説明

ヒトおよび動物における病原体の迅速な同定方法

本発明は、ヒトおよび動物由来の生物学的サンプル中の病原体を同定する方法、ヒトおよび動物から得られるサンプル中に存在する複数の病原体を分析する方法、病原体についての詳細な遺伝情報または病原体を決定する方法、そして環境的サンプル、臨床的サンプルまたはその他のサンプル由来の生体物質を迅速に検出および同定する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の属する技術分野
本発明は、一般的には、ヒトおよび動物由来の生物学的サンプル中の病原体を同定することに関する臨床応用に関する。本発明はまた、ヒトおよび動物から得られたサンプル中に存在する複数の原因因子の分解に関する。本発明はさらに、そのような病原体または原因因子についての詳細な遺伝的情報を決定することに関する。
【0002】
生体物質の同定は、生物学的戦争および天然の感染の様な場合における生体物質の治療および/または根絶の適切な経過を決定するために重要である。さらに、選択された生体物質の地理的な起源を決定することは、可能性のある犯罪者の正体の同定を容易にする可能性がある。本発明はまた、環境サンプル、臨床サンプルまたはその他のサンプル由来の生体物質の迅速な検出および同定のための方法に関する。細菌およびウィルスを含むいずれかの生体物質由来の独特の塩基組成の特徴(BCS)の検出および特性決定のための方法を提供する。独特のBCSを使用して、生体物質を迅速に同定する。
【0003】
発明の背景
米国において、病院は、5百万件を優に超える認識された感染性疾患に関連する病気の事例を毎年報告している。入院患者の状況および地域の状況の両方において、かなりの多数が未検出のままであり、結果としてかなりの罹患率および死亡率をもたらす。感染性疾患に対する決定的な治療は、攻撃している病原体の迅速で、感度が高く、そして特異的な検出に依存しており、そしてメディカルセンターの微生物学研究室の任務の中心的なものである。残念ながら、感染性疾患の結果が病原体認識のための時間、ならびに微生物の綱(class)や種(species)の正確な同定、および薬剤耐性単離株の存在を同定する能力に関連している、という認識にもかかわらず、従来からの病院の研究室は、しばしば伝統的な遅速の多工程培養に基づくアッセイにより妨げられている。最近徐々に明らかになってきた従来からの研究室のその他の限定要因には、以下のものが含まれる:長い世代時間(最大数週間)を有する病原体のための極端に長い待ち時間;追加的試験および種形成および抗微生物耐性の同定のために待ち時間の必要性;抗生物質治療を受けた患者についての試験感度の低下;そして微生物感染と関連する疾患状態における特定の病原体の培養が完全にできないこと。
【0004】
10年以上にわたって、分子的試験が、新しい千年紀のための診断ツールとして予告され、そして到来する可能性のあるものとしては、伝統的な病院の研究室の差し迫った老朽化が含まれる。しかしながら、PCR技術の臨床的応用には顕著な進歩が生じたという事実にも関わらず、実施する医師は未だに、主として標準的な技術に依存している。病院で行われる設定におけるPCRのいくつかの現存する用途についての簡単な検討は以下の通りである。
【0005】
一般的にいえば、分子診断は、in vitroでは増殖できない生物を同定するために、または現存する培養技術が、反応しない場合および/または長期のインキュベーション時間を必要とする場合において、指示された。PCRに基づく診断は、幅広い微生物について、うまく開発された。臨床的領域についての用途は、多様な成功に合致したが、許容性および有用性を満たしたものは、ほんのわずかなものであった。
【0006】
最も初期の、臨床実務に対するPCRの応用としておそらく最も広く認識されたものの一つは、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の検出におけるものである。結核菌のための非培養に基づく試験の開発に好ましい臨床的特性には、標準的試験に伴う週〜月単位の遅延、薬剤耐性単離株の発生、および認識、単離および治療に関連する公衆衛生的要請が含まれる。診断的補助としてしばしば使用されるが、PCRの実務的応用および日常的臨床応用は、研究室間での感度の顕著な多様性、および低有病率の個体群における使用のための不適切な特異性のため、問題が未だに残っており、技術レベルでの開発がさらに必要である。研究室における最近の進展から、幅広い応用には広範囲の臨床的実証が必要とされるが、特定の抗生物質耐性と関連する変異(例えば、リファンピシン耐性系統におけるrpoB遺伝子)を増幅することによる薬剤耐性単離株の同定が、臨床的用途にはすぐに使える可能性があるものであることが示唆される。
【0007】
幅広く許容された一つの診断アッセイは、C. trachomatisについてのものである。従来からの検出システムは、不適切な感度および特異性(直接的免疫蛍光または酵素免疫アッセイ)または特殊な培養施設の必要性のため、この微生物の培養条件の面倒な特徴のため、限定的である。研究室の開発後、様々な急性および非急性介護設定における幅広い臨床的実証試験を行うことにより、PCRアッセイの優れた感度(90〜100%)および特異性(97%)が示され、その結果、その商業的開発が導かれる。生殖期サンプリングおよび尿サンプリングの両方由来のPCRアッセイの証明された有効性は、結果として、様々な臨床設定、最も最近ではリスクがあると考えられている患者の日常的スクリーニングを含むもの、に対するその応用を導く。
【0008】
迅速にかつ重要な情報を困難な臨床的決断に直面している医師に対して提示するPCR診断についての完全な能力は、未だ実現されていない一方、最近開発されたアッセイの一つは、この進歩しつつある技術の見込みについての事例を提示する。小児において、生命を脅かす熱の原因と、より良性の原因とを区別することは、特に中枢神経系の感染が考えられる場合には、臨床医が直面する基本的な臨床的ジレンマである。髄膜炎の細菌性の原因は、非常に攻撃的である場合があるが、しかし一般的には、通院患者として管理することができる比較的良性の条件である無菌性髄膜炎由来の臨床的基礎に基づいて区別することはできない。現存する血液培養方法は、陽性に転換するまでにしばしば数日がかかり、そしてしばしば、経験的な抗生物質治療を受けた患者における低感度または偽陰性の知見により、混乱させられる。エンテロウイルス髄膜炎についてのPCRアッセイの試験および応用は、非常に感度がよいことが見いだされた。1日以内の結果を報告することにより、病院での滞在期間を短くし、そして抗生物質治療を減らせるため、予備的臨床試験は、病院のコストを顕著に引き下げることが示された。現在日常的に利用可能なその他のウィルス性PCRアッセイには、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウィルス、肝炎ウィルス、およびHIVに対するものが含まれる。それぞれは、それ以外の方法では感染を診断することが困難な検出、そして慢性感染性疾患の管理において不可欠な疾患の進行および治療に対する反応をモニターする新たに実現された能力、を含む、臨床実務におけるコスト節減の役割を示した。
【0009】
普遍的検出システムの概念は、細菌性病原体の同定の方向へ進められ、そして臨床用途のための広範囲にわたるスクリーニングツールの臨床的関連性の可能性について、もっとも直接的に言及する。すべての細菌種に共通するDNAの非常に保存的な領域の存在をPCRアッセイで利用することは、医師が菌血症の存在を迅速に同定することを可能にし、このことは患者の看護に大いに影響を与える。以前の経験的に下した決断を、知識に基づいた実務の利益となる様に断念することができ、その結果、抗生物質治療および入院の必要性に関して、適切で迅速な決断を下すことが可能になる。
【0010】
ほぼすべての細菌種に共通する16S rRNAの保存的な特性を使用した実験的研究は、活発に研究されている領域である。全身性細菌感染の存在の迅速な同定が高い罹患率および致死率の結果と直接的な関連性を有している場合、病院での試験部位は、“高収率な”臨床的設定に絞られてきた。顕著な臨床的感染には、敗血症のリスクのある熱のある幼児の評価、熱のある好中球減少症癌患者における菌血症の検出、および集中治療室(ICU)における重症疾患患者の調査が含まれた。これらの研究のいくつかでは、有望な結果(感度および特異性は90%よりもはるかに高い)が報告されている一方、顕著な技術的困難性(以下に記載する)が依然として残り、そしてそのために、クリニックおよび病院(標準的な血液培養方法に依然として依存している)におけるこのアッセイの一般的な受容性を阻害している。定量性であり、より再現性があり、そして技術的により単純なシステムを提供する、リアルタイムPCR技術の革新的な進歩でさえも、PCRアッセイの固有の技術的な限定要因により、依然として妨害されている。
【0011】
PCRアッセイを臨床的設定に適用する際の主要な欠点には、以下のものが含まれる:バックグラウンドDNAコンタミネーションを排除することができないこと;反応中に存在する基質によりPCR増幅が妨害されること;そして迅速で信頼性のある種形成、抗生物質耐性、および亜種同定を提供する能力が限定されていること。いくつかの研究室は最近、阻害因子を同定しそしてそれを取り除くことについて、進展をもたらした;しかしながら、バックグラウンドコンタミネーションは依然として問題として残っており、そしてDNAの外来性供給源を除去することについての方法は、アッセイの感度を顕著に低下させることが報告された。結局の所、生成物の同定および詳細な特性決定が、配列決定技術を用いて達成される一方で、これらのアプローチは、労力が必要であり、そして時間集約的であるため、臨床的応用性には欠けている。
【0012】
迅速でそして確実な微生物同定は、様々な産業的理由、医学的理由、環境的理由、品質的理由、および研究的理由に関して好ましい。伝統的には、微生物学研究室は、直接的調査および試料の培養を介して、感染性疾患の原因因子を同定するために機能していた。1980年代中期以降、研究者らは、分子生物学的技術の実務的有用性を繰り返し示し、それらの多くは、臨床診断アッセイの基礎を形成している。これらの技術の中には、核酸ハイブリダイゼーション解析、制限酵素解析、遺伝子配列解析、および核酸の分離および精製が含まれる(例えば、J. Sambrook, E. F. Fritsch, and T. Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N. Y., 1989を参照)。これらの方法は、一般的には、時間がかかり、緩慢なものである。別の選択肢は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または使用されるプライマーが隣接することに基づいて特定の標的DNA配列を増幅するその他の増幅方法である。結局の所、検出およびデータ解析により、ハイブリダイゼーション減少を分析結果に変換する。
【0013】
その他の未だ完全には認識されていない臨床医学のためのPCRの応用は、以前は特発性と記載されていた疾患の感染性の原因を同定することである(例えば、細菌性血管腫症におけるBartonella henselae、およびウィップル病の病原体と関連している培養していない桿菌としてのTropheryma whippellii)。さらに、Chlamydia pneumoniaと冠状動脈疾患との間の強力な関連性を示唆する最近の疫学的研究により、究極的には病原性についての新しい知見そして新しい生命維持のためのまたは究明のための治療薬についての新しい知見を可能にしうる、病原体と宿主との間の広範囲にわたる可能性はあるがしかし未知の関連性の事例として機能することが示唆された。
【0014】
実務に従事する医師に対して、PCR技術は、感染性疾患の領域においてもつ診断用の全能性について、認識していない可能性を提示する。普遍的に信頼できる感染性疾患検出システムは、21世紀の医師の診断用医学的設備を進歩させる際の基本的なツールとなるだろう。第一線の救急医または災害設定において従事する医師に対して、迅速な普遍的検出システムは、分子的選別を可能にし、および初期の積極的な標的を絞った治療を可能にするだろう。種特異的プローブを用いた予備的な臨床的研究により、急性治療設定において迅速な試験を行うことが実現可能であることが示唆される。このように、供給源に対して適切に適用され、そして感染が疑われる患者は、病原体および毒性に基づいて異なる治療設定に階層化されたリスクに分けられる。さらに、局所的、地域的、および国家的なデータ管理システムとのリンクにより、効果的な疫学的監視が可能になり、抗生物質選択および疾患発生の制御に明らかに利益がある。
【0015】
病院関係者にとって、種形成する能力および亜型を決定する能力は、抗微生物薬に関してより正確な決断を下すことが可能になる。高度に接触伝染性の病原体を持ったまま植民する患者を、遅延なく医学的設定中に登録する際に、適切に隔離することができた。標的化治療は、抗生物質耐性の発生を減少させるだろう。さらに、抗生物質耐性系統の遺伝的基礎を同定することにより、正確な薬理学的治療を可能にしうる。医師および患者の両方とも、繰り返しの試験の必要性を減らしそして試験結果を得るまでの待ち時間を除去するという利点を有する。
【0016】
個々の患者がこのアプローチから直接的に利益を受けるだろうということは確実である。未認識の感染または診断することが困難な感染を有する患者が、同定されそしてすぐに治療されうる。医師の診断に原因する現象を結果として減少させることにより、長期間の入院の必要を減少させることができる。
【0017】
質量分析は、解析される分子について、高い質量の正確性を含む詳細な情報を提示する。これは、容易に自動化することができるプロセスでもある。低解像度のMSは、それらのスペクトル線が十分に弱くまたはサンプル中の他のいいテイル生物由来のスペクトル線と十分に近いものである場合、いくつかの既知の物質を検出するために使用するときに信頼できない場合がある。特異的プローブを伴うDNAチップは、特異的に予想されている生物の存在または不在を決定することのみが可能である。非常に多数の良性細菌種が存在するため、脅威となる生物と配列において非常に類似する数種のものは、10,000プローブを用いて配列させる場合であっても、特定の生物を検出するために必要とされる幅を欠失している。
【0018】
抗体は、アレイよりもより厳格な多様性の限定に直面する。抗体を、非常に保存的な標的に対して設計し、多様性を増大させる場合、誤認警報の問題が幅をきかせるだろう。言い換えれば、脅威となる生物は、良性のものと非常に類似しているためである。抗体は、比較的整った環境下で、既知の物質を検出することのみができる。
【0019】
いくつかのグループは、高解像度エレクトロスプレイイオン化-フーリエ変換-イオンサイクロトロン共鳴マススペクトロメトリー(ESI-FT-ICR MS)を用いたPCR産物の検出について記載した。正しい質量の正確な測定を少なくとも1つのヌクレオチドの数の知見と組み合わせることにより、約100塩基対のPCR二重鎖生成物についての全塩基組成の計算を可能にする(Aaserud et al., J. Am. Soc. Mass Spec., 1996, 7, 1266-1269;Muddiman et al., Anal. Chem.,1997, 69, 1543-1549;Wunschel et al.,Anal. Chem., 1998, 70, 1203-1207;Muddiman et al., Rev. Anal. Chem., 1998,17, 1-68)。エレクトロスプレイイオン化-フーリエ変換-イオンサイクロトロン共鳴(ESI-FT-ICR)MSを使用して、二本鎖の500塩基対PCR産物の質量を平均分子量を介して決定することができる(Hurst et al., Rapid Commun. Mass Spec. 1996, 10, 377-382)。PCR産物の特性決定のために、マトリックス支援レーザーイオン化-飛行時間(MALDI-TOF)マススペクトロメトリー使用することが、記載された(Muddiman et al., Rapid Commun. Mass Spec., 1999, 13, 1201-1204)。しかしながら、この方法の用途に限定されたMALDIを用いた場合に、約75ヌクレオチド以上のDNAの分解が観察された。
【0020】
U. S.特許No. 5,849,492は、2つの高度に保存された部分に囲まれたゲノムDNAの非常に発散性の部分について検索すること、非常に発散的な領域のPCR増幅のためのユニバーサルプライマーを設計すること、ユニバーサルプライマーを用いてPCR技術によりゲノムDNAを増幅すること、そしてその後遺伝子を配列決定して、生物の正体を決定すること、を含む、系統発生的に情報を提供するDNA配列の採取についての方法を記載する。
【0021】
U. S.特許No. 5,965,363は、質量分析技術を用いて増幅された標的核酸を解析することにより、多型に関する核酸のスクリーニング方法およびこれらの方法の質量解像度および質量正確性を改善するための手順について開示する。
【0022】
WO 99/14375は、予め選択されたDNAタンデムヌクレオチドリピートアリルをマススペクトロメトリーにより解析する際に使用するための方法、PCRプライマーおよびキットについて記載する。
【0023】
