネート(10.9g,51mmol)の混合物をトリエチルアミン(30mL,215mmol)およびメタノール(300mL)中、1,4‐ジアミノブタン(11.12g,150mmol)の溶液へ滴下した。得られた混合物を環境温度で16時間攪拌した。この後、トリエチルアミンおよびメタノールを減圧下で蒸発させた。得られた油状物を塩化メチレン(100mL)に溶解し、10%炭酸ナトリウム(2×50mL,水溶液)で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥し、減圧下で蒸発させた。こうして一保護アミン(7.8g,41.42mmol)を得た。
塩化メチレン(438mL)中、一保護アミン(6g,31.86mmol)およびトリホスゲン(3.48g,11.72mmol)の溶液に、水(438mL)中重炭酸ナトリウム(18.23g,63.72mmol)の溶液を環境温度で滴下する。得られた二相系を激しく1.5時間攪拌した。この後、有機相をデカントし、MgSOで乾燥し、減圧下で蒸発させた。得られた油状物(4.3g,20mmol)をメタノール(6.8mL)に溶解し、メチルヒドラジン(1.1mL,20.8mmol)および水(4.05mL)の別な既調製溶液に0℃でゆっくり滴下した。混合物を0℃で45分間攪拌した。この後、沈殿物を濾過し、3.492gの白色固体物を得たが、その分光性は4‐(4-tert-ブトキシカルボニルアミノブチル)‐1‐メチルセミカルバジドと一致すると判断された。
他の溶液、塩化メチレン(22mL)中、トリフルオロ酢酸(4.96mL,44mmol)を0℃において、塩化メチレン(27.5mL)中、既得沈殿物(0.500g,1.92mmol)の溶液に30分間かけてゆっくり加えた。混合物を2時間攪拌した。この後、トルエン(50mL)を加え、それを半量となるまで減圧下で蒸発させ、その工程を数回繰り返した。こうして、標題の化合物のアンモニウム塩のトリフルオロアセテート(0.720g,2.63mmol)を得た。
収率,68%、IR3387,3115,1673cm−1H‐NMR(δppm,DMSO‐d)7.88(s,3H),7.42‐7.15(m,2H),3.78‐3.64(m,1H),3.58(s,3H),3.16‐2.97(m,2H),2.95‐2.73(m,2H),1.80‐1.38(m,4H);13C‐NMR(δppm,DMSO‐d)159.0,158.6,158.1,157.7,156.7,51.1,26.3,24.3.
【0049】
実施例11
下記構造式の1‐〔4‐〔5‐(4‐メトキシフェニル)‐4‐ニトロ‐3‐(チオフェン‐2‐イル)‐1H‐ピロール‐2‐カルボキサミド〕ブチル〕‐3‐(2‐メチルアミン)尿素の製造:
【化34】

DMF(6.25mL)中、5‐(4‐メトキシフェニル)‐4‐ニトロ‐3‐(チオフェン‐2‐イル)‐1H‐ピロール‐2‐カルボン酸(0.434g,1.25mmol)および4‐(4‐アミノブチル)‐1‐メチルセミカルバジドのアンモニウム塩のトリフルオロアセテート(0.345g,1.25mmol)の溶液を0℃に冷却した。次いで、トリエチルアミン(0.98mL,7.04mmol)、1‐ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.210g,1.37mmol)、N‐(3‐ジメチルアミノプロピル)‐N′‐エチルカルボジイミドクロロヒドレート(0.263g,1.37mmol)、およびN‐メチルモルホリン(0.14mL,1.25mmol)を連続的に加えた。得られた混合物を0℃において2時間、更に環境温度において96時間攪拌した。この後、酢酸エチル(250mL)を加え、得られた溶液を水(80mL)、1N Na(80mL,水溶液)、水(80mL)、NaHCO(80mL,飽和水溶液)、およびNaCl(80mL,飽和水溶液)で洗浄し、MgSOで乾燥し、減圧下で蒸発させ、標題の化合物0.400g(0.82mmol)を得た。
収率,65.6%、m.p.185‐187℃、IR3408,3161,1639,1511cm−1H‐NMR(δppm,CDCl)10.4(s,1H),7.56(dd,1H,J=5.5Hz,J′=0.8),7.54(d,2H,J=8.7Hz),7.20‐7.15(m,3H),6.98(d,2H,J=8.7Hz),5.74(t,1H,J=5.2Hz),4.66(s,1H),3.86(s,4H),3.67(s,3H),3.13‐3.04(m,4H),1.31‐1.24(m,4H);13C‐NMR(δppm,CDCl)160.7,159.6,157.0,134.6,132.9,131.5,130.9,129.5,128.7,127.6,123.2,121.1,113.9,113.7,55.4,52.1,40.5,38.7,27.0,26.2;C2226Sの計算分子イオン:m/z486.14.実測値:471.1(M‐Me).
【0050】
実施例12
下記構造式の1‐(4‐アミノメチル)‐3‐(ベンジルオキシ)尿素の製造:
【化35】

