説明

ヒトの毛髪を着色するための天然染料の使用

本発明の目的は、毛髪の性質を尊重し、強烈で、あまり選択性ではなく、耐性の染料を有し、各種の色合いを与えても良い新規で強烈な染色を生成可能である、新規なヒトの毛髪の染色用組成物を提供することである。
この目的は本発明によって達成され、本発明の一つの主題は、一つ以上の天然染料及び15MPa1/2以下のハンセン溶解度パラメーターδHのδH値を有するアルコール、エーテル、またはエステルから選択される一つ以上の有機溶媒を含む、ケラチン線維、特に毛髪の着色用組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一つの主題は、ヒトの毛髪を着色するための天然染料の使用である。
【背景技術】
【0002】
一般的に酸化ベースと称される酸化染料前駆体、例えばオルト-またはパラ-フェニレンジアミン、オルト-またはパラ-アミノフェノール、及び複素環化合物を含む染色組成物で、ケラチン線維、特にヒトの毛髪を染色することが既知である。これらの酸化ベースは、一般的にカップラーと組み合わされる。これらのベース及びこれらのカップラーは、無色または弱く着色された化合物であり、酸化物質と組み合わされると、酸化縮合反応を介して、着色された化合物を生ずるであろう。
【0003】
このタイプの酸化による着色は、永続的な着色を得ることを可能にするが、酸化剤の使用を介してケラチン線維の劣化を導くものである。
【0004】
更に、直接染料を含む染色組成物で、ケラチン線維、特にヒトの毛髪を染色することが既知である。使用されている従来の染料は、特にニトロベンゼン、アントラキノン、ニトロピリジン、アゾ、アゾ、キサンテン、アクリジン、アジン、またはトリアリールメタンタイプの染料、あるいは天然染料である。これらの染料は、非イオン性、アニオン性、カチオン性、または両性であって良い。着色されるこれらの染料及び着色分子は、ケラチン線維に対する親和性を有する。
【0005】
一つ以上の直接染料を含むこれらの組成物は、所望の着色を得るのに必要な時間ケラチン線維に適用され、次いですすがれる。
【0006】
それらから由来する着色は特に発色性の着色であるが、ケラチン線維に対して直接染料を結合する相互作用の性質のため、その着色は一時的または半永久的であり、線維の表面及び/またはコアからの脱着が、それらの低い染色力と、洗浄または発汗に対する低い耐性に関与している。
【0007】
文献FR2549721は、天然染料由来の着色を記載している。しかしながらこの文献に記載された毛髪染色方法は、生成した着色の良好な耐性を得るために、金属塩での事前処理工程を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】FR2549721
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、毛髪の性質を尊重し、強烈で、あまり選択性ではなく、耐性の染料を有し、各種の色合いを与えても良い新規で強烈な染色を生成可能である、新規なヒトの毛髪の染色用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は本発明によって達成され、本発明の一つの主題は、一つ以上の天然染料及び15MPa1/2以下のハンセン溶解度パラメーターδHのδH値を有するアルコール、エーテル、またはエステルから選択される一つ以上の有機溶媒を含む、ケラチン線維、特に毛髪の着色用組成物である。
【0011】
本発明の別の主題は、一つ以上の天然染料を含む第一の無水組成物と第二の水性組成物とを含むキットであって、第一及び/または第二の組成物が、15MPa1/2以下のハンセン溶解度パラメーターδHの値を有するアルコール、エーテル、またはエステルから選択される一つ以上の有機溶媒を含む、キットである。
【0012】
本発明の別の主題は、事前処理を含まない毛髪の着色のための特定の方法である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
用語「天然染料」は、天然に存在するいずれかの染料または染料前駆体を意味するように解され、任意に灰またはアンモニアのような天然化合物の存在下で、植物マトリックスから抽出(及び任意に精製)によって、あるいは化学的合成によってのいずれかで生産される。
【0014】
天然染料として、キノン染料(ローソン、ジュグロン等)、アリザリン、パープリン、カルミン酸、ケルメス酸、パープロガリン、プロトカテクアルデヒド、インジゴ、クルクミン、スピヌロシン、各種のタイプのクロロフィル及びクロロフィリン、オルセイン、ヘマテイン、ヘマトキシリン、ブラジリン、ブラジレイン、サフラワー染料(例えばカルタミン)、フラボノイド(モリン、アピゲニジン、サンダルウッド)、アントシアン(例えばアピゲニニジン)、カロテノイド、タンイン、好ましくはローソン、ジュグロン、アリザリン、パープリン、カルミン酸、ケルメス酸、パープロガリン、プロトカテクアルデヒド、インジゴ、イサチン、クルクミン、スピヌロシン、アピゲニジン、クロロフィリン、ソルガム、オルセイン、及びコチニールカルミンが挙げられる。これらの天然染料を含む抽出物または煎出物、特にヘンナベースの抽出物の使用も可能である。
【0015】
一つの特定の実施態様によれば、本発明の組成物は、一つ以上のオルセインを含む。一つの変形例によれば、前記組成物は、一つ以上のオルセインと、クルクミン、クロロフィリン、イサチン、ソルガム、及びコチニールカルミンから選択される一つ以上の更なる天然染料とを含む。
【0016】
オルセインは、地衣類、特にオルチルの抽出物から得られる染料であり、任意に特にアンモニアの作用により化学的に変性される。
【0017】
オルセインは、特に下式(I)に対応する:
【化1】