WO 98/12355は、質量分析解析により、標的核酸を切断して長さを短くし、標的一本鎖を作成して、そしてMSを使用して一本鎖短縮化標的の質量を決定することにより、標的核酸の質量を決定する方法を開示する。同様に、標的核酸の増幅を含むMS解析用の二本鎖標的核酸を調製し、鎖の一方を固相に結合させ、第二の鎖を放出させ、その後第一の鎖を放出させ、これをその後MSにより解析する方法を報告した。標的核酸調製のためのキットもまた、開示する。
【0024】
PCT W097/33000は、標的を一群の一本鎖非ランダム断片長に非ランダムに断片化すること、そしてそれらの質量をMSにより決定することにより標的核酸中の変異を検出するための方法を開示する。
【0025】
U. S.特許No. 5,605,798は、診断用途のために、生物学的サンプル中の特定の核酸の存在を検出するための、高速で非常に正確な質量分析器に基づく方法を記載する。
WO 98/21066は、特定の標的核酸の配列をマススペクトロメトリーにより決定する方法を記載する。標的を制限酵素部位とタグとを含有するプライマーを用いて増幅し、増幅核酸を伸長しそして切断し、そして伸長生成物の存在を検出することにより、サンプル中の標的核酸を検出する方法と同様に、生物学的サンプル中に存在する標的核酸をPCR増幅とマススペクトロメトリー検出により検出するための方法が、開示される。ここで、野生型とは異なる質量のDNA断片の存在が、変異を意味する。マススペクトロメトリー方法を介した核酸の配列決定の方法もまた、記載する。
【0026】
WO 97/37041、WO 99/31278およびU. S.特許No. 5,547,835は、マススペクトロメトリーを用いて核酸を配列決定する方法を記載する。U. S.特許Nos. 5,622,824、5,872,003および5,691,141は、エキソヌクレアーゼ媒介性質量分析的配列決定のための方法、システムおよびキットを記載する。
【0027】
このように、特異的かつ迅速であり、そして核酸配列決定が必要とされない、生体物質の検出および同定のための方法についての必要性は存在する。本発明は、この必要性に対応するものである。
【0028】
発明の概要
本発明は、生物学的サンプルから核酸を得ること、病原体の核酸を増幅する能力を有する少なくとも1対のインテリジェントプライマーを選択すること、核酸をプライマーを用いて増幅し、少なくとも1つの増幅産物を得ること、病原体が同定される少なくとも1つの増幅産物の分子量を測定すること、により、生物学的サンプル中の病原体を同定する方法、に対するものである。さらに、本発明は、疫学的調査の方法に対する。複数の地理的場所から得られたサンプルに由来する病原体を同定することにより、所定の地理的場所への病原体の広がりを調べることができる。
【0029】
本発明はまた、個体から生物学的サンプルを得ること、生物学的サンプルから核酸を単離すること、疾患の複数の病原体の核酸を増幅する能力を有する複数の増幅プライマーを選択すること、複数のプライマーを用いて核酸を増幅し、複数の病原体に対応する複数の増幅産物を得ること、複数の病原体の数を特定する複数の独特の増幅産物の分子量を測定すること、による、個体における疾患の複数の病原体の診断の方法に関する。
【0030】
本発明はまた、in silicoで生成された複数の生体物質の複数の塩基組成の特徴に由来する塩基組成確率雲プロットを調製すること、異なる生体物質に由来する雲の重複に関して塩基組成確率雲プロットを調べること、そして雲の最小重複に基づいてプライマーセットを選択すること、による、複数の生体物質の同定において使用されるプライマーセットのin silicoスクリーニングの方法にも関する。
【0031】
本発明はまた、それまでは未知の塩基組成を含む複数の生体物質の複数の塩基組成の特徴に由来する塩基組成確率雲プロットを調製すること、それまでは未知の塩基組成の、既知の生体物質の雲との重複について塩基組成確率雲を調べ、それにより重複が、それまでは未知の塩基組成の特徴を有する生体物質の正体が既知の生体物質の正体と同等であることを予想すること、により、それまでは未知の塩基組成の特徴を有する生体物質の正体を、予想する方法に関する。
【0032】
本発明はまた、広範囲サーベイプライマーまたは部分全域プライマーを用いて生物学的サンプル中の病原体を同定すること、少なくとも1対のドリル-ダウンプライマーを選択して病原体についての亜種特性を提示する核酸部分を増幅すること、核酸部分を増幅して少なくとも1つのドリル-ダウン増幅産物を生成すること、そしてドリル-ダウン増幅産物の塩基組成の特徴を決定すること、により、生物学的サンプル中の所定の病原体についての亜種特性を決定する方法にも関し、ここで塩基組成の特徴は、病原体についての亜種特性を提示する。
【0033】
本発明は、ゲノムDNAのサンプルを個体から得ること、遺伝薬理学的情報を提示するゲノムDNAの部分を選択すること、少なくとも1対のインテリジェントプライマーを使用してゲノムDNAの部分を含む増幅産物を生成すること、そして増幅産物の塩基組成の特徴を調べること、による遺伝薬理学的解析の方法にも関する。ここで、塩基組成の特徴は、前記個体にについての遺伝薬理学的情報を提示する。
【0034】
態様の説明
本発明は、とりわけ、偏見のない様式で“生体物質同定用アンプリコン”を使用して、生体物質を検出しそして同定する方法を提供する。“インテリジェントプライマー”を選択して、生体物質由来の核酸の保存的配列領域にハイブリダイズさせ、そしてそれが、可変配列領域を挟んで、増幅することができそして容易に分子量決定することができる生体物質同定用アンプリコンを得る。その後、分子量は、生体物質の可能性のある正体についての事前の知識を必要とすることなく、生体物質をただ一つに同定する手段を提供する。次いで、増幅産物の分子量または対応する“塩基組成の特徴”(BCS)を、分子量または塩基組成の特徴のデータベースに対して適合させる。さらに、この方法を、迅速なパラレル“多重”解析に適用することができ、その結果を三角法的(triangulation)同定戦略において利用することができる。本発明の方法は、迅速スループットを提供し、そして生体物質の検出および同定のために増幅標的配列の核酸配列決定を必要としない。
【0035】
本発明の文脈において、“生体物質”は、生きているものであっても死んでいるものであっても、いずれかの生物、細胞、またはウィルス、あるいはそのような生物、細胞またはウィルス由来の核酸である。生体物質の例には、細胞(ヒト臨床サンプル、細菌細胞またはその他の病原体を含むが、それらに限定されない)、ウィルス、真菌、および原生生物、寄生虫、および病原性マーカー(病原性島、抗生物質耐性遺伝子、ビルレンス因子、トキシン遺伝子、およびその他の生物制御性化合物を含むが、それらに限定されない)が含まれるが、それらには限定されない。サンプルは、生きていても、死んでいても、植物状態であってもよく(例えば、植物状態の細菌または胞子)そしてカプセル化されていてもまたはバイオ操作されていてもよい。本発明の文脈において、“病原体”は、疾患または症状を引き起こす生体物質である。
【0036】
莫大な生物学的多様性にも関わらず、地球上のすべての生命体は、ゲノム中に本質的で共通する特徴の組み合わせを共有している。例えば、細菌は、ゲノム上の様々な位置に非常に保存的な配列を有する。最も顕著なものは、リボソームの普遍的に保存された領域であるが、しかしRNAse Pを含むその他の非コードRNA中やシグナル認識粒子(SRP)にも、保存された要素が存在する。細菌は、絶対的に必要とされる遺伝子の共通する組み合わせを有する。約250遺伝子が、すべての細菌種において存在し(Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 1996, 93, 10268;Science, 1995, 270, 397)、これには、Mycoplasma、UreaplasmaおよびRickettsiaなどの小ゲノムが含まれる。これらの遺伝子は、翻訳、複製、組換え、および修復、転写、ヌクレオチド代謝、アミノ酸代謝、脂質代謝、エネルギー産生、取り込み、分泌などに関与するタンパク質をコードする。これらのタンパク質の事例は、DNAポリメラーゼIIIβ、エロンゲーション因子TU、ヒートショックタンパク質groEL、RNAポリメラーゼβ、ホスホグリセレートキナーゼ、NADHデヒドロゲナーゼ、DNAリガーゼ、DNAトポイソメラーゼおよびエロンゲーション因子Gである。本発明の方法を使用して、オペロンを標的化することもできる。オペロンの一例は、腸管病原性E. coli由来のbfpオペロンである。複数コア染色体遺伝子を使用して、属または属種レベルで細菌を分類し、生物が脅威となる可能性のあるものであるかどうかを決定することができる。この方法を使用して、病原性マーカー(プラスミド性または染色体性)および抗生物質耐性遺伝子を検出し、生物の脅威となる可能性を確認し、そして対策を講じることができる。
【0037】
遺伝的データは、本発明の方法により生体物質を同定するための裏付けとなる基礎を提供するため、理想的には各々の個別の生体物質を識別するために十分な多様性を提供し、そしてその分子量が分子量決定になじみやすい核酸の部分を選択することが賢明である。本発明の一態様において、少なくとも1つのポリヌクレオチド部分を増幅して、生体物質を同定するプロセスにおいて、検出および解析を容易にする。このように、各々の個別の生体物質を識別するために十分な多様性を提供しそしてその分子量が分子量決定になじみやすい核酸部分を、本明細書中では、“生体物質同定用アンプリコン”として記載する。本明細書中で使用する場合の用語“アンプリコン”は、増幅反応で増幅されるポリヌクレオチドの部分のことをいう。
【0038】
本明細書中で使用する場合、“インテリジェントプライマー”は、介在性可変領域に隣接する非常に保存的な配列領域に結合するように設計され、そして理想的には各々の個別の生体物質を識別するために十分な多様性を提供し、そして分子量解析になじみやすい増幅産物を得るプライマーである。用語“非常に保存的な”により、配列領域が、約80-100%の同一性、または約90-100%の同一性、または約95-100%の同一性を示すことを意味する。所定の増幅産物の分子量により、可変領域の多様性のため、それを得た由来の生体物質を同定する手段が提供される。このように、インテリジェントプライマーの設計には、適切な多様性を有する可変領域を選択し、所定の生体物質の正体を解決することが必要とされる。
【0039】
一態様において、生体物質同定用アンプリコンは、リボゾームRNA(rRNA)遺伝子配列の部分である。現在利用可能な多数の最小の微生物ゲノムの完全な配列を用いて、“最小の生命”を規定する一組の遺伝子を同定し、そして各遺伝子および生物を唯一のものとして同定する組成物の特徴を同定することができる。DNA複製、転写、リボソーム構造、翻訳、および輸送などの中心的な生命機能をコードする遺伝子は、細菌ゲノム中に幅広く分布しており、そして生体物質同定用アンプリコンの選択のために適した領域である。リボゾームRNA(rRNA)遺伝子は、有用な塩基組成の特徴を提供する領域を含む。中心的な生命機能に関与する多くの遺伝子と同様に、rRNA遺伝子は、それぞれの種により特異的な高い多様性の領域が点在する微生物ドメインにわたって非常に保存されている配列を含有する。可変領域を利用して、塩基組成の特徴についてのデータベースを構築することができる。このストラテジーは、rRNA遺伝子の小サブユニット(16S)および大サブユニット(23S)の配列の構造ベースのアラインメントを作製することに関連する。たとえば、Robin Gutell(University of Texas at Austin)により作成されそして維持されて、そしてInstitute for Cellular and Molecular Biologyのウェブページで、インターネットのワールドワイドウェブを介して、たとえば、“rna.icmb.utexas.edu/”で公衆が利用可能である、リボゾームRNAデータベース中には、現在のところ13,000以上の配列が存在する。University of Antwerp(Belgium)により作成されそして維持され、インターネットのワールドワイドウェブを介して、たとえば、“rrna.uia.ac.be”で公開される公衆に利用可能なrRNAデータベースも存在する。
【0040】
これらのデータベースを解析して、生体物質同定用アンプリコンとして有用な領域を決定した。そのような領域の特徴としては:a)配列増幅プライマー部位として機能する上流のヌクレオチド配列、および下流のヌクレオチド配列の、目的とする特定の生体物質の種の間での、約80〜100%のあいだ、または約95%より高い同一性;b)上記種との間で約5%以下の同一性を示す介在性可変領域;およびc)保存された領域との間で、約30〜1000ヌクレオチド、またはわずか約50〜250ヌクレオチド、またはわずか約60〜100ヌクレオチドの分離;が含まれる。
【0041】
限定的ではない例として、Bacillus種の同定のため、選択された生体物質同定用アンプリコンの保存的な配列領域は、すべてのBacillus種間で非常に保存的なものに違いなく、一方、Bacillusのすべての種の増幅産物の分子量を識別できるように、生体物質同定用アンプリコンの可変領域は十分に多様である。
【0042】
分子量決定になじみやすい生体物質同定用アンプリコンは、分子量決定の特定の様式に適合性の長さの予測可能な断片を得るため、分子量決定の特定の様式と適合性のまたは予測可能な断片化パターンを得る手段と適合性の長さ、サイズ、または質量のいずれかを有するものである。増幅産物の予測可能な断片化パターンを得るためのそのような方法には、たとえば、制限酵素による切断またはプライマーによる切断が含まれるが、それらには限定されない。
【0043】
生体物質の同定は、各々個別のレベルの同定の解像度に適したインテリジェントプライマーを使用して、異なるレベルで達成することができる。“広範囲サーベイ”インテリジェントプライマーは、特定の区分の生体物質の構成物質として、生体物質を同定する目的で設計される。“生体物質の区分”は、種レベル以上の生体物質の群として定義され、そして:目、科、綱、分岐群(clade)、属、または種レベル以上のその他の生体物質のグループ化が含まれるが、これらには限定されない。限定的ではない例として、Bacillus/Clostridia群またはγ-プロテオバクテリア群の構成生物を、16Sまたは23SリボゾームRNAを標的とするプライマーなどの広範囲サーベイインテリジェントプライマーを使用することにより、同定することができる。
【0044】
いくつかの態様において、広範囲サーベイインテリジェントプライマーは、種レベルで、生体物質を同定することを可能にする。本発明の検出方法の一つの主要な利点は、広範囲サーベイインテリジェントプライマーが、特定の細菌種に対して特異的であること、またはBacillusまたはStreptomycesなどの特定の細菌属に対してまでも特異的であること、必要としない点である。その代わり、プライマーは、本明細書中に記載される種を含む(しかしこれらには限定されない)、数百種の細菌種にわたる非常に保存的な領域を認識する。このように、同一の広範囲サーベイインテリジェントプライマー対を使用して、いずれかの所望の細菌を特定することができる。単一種に特異的な可変領域に隣接するか、または数種の細菌種に共通する可変領域に隣接する保存された領域に結合することができ、それにより介在性配列の無作為の核酸増幅およびその分子量および塩基組成の決定が可能になるからである。たとえば、16S_971〜1062、16S_1228〜1310および16S_1100〜1188領域は、約900種の細菌において98〜99%保存されている(16S=16S rRNA、数字は、ヌクレオチド位置を示す)。本発明の一態様において、本発明の方法において使用されたプライマーは、一またはそれ以上のこれらの領域またはその部分に結合する。
【0045】
それらが全体的に保存されているため、隣接するrRNAプライマー配列は、良好なインテリジェントプライマー結合部位として機能し、すべてではないにしても、ほとんどの細菌種の目的とする核酸領域を増幅する。プライマーの組み合わせ間の介在性領域は、長さおよび/または組成が異なり、そしてしたがって、独特の塩基組成の特徴を提示する。16Sおよび23S rRNAの領域を増幅するインテリジェントプライマーの例は、図1A〜1Hに示される。16S rRNA中の典型的なプライマー増幅領域は、図2に示される。矢印は、16S rRNAドメインIIIにおける可変領域に隣接する非常に保存的な領域に結合するプライマーを示す。増幅領域は、“1100〜1188”ではステム-ループ構造である。解析に必要とされるプライマー数を最小にし、そして1つの組み合わせのプライマーを使用して複数の生体物質区分の検出を可能にする広範囲サーベイインテリジェントプライマーを設計することが好ましい。広範囲サーベイインテリジェントプライマーを使用することの利点は、一旦生体物質が幅広く同定されれば、種レベルおよび亜種レベルでさらに同定するプロセスが、さらなるインテリジェントプライマーを選択することにより促進される、という点である。
【0046】
