ヒト免疫不全ウイルスに対する中和抗体を誘導する方法
本発明は、一般的に、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に、そして特に、HIVに対する中和抗体を誘導する方法に、そしてこうした方法で使用するのに適した化合物および組成物に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年4月13日出願の米国出願第11/785,077号、2007年6月22日出願の米国出願第11/812,992号および2007年9月28日出願の米国仮出願第60/960,413号から優先権を請求し、これらの出願の全内容は、本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、米国衛生研究所によって授与される助成金番号U01 AI067854のもとに米国政府の援助を受けて作成された。米国政府は、本発明において特定の権利を有する。
技術分野
本発明は、一般的に、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に、そして特に、HIVに対する中和抗体を誘導する方法に、そしてこうした方法で使用するのに適した化合物および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
急性HIV−1感染において最初に作製される抗体は、CD4結合部位(Mooreら, J. Virol. 68(8)5142(1994))、CCR5共受容体結合部位(Choeら, Cell 114(2):161−170(2003))、およびV3ループ(Mooreら, J. Acquir. Immun. Def. Syn. 7(4):332(1994))に対するものである。しかし、これらの抗体は、HIV−1を制御せず、そして容易にエスケープされる(Burtonら, Nature Immun. 5:233−236(2004)、Weiら, Nature 422(6929):307−312(2003))。自家ウイルスに対する中和抗体は、感染50〜60日後に発展するが、異種HIV−1株を中和可能な抗体は、感染1年後まで生じない(Richmanら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100(7):4144−4149(2003)、Weiら, Nature 422(6929):307−312(2003))。
【0004】
稀な広範反応性中和抗体が結合するHIV−1エンベロープ上の4つのエピトープは、CD4結合部位(CD4BS)(mab(モノクローナル抗体)IgG1b12)(Zwickら, J. Virol. 77(10):5863−5876(2003))、ヒトmab 2F5および4E10によって定義される膜近位外部領域(MPER)エピトープ(Armbrusterら, J. Antimicrob. Chemother. 54:915−920(2004)、StieglerおよびKatinger, J. Antimicrob. Chemother. 51:757−759(2003)、Zwickら, Journal of Virology 79:1252−1261(2005)、Purtscherら, AIDS 10:587(1996))(図1)、ならびにヒトmab 2G12によって定義されるマンナングリカンエピトープ(Scanlanら, Adv. Exper. Med. Biol. 535:205−218(2003))である。これらの4つの稀なヒトmabはすべて独特である:2つはIgG3(2F5および4E10)であり、1つはユニークなIg二量体構造を有し(2G12)、1つは非常に疎水性であるCDR3を有し(2F5)(Ofekら, J. Virol. 198:10724(2004))、そして4つすべてにおいて、CDR3が異常に長い(Burtonら, Nature Immunol. 5(3):233−236(2004)、Kunertら, AIDS Res. Hum. Retroviruses 20(7):755−762(2004)、Zwickら, J. Virol. 78(6):3155−3161(2004)、Cardosoら, Immunity 22:163−172(2005))。これらのうち、2F5および4E10様ヒトmabsは非常に稀である。急性HIV−1患者は、MPERまたは2G12エピトープに対する抗体を作製せず(Robinson、未刊行(2005)、Shaw、未刊行(2005))、MPERは、HIVエンベロープのアミノ酸652〜683と定義可能である(Cardosoら, Immunity 22:163−173(2005))(例えば、QQEKNEQELLELDKWASLWNWFDITNWLWYIK)。CD4結合部位(BS)抗体は、一般的に、HIV−1感染初期に作製されるが、これらの抗体は、一般的に、mab IgG1b12によって示される広範囲の中和を持たない(Burtonら, Nat. Immunol. 5(3):233−236(2004))。
【0005】
いくつかのHIV−1エンベロープのエピトープが宿主組織と交差反応することが示されてきており(Pintoら, AIDS Res. Hum. Retrov. 10:823−828(1994)、Douvasら, AIDS Res. Hum. Retrov. 10:253−262(1994)、Douvasら, AIDS Res. Hum. Retrov. 12:1509−1517(1996))、そして自己免疫患者はHIVタンパク質と交差反応する抗体を作製することが示されてきている(Pintoら, AIDS Res. Hum. Retrov. 10:823−828(1994)、Douvasら AIDS Res. Hum. Retrov. 10:253−262(1994)、Douvasら, AIDS Res. Hum. Retrov. 12:1509−1517(1996)、Barthelら, Semin. Arthr. Rheum. 23:1−7(1993))。同様に、自己エピトープに対する免疫応答の誘導が、AIDSにおける自己免疫異常およびT細胞枯渇の原因であると示唆されてきている(Douvasら, AIDS Res. Hum. Retrov. 12:1509−1517(1996)、Zieglerら, Clin. Immunol. Immunopath. 41:305−313(1986))。
【0006】
ペプチドに対する高レベルの抗体を誘導するが、HIV−1初代単離体を広範には中和しない、2F5 mabに対する高アフィニティーペプチドリガンドが作製されてきている(McGaugheyら, Biochemistry 42(11):3214−3223(2003)、Zhangら, J. Virol. 78(15):8342−8348(2004)、Zwickら, J. Virol. 79:1252−1261(2005)における概説)。これらの結果は、2F5に対するペプチドリガンドが抗MPER抗体を誘導するのに適したコンホメーションを取っていないことを意味すると解釈されてきた(Burtonら, Nature Immunology 5(3):233−236(2004)、Zwickら, J. Virol. 79:1252−1261(2005))。安定に発現されたIgG1b12、2G12、2F5および4E10エピトープを用いて、一連の非常に拘束されたHIV−1 Env免疫原が作製されてきており、そしてこれらの免疫原が、モルモットまたはウサギにおいて広範反応性中和抗体を誘導せず、そして特に、MPERエピトープに対する中和抗体を作製しないことが立証されてきている(Liaoら, J. Virol. 78(10):5270−5278(2004); Haynes、未刊行(2005))。これらの結果は、HIV−1エンベロープに対する広範反応性中和抗体が作製不能であるため、これらが正常な動物およびヒトにおいて作製されるかどうかに関する疑問が生じている。
【0007】
長い疎水性CDR3領域は、天然多重反応性自己抗体の典型であり(Meffreら, J. Clin. Invest. 108:879−886(2001)、Ramslandら, Exp. Clin. Immun. 18:176−198(2001))、そしてHIV−1感染患者Bリンパ球は、ポリクローン性に駆動されて、カルジオリピン抗体を作製する(Weissら, Clin. Immunol. Immunopathol. 77:69−74(1995)、Grunewaldら, Clin. Exp. Immunol. 15:464−71(1999))ため、カルジオリピンに対するこれらのおよび他の抗HIV−1 mab、ならびに他の自己抗原反応をアッセイする研究が行われた。本発明は、少なくとも部分的に、2つの広範反応性HIV−1エンベロープgp41ヒトmab、2F5および4E10が、カルジオリピンと反応性である多重特異性自己抗体であるという認識から生じる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Mooreら, J. Virol. 68(8)5142(1994)
【非特許文献2】Choeら, Cell 114(2):161−170(2003)
【非特許文献3】Mooreら, J. Acquir. Immun. Def. Syn. 7(4):332(1994)
【非特許文献4】Burtonら, Nature Immun. 5:233−236(2004)
【非特許文献5】Weiら, Nature 422(6929):307−312(2003)
【非特許文献6】Richmanら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100(7):4144−4149(2003)
【非特許文献7】Zwickら, J. Virol. 77(10):5863−5876(2003)
【非特許文献8】Armbrusterら, J. Antimicrob. Chemother. 54:915−920(2004)
【非特許文献9】StieglerおよびKatinger, J. Antimicrob. Chemother. 51:757−759(2003)
【非特許文献10】Zwickら, Journal of Virology 79:1252−1261(2005)
【非特許文献11】Purtscherら, AIDS 10:587(1996)
【非特許文献12】Scanlanら, Adv. Exper. Med. Biol. 535:205−218(2003)
【非特許文献13】Ofekら, J. Virol. 198:10724(2004)
【非特許文献14】Kunertら, AIDS Res. Hum. Retroviruses 20(7):755−762(2004)
【非特許文献15】Zwickら, J. Virol. 78(6):3155−3161(2004)
【非特許文献16】Cardosoら, Immunity 22:163−173(2005)
【非特許文献17】Robinson、未刊行(2005)
【非特許文献18】Shaw、未刊行(2005)
【非特許文献19】Pintoら, AIDS Res. Hum. Retrov. 10:823−828(1994)
【非特許文献20】Douvasら, AIDS Res. Hum. Retrov. 10:253−262(1994)
【非特許文献21】Douvasら, AIDS Res. Hum. Retrov. 12:1509−1517(1996)
【非特許文献22】Barthelら, Semin. Arthr. Rheum. 23:1−7(1993)
【非特許文献23】Zieglerら, Clin. Immunol. Immunopath. 41:305−313(1986)
【非特許文献24】McGaugheyら, Biochemistry 42(11):3214−3223(2003)
【非特許文献25】Zhangら, J. Virol. 78(15):8342−8348(2004)
【非特許文献26】Liaoら, J. Virol. 78(10):5270−5278(2004)
【非特許文献27】Haynes、未刊行(2005)
【非特許文献28】Meffreら, J. Clin. Invest. 108:879−886(2001)
【非特許文献29】Ramslandら, Exp. Clin. Immun. 18:176−198(2001)
【非特許文献30】Weissら, Clin. Immunol. Immunopathol. 77:69−74(1995)
【非特許文献31】Grunewaldら, Clin. Exp. Immunol. 15:464−71(1999)
【発明の概要】
【0009】
本発明は、一般的に、ヒトHIVに関する。より具体的には、本発明は、HIVに対する中和抗体を誘導する方法に、そしてこうした方法で使用するのに適した化合物および組成物に関する。特定の態様において、本発明は、天然膜結合環境において、MPERエピトープを提示する免疫原、およびこうした免疫原を用いた、寛容を中断する免疫法を提供する。
【0010】
本発明の目的および利点は、以下の説明から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】広範中和性抗体(2F5、4E10)は、宿主膜に対して近位に位置するエピトープに結合する。2F5および4E1 mAbはどちらも、IgG3であり、長いCDR3を有し、そしてHIV−1 gp41(aa 660〜683)膜近位外部領域(MPER)内に位置するエピトープに結合する。
【図2】図2A〜2D。ヒトHep−2上皮細胞と、2F5、4E10、IgG1b12 Mabの反応性。図2Aは、散在性の細胞質および核パターンでHep−2細胞と反応するMab 2F5を示し、図2Bは、2F5と類似のパターンでHEp−2細胞と反応するMab 4E10を示す。図2Cは、散在性細胞質パターンであり、核においては核小体が反応性である、Hep−2細胞と反応するMab IgG1b12を示す。図2C挿入図は、IgG1b12の核反応性を示す(矢印)、細胞のより大きい拡大図を示す。図2Dは、Hep−2細胞に対するMab 1.9Fの陰性反応性を示す。図2A〜2Dにおいてアッセイしたスライドあたりの抗体量は、スライドあたりMab 3.75μgであった。Mab 2F5は、スライドあたり0.125μg(5μg/ml)で、HEp−2細胞に対して陽性であった。Mab 4E10は、スライドあたり0.125μg(5μg/ml)で陽性であり、そしてIgG1b12は、スライドあたり1.25μg(50μg/ml)で陽性であった。すべての図は200倍であり;図2C挿入図は400倍である。示す画像は、実行した3つの実験を代表する実験に由来する。
【図3−1】図3A〜3D。脂質に対するMab 2F5および4E10のアッセイおよび結合特異性。図3Aは、カルジオリピン(CL)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、およびスフィンゴミエリン(SM)に対するMAb 4E10(黒塗りバー)および2F5(白抜きバー)のELISA反応性を示す。4E10および2F5はどちらもカルジオリピンと反応するが、4E10のみが試験した他の脂質と反応した。対照ヒト抗CCR5結合部位MAb 1.7bの反応性は陰性であった(データ未提示)。空のコーティングプレートに対するMAbの反応性は同様に陰性であった(未提示)。カルジオリピンに対するMAb 2F5の結合の特異性を示すため、2F5 150〜300μg/ml、およびMAb 2F5によるHIV−1の中和を遮断する(Kunertら, AIDS 16:667(2002))、抗2F5イディオタイプ・ネズミMAb 3H6の1000μg/mlを用いた。2F5抗イディオタイプは、3回の別個の実験において、カルジオリピンに対するMAb 2F5の結合を平均70%で有意に遮断した(p<0.03)(図3B)。別個のELISAにおいて、MAb 2F5は、660nMの半最大(EC50)応答で、カルジオリピンに結合した(未提示)。図3Cは、カルジオリピンに対する4E10 MAb結合の用量反応曲線を示す。4パラメトリックS字形曲線適合分析から、4E10結合(80nM)の半最大(EC50)応答を計算した。ELISAプレート上にコーティングされたカルジオリピン(1.35μg/ウェル)に対する4E10 MAb結合(0.5nM〜1000nM)のELISAから、結合データを獲得した。図3Dは、4E10エピトープを発現する可溶性HIV−1 Env gp140オリゴマー(CON−S)がカルジオリピンに対する4E10 MAbの結合を阻害することを示す。カルジオリピンに対する4E10結合の阻害のIC50は、145nMであると計算された。10μg/mlの4E10 MAbと混合した多様な濃度のgp140(19.25〜1230nM)を用いて、これを次いで、1.35μgのカルジオリピンを含有するウェルに添加することによって、阻害アッセイを行った。MAb 3H6(1mg/ml)はまた、SSA/Ro、セントロメアB、およびヒストンに対するMAb 2F5の結合を遮断した(が、対照MAbはしなかった)(未提示)。図3A〜3D中のすべてのデータは、実行した少なくとも2つの実験の代表である。
【図3−2】図3A〜3D。脂質に対するMab 2F5および4E10のアッセイおよび結合特異性。図3Aは、カルジオリピン(CL)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、およびスフィンゴミエリン(SM)に対するMAb 4E10(黒塗りバー)および2F5(白抜きバー)のELISA反応性を示す。4E10および2F5はどちらもカルジオリピンと反応するが、4E10のみが試験した他の脂質と反応した。対照ヒト抗CCR5結合部位MAb 1.7bの反応性は陰性であった(データ未提示)。空のコーティングプレートに対するMAbの反応性は同様に陰性であった(未提示)。カルジオリピンに対するMAb 2F5の結合の特異性を示すため、2F5 150〜300μg/ml、およびMAb 2F5によるHIV−1の中和を遮断する(Kunertら, AIDS 16:667(2002))、抗2F5イディオタイプ・ネズミMAb 3H6の1000μg/mlを用いた。2F5抗イディオタイプは、3回の別個の実験において、カルジオリピンに対するMAb 2F5の結合を平均70%で有意に遮断した(p<0.03)(図3B)。別個のELISAにおいて、MAb 2F5は、660nMの半最大(EC50)応答で、カルジオリピンに結合した(未提示)。図3Cは、カルジオリピンに対する4E10 MAb結合の用量反応曲線を示す。4パラメトリックS字形曲線適合分析から、4E10結合(80nM)の半最大(EC50)応答を計算した。ELISAプレート上にコーティングされたカルジオリピン(1.35μg/ウェル)に対する4E10 MAb結合(0.5nM〜1000nM)のELISAから、結合データを獲得した。図3Dは、4E10エピトープを発現する可溶性HIV−1 Env gp140オリゴマー(CON−S)がカルジオリピンに対する4E10 MAbの結合を阻害することを示す。カルジオリピンに対する4E10結合の阻害のIC50は、145nMであると計算された。10μg/mlの4E10 MAbと混合した多様な濃度のgp140(19.25〜1230nM)を用いて、これを次いで、1.35μgのカルジオリピンを含有するウェルに添加することによって、阻害アッセイを行った。MAb 3H6(1mg/ml)はまた、SSA/Ro、セントロメアB、およびヒストンに対するMAb 2F5の結合を遮断した(が、対照MAbはしなかった)(未提示)。図3A〜3D中のすべてのデータは、実行した少なくとも2つの実験の代表である。
【図4−1】図4Aおよび4B。CON−S Env gp160のアミノ酸(図4A)および核酸(図4B)配列。図4Aのタンパク質のCFI型を実施例2で用いた。(Gp140CFIは、膜貫通および細胞質ドメインの欠失に加えて、切断部位(C)、融合部位(F)、およびgp41免疫優勢領域(I)の欠失を含む、HIV−1エンベロープ設計を指す。)
【図4−2】図4Aおよび4B。CON−S Env gp160のアミノ酸(図4A)および核酸(図4B)配列。図4Aのタンパク質のCFI型を実施例2で用いた。(Gp140CFIは、膜貫通および細胞質ドメインの欠失に加えて、切断部位(C)、融合部位(F)、およびgp41免疫優勢領域(I)の欠失を含む、HIV−1エンベロープ設計を指す。)
【図5】免疫措置で用いるリン脂質(phosphospholipid)の構造および生じる中和力価。
【図6−1】図6Aおよび6B。ペプチド−リポソーム・コンジュゲートの生成に用いるペプチド配列。mAb 2F5および4E10結合エピトープの名目上の(nominal)エピトープには、それぞれ、配列ELDKWASおよびWFNITNWが含まれ、そしてこれらを下線で示す。V3配列は、HIV−1 MN株のgp120に由来し、そしてこれらを対照構築物として用いた。スクランブル化配列を対照として用いる。
【図6−2】図6Aおよび6B。ペプチド−リポソーム・コンジュゲートの生成に用いるペプチド配列。mAb 2F5および4E10結合エピトープの名目上の(nominal)エピトープには、それぞれ、配列ELDKWASおよびWFNITNWが含まれ、そしてこれらを下線で示す。V3配列は、HIV−1 MN株のgp120に由来し、そしてこれらを対照構築物として用いた。スクランブル化配列を対照として用いる。
【図7】MPER gp41構築物の多様な設計の模式的提示。模式的構築物の上に、機能領域を示す。各模式的構築物の下に、アミノ酸配列を示す。開始および成熟シグナル配列を青で強調し;免疫優勢領域を太字で強調し;MPER領域を茶色で強調し、そしてGTH1ドメインを赤で強調し、そして膜貫通ドメインを下線で示す。精製を容易にするため、Hisタグを構築物のC末端に添加して、そして緑で強調する。
【図8】ペプチド−リポソーム・コンジュゲートに対するmAb 4E10の結合。BIAcore結合曲線は、GTH1−4E10リポソームに対するmAb 4E10の特異的でそして顕著により高い結合を示す。GTH1−2F5リポソームに対する迅速な動力学での低レベルの結合もまた検出された。
【図9】ペプチド−リポソームに対する2F5 mAbの結合。MAb 2F5は、GTH1−2F5リポソームに特異的に結合し、そしてGTH1−4E10リポソームに対する結合はまったく示さなかった。
【図10】ペプチド−リポソームに対するA32 mAb結合。対照抗gp120 Mab、A32は、リポソーム・コンジュゲートのいずれにもまったく結合を示さなかった。CD4誘導性mAbである17bもまた、上記リポソーム・コンジュゲートに対する結合をまったく示さなかった(データ未提示)。
【図11】フルオレセインがコンジュゲート化されたペプチド−リポソームの生成。脂質組成物中にフルオレセイン−POPEを取り込むことによって、ペプチド−リポソームをフルオレセイン・タグとコンジュゲート化した。結合アッセイは、フルオレセイン・コンジュゲート化リポソーム中で、mAb 4E10結合の特異性が保持されることを示す。フルオレセイン−コンジュゲート化GTH1−2F5リポソームは類似の結果を生じた。
