ヒト細胞発現系を用いる真正ヒトタンパク質の組換え生産
本発明は、新規ヒト細胞系の安定な培養物から真正組換えヒトタンパク質を効率的に生産するための新規発現カセットおよびベクター、それから生産された真正組換えタンパク質、ならびにこれらの真正組換えタンパク質に対する抗体に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本国際PCT出願は、2009年1月27日に出願された米国特許仮出願第61/147,627号および2008年3月14日に出願された同第61/036,667号(両方とも参照により本明細書に組み入れられるものとする)に対する優先権を主張するものである。
【0002】
技術分野
本発明は、真正ヒトタンパク質を組換え生産するためのヒト発現系に関する。
【発明の概要】
【0003】
本発明の態様は、新規ヒト細胞系の安定な培養物から真正組換えヒトタンパク質を効率的に生産するための新規発現カセットおよびベクターを含む。また、これらの新規方法により、およびこれらの新規成分から生産された真正組換えタンパク質、ならびにこれらの真正組換えタンパク質に対する抗体も本発明により意図される。組換え生産された、本発明の真正ヒトタンパク質を、遺伝子療法において使用することもでき、また本明細書に開示されるベクターを遺伝子療法において用いて、in vivoまたはin vitro/ex vivoでヒトタンパク質を発現させ、特定の疾患を治療することもできる。
【0004】
本発明のベクターおよび細胞系を一緒に使用し、また互いに独立して使用することができることが理解されるべきである。すなわち、本発明の新規ベクターを、HZ-293TS(以下に記載)などの本発明の新規細胞系に導入し、その細胞内で、サイトカインなどの特定のコードされるヒトタンパク質を発現させることができる。しかしながら、任意のベクターを本発明の細胞系において発現させることができることも同じく真実である。同様に、本明細書に開示されるベクターのいずれかを、本明細書に記載されるものだけでなく、様々なヒト細胞系において発現させることができる。
【0005】
本発明の一態様は、ヒト細胞中での真正ヒトタンパク質の発現を容易にする発現カセットであって、5'から3'の方向に、以下の配列:
(1)サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサーエレメント;
(2)(i)ヒトβ-アクチンプロモーター、(ii)ヒト血清アルブミンプロモーター、および(iii)ヒトフィブリノゲンプロモーターからなる群より選択されるヒトプロモーター配列;
(3)ヒトグロビン遺伝子イントロン;ならびに
(4)免疫グロブリンスーパーファミリー8シグナルペプチドもしくはα-フィブリノゲンシグナルペプチドなどのシグナルペプチド、
を含む前記発現カセットである。
【0006】
目的のヒトタンパク質またはその断片をコードする所望のポリヌクレオチドを、シグナルペプチド配列に機能し得る形で連結し、その下流に挿入する。また、この発現カセットは、所望のポリヌクレオチドがシグナルペプチドとポリアデニル化/終結シグナル配列の間に機能し得る形で連結され、挿入されるように、ポリアデニル化シグナル配列および/または終結シグナル配列をさらに含んでもよい。あるいは、所望のポリヌクレオチド自身が、転写の好適な終結を補助するための終結シグナル配列またはポリアデニル化シグナル配列を含んでもよい。
【0007】
これらの調節エレメントの配置および順列がどんなものでも、このカセットの発現がシグナルペプチドに連結された所望のポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質またはポリペプチドを含む融合タンパク質を産生することは当業者には明らかである。かくして、シグナルペプチド/ヒトタンパク質を、本発明に従って生産した後、シグナルペプチドを融合タンパク質から切断除去して、無傷の真正ヒトタンパク質を遊離させることができる。この態様においては、ヒト細胞機構はタンパク質合成の間に切断部位を認識する。例えば、細胞のゴルジ装置とシグナルペプチドはタンパク質合成の間に相互作用し、その時点でシグナルペプチドは融合タンパク質から分離する。従って、タンパク質が細胞外空間に分泌される際、シグナルペプチドは既に分離している。
【0008】
従って、本発明の発現カセットは、機能し得る形で連結された以下の配列:(1)CMV極初期エンハンサー配列;(2)ヒトβ-アクチンプロモーター;(3)グロビン遺伝子イントロン;(4)α-フィブリノゲンシグナルペプチド;(5)所望のポリヌクレオチド;ならびに(6)ポリアデニル化/終結配列を含んでもよい。当業者であれば、これらのエレメントの他の順列が他の配列と異なり、それと交換することができることを知っている。例えば、上記で示されるように、ヒトβ-アクチンプロモーターの代わりにカセット中でヒト血清アルブミンプロモーターまたはヒトフィブリノゲンプロモーターを用いる発現カセットを構築することができる。かくして、本発明の発現カセットは、機能し得る形で連結された以下の配列:(1)CMV極初期エンハンサー配列;(2)ヒトβ-アクチンプロモーター;(3)グロビン遺伝子イントロン;(4)免疫グロブリンスーパーファミリー8シグナルペプチド;(5)所望のポリヌクレオチド;ならびに(6)ポリアデニル化/終結配列を含んでもよい。
【0009】
従って、一態様において、本発明は、CMV極初期エンハンサー、β-アクチンプロモーター配列、ヒトグロビン遺伝子イントロン配列、および免疫グロブリンスーパーファミリー8シグナルペプチドに機能し得る形で連結された所望のポリヌクレオチドであって、シグナルペプチドに機能し得る形で連結され、その下流に位置する前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクターである。
【0010】
本発明の別の態様は、CMV極初期エンハンサー、β-アクチンプロモーター配列、ヒトグロビン遺伝子イントロン配列、およびα-フィブリノゲンシグナルペプチドに機能し得る形で連結された所望のポリヌクレオチドであって、シグナルペプチドに機能し得る形で連結され、その下流に位置する前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクターである。
【0011】
これに関連して、本発明は、前記発現カセット中でのヒト遺伝子エレメントのみの使用に限定されない。例えば、プロモーターおよび遺伝子イントロン配列、ならびにシグナルペプチドは、他の種のゲノムに由来するものであってよい。例えば、前記配列は、任意の哺乳動物、爬虫類、鳥類、魚類、昆虫、細菌、真菌、酵母、ウイルスまたは両生類に由来するものであってよい。かくして、本発明の一実施形態においては、前記発現カセットは、マウス、サル、類人猿、ラット、ネコ、イヌ、ウサギ、スナネズミ、ハムスター、モルモット、ブタ、ウシ、またはヒツジなどのヒト以外の種に由来するプロモーター、イントロン、ならびにシグナルペプチドのヌクレオチド配列を含む。
【0012】
別の実施形態においては、シグナル配列は、細胞のゴルジ体または細胞外空間に転写されたRNA分子産物を輸送するのを助ける配列をコードする。
【0013】
本発明の別の態様は、細胞中でタンパク質を生産する方法であって、本発明の発現ベクターを細胞中に導入することを含み、該細胞はベクターカセットの配列と同じ種に由来するものであり、カセット中の遺伝子配列は細胞中で転写および翻訳されて、それがコードするタンパク質を産生する前記方法である。一実施形態においては、前記発現ベクターを、プロモーター、イントロン、およびシグナルペプチド配列が得られた種と同じ種に由来する細胞中に導入する。一実施形態においては、細胞とカセットの配列の双方が、任意の哺乳動物、爬虫類、鳥類、魚類、昆虫、細菌、真菌、酵母、ウイルス、または両生類に由来するものである。かくして、本発明の一実施形態においては、前記細胞と発現カセットの配列は両方とも、ヒト、マウス、サル、類人猿、ラット、ネコ、イヌ、ウサギ、スナネズミ、ハムスター、モルモット、ブタ、ウシ、およびヒツジからなる群より選択される種に由来するものである。一実施形態においては、前記細胞はヒト細胞である。別の実施形態においては、ヒト細胞はヒト腎臓細胞である。一実施形態においては、ヒト腎臓細胞は、HEK 293細胞である。本発明の発現カセットの配列は、シグナルペプチドの下流に機能し得る形で連結され、エンハンサー、プロモーター、およびイントロンに機能し得る形で連結された目的の核酸配列、または所望のポリヌクレオチドを含み、目的の核酸配列または所望のポリヌクレオチドが発現される。所望のポリヌクレオチドの例としては、限定されるものではないが、以下の配列表の(1)〜(13)に開示されるもの、ならびに表5に列挙されるものが挙げられる。かくして、本発明の所望のポリヌクレオチドによりコードされるヒトサイトカインの例としては、限定されるものではないが、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンA/2xINHbA、アクチビンB/2xINHbB、AMH/MIS、アルテミン、BDNF、BMP2、BMP15/GDF9B、BMP2/BMP2A、BMP3/オステオゲニン、BMP4、BMP4/BMP2B、BMP5、BMP7/OP-1、BMP1、BMP10、BMP15/GDF9B、β-NGF、シスタチンC、デルタ1、EGF、エリスロポエチン(EPO)、酸性FGF、塩基性FGF、FGF10、FGF5、FGF7、FGF8b、FLT3リガンド、G-CSF、GDF15、GDF2/BMP9、GDF3、GDF5/BMP14、GDF8/ミオスタチン、GDF9、GDNF、GM-CSF、HGF、HGH、IFN-α2A、IFN-α2B、IFN-γ、IFN-β1、IGF I、IGF II、IGF IIv1、IGF IIv2、IL10、IL11、IL12、IL15、IL17/IL17A、IL17F、IL1β、IL2、IL23、IL27、IL28A/IFN-λ-2、IL28B/IFN-λ-3、IL29/IFN-λ-1、IL1β、IL2 IL3、IL32、IL35、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、インヒビンA/INHa&INHbA、インヒビンB/INHa&INHbB、インヒビンC/INHa&INHbC、インヒビンE/INHa&INHbE、LEFTYB、LEFTY1/LeftyB、M-CSF、マウスCSF、マウスSCF、NODAL、Noggin、NT3 (ニューロトロフィン3)、オンコスタチンM、PDGFα、PDGFβ、ペルセフィン、SCF、SDF1α、SHH、ソマトトロピン、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3、TGFβ4/LEFTY2/LeftyA、TNF α、TPOα、VEGF121aa、VEGF165aa、WIF1、WNT1、Wnt10A、Wnt10B/12、Wnt11、Wnt16、Wnt2、Wnt2B/13、Wnt3、Wnt3A、Wnt4、Wnt5A、Wnt5B、Wnt6、Wnt7A、Wnt7B、Wnt8B、およびWnt9A/14が挙げられる。本発明の記載のポリヌクレオチドは、EPO、G-CSF、GM-CSF、IL-2、IL-4、IL-6、M-CSF、Noggin、SCF、ソマトトロピン、TGFβ1、TNFα、またはVEGF-165をコードしてもよい。
【0014】
本発明の方法の一態様は、細胞から産生されたタンパク質を単離することを含む。一実施形態においては、前記方法はさらに、単離されたタンパク質に対する抗体を生成させることをさらに含む。かくして、本発明の別の態様は、本明細書に開示される本発明の方法のいずれか1つにより産生されたタンパク質のエピトープに対して生成した抗体である。一実施形態においては、前記抗体はポリクローナルまたはモノクローナル抗体である。
【0015】
本発明の別の態様は、本明細書に開示される発現ベクターのいずれかのカセットを発現する細胞である。一実施形態においては、前記細胞は、前記カセット中の配列と同じ種に由来するものである。一実施形態においては、前記細胞はヒト細胞である。
【0016】
本発明の別の態様は、個体における免疫応答を誘導するための方法であって、個体の細胞中で本明細書に開示される発現ベクターのいずれかのカセットを発現させることを含み、遺伝子配列の発現が、個体における免疫応答を誘導するタンパク質またはRNA産物を産生し、個体の種がカセット中の配列の種と同じものである前記方法である。
【0017】
本発明の別の態様は、全ての配列が機能し得る形で連結された、(A)ヒトプロモーター配列、(B)ヒトシグナル配列、(C)ヒト遺伝子配列、および(D)ヒトポリアデニル化シグナル配列を含むカセットを含む発現ベクターである。
【0018】
一実施形態においては、CMVエンハンサーエレメントの配列の例を、ヒトCMV極初期(IE)エンハンサーである配列番号27に示す。例示的なヒトプロモーター配列の配列を配列番号28に示し、これはヒトβ-アクチンプロモーター配列である。例示的なヒトグロビン遺伝子イントロンの配列を配列番号29に示す。シグナルペプチドの例としては、配列番号30に示されるヒトフィブリノゲンα鎖シグナルペプチド、および配列番号31に示されるヒト免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー8前駆体シグナルが挙げられる。
【0019】
互いに機能し得る形で連結されたこれらのエレメントを含む発現カセットの例を、配列番号32および33に示す。
【0020】
任意の所望のポリヌクレオチドまたは目的の核酸を、それが発現カセットのシグナルペプチドならびにCMV IEエンハンサー、ヒトプロモーター、およびヒトグロビンイントロン配列などの調節エレメントに機能し得る形で連結されるように、シグナルペプチドの下流に挿入することができる。本発明のカセットはさらに、転写後プロセッシングがその5'末端でシグナルペプチドに連結された所望のタンパク質を含むタンパク質を生成するように、グロビン遺伝子イントロンとシグナルペプチドの間に切断部位配列を含んでもよい。このシグナルペプチドは、前記タンパク質を細胞外空間へ輸送するシグナルペプチドであってもよい。本発明の所望のポリヌクレオチドとしては、サイトカインをコードするポリヌクレオチドが挙げられる。かくして、本発明の一態様は、真正に糖鎖付加され、天然の、ヒト細胞からin vivoで外因的に発現された同じサイトカインと構造において同等である、単離された組換えヒトサイトカインである。
【0021】
本発明の一実施形態においては、組換えヒトサイトカインは、ヒト特異的N-アセチルノイラミン酸で終結する糖鎖を含むため、それは天然のサイトカインと同等である。一実施形態においては、糖鎖はサイトカインの表面に共有結合している。本発明の別の実施形態においては、糖鎖はN-アセチルグルコサミン、フコース、マンノース、およびガラクトース部分のうちの少なくとも1個を含む。別の実施形態においては、真正に糖鎖付加されたサイトカインのみが、ヒト細胞に由来する糖鎖を含み、任意の非ヒト細胞に由来する糖鎖部分を含まない。
【0022】
一実施形態においては、本発明の所望のポリヌクレオチドによりコードされる組換えヒトサイトカインを、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンA/2xINHbA、アクチビンB/2xINHbB、AMH/MIS、アルテミン、BDNF、BMP2、BMP15/GDF9B、BMP2/BMP2A、BMP3/オステオゲニン、BMP4、BMP4/BMP2B、BMP5、BMP7/OP-1、BMP1、BMP10、BMP15/GDF9B、β-NGF、シスタチンC、デルタ1、EGF、エリスロポエチン(EPO)、酸性FGF、塩基性FGF、FGF10、FGF5、FGF7、FGF8b、FLT3リガンド、G-CSF、GDF15、GDF2/BMP9、GDF3、GDF5/BMP14、GDF8/ミオスタチン、GDF9、GDNF、GM-CSF、HGF、HGH、IFN-α2A、IFN-α2B、IFN-γ、IFN-β1、IGF I、IGF II、IGF IIv1、IGF IIv2、IL10、IL11、IL12、IL15、IL17/IL17A、IL17F、IL1β、IL2、IL23、IL27、IL28A/IFN-λ-2、IL28B/IFN-λ-3、IL29/IFN-λ-1、IL1β、IL2 IL3、IL32、IL35、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、インヒビンA/INHa&INHbA、インヒビンB/INHa&INHbB、インヒビンC/INHa&INHbC、インヒビンE/INHa&INHbE、LEFTYB、LEFTY1/LeftyB、M-CSF、マウスCSF、マウスSCF、NODAL、Noggin、NT3 (ニューロトロフィン3)、オンコスタチンM、PDGFα、PDGFβ、ペルセフィン、SCF、SDF1α、SHH、ソマトトロピン、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3、TGFβ4/LEFTY2/LeftyA、TNF α、TPOα、VEGF121aa、VEGF165aa、WIF1、WNT1、Wnt10A、Wnt10B/12、Wnt11、Wnt16、Wnt2、Wnt2B/13、Wnt3、Wnt3A、Wnt4、Wnt5A、Wnt5B、Wnt6、Wnt7A、Wnt7B、Wnt8B、およびWnt9A/14からなる群より選択する。また、表5の「クローニングされたサイトカイン遺伝子の一覧」も参照されたい。本発明の所望のポリヌクレオチドによりコードされる組換えヒトサイトカインを、表5に列挙されるサイトカイン群から選択することもできる。別の実施形態においては、ヒト組換えサイトカインを、EPO、G-CSF、GM-CSF、IL-2、IL-4、IL-6、M-CSF、Noggin、SCF、ソマトトロピン、TGFβ1、TNFα、およびVEGF-165からなる群より選択する。
【0023】
本発明の別の態様は、真正ヒトサイトカインを生産するための組換え方法であって、(1)無血清培地上で生存することができるヒト細胞を、(i)ヒトサイトカイン配列をコードする所望のポリヌクレオチドおよび(ii)抗生物質耐性遺伝子を含む本明細書に開示される発現ベクターのいずれか1つでトランスフェクトすること;(2)(i)抗生物質遺伝子が耐性である抗生物質を含む培地への曝露を生き残るトランスフェクト細胞を選択すること、(ii)抗生物質曝露を生き残るこれらの細胞を低血清濃度を有する液体培養物に移すこと、(3)長時間にわたって血清濃度を0%に低下させること;ならびに(4)無血清培地液体培養物中で増殖する細胞から発現されたヒトサイトカインを単離することを含み、単離されたヒトサイトカインが生物学的に活性である前記方法である。本発明の別の態様においては、ヒト細胞を、サイトカイン配列を含む所望のポリヌクレオチドを含む1つのベクターと、抗生物質耐性遺伝子発現カセットを含む別の異なるベクターとを用いて同時トランスフェクトすることができる。かくして、本発明は、本発明のヒト細胞をトランスフェクトするための、1個のベクター(サイトカイン配列と抗生物質耐性遺伝子配列の両方を含む)の使用または2個のベクター(一方はサイトカイン遺伝子配列を含み、他方は抗生物質耐性遺伝子配列を含む)の使用を意図する。
【0024】
一実施形態においては、所望のポリヌクレオチドは、ヒトサイトカインをコードする配列と読み枠を合わせたシグナルペプチド分泌配列をコードする配列を含む。別の実施形態においては、所望のポリヌクレオチドをプロモーターおよびターミネーターに機能し得る形で連結する。
【0025】
一実施形態においては、前記無血清培地は、1種以上の抗生物質を含む。一実施形態においては、抗生物質はネオマイシン(G418)、ヒグロマイシン、ゼオシン、またはブラスチシジンである。別の実施形態においては、血清濃度を0%に低下させる工程を、1日〜数週間の期間に行う。一実施形態においては、液体培養物の容量は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50リットルもしくは50リットルを超える培養物、またはその間の任意の整数である。
【0026】
別の実施形態においては、ヒトサイトカインを単離する工程は、無血清液体細胞培養物のアリコートを遠心分離し、ヒトサイトカインが分泌された上清からそれを捕捉することを含む。一実施形態においては、ヒトサイトカインを単離する工程は、遠心分離工程から沈降したヒト細胞を、同じか、または異なる無血清液体細胞培養容器に戻すことをさらに含む。
【0027】
一実施形態においては、分泌されたヒトサイトカインが単離される上清は、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、または約20%以下の分泌されたヒトサイトカインではない夾雑材料またはタンパク質を含む。
【0028】
一実施形態においては、分泌されたヒトサイトカインを含む上清のサンプルの純度は、少なくとも約99%純粋、少なくとも約98%純粋、少なくとも約97%純粋、少なくとも約96%純粋、少なくとも約95%純粋、少なくとも約94%純粋、少なくとも約93%純粋、少なくとも約92%純粋、少なくとも約91%純粋、少なくとも約90%純粋、少なくとも約89%純粋、少なくとも約88%純粋、少なくとも約87%純粋、少なくとも約86%純粋、少なくとも約85%純粋、少なくとも約84%純粋、少なくとも約83%純粋、少なくとも約82%純粋、少なくとも約81%純粋、または少なくとも約80%純粋である。
【0029】
一実施形態においては、細胞培養物の上清は、本質的には発現され、分泌されたヒトサイトカインタンパク質からなる。
【0030】
別の実施形態においては、細胞培養物の上清は、発現され、分泌されたヒトサイトカインタンパク質以外の他の生物学的に活性なタンパク質を含まない。
【0031】
別の態様は、組換え方法により生産された単離された組換えヒトサイトカインである。一実施形態においては、その単離された組換えヒトサイトカインを、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンA/2xINHbA、アクチビンB/2xINHbB、AMH/MIS、アルテミン、BDNF、BMP2、BMP15/GDF9B、BMP2/BMP2A、BMP3/オステオゲニン、BMP4、BMP4/BMP2B、BMP5、BMP7/OP-1、BMP1、BMP10、BMP15/GDF9B、β-NGF、シスタチンC、デルタ1、EGF、エリスロポエチン(EPO)、酸性FGF、塩基性FGF、FGF10、FGF5、FGF7、FGF8b、FLT3リガンド、G-CSF、GDF15、GDF2/BMP9、GDF3、GDF5/BMP14、GDF8/ミオスタチン、GDF9、GDNF、GM-CSF、HGF、HGH、IFN-α2A、IFN-α2B、IFN-γ、IFN-β1、IGF I、IGF II、IGF IIv1、IGF IIv2、IL10、IL11、IL12、IL15、IL17/IL17A、IL17F、IL1β、IL2、IL23、IL27、IL28A/IFN-λ-2、IL28B/IFN-λ-3、IL29/IFN-λ-1、IL1β、IL2 IL3、IL32、IL35、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、インヒビンA/INHa&INHbA、インヒビンB/INHa&INHbB、インヒビンC/INHa&INHbC、インヒビンE/INHa&INHbE、LEFTYB、LEFTY1/LeftyB、M-CSF、マウスCSF、マウスSCF、NODAL、Noggin、NT3 (ニューロトロフィン3)、オンコスタチンM、PDGFα、PDGFβ、ペルセフィン、SCF、SDF1α、SHH、ソマトトロピン、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3、TGFβ4/LEFTY2/LeftyA、TNF α、TPOα、VEGF121aa、VEGF165aa、WIF1、WNT1、Wnt10A、Wnt10B/12、Wnt11、Wnt16、Wnt2、Wnt2B/13、Wnt3、Wnt3A、Wnt4、Wnt5A、Wnt5B、Wnt6、Wnt7A、Wnt7B、Wnt8B、およびWnt9A/14からなる群より選択する。また、表5の「クローニングされたサイトカイン遺伝子の一覧」も参照されたい。
【0032】
一実施形態においては、本明細書に開示される方法により生産されたヒトサイトカインタンパク質はいずれも、非ヒト糖鎖を含まない。すなわち、本発明のヒトサイトカインタンパク質は、ヒト細胞においてのみ利用可能な酵素および基質によってそのタンパク質表面に共有結合したグリコシル化された(糖鎖付加された)糖鎖のみを含む。
【0033】
本発明の別の態様は、本明細書に開示される単離された組換えヒトサイトカインのいずれか1つに対して生じた抗体である。一実施形態においては、この抗体はモノクローナル抗体である。別の実施形態においては、それはポリクローナル抗体である。
【0034】
本発明の別の態様は、本明細書に開示される任意の単離された組換えヒトサイトカインまたは抗体のうちの少なくとも1つを含むキットである。
【0035】
従って、上記実施形態を詳述するために、本発明の一態様は、以下の機能し得る形で連結された発現エレメント:
(A)サイトメガロウイルスエンハンサーエレメント配列;
(B)(i)ヒトアクチンプロモーター配列、(ii)ヒト血清アルブミンプロモーター配列、および(iii)ヒトフィブリノゲンプロモーター配列からなる群より選択されるヒトプロモーター配列;
(C)ヒトグロビン遺伝子イントロン配列;ならびに
(D)ヒトシグナルペプチド配列、
を含むカセットを含む発現ベクターである。
【0036】
一実施形態においては、前記発現ベクターはさらに、シグナルペプチド配列の下流に位置し、請求項1に記載のエレメント(A)、(B)、(C)、および(D)に機能し得る形で連結された所望のポリヌクレオチドを含む。別の実施形態においては、(i)所望のポリヌクレオチドを、ヒトシグナルペプチド配列の下流の発現ベクター中に位置する終結シグナル配列に機能し得る形で連結するか、または(ii)所望のポリヌクレオチド自身が終結シグナル配列を含む。
【0037】
一実施形態においては、ヒトプロモーター配列は、機能的なヒトβ-アクチンプロモーター配列である。別の実施形態においては、CMVエンハンサーエレメントは、CMV極初期エンハンサー配列である。別の実施形態においては、シグナルペプチド配列は、(A)ヒト免疫グロブリンA遺伝子のイントロン1と、該イントロン配列の3'末端に向かって位置する切断認識配列とを含む配列、(B)α-フィブリノゲンシグナルペプチド、または(C)免疫グロブリンスーパーファミリー8シグナルペプチドである。
【0038】
一実施形態においては、所望のポリヌクレオチドはサイトカインをコードする。別の実施形態においては、コードされるサイトカインを、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンA/2xINHbA、アクチビンB/2xINHbB、AMH/MIS、アルテミン、BDNF、BMP2、BMP15/GDF9B、BMP2/BMP2A、BMP3/オステオゲニン、BMP4、BMP4/BMP2B、BMP5、BMP7/OP-1、BMP1、BMP10、BMP15/GDF9B、β-NGF、シスタチンC、デルタ1、EGF、エリスロポエチン(EPO)、酸性FGF、塩基性FGF、FGF10、FGF5、FGF7、FGF8b、FLT3リガンド、G-CSF、GDF15、GDF2/BMP9、GDF3、GDF5/BMP14、GDF8/ミオスタチン、GDF9、GDNF、GM-CSF、HGF、HGH、IFN-α2A、IFN-α2B、IFN-γ、IFN-β1、IGF I、IGF II、IGF IIv1、IGF IIv2、IL10、IL11、IL12、IL15、IL17/IL17A、IL17F、IL1β、IL2、IL23、IL27、IL28A/IFN-λ-2、IL28B/IFN-λ-3、IL29/IFN-λ-1、IL1β、IL2 IL3、IL32、IL35、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、インヒビンA/INHa&INHbA、インヒビンB/INHa&INHbB、インヒビンC/INHa&INHbC、インヒビンE/INHa&INHbE、LEFTYB、LEFTY1/LeftyB、M-CSF、マウスCSF、マウスSCF、NODAL、Noggin、NT3 (ニューロトロフィン3)、オンコスタチンM、PDGFα、PDGFβ、ペルセフィン、SCF、SDF1α、SHH、ソマトトロピン、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3、TGFβ4/LEFTY2/LeftyA、TNF α、TPOα、VEGF121aa、VEGF165aa、WIF1、WNT1、Wnt10A、Wnt10B/12、Wnt11、Wnt16、Wnt2、Wnt2B/13、Wnt3、Wnt3A、Wnt4、Wnt5A、Wnt5B、Wnt6、Wnt7A、Wnt7B、Wnt8B、およびWnt9A/14からなる群より選択する。また、表5の「クローニングされたサイトカイン遺伝子の一覧」も参照されたい。別の実施形態においては、コードされるサイトカインを、EPO、G-CSF、GM-CSF、IL-2、IL-4、IL-6、M-CSF、Noggin、SCF、ソマトトロピン、TGFβ1、TNFα、およびVEGF-165からなる群より選択する。
【0039】
一実施形態においては、本発明の発現ベクター(「pHZhag」)は、(i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、および(iii)ヒトβ-グロビンイントロンの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む。
【0040】
一実施形態においては、本発明の発現ベクター(「pHZA」)は、(i)hCMVプロモーター、および(ii)ヒトフィブリノゲンサブユニットAシグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む。
【0041】
一実施形態においては、本発明の発現ベクター(「pHZI」)は、(i)hCMVプロモーター、および(ii)ヒトIgスーパーファミリー8シグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む。
【0042】
一実施形態においては、本発明の発現ベクター(「pHZhagA」)は、(i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、(iii)ヒトβ-グロビンイントロン、および(iv)ヒトフィブリノゲンサブユニットAシグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む。
【0043】
一実施形態においては、本発明の発現ベクター(「pHZhagI」)は、(i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、(iii)ヒトβ-グロビンイントロン、および(iv)ヒトIgスーパーファミリー8シグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む。
【0044】
一実施形態においては、本発明の発現ベクター(「pHZhag-TGFβ1」)は、(i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、(iii)ヒトβ-グロビンイントロン、および(iv)TGFβ1の機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む。
【0045】
一実施形態においては、本発明の発現ベクター(「phZhagI-TGFβ1」)は、(i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、(iii)ヒトβ-グロビンイントロン、(iv)ヒトIgスーパーファミリー8シグナルペプチド、および(v)TGFβ1の機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む。
【0046】
これらの発現ベクターのいずれかにおいて、ヒトタンパク質などのタンパク質をコードする所望のポリヌクレオチドを、特定の発現ベクターのシグナルペプチドの下流に、かつそれに機能し得る形で連結して組込むことができる。
【0047】
かくして、本発明の別の態様は、本発明の発現ベクターのいずれか1つをヒト細胞中に導入することを含み、所望のポリヌクレオチドがヒトタンパク質をコードし、ヒト細胞中での所望のポリヌクレオチドの発現が真正ヒトタンパク質をもたらす、真正ヒトタンパク質を生産するための組換え方法である。
【0048】
一実施形態においては、前記真正ヒトタンパク質は、同じヒトタンパク質の天然型のものと同様の大きさ、構造、分子量、糖鎖付加パターン、および転写後修飾を有する。当業者であれば、タンパク質を特性評価するのに有用な、クロマトグラフィー、ゲル、遺伝子、タンパク質分析、結晶学、および組成分析などの様々なアッセイおよび試験を知っているし、容易に利用できるものが、互いに平行して泳動された天然の内因型の同じタンパク質およびタンパク質マーカーレーンに対する、本発明の組換え生産されたタンパク質のタンパク質ゲル電気泳動であることも知っている。
【0049】
一実施形態においては、所望のポリヌクレオチドは、サイトカインをコードする。別の実施形態においては、コードされるサイトカインを、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンA/2xINHbA、アクチビンB/2xINHbB、AMH/MIS、アルテミン、BDNF、BMP2、BMP15/GDF9B、BMP2/BMP2A、BMP3/オステオゲニン、BMP4、BMP4/BMP2B、BMP5、BMP7/OP-1、BMP1、BMP10、BMP15/GDF9B、β-NGF、シスタチンC、デルタ1、EGF、エリスロポエチン(EPO)、酸性FGF、塩基性FGF、FGF10、FGF5、FGF7、FGF8b、FLT3リガンド、G-CSF、GDF15、GDF2/BMP9、GDF3、GDF5/BMP14、GDF8/ミオスタチン、GDF9、GDNF、GM-CSF、HGF、HGH、IFN-α2A、IFN-α2B、IFN-γ、IFN-β1、IGF I、IGF II、IGF IIv1、IGF IIv2、IL10、IL11、IL12、IL15、IL17/IL17A、IL17F、IL1β、IL2、IL23、IL27、IL28A/IFN-λ-2、IL28B/IFN-λ-3、IL29/IFN-λ-1、IL1β、IL2 IL3、IL32、IL35、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、インヒビンA/INHa&INHbA、インヒビンB/INHa&INHbB、インヒビンC/INHa&INHbC、インヒビンE/INHa&INHbE、LEFTYB、LEFTY1/LeftyB、M-CSF、マウスCSF、マウスSCF、NODAL、Noggin、NT3 (ニューロトロフィン3)、オンコスタチンM、PDGFα、PDGFβ、ペルセフィン、SCF、SDF1α、SHH、ソマトトロピン、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3、TGFβ4/LEFTY2/LeftyA、TNF α、TPOα、VEGF121aa、VEGF165aa、WIF1、WNT1、Wnt10A、Wnt10B/12、Wnt11、Wnt16、Wnt2、Wnt2B/13、Wnt3、Wnt3A、Wnt4、Wnt5A、Wnt5B、Wnt6、Wnt7A、Wnt7B、Wnt8B、およびWnt9A/14からなる群より選択する。また、表5の「クローニングされたサイトカイン遺伝子の一覧」も参照されたい。別の実施形態においては、コードされるサイトカインを、EPO、G-CSF、GM-CSF、IL-2、IL-4、IL-6、M-CSF、Noggin、SCF、ソマトトロピン、TGFβ1、TNFα、およびVEGF-165からなる群より選択する。
【0050】
一実施形態においては、ヒト細胞は、HEK293Tから誘導され、本発明に従って適合され、 付けでATCC生物寄託受託番号 の下で寄託され、且つ当該受託番号を有するヒト腎臓胚細胞系であるHZ-293TSである。
【0051】
一実施形態においては、前記組換え方法はさらに、ヒト細胞から真正ヒトタンパク質を単離することを含む。
【0052】