“部分全域”インテリジェントプライマーを、種レベルで生体物質を同定することを目的として設計する。限定的ではない例として、Bacillus anthracis、Bacillus cereusおよびBacillus thuringiensisを、部分全域インテリジェントプライマーを使用して、互いに識別することができる。部分全域インテリジェントプライマーは、種レベルでの同定に必ずしも必要という訳ではない。というのも、広範囲サーベイインテリジェントプライマーにより、目的とするこの同定を達成する程度の十分な同低解像度が得られる場合があるからである。
【0047】
“ドリル-ダウン”インテリジェントプライマーは、生体物質の亜種の特徴を同定することを目的として設計される。“亜種の特徴”は、核酸の特定の部分の存在または不存在の結果、亜種レベルの同定で、生体物質に付与される特性として同定される。そのような亜種の特徴には、系統、亜型、ならびに抗生物質耐性遺伝子、病原性島、トキシン遺伝子およびビルレンス因子などの病原性マーカーが含まれるが、これらには限定されない。このような亜種の特徴の同定は、病原体感染の適切な臨床的治療を決定するために、しばしば重要である。
【0048】
インテリジェントプライマーの化学的修飾
理想的には、インテリジェントプライマーハイブリダイゼーション部位は、プライマーのハイブリダイゼーションを容易にするために、非常に保存的である。配列の保存性がより低いためにプライマーハイブリダイゼーションがあまり効率的では無い場合、インテリジェントプライマーを化学的に修飾して、ハイブリダイゼーションの効率を向上させることができる。
【0049】
たとえば、種間でのこれらの保存的領域におけるいずれかの変異(3番目位置でのコドンの揺らぎによる)が、DNAトリプレットの3番目位置で生じやすいため、オリゴヌクレオチドプライマーを、この位置に対応するヌクレオチドが、“ユニバーサル塩基”として本明細書中では言及する、1より多いヌクレオチドに結合することができる塩基となるように設計することができる様に、設計することができる。たとえば、この“揺らぎ”対合の下では、イノシン(I)は、U、CまたはAと結合し;グアニン(G)はUまたはCと結合し、そしてウリジン(U)はUまたはCと結合する。ユニバーサル塩基のその他の事例には、5-ニトロインドールまたは3-ニトロピロールなどのニトロインドール類(Loakes et al., Nucleosides and Nucleotides, 1995, 14, 1001-1003)、縮重ヌクレオチドdPまたはdK(Hill et al.)、5-ニトロインダゾールを含有する非環式ヌクレオシド類似体(Van Aerschot et al., Nucleosides and Nucleotides, 1995, 14, 1053-1056)またはプリン類似体1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-イミダゾール-4-カルボキサミド(Sala et al., Nucl. Acids Res., 1996, 24, 3302-3306)が含まれる。
【0050】
本発明の別の態様においては、“揺らぎ”塩基によるいくらか弱い結合を補償するため、オリゴヌクレオチドプライマーを、各トリプレットの1番目および2番目の位置が非修飾ヌクレオチドよりも高い親和性で結合するヌクレオチド類似体により占有される様に、設計する。これらの類似体の例には、チミンに結合する2,6-ジアミノプリン、アデニンに結合するプロピンT、およびGに結合しG-クランプを含むフェノキサジン類に結合するプロピンCが含まれるが、これらには限定されない。プロピニル化ピリミジンは、U. S.特許Nos. 5,645,985、5,830,653および5,484,908に記載され、そのそれぞれは、共有されそして本明細書中に全体を参考文献として援用される。プロピニル化プライマーは、U. SシリアルNo. 10/294,203(これも共有されそして本明細書中に全体を参考文献として援用される)のクレームに記載される。フェノキサジン類は、U. S.特許Nos. 5,502,177、5,763,588、および6,005,096中に記載され、そのそれぞれは、本明細書中に全体を参考文献として援用される。G-クランプは、U. S.特許Nos. 6,007,992および6,028,183中に記載され、そのそれぞれは、本明細書中に全体を参考文献として援用される。
【0051】
理論的に理想的な生体物質検出装置は、センサに到達したすべての生体物質の完全な核酸配列を同定し、定量し、そして報告するものである。病原体の核酸構成成分の完全な配列は、その正体や薬剤耐性マーカーまたは病原性マーカーの存在を含む脅威についてのすべての対応する情報を提供するだろう。この理想は、未だ完成されていない。しかしながら、本発明は、分子量決定による生体物質同定用アンプリコンの解析に基づく同一の実際値を用いて情報を得るための、簡便な戦略を提供する。
【0052】
いくつかの場合において、所定の生体物質同定用アンプリコンの分子量のみでは、所定の生体物質を明確に同定するためには十分な解像度を提供しない。たとえば、インテリジェントプライマー対“16S_971”を使用して得られた生体物質同定用アンプリコンの分子量は、E. coliおよびSalmonella typhimuriumの両方について、55622 Daであろう。しかしながら、追加的にインテリジェントプライマーを使用して、追加的に生体物質同定用アンプリコンを解析する場合には、“三角法的(triangulation)同定”プロセスが可能になる。たとえば、“16S_1100”インテリジェントプライマー対により、E. coliおよびSalmonella typhimuriumについて、それぞれ、55009および55005 Daの分子量を得る。さらに、“23S_855”インテリジェントプライマー対により、E. coliおよびSalmonella typhimuriumについて、それぞれ、42656および42698 Daの分子量を得る。この基本的な例において、第2および第3のインテリジェントプライマー対は、2種の生体物質を識別するための、追加的な“フィンガープリンティング”能力または解像度を提供した。
【0053】
別の態様において、三角法的(triangulation)同定プロセスは、複数のコア遺伝子内で選択される複数の生体物質同定用アンプリコンに由来するシグナルを測定することにより、追跡される。このプロセスを使用して、偽陰性または偽陽性のシグナルを減少させ、そしてハイブリッドの起源の再構築を可能にし、そうでなければ操作された生体物質の起源の再構築を可能にする。このプロセスにおいて、複数のコア遺伝子の同定の後、アラインメントを核酸配列データベースから作成する。次いで、このアラインメントを、保存領域または変異領域について解析し、生体物質同定用アンプリコンを、特異的なゲノム相違に基づいて生体物質を識別するために選択する。たとえば、B. anthracisのゲノムから予想される特徴を持たない、B. anthracisに典型的な3つの部分のトキシン遺伝子の同定(Bowen et al., J. Appl. Microbiol., 1999, 87, 270-278)は、遺伝子操作減少を示唆するだろう。
【0054】
三角法的(triangulation)同定プロセスを、多重PCRなどのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)や質量分析(MS)法を使用して、実質的に並行的様式で生体物質同定用アンプリコンを同定することにより、追求することができる。十分な量の核酸が、MSによる生体物質の検出のためには存在すべきである。大量の精製核酸またはその断片を調製するための非常に幅広い技術が、当業者に周知である。PCRは、増幅を行うためには、(1または複数の)標的配列に隣接する領域に結合する、一またはそれ以上の対のオリゴヌクレオチドプライマーを必要とする。これらのプライマーは、一方のプライマーから他方のプライマーの方向に生じる合成により、DNAの異なる鎖の合成を開始する。プライマー、増幅するDNA、耐熱性DNAポリメラーゼ(たとえば、Taqポリメラーゼ)、4種のデオキシヌクレオチド三リン酸、およびバッファーを組み合わせて、DNA合成を開始する。溶液を加熱することにより変性させ、その後冷却して新たに添加されたプライマーのアニーリングを可能にし、その後さらにDNA合成を行う。このプロセスを、典型的には、約30サイクル繰り返し、結果として標的配列の増幅を行う。
【0055】
PCRを使用することが適切ではあるが、リガーゼ連鎖反応(LCR)および鎖置換増幅(SDA)を含む、その他の核酸増幅技術もまた使用することができる。高解像度のMS技術により、非常に不明瞭な環境において、バックグラウンドスペクトル線から、生体物質スペクトル線を分離することが可能になる。
【0056】
別の態様において、(1または複数の)生体物質から生成されたPCR産物についての検出スキームは、少なくとも3つの特徴を取り込む。第一に、この技術は、複数(一般的には約6〜10)のPCR産物を同時に検出しそして分離する。第二に、この技術は、可能性のあるプライマー部位由来の生体物質を、ただ一つに同定する分子量を提供する。最後に、この検出技術は迅速であり、複数のPCR反応を同時並行的に可能にする。
【0057】
PCR産物の質量分析法(MS)に基づく検出により、いくつかの利点を有するBCSの決定のための手段が提供される。MSは、放射性標識または蛍光標識を使用することのない、本質的には、同時並行的な検出スキームである。というのも、すべての増幅産物を、その分子量で同定するためである。マススペクトロメトリーの分野の現状は、フェムトモル量以下の物質を、容易に解析し、サンプルの分子含量についての情報を得ることができる、というものである。物質の分子量の正確な評価は、サンプルの分子量が数百であっても、100000原子質量単位(amu)またはDaltonsを超える場合であっても関係なく、迅速に得ることができる。無傷の分子イオンは、様々なイオン化技術の一つを使用してサンプルをガス相に転換することにより、増幅産物から生成することができる。これらのイオン化方法には、エレクトロスプレイイオン化(ES)、マトリクス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)、および高速原子衝撃(FAB)が含まれるが、これらには限定されない。たとえば、核酸のMALDIは、核酸のMALDIにおいて使用するためのマトリクスの例と共に、WO 98/54751(Genetrace, Inc.)中に記載される。
【0058】
いくつかの態様において、大型のDNAやRNA、またはそれ由来の大型の増幅産物を、制限エンドヌクレアーゼで消化してから、イオン化することができる。このように、たとえば、10 kDaであった増幅産物を、一連の制限エンドヌクレアーゼにより消化して、たとえば、100 Da断片のパネルを生成することができる。制限エンドヌクレアーゼおよびそれらの活性部位は、当業者に周知である。この方法において、マススペクトロメトリーを、制限酵素マッピングの目的で行うことができる。
【0059】
イオン化に際して、異なる電荷を持つイオンが形成されるため、いくつかのピークが1サンプルから得られる。単一のマススペクトルから得られた分子量の複数の読み取り値を平均することにより、生体物質の分子量の推定が可能になる。エレクトロスプレイイオン化マススペクトロメトリー(ESI-MS)は、10 kDa以上の分子量を有するタンパク質および核酸などの非常に高分子量のポリマーについては特に有用である。というのも、それにより、顕著な量の断片化を引き起こすことなく、サンプルの多価荷電分子の分布がえられるからである。
【0060】
本発明の方法において使用される質量検出器には、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴マススペクトロメトリー(FT-ICR-MS)、イオン捕捉、四極子、磁気セクタ、飛行時間(TOF)、Q-TOF、三対四極子が含まれるが、これらには限定されない。
【0061】
一般的には、本発明において使用することができる質量分析技術には、タンデムマススペクトロメトリー、赤外線多光子解離および熱分解ガスクロマトグラフィーマススペクトロメトリー(PGC-MS)が含まれるが、これらには限定されない。本発明の一態様において、生体物質検出システムは、バイオマスの増加(たとえば、飲料水または細菌兵器剤の糞便汚染の増加)の迅速な検出のためのPCRを行うことなく、熱分解GC-MSを使用して、生体物質検出様式において継続的に操作する。潜伏期を最小にするため、連続的サンプル流が、直接的にPGC-MS燃焼チャンバー中に流れ込む。バイオマスの増加が検出される場合、PCRプロセスが自動的に開始される。生体物質の存在は、たとえば、PGC-MSスペクトルで観察される約100〜7,000 Da.に由来する大型の分子断片のレベルの上昇を生み出す。観察されたマススペクトルを、閾値レベルと比較し、そしてバイオマスレベルがあらかじめ設定された閾値を超えることが検出される場合、以下に記載する生体物質の分類プロセス(PCRとMSの組み合わせ、たとえばFT-ICR MS)を開始する。場合により、警告またはその他のプロセスは(換気流の停止、物理的単離)、この検出されたバイオマスレベルによっても開始される。
【0062】
大型のDNAについての分子量の正確な測定は、各鎖に対するPCR反応由来のカチオンの提示、天然存在量13Cおよび15N同位体由来の同位体ピークの分析、そして荷電状態のいずれかのイオンへの割り当て、により制限される。PCR産物を含有する溶液を、酢酸アンモニウムを含有する溶液に、流れに対して直交する電場勾配の存在下にて接触させるフロースルーチップを用いて、カチオンを、直列的透析により取り除く。後者の2つの問題には、>100,000の解像度で操作することにより、そして同位体的に劣化したヌクレオチド三リン酸をDNA中に取り込ませることにより、対処する。装置の解像度もまた、考慮すべき事柄である。10,000の解像度では、[M-14H+14-の荷電状態の84merのPCR産物由来のモデル化シグナルは、あまり特定されておらず、そして荷電状態または正確な質量の割り当ては不可能である。33,000の解像度では、個別の同位体構成成分由来のピークを見ることができる。100,000の解像度では、同位体ピークが、ベースラインから分離され、そしてイオンについての荷電状態の割り当ては、直接的なものである。たとえば、劣化培地上で微生物を増殖させ、そしてヌクレオチドを回収することにより、[13C,15N]-劣化三リン酸が、得られる。(Batey et al., Nucl. Acids Res., 1992, 20, 4515-4523)。
【0063】
無傷核酸領域の質量測定は、ほとんどの生体物質を調べるために適していると考えられるが、一方、タンデムマススペクトロメトリー(MSn)技術により、分子の正体または配列に関連する、より明確な情報を提供することができる。タンデムMSは、分離工程および検出工程の両方がマススペクトロメトリーに基づいている場合の、2またはそれ以上の質量解析段階と組み合わせて使用されることがある。第一段階を使用して、イオンまたはさらなる構造情報を得ることになるサンプルの構成成分を選択する。次いで、選択されたイオンを、たとえば、黒体放射(blackbody irradiation)、赤外多光子解離、または衝突活性化を用いて、断片化する。たとえば、エレクトロスプレイイオン化(ESI)により生成されるイオンを、IR多光子解離を用いて断片化することができる。この活性化により、グリコシド結合およびホスフェート骨格の解離が引き起こされ、w系列(内部切断の後、無傷3'末端および5'ホスフェートを有する)およびa-Base系列(5'末端および3'フランを有する)と呼ばれる、2系列のフラグメントイオンが生成される。
【0064】
次いで、質量解析の第二段階を使用して、生成物イオンのこれらの得られた断片の質量を検出しそして測定する。このようなイオンの選択の後、断片化の一般的作業をを複数回行うことにより、サンプルの分子配列を本質的に完全に詳細に分析することができる。
【0065】
同様の分子量の2またはそれ以上の標的が存在する場合、または1回の増幅反応で、2またはそれ以上の生体物質参照標準として、同一の質量を有する生成物が得られる場合、それらは、質量修飾性の“タグ”を使用することにより識別することができる。本発明のこの態様において、非修飾塩基とは異なる分子量を有し、その結果、質量の相違を改善する、ヌクレオチド類似体または“タグ”(たとえば、5-(トリフルオロメチル)デオキシチミジン三リン酸)を、増幅の間に取り込ませる。このようなタグは、たとえば、PCT WO97/33000(その全体が、本明細書中に参考文献として援用される)中に記載される。このことは、いずれかの質量と一致する可能性のある塩基組成の数をさらに限定する。たとえば、5-(トリフルオロメチル)デオキシチミジン三リン酸を、別の核酸増幅反応中でdTTPの代わりに使用することができる。従来からの増幅産物とタグ付け生成物との間の質量シフトの測定を使用して、各一本鎖におけるチミジンヌクレオチドの数を定量する。鎖が相補的であるため、各鎖におけるアデノシンヌクレオチドの数もまた、決定される。
【0066】
別の増幅反応において、各鎖におけるG残基およびC残基の数は、たとえば、シチジン類似体5-メチルシトシン(5-meC)またはプロピンCを用いて、決定される。A/T反応およびG/C反応を組み合わせ、次いで、分子量決定を行うことにより、独自の塩基組成が得られる。この方法を、図4および表1にまとめる。
【0067】
【表1】