【図12】4E10ペプチドと免疫モルモット血清の反応性。ELISA結合アッセイは、GTH1−4E10リポソームで免疫した2匹のモルモット由来の4E10ペプチドに対する血清の強い陽性反応性を示す。すべての前採血(pre−bleed)血清はバックグラウンド結合を生じ、一方、4E10ペプチドで免疫した動物由来の血清において、低レベルの結合が観察された。ペプチド−リポソーム免疫動物由来の陽性血清もまた、どちらも、中和活性を示した(表2)。1つの血清(1102)は、それぞれ、1:209および1:32の抗体力価で、MNおよびSS1196株の中和を示した。第二の血清(1103)は、MNウイルスに対してのみ有効であった(1:60)。
【図13】ペプチドエピトープに対するMPER mAb結合は、単純なモデル(ラングミュア等式)にしたがう。
【図14】エピトープペプチド−脂質コンジュゲートに対する中和性MPER mAb結合は、2段階コンホメーション変化モデルにしたがう。
【図15】ヒト・クラスターII mAb(98−6、167−D、126−6)は、Env gp140に強く結合する。
【図16】図16A〜16D。ヒト・クラスターII mAbは、陰イオン性リン脂質、カルジオリピンに強く結合した。
【図17−1】図17A〜17E。ヒト・クラスターII mAb 98−6は、より高いアビディティーで2F5ペプチド−脂質コンジュゲートに結合し、そして2段階コンホメーション変化モデルにしたがった。
【図17−2】図17A〜17E。ヒト・クラスターII mAb 98−6は、より高いアビディティーで2F5ペプチド−脂質コンジュゲートに結合し、そして2段階コンホメーション変化モデルにしたがった。
【図18】図18A〜18C:リポソームとともに配合されたTLRアジュバントの構造。図18A 脂質A;図18B オリゴCpG;図18C R−848。
【図19】図19A〜19C。TLRアジュバント−MPERペプチド・リポソームの図的記述。図19A 脂質A;図19B オリゴCpG;図19C R−848。
【図20】図20A〜20C。TLRアジュバントにコンジュゲート化されたMPERペプチド−リポソームと2F5 mABの相互作用。図20Aは、脂質Aを含むgp41 MPERリポソーム構築物に対する2F5 mabの強い結合を示す(200μg用量当量)。図20Bは、gp41 MPERリポソームにコンジュゲート化されたoCpG(50μg用量当量)に対する2F5 mAbの結合を示す。図20Cは、R848コンジュゲート化gp41 MPER含有リポソームに対する2F5 mAbの結合を示す。TLRアジュバントのみを含む対照リポソームに比較すると、gp41 MPER−アジュバント・リポソーム構築物各々に対する2F5 mAbの強い結合が観察された。
【図21】MPER656−TMDペプチドのアミノ酸配列。
【図22】図22Aおよび22B。L−1チップ上のリポソーム固定の図的記述。図22A 合成リポソーム。図22B MPER656−TMDリポソーム。
【図23】図23Aおよび23B:MPER656−TMDリポソームと2F5および4E10 mAbの相互作用。図23A 2F5および図23B 4E10。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、少なくとも部分的に、特定の広範中和性HIV−1抗体が自己抗体であることを立証する研究から生じる。多数のHIV+患者は、低レベルのこうした抗体を一過性に作製するが、本明細書記載の研究は、gp41エピトープがこれらの抗体特異性を誘導するのではなく、むしろカルジオリピンを含む交差反応性自己抗原がプライミング抗原であることを示す。
【0013】
本発明は、HIVを中和する抗体を誘導する方法を提供する。該方法は、こうした方法が必要な患者に、該誘導を達成するのに十分な量の少なくとも1つの異種(例えば非ヒト)または同種(例えばヒト)交差反応性自己抗原を投与する工程を含む。本発明で使用するのに適した交差反応性自己抗原には、カルジオリピン、SS−A/RO、細菌または哺乳動物細胞由来のdsDNA、セントロメアBタンパク質およびRiBo核タンパク質(RNP)が含まれる。
【0014】
適切な自己抗原にはまた、カルジオリピンに加えてリン脂質、例えばホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、およびその誘導体、例えば、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](POPS)、1−パルミトイル−2−オレオイル−ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、およびジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)も含まれる。リン脂質の六方晶II相の使用が好適である可能性もあり、そして(例えば生理学的条件下で)六方晶IIチューブ状相の六方充填円筒を容易に形成するリン脂質が好ましく、六方晶II相で安定化されうるリン脂質も同様である(Rauchら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:4112−4114(1990); Aguilarら, J. Biol. Chem. 274:25193−25196(1999))。
【0015】
交差反応性エピトープを含む、こうした自己抗原の断片もまた使用可能である。
自己抗原またはその断片を、例えば、プライム・ブースト措置において用いてもよく、こうした措置は、当業者によって容易に最適化可能である(こうした措置のタンパク質性構成要素をコードするDNA配列を、タンパク質性構成要素がin vivoで産生される条件下で投与してもよい)。例えば、交差反応性自己抗原を、第一のワクチン・プライムとして用いて、天然自己抗体(例えば抗カルジオリピン4E10および2F5様抗体)をブーストしてもよい。自己抗原(例えばカルジオリピン(またはその断片))、または交差反応性エピトープ(単数または複数)、例えば2F5および/または4E10エピトープ(このエピトープには、それぞれ、少なくとも配列ELDKWAおよびNWFDITが含まれてもよい)を含むHIVエンベロープタンパク質/ポリペプチド/ペプチドは、いずれも、ブーストとして使用可能である。(PCT/US04/30397に開示される配列を参照されたい。)(HIVエンベロープは自己抗原でないことが理解されるであろう。)
自己抗原および/またはHIVタンパク質/ポリペプチド/ペプチド、またはコード配列の投与様式は、免疫原、患者および求める効果によって多様であり、投与用量も同様である。最適投薬措置は、当業者によって容易に決定可能である。典型的には、投与は皮下、筋内、静脈内、鼻内または経口である。
【0016】
免疫原性剤をアジュバントと組み合わせて投与してもよい。多様なアジュバントが使用可能であるが、好ましいアジュバントには、自己免疫疾患を誘導することなく、自己抗原に対する寛容を中断可能なCpGオリゴヌクレオチドおよび他の剤(例えばTRL9アゴニスト)が含まれる(Tranら, Clin. Immunol. 109:278−287(2003)、米国出願第20030181406号、第20040006242号、第20040006032号、第20040092472号、第20040067905号、第20040053880号、第20040152649号、第20040171086号、第20040198680号、第200500059619号)。
【0017】
特定の態様において、本発明は、Toll様受容体(TLR)リガンドおよびHIV−1 gp41中和抗原を提示するアジュバント・コンジュゲートに基づくリポソームに関する。この態様にしたがって、HIV−1 gp41 MPERペプチド免疫原が中にコンジュゲート化されたリポソーム内に、脂質A、オリゴCpGおよびR−848などの免疫応答増進性TLRリガンドを、個々に配合してもよい。以下の実施例7に記載するように、広範中和性gp41膜近位外部領域(MPER)抗体(2F5、4E10)は、リポソーム構築物と会合したTLRリガンド・アジュバント各々に強く結合する。この態様の構築物は、HIV−1 gp41 MPERの劣った免疫原性に対する免疫応答を増進する際に適用を有する。
【0018】
さらに特定の態様において、本発明は、2F5および4E10などの広範中和性抗体のエピトープを機能的にディスプレイするための、リポソームに対するHIV−1 gp41 MPERペプチドの膜貫通ドメイン係留に関する。本態様にしたがって、HIV−1 gp41の膜貫通ドメイン(TMD)を用いて、合成脂質を含むリポソーム内にMPERペプチドを係留してもよい。以下の実施例8に記載するように、広範中和性抗gp41抗体2F5および4E10はどちらも、MPER−TMD−リポソーム・コンジュゲートに結合する。この構築物は、HIV−1の天然TMDを用いて、リポソーム上に係留された本gp41中和エピトープを提示するための戦略を提供する。TMDの三量体化の誘導は、gp41 MPERの三量体型の形成を促進しうる。
【0019】
本発明には、本方法で使用するのに適した組成物が含まれ、これには、自己抗原、および/または1以上の交差反応性エピトープ(例えば4E10および/または2F5エピトープ)を含むHIVタンパク質/ポリペプチド/ペプチド、あるいは4E10または2F5エピトープ模倣体、およびキャリアーを含む組成物が含まれる。DNAプライムまたはブーストを用いてもよい場合、適切な配合物には、DNAプライムおよび組換えアデノウイルスブーストならびにDNAプライムおよび組換えミコバクテリアブーストが含まれ、この場合、DNAまたはベクターは、例えばHIVエンベロープ、またはSS−A/Roなどのタンパク質自己抗原のいずれかをコードする。HIVタンパク質/ポリペプチド/ペプチドおよび/または自己抗原を伴うかまたは伴わないかのいずれかで、プライムまたはブーストとして、これらのベクターの他の組み合わせを用いてもよい。組成物は、例えば、注射または鼻投与に適した型で存在してもよい。都合よくは、組成物は無菌である。組成物は投薬単位型で存在してもよい。
【0020】
本発明はまた、交差反応性抗体(4E10および2F5以外のモノクローナル抗体を含む)の産生において、原発性自己免疫疾患、例えば全身性エリテマトーデス(SLE)または抗リン脂質抗体症候群の患者、あるいは感染性疾患、例えば梅毒、リーシュマニア症、およびハンセン病の患者に由来するB細胞が使用可能である、受動免疫療法アプローチにも関する。自己免疫疾患患者は、HIVエンベロープに対する結合に際して、またはビリオン表面上の脂質に対する結合に際してのいずれかで、あるいはその両方で、HIV−1を中和する能力を、ある程度有する抗体を作製しうる。さらに、自己免疫疾患患者は、恒常的に、またはHIV−1感染後のいずれかで、防御中和型抗体を作製しうる。
【0021】
すなわち、本発明には、SLE患者ならびに免疫制御が混乱した他の患者(すなわち、HIVエンベロープと交差反応性である自己抗体を産生する、原発性自己免疫疾患、または上述のものなどの非HIV感染の患者)由来のB細胞の、HIVエンベロープと交差反応する抗体(2F5様および4E10様抗体など)の供給源を提供する不死細胞株の産生における使用が含まれる(Stieglerら, AIDS Res. Hum. Retroviruses 17:1757−1765(2001)、Armbrusterら, J. Antimicrob. Chemother. 54:915−920(2004)、米国特許5,831,034を参照されたい)。都合よくは、B細胞は、HIVに感染しているか、またはエンベロープに基づくHIVワクチンを投与されているSLE患者由来である(理論によって束縛されることは望ましくないが、HIV感染またはワクチン接種は、プライミングされたB1細胞(例えばカルジオリピン−プライミングB1細胞)を「ブースト」して、2F5および/または4E10様抗体を産生し、そして除去(正常被験体においては起こる)をエスケープしうるように働く−「ブースト」は、生じたIg遺伝子が、2F5およびまたは4E10様エピトープに適合するか、または広範中和性抗体を誘導するが、正常被験体においては除去される他のgp160エピトープに適合する抗体をコードするように、体細胞過剰突然変異を誘発しうる)。B細胞由来の不死細胞株の産生は、当該技術分野に認識される多様な技術のいずれかを用いて達成可能であり、これには、限定されるわけではないが、ハイブリドーマを産生する、こうしたB細胞と骨髄腫細胞との融合が含まれる。本発明にはまた、HIVエンベロープと反応しないが、むしろウィルス感染細胞およびまたはビリオンと反応する正常被験体由来および自己免疫疾患患者由来の抗体も含まれ、すなわちこれらの抗体は、ウイルスまたはウイルス感染細胞上の脂質に結合する(実施例6を参照されたい)。
【0022】
ひとたび選択されたら、こうした交差反応性抗体(またはその結合性断片)をコードする配列をクローニングし、そして増幅してもよい(例えば、Huseら, Science 246:1275−1281(1989)、およびWO 91/17271、WO 92/01047、米国特許5,877,218、5,871,907、5,858,657、5,837,242、5,733,743および5,565,332に記載されるようなファージ−ディスプレイ技術を参照されたい)。次いで、当該技術分野に認識される技術を用いて、療法用の可溶性抗体を設計しそして産生してもよい(Stieglerら, AIDS Res. Hum. Retroviruses 17:1757−1765(2001)、Armbrusterら, J. Antimicrob. Chemother. 54:915−920(2004))。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞中で、適切な抗体を産生してもよい。
【0023】
このアプローチにしたがって、抗体(またはその結合性断片)を、約10〜100mg/用量の範囲の、好ましくは25mg/用量の用量で投与してもよい。投薬量および頻度は、抗体(またはその結合性断片)、患者および求める効果によって多様でありうる(Armbrusterら, J. Antimicrob. Chemother. 54:915−920(2004)を参照されたい)。上述の抗体を予防的にまたは療法的に用いてもよい。
【0024】
抗体(またはその結合性断片)、あるいは抗体または結合性断片をコードするDNAを、キャリアー(例えば薬学的に許容されうるキャリアー)とともに配合して、そして例えば、非経口、静脈内、皮下、筋内または鼻内経路によって投与してもよい。
【0025】
最後に、ラクダ(camel)(Ramslandら, Exp. Clin. Immunogenet. 18:176−198(2001)、Litmanら, Annu. Rev. Immunol. 7:109−147(1999))、ウシ(cow)(Ramslandら, Exp. Clin. Immunogenet. 18:176−198(2001)、Litmanら, Annu. Rev. Immunol. 7:109−147(1999))およびサメ(shark)(Ramslandら, Exp. Clin. Immunogenet. 18:176−198(2001)、Litmanら, Annu. Rev. Immunol. 7:109−147(1999)、Hohmanら, Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 90:9882−9886(1993))などの動物種は、非常に長いCDR3長を有し、そしてその抗体は、多重反応性を示す。HIVエンベロープに対する多重反応性を示す、これらの操作されたCDR3は、HIVに対する、そして多くの感染性病原体に対する、強力な療法抗体(例えばキメラおよびヒト化抗体を含むモノクローナル抗体、ならびにその抗原結合性部分)を作製するために使用可能である。
【0026】
特定の態様において、本発明はさらに、合成リポソーム−ペプチド・コンジュゲートに、そしてHIV−1に対する広範中和性抗体を生成するための免疫原として該コンジュゲートを用いる方法に関する。本発明のこの態様は、HIV−1 gp41のMPERに結合する広範中和性抗体の名目上のエピトープペプチドを合成リポソーム内に包埋するための組成物および方法を提供する。抗HIV−1中和抗体の生成および抗原特異的B細胞応答の検出のための免疫戦略およびプロトコルもまた提供する。
【0027】
本発明のこの態様にしたがって、広範中和性抗HIV抗体の名目上のエピトープおよびGTH1などの疎水性リンカーを含むペプチド配列(配列に関しては図6を参照されたい)を合成リポソーム内に包埋する。好ましい側面において、名目上のエピトープは、上述のように、HIV−1エンベロープgp41のMPER中に存在する、mAb 2F5(ELDKWAS)または4E10(WFNITNW)のものである。エピトープは、それに特異的な抗体が、比較的制約されないアクセスを有するようにペプチド中に存在してもよいし、あるいはMPER領域の天然配向を模倣するように、疎水性リンカーに関連してペプチド中に存在していてもよい。本発明で使用するのに適したペプチド配列の特定の例を図6に示す。さらに、MPER gp41領域を、ヒト細胞発現系中、組換えワクシニアウイルス中で組換えタンパク質として発現し、そしてリポソームとの会合を容易にするため、gp41構成要素のNまたはC末端で両親媒性アルファらせんを伴って配合してもよい(図7)。
【0028】
本発明で使用するのに適したリポソームには、限定されるわけではないが、POPC、POPE、DMPA(またはスフィンゴミエリン(SM))、リゾホスホリルコリン、ホスファチジルセリン、およびコレステロール(Ch)を含むものが含まれる。当業者は最適比を決定可能であり、例には、45:25:20:10の比のPOPC:POPE(またはPOPS):SM:ChまたはPOPC:POPE(またはPOPS):DMPA:Chが含まれる。使用可能なリポソームの別の配合物には、9:7.5:1のモル比で配合された、DMPC(1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン)(またはリゾホスホリルコリン)、コレステロール(Ch)およびDMPG(1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−rac−(1−グリセロール)が含まれる(Wassefら, ImmunoMethods 4:217−222(1994); Alvingら, G. Gregoriadis(監修), Liposome technology 第2版, 第III巻 CRC Press, Inc., フロリダ州ボーカラトーン(1993); Richardsら, Infect. Immun. 66(6):285902865(1998))。上述の脂質組成物を脂質Aと複合体化して、そしてリン脂質に対する抗体応答を誘導する免疫原として用いてもよい(Schusterら, J. Immunol. 122:900−905(1979))。好ましい配合物は、Schusterら, J. Immunol. 122:900−905(1979)にしたがった、脂質Aと複合体化された、60:30:10の比のPOPC:POPS:Chを含む。こうした配合物に含まれるのに適したペプチドには、限定されるわけではないが、2F5−GTH1、4E10−GTH1、SP8926−GTH1、およびSP8928−GTH1が含まれる。
【0029】
ペプチド対総脂質の最適比は、例えば、ペプチドおよびリポソームによって多様でありうる。実施例3のペプチドに関しては、1:420の比が好適であった。
上述のリポソームを、β2糖タンパク質1の組換えドメインVと混合して、このドメインに対する抗体を誘発してもよい。
【0030】
標準的技術を用いて、リポソーム−ペプチド・コンジュゲートを調製してもよい(以下の実施例3および4も参照されたい)。
本発明のペプチド−リポソーム免疫原を、頑強な抗体応答を促進する脂質A、oCpG、TRL4アゴニストまたはTLR7アゴニストなどのアジュバントとともに配合してもよいし、そして/または投与してもよい(Raoら, Immunobiol. Cell Biol. 82(5):523(2004))。使用可能な他のアジュバントにはミョウバンおよびQ521(存在するB細胞寛容を中断しないもの)が含まれる。好ましい配合物は、B細胞寛容の型を中断するように設計されたアジュバント、例えばEmulsigen(水中油エマルジョン)などの油エマルジョン中のoCpGを含む(Tranら, Clin. Immunol. 109(3):278−287(2003))。さらなる適切なアジュバントには、2005年12月14日出願の11/302,505に記載されるものが含まれ、該出願に開示されるTRLアゴニストが含まれる。
【0031】
ペプチド−リポソーム免疫原を、例えば、IV、鼻内、皮下、腹腔内、膣内、または直腸内投与してもよい。投与経路は、例えば、患者、コンジュゲートおよび/または求める効果によって多様であり、同様に投与措置によって多様でありうる。ペプチド−リポソーム免疫原は予防的使用に好ましいが、感染個体への投与はウイルス負荷を減少させうる。
【0032】
以下の実施例3に記載するように、ペプチド−リポソーム・コンジュゲートをMPER特異的B細胞応答の検出のための試薬として用いてもよい。例えば、ペプチド−リポソーム構築物を、検出可能標識、例えばフルオレセインなどの蛍光標識とコンジュゲート化してもよい。フルオレセイン−コンジュゲート化リポソームを、曝露されたMPER領域を提示するHIV−1 Envタンパク質で免疫された宿主における抗MPER特異的B細胞応答の検出のための試薬として、フローサイトメトリーアッセイで用いてもよい。これらの試薬を用いて、末梢血B細胞を研究して、免疫後の循環メモリーB細胞数を測定することによって、抗MPER抗体誘導のための免疫有効性を決定してもよい。以下の実施例に提示するデータは、名目上のエピトープペプチド脂質コンジュゲートに対するHIV−1クラスターIIモノクローナル抗体の結合に関連するコンホメーション変化が、HIV−1中和と相関することを示す(実施例5を参照されたい)。
【0033】
HIVが、HIVに対して免疫系をブラインドにすることによって、宿主免疫応答をエスケープするように進化してきたのであれば、他の感染性病原体が同様に進化してきた可能性もあることが、前記を読むと理解されるであろう。すなわち、これは、エスケープの一般的機構を代表しうる。もしそうであれば、本明細書記載のものと匹敵するアプローチは、こうした他の病原体の治療に十分に有用であると予期されうる。
【0034】
本発明の特定の側面が、以下の限定されない実施例により詳細に記載される(Maksyutovら, J. Clin. Virol. Dec; 31 Suppl 1:S26−38(2004)、米国出願20040161429、およびHaynesら, Science 308:1906(2005)もまた参照されたい)。
【0035】