[式中、R’は水素原子、ヒドロキシルまたはアルキル基で置換されたベンゼン基を表し、RはNHまたはOHを表し、Eは酸素原子またはNH基を表す]。
【0018】
一つの特定の実施態様によれば、R’は水素、または
【化2】

[式中は式(I)の残りに対して前記基を連結する共有結合を表す]
から選択される。
【0019】
例として、式(I)のオルセインについて、R’が水素原子を表し、Eが酸素原子を表し、RがNH基を表すα−アミノオルセイン、R’が水素原子を表し、Eが酸素原子を表し、Rがヒドロキシル基を表すα−ヒドロキシオルセインが挙げられる。
【0020】
R’が(a)を表す場合、RがNH基を表し、Eが酸素原子を表すβ−アミノオルセイン、RがOHを表し、Eが酸素原子を表すβ−ヒドロキシオルセイン、RがNH基を表し、EがNH基を表すβ−アミノオルセインイミンが挙げられる。
【0021】
R’が(b)を表す場合、RがNH基を表し、Eが酸素原子を表すγ−アミノオルセイン、RがOHを表し、Eが酸素原子を表すγ−ヒドロキシオルセイン、RがNH基を表し、EがNHを表すγ−アミノオルセインイミンが挙げられる。一つの特定の実施態様によれば、本発明で使用されるオルセインは、α−ヒドロキシオルセインである。
【0022】
これらのオルセインは、特に以下の文献:H. Musso, Chemische Berichte, 1959, 92, 751-753, Chemische Berichte 1960, 93, 1782-1788、及びChemische Berichte, 1957, 90, 2190-2194に記載されている。
【0023】
オルセインの例として、ORCEIN DCの名称でPancreac社により提案されている製品が挙げられる。
【0024】
本発明の組成物で使用されて良い天然染料の量は、一般的に組成物の全重量に対して0.001から20重量%の間、好ましくは0.1から10重量%の間である。
【0025】
上述のようなハンセン溶解度パラメーターδHの値を有する有機溶媒は、例えば参考文献"Hansen solubility parameters - A user's handbook" Charles M. Hansen, CRC Press, 2000, 167-185頁に記載されている。
【0026】
この値は、水素結合の形成に関連する溶解度パラメーターδHを考慮している。非極性相互作用、永久双極子−双極子相互作用、及び水素結合タイプの相互作用の3種の主たるタイプの相互作用が存在することが想起され、後者は本発明の有機溶媒を規定するパラメーターの主題である。
【0027】
この定義に対応する溶媒の例として、プロピレングリコール誘導体、ベンジルアルコール、及びアルキレンカーボネートが挙げられる。
【0028】
特に、以下の化合物が挙げられる:
【表1】

【0029】
好ましくは、エーテルは、一つ以上の遊離アルコール官能基を有するアルコールエーテルである。
【0030】
エステルは、特にエーテルエステルである。
【0031】
好ましくは、本発明の溶媒は、プロピレングリコールモノエーテル、及びベンジルアコールである。
【0032】
アルキレンカーボネートとして、以下の化学式の化合物が挙げられる:
【化3】