【0068】
質量タグホスホロチオエートA(A*)を使用して、Bacillus anthracisのクラスターを識別した。ESI-TOF MSで測定した場合、B. anthracis(A14G9C14T9)は、14072.26の平均MWを有し、そしてB. anthracis(A1A*13G9C14T9)は、14281.11の平均分子量を有し、そしてホスホロチオエートAは、+16.06の平均分子量を有した。逆重畳化(deconvoluted)スペクトルを、図5中に示す。
【0069】
別の例において、各鎖の測定分子量がそれぞれ、30,000.115 Daおよび31,000.115 Daであると仮定し、そしてdTおよびdA残基の測定数は、(30,28)および(28,30)である。分子量が正確に100 ppmである場合、各鎖に対して可能性のあるdG+dCが7種の可能性のある組み合わせ存在する。しかしながら、測定分子量が正確に10 ppmである場合、dG+dCの組み合わせはわずか2種の組み合わせしか存在せず、そして1 ppmの正確さの場合、各鎖についての塩基組成はわずか1つの可能性しか存在しない。
【0070】
質量分析器からのシグナルを、レーダーシグナルプロセッシングにおいて広く使用されているものなどの、最尤(maximum-likelihood)検出および分類アルゴリズムに入力することができる。検出プロセッシングは、質量-塩基カウント数空間(mass-basecount space)において観察されたBCSの適合性フィルタリングを使用し、そして既知の無害の生物由来の特徴の検出および差し引き、および未知の生体物質の脅威の検出、を可能にする。脅威のレベルを推定するために、それらのBCSを既知生物のものと比較し、そして抗生物質耐性遺伝子またはトキシン遺伝子の挿入などの既知の形の病原性亢進と比較することにより、新たに観察された生体物質と既知の生体物質との比較もまた、可能である。
【0071】
プロセッシングは、観察シグナルおよび平均バックグラウンドレベルから発展された対数尤度比を使用するベイズ識別器(Bayesian classifier)で終了することができる。プログラムは、天然に存在する生物と環境汚染物質の複合バックグラウンドに関する条件について、最終的に検出確率vs擬陽性確率プロットとなる性能予測を強調する。生体物質それぞれについて使用されるプライマーのセットが与えられれば、適合したフィルターは、シグナル値の推測的な予測からなる。ゲノム配列データベース(例えばGenBank)を使用して、質量塩基カウント数適合性フィルターを規定する。このデータベースは、既知の脅威を与える因子および良性のバックグラウンド生物を含有する。後者を使用して、バックグラウンド生物により生成される特徴を推定しそして差し引く。既知のバックグラウンド生物の最大尤度検出は、適合性フィルターおよびノイズ共分散の累計(running-sum)推定を使用することを実行する。バックグラウンドシグナル強度は、適合性フィルターと共に推定されそして使用され、特徴を形成し、次いでそれが差し引かれる。最大尤度プロセスは、生物についての適合性フィルターおよび整理されたデータについてのノイズ共分散の累計(running-sum)推定を使用する、同様の方法におけるこの“整理された”データに対して適用される。
【0072】
インテリジェントプライマーを使用して得られた増幅産物の分子量により、生体物質の同定の手段が提供されるが、分子量データを塩基組成の特徴に変換することは、特定の解析に有用である。本明細書中で使用する場合、“塩基組成の特徴”(BCS)歯、生体物質同定用アンプリコンの分子量から決定された正確な塩基組成決定である。一態様において、BCSにより、特定の生物中の特定の遺伝子の指標を提示する。
【0073】
塩基組成は、配列と同様に、種内の単離物ごとに少しずつ変化する。それぞれの種についての組成物の拘束性の周辺に“塩基組成確率雲”を構築することにより、この多様性を保持することができる。このことにより、配列解析に類似する様式で、生物の同定が可能になる。“偽4次元プロット”を使用して、塩基組成確率雲の概念を可視化することができる(図18)。最適なプライマー設計のためには、生体物質同定用アンプリコンの最適な選択が必要とされ、そしてそれは個々の生体物質の塩基組成の特徴のあいだでの分離を最大にする。雲が重複する範囲は、結果として誤判別を引き起こす可能性がある領域を示すが、これの問題は、異なる生体物質同定用アンプリコンから情報を得るプライマーを選択し、理想的には塩基組成の分離を最大にすることにより、解消される問題である。このように、塩基組成確率雲の解析の有用性の一つの側面は、BCSおよび生体物質の正体の可能性のある誤判別を避けるために、スクリーニングプライマーセット用の手段を提供することである。塩基組成確率雲の有用性の別の側面は、その核酸配列ないに進化的な遷移が存在するためにそれらが、正確な測定BCSが以前には観察されておらずおよび/またはBCSデータベース中に載せられていない、生体物質の正体を予想するための手段を提供する、というものである。
【0074】
ただ結果を解釈するためには、プローブベースの技術と比較して、塩基組成のマススペクトロメトリー測定は、測定を行うために、組成についての従来の知見を必要としないことは、注目すべき重要なことである。この点では、本発明は、所定の生体物質を検出し同定するために十分なレベルで、DNA配列決定および系統発生的解析と同様の生体物質分類用情報を提供する。さらに、所定の生体物質についての以前は未知のBCSについての測定のプロセス(たとえば、配列情報が利用できない場合)は、BCSデータベースに移植される追加的な生体物質掲載情報を提供することにより、下流の有用性を有する。より多くのBCS指標がBCSデータベース中で利用可能になるにつれて、将来的な生体物質同定のプロセスが大幅に改善される。
【0075】
本発明の別の態様は、12個の広範囲インテリジェントPCRプライマーを使用して、配列情報が利用可能なすべての細菌の検出および同定を可能にする生体物質サンプルを調べる方法である。12個のプライマーのうち6個は、細菌(たとえば、Bacillus/Clostridia群あるいはγ-プロテオバクテリア)の広範囲部分を標的とするプライマーとして本明細書中で定義される“広範囲サーベイプライマー”である。12個のプライマーの群のその他の6個のプライマーは、より焦点を絞った適用範囲およびより高い解像度を提供するプライマーとして本明細書中では定義される、“部分全域”プライマーである。この方法により、種レベルでのほぼ100%の既知の細菌の同定が可能になる。本発明のこの態様のさらなる例は、“サーベイ/ドリル-ダウン”と本明細書中では示す方法であり、ここで検出された生体物質についての亜種の特徴は、追加的なプライマーを使用して得られる。そのような亜種の特徴の事例には、抗生物質耐性、病原性島、ビルレンス因子、系統型、亜種型、および分岐群(clade group)が含まれるが、これらには限定されない。サーベイ/ドリル-ダウン法を使用して、生体物質の検出、確認および亜種の特徴を、数時間以内に提示することができる。さらに、サーベイ/ドリル-ダウン法は、通常はトキシンを製造していない細菌種中へのトキシン遺伝子の挿入など、生物工学的現象を同定することに焦点を絞ることができる。
【0076】
本発明の方法により、従来の方法と比較して、極めて迅速でそして正確な生体物質の検出および同定が可能になる。さらに、この迅速な検出および同定は、サンプル物質が純粋ではない場合であっても可能である。この方法は、従来の方法と比較して、偽陽性の頻度をより低くしつつ、感度、特異性および信頼性を非常に向上させる方法において、毒性、病原性、薬物耐性およびゲノム配列決定における進行中の生物医学的な研究に影響を及ぼす。このように、この方法は、以下に議論する分野を含む(しかしそれには限定されない)、幅広い分野で有用である。
【0077】
本発明の別の態様において、本明細書中で開示されたこの方法は、生物学的サンプル中の感染性物質を同定することができる。少なくとも第一の未確認感染性因子を含有する少なくとも第一の生物学的サンプルが得られる。そのサンプルに対して同定解析を行い、それにより、第一の生物学的サンプル中の第一の感染性因子が同定される。より具体的には、生物学的存在中の感染性因子を同定する方法が提供される。同定解析を、生物学的存在から得られた第一の生物学的サンプルに対して行い、それにより生物学的存在由来の生物学的サンプル中の少なくとも1つの感染性因子を同定する。得る工程および実行する工程は、場合により、生物学的存在由来の少なくとも1つの追加の生物学的サンプルに対して繰り返される。
【0078】
本発明はまた、生物学的存在中の健康状態の原因となる可能性のある感染性因子を同定する方法も提供する。同定解析を、生物学的存在の第一の感染性因子識別性範囲由来の第一の試験サンプルに対して行い、それにより少なくとも1つの感染性因子を同定する。この得る工程および実行する工程は、場合により、生物学的存在の追加の感染性因子識別性範囲について繰り返される。
【0079】
生物学的サンプルには、毛髪、粘膜、皮膚、爪、血液、唾液、直腸、肺、大便、尿、呼気、鼻サンプル、眼サンプル、などが含まれるが、これらには限定されない。いくつかの態様において、一またはそれ以上の生物学的サンプルを、本明細書中で記載する方法により解析する。(1または複数の)生物学的サンプルは、少なくとも第一の未確認感染性因子を含有し、そして1より多い感染性因子を含有する場合がある。(1または複数の)生物学的サンプルを、生物学的存在から得る。生物学的サンプルを、バイオプシー、ぬぐい取り(swabbing)などの様々な様式で、得ることができる。生物学的サンプルを、病院またはその他の医療環境において、医師により得ることができる。その後、医師は、同定解析を行い、または生物学的サンプルを研究施設に送り解析を行うことができる。
【0080】
生物学的存在には、哺乳動物、鳥類、またはは虫類が含まれるが、これらには限定されない。生物学的存在は、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、または霊長類であってもよい。生物学的存在はまた、ヒトであってもよい。生物学的存在は、生存していても死んでいてもよい。
【0081】
感染性因子識別性範囲は、有害な健康状態と正常な健康状態とを識別することができる生物学的存在における領域または部位のいずれかである。感染性因子識別性範囲は、生物学的存在の領域または範囲であってもよく、それにより感染性因子が生物学的存在の別の領域または範囲に優先する様である。たとえば、感染性因子識別性範囲には、心臓の血管(心臓疾患、冠状動脈疾患など)、消化器系の特定の部位(潰瘍、クローン病など)、肝臓(肝炎感染)などが含まれていてもよい。いくつかの態様において、複数の感染性因子識別性範囲由来の一またはそれ以上生物学的サンプルを、本明細書中に記載される方法により解析する。
【0082】
本発明の感染性因子は、生物学的存在における健康症状を潜在的に引き起こす可能性がある。健康症状には、現在または将来において医療関係者により同定される、いずれかの症状、症候群、病気、疾患などが含まれる。感染性因子には、細菌、ウィルス、寄生虫、真菌などが含まれるが、これらには限定されない。
【0083】
本発明の別の態様において、本明細書中に開示される方法を使用して、病原性および非病原性の細菌、ウィルス、寄生虫、真菌などに関して、血液およびその他の体液および組織をスクリーニングすることができる。血液およびその他の体液サンプルおよび組織サンプルを含む(しかしこれらには限定されない)動物のサンプルを、疾患、感染または症状を有していることが知られている、または知られていないもしくは疑われているかのいずれかの生きている動物から得ることができる。あるいは、血液およびその他の体液サンプルおよび組織サンプルなどの動物サンプルを、死んだ動物から得ることができる。血液サンプルを、血漿画分または細胞画分にさらに分離することができ、そして所望する場合にはさらにスクリーニングすることができる。体液および組織を、動物またはヒトのからだのいずれかの部分から得ることができる。動物サンプルを、たとえば、哺乳動物およびヒトから得ることができる。
【0084】
臨床的サンプルを、細菌とウィルスとを同時的に検出することにより、約100〜300サンプルのスループットを有する複合的なバックグラウンドにおいて、100〜1000ゲノムコピー程度の低いレベルで生体物質を検出することにより、疾患を引き起こす生体物質および生物戦争の病原体について同時に解析する。そのような解析により、生体物質ゲノムを予期しない修飾についてプローブ化する際における追加的な値が提供される。これらの解析は、協調的様式で、コンピュータネットワークを介して結果を公共データモニタリングセンターにリアルタイムに報告する能力を有する、委託研究機関、病院および公衆衛生システムのLRN研究室において行われる。感染性疾患の流行的発生において起こすような特定の感染性因子のクローン増殖を、CDCのPulse Netシステムにおける特定の食品病原体の展開を追跡する際に使用されるパルスフィールドゲル電気泳動フィンガープリントパターンに類似する、塩基組成の特徴により追跡することができる(Swaminathan, B., et al., Emerging Infectious Diseases, 2001, 7, 382-389)。本発明は、一連の塩基組成の特徴の形態でのデジタルバーコードを提供する。その組み合わせは、それぞれ既知の生物について独特である。この能力により、別の街での同時的な流行や攻撃において必須である可能性がある、幅広い地理的場所にわたるリアルタイムの感染性疾患モニタリングが可能になる。
【0085】
本発明の別の態様において、本明細書中で開示される方法を、器官ドナーおよび/またはドナーから得られた器官における、病原性および非病原性の細菌、ウィルス、寄生虫、真菌などの存在を検出するために使用することができる。そのような調査の結果、たとえば、西ナイルウィルス、肝炎ウィルス、ヒト免疫不全ウィルスなどのウィルスの、移植器官を介したドナーからレシピエントへの移行を防止することができる。本明細書中で開示される方法を、器官のドナーに関連する宿主対移植片または移植片対宿主拒絶の問題を、そのような拒絶を引き起こすことが知られているかまたは疑われている移植片または宿主のいずれかにおける特定の抗原の存在を検出することにより、検出するために使用することもできる。具体的には、この点での生体物質は、HLA抗原などの主要組織適合性複合体の抗原である。本発明の方法を使用して、西ナイルウィルス感染、HIV-関連疾患などの発生する感染性疾患を検出しそして追跡することもできる。
【0086】
本発明の別の態様において、本明細書中で開示される方法を、変異および多型に基づくガン診断、薬剤耐性試験および薬剤感受性試験、遺伝子疾患および症状についてのスクリーニングおよび/または診断、そして感染性疾患および症状の診断を含む(しかしながらそれらには限定されない)、遺伝薬理学的解析および医学的診断のために使用することができる。本発明の文脈において、遺伝薬理学を、遺伝的因子による薬物反応における多様性の研究として定義する。遺伝薬理学的研究は、患者の成り行きを、与えられた薬物の作用様式に関連する遺伝子、たとえば、受容体遺伝子、または代謝経路に関連する遺伝子、における変異と相関させることにしばしば基づく。本発明の方法は、患者のDNAを解析して遺伝薬理学的解析についての基礎を提供するための手段を提供する。
【0087】
本発明の方法を使用して、一ヌクレオチド多型(SNPs)または複数のヌクレオチド多型を、迅速にそして正確に検出することもできる。SNPは、個体ごとに異なるゲノム中の一塩基対部位として定義される。その差異は、欠失、付加、または置換のいずれかとして発現される可能性があり、そしてその差異は、疾患状態にしばしば関連する。SNPは、100〜1000塩基対毎に生じるため、ヒトゲノム中の最も高い頻度で拘束性のタイプの遺伝子マーカーである。
【0088】
たとえば、鎌状赤血球性貧血は、グルタミン酸残基ではなくバリン残基をコードするA-T転移の結果として生じる。オリゴヌクレオチドプライマーを、SNP部位に隣接する配列に結合し、その後、ヌクレオチド増幅および増幅産物の質量測定を行うように、設計することができる。鎌状赤血球性貧血を有さない個体から得られた産物の分子量は、疾患を有する個体から得られた産物の分子量とは異なるため、この方法を使用して、2個体を識別することができる。このように、この方法を使用して、個体中の既知のSNPのいずれかを検出することができ、そしてその結果、疾患または症状に対する感受性が増加していることを診断しまたは決定することができる。
【0089】
一態様において、血液を個体から抜き取り、そして末梢血単核細胞(PBMC)を単離し、そしてハイスループットスクリーニング法などにおいて、SNP領域に隣接する既知の配列に基づく適切なプライマーを使用して、一またはそれ以上SNPsについて同時的に試験する。National Center for Biotechnology Informationは、公衆が利用可能なSNPsのデータベースを、インターネットのウェブ上のたとえば、“ncbi.nlm.nih.gov/SNP/”で維持している。
【0090】
本発明の方法を、血液型決定のために使用することもできる。A、BまたはO血液型をコードする遺伝子は、4つの一ヌクレオチド多型により異なっている可能性がある。遺伝子が配列CGTGGTGACCCTT(SEQ ID NO: 5)を含有する場合、抗原Aが結果として得られる。遺伝子が配列CGTCGTCACCGCTA(SEQ ID NO: 6)を含有する場合、抗原Bが結果として得られる。遺伝子が配列CGTGGT-ACCCCTT(SEQ ID NO: 7)を含有する場合、血液型Oが結果として得られる(“-”は、欠失を意味する)。これらの配列を、これらの領域に隣接する一プライマー対を設計し、その後増幅して質量測定をすることにより識別することができる。
【0091】
本発明の方法を、例えば、Staphylococcus aureusなどの血液-媒介性の病原体を検出しそして同定するために使用することもできる。本発明の方法を、流行調査(epidemic surveillance)における呼吸器病原体の系統型決定のために使用することもできる。A群ストレプトコッカス(GAS)、またはStreptococcus pyogenesは、罹患率と、急性リューマチ熱や急性糸球体腎炎などの合併症を有する疾患を引き起こす能力とのため、呼吸器感染の最も間接的な原因の一つである。GASは、皮膚の感染(とびひimpetigo)も引き起こし、まれには、壊疽性筋膜炎などの侵襲性疾患や毒素性ショック症候群も引き起こす。何十年にもわたる研究にも関わらず、毒性の増大および爆発的なGAS発生を促進する裏付けとなる微生物生態学および自然選択は、未だによく理解されていない。GASおよび患者サンプルにおける病原性および非病原性の複数のその他の細菌およびウィルスを検出する能力は、GASの流行性についての我々の理解を非常に促進するだろう。個体群中のGASの毒性系統の広がりを追跡することができること、そして個体群の5〜20%の範囲の頻度で無症候性個体の鼻および喉に定着する、低毒性または無毒性ストレプトコッカスとGASの毒性系統とを識別することは、重要なことでもある(Bisno, A. L. (1995) in Principles and Practice of Infectious Diseases, eds. Mandell, G. L., Bennett, J. E. & Dolin, R. (Churchill Livingston, New York), Vol. 2, pp. 1786-1799)。M-タンパク質ビルレンス因子をコードするemm遺伝子の配列に基づいてGASをタイピングするための分子的方法が開発された(Beall, B., Facklam, R. & Thompson, T. (1996) J Clin. Micro. 34, 953-958;Beall, B., et al. (1997) J. Clin. Micro. 35, 1231-1235;Facklam, R., et al. (1999) Emerging Infectious Diseases 5, 247-253)。この分子分類を使用して、150以上の異なるemm-型を定義し、そして何千ものGAS単離体の表現型特性と相関させる(www.cdc.gov/ncidod/biotech/strep/strepindex.html)(Facklam, R., et al. (2002) Clinical Infectious Diseases 34, 28-38)。最近、Multi Locus Sequence Typing(MLST)として知られるストラテジーが、GAS(13)の分子的疫学を追跡するために開発された。MLSTにおいて、7種のハウスキーピング遺伝子の内部断片を増幅し、配列決定し、そして以前に研究された単離体のデータベースと比較する(www.test.mlst.net/)。
【0092】
本発明により、多数のサンプルについて、12時間以内に、咽頭ぬぐい液から直接的にemm-タイピング方法を実行することができ、その結果、地理的に分散されていても、かつて可能であったよりも大規模に、進行中の流行の系統追跡が可能になる。
【0093】
別の態様において、本発明を、アデノウィルスを含む(しかし、それらに限定されない)ウィルスの血清型決定において使用することができる。アデノウィルスは、軍の新兵の50%以上に発熱性の呼吸器病を引き起こすDNAウィルスである。ヒトアデノウィルスは、6種の主要な血清型(A〜F)に分類され、それぞれには複数の系統型が含有される。アデノウィルスの罹患率にも関わらず、アデノウィルスを検出しそして血清型決定するための迅速な方法は存在しない。
【0094】
別の態様において、本発明を、Orthopoxvirus属の構成物間を識別する際に利用することができる。天然痘(Smallpox)は、天然痘ウィルスにより引き起こされる。この属のその他の構成物には、ワクシニア、サルポックス、ラクダポックスおよびウシポックスが含まれる。すべては、ヒトに感染することができ、その結果、Orthopox属の構成物間を同定しそして識別することができる方法は、価値ある対象である。
【0095】
別の態様において、本発明を、ウイルス性出血熱(VHF)のウィルス性因子間を識別する際に使用することができる。VHF因子には、Filoviridae(MarburgウィルスおよびEbolaウィルス)、Arenaviridae(Lassaウィルス、Juninウィルス、Machupoウィルス、Sabiaウィルス、およびGuanaritoウィルス)、Bunyaviridae(Crimean-Congo出血熱ウィルス(CCHFV)、Rift Valley熱ウィルス、およびHantaウィルス)、およびFlaviviridae(黄熱ウィルスおよびデングウィルス)(しかし、それらに限定されない)が含まれる。
【0096】
VHFウィルスによる感染は、下痢、筋痛症、咳、頭痛、肺炎、脳疾患、および肝炎などの広範囲な臨床的徴候に関連する。Filoウィルス、arenaウィルス、およびCCHFVは、特に重要である。というのも、それらは、ヒトからヒトへ伝染することができ、したがって高い死亡率の流行を引き起こすからである(Khan, A. S., et al., Am. J. Trop. Med. Hyg., 1997, 57, 519-525)。出血または器官の徴候が存在しない場合、VHFは、臨床的に診断することが難しく、そして様々な病原体を、臨床試験により識別することが難しい。これらの因子のPCR検出のための現在のアプローチは、それらにはPCRの前の別々のcDNA合成工程、PCR産物のアガロースゲル解析、そしていくつかの事例においては2ラウンドのネスト化増幅またはサザンハイブリダイゼーションが含まれるため、時間のかかるものである。短期間での広範囲の試験にからむサイクル条件の相違のため、異なる病原体のためのPCRを、アッセイ毎に実行しなければならない。さらに、現在使用されるアッセイに含まれるPCR後プロセッシング工程またはネスト化PCR工程は、コンタミネーションが繰り越されるために、擬陽性のリスクを増大させる(Kwok, S. and R. Higuchi, Nature, 1989, 339, 237-238)。
【0097】