本出願は、2007年6月22日出願の米国出願第11/812,992号、2007年4月13日出願の米国出願第11/785,077号、2006年4月12日出願のPCT/US2006/013684、2005年4月12日出願の米国仮出願第60/670,243号、2005年4月27日出願の米国仮出願第60/675,091号、2005年7月12日出願の米国仮出願第60/697,997号、および2006年1月10日出願の米国仮出願第60/757,478号に関連し、これら出願の前内容は、本明細書に援用される。
【実施例】
【0036】
実施例1
広範反応性中和抗体を誘導可能なHIV−1免疫原の設計は、HIV−1ワクチン開発の大きな目的である。HIV−1を広範に中和する稀なヒトmabが存在する一方、HIV−1エンベロープ免疫原は、これらの抗体特異性を誘導しない。この研究において、2つの最も広範に反応性であるHIV−1エンベロープgp41ヒトmab、2F5および4E10は、カルジオリピンと反応性である多重特異性自己抗体であることが立証された。したがって、gp41膜近位エピトープが自己抗原を模倣しているため、現在のHIV−1ワクチンは、膜近位gp41エピトープに対する抗体を誘導しない可能性もある。
【0037】
実験詳細
モノクローナル抗体。Mab 2F5、2G12、および4E10を、記載されるように産生した(Steiglerら, AID Res. Human Retroviruses 17:1757(2001)、Purtscherら, AIDS 10:587(1996)、Trkolaら, J. Virol. 70:1100(1996))。IgG1b12(Burtonら, Science 266:1024−1027(1994))は、Dennis Burton、Scripps Institute、カリフォルニア州ラホヤの寛大な贈り物であった。Mab 447−52D(Zolla−Paznerら, AIDS Res. Human Retrovirol. 20:1254(2004))を、AIDS試薬貯蔵所、NIAID、NIHから得た。表1中のmabの残りは、HIV−1感染被験体から産生され、そしてこれらを、記載されるように用いた(Robinsonら, AIDS Res. Human Retrovirol. 6:567(1990)、Binleyら, J. Virol. 78:13232(2004))。
【0038】
自己抗体アッセイ。抗カルジオリピンELISAを、記載されるように用いた(DeRoeら, J. Obstet. Gynecol. Neonatal Nurs. 5:207(1985)、Harrisら, Clin. Exp. Immunol. 68:215(1987))。ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、およびスフィンゴミエリン(すべて、Sigma、ミズーリ州セントルイスから購入した)に対するmab反応性に関してアッセイするため、同様のELISAを適応させた。SS−A/Ro、SS−B/La、Sm、リボ核タンパク質(RNP)、Scl−70、Jo−1、二重鎖(ds)DNA、セントロメアB、およびヒストンに対するmab反応性に関して、The Luminex AtheNA Multi−Lyte ANA試験(Wampole Laboratories、ニュージャージー州プリンストン)を用いた。アッセイしたMab濃度は、150μg、50μg、15μg、および5μg/mlであった。各濃度(アッセイあたり、それぞれ、0.15μg、0.05μg、0.015μg、および0.005μg)10μlを、Luminex蛍光ビーズとインキュベーションし、そして製造者の仕様書にしたがって、試験を実行した。表1中の値は、試験あたり0.15μgを添加したアッセイ結果である。さらに、SS−A/Ro(ImmunoVision、アリゾナ州スプリングデール)およびdsDNA(Inova Diagnostics、カリフォルニア州サンディエゴ)に関するELISAもまた用いて、これらの自己抗原特異性を確認した。対比染色としてEvans Blueを、そしてFITC−コンジュゲート化ヤギ抗ヒトIgG(Zeus Scientific、ニュージャージー州ラリタン)を用い、Hep−2スライド上で間接免疫蛍光を用いて、ヒト上皮Hep−2細胞に対する反応性を決定した。Nikon Optiphot蛍光顕微鏡上で、スライドの写真を撮影した。比濁法によって、リウマトイド因子測定を実行した(Dade Behring, Inc(デラウェア州ニューアーク)。記載されるような活性化部分トロンボプラスチン(aPTT)および希釈ラッセルクサリヘビ(Russell viper)毒試験によって、ループス性抗凝固因子アッセイを実行した(MollおよびOrtel, Ann. Int. Med. 127:177(1997))。ループス性抗凝固因子アッセイのため、40μlの1mg/mlの2F5、4E10および対照mabを、プールした正常血漿に添加した(最終mab濃度、200μg/ml)。抗β2糖タンパク質−1アッセイは、ELISA(Inova Diagnostics, Inc.)であった。dsDNA、SS−A/Ro、SS−B/La、Sm、RNPおよびヒストンに対する血清抗体は、SLE患者で生じ;セントロメアBおよびscl−70(トポイソメラーゼI)に対する血清抗体は全身性硬化症で見出され;そしてJo−1に対する抗体は、多発性筋炎と関連して見出される(RoseおよびMacKay, The Autoimmune Diseases, 第3版 Academic Press, カリフォルニア州サンディエゴ(1998))。
【0039】
結果
mab 2F5および4E10、2つのさらなる稀な広範反応性中和mab(2G12およびIgG1b12)、および31の一般的な抗HIV−1 Envヒトmabsと、カルジオリピン(Robinsonら, AIDS Res. Human Retrovirol. 6:567(1990))との反応性を決定した(表1)。2F5および4E10はどちらもカルジオリピンと反応したが、33の他のmabはすべて陰性であった。Mab 2F5はまた、SS−A/Ro、ヒストンおよびセントロメアB自己抗原とも反応し、一方、mab 4E10は、全身性エリテマトーデス(SLE)自己抗原、SS−A/Roと反応した。2F5および4E10はどちらも、散在性の細胞質および核パターンで、Hep−2ヒト上皮細胞と反応した(Robinsonら, AIDS Res. Human Retrovirol. 6:567(1990))(図2)。したがって、2F5および4E10はどちらも、多重特異性自己反応性によって特徴付けられる。
【0040】
表1.
【0041】
【表1】
【0042】
Ku32 mabがSmと反応したことを除いて、すべてのMabは、La(SSB)、Sm、Scl−70およびJo−1との反応性に関するアッセイにおいて陰性であった。Ro(SSA)、dsDNA、セントロメアB、ヒストンおよびカルジオリピン抗体価は、標準曲線に基づいた相対的単位である。−=陰性。
【0043】
2つの他の稀な中和mabのうち、一方のmab、2G12は自己反応性でなかったが、もう一方のCD4結合部位に対するmab、IgG1b12(Stieglerら, AIDS Res. Hum. Retroviruses 17:1757(2001))は、リボ核タンパク質、dsDNA、およびセントロメアBと、ならびにHep−2細胞と、細胞質および核パターンで反応した(表1および図2)。研究した31のより一般的な抗HIV−1 mabのうち、CD4結合部位近傍に結合特異性を持つ2つのmab(A32、1.4G)および非中和gp41エピトープに対するmab(2.2 B)のみが、多重反応性の証拠を示した(表1)。
【0044】
2F5および4E10が、SLE関連抗リン脂質症候群で見られる血栓形成促進性抗カルジオリピン抗体に類似であるかどうかを決定するため(Burtonら, Science 266:1024−1027(1994))、両方のmabを、ループス性抗凝固因子活性に関して、そしてプロトロンビン(PT)、ベータ−2糖タンパク質−1、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、およびスフィンゴミエリン(SM)に結合する能力に関して試験した(Robinsonら, AIDS Res. Human Retrovirol. 6:567(1990))。2F5は、これらの反応性に関して陰性であったが、4E10はループス抗凝固因子反応性を有し、そしてPS、PC、PEと強く反応し、SMおよびPTと弱く反応し、そしてβ2糖タンパク質−1との反応は陰性であった(図3を参照されたい)。
【0045】
抗カルジオリピン抗体は、自己免疫疾患または感染のため、免疫制御が混乱した患者で見出されうる(Burtonら, Science 266:1024−1027(1994))。抗カルジオリピン自己抗体は、梅毒、ハンセン病、リーシュマニア症、エプスタイン・バー・ウイルス、およびHIV−1によって誘導される(Burtonら, Science 266:1024−1027(1994))。SLEで見出される抗カルジオリピン抗体とは異なり、「感染性」抗カルジオリピン抗体は、めったに血栓形成促進性でなく、そして一過性である。したがって、4E10は、自己免疫疾患における抗カルジオリピン抗体と同様であり、そして2F5は、感染性疾患における抗カルジオリピン抗体と同様である。
【0046】
長いCDR3長を持つ自己反応性B細胞クローンは通常、除去されるか、または自己抗原に対して寛容にされる(Zolla−Paznerら, AIDS Res. Human Retrovirol. 20:1254(2004))。したがって、HIV−1は、自己抗体エピトープの模倣体として保存される中和エピトープを有することによって、膜近位抗体応答をエスケープするように進化してきた可能性もある。これらのデータによって、現在のHIV−1ワクチンは、頑強な膜近位抗エンベロープ中和抗体をルーチンには誘導せず、これはこれらのエピトープをターゲットとする抗体が、通常は除去されるか、またはHIV−1 Envによる抗原刺激に際して寛容にされる、自己反応性B細胞クローンに由来するためであると示唆される。これらの観察はまた、こうしたクローンを除去不能である可能性もあるSLE患者において、HIV−1の発生が稀であることも説明しうる(Foxら, Arth. Rhum. 40:1168(1997))。
【0047】
実施例2
自己抗原として、カルジオリピン(層状および六方晶相)、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](POPS)(層状および六方晶相)、1−パルミトイル−2−オレオイル−ホスファチジルエタノールアミン(POPE)(層状相)、およびジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)(六方晶相)を用いて、本発明の自己抗原が、中和抗体の産生を誘導する能力を研究した。モルモット(群あたり4匹)を、10;gのoCpG中のリン脂質(カルジオリピン層状相、カルジオリピン六方晶相、POPS層状相、POPS六方晶相、POPE層状相またはDOPE六方晶相)で、各免疫を2週間ずつ離して、4回免疫した。4回のリン脂質免疫後、10:gのoCpGと100:gのM群コンセンサスEnv、CON−S gp140CFIオリゴマー(すなわち図4Aに示すタンパク質のCFI型)を用いて、IPで最終免疫を行った。
【0048】
以下に記載するように、TMZ細胞におけるEnv偽型中和アッセイを用いて、中和アッセイを実行した(Weiら, Nature 422:307−312(2003)、Derdeynら, J Virol 74:8358−8367(2000)、Weiら, Antimicrob Agents Chemother 46:1896−1905(2002)、Plattら, J Virol 72:2855−2864(1998)、Mascolaら, J. Virol. 79:10103−10107(2005)):
細胞培養
TZM−blは、接着細胞株であり、そしてこれをT−75培養フラスコ中で維持する。完全増殖培地(GM)は、10%ウシ胎児血清(FBS、熱不活化)およびゲンタマイシン(50μg/ml)を補ったD−MEMからなる。トリプシン/EDTAでの処理によって、細胞単層を破壊し、そして除去する:
TZM−bl細胞単層を破壊するためのトリプシン−EDTA処理:集密(confluency)状態で、ルーチン維持のために細胞を分割する際、そしてアッセイ用に細胞を調製する際、トリプシン/EDTAでの処理によって、T−75培養フラスコ中に維持した細胞単層を破壊しそして除去する。
【0049】
1. 培地をデカントし、そして6mlの滅菌PBSで単層をリンスすることによって、残った血清を除去する。
2. 細胞単層を覆うように、2.5mlの0.25%トリプシン−EDTA溶液をゆっくりと添加する。室温で30〜45秒間インキュベーションする。トリプシン溶液をデカントし、そして37℃で4分間インキュベーションする。細胞が剥離するのを待つ間、フラスコを叩いたりまた振盪したりすることによって細胞を攪拌してはならない。
【0050】
3. 10mlのGMを添加し、そして穏やかにピペット操作することによって細胞を懸濁する。細胞を計数する。
4. 15mlのGM中、新しいT−75培養フラスコにおよそ106細胞を植え付ける。培養を、5%CO2/95%空気環境において、37℃でインキュベーションする。細胞はおよそ3日ごとに分割しなければならない。
【0051】
ウイルスストック
クローニングされていないウイルスのストックを、PBMCまたはT細胞株いずれかで産生してもよい。293T細胞などの適切な細胞種にトランスフェクションすることによって、偽ウイルスを産生してもよい。すべてのウイルスストックは、低速遠心分離およびろ過(0.45ミクロン)によって細胞不含にして、そして20%FBSを含有するGM中、−80℃で保存すべきである。
【0052】
TCID50測定
中和アッセイを行う前に、TZM−bl細胞中、単細胞感染アッセイ(2日インキュベーション)において、各ウイルスストックのTCID50を測定する必要がある。TCID50アッセイにおいて、陽性感染を定量化する際には、2.5倍バックグラウンドRLUのカットオフ値を用いる。
【0053】
中和アッセイにおいて、ウイルスがあまりにも多いと、強いウイルス誘導性細胞変性効果が生じて、正確な測定に干渉する可能性もある。大部分のウイルスストックは、少なくとも10倍希釈して、細胞殺傷を回避しなければならない。ウイルス誘導性細胞変性効果を最小限にしつつ、ウイルス感染性において2対数の減少を測定する能力を維持するため、中和アッセイのために200 TCID50の標準的接種物を選択した。異なる株は、その細胞変性性が有意に多様であることに注目しなければならない。光学顕微鏡法のもとで、合胞体形成を視覚的に検査することによって、ウイルス誘導性細胞変性効果を監視してもよい。細胞変性効果はまた、TCID50アッセイにおける高ウイルス用量での発光の減少としても観察可能である。
【0054】
中和抗体アッセイプロトコル
注1:別に明記しない限り、加湿37℃、5%CO2インキュベーター中ですべてのインキュベーションを行った。
【0055】
注2: 1μMインジナビルを含有するDEAE−GM中で、複製コンピテントウイルスを用いたアッセイを行う。
1. 96ウェル平底培養プレートの形式を用いて、第1列のすべてのウェルにGM 150μlを入れる(細胞対照)。第2〜11列のすべてのウェルに100μlを入れる(第2列はウイルス対照になるであろう)。第3〜12列、第H行のすべてのウェルにさらに40μlを入れる(試験試料を受け取るため)。
【0056】
2. 11μlの試験試料を第3および4列、第H行の各ウェルに添加する。11μlの第二の試験試料を第5および6列、第H行の各ウェルに添加する。11μlの第三の試験試料を第7および8列、第H行の各ウェルに添加する。11μlの第四の試験試料を第9および10列、第H行の各ウェルに添加する。11μlの第五の試験試料を第11および12列、第H行の各ウェルに添加する。第H行の試料を混合し、そして50μlを第G行にトランスファーする。第A行まで、試料のトランスファーおよび希釈を反復する(これらは連続3倍希釈である)。最後のトランスファーおよび混合が完了した後、第3〜12列、第A行のウェルから、殺菌剤の廃棄物容器中に、50μlを廃棄する。
【0057】
3. 周囲温度水槽中に入れることによって、必要な数のウイルス・バイアルを融解する。完全に融解したら、GM中でウイルスを希釈して、4,000TCID50/mlの濃度を達成する。
【0058】
ウイルスの細胞不含ストックをあらかじめ調製し、そしておよそ1mlの作業アリコットで凍結保存しなければならない。
4. 第2〜12列、第A〜H行のすべてのウェルに、細胞不含ウイルス50μl(200 TCID50)を分注する。各トランスファー後にピペット操作によって混合する。各トランスファー間で、40ml滅菌PBSを含有する試薬貯蔵所中でピペットチップをリンスして、キャリー・オーバーを回避する。
【0059】
5. プレートを覆い、そして1時間インキュベーションする。
6. DEAEデキストラン(37.5μg/ml)を含有するGM中、1x105細胞/mlの密度で、TZM−bl細胞の懸濁物を調製する(使用およそ10〜15分前にトリプシン処理する)。100μlの細胞懸濁物(ウェルあたり10,000細胞)を第1〜12列、第A〜H行中の各ウェルに分注する。各トランスファー間で、滅菌PBSが充填された試薬貯蔵所中でピペットチップをリンスして、キャリー・オーバーを回避する。DEAEデキストランの最終濃度は15μg/mlである。
【0060】
7. プレートを覆い、そして48時間インキュベーションする。
8. 各ウェルから培地150μlを除去し、およそ100μlを残す。100μlのBright GloTM試薬を各ウェルに分注する。室温で2分間インキュベーションして、完全な細胞溶解を可能にする。ピペット操作(少なくとも2回の動作)によって混合し、そして対応する96ウェル黒プレートに150μlをトランスファーする。ルミノメーター中でプレートを直ちに読み取る。
【0061】
9. 試験ウェル(細胞+血清試料+ウイルス)および細胞対照ウェル(細胞のみ、第1列)間の平均RLU相違を計算し、この結果をウイルス対照(細胞+ウイルス、第2列)および細胞対照ウェル(第1列)間の平均RLU相違で割り、1から引いてそして100を乗じることによって、中和パーセントを決定する。RLUを50%減少させるのに必要な血清希釈の逆数として、中和抗体力価を表す。
【0062】
図5に示すように、DOPE(六方晶相)を投与された動物は、170の中和力価を有した。
実施例3
免疫原設計
疎水性リンカー(GTH1)に連結されたmAb 2F5および4E10の名目上のエピトープそれぞれを含むペプチド配列を合成し、そして合成リポソーム内に包埋した(図6)。脂質二重層の遠位端に2F5および4E10エピトープ配列を持つ第一世代の免疫原を設計した(図6A)。これらの構築物は、それぞれのエピトープに対するmAbの拘束されないアクセスを提供した。2F5および4E10 mAbエピトープ配列が疎水性リンカーの近位に連結された、MPER領域の天然配向を模倣する、第二世代構築物が設計されている(図6A、6B)。
【0063】
合成リポソームの組成は、クロロホルム中に溶解された、以下のリン脂質、POPC(1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン)、POPE(1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン)、DMPA(1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート)、およびコレステロールを含んだ(Avanti Polar Lipids(アラバマ州アラバスター)より購入)。
【0064】
クロロホルム耐性試験管中、適切なモル量のリン脂質(POPC:POPE:DMPA:Ch=45:25:20:10)を分注することによって、合成リポソームを調製した。ボルテックスによってリン脂質を混合し、そして穏やかな窒素流のもとに、ドラフト中で混合物を乾燥させた。高圧下で脂質を保存する(15時間)ことによって、クロロホルムのいかなる残渣も除去した。PBSまたはTBS緩衝液、pH7.4を添加し、そして37℃で10〜30分間インキュベーションしつつ、断続的に勢いよくボルテックスしてリン脂質を再懸濁することによって、リン脂質の水性懸濁物を調製した。次いで、リン脂質の乳白色の均質な懸濁物を、超音波処理装置槽(Misonix Sonicator 3000、Misonix Inc.、ニューヨーク州ファーミングデール)で超音波処理した。超音波処理装置は、周期あたり総超音波処理45秒間の3連続周期を実行するようにプログラミングされた。各周期には、5秒間の超音波パルス(70ワット出力)、その後の12秒間のパルスオフ期が含まれた。超音波処理終了時、層状リポソームの懸濁物を4℃で保存した。
【0065】
HIV−1 MPERペプチドGTH1−2F5およびGTH1−4E10(図6)を70%クロロホルム、30%メタノール中に溶解した。45:25:20:10(POPC:POPE:DMPA:コレステロール)のモル比で、脂質のクロロホルム溶液をペプチド溶液に添加した。各ペプチドを、1:420のペプチド:総リン脂質比に添加した。混合物を上述のようにボルテックスし、次いで乾燥させ、そして再懸濁した。
【0066】
BAcore L1センサーチップ上にリポソームを捕捉して、疎水性リンカーを介した脂質二重層の固定を可能にした後、各ペプチド−脂質コンジュゲートに対するmAb結合の特異性を試験する結合アッセイを行った。合成リポソーム、またはペプチド−脂質コンジュゲートのいずれかを含む各センサー表面上に、2F5、4E10および対照mAb(A32または17b)を注入し、そしてBIAcore 3000装置上で結合を監視した(図8〜11)。
【0067】
免疫戦略
免疫戦略は、寛容の一時的な中断を可能にする措置を取り込んだ。プロトコルは、マウスにおける抗dsDNA抗体の産生のため、寛容を中断するために用いられてきているTLR9リガンドであるoCpGの使用を伴う(Tranら, Clin. Immunol. 109(3):278−287(2003))。ペプチド−リポソーム・コンジュゲートを、EmulsigenにoCpGを加えたアジュバントと混合した(1:1)。375μLのEmulsigen、250μLのoCpGおよび625μLの生理食塩水を混合することによって、Emulsigen混合アジュバント(2x)を調製した。各モルモットを、21日間隔で、250μgのペプチドのみまたは等量のペプチドを含むペプチド−リポソーム・コンジュゲートのいずれかで免疫した。初回免疫、そして続く免疫各々の前に、血清試料を前採血として採取した。ペプチドエピトープに対する結合に関してELISAアッセイ(図12)によって、そしてウイルス中和アッセイ(表2)のため、血清試料を分析した。図12中のデータは、GTH1−4E10リポソームで免疫した2匹のモルモット由来の血清の4E10ペプチドに対する強い反応性を示し、一方、4E10ペプチド免疫動物由来の血清においては、低レベルの反応性しか観察されなかった。陽性血清はまた、どちらも、HIV−1 MN株も中和した(表2)。