[式中、R=H、C−Cアルキル、またはC−Cヒドロキシアルキル]。
【0033】
例として、エチレンカーボネート(R=H)、プロピレンカーボネート(R=CH)、グリセロールカーボネート(R=CHOH)、またはブチレンカーボネート(R=CHCH)が挙げられる。本発明のアルキレンカーボネートとしては、プロピレンカーボネートが好ましい。
【0034】
一つの特定の実施態様によれば、δH値は、好ましくは14未満、より好ましくは12未満、更に好適には10未満である。一つの特に好ましい実施態様によれば、成分δHの値は0より大きい。一つの変形例によれば、δHの値は、3より大きく、好ましくは4より大きい。
【0035】
本発明の組成物は一般的に、組成物の全重量の0.1から80%の間、好ましくは0.5から50%の間、更により好ましくは1から30%の間の本発明で使用される有機溶媒の量を含む。
【0036】
好ましくは水の量は、染色組成物の全重量に対して少なくとも40%に等しい。より好ましくは、この水の量は少なくとも70%に等しい。
【0037】
一つの特定の実施態様によれば、ケラチン線維を染色するのに適した媒体は、組成物の全重量に対して少なくとも70重量%の水を含む。
【0038】
本発明の染色組成物は、上述のようなハンセン溶解度パラメーターの成分δHの値に対応しない更なる有機溶媒を含んでも良い。例として、C−C低級アルカノール、例えばエタノール及びイソプロパノール;ポリオール、例えばプロピレングリコール、またはグリセロール、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0039】
ヒトのケラチン線維、例えば毛髪の染色のために、染色媒体は化粧品的に適切な媒体である。
【0040】
本発明の組成物中の溶媒の全量は、組成物の全重量に対して約0.1から80重量%の間、より好ましくは0.5から50重量%の間、更により好ましくは組成物の全重量の1から30重量%の間で変化してよい。
【0041】
染色組成物はまた、一つ以上の酸化染料前駆体:一つ以上の酸化ベース及び/または一つ以上のカップラーを含んで良い。例として、酸化ベースは、パラ−フェニレンジアミン類、ビス−フェニルアルキレンジアミン類、パラ−アミノフェノール類、オルト−アミノフェノール類、複素環ベース、及びそれらの付加塩から選択される。
【0042】
存在する酸化ベースは、一般的に染色組成物の全重量の約0.001から20重量%の範囲、好ましくは0.005から6重量%の範囲の量で存在する。
【0043】
前記組成物は、ケラチン繊維の染色のために従来使用されている一つ以上のカップラーを含んでも良い。これらのカップラーとして、特にメタ−フェニレンジアミン類、メタ−アミノフェノール類、メタ−ジフェノール類、ナフタレンカップラー、複素環カップラー、及びそれらの付加塩が挙げられる。
【0044】
カップラーは一般的に、染色組成物の全重量の約0.001から20重量%の範囲、好ましくは0.005から6重量%の範囲の量で存在する。
【0045】
一般的に、本発明の文脈で使用できる酸化ベース及びカップラーの付加塩は、特に塩酸、臭酸、硫酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、トシレート、ベンゼンスルホン酸、リン酸、及び酢酸のような酸との付加塩、並びに水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、アミン、若しくはアルカノールアミンのような塩基との付加塩から選択される。
【0046】
使用できる組成物は、特に中性の、酸性の、若しくはカチオン性のニトロベンゼン染料、中性の、酸性の、若しくはカチオン性のアゾ直接染料、アジン直接染料、トリアリールメタン直接染料、またはインドアミン直接染料から選択されて良い一つ以上の更なる直接染料を含んでも良い。
【0047】
一つの特定の実施態様によれば、本発明の組成物は、染料として、天然染料のみを含む。
【0048】
使用できる組成物は、毛髪の染色用組成物で従来使用されている各種のアジュバント、例えばアニオン性、非イオン性、カチオン性、両性、若しくは両イオン性ポリマー、またはそれらの混合物、抗酸化剤、浸透剤、金属イオン遮蔽剤、香料、バッファー、分散剤、コンディショニング剤、皮膜形成剤、セラミド、防腐剤、または不透明化剤を取り込んでも良い。
【0049】
コンディショニング剤として、分枝状または非分枝状の、揮発性または不揮発性の、直鎖状または環状シリコーンが挙げられる。これらのシリコーンはオイル、樹脂、またはゴムの形態で存在してよく、それらは特に、化粧品的に許容可能な媒体中に不溶性であるポリオルガノシロキサンであって良い。
【0050】