この物質は、実施例10の場合と実質的に類似した方法を用い、但し、メチルヒドラジンの代わりにベンジルオキシアミンを用いて製造した。前記の付加‐脱保護順序後、標題の化合物を対応アンモニウム塩のトリフルオロアセテートとして得た。
収率,68%、IR3759,3356,1648cm−1H‐NMR(δppm,DMSO‐d)7.82(s,3H),7.52‐7.28(m,7H),5.00(s,2H),3.09‐2.92(m,2H),2.90‐2.68(m,2H),1.68‐1.32(m,4H);13C‐NMR(δppm,DMSO‐d)159.6,158.2,157.7,136.4,128.5,128.1,127.8,77.2,38.0,26.6,24.3,24.0;C1320の計算分子イオン:m/z237.32.実測値:238.0.
【0051】
実施例13
下記構造式の1‐〔4‐〔3,5‐ビス(3,5‐ジメトキシフェニル)‐1H‐ピロール‐2‐カルボキサミド〕ブチル〕‐3‐(ベンジルオキシ)尿素の製造:
【化36】

この物質は、実施例11の場合と実質的に類似した方法を用い、3,5‐ビス(3,5‐ジメトキシフェニル)‐1H‐ピロール‐2‐カルボン酸および1‐(4‐アミノメチル)‐3‐(ベンジルオキシ)尿素のアンモニウム塩のトリフルオロアセテートから製造した。
収率,81%、IR3407,3216,1688,1597cm−1H‐NMR(δppm,CDCl)9.87(s,1H),7.44‐7.32(m,5H),7.13(s,1H),6.77(d,2H,J=2.0Hz),6.62(d,2H,J=2.2Hz),6.50(d,2H,J=2.6Hz),6.43(t,1H,J=2.0Hz),6.03(t,1H,J=5.5Hz),5.62(t,1H,J=5.3Hz),4.80(s,2H),3.85(s,6H),3.82(s,6H),3.28(dd,2H,J=11.9Hz,J′=5.9Hz),3.15(dd,2H,J=12.7Hz,J′=6.5Hz),1.41‐1.29(m,4H);13C‐NMR(δppm,CDCl)161.2,160.0,137.6,135.4,134.1,133.2,130.8,129.2,128.8,128.7,127.7,122.2,110.0,107.4,103.0,100.0,99.8,78.6,72.3,10.1,68.1,55.4,39.1,38.8,27.1,26.6;C3338の計算分子イオン:m/z602.68.実測値:603.2.
【0052】
実施例14
下記構造式の1‐〔4‐〔3,5‐ビス(3,5‐ジメトキシフェニル)‐1H‐ピロール‐2‐カルボキサミド〕ブチル〕‐3‐ヒドロキシ尿素の製造:
【化37】