【0068】
【表2】
【0069】
抗原特異的B細胞応答の検出におけるペプチド−リポソーム・コンジュゲートの適用
上述のペプチド−リポソーム・コンジュゲートは、MPER特異的B細胞応答の検出用の試薬として利用されてきている。脂質組成物中にフルオレセイン−POPEを取り込むことによって、ペプチド−リポソーム構築物(2F5および4E10)をフルオレセインとコンジュゲート化した。フルオレセイン−POPEを45:55の比で非コンジュゲート化POPEと混合し、そして次いで、上述のようなモル比で、残りの脂質と混合した。BIAcore結合アッセイにおいて、フルオレセインとコンジュゲート化された2F5および4E10−ペプチド−リポソームはどちらも、それぞれのmAbに対する結合特異性を保持した(図11)。
【0070】
実施例4
ペプチド−脂質コンジュゲートの生成。クロロホルム中に溶解されたリン脂質、POPC(1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン)、POPE(1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン)、DOPE(1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジル・エタノールアミン);DMPA(1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート)、およびコレステロールをAvanti Polar Lipids(アラバマ州アラバスター)より購入した。クロロホルム耐性試験管中で、適切なモル量のリン脂質を分注することによって、リン脂質リポソームを調製した。モル比45:25:20:10(POPC:POPE:DMPA:コレステロール)で、脂質のクロロホルム溶液をペプチド溶液に添加した。HIV−1膜近位ペプチドを70%クロロホルム、30%メタノール中に溶解した。各ペプチドを1:420のペプチド:総リン脂質のモル比まで添加した。穏やかにボルテックスすることによってリン脂質を混合し、そして穏やかな窒素流のもとに、ドラフト中で混合物を乾燥させた。高圧下で脂質を保存する(15時間)ことによって、クロロホルムのいかなる残渣も除去した。PBSまたはTBS緩衝液、pH7.4を添加し、そしてTmより高い温度で10〜30分間維持しつつ、断続的に勢いよくボルテックスしてリン脂質を再懸濁することによって、リン脂質の水性懸濁物を調製し、その後、超音波処理装置槽(Misonix Sonicator 3000、Misonix Inc.、ニューヨーク州ファーミングデール)で超音波処理した。超音波処理装置は、周期あたり総超音波処理45秒間の3連続周期を実行するようにプログラミングされた。各周期には、5秒間の超音波パルス(70ワット出力)、その後の12秒間のパルスオフ期が含まれた。超音波終了時、層状リポソームの懸濁物を4℃で保存し、そしてBIAcoreセンサーチップ上で捕捉する前に、上述のように再び超音波処理した。
【0071】
ペプチド−脂質コンジュゲートの設計。ペプチドを合成し、そして逆相HPLCによって精製し、そして質量分析によって純度を確認した。この研究で用いられるペプチドには、以下が含まれる−HIV−1 gp41 2F5エピトープペプチド−2F5−GTH1(QQEKNEQELLELDKWASLWN−YKRWIILGLNKIVRMYS);およびHIV−1 gp41 4E10エピトープペプチド−4E10−GTH1(SLWNWFNITNWLWYIK−YKRWIILGLNKIVRMYS)。リポソームに取り込まれるべきさらなるペプチドには−SP8926−GTH1(EQELLELDKWASLWN−YKRWIILGLNKIVRMYS);およびSp8928−GTH1(KWASLWNWFDITNWL−YKRWIILGLNKIVRMYS)が含まれる。
【0072】
ペプチド−脂質コンジュゲート。これらのペプチドは各々:
i)POPC:POPE:DMPA:コレステロール
ii)POPC:POPS
iii)POPC:POPS:リゾPC
iv)POPC:POPE:スフィンゴミエリン:コレステロール
を含む多様な組成の合成リポソーム内に取り込まれるであろう。
【0073】
リポソームは、モノホスホリル脂質A(Avanti Polar Lipids)を伴いおよび伴わずに複合体化されるであろう。
実施例5
ストレプトアビジンをコーティングしたBIAcoreセンサーチップ(SA)上にビオチン化2F5名目上エピトープペプチド(SP62)を係留し、そして2F5 mabまたは2F5 Fabのいずれかをペプチド表面上に注入した。HR−1ペプチド対照表面上の非特異的シグナルを減じた後、2F5 mAb(46.6〜1800nM)または2F5 Fab(120〜2000nM)の特異的結合を得た。BIAevaluationソフトフェアを用いて、単純ラングミュア等式に対する全体的曲線適合後、Kdを計算した。図13に示すデータは、ペプチドエピトープに対するMPER mAb結合が、単純なモデル(ラングミュア等式)に適合することを示す。
【0074】
2F5ペプチド−脂質(図14、左パネル)または4E10ペプチド−脂質コンジュゲートのいずれかの約600RUを、BIAcore L1センサーチップに係留し、そして次いで、2F5 mAbまたは4E10 mAbを100:g/mLで注入した。曲線適合分析によって、ペプチド−脂質コンジュゲートに結合した両Mabの結合は、2段階コンホメーション変化様式にしたがうことが示される(図14)。重ね合わせ各々において、結合データを黒で示し、そしてこのデータは、観察される総結合応答に相当する。実験的に決定した速度定数から、遭遇(encounter)複合体(赤色)およびドッキング(docked)複合体(青色)の構成要素曲線をシミュレーションした。
【0075】
エンベロープgp140オリゴマーをBIAcore CM5チップ上に係留し、そして図15に示すmAb各々を、各Env表面上に注入した。ヒト・クラスターII mAb、98−6、126−6、および167−Dは、Env gp140に強く結合し、一方、非中和性ネズミMPER mAb、2F5、および4E10との結合は検出されなかった。
【0076】
脂質リンカーとの疎水性相互作用を通じて、合成リポソーム(PC:PE;緑色)、またはカルジオリピン(赤色)をBIAcoreL1センサーチップ上に係留した(図16)。示すmAb(500nM)各々を、脂質表面各々およびブランク対照表面上に注入した。クラスターII mAb 98−6および167−Dの強い結合、ならびにmAb 126−6の中程度の結合が示される(図16A〜C)。いずれの脂質に対しても抗MPER mAb 13H11の結合はまったく観察されなかった。
【0077】
2F5−ペプチド(SP62)脂質コンジュゲートをBIAcore L1表面に係留し、そしてmAb 98−6、167−Dまたは126−6に対する結合を監視した(図17A)。Mab 98−6は、ペプチド−脂質コンジュゲートに強く結合し、一方、mAb 167−Dおよび126−6では比較的より低いアビディティーの結合が検出された。曲線適合分析は、2F5(図17B)および98−6(図17C)の結合に関連する2段階コンホメーション変化を示す;一方、mAb 167−D(図17D)および126−6(図17E)の結合は、単純なモデル(ラングミュア等式)にしたがった。
【0078】
表3に示すデータは、25Fおよび他の原型抗MPERクラスターII mAbの結合および中和特性を示す。直鎖エピトープペプチドに強く結合し、そして2段階コンホメーション変化モデルにしたがうmAb 2F5および98−6のみが、PBMCアッセイにおいて、HIV−1を中和した。
【0079】
【表3】
【0080】
実施例6
抗リン脂質症候群の患者由来のヒト・モノクローナル抗体(CL1、IS4およびIS6と称される)が研究されてきている(表4を参照されたい)(Gilesら, J. Immunol. 177:1729−1736(2006)、Zhuら, Brit. Jour. Haematol. 105:102−109(1999)、Chukwuochaら, Mol. Immunol. 39:299−311(2002)、Zhuら, Brit. Jour. Haematol. 135:214−219(2006)、Pierangeliら, Thromb. Haemost. 84:388−395(2000)、Linら, Arth Rheum 56:1638(2007)、Alamら, J. Immunol. 178:4424−4435(2007)、Zhaoら, Arth. Rheum. 42:2132−2138(1999)、Luら, Arth. Rheum. 52:4018−4027(2005))。IS4およびIS6は病原性抗脂質抗体であり、一方、CL1は非病原性抗脂質自己抗体である(表4)。これらの抗体はいずれも、ビリオン−細胞融合によって初期感染を反映する偽ウイルス阻害アッセイにおいて、HIV偽ウイルスを中和しなかった(Liら, J. Virol. 79:10108−25(2005))(表5)が、これらの抗体3つすべては、HIVのエンドサイトーシスに依存し、そしてin vivoのCD4細胞のHIV感染性を反映するPBMC HIV中和アッセイにおいて、HIV−1を中和した(表6)。CL1がHIVを中和することは:a)ヒトはHIVを中和する非病原性抗脂質抗体を作製可能であり、そしてb)CL1は、HIV感染被験体の治療のために、あるいはHIVまたはHIV感染物質への針、性的または他の曝露後、被験体の曝露後予防の状況において、療法Mabとして安全に使用可能な抗体であるという事実を証明する。
【0081】
【表4】
【0082】
【表5】
【0083】
【表6】
【0084】
Alvingおよび同僚らは、ホスファチジルイノシトールリン酸に対してマウスmabを作製し、そして該mabがPBMCアッセイにおいてHIVを中和することを示した(Wassefら, Mol. Immunol. 21:863−868(1984)、Brownら, Virol. 81:2087−2091(2007)、Beckら, Biochem. Biophys Res. Comm. 354:747−751(2007))。本研究が示すのは、ヒトが自発的に抗脂質抗体を作製可能であり、そしてこれらの抗体が、前例のない方式で、HIVを広範に中和可能であることである。
【0085】
要約すると、自己免疫疾患患者は、ウイルス感染細胞に結合し、そしておそらくHIV膜および宿主膜に対する反応性のために、出芽HIVビリオンに結合する抗体を作製可能である。自己免疫疾患患者由来の特定の抗脂質抗体はまた、エンベロープ三量体とも反応可能である(IS6など)が、すべての抗体が三量体とも反応するのではない(すなわちCL1およびIS4は反応しない)。したがって、HIVエンベロープとの反応性は、これらの抗体において中和の必要条件ではない。
【0086】
これらの研究はまた、gp41脂質複合体を用いて、ヒトにおいてCL1様抗体産生を安全に刺激することが可能でありうることも立証する(Alamら, J. Immunol. 178:4424−4435(2007)、Schusterら, J. Immunol. 122:900−905(1984))。
【0087】
実施例7
図18に示すToll様受容体リガンドをgp41 MPERペプチド免疫原を含むリポソーム型に配合した。
【0088】
MPERペプチドリポソームを含有する脂質AおよびR−848の構築は、膜係留アミノ酸配列を有するMPERペプチド、ならびに合成脂質、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(POPC)、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(POPE)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(DMPA)、およびコレステロールを、それぞれ、モル分率0.216、45.00、25.00、20.00および1.33で同時可溶化する方法を利用した。適切な量のMPERペプチドを、クロロホルム−メタノール混合物(7:3v/v)中に溶解し、脂質Aをクロロホルム中に溶解するかまたはR−848をメタノール中に溶解し、適切な量のリン脂質のクロロホルムストックを、窒素流中で乾燥させ、その後、一晩真空乾燥させた。押出技術を用いて、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中で、乾燥ペプチド−脂質フィルムから、リポソームを作製した。MPERペプチドリポソームと複合体化されたオリゴ−CpGの構築は、POPCの代わりに、陽イオン性脂質、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−エチルホスホコリン(POEPC)を用いた。ペプチド免疫原を含有する陽イオン性リポソームを、所望の用量に適した量のoCpGストック溶液(1mg/ml)と混合することによって、oCpGのコンジュゲート化を行った。
【0089】
図19に示す設計図は、異なるTLRアジュバント;TLR4(脂質A);TLR9(oCpG)およびTLR7(R848)を含有するペプチド−リポソームを示す。
ペプチド−リポソーム構築物中のエピトープに対する2F5 mAbの結合に関するBiacoreアッセイによって、TLRアジュバントの取り込みまたはコンジュゲート化が、HIV中和抗体2F5の結合に影響を及ぼさないことを明らかにした。mAb 2F5および4E10両方の強い結合が観察された(図20を参照されたい)。
【0090】
実施例8
膜貫通ドメインに先行するHIV−1 gp41膜近位外部領域が、広範中和性抗体2F5および4E10のターゲットである。MPERペプチドが、膜界面、ならびに抗体2F5および4E10の脂質反応性に分割されるという事実が、広範中和性gp41 MPER抗体の誘導のための候補免疫原として、MPERペプチド−リポソーム・コンジュゲートの設計につながった。ここで用いたペプチド−リポソーム・コンジュゲート化戦略は、2F5および4E10 mAb両方のエピトープを含有し、そしてHIV−1 gp41の膜貫通ドメイン(gp160の残基656〜707)を取り込んでいるMPERに対応する合成ペプチド、MPER656−TMD(図21)の設計を伴った。
【0091】
MPER656−TMDペプチド−リポソーム・コンジュゲート構築物は、MPER656−TMDペプチド、ならびに合成脂質、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(POPC)、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(POPE)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(DMPA)、およびコレステロールの、それぞれ、モル分率0.43、45.00、25.00、20.00および1.33での同時可溶化を伴った。適切な量のMPER656−TMDペプチドをクロロホルム−メタノール混合物(8:2 v/v)中に溶解し、適切な量のリン脂質のクロロホルムストックと混合し、窒素流中で乾燥させ、その後、一晩真空乾燥させた。押出技術を用いて、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中で、乾燥ペプチド−脂質フィルムから、リポソームを作製した。
【0092】
TMDリポソーム構築物に対するMPERエピトープの提示を評価するため、〜3000 RU BSAが各フローセル上に固定されたBiacore L−1チップ上に、MPER656−GTH1およびペプチド不含合成リポソームを捕捉した(図22)。
【0093】
MPER656−TMD−リポソーム構築物におけるMPER領域の機能的提示の試験は、図23に示す、Biacore L−1チップ上に固定されたリポソームと2F5および4E10 mAbの相互作用を検査することを伴った。2F5 mAbのペプチド特異的結合後の4E10 mAbの結合またはその逆(図23)によって、MPER656−TMDペプチド中に含有されるそれぞれのエピトープの機能的提示が確認された。
【0094】
したがって、2F5および4E10は、gp41 MPER−TMD構築物に強く結合した。したがって、この戦略は、天然TMDを介して係留されたgp41 MPERを提示する新規手段を提供する。HIV−1 gp41 MPERおよび膜貫通ドメインのアミノ酸配列(gp160の残基656〜707)を含有するMPER65−TMDペプチドを用いて、MPERペプチドを合成リポソームに成功裡にコンジュゲート化した。MPER656−TMD−リポソーム・コンジュゲートにおける2F5および4E10 mAb両方のエピトープの機能的ディスプレイによって、この構築物は、2F5および4E10様抗体の誘導に関して試験すべき、非常に有望な免疫原となっている。
【0095】
上記に引用するすべての文書および他の情報供給源は、その全体が本明細書に援用される。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年4月13日出願の米国出願第11/785,077号、2007年6月22日出願の米国出願第11/812,992号および2007年9月28日出願の米国仮出願第60/960,413号から優先権を請求し、これらの出願の全内容は、本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、米国衛生研究所によって授与される助成金番号U01 AI067854のもとに米国政府の援助を受けて作成された。米国政府は、本発明において特定の権利を有する。
技術分野
本発明は、一般的に、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に、そして特に、HIVに対する中和抗体を誘導する方法に、そしてこうした方法で使用するのに適した化合物および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
急性HIV−1感染において最初に作製される抗体は、CD4結合部位(Mooreら, J. Virol. 68(8)5142(1994))、CCR5共受容体結合部位(Choeら, Cell 114(2):161−170(2003))、およびV3ループ(Mooreら, J. Acquir. Immun. Def. Syn. 7(4):332(1994))に対するものである。しかし、これらの抗体は、HIV−1を制御せず、そして容易にエスケープされる(Burtonら, Nature Immun. 5:233−236(2004)、Weiら, Nature 422(6929):307−312(2003))。自家ウイルスに対する中和抗体は、感染50〜60日後に発展するが、異種HIV−1株を中和可能な抗体は、感染1年後まで生じない(Richmanら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100(7):4144−4149(2003)、Weiら, Nature 422(6929):307−312(2003))。
【0004】
稀な広範反応性中和抗体が結合するHIV−1エンベロープ上の4つのエピトープは、CD4結合部位(CD4BS)(mab(モノクローナル抗体)IgG1b12)(Zwickら, J. Virol. 77(10):5863−5876(2003))、ヒトmab 2F5および4E10によって定義される膜近位外部領域(MPER)エピトープ(Armbrusterら, J. Antimicrob. Chemother. 54:915−920(2004)、StieglerおよびKatinger, J. Antimicrob. Chemother. 51:757−759(2003)、Zwickら, Journal of Virology 79:1252−1261(2005)、Purtscherら, AIDS 10:587(1996))(図1)、ならびにヒトmab 2G12によって定義されるマンナングリカンエピトープ(Scanlanら, Adv. Exper. Med. Biol. 535:205−218(2003))である。これらの4つの稀なヒトmabはすべて独特である:2つはIgG3(2F5および4E10)であり、1つはユニークなIg二量体構造を有し(2G12)、1つは非常に疎水性であるCDR3を有し(2F5)(Ofekら, J. Virol. 198:10724(2004))、そして4つすべてにおいて、CDR3が異常に長い(Burtonら, Nature Immunol. 5(3):233−236(2004)、Kunertら, AIDS Res. Hum. Retroviruses 20(7):755−762(2004)、Zwickら, J. Virol. 78(6):3155−3161(2004)、Cardosoら, Immunity 22:163−172(2005))。これらのうち、2F5および4E10様ヒトmabsは非常に稀である。急性HIV−1患者は、MPERまたは2G12エピトープに対する抗体を作製せず(Robinson、未刊行(2005)、Shaw、未刊行(2005))、MPERは、HIVエンベロープのアミノ酸652〜683と定義可能である(Cardosoら, Immunity 22:163−173(2005))(例えば、QQEKNEQELLELDKWASLWNWFDITNWLWYIK)。CD4結合部位(BS)抗体は、一般的に、HIV−1感染初期に作製されるが、これらの抗体は、一般的に、mab IgG1b12によって示される広範囲の中和を持たない(Burtonら, Nat. Immunol. 5(3):233−236(2004))。
【0005】
いくつかのHIV−1エンベロープのエピトープが宿主組織と交差反応することが示されてきており(Pintoら, AIDS Res. Hum. Retrov. 10:823−828(1994)、Douvasら, AIDS Res. Hum. Retrov. 10:253−262(1994)、Douvasら, AIDS Res. Hum. Retrov. 12:1509−1517(1996))、そして自己免疫患者はHIVタンパク質と交差反応する抗体を作製することが示されてきている(Pintoら, AIDS Res. Hum. Retrov. 10:823−828(1994)、Douvasら AIDS Res. Hum. Retrov. 10:253−262(1994)、Douvasら, AIDS Res. Hum. Retrov. 12:1509−1517(1996)、Barthelら, Semin. Arthr. Rheum. 23:1−7(1993))。同様に、自己エピトープに対する免疫応答の誘導が、AIDSにおける自己免疫異常およびT細胞枯渇の原因であると示唆されてきている(Douvasら, AIDS Res. Hum. Retrov. 12:1509−1517(1996)、Zieglerら, Clin. Immunol. Immunopath. 41:305−313(1986))。
【0006】