オルガノポリシロキサンは、Walter Nollによる文献, "Chemistry and Technology of Silicones" (1968) Academic Pressにより詳細に規定されている。それらは揮発性または不揮発性であって良い。
【0051】
それらが揮発性である場合、シリコーンはとりわけ60℃から260℃の間の沸点を有するものから選択される。
【0052】
コンディショニング剤として、ポリクオタニウム22、6、10、11、35及び37のようなポリマー、並びに塩化ヘキサジメスリンの使用が挙げられる。
【0053】
本発明で使用される組成物中のコンディショニング剤の濃度は、組成物の全重量に対して0.01から10重量%、好ましくは0.05から5重量%、より好ましくは0.1から3重量%で変化してよい。
【0054】
本発明で使用される組成物は、更に、「レオロジー調節剤」としても既知の少なくとも一つの増粘剤を含んでも良い。この剤は無機または有機であって良い。
【0055】
有機増粘剤は、脂肪酸アミド(ココナッツジエタノールアミドまたはモノエタノールアミド、オキシエチレン化アルキルエーテルカルボン酸モノエタノールアミド)、ポリマー状増粘剤、例えばセルロース増粘剤(ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース)、グアゴム及びその誘導体(ヒドロキシプロピルグア)、微生物起源のゴム(キサンタンゴム、スクレログルカンゴム)、アクリル酸またはアクリルアミドプロパンスルホン酸で架橋されたホモポリマー、及び中性、アニオン性、両性、またはカチオン性会合ポリマー(水性媒体中で互いとまたは他の分子と可逆的に会合可能な、親水性領域と脂肪鎖を有する疎水性領域とを含むポリマー)から選択されて良い。
【0056】
一つの特定の実施態様によれば、増粘剤はポリマー状であり、セルロース増粘剤(ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース)、グアゴム及びその誘導体(ヒドロキシプロピルグア)、微生物起源のゴム(キサンタンゴム、スクレログルカンゴム)、アクリル酸またはアクリルアミドプロパンスルホン酸で架橋されたホモポリマーから選択される。
【0057】
使用される組成物は更に、一つ以上の界面活性剤を含んでも良い。
【0058】
本発明における使用のために適切な界面活性剤は、特に以下のものである:
【0059】
(i)アニオン性界面活性剤
本発明の範囲内で単独でまたは混合物として使用できるアニオン性界面活性剤の例として、以下の化合物の塩(特にアルカリ金属、特にナトリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩、アミノアルコール塩、またはマグネシウム塩)が、非制限的なリストとして挙げられる:アルキルスルフェート、アルキルエーテルスルフェート、アルキルアミドエーテルスルフェート、アルキルアリールポリエーテルスルフェート、モノグリセリドスルフェート;アルキルスルホネート、アルキルホスフェート、アルキルアミドスルホネート、アルキルアリールスルホネート、α−オレフィンスルホネート、パラフィンスルホネート;(C−C24)アルキルスルホスクシネート、(C−C24)アルキルエーテルスルホスクシネート;(C−C24)アルキルアミドスルホスクシネート;(C−C24)アルキルスルホアセテート;(C−C24)アシルサルコシネート及び(C−C24)アシルグルタメート。(C−C24)アルキルポリグリコシドカルボン酸エステル、例えばアルキルグルコシドシトレート、アルキルポリグリコシドタートレート、及びアルキルポリグリコシドスルホスクシネート、アルキルスルホスクシナメート;アシルイセチオネート及びN−アシルタウレート(これらの各種の化合物のアルキル基またはアシル基は好ましくは12から20の炭素原子を含み、アリール基は好ましくはフェニルまたはベンジル基を表す)もまた挙げられる。使用できるアニオン性界面活性剤としては、脂肪酸の塩、例えばオレイン酸、リシノール酸、パルミチン酸、及びステアリン酸、ココナッツオイルまたは水素化ココナッツオイルの酸の塩;及び8から20の炭素原子を含むアシル基を有するアシルラクチレートも挙げられる。アルキルD−ガラクトシドウロン酸及びその塩、ポリオキシアルキレン化(C−C24)アルキルエーテルカルボン酸、ポリオキシアルキレン化(C−C24)アルキルアリールエーテルカルボン酸、ポリオキシアルキレン化(C−C24)アルキルアミノエーテルカルボン酸、及びそれらの塩、特に2から50のアルキレン、特にエチレンオキシド基を含むもの、ならびにそれらの混合物もまた挙げられる。
【0060】