本発明の別の態様は、本発明の発現ベクターのいずれか1つにおいて所望のポリヌクレオチドを発現するヒト細胞により産生された組換え生産された真正ヒトタンパク質であって、所望のポリヌクレオチドがヒトタンパク質をコードし、所望のポリヌクレオチドの発現が真正ヒトタンパク質をもたらす、前記タンパク質である。一実施形態においては、所望のポリヌクレオチドはサイトカインをコードする。別の実施形態においては、コードされるサイトカインを、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンA/2xINHbA、アクチビンB/2xINHbB、AMH/MIS、アルテミン、BDNF、BMP2、BMP15/GDF9B、BMP2/BMP2A、BMP3/オステオゲニン、BMP4、BMP4/BMP2B、BMP5、BMP7/OP-1、BMP1、BMP10、BMP15/GDF9B、β-NGF、シスタチンC、デルタ1、EGF、エリスロポエチン(EPO)、酸性FGF、塩基性FGF、FGF10、FGF5、FGF7、FGF8b、FLT3リガンド、G-CSF、GDF15、GDF2/BMP9、GDF3、GDF5/BMP14、GDF8/ミオスタチン、GDF9、GDNF、GM-CSF、HGF、HGH、IFN-α2A、IFN-α2B、IFN-γ、IFN-β1、IGF I、IGF II、IGF IIv1、IGF IIv2、IL10、IL11、IL12、IL15、IL17/IL17A、IL17F、IL1β、IL2、IL23、IL27、IL28A/IFN-λ-2、IL28B/IFN-λ-3、IL29/IFN-λ-1、IL1β、IL2 IL3、IL32、IL35、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、インヒビンA/INHa&INHbA、インヒビンB/INHa&INHbB、インヒビンC/INHa&INHbC、インヒビンE/INHa&INHbE、LEFTYB、LEFTY1/LeftyB、M-CSF、マウスCSF、マウスSCF、NODAL、Noggin、NT3 (ニューロトロフィン3)、オンコスタチンM、PDGFα、PDGFβ、ペルセフィン、SCF、SDF1α、SHH、ソマトトロピン、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3、TGFβ4/LEFTY2/LeftyA、TNF α、TPOα、VEGF121aa、VEGF165aa、WIF1、WNT1、Wnt10A、Wnt10B/12、Wnt11、Wnt16、Wnt2、Wnt2B/13、Wnt3、Wnt3A、Wnt4、Wnt5A、Wnt5B、Wnt6、Wnt7A、Wnt7B、Wnt8B、およびWnt9A/14からなる群より選択する。また、表5の「クローニングされたサイトカイン遺伝子の一覧」も参照されたい。別の実施形態においては、コードされるサイトカインを、EPO、G-CSF、GM-CSF、IL-2、IL-4、IL-6、M-CSF、Noggin、SCF、ソマトトロピン、TGFβ1、TNFα、およびVEGF-165からなる群より選択する。
【0053】
一実施形態においては、組換え生産された真正ヒトタンパク質を、 付けでATCC生物寄託受託番号 の下で寄託され、且つ当該受託番号を有するHZ-293TSヒト細胞系から生産する。
【0054】
一実施形態においては、真正ヒトタンパク質の糖鎖付加パターンは、天然の内因型のそのヒトタンパク質と類似する。さらなる実施形態においては、真正ヒトタンパク質の大きさ、構造、および分子量は、天然の内因型のそのヒトタンパク質の大きさおよび分子量と類似する。一実施形態においては、真正ヒトタンパク質は、TGFβである。別の実施形態においては、所望のポリヌクレオチドはnogginタンパク質をコードし、所望のポリヌクレオチドの発現は細胞中でジスルフィド結合されたnogginダイマーをもたらす。
【0055】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の組換え方法により生産された真正ヒトタンパク質のいずれか1つのエピトープに対して生成した抗体である。一実施形態においては、この抗体はポリクローナルまたはモノクローナル抗体である。別の実施形態においては、前記抗体はG-CSFに対して生成したモノクローナル抗体である。
【0056】
本発明の別の態様は、 付けでATCC生物寄託受託番号 の下で寄託され、且つ当該受託番号を有するHZ-293TS(無血清培地上で増殖するように適合されたヒト腎臓胚細胞系)と呼ばれる安定なヒト細胞系である。本発明の一実施形態においては、HZ-293TS細胞系の細胞の生存能力は、他のHEK293細胞型のものよりも長い。すなわち、HZ-293TS細胞は、他のHEK293細胞型と比較して、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、もしくは14日、または14日以上生きたままである。
【0057】
本発明の別の態様は、本明細書に開示される発現ベクターのいずれかを発現する任意のヒト細胞である。一実施形態においては、ヒト細胞は 付けでATCC生物寄託受託番号 の下で寄託され、且つ当該受託番号を有するHZ-293TSである。
【0058】
本発明の別の態様は、細胞成長、細胞増殖、細胞分化、または炎症に関連する症状を治療する方法であって、(A)本明細書に記載されるか、もしくは本明細書に記載の方法により取得可能な組換え生産された真正ヒトタンパク質のいずれか1つ、または(B)本明細書に開示されるか、もしくは本明細書に記載の方法により取得可能な抗体のいずれか1つを、細胞成長、増殖、分化、または炎症に関連する症状を有する個体に投与することを含む前記方法である。一実施形態においては、前記方法は、TNFαに対して生成した本発明の抗体を、炎症または関節炎に関連する症状を有する個体に投与することを含む。
【0059】
一実施形態においては、前記方法は、VEGFに対して生じた本発明の抗体を、癌または細胞増殖に関連する症状を有する個体に投与することを含む。
【0060】
本発明の一態様は、サンプルから本発明の真正ヒトタンパク質のいずれか1つを検出するための診断剤としての、そのヒトタンパク質のエピトープに対して生じた抗体の使用である。一実施形態においては、前記抗体を、ヒトタンパク質を検出するためのELISAアッセイにおける診断剤として用いる。
【0061】
別の実施形態においては、前記サンプルは、ヒト組織サンプル、ヒト細胞サンプル、ヒト血液サンプル、またはヒト体液サンプルである。さらなる実施形態においては、前記ヒトタンパク質はサイトカインである。
【0062】
本発明の別の態様は、細胞成長、細胞増殖、細胞分化、または炎症に関連する症状を治療する方法であって、タンパク質をコードする所望のポリヌクレオチドを発現するベクターを、細胞成長、増殖、分化、または炎症に関連する症状を有する個体に投与することを含み、該個体の細胞中の発現されたタンパク質が該症状を治療するのを助ける、前記方法である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】2つの異なる容量のヒト細胞培養物(75 mlと30リットル)の間の9日間にわたるアルカリホスファターゼのタンパク質活性である。
【図2】TGFβ1(レーン1)、G-CSF(レーン2)、IL1β(レーン3)、およびVEGF165(レーン4)の発現に関する本発明の安定なヒト細胞系におけるサイトカインの高い発現を示すSDS-PAGEゲルである。
【図3】ソマトトロピンおよびGM-CSFに関する効率的な無タグ精製を示すSDS-PAGEゲルである。
【図4】本発明のヒト細胞(黒塗り三角)および非ヒト細胞(■)中での発現後のGM-CSF安定性アッセイを示すグラフである。
【図5】発現させることが困難で有名である、活性および成熟TGFβ1の発現を示すSDS-PAGEゲルである。
【図6A】本発明の方法に従って生産されたサイトカインの活性および純度(SDSゲル染色上で示される)を示すグラフおよび対応するゲルである。これらの例は、GM-CSF(図6A)、IL-4(図6B)、ソマトトロピン(図6C)、TGF-β1(図6D)、VEGF-165(図6E)、TNF-α(図6F)、M-CSF(図6G)、IL-6(図6H)、EPO(図6I)、IL-2(図6J)、SCF(図6K)、Noggin(図6L)、およびG-CSF(図6M)に関する印象的な活性および純度を示す。
【図6B】図6Aの続きである。
【図6C】図6Bの続きである。
【図6D】図6Cの続きである。
【図6E】図6Dの続きである。
【図6F】図6Eの続きである。
【図6G】図6Fの続きである。
【図6H】図6Gの続きである。
【図6I】図6Hの続きである。
【図6J】図6Iの続きである。
【図6K】図6Jの続きである。
【図6L】図6Kの続きである。
【図6M】図6Lの続きである。
【図7A】非ヒト細胞系に由来するサイトカインと比較した本発明のヒト細胞系に由来する精製されたサイトカインのSDS-PAGEゲル分析である:(A)EPO、Noggin;(B)G-CSF、SCF、GM-CSF、ソマトトロピン;(C)IL-2、TGF-β1、IL-4、およびTNFα;ならびに(D)IL6、VEGF165、およびM-CSF。
【図7B】図7Aの続きである。
【図7C】図7Bの続きである。
【図7D】図7Cの続きである。
【図8A】非ヒト細胞系に由来するサイトカインと比較した本発明のヒト細胞系に由来する精製されたサイトカインに関するウェスタンブロットである:(A)EPO、Noggin;(B)GM-CSF、SCF、IL-2、ソマトトロピン;(C)IL-4、TNFα、IL6、およびVEGF165。
【図8B】図8Aの続きである。
【図8C】図8Bの続きである。
【図9】ヒトおよび非ヒト細胞におけるVEGF165活性の比較である。
【図10】ヒトおよび非ヒト細胞におけるIL-4活性の比較である。
【図11】(a)pHZsecベクター(pHZ-TGFb1)または(b)pHZhagベクター(pHZhag-TGFb1)を用いるHEK293TからのTGFβ1の発現の例である。TGFβ1潜伏関連ペプチド(LAP)および成熟TGFβ1を赤い矢印で示す。pHZhag-TGFβ1およびpHZ-TGFβ1でトランスフェクトした両細胞系を、培養培地中、3日目(A)、4日目(B)、または5日目(C)に追加の20 mMグルコースで、およびそれを添加せずに(D)処理した。ゲル上で、各処理について3日目(d3)および10日目(d10)のサンプルを泳動させた。LAPおよび成熟TGFβ1の両方について、(b)におけるpHZhag-TGFβ1は、(a)におけるpHZ-TGFβ1よりも2〜3倍高い発現を示す。
【図12】pHZ-TGFβ1(a)およびpHZhag-TGFβ1(c)でトランスフェクトされたHEK293T細胞の細胞増殖曲線である。培養期間にわたる生存率(%)を、pHZ-TGFβ1(b)およびpHZhag-TGFβ1(d)について提示する。pHZhag-TGFβ1でトランスフェクトされたHEK293T細胞は、10日目(d)でも60%を超える生存率を示したが、pHZ-TGFβ1でトランスフェクトされた細胞は8日目(b)で60%未満の生存率を示した。また、pHZhag-TGFβ1でトランスフェクトされた細胞のより高い生存率は、図1(b)中のゲル上でのバックグラウンドタンパク質が非常に少ないことを反映していた。
【図13】HEK293T細胞からのTGFβ1の発現である。(a)別のプロモーターまたはシグナルペプチドを用いる発現試験:レーン1:モックベクター(陰性対照);レーン2:pHZsecベクター(CMVプロモーターおよびmIgκシグナルペプチド);レーン3:hagプロモーター;レーン4:hFbgAシグナルペプチド;レーン5:hFbgBシグナルペプチド;レーン6:hFbgBシグナルペプチド;レーン7:hIg8シグナルペプチド。hFbgBおよびhFbgGシグナルペプチドを用いる場合、発現はなかった。(b)モックベクター(陰性対照)、pHZ-TGFβ1(レーン2および3;マウスIgκシグナルペプチド)またはpHZA-TGF-β1(レーン4および5;ヒトFbgAシグナルペプチド)を用いる、TGF-β1発現の比較。
【図14】ベクターの模式図である。
【図15】HEK293T(a)およびHZ-293TS(b)からのヒトFGF8bの発現を示す。HEK293TからのFGF8bの発現よりもHZ-293TSからのFGF8bの発現の方が2〜3倍高かったが、これは予想されない観察であった。ゲルの下にある表に示されるように、細胞が懸濁液中にある場合、その生存する細胞密度(VCD)は5〜600万個の細胞/mlに到達した。
【図16】TGF-β1を発現する様々なベクターに関する遺伝子発現比較の結果である。様々なベクターを用いる懸濁293T培養物からの5日目でのTGF-b1発現レベルの比較である。1、陰性対照;2、マウスIgKシグナルペプチドを含むhCMVプロモーター;3、マウスIgKシグナルペプチドを含むhagプロモーター;4、ヒトフィブリノゲンα鎖シグナルペプチドを含むhCMVプロモーター;5、ヒトIgスーパーファミリー8シグナルペプチドを含むhCMVプロモーター。潜伏関連ペプチド(LAP)および成熟TGF-b1を矢印で示す。全ての細胞は約300万個の細胞/mlであり、90%の生存率である。レーン1=対照;レーン2=pHZ-TGF-β1;レーン3=pHZhag-TGF-β1(hCMV IE+β-アクチンプロモーター+β-グロビンイントロン+TGF-β1);レーン4=pHZA-TGF-β1(hCMVプロモーター+フィブリノゲンサブユニットAシグナルペプチド+TGF-β1);レーン5=pHZI-TGF-β1(hCMV IE+β-アクチンプロモーター+β-グロビンイントロン+ヒトIgスーパーファミリー8シグナルペプチド+TGF-β1)。
【図17】効率的な無タグ精製を示す。遺伝子操作されたヒト細胞から精製された組換えヒト(A)GM-CSF、(B)IL-4、(C)IL-6、および(D)Noggin。全てのサイトカインはタグを含まない天然タンパク質として発現される。効率的な精製プロトコルを開発して、天然の異種性糖鎖(A-D)およびジスルフィド結合(D)を有する真正サイトカインを得た。
【図18】サイトカインを発現させるのが困難な生産である。ヒト細胞発現系からの精製された組換えヒトIL-23(A)ならびに成熟TGF-β1、-β2、および-β3(B)を示す。ヒト細胞発現系は、糖鎖付加され、ジスルフィド結合したサブユニット(A:IL-23)の複雑性または潜伏関連ペプチド(LAP)から成熟形態(B:TGF-β1、-β2、および-β3)への繊細な転換プロセスに起因して、非ヒト細胞中では発現させるのが非常に難しいか、または適切に発現されないサイトカインを効率的に発現させた。
【図19】組換え生産された、真正ヒトVEGF165aホモダイマーである。大腸菌および遺伝子操作されたヒト293細胞から発現されたVEGF165を示す。大腸菌により発現されるタンパク質は、糖鎖ならびにモノマーおよびダイマーの混合物(それぞれ、19 kDaおよび38 kDa)を含まないが、ヒト細胞により発現されるタンパク質は45 kDaの完全に糖鎖付加されたホモダイマーである。
【図20A−B】より真正な、ヒトEPO対CHO EPOである。ヒト細胞から発現された組換えEPOは、天然のヒト血清EPOとしてSDS-PAGE上で34 kDaの見かけの分子量を示す(Skibeliら、2001 Blood 98:3626)が、CHO EPOは40 kDaの見かけの分子量を示す(A)。ヒトEPOは、CHO EPO (B)と比較して実質的に高い含量の天然グリカンを含有する。(C)ヒトEPOおよびCHO EPOの酸性グリカン構造を示す。ヒトEPOにおいて最も豊富なグリカンは、4アンテナ複合体型であるが、CHO EPOにおけるものは伸長型2アンテナ複合体型である。記号はGlcNAc(■)、HexNAc(□)、マンノース(黒丸)、ヘキソース(○)、フコース(黒塗り三角)、NeuAc(◆)である。
【図20C】図20A−Bの続きである。
【図21】本発明のヒト細胞中で発現されたIL23は、昆虫細胞から産生されるサイトカインよりも500倍強力である。ヒト細胞中で発現された真正IL-23は、ヒトTh17細胞の誘導について100倍より強力である。(A)10 ng/mlのPMAを用いて活性化されたマウス脾臓細胞からのIL-17の用量依存的分泌により決定されたIL-23活性を示す。(B)Th17に局在するサイトカインの存在下、2 mg/mlのプレート結合抗CD3および1 mg/mlの可溶性抗CD28で刺激されたヒトCD4+ T細胞からのIL-17の用量依存的分泌により決定されたIL-23活性を示す。
【図22A−D】ヒト細胞中で発現された真正サイトカインを用いるTh17細胞の効率的な分化である。健康なドナーから単離された全CD4+ T細胞を、Th17に局在するサイトカインの存在下、2μg/mLのプレート結合抗CD3および1μg/mLの可溶性抗CD28で刺激し、IL-23の滴定を行った。5日後、上清をELISAによるIL-17の測定のために収穫した。(A)〜(G)を参照されたい。図22(H)は、真正ヒトTGF-β1によるヒトTh17分化に関するフローサイトメトリー分析を示す。以下の実施例17を参照されたい。
【図22E−G】図22A−Dの続きである。
【図22H】図22E−Gの続きである。
【図23】樹状細胞分化に関する費用削減型および時間節約型G4プロトコルである。(A)選択されたサイトカインおよびケモカインのDC生成のプロフィールは、HZ G4 DC培地(培地交換せずに5 ng/mlのGM-CSF(ヒト細胞中で発現された真正ヒトタンパク質)およびIL-4(ヒト細胞中で発現された真正ヒトタンパク質))で生成されたDCが、リポ多糖(LPS)による成熟の前後のEC G4 DC培地(2回の培地交換を行う50 ng/mlの大腸菌GM-CSFおよびIL-4)中でのDCと同様のプロフィールを示すことを証明していた。(B)HZ G4 DC培地中で生成され、成熟したDCの同種異系MLRは、EC G4 DC培地中のDCよりもさらに良好であるようであった。
【図24】本発明のヒト細胞中で発現されたNogginで処理されたHES細胞は、OCT3/4陽性である。10〜20 pg/mlの組換え生産された、真正ヒトNogginで処理されたヒト胚性幹(hES)細胞は、未分化ES細胞のマーカーであるOct3/4を一貫して発現した。Oct3/4のウェスタンブロット分析を示す。陰性対照;2、陽性対照;3、10 pg/mlの真正Nogginによる処理;4、20 pg/mlの真正Nogginによる処理。
【図25】G-CSF抗体はヒト生物学をより正確にモニターするであろう。本発明に従うヒト細胞から発現された組換えヒトG-CSFは、真正に糖鎖付加されており、非ヒト細胞から発現されるタンパク質中には存在しないユニークなエピトープを提示する(A)。ウェスタンブロットにおいては、ユニークなエピトープに対して生じたモノクローナル抗体(HZ mAb1)は、ヒト細胞G-CSFのみを認識するが(B)、共通のエピトープに対する別の抗体(HZ mAb2)は両方とも認識する(C)。
【図26】新規細胞系(HZ-293TS)である。(A)無血清化学規定培地中での懸濁培養に適合させた293T細胞系である新規細胞系HZ-293TSを示す。(B)1、293Tおよび2、HZ-293TSからのFGF8b発現レベルの比較を示す。(C)1、293Tおよび2、HZ-293TSからのTGF-β1発現レベルの比較を示す。両方の事例において、293T細胞系と比較してHZ-293TS細胞系からのタンパク質発現レベルが2倍高かった。
【図27】シグナル切断の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
A. 概論
サイトカインと本発明
サイトカインは、生物がシグナル伝達分子として用いるタンパク質およびポリペプチド群である。多くのサイトカインは、30 kDa未満のサイズの糖タンパク質であり、特異的な、高親和性細胞表面受容体に結合する。免疫系におけるその中心的な役割に起因して、サイトカインは様々な免疫疾患、炎症性疾患および感染性疾患に関与し、研究、診断および治療において広く用いられている。現在、これらのタンパク質は大腸菌などの非ヒト細胞において主に生産されており、従って、以下に記載のように、関連する糖鎖パターンが存在しないことに起因して、真正性を欠く。さらに、いくつかの重要なサイトカインは、そのような非ヒト細胞発現系において生じる不十分なタンパク質溶解的プロセッシングまたは他の翻訳後修飾のため、商業的に利用可能ではない。表1を参照されたい。この点での真正とは、本発明の安定なヒト細胞発現方法に従って発現された組換えヒトサイトカインが、in vivoでヒト細胞中で通常発現されるその天然の内因性対応物と一致し、その天然の対応物と関連する特定の特徴を再現することを示している。すなわち、例えば、本発明の安定なヒト細胞方法を用いて発現された組換えヒトIFNαは、天然のヒトIFNαと類似しており、本質的に同じ構造、生物活性、大きさ、分子量、折畳みパターン、および糖鎖付加パターンを有する。かくして、本発明の方法により発現されたヒトタンパク質を、「真正タンパク質」、または「真正サイトカイン」または「組換え真正タンパク質」などと見なすことができる。そのin vivoでの対応物を、天然もしくは内因性サイトカインまたはタンパク質と見なすことができる。本発明の安定なヒト細胞発現系により発現されるタンパク質およびサイトカインのそのような「真正の」特徴を、以下により詳細に開示する。対照的に、大腸菌細胞、または酵母もしくは菌類細胞、または昆虫細胞、またはチャイニーズハムスター卵巣細胞などの非ヒト哺乳動物細胞から発現されるヒトIFNαタンパク質は、本文脈においては「真正な」ヒトIFNαタンパク質ではないと考えられる。従って、本発明の「真正な」組換え生産されたタンパク質は、限定されるものではないが、同じ構造、生物活性、大きさ、分子量、タンパク質折畳みパターン、ダイマー化特性、ジスルフィド結合特性、および表面結合糖鎖付加パターンなどの、天然型のタンパク質の1個以上の特徴および特性と高度に類似するものである。
【0065】
(a)サイトカインファミリー
それぞれの構成メンバーが他のメンバーと共有する構造的類似性、ならびにその各々の一次アミノ酸配列に基づく他の類似性に基づいて、多くのサイトカインを一緒にグループ化することができる。The Cytokine Handbook, Volumes 1および2、第4版、Thomson & Lotze(編)の第1章(その全体が参照により本明細書に組み入れられるものとする)を参照されたい。従って、共通の構造的特徴に従えば、個々のサイトカインの以下の「ファミリー」を、以下のようにグループ化することができる:
(1)IL-2/IL-4:代表的なメンバーとしては、IL-2、IL-4、IL-5、GM-CSFが挙げられる。
【0066】
(2)IL-6/IL-12:代表的なメンバーとしては、IL-6およびIL-12が挙げられる。
【0067】
(3)インターフェロン-α/β:代表的なメンバーとしては、IFN-α(多くのサブタイプ)、IFN-β、IFN-ω、およびIFN-τが挙げられる。
【0068】
(4)腫瘍壊死因子:代表的なメンバーとしては、TNF-α、LT-α(TNF-β)、LT-β、Fasリガンド、CD40リガンド、TRAIL、BAFF、APRIL、RANK、およびLIGHTが挙げられる。
【0069】
(5)IL-10:代表的なメンバーとしては、IL-10、IL-19、IL-20、IL-22、およびIL-24が挙げられる。
【0070】
(6)IL-17:代表的なメンバーとしては、IL-17およびIL-25が挙げられる。
【0071】
(7)インターロイキン-1:代表的なメンバーとしては、IL-1α、IL-1β、IL-1受容体アンタゴニスト、およびIL-18が挙げられる。
【0072】
(8)TGF-β:代表的なメンバーとしては、TGF-β、骨形態形成タンパク質、インヒビン、およびアクチビンが挙げられる。
【0073】
(9)ケモカイン:代表的なメンバーとしては、CXCサブファミリー(CXCLI-16)、CCサブファミリー(CCLI-28)、Cサブファミリー(CLI/リンホタクチン)、およびCX3Cサブファミリー(CX3CLI/フラクタルキン)が挙げられる。
【0074】
多くのサイトカインは、単純なポリペプチドまたは糖タンパク質である。それらのうちのいくつかは、ダイマーを形成することができ、いくつかは一過的に産生され、特異的高親和性細胞表面受容体に結合することにより生物学的応答および細胞カスケードを誘導する。表現型的には、そのような応答としては、細胞増殖速度の増加もしくは低下、細胞分化状態の変化、ならびにいくつかの分化した機能の発現における変化が挙げられる。かくして、例えば、インターロイキン-1(IL-1)はT細胞を活性化する;IL-2は抗原により活性化されたTおよびB細胞の増殖を刺激する;IL-4、IL-5およびIL-6はB細胞の増殖および分化を刺激する;インターフェロンγ(IFNγ)はマクロファージを活性化する;ならびにIL-3、IL-7および顆粒球単球コロニー刺激因子(GM-CSF)は造血を刺激する。表2(microvet.arizona.edu/courses/MIC419/Tutorials/cytokines.html)(参照により本明細書に組み入れられるものとする)は、特定のサイトカインの起源、標的、および機能に関するいくつかの追加情報を強調する。
【0075】
サイトカインは、モノマーおよびダイマーとして存在することができる。後者に関して言えば、サイトカインは、同じサイトカインの2個のモノマーがジスルフィド結合を介して一緒に連結されたホモダイマーとして、またはIL12、IL23、IL27、およびIL35に関する場合などはヘテロダイマーとして存在することができる。in vivoの天然のヒト細胞中では、2種の異なるサイトカイン遺伝子がゲノムから発現され、それぞれのサイトカイン上の好適な残基間でのジスルフィド結合形成を介して一緒に連結される。人工的な組換え系においては、これらの遺伝子を異なる培養物中で別々に発現させ、得られるサイトカインタンパク質を抽出および単離した後、さらなる結合工程において一緒に連結させる必要がある。しかしながら、本発明に従えば、安定なヒト細胞を両方の所望のサイトカイン遺伝子を用いてトランスフェクトし、それぞれの場合、得られるタンパク質産物は折畳み、エピトープ提示、および糖鎖付加に関して真正であるため、2種のサイトカインは天然に一体化し、ジスルフィド結合を介してヘテロダイマーを形成するであろう。従って、その場合の上清は、既に形成されたヘテロダイマーを含むであろう。
【0076】
本発明は、これらの特定のサイトカインまたはこれらの特定のタンパク質をコードするポリヌクレオチドに限定されない。むしろ、本発明の一態様は、存在することが知られているか、もしくは特定のサイトカインパラメーターに対するその効果を決定するために作られるサイトカイン突然変異体、相同体、スプライス変異体、またはアイソマーの組換え発現である。かくして、本発明はまた、天然のサイトカイン配列とは異なる1個以上のアミノ酸置換、欠失、挿入、もしくはスプライス結合を含むか、またはいくつかの疾患もしくは障害と関連する可能性がある突然変異したサイトカイン配列である真正サイトカイン変異体の組換え生産も包含する。サイトカインDNA配列を、そのような突然変異を含むように遺伝子操作し、研究のために使用して、サイトカイン機能もしくは関連するサイトカイン経路の下流に対する、その、もしくはそれらの突然変異の効果を確認することができる。従って、これらのタンパク質および突然変異体および変異体は全て、本発明のヒト発現系において発現させた後、本明細書に記載のように用いることができるような、本発明の発現カセット中にクローニングされるポリヌクレオチドに設計することができる。
【0077】
(b)機能ならびに喘息およびアレルギーなどの関連する疾患
それぞれのサイトカインは、それを産生する細胞ならびに遠い標的細胞(エンドクライン)、それらを産生する細胞と近接する標的細胞(パラクライン)またはサイトカインを産生するのと同じ細胞(オートクライン)であってよい、それが作用する標的細胞に応じて複数の機能を有してもよい。
【0078】
上記で同定されたファミリーのうち、4つの主要なカテゴリーのサイトカインが存在する:
(1)インターフェロン:インターフェロンα(IFNα)は白血球から軟膜層により産生され、様々な悪性腫瘍および免疫障害の治療に用いられている。インターフェロンβ(IFNβ)は線維芽細胞により産生され、多発性硬化症の治療において現在評価中である。インターフェロンγ(IFNγ)は活性化T細胞により産生され、特に、アレルギー疾患において重要な免疫調節分子である。
【0079】
(2)コロニー刺激因子:様々な造血前駆細胞を刺激することができ、再生不良性貧血および骨髄移植における治療法として評価されている、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、ならびにインターロイキン(IL)-3;ならびにRBC、WBCおよび巨核球(血小板)への最終的な分化のための様々な前駆体エレメントへの骨髄幹細胞の分化を引き起こすのに必要なサイトカインとして最近証明されたc-kitリガンド(幹細胞因子)が挙げられる。
【0080】
(3)腫瘍壊死因子(TNF):TNFαは活性化マクロファージにより産生され、TNFβは活性化T細胞(THとCTLの両方)により産生される。これらの分子は、敗血性ショックの病因に関与するようである。TNFはヒト腫瘍を治療するのに臨床的に有用であり得る。
【0081】
(4)インターロイキン:単球およびマクロファージ、T細胞、B細胞およびさらに非白血球などの様々な細胞型によって産生される。アレルギーに関与する主要なインターロイキンは、IL-4、IL-5、IL-10およびIFNγである。IL-4はB細胞を分化させることによりIgE産生への切り替えを引き起こす。IFNγはそのスイッチを阻害し、特異的IgEの産生を阻害することができる。IL-10はIFNγの活性を実際に阻害し、元々のIL-4をIgEカスケードにおいて進行させることができる。かくして、アレルギー応答を、過剰のIL-4および/もしくはIL-10のアレルゲン特異的産生、十分なIFNγ産生の欠如またはその両方と見ることができる。アレルギー反応の主要な成分である好酸性炎症は、IL-5およびTNFαの制御下にある。
【0082】
従って、組換え生産された真正ヒトサイトカイン、またはそれに対して生成した抗体を、特定のサイトカインの機能が関与するそのような障害または疾患を有する個体に投与することができ、例えば、多発性硬化症の治療にはIFNβを投与することができる。
【0083】
3. 糖鎖付加(グリコシル化)と本発明
多くのタンパク質は、その物理的および化学的特性、例えば、MW、pI、折畳み、安定性、および生物活性を変化させ得る翻訳後修飾を受ける。糖鎖付加は、最も一般的な方の翻訳後修飾であり、全ての血漿タンパク質の80%が糖鎖付加され、最も重要な公知のヒト天然インターフェロンα種の大部分が糖タンパク質であると見積もられている。
【0084】
糖タンパク質は、タンパク質に共有結合したオリゴ糖または糖鎖である。そのような糖鎖の結合は、in vivoでは、細胞内での刺激に対する感受性が高い特定のグリコトランスフェラーゼにより行われる。糖タンパク質の炭水化物成分は、タンパク質の折畳み、オリゴマー集合、および分泌、ならびに発現されるタンパク質の可溶性および凝集に影響するため、分子の官能性に影響する。従って、これらの多糖類糖鎖は、タンパク質の好適な生物活性および安定性を付与するに至る様々な機能を有する。さらに、特定のタンパク質結合グリカンは、核および細胞質に豊富であり、そこではそれらは調節スイッチとして役立つようである。
【0085】
in vivoで発現されるタンパク質に共有結合する2つの最も一般的なクラスのそのような糖鎖は、(1)コンセンサス「Asn-X-Ser/Thr」内でタンパク質のアスパラギン残基に共有結合し、共通の五糖類コア領域を有し、3つのクラス:(a)高マンノース型、(b)複合型、および(c)ハイブリッド型に分けられるN-グリカン糖鎖;ならびに(2)タンパク質中のセリンもしくはトレオニン残基にN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を介して該タンパク質に結合したO-グリカンである。これらの方法で発現されたタンパク質に糖鎖を結合させる対応する糖鎖付加経路は、典型的には細胞質ゾル、小胞体およびゴルジ複合体に存在し、これらの結合を容易にするためのグリコシダーゼおよびグリコシルトランスフェラーゼを含む。
【0086】
機構的作用のいかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、本発明のヒト細胞系において発現されるヒトタンパク質が非ヒト細胞において発現される対応物よりも優れている理由は、上記の理由から、その真正に糖鎖付加された表面および好適に折畳まれた三次構造にある。すなわち、in vivoのヒト細胞環境においては、ヒト細胞の翻訳後修飾機構は、天然に産生されたタンパク質が共有結合した糖鎖の配列中に含まれ、また腎臓系を介した血流からのタンパク質の消失を遅延させるのを助けるように、オリゴ糖またはグリカン糖鎖を内因的に発現されたタンパク質の外側表面に結合させる。従って、循環する「真正」ヒトタンパク質の半減期は、非ヒト細胞から発現された同じタンパク質と比較して増加する。
【0087】
従って、非ヒト細胞は導入された発現ベクターからヒトポリヌクレオチド配列を発現することもできるが、非ヒト細胞環境はそのような翻訳後修飾の役には立たない。結果として、得られる発現されたタンパク質は必然的に、適切に折畳まれ、糖鎖付加されたそのin vivoでのヒト対応物に関して真正性を欠く。この理由から、研究、診断、および治療目的における非ヒト細胞から発現、精製されたヒトタンパク質の使用は、劣っており、望ましくない。
【0088】
(a)ヒト対非ヒトのパターン
非ヒト細胞発現系、例えば、細菌、酵母、真菌、昆虫、および非ヒト哺乳動物系は、真正ヒトタンパク質を産生しない。例えば、大腸菌細胞などの一般的な細菌発現系は、組換え哺乳動物タンパク質に糖鎖付加しない。酵母および真菌発現系はヒトDNA配列を発現することができるが、酵母および真菌細胞に由来する得られる糖鎖付加パターンは、ヒト細胞の糖鎖付加プロセッシングとは有意に異なる。例えば、酵母および真菌細胞は、非ヒト高マンノース糖鎖を、組換え発現されたヒトタンパク質に結合させる。このマンノース鎖は免疫原性であり、タンパク質は腎臓系を介して系から非常に素早く消失する。昆虫細胞発現系は酵母および真菌と同様であるが、昆虫により発現されたタンパク質に結合されるようになるマンノース鎖の長さが、典型的には酵母系において結合されたものよりも短い。さらなる詳細については、ZopfおよびVergis, Pharmaceutical Visions, Neose Technologies, Inc (www.neose.com)を参照されたい。
【0089】
非ヒト哺乳動物細胞発現系に関しては、チャイニーズハムスター卵巣細胞が当業者により最も一般的に用いられている。CHO細胞はヒト細胞とは異なる糖鎖付加を行う。CHOグリカン構造はヒトと同様ではない。例えば、CHO細胞においては、発現されたIFN-γは置換フコース残基および高マンノースオリゴ糖鎖を含む;トランスジェニックマウスにおいては、IFN-γは変異N-グリカン構造を有し、昆虫細胞においては、IFN-γはトリマンノシルコア構造を有する。
【0090】
また、ヤギミルクなどにおいて、ヒトタンパク質を生産するためにトランスジェニック動物が用いられるが、糖鎖付加不足および非ヒトシアル酸(N-グリコリルノイラミン酸)の付加などの同様の問題が存在する。
【0091】
対照的に、ヒトタンパク質上のN-グリカンは、N-アセチルノイラミン酸で終結する特異的な順序を有する。従って、本発明の一態様は、ヒト糖鎖のみを含むヒトタンパク質の組換え発現である。すなわち、本発明の「真正」タンパク質は、(1)N-アセチルグルコサミン、(2)フコース、(3)マンノース、および(4)N-アセチルノイラミン酸で終結するガラクトース鎖の1個以上の組合せを含む。表1および図4を参照されたい。従って、ヒト細胞環境は、組換え発現される真正ヒトタンパク質をプロセッシングするための好適かつ正確な構成要素および機構を提供する。かくして、ヒトタンパク質およびヒトサイトカインの文脈においては、真正糖鎖付加パターンを有する組換え生産された真正ヒトサイトカイン/タンパク質としては、限定されるものではないが、(1)N-アセチルグルコサミン、(2)フコース、(3)マンノース、および(4)N-アセチルノイラミン酸で終結するガラクトース糖鎖の1個以上の組合せを含む組換えタンパク質が挙げられる。
【0092】
いくつかの場合、全てではないが、本発明に従って発現される個々のサイトカインタンパク質は、発現実行から単離された他のサイトカインと同じ糖鎖付加パターンまたは糖鎖付加度を含むであろう。かくして、特定のヒト細胞培養物から発現された他のものよりも、より多いか、もしくはより少ない結合ヒト糖鎖を含むか、またはより長いか、もしくはより短い結合糖鎖を含むように加工された発現サイトカインのサブ集団が存在してもよい。これは不利益ではなく、むしろin vivoでの糖鎖付加状態を近似するものである。かくして、タンパク質ゲル上で可視化した場合、主に染色されるバンドの周囲にスメアが現れる可能性がある。本発明の発現系においては、このスメアはタンパク質夾雑または分解されたタンパク質もしくはデブリではなく、むしろタンパク質サイズの分布において、分子量が糖鎖付加の程度および数または組換え発現されたタンパク質に結合した糖鎖のそれぞれのサイズに起因する。かくして、糖鎖付加がより多くなるか、またはより長い糖鎖が結合すれば、糖鎖付加されたタンパク質もしくはサイトカインの合計の見かけの分子量が増加するであろう。