ペプチドに対する高レベルの抗体を誘導するが、HIV−1初代単離体を広範には中和しない、2F5 mabに対する高アフィニティーペプチドリガンドが作製されてきている(McGaugheyら, Biochemistry 42(11):3214−3223(2003)、Zhangら, J. Virol. 78(15):8342−8348(2004)、Zwickら, J. Virol. 79:1252−1261(2005)における概説)。これらの結果は、2F5に対するペプチドリガンドが抗MPER抗体を誘導するのに適したコンホメーションを取っていないことを意味すると解釈されてきた(Burtonら, Nature Immunology 5(3):233−236(2004)、Zwickら, J. Virol. 79:1252−1261(2005))。安定に発現されたIgG1b12、2G12、2F5および4E10エピトープを用いて、一連の非常に拘束されたHIV−1 Env免疫原が作製されてきており、そしてこれらの免疫原が、モルモットまたはウサギにおいて広範反応性中和抗体を誘導せず、そして特に、MPERエピトープに対する中和抗体を作製しないことが立証されてきている(Liaoら, J. Virol. 78(10):5270−5278(2004); Haynes、未刊行(2005))。これらの結果は、HIV−1エンベロープに対する広範反応性中和抗体が作製不能であるため、これらが正常な動物およびヒトにおいて作製されるかどうかに関する疑問が生じている。
【0007】
長い疎水性CDR3領域は、天然多重反応性自己抗体の典型であり(Meffreら, J. Clin. Invest. 108:879−886(2001)、Ramslandら, Exp. Clin. Immun. 18:176−198(2001))、そしてHIV−1感染患者Bリンパ球は、ポリクローン性に駆動されて、カルジオリピン抗体を作製する(Weissら, Clin. Immunol. Immunopathol. 77:69−74(1995)、Grunewaldら, Clin. Exp. Immunol. 15:464−71(1999))ため、カルジオリピンに対するこれらのおよび他の抗HIV−1 mab、ならびに他の自己抗原反応をアッセイする研究が行われた。本発明は、少なくとも部分的に、2つの広範反応性HIV−1エンベロープgp41ヒトmab、2F5および4E10が、カルジオリピンと反応性である多重特異性自己抗体であるという認識から生じる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Mooreら, J. Virol. 68(8)5142(1994)
【非特許文献2】Choeら, Cell 114(2):161−170(2003)
【非特許文献3】Mooreら, J. Acquir. Immun. Def. Syn. 7(4):332(1994)
【非特許文献4】Burtonら, Nature Immun. 5:233−236(2004)
【非特許文献5】Weiら, Nature 422(6929):307−312(2003)
【非特許文献6】Richmanら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100(7):4144−4149(2003)
【非特許文献7】Zwickら, J. Virol. 77(10):5863−5876(2003)
【非特許文献8】Armbrusterら, J. Antimicrob. Chemother. 54:915−920(2004)
【非特許文献9】StieglerおよびKatinger, J. Antimicrob. Chemother. 51:757−759(2003)
【非特許文献10】Zwickら, Journal of Virology 79:1252−1261(2005)
【非特許文献11】Purtscherら, AIDS 10:587(1996)
【非特許文献12】Scanlanら, Adv. Exper. Med. Biol. 535:205−218(2003)
【非特許文献13】Ofekら, J. Virol. 198:10724(2004)
【非特許文献14】Kunertら, AIDS Res. Hum. Retroviruses 20(7):755−762(2004)
【非特許文献15】Zwickら, J. Virol. 78(6):3155−3161(2004)
【非特許文献16】Cardosoら, Immunity 22:163−173(2005)
【非特許文献17】Robinson、未刊行(2005)
【非特許文献18】Shaw、未刊行(2005)
【非特許文献19】Pintoら, AIDS Res. Hum. Retrov. 10:823−828(1994)
【非特許文献20】Douvasら, AIDS Res. Hum. Retrov. 10:253−262(1994)
【非特許文献21】Douvasら, AIDS Res. Hum. Retrov. 12:1509−1517(1996)
【非特許文献22】Barthelら, Semin. Arthr. Rheum. 23:1−7(1993)
【非特許文献23】Zieglerら, Clin. Immunol. Immunopath. 41:305−313(1986)
【非特許文献24】McGaugheyら, Biochemistry 42(11):3214−3223(2003)
【非特許文献25】Zhangら, J. Virol. 78(15):8342−8348(2004)
【非特許文献26】Liaoら, J. Virol. 78(10):5270−5278(2004)
【非特許文献27】Haynes、未刊行(2005)
【非特許文献28】Meffreら, J. Clin. Invest. 108:879−886(2001)
【非特許文献29】Ramslandら, Exp. Clin. Immun. 18:176−198(2001)
【非特許文献30】Weissら, Clin. Immunol. Immunopathol. 77:69−74(1995)
【非特許文献31】Grunewaldら, Clin. Exp. Immunol. 15:464−71(1999)
【発明の概要】
【0009】
本発明は、一般的に、ヒトHIVに関する。より具体的には、本発明は、HIVに対する中和抗体を誘導する方法に、そしてこうした方法で使用するのに適した化合物および組成物に関する。特定の態様において、本発明は、天然膜結合環境において、MPERエピトープを提示する免疫原、およびこうした免疫原を用いた、寛容を中断する免疫法を提供する。
【0010】
本発明の目的および利点は、以下の説明から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】広範中和性抗体(2F5、4E10)は、宿主膜に対して近位に位置するエピトープに結合する。2F5および4E1 mAbはどちらも、IgG3であり、長いCDR3を有し、そしてHIV−1 gp41(aa 660〜683)膜近位外部領域(MPER)内に位置するエピトープに結合する。
【図2】図2A〜2D。ヒトHep−2上皮細胞と、2F5、4E10、IgG1b12 Mabの反応性。図2Aは、散在性の細胞質および核パターンでHep−2細胞と反応するMab 2F5を示し、図2Bは、2F5と類似のパターンでHEp−2細胞と反応するMab 4E10を示す。図2Cは、散在性細胞質パターンであり、核においては核小体が反応性である、Hep−2細胞と反応するMab IgG1b12を示す。図2C挿入図は、IgG1b12の核反応性を示す(矢印)、細胞のより大きい拡大図を示す。図2Dは、Hep−2細胞に対するMab 1.9Fの陰性反応性を示す。図2A〜2Dにおいてアッセイしたスライドあたりの抗体量は、スライドあたりMab 3.75μgであった。Mab 2F5は、スライドあたり0.125μg(5μg/ml)で、HEp−2細胞に対して陽性であった。Mab 4E10は、スライドあたり0.125μg(5μg/ml)で陽性であり、そしてIgG1b12は、スライドあたり1.25μg(50μg/ml)で陽性であった。すべての図は200倍であり;図2C挿入図は400倍である。示す画像は、実行した3つの実験を代表する実験に由来する。
【図3−1】図3A〜3D。脂質に対するMab 2F5および4E10のアッセイおよび結合特異性。図3Aは、カルジオリピン(CL)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、およびスフィンゴミエリン(SM)に対するMAb 4E10(黒塗りバー)および2F5(白抜きバー)のELISA反応性を示す。4E10および2F5はどちらもカルジオリピンと反応するが、4E10のみが試験した他の脂質と反応した。対照ヒト抗CCR5結合部位MAb 1.7bの反応性は陰性であった(データ未提示)。空のコーティングプレートに対するMAbの反応性は同様に陰性であった(未提示)。カルジオリピンに対するMAb 2F5の結合の特異性を示すため、2F5 150〜300μg/ml、およびMAb 2F5によるHIV−1の中和を遮断する(Kunertら, AIDS 16:667(2002))、抗2F5イディオタイプ・ネズミMAb 3H6の1000μg/mlを用いた。2F5抗イディオタイプは、3回の別個の実験において、カルジオリピンに対するMAb 2F5の結合を平均70%で有意に遮断した(p<0.03)(図3B)。別個のELISAにおいて、MAb 2F5は、660nMの半最大(EC50)応答で、カルジオリピンに結合した(未提示)。図3Cは、カルジオリピンに対する4E10 MAb結合の用量反応曲線を示す。4パラメトリックS字形曲線適合分析から、4E10結合(80nM)の半最大(EC50)応答を計算した。ELISAプレート上にコーティングされたカルジオリピン(1.35μg/ウェル)に対する4E10 MAb結合(0.5nM〜1000nM)のELISAから、結合データを獲得した。図3Dは、4E10エピトープを発現する可溶性HIV−1 Env gp140オリゴマー(CON−S)がカルジオリピンに対する4E10 MAbの結合を阻害することを示す。カルジオリピンに対する4E10結合の阻害のIC50は、145nMであると計算された。10μg/mlの4E10 MAbと混合した多様な濃度のgp140(19.25〜1230nM)を用いて、これを次いで、1.35μgのカルジオリピンを含有するウェルに添加することによって、阻害アッセイを行った。MAb 3H6(1mg/ml)はまた、SSA/Ro、セントロメアB、およびヒストンに対するMAb 2F5の結合を遮断した(が、対照MAbはしなかった)(未提示)。図3A〜3D中のすべてのデータは、実行した少なくとも2つの実験の代表である。
【図3−2】図3A〜3D。脂質に対するMab 2F5および4E10のアッセイおよび結合特異性。図3Aは、カルジオリピン(CL)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、およびスフィンゴミエリン(SM)に対するMAb 4E10(黒塗りバー)および2F5(白抜きバー)のELISA反応性を示す。4E10および2F5はどちらもカルジオリピンと反応するが、4E10のみが試験した他の脂質と反応した。対照ヒト抗CCR5結合部位MAb 1.7bの反応性は陰性であった(データ未提示)。空のコーティングプレートに対するMAbの反応性は同様に陰性であった(未提示)。カルジオリピンに対するMAb 2F5の結合の特異性を示すため、2F5 150〜300μg/ml、およびMAb 2F5によるHIV−1の中和を遮断する(Kunertら, AIDS 16:667(2002))、抗2F5イディオタイプ・ネズミMAb 3H6の1000μg/mlを用いた。2F5抗イディオタイプは、3回の別個の実験において、カルジオリピンに対するMAb 2F5の結合を平均70%で有意に遮断した(p<0.03)(図3B)。別個のELISAにおいて、MAb 2F5は、660nMの半最大(EC50)応答で、カルジオリピンに結合した(未提示)。図3Cは、カルジオリピンに対する4E10 MAb結合の用量反応曲線を示す。4パラメトリックS字形曲線適合分析から、4E10結合(80nM)の半最大(EC50)応答を計算した。ELISAプレート上にコーティングされたカルジオリピン(1.35μg/ウェル)に対する4E10 MAb結合(0.5nM〜1000nM)のELISAから、結合データを獲得した。図3Dは、4E10エピトープを発現する可溶性HIV−1 Env gp140オリゴマー(CON−S)がカルジオリピンに対する4E10 MAbの結合を阻害することを示す。カルジオリピンに対する4E10結合の阻害のIC50は、145nMであると計算された。10μg/mlの4E10 MAbと混合した多様な濃度のgp140(19.25〜1230nM)を用いて、これを次いで、1.35μgのカルジオリピンを含有するウェルに添加することによって、阻害アッセイを行った。MAb 3H6(1mg/ml)はまた、SSA/Ro、セントロメアB、およびヒストンに対するMAb 2F5の結合を遮断した(が、対照MAbはしなかった)(未提示)。図3A〜3D中のすべてのデータは、実行した少なくとも2つの実験の代表である。
【図4−1】図4Aおよび4B。CON−S Env gp160のアミノ酸(図4A)および核酸(図4B)配列。図4Aのタンパク質のCFI型を実施例2で用いた。(Gp140CFIは、膜貫通および細胞質ドメインの欠失に加えて、切断部位(C)、融合部位(F)、およびgp41免疫優勢領域(I)の欠失を含む、HIV−1エンベロープ設計を指す。)
【図4−2】図4Aおよび4B。CON−S Env gp160のアミノ酸(図4A)および核酸(図4B)配列。図4Aのタンパク質のCFI型を実施例2で用いた。(Gp140CFIは、膜貫通および細胞質ドメインの欠失に加えて、切断部位(C)、融合部位(F)、およびgp41免疫優勢領域(I)の欠失を含む、HIV−1エンベロープ設計を指す。)
【図5】免疫措置で用いるリン脂質(phosphospholipid)の構造および生じる中和力価。
【図6−1】図6Aおよび6B。ペプチド−リポソーム・コンジュゲートの生成に用いるペプチド配列。mAb 2F5および4E10結合エピトープの名目上の(nominal)エピトープには、それぞれ、配列ELDKWASおよびWFNITNWが含まれ、そしてこれらを下線で示す。V3配列は、HIV−1 MN株のgp120に由来し、そしてこれらを対照構築物として用いた。スクランブル化配列を対照として用いる。
【図6−2】図6Aおよび6B。ペプチド−リポソーム・コンジュゲートの生成に用いるペプチド配列。mAb 2F5および4E10結合エピトープの名目上の(nominal)エピトープには、それぞれ、配列ELDKWASおよびWFNITNWが含まれ、そしてこれらを下線で示す。V3配列は、HIV−1 MN株のgp120に由来し、そしてこれらを対照構築物として用いた。スクランブル化配列を対照として用いる。
【図7】MPER gp41構築物の多様な設計の模式的提示。模式的構築物の上に、機能領域を示す。各模式的構築物の下に、アミノ酸配列を示す。開始および成熟シグナル配列を青で強調し;免疫優勢領域を太字で強調し;MPER領域を茶色で強調し、そしてGTH1ドメインを赤で強調し、そして膜貫通ドメインを下線で示す。精製を容易にするため、Hisタグを構築物のC末端に添加して、そして緑で強調する。
【図8】ペプチド−リポソーム・コンジュゲートに対するmAb 4E10の結合。BIAcore結合曲線は、GTH1−4E10リポソームに対するmAb 4E10の特異的でそして顕著により高い結合を示す。GTH1−2F5リポソームに対する迅速な動力学での低レベルの結合もまた検出された。
【図9】ペプチド−リポソームに対する2F5 mAbの結合。MAb 2F5は、GTH1−2F5リポソームに特異的に結合し、そしてGTH1−4E10リポソームに対する結合はまったく示さなかった。
【図10】ペプチド−リポソームに対するA32 mAb結合。対照抗gp120 Mab、A32は、リポソーム・コンジュゲートのいずれにもまったく結合を示さなかった。CD4誘導性mAbである17bもまた、上記リポソーム・コンジュゲートに対する結合をまったく示さなかった(データ未提示)。
【図11】フルオレセインがコンジュゲート化されたペプチド−リポソームの生成。脂質組成物中にフルオレセイン−POPEを取り込むことによって、ペプチド−リポソームをフルオレセイン・タグとコンジュゲート化した。結合アッセイは、フルオレセイン・コンジュゲート化リポソーム中で、mAb 4E10結合の特異性が保持されることを示す。フルオレセイン−コンジュゲート化GTH1−2F5リポソームは類似の結果を生じた。
【図12】4E10ペプチドと免疫モルモット血清の反応性。ELISA結合アッセイは、GTH1−4E10リポソームで免疫した2匹のモルモット由来の4E10ペプチドに対する血清の強い陽性反応性を示す。すべての前採血(pre−bleed)血清はバックグラウンド結合を生じ、一方、4E10ペプチドで免疫した動物由来の血清において、低レベルの結合が観察された。ペプチド−リポソーム免疫動物由来の陽性血清もまた、どちらも、中和活性を示した(表2)。1つの血清(1102)は、それぞれ、1:209および1:32の抗体力価で、MNおよびSS1196株の中和を示した。第二の血清(1103)は、MNウイルスに対してのみ有効であった(1:60)。
【図13】ペプチドエピトープに対するMPER mAb結合は、単純なモデル(ラングミュア等式)にしたがう。
【図14】エピトープペプチド−脂質コンジュゲートに対する中和性MPER mAb結合は、2段階コンホメーション変化モデルにしたがう。
【図15】ヒト・クラスターII mAb(98−6、167−D、126−6)は、Env gp140に強く結合する。
【図16】図16A〜16D。ヒト・クラスターII mAbは、陰イオン性リン脂質、カルジオリピンに強く結合した。
【図17−1】図17A〜17E。ヒト・クラスターII mAb 98−6は、より高いアビディティーで2F5ペプチド−脂質コンジュゲートに結合し、そして2段階コンホメーション変化モデルにしたがった。
【図17−2】図17A〜17E。ヒト・クラスターII mAb 98−6は、より高いアビディティーで2F5ペプチド−脂質コンジュゲートに結合し、そして2段階コンホメーション変化モデルにしたがった。
【図18】図18A〜18C:リポソームとともに配合されたTLRアジュバントの構造。図18A 脂質A;図18B オリゴCpG;図18C R−848。
【図19】図19A〜19C。TLRアジュバント−MPERペプチド・リポソームの図的記述。図19A 脂質A;図19B オリゴCpG;図19C R−848。
【図20】図20A〜20C。TLRアジュバントにコンジュゲート化されたMPERペプチド−リポソームと2F5 mABの相互作用。図20Aは、脂質Aを含むgp41 MPERリポソーム構築物に対する2F5 mabの強い結合を示す(200μg用量当量)。図20Bは、gp41 MPERリポソームにコンジュゲート化されたoCpG(50μg用量当量)に対する2F5 mAbの結合を示す。図20Cは、R848コンジュゲート化gp41 MPER含有リポソームに対する2F5 mAbの結合を示す。TLRアジュバントのみを含む対照リポソームに比較すると、gp41 MPER−アジュバント・リポソーム構築物各々に対する2F5 mAbの強い結合が観察された。
【図21】MPER656−TMDペプチドのアミノ酸配列。
【図22】図22Aおよび22B。L−1チップ上のリポソーム固定の図的記述。図22A 合成リポソーム。図22B MPER656−TMDリポソーム。
【図23】図23Aおよび23B:MPER656−TMDリポソームと2F5および4E10 mAbの相互作用。図23A 2F5および図23B 4E10。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、少なくとも部分的に、特定の広範中和性HIV−1抗体が自己抗体であることを立証する研究から生じる。多数のHIV+患者は、低レベルのこうした抗体を一過性に作製するが、本明細書記載の研究は、gp41エピトープがこれらの抗体特異性を誘導するのではなく、むしろカルジオリピンを含む交差反応性自己抗原がプライミング抗原であることを示す。
【0013】
本発明は、HIVを中和する抗体を誘導する方法を提供する。該方法は、こうした方法が必要な患者に、該誘導を達成するのに十分な量の少なくとも1つの異種(例えば非ヒト)または同種(例えばヒト)交差反応性自己抗原を投与する工程を含む。本発明で使用するのに適した交差反応性自己抗原には、カルジオリピン、SS−A/RO、細菌または哺乳動物細胞由来のdsDNA、セントロメアBタンパク質およびRiBo核タンパク質(RNP)が含まれる。
【0014】
適切な自己抗原にはまた、カルジオリピンに加えてリン脂質、例えばホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、およびその誘導体、例えば、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](POPS)、1−パルミトイル−2−オレオイル−ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、およびジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)も含まれる。リン脂質の六方晶II相の使用が好適である可能性もあり、そして(例えば生理学的条件下で)六方晶IIチューブ状相の六方充填円筒を容易に形成するリン脂質が好ましく、六方晶II相で安定化されうるリン脂質も同様である(Rauchら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:4112−4114(1990); Aguilarら, J. Biol. Chem. 274:25193−25196(1999))。
【0015】
交差反応性エピトープを含む、こうした自己抗原の断片もまた使用可能である。
自己抗原またはその断片を、例えば、プライム・ブースト措置において用いてもよく、こうした措置は、当業者によって容易に最適化可能である(こうした措置のタンパク質性構成要素をコードするDNA配列を、タンパク質性構成要素がin vivoで産生される条件下で投与してもよい)。例えば、交差反応性自己抗原を、第一のワクチン・プライムとして用いて、天然自己抗体(例えば抗カルジオリピン4E10および2F5様抗体)をブーストしてもよい。自己抗原(例えばカルジオリピン(またはその断片))、または交差反応性エピトープ(単数または複数)、例えば2F5および/または4E10エピトープ(このエピトープには、それぞれ、少なくとも配列ELDKWAおよびNWFDITが含まれてもよい)を含むHIVエンベロープタンパク質/ポリペプチド/ペプチドは、いずれも、ブーストとして使用可能である。(PCT/US04/30397に開示される配列を参照されたい。)(HIVエンベロープは自己抗原でないことが理解されるであろう。)