(ii)非イオン性界面活性剤
非イオン性界面活性剤は、それ自体本質的に周知である化合物である(この点で、特に"Handbook of Surfactants", M.R. Porter著, Blackie & Son出版(Glasgow and London), 1991, pp. 116-178)。かくしてそれらは、ポリエトキシル化またはポリプロポキシル化され、例えば8から18の炭素原子を含む脂肪鎖を有し、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシド基の数が特に2から50まで変化する、アルコール、α−ジオールまたはアルキルフェノールから選択されて良い(非制限的なリストである)。エチレン及びプロピレンオキシドのコポリマー、エチレン及びプロピレンオキシドと脂肪アルコールとの重縮合物;2から30モルのエチレンオキシドを好ましくは有するポリエトキシル化脂肪アミド、平均で1から5、特に1.5から4のグリセロール基を含むポリグリセロール化脂肪アミド;2から30モルのエチレンオキシドを有するソルビタン脂肪酸のオキシエチレン化エステル;スクロース脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド、N−アルキルグルカミン誘導体、アミンオキシド、例えば(C10−C14)アルキルアミンのオキシド、またはN−アシルアミノプロピルモルホリンのオキシドも挙げられる。
【0061】
(iii)両性または両イオン性界面活性剤:
両性または両イオン性界面活性剤は、志望族第二級または第三級アミンの誘導体で、脂肪族基は、8から18の炭素原子を含み、少なくとも一つの水溶解性アニオン性基(例えばカルボキシレート、スルホネート、スルフェート、ホスフェート、またはホスホネート)を含む直鎖状または分枝状の鎖であるものであって良い;(C−C20)アルキルベタイン、スルホベタイン、(C−C20)アルキルアミド−(C−C)アルキルベタイン、または(C−C20)アルキルアミド(C−C)アルキルスルホベタインが挙げられる。
【0062】
アミン誘導体としては、特許US2528378及びUS2781354に記載され、CTFA辞書、第3版、1982においてアンホカルボキシグリシネート及びアンホカルボキシプロピオネートの名称で分類される、MIRANOLの名称で市販されている製品が挙げられる。
【0063】
これらの化合物は、CTFA辞書、第5版、1993において、ココアンホ二酢酸二ナトリウム、ラウルアンホ二酢酸二ナトリウム、カプリルアンホ二酢酸二ナトリウム、カプリロアンホ二酢酸二ナトリウム、ココアンホ二プロピオン酸二ナトリウム、ラウロアンホ二プロピオン酸二ナトリウム、カプリロアンホ二プロピオン酸二ナトリウム、ラウロアンホ二プロピオン酸、ココアンホ二プロピオン酸の名称で分類されている。
【0064】
例として、Rhodia Chimie社によりMIRANOL(登録商標)C2Mの商標名で市販されているココアンホ二酢酸塩が挙げられる。
【0065】
(iv)カチオン性界面活性剤:
カチオン性界面活性剤として、特に以下のものが非制限的なリストとして挙げられる:任意にポリオキシアルキレン化された、第一級、第二級、または第三級脂肪アミンの塩;第四級アンモニウム塩、例えばテトラアルキルアンモニウム、アルキルアミドアルキルトリアルキルアンモニウム、トリアルキルベンジルアンモニウム、トリアルキルヒドロキシアルキルアンモニウム、またはアルキルピリジニウムクロリド若しくはブロミド;イミダゾリン誘導体;またはカチオン性質を有するアミンのオキシド。
【0066】
本発明の方法で使用される組成物中に存在する界面活性剤の量は、組成物の全重量に対して0.01から40%、好ましくは0.5から30%で変化してよい。
【0067】
ケラチン線維に適用される組成物のpHは、一般的に2から13の間、好ましくは3から8の間である。ケラチン線維の染色で通常使用される酸性化剤または塩基性化剤を使用して、または従来のバッファーシステムを使用して、pHは所望の値に調節されて良い。
【0068】
酸性化剤として、例として、無機または有機酸、例えば塩酸、オルト−リン酸、硫酸、カルボン酸、例えば酢酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、及びスルホン酸が挙げられる。
【0069】
塩基性化剤として、例として、水酸化アンモニウム、炭酸アルカリ金属、アルカノールアミン、例えばモノ−、ジ−、及びトリエタノールアミン、並びにそれらの誘導体、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、下式(ii)の化合物が挙げられる:
【化4】