酢酸エチル(66mL)およびエタノール(16.5mL)中、1‐〔4‐〔3,5‐ビス(3,5‐ジメトキシフェニル)‐1H‐ピロール‐2‐カルボキサミド〕ブチル〕‐3‐(ベンジルオキシ)尿素(0.200g,0.33mmol)の溶液を調製し、それに触媒10%Pd‐C(0.116g,0.11mmol)を加えた。混合物を水素流下環境温度において5時間攪拌した。この後、得られた懸濁物をセライトで濾過し、濾液を減圧下において蒸発させた。こうして、標題の生成物を無色油状物として得た。
収率,71%、IR3416,3244,2948,1598cm−1H‐NMR(δppm,CDCl)10.3(s,1H),6.78(s,2H),6.60(d,2H,J=1.7Hz),6.53‐6.44(m,2H),6.39(s,1H),6.17‐6.02(m,1H),4.81(s,1H),3.86‐3.78(m,13H),3.34‐3.16(m,4H),1.48‐1.33(m,4H);13C‐NMR(δppm,CDCl)161.2,137.6,134.6,134.5,133.3,128.3,128.2,122.1,122.0,109.7,107.5,103.3,99.9,99.6,55.6,55.5,39.0,38.9,38.7,27.2,27.0,26.8;C2632の計算分子イオン:m/z512.55.実測値:513.2(M),497.1(M‐OH).
【0053】
これら最後の実施例で表された概念を理解しやすくさせる目的で、実施例10、11、12、13、および14で記載された化合物に至る合成の様々な段階を、以下に含まれるスキーム2により示す:
【化38】