自己抗原および/またはHIVタンパク質/ポリペプチド/ペプチド、またはコード配列の投与様式は、免疫原、患者および求める効果によって多様であり、投与用量も同様である。最適投薬措置は、当業者によって容易に決定可能である。典型的には、投与は皮下、筋内、静脈内、鼻内または経口である。
【0016】
免疫原性剤をアジュバントと組み合わせて投与してもよい。多様なアジュバントが使用可能であるが、好ましいアジュバントには、自己免疫疾患を誘導することなく、自己抗原に対する寛容を中断可能なCpGオリゴヌクレオチドおよび他の剤(例えばTRL9アゴニスト)が含まれる(Tranら, Clin. Immunol. 109:278−287(2003)、米国出願第20030181406号、第20040006242号、第20040006032号、第20040092472号、第20040067905号、第20040053880号、第20040152649号、第20040171086号、第20040198680号、第200500059619号)。
【0017】
特定の態様において、本発明は、Toll様受容体(TLR)リガンドおよびHIV−1 gp41中和抗原を提示するアジュバント・コンジュゲートに基づくリポソームに関する。この態様にしたがって、HIV−1 gp41 MPERペプチド免疫原が中にコンジュゲート化されたリポソーム内に、脂質A、オリゴCpGおよびR−848などの免疫応答増進性TLRリガンドを、個々に配合してもよい。以下の実施例7に記載するように、広範中和性gp41膜近位外部領域(MPER)抗体(2F5、4E10)は、リポソーム構築物と会合したTLRリガンド・アジュバント各々に強く結合する。この態様の構築物は、HIV−1 gp41 MPERの劣った免疫原性に対する免疫応答を増進する際に適用を有する。
【0018】
さらに特定の態様において、本発明は、2F5および4E10などの広範中和性抗体のエピトープを機能的にディスプレイするための、リポソームに対するHIV−1 gp41 MPERペプチドの膜貫通ドメイン係留に関する。本態様にしたがって、HIV−1 gp41の膜貫通ドメイン(TMD)を用いて、合成脂質を含むリポソーム内にMPERペプチドを係留してもよい。以下の実施例8に記載するように、広範中和性抗gp41抗体2F5および4E10はどちらも、MPER−TMD−リポソーム・コンジュゲートに結合する。この構築物は、HIV−1の天然TMDを用いて、リポソーム上に係留された本gp41中和エピトープを提示するための戦略を提供する。TMDの三量体化の誘導は、gp41 MPERの三量体型の形成を促進しうる。
【0019】
本発明には、本方法で使用するのに適した組成物が含まれ、これには、自己抗原、および/または1以上の交差反応性エピトープ(例えば4E10および/または2F5エピトープ)を含むHIVタンパク質/ポリペプチド/ペプチド、あるいは4E10または2F5エピトープ模倣体、およびキャリアーを含む組成物が含まれる。DNAプライムまたはブーストを用いてもよい場合、適切な配合物には、DNAプライムおよび組換えアデノウイルスブーストならびにDNAプライムおよび組換えミコバクテリアブーストが含まれ、この場合、DNAまたはベクターは、例えばHIVエンベロープ、またはSS−A/Roなどのタンパク質自己抗原のいずれかをコードする。HIVタンパク質/ポリペプチド/ペプチドおよび/または自己抗原を伴うかまたは伴わないかのいずれかで、プライムまたはブーストとして、これらのベクターの他の組み合わせを用いてもよい。組成物は、例えば、注射または鼻投与に適した型で存在してもよい。都合よくは、組成物は無菌である。組成物は投薬単位型で存在してもよい。
【0020】
本発明はまた、交差反応性抗体(4E10および2F5以外のモノクローナル抗体を含む)の産生において、原発性自己免疫疾患、例えば全身性エリテマトーデス(SLE)または抗リン脂質抗体症候群の患者、あるいは感染性疾患、例えば梅毒、リーシュマニア症、およびハンセン病の患者に由来するB細胞が使用可能である、受動免疫療法アプローチにも関する。自己免疫疾患患者は、HIVエンベロープに対する結合に際して、またはビリオン表面上の脂質に対する結合に際してのいずれかで、あるいはその両方で、HIV−1を中和する能力を、ある程度有する抗体を作製しうる。さらに、自己免疫疾患患者は、恒常的に、またはHIV−1感染後のいずれかで、防御中和型抗体を作製しうる。
【0021】
すなわち、本発明には、SLE患者ならびに免疫制御が混乱した他の患者(すなわち、HIVエンベロープと交差反応性である自己抗体を産生する、原発性自己免疫疾患、または上述のものなどの非HIV感染の患者)由来のB細胞の、HIVエンベロープと交差反応する抗体(2F5様および4E10様抗体など)の供給源を提供する不死細胞株の産生における使用が含まれる(Stieglerら, AIDS Res. Hum. Retroviruses 17:1757−1765(2001)、Armbrusterら, J. Antimicrob. Chemother. 54:915−920(2004)、米国特許5,831,034を参照されたい)。都合よくは、B細胞は、HIVに感染しているか、またはエンベロープに基づくHIVワクチンを投与されているSLE患者由来である(理論によって束縛されることは望ましくないが、HIV感染またはワクチン接種は、プライミングされたB1細胞(例えばカルジオリピン−プライミングB1細胞)を「ブースト」して、2F5および/または4E10様抗体を産生し、そして除去(正常被験体においては起こる)をエスケープしうるように働く−「ブースト」は、生じたIg遺伝子が、2F5およびまたは4E10様エピトープに適合するか、または広範中和性抗体を誘導するが、正常被験体においては除去される他のgp160エピトープに適合する抗体をコードするように、体細胞過剰突然変異を誘発しうる)。B細胞由来の不死細胞株の産生は、当該技術分野に認識される多様な技術のいずれかを用いて達成可能であり、これには、限定されるわけではないが、ハイブリドーマを産生する、こうしたB細胞と骨髄腫細胞との融合が含まれる。本発明にはまた、HIVエンベロープと反応しないが、むしろウィルス感染細胞およびまたはビリオンと反応する正常被験体由来および自己免疫疾患患者由来の抗体も含まれ、すなわちこれらの抗体は、ウイルスまたはウイルス感染細胞上の脂質に結合する(実施例6を参照されたい)。
【0022】
ひとたび選択されたら、こうした交差反応性抗体(またはその結合性断片)をコードする配列をクローニングし、そして増幅してもよい(例えば、Huseら, Science 246:1275−1281(1989)、およびWO 91/17271、WO 92/01047、米国特許5,877,218、5,871,907、5,858,657、5,837,242、5,733,743および5,565,332に記載されるようなファージ−ディスプレイ技術を参照されたい)。次いで、当該技術分野に認識される技術を用いて、療法用の可溶性抗体を設計しそして産生してもよい(Stieglerら, AIDS Res. Hum. Retroviruses 17:1757−1765(2001)、Armbrusterら, J. Antimicrob. Chemother. 54:915−920(2004))。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞中で、適切な抗体を産生してもよい。
【0023】
このアプローチにしたがって、抗体(またはその結合性断片)を、約10〜100mg/用量の範囲の、好ましくは25mg/用量の用量で投与してもよい。投薬量および頻度は、抗体(またはその結合性断片)、患者および求める効果によって多様でありうる(Armbrusterら, J. Antimicrob. Chemother. 54:915−920(2004)を参照されたい)。上述の抗体を予防的にまたは療法的に用いてもよい。
【0024】
抗体(またはその結合性断片)、あるいは抗体または結合性断片をコードするDNAを、キャリアー(例えば薬学的に許容されうるキャリアー)とともに配合して、そして例えば、非経口、静脈内、皮下、筋内または鼻内経路によって投与してもよい。
【0025】
最後に、ラクダ(camel)(Ramslandら, Exp. Clin. Immunogenet. 18:176−198(2001)、Litmanら, Annu. Rev. Immunol. 7:109−147(1999))、ウシ(cow)(Ramslandら, Exp. Clin. Immunogenet. 18:176−198(2001)、Litmanら, Annu. Rev. Immunol. 7:109−147(1999))およびサメ(shark)(Ramslandら, Exp. Clin. Immunogenet. 18:176−198(2001)、Litmanら, Annu. Rev. Immunol. 7:109−147(1999)、Hohmanら, Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 90:9882−9886(1993))などの動物種は、非常に長いCDR3長を有し、そしてその抗体は、多重反応性を示す。HIVエンベロープに対する多重反応性を示す、これらの操作されたCDR3は、HIVに対する、そして多くの感染性病原体に対する、強力な療法抗体(例えばキメラおよびヒト化抗体を含むモノクローナル抗体、ならびにその抗原結合性部分)を作製するために使用可能である。
【0026】
特定の態様において、本発明はさらに、合成リポソーム−ペプチド・コンジュゲートに、そしてHIV−1に対する広範中和性抗体を生成するための免疫原として該コンジュゲートを用いる方法に関する。本発明のこの態様は、HIV−1 gp41のMPERに結合する広範中和性抗体の名目上のエピトープペプチドを合成リポソーム内に包埋するための組成物および方法を提供する。抗HIV−1中和抗体の生成および抗原特異的B細胞応答の検出のための免疫戦略およびプロトコルもまた提供する。
【0027】
本発明のこの態様にしたがって、広範中和性抗HIV抗体の名目上のエピトープおよびGTH1などの疎水性リンカーを含むペプチド配列(配列に関しては図6を参照されたい)を合成リポソーム内に包埋する。好ましい側面において、名目上のエピトープは、上述のように、HIV−1エンベロープgp41のMPER中に存在する、mAb 2F5(ELDKWAS)または4E10(WFNITNW)のものである。エピトープは、それに特異的な抗体が、比較的制約されないアクセスを有するようにペプチド中に存在してもよいし、あるいはMPER領域の天然配向を模倣するように、疎水性リンカーに関連してペプチド中に存在していてもよい。本発明で使用するのに適したペプチド配列の特定の例を図6に示す。さらに、MPER gp41領域を、ヒト細胞発現系中、組換えワクシニアウイルス中で組換えタンパク質として発現し、そしてリポソームとの会合を容易にするため、gp41構成要素のNまたはC末端で両親媒性アルファらせんを伴って配合してもよい(図7)。
【0028】
本発明で使用するのに適したリポソームには、限定されるわけではないが、POPC、POPE、DMPA(またはスフィンゴミエリン(SM))、リゾホスホリルコリン、ホスファチジルセリン、およびコレステロール(Ch)を含むものが含まれる。当業者は最適比を決定可能であり、例には、45:25:20:10の比のPOPC:POPE(またはPOPS):SM:ChまたはPOPC:POPE(またはPOPS):DMPA:Chが含まれる。使用可能なリポソームの別の配合物には、9:7.5:1のモル比で配合された、DMPC(1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン)(またはリゾホスホリルコリン)、コレステロール(Ch)およびDMPG(1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−rac−(1−グリセロール)が含まれる(Wassefら, ImmunoMethods 4:217−222(1994); Alvingら, G. Gregoriadis(監修), Liposome technology 第2版, 第III巻 CRC Press, Inc., フロリダ州ボーカラトーン(1993); Richardsら, Infect. Immun. 66(6):285902865(1998))。上述の脂質組成物を脂質Aと複合体化して、そしてリン脂質に対する抗体応答を誘導する免疫原として用いてもよい(Schusterら, J. Immunol. 122:900−905(1979))。好ましい配合物は、Schusterら, J. Immunol. 122:900−905(1979)にしたがった、脂質Aと複合体化された、60:30:10の比のPOPC:POPS:Chを含む。こうした配合物に含まれるのに適したペプチドには、限定されるわけではないが、2F5−GTH1、4E10−GTH1、SP8926−GTH1、およびSP8928−GTH1が含まれる。
【0029】
ペプチド対総脂質の最適比は、例えば、ペプチドおよびリポソームによって多様でありうる。実施例3のペプチドに関しては、1:420の比が好適であった。
上述のリポソームを、β2糖タンパク質1の組換えドメインVと混合して、このドメインに対する抗体を誘発してもよい。
【0030】
標準的技術を用いて、リポソーム−ペプチド・コンジュゲートを調製してもよい(以下の実施例3および4も参照されたい)。
本発明のペプチド−リポソーム免疫原を、頑強な抗体応答を促進する脂質A、oCpG、TRL4アゴニストまたはTLR7アゴニストなどのアジュバントとともに配合してもよいし、そして/または投与してもよい(Raoら, Immunobiol. Cell Biol. 82(5):523(2004))。使用可能な他のアジュバントにはミョウバンおよびQ521(存在するB細胞寛容を中断しないもの)が含まれる。好ましい配合物は、B細胞寛容の型を中断するように設計されたアジュバント、例えばEmulsigen(水中油エマルジョン)などの油エマルジョン中のoCpGを含む(Tranら, Clin. Immunol. 109(3):278−287(2003))。さらなる適切なアジュバントには、2005年12月14日出願の11/302,505に記載されるものが含まれ、該出願に開示されるTRLアゴニストが含まれる。
【0031】
ペプチド−リポソーム免疫原を、例えば、IV、鼻内、皮下、腹腔内、膣内、または直腸内投与してもよい。投与経路は、例えば、患者、コンジュゲートおよび/または求める効果によって多様であり、同様に投与措置によって多様でありうる。ペプチド−リポソーム免疫原は予防的使用に好ましいが、感染個体への投与はウイルス負荷を減少させうる。
【0032】
以下の実施例3に記載するように、ペプチド−リポソーム・コンジュゲートをMPER特異的B細胞応答の検出のための試薬として用いてもよい。例えば、ペプチド−リポソーム構築物を、検出可能標識、例えばフルオレセインなどの蛍光標識とコンジュゲート化してもよい。フルオレセイン−コンジュゲート化リポソームを、曝露されたMPER領域を提示するHIV−1 Envタンパク質で免疫された宿主における抗MPER特異的B細胞応答の検出のための試薬として、フローサイトメトリーアッセイで用いてもよい。これらの試薬を用いて、末梢血B細胞を研究して、免疫後の循環メモリーB細胞数を測定することによって、抗MPER抗体誘導のための免疫有効性を決定してもよい。以下の実施例に提示するデータは、名目上のエピトープペプチド脂質コンジュゲートに対するHIV−1クラスターIIモノクローナル抗体の結合に関連するコンホメーション変化が、HIV−1中和と相関することを示す(実施例5を参照されたい)。
【0033】
HIVが、HIVに対して免疫系をブラインドにすることによって、宿主免疫応答をエスケープするように進化してきたのであれば、他の感染性病原体が同様に進化してきた可能性もあることが、前記を読むと理解されるであろう。すなわち、これは、エスケープの一般的機構を代表しうる。もしそうであれば、本明細書記載のものと匹敵するアプローチは、こうした他の病原体の治療に十分に有用であると予期されうる。
【0034】
本発明の特定の側面が、以下の限定されない実施例により詳細に記載される(Maksyutovら, J. Clin. Virol. Dec; 31 Suppl 1:S26−38(2004)、米国出願20040161429、およびHaynesら, Science 308:1906(2005)もまた参照されたい)。
【0035】
本出願は、2007年6月22日出願の米国出願第11/812,992号、2007年4月13日出願の米国出願第11/785,077号、2006年4月12日出願のPCT/US2006/013684、2005年4月12日出願の米国仮出願第60/670,243号、2005年4月27日出願の米国仮出願第60/675,091号、2005年7月12日出願の米国仮出願第60/697,997号、および2006年1月10日出願の米国仮出願第60/757,478号に関連し、これら出願の前内容は、本明細書に援用される。
【実施例】
【0036】
実施例1
広範反応性中和抗体を誘導可能なHIV−1免疫原の設計は、HIV−1ワクチン開発の大きな目的である。HIV−1を広範に中和する稀なヒトmabが存在する一方、HIV−1エンベロープ免疫原は、これらの抗体特異性を誘導しない。この研究において、2つの最も広範に反応性であるHIV−1エンベロープgp41ヒトmab、2F5および4E10は、カルジオリピンと反応性である多重特異性自己抗体であることが立証された。したがって、gp41膜近位エピトープが自己抗原を模倣しているため、現在のHIV−1ワクチンは、膜近位gp41エピトープに対する抗体を誘導しない可能性もある。
【0037】
実験詳細
モノクローナル抗体。Mab 2F5、2G12、および4E10を、記載されるように産生した(Steiglerら, AID Res. Human Retroviruses 17:1757(2001)、Purtscherら, AIDS 10:587(1996)、Trkolaら, J. Virol. 70:1100(1996))。IgG1b12(Burtonら, Science 266:1024−1027(1994))は、Dennis Burton、Scripps Institute、カリフォルニア州ラホヤの寛大な贈り物であった。Mab 447−52D(Zolla−Paznerら, AIDS Res. Human Retrovirol. 20:1254(2004))を、AIDS試薬貯蔵所、NIAID、NIHから得た。表1中のmabの残りは、HIV−1感染被験体から産生され、そしてこれらを、記載されるように用いた(Robinsonら, AIDS Res. Human Retrovirol. 6:567(1990)、Binleyら, J. Virol. 78:13232(2004))。
【0038】
自己抗体アッセイ。抗カルジオリピンELISAを、記載されるように用いた(DeRoeら, J. Obstet. Gynecol. Neonatal Nurs. 5:207(1985)、Harrisら, Clin. Exp. Immunol. 68:215(1987))。ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、およびスフィンゴミエリン(すべて、Sigma、ミズーリ州セントルイスから購入した)に対するmab反応性に関してアッセイするため、同様のELISAを適応させた。SS−A/Ro、SS−B/La、Sm、リボ核タンパク質(RNP)、Scl−70、Jo−1、二重鎖(ds)DNA、セントロメアB、およびヒストンに対するmab反応性に関して、The Luminex AtheNA Multi−Lyte ANA試験(Wampole Laboratories、ニュージャージー州プリンストン)を用いた。アッセイしたMab濃度は、150μg、50μg、15μg、および5μg/mlであった。各濃度(アッセイあたり、それぞれ、0.15μg、0.05μg、0.015μg、および0.005μg)10μlを、Luminex蛍光ビーズとインキュベーションし、そして製造者の仕様書にしたがって、試験を実行した。表1中の値は、試験あたり0.15μgを添加したアッセイ結果である。さらに、SS−A/Ro(ImmunoVision、アリゾナ州スプリングデール)およびdsDNA(Inova Diagnostics、カリフォルニア州サンディエゴ)に関するELISAもまた用いて、これらの自己抗原特異性を確認した。対比染色としてEvans Blueを、そしてFITC−コンジュゲート化ヤギ抗ヒトIgG(Zeus Scientific、ニュージャージー州ラリタン)を用い、Hep−2スライド上で間接免疫蛍光を用いて、ヒト上皮Hep−2細胞に対する反応性を決定した。Nikon Optiphot蛍光顕微鏡上で、スライドの写真を撮影した。比濁法によって、リウマトイド因子測定を実行した(Dade Behring, Inc(デラウェア州ニューアーク)。記載されるような活性化部分トロンボプラスチン(aPTT)および希釈ラッセルクサリヘビ(Russell viper)毒試験によって、ループス性抗凝固因子アッセイを実行した(MollおよびOrtel, Ann. Int. Med. 127:177(1997))。ループス性抗凝固因子アッセイのため、40μlの1mg/mlの2F5、4E10および対照mabを、プールした正常血漿に添加した(最終mab濃度、200μg/ml)。抗β2糖タンパク質−1アッセイは、ELISA(Inova Diagnostics, Inc.)であった。dsDNA、SS−A/Ro、SS−B/La、Sm、RNPおよびヒストンに対する血清抗体は、SLE患者で生じ;セントロメアBおよびscl−70(トポイソメラーゼI)に対する血清抗体は全身性硬化症で見出され;そしてJo−1に対する抗体は、多発性筋炎と関連して見出される(RoseおよびMacKay, The Autoimmune Diseases, 第3版 Academic Press, カリフォルニア州サンディエゴ(1998))。
【0039】
結果
mab 2F5および4E10、2つのさらなる稀な広範反応性中和mab(2G12およびIgG1b12)、および31の一般的な抗HIV−1 Envヒトmabsと、カルジオリピン(Robinsonら, AIDS Res. Human Retrovirol. 6:567(1990))との反応性を決定した(表1)。2F5および4E10はどちらもカルジオリピンと反応したが、33の他のmabはすべて陰性であった。Mab 2F5はまた、SS−A/Ro、ヒストンおよびセントロメアB自己抗原とも反応し、一方、mab 4E10は、全身性エリテマトーデス(SLE)自己抗原、SS−A/Roと反応した。2F5および4E10はどちらも、散在性の細胞質および核パターンで、Hep−2ヒト上皮細胞と反応した(Robinsonら, AIDS Res. Human Retrovirol. 6:567(1990))(図2)。したがって、2F5および4E10はどちらも、多重特異性自己反応性によって特徴付けられる。
【0040】
表1.