別の態様において、本発明を、疾患の複数の病原体を診断する際に使用することができる。“病原体”は、本明細書中では、疾患の原因因子として作用する病原体として定義される。疾患は、複数の病原体により引き起こされる可能性がある。たとえば、最近の研究では、ヒトヘルペスウィルス6(HHV-6)と偏性細胞内細菌であるChlamydia pneumoniaeの両方が、多発性硬化症の病因において示された(Swanborg, R. H. Microbes and Infection, 2002, 4, 1327-1333)。本発明を、たとえば、Chlamydia pneumoniaeなどの細菌の同定のために広範囲細菌インテリジェントプライマーおよび部分全域プライマー(必要な場合)を使用し、その後、例えば、HHV-6などのウィルスの同定のためにウィルスハウスキーピング遺伝子に対するプライマーを使用することにより、疾患の複数の病原体の同定に使用することができる。
【0098】
本発明の別の態様において、本明細書中で開示される方法を、家畜における病原体の検出および同定のために使用することができる。家畜には、ウシ、ブタ、ヒツジ、ニワトリ、七面鳥、ヤギ、ウマ、およびその他の農場動物が含まれる(しかし、それらに限定されない)。たとえば、California Department of Food and Agricultureにより家畜における緊急的症状として分類された症状(www.cdfa.ca.gov/ahfss/ah/pdfs/CAreportablePathogeniclist05292002.pdf)には:炭疽(Bacillus anthracis)、ラセンウジバエハエウジ病(Cochliomyia hominivoraxまたはChrysomya bezziana)、アフリカトリパノソーマ症(ツェツェバエ病原体)、ウシバベシア症(ピロプラズマ症)、ウシ海綿状脳症(狂牛病)、伝染性ウシ胸膜肺炎(Mycoplasma mycoides mycoides小コロニー)、口蹄疫疾患(Hoof-and-mouth)、心水病(Cowdria ruminantium)、出血性敗血症(Pasteurella multocida血清型B:2またはE:2)、ランピースキン病病原体、悪性カタル熱(アフリカ型)、Rift Valley熱、牛疫(Cattle plague)、タイレリア症(Corridor 病原体、East Coast fever)、水疱性口内炎、伝染性無乳症(Mycoplasma species)、伝染性ヤギ胸膜肺炎(Mycoplasma capricolum capripneumoniae)、ナイロビヒツジ病病原体、小反芻動物病(Peste des petits ruminants;ヤギペスト)、肺腺腫症(ウィルス性新生物性肺炎)、ヒツジ流産菌(Salmonella abortus ovis)、ヒツジポックスおよびヤギポックス、アフリカ豚コレラ、古典的豚コレラ(Hog cholera)、日本脳炎、ニッパウィルス、ブタ水疱病病原体、テッシェン疾患(Enterovirus encephalomyelitis)、水疱性発疹、外来性ニューカッスル病疾患(内臓速現性ニューカッスル病病原体)、高病原性トリインフルエンザ(家禽ペスト)、アフリカウマ病、媾疫(Dourine;Trypanosoma equiperdum)、伝染性リンパ管炎(ウマブラストミセス症、ウマヒストプラスマ症)、ウマピロプラズマ症(Babesia equi、B. caballi)、鼻疽(馬鼻疽、Farcy)(Pseudomonas mallei)、Hendraウィルス(ウマ麻疹ウィルス)、ウマポックス、スーラ病(Trypanosoma evansi)、ベネズエラウマ脳脊髄炎、西ナイル熱ウィルス、シカにおける慢性消耗病疾患、およびウサギのウィルス性出血性疾患(calicivirus)が含まれる(しかし、それらに限定されない)。
【0099】
California Department of Food and Agricultureにより、家畜における取り締まり対象の症状には:狂犬病、ウシブルセラ症(Brucella abortus)、ウシ結核症(Mycobacterium bovis)、ウシ疥癬(複合型)、トリコモナス症(Trichomonosis;Tritrichomonas fetus)、ヤギブルセラ症およびヒツジブルセラ症(Brucella ovisを除く)、スクレイピー、ヒツジ疥癬(身体疥癬)(Psoroptes ovis)、ブタブルセラ症(Brucella suis)、仮性狂犬病(オーエスキー病病原体)、オルニトーシス(オウム病またはトリクラミジア症)(Chlamydia psittaci)、ヒナ白痢疾患(家禽チフス)(Salmonella gallinarumおよびSalmonella pullorum)、伝染性ウマ子宮炎(Taylorella equigenitalis)、ウマ脳脊髄炎(東部ウマ脳炎および西部ウマ脳炎)、ウマ伝染性貧血(Swamp fever)、アヒルウィルス性腸炎(アヒルペスト)、およびシカにおける結核症、が含まれる(しかし、それらに限定されない)。
【0100】
California Department of Food and Agricultureによりモニターされる追加の症状には:トリ結核症(Mycobacterium avium)、エキノコックス症/包虫症(Echinococcusspecies)、レプトスピラ症、アナプラスマ症(Anaplasma marginaleまたはA. centrale)、ブルータング、ウシ嚢虫症(ヒトにおける無鉤条虫)、ウシ生殖期カンピロバクター症(Campylobacter fetus venerealis)、デルマトフィルス症(ストレプトトリックス病、真菌性皮膚炎)(Dermatophilus congolensis)、地方性ウシ白血病(ウシ白血病ウィルス)、伝染性ウシ鼻気管炎(ウシヘルペスウィルス-1)、ヨーネ疾患(Paratuberculosis)(Mycobacterium avium paratuberculosis)、悪性カタル熱(北アメリカ)、Q熱(Coxiella burnetii)、ヤギ(伝染性)関節炎/脳炎、ヒツジの地方性流産(ヒツジクラミジア症)(Chlamydia psittaci)、マエディ-ビスナ(Maedi-Visna)(ヒツジ進行性肺炎)、萎縮性鼻炎(Bordetella bronchiseptica、Pasteurella multocida)、ブタ嚢虫症(ヒトにおける有鉤条虫)、豚繁殖・呼吸障害症候群、伝染性胃腸炎(コロナウィルス)、トリヒネラ症(Trichinella spiralis)、トリ伝染性気管支炎、トリ伝染性喉頭気管炎、アヒルウィルス性肝炎、家禽コレラ(Pasteurella multocida)、家禽ポックス、伝染性ファブリーキウス嚢病(ガンボロ病病原体)、低病原性トリインフルエンザ、マレック病病原体、マイコプラズマ病(Mycoplasma gallisepticum)、ウマインフルエンザ、ウマ鼻肺炎(ウマヘルペスウィルス-1)、ウマウィルス性動脈炎、およびウマ疥癬(複合型)、が、含まれる(しかし、それらに限定されない)。
【0101】
伝染性発生が生物兵器テロリストの攻撃の結果であることを決定する際の重要な問題は、テロリストたちが使用する可能性のある生物の純粋な種類である。最近のレビュー(Taylor, L. H. et al., Philos. Trans. R. Soc. Lond. B. Biol. Sci., 2001, 356, 983-989)によれば、ヒトに感染する生物が1400以上存在する;これらのほとんどは、計画的な、悪意の攻撃において使用される可能性がある。これらの数には、それぞれの生物の多数の系統変異体、生物工学版、または植物または動物に感染する病原体は含まれない。逆説的には、生物学的兵器を検出するために開発されるほとんどの新しい技術には、定量的PCRのあるやり方が取り込まれており、それは、特異的な病原性生物を選択的に同定する様に設計される非常に特異的なプライマーおよびプローブを使用することに基づいている。このアプローチには、検出することが期待される細菌またはウィルスの型および系統についての仮定が必要である。このアプローチは、天然痘や炭疽などのほとんどの明白な生物については機能しうるが、テロリストが使用する可能性が有るものを予想することは非常に難しいことが、経験上示されている。
【0102】
本発明を使用して、検出すべきそして同定すべき生物についての事前の知識がなくても、細菌、ウィルス、真菌、およびトキシンを含むいずれかの生物学的因子を検出しそして同定することができる。一例として、因子が生物学的脅威である場合、たとえば、トキシン遺伝子、病原性島および抗生物質耐性遺伝子の存在などの得られた情報を使用して、対抗策のために必要とされる実務的な情報を決定する。さらに、この方法を使用して、天然のものか、または染色体断片スワッピング、分子育種(遺伝子シャッフリング)および出現した感染性病原体を含む意図的に操作されたものか、を同定することができる。本発明は、生物兵器または生物兵器テロリストの攻撃、特に、より一般的な感染として見過ごされるかまたは間違われる可能性がある攻撃、により生じる疾患の迅速な診断についての唯一の実務的手段となる可能性がある幅広い機能の技術を提供する。
【0103】
本発明の方法により検出することができる細菌性生物兵器因子には、Bacillus anthracis(炭疽)、Yersinia pestis(肺ペスト)、Franciscella tularensis(野兎病)、Brucella suis、Brucella abortus、Brucella melitensis(波状熱)、Burkholderia mallei(鼻疽)、Burkholderia pseudomalleii(類鼻疽)、Salmonella typhi(腸チフス熱)、Rickettsia typhii(発疹チフス)、Rickettsia prowasekii(発疹熱)およびCoxiella burnetii(Q熱)、Rhodobacter capsulatus、Chlamydia pneumoniae、Escherichia coli、Shigella dysenteriae、Shigella flexneri、Bacillus cereus、Clostridium botulinum、Coxiella burnetti、Pseudomonas aeruginosa、Legionella pneumophila、およびVibrio choleraeが含まれる(しかし、それらに限定されない)。
【0104】
16Sおよび23S rRNAに加えて、本発明において細菌の検出のために使用するために適しているその他の標的領域には、5S rRNAおよびRNase Pが含まれる(しかし、それらに限定されない)(図3)。
【0105】
真菌性生物兵器因子には、Coccidioides immitis(Coccidioidomycosis)、およびMagnaporthe griseaが含まれる(しかし、それらに限定されない)。
本発明の方法により検出することができる生物戦争トキシン遺伝子には、ボツリヌストキシン、T-2マイコトキシン、リシン、staphエンテロトキシンB、シガトキシン、アブリン、アフラトキシン、Clostridium perfringensεトキシン、コノトキシン、ジアセトキシスシルペノール、テトロドトキシンおよびサキシトキシンが含まれる(しかし、それらに限定されない)。
【0106】
生物兵器において使用することができる寄生虫には、:Ascaris suum、Giardia lamblia、Cryptosporidium、およびSchistosomaが含まれる(しかし、それらに限定されない)。
【0107】
生物戦争のウィルス性脅威因子は、天然痘を除き、ほとんどがRNAウィルスである((+)鎖および(-)鎖)。すべてのRNAウィルスは、関連するウィルス(擬種(quasispecies))のファミリーである。これらのウィルスは迅速に変異を起こし、そして操作された系統についての潜在能力(天然のまたは意図的な)は、非常に高い。RNAウィルスは、ウィルスゲノム上の保存的RNA構造ドメイン(たとえば、ビリオン構成成分、アクセサリータンパク質)、および一本鎖(+)鎖RNAウィルスについては、RNA-依存性RNAポリメラーゼ、二本鎖RNAヘリカーゼ、キモトリプシン様プロテアーゼ、およびパパイン様プロテアーゼ、およびメチルトランスフェラーゼを含むコアウィルスタンパク質をコードする保存的ハウスキーピング遺伝子を有するファミリー中でクラスターを形成する。“ハウスキーピング遺伝子”は、遺伝子的に常に発現されており、そして日常的な細胞代謝に関与していると考えられている遺伝子のことを言う。
【0108】
(-)鎖RNAウィルスの例には、アレナウイルス(例えば、サビア(sabia)ウィルス、ラッサ熱ウイルス、マクポウイルス、アルゼンチン出血熱ウィルス、フレクサル(flexal)ウィルス)、ブニヤウィルス(例えば、ハンタ(hanta)ウィルス、ナイロ(nairo)ウィルス、フレボ(phlebo)ウィルス、ハンタン(hantaan)ウィルス、コンゴ‐クリミヤ出血熱ウィルス、リフトバレー熱ウィルス)、およびモノネガウィルス(mononegavirales)(たとえば、フィロウィルス、パラミクソウィルス、エボラウィルス、マールブルグウィルス、ウマ麻疹ウイルス)が含まれる(しかし、それらに限定されない)。
【0109】
(+)鎖RNAウィルスの例には、ピコルナウィルス(例えば、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、ヒトコクサッキーウイルスA、ヒトエコーウイルス、ヒトエンテロウィルス、ヒトポリオウィルス、A型肝炎ウィルス、ヒトパーエコー(parecho)ウィルス、ヒトライノウィルス)、アストロウイルス(例えば、ヒトアストロウイルス)、カリシウィルス(たとえば、チバ(chiba)ウィルス、チッタ(chitta)ウィルス、ヒトカリシウィルス、ノーウォークウィルス)、ニド(nido)ウィルス(たとえば、ヒトコロナウィルス、ヒトトロウィルス)、フラビウィルス(たとえば、デングウィルス1〜4、日本脳炎ウィルス、キャサヌール森林疾患ウィルス、マーレーバレー脳炎ウィルス、ロシオ(Rocio)ウィルス、St. Louis脳炎ウィルス、西ナイルウィルス、黄熱ウィルス、C型肝炎ウィルス)およびトガウィルス(たとえば、チクングンヤ熱ウィルス、東部ウマ脳炎ウィルス、マヤロウィルス、オニョン-ニョンウィルス、ロスリバーウィルス、ベネズエラウマ脳炎ウィルス、風疹ウィルス、E型肝炎ウィルス)が含まれる(しかし、それらに限定されない)。C型肝炎ウィルスは、340ヌクレオチドの5'-非翻訳領域、3010アミノ酸を有する9タンパク質をコードするオープンリーディングフレーム、そして240ヌクレオチドの3'-非翻訳領域を有する。5'-UTRおよび3'-UTRは、C型肝炎ウィルスにおいて99%保存されている。
【0110】
一態様において、標的遺伝子は、RNA-依存性RNAポリメラーゼまたは(+)鎖RNAウィルスによりコードされるヘリカーゼ、または(-)鎖RNAウィルス由来のRNAポリメラーゼである。(+)鎖RNAウィルスは、二本鎖RNAであり、そしてRNA依存性RNAポリメラーゼおよび鋳型としての(+)鎖を使用するRNA指向性RNA合成により複製する。ヘリカーゼは、RNA二重鎖を巻き戻し、一本鎖RNAの複製を可能にする。これらのウィルスには、ピコルナウィルス科(たとえば、ポリオウィルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス)、トガウィルス科(例えば、アルファウィルス、フラビウィルス、ルビウィルス)、アレナウィルス科(たとえば、リンパ球性脈絡髄膜炎ウィルス、ラッサ熱ウィルス)、コロナウィルス科(たとえば、ヒト呼吸器ウィルス)およびA型肝炎ウィルス由来のウィルスが含まれる。これらのタンパク質をコードする遺伝子は、可変領域および可変領域に隣接する非常に保存的な領域を含む。
【0111】
一態様において、この方法を使用して、細菌種における抗生物質耐性遺伝子および/またはトキシン遺伝子の存在を検出することができる。たとえば、テトラサイクリン耐性プラスミドおよび炭疽トキシン(px01および/またはpx02)の一方または両方をコードするプラスミドを含むBacillus anthracisを、抗生物質耐性遺伝子プライマーセットおよびトキシン遺伝子プライマーセットを使用して、検出することができる。B. anthracisがテトラサイクリン耐性に陽性である場合、例えば、キナロン(quinalone)などの別の抗生物質を使用する。
【0112】
本発明は、その態様の特定のものにしたがって具体的に記載されるが、以下の実施例は、本発明を説明するためにのみ機能し、そして本発明を限定することを目的とするものではない。
【実施例】
【0113】
実施例1:核酸単離およびPCR
一態様において、核酸を生物から単離し、そしてマススペクトロメトリーによるBCS測定の前に、標準的な方法を用いたPCRにより増幅する。核酸は、たとえば、細菌細胞の界面活性剤溶解、遠心分離およびエタノール沈殿により、単離される。核酸単離方法は、たとえば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.)およびMolecular Cloning;A Laboratory Manual(Sambrook et al.)に記載される。次いで、核酸を、PCRなどの標準的な方法を使用して、以下に記載するような介在性可変配列を含有する核酸の保存的な領域に結合するプライマーを使用して、増幅する。
【0114】
一般的ゲノムDNAサンプル調製プロトコル:
生サンプルを、Supor-2000、0.2μm膜シリンジフィルター(VWR International)を使用して濾過する。サンプルを、1.5 mlエッペンドルフチューブに移し、0.45 gの0.7 mm Zirconiaビーズで事前濾過し、次いで350μlのATLバッファー(Qiagen, Valencia, CA)を添加する。サンプルを、Retsch Vibration Mill(Retsch)中で19 l/sの頻度で10分間、ビーズ攪拌に供する。遠心分離の後、サンプルをS-ブロックプレート(Qiagen)に移し、DNA単離をBioRobot 8000核酸単離ロボット(Qiagen)を使用して完成する。
【0115】
ぬぐい液サンプルプロトコル:
Allegiance S/Pブランド培養ぬぐい液、および回収/輸送システムを使用して、サンプルを回収する。乾燥させた後、ぬぐい液を17×100 mm培養チューブ(VWR International)中に静置し、そしてゲノム核酸単離を、Qiagen MdxロボットおよびQiagen QIAamp DNA Blood BioRobot Mdxゲノム調製キット(Qiagen, Valencia, CA)を使用して、自動的に実行する。
【0116】
実施例2:マススペクトロメトリー
FTICR装置:
FTICR装置は、7テスラの、意図的にシールドした超伝導磁石および修飾Bruker Daltonics Apex II 70eイオン光学系および減圧チャンバに基づくものである。分光計は、ハイスループットスクリーニング用途のために、LEAP PAL自動サンプル取得器および特注流体工学調節システムに連結される。サンプルを、約1サンプル/分の速度で、96-ウェルまたは384-ウェルマイクロタイタープレートから直接的に解析する。Brukerデータ取得プラットフォームには、自動サンプル取得器を調節する研究室で組み上げた補助的なNTデータステーションを追加し、そして洗練されたタンデムMS実験のために、複雑なrf-励起波形(周波数掃引、フィルターをかけた後のノイズ、残存波形逆フーリエ変換(SWIFT)など)を生成することができる、任意の波形生成器を含有する。20〜30-merの方法におけるオリゴヌクレオチドについて、典型的な動作特性には、100,000(FWHM)を超える質量解像度、低ppm質量測定誤差、そして50〜5000 m/zのあいだの機能可能なm/z範囲が含まれる。
【0117】
改良されたESI供給源:
サンプル限定的解析において、分析物溶液を、3-D顕微操作装置上にマウントされた内径30 mmのシリカガラスESIエミッターに対して、150 nL/分で送達する。ESIイオン光学系は、加熱金属キャピラリー、rf-専用六重局、スキマーコーン(skimmer cone)、および予備ゲート電極からなる。6.2 cmのrf-専用六重局には、直径1 mmのロッドが含まれ、そして380 Vppの電位で、5 MHzの周波数で操作される。データステーションからのTTLパルスを介して“オープン”ポジションに誘発されない限り、研究室で組み上げた電子式-機械式シャッターを使用して、エレクトロスプレイ水煙が、注入口キャピラリーに侵入することを防止することができる。“クローズ”ポジションの場合、安定なエレクトロスプレイ水煙が、ESIエミッターとシャッター面との間に維持される。シャッターアームの背面は、注入口キャピラリーで減圧シールを形成する様に位置取りすることができるエラストマー製シールを含有する。そのシールを取り除くと、シャッター羽とキャピラリー注入口との間の1 mmの間隙により、シャッターがオープンポジションにあるかクローズポジションにあるかに関わらず、外部イオン保存器中を定圧にすることができる。シャッターが誘発される場合、イオンの“タイムスライス”が注入口キャピラリーにはいることができ、そして実質的に外部イオン保存器中に蓄積される。イオンシャッターの迅速な反応時間(<25 ms)により、イオンが外部イオン保存器中に注入されそして蓄積される可能性がある間、再現可能な、使用者により決められる間隔が提供される。
【0118】
赤外線多光子解離のための装置:
10.6μmで作動させる25ワットのCW CO2レーザーを、分光計に連結させ、オリゴヌクレオチド配列決定およびその他のタンデムMS用途のための赤外線多光子解離(IRMPD)を可能にする。アルミニウム光学ベンチを、意図的にシールドした超伝導磁石から約1.5 mに位置取りし、レーザービームを磁石の中央軸に配列させる。標準的IR-適合性ミラーおよび動的ミラーマウントを使用して、合焦されていない3 mmレーザービームを、FTICR捕捉イオンセルの捕捉用電極の3.5 mmの穴を介して直接的に横切るように配置し、そして縦方向にスキマーコーンに最終的に作用しながら、外部イオンガイドの六重局領域を横切る用に、配列する。このスキームにより、捕捉イオンセル中でm/z選択的様式で(例えば、目的の種のSWIFT単離の後)IRMPDを行うことができ、または天然分子との衝突によりフラグメントイオン収率の増大および配列範囲の増大の結果として生じるIRMPD-生成準安定フラグメントイオンを安定化させる、外部イオン保存器の高圧領域中で広範囲様式でIRMPDを行うことができる。
【0119】
実施例3:生体物質の同定
表2は、9以上のプライマーセットおよび約30種の生物についての計算値分子量のデータベースのわずかな一面を示す。プライマーセットを、rRNAアラインメントから誘導した。rRNAコンセンサスアラインメントに由来する領域の例を、図1A〜1C中に示す。矢印は、PCR用のインテリジェントプライマー対が設計される領域の例である。プライマー対は、細菌配列データベース(現在のところ10,000以上の生物)中で>95%保存されている。介在性領域は、長さおよび/または組成において可変であり、その結果、各生物についての塩基組成の“特徴”(BCS)を提示する。増幅領域の全長が、約80〜90ヌクレオチド未満であるようにプライマー対を選択した。各プライマー対についての標識は、コンセンサス図上の増幅領域の開始塩基番号および終止塩基番号を示す。
【0120】
Bacillus anthracisまたはYersinia pestisなどの多数の周知の病原体/生物兵器因子(太字/赤色タイプで示す)、ならびにStreptomycesなどの天然環境において一般的に見いだされる細菌性物のいくつかが、表2中の簡略細菌データベースの一面に含まれる。近縁種の生物であっても、プライマーの適切な選択により、互いに識別することができる。例えば、2種の低G+C生物、Bacillus anthracisとStaph aureus、とを、16S_1337または23S_855(4 DaのΔM)で定義されるプライマー対を使用することにより、互いに識別することができる。
【0121】
【表2】