【0054】
【化39】

スキーム3.阻害作用が図1、2、3、4、5、6、および7において示される化合物の展開式
【0055】
実施例15
ヒストンデアセチラーゼ活性の阻害能のインビトロ測定
本実施例および次の実施例で行なわれる方法をより説明する目的の下、キラルピロリジンの誘導体が含まれたスキーム3において示される化合物で得られた結果が、この環式系の活性を本発明の対象、ピロール類と比較する目的で提示される。
【0056】
合成された化合物のヒストンデアセチラーゼの阻害能を調べるために、様々な濃度の合成化合物の存在下において、細胞系HCT116およびMOLT4の核抽出物と、トリチウム標識アセチル化ヒストンとをインキュベートし、その後でシンチレーションカウンターを用いて遊離アセチル基の濃度を測定することにより、インビトロ研究を行なった。
【0057】
核抽出物の調製
懸濁状態の細胞(8×10)を800rpmで5分間遠心し、PBSで洗浄し、緩衝液A(10mM Tris pH7.5,15mM KCl,2mM MgCl,0.1mM EDTA,2mM 2‐メルカプトエタノール,緩衝液50mL毎に1錠のEDTAフリーのプロテアーゼ阻害剤)2mLに再懸濁した。緩衝液B(50mM Tris,1M KCl,30mM MgCl,0.1mM EDTA,2mM 2‐メルカプトエタノール)135μLを加え、次いでそれらを4℃において2.7×10rpmで5分間遠心し、上澄みを除去した。ペレットを緩衝液A2mLに再懸濁し、2mLホモゲナイザー中で5回攪拌した。それを再び4℃において7.8×10rpmで8分間遠心し、ペレットを緩衝液A2mLに再懸濁し、ホモゲナイザー中で5回攪拌した。硫酸アンモニウム200μLをそれに加え、次いで4℃においてロータリーミキサーで30分間混ぜた。それを4℃において12×10rpmで10分間遠心し、上澄みを緩衝液C(20mM Tris pH7.5,10%グリセロール,1mM EDTA,1mM 2‐メルカプトエタノール,1.5mM MgCl,緩衝液50mL毎に1錠のEDTAフリーのプロテアーゼ阻害剤)200mL中、4℃において2時間にわたりMWCO3500膜により透析した。この後、膜の内容物を回収し、下記の研究に用いた。
【0058】
化合物の阻害活性のインビトロ測定
示された方法を用いて得られた核抽出物30μLに、緩衝液C(上記参照)55μL、対応阻害剤溶液5μL、およびトリチウム標識過アセチル化ヒストン10μLを加え、得られた混合物を37℃で1時間インキュベートした。
【0059】
塩酸(最終濃度1M)および酢酸(最終濃度0.4M)の溶液37.5μLの添加によりインキュベートを止めた。酢酸エチル700μLを得られた溶液に加え、それを10,000rpmで5分間遠心し、最後に(遊離トリチウム化酢酸を含有する)上層をシンチレーション計数に用いた。上層500μLおよびシンチレーション液5mLを混ぜることによりシンチレーションカウンター用のサンプルを調製した。
【0060】
前記方法に従い得られた最も代表的なデータが図1および2において示されている。図1の結果は細胞系HCT116に相当し、図2の結果は細胞系MOLT4に相当する。
【0061】
実施例16
ヒストンの全シンチレーションの測定
H3およびH4ヒストンのアセチル化の程度の定量が下記の方法を用いて行なわれた。
【0062】
Jurkatヒト細胞系(前骨髄球性白血病)を様々な濃度の本発明の対象、HDAC阻害化合物で24時間処理した。この後、1%Nonidet-P40およびプロテアーゼ阻害剤含有のRSB緩衝液(10mM Tris pH7.5,10mM 塩化ナトリウムおよび3mM塩化マグネシウム)を該細胞へ加えることにより核を単離した。ヒストンを抽出するために、0.25M塩酸を核へ加え、混合物を4℃で16時間攪拌した。次いで、8倍容量のアセトンを加えることによりヒストンを沈殿させた。得られたヒストン混合物を、0.3%トリフルオロ酢酸中アセトニトリル勾配(20〜60%)でC18カラムを用いる逆相高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)により分離した。
【0063】
H3およびH4ヒストンの各フラクションの非アセチル化、一、二、三、および四アセチル化種の分離を、シリカキャピラリー(60.2cm×75μm,有効長さ50cm)を用いる高性能キャピラリー電気泳動(HPCE)で行なった。用いられた溶離条件は:25℃、電圧12kV、214nmの吸光検出器と、110mMリン酸(pH2.0)およびHPMセルロース(0.03%wt/vol)の溶離緩衝液であった。
【0064】
各注入前に、システムを0.1M NaOHで3分間洗浄し、次いで更に0.5M HSOで2分間洗浄し、それを溶離緩衝液で3分間平衡化させた。洗浄緩衝液および溶液を0.45μmの孔径で濾過されたMilli‐Q水で調製した。サンプルを0.3psiの圧力下3秒間で注入した。全てのサンプルを二重に分析した。