【0041】
【表1】
【0042】
Ku32 mabがSmと反応したことを除いて、すべてのMabは、La(SSB)、Sm、Scl−70およびJo−1との反応性に関するアッセイにおいて陰性であった。Ro(SSA)、dsDNA、セントロメアB、ヒストンおよびカルジオリピン抗体価は、標準曲線に基づいた相対的単位である。−=陰性。
【0043】
2つの他の稀な中和mabのうち、一方のmab、2G12は自己反応性でなかったが、もう一方のCD4結合部位に対するmab、IgG1b12(Stieglerら, AIDS Res. Hum. Retroviruses 17:1757(2001))は、リボ核タンパク質、dsDNA、およびセントロメアBと、ならびにHep−2細胞と、細胞質および核パターンで反応した(表1および図2)。研究した31のより一般的な抗HIV−1 mabのうち、CD4結合部位近傍に結合特異性を持つ2つのmab(A32、1.4G)および非中和gp41エピトープに対するmab(2.2 B)のみが、多重反応性の証拠を示した(表1)。
【0044】
2F5および4E10が、SLE関連抗リン脂質症候群で見られる血栓形成促進性抗カルジオリピン抗体に類似であるかどうかを決定するため(Burtonら, Science 266:1024−1027(1994))、両方のmabを、ループス性抗凝固因子活性に関して、そしてプロトロンビン(PT)、ベータ−2糖タンパク質−1、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、およびスフィンゴミエリン(SM)に結合する能力に関して試験した(Robinsonら, AIDS Res. Human Retrovirol. 6:567(1990))。2F5は、これらの反応性に関して陰性であったが、4E10はループス抗凝固因子反応性を有し、そしてPS、PC、PEと強く反応し、SMおよびPTと弱く反応し、そしてβ2糖タンパク質−1との反応は陰性であった(図3を参照されたい)。
【0045】
抗カルジオリピン抗体は、自己免疫疾患または感染のため、免疫制御が混乱した患者で見出されうる(Burtonら, Science 266:1024−1027(1994))。抗カルジオリピン自己抗体は、梅毒、ハンセン病、リーシュマニア症、エプスタイン・バー・ウイルス、およびHIV−1によって誘導される(Burtonら, Science 266:1024−1027(1994))。SLEで見出される抗カルジオリピン抗体とは異なり、「感染性」抗カルジオリピン抗体は、めったに血栓形成促進性でなく、そして一過性である。したがって、4E10は、自己免疫疾患における抗カルジオリピン抗体と同様であり、そして2F5は、感染性疾患における抗カルジオリピン抗体と同様である。
【0046】
長いCDR3長を持つ自己反応性B細胞クローンは通常、除去されるか、または自己抗原に対して寛容にされる(Zolla−Paznerら, AIDS Res. Human Retrovirol. 20:1254(2004))。したがって、HIV−1は、自己抗体エピトープの模倣体として保存される中和エピトープを有することによって、膜近位抗体応答をエスケープするように進化してきた可能性もある。これらのデータによって、現在のHIV−1ワクチンは、頑強な膜近位抗エンベロープ中和抗体をルーチンには誘導せず、これはこれらのエピトープをターゲットとする抗体が、通常は除去されるか、またはHIV−1 Envによる抗原刺激に際して寛容にされる、自己反応性B細胞クローンに由来するためであると示唆される。これらの観察はまた、こうしたクローンを除去不能である可能性もあるSLE患者において、HIV−1の発生が稀であることも説明しうる(Foxら, Arth. Rhum. 40:1168(1997))。
【0047】
実施例2
自己抗原として、カルジオリピン(層状および六方晶相)、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](POPS)(層状および六方晶相)、1−パルミトイル−2−オレオイル−ホスファチジルエタノールアミン(POPE)(層状相)、およびジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)(六方晶相)を用いて、本発明の自己抗原が、中和抗体の産生を誘導する能力を研究した。モルモット(群あたり4匹)を、10;gのoCpG中のリン脂質(カルジオリピン層状相、カルジオリピン六方晶相、POPS層状相、POPS六方晶相、POPE層状相またはDOPE六方晶相)で、各免疫を2週間ずつ離して、4回免疫した。4回のリン脂質免疫後、10:gのoCpGと100:gのM群コンセンサスEnv、CON−S gp140CFIオリゴマー(すなわち図4Aに示すタンパク質のCFI型)を用いて、IPで最終免疫を行った。
【0048】
以下に記載するように、TMZ細胞におけるEnv偽型中和アッセイを用いて、中和アッセイを実行した(Weiら, Nature 422:307−312(2003)、Derdeynら, J Virol 74:8358−8367(2000)、Weiら, Antimicrob Agents Chemother 46:1896−1905(2002)、Plattら, J Virol 72:2855−2864(1998)、Mascolaら, J. Virol. 79:10103−10107(2005)):
細胞培養
TZM−blは、接着細胞株であり、そしてこれをT−75培養フラスコ中で維持する。完全増殖培地(GM)は、10%ウシ胎児血清(FBS、熱不活化)およびゲンタマイシン(50μg/ml)を補ったD−MEMからなる。トリプシン/EDTAでの処理によって、細胞単層を破壊し、そして除去する:
TZM−bl細胞単層を破壊するためのトリプシン−EDTA処理:集密(confluency)状態で、ルーチン維持のために細胞を分割する際、そしてアッセイ用に細胞を調製する際、トリプシン/EDTAでの処理によって、T−75培養フラスコ中に維持した細胞単層を破壊しそして除去する。
【0049】
1. 培地をデカントし、そして6mlの滅菌PBSで単層をリンスすることによって、残った血清を除去する。
2. 細胞単層を覆うように、2.5mlの0.25%トリプシン−EDTA溶液をゆっくりと添加する。室温で30〜45秒間インキュベーションする。トリプシン溶液をデカントし、そして37℃で4分間インキュベーションする。細胞が剥離するのを待つ間、フラスコを叩いたりまた振盪したりすることによって細胞を攪拌してはならない。
【0050】
3. 10mlのGMを添加し、そして穏やかにピペット操作することによって細胞を懸濁する。細胞を計数する。
4. 15mlのGM中、新しいT−75培養フラスコにおよそ106細胞を植え付ける。培養を、5%CO2/95%空気環境において、37℃でインキュベーションする。細胞はおよそ3日ごとに分割しなければならない。
【0051】
ウイルスストック
クローニングされていないウイルスのストックを、PBMCまたはT細胞株いずれかで産生してもよい。293T細胞などの適切な細胞種にトランスフェクションすることによって、偽ウイルスを産生してもよい。すべてのウイルスストックは、低速遠心分離およびろ過(0.45ミクロン)によって細胞不含にして、そして20%FBSを含有するGM中、−80℃で保存すべきである。
【0052】
TCID50測定
中和アッセイを行う前に、TZM−bl細胞中、単細胞感染アッセイ(2日インキュベーション)において、各ウイルスストックのTCID50を測定する必要がある。TCID50アッセイにおいて、陽性感染を定量化する際には、2.5倍バックグラウンドRLUのカットオフ値を用いる。
【0053】
中和アッセイにおいて、ウイルスがあまりにも多いと、強いウイルス誘導性細胞変性効果が生じて、正確な測定に干渉する可能性もある。大部分のウイルスストックは、少なくとも10倍希釈して、細胞殺傷を回避しなければならない。ウイルス誘導性細胞変性効果を最小限にしつつ、ウイルス感染性において2対数の減少を測定する能力を維持するため、中和アッセイのために200 TCID50の標準的接種物を選択した。異なる株は、その細胞変性性が有意に多様であることに注目しなければならない。光学顕微鏡法のもとで、合胞体形成を視覚的に検査することによって、ウイルス誘導性細胞変性効果を監視してもよい。細胞変性効果はまた、TCID50アッセイにおける高ウイルス用量での発光の減少としても観察可能である。
【0054】
中和抗体アッセイプロトコル
注1:別に明記しない限り、加湿37℃、5%CO2インキュベーター中ですべてのインキュベーションを行った。
【0055】
注2: 1μMインジナビルを含有するDEAE−GM中で、複製コンピテントウイルスを用いたアッセイを行う。
1. 96ウェル平底培養プレートの形式を用いて、第1列のすべてのウェルにGM 150μlを入れる(細胞対照)。第2〜11列のすべてのウェルに100μlを入れる(第2列はウイルス対照になるであろう)。第3〜12列、第H行のすべてのウェルにさらに40μlを入れる(試験試料を受け取るため)。
【0056】
2. 11μlの試験試料を第3および4列、第H行の各ウェルに添加する。11μlの第二の試験試料を第5および6列、第H行の各ウェルに添加する。11μlの第三の試験試料を第7および8列、第H行の各ウェルに添加する。11μlの第四の試験試料を第9および10列、第H行の各ウェルに添加する。11μlの第五の試験試料を第11および12列、第H行の各ウェルに添加する。第H行の試料を混合し、そして50μlを第G行にトランスファーする。第A行まで、試料のトランスファーおよび希釈を反復する(これらは連続3倍希釈である)。最後のトランスファーおよび混合が完了した後、第3〜12列、第A行のウェルから、殺菌剤の廃棄物容器中に、50μlを廃棄する。
【0057】
3. 周囲温度水槽中に入れることによって、必要な数のウイルス・バイアルを融解する。完全に融解したら、GM中でウイルスを希釈して、4,000TCID50/mlの濃度を達成する。
【0058】
ウイルスの細胞不含ストックをあらかじめ調製し、そしておよそ1mlの作業アリコットで凍結保存しなければならない。
4. 第2〜12列、第A〜H行のすべてのウェルに、細胞不含ウイルス50μl(200 TCID50)を分注する。各トランスファー後にピペット操作によって混合する。各トランスファー間で、40ml滅菌PBSを含有する試薬貯蔵所中でピペットチップをリンスして、キャリー・オーバーを回避する。
【0059】
5. プレートを覆い、そして1時間インキュベーションする。
6. DEAEデキストラン(37.5μg/ml)を含有するGM中、1x105細胞/mlの密度で、TZM−bl細胞の懸濁物を調製する(使用およそ10〜15分前にトリプシン処理する)。100μlの細胞懸濁物(ウェルあたり10,000細胞)を第1〜12列、第A〜H行中の各ウェルに分注する。各トランスファー間で、滅菌PBSが充填された試薬貯蔵所中でピペットチップをリンスして、キャリー・オーバーを回避する。DEAEデキストランの最終濃度は15μg/mlである。
【0060】
7. プレートを覆い、そして48時間インキュベーションする。
8. 各ウェルから培地150μlを除去し、およそ100μlを残す。100μlのBright GloTM試薬を各ウェルに分注する。室温で2分間インキュベーションして、完全な細胞溶解を可能にする。ピペット操作(少なくとも2回の動作)によって混合し、そして対応する96ウェル黒プレートに150μlをトランスファーする。ルミノメーター中でプレートを直ちに読み取る。
【0061】
9. 試験ウェル(細胞+血清試料+ウイルス)および細胞対照ウェル(細胞のみ、第1列)間の平均RLU相違を計算し、この結果をウイルス対照(細胞+ウイルス、第2列)および細胞対照ウェル(第1列)間の平均RLU相違で割り、1から引いてそして100を乗じることによって、中和パーセントを決定する。RLUを50%減少させるのに必要な血清希釈の逆数として、中和抗体力価を表す。
【0062】
図5に示すように、DOPE(六方晶相)を投与された動物は、170の中和力価を有した。
実施例3
免疫原設計
疎水性リンカー(GTH1)に連結されたmAb 2F5および4E10の名目上のエピトープそれぞれを含むペプチド配列を合成し、そして合成リポソーム内に包埋した(図6)。脂質二重層の遠位端に2F5および4E10エピトープ配列を持つ第一世代の免疫原を設計した(図6A)。これらの構築物は、それぞれのエピトープに対するmAbの拘束されないアクセスを提供した。2F5および4E10 mAbエピトープ配列が疎水性リンカーの近位に連結された、MPER領域の天然配向を模倣する、第二世代構築物が設計されている(図6A、6B)。
【0063】
合成リポソームの組成は、クロロホルム中に溶解された、以下のリン脂質、POPC(1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン)、POPE(1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン)、DMPA(1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート)、およびコレステロールを含んだ(Avanti Polar Lipids(アラバマ州アラバスター)より購入)。
【0064】
クロロホルム耐性試験管中、適切なモル量のリン脂質(POPC:POPE:DMPA:Ch=45:25:20:10)を分注することによって、合成リポソームを調製した。ボルテックスによってリン脂質を混合し、そして穏やかな窒素流のもとに、ドラフト中で混合物を乾燥させた。高圧下で脂質を保存する(15時間)ことによって、クロロホルムのいかなる残渣も除去した。PBSまたはTBS緩衝液、pH7.4を添加し、そして37℃で10〜30分間インキュベーションしつつ、断続的に勢いよくボルテックスしてリン脂質を再懸濁することによって、リン脂質の水性懸濁物を調製した。次いで、リン脂質の乳白色の均質な懸濁物を、超音波処理装置槽(Misonix Sonicator 3000、Misonix Inc.、ニューヨーク州ファーミングデール)で超音波処理した。超音波処理装置は、周期あたり総超音波処理45秒間の3連続周期を実行するようにプログラミングされた。各周期には、5秒間の超音波パルス(70ワット出力)、その後の12秒間のパルスオフ期が含まれた。超音波処理終了時、層状リポソームの懸濁物を4℃で保存した。
【0065】
HIV−1 MPERペプチドGTH1−2F5およびGTH1−4E10(図6)を70%クロロホルム、30%メタノール中に溶解した。45:25:20:10(POPC:POPE:DMPA:コレステロール)のモル比で、脂質のクロロホルム溶液をペプチド溶液に添加した。各ペプチドを、1:420のペプチド:総リン脂質比に添加した。混合物を上述のようにボルテックスし、次いで乾燥させ、そして再懸濁した。
【0066】
BAcore L1センサーチップ上にリポソームを捕捉して、疎水性リンカーを介した脂質二重層の固定を可能にした後、各ペプチド−脂質コンジュゲートに対するmAb結合の特異性を試験する結合アッセイを行った。合成リポソーム、またはペプチド−脂質コンジュゲートのいずれかを含む各センサー表面上に、2F5、4E10および対照mAb(A32または17b)を注入し、そしてBIAcore 3000装置上で結合を監視した(図8〜11)。
【0067】
免疫戦略
免疫戦略は、寛容の一時的な中断を可能にする措置を取り込んだ。プロトコルは、マウスにおける抗dsDNA抗体の産生のため、寛容を中断するために用いられてきているTLR9リガンドであるoCpGの使用を伴う(Tranら, Clin. Immunol. 109(3):278−287(2003))。ペプチド−リポソーム・コンジュゲートを、EmulsigenにoCpGを加えたアジュバントと混合した(1:1)。375μLのEmulsigen、250μLのoCpGおよび625μLの生理食塩水を混合することによって、Emulsigen混合アジュバント(2x)を調製した。各モルモットを、21日間隔で、250μgのペプチドのみまたは等量のペプチドを含むペプチド−リポソーム・コンジュゲートのいずれかで免疫した。初回免疫、そして続く免疫各々の前に、血清試料を前採血として採取した。ペプチドエピトープに対する結合に関してELISAアッセイ(図12)によって、そしてウイルス中和アッセイ(表2)のため、血清試料を分析した。図12中のデータは、GTH1−4E10リポソームで免疫した2匹のモルモット由来の血清の4E10ペプチドに対する強い反応性を示し、一方、4E10ペプチド免疫動物由来の血清においては、低レベルの反応性しか観察されなかった。陽性血清はまた、どちらも、HIV−1 MN株も中和した(表2)。
【0068】
【表2】
【0069】
抗原特異的B細胞応答の検出におけるペプチド−リポソーム・コンジュゲートの適用
上述のペプチド−リポソーム・コンジュゲートは、MPER特異的B細胞応答の検出用の試薬として利用されてきている。脂質組成物中にフルオレセイン−POPEを取り込むことによって、ペプチド−リポソーム構築物(2F5および4E10)をフルオレセインとコンジュゲート化した。フルオレセイン−POPEを45:55の比で非コンジュゲート化POPEと混合し、そして次いで、上述のようなモル比で、残りの脂質と混合した。BIAcore結合アッセイにおいて、フルオレセインとコンジュゲート化された2F5および4E10−ペプチド−リポソームはどちらも、それぞれのmAbに対する結合特異性を保持した(図11)。
【0070】
実施例4
ペプチド−脂質コンジュゲートの生成。クロロホルム中に溶解されたリン脂質、POPC(1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン)、POPE(1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン)、DOPE(1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジル・エタノールアミン);DMPA(1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート)、およびコレステロールをAvanti Polar Lipids(アラバマ州アラバスター)より購入した。クロロホルム耐性試験管中で、適切なモル量のリン脂質を分注することによって、リン脂質リポソームを調製した。モル比45:25:20:10(POPC:POPE:DMPA:コレステロール)で、脂質のクロロホルム溶液をペプチド溶液に添加した。HIV−1膜近位ペプチドを70%クロロホルム、30%メタノール中に溶解した。各ペプチドを1:420のペプチド:総リン脂質のモル比まで添加した。穏やかにボルテックスすることによってリン脂質を混合し、そして穏やかな窒素流のもとに、ドラフト中で混合物を乾燥させた。高圧下で脂質を保存する(15時間)ことによって、クロロホルムのいかなる残渣も除去した。PBSまたはTBS緩衝液、pH7.4を添加し、そしてTmより高い温度で10〜30分間維持しつつ、断続的に勢いよくボルテックスしてリン脂質を再懸濁することによって、リン脂質の水性懸濁物を調製し、その後、超音波処理装置槽(Misonix Sonicator 3000、Misonix Inc.、ニューヨーク州ファーミングデール)で超音波処理した。超音波処理装置は、周期あたり総超音波処理45秒間の3連続周期を実行するようにプログラミングされた。各周期には、5秒間の超音波パルス(70ワット出力)、その後の12秒間のパルスオフ期が含まれた。超音波終了時、層状リポソームの懸濁物を4℃で保存し、そしてBIAcoreセンサーチップ上で捕捉する前に、上述のように再び超音波処理した。
【0071】
ペプチド−脂質コンジュゲートの設計。ペプチドを合成し、そして逆相HPLCによって精製し、そして質量分析によって純度を確認した。この研究で用いられるペプチドには、以下が含まれる−HIV−1 gp41 2F5エピトープペプチド−2F5−GTH1(QQEKNEQELLELDKWASLWN−YKRWIILGLNKIVRMYS);およびHIV−1 gp41 4E10エピトープペプチド−4E10−GTH1(SLWNWFNITNWLWYIK−YKRWIILGLNKIVRMYS)。リポソームに取り込まれるべきさらなるペプチドには−SP8926−GTH1(EQELLELDKWASLWN−YKRWIILGLNKIVRMYS);およびSp8928−GTH1(KWASLWNWFDITNWL−YKRWIILGLNKIVRMYS)が含まれる。
【0072】