【0093】
B. 概説
従って、本発明は、in vitroでヒト細胞の安定な培養物から真正ヒトタンパク質を生産するための迅速かつ拡張性のある方法に関する。本発明のヒト細胞発現系を、ヒトタンパク質をコードする新規発現ベクターの導入、ならびにそのタンパク質をコードするポリヌクレオチドのその後の発現を容易にする懸濁媒体にとってより受け入れやすくする。
【0094】
1. 利点
本発明のヒト細胞および方法を用いて生産されるヒトタンパク質は、特に、タンパク質折畳みならびにタンパク質溶解的切断処理および糖鎖付加などの翻訳後修飾に関して、非ヒト細胞から発現されたものよりも真正の「ヒト様」特性および構造を有し、示す。これらの理由から、本発明の方法および試薬を用いて発現されたヒトタンパク質は、その内因性の天然に発現される天然型により近い生物活性および循環半減期を示す。さらに、組換え発現されたヒトタンパク質は、折畳みおよび通常に利用可能なジスルフィド結合形成残基に関して天然タンパク質とより構造的に同等であり、結果として、その非ヒト細胞により発現された対応物よりも免疫原性が低い。同様に、前記ヒト細胞は好適なヒト酵素を含有するため、非ヒト細胞系と違って、その細胞環境および細胞質器官が、ヒトタンパク質を認識し、操作するために理想的に適合するため、発現された組換えタンパク質をより容易に糖鎖付加することができる。従って、本発明の安定なヒト細胞培養物中で発現された組換えサイトカインの糖鎖付加パターンおよび状態は糖鎖付加されているが、それらはin vivoで内因的に生産されたものである。
【0095】
さらに、組換え発現されるタンパク質の表面は天然の表面とより類似しているため、それは高親和性抗体の作製にとって理想的であるより真正な表面エピトープを有する。従って、そのような高親和性抗体は治療、診断、および研究開発試験において非常に有用である。それらは真正の組換え発現されたタンパク質に対して生じたものであり、従って、内因性の天然に発現された対応するタンパク質をより特異的に認識することができるため、より少量の抗体を個体に投与するか、またはin vitro方法において用いることができる。その理由のため、本発明の真正タンパク質に対して生じたわずかな用量の特定の抗体を用いて、本明細書の他の場所で詳細に説明されるように、さもなければ多くのより濃縮された用量を必要とする治療を達成することができる。より低濃度のそのような抗体の使用は、投与頻度を減少させることができることを意味するだけでなく、副作用の発生率をも低下させるか、または完全に排除することができることを意味する。さらに、本発明のヒト細胞系、方法および組成物は、ヒトタンパク質、特に、不可能ではなくとも、そのような他の非ヒト細胞において発現させることがこれまで困難であることが有名であったTGFβ1などの特定のサイトカインを発現させることを可能にする。例えば、本発明の方法を用いてTGFβ1の産生を証明する実施例および図5を参照されたい。
【0096】
本明細書で説明されるように、本発明のヒト細胞培養物は安定である。以下の「方法」および実施例を参照されたい。すなわち、細胞の同じ培養物を繰り返し使用して、ヒトサイトカインなどの任意の所望のヒトタンパク質を発現させた後、上清中に分泌させることができる。このヒト細胞は、抗生物質選択技術を用いて無血清培地中で増殖するその能力について選択されているため、安定である。この有意性は数倍である:同じ容量のヒト細胞を、補充することができない存在する系と違って、長期間にわたって持続させることができる。これは、培養物の遠心分離したアリコートのヒト細胞を、保存培養物に戻し、再増殖させることができることを意味する。
【0097】
対照的に、従来技術のヒト細胞系は安定ではないため、一定容量の培養物は発現されたタンパク質を収穫する機会が1回しかない。すなわち、一度、細胞が溶解されるか、またはタンパク質を含有する上清を単離するための遠心分離により回収されたら、従来技術のヒト細胞は全ての意図および目的について死んでおり、使用できない。従って、本発明のヒト細胞の再利用性は非常に魅力的である。
【0098】
これは、同じ容量の細胞を何回も再使用することができることを意味するだけでなく、本発明の方法が大規模プロセッシングにも適用可能であることを意味する。前記ヒト細胞の安定性は早い段階で確立されているため、該ヒト細胞は任意の容量の培養培地中で生存することができる。図1を参照されたい。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50リットルもしくは50リットルを超える培養物、またはその間の任意の整数において、ヒト細胞の生きた培養物を維持することが可能である。従って、本発明の方法により、商業的に望ましい収率での、組換え発現されるサイトカインなどの組換えタンパク質の商業規模の生産が可能になる。
【0099】
かくして、本発明のヒト細胞発現系はそれ自身を拡張性の高いものにし、それによって、単位時間あたりの真正に生産されるタンパク質の収率を増加させる。図2を参照されたい。前記細胞培養物は無血清培地を用いるため、得られる上清は本質的には分泌された発現組換えタンパク質のみを含有する。結果として、最終産物、すなわち、組換え発現されたタンパク質の純度は非常に高い。結果として、単離された発現されたタンパク質の濃度および生物活性が高く、細胞デブリおよび他の望ましくないタンパク質との夾雑の可能性は低い。
【0100】
発現されたヒトサイトカインおよび分泌された上清の純度もまた、正確かつ真正な生物活性の確立において、ならびにそれに対して生じた抗体がそれ自身において、およびそれ自身の高い結合親和性と高度に特異的であることも確保するために重要な因子である。従って、安定なヒト細胞培養物を増殖させるための無血清培地の使用は、たとえあったとしても、発現されたサイトカイン溶出物または上清中にタンパク質または細胞デブリが夾雑する可能性が低いため、この点に関して非常に役立つものである。
【0101】
同じ線に沿って、組換えタンパク質はヒト細胞から、無血清培地中に分泌されるため、発現され、分泌されたタンパク質を単離するのは比較的容易である。すなわち、上清から発現されたタンパク質を単離するために「His-Tag」単離スキームを用いる必要がない。His-tagは、典型的には、発現されるタンパク質が6個の残基を含む融合物であり、続いてカラムの内側にコーティングされた対応する残基に結合されるようになるような、発現カセット中に遺伝子操作された6個のヒスチジンアミノ酸残基のストレッチである。従って、本発明の発現されたタンパク質を単離するためにそのようなタグを用いる必要がないため、真正ヒトタンパク質の生産に向かう追加の工程が排除される。
【0102】
かくして、本発明の方法は、商業レベルに拡張可能であり、発現される組換えタンパク質の夾雑を排除し、その純度収率を増加させる、無血清培地中に懸濁された再使用可能な、自己永続的なヒト細胞培養物を使用する。その得られた組換えタンパク質は、組換え発現された真正タンパク質がその内因性の天然の対応物と高度に類似するように、その折畳みおよび糖鎖付加状態に関して高度に真正である。
【0103】
2. 方法
(a)ヒト細胞の調製
ヒト細胞を、無血清培地上、単層としてペトリ皿上に塗布する。次いで、無血清培地上で生存する細胞を、血清を含有する培地中に入れて、実用細胞バンクを作製する。無血清培地としては、限定されるものではないが、293 SFM II、CD 293、FreeStyle 293、Hybridoma-SFM(Invitrogen)、およびEx-Cell 293 (JRH Biosciences)が挙げられる。
【0104】
(b)トランスフェクション
好適な濃度のプラスミドDNAとトランスフェクタントを、細胞の集密層を含むペトリ皿に添加する。有用なトランスフェクタントとしては、限定されるものではないが、FuGene 6、FuGene HD(Roche社製);Lipofectamin、Lipofectamin 2000、293fectin (Invitrogen)、およびPolyethyleneimineが挙げられる。プラスミドDNAを、好適にトランスフェクトされたヒト細胞の選択を補助するための抗生物質耐性遺伝子を含むように遺伝子操作する。以下の小節を参照されたい。
【0105】
(c)抗生物質への曝露後のトランスフェクト細胞の選択
工程(b)のトランスフェクト細胞を、トリプシン処理(ペトリ皿プレートから細胞を剥離させる)後の遠心分離により収穫した後、ネオマイシン(G418)、ヒグロマイシン、ゼオシン、もしくはブラスチシジンなどの、特定の濃度の抗生物質、例えば、400μg/mlもしくは800μg/mlの抗生物質を含む血清培地中に、一定時間再懸濁する。次いで、生存する細胞コロニーを収穫し、さらに一定時間、別の周回の抗生物質に曝露する。
【0106】
(d)細胞適合化
次いで、抗生物質処理を生き残る細胞を、例えば、1%血清、および抗生物質を含む低血清培地中に再懸濁して、液体培養物中での生存能力および増殖を維持するのに十分に安定である細胞を決定する。この「適合化」期間は2〜3週間かかり、この時間の後、細胞を、抗生物質のみを含む無血清培地に移し、再度一定時間、「適合」させるために静置する。
【0107】
従って、適合化された細胞のそのような懸濁液は、トランスフェクションおよび抗生物質選択の困難に耐え得るヒト細胞の安定な培養物である。さらに、これらの細胞を連続的に増殖させ、より大量の培養物に接種するのに用いることができ、また、将来の培養物の接種のために新鮮な培地中で凍結保存することもできる。
【0108】
(e)懸濁抗生物質耐性ヒト細胞からのサイトカインの生産
プラスミドDNAは、(d)に記載の大量培養懸濁液中で連続的に増殖している抗生物質耐性ヒト細胞から分泌されるサイトカイン遺伝子またはそれをコードするポリヌクレオチドを発現する。従って、その大量の懸濁液のアリコートを、穏やかに遠心分離して、ヒト細胞を沈降させ、所望のサイトカインを含有するであろう上清を分離することができる。ヒト細胞が増殖している懸濁培地は無血清もしくは無タンパク質であるため、他のタンパク質または細胞デブリなどの夾雑細胞材料は、たとえあったとしても、少ない。従って、分泌されたサイトカインを含む上清は比較的純粋である。
【0109】
次いで、ヒト細胞ペレットを再懸濁し、同じか、もしくは異なる懸濁液もしくは培地中に再導入して、発現プロセスを再始動させることができる。かくして、全体の系は反復可能であり、従来技術の発現系と違って、1回使用可能な細胞懸濁液ではない。
【0110】
(f)収率
本発明の方法により生産することができるタンパク質の収率は、所望のポリヌクレオチド構築物を発現させるのに用いられるヒト細胞培養物の容量、サイトカインおよびそのサイズ、ならびに培養培地自体の構成要素基剤に依存し得る。培養培地の特定の成分、温度、pHを変化させるか、または糖鎖付加機構を容易にするために混合物中にグリカン前駆体を含有させることにより、収率に影響させることがでできる。従って、本発明のヒト細胞発現系からの発現されたヒトサイトカインの収率は、1〜500 mg/リットル、または500 mg/リットルを超えるものであってよい。従って、本発明は、約1 mg/リットル、約2 mg/リットル、約3 mg/リットル、約4 mg/リットル、約5 mg/リットル、約6 mg/リットル、約7 mg/リットル、約8 mg/リットル、約9 mg/リットル、約10 mg/リットル、約20 mg/リットル、約30 mg/リットル、約40 mg/リットル、約50 mg/リットル、約60 mg/リットル、約70 mg/リットル、約80 mg/リットル、約90 mg/リットル、約100 mg/リットル、約120 mg/リットル、約140 mg/リットル、約160 mg/リットル、約180 mg/リットル、約200 mg/リットル、約220 mg/リットル、約240 mg/リットル、約260 mg/リットル、約280 mg/リットル、約300 mg/リットル、約320 mg/リットル、約340 mg/リットル、約360 mg/リットル、約380 mg/リットル、約400 mg/リットル、約420 mg/リットル、約440 mg/リットル、約460 mg/リットル、約480 mg/リットル、もしくは約500 mg/リットルまたは約500 mg/リットル以上の本発明のヒト細胞発現系からのサイトカインの収率を意図する。本発明はまた、任意のこれらの濃度の間の収率も意図する。
【0111】
かくして、本発明の収率は、約10〜50 mg/リットル、もしくは約50〜100 mg/リットル、もしくは約150〜200 mg/リットル、もしくは約200〜250 mg/リットル、もしくは約250〜300 mg/リットル、もしくは約300〜350 mg/リットル、もしくは約350〜400 mg/リットル、もしくは約400〜450 mg/リットル、もしくは約450〜500 mg/リットル、もしくは約500〜550 mg/リットル、もしくは約550〜600 mg/リットル、もしくは約600〜650 mg/リットル、もしくは約650〜700 mg/リットル、もしくは約700〜750 mg/リットル、もしくは約750〜800 mg/リットル、もしくは約800〜850 mg/リットル、もしくは約850〜900 mg/リットル、もしくは約900〜950 mg/リットル、もしくは約950〜1,000 mg/リットルであってよい。
【0112】
換言すれば、本明細書に開示される方法に従って作製された本発明の組換え生産された真正タンパク質の収率は、他の細胞発現系から得られる収率よりも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍高いものであってよい。
【0113】
3. ベクター設計
本発明の一態様は、
(1)CMV極初期エンハンサーエレメント(CMV IE)などのサイトメガロウイルスエンハンサーエレメント;
(2)(i)ヒトアクチンプロモーター、(ii)ヒト血清アルブミンプロモーター、および(iii)ヒトフィブリノゲンプロモーターからなる群より選択されるヒトプロモーター配列;
(3)ヒトグロビン遺伝子イントロン;ならびに
(4)免疫グロブリンスーパーファミリー8シグナルペプチドもしくはα-フィブリノゲンシグナルペプチドなどのシグナルペプチド、
を含む新規発現カセットである。
【0114】
前記発現ベクターはまた、後に細胞中で発現させることができるように、シグナルペプチドの下流に位置された、上記のエレメント(1)〜(4)に機能し得る形で連結された目的の核酸配列または所望のポリヌクレオチドを含んでもよい。
【0115】
所望のポリヌクレオチド配列は、所望のサイトカインまたはサイトカイン断片をコードするものであってよい。前記発現カセットはまた、サイトカインポリヌクレオチドを発現させるのに用いられる調節エレメント間にクローニングすることができるか、またはサイトカイン-シグナルペプチド融合タンパク質を発現させるのに用いられる発現カセットとは無関係にその自身のプロモーターおよびターミネーターに機能し得る形で連結することができる、抗生物質耐性遺伝子の配列を含んでもよい。
【0116】
かくして、本発明の発現ベクターとしては、例えば、以下のもの:
1. (i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、および(iii)ヒトβ-グロビンイントロンの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含むpHZhag;
2. (i)hCMVプロモーター、および(ii)ヒトフィブリノゲンサブユニットAシグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含むpHZA;
3. (i)hCMVプロモーター、および(ii)ヒトIgスーパーファミリー8シグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含むpHZI;
4. (i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、(iii)ヒトβ-グロビンイントロン、および(iv)ヒトフィブリノゲンサブユニットAシグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含むpHZhagA;
5. (i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、(iii)ヒトβ-グロビンイントロン、および(iv)ヒトIgスーパーファミリー8シグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含むpHZhagI;
6. (i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、(iii)ヒトβ-グロビンイントロン、および(iv)TGF-β1の機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含むpHZhag-TGFβ1;ならびに
7. (i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、(iii)ヒトβ-グロビンイントロン、(iv)ヒトIgスーパーファミリー8シグナルペプチド、および(v)TGFβ1の機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含むpHZhagI-TGFβ1、
が挙げられる。
【0117】
対照発現カセットとしては、
1. (i)hCMV IE、(ii)ニワトリβ-アクチンプロモーター、および(iii)ウサギβ-グロビンイントロンの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含むpCAG;ならびに
2. (i)hCMVプロモーター、および(ii)mIg-κリーダーの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含むpHZsec、
が挙げられる。
【0118】
(a)クローニング
サイトカインのクローニングを、遺伝子工学の当業者には利用可能な様々な方法により達成することができる。例えば、全RNAまたはポリ-A RNAを、特定のサイトカイン発現(例えば、リンパ球)が豊富なヒト組織サンプルから精製し、遺伝子特異的RT-PCRの鋳型として用いることができる。従って、予め作製されたcDNAライブラリーを、商業的な起源から購入し、PCRを用いてサイトカインcDNAを直接増幅することができる。さらに、合成オリゴヌクレオチドを構築して、その遺伝子受託(アクセッション)番号と共にNational Center for Biotechnology Informationにおいて入手可能な配列情報に基づいて、サイトカインの合成遺伝子を作製することができる。さらに、完全長のcDNAクローンを、例えば、IMAGEクローンコンソーシアム(image.llnl.gov/)またはOpenbiosystems (Huntsville, AL)から取得することができる。完全長サイトカインcDNAクローンを、Openbiosystems (Huntsville, AL)から取得した。クローニングされたサイトカインの遺伝子受託番号を、表3に提示する。
【0119】
サイトカインは、典型的には、そのN末端に、例えば、Swiss-Protタンパク質知識ベースを用いて、当業者には利用可能ないくつかの道具により同定することができるシグナルペプチドを有する。いくつかのサイトカインは、利用可能な道具により同定することもできる異なる転写に起因する変異体を有する。分泌されるサイトカインの配列を、上記の小節10に列挙する。様々なシグナルペプチドを有するサイトカインの迅速なクローニングを容易にするために、発現されたサイトカインがシグナルペプチドを含むように、発現カセットを遺伝子操作することができる。例えば、哺乳動物細胞(例えば、CHOおよびHEK293)中での分泌される組換えタンパク質の生産にとって好適なpSecTag2c(Invitrogen, Carlsbad CA)を、正確な読み枠の向きにシグナルペプチドをコードするDNAを組込むための好適なクローニングおよび制限消化戦略を用いる部位特異的突然変異誘発により、本発明のベクター中に遺伝子操作して、それを一緒に連結されたサイトカイン配列と共に適切に転写および翻訳させることができる。例えば、突然変異誘発プライマーSecTag2c-srfIf (TCCACTGGTGACGCGCCCGGGCCGGCCAGGCGCGCC) (配列番号34)およびSecTag2c-srfIr (GGGGCGCCTGGCCGGCCCGGGCGCGTCACCAGTGGA) (配列番号35)を用いて、Igκリーダー配列(図27を参照)と読み枠を合わせてSrg I制限部位を導入することができる。
【0120】
4. ヒト細胞
本発明のタンパク質を発現させるのに用いることができるヒト細胞の型としては、ヒト幹細胞、ヒト前駆細胞、ヒト腎臓細胞、ヒト網膜由来PER-C6細胞、ヒト胚性腎細胞系が挙げられる。特に有用なヒト細胞系としては、限定されるものではないが、HEK 293細胞ならびにHEK 293T、HEK 293S、およびHEK 293 EBNAなどのその誘導体が挙げられる。
【0121】
特に、本発明は、本明細書で無血清培地および化学規定培地に対して適合させたHZ-293TSと命名された新規ヒト細胞系を提供する。実施例2を参照されたい。HZ-293TSと命名された細胞系は、 付けでATCC生物寄託受託番号 の下に寄託されており、当該受託番号を有する。
【0122】
5. 製品
(a)サイトカイン
本発明の方法に従って、ヒト細胞からのヒトサイトカインの培地規模および大規模生産を行うことができる。本発明の方法は、TGF-βスーパーファミリーの発現させることが難しいタンパク質などの60種の無タグサイトカインを生産するのに成功した。例えば、例としてGM-CSF、IL4およびVEGF165を用いて、高度に真正の糖鎖付加されたサイトカインを発現させ、ヒト細胞から単離し、炎症、癌の治療のその後の開発、幹細胞研究、および抗体の生成のための非常に好ましい試薬として用いることができる。さらに、本発明の技術により生産されるヒトサイトカインはより天然に糖鎖付加されるだけでなく、完全に機能的な複合体を作製するのに必要になることがある好適なジスルフィド結合も無傷である。これは、発現されたモノマー間のジスルフィド結合が可能ではない特定の非ヒト細胞中での状況とは異なる。
【0123】
ヒスタミンタグなどの精製もしくは単離に必要なタグを用いない高度に真正なヒトタンパク質を生産することができることが、本発明の高度に望ましい特徴である。本発明の方法およびベクター系により、その天然の内因性ヒト型との構造、生化学、および機能的同一性の点で高度に真正であるヒトタンパク質の発現が可能になる;これは、本発明の真正タンパク質配列をコードするポリヌクレオチドが、続いて発現されるタンパク質の精製および単離を補助するヒスチジンをコードする残基の組込みを必ずしも要しないことを意味する。かくして、本発明の一態様は、ペプチドタグを用いずに真正ヒトタンパク質を組換え生産するための方法、および「無タグ」である真正タンパク質自体である。従って、本発明の「真正」タンパク質の一態様は、それが無タグであることである。しかしながら、これは、本発明の方法およびベクターと共にヒスチジンタグなどのタグの使用可能性を排除することを意味するわけではない。すなわち、本発明はまた、ヒスチジンタグなどのタグを、真正タンパク質の同定、精製、および単離を補助するためにそのNまたはC末端に融合タンパク質として組込む真正タンパク質の組換え生産も包含する。
【0124】
本発明の安定化されたヒト細胞発現系中で、以下のサイトカイン:アクチビンA、アクチビンB、アクチビンA/2xINHbA、アクチビンB/2xINHbB、AMH/MIS、アルテミン、BDNF、BMP2、BMP15/GDF9B、BMP2/BMP2A、BMP3/オステオゲニン、BMP4、BMP4/BMP2B、BMP5、BMP7/OP-1、BMP1、BMP10、BMP15/GDF9B、β-NGF、シスタチンC、デルタ1、EGF、エリスロポエチン(EPO)、酸性FGF、塩基性FGF、FGF10、FGF5、FGF7、FGF8b、FLT3リガンド、G-CSF、GDF15、GDF2/BMP9、GDF3、GDF5/BMP14、GDF8/ミオスタチン、GDF9、GDNF、GM-CSF、HGF、HGH、IFN-α2A、IFN-α2B、IFN-γ、IFN-β1、IGF I、IGF II、IGF IIv1、IGF IIv2、IL10、IL11、IL12、IL15、IL17/IL17A、IL17F、IL1β、IL2、IL23、IL27、IL28A/IFN-λ-2、IL28B/IFN-λ-3、IL29/IFN-λ-1、IL1β、IL2 IL3、IL32、IL35、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、インヒビンA/INHa&INHbA、インヒビンB/INHa&INHbB、インヒビンC/INHa&INHbC、インヒビンE/INHa&INHbE、LEFTYB、LEFTY1/LeftyB、M-CSF、マウスCSF、マウスSCF、NODAL、Noggin、NT3 (ニューロトロフィン3)、オンコスタチンM、PDGFα、PDGFβ、ペルセフィン、SCF、SDF1α、SHH、ソマトトロピン、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3、TGFβ4/LEFTY2/LeftyA、TNF α、TPOα、VEGF121aa、VEGF165aa、WIF1、WNT1、Wnt10A、Wnt10B/12、Wnt11、Wnt16、Wnt2、Wnt2B/13、Wnt3、Wnt3A、Wnt4、Wnt5A、Wnt5B、Wnt6、Wnt7A、Wnt7B、Wnt8B、およびWnt9A/14を発現させることが非常に望ましい。また、表5の「クローニングされたサイトカイン遺伝子の一覧」も参照されたい。任意のこれらのサイトカインを、本発明のヒト細胞発現系中で発現させることもできる。
【0125】
以下の実施例および対応する図面は、高度に純粋な、真正に糖鎖付加された生物活性サイトカイン、すなわち、EPO、G-CSF、GM-CSF、IL-2、IL-4、IL-6、M-CSF、Noggin、SCF、ソマトトロピン、TGFβ1、TNFα、およびVEGF-165の発現の成功を証明する。これらのサイトカインの組換え発現およびそのそれぞれの生物活性を証明する図式およびゲルデータならびに他の細胞系から発現されるサイトカインとの比較については、図6A-M、7A-D、および8A-Cを参照されたい。
【0126】
(b)抗体
本発明の真正に糖鎖付加され、折畳まれ、およびリン酸化されたタンパク質に帰する別の利益は、それらが高度に特異的な抗体を生成させるための優れた試薬であるということである。
【0127】
モノクローナル抗体は、特定のサイトカインの存在に関するアッセイ、またはそれらが特異的に結合するタンパク質の単離および精製にとって有用である。従って、モノクローナル抗体は、診断アッセイ、検出アッセイ、および精製プロトコルにとって有用である。本発明のヒト発現系によって生産される組換えサイトカインは、非ヒト細胞中で発現されたものより真正に糖鎖付加され、折畳まれるため、それらに対して生成した任意の抗体は、ヒト体内またはヒト生物サンプル中の内因性サイトカインに対するより高い親和性を有するであろう。
【0128】
モノクローナル抗体を、特異的抗原として用いられる組換えヒトインターフェロンを用いて公知の方法に従って作製することができる。1種以上の抗原を1回で注入することができる。例えば、大腸菌から作製されたインターフェロン、および同一のインターフェロンを産生するトランスフェクトされたヒト細胞を用いる本発明で記載された以前の方法に従ってトランスフェクトされたものから作製されたインターフェロンを用いる。トランスフェクトされたヒト細胞から作製された、真正組換えヒトインターフェロンで免疫されたクローンから選択された抗体と比較した場合、大腸菌から作製された組換えインターフェロンから選択された抗体を産生するいくつかのクローンのクロスボード分析試験を行うことができる。また、マウスメラノーマ細胞を脾臓細胞に融合させた後、所望の抗体を産生することができるクローンを選択することにより、モノクローナル抗体を産生することができる細胞系を取得することもできる。Kohler & Milstein, Nature (1975), 256 (5517):495-497; およびKohlerら、Eur J Immunol. (1976), 6:292-295を参照されたい。エピトープに対して産生されたモノクローナル抗体パネルを、様々な特性について、すなわち、アイソタイプおよびエピトープ親和性についてスクリーニングすることができる。代替的な技術としては、例えば、ファージが様々な相補性決定領域(CDR)を含むその外殻表面上にscFvフラグメントを発現するファージ展示ライブラリーが挙げられる。この技術は当業界でよく知られている。
【0129】
糖鎖付加された組換えヒトサイトカインの分泌から作製された抗原を用いるポリクローナル抗体は、分子のタンパク質部分を認識するだけでなく、特定の組換えヒトインターフェロンの糖鎖部分も認識する抗体を産生することができる。ウサギ、ヤギ、ヒツジ、もしくは他の動物などの様々な動物を免疫し、しばしば、Freunds Incompleteアジュバントと共に、μg〜mg量のこれらのインターフェロンの1種を抗原として反復注射することにより本発明に包含される方法を用いて作製された真正組換えヒトインターフェロンで前記動物を免疫することにより、ポリクローナル抗体を生成させることができる。本発明により包含されるポリクローナル抗体(「pAbs」)の例としては、限定されるものではないが、EPO、FLt3、G-CSF、GM-CSF、M-CSF、IFN-α2A、IL-4、およびIL-6に対するpABが挙げられる。
【0130】
本明細書で用いられる「抗体」とは、免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子の断片により実質的にコードされる1個以上のポリペプチドからなるタンパク質を指す。抗体は、無傷の免疫グロブリンとして、または様々なペプチダーゼを用いる消化により作られたよく特性評価されたフラグメントなどのいくつかのフラグメントとして存在してもよい。様々な抗体フラグメントが無傷の抗体の消化に関して定義されているが、当業者であれば、抗体フラグメントを化学的に、または組換えDNA方法を用いることによりde novoで合成することができることを理解するであろう。かくして、本明細書で用いられる用語「抗体」はまた、全抗体の改変により作られたか、または組換えDNA方法を用いてde novoで合成された抗体フラグメントを含む。用語「抗体」の使用により包含される抗体フラグメントとしては、限定されるものではないが、Fab、Fab'、F(ab')2、scFv、Fv、dsFv、ダイアボディ、およびFdフラグメントが挙げられる。さらに、前記抗体およびそのフラグメントは、例えば、参照により本明細書に組み入れられるものとするEP-A-239400に記載されたようなヒト化抗体であってもよい。
【0131】
本発明に従って調製される抗体の例としては、組換え生産された、真正ヒトIL-2、IL-4、IL-6、EPO、G-CSF、GM-CSF、M-CSF、FLT3L、およびIFN-α2Aに対して生成されたポリクローナル抗体が挙げられる。作製されるモノクローナル抗体としては、限定されるものではないが、組換え生産された真正ヒトIL-2、IL-4、IL-6、EPO、G-CSF、TGF-β1、INF-α、およびIL-17に対するモノクローナル抗体が挙げられる。
【0132】
(c)キナーゼ
また、限定されるものではないが、AKT1、AKT2、AMPK1、ATM、オーロラA、BTK3、CDK6、ERK5、Fyn-1、GRK5、JNK1、LYN、MAPKAPK2、MAPKAPK3、MEKK3、MKK3、MKK4、mTOR、P38-α、P70S6K2、PDK1、PKC-β、PKC-γ、PTEN、SYK、およびZap70などの組換え生産された真正ヒトキナーゼを取得するために、本発明の安定化されたヒト細胞発現系中で上記ヒトキナーゼ遺伝子を発現させるのが非常に望ましい。
【0133】
(d)他のタンパク質
本発明は、サイトカインのみ、およびこれらのサイトカインに対して生成した抗体の生産に限定されない。本発明の安定なヒト細胞系を用いて、限定されるものではないが、キナーゼおよび他の酵素などの他のヒトタンパク質を本発明に従って発現させることができる。かくして、本発明はまた、アルブミン、IgG、IgA、IgM、IgD、IgE、α-1-プロテイナーゼインヒビター、血液前凝固タンパク質、血液抗凝固タンパク質、血栓溶解剤、抗血管形成タンパク質、α-2-抗プラスミン、C-1エステラーゼ阻害剤、アポリポタンパク質、HDL、LDL、フィブロネクチン、β-2-糖タンパク質I、フィブリノゲン、プラスミノゲン、プラスミン、プラスミノゲン活性化因子、プラスミノゲン阻害因子、血漿プロテアーゼ阻害剤、抗トロンビンIII、ストレプトキナーゼ、インター-α-トリプシン阻害剤、α-2-マクログロブリン、アミロイドタンパク質、フェリチン、プレアルブミン、GC-グロブリン、ヘモペキシン、C3-補体、トランスフェリン、ウロキナーゼ、α-1-酸-糖タンパク質、凝固因子、抗凝固因子(第II因子、第V因子、第VII因子、第VIII因子、von Willebrand因子、第VIII--von Willebrand因子複合体、第IX因子、第X因子、第XI因子、C1インヒビター、プロテインCおよびプロテインSなど)、細胞外膜タンパク質、または受容体の細胞外ドメインからなる群より選択される真正ヒト血漿タンパク質の組換え生産も包含する。
【0134】
7. 精製
真正様組換え体の精製を、大腸菌培養物中で標的インターフェロンの必要量を拡張させた後、細胞、およびHEK細胞などのヒト細胞、ならびに他の関連するヒト細胞の発現のために仕立てる。特定のインターフェロンに用いられる細胞を選択し、正確なヒト成分に由来するベクターを選択した特定のベクターのために仕立てる。個々のインターフェロンのために選択された特定のヒト細胞は、最適なヒト細胞系の選択を必要とする。細胞が細胞懸濁培養無血清培地に適合されるという事実に起因して、収穫された培地に適用される精製方法は、細胞培養培地を含有する血清と比較した場合、設計が容易である。
【0135】
例えば、無血清培地の上清を遠心分離により回収し、細胞ペレットをサイトカインのさらなる生産のために新鮮な無血清培地中に再懸濁することができる。サイトカインの発現を、公知の分子量によるクマシー染色を用いるSDS-PAGEゲル分析上で、または伝統的なウェスタンブロット分析を介して容易に同定することができる。サイトカインを捕捉するために、上清を最初に固定化金属アフィニティクロマトグラフィー(IMAC)カラム上に載せた。その特性に基づいて、いくらかのサイトカインはIMACカラムに結合したが、いくらかは流出物中に見出された。次の精製工程として、サイトカイン画分のプールを適切なバッファー条件にバッファー交換した後、イオン交換クロマトグラフィー(IEX)カラム上に載せた。最後に、研磨工程として、サイトカイン画分のプールを別のIEXまたは異なるアフィニティクロマトグラフィーカラム(たとえば、ヘパリン樹脂)上に載せた。
【0136】
(b)純度
(i)サイトカイン純度レベル
最大3回のクロマトグラフィー工程の後、サイトカインは、SDS-PAGEゲル上でのクマシー染色(図7)および利用可能な抗体を用いるウェスタンブロット(図8)により判定したところ、95%を超えて純粋であった。次いで、純粋なサイトカインを、当業者には利用可能な公知の方法(例えば、Bradfordアッセイ、ゲル上でのクマシー染色、およびOD280 nm)を用いて定量した。定量の後、サイトカインを、製造業者のマニュアルに従ってLonza (Allendale, NJ)社製の内毒素検出キットにより内毒素レベルを分析し、必要量に基づいて分注し、商業化のために凍結乾燥した。
【0137】
(ii)低夾雑物
内毒素は、細菌および他の発現系から調製されたサイトカインにおける主要な夾雑物である。低レベルの内毒素でも、細胞または生物にとって毒性である可能性があり、除去しなければならない。商業的に供給されるサイトカインに関する工業的に標準的な報告値は、1.0 EU/μg未満である。本発明の方法は、超低レベルの内毒素夾雑物を含む、様々なヒトサイトカインなどのタンパク質を生産することができる。以下に開示されるように、標準的な商業用調製物で報告されたレベルよりも10倍〜1000倍少ない内毒素を含むサイトカインが本発明に従って調製された。
【0138】
8. アッセイ
サイトカインの「純度」、「活性」を確認し、サイトカインの濃度を定量するか、またはサイトカインを発現する細胞を検出するための多くの異なるアッセイ系が利用可能である。サイトカイン生物アッセイは、例えば、(i)サイトカインにより誘導される細胞増殖、(ii)走化性、(iii)細胞傷害性、(iv)コロニー形成を誘導する能力、(v)細胞脱顆粒化、または(vi)さらなるサイトカインもしくは他の化合物の分泌の誘導を測定する。
【0139】
(a)活性