【0122】
図6は、正確な質量を測定するために、ESI-FT-ICR MSを使用することを示す。S. aureus(上)およびB. anthracis(下)由来の16S rRNAの位置1337から始まる46mer PCR産物に由来するスペクトルが示される。これらのデータは、それぞれの5'-3'鎖の[M-8H+] 8-荷電状態に由来するシグナルを含有するスペクトル領域に由来する。この2種の鎖は、2つ(AT→CG)の置換により相違し、そしてそれぞれ14206.396および14208.373 + 0.010 Daの質量であることが測定された。B. anthracis生成物についてのフォワード鎖およびリバース鎖の質量に由来する、可能性のある塩基組成を、表3中に示す。
【0123】
【表3−1】

【0124】
【表3−2】

【0125】
計算されたフォワード鎖についての16種の組成物およびリバース鎖についての18種の組成物のうち、ただ一つの対(太字で示す)が相補的であり、B. anthracisのPCR産物の実際の塩基組成に相当する。
【0126】
実施例4:Bacillus anthracisおよびBacillus cereus由来の領域のBCS
CからAへの塩基置換を有するB. anthracis(A14G9C14T9)およびB. cereus(A15G9C13T9)由来の保存Bacillus領域を合成し、そしてESI-TOF MSに供した。2つの領域が本発明の方法を使用して、明確に識別される結果を図7中に示す(MW=14072.26対14096.29)。
【0127】
実施例5:追加の生体物質の同定
本発明のその他の例において、病原体Vibrio choleraを、表4に示すように、表2に示す3種の16Sプライマーセット(16S_971、16S_1228または16S_1294)のうちの一つを使用して、ΔM>600 Daで、Vibrio parahemolyticusから識別することができる。リストに掲載されている2種のマイコプラズマ種(M. genitaliumとM. pneumoniae)もまた、3種のマイコバクテリア科で可能であるのと同様に、互いに識別することができる。増幅産物の直接的質量測定により、多数の生物を同定しそして識別することができるが、一方で、塩基組成の特徴の測定により近縁種の生物についての解像度が劇的に向上することが示される。質量の差異のみに基づいては互いに実質的には識別することができないBacillus anthracisやBacillus cereusなどの場合、組成解析または断片化パターンを使用して、差異を解析することができる。2種の生物間での一塩基の差異により、異なる断片化パターンが得られ、そして、B. anthracisにおける位置20での不明瞭な/未確認の塩基Nの存在にもかかわらず、2種の生物を同定することができる。
【0128】
表4a〜bは、バックグラウンドから病原体を識別する表1由来のプライマー対の例を示す。
【0129】
【表4】

【0130】
表5は、Mycobacterium aviumおよびStreptomyces spにおける領域16S_1100〜1188の予想分子量および塩基組成を示す。
【0131】
【表5】

【0132】
表6は、異なる細菌種における16S_1100〜1188プライマー増幅反応についての塩基組成(一本鎖)結果を示す。表中で繰り返される種(例えば、Clostridium botulinum)は、16S_1100〜1188領域において異なる塩基組成を有する異なる系統である。
【0133】
【表6−1】

【0134】
【表6−2】

【0135】
異なる塩基組成を有する同一の生物は、異なる系統である。目立つようにしたかまたはイタリックにしてある生物の群は、増幅領域中に同一の塩基組成を有する。これらの生物のいくつかを、複数のプライマーを使用して識別することができる。たとえば、Bacillus anthracisを、プライマー16S_971-1062(表7)を使用して、Bacillus cereusやBacillus thuringiensisから識別することができる。独自の塩基組成の特徴を生成するその他のプライマー対を、表6中に示す(太字)。非常に類似する脅威および偏在性の脅威ではない生物を含有する菌株群(例えば、炭疽菌株群)を、プライマー対の注目する組み合わせを使用して高い解像度で識別する。表6中の既知の生物兵器因子は、Bacillus anthracis、Yersinia pestis、Francisella tularensisおよびRickettsia prowazekiiである。
【0136】
【表7】

【0137】
領域16S_971におけるB. anthracisおよびB. cereusの配列を、以下に示す。太字で示されたものは、本発明の方法を使用して検出することができる2種の間での一塩基の相違である。B. anthracisは、位置20の塩基が不明瞭である。
【0138】
【化1】

【0139】
実施例6:sspE 56-mer+CalibrantのESI-TOF MS
PCR産物のESI-MS研究における内部質量標準を使用して得ることができる質量測定の正確性を、図8に示す。質量標準は、B. anthracis芽胞コートタンパク質sspE由来の56-mer PCR産物を含有する溶液に対して添加された、20-merホスホロチオエートオリゴヌクレオチドであった。予想されたPCR産物の質量により、B. anthracisが、Bacillusのその他の種、例えばB. thuringiensisやB. cereusから識別される。
【0140】
実施例7:B. anthracisの合成16S_1228二本鎖のESI-TOF
ESI-TOF MSスペクトルを、B. anthracis 16S rRNA遺伝子のヌクレオチド1228領域由来の予測されたフォワードおよびリバースPCR産物のそれぞれ5μMの合成類似体を含有する水溶液から得た。結果(図9)から、フォワード鎖およびリバース鎖の分子量を、正確に測定することができ、そして2本の鎖を容易に識別することができる。[M-21H+] 21-荷電状態および[M-20H+] 20-荷電状態を示す。
【0141】
実施例8:合成B. anthracis 16S _33746塩基対二本鎖のESI-FTICR-MS
ESI-FTICR-MSスペクトルを、B. anthracis 16S rRNA遺伝子のヌクレオチド1337領域由来の予測されるフォワードおよびリバースPCR産物の各5μMの合成類似体を含有する水溶液から得た。結果(図10)は、鎖の分子量を、本発明の方法により識別することができることを示す。[M-16H+] 16-から[M-10H+] 10-荷電状態が、示される。この挿入は、一個の13C置換により相違するピーク間での質量差からイオンの荷電状態を決定することができる、FTICR-MS装置で実現することができる解像度を目立たせる。
【0142】
実施例9:内部質量標準と組み合わせたB. anthracisのsaspB遺伝子由来の56-merオリゴヌクレオチドのESI-TOF MS
ESI-TOF MSスペクトルを、サンプル消費の関数として、1.7μL/分のESIで、内部質量標準を含有するB. anthracisのsaspB遺伝子由来の合成56-merオリゴヌクレオチド(5μM)について得た。結果(図11)は、ノイズに対するシグナルは、より多くのスキャンを加算するにつれて、向上し、そして標準および生成物は、わずか100スキャンの後に可視化されることを示す。
【0143】
実施例10:トリブチルアンモニウム(TBA)-トリフルオロ酢酸(TFA)バッファーを用いた内部標準のESI-TOF MS
20-merホスホロチオエート質量標準のESI-TOF-MSスペクトルを、5 mMのTBA-TFAバッファーを溶液に対して添加することにより、得た。このバッファーは、オリゴヌクレオチド由来の電荷を取り除き、そして[M-8H+] 8-から[M-3H+] 3-までの最も豊富な荷電状態をシフトさせる(図12)。
【0144】
実施例11:マスターデータベース比較
実施例1〜10を通じて得られた分子量を、マスターデータベース中に保存された既知の生体物質の分子量と比較して、高確率適合性分子量を得る。
【0145】
実施例12:インターネットを用いたマスターデータベース解析
ローカルコンピュータがマスターデータベースを保存していなかった点を除き、実施例11と同一の手順を行う。インターネット接続を介してマスターデータベースに応答させ、分子量適合について検索する。
【0146】
実施例13:マスターデータベース更新
ローカルコンピュータがインターネットに接続され、そしてマスターデータベースを端末に保存することができる点を除き、実施例11と同一の手順を行う。ローカルコンピュータシステムは、定期的に、または利用者の裁量により、マスターデータベースを調べ、ローカルマスターデータベースを世界的なマスターデータベースと同調させる。これにより、ローカルデータベースならびに世界的なマスターデータベースの両方に現在の分子量情報を提供する。このことにより、さらに、より世界的な知識基盤を提供する。
【0147】
実施例14:世界的なデータベース更新
全世界にわたって、そのような多数のローカルステーションが存在する点を除き、実施例13と同一の手順を行う。各データベースの同調により、既知の生体物質の情報の多様性および分子量の多様性が追加される。
【0148】
実施例15:混合物中の5種の細菌の検出および同定の実証
広範囲インテリジェントプライマーを、4000種以上の細菌を記述する現在の細菌の16S rRNA配列の大きなコレクションを解析することにより、選択した。コレクション中の90%以上の生物から、プライミングすることができるプライマーの例には、表8中に示されるものが含まれ(しかし、それらに限定されない)、ここでTp = 5'プロピニル化ウリジンでありそしてCp = 5'プロピニル化シチジンである。
【0149】
【表8−1】

【0150】
【表8−2】

【0151】
【表8−3】

【0152】
【表8−4】

【0153】
【表8−5】

【0154】
【表8−6】

【0155】
研究室内での評価のため、3種のγ-プロテオバクテリア(E. coli、K. pneumoniae、およびP. auergiosa)および2種の低G+Cグラム陽性細菌(B. subtilitisおよびS. aureus)を含む、5種の細菌を選択した。これらの生物の正体は、研究室の技術者には示さなかった。
【0156】
細菌を、培養中で増殖させ、DNAを単離しそして処理し、そしてPCRを標準的なプロトコルを使用して行った。PCRの後、すべてのサンプルを脱塩化し、濃縮し、そしてフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FTICR)マススペクトロメトリーにより解析した。FTICRの正確性がかなり高いため、質量を1 Da以内で測定することができ、そして一塩基組成を明確に解析することができる。測定された塩基組成を、我々のデータベース中の既知の塩基組成の特徴と比較した。広範囲サーベイ16Sプライマーを使用する場合に予想されたように、いくつかの系統発生的に近い近縁生物を我々の被検生物と識別することは難しかった。追加的な非リボソームプライマーを使用して、三角法で測定し、そしてさらにこれらのクラスターを解析する。
【0157】
RNAポリメラーゼB(rpoB)の領域に対するプライマーを使用する例を、図19に示す。この遺伝子は、幅広いプライミングを提供し、そして解像度を提供する潜在力を有する。rpoBの保存領域に対するプライマー対は、緊密なエンテロバクテリア科のクラスターを解析する補助となった、明確な塩基組成の特徴を提供した。各プライマーからの特徴の組み合わせ確率推定の結果、試験サンプルの正体に適合した一生物の同定ができた。したがって、16SリボゾームRNA遺伝子の選択された領域を増幅する少数のプライマーの組み合わせ、およびタンパク質をコードする遺伝子の選択領域を増幅する数個の追加のプライマーにより、すべての細菌性病原体を検出しそして同定するための十分な情報が提供される。
【0158】
実施例16:血液サンプル中のStaphylococcus aureusの検出
解析プレート中の血液サンプルを、103生物/mlのStaphylococcus aureusのゲノムDNA同等物を用いて、スパイクした。1セットの16S rRNAプライマーを、増幅のために使用した。PCRにより、すべてのサンプルを脱塩し、濃縮し、そしてフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FTICR)マススペクトロメトリーにより解析した。スパイクしたウェルのそれぞれにおいて、S. aureusアンプリコンの予想されたBCSと一致する、強力なシグナルを検出した(図20)。さらに、ロボットによる繰り越しまたは血液のみまたは水のブランクセルのいずれかにおけるコンタミネーションは、存在しなかった。この方法に類似する方法を、尿および喉または鼻ぬぐい液を含む(これらには限定されない)、その他の臨床的に関連したサンプルについて、適用することができる。
【0159】
実施例17:ウィルスの検出と血清型決定
本発明のウィルス検出能力を、海軍の衛生官の協力の下、一例としてアデノウィルスを使用して例示した。
【0160】
公開されたデータベースにおいて利用可能なヒトアデノウィルスについてのすべての利用可能なゲノム配列を、調査した。ヘキソン遺伝子を、すべての血清型にわたって幅広い特異性を有していると思われる候補として、同定した。アデノウィルス系統型の大多数にわたって幅広い範囲を得る用に設計した一群のプライマーから、4種のプライマー対を選択した(表9)。ここで、Tp = 5'プロピニル化ウリジンであり、そしてCp = 5'プロピニル化シチジンである。
【0161】
【表9】