[式中、Wは、ヒドロキシル基またはC−Cアルキル基によって任意に置換されたプロピレン基であり;Ra、Rb、Rc及びRdは、同一または異なっても良く、水素原子、C−Cアルキル基、またはC−Cヒドロキシアルキル基を表す]。
【0070】
前記組成物が少なくとも一つの酸化染料前駆体を含む場合、または明色化染料を使用することが所望される場合、酸化剤が使用されて良い。
【0071】
ケラチン線維の酸化染色のために従来使用される酸化剤は、例えば過酸化水素、過酸化尿素、臭酸アルキル金属、過塩、例えば過ホウ酸塩及び過流酸塩、過酸、及びオキシダーゼ酵素、例えばぺルオキシダーゼ、2−電子オキシレダクターゼ、例えばウリカーゼ、及び4−電子オキシゲナーゼ、例えばラッカーゼである。過酸化水素が特に好ましい。
【0072】
この酸化剤は、本発明で使用される組成物中に存在しても良いし、酸化組成物の形態で独立に適用されても良い。
【0073】
酸化組成物は更に、毛髪の染色のために従来使用されている上述のような各種のアジュバントを取り込んでも良い。
【0074】
本発明によれば、組成物のリーブイン時間は、一般的に1分から1時間の間である。
【0075】
ヒトの毛髪に、一つ以上の天然染料、特にオルセインを含む組成物を適用することを含む本発明の方法は、環境温度(20−25℃)と200℃の間、好ましくは環境温度と60℃の間で変化する温度で実施されて良い。
【0076】
本発明の方法は、後のすすぎ工程、または他の後の工程、例えばコンディショニング、毛髪成型等の工程を含んでも良い。
【0077】
一つの特定の実施態様によれば、本発明の方法は、金属塩での事前処理なく、特に銅、亜鉛、アルミニウム等の塩での事前処理なく実施される。
【0078】
別の特定の実施態様によれば、本発明の方法は、所望の着色を得るのに十分な時間、少なくとも一つの天然染料を含む組成物の毛髪への適用と、任意にその後のすすぎ工程のみを工程として含む毛髪染色方法である。
【0079】
本発明のキットは、無水形態で一つ以上の天然染料を含む第一の組成物と、第二の水性組成物とを含み、第一及び/または第二の組成物は、15MPa1/2以下のハンセン溶解度パラメーターδHの値を有するアルコール、エーテル、またはエステルから選択される一つ以上の有機溶媒を含む。
【0080】
キットの一つの特定の実施態様によれば、天然染料、特にオルセイン類を含む組成物は、パウダー形態である。例として、これらの染料は、おがくずと混合されたパウダーの形態で存在する。
【0081】
一つの特定の実施態様によれば、前記方法は、一つ以上のオルセインを含む組成物から開始して実施される。
【0082】
別の実施態様によれば、天然染料(類)、特にオルセイン(類)は、染料が溶解または分散している無水液体の形態で存在する。一つの変形例によれば、本発明で使用される無水液体は、例えば本発明の組成物で使用される有機溶媒から形成される。
【0083】
使用時で、無水組成物は第二の組成物と混合され、使用の準備ができた組成物を形成する。そのような使用の準備ができた組成物は著しく容易な混合で得られ、毛髪の先端から根元まで毛髪に特に均一な着色を得ることを可能にする。
【0084】
以下の実施例は、本発明を説明するために使用されるが、制限的なものではない。
【実施例】
【0085】
実施例1
5%のベンジルアルコール、15%のエタノール、0.2%の安息香酸、1.6%のヒドロキシエチルセルロース、水(100%までの残部)、及び0.5%のα−ヒドロキシオルセインを含む組成物を、環境温度で20分間、90%の白髪を有する天然の毛髪の塊と、90%の白髪を有するパーマ処理した毛髪の塊に適用した。
【0086】
適用後、塊をすすぎ、シャンプー処理し、乾かした。それらは強烈であまり選択的ではない態様(即ち天然の毛髪とパーマ処理した毛髪で得られる着色は視覚的に近い)で暗紫色に着色された。12回の一連の洗浄を2タイプの塊に適用し、着色のわずかな劣化を導いた(10%未満)。
【0087】
実施例2
5%のベンジルアルコール、15%のエタノール、0.2%の安息香酸、2%の水酸化アンモニウム、1.6%のヒドロキシエチルセルロース、水(100%までの残部)、及び0.5%のα−ヒドロキシオルセインを含む組成物を、20容量の力価の水性過酸化水素を有する過酸化水素の酸化製剤と同重量で混合した。この混合物を環境温度で30分間、90%の白髪を有する天然の毛髪の塊と、90%の白髪を有するパーマ処理した毛髪の塊に適用した。
【0088】
適用後、塊をすすぎ、シャンプー処理し、乾かした。それらは強烈に着色された暗紫色であった。その着色は非常に均一であった。
【0089】
実施例3
以下の染色組成物を調製した(含量は活性物質のグラム単位で表される):
【表2】