上記のように、サイトカイン活性を決定するための標準的なアッセイは、(a)指示細胞系のサイトカインにより誘導される増殖;(b)サイトカインにより誘導されるアポトーシス;(c)ウイルス感染に対するサイトカインにより誘導される防御;および(4)サイトカインにより誘導されるサイトカインの産生を含む。それぞれの特定の方法に関する詳細は当業者にはよく知られており、参照により本明細書に組み入れられるものとする「Cytokine Bioassays」(www.ebioscience.com/ebioscience/appls/BAC.htm)に見出すことができる。
【0140】
サイトカインにより誘導される生物学的応答は、飽和速度を示し、これを用いて、用量応答曲線からその量を定量することができる。これらのアッセイは、一次細胞培養物および、より頻繁には、増殖もしくは生存に関して特定のサイトカインの存在に依存するか、または特定の方法で所与のサイトカインに応答する確立された細胞系の使用を含む(www.copewithcytokines.de/cope.cgi?key=bioassaysを参照)。1つの方法は、細胞増殖に対するサイトカインの効果を決定する定量的比色方法であるMTTアッセイである。MTTアッセイは、増殖中の細胞のミトコンドリアのコハク酸デヒドロゲナーゼ活性により代謝されて、比色計を用いて検出することができる紫色のホルマザン反応産物を得る黄色のテトラゾリウム塩[3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウム-ブロミド]を用いる。
【0141】
他のサイトカインアッセイとしては、(1)一般的には、免疫反応性を測定し、従って、サイトカインの存在の有用な指示因子である免疫アッセイが挙げられ、(a)ラジオイムノアッセイ、(b)免疫放射定量測定法、および(c)酵素結合免疫吸着アッセイが挙げられる。これらの特定のアッセイは、サイトカイン特異的抗体または標識されたサイトカイン、受容体、もしくは抗体を必要とする。従って、本発明により作製された高親和性抗体は、特に、in vivoでのいくつかのサイトカインの合成が、標準的な免疫アッセイ技術によってその存在を検出するのが困難であるような低レベルで起こることが多いため、そのような免疫アッセイを実行するのに理想的に有用である;(2)サイトメトリックビーズアレイは、特徴的な複数の粒子の同時測定のためにサンドイッチ免疫アッセイとフローサイトメトリーを組合わせたものであり、少量の様々なサイトカインの同時決定に適合化されたものである;(3)免疫アッセイは多くのサイトカインについて市販されている;(5)放射性受容体アッセイは、細胞に結合した受容体からリガンドを置換することによりサイトカインの濃度を測定する;(6)逆溶血プラークアッセイは、サイトカインを分泌する個々の細胞を検出し、この細胞により分泌される特定のサイトカインの量を決定するのに用いることができる免疫グロブリン分泌細胞プラークアッセイの改作である;(7)細胞ブロットアッセイも、産生細胞によるサイトカインの放出の可視化を可能にする;(8)キナーゼ受容体活性化アッセイは、受容体へのリガンド結合が受容体のチロシンリン酸化を引き起こすことができ、従って、細胞増殖もしくは細胞生存よりもむしろ受容体ホスホチロシンの量を測定することにより活性を推測することができるという事実を利用する;(9)因子依存的細胞系アッセイは、細胞が個々のサイトカインもしくは新鮮に単離された細胞に対して特定の方法で応答するアッセイである;(10)サイトカイン免疫トラッピングは、サイトカインの産生および消費もしくは分解の速度を研究するためのアッセイである;(11)プローブおよびPCRプライマーを用いるサイトカインmRNAのRT-PCR定量を、サイトカイン遺伝子もしくはその選択的スプライス変異体にアニーリングし、これを増幅するように設計することができ、例えば、HGF/NK1、HGF/NK2、HGF/NK4と呼ばれるHGFのスプライス変異体を、変異体特異的プライマーもしくはプローブを用いて増幅もしくは検出することができる。
【0142】
特に、発現されたサイトカインの生物活性を、サイトカインの性質に基づいて、用量依存的細胞傷害性(例えば、TNFα)に関するED50、増殖の刺激(例えば、IL-2)、または有効な細胞に対する他のサイトカインにより誘導される増殖の阻害(例えば、TGF-β1)により測定することができる。
【0143】
(b)比較アッセイ
また、2つのタンパク質産物間の純度および糖鎖付加状態の差異を証明するための、本発明の系により発現されたサイトカインと、非ヒト細胞中で発現された同じサイトカインとの対照比較も提供する。図7および8を参照されたい。
【0144】
9. 組換え生産された真正サイトカインの治療的使用例
上記の節で詳述された通り、本発明の安定なヒト細胞発現系から発現されたサイトカインは、より「ヒトに近い」もしくはより「真正な」折畳み、糖鎖付加、リン酸化状態、エピトープ提示、および天然のダイマー化特性などの、他の細胞系において産生されるサイトカインに対するいくつかの利点および利益を有する。従って、本発明の方法に従って生産される実際のタンパク質構造は、その天然の内因性対応物により類似している。これは、これらの真正組換えサイトカインに関する治療的使用の文脈における有意な利点と言い換えることができる。また、様々なサイトカインと機能の相関については、以下の表2も参照されたい。当業者であれば、特定の障害および疾患と、異常な、もしくは機能不全であるサイトカイン活性とを相関させることによって、以下により詳細に考察されるように、その異常性を相殺するか、または修正するための療法を考案することができる。
【0145】
非ヒト細胞系中で発現されたサイトカインは真正ではなく、例えば、それらはヒト特異的糖鎖付加パターンを欠き、非ヒト糖鎖に共有結合するか、または不正確に折畳まれる。さらに、これらの細胞培養物は補充することができない、すなわち、組換えタンパク質が発現され、それから単離された後は細胞の培養物を再使用することができない。これらの理由から、そのような非真正サイトカインは、低い効力、短い半減期を有し、アレルギーおよび身体からの望ましくない免疫応答を誘導し得る。
【0146】
対照的に、本発明のサイトカインは真正かつヒトに近い。従って、本発明により生産されるサイトカインは、より高い効力および長い半減期を有し、これは現実的かつ実用的な用語では、それを必要とする個体に投与する必要があるサイトカインの用量がより低いことを意味する。より低い用量およびより長い半減期はまた、投薬の頻度を低下させることができることを意味する。さらに、本発明のサイトカインはよりヒトに近いため、それらはアレルギーを誘導するか、または免疫原性である可能性が低い。従って、全体として、治療を受ける必要がある個体を、彼または彼女が、サイトカインのより少ないピルもしくは錠剤製剤を摂取するか、またはサイトカイン調製物の注射を受ける必要があり、またそれほど頻繁ではないが、本発明の非真正サイトカインにより誘発される免疫応答に起因する副作用の恐れがない治療過程に入れることができる。例えば、組換えIFN-α2aを含有するように製剤化されたRoferon(登録商標)などの現在利用可能な薬剤に関連する潜在的な副作用および問題を参照されたい。www.fda.gov/cder/foi/label/2002/ifnahof081502lb.pdfおよびwww.rocheusa.com/products/roferon/roferon_medguide_vials.pdfを参照されたい。
【0147】
これに関連して、本発明は高度に真正なヒトサイトカインタンパク質の組換え生産を提供するため、特定の用途に必要とされるサイトカインの投与量は、異なる細胞型において異なる構築物から生産された同じサイトカインについて必要とされる投与量よりも劇的に低い。例えば、非真正ヒト白血球インターフェロンから同じ効果を引き出すのに4000万単位が必要とされるのと比べて、高度に真正なヒト白血球インターフェロンの組換え発現には、わずかに300〜500万IUでよい(本発明により生産されるサイトカインの収率および真正性分析に基づく)。これは、現在生産されている組換えヒトインターフェロンαよりもlog-10高い効力である。従って、インターフェロンαによりもたらされる副作用は、300〜500万単位では、たとえあったとしても最少であるが、300〜500万単位と同じ効果をもたらすのに用いられる4000万単位は、重篤な神経学的副作用などの非常に重篤な副作用をもたらす。
【0148】
当業者であれば、本発明の真正ヒトサイトカインのための様々なin vivoおよびex vivoでの治療的使用を知っているであろう。例えば、本発明は、限定されるものではないが、
(1)多発性硬化症、免疫介在疾患、癌、自己免疫疾患(狼瘡、喘息、およびクローン病)、ならびにウイルス性肝炎を治療するための組換え生産された真正インターフェロン;
(2)自己免疫、癌を治療するための組換え生産された真正インターロイキン;キャッスル万病を治療するためのIL-6(Tocilizumab);免疫細胞調節を治療するためのIL-10、IL-11、IL-12、およびIL-13;マウスにおける癌モデルを調製するためのIL-21およびその受容体;自己免疫疾患(慢性関節リウマチおよび乾癬など)を治療するためのIL-1;喘息を治療するためのIL-4受容体およびIL-5;乾癬を治療するためのIL-8;ならびにTH1媒介性自己免疫を治療するためのIL-12、IL-13、IL-17およびIL-18;
(3)FDAに認可され、後続の薬剤における組換え生産された真正TNF-αおよびその阻害剤、例えば、限定されるものではないが、Enbrel(Etanercept)、Remicade (Infliximab)、Golimumab (CNTO 148)、Humira (Adalimumab)、Cimzia (Certolizumab Pegol)、自己免疫および炎症におけるさらなるTNF-α抗体阻害剤;ならびに癌および感染を治療するための腫瘍壊死因子-α;
(4)自己免疫疾患、癌を治療するための組換え生産された真正ケモカイン;抗炎症剤としての使用のためのCCR2;
(5)増殖因子およびコロニー刺激因子に関する障害のための治療剤の開発のための組換え生産された真正タンパク質、例えば、限定されるものではないが、血管形成、血管形成抗体を治療するためのVEGF(AvastinおよびLucentis)、VEGFアンタゴニストMacugen、マルチキナーゼ阻害剤SutentおよびNexavar、VEGFモノクローナルおよび阻害剤、VEGF遺伝子療法;肝細胞増殖因子;血小板由来増殖因子;Gleevecおよび他のタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤;線維芽細胞増殖因子;TGF結合タンパク質、およびTGFβシグナリングの阻害剤;インスリン様増殖因子;ケラチノサイト増殖因子;口腔粘膜炎を治療するためのrhKGF;結合組織増殖因子(CTGF);コロニー刺激因子(CSF);エリスロポエチン;トロンボポエチン;アンギオポエチン;骨形態形成タンパク質および増殖分化因子;rhBMP、ミオスタチンの阻害剤;ならびに発達障害を治療するための神経栄養因子、
の使用を包含する。
【0149】
本発明の組換え生産された真正ヒトタンパク質を、薬剤、ワクチン、リポソーム中に製剤化するか、またはタンパク質として直接in vivoで個体に送達するか、またはin vitroもしくはex vivoで細胞もしくは細胞培養物に投与することができる。例えば、当業者であれば、治療用途のためにペプチドを改変するのに用いられてきたいくつかの手法を知っているであろう。1つの手法は、ペプチドもしくはタンパク質を、ポリエチレングリコール(PEG)およびポリプロピレングリコール(PPG)などの様々なポリマーに連結することである。例えば、米国特許第5,091,176号、第5,214,131号および第5,264,209号(参照により本明細書に組み入れられるものとする)を参照されたい。
【0150】
従って、本発明の組換え生産された真正ヒトタンパク質を、経口または非経口投与のための医薬調製物中に好適に製剤化することができる。非経口投与のための製剤としては、限定されるものではないが、注射可能な溶液もしくは懸濁液および輸液のための液体が挙げられる。非経口剤形の調製物のために、有効量の活性成分を滅菌担体中に溶解もしくは懸濁し、必要に応じて可溶化剤、等張性剤、保存剤、安定化剤、乳化剤もしくは分散剤などの賦形剤を添加した後、密閉バイアルもしくはアンプル中に分配する。
【0151】
本発明はまた、本明細書に開示される方法により生産された真正ヒトタンパク質のコンジュゲートも意図する。例えば、真正ヒトタンパク質を製薬上許容し得る担体、希釈剤もしくは賦形剤と混合して、医薬組成物(ヒト用もしくは動物用のものであってよい)を製造することができる。好適な担体および希釈剤としては、等張性塩水溶液、例えば、リン酸緩衝生理食塩水が挙げられる。賦形剤の詳細を、The Handbook of Pharmaceutical Excipients、第2版、Wade & Weller(編)、American Pharmaceutical Association(参照により本明細書に組み入れられるものとする)に見出すことができる。本発明の組成物を直接注入により投与することもできる。かくして、本発明の治療用組成物を、非経口、筋肉内、静脈内、皮下、眼内、経口または経皮投与のために製剤化することができる。また、リポソーム形態のサイトカインなどのヒトタンパク質の調製物は、その生物活性を改善することもできる。
【0152】
本発明の治療用真正タンパク質を、毎日、毎週もしくは毎月の投与が所望の日用量を提供するように製剤化することができる。当業者であれば、そのような治療用組成物を、2、4、6、8、10もしくは12時間などのより頻度の低い投与のために都合良く製剤化することができることを理解するであろう。
【0153】
また、本発明の真正タンパク質を、患者もしくは個体に、または患者もしくは個体の細胞に直接的に真正ヒトタンパク質を投与することにより、これらのおよび他の疾患の遺伝子療法において用いることもできる。次いで、治療された細胞を患者または個体に再導入することができる。かくして、本発明の真正ヒトタンパク質をコードする所望のポリヌクレオチドを、裸の核酸構築物として直接投与し、また、内部発現カセット、および従って所望のポリヌクレオチドの宿主細胞ゲノム中への組込みを容易にする宿主細胞ゲノムと相同なフランキング配列に連結することもできる。前記個体は、任意の哺乳動物、爬虫類、鳥類、魚類、または両生類であってよい。一実施形態においては、遺伝子療法のレシピエント個体はヒトである。本発明の任意のベクターを用いて、所望の治療用サイトカインなどの所望のタンパク質を、in vivoで細胞中で直接発現させ、それによって特定の疾患、例えば、サイトカイン関連疾患もしくは障害の治療に対する遺伝子療法手法を提供することができる。
【0154】
本発明は、様々な疾患および障害の遺伝子療法治療における本明細書に開示される任意のベクターの使用を意図する。例えば、本発明は、嚢胞性線維症の治療のためのCFTR遺伝子(嚢胞性線維症膜貫通伝導調節因子);第VIII因子および第IX因子の遺伝子(その欠損はそれぞれ血友病AおよびBの原因である);癌細胞の細胞死もしくは正常細胞への逆転を引き起こすE1AおよびP53と呼ばれる遺伝子;心臓の収縮能力を増加させ、心不全時に役立つAC6遺伝子;ならびに血管疾患における使用の新血管の増殖(血管形成)を誘導する遺伝子であるVEGFをin vivoで発現させるための本明細書に開示される任意のベクターの使用を意図する。かくして、本発明の一実施形態においては、ベクターは、CFTR遺伝子、第VIII遺伝子、第IX遺伝子、E1A遺伝子、P53遺伝子、AC6遺伝子、およびVEGF遺伝子からなる群より選択される治療用タンパク質遺伝子をコードする所望のポリヌクレオチドを含む発現カセットを含有する。
【0155】
本発明の任意のベクターを用いる遺伝子療法を用いて治療することができる遺伝子疾患としては、限定されるものではないが、1型脊髄小脳失調、ハンチントン病、家族性高コレステロール血症(FH)、AIDS、メラノーマなどの癌、もしくは皮膚癌(腫瘍壊死因子(TNF)と呼ばれる抗癌タンパク質を含む遺伝子を患者自身の癌細胞の試験管サンプル中に導入した後、患者に再導入することを含む);脳の癌(この手法は疾患と闘うのに用いられる一般的な薬剤に対する癌細胞の感受性を増加させる特定の遺伝子を挿入することである);ならびに前立腺癌および頸部癌;ならびにゴーシェ病(この疾患はグルコセレブロシダーゼと呼ばれる酵素の産生を阻害する突然変異遺伝子により引き起こされる遺伝病である) の治療のための1個以上の遺伝子の発現が挙げられる。
【0156】
また、本発明のベクターを遺伝子療法において用いて、身体の免疫系のカスケードを誘導し、再狭窄を引き起こす手順であるバルーン血管形成術などの外科的手順に関連する問題を解決することもできる。
【0157】
かくして、遺伝子疾患に対抗するか、もしくはこれを治療するための好適な遺伝子を発現する本発明のベクターを患者に導入することにより治療することができる遺伝子療法の例としては、限定されるものではないが、(A) 2D型肢帯筋ジストロフィー(LGMD2D)を有する子供および成人を治療するための遺伝子導入療法であって、ベクターがLGMD2Dを有する患者のin vivoでrAAV1.tMCK.ヒト-α-サルコグリカンをコードし、発現する前記療法;(B)GX-12を発現する本明細書に開示される任意のベクターを用いてHIV-1感染患者を治療するための遺伝子療法;(C) Ad5-yCD/mutTKSR39rep-ADP、RTVP-1、Ad.hIL-12、FP253/フルダラビン、もしくはAd5-CMV-NIS遺伝子を用いる前立腺癌の遺伝子療法治療;(D) tgAAG76(rAAV 2/2.hRPE65p.hRPE65)を用いるレーバー先天性黒内障の遺伝子療法治療;(E) 鎌状赤血球貧血もしくは地中海貧血の遺伝子療法治療;(F) BG00001(アデノウイルス媒介性インターフェロン-β)を用いる胸膜悪性腫瘍の遺伝子療法治療;(G) 食細胞オキシダーゼサブユニットにより形質導入されたCD34造血幹細胞を用いる慢性肉芽腫性疾患の遺伝子療法治療;(H)INGN 241を用いるin transitメラノーマの遺伝子療法治療;(I) AdV-tkを用いる悪性グリオーマの遺伝子療法治療;(J) ProSavinを用いる特発性両側性パーキンソン病の遺伝子療法治療;(K) アデノウイルス媒介性ヒトインターロイキン-12を用いる転移性乳癌の遺伝子療法治療;(L) AAV6.SERCA2aを用いる左心補助装置を受け入れた患者の遺伝子療法治療;ならびに(M) rAAV2-hRPE65を用いることによってRPE65突然変異により引き起こされたレーバー先天性黒内障の遺伝子療法治療が挙げられる。
【0158】
従って、これらの遺伝子のいずれかを本明細書に開示されるベクターのいずれか1つの中に遺伝子操作した後、そのベクターを個体の細胞中に導入することができ、ここで該ベクターは、遺伝子ベースで、もしくは内在する疾患に基づいて反作用し、補正するか、またはさもなければ治療するように作用する細胞の存在下でコードされるタンパク質を発現する。治療用タンパク質をコードするベクターを、個体の外部で培養された細胞中に導入するか、または個体に直接投与し、コードされるタンパク質をin vivoで発現させることができる。かくして、本発明は、特定の疾患を治療するためのin vivoおよびex vivo/in vitroでの遺伝子療法の両方を意図する。
【0159】
かくして、本発明の一態様は、遺伝子療法におけるpHZhag、pHZA、pHZA、pHZI、pHZhagA、およびpHZhagIからなる群より選択されるベクターであって、該ベクター中に挿入された特定の発現カセットから治療用タンパク質を発現する前記ベクターの使用である。一実施形態においては、pHZhagベクターは(i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、および(iii)ヒトβ-グロビンイントロンの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む。別の実施形態においては、pHZAベクターは、(i)hCMVプロモーター、および(ii)ヒトフィブリノゲンサブユニットAシグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む。別の実施形態においては、pHZIベクターは、(i)hCMVプロモーター、および(ii)ヒトIgスーパーファミリー8シグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む。別の実施形態においては、pHZhagAベクターは、(i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、(iii)ヒトβ-グロビンイントロン、および(iv)ヒトフィブリノゲンサブユニットAシグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む。別の実施形態においては、pHZhagIベクターは、(i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、(iii)ヒトβ-グロビンイントロン、および(iv)ヒトIgスーパーファミリー8シグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む。
【0160】
哺乳動物細胞による本発明の発現カセットを含む、これらのものなどの裸の核酸ベクターの取込みを、例えば、トランスフェクション剤の使用などのいくつかの公知のトランスフェクション技術により増強することができる。これらの薬剤の例としては、陽イオン剤(例えば、リン酸カルシウムおよびDEAE-デキストラン)ならびにリポフェクタント(例えば、lipofectam.(商標)およびtransfectam.(商標))が挙げられる。必要に応じて、核酸構築物をトランスフェクション剤と混合して、組成物を作製してもよい。また、本発明の発現ベクターを、製薬上許容し得る担体または希釈剤と混合して、医薬組成物を作製してもよい。好適な担体および希釈剤としては、等張性塩水溶液、例えば、リン酸緩衝生理食塩水が挙げられる。前記組成物を、非経口、筋肉内、静脈内、皮下、眼内または経皮投与のために製剤化することができる。
【0161】
当業者であれば任意の特定の個体および症状にとって最適な投与経路および投薬計画を容易に決定することができるため、記載の投与経路および投薬計画は指針として意図されるに過ぎない。
【0162】
従って、本発明はまた、本明細書に開示されるもののいずれかなどの特定の疾患または障害を治療するのに有用である薬剤(医薬)の調製における、本発明の組換え生産された真正タンパク質のいずれかの使用を包含する。従って、本発明は、癌および細胞成長、細胞増殖、細胞分化に関する疾患異常、および炎症を治療するための薬剤の調製のための組換え生産された真正ヒトサイトカインの使用を包含する。従って、本発明の一態様は、癌を治療するための薬剤の調製のための組換え生産された真正ヒトサイトカインの使用である。従って、本発明の一態様は、細胞増殖に関連する障害または疾患を治療するための薬剤の調製のための組換え生産された真正ヒトサイトカインの使用である。また、本発明の一態様は、細胞成長に関連する障害または疾患を治療するための薬剤の調製のための組換え生産された真正ヒトサイトカインの使用である。本発明の別の態様は、細胞分化に関連する障害または疾患を治療するための薬剤の調製のための組換え生産された真正ヒトサイトカインの使用である。本発明の一態様は、炎症に関連する障害または疾患を治療するための薬剤の調製のための組換え生産された真正ヒトサイトカインの使用である。
【0163】
10. 組換え生産された真正サイトカインに対して生じた抗体の治療的使用例
特定のサイトカインの過剰発現は、特定の疾患および異常な病理学的状態と関連することが知られている。例えば、多すぎるTNFαは炎症および関節炎と関連する。従って、TNFα活性ならびにリガンドおよび受容体への結合を遮断する抗体は、炎症および関節炎に関連する問題を軽減するのに役立つ。同様に、特異的抗体結合によるVEGFサイトカイン活性の遮断は、血管形成を減少させることにより癌および望ましくない細胞増殖を治療するための有効な機構である。
【0164】
本発明のサイトカインはよりヒトに近く、従って他の細胞系において発現されたサイトカインよりも真正なエピトープをその表面に提示するため、それらに対して生成した抗体もin vivoで抗原としてそれらを認識し、標的化するその能力に関してより真正であるであろう。かくして、本発明の組換え生産された真正ヒトタンパク質に対して生成した抗体は、本発明の組換え生産された真正ヒトタンパク質に対して生成しなかった抗体よりも高い感受性および特異性を有する。
【0165】
かくして、本発明の方法により生産されたサイトカインに対して生成した本発明の抗体は、他の場所で生産されたサイトカインに対して生成した抗体よりも高い特異性および結合親和性を有する。
【0166】
サイトカインの場合のように、抗体はより高い親和性および特異性を有するため、特定のサイトカイン関連疾患または障害と闘うために抗体を投与する必要がある任意の治療計画においてより低い濃度または用量を使用することができる。
【0167】
当業者であれば、本発明の組換え生産された真正ヒトタンパク質を、現在利用可能なものなどの治療用抗癌抗体中に製剤化することができることを知っているであろう。すなわち、本発明の関連する組換え生産された真正ヒトタンパク質に対して生成した抗体を、限定されるものではないが、Panorex(登録商標)(エドレコロマブ)、Rituxan(登録商標)(リツキシマブ)、Herceptin(登録商標)(トラズツズマブ)、Mylotarg(登録商標)(ゲンツズマブ)、Campath(登録商標)(アレムツズマブ)、Zevalin(商標)(イブリツモマブ)、Erbitux(商標)(セツキシマブ)、およびAvastin(商標)(ベビシズマブ)などの抗体に基づく薬剤中に製剤化することができる。
【0168】
本発明の組換え生産された真正ヒトタンパク質に対して生成した抗体、またはそのような抗体のフラグメントは、免疫コンジュゲートされた抗癌抗体として有用であり得る。
【0169】
本発明の抗体はまた、心血管障害、感染症、および炎症性疾患を治療するのに有用であり;かくして、Raptiva(商標)(エファリズマブ)、Remicade(登録商標)(インフリキシマブ)、Humira(商標)(アダリムマブ)、およびXolair(商標)(オマリズマブ)などの、そのような障害および疾患を治療するために現在利用可能なものなどの薬剤中に製剤化することができる。
【0170】
本発明の抗体はまた、Orthoclone OKT3(登録商標)(ムロモマブ-CD3)、Simulect(登録商標)(バシリキシマブ)、およびZenapax(登録商標)(ダクリズマブ)のような薬剤などにおいて、移植の状況下で有用であり得る。
【0171】
従って、本発明はまた、本明細書に開示される任意のものなどの特定の疾患または障害を治療するのに有用である薬剤の調製における、本発明の組換え生産された真正タンパク質のいずれか1つに対して生成した抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)のいずれかの使用を包含する。従って、本発明は、細胞成長、細胞増殖、細胞分化、および炎症に関する癌および疾患異常を治療するための薬剤の調製のための、組換え生産された真正ヒトサイトカインの1個以上のエピトープに対して生成した抗体の使用を包含する。従って、本発明の一態様は、癌を治療するための薬剤の調製のための組換え生産された真正ヒトサイトカインに対して生成した抗体の使用である。本発明の一態様は、細胞増殖に関連する障害または疾患を治療するための薬剤の調製のための組換え生産された真正ヒトサイトカインに対して生成した抗体の使用である。本発明の一態様はまた、細胞成長に関連する障害または疾患を治療するための薬剤の調製のための組換え生産された真正ヒトサイトカインに対して生成した抗体の使用である。本発明の別の態様は、細胞分化に関連する障害または疾患を治療するための薬剤の調製のための組換え生産された真正ヒトサイトカインに対して生成した抗体の使用である。本発明の一態様は、炎症に関連する障害または疾患を治療するための薬剤の調製のための組換え生産された真正ヒトサイトカインに対して生成した抗体の使用である。
【0172】
11. 抗体および組換え生産された真正サイトカインのex vivoでの使用例および診断使用例
また、当業者であれば、本発明の真正タンパク質が診断環境においても、また特定の真正ヒトタンパク質への曝露を用いて、および用いずに候補薬剤および物質を試験するためのスクリーニングアッセイにおいて有用であり得ることを知っているであろう。本発明の組換え生産された真正ヒトタンパク質に対して生成した抗体は、本発明の組換え生産された真正ヒトタンパク質に対して生成しなかった抗体よりも高い感受性および特異性を有する。1つのそのような診断道具は、サイトカインビーズアレイである。Lambeckら、Clinical Cancer Research 13, 2385(2007年4月15日)(参照により本明細書に組み入れられるものとする)を参照されたい。その方法は、LINCOplexキットおよび関連するプロトコル(Linco research, St. Charles, MO)を用いることなどにより、少量の血清中で複数のサイトカインを同時に測定することができるものである。
【0173】
基本的には、本発明の診断または検出方法は、ELISAアッセイおよびサイトカインバイオアッセイおよび上記の小節8に記載の活性アッセイなどの滴定比較試験などにおいて、個体から取得したサンプルからの1種以上のサイトカインの発現レベルを、既知量の対照サイトカインに対して比較することが必要である。本発明に従えば、組換え生産された真正ヒトサイトカインなどの真正ヒトタンパク質は天然のサイトカインとサイズ、構造、および分子量において非常に類似しているため、それらを感受性の高い対照として用いることができる。かくして、本発明の真正ヒトサイトカインの既知の濃度に対する未知のサンプルの比較は、感受性が高く、かつ正確であろう。サイトカインレベルのその比較の結果に応じて、1種以上のサイトカインに関する個々の発現レベルが異常であるか否か、もしそうならば、その異常な発現レベルが特定の疾患もしくは障害を示唆するか、またはその診断となるかどうかに関する結論を得ることができる。
【0174】
従って、本発明に従う組換え真正タンパク質およびそれらに対して生成した抗体を、診断アッセイにおけるいくつかの異なるアレイおよび多重化アレイにおいて用いることができる。例えば、本発明は、サンドイッチアッセイ、抗原ダウンアッセイ、競合アッセイ、および逆相アッセイなどの多重免疫アッセイ設計;スライド上に被覆され、フロースルーチップ上に置かれ、多孔性フィルターに接着された膜上の96穴プレートなどのアレイ基質;タンパク質もしくは抗体を表面上に接触印刷するか、または非接触調剤において用いるアレイ製作;比色、蛍光、化学発光、表面プラズモン共鳴画像化技術などの検出方法;微小流体操作および弾性表面波プロセッシングなどのアレイプロセッシング;ならびに画像分析およびデータ獲得方法における本発明の真正タンパク質および抗体の使用を含む。
【0175】
本発明の真正タンパク質に対して生じた抗体はまた、ELISAアッセイおよびヒト組織切片に対する組織学的分析などの、in vitro試験においてサイトカインおよび関連する抗原を検出するための診断キットを製造するのに有用である。従って、本発明は、本発明のヒト細胞系により産生された1種以上のサイトカインに対して生じた1種以上の抗体を含むキットおよび試薬を包含する。
【0176】
サイトカインのその特異的受容体への結合を遮断し、その効果を中和する抗体(「中和抗体」)は、特定の疾患状態におけるサイトカイン機能の研究において非常に有用であり得る。従って、中和抗マウスおよび抗ヒトサイトカイン抗体を用いるin vitroバイオアッセイは、中和サイトカインにより誘導される細胞増殖、アポトーシス、ウイルス防御、および不適切なサイトカイン産生における特定の抗体の有効性を決定するのに有用である。www.ebioscience.com/ebioscience/appls/NU.htm#protocolAを参照されたい。
【0177】
例えば、世界保健機関の天然インターフェロンβ標準(Second International Standard for Interferon, Human Fibroblast GB 23 902 531)に対して補正された参照標準を用いて、真正組換えヒトインターフェロンβを試験し、WISH細胞および水疱性口内炎ウイルスを用いるin vitro細胞変性効果バイオアッセイにより特異的に決定された1 mgのインターフェロンβ1aあたり、約2億7000万国際単位(MIU)の抗ウイルス活性の比活性を有するRebif(登録商標)と呼ばれる組換えインターフェロン-β1a産物と比較することができる。Rebif 8.8 mcg、22 mcgおよび44 mcgは、この方法を用いる場合、それぞれ約2.4 MIU、6 MIUまたは12 MIUの抗ウイルス活性を含む。
【0178】
上記の小節に記載のように、モノクローナルおよびポリクローナル抗体の両方を、本発明の方法により産生される真正サイトカインに対して生じさせることができる。これは、高度に有効な様式で1種のサイトカインを特異的に認識し、これを標的化する抗体、ならびに様々なスプライシング機構によりin vivoで産生されたかもしれない密接に関連するサイトカイン相同体および変異体を認識し、これを標的化する抗体を生じさせることができることを意味する。
【0179】
診断キットに関しては、高親和性および特異的抗体が生じた本発明の真正サイトカイン自身を、ELISAアッセイまたは他の免疫学的キットを行うのに用いられるものなどのキットにおける滴定標準の作製に用いることができる。かくして、真正サイトカインおよびそれに対して生成した抗体を用いる場合、標準曲線は、抗体が非ヒト細胞から調製されたサイトカインに対して滴定された場合よりも、抗体-抗原結合の非常に正確な測定値である。かくして、本発明は、真正抗体、およびそのフラグメントだけでなく、抗体結合標準曲線をそのようなアッセイにおいて作製することができる標準物としての本発明の方法により生産された真正サイトカインのアリコートをも含有するキットを意図する。抗体-抗原結合の感度は高いであろう。かくして、生物学的サンプルまたは組織切片中の特定のサイトカインの存在および量の検出および定量を、これらの真正サイトカイン/抗体パートナーを用いて容易に、かつより正確に決定して、未知のサンプルを正確に比較し、定量することができる標準曲線を作製することができる。
【0180】
また、本発明の抗体を用いて、1つのアッセイにおいて、細胞溶解物、条件化培地、患者の血清、血漿、および尿などの様々な起源から複数のヒトサイトカインを同時に検出することができる、サイトカイン抗体アレイを調製および構築することができる。そのようなアレイは、特に、本発明の抗体を用いる場合、pg/ml範囲などの非常に低い濃度のサイトカインタンパク質の検出を可能にする高感度を有する。
【0181】
また、本発明の真正ヒトタンパク質および抗体をスクリーニングアッセイにおいて用いて、いくつかの方法で、候補物質、化学物質、化合物、およびそれらと相互作用する他のタンパク質を同定することができる。例えば、本発明の組換え生産された真正ヒトサイトカインを単離、精製した後、特定の候補物質に直接曝露し、続いて、当業者には公知の様々なアッセイのいずれか1つの下で、および上記のアッセイの小節で同定されたようにモニターして、任意の相互作用がタンパク質と候補物質との間で生じたかどうかを決定することができる。例えば、様々な化合物に曝露された場合、阻害剤のIC50値を同定し、記録するために組換え生産されたキナーゼp38αを用いる1つのそのようなスクリーニングアッセイの結果を関連づける表4も参照されたい。その実験は本明細書の他の場所により詳細に記載されているが、本発明のタンパク質または抗体をex vivoスタイルのスクリーニングアッセイにおいて用いることができる例として本明細書に記載されている。この現在の研究は、ヒト細胞中で産生されたヒトタンパク質キナーゼp38αの特性が非ヒト細胞型とは異なることを示している。薬剤スクリーニングのために高い真正性を有するヒトキナーゼを使用することにより、研究者は偽陽性のリードの購入および有望な標的の喪失を回避することができる。
【0182】
本発明の方法およびベクターにより生産されるタンパク質および抗体を、それら自身を助けるための試薬として用いることもできる。すなわち、本発明の組換え生産された真正サイトカインを、例えば、培養中の細胞成長および生存能力を促進するのを補助するためにサイトカインを添加することにより細胞培養物中で使用し、上記のように、本発明のベクターを、個体の細胞を用いて特定のタンパク質を発現させるための遺伝子療法計画において使用することができる。
【0183】
本明細書に開示される各参考文献および引用は、その全体が参照により本明細書に組み入れられるものとする。以下の実施例は単に例示的なものであり、いかなる意味でも本発明の範囲を限定するものではない。