ペプチド−脂質コンジュゲート。これらのペプチドは各々:
i)POPC:POPE:DMPA:コレステロール
ii)POPC:POPS
iii)POPC:POPS:リゾPC
iv)POPC:POPE:スフィンゴミエリン:コレステロール
を含む多様な組成の合成リポソーム内に取り込まれるであろう。
【0073】
リポソームは、モノホスホリル脂質A(Avanti Polar Lipids)を伴いおよび伴わずに複合体化されるであろう。
実施例5
ストレプトアビジンをコーティングしたBIAcoreセンサーチップ(SA)上にビオチン化2F5名目上エピトープペプチド(SP62)を係留し、そして2F5 mabまたは2F5 Fabのいずれかをペプチド表面上に注入した。HR−1ペプチド対照表面上の非特異的シグナルを減じた後、2F5 mAb(46.6〜1800nM)または2F5 Fab(120〜2000nM)の特異的結合を得た。BIAevaluationソフトフェアを用いて、単純ラングミュア等式に対する全体的曲線適合後、Kdを計算した。図13に示すデータは、ペプチドエピトープに対するMPER mAb結合が、単純なモデル(ラングミュア等式)に適合することを示す。
【0074】
2F5ペプチド−脂質(図14、左パネル)または4E10ペプチド−脂質コンジュゲートのいずれかの約600RUを、BIAcore L1センサーチップに係留し、そして次いで、2F5 mAbまたは4E10 mAbを100:g/mLで注入した。曲線適合分析によって、ペプチド−脂質コンジュゲートに結合した両Mabの結合は、2段階コンホメーション変化様式にしたがうことが示される(図14)。重ね合わせ各々において、結合データを黒で示し、そしてこのデータは、観察される総結合応答に相当する。実験的に決定した速度定数から、遭遇(encounter)複合体(赤色)およびドッキング(docked)複合体(青色)の構成要素曲線をシミュレーションした。
【0075】
エンベロープgp140オリゴマーをBIAcore CM5チップ上に係留し、そして図15に示すmAb各々を、各Env表面上に注入した。ヒト・クラスターII mAb、98−6、126−6、および167−Dは、Env gp140に強く結合し、一方、非中和性ネズミMPER mAb、2F5、および4E10との結合は検出されなかった。
【0076】
脂質リンカーとの疎水性相互作用を通じて、合成リポソーム(PC:PE;緑色)、またはカルジオリピン(赤色)をBIAcoreL1センサーチップ上に係留した(図16)。示すmAb(500nM)各々を、脂質表面各々およびブランク対照表面上に注入した。クラスターII mAb 98−6および167−Dの強い結合、ならびにmAb 126−6の中程度の結合が示される(図16A〜C)。いずれの脂質に対しても抗MPER mAb 13H11の結合はまったく観察されなかった。
【0077】
2F5−ペプチド(SP62)脂質コンジュゲートをBIAcore L1表面に係留し、そしてmAb 98−6、167−Dまたは126−6に対する結合を監視した(図17A)。Mab 98−6は、ペプチド−脂質コンジュゲートに強く結合し、一方、mAb 167−Dおよび126−6では比較的より低いアビディティーの結合が検出された。曲線適合分析は、2F5(図17B)および98−6(図17C)の結合に関連する2段階コンホメーション変化を示す;一方、mAb 167−D(図17D)および126−6(図17E)の結合は、単純なモデル(ラングミュア等式)にしたがった。
【0078】
表3に示すデータは、25Fおよび他の原型抗MPERクラスターII mAbの結合および中和特性を示す。直鎖エピトープペプチドに強く結合し、そして2段階コンホメーション変化モデルにしたがうmAb 2F5および98−6のみが、PBMCアッセイにおいて、HIV−1を中和した。
【0079】
【表3】
【0080】
実施例6
抗リン脂質症候群の患者由来のヒト・モノクローナル抗体(CL1、IS4およびIS6と称される)が研究されてきている(表4を参照されたい)(Gilesら, J. Immunol. 177:1729−1736(2006)、Zhuら, Brit. Jour. Haematol. 105:102−109(1999)、Chukwuochaら, Mol. Immunol. 39:299−311(2002)、Zhuら, Brit. Jour. Haematol. 135:214−219(2006)、Pierangeliら, Thromb. Haemost. 84:388−395(2000)、Linら, Arth Rheum 56:1638(2007)、Alamら, J. Immunol. 178:4424−4435(2007)、Zhaoら, Arth. Rheum. 42:2132−2138(1999)、Luら, Arth. Rheum. 52:4018−4027(2005))。IS4およびIS6は病原性抗脂質抗体であり、一方、CL1は非病原性抗脂質自己抗体である(表4)。これらの抗体はいずれも、ビリオン−細胞融合によって初期感染を反映する偽ウイルス阻害アッセイにおいて、HIV偽ウイルスを中和しなかった(Liら, J. Virol. 79:10108−25(2005))(表5)が、これらの抗体3つすべては、HIVのエンドサイトーシスに依存し、そしてin vivoのCD4細胞のHIV感染性を反映するPBMC HIV中和アッセイにおいて、HIV−1を中和した(表6)。CL1がHIVを中和することは:a)ヒトはHIVを中和する非病原性抗脂質抗体を作製可能であり、そしてb)CL1は、HIV感染被験体の治療のために、あるいはHIVまたはHIV感染物質への針、性的または他の曝露後、被験体の曝露後予防の状況において、療法Mabとして安全に使用可能な抗体であるという事実を証明する。
【0081】
【表4】
【0082】
【表5】
【0083】
【表6】
【0084】
Alvingおよび同僚らは、ホスファチジルイノシトールリン酸に対してマウスmabを作製し、そして該mabがPBMCアッセイにおいてHIVを中和することを示した(Wassefら, Mol. Immunol. 21:863−868(1984)、Brownら, Virol. 81:2087−2091(2007)、Beckら, Biochem. Biophys Res. Comm. 354:747−751(2007))。本研究が示すのは、ヒトが自発的に抗脂質抗体を作製可能であり、そしてこれらの抗体が、前例のない方式で、HIVを広範に中和可能であることである。
【0085】
要約すると、自己免疫疾患患者は、ウイルス感染細胞に結合し、そしておそらくHIV膜および宿主膜に対する反応性のために、出芽HIVビリオンに結合する抗体を作製可能である。自己免疫疾患患者由来の特定の抗脂質抗体はまた、エンベロープ三量体とも反応可能である(IS6など)が、すべての抗体が三量体とも反応するのではない(すなわちCL1およびIS4は反応しない)。したがって、HIVエンベロープとの反応性は、これらの抗体において中和の必要条件ではない。
【0086】
これらの研究はまた、gp41脂質複合体を用いて、ヒトにおいてCL1様抗体産生を安全に刺激することが可能でありうることも立証する(Alamら, J. Immunol. 178:4424−4435(2007)、Schusterら, J. Immunol. 122:900−905(1984))。
【0087】
実施例7
図18に示すToll様受容体リガンドをgp41 MPERペプチド免疫原を含むリポソーム型に配合した。
【0088】
MPERペプチドリポソームを含有する脂質AおよびR−848の構築は、膜係留アミノ酸配列を有するMPERペプチド、ならびに合成脂質、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(POPC)、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(POPE)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(DMPA)、およびコレステロールを、それぞれ、モル分率0.216、45.00、25.00、20.00および1.33で同時可溶化する方法を利用した。適切な量のMPERペプチドを、クロロホルム−メタノール混合物(7:3v/v)中に溶解し、脂質Aをクロロホルム中に溶解するかまたはR−848をメタノール中に溶解し、適切な量のリン脂質のクロロホルムストックを、窒素流中で乾燥させ、その後、一晩真空乾燥させた。押出技術を用いて、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中で、乾燥ペプチド−脂質フィルムから、リポソームを作製した。MPERペプチドリポソームと複合体化されたオリゴ−CpGの構築は、POPCの代わりに、陽イオン性脂質、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−エチルホスホコリン(POEPC)を用いた。ペプチド免疫原を含有する陽イオン性リポソームを、所望の用量に適した量のoCpGストック溶液(1mg/ml)と混合することによって、oCpGのコンジュゲート化を行った。
【0089】
図19に示す設計図は、異なるTLRアジュバント;TLR4(脂質A);TLR9(oCpG)およびTLR7(R848)を含有するペプチド−リポソームを示す。
ペプチド−リポソーム構築物中のエピトープに対する2F5 mAbの結合に関するBiacoreアッセイによって、TLRアジュバントの取り込みまたはコンジュゲート化が、HIV中和抗体2F5の結合に影響を及ぼさないことを明らかにした。mAb 2F5および4E10両方の強い結合が観察された(図20を参照されたい)。
【0090】
実施例8
膜貫通ドメインに先行するHIV−1 gp41膜近位外部領域が、広範中和性抗体2F5および4E10のターゲットである。MPERペプチドが、膜界面、ならびに抗体2F5および4E10の脂質反応性に分割されるという事実が、広範中和性gp41 MPER抗体の誘導のための候補免疫原として、MPERペプチド−リポソーム・コンジュゲートの設計につながった。ここで用いたペプチド−リポソーム・コンジュゲート化戦略は、2F5および4E10 mAb両方のエピトープを含有し、そしてHIV−1 gp41の膜貫通ドメイン(gp160の残基656〜707)を取り込んでいるMPERに対応する合成ペプチド、MPER656−TMD(図21)の設計を伴った。
【0091】
MPER656−TMDペプチド−リポソーム・コンジュゲート構築物は、MPER656−TMDペプチド、ならびに合成脂質、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(POPC)、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(POPE)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(DMPA)、およびコレステロールの、それぞれ、モル分率0.43、45.00、25.00、20.00および1.33での同時可溶化を伴った。適切な量のMPER656−TMDペプチドをクロロホルム−メタノール混合物(8:2 v/v)中に溶解し、適切な量のリン脂質のクロロホルムストックと混合し、窒素流中で乾燥させ、その後、一晩真空乾燥させた。押出技術を用いて、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中で、乾燥ペプチド−脂質フィルムから、リポソームを作製した。
【0092】
TMDリポソーム構築物に対するMPERエピトープの提示を評価するため、〜3000 RU BSAが各フローセル上に固定されたBiacore L−1チップ上に、MPER656−GTH1およびペプチド不含合成リポソームを捕捉した(図22)。
【0093】
MPER656−TMD−リポソーム構築物におけるMPER領域の機能的提示の試験は、図23に示す、Biacore L−1チップ上に固定されたリポソームと2F5および4E10 mAbの相互作用を検査することを伴った。2F5 mAbのペプチド特異的結合後の4E10 mAbの結合またはその逆(図23)によって、MPER656−TMDペプチド中に含有されるそれぞれのエピトープの機能的提示が確認された。
【0094】
したがって、2F5および4E10は、gp41 MPER−TMD構築物に強く結合した。したがって、この戦略は、天然TMDを介して係留されたgp41 MPERを提示する新規手段を提供する。HIV−1 gp41 MPERおよび膜貫通ドメインのアミノ酸配列(gp160の残基656〜707)を含有するMPER65−TMDペプチドを用いて、MPERペプチドを合成リポソームに成功裡にコンジュゲート化した。MPER656−TMD−リポソーム・コンジュゲートにおける2F5および4E10 mAb両方のエピトープの機能的ディスプレイによって、この構築物は、2F5および4E10様抗体の誘導に関して試験すべき、非常に有望な免疫原となっている。
【0095】
上記に引用するすべての文書および他の情報供給源は、その全体が本明細書に援用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者において、抗HIV抗体の産生を誘導する方法であって、こうした方法が必要な患者に、前記誘導を達成するのに十分な量で、少なくとも1つのリポソーム−ペプチド・コンジュゲートの量を投与する工程を含み、前記ペプチドが膜外部近位領域(MPER)エピトープを含み、そして前記リポソームがリゾホスホリルコリンまたはホスファチジルセリンを含む、前記方法。
【請求項2】
前記ペプチドが、配列ELDKWASまたはWFNITNWを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記リポソーム−ペプチド・コンジュゲートがさらに脂質Aを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記リポソーム−ペプチド・コンジュゲートをβ2糖タンパク質1の組換えドメインVと混合する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
リポソーム中に包埋されたMPERエピトープを含む免疫原であって、前記リポソームがリゾホスホリルコリンまたはホスファチジルセリンを含む、前記免疫原。
【請求項6】
前記免疫原がさらに脂質Aを含む、請求項5記載の免疫原。
【請求項7】
前記免疫原がさらに、β2糖タンパク質1の組換えドメインVを含む、請求項5記載の免疫原。
【請求項8】
HIVを治療する方法であって、こうした方法が必要な患者に、HIV表面上またはHIV感染細胞表面上の脂質に結合し、そしてそれによってHIV−1を中和する、正常被験体からまたは自己免疫疾患被験体から誘導可能な抗体を投与する工程を含み、前記抗体がCL1、またはその結合特異性を有する抗体、またはその結合性断片であり、そして前記治療を達成するのに十分な量で投与される、前記方法。
【請求項9】
HIV−1 gp41およびMPERペプチドの膜貫通ドメインを含む免疫原性コンジュゲートであって、前記MPERペプチドが前記膜貫通ドメインを介してリポソーム中に係留される、前記コンジュゲート。
【請求項10】
前記リポソームが合成脂質を含む、請求項9記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項11】
前記MPERペプチドが2F5または4E10モノクローナル抗体のエピトープを含む、請求項9記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項12】
患者において免疫応答を誘導する方法であって、前記患者に、前記誘導を達成するのに十分な量の請求項9記載の前記免疫原性コンジュゲートを投与する工程を含む、前記方法。
【請求項1】
患者において、抗HIV抗体の産生を誘導する方法であって、こうした方法が必要な患者に、前記誘導を達成するのに十分な量で、少なくとも1つのリポソーム−ペプチド・コンジュゲートの量を投与する工程を含み、前記ペプチドが膜外部近位領域(MPER)エピトープを含み、そして前記リポソームがリゾホスホリルコリンまたはホスファチジルセリンを含む、前記方法。
【請求項2】
前記ペプチドが、配列ELDKWASまたはWFNITNWを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記リポソーム−ペプチド・コンジュゲートがさらに脂質Aを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記リポソーム−ペプチド・コンジュゲートをβ2糖タンパク質1の組換えドメインVと混合する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
リポソーム中に包埋されたMPERエピトープを含む免疫原であって、前記リポソームがリゾホスホリルコリンまたはホスファチジルセリンを含む、前記免疫原。
【請求項6】
前記免疫原がさらに脂質Aを含む、請求項5記載の免疫原。
【請求項7】
前記免疫原がさらに、β2糖タンパク質1の組換えドメインVを含む、請求項5記載の免疫原。
【請求項8】
HIVを治療する方法であって、こうした方法が必要な患者に、HIV表面上またはHIV感染細胞表面上の脂質に結合し、そしてそれによってHIV−1を中和する、正常被験体からまたは自己免疫疾患被験体から誘導可能な抗体を投与する工程を含み、前記抗体がCL1、またはその結合特異性を有する抗体、またはその結合性断片であり、そして前記治療を達成するのに十分な量で投与される、前記方法。
【請求項9】
HIV−1 gp41およびMPERペプチドの膜貫通ドメインを含む免疫原性コンジュゲートであって、前記MPERペプチドが前記膜貫通ドメインを介してリポソーム中に係留される、前記コンジュゲート。
【請求項10】
前記リポソームが合成脂質を含む、請求項9記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項11】
前記MPERペプチドが2F5または4E10モノクローナル抗体のエピトープを含む、請求項9記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項12】
患者において免疫応答を誘導する方法であって、前記患者に、前記誘導を達成するのに十分な量の請求項9記載の前記免疫原性コンジュゲートを投与する工程を含む、前記方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3−1】
【図3−2】
【図4−1】
【図4−2】
【図5】
【図6−1】
【図6−2】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17−1】
【図17−2】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3−1】
【図3−2】
【図4−1】
【図4−2】
【図5】
【図6−1】
【図6−2】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17−1】
【図17−2】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公表番号】特表2010−523676(P2010−523676A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503070(P2010−503070)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/004709
【国際公開番号】WO2008/127651
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(591101777)デューク ユニバーシティ (10)
【氏名又は名称原語表記】DUKE UNIVERSITY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/004709
【国際公開番号】WO2008/127651
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(591101777)デューク ユニバーシティ (10)
【氏名又は名称原語表記】DUKE UNIVERSITY
【Fターム(参考)】
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