【0090】
この組成物を、一方で90%の白髪を有する天然の灰色の毛髪の塊に、他方で90%の白髪を有するパーマ処理した灰色の毛髪に、環境温度で30分間適用した。
【0091】
待機時間の最後で、毛髪をすすぎ、シャンプー処理してすすぎ、乾かした。それらを限られた選択性のマホガニー色の色合いに染色した。
【0092】
実施例4
以下の染色組成物を調製した(含量は活性物質のグラム単位で表される):
【表3】

【0093】
この組成物を、一方で90%の白髪を有する天然の灰色の毛髪の塊に、他方で90%の白髪を有するパーマ処理した灰色の毛髪に、環境温度で30分間適用した。
【0094】
待機時間の最後で、毛髪をすすぎ、シャンプー処してすすぎ、乾かした。それらを均一は栗色の色合いに染色した。
【0095】
実施例4(比較例)
以下の染色組成物を調製した(量はg%単位で表される):
【表4】

【0096】
各組成物を、90%の白髪(NW)を有する天然の毛髪の塊と、傷んだ毛髪の塊(41.6%のアルカリ溶解度)に適用した。
【0097】
処理された各塊を、各種の待機時間に供した:
−環境温度で20分の待機時間;
−環境温度で30分の待機時間。
【0098】
塊をすすぎ、標準的なシャンプーで洗浄し、乾かした。
【0099】
毛髪の染色を、Minolta CM2600-d(登録商標)分光光度計で、Lシステムで評価した。このシステムでは、Lは強度を表し、Lの値が低いほど、より強烈な着色が得られる。
【0100】
【表5】

【0101】
本発明に係る組成物Aは、20分と30分の両者の待機時間について、組成物Bより低いL値を有する。2タイプの処理された毛髪、及び2種類の待機時間について、δHの値が19.4であるエタノールを含む組成物Bよりも、15未満のδHパラメーターの値(ベンジルアルコール:δHの値=13.7)を有する有機溶媒を含む本発明の組成物である組成物Aで、得られた着色はより暗色であって強烈である。
【0102】
実施例6:事前処理のある方法と事前処理のない方法の比較
事前処理組成物C(g%単位)
【表6】

【0103】
90%の白髪を有する天然の毛髪の塊と、傷んだ毛髪の塊(41.6%のアルカリ溶解度)について、事前処理組成物Cを以下に記載された方法の一つに従って、本発明の組成物Aと共に適用した。
【0104】
方法1(本発明):
組成物Aで染色
30分間の待機
すすぎ、シャンプー処理、乾燥
方法2(比較例):
組成物Cで事前処理、5分間の待機
温水ですすぎ
組成物Aで染色、30分間の待機
すすぎ、シャンプー処理、及び乾燥
方法3(本発明):
組成物Aで染色
20分間の待機
すすぎ、シャンプー処理、乾燥
方法4(比較例):
組成物Cで事前処理、15分間の待機
温水ですすぎ
組成物Aで染色、20分間の待機
【0105】
塊の染色をLの測定により実施例3と同様に評価し、染色の強度を評価した。以下の結果が得られた:
【表7】