【0162】
これらのプライマーはまた、ほとんどの疾患に関与する系統(3型、4型、7型、および21型)を、その他すべてから明りょうに識別するように機能する。アデノウィルスを含有することが知られるフィールドサンプルから単離されたDNAを、ヘキソン遺伝子PCRプライマーを使用して試験し、その結果、すべてのサンプルについて、明確な系統の同定を提示した。一つのサンプルは、7型系統と21型系統に属する2種のウィルスDNAの混合物を含有することが見いだされた。
【0163】
試験結果(図21)から、これらのそれぞれのサンプルについて、予測されそして観察された塩基組成の特徴との間で、完全な一致が見られた。伝統的な血清型決定の結果、これらの知見のそれぞれが確認された。単離DNAからではなく、咽頭ぬぐい液などのコレクション物質からの直接的なウィルスサンプルのプロセッシングの結果、スループットの顕著な増加が得られ、ウィルス培養の必要性が排除される。
【0164】
実施例18:流行調査のための呼吸器病原体の広範囲で迅速な検出および系統型決定
ゲノム調製:
培養サンプルまたはぬぐい液由来のゲノム材料を、DNeasyTM 96 Tissue Kit, Qiagen)を使用して、改良ロボット化プロトコルを使用して調製した。Streptococcus pyogenesの培養物をペレットにし、そして0.45 gの0.7 mm Zirconiaビーズ(Biospec Products, Inc.)を含有する1.5 mLチューブに移した。細胞を、MM300 Vibration Mill(Retsch, Germany)を使用して、19 l/sの速度で10分間震盪することにより溶解した。サンプルを、5分間遠心分離に供し、そして上清を深いウェルブロックに移し、そして製造者のプロトコルにしたがってそしてQiagen 8000 BioRobotを使用して、処理した。
【0165】
PCR:
PCR反応を、Packard MPII液体ハンドリングプラットフォームを使用して組み立てて、各1.8 unitsのPlatinum Taq(Invitrogen)およびHotstart PFU Turbo(Stratagene)ポリメラーゼを使用して、50μL容量中で行った。サイクルは、DNA Engine Dyad(MJ Research)で、はじめに95°Cにて2分間、続いて95°Cにて20秒、58°Cにて15秒そして72°Cにて15秒を1サイクルとして45サイクル、からなるサイクル条件にて、行った。
【0166】
広範囲プライマー:
正確な質量測定から塩基組成解析するためのPCRプライマー設計は、イオン化および正確な解析を行うことができる上限により制限される。現在のところ、この限界は、およそ140塩基対である。細菌リボゾームRNA(16Sおよび23S)の広範囲にわたって保存的な領域およびリボソームタンパク質L3(rpoC)をコードする遺伝子に対して設計されたプライマーを、表10に示す。
【0167】
【表10】

【0168】
Emm-タイピングプライマー:
Multilocus Sequencing Technique(MLST)によるGAS系統の対立遺伝子プロフィールを、7種のハウスキーピング遺伝子の内部断片を配列決定することにより得ることができる。GASの212種の単離物(78種の異なるemm型)についてのこれらのハウスキーピング遺伝子それぞれについてのヌクレオチド配列が、利用可能である(www.mlst.net)。これは、Enrightらにより、ST1-ST100(Enright, M. C., et al., Infection and Immunity 2001, 69, 2416-2427)と呼ばれる、100種の異なる対立遺伝子プロフィールまたは独自の配列型に対応する。それぞれの配列型について、我々は、7種の遺伝子それぞれに由来するそれらの対立遺伝子プロフィールに対して適切な配列を連結することにより、仮想の転写物を作製した。MLSTプライマーを、これらの配列を用いて設計し、そして各遺伝子座位内部のものであるように限定した。24種のプライマー対を、最初に、配列既知のGAS系統700294に対して設計しそして試験した。表11の6種のプライマー対の最後のサブセットを、emm型間での解像度を最高にする最小数のプライマー対の理論的計算に基づいて選択した。
【0169】
【表11】

【0170】
微生物学:
GAS単離物を、血液寒天プレート上でのコロニー形状およびβ-溶血、グラム染色特性、バシトラシンに対する感受性、そしてA群-特異的抗血清を用いた陽性のラテックス凝固反応に基づいて、ぬぐい液から同定した。
【0171】
配列決定:
すべての単離物の細菌ゲノムDNAサンプルを、新しく増殖させたGAS系統から、QIAamp DNA Blood Mini Kit(Qiagen, Valencia, CA)を製造者により記載された手順に従って使用することにより、抽出した。A群ストレプトコッカス細胞を、以前に記載したように、emm-遺伝子特異的PCRを使用してPCRおよび配列解析に供した(Beall, B., et al. J. Clin. Micro., 1996, 34, 953-958;およびFacklam, R., et al., Emerg. Infect. Dis., 1999, 5, 247-253)。DNA配列に対する相同性検索を、以下のアドレス(www.cdc.gov/ncidod/biotech/infotech_hp.html)に存在する既知のemm配列に対して行った。MLST解析に関して、7種のハウスキーピング遺伝子の内部断片を、PCRにより増幅し、そして以前に記載されたように解析した(Enright, M. C., et al., Infection and Immunity 2001, 69, 2416-2427)。emm-型を、MLSTデータベースとの比較に基づいて決定した。
【0172】
広範囲サーベイ/ドリル-ダウン法(100):
Streptococcus pyogenesに関して、目的は、毒性の流行株の特徴の同定およびそのemm-型の決定であった。Emm-型情報は、治療についての考慮対象および流行調査の両方とものために有用である。全51種の咽頭ぬぐい液を、2002年12月、軍のトレーニングキャンプでのGAS発生のピークのあいだに、健康な新兵および入院患者の両方から採取した。GASが原因である以前の感染に由来する27種の追加の単離物もまた、調べた。最初は、喉培養サンプルおよび咽頭ぬぐい液の両方ともから由来の単離コロニーを、培養工程なしに直接的に調べた。後者の方針は、6〜12時間以内に終了することができ、現在進行中の流行を扱う際に十分に有用な程度迅速に、有意な数のサンプルについての情報を提供する。
【0173】
広範囲サーベイ/ドリル-ダウンの方法(200)を、図22に示す。最初に、咽頭ぬぐい液などの臨床サンプルを、個体から得る(201)。広範囲サーベイプライマーを使用して、臨床サンプルから増幅産物を得て(202)、これを解析してBCSを決定し(203)、ここから種を同定する(204)。その後、ドリル-ダウンプライマーを使用して、PCR産物を得て(205)、それから種についての特異的な情報を得る(Emm-型など)(206)。
【0174】
広範囲サーベイプライミング:
広範囲サーベイプライマーにより標的化されるゲノム領域を、細菌の実質的にすべての既知の種の増幅を可能にするそれらの能力に関して、そして塩基組成解析により細菌種を互いに識別するそれらの能力に関して、選択した。最初に、4種の広範囲PCR標的部位を選択し、そしてプライマーを合成しそして試験した。この標的は、16Sおよび23S rRNAの普遍的に保存された領域、およびリボソームタンパク質L3(rpoC)をコードする遺伝子を含んだ。
【0175】
広範囲サーベイプライマー(すべての重要な病原体を互いに識別するために最適化したもの)の選択の際に、Streptococcus pyogenesに関して特別考慮すべきことはなかったが、ゲノム配列の解析から、これらの領域の塩基組成により、Streptococcus pyogenesを、その他の呼吸器病原体およびストレプトコッカス、スタヒロコッカス、およびバチルスの近縁種を含む正常のフローラから識別することが示された(図23)。
【0176】
ドリルダウンプライミング(Emm-タイピング):
流行に関して系統-特異的情報を得るため、一組のファストクロック(fast clock)標的遺伝子の塩基組成を調べて、系統-特異的な特徴を生成し、そして同時にemm-型と関連づける様に、ストラテジーを設計する。
【0177】
古典的なMLST解析において、7種のハウスキーピング遺伝子の内部断片(gki、gtr、murI、mutS、recP、xpt、yqiL)を増幅し、配列決定し、そして以前に研究し、emm-型を決定した単離物についてのデータベース(Horner, M. J., et al. Fundamental and Applied Toxicology, 1997, 36, 147)と比較した。本発明のこの態様により可能になる解析により、配列データではなく塩基組成データが提供されることから、種の解像度を最高にし、かつemm-分類の不明瞭さを最小にする標的領域を同定するための挑戦が行われた。Enrightら(Enright, M. C., et al. Infection and Immunity, 2001, 69, 2416-2427)の表2から得られるデータの組み合わせにより、以前にemm-型決定した212種の系統のそれぞれに由来する7種のハウスキーピング遺伝子の連結した対立遺伝子のアラインメントをバイオインフォマティックス的に構築し、そのうち101種が75の明りょうなemm-型を示す独特の配列であった。次いで、このアラインメントを解析し、厳密な意味での塩基組成データに基づく系統識別を最適にしうる、最適プライマー対数および位置を決定した。
【0178】
PCR産物のBCSの特定の例を、図24に示す。ここで、2種の異なるぬぐい液サンプル由来のgtrプライマー(ドリル-ダウンemm-タイピングプライマー)を使用して得られたPCR産物を、解析した(サンプル12-上およびサンプル10-下)。解析されたESI- FCTIRスペクトルにより、PCR産物の両鎖の正確な質量測定が得られ、それから一連の候補BCSを、測定値質量(そして測定値質量不確実性の範囲内で)から計算した。各鎖に由来する相補的な候補BCSの同定により、PCR産物のBCSの明確な特定のための手段が提供される。異なる2種のサンプルに由来する、BCSおよびPCR産物の各鎖についての分子量を、図24中に示す。この場合、BCSの決定の結果、Streptococcus pyogenesのemm-型が同定された-サンプル12が、emm-3型として同定され、そしてサンプル10がemm-6型として同定された。
【0179】
軍トレーニング施設でのGAS流行に関して6種のプライマー対、5'-emm遺伝子配列決定法、そしてMLST遺伝子配列決定法を使用した組成解析を行った結果を、図25において比較する。6種のプライマー対に関する塩基組成の結果から、5'-emm遺伝子配列決定法およびMLST配列決定法との完全な一致が示された。流行のピークに採取された51サンプルのうち、3サンプル以外のすべてが同一の組成を有し、そしてemm-3型に対応した。3種のサンプルは、すべて健康な個体から得られたものであるが、おそらくは無症候性キャリアにより保持されていた非-流行系統を示す。サンプル52〜80は、別の海軍トレーニング施設での海兵隊員から、以前の感染の際に得られたものであり、組成の特徴およびemm-型の不均質性がずっと高いものであることが示された。
【0180】
実施例19:塩基組成確率雲
図18は、Y. pestis、Y. psuedotuberculosis、S. typhimurium、S. typhi、Y. enterocolitica、E. coli K12、およびE. coli O 157:H7を含むエンテロバクテリアの塩基組成についての偽-4次元プロットを介して、塩基組成確率雲の概念を説明している。図18のプロットにおいて、A、CおよびGの組成は、x軸、y軸およびz軸にそれぞれ対応し、一方、Tの組成は、x、y、z座標の接合点での球体のサイズにより示される。特定の軸に関連する特定の核酸塩基組成を有することについての絶対的な要求性は存在しない。たとえば、プロットを、G、TおよびCの組成がx軸、y軸およびz軸にそれぞれ対応し、一方でAの組成がx、y、z座標の接合点での球体のサイズに対応している様に設計することができる。さらに、別の表示を、“偽4”次元、すなわちx、yおよびz座標の接合点での球体のサイズ以外のものにより行ってもよい。たとえば、矢印または矢頭などのベクター情報を有する記号を、偽4次元に対応する核酸塩基の組成に比例して変化する角度で回転させることができる。軸および偽4次元表示の選択は、典型的には、示されるデータを視覚的に最適化することを目的として行われる。
【0181】
類似の塩基組成確率雲解析は、一連のウィルスに関して、U. S.仮特許出願Serial No. 60/431,319(共有にかかりそして現在はその全体を参考文献として本明細書中に援用されている)において示された。この塩基組成確率雲解析において、近縁種のデングウィルス1〜4型を、互いに明確に識別することができる。この実施例は、BCS解析に基づく種の同定に関する、魅力的なシナリオを示唆するものである。というのも、RNAウィルスが高い変異頻度を有しており、近縁種を解析することが困難であると予測されているからである。しかしながら、この実施例において示されるように、塩基組成確率雲解析により補助されるBCS解析により、近縁のウィルス種の解析が可能になる。
【0182】
塩基組成確率雲を、偽-4次元プロットの代わりに、3次元プロットとして示すこともできる。そのような3次元プロットの例は、G、AおよびC組成をそれぞれx軸、y軸およびz軸に対応させる一方で、Tの組成は、プロットからはずしたプロットである。別のそのような事例は、4種の核酸塩基すべての組成が含まれているプロットである:G、AおよびC+T組成が、それぞれx軸、y軸およびz軸に対応した。偽-4次元プロットに関して、3次元プロットのための軸の選択は、典型的には、示されるデータを視覚的に最適化することを目的として行われる。
【0183】
実施例20:マススペクトロメトリーによる解析のための大きな増幅産物の生化学的プロセッシング
図26において示す事例において、E. coli(K12)中の16Sリボソーム遺伝子の986 bpの領域を増幅するプライマー対を、4種の制限酵素:BstNI、BsmFI、BfaI、およびNcoIの混合物により消化した。図26(a)は、複数の制限酵素断片の複数の荷電状態を含有する、得られたESI-FTICR質量スペクトルの複雑性を示す。中性の物質の質量解析に際して、スペクトルは顕著に単純化され、そして別個のオリゴヌクレオチド対であることが明らかである(図26b)。塩基組成が制限酵素断片の質量に由来する場合、ヌクレオチド1〜856の既知の配列に関して、完全な一致が見いだされる(図26c);この実施例において使用されるNcoI酵素のバッチは不活性であり、そして結果として間違った切断部位を生成し、そして使用された条件下での質量分析器の質量範囲からそれがはずれていたため、197-merの断片を検出させた。しかしながら興味深いことに、フォワード鎖およびリバース鎖は両方とも、2 ppmの予想分子量以内で、測定されたそれぞれの断片に関して検出され(それぞれ、実践および点線)、アンプリコン中の985ヌクレオチドのうち、788ヌクレオチドの塩基組成を明確に決定することができた。5'から3'の断片および3'から5'の断片の両方ともが、アンプリコンの最初の856ヌクレオチドにわたる断片に関して検出されることから、範囲マップ(coverage map)により、十分な範囲が提供される。
【0184】
このアプローチは、多くの場合において、MS-ベースのプロテオミクス研究において広く使用されているものと類似しており、この場合、大型の無傷タンパク質をトリプシンまたはその他のタンパク質分解性酵素で消化し、そしてタンパク質の正体が、トリプシンペプチドの測定値質量を理論的消化物と比較することにより得られる。このアプローチの独特な特徴は、各消化産物の相補鎖の正確な質量測定により、当業者は、各断片に関する新規の塩基組成を導き出すことができ、それを次に、“互いにつなぎ合わせ”て、より大型のアンプリコンに関して完全な塩基組成を導き出すことができる、という点である。このアプローチとゲルベースの制限酵素マッピングストラテジーとの間の重要な違いは、各断片の長さの決定に加えて、各制限酵素断片の明確な塩基組成が導かれる点である。したがって、断片中の一塩基置換(ゲル上では解析し得ない)を、このアプローチを使用して容易に観察することができる。この研究を7テスラのESI-FTICR質量分析器上で行ったので、2 ppmより良好な質量測定精度が、すべての断片について得られた。興味深いことに、相補的断片から明確な塩基組成を導くために必要とされる質量測定精度についての計算から、実施に必要とされる最高の質量測定精度は、139 bpの断片(ヌクレオチド525〜663)に関して、わずか15 ppmであることが示される。ほとんどの断片は、50〜70 bpのサイズの範囲に入っており、その場合には、明確な塩基組成決定のためには、わずか約50 ppmの質量精度が必要とされる程度である。このレベルの成績は、他のもっとコンパクトで、費用も安いESI-TOFなどのMSプラットフォームでも達成でき、そのことから、ここで開発された方法を、様々な診断分野およびヒト法医学的分野において幅広く使用することができることが示唆されている。
【0185】
この実施例は、より大きなPCR産物から塩基組成を導くための代替的アプローチを説明する。目的とするアンプリコンは、多数の系統変異体を包含し、それらのうちのいくつかの完全な配列が既知ではないため、各アンプリコンを数種の異なる酵素条件下で消化して、アンプリコンの診断的な情報的な領域が、制限酵素部位中の変異のために生じる“盲点”により不明瞭なものではないことを保証する。異なるマーカー由来のアンプリコンの塩基組成を、確信を持ってマッピングするため、そして使用されるべき制限酵素の組み合わせとそれらを混合物として最も効率的に使用する方法を決定するため、に必要とされる冗長性の程度を、決定することができる。これらのパラメータは、目的範囲が増幅された領域に渡り保存されている程度、消化プロトコル(バッファー、温度、時間)に関する様々な制限酵素の適合性、およびアンプリコン同士を識別するために必要とされる範囲の程度、により、解釈される。
【0186】
実施例21:オルソポックスウィルス属のウィルス数の同定
プライマー部位を、3種の必須ウィルス遺伝子-DNA依存性ポリメラーゼ(DdDp)、およびDNA依存性RNAポリメラーゼの2種のサブユニットAおよびB(DdRpAおよびDdRpB)上に同定した。オルソポックスウィルス属のウィルス数を同定するために設計したこれらのインテリジェントプライマーを、表12中に示す。ここで、Tp = 5'プロピニル化ウリジンであり、そしてCp = 5'プロピニル化シチジンである。
【0187】
【表12】