【0065】
本発明の対象、様々な分子で得られたある代表的データが図3で示される。
【0066】
実施例17
アポトーシス誘導の測定
染色剤として市販YoProキットを用い、フローサイトメトリー分析を用いて細胞質膜の透過性の変化を調べることにより、アポトーシス細胞の定量を行った。行なわれる方法が次に説明される。ヒト系HCT116およびHL60の細胞(10細胞/処理)を様々な濃度の本発明の対象、HDAC阻害剤化合物で24時間処理した。この期間後、細胞を冷PBS1×で2回洗浄し、それらをPBS1× 1mLに再懸濁し、YoPro 1μLおよびヨウ化プロピジウム1μLを加えた。混合物を光から保護しながら氷中で30分間インキュベートした。フローサイトメトリーを用いてアポトーシス細胞の量を測定した。
【0067】
最も代表的なデータが図4および5において示される。結腸HCT116モデルのヒト癌腫に関するデータが図4において表される。ヒト急性骨髄性白血病HL60モデルに関するデータが図5において表される。
【0068】
実施例18
インビボ生物活性の測定
インビボ腫瘍成長において記載された化合物の一部の効果を観察する目的で、6週齢雌性無胸腺ヌードマウス(Harlam Sprague Dawley,Indianapolis,IN,USA)を用いて研究を行なった。研究では、2×10細胞の系HCT116(ヒト結腸癌腫)および10 MOLT4細胞(ヒトT細胞急性リンパ芽球白血病)をPBSに再懸濁された200μL/動物の最終接種容量で皮下接種した。腫瘍が100mmの平均容量に達したら、各マウスに対応分子の20μM溶液200μLの1日量を腹腔内注射(10mg/kg体重)で投与した。接種のストレスを模擬するために、マウスのコントロール群にPBS200μLを投与した。マウスを24時間毎に秤量し、腫瘍を球体ジオメトリーと仮定して、較正ミリメートル測定器を用いて腫瘍容量を測定した(容量=d×π/6)。腫瘍が1〜1.5cmの容量(Ethical-Humanitarian Human End Point)に達したら、マウスを屠殺し、腫瘍を抽出し、秤量した。
【0069】
最も代表的なデータが図7および8において示される。ヒト結腸癌腫HCT116モデルに関するデータが図7において表される。図8において、ヒト線維芽細胞白血病MOLT4モデルに関するデータが表される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、陽性コントロールとして用いられるTSA(tricostatin の頭字語)およびSAHA(suberoylanilide hydroxamic acidの頭字語)と比較した、細胞系HCT116(ヒト結腸癌腫)のヒストンのデアセチラーゼ活性に及ぼす、本発明の対象、化合物の一部においてインビトロ試験された効果を示す。
【図2】図2は、陽性コントロールとして用いられた、TSAおよびSAHAと比較した、細胞系MOLT4(ヒト線維芽細胞白血病)のヒストンのデアセチラーゼ活性に及ぼす、本発明の対象、化合物の代表例のインビトロ効果を示す。
【図3】図3は、10μMの濃度において本発明の対象、一部の化合物により処理されたJurkatヒト前骨髄球性白血病細胞系のH3およびH4ヒストンの、HPCE(高性能キャピラリー電気泳動)を用いた、アセチル化レベルの定量を示す。
【図4】図4は、異なる濃度のSAHAおよび本発明の対象、二種の阻害剤の存在下における、アポトーシスおよび壊死細胞のパーセンテージの測定値を示す。コントロールサンプルおよびDMSOにより処理されたサンプルにおいて、得られたデータも含まれている。示されたデータはヒト結腸癌腫モデルHCT116に相当する。
【図5】図5は、異なる濃度のSAHAおよび本発明の対象、二種の阻害剤の存在下における、アポトーシスおよび壊死細胞のパーセンテージの測定値を示す。コントロールサンプルおよびDMSOにより処理されたサンプルにおいて得られたデータも含まれている。示されたデータはヒト急性骨髄性白血病モデルHL60に相当する。
【図6】図6は、本発明の対象、化合物の一部の腹腔内投与により引き起こされた、無胸腺ヌードマウスにおけるヒト結腸癌腫HCT116の腫瘍成長の阻害を示す。実施例18において詳細に記載された方法に従い、異種インプラントが脾臓内において行なわれ、阻害剤が腹腔内に注射された。
【図7】図7は、ヒト線維芽細胞白血病モデルMOLT4における、本発明の対象、化合物の一部の無胸腺ヌードマウスにおけるインビボ抗腫瘍活性を示す。実施例17において詳細に記載された方法に従い、異種インプラントが脾臓内において行なわれた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式Iのピロール誘導体:
【化1】