【0184】
(実施例)
【実施例1】
【0185】
サイトカインのクローニング
遺伝子工学の当業者にとって利用可能な様々な方法により、サイトカインのクローニングを達成することができる。例えば、特定のサイトカイン発現が豊富なヒト組織サンプル(例えば、リンパ球)から全RNAまたはポリA RNAを精製し、遺伝子特異的RT-PCRのための鋳型として用いることができる。さらに、予め作製したcDNAライブラリーを商業的供給源から購入し、PCRを用いてサイトカインcDNAを直接増幅することができる。さらに、合成オリゴヌクレオチドを構築して、遺伝子受託番号と共に全米バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)で入手可能な配列情報に基づいて、サイトカインの合成遺伝子を作製することができる。さらに、完全長cDNAクローンを、例えば、IMAGEクローンコンソーシアム(image.llnl.gov/)またはOpenbiosystems (Huntsville, AL)から取得することができる。遺伝子受託番号を表3に提示する。
【0186】
サイトカインは、そのN末端にシグナルペプチドを含み、典型的には分泌形態では失われ、当業者には利用可能な多くの道具により同定することができる(例えば、Swiss-Protタンパク質知識ベース)。いくつかのサイトカインは、利用可能な道具により同定することもできる様々な転写により、いくつかの変異体を有する。分泌されたサイトカインの配列は、上記の第10節に列挙されている。
【0187】
様々なシグナルペプチドを含むサイトカインの迅速なクローニングを容易にするために、哺乳動物細胞(例えば、CHOおよびHEK293)中での分泌される組換えタンパク質の産生にとって好適であるpSecTag2c (Invitrogen, Carlsbad CA)を部位特異的突然変異誘発(Quick Change, Stratagene, Carlsbad, CA)によりpHZsecに改変して、突然変異誘発プライマーSecTag2c-srfIf (TCCACTGGTGACGCGCCCGGGCCGGCCAGGCGCGCC) (配列番号27)およびSecTag2c-srfIr (GGGGCGCCTGGCCGGCCCGGGCGCGTCACCAGTGGA) (配列番号33)を用いてIgκリーダー配列と読み枠を合わせたSrf I制限部位を導入した(以下の図解を参照)。切断部位の図解については図27を参照されたい。
【0188】
分泌形態のサイトカイン遺伝子を、設計されたプライマーを含むClontech社(Mountain View, CA)製のIn-Fusion(商標)PCR Cloning Kitsを用いて、プラスミドpHZsec中のSrfI部位に翻訳的に融合した。
【0189】
ベクター
(A)pHZsec:従来のCMV発現ベクター対照
ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターに基づくベクターは、典型的には哺乳動物細胞発現系において用いられるベクターの設計に用いられている。例えば、tools.invitrogen.com/content/sfs/productnotes/F_051025_MammalianExpressionVectors-TS-TL-MKT-HL.pdfで入手可能なInvitrogen社の製品ノート「Mammalian Expression Systems」(参照により本明細書に組み入れられるものとする)を参照されたい。
【0190】
(B)pHZhag:ヒトプロモーターとヒトイントロンを含むベクター
本明細書で設計されるpHZhagベクターは、ヒトβ-アクチンプロモーターとヒトβ-グロビンイントロンからなる。pHZhagベクターは、従来のCMVに基づくベクターよりも非常に高いレベルで所望のポリヌクレオチドまたは遺伝子配列を発現する;そして予想外にも、pHZhagベクターを発現する細胞は、より高い細胞生存能力を有し、精製の間に得られる夾雑バックグラウンドタンパク質がより少ない。
【0191】
サイトカインTGF-β1の発現プロフィールを、新規に構築されたpHZhagベクターとpHZsecベクターを用いてヒト細胞中で発現させた後に比較した。それぞれ、図11aおよび11bのpHZ-TGF-β1およびpHZhag-TGF-β1に関する発現の結果を参照されたい。それぞれのベクターでトランスフェクトされた細胞系が比較可能な細胞密度および生存能力に達した時、TGF-β1の発現レベルを比較した。その結果、pHZhagベクターでトランスフェクトされた細胞が、pHZsecに関する発現レベルよりも2〜3倍高くTGF-β1を発現することが示された。
【0192】
より高い発現に加えて、pHZhagでトランスフェクトされた細胞は、pHZsecでトランスフェクトされた細胞とは対照的に、7日目〜9日目の間のより高い細胞生存能力を有し、その生存能力は同じ期間に鋭く低下することが予想外にも観察された。
【0193】
詳細に詰めるために、典型的には培養細胞を、生細胞の細胞密度(「VCD」- 1ミリリットルあたり100万個の細胞)が300万個の細胞/mL(図12a)に達し、生存能力(%)が約60%(図12b)に達する7日目または8日目に収穫する。しかしながら、pHZhagでトランスフェクトされた細胞は10日目でも60%を超える生存能力を保持し(図12d)、300万個の細胞/mLを超えるVCDを有していた(図12c)。これは、pHZhagベクターに関する新しく予想外の知見である。
【0194】
(C)pHZAおよびpHZI:ヒトシグナルペプチド配列を含むベクター
高度に真正なヒトタンパク質を産生する高発現ベクターの設計における次の工程は、CHO細胞中で広く用いられているマウスIgκ鎖リーダーシグナルペプチド配列とヒトタンパク質シグナルペプチドとの置換であった。本明細書に示される結果は、ヒトシグナルペプチド配列の使用により発現レベルが少なくとも2倍改善されることを示している。
【0195】
候補シグナルペプチド配列を、フィブリノゲンAa鎖(hFbgA)、フィブリノゲンBb鎖(hFbgB)、フィブリノゲンg鎖(hFbgG)、およびヒト免疫グロブリンスーパーファミリー8シグナルペプチド前駆体(hIg8)をコードする遺伝子から選択した。タンパク質インフォマティクス分析により、良好なシグナルペプチドが高い含量のロイシン(L)を有することが示された。具体的には、hIg8シグナルペプチド前駆体は、高含量のロイシン残基(37%)および5個の保存的ロイシン(LLLLL)を有するため、このシグナルペプチドをヒト免疫グロブリンスーパーファミリー1、2、3および6のシグナルペプチドと比較した後、hIg8シグナルペプチド前駆体を選択した。
【0196】
それぞれのシグナルペプチドをコードする配列をpHZhagベクター中にサブクローニングし、TGFβ1の発現をモニターした。フィブリノゲンAa鎖シグナルペプチドを含むベクターpHZAがTGFβ1を良好に発現した。図13a、レーン4、5および6を参照されたい。ヒトIg8シグナルペプチド前駆体を発現するpHZIベクターもTGFβ1を良好に発現した。図13a、レーン7を参照されたい。
【0197】
pHZA-TGFβ1を好適な細胞密度まで培養し、その細胞生存能力をpHZ-TGFβおよびpHZhag-TGFβ1のものと比較可能になるように記録した。pHZIおよびpHZA-TGFβ1を発現する細胞は、pHZ-TGFβ1についてのものよりも2倍高いレベルのTGFβ1の発現を有していた。図13bを参照されたい。
【0198】
(D)pHZhagAおよびpHZhagI:ヒトプロモーター、ヒトイントロン、およびヒトシグナルペプチド配列を含むベクター
ヒトβ-アクチンプロモーター、ヒトイントロン配列、および上記のヒトシグナルペプチドのいずれか一方(hFbgAシグナルペプチドまたはhIg8シグナルペプチド)を含むベクターを本明細書で設計した。
【0199】
pHZhag-TGFβ1とpHZhagI-TGFβ1を比較するデータは、pHZhag-TGFβ1のものよりも約2倍高く、pHZsecベクターよりも4倍高いpHZhagI-TGFβ1の発現を示している。以下の比較発現研究を、命名された構築物:
プロモーター比較:pHZ-TGFβ対pHZhag-TGFβ1;
シグナルペプチド比較:pHZ-TGFβ1対pHZI-TGFβ1およびpHZhag-TGFβ1対pHZhagI-TGFβ1またはpHZhagA-TGFβ1;ならびに
プロモーターとシグナルペプチドの組合せ比較:pHZ-TGFβ1対pHZhagI-TGFβ1またはpHZhagA-TGFβ1、
を用いて実施することができる。
【0200】
これらのベクターの図式表示については図14を参照されたい。
【実施例2】
【0201】
HEK細胞の調製
ヒト胚性腎細胞を、推奨される培地(典型的には、10%ウシ胎仔血清/2 mM L-グルタミン/10 mM HEPES/1x MEM非必須アミノ酸)を含むDMEM培地)を含む100 mmペトリ皿上に播種した。細胞を3〜4回の継代の間保持して、プレートに付着した集団を選択した。次いで、プレート上に付着した細胞を、様々な無血清培地(293 SFM II、CD 293、FreeStyle 293、Hybridoma-SFM(Invitrogen社製);Ex-Cell 293 (JRH Biosciences))に、プレート中で4日間曝露して、無血清培地中で増殖するか、または生存する細胞を選択した。次いで、これらの細胞を10%血清培地中に戻し入れて、作業用細胞バンクを製造した。
【0202】
(A)無血清かつ化学規定培地に適合させた細胞系
HZ-293TS:HEK293T(または293T)は、HEK293細胞の遺伝的変異体(ATCC CRL-11268)である。この細胞系を、製造業者の試薬(Invitrogen)を用いて無血清かつ化学規定培地に適合させた。懸濁液および完全に無血清かつ化学規定培地へのHEK293T細胞の適合は新規である。HZ-293TSは、懸濁培養物中で少なくとも約500〜600万個の細胞/ml(VCD)に達する(図15b、表)。HZ-293TSと命名されたヒト細胞系は、 付けでATCC生物寄託受託番号 の下で寄託されており、当該受託番号を有する。
【0203】
HZ-293TS細胞系を、プレート上への付着物として血清培地中で、ならびに振とうフラスコ、スピナー、およびバイオリアクター中の懸濁液として無血清かつ化学規定培地中で培養することができる。この特徴により、HZ-293TS細胞を血清培地中で単層として播種した後、トランスフェクトすることができる。次いで、トランスフェクトされた細胞は直接懸濁液に行くか、またはシャトル系などの懸濁培養の前にプレート上で選択することができる。
【0204】
懸濁培養に利用できると報告された293細胞系は3種類あった:HEK293S、FreeStyle293、293EBNA。3種のうち、HEK293SおよびFreeStyle293は、目的のプラスミドのエピソーム増幅を可能にする293Tおよび293EBNAよりも非常に低い組換えタンパク質発現を有することが知られたHEK293細胞系である。FreeStyle293および293EBNAを超えるHZ-293TSのさらなる利点は、目的の組換え体を安定に発現する選択された細胞は多用途の拡張性および連続培養を有する(発現レベルを失うことなく20回を超える継代が可能)が、懸濁液中のトランスフェクトされた293EBNAおよびFreeStyle293は短期間のうちでは大抵は1回の収穫であるということである。組換えタンパク質発現レベルに関してHZ-293TSの特徴がどのようなものであるかを評価するために、ヒトFGF8bサイトカインをシャトル方式を用いてHZ-293TSにトランスフェクトし、その発現レベルを以下の小節2に記載の現在のHEK293T系に由来するものと比較した。
【0205】
HZ-293S:無血清かつ化学規定培地に適合させたHEK293細胞系(ATCC CRL-1573)である。この細胞系は組換えタンパク質産生についてまだ試験されていない。
【0206】
HZ-293EBNA:無血清かつ化学規定培地に適合させた293EBNA細胞系(Invitrogen R6200&7)である。293EBNAはHEK293Tと同様、エピソーム増殖能を有するが、プラスミド中にOriP(EBVの複製起点)を必要とし、この細胞系のさらなる使用を制限してきた。この細胞系は組換えタンパク質発現についてまだ試験されていない。
【0207】
(B)組換えサイトカイン産生へのHZ-293TSの適用
懸濁培養物中での維持および単層培養への適合が容易なため、ヒトFGF8bサイトカインをコードするプラスミドを発現させるために、HZ-293TS細胞系を、その組換えタンパク質産生能力についてHEK293Tのものと比較して試験した。両方の細胞系が比較可能な細胞密度および生存能力に達する時、HZ-293TS細胞中でのサイトカイン発現は予想外にも、293Tのものよりも2〜3倍高かった。かくして、HZ-293TSは293Tとは非常に異なる細胞系になり、それがより高い組換えサイトカイン発現の理由であり得る。
【0208】
限定されるものではないが、アクチビンA、塩基性FGF、IL-1β、IL-23、VEGF165、およびTGFβ1の発現などの他のタンパク質が、HEK293T細胞中よりも本発明のHZ-293TS細胞中で非常に高いレベルで発現された。例えば、塩基性FGFおよびTGFβ1について図面に提示された比較データを参照されたい。
【実施例3】
【0209】
トランスフェクション
トランスフェクションの1日前に、細胞の集密な100 mm皿を5個の皿に移動させた(70〜80%集密度)。100 mm皿のトランスフェクションには、製造業者のマニュアルに従えば、補給物質を含まない500μlのDMEM培地、10μgのプラスミドDNA、および特定量のトランスフェクタント(FuGene 6、FuGene HD(Roche社製);Lipofectamin、Lipofectamin 2000、293fectin (Invitrogen);Polyetheleneimine)が必要である。トランスフェクション材料の混合物を滴下しながら培養皿に添加した。
【実施例4】
【0210】
抗生物質選択
48時間後、トランスフェクトされた細胞をトリプシン処理後に遠心分離により収穫した。細胞ペレットを5 mlの新鮮な10%血清培地中に再懸濁した。100μlの再懸濁した細胞を、特定の濃度の抗生物質(例えば、400μg/mlもしくは800μg/ml)(ネオマイシン(G418)、ヒグロマイシン、ゼオシン、ブラスチシジン)を含む2 mlの血清培地を含む6穴プレートに添加した。
【0211】
6穴プレート中の培地を、トランスフェクトされた細胞が細胞コロニーとして増殖するが、トランスフェクトされていない細胞が死ぬまで2週間にわたって3〜4日毎に抗生物質を含む新鮮なものと交換した。細胞コロニーをトリプシン処理を用いて収穫し、1/4の濃度の抗生物質を含む新鮮な血清培地を含む新しいプレート中に移し、2週間増殖させた。
【実施例5】
【0212】
懸濁液適合
一度、選択された細胞がプレート中で集密まで増殖したら、細胞をトリプシン処理してプレートから剥離させた。プレート2個分の量の細胞をトリプシン処理後に収穫し、1%の血清および抗生物質を含有する10 mlの無血清培地(例えば、CD293)中に再懸濁した。適合には最大で8週間かかり、細胞の状態に応じて3〜4日毎に培地を交換した。次いで、細胞を無血清培地と抗生物質のみに移した。この適合には最大で4週間かかり、細胞の状態に応じて3〜4日毎に培地を交換した。一度、懸濁液適合されたら、細胞を生産のためにより大規模まで連続的に増殖させ、将来の生産のために10%のDMSOを含む新鮮な培地中で凍結保存した。
【実施例6】
【0213】
サイトカインを発現する安定なHEK293細胞のトランスフェクションおよび確立
製造業者の推奨に従ってトランスフェクタントFuGene 6 (Roche)を用いて、100 mmペトリ皿中、組織内で無血清適合させた293細胞系、またはその誘導体(例えば、HEK 293T、HEK 293S、およびHEK 293 EBNA)中にサイトカイン発現プラスミドをトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞を、10%BCS、1%MEM非必須アミノ酸、1%ペニシリン-ストレプトマイシンおよび2 mM L-グルタミンを補給したDMEM培地中で増殖させた。48時間後、トランスフェクトされた細胞をトリプシン処理後の遠心分離により収穫した。細胞ペレットを5 mlの新鮮な10%血清培地中に再懸濁した。100μlの再懸濁された細胞を、特定の濃度の抗生物質(例えば、400μg/mlまたは800μg/mlのゼオシン)を含む2 mlの血清培地を含む6穴プレート中に添加した。
【0214】
6穴プレート中の培地を、トランスフェクトされた細胞が細胞コロニーとして増殖するが、トランスフェクトされていない細胞が死ぬまで2週間にわたって3〜4日毎に抗生物質を含む新鮮なものと交換した。細胞コロニーをトリプシン処理を用いて収穫し、1/4の濃度の抗生物質を含む新鮮な血清培地を含む新しいプレート中に移し、2週間増殖させた。
【0215】
一度、選択された細胞がプレート中で集密まで増殖したら、細胞をトリプシン処理してプレートから剥離させた。プレート2個分の量の細胞をトリプシン処理後に収穫し、1%の血清および抗生物質を含有する10 mlの無血清培地(例えば、CD293)中に再懸濁した。適合には最大で8週間かかり、細胞の状態に応じて3〜4日毎に培地を交換した。次いで、細胞を無血清培地と抗生物質のみに移した。この適合には最大で4週間かかり、細胞の状態に応じて3〜4日毎に培地を交換した。一度、懸濁液適合されたら、細胞を生産のためにより大規模まで連続的に増殖させ、将来の生産のために10%のDMSOを含む新鮮な培地中で凍結保存した。
【実施例7】
【0216】
サイトカインの精製
ヒトサイトカインは、糖鎖付加、リン酸化、および重合などの複雑な翻訳後分子機構により修飾され、ならびに多数のアミノ酸配列に基づいてその固有の物理化学的特性を改変し、特にタグを用いないその精製を困難にする複雑な切断および転換プロセスにかける。本発明は、最大で3つの工程の従来のクロマトグラフィーを使用し、SDS-PAGE上で95%を超える純度が得られる効率的な精製スキームの開発を包含する。この精製スキームは、固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィーを用いる捕捉、次いでイオン交換クロマトグラフィーを用いる精製および研磨からなる。
【0217】
6日間の増殖の後、無血清培地の上清を遠心分離により回収し、サイトカインのさらなる生産のために新鮮な無血清培地中に細胞ペレットを再懸濁した。サイトカインの発現を、既知の分子量によるクマシー染色を用いてSDS-PAGEゲル上で、またはウェスタンブロットを用いてPVDF膜上で同定した。サイトカインを捕捉するために、まず上清を固定化金属アフィニティクロマトグラフィー(IMAC)カラム上に載せた。その特性に基づいて、いくらかのサイトカインはIMACカラム上に結合したが、いくらかは流出物中に見出された。次の精製工程として、サイトカイン画分のプールを、適切なバッファー条件にバッファー交換した後、イオン交換クロマトグラフィー(IEX)カラム上に載せた。最後に、研磨工程として、サイトカイン画分のプールを別のIEXまたは異なるアフィニティクロマトグラフィー(例えば、ヘパリン樹脂)カラム上に載せた。
【0218】
最大3回のクロマトグラフィー工程の後、サイトカインは、SDS-PAGEゲル上でのクマシー染色(図7)および利用可能な抗体を用いるウェスタンブロット(図8)により判定したところ、95%を超えて純粋であった。次いで、純粋なサイトカインを、当業者には利用可能な公知の方法(例えば、Bradfordアッセイ、ゲル上でのクマシー染色、およびOD280 nm)を用いて定量した。定量の後、サイトカインを、製造業者のマニュアルに従ってLonza (Allendale, NJ)社製の内毒素検出キットにより内毒素レベルを分析し、必要量に基づいて分注し、商業化のために凍結乾燥した。
【0219】
本発明のヒト細胞発現系を用いて組換え生産されたGM-CSF、IL-4、およびIL-6は、様々な糖鎖付加度を有する糖タンパク質である。開示される本発明の効率的な精製スキームにより、様々な異種性糖鎖を有するGM-CSF(図17A)、ならびに異なる糖鎖を有するIL-4およびIL-6(図17B&C)が高純度で得られた。また、この精製スキームを真正ホモダイマーNoggin精製物を精製するためにも適用した(図17D)。
【実施例8】
【0220】
活性アッセイ
サイトカインの生物学的活性を、サイトカインの性質に基づいて、用量依存的細胞傷害性(例えば、TNFα)、増殖の刺激(例えば、IL-2)、または有効な細胞に対する他のサイトカインにより誘導される増殖の阻害(例えば、TGF-β1)に関してED50により測定した。図6A-Mを参照されたい。
【実施例9】
【0221】
本発明のヒト細胞系および非ヒト細胞から発現されたサイトカインの比較分析
本発明の方法に従って発現されたサイトカインと、非ヒト細胞中で発現されたものとの間の糖鎖付加の純度および程度を比較するための実験を行った。図7および8は、非還元および還元非ヒト細胞に対して比較した非還元および還元ヒト細胞中での様々なサイトカインのSDS-PAGEゲル分析の対照比較を示す。そのような様式で比較されたサイトカインとしては、EPO、Noggin、G-CSF、SCF、GM-CSF、ソマトトロピン、IL-2、TGFβ1、IL-4、TNFα、IL-6、VEGF-165、およびM-CSFが挙げられる。図8は、本発明のヒト発現系と非ヒト発現系との間のこれらの同じサイトカインのウェスタンブロット分析の比較結果を示す。このデータは、本発明の安定なヒト細胞培養物が、天然のヒトサイトカインと同等の分子量および真正の三次元構造および活性を有し、非ヒト細胞から発現されたサイトカインのサイズおよび構造とは異なるサイトカインを発現したことを示している。さらに、真正サイトカインに対して生じた抗体は、真正のエピトープ表面の提示に起因して、高い親和性結合特性を有する。
【実施例10】
【0222】
VEGF165とIL-4の比較データ
VEGF165は、正常な血管形成および病的な血管形成において大きな役割を果たしている。VEGFに特異的なモノクローナル抗体を用いる処理によるVEGF活性の阻害はin vivoで腫瘍増殖を抑制することができることが証明されている。現在、市販のVEGF165タンパク質試薬は大腸菌および昆虫細胞などの非ヒト細胞から生産されている。本明細書に開示される本発明の方法は遺伝子操作されたヒト293細胞からVEGF165を生産するのに用いられた。図9は、大腸菌とヒト細胞との間で発現されたVEGF165の活性の比較を示し、大腸菌により発現されるタンパク質の分子量はモノマーで18 kDである。これは糖鎖付加に起因して28 kDのバンドとして移動する本発明のVEGF165と同等である。ヒトおよび非ヒト細胞系におけるVEGFの比較活性については図9を参照されたい。
【0223】
本発明の安定なヒト細胞により産生されたVEGF165の生物活性を、ヒト臍帯静脈内皮細胞の増殖を誘導するその能力により決定したところ、VEGF165は大腸菌により発現されるタンパク質よりも6倍活性が高いことが示された。
【0224】
IL-4は、アレルギー性炎症および喘息の発生において重要な役割を果たしている。現在、市販のIL-4タンパク質試薬は大腸菌から生産されており、14 kDの分子量を有する(図7C)。これは、糖鎖付加に起因して19 kDの主要なバンドとして移動するヒト細胞に由来するIL4と同等である。IL-4の生物学的活性を、ヒトTF-1細胞の増殖の用量依存的刺激により決定した。図10に示されるように、IL4は大腸菌により発現されるサイトカインよりも4倍高い効力を有する。ヒトおよび非ヒト細胞系におけるIL4の比較活性については図10を参照されたい。
【0225】
大腸菌中で産生されるサイトカインは糖鎖付加されておらず、秘密の、または通常は隠れたエピトープを露出し得る。従って、抗体は大腸菌により産生されるタンパク質と比較して天然のヒトタンパク質に対する異なる親和性を有し得る。実際、ウェスタンブロット分析は、昆虫細胞に由来する完全長タンパク質に対して生じたモノクローナル抗体が、大腸菌ならびに微小凝集物に対応し得る他の高度に反応性の種に由来するVEGF165を認識することを示している(図8C)。対照的に、ヒト細胞型についてはただ1つのバンドが認められる。大腸菌に由来する完全長タンパク質に対して生じたモノクローナル抗体は、還元的および非還元的条件下で大腸菌に由来するタンパク質を認識する。対照的に、ヒト細胞型については、非還元的条件下でそのタンパク質のみが検出される。
【実施例11】
【0226】
真正TGF-β1
トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)は、細胞スイッチとして作用し、免疫機能、増殖および上皮間葉移行を調節する高度に多面的なサイトカインである。これらのタンパク質は前駆体として産生される。フリン様転換酵素はプロタンパク質を加工して、N末端の潜伏関連ペプチド(LAP)およびC末端の成熟TGF-βを生成する。LAPとTGF-βのジスルフィド結合したホモダイマーは分泌後にも非共有結合したままであり、小さい潜伏TGF-β複合体を形成する。LAPの潜伏TGF-β結合タンパク質への共有結合は、細胞外マトリックスと相互作用し得る大きい潜伏複合体を作製する。市販のTGF-βタンパク質は、CHO細胞中で発現される組換えタンパク質として、またはヒト血小板から精製された天然タンパク質として生産されている。複雑なタンパク質溶解後修飾に起因して、TGF-βの収率は低く、製品は経済的なバルク量では入手できない。効率的な本発明のヒト細胞に基づく発現系が、様々なヒトサイトカインの拡張可能な生産のために本明細書で開発されており、遺伝子操作されたヒト293細胞から高度に真正なヒトTGF-β1、β2およびβ3タンパク質を生産している。これらのタンパク質は、25 kDの高度に精製されたジスルフィド結合したダイマーであり、大規模で費用効果的に生産することができる(図18B)。
【0227】
IL-17を産生するCD4+ T細胞(Th-17細胞)は、Th1とは異なる経路、およびTh2細胞分化経路に沿って発生するTh細胞のユニークなサブセットとして同定されている。この知見は、免疫調節、宿主防御および自己免疫疾患の病因に刺激的な新しい洞察を提供した。最近、ヒトTh17分化を駆動するのにIL1β、IL6およびIL23が重要であることが示された。しかしながら、マウスTh17細胞の分化にとって重要であるTGF-β1は必要ではないばかりか、ヒトTh17分化を阻害すると報告されている(McGeachy & Cua (2008) Immunity 28:445、Chen & O'Shea (2008) Cytokines 41:71)。この研究においては、健康なドナーから単離された全CDE4+細胞を、本発明のヒト細胞発現系および昆虫細胞もしくは細菌発現系に由来するTh17分極サイトカインの存在下、10μg/mLのプレートに結合した抗CD3および10μg/mlの可溶性抗CD28で刺激した。5日後、ELISAによるIL-17の測定のために上清を収穫した。
【0228】
その結果は、組換え生産された真正ヒトIL1β、IL6およびIL23が、IL-17分泌の誘導において有意により有効であることを示している。より重要なことに、それは、組換え生産された真正ヒトTGF-β1もその効果を増強するのに有効であることを証明している。対照的に、昆虫細胞に由来するこのサイトカインはわずかな効果しか示さなかった。この結果は、より真正なサイトカインを用いることにより、Th17細胞分化をより効率的に誘導し、ヒトの生物プロセスのより正確な科学的理解をもたらすことができる。本発明のヒト細胞発現系に由来するTGF-β1、TGF-β2、およびTGF-β3を用いて同じ条件下で行った別々の研究(図18B)により、3種全ての生物学的に関連するサイトカインがTh17細胞分極を効率的に誘導することができることが証明された(図22E-G)。さらに、別の研究において、市販のTGF-β1サイトカインのうち、真正なTGF-β1(図22H)のみが、IL-17およびIFN-γを産生する細胞の集団に対するフローサイトメトリー分析(図22H)により提供されたナイーブなT細胞(Th0)のTh17細胞への分化におけるヒト血小板由来天然TGF-β1(図22Hにおける「陽性対照」)と一致した。
【実施例12】
【0229】
真正VEGF
VEGF165は、システインノット増殖因子スーパーファミリーの一員である。このサイトカインは、内皮細胞の増殖および生存を刺激し、血管形成および血管透過性を促進する。血管化された組織中で発現された場合、VEGF165は正常な血管形成および病的な血管形成において大きな役割を果たす。VEGF165に特異的なモノクローナル抗体を用いる処理によるVEGF165活性の阻害はin vivoで腫瘍増殖を抑制することができることが証明されている。
【0230】
現在、市販のVEGF165タンパク質試薬は大腸菌および昆虫細胞などの非ヒト細胞から生産されている。本明細書に開示される真正VEGF165は遺伝子操作されたヒト293細胞から生産されたものである。大腸菌により発現されるタンパク質は、モノマーとダイマーの混合物であり、SDS-PAGEで18および38 kDの分子量を有する。これは、糖鎖付加およびダイマー化に起因して45 kDの糖鎖バンドとして移動する組換え生産された真正ヒトVEGF165と同等である(図19)。組換え生産された真正ヒトVEGF165の生物活性を、ヒト臍帯静脈内皮細胞の増殖を誘導するその能力により決定した。これらの結果は、組換え生産された真正ヒトVEGF165の活性が、同じバイオアッセイ条件下で大腸菌により発現されたタンパク質の活性よりも10倍高い:組換え生産された真正ヒトVEGFタンパク質のED50が1 ng/mLであるのに対して、大腸菌により発現されたものは10 ng/mLである(図9)ことを示している。
【実施例13】
【0231】
真正EPO
エリスロポエチン(EPO)は、トロンボポエチンと関連する34 kDの糖タンパク質ホルモンである。このタンパク質は、初期の赤血球前駆体のアポトーシスを防止することにより赤血球形成を促進する。in vivoでの生物学的活性のためにはEPOの糖鎖付加が必要であることが示されている。現在、市販の組換えヒトEPOタンパク質はCHO細胞から生産されている。これらの組換えタンパク質は、SDS-PAGEゲル上で40 kDのより高い見かけの分子量を有し(図20A)、より低い含量の中性グリカンを有する(図20B)ことにより天然のヒトEPOと異なる。組換え生産された真正ヒトEPOは、本明細書では遺伝子操作されたヒト293細胞から生産されたものである。文献(Skibeliら(2001) Blood 98:3626)中の天然ヒトタンパク質と同様、組換え生産された真正ヒトEPOはより低い見かけの分子量および実質的により高い含量の中性グリカンを示す。さらに、組換え生産された真正ヒトEPOは、CHO細胞により産生された型よりも豊富であり多様なグリカンプロフィールを有する。組換え生産された真正ヒトEPO中で最も豊富なグリカンは、テトラ-アンテナ複合体型であるが、CHO EPO中のものは伸長した2アンテナ複合体型である(図20C)。
【実施例14】
【0232】
真正IL-23
現在、市販の組換えIL-23サイトカインは、昆虫細胞発現系からヘテロダイマーまたは融合タンパク質として生産されている。組換え生産された真正ヒトIL-23は、本明細書では遺伝子操作されたヒトHEK293細胞の安定な細胞培養物中で生産されている。このタンパク質は、55 kDのジスルフィド結合したヘテロダイマーとして発現され、安定な培養物の拡張性に起因して、費用効果的に生産し、効率的に精製することができる(図18A)。
【0233】
IL-17を産生するCD4+ T細胞(Th17細胞)は、Th1およびTh2細胞分化経路とは異なる経路に沿って発生するTヘルパー細胞のユニークなサブセットとして同定されている。この知見は、免疫調節、宿主防御および自己免疫疾患の病因に刺激的な新しい洞察を提供した。最近、ヒトTh17分化を駆動するのにTGF-β、IL-1β、IL-6およびIL-23が重要であることが示された(Chen & O'Shea (2008) Cytokines 41:71)。まず、ヒトおよび昆虫細胞に由来するIL-23の生物活性を、10 ng/mlのPMAで活性化されたマウス脾臓細胞からのIL-17の用量依存的分泌により決定したところ、組換え生産された真正ヒトIL-23の活性が10倍高いことが示された(図21A)。この活性を、健康なドナーから単離され、Th17分極サイトカインの存在下、10μg/mlのプレート結合抗CD3および10μg/mlの可溶性抗CD28で刺激したヒトCD4+細胞を用いてさらにアッセイした。5日後、ELISAによるIL-17の測定のために上清を収穫した。その結果は、組換え生産された真正ヒトIL-23が、2つの独立した試験において、IL-17分泌を誘導するのに100倍より強力であり、最大の誘導は、組換え生産された真正ヒトIL-23を用いた場合は0.1 ng/mlで達成されたのに対して、昆虫細胞により産生されたIL-23を用いた場合は10 ng/mlで達成されたことを示している(図21B)。これらの結果は、真正ヒト細胞により発現されたサイトカインが、生理的に関連する濃度でTh17細胞分化を誘導することができることを示している。
【0234】
IL-23は、IL12p40とIL23p19の糖鎖付加されたヘテロダイマータンパク質である。現在、市販の組換えIL-23サイトカインは昆虫細胞発現系に由来するヘテロダイマータンパク質または融合タンパク質として生産されている。真正IL-23は本明細書では遺伝子操作されたヒトHEK293細胞の安定な細胞培養物から生産されている。このタンパク質は55 kDの真正なジスルフィド結合したダイマーとして発現され、安定な培養物の拡張性に起因して、費用効果的に生産することができる(図18A)。
【実施例15】
【0235】
真正GM-CSFおよびIL-4は樹状細胞の培地交換不要分化を可能にする
精製されたヒト末梢血単球を、37℃、5%CO2を含有する加湿された空気中で合計7日間、5 x 105細胞/mlでG4 DC培地(以下に特定されるもの)中で培養した。HZ G4 DCを培地交換せずに5 ng/mlの組換え生産された真正ヒトGM-CSFおよびIL-4で用いたが、EC G4 DCを日常的に用いた(50 ng/mlの大腸菌GM-CSFおよびIL-4を3日目および5日目に50%の培地交換と共に用いた)。6日目に、リポ多糖(LPS)をウェルの半分に添加して、DC成熟を誘導したが、他の半分のウェルを偽処理として用いた。培養の終わりに(7日間)、サイトカイン測定のために上清を収穫したが、得られたDCをフローサイトメトリーによる表面マーカー、FITC-デキストランの食作用による抗原取込み、および同種異系MLRによる抗原提示能力について分析した。
【0236】
選択されたサイトカインおよびケモカインのDC生成のプロフィールを、Pierce Cytokine Arrayにより測定した。データは、HZ G4 DC(培地交換せずに5 ng/ml)の存在下で生成されたDCが、成熟の前後にEC G4 DC(培地交換せずに50 ng/ml)の存在下で生成されたDCと類似するサイトカインおよびケモカインのプロフィールを示したことを示している(図23A)。LPS成熟の前後にHZ G4 DCまたはEC G4 DCの存在下で分化したDCを、様々な比率の同種異系ヒト末梢血T細胞と共に5日間、3回培養した。培養物を、細胞収穫前の最後の18時間、3H-TdR(0.5 uCi/ウェル)でパルスした。Tリンパ球の増殖を、βシンチレーション計測により測定した。図23Bにより示されるように、HZ G4 DCまたはEC G4 DCの存在下で分化したDCは、特にDC:T比が低い場合、同種異系T細胞の増殖を刺激する能力が同様に低いことを示している。LPSにより成熟を誘導した後、両条件下で分化したDCは同種異系T細胞の増殖を刺激するその能力を増加させた。HZ G4 DCの存在下で生成されたDCは、この点でEC G4 DCの存在下で生成されたDCよりもさらに良好であるようであった(図23B)。従って、HZ G4 DCの存在下で分化したDCは、EC G4 DCの存在下で分化したDCと同様か、またはそれより良好な抗原提示能力を有していた。
【実施例16】
【0237】
真正Noggin
Nogginは、骨形態形成タンパク質(BMP)のアンタゴニストである分泌型ホモダイマー糖タンパク質である。フィーダー層または条件化培地を含まない(しかし、塩基性FGFを添加する)ヒト胚性幹細胞(hES)の培養の間に、Nogginの添加により、幹細胞はその未分化の多能状態を維持することができる。市販のNoggin製品は様々な形態で生産されているが、そのいずれも真正ではない:例えば、大腸菌中で発現された非糖鎖付加タンパク質;NS0中で発現された糖鎖付加されたFc-融合タンパク質。組換え生産された真正ヒトNogginは、本明細書では安定な遺伝子操作されたヒト293細胞発現系中で生産されている。このタンパク質は真正な糖鎖付加されたジスルフィド結合したダイマーとして発現される。組換え生産された真正ヒトホモダイマー性Nogginは、陰性および陽性対照(図24、レーン1および2)と比較して10 pg/ml濃度で処理(図24、レーン3)および20 pg/ml濃度で処理(図24、レーン4)した場合、未分化のhES細胞のマーカーであるOct3/4を効率的かつ一貫して発現する。参照により本明細書に組み入れられるものとするWangら、Biochem. Biophys. Res. Comm., 330:934-942 (2005)およびItsyksonら、Mol. Cell. Neurosci. 30:24-36 (2005)を参照されたい。