【0188】
図27に示すように、オルソポックスウィルス属の群の構成菌を、同定しそして互いに識別することができ、そしてDdRpB遺伝子に対して設計された1対のプライマーを使用して、ポックスウィルス科の他の構成菌から識別された。
【0189】
プライマーを、この属の中で非常に保存されている領域にわたって設計したため、これらの部位での配列変異による検出の失敗の可能性は、最小である。さらに、その他のウィルスまたはいずれかのその他のDNAを増幅することが予想されるプライマーは、GenBankにおいて利用可能なデータに基づけば、何もない。この方法を、脅威となるウィルス因子のすべての科について使用することができ、そしてオルソポックスウィルス属の構成菌には限定されない。
【0190】
実施例22:ウィルス性出血熱を引き起こすウィルスの同定
本発明にしたがって、様々なウィルスゲノム中の保存領域を使用し、これらの生物において小型ではあるがしかし非常に情報的な領域を増幅し、そしてその後、得られたアンプリコンをマススペクトロメトリーとデータ解析により解析する、いくつかの異なるウィルス種に及ぶ広範囲なPCRプライミングのアプローチを使用する。これらの領域を、生存因子について、またはそのゲノム構築物について、試験しうる。
【0191】
RNAウィルスの検出は、TIGERリポーターアンプリコンのPCR増幅の前に、逆転写(RT)工程を必要とする可能性がある。操作を最小にしつつ、スループットおよび収率を最大にするため、商業的な一工程逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)キットが、使用に関して評価されるだろう。必要な場合、反応のPCR部分について我々が選択したDNAポリメラーゼを使用する一工程RT-PCRミックスを、開発する。我々の試薬の成績において、変化がないことを確認するため、新しいロットの酵素、ヌクレオチドおよびバッファーをすべて、使用する前に個別に試験する。
【0192】
本明細書中に記載されているものに加えて、上述の記載から、当業者にとって、本発明の様々な修飾は明らかなものである。そのような修飾はまた、添付した特許請求の範囲の範囲内のものであることが意図される。本出願において引用されたそれぞれの参考文献は、その全体を参考文献として本明細書中に援用する。以下のUS出願は、その全体を参考文献として援用する:2003年9月11日に出願したSerial No.10/660,122、2002年12月18日に出願したSerial No. 10/323,233、2001年3月2日に出願したSerial No.09/798,007、2002年12月18日に出願したSerial No. 10/326,051、2002年12月18日に出願したSerial No. 10/325,527、2002年12月18日に出願したSerial No. 10/325,526、2002年12月6日に出願したSerial No. 60/431,319、2003年1月29日に出願したSerial No. 60/443,443、2003年1月30日に出願したSerial No. 60/443,788、、および2003年2月14日に出願したSerial No. 60/447,529。
【図面の簡単な説明】
【0193】
【図1A】図1Aは、本発明において使用するために適している、16S rRNA由来の保存的領域(図1A-1、1A-2、1A-3、1A-4、および1A-5)の事例を示す、コンセンサス図(consensus diagram)である。
【図1B】図1Bは、本発明において使用するために適している、23S rRNA由来の保存的領域(3'-側半分、図1B、1C、および1D;5'-側半分、図1E〜F)の事例を示す、コンセンサス図(consensus diagram)である。
【図1C】図1Cは、本発明において使用するために適している、23S rRNA由来の保存的領域(3'-側半分、図1B、1C、および1D;5'-側半分、図1E〜F)の事例を示す、コンセンサス図(consensus diagram)である。
【図1D】図1Dは、本発明において使用するために適している、23S rRNA由来の保存的領域(3'-側半分、図1B、1C、および1D;5'-側半分、図1E〜F)の事例を示す、コンセンサス図(consensus diagram)である。
【図1E】図1Eは、本発明において使用するために適している、23S rRNA由来の保存的領域(3'-側半分、図1B、1C、および1D;5'-側半分、図1E〜F)の事例を示す、コンセンサス図(consensus diagram)である。
【図1F】図1Fは、本発明において使用するために適している、23S rRNA由来の保存的領域(3'-側半分、図1B、1C、および1D;5'-側半分、図1E〜F)の事例を示す、コンセンサス図(consensus diagram)である。
【図1G】図1Gは、本発明において使用するために適している、23S rRNA Domain I由来の保存的領域(図1G)の事例を示す、コンセンサス図(consensus diagram)である。
【図1H】図1Hは、本発明において使用するために適している、23S rRNA Domain IV由来の保存的領域(図1H)の事例を示す、コンセンサス図(consensus diagram)である。図1および図2において、矢印は、PCR用のインテリジェントプライマー対を設計した領域の例である。それぞれのプライマー対用の標識は、コンセンサス図上の増幅領域の最初の塩基番号および最後の塩基番号を示す。大文字の塩基は、95%より高く保存されているものである;小文字の塩基は、90〜95%保存されているものである;黒丸は80〜90%保存されているものである;そして白丸は80%未満保存されているものである。それぞれのプライマー対の標識は、コンセンサス図上の増幅領域の最初の塩基番号および最後の塩基番号を示す。16S rRNAコンセンサス配列のヌクレオチド配列はSEQ ID NO: 3であり、そして23S rRNAコンセンサス配列のヌクレオチド配列はSEQ ID NO: 4である。
【図2】図2は、本発明において使用するために適している、16S rRNADomain III由来の保存的領域(図2)の事例を示す、コンセンサス図(consensus diagram)である。図2は、図1A-1において示された16S rRNA Domain III由来の典型的なプライマー増幅領域を示す。
【図3】図3は、RNase Pにおける保存領域を示すスキーム図である。大文字の塩基は、90%より高く保存されているものである;小文字の塩基は、80〜90%保存されているものである;黒丸は、70〜80%保存されている塩基を示す;そして白丸は、70%未満保存されている塩基を示す。
【図4】図4は、ヌクレオチドアナログ“タグ”を使用して塩基組成の特徴を決定した、塩基組成の特徴決定のスキーム図である。
【図5】図5は、質量タグホスホロチオエートA(A*)を有するBacillus anthracis領域および質量タグホスホロチオエートA(A*)を有しないBacillus anthracis領域の簡略化マススペクトルを示す。2種のスペクトルは、質量タグ含有配列の測定分子量が、被修飾配列と比べて大きい点で異なる。
【図6】図6は、同一のプライマーを使用して増幅した、Staphylococcus aureus(S. aureus 16S_1337F)およびBacillus anthracis(B. anthr. 16S_1337F)由来のPCR産物から得た塩基組成の特徴(BCS)スペクトルを示す。2種の鎖は、わずか2つの(AT→CG)置換の相違であり、そしてそれらのBCSに基づいて、明確に区別される。
【図7】図7は、2種の配列(B. anthracisのA14 vs.B. cereusのA15)のあいだの一つの相違を、ESI-TOFマススペクトロメトリーを用いて容易に検出できることを示す。
【図8】図8は、Bacillus anthracis芽胞被覆タンパク質sspE 56mer+calibrantのESI-TOFである。シグナルは、B.anthracisとその他のBacillus種とを明確に区別する。
【図9】図9は、B. anthracisの合成16S_1228二本鎖(リバース鎖およびフォワード鎖)のESI-TOFである。この技術は、フォワード鎖とリバース鎖とを容易に区別する。
【図10】図10は、合成B. anthracis 16S_1337の46塩基対二本鎖のESI-FTICR-MSである。
【図11】図11は、内部質量標準と一緒にした、B. anthracis saspB遺伝子由来の56merオリゴヌクレオチドのESI-TOF-MS(3回スキャン)である。内部質量標準は、アスタリスクで示した。
【図12】図12は、5 mM TBA-TFAバッファーを用いた内部標準のESI-TOF-MSであり、トリブチルアンモニウムトリフルオロアセテートでの電荷はぎ取り反応(charge stripping)により、[M-8H+] 8-から[M-3H+] 3-までのもっとも豊富な電荷が減少することを示す。
【図13】図13は、本発明の一態様に従う、二次構造を明示するデータベースの一部である。ここで、選択された配列の2つの事例を、その下に図式的に示す。
【図14】図14は、種に従うサンプル分子量のグループ化を示す三次元グラフである。
【図15】図15は、ウィルス種および感染した哺乳動物種に従う、サンプル分子量のグループ化を示す三次元グラフである。
【図16】図16は、ウィルス種、および感染性因子の動物由来に従う、サンプル分子量のグループ化を示す三次元グラフである。
【図17】図17は、本発明の三角法的(triangulation)方法がどのようにして未知因子の事前知識なしに、未知生体物質の同定をもたらすのかを示す図である。異なるプライマーセットを使用して、未知のものを識別しそして同定することは、この図中のプライマーセットI、IIおよびIIIとしても示される。三次元グラフは、未知の生体物質を含む、すべての生体物質空間(170)を示し、これは本発明の方法にしたがってプライマーセットI(171)を使用した後、さらにプライマーセットII(172)を使用してさらに解析した際に未知因子(177)をその他の既知因子(173)から識別する、主要な分類にしたがって、生体物質を識別しそして分類し(176)、そして最終的に、第三のプライマーセット(175)を使用することにより、さらに未知ファミリー(174)内部の部分グループをさらに特定する。
【図18】図18は、エンテロバクテリアの集団由来のRNAポリメラーゼB遺伝子の領域についての代表的な塩基組成確率雲を示す。暗い球状(dark spheres)は、生物の実際の塩基組成を示す。明るい球状(lighter spheres)は、同一種生物の異なる単離株において観察される塩基組成間の転移を示す。
【図19】図19は、RNAポリメラーゼB(rpoB)を標的とするプライマーを用いたエンテロバクテリア構成細菌の解析を示す。rpoB中の超可変領域を標的とする1対のプライマーが、属レベル(Salmonella〜Escherichia〜Yersinia)、ならびに種/系統レベル(E. coli K12〜0157)でのこの群のほとんどの構成細菌を決定するために十分であった。Y. pestisを除くすべての生物を、研究室において試験し、そして測定塩基カウント(矢印で示す)は、すべての事例における予想と一致していた。
【図20】図20は、血液中のS aureusの検出を示す。右側のスペクトルは、スパイクされたウェルA1およびA4におけるS. aureusの検出に対応するシグナルを示すが、対照ウェルA2およびA3においては何も検出されなかった。
【図21】図21は、ヘキソン遺伝子上の一プライマー対領域についてのヒトアデノウィルス系統型の代表的な塩基組成分布を示す。丸印は、プライマー設計のために使用した、我々のデータベース中の異なるアデノウィルス配列を示す。各未知サンプルA、B、CおよびDについての質量および塩基カウントの測定が、1またはそれ以上の既知のアデノウィルス群と適合した。
【図22】図22は、Streptococcus pyogenes(A群Streptococcus:GAS)のemm-タイピングに適用される場合の、代表的な広範囲サーベイ/ドリル-ダウンプロセスを示す。遺伝物質は、抽出され(201)そして広範囲サーベイプライマーを使用して増幅される(202)。増幅産物を解析し(203)、種レベルでの生体物質の存在および正体を決定する。Streptococcus pyogenesが検出される場合(204)、emm-タイピング“ドリル-ダウン”プライマーを使用して抽出物を再試験し、サンプルのemm-型を同定する(205)。別の組み合わせのドリル-ダウンプライマーを使用して、様々な生体物質の様々な系統についての亜種特徴を決定することができる(206)。
【図23】図23は、軍の人員から得た咽頭ぬぐい液において、16S rRNAに対する広範囲プライマー対を使用して、検出された生体物質の代表的な塩基組成分布を示す。
【図24】図24は、それぞれemm型3および6に対応するサンプル12(上)および10(下)についてgtrプライマーにより生成したPCR産物の、解析された代表的なESI-FTICRスペクトルを示す。正確な質量測定値を、内部質量標準を使用してそして各スペクトルを後較正することにより得た;各鎖についての実験的質量測定値不確実性は、+0.035ダルトン(1 ppm)である。測定された分子内の各鎖のすべての予想塩基組成(そして測定された質量の不確実性)を計算することにより、そして質量測定値不確実性内での相補対を選択することにより、アンプリコンの明確な塩基組成を決定した。すべての事例において、25 ppm中にわずか1つの塩基組成が存在した。左に示した鎖間の測定された質量の相違、15.985 Daは、AからGへの置換に関して予想された理論的質量差である15.994 Daと非常によく一致している。
【図25】図25は、軍のトレーニングキャンプでのStreptococcus pyogenes(A群streptococcus;GAS)の発生に関する、6種のプライマー対を使用した咽頭ぬぐい液サンプルでの塩基組成解析、5'-emm遺伝子配列決定、および本発明のMLST遺伝子配列決定方法の代表的な結果を示す。
【図26】図26は、:a)BstNI、BsmFI、BfaI、およびNcoIの混合物で消化したE. coli K12由来の、16Sリボソーム遺伝子の986 bp領域の制限酵素消化物の代表的なESI-FTICR質量分析;b)各断片の正確な質量測定値に由来する塩基組成を示す、上述のスペクトルの解析された表示(天然の質量);そしてc)ヌクレオチド1〜856についての完全な塩基組成範囲を示す代表的な再現制限酵素地図、を示す。NcoIは、切断しなかった。
【図27】図27は、DNA-依存性ポリメラーゼB遺伝子(DdDpB)上の1プライマー対領域についてのポックスウィルスの代表的な塩基組成分布を示す。丸は、プライマー設計のために使用した異なるポックスウィルス配列を示す。
【配列表】




































































































































【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的サンプル中の病原体を同定する方法であって、以下の工程:
生物学的サンプルから得られた少なくとも1つの核酸分子を、少なくとも一対のインテリジェントプライマーを用いて増幅し、少なくとも1つの増幅産物を得る工程;そして
少なくとも1つの増幅産物の分子量を決定する工程、ここで、前記分子量は、生物学的サンプル中の病原体を同定する;
を含む、前記方法。
【請求項2】
病原体が、細菌、ウィルス、寄生虫、または真菌である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
生物学的サンプルが、血液、粘液、毛髪、尿、呼気、糞便、または組織バイオプシーである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
生物学的サンプルが、動物から得られるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
動物がヒトである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
分子量を、質量分析法により決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
質量分析法がフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴マススペクトロメトリー(FTICR-MS)、イオン捕捉、四極子、磁気セクタ、飛行時間(TOF)、Q-TOF、または三対(triple)四極子である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
インテリジェントプライマーが、リボソームRNAまたはハウスキーピング遺伝子を標的とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
分子量を使用して、前記増幅産物の塩基組成を決定し、そしてここで前記塩基組成が前記病原体を同定する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
生物学的サンプル中の病原体を同定する方法であって、以下の工程:
生物学的サンプルから得られた少なくとも1つの核酸分子を、少なくとも1対のインテリジェントプライマーを用いて増幅して、少なくとも1つの増幅産物を得る工程;
少なくとも1つの増幅産物を、制限酵素を使用して消化して、複数の制限酵素消化産物を作製する工程;そして
少なくとも1つの消化産物の分子量を決定する工程;ここで分子量が生物学的サンプル中の病原体を同定する;
を含む、前記方法。
【請求項11】
前記分子量を使用して、前記制限酵素消化産物の塩基組成を決定し、そしてここで前記塩基組成が前記病原体を同定する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
個体における疾患の複数の病因因子(etiologic agents)を同定する方法であって、以下の工程:
個体由来の生物学的サンプルから得られた少なくとも1つの核酸分子を複数のインテリジェントプライマーを使用して増幅して、複数の病因因子に対応する複数の増幅産物を得る工程;そして
複数の増幅産物の分子量を決定する工程;ここで分子量が複数の病因因子を同定する;
を含む、前記方法。
【請求項13】
病因因子が、細菌、ウィルス、寄生虫、または真菌、またはこれらの組み合わせである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
生物学的サンプルが、血液、粘液、毛髪、尿、呼気、糞便、または組織バイオプシーである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
生物学的サンプルが動物から得られる、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
動物がヒトである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
分子量が、質量分析法により決定される、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
質量分析法が、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴マススペクトロメトリー(FTICR-MS)、イオン捕捉、四極子、磁気セクタ、飛行時間(TOF)、Q-TOF、または三対(triple)四極子である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
分子量を使用して増幅産物の塩基組成を決定し、そしてここで塩基組成が病原体を同定する、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
複数の生体物質を同定するためのインテリジェントプライマーセットのin silicoスクリーニングを行うための方法であって、以下の工程:
in silicoで生成された複数の生体物質の複数の塩基組成の特徴に由来する塩基組成確率雲プロットを調製する工程;
異なる生体物質に由来する雲の重複について、塩基組成確率雲プロットを精査する工程;そして
雲の重複を最小にすることに基づいてプライマーセットを選択する工程;
を含む、前記方法。
【請求項21】
それまでは未知の塩基組成の特徴を有する生体物質の正体を予想する方法であって、以下の工程:
既知の生体物質の複数の塩基組成の特徴およびそれまでは未知の塩基組成から塩基組成確率雲プロットを調製する工程;
それまでは未知の塩基組成の、既知の生体物質の雲との重複について塩基組成確率雲を精査する工程、ここで、重複が、それまでは未知の塩基組成の特徴を有する生体物質の正体が、既知の生体物質であることを予想する;
を含む、前記方法。
【請求項22】
それまでは未知の塩基組成の特徴が、塩基組成の特徴のデータベース中に入力され、そして既知の生体物質の塩基組成確率雲を含むその後の解析に含まれる、請求項21に記載の方法。

【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公表番号】特表2006−508696(P2006−508696A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−508488(P2005−508488)
【出願日】平成15年12月5日(2003.12.5)
【国際出願番号】PCT/US2003/038830
【国際公開番号】WO2004/052175
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(595104323)アイシス・ファーマシューティカルス・インコーポレーテッド (53)
【氏名又は名称原語表記】Isis PharmaceuticalsInc
【Fターム(参考)】