【0106】
本発明に係る方法1または3によって染色された塊は、金属塩での事前処理を有する方法2または4によって染色された塊よりも低いL値を有する:事前処理のない方法で着色はより暗色であり、これは20分と30分の染色待機時間について当てはまる。
【0107】
方法1及び2を、90%の白髪を含むパーマ処理した毛髪の塊(PW)でも実施した。
【0108】
染色を、Lシステムで上述のように評価した。このシステムでは、Lは強度を表し、Lの値が低いほど、より強烈な着色が得られる。発色性をaとbの値によって測定し、aは赤色/緑色軸を表し、bは黄色/青色軸を表す。
【0109】
毛髪の先端から根元までの線維に沿った染色の均一性を表す染色の選択性を、染色した天然の毛髪と染色したパーマ処理した毛髪の間の着色の偏りであって、下式から得られたΔEによって評価した:
【数1】

[式中、Lは染色された天然の毛髪の強度を表し、a及びbは染色された天然の毛髪の発色性を表し、Lは染色された傷んだ毛髪の強度を表し、a及びbは染色された傷んだ毛髪の発色性を表す。ΔEの値が低いほど、選択性が低く、染色が毛髪に沿ってより均一である]。
【0110】
この結果が以下の表に集約されている:
【表8】

【0111】
染色の均一性は、事前処理のない本発明の方法でずっと均一である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ以上の天然染料及び15MPa1/2以下のハンセン溶解度パラメーターδHの値を有するアルコール、エーテル、またはエステルから選択される一つ以上の有機溶媒を含む染色用組成物。
【請求項2】
天然染料がオルセイン、ローソン、ジュグロン、アリザリン、パープリン、カルミン酸、ケルメス酸、パープロガリン、プロトカテクアルデヒド、インジゴ、イサチン、クルクミン、スピヌロシン、アピゲニジン、クロロフィリン、ソルガム、オルセイン、及びコチニールカルミンから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
一つ以上のオルセインを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
一つ以上のオルセインと、クルクミン、クロロフィリン、イサチン、ソルガム、及びコチニールカルミンから選択される一つ以上の更なる天然染料とを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
オルセインが下式(I)のオルセイン:
【化1】

[式中、R’は水素原子、ヒドロキシルまたはアルキル基で置換されたベンゼン基を表し、RはNHまたはOHを表し、Eは酸素原子またはNH基を表す]
から選択される、請求項2から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
R’が水素、または
【化2】

[式中は式(I)の残りに対して前記基を連結する共有結合を表す]
から選択される基を表す、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
オルセインがα−アミノオルセインまたはα−ヒドロキシオルセインから選択される、請求項2から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
オルセインがβ−アミノオルセイン、β−ヒドロキシオルセイン、またはβ−アミノオルセインイミンから選択される、請求項2から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
オルセインがγ−アミノオルセイン、γ−ヒドロキシオルセイン、またはγ−アミノオルセインイミンから選択される、請求項2から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
オルセインがα−ヒドロキシオルセインである、請求項2から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
天然染料が組成物の全重量に対して0.001から20重量%の間の量で存在する、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
一つ以上の界面活性剤及び/または一つ以上の増粘ポリマーを更に含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
溶媒がプロピレングリコールエーテル、ベンジルアルコール、またはアルキレンカーボネートから選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
アルキレンカーボネートがエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、グリセロールカーボネート、またはブチレンカーボネートから選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
少なくとも70%の水を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1から14のいずれか一項に規定される一つ以上の天然染料を含む第一の無水組成物と、第二の水性組成物とを含み、第一及び/または第二の組成物は、15MPa1/2以下のハンセン溶解度パラメーターδHの値を有するアルコール、エーテル、またはエステルから選択される一つ以上の有機溶媒を含む、キット。
【請求項17】
事前処理なく、所望の着色を得るのに十分な時間、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物の毛髪への適用と、任意にその後のすすぎ工程を含む、ヒトの毛髪の染色方法。
【請求項18】
事前処理なく、所望の着色を得るのに十分な時間、請求項3から15のいずれか一項に規定される一つ以上のオルセインを含む組成物の毛髪への適用と、任意にその後のすすぎ工程を含む、ヒトの毛髪の染色方法。

【公表番号】特表2010−506892(P2010−506892A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532872(P2009−532872)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【国際出願番号】PCT/FR2007/052193
【国際公開番号】WO2008/047055
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】