【実施例17】
【0238】
真正G-CSFに対するモノクローナル抗体
大腸菌中で産生されるサイトカインは糖鎖付加されておらず、秘密の、または通常は隠れたエピトープを露出し得る。同様に、SF9またはCHO細胞中で産生されたサイトカインはヒトに近いものではない翻訳後修飾を有する。これらの因子のため、抗体がヒト細胞により発現されたタンパク質抗原から作製されたか、または非ヒト細胞により発現されたタンパク質抗原から作製されたかに応じて、その抗体は異なる親和性を有し得る。
【0239】
SDS-PAGEゲル上で大腸菌に由来する18 kDのものと比較して、その糖鎖に起因して22〜25 kDのより高い見かけの分子量を有する、本発明のヒト細胞発現系に由来するG-CSFに対するいくつかのモノクローナル抗体が生成された(図25A)。特に、モノクローナル抗体HZmAb G-CSF-1はヒト細胞に由来するG-CSFのみを認識し、大腸菌に由来するG-CSFを認識しない(図25B)が、HZmAb G-CSF-2は両方のG-CSFを認識する(図25C)。これらの結果は、ヒト細胞発現系に由来する組換えサイトカインが、ヒト血清サイトカインのユニークなエピトープ部位を選択的に検出することができる抗体を生成させ、ならびにELISAアッセイにおける標準物として使用するための非常に好ましい抗原であることを示している。
【実施例18】
【0240】
本発明のヒト細胞系中で発現させることができる他のタンパク質
本発明のヒト発現系は、ヒトサイトカインの発現に限定されるわけではない。ヒトサイトカイン以外のヒトタンパク質を、本発明の安定なヒト細胞発現系中で発現させることができる。例えば、ヒトキナーゼ、およびヒトホスファターゼ、ならびに他のヒトタンパク質および酵素を、本発明のヒト細胞発現系中で真正に発現させて、組換えの真正ヒト様キナーゼ、ホスファターゼ、タンパク質、および酵素を生産することもできる。
【0241】
細胞内コミュニケーションにおけるその重要な役割に起因して、タンパク質キナーゼの調節異常は、癌、糖尿病、心臓病、神経障害および慢性関節リウマチなどの400種類ものヒト疾患に関与してきた。従って、タンパク質キナーゼは薬剤設計およびスクリーニングにとって重要である。現在、キナーゼは主に非ヒト細胞(例えば、大腸菌または昆虫細胞)において生産されており、その多くが発現系の制限に起因して、タンパク質トランケーションおよび/またはin vitroでの活性化工程を必要とする。本発明に従って、完全長であり、in vivoで活性化されるヒトタンパク質キナーゼを発現させることが可能である。一例としてp38αを用いて、本発明のヒト細胞系中で産生されたヒトタンパク質キナーゼの特性および阻害プロフィールが、非ヒト細胞系中で産生された同じ型のキナーゼと異なることが本明細書で証明された。
【0242】
組換え生産された真正ヒトp38αを、本発明に従って亜ヒ酸塩の存在下でヒト細胞中で産生させ、活性化した。Vendor AおよびBに由来するサンプルキナーゼを大腸菌から発現させ、精製し、MKK6によりin vitroで活性化し、再精製した。SDS PAGE分析により、ヒト細胞発現系中で産生されたp38αが純粋であり、60 kDの主要なバンドおよび23 kDの内因性ヒトGSTの小さいバンドを有することが示された。これをMS分析により確認したところ、他の夾雑タンパク質は認められなかった。真正p38αのKm.ATPは109±12μMであるが、Vendor調製物のKmは212±26μMであった。Vendor B酵素については120μMのKmが認められた。14種の既知の阻害剤について、IC50値を決定した。表4を参照されたい。両方のp38α調製物についてのSB-202190(公知のp38α選択的阻害剤)のIC50値は類似していたが(それぞれ、0.02μMおよび0.03μM)、この2つの調製物間で阻害剤に対する感受性には明確な差異がある。表4を参照されたい。Vendor A調製物はAMP-PNP(非加水分解性ATP類似体)に対してのみ感受性であった。しかし、このタンパク質はp38αよりも感受性が7倍低く、これはその高い方のKmと一致している。一方、p38αはスタウロスポリン、K252a、Ro 31-8220、KT5720、およびSB-202190に対する測定可能なIC50値を有していた。Vendor Aキナーゼの阻害プロフィールはVendor Bのものと同等である。表4を参照されたい。
【0243】
表
【表1】
【0244】
【表2】
【0245】
【表3】
【0246】
【表4】
【0247】
【表5】
【0248】
配列表
【0249】
【0250】
【0251】
【0252】
【0253】
【0254】
【0255】
【0256】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本国際PCT出願は、2009年1月27日に出願された米国特許仮出願第61/147,627号および2008年3月14日に出願された同第61/036,667号(両方とも参照により本明細書に組み入れられるものとする)に対する優先権を主張するものである。
【0002】
技術分野
本発明は、真正ヒトタンパク質を組換え生産するためのヒト発現系に関する。
【発明の概要】
【0003】
本発明の態様は、新規ヒト細胞系の安定な培養物から真正組換えヒトタンパク質を効率的に生産するための新規発現カセットおよびベクターを含む。また、これらの新規方法により、およびこれらの新規成分から生産された真正組換えタンパク質、ならびにこれらの真正組換えタンパク質に対する抗体も本発明により意図される。組換え生産された、本発明の真正ヒトタンパク質を、遺伝子療法において使用することもでき、また本明細書に開示されるベクターを遺伝子療法において用いて、in vivoまたはin vitro/ex vivoでヒトタンパク質を発現させ、特定の疾患を治療することもできる。
【0004】
本発明のベクターおよび細胞系を一緒に使用し、また互いに独立して使用することができることが理解されるべきである。すなわち、本発明の新規ベクターを、HZ-293TS(以下に記載)などの本発明の新規細胞系に導入し、その細胞内で、サイトカインなどの特定のコードされるヒトタンパク質を発現させることができる。しかしながら、任意のベクターを本発明の細胞系において発現させることができることも同じく真実である。同様に、本明細書に開示されるベクターのいずれかを、本明細書に記載されるものだけでなく、様々なヒト細胞系において発現させることができる。
【0005】
本発明の一態様は、ヒト細胞中での真正ヒトタンパク質の発現を容易にする発現カセットであって、5'から3'の方向に、以下の配列:
(1)サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサーエレメント;
(2)(i)ヒトβ-アクチンプロモーター、(ii)ヒト血清アルブミンプロモーター、および(iii)ヒトフィブリノゲンプロモーターからなる群より選択されるヒトプロモーター配列;
(3)ヒトグロビン遺伝子イントロン;ならびに
(4)免疫グロブリンスーパーファミリー8シグナルペプチドもしくはα-フィブリノゲンシグナルペプチドなどのシグナルペプチド、
を含む前記発現カセットである。
【0006】
目的のヒトタンパク質またはその断片をコードする所望のポリヌクレオチドを、シグナルペプチド配列に機能し得る形で連結し、その下流に挿入する。また、この発現カセットは、所望のポリヌクレオチドがシグナルペプチドとポリアデニル化/終結シグナル配列の間に機能し得る形で連結され、挿入されるように、ポリアデニル化シグナル配列および/または終結シグナル配列をさらに含んでもよい。あるいは、所望のポリヌクレオチド自身が、転写の好適な終結を補助するための終結シグナル配列またはポリアデニル化シグナル配列を含んでもよい。
【0007】
これらの調節エレメントの配置および順列がどんなものでも、このカセットの発現がシグナルペプチドに連結された所望のポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質またはポリペプチドを含む融合タンパク質を産生することは当業者には明らかである。かくして、シグナルペプチド/ヒトタンパク質を、本発明に従って生産した後、シグナルペプチドを融合タンパク質から切断除去して、無傷の真正ヒトタンパク質を遊離させることができる。この態様においては、ヒト細胞機構はタンパク質合成の間に切断部位を認識する。例えば、細胞のゴルジ装置とシグナルペプチドはタンパク質合成の間に相互作用し、その時点でシグナルペプチドは融合タンパク質から分離する。従って、タンパク質が細胞外空間に分泌される際、シグナルペプチドは既に分離している。
【0008】
従って、本発明の発現カセットは、機能し得る形で連結された以下の配列:(1)CMV極初期エンハンサー配列;(2)ヒトβ-アクチンプロモーター;(3)グロビン遺伝子イントロン;(4)α-フィブリノゲンシグナルペプチド;(5)所望のポリヌクレオチド;ならびに(6)ポリアデニル化/終結配列を含んでもよい。当業者であれば、これらのエレメントの他の順列が他の配列と異なり、それと交換することができることを知っている。例えば、上記で示されるように、ヒトβ-アクチンプロモーターの代わりにカセット中でヒト血清アルブミンプロモーターまたはヒトフィブリノゲンプロモーターを用いる発現カセットを構築することができる。かくして、本発明の発現カセットは、機能し得る形で連結された以下の配列:(1)CMV極初期エンハンサー配列;(2)ヒトβ-アクチンプロモーター;(3)グロビン遺伝子イントロン;(4)免疫グロブリンスーパーファミリー8シグナルペプチド;(5)所望のポリヌクレオチド;ならびに(6)ポリアデニル化/終結配列を含んでもよい。
【0009】
従って、一態様において、本発明は、CMV極初期エンハンサー、β-アクチンプロモーター配列、ヒトグロビン遺伝子イントロン配列、および免疫グロブリンスーパーファミリー8シグナルペプチドに機能し得る形で連結された所望のポリヌクレオチドであって、シグナルペプチドに機能し得る形で連結され、その下流に位置する前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクターである。
【0010】
本発明の別の態様は、CMV極初期エンハンサー、β-アクチンプロモーター配列、ヒトグロビン遺伝子イントロン配列、およびα-フィブリノゲンシグナルペプチドに機能し得る形で連結された所望のポリヌクレオチドであって、シグナルペプチドに機能し得る形で連結され、その下流に位置する前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクターである。
【0011】
これに関連して、本発明は、前記発現カセット中でのヒト遺伝子エレメントのみの使用に限定されない。例えば、プロモーターおよび遺伝子イントロン配列、ならびにシグナルペプチドは、他の種のゲノムに由来するものであってよい。例えば、前記配列は、任意の哺乳動物、爬虫類、鳥類、魚類、昆虫、細菌、真菌、酵母、ウイルスまたは両生類に由来するものであってよい。かくして、本発明の一実施形態においては、前記発現カセットは、マウス、サル、類人猿、ラット、ネコ、イヌ、ウサギ、スナネズミ、ハムスター、モルモット、ブタ、ウシ、またはヒツジなどのヒト以外の種に由来するプロモーター、イントロン、ならびにシグナルペプチドのヌクレオチド配列を含む。
【0012】
別の実施形態においては、シグナル配列は、細胞のゴルジ体または細胞外空間に転写されたRNA分子産物を輸送するのを助ける配列をコードする。
【0013】
本発明の別の態様は、細胞中でタンパク質を生産する方法であって、本発明の発現ベクターを細胞中に導入することを含み、該細胞はベクターカセットの配列と同じ種に由来するものであり、カセット中の遺伝子配列は細胞中で転写および翻訳されて、それがコードするタンパク質を産生する前記方法である。一実施形態においては、前記発現ベクターを、プロモーター、イントロン、およびシグナルペプチド配列が得られた種と同じ種に由来する細胞中に導入する。一実施形態においては、細胞とカセットの配列の双方が、任意の哺乳動物、爬虫類、鳥類、魚類、昆虫、細菌、真菌、酵母、ウイルス、または両生類に由来するものである。かくして、本発明の一実施形態においては、前記細胞と発現カセットの配列は両方とも、ヒト、マウス、サル、類人猿、ラット、ネコ、イヌ、ウサギ、スナネズミ、ハムスター、モルモット、ブタ、ウシ、およびヒツジからなる群より選択される種に由来するものである。一実施形態においては、前記細胞はヒト細胞である。別の実施形態においては、ヒト細胞はヒト腎臓細胞である。一実施形態においては、ヒト腎臓細胞は、HEK 293細胞である。本発明の発現カセットの配列は、シグナルペプチドの下流に機能し得る形で連結され、エンハンサー、プロモーター、およびイントロンに機能し得る形で連結された目的の核酸配列、または所望のポリヌクレオチドを含み、目的の核酸配列または所望のポリヌクレオチドが発現される。所望のポリヌクレオチドの例としては、限定されるものではないが、以下の配列表の(1)〜(13)に開示されるもの、ならびに表5に列挙されるものが挙げられる。かくして、本発明の所望のポリヌクレオチドによりコードされるヒトサイトカインの例としては、限定されるものではないが、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンA/2xINHbA、アクチビンB/2xINHbB、AMH/MIS、アルテミン、BDNF、BMP2、BMP15/GDF9B、BMP2/BMP2A、BMP3/オステオゲニン、BMP4、BMP4/BMP2B、BMP5、BMP7/OP-1、BMP1、BMP10、BMP15/GDF9B、β-NGF、シスタチンC、デルタ1、EGF、エリスロポエチン(EPO)、酸性FGF、塩基性FGF、FGF10、FGF5、FGF7、FGF8b、FLT3リガンド、G-CSF、GDF15、GDF2/BMP9、GDF3、GDF5/BMP14、GDF8/ミオスタチン、GDF9、GDNF、GM-CSF、HGF、HGH、IFN-α2A、IFN-α2B、IFN-γ、IFN-β1、IGF I、IGF II、IGF IIv1、IGF IIv2、IL10、IL11、IL12、IL15、IL17/IL17A、IL17F、IL1β、IL2、IL23、IL27、IL28A/IFN-λ-2、IL28B/IFN-λ-3、IL29/IFN-λ-1、IL1β、IL2 IL3、IL32、IL35、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、インヒビンA/INHa&INHbA、インヒビンB/INHa&INHbB、インヒビンC/INHa&INHbC、インヒビンE/INHa&INHbE、LEFTYB、LEFTY1/LeftyB、M-CSF、マウスCSF、マウスSCF、NODAL、Noggin、NT3 (ニューロトロフィン3)、オンコスタチンM、PDGFα、PDGFβ、ペルセフィン、SCF、SDF1α、SHH、ソマトトロピン、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3、TGFβ4/LEFTY2/LeftyA、TNF α、TPOα、VEGF121aa、VEGF165aa、WIF1、WNT1、Wnt10A、Wnt10B/12、Wnt11、Wnt16、Wnt2、Wnt2B/13、Wnt3、Wnt3A、Wnt4、Wnt5A、Wnt5B、Wnt6、Wnt7A、Wnt7B、Wnt8B、およびWnt9A/14が挙げられる。本発明の記載のポリヌクレオチドは、EPO、G-CSF、GM-CSF、IL-2、IL-4、IL-6、M-CSF、Noggin、SCF、ソマトトロピン、TGFβ1、TNFα、またはVEGF-165をコードしてもよい。
【0014】
本発明の方法の一態様は、細胞から産生されたタンパク質を単離することを含む。一実施形態においては、前記方法はさらに、単離されたタンパク質に対する抗体を生成させることをさらに含む。かくして、本発明の別の態様は、本明細書に開示される本発明の方法のいずれか1つにより産生されたタンパク質のエピトープに対して生成した抗体である。一実施形態においては、前記抗体はポリクローナルまたはモノクローナル抗体である。
【0015】
本発明の別の態様は、本明細書に開示される発現ベクターのいずれかのカセットを発現する細胞である。一実施形態においては、前記細胞は、前記カセット中の配列と同じ種に由来するものである。一実施形態においては、前記細胞はヒト細胞である。
【0016】
本発明の別の態様は、個体における免疫応答を誘導するための方法であって、個体の細胞中で本明細書に開示される発現ベクターのいずれかのカセットを発現させることを含み、遺伝子配列の発現が、個体における免疫応答を誘導するタンパク質またはRNA産物を産生し、個体の種がカセット中の配列の種と同じものである前記方法である。
【0017】
本発明の別の態様は、全ての配列が機能し得る形で連結された、(A)ヒトプロモーター配列、(B)ヒトシグナル配列、(C)ヒト遺伝子配列、および(D)ヒトポリアデニル化シグナル配列を含むカセットを含む発現ベクターである。
【0018】
一実施形態においては、CMVエンハンサーエレメントの配列の例を、ヒトCMV極初期(IE)エンハンサーである配列番号27に示す。例示的なヒトプロモーター配列の配列を配列番号28に示し、これはヒトβ-アクチンプロモーター配列である。例示的なヒトグロビン遺伝子イントロンの配列を配列番号29に示す。シグナルペプチドの例としては、配列番号30に示されるヒトフィブリノゲンα鎖シグナルペプチド、および配列番号31に示されるヒト免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー8前駆体シグナルが挙げられる。
【0019】
互いに機能し得る形で連結されたこれらのエレメントを含む発現カセットの例を、配列番号32および33に示す。
【0020】
任意の所望のポリヌクレオチドまたは目的の核酸を、それが発現カセットのシグナルペプチドならびにCMV IEエンハンサー、ヒトプロモーター、およびヒトグロビンイントロン配列などの調節エレメントに機能し得る形で連結されるように、シグナルペプチドの下流に挿入することができる。本発明のカセットはさらに、転写後プロセッシングがその5'末端でシグナルペプチドに連結された所望のタンパク質を含むタンパク質を生成するように、グロビン遺伝子イントロンとシグナルペプチドの間に切断部位配列を含んでもよい。このシグナルペプチドは、前記タンパク質を細胞外空間へ輸送するシグナルペプチドであってもよい。本発明の所望のポリヌクレオチドとしては、サイトカインをコードするポリヌクレオチドが挙げられる。かくして、本発明の一態様は、真正に糖鎖付加され、天然の、ヒト細胞からin vivoで外因的に発現された同じサイトカインと構造において同等である、単離された組換えヒトサイトカインである。
【0021】
本発明の一実施形態においては、組換えヒトサイトカインは、ヒト特異的N-アセチルノイラミン酸で終結する糖鎖を含むため、それは天然のサイトカインと同等である。一実施形態においては、糖鎖はサイトカインの表面に共有結合している。本発明の別の実施形態においては、糖鎖はN-アセチルグルコサミン、フコース、マンノース、およびガラクトース部分のうちの少なくとも1個を含む。別の実施形態においては、真正に糖鎖付加されたサイトカインのみが、ヒト細胞に由来する糖鎖を含み、任意の非ヒト細胞に由来する糖鎖部分を含まない。
【0022】
一実施形態においては、本発明の所望のポリヌクレオチドによりコードされる組換えヒトサイトカインを、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンA/2xINHbA、アクチビンB/2xINHbB、AMH/MIS、アルテミン、BDNF、BMP2、BMP15/GDF9B、BMP2/BMP2A、BMP3/オステオゲニン、BMP4、BMP4/BMP2B、BMP5、BMP7/OP-1、BMP1、BMP10、BMP15/GDF9B、β-NGF、シスタチンC、デルタ1、EGF、エリスロポエチン(EPO)、酸性FGF、塩基性FGF、FGF10、FGF5、FGF7、FGF8b、FLT3リガンド、G-CSF、GDF15、GDF2/BMP9、GDF3、GDF5/BMP14、GDF8/ミオスタチン、GDF9、GDNF、GM-CSF、HGF、HGH、IFN-α2A、IFN-α2B、IFN-γ、IFN-β1、IGF I、IGF II、IGF IIv1、IGF IIv2、IL10、IL11、IL12、IL15、IL17/IL17A、IL17F、IL1β、IL2、IL23、IL27、IL28A/IFN-λ-2、IL28B/IFN-λ-3、IL29/IFN-λ-1、IL1β、IL2 IL3、IL32、IL35、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、インヒビンA/INHa&INHbA、インヒビンB/INHa&INHbB、インヒビンC/INHa&INHbC、インヒビンE/INHa&INHbE、LEFTYB、LEFTY1/LeftyB、M-CSF、マウスCSF、マウスSCF、NODAL、Noggin、NT3 (ニューロトロフィン3)、オンコスタチンM、PDGFα、PDGFβ、ペルセフィン、SCF、SDF1α、SHH、ソマトトロピン、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3、TGFβ4/LEFTY2/LeftyA、TNF α、TPOα、VEGF121aa、VEGF165aa、WIF1、WNT1、Wnt10A、Wnt10B/12、Wnt11、Wnt16、Wnt2、Wnt2B/13、Wnt3、Wnt3A、Wnt4、Wnt5A、Wnt5B、Wnt6、Wnt7A、Wnt7B、Wnt8B、およびWnt9A/14からなる群より選択する。また、表5の「クローニングされたサイトカイン遺伝子の一覧」も参照されたい。本発明の所望のポリヌクレオチドによりコードされる組換えヒトサイトカインを、表5に列挙されるサイトカイン群から選択することもできる。別の実施形態においては、ヒト組換えサイトカインを、EPO、G-CSF、GM-CSF、IL-2、IL-4、IL-6、M-CSF、Noggin、SCF、ソマトトロピン、TGFβ1、TNFα、およびVEGF-165からなる群より選択する。
【0023】
本発明の別の態様は、真正ヒトサイトカインを生産するための組換え方法であって、(1)無血清培地上で生存することができるヒト細胞を、(i)ヒトサイトカイン配列をコードする所望のポリヌクレオチドおよび(ii)抗生物質耐性遺伝子を含む本明細書に開示される発現ベクターのいずれか1つでトランスフェクトすること;(2)(i)抗生物質遺伝子が耐性である抗生物質を含む培地への曝露を生き残るトランスフェクト細胞を選択すること、(ii)抗生物質曝露を生き残るこれらの細胞を低血清濃度を有する液体培養物に移すこと、(3)長時間にわたって血清濃度を0%に低下させること;ならびに(4)無血清培地液体培養物中で増殖する細胞から発現されたヒトサイトカインを単離することを含み、単離されたヒトサイトカインが生物学的に活性である前記方法である。本発明の別の態様においては、ヒト細胞を、サイトカイン配列を含む所望のポリヌクレオチドを含む1つのベクターと、抗生物質耐性遺伝子発現カセットを含む別の異なるベクターとを用いて同時トランスフェクトすることができる。かくして、本発明は、本発明のヒト細胞をトランスフェクトするための、1個のベクター(サイトカイン配列と抗生物質耐性遺伝子配列の両方を含む)の使用または2個のベクター(一方はサイトカイン遺伝子配列を含み、他方は抗生物質耐性遺伝子配列を含む)の使用を意図する。
【0024】
一実施形態においては、所望のポリヌクレオチドは、ヒトサイトカインをコードする配列と読み枠を合わせたシグナルペプチド分泌配列をコードする配列を含む。別の実施形態においては、所望のポリヌクレオチドをプロモーターおよびターミネーターに機能し得る形で連結する。
【0025】
一実施形態においては、前記無血清培地は、1種以上の抗生物質を含む。一実施形態においては、抗生物質はネオマイシン(G418)、ヒグロマイシン、ゼオシン、またはブラスチシジンである。別の実施形態においては、血清濃度を0%に低下させる工程を、1日〜数週間の期間に行う。一実施形態においては、液体培養物の容量は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50リットルもしくは50リットルを超える培養物、またはその間の任意の整数である。
【0026】
別の実施形態においては、ヒトサイトカインを単離する工程は、無血清液体細胞培養物のアリコートを遠心分離し、ヒトサイトカインが分泌された上清からそれを捕捉することを含む。一実施形態においては、ヒトサイトカインを単離する工程は、遠心分離工程から沈降したヒト細胞を、同じか、または異なる無血清液体細胞培養容器に戻すことをさらに含む。
【0027】
一実施形態においては、分泌されたヒトサイトカインが単離される上清は、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、または約20%以下の分泌されたヒトサイトカインではない夾雑材料またはタンパク質を含む。
【0028】
一実施形態においては、分泌されたヒトサイトカインを含む上清のサンプルの純度は、少なくとも約99%純粋、少なくとも約98%純粋、少なくとも約97%純粋、少なくとも約96%純粋、少なくとも約95%純粋、少なくとも約94%純粋、少なくとも約93%純粋、少なくとも約92%純粋、少なくとも約91%純粋、少なくとも約90%純粋、少なくとも約89%純粋、少なくとも約88%純粋、少なくとも約87%純粋、少なくとも約86%純粋、少なくとも約85%純粋、少なくとも約84%純粋、少なくとも約83%純粋、少なくとも約82%純粋、少なくとも約81%純粋、または少なくとも約80%純粋である。
【0029】
一実施形態においては、細胞培養物の上清は、本質的には発現され、分泌されたヒトサイトカインタンパク質からなる。
【0030】
別の実施形態においては、細胞培養物の上清は、発現され、分泌されたヒトサイトカインタンパク質以外の他の生物学的に活性なタンパク質を含まない。
【0031】
別の態様は、組換え方法により生産された単離された組換えヒトサイトカインである。一実施形態においては、その単離された組換えヒトサイトカインを、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンA/2xINHbA、アクチビンB/2xINHbB、AMH/MIS、アルテミン、BDNF、BMP2、BMP15/GDF9B、BMP2/BMP2A、BMP3/オステオゲニン、BMP4、BMP4/BMP2B、BMP5、BMP7/OP-1、BMP1、BMP10、BMP15/GDF9B、β-NGF、シスタチンC、デルタ1、EGF、エリスロポエチン(EPO)、酸性FGF、塩基性FGF、FGF10、FGF5、FGF7、FGF8b、FLT3リガンド、G-CSF、GDF15、GDF2/BMP9、GDF3、GDF5/BMP14、GDF8/ミオスタチン、GDF9、GDNF、GM-CSF、HGF、HGH、IFN-α2A、IFN-α2B、IFN-γ、IFN-β1、IGF I、IGF II、IGF IIv1、IGF IIv2、IL10、IL11、IL12、IL15、IL17/IL17A、IL17F、IL1β、IL2、IL23、IL27、IL28A/IFN-λ-2、IL28B/IFN-λ-3、IL29/IFN-λ-1、IL1β、IL2 IL3、IL32、IL35、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、インヒビンA/INHa&INHbA、インヒビンB/INHa&INHbB、インヒビンC/INHa&INHbC、インヒビンE/INHa&INHbE、LEFTYB、LEFTY1/LeftyB、M-CSF、マウスCSF、マウスSCF、NODAL、Noggin、NT3 (ニューロトロフィン3)、オンコスタチンM、PDGFα、PDGFβ、ペルセフィン、SCF、SDF1α、SHH、ソマトトロピン、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3、TGFβ4/LEFTY2/LeftyA、TNF α、TPOα、VEGF121aa、VEGF165aa、WIF1、WNT1、Wnt10A、Wnt10B/12、Wnt11、Wnt16、Wnt2、Wnt2B/13、Wnt3、Wnt3A、Wnt4、Wnt5A、Wnt5B、Wnt6、Wnt7A、Wnt7B、Wnt8B、およびWnt9A/14からなる群より選択する。また、表5の「クローニングされたサイトカイン遺伝子の一覧」も参照されたい。
【0032】
一実施形態においては、本明細書に開示される方法により生産されたヒトサイトカインタンパク質はいずれも、非ヒト糖鎖を含まない。すなわち、本発明のヒトサイトカインタンパク質は、ヒト細胞においてのみ利用可能な酵素および基質によってそのタンパク質表面に共有結合したグリコシル化された(糖鎖付加された)糖鎖のみを含む。
【0033】
本発明の別の態様は、本明細書に開示される単離された組換えヒトサイトカインのいずれか1つに対して生じた抗体である。一実施形態においては、この抗体はモノクローナル抗体である。別の実施形態においては、それはポリクローナル抗体である。
【0034】
本発明の別の態様は、本明細書に開示される任意の単離された組換えヒトサイトカインまたは抗体のうちの少なくとも1つを含むキットである。
【0035】
従って、上記実施形態を詳述するために、本発明の一態様は、以下の機能し得る形で連結された発現エレメント:
(A)サイトメガロウイルスエンハンサーエレメント配列;
(B)(i)ヒトアクチンプロモーター配列、(ii)ヒト血清アルブミンプロモーター配列、および(iii)ヒトフィブリノゲンプロモーター配列からなる群より選択されるヒトプロモーター配列;
(C)ヒトグロビン遺伝子イントロン配列;ならびに
(D)ヒトシグナルペプチド配列、
を含むカセットを含む発現ベクターである。
【0036】
一実施形態においては、前記発現ベクターはさらに、シグナルペプチド配列の下流に位置し、請求項1に記載のエレメント(A)、(B)、(C)、および(D)に機能し得る形で連結された所望のポリヌクレオチドを含む。別の実施形態においては、(i)所望のポリヌクレオチドを、ヒトシグナルペプチド配列の下流の発現ベクター中に位置する終結シグナル配列に機能し得る形で連結するか、または(ii)所望のポリヌクレオチド自身が終結シグナル配列を含む。
【0037】
一実施形態においては、ヒトプロモーター配列は、機能的なヒトβ-アクチンプロモーター配列である。別の実施形態においては、CMVエンハンサーエレメントは、CMV極初期エンハンサー配列である。別の実施形態においては、シグナルペプチド配列は、(A)ヒト免疫グロブリンA遺伝子のイントロン1と、該イントロン配列の3'末端に向かって位置する切断認識配列とを含む配列、(B)α-フィブリノゲンシグナルペプチド、または(C)免疫グロブリンスーパーファミリー8シグナルペプチドである。
【0038】
一実施形態においては、所望のポリヌクレオチドはサイトカインをコードする。別の実施形態においては、コードされるサイトカインを、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンA/2xINHbA、アクチビンB/2xINHbB、AMH/MIS、アルテミン、BDNF、BMP2、BMP15/GDF9B、BMP2/BMP2A、BMP3/オステオゲニン、BMP4、BMP4/BMP2B、BMP5、BMP7/OP-1、BMP1、BMP10、BMP15/GDF9B、β-NGF、シスタチンC、デルタ1、EGF、エリスロポエチン(EPO)、酸性FGF、塩基性FGF、FGF10、FGF5、FGF7、FGF8b、FLT3リガンド、G-CSF、GDF15、GDF2/BMP9、GDF3、GDF5/BMP14、GDF8/ミオスタチン、GDF9、GDNF、GM-CSF、HGF、HGH、IFN-α2A、IFN-α2B、IFN-γ、IFN-β1、IGF I、IGF II、IGF IIv1、IGF IIv2、IL10、IL11、IL12、IL15、IL17/IL17A、IL17F、IL1β、IL2、IL23、IL27、IL28A/IFN-λ-2、IL28B/IFN-λ-3、IL29/IFN-λ-1、IL1β、IL2 IL3、IL32、IL35、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、インヒビンA/INHa&INHbA、インヒビンB/INHa&INHbB、インヒビンC/INHa&INHbC、インヒビンE/INHa&INHbE、LEFTYB、LEFTY1/LeftyB、M-CSF、マウスCSF、マウスSCF、NODAL、Noggin、NT3 (ニューロトロフィン3)、オンコスタチンM、PDGFα、PDGFβ、ペルセフィン、SCF、SDF1α、SHH、ソマトトロピン、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3、TGFβ4/LEFTY2/LeftyA、TNF α、TPOα、VEGF121aa、VEGF165aa、WIF1、WNT1、Wnt10A、Wnt10B/12、Wnt11、Wnt16、Wnt2、Wnt2B/13、Wnt3、Wnt3A、Wnt4、Wnt5A、Wnt5B、Wnt6、Wnt7A、Wnt7B、Wnt8B、およびWnt9A/14からなる群より選択する。また、表5の「クローニングされたサイトカイン遺伝子の一覧」も参照されたい。別の実施形態においては、コードされるサイトカインを、EPO、G-CSF、GM-CSF、IL-2、IL-4、IL-6、M-CSF、Noggin、SCF、ソマトトロピン、TGFβ1、TNFα、およびVEGF-165からなる群より選択する。
【0039】
一実施形態においては、本発明の発現ベクター(「pHZhag」)は、(i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、および(iii)ヒトβ-グロビンイントロンの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む。
【0040】
一実施形態においては、本発明の発現ベクター(「pHZA」)は、(i)hCMVプロモーター、および(ii)ヒトフィブリノゲンサブユニットAシグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む。
【0041】
一実施形態においては、本発明の発現ベクター(「pHZI」)は、(i)hCMVプロモーター、および(ii)ヒトIgスーパーファミリー8シグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む。
【0042】
一実施形態においては、本発明の発現ベクター(「pHZhagA」)は、(i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、(iii)ヒトβ-グロビンイントロン、および(iv)ヒトフィブリノゲンサブユニットAシグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む。
【0043】
一実施形態においては、本発明の発現ベクター(「pHZhagI」)は、(i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、(iii)ヒトβ-グロビンイントロン、および(iv)ヒトIgスーパーファミリー8シグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む。
【0044】
一実施形態においては、本発明の発現ベクター(「pHZhag-TGFβ1」)は、(i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、(iii)ヒトβ-グロビンイントロン、および(iv)TGFβ1の機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む。
【0045】
一実施形態においては、本発明の発現ベクター(「phZhagI-TGFβ1」)は、(i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、(iii)ヒトβ-グロビンイントロン、(iv)ヒトIgスーパーファミリー8シグナルペプチド、および(v)TGFβ1の機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む。