(上記式中:
およびRは、独立して、フェニル基、環の異なる位置における一または多置換フェニル、またはO、N、もしくはSの少なくとも一つのヘテロ原子を含むC5‐C10ヘテロアリール基を表し、
は、水素原子または電子求引基、例えばニトロ基、またはアミノもしくはアミド基を表し、
は、水素原子または、直鎖、分岐、もしくは環式C1‐C6アルキル基を表し、
nは、1〜8のメチレン基の数を表し、
Xは、二級アミン基、酸素原子、またはイオウ原子を表し、
Yは、メチレン、置換メチレン、および二級アミンから選択される基を表し、
Zは、酸素またはイオウ原子を表し、および
Wは、ヒドロキシル、ヒドロキシアミン、ヒドラジン、およびアルキル、アリール、またはヘテロアリール‐ヒドラジンから選択される基を表す)。
【請求項2】
〔1〕下記構造式の6‐(3,5‐ジフェニル‐1H‐ピロール‐2‐カルボキサミド)ヘキサン酸:
【化2】

〔2〕下記構造式の6‐(4‐ニトロ‐3,5‐ジフェニル‐1H‐ピロール‐2‐カルボキサミド)ヘキサン酸:
【化3】

〔3〕下記構造式のN‐〔5‐(ヒドロキシカルバモイル)ペンチル〕‐5‐フェニル‐3‐(4‐メトキシカルボニル)‐1H‐ピロール‐2‐カルボキサミド:
【化4】

〔4〕下記構造式のN‐〔5‐(ヒドロキシカルバモイル)ペンチル〕‐3‐フェニル‐5‐(4‐メトキシカルボニル)‐1H‐ピロール‐2‐カルボキサミド:
【化5】

〔5〕下記構造式のN‐〔5‐(ヒドロキシカルバモイル)ペンチル〕‐3‐フェニル‐5‐(4‐メトキシカルボニル)‐4‐ニトロ‐1H‐ピロール‐2‐カルボキサミド:
【化6】

〔6〕下記構造式の1‐〔4‐〔3,5‐ビス(3,5‐ジメトキシフェニル)‐1H‐ピロール‐2‐カルボキサミド〕ブチル〕‐3‐ヒドロキシ尿素:
【化7】

〔7〕下記構造式の1‐〔4‐〔5‐(4‐メトキシフェニル)‐4‐ニトロ‐3‐(チオフェン‐2‐イル)‐1H‐ピロール‐2‐カルボキサミド〕ブチル〕‐3‐(2‐メチルアミノ)尿素:
【化8】

から選択される、請求項1に記載の一般式Iのピロール誘導体。
【請求項3】
一般式(Ia)の化合物の製造方法であって:
【化9】

(上記式中、R、R、R、R、X、およびnは、前記の意味を有する)、
a)式IIの1H‐ピロール‐2‐カルボン酸:
【化10】

b)式IIIの化合物:
HX‐(CH‐R (III)
(上記式中、Rはアルコキシカルボニルである)、
c)カルボキシル基の活性化のための試薬、および
d)C3‐C10炭素の環式または非環式脂肪族およびC9‐C15炭素のアルカン芳香族から選択される三級アミン、
から構成される混合物を反応させ、得られた生成物を水酸化リチウムまたは水酸化ナトリウム、ジメトキシエタン、および水の混合物と反応させることを含んでなる、方法。
【請求項4】
一般式(Ib)の化合物の製造方法であって:
【化11】

(上記式中、R、R、R、R、X、およびnは、前記の意味を有する)、
a)式IIの1H‐ピロール‐2‐カルボン酸:
【化12】

b)式IIIの化合物:
HX‐(CH‐R (III)
(上記式中、Rはアルコキシカルボニルである)、
c)カルボキシル基の活性化のための試薬、および
d)C3‐C10炭素の環式または非環式脂肪族およびC9‐C15炭素のアルカン芳香族から選択される三級アミン、
から構成される混合物を反応させ、得られた生成物をメタノール中、過剰のナトリウムメトキシドの存在下において、ヒドロキシルアミンクロロヒドレートおよびフェノールフタレインの混合物へ加えることを含んでなる、方法。
【請求項5】
一般式(Ic)の化合物の製造方法であって:
【化13】