【0046】
これらの発現ベクターのいずれかにおいて、ヒトタンパク質などのタンパク質をコードする所望のポリヌクレオチドを、特定の発現ベクターのシグナルペプチドの下流に、かつそれに機能し得る形で連結して組込むことができる。
【0047】
かくして、本発明の別の態様は、本発明の発現ベクターのいずれか1つをヒト細胞中に導入することを含み、所望のポリヌクレオチドがヒトタンパク質をコードし、ヒト細胞中での所望のポリヌクレオチドの発現が真正ヒトタンパク質をもたらす、真正ヒトタンパク質を生産するための組換え方法である。
【0048】
一実施形態においては、前記真正ヒトタンパク質は、同じヒトタンパク質の天然型のものと同様の大きさ、構造、分子量、糖鎖付加パターン、および転写後修飾を有する。当業者であれば、タンパク質を特性評価するのに有用な、クロマトグラフィー、ゲル、遺伝子、タンパク質分析、結晶学、および組成分析などの様々なアッセイおよび試験を知っているし、容易に利用できるものが、互いに平行して泳動された天然の内因型の同じタンパク質およびタンパク質マーカーレーンに対する、本発明の組換え生産されたタンパク質のタンパク質ゲル電気泳動であることも知っている。
【0049】
一実施形態においては、所望のポリヌクレオチドは、サイトカインをコードする。別の実施形態においては、コードされるサイトカインを、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンA/2xINHbA、アクチビンB/2xINHbB、AMH/MIS、アルテミン、BDNF、BMP2、BMP15/GDF9B、BMP2/BMP2A、BMP3/オステオゲニン、BMP4、BMP4/BMP2B、BMP5、BMP7/OP-1、BMP1、BMP10、BMP15/GDF9B、β-NGF、シスタチンC、デルタ1、EGF、エリスロポエチン(EPO)、酸性FGF、塩基性FGF、FGF10、FGF5、FGF7、FGF8b、FLT3リガンド、G-CSF、GDF15、GDF2/BMP9、GDF3、GDF5/BMP14、GDF8/ミオスタチン、GDF9、GDNF、GM-CSF、HGF、HGH、IFN-α2A、IFN-α2B、IFN-γ、IFN-β1、IGF I、IGF II、IGF IIv1、IGF IIv2、IL10、IL11、IL12、IL15、IL17/IL17A、IL17F、IL1β、IL2、IL23、IL27、IL28A/IFN-λ-2、IL28B/IFN-λ-3、IL29/IFN-λ-1、IL1β、IL2 IL3、IL32、IL35、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、インヒビンA/INHa&INHbA、インヒビンB/INHa&INHbB、インヒビンC/INHa&INHbC、インヒビンE/INHa&INHbE、LEFTYB、LEFTY1/LeftyB、M-CSF、マウスCSF、マウスSCF、NODAL、Noggin、NT3 (ニューロトロフィン3)、オンコスタチンM、PDGFα、PDGFβ、ペルセフィン、SCF、SDF1α、SHH、ソマトトロピン、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3、TGFβ4/LEFTY2/LeftyA、TNF α、TPOα、VEGF121aa、VEGF165aa、WIF1、WNT1、Wnt10A、Wnt10B/12、Wnt11、Wnt16、Wnt2、Wnt2B/13、Wnt3、Wnt3A、Wnt4、Wnt5A、Wnt5B、Wnt6、Wnt7A、Wnt7B、Wnt8B、およびWnt9A/14からなる群より選択する。また、表5の「クローニングされたサイトカイン遺伝子の一覧」も参照されたい。別の実施形態においては、コードされるサイトカインを、EPO、G-CSF、GM-CSF、IL-2、IL-4、IL-6、M-CSF、Noggin、SCF、ソマトトロピン、TGFβ1、TNFα、およびVEGF-165からなる群より選択する。
【0050】
一実施形態においては、ヒト細胞は、HEK293Tから誘導され、本発明に従って適合され、 付けでATCC生物寄託受託番号 の下で寄託され、且つ当該受託番号を有するヒト腎臓胚細胞系であるHZ-293TSである。
【0051】
一実施形態においては、前記組換え方法はさらに、ヒト細胞から真正ヒトタンパク質を単離することを含む。
【0052】
本発明の別の態様は、本発明の発現ベクターのいずれか1つにおいて所望のポリヌクレオチドを発現するヒト細胞により産生された組換え生産された真正ヒトタンパク質であって、所望のポリヌクレオチドがヒトタンパク質をコードし、所望のポリヌクレオチドの発現が真正ヒトタンパク質をもたらす、前記タンパク質である。一実施形態においては、所望のポリヌクレオチドはサイトカインをコードする。別の実施形態においては、コードされるサイトカインを、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンA/2xINHbA、アクチビンB/2xINHbB、AMH/MIS、アルテミン、BDNF、BMP2、BMP15/GDF9B、BMP2/BMP2A、BMP3/オステオゲニン、BMP4、BMP4/BMP2B、BMP5、BMP7/OP-1、BMP1、BMP10、BMP15/GDF9B、β-NGF、シスタチンC、デルタ1、EGF、エリスロポエチン(EPO)、酸性FGF、塩基性FGF、FGF10、FGF5、FGF7、FGF8b、FLT3リガンド、G-CSF、GDF15、GDF2/BMP9、GDF3、GDF5/BMP14、GDF8/ミオスタチン、GDF9、GDNF、GM-CSF、HGF、HGH、IFN-α2A、IFN-α2B、IFN-γ、IFN-β1、IGF I、IGF II、IGF IIv1、IGF IIv2、IL10、IL11、IL12、IL15、IL17/IL17A、IL17F、IL1β、IL2、IL23、IL27、IL28A/IFN-λ-2、IL28B/IFN-λ-3、IL29/IFN-λ-1、IL1β、IL2 IL3、IL32、IL35、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、インヒビンA/INHa&INHbA、インヒビンB/INHa&INHbB、インヒビンC/INHa&INHbC、インヒビンE/INHa&INHbE、LEFTYB、LEFTY1/LeftyB、M-CSF、マウスCSF、マウスSCF、NODAL、Noggin、NT3 (ニューロトロフィン3)、オンコスタチンM、PDGFα、PDGFβ、ペルセフィン、SCF、SDF1α、SHH、ソマトトロピン、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3、TGFβ4/LEFTY2/LeftyA、TNF α、TPOα、VEGF121aa、VEGF165aa、WIF1、WNT1、Wnt10A、Wnt10B/12、Wnt11、Wnt16、Wnt2、Wnt2B/13、Wnt3、Wnt3A、Wnt4、Wnt5A、Wnt5B、Wnt6、Wnt7A、Wnt7B、Wnt8B、およびWnt9A/14からなる群より選択する。また、表5の「クローニングされたサイトカイン遺伝子の一覧」も参照されたい。別の実施形態においては、コードされるサイトカインを、EPO、G-CSF、GM-CSF、IL-2、IL-4、IL-6、M-CSF、Noggin、SCF、ソマトトロピン、TGFβ1、TNFα、およびVEGF-165からなる群より選択する。
【0053】
一実施形態においては、組換え生産された真正ヒトタンパク質を、 付けでATCC生物寄託受託番号 の下で寄託され、且つ当該受託番号を有するHZ-293TSヒト細胞系から生産する。
【0054】
一実施形態においては、真正ヒトタンパク質の糖鎖付加パターンは、天然の内因型のそのヒトタンパク質と類似する。さらなる実施形態においては、真正ヒトタンパク質の大きさ、構造、および分子量は、天然の内因型のそのヒトタンパク質の大きさおよび分子量と類似する。一実施形態においては、真正ヒトタンパク質は、TGFβである。別の実施形態においては、所望のポリヌクレオチドはnogginタンパク質をコードし、所望のポリヌクレオチドの発現は細胞中でジスルフィド結合されたnogginダイマーをもたらす。
【0055】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の組換え方法により生産された真正ヒトタンパク質のいずれか1つのエピトープに対して生成した抗体である。一実施形態においては、この抗体はポリクローナルまたはモノクローナル抗体である。別の実施形態においては、前記抗体はG-CSFに対して生成したモノクローナル抗体である。
【0056】
本発明の別の態様は、 付けでATCC生物寄託受託番号 の下で寄託され、且つ当該受託番号を有するHZ-293TS(無血清培地上で増殖するように適合されたヒト腎臓胚細胞系)と呼ばれる安定なヒト細胞系である。本発明の一実施形態においては、HZ-293TS細胞系の細胞の生存能力は、他のHEK293細胞型のものよりも長い。すなわち、HZ-293TS細胞は、他のHEK293細胞型と比較して、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、もしくは14日、または14日以上生きたままである。
【0057】
本発明の別の態様は、本明細書に開示される発現ベクターのいずれかを発現する任意のヒト細胞である。一実施形態においては、ヒト細胞は 付けでATCC生物寄託受託番号 の下で寄託され、且つ当該受託番号を有するHZ-293TSである。
【0058】
本発明の別の態様は、細胞成長、細胞増殖、細胞分化、または炎症に関連する症状を治療する方法であって、(A)本明細書に記載されるか、もしくは本明細書に記載の方法により取得可能な組換え生産された真正ヒトタンパク質のいずれか1つ、または(B)本明細書に開示されるか、もしくは本明細書に記載の方法により取得可能な抗体のいずれか1つを、細胞成長、増殖、分化、または炎症に関連する症状を有する個体に投与することを含む前記方法である。一実施形態においては、前記方法は、TNFαに対して生成した本発明の抗体を、炎症または関節炎に関連する症状を有する個体に投与することを含む。
【0059】
一実施形態においては、前記方法は、VEGFに対して生じた本発明の抗体を、癌または細胞増殖に関連する症状を有する個体に投与することを含む。
【0060】
本発明の一態様は、サンプルから本発明の真正ヒトタンパク質のいずれか1つを検出するための診断剤としての、そのヒトタンパク質のエピトープに対して生じた抗体の使用である。一実施形態においては、前記抗体を、ヒトタンパク質を検出するためのELISAアッセイにおける診断剤として用いる。
【0061】
別の実施形態においては、前記サンプルは、ヒト組織サンプル、ヒト細胞サンプル、ヒト血液サンプル、またはヒト体液サンプルである。さらなる実施形態においては、前記ヒトタンパク質はサイトカインである。
【0062】
本発明の別の態様は、細胞成長、細胞増殖、細胞分化、または炎症に関連する症状を治療する方法であって、タンパク質をコードする所望のポリヌクレオチドを発現するベクターを、細胞成長、増殖、分化、または炎症に関連する症状を有する個体に投与することを含み、該個体の細胞中の発現されたタンパク質が該症状を治療するのを助ける、前記方法である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】2つの異なる容量のヒト細胞培養物(75 mlと30リットル)の間の9日間にわたるアルカリホスファターゼのタンパク質活性である。
【図2】TGFβ1(レーン1)、G-CSF(レーン2)、IL1β(レーン3)、およびVEGF165(レーン4)の発現に関する本発明の安定なヒト細胞系におけるサイトカインの高い発現を示すSDS-PAGEゲルである。
【図3】ソマトトロピンおよびGM-CSFに関する効率的な無タグ精製を示すSDS-PAGEゲルである。
【図4】本発明のヒト細胞(黒塗り三角)および非ヒト細胞(■)中での発現後のGM-CSF安定性アッセイを示すグラフである。
【図5】発現させることが困難で有名である、活性および成熟TGFβ1の発現を示すSDS-PAGEゲルである。
【図6A】本発明の方法に従って生産されたサイトカインの活性および純度(SDSゲル染色上で示される)を示すグラフおよび対応するゲルである。これらの例は、GM-CSF(図6A)、IL-4(図6B)、ソマトトロピン(図6C)、TGF-β1(図6D)、VEGF-165(図6E)、TNF-α(図6F)、M-CSF(図6G)、IL-6(図6H)、EPO(図6I)、IL-2(図6J)、SCF(図6K)、Noggin(図6L)、およびG-CSF(図6M)に関する印象的な活性および純度を示す。
【図6B】図6Aの続きである。
【図6C】図6Bの続きである。
【図6D】図6Cの続きである。
【図6E】図6Dの続きである。
【図6F】図6Eの続きである。
【図6G】図6Fの続きである。
【図6H】図6Gの続きである。
【図6I】図6Hの続きである。
【図6J】図6Iの続きである。
【図6K】図6Jの続きである。
【図6L】図6Kの続きである。
【図6M】図6Lの続きである。
【図7A】非ヒト細胞系に由来するサイトカインと比較した本発明のヒト細胞系に由来する精製されたサイトカインのSDS-PAGEゲル分析である:(A)EPO、Noggin;(B)G-CSF、SCF、GM-CSF、ソマトトロピン;(C)IL-2、TGF-β1、IL-4、およびTNFα;ならびに(D)IL6、VEGF165、およびM-CSF。
【図7B】図7Aの続きである。
【図7C】図7Bの続きである。
【図7D】図7Cの続きである。
【図8A】非ヒト細胞系に由来するサイトカインと比較した本発明のヒト細胞系に由来する精製されたサイトカインに関するウェスタンブロットである:(A)EPO、Noggin;(B)GM-CSF、SCF、IL-2、ソマトトロピン;(C)IL-4、TNFα、IL6、およびVEGF165。
【図8B】図8Aの続きである。
【図8C】図8Bの続きである。
【図9】ヒトおよび非ヒト細胞におけるVEGF165活性の比較である。
【図10】ヒトおよび非ヒト細胞におけるIL-4活性の比較である。
【図11】(a)pHZsecベクター(pHZ-TGFb1)または(b)pHZhagベクター(pHZhag-TGFb1)を用いるHEK293TからのTGFβ1の発現の例である。TGFβ1潜伏関連ペプチド(LAP)および成熟TGFβ1を赤い矢印で示す。pHZhag-TGFβ1およびpHZ-TGFβ1でトランスフェクトした両細胞系を、培養培地中、3日目(A)、4日目(B)、または5日目(C)に追加の20 mMグルコースで、およびそれを添加せずに(D)処理した。ゲル上で、各処理について3日目(d3)および10日目(d10)のサンプルを泳動させた。LAPおよび成熟TGFβ1の両方について、(b)におけるpHZhag-TGFβ1は、(a)におけるpHZ-TGFβ1よりも2〜3倍高い発現を示す。
【図12】pHZ-TGFβ1(a)およびpHZhag-TGFβ1(c)でトランスフェクトされたHEK293T細胞の細胞増殖曲線である。培養期間にわたる生存率(%)を、pHZ-TGFβ1(b)およびpHZhag-TGFβ1(d)について提示する。pHZhag-TGFβ1でトランスフェクトされたHEK293T細胞は、10日目(d)でも60%を超える生存率を示したが、pHZ-TGFβ1でトランスフェクトされた細胞は8日目(b)で60%未満の生存率を示した。また、pHZhag-TGFβ1でトランスフェクトされた細胞のより高い生存率は、図1(b)中のゲル上でのバックグラウンドタンパク質が非常に少ないことを反映していた。
【図13】HEK293T細胞からのTGFβ1の発現である。(a)別のプロモーターまたはシグナルペプチドを用いる発現試験:レーン1:モックベクター(陰性対照);レーン2:pHZsecベクター(CMVプロモーターおよびmIgκシグナルペプチド);レーン3:hagプロモーター;レーン4:hFbgAシグナルペプチド;レーン5:hFbgBシグナルペプチド;レーン6:hFbgBシグナルペプチド;レーン7:hIg8シグナルペプチド。hFbgBおよびhFbgGシグナルペプチドを用いる場合、発現はなかった。(b)モックベクター(陰性対照)、pHZ-TGFβ1(レーン2および3;マウスIgκシグナルペプチド)またはpHZA-TGF-β1(レーン4および5;ヒトFbgAシグナルペプチド)を用いる、TGF-β1発現の比較。
【図14】ベクターの模式図である。
【図15】HEK293T(a)およびHZ-293TS(b)からのヒトFGF8bの発現を示す。HEK293TからのFGF8bの発現よりもHZ-293TSからのFGF8bの発現の方が2〜3倍高かったが、これは予想されない観察であった。ゲルの下にある表に示されるように、細胞が懸濁液中にある場合、その生存する細胞密度(VCD)は5〜600万個の細胞/mlに到達した。
【図16】TGF-β1を発現する様々なベクターに関する遺伝子発現比較の結果である。様々なベクターを用いる懸濁293T培養物からの5日目でのTGF-b1発現レベルの比較である。1、陰性対照;2、マウスIgKシグナルペプチドを含むhCMVプロモーター;3、マウスIgKシグナルペプチドを含むhagプロモーター;4、ヒトフィブリノゲンα鎖シグナルペプチドを含むhCMVプロモーター;5、ヒトIgスーパーファミリー8シグナルペプチドを含むhCMVプロモーター。潜伏関連ペプチド(LAP)および成熟TGF-b1を矢印で示す。全ての細胞は約300万個の細胞/mlであり、90%の生存率である。レーン1=対照;レーン2=pHZ-TGF-β1;レーン3=pHZhag-TGF-β1(hCMV IE+β-アクチンプロモーター+β-グロビンイントロン+TGF-β1);レーン4=pHZA-TGF-β1(hCMVプロモーター+フィブリノゲンサブユニットAシグナルペプチド+TGF-β1);レーン5=pHZI-TGF-β1(hCMV IE+β-アクチンプロモーター+β-グロビンイントロン+ヒトIgスーパーファミリー8シグナルペプチド+TGF-β1)。
【図17】効率的な無タグ精製を示す。遺伝子操作されたヒト細胞から精製された組換えヒト(A)GM-CSF、(B)IL-4、(C)IL-6、および(D)Noggin。全てのサイトカインはタグを含まない天然タンパク質として発現される。効率的な精製プロトコルを開発して、天然の異種性糖鎖(A-D)およびジスルフィド結合(D)を有する真正サイトカインを得た。
【図18】サイトカインを発現させるのが困難な生産である。ヒト細胞発現系からの精製された組換えヒトIL-23(A)ならびに成熟TGF-β1、-β2、および-β3(B)を示す。ヒト細胞発現系は、糖鎖付加され、ジスルフィド結合したサブユニット(A:IL-23)の複雑性または潜伏関連ペプチド(LAP)から成熟形態(B:TGF-β1、-β2、および-β3)への繊細な転換プロセスに起因して、非ヒト細胞中では発現させるのが非常に難しいか、または適切に発現されないサイトカインを効率的に発現させた。
【図19】組換え生産された、真正ヒトVEGF165aホモダイマーである。大腸菌および遺伝子操作されたヒト293細胞から発現されたVEGF165を示す。大腸菌により発現されるタンパク質は、糖鎖ならびにモノマーおよびダイマーの混合物(それぞれ、19 kDaおよび38 kDa)を含まないが、ヒト細胞により発現されるタンパク質は45 kDaの完全に糖鎖付加されたホモダイマーである。
【図20A−B】より真正な、ヒトEPO対CHO EPOである。ヒト細胞から発現された組換えEPOは、天然のヒト血清EPOとしてSDS-PAGE上で34 kDaの見かけの分子量を示す(Skibeliら、2001 Blood 98:3626)が、CHO EPOは40 kDaの見かけの分子量を示す(A)。ヒトEPOは、CHO EPO (B)と比較して実質的に高い含量の天然グリカンを含有する。(C)ヒトEPOおよびCHO EPOの酸性グリカン構造を示す。ヒトEPOにおいて最も豊富なグリカンは、4アンテナ複合体型であるが、CHO EPOにおけるものは伸長型2アンテナ複合体型である。記号はGlcNAc(■)、HexNAc(□)、マンノース(黒丸)、ヘキソース(○)、フコース(黒塗り三角)、NeuAc(◆)である。
【図20C】図20A−Bの続きである。
【図21】本発明のヒト細胞中で発現されたIL23は、昆虫細胞から産生されるサイトカインよりも500倍強力である。ヒト細胞中で発現された真正IL-23は、ヒトTh17細胞の誘導について100倍より強力である。(A)10 ng/mlのPMAを用いて活性化されたマウス脾臓細胞からのIL-17の用量依存的分泌により決定されたIL-23活性を示す。(B)Th17に局在するサイトカインの存在下、2 mg/mlのプレート結合抗CD3および1 mg/mlの可溶性抗CD28で刺激されたヒトCD4+ T細胞からのIL-17の用量依存的分泌により決定されたIL-23活性を示す。
【図22A−D】ヒト細胞中で発現された真正サイトカインを用いるTh17細胞の効率的な分化である。健康なドナーから単離された全CD4+ T細胞を、Th17に局在するサイトカインの存在下、2μg/mLのプレート結合抗CD3および1μg/mLの可溶性抗CD28で刺激し、IL-23の滴定を行った。5日後、上清をELISAによるIL-17の測定のために収穫した。(A)〜(G)を参照されたい。図22(H)は、真正ヒトTGF-β1によるヒトTh17分化に関するフローサイトメトリー分析を示す。以下の実施例17を参照されたい。
【図22E−G】図22A−Dの続きである。
【図22H】図22E−Gの続きである。
【図23】樹状細胞分化に関する費用削減型および時間節約型G4プロトコルである。(A)選択されたサイトカインおよびケモカインのDC生成のプロフィールは、HZ G4 DC培地(培地交換せずに5 ng/mlのGM-CSF(ヒト細胞中で発現された真正ヒトタンパク質)およびIL-4(ヒト細胞中で発現された真正ヒトタンパク質))で生成されたDCが、リポ多糖(LPS)による成熟の前後のEC G4 DC培地(2回の培地交換を行う50 ng/mlの大腸菌GM-CSFおよびIL-4)中でのDCと同様のプロフィールを示すことを証明していた。(B)HZ G4 DC培地中で生成され、成熟したDCの同種異系MLRは、EC G4 DC培地中のDCよりもさらに良好であるようであった。
【図24】本発明のヒト細胞中で発現されたNogginで処理されたHES細胞は、OCT3/4陽性である。10〜20 pg/mlの組換え生産された、真正ヒトNogginで処理されたヒト胚性幹(hES)細胞は、未分化ES細胞のマーカーであるOct3/4を一貫して発現した。Oct3/4のウェスタンブロット分析を示す。陰性対照;2、陽性対照;3、10 pg/mlの真正Nogginによる処理;4、20 pg/mlの真正Nogginによる処理。
【図25】G-CSF抗体はヒト生物学をより正確にモニターするであろう。本発明に従うヒト細胞から発現された組換えヒトG-CSFは、真正に糖鎖付加されており、非ヒト細胞から発現されるタンパク質中には存在しないユニークなエピトープを提示する(A)。ウェスタンブロットにおいては、ユニークなエピトープに対して生じたモノクローナル抗体(HZ mAb1)は、ヒト細胞G-CSFのみを認識するが(B)、共通のエピトープに対する別の抗体(HZ mAb2)は両方とも認識する(C)。
【図26】新規細胞系(HZ-293TS)である。(A)無血清化学規定培地中での懸濁培養に適合させた293T細胞系である新規細胞系HZ-293TSを示す。(B)1、293Tおよび2、HZ-293TSからのFGF8b発現レベルの比較を示す。(C)1、293Tおよび2、HZ-293TSからのTGF-β1発現レベルの比較を示す。両方の事例において、293T細胞系と比較してHZ-293TS細胞系からのタンパク質発現レベルが2倍高かった。
【図27】シグナル切断の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
A. 概論
サイトカインと本発明
サイトカインは、生物がシグナル伝達分子として用いるタンパク質およびポリペプチド群である。多くのサイトカインは、30 kDa未満のサイズの糖タンパク質であり、特異的な、高親和性細胞表面受容体に結合する。免疫系におけるその中心的な役割に起因して、サイトカインは様々な免疫疾患、炎症性疾患および感染性疾患に関与し、研究、診断および治療において広く用いられている。現在、これらのタンパク質は大腸菌などの非ヒト細胞において主に生産されており、従って、以下に記載のように、関連する糖鎖パターンが存在しないことに起因して、真正性を欠く。さらに、いくつかの重要なサイトカインは、そのような非ヒト細胞発現系において生じる不十分なタンパク質溶解的プロセッシングまたは他の翻訳後修飾のため、商業的に利用可能ではない。表1を参照されたい。この点での真正とは、本発明の安定なヒト細胞発現方法に従って発現された組換えヒトサイトカインが、in vivoでヒト細胞中で通常発現されるその天然の内因性対応物と一致し、その天然の対応物と関連する特定の特徴を再現することを示している。すなわち、例えば、本発明の安定なヒト細胞方法を用いて発現された組換えヒトIFNαは、天然のヒトIFNαと類似しており、本質的に同じ構造、生物活性、大きさ、分子量、折畳みパターン、および糖鎖付加パターンを有する。かくして、本発明の方法により発現されたヒトタンパク質を、「真正タンパク質」、または「真正サイトカイン」または「組換え真正タンパク質」などと見なすことができる。そのin vivoでの対応物を、天然もしくは内因性サイトカインまたはタンパク質と見なすことができる。本発明の安定なヒト細胞発現系により発現されるタンパク質およびサイトカインのそのような「真正の」特徴を、以下により詳細に開示する。対照的に、大腸菌細胞、または酵母もしくは菌類細胞、または昆虫細胞、またはチャイニーズハムスター卵巣細胞などの非ヒト哺乳動物細胞から発現されるヒトIFNαタンパク質は、本文脈においては「真正な」ヒトIFNαタンパク質ではないと考えられる。従って、本発明の「真正な」組換え生産されたタンパク質は、限定されるものではないが、同じ構造、生物活性、大きさ、分子量、タンパク質折畳みパターン、ダイマー化特性、ジスルフィド結合特性、および表面結合糖鎖付加パターンなどの、天然型のタンパク質の1個以上の特徴および特性と高度に類似するものである。
【0065】
(a)サイトカインファミリー
それぞれの構成メンバーが他のメンバーと共有する構造的類似性、ならびにその各々の一次アミノ酸配列に基づく他の類似性に基づいて、多くのサイトカインを一緒にグループ化することができる。The Cytokine Handbook, Volumes 1および2、第4版、Thomson & Lotze(編)の第1章(その全体が参照により本明細書に組み入れられるものとする)を参照されたい。従って、共通の構造的特徴に従えば、個々のサイトカインの以下の「ファミリー」を、以下のようにグループ化することができる:
(1)IL-2/IL-4:代表的なメンバーとしては、IL-2、IL-4、IL-5、GM-CSFが挙げられる。
【0066】
(2)IL-6/IL-12:代表的なメンバーとしては、IL-6およびIL-12が挙げられる。
【0067】
(3)インターフェロン-α/β:代表的なメンバーとしては、IFN-α(多くのサブタイプ)、IFN-β、IFN-ω、およびIFN-τが挙げられる。
【0068】
(4)腫瘍壊死因子:代表的なメンバーとしては、TNF-α、LT-α(TNF-β)、LT-β、Fasリガンド、CD40リガンド、TRAIL、BAFF、APRIL、RANK、およびLIGHTが挙げられる。
【0069】
(5)IL-10:代表的なメンバーとしては、IL-10、IL-19、IL-20、IL-22、およびIL-24が挙げられる。
【0070】
(6)IL-17:代表的なメンバーとしては、IL-17およびIL-25が挙げられる。
【0071】
(7)インターロイキン-1:代表的なメンバーとしては、IL-1α、IL-1β、IL-1受容体アンタゴニスト、およびIL-18が挙げられる。
【0072】
(8)TGF-β:代表的なメンバーとしては、TGF-β、骨形態形成タンパク質、インヒビン、およびアクチビンが挙げられる。
【0073】
(9)ケモカイン:代表的なメンバーとしては、CXCサブファミリー(CXCLI-16)、CCサブファミリー(CCLI-28)、Cサブファミリー(CLI/リンホタクチン)、およびCX3Cサブファミリー(CX3CLI/フラクタルキン)が挙げられる。
【0074】
多くのサイトカインは、単純なポリペプチドまたは糖タンパク質である。それらのうちのいくつかは、ダイマーを形成することができ、いくつかは一過的に産生され、特異的高親和性細胞表面受容体に結合することにより生物学的応答および細胞カスケードを誘導する。表現型的には、そのような応答としては、細胞増殖速度の増加もしくは低下、細胞分化状態の変化、ならびにいくつかの分化した機能の発現における変化が挙げられる。かくして、例えば、インターロイキン-1(IL-1)はT細胞を活性化する;IL-2は抗原により活性化されたTおよびB細胞の増殖を刺激する;IL-4、IL-5およびIL-6はB細胞の増殖および分化を刺激する;インターフェロンγ(IFNγ)はマクロファージを活性化する;ならびにIL-3、IL-7および顆粒球単球コロニー刺激因子(GM-CSF)は造血を刺激する。表2(microvet.arizona.edu/courses/MIC419/Tutorials/cytokines.html)(参照により本明細書に組み入れられるものとする)は、特定のサイトカインの起源、標的、および機能に関するいくつかの追加情報を強調する。
【0075】
サイトカインは、モノマーおよびダイマーとして存在することができる。後者に関して言えば、サイトカインは、同じサイトカインの2個のモノマーがジスルフィド結合を介して一緒に連結されたホモダイマーとして、またはIL12、IL23、IL27、およびIL35に関する場合などはヘテロダイマーとして存在することができる。in vivoの天然のヒト細胞中では、2種の異なるサイトカイン遺伝子がゲノムから発現され、それぞれのサイトカイン上の好適な残基間でのジスルフィド結合形成を介して一緒に連結される。人工的な組換え系においては、これらの遺伝子を異なる培養物中で別々に発現させ、得られるサイトカインタンパク質を抽出および単離した後、さらなる結合工程において一緒に連結させる必要がある。しかしながら、本発明に従えば、安定なヒト細胞を両方の所望のサイトカイン遺伝子を用いてトランスフェクトし、それぞれの場合、得られるタンパク質産物は折畳み、エピトープ提示、および糖鎖付加に関して真正であるため、2種のサイトカインは天然に一体化し、ジスルフィド結合を介してヘテロダイマーを形成するであろう。従って、その場合の上清は、既に形成されたヘテロダイマーを含むであろう。
【0076】
本発明は、これらの特定のサイトカインまたはこれらの特定のタンパク質をコードするポリヌクレオチドに限定されない。むしろ、本発明の一態様は、存在することが知られているか、もしくは特定のサイトカインパラメーターに対するその効果を決定するために作られるサイトカイン突然変異体、相同体、スプライス変異体、またはアイソマーの組換え発現である。かくして、本発明はまた、天然のサイトカイン配列とは異なる1個以上のアミノ酸置換、欠失、挿入、もしくはスプライス結合を含むか、またはいくつかの疾患もしくは障害と関連する可能性がある突然変異したサイトカイン配列である真正サイトカイン変異体の組換え生産も包含する。サイトカインDNA配列を、そのような突然変異を含むように遺伝子操作し、研究のために使用して、サイトカイン機能もしくは関連するサイトカイン経路の下流に対する、その、もしくはそれらの突然変異の効果を確認することができる。従って、これらのタンパク質および突然変異体および変異体は全て、本発明のヒト発現系において発現させた後、本明細書に記載のように用いることができるような、本発明の発現カセット中にクローニングされるポリヌクレオチドに設計することができる。
【0077】
(b)機能ならびに喘息およびアレルギーなどの関連する疾患
それぞれのサイトカインは、それを産生する細胞ならびに遠い標的細胞(エンドクライン)、それらを産生する細胞と近接する標的細胞(パラクライン)またはサイトカインを産生するのと同じ細胞(オートクライン)であってよい、それが作用する標的細胞に応じて複数の機能を有してもよい。
【0078】
上記で同定されたファミリーのうち、4つの主要なカテゴリーのサイトカインが存在する:
(1)インターフェロン:インターフェロンα(IFNα)は白血球から軟膜層により産生され、様々な悪性腫瘍および免疫障害の治療に用いられている。インターフェロンβ(IFNβ)は線維芽細胞により産生され、多発性硬化症の治療において現在評価中である。インターフェロンγ(IFNγ)は活性化T細胞により産生され、特に、アレルギー疾患において重要な免疫調節分子である。
【0079】
(2)コロニー刺激因子:様々な造血前駆細胞を刺激することができ、再生不良性貧血および骨髄移植における治療法として評価されている、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、ならびにインターロイキン(IL)-3;ならびにRBC、WBCおよび巨核球(血小板)への最終的な分化のための様々な前駆体エレメントへの骨髄幹細胞の分化を引き起こすのに必要なサイトカインとして最近証明されたc-kitリガンド(幹細胞因子)が挙げられる。
【0080】
(3)腫瘍壊死因子(TNF):TNFαは活性化マクロファージにより産生され、TNFβは活性化T細胞(THとCTLの両方)により産生される。これらの分子は、敗血性ショックの病因に関与するようである。TNFはヒト腫瘍を治療するのに臨床的に有用であり得る。
【0081】
(4)インターロイキン:単球およびマクロファージ、T細胞、B細胞およびさらに非白血球などの様々な細胞型によって産生される。アレルギーに関与する主要なインターロイキンは、IL-4、IL-5、IL-10およびIFNγである。IL-4はB細胞を分化させることによりIgE産生への切り替えを引き起こす。IFNγはそのスイッチを阻害し、特異的IgEの産生を阻害することができる。IL-10はIFNγの活性を実際に阻害し、元々のIL-4をIgEカスケードにおいて進行させることができる。かくして、アレルギー応答を、過剰のIL-4および/もしくはIL-10のアレルゲン特異的産生、十分なIFNγ産生の欠如またはその両方と見ることができる。アレルギー反応の主要な成分である好酸性炎症は、IL-5およびTNFαの制御下にある。
【0082】
従って、組換え生産された真正ヒトサイトカイン、またはそれに対して生成した抗体を、特定のサイトカインの機能が関与するそのような障害または疾患を有する個体に投与することができ、例えば、多発性硬化症の治療にはIFNβを投与することができる。
【0083】
3. 糖鎖付加(グリコシル化)と本発明
多くのタンパク質は、その物理的および化学的特性、例えば、MW、pI、折畳み、安定性、および生物活性を変化させ得る翻訳後修飾を受ける。糖鎖付加は、最も一般的な方の翻訳後修飾であり、全ての血漿タンパク質の80%が糖鎖付加され、最も重要な公知のヒト天然インターフェロンα種の大部分が糖タンパク質であると見積もられている。
【0084】
糖タンパク質は、タンパク質に共有結合したオリゴ糖または糖鎖である。そのような糖鎖の結合は、in vivoでは、細胞内での刺激に対する感受性が高い特定のグリコトランスフェラーゼにより行われる。糖タンパク質の炭水化物成分は、タンパク質の折畳み、オリゴマー集合、および分泌、ならびに発現されるタンパク質の可溶性および凝集に影響するため、分子の官能性に影響する。従って、これらの多糖類糖鎖は、タンパク質の好適な生物活性および安定性を付与するに至る様々な機能を有する。さらに、特定のタンパク質結合グリカンは、核および細胞質に豊富であり、そこではそれらは調節スイッチとして役立つようである。
【0085】
in vivoで発現されるタンパク質に共有結合する2つの最も一般的なクラスのそのような糖鎖は、(1)コンセンサス「Asn-X-Ser/Thr」内でタンパク質のアスパラギン残基に共有結合し、共通の五糖類コア領域を有し、3つのクラス:(a)高マンノース型、(b)複合型、および(c)ハイブリッド型に分けられるN-グリカン糖鎖;ならびに(2)タンパク質中のセリンもしくはトレオニン残基にN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を介して該タンパク質に結合したO-グリカンである。これらの方法で発現されたタンパク質に糖鎖を結合させる対応する糖鎖付加経路は、典型的には細胞質ゾル、小胞体およびゴルジ複合体に存在し、これらの結合を容易にするためのグリコシダーゼおよびグリコシルトランスフェラーゼを含む。
【0086】