(上記式中、R、R、R、R、X、Z、およびnは、前記の意味を有する)、
a)式IIの1H‐ピロール‐2‐カルボン酸:
【化14】

b)式IIIの化合物:
HX‐(CH‐R (III)
(上記式中、Rはt‐ブトキシカルバモイル(NHBoc)またはベンジルオキシカルバモイル(NHCBz)である)、
c)カルボキシル基の活性化のための試薬、および
d)C3‐C10炭素の環式または非環式脂肪族およびC9‐C15炭素のアルカン芳香族から選択される三級アミン、
から構成される混合物を反応させ、得られた生成物を酸処理または加水分解により脱保護し、それをホスゲンまたはそのアナログ、例えばジホスゲン、トリホスゲン、またはチオホスゲンと反応させて、イソシアネートを得、これがヒドロキシルアミンにより処理されることを含んでなる、方法。
【請求項6】
一般式(Id)の化合物の製造方法であって:
【化15】

(上記式中、R、R、R、R、X、Z、およびnは前記の意味を有し、RはH、C1‐C6アルキル、アリール、またはO、N、もしくはSから選択されるヘテロ原子一以上を有する5または6員のヘテロアリールである)、
a)式IIの1H‐ピロール‐2‐カルボン酸:
【化16】

b)式IIIの化合物:
HX‐(CH‐R (III)
(上記式中、Rはt‐ブトキシカルバモイル(NHBoc)またはベンジルオキシカルバモイル(NHCBz)である)、
c)カルボキシル基の活性化のための試薬、および
d)C3‐C10炭素の環式または非環式脂肪族およびC9‐C15炭素のアルカン芳香族から選択される三級アミン、
から構成される混合物を反応させ、得られた生成物を酸処理または水素化分解により脱保護し、それをホスゲンまたはそのアナログ、例えばジホスゲン、トリホスゲン、またはチオホスゲンと反応させて、イソシアネートまたはチオイソシアネートを得、これがヒドラジンまたはアルキル、アリール、もしくはヘテロアリール‐ヒドラジンにより処理されることを含んでなる、方法。
【請求項7】
一般式(Id)の化合物の製造方法であって:
【化17】

(上記式中、R、R、R、R、X、Z、およびnは前記の意味を有し、RはH、C1‐C6アルキル、アリール、またはO、N、もしくはSから選択されるヘテロ原子一以上を有する5または6員のヘテロアリールである)、
a)式IIの1H‐ピロール‐2‐カルボン酸:
【化18】

b)式IIIの化合物:
HX‐(CH‐R (III)
(上記式中、Rは、3‐ベンジルオキシウレイルまたは3‐アルキル、アリールもしくはヘテロアリールウレイルである)、
c)カルボキシル基の活性化のための試薬、および
d)C3‐C10炭素の環式または非環式脂肪族およびC9‐C15炭素のアルカン芳香族から選択される三級アミン、
から構成される混合物の反応を含んでなる、方法。
【請求項8】
癌の治療に使用するための、請求項1に記載のピロール誘導体。
【請求項9】
癌の治療に使用するための、請求項2に記載のピロール誘導体。
【請求項10】
癌の治療用薬剤の製造における、請求項1に記載のピロール誘導体の使用。
【請求項11】
癌の治療用薬剤の製造における、請求項2に記載のピロール誘導体の使用。
【請求項12】
請求項1に記載の化合物と、少なくとも一種の薬学上許容される賦形剤とを含んでなる、医薬組成物。
【請求項13】
請求項2に記載の化合物と、少なくとも一種の薬学上許容される賦形剤とを含んでなる、医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−521519(P2009−521519A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547990(P2008−547990)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【国際出願番号】PCT/ES2005/000708
【国際公開番号】WO2007/074176
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(508195235)ウニベルシダッド、デル、パイス、バスコ‐エウスカル、エリコ、ウニベルトシタテア、(ウペウベ‐エアチェウ) (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSIDAD DEL PAIS VASCO−EUSKAL HERRIKO UNIBERTSITATEA (UPV−EHU)
【出願人】(508194696)セントロ、ナシオナル、デ、インベスティガシオネス、オンコロヒカス、(セエネイオ) (1)
【氏名又は名称原語表記】CENTRO NACIONAL DE INVESTIGACIONES ONCOLOGICAS (CNIO)
【Fターム(参考)】