機構的作用のいかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、本発明のヒト細胞系において発現されるヒトタンパク質が非ヒト細胞において発現される対応物よりも優れている理由は、上記の理由から、その真正に糖鎖付加された表面および好適に折畳まれた三次構造にある。すなわち、in vivoのヒト細胞環境においては、ヒト細胞の翻訳後修飾機構は、天然に産生されたタンパク質が共有結合した糖鎖の配列中に含まれ、また腎臓系を介した血流からのタンパク質の消失を遅延させるのを助けるように、オリゴ糖またはグリカン糖鎖を内因的に発現されたタンパク質の外側表面に結合させる。従って、循環する「真正」ヒトタンパク質の半減期は、非ヒト細胞から発現された同じタンパク質と比較して増加する。
【0087】
従って、非ヒト細胞は導入された発現ベクターからヒトポリヌクレオチド配列を発現することもできるが、非ヒト細胞環境はそのような翻訳後修飾の役には立たない。結果として、得られる発現されたタンパク質は必然的に、適切に折畳まれ、糖鎖付加されたそのin vivoでのヒト対応物に関して真正性を欠く。この理由から、研究、診断、および治療目的における非ヒト細胞から発現、精製されたヒトタンパク質の使用は、劣っており、望ましくない。
【0088】
(a)ヒト対非ヒトのパターン
非ヒト細胞発現系、例えば、細菌、酵母、真菌、昆虫、および非ヒト哺乳動物系は、真正ヒトタンパク質を産生しない。例えば、大腸菌細胞などの一般的な細菌発現系は、組換え哺乳動物タンパク質に糖鎖付加しない。酵母および真菌発現系はヒトDNA配列を発現することができるが、酵母および真菌細胞に由来する得られる糖鎖付加パターンは、ヒト細胞の糖鎖付加プロセッシングとは有意に異なる。例えば、酵母および真菌細胞は、非ヒト高マンノース糖鎖を、組換え発現されたヒトタンパク質に結合させる。このマンノース鎖は免疫原性であり、タンパク質は腎臓系を介して系から非常に素早く消失する。昆虫細胞発現系は酵母および真菌と同様であるが、昆虫により発現されたタンパク質に結合されるようになるマンノース鎖の長さが、典型的には酵母系において結合されたものよりも短い。さらなる詳細については、ZopfおよびVergis, Pharmaceutical Visions, Neose Technologies, Inc (www.neose.com)を参照されたい。
【0089】
非ヒト哺乳動物細胞発現系に関しては、チャイニーズハムスター卵巣細胞が当業者により最も一般的に用いられている。CHO細胞はヒト細胞とは異なる糖鎖付加を行う。CHOグリカン構造はヒトと同様ではない。例えば、CHO細胞においては、発現されたIFN-γは置換フコース残基および高マンノースオリゴ糖鎖を含む;トランスジェニックマウスにおいては、IFN-γは変異N-グリカン構造を有し、昆虫細胞においては、IFN-γはトリマンノシルコア構造を有する。
【0090】
また、ヤギミルクなどにおいて、ヒトタンパク質を生産するためにトランスジェニック動物が用いられるが、糖鎖付加不足および非ヒトシアル酸(N-グリコリルノイラミン酸)の付加などの同様の問題が存在する。
【0091】
対照的に、ヒトタンパク質上のN-グリカンは、N-アセチルノイラミン酸で終結する特異的な順序を有する。従って、本発明の一態様は、ヒト糖鎖のみを含むヒトタンパク質の組換え発現である。すなわち、本発明の「真正」タンパク質は、(1)N-アセチルグルコサミン、(2)フコース、(3)マンノース、および(4)N-アセチルノイラミン酸で終結するガラクトース鎖の1個以上の組合せを含む。表1および図4を参照されたい。従って、ヒト細胞環境は、組換え発現される真正ヒトタンパク質をプロセッシングするための好適かつ正確な構成要素および機構を提供する。かくして、ヒトタンパク質およびヒトサイトカインの文脈においては、真正糖鎖付加パターンを有する組換え生産された真正ヒトサイトカイン/タンパク質としては、限定されるものではないが、(1)N-アセチルグルコサミン、(2)フコース、(3)マンノース、および(4)N-アセチルノイラミン酸で終結するガラクトース糖鎖の1個以上の組合せを含む組換えタンパク質が挙げられる。
【0092】
いくつかの場合、全てではないが、本発明に従って発現される個々のサイトカインタンパク質は、発現実行から単離された他のサイトカインと同じ糖鎖付加パターンまたは糖鎖付加度を含むであろう。かくして、特定のヒト細胞培養物から発現された他のものよりも、より多いか、もしくはより少ない結合ヒト糖鎖を含むか、またはより長いか、もしくはより短い結合糖鎖を含むように加工された発現サイトカインのサブ集団が存在してもよい。これは不利益ではなく、むしろin vivoでの糖鎖付加状態を近似するものである。かくして、タンパク質ゲル上で可視化した場合、主に染色されるバンドの周囲にスメアが現れる可能性がある。本発明の発現系においては、このスメアはタンパク質夾雑または分解されたタンパク質もしくはデブリではなく、むしろタンパク質サイズの分布において、分子量が糖鎖付加の程度および数または組換え発現されたタンパク質に結合した糖鎖のそれぞれのサイズに起因する。かくして、糖鎖付加がより多くなるか、またはより長い糖鎖が結合すれば、糖鎖付加されたタンパク質もしくはサイトカインの合計の見かけの分子量が増加するであろう。
【0093】
B. 概説
従って、本発明は、in vitroでヒト細胞の安定な培養物から真正ヒトタンパク質を生産するための迅速かつ拡張性のある方法に関する。本発明のヒト細胞発現系を、ヒトタンパク質をコードする新規発現ベクターの導入、ならびにそのタンパク質をコードするポリヌクレオチドのその後の発現を容易にする懸濁媒体にとってより受け入れやすくする。
【0094】
1. 利点
本発明のヒト細胞および方法を用いて生産されるヒトタンパク質は、特に、タンパク質折畳みならびにタンパク質溶解的切断処理および糖鎖付加などの翻訳後修飾に関して、非ヒト細胞から発現されたものよりも真正の「ヒト様」特性および構造を有し、示す。これらの理由から、本発明の方法および試薬を用いて発現されたヒトタンパク質は、その内因性の天然に発現される天然型により近い生物活性および循環半減期を示す。さらに、組換え発現されたヒトタンパク質は、折畳みおよび通常に利用可能なジスルフィド結合形成残基に関して天然タンパク質とより構造的に同等であり、結果として、その非ヒト細胞により発現された対応物よりも免疫原性が低い。同様に、前記ヒト細胞は好適なヒト酵素を含有するため、非ヒト細胞系と違って、その細胞環境および細胞質器官が、ヒトタンパク質を認識し、操作するために理想的に適合するため、発現された組換えタンパク質をより容易に糖鎖付加することができる。従って、本発明の安定なヒト細胞培養物中で発現された組換えサイトカインの糖鎖付加パターンおよび状態は糖鎖付加されているが、それらはin vivoで内因的に生産されたものである。
【0095】
さらに、組換え発現されるタンパク質の表面は天然の表面とより類似しているため、それは高親和性抗体の作製にとって理想的であるより真正な表面エピトープを有する。従って、そのような高親和性抗体は治療、診断、および研究開発試験において非常に有用である。それらは真正の組換え発現されたタンパク質に対して生じたものであり、従って、内因性の天然に発現された対応するタンパク質をより特異的に認識することができるため、より少量の抗体を個体に投与するか、またはin vitro方法において用いることができる。その理由のため、本発明の真正タンパク質に対して生じたわずかな用量の特定の抗体を用いて、本明細書の他の場所で詳細に説明されるように、さもなければ多くのより濃縮された用量を必要とする治療を達成することができる。より低濃度のそのような抗体の使用は、投与頻度を減少させることができることを意味するだけでなく、副作用の発生率をも低下させるか、または完全に排除することができることを意味する。さらに、本発明のヒト細胞系、方法および組成物は、ヒトタンパク質、特に、不可能ではなくとも、そのような他の非ヒト細胞において発現させることがこれまで困難であることが有名であったTGFβ1などの特定のサイトカインを発現させることを可能にする。例えば、本発明の方法を用いてTGFβ1の産生を証明する実施例および図5を参照されたい。
【0096】
本明細書で説明されるように、本発明のヒト細胞培養物は安定である。以下の「方法」および実施例を参照されたい。すなわち、細胞の同じ培養物を繰り返し使用して、ヒトサイトカインなどの任意の所望のヒトタンパク質を発現させた後、上清中に分泌させることができる。このヒト細胞は、抗生物質選択技術を用いて無血清培地中で増殖するその能力について選択されているため、安定である。この有意性は数倍である:同じ容量のヒト細胞を、補充することができない存在する系と違って、長期間にわたって持続させることができる。これは、培養物の遠心分離したアリコートのヒト細胞を、保存培養物に戻し、再増殖させることができることを意味する。
【0097】
対照的に、従来技術のヒト細胞系は安定ではないため、一定容量の培養物は発現されたタンパク質を収穫する機会が1回しかない。すなわち、一度、細胞が溶解されるか、またはタンパク質を含有する上清を単離するための遠心分離により回収されたら、従来技術のヒト細胞は全ての意図および目的について死んでおり、使用できない。従って、本発明のヒト細胞の再利用性は非常に魅力的である。
【0098】
これは、同じ容量の細胞を何回も再使用することができることを意味するだけでなく、本発明の方法が大規模プロセッシングにも適用可能であることを意味する。前記ヒト細胞の安定性は早い段階で確立されているため、該ヒト細胞は任意の容量の培養培地中で生存することができる。図1を参照されたい。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50リットルもしくは50リットルを超える培養物、またはその間の任意の整数において、ヒト細胞の生きた培養物を維持することが可能である。従って、本発明の方法により、商業的に望ましい収率での、組換え発現されるサイトカインなどの組換えタンパク質の商業規模の生産が可能になる。
【0099】
かくして、本発明のヒト細胞発現系はそれ自身を拡張性の高いものにし、それによって、単位時間あたりの真正に生産されるタンパク質の収率を増加させる。図2を参照されたい。前記細胞培養物は無血清培地を用いるため、得られる上清は本質的には分泌された発現組換えタンパク質のみを含有する。結果として、最終産物、すなわち、組換え発現されたタンパク質の純度は非常に高い。結果として、単離された発現されたタンパク質の濃度および生物活性が高く、細胞デブリおよび他の望ましくないタンパク質との夾雑の可能性は低い。
【0100】
発現されたヒトサイトカインおよび分泌された上清の純度もまた、正確かつ真正な生物活性の確立において、ならびにそれに対して生じた抗体がそれ自身において、およびそれ自身の高い結合親和性と高度に特異的であることも確保するために重要な因子である。従って、安定なヒト細胞培養物を増殖させるための無血清培地の使用は、たとえあったとしても、発現されたサイトカイン溶出物または上清中にタンパク質または細胞デブリが夾雑する可能性が低いため、この点に関して非常に役立つものである。
【0101】
同じ線に沿って、組換えタンパク質はヒト細胞から、無血清培地中に分泌されるため、発現され、分泌されたタンパク質を単離するのは比較的容易である。すなわち、上清から発現されたタンパク質を単離するために「His-Tag」単離スキームを用いる必要がない。His-tagは、典型的には、発現されるタンパク質が6個の残基を含む融合物であり、続いてカラムの内側にコーティングされた対応する残基に結合されるようになるような、発現カセット中に遺伝子操作された6個のヒスチジンアミノ酸残基のストレッチである。従って、本発明の発現されたタンパク質を単離するためにそのようなタグを用いる必要がないため、真正ヒトタンパク質の生産に向かう追加の工程が排除される。
【0102】
かくして、本発明の方法は、商業レベルに拡張可能であり、発現される組換えタンパク質の夾雑を排除し、その純度収率を増加させる、無血清培地中に懸濁された再使用可能な、自己永続的なヒト細胞培養物を使用する。その得られた組換えタンパク質は、組換え発現された真正タンパク質がその内因性の天然の対応物と高度に類似するように、その折畳みおよび糖鎖付加状態に関して高度に真正である。
【0103】
2. 方法
(a)ヒト細胞の調製
ヒト細胞を、無血清培地上、単層としてペトリ皿上に塗布する。次いで、無血清培地上で生存する細胞を、血清を含有する培地中に入れて、実用細胞バンクを作製する。無血清培地としては、限定されるものではないが、293 SFM II、CD 293、FreeStyle 293、Hybridoma-SFM(Invitrogen)、およびEx-Cell 293 (JRH Biosciences)が挙げられる。
【0104】
(b)トランスフェクション
好適な濃度のプラスミドDNAとトランスフェクタントを、細胞の集密層を含むペトリ皿に添加する。有用なトランスフェクタントとしては、限定されるものではないが、FuGene 6、FuGene HD(Roche社製);Lipofectamin、Lipofectamin 2000、293fectin (Invitrogen)、およびPolyethyleneimineが挙げられる。プラスミドDNAを、好適にトランスフェクトされたヒト細胞の選択を補助するための抗生物質耐性遺伝子を含むように遺伝子操作する。以下の小節を参照されたい。
【0105】
(c)抗生物質への曝露後のトランスフェクト細胞の選択
工程(b)のトランスフェクト細胞を、トリプシン処理(ペトリ皿プレートから細胞を剥離させる)後の遠心分離により収穫した後、ネオマイシン(G418)、ヒグロマイシン、ゼオシン、もしくはブラスチシジンなどの、特定の濃度の抗生物質、例えば、400μg/mlもしくは800μg/mlの抗生物質を含む血清培地中に、一定時間再懸濁する。次いで、生存する細胞コロニーを収穫し、さらに一定時間、別の周回の抗生物質に曝露する。
【0106】
(d)細胞適合化
次いで、抗生物質処理を生き残る細胞を、例えば、1%血清、および抗生物質を含む低血清培地中に再懸濁して、液体培養物中での生存能力および増殖を維持するのに十分に安定である細胞を決定する。この「適合化」期間は2〜3週間かかり、この時間の後、細胞を、抗生物質のみを含む無血清培地に移し、再度一定時間、「適合」させるために静置する。
【0107】
従って、適合化された細胞のそのような懸濁液は、トランスフェクションおよび抗生物質選択の困難に耐え得るヒト細胞の安定な培養物である。さらに、これらの細胞を連続的に増殖させ、より大量の培養物に接種するのに用いることができ、また、将来の培養物の接種のために新鮮な培地中で凍結保存することもできる。
【0108】
(e)懸濁抗生物質耐性ヒト細胞からのサイトカインの生産
プラスミドDNAは、(d)に記載の大量培養懸濁液中で連続的に増殖している抗生物質耐性ヒト細胞から分泌されるサイトカイン遺伝子またはそれをコードするポリヌクレオチドを発現する。従って、その大量の懸濁液のアリコートを、穏やかに遠心分離して、ヒト細胞を沈降させ、所望のサイトカインを含有するであろう上清を分離することができる。ヒト細胞が増殖している懸濁培地は無血清もしくは無タンパク質であるため、他のタンパク質または細胞デブリなどの夾雑細胞材料は、たとえあったとしても、少ない。従って、分泌されたサイトカインを含む上清は比較的純粋である。
【0109】
次いで、ヒト細胞ペレットを再懸濁し、同じか、もしくは異なる懸濁液もしくは培地中に再導入して、発現プロセスを再始動させることができる。かくして、全体の系は反復可能であり、従来技術の発現系と違って、1回使用可能な細胞懸濁液ではない。
【0110】
(f)収率
本発明の方法により生産することができるタンパク質の収率は、所望のポリヌクレオチド構築物を発現させるのに用いられるヒト細胞培養物の容量、サイトカインおよびそのサイズ、ならびに培養培地自体の構成要素基剤に依存し得る。培養培地の特定の成分、温度、pHを変化させるか、または糖鎖付加機構を容易にするために混合物中にグリカン前駆体を含有させることにより、収率に影響させることがでできる。従って、本発明のヒト細胞発現系からの発現されたヒトサイトカインの収率は、1〜500 mg/リットル、または500 mg/リットルを超えるものであってよい。従って、本発明は、約1 mg/リットル、約2 mg/リットル、約3 mg/リットル、約4 mg/リットル、約5 mg/リットル、約6 mg/リットル、約7 mg/リットル、約8 mg/リットル、約9 mg/リットル、約10 mg/リットル、約20 mg/リットル、約30 mg/リットル、約40 mg/リットル、約50 mg/リットル、約60 mg/リットル、約70 mg/リットル、約80 mg/リットル、約90 mg/リットル、約100 mg/リットル、約120 mg/リットル、約140 mg/リットル、約160 mg/リットル、約180 mg/リットル、約200 mg/リットル、約220 mg/リットル、約240 mg/リットル、約260 mg/リットル、約280 mg/リットル、約300 mg/リットル、約320 mg/リットル、約340 mg/リットル、約360 mg/リットル、約380 mg/リットル、約400 mg/リットル、約420 mg/リットル、約440 mg/リットル、約460 mg/リットル、約480 mg/リットル、もしくは約500 mg/リットルまたは約500 mg/リットル以上の本発明のヒト細胞発現系からのサイトカインの収率を意図する。本発明はまた、任意のこれらの濃度の間の収率も意図する。
【0111】
かくして、本発明の収率は、約10〜50 mg/リットル、もしくは約50〜100 mg/リットル、もしくは約150〜200 mg/リットル、もしくは約200〜250 mg/リットル、もしくは約250〜300 mg/リットル、もしくは約300〜350 mg/リットル、もしくは約350〜400 mg/リットル、もしくは約400〜450 mg/リットル、もしくは約450〜500 mg/リットル、もしくは約500〜550 mg/リットル、もしくは約550〜600 mg/リットル、もしくは約600〜650 mg/リットル、もしくは約650〜700 mg/リットル、もしくは約700〜750 mg/リットル、もしくは約750〜800 mg/リットル、もしくは約800〜850 mg/リットル、もしくは約850〜900 mg/リットル、もしくは約900〜950 mg/リットル、もしくは約950〜1,000 mg/リットルであってよい。
【0112】
換言すれば、本明細書に開示される方法に従って作製された本発明の組換え生産された真正タンパク質の収率は、他の細胞発現系から得られる収率よりも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍高いものであってよい。
【0113】
3. ベクター設計
本発明の一態様は、
(1)CMV極初期エンハンサーエレメント(CMV IE)などのサイトメガロウイルスエンハンサーエレメント;
(2)(i)ヒトアクチンプロモーター、(ii)ヒト血清アルブミンプロモーター、および(iii)ヒトフィブリノゲンプロモーターからなる群より選択されるヒトプロモーター配列;
(3)ヒトグロビン遺伝子イントロン;ならびに
(4)免疫グロブリンスーパーファミリー8シグナルペプチドもしくはα-フィブリノゲンシグナルペプチドなどのシグナルペプチド、
を含む新規発現カセットである。
【0114】
前記発現ベクターはまた、後に細胞中で発現させることができるように、シグナルペプチドの下流に位置された、上記のエレメント(1)〜(4)に機能し得る形で連結された目的の核酸配列または所望のポリヌクレオチドを含んでもよい。
【0115】
所望のポリヌクレオチド配列は、所望のサイトカインまたはサイトカイン断片をコードするものであってよい。前記発現カセットはまた、サイトカインポリヌクレオチドを発現させるのに用いられる調節エレメント間にクローニングすることができるか、またはサイトカイン-シグナルペプチド融合タンパク質を発現させるのに用いられる発現カセットとは無関係にその自身のプロモーターおよびターミネーターに機能し得る形で連結することができる、抗生物質耐性遺伝子の配列を含んでもよい。
【0116】
かくして、本発明の発現ベクターとしては、例えば、以下のもの:
1. (i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、および(iii)ヒトβ-グロビンイントロンの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含むpHZhag;
2. (i)hCMVプロモーター、および(ii)ヒトフィブリノゲンサブユニットAシグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含むpHZA;
3. (i)hCMVプロモーター、および(ii)ヒトIgスーパーファミリー8シグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含むpHZI;
4. (i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、(iii)ヒトβ-グロビンイントロン、および(iv)ヒトフィブリノゲンサブユニットAシグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含むpHZhagA;
5. (i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、(iii)ヒトβ-グロビンイントロン、および(iv)ヒトIgスーパーファミリー8シグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含むpHZhagI;
6. (i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、(iii)ヒトβ-グロビンイントロン、および(iv)TGF-β1の機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含むpHZhag-TGFβ1;ならびに
7. (i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、(iii)ヒトβ-グロビンイントロン、(iv)ヒトIgスーパーファミリー8シグナルペプチド、および(v)TGFβ1の機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含むpHZhagI-TGFβ1、
が挙げられる。
【0117】
対照発現カセットとしては、
1. (i)hCMV IE、(ii)ニワトリβ-アクチンプロモーター、および(iii)ウサギβ-グロビンイントロンの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含むpCAG;ならびに
2. (i)hCMVプロモーター、および(ii)mIg-κリーダーの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含むpHZsec、
が挙げられる。
【0118】
(a)クローニング
サイトカインのクローニングを、遺伝子工学の当業者には利用可能な様々な方法により達成することができる。例えば、全RNAまたはポリ-A RNAを、特定のサイトカイン発現(例えば、リンパ球)が豊富なヒト組織サンプルから精製し、遺伝子特異的RT-PCRの鋳型として用いることができる。従って、予め作製されたcDNAライブラリーを、商業的な起源から購入し、PCRを用いてサイトカインcDNAを直接増幅することができる。さらに、合成オリゴヌクレオチドを構築して、その遺伝子受託(アクセッション)番号と共にNational Center for Biotechnology Informationにおいて入手可能な配列情報に基づいて、サイトカインの合成遺伝子を作製することができる。さらに、完全長のcDNAクローンを、例えば、IMAGEクローンコンソーシアム(image.llnl.gov/)またはOpenbiosystems (Huntsville, AL)から取得することができる。完全長サイトカインcDNAクローンを、Openbiosystems (Huntsville, AL)から取得した。クローニングされたサイトカインの遺伝子受託番号を、表3に提示する。
【0119】
サイトカインは、典型的には、そのN末端に、例えば、Swiss-Protタンパク質知識ベースを用いて、当業者には利用可能ないくつかの道具により同定することができるシグナルペプチドを有する。いくつかのサイトカインは、利用可能な道具により同定することもできる異なる転写に起因する変異体を有する。分泌されるサイトカインの配列を、上記の小節10に列挙する。様々なシグナルペプチドを有するサイトカインの迅速なクローニングを容易にするために、発現されたサイトカインがシグナルペプチドを含むように、発現カセットを遺伝子操作することができる。例えば、哺乳動物細胞(例えば、CHOおよびHEK293)中での分泌される組換えタンパク質の生産にとって好適なpSecTag2c(Invitrogen, Carlsbad CA)を、正確な読み枠の向きにシグナルペプチドをコードするDNAを組込むための好適なクローニングおよび制限消化戦略を用いる部位特異的突然変異誘発により、本発明のベクター中に遺伝子操作して、それを一緒に連結されたサイトカイン配列と共に適切に転写および翻訳させることができる。例えば、突然変異誘発プライマーSecTag2c-srfIf (TCCACTGGTGACGCGCCCGGGCCGGCCAGGCGCGCC) (配列番号34)およびSecTag2c-srfIr (GGGGCGCCTGGCCGGCCCGGGCGCGTCACCAGTGGA) (配列番号35)を用いて、Igκリーダー配列(図27を参照)と読み枠を合わせてSrg I制限部位を導入することができる。
【0120】
4. ヒト細胞
本発明のタンパク質を発現させるのに用いることができるヒト細胞の型としては、ヒト幹細胞、ヒト前駆細胞、ヒト腎臓細胞、ヒト網膜由来PER-C6細胞、ヒト胚性腎細胞系が挙げられる。特に有用なヒト細胞系としては、限定されるものではないが、HEK 293細胞ならびにHEK 293T、HEK 293S、およびHEK 293 EBNAなどのその誘導体が挙げられる。
【0121】
特に、本発明は、本明細書で無血清培地および化学規定培地に対して適合させたHZ-293TSと命名された新規ヒト細胞系を提供する。実施例2を参照されたい。HZ-293TSと命名された細胞系は、 付けでATCC生物寄託受託番号 の下に寄託されており、当該受託番号を有する。
【0122】
5. 製品
(a)サイトカイン
本発明の方法に従って、ヒト細胞からのヒトサイトカインの培地規模および大規模生産を行うことができる。本発明の方法は、TGF-βスーパーファミリーの発現させることが難しいタンパク質などの60種の無タグサイトカインを生産するのに成功した。例えば、例としてGM-CSF、IL4およびVEGF165を用いて、高度に真正の糖鎖付加されたサイトカインを発現させ、ヒト細胞から単離し、炎症、癌の治療のその後の開発、幹細胞研究、および抗体の生成のための非常に好ましい試薬として用いることができる。さらに、本発明の技術により生産されるヒトサイトカインはより天然に糖鎖付加されるだけでなく、完全に機能的な複合体を作製するのに必要になることがある好適なジスルフィド結合も無傷である。これは、発現されたモノマー間のジスルフィド結合が可能ではない特定の非ヒト細胞中での状況とは異なる。
【0123】
ヒスタミンタグなどの精製もしくは単離に必要なタグを用いない高度に真正なヒトタンパク質を生産することができることが、本発明の高度に望ましい特徴である。本発明の方法およびベクター系により、その天然の内因性ヒト型との構造、生化学、および機能的同一性の点で高度に真正であるヒトタンパク質の発現が可能になる;これは、本発明の真正タンパク質配列をコードするポリヌクレオチドが、続いて発現されるタンパク質の精製および単離を補助するヒスチジンをコードする残基の組込みを必ずしも要しないことを意味する。かくして、本発明の一態様は、ペプチドタグを用いずに真正ヒトタンパク質を組換え生産するための方法、および「無タグ」である真正タンパク質自体である。従って、本発明の「真正」タンパク質の一態様は、それが無タグであることである。しかしながら、これは、本発明の方法およびベクターと共にヒスチジンタグなどのタグの使用可能性を排除することを意味するわけではない。すなわち、本発明はまた、ヒスチジンタグなどのタグを、真正タンパク質の同定、精製、および単離を補助するためにそのNまたはC末端に融合タンパク質として組込む真正タンパク質の組換え生産も包含する。
【0124】
本発明の安定化されたヒト細胞発現系中で、以下のサイトカイン:アクチビンA、アクチビンB、アクチビンA/2xINHbA、アクチビンB/2xINHbB、AMH/MIS、アルテミン、BDNF、BMP2、BMP15/GDF9B、BMP2/BMP2A、BMP3/オステオゲニン、BMP4、BMP4/BMP2B、BMP5、BMP7/OP-1、BMP1、BMP10、BMP15/GDF9B、β-NGF、シスタチンC、デルタ1、EGF、エリスロポエチン(EPO)、酸性FGF、塩基性FGF、FGF10、FGF5、FGF7、FGF8b、FLT3リガンド、G-CSF、GDF15、GDF2/BMP9、GDF3、GDF5/BMP14、GDF8/ミオスタチン、GDF9、GDNF、GM-CSF、HGF、HGH、IFN-α2A、IFN-α2B、IFN-γ、IFN-β1、IGF I、IGF II、IGF IIv1、IGF IIv2、IL10、IL11、IL12、IL15、IL17/IL17A、IL17F、IL1β、IL2、IL23、IL27、IL28A/IFN-λ-2、IL28B/IFN-λ-3、IL29/IFN-λ-1、IL1β、IL2 IL3、IL32、IL35、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、インヒビンA/INHa&INHbA、インヒビンB/INHa&INHbB、インヒビンC/INHa&INHbC、インヒビンE/INHa&INHbE、LEFTYB、LEFTY1/LeftyB、M-CSF、マウスCSF、マウスSCF、NODAL、Noggin、NT3 (ニューロトロフィン3)、オンコスタチンM、PDGFα、PDGFβ、ペルセフィン、SCF、SDF1α、SHH、ソマトトロピン、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3、TGFβ4/LEFTY2/LeftyA、TNF α、TPOα、VEGF121aa、VEGF165aa、WIF1、WNT1、Wnt10A、Wnt10B/12、Wnt11、Wnt16、Wnt2、Wnt2B/13、Wnt3、Wnt3A、Wnt4、Wnt5A、Wnt5B、Wnt6、Wnt7A、Wnt7B、Wnt8B、およびWnt9A/14を発現させることが非常に望ましい。また、表5の「クローニングされたサイトカイン遺伝子の一覧」も参照されたい。任意のこれらのサイトカインを、本発明のヒト細胞発現系中で発現させることもできる。
【0125】
以下の実施例および対応する図面は、高度に純粋な、真正に糖鎖付加された生物活性サイトカイン、すなわち、EPO、G-CSF、GM-CSF、IL-2、IL-4、IL-6、M-CSF、Noggin、SCF、ソマトトロピン、TGFβ1、TNFα、およびVEGF-165の発現の成功を証明する。これらのサイトカインの組換え発現およびそのそれぞれの生物活性を証明する図式およびゲルデータならびに他の細胞系から発現されるサイトカインとの比較については、図6A-M、7A-D、および8A-Cを参照されたい。
【0126】
(b)抗体
本発明の真正に糖鎖付加され、折畳まれ、およびリン酸化されたタンパク質に帰する別の利益は、それらが高度に特異的な抗体を生成させるための優れた試薬であるということである。
【0127】
モノクローナル抗体は、特定のサイトカインの存在に関するアッセイ、またはそれらが特異的に結合するタンパク質の単離および精製にとって有用である。従って、モノクローナル抗体は、診断アッセイ、検出アッセイ、および精製プロトコルにとって有用である。本発明のヒト発現系によって生産される組換えサイトカインは、非ヒト細胞中で発現されたものより真正に糖鎖付加され、折畳まれるため、それらに対して生成した任意の抗体は、ヒト体内またはヒト生物サンプル中の内因性サイトカインに対するより高い親和性を有するであろう。
【0128】
モノクローナル抗体を、特異的抗原として用いられる組換えヒトインターフェロンを用いて公知の方法に従って作製することができる。1種以上の抗原を1回で注入することができる。例えば、大腸菌から作製されたインターフェロン、および同一のインターフェロンを産生するトランスフェクトされたヒト細胞を用いる本発明で記載された以前の方法に従ってトランスフェクトされたものから作製されたインターフェロンを用いる。トランスフェクトされたヒト細胞から作製された、真正組換えヒトインターフェロンで免疫されたクローンから選択された抗体と比較した場合、大腸菌から作製された組換えインターフェロンから選択された抗体を産生するいくつかのクローンのクロスボード分析試験を行うことができる。また、マウスメラノーマ細胞を脾臓細胞に融合させた後、所望の抗体を産生することができるクローンを選択することにより、モノクローナル抗体を産生することができる細胞系を取得することもできる。Kohler & Milstein, Nature (1975), 256 (5517):495-497; およびKohlerら、Eur J Immunol. (1976), 6:292-295を参照されたい。エピトープに対して産生されたモノクローナル抗体パネルを、様々な特性について、すなわち、アイソタイプおよびエピトープ親和性についてスクリーニングすることができる。代替的な技術としては、例えば、ファージが様々な相補性決定領域(CDR)を含むその外殻表面上にscFvフラグメントを発現するファージ展示ライブラリーが挙げられる。この技術は当業界でよく知られている。
【0129】
糖鎖付加された組換えヒトサイトカインの分泌から作製された抗原を用いるポリクローナル抗体は、分子のタンパク質部分を認識するだけでなく、特定の組換えヒトインターフェロンの糖鎖部分も認識する抗体を産生することができる。ウサギ、ヤギ、ヒツジ、もしくは他の動物などの様々な動物を免疫し、しばしば、Freunds Incompleteアジュバントと共に、μg〜mg量のこれらのインターフェロンの1種を抗原として反復注射することにより本発明に包含される方法を用いて作製された真正組換えヒトインターフェロンで前記動物を免疫することにより、ポリクローナル抗体を生成させることができる。本発明により包含されるポリクローナル抗体(「pAbs」)の例としては、限定されるものではないが、EPO、FLt3、G-CSF、GM-CSF、M-CSF、IFN-α2A、IL-4、およびIL-6に対するpABが挙げられる。
【0130】
本明細書で用いられる「抗体」とは、免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子の断片により実質的にコードされる1個以上のポリペプチドからなるタンパク質を指す。抗体は、無傷の免疫グロブリンとして、または様々なペプチダーゼを用いる消化により作られたよく特性評価されたフラグメントなどのいくつかのフラグメントとして存在してもよい。様々な抗体フラグメントが無傷の抗体の消化に関して定義されているが、当業者であれば、抗体フラグメントを化学的に、または組換えDNA方法を用いることによりde novoで合成することができることを理解するであろう。かくして、本明細書で用いられる用語「抗体」はまた、全抗体の改変により作られたか、または組換えDNA方法を用いてde novoで合成された抗体フラグメントを含む。用語「抗体」の使用により包含される抗体フラグメントとしては、限定されるものではないが、Fab、Fab'、F(ab')2、scFv、Fv、dsFv、ダイアボディ、およびFdフラグメントが挙げられる。さらに、前記抗体およびそのフラグメントは、例えば、参照により本明細書に組み入れられるものとするEP-A-239400に記載されたようなヒト化抗体であってもよい。
【0131】
本発明に従って調製される抗体の例としては、組換え生産された、真正ヒトIL-2、IL-4、IL-6、EPO、G-CSF、GM-CSF、M-CSF、FLT3L、およびIFN-α2Aに対して生成されたポリクローナル抗体が挙げられる。作製されるモノクローナル抗体としては、限定されるものではないが、組換え生産された真正ヒトIL-2、IL-4、IL-6、EPO、G-CSF、TGF-β1、INF-α、およびIL-17に対するモノクローナル抗体が挙げられる。
【0132】
(c)キナーゼ
また、限定されるものではないが、AKT1、AKT2、AMPK1、ATM、オーロラA、BTK3、CDK6、ERK5、Fyn-1、GRK5、JNK1、LYN、MAPKAPK2、MAPKAPK3、MEKK3、MKK3、MKK4、mTOR、P38-α、P70S6K2、PDK1、PKC-β、PKC-γ、PTEN、SYK、およびZap70などの組換え生産された真正ヒトキナーゼを取得するために、本発明の安定化されたヒト細胞発現系中で上記ヒトキナーゼ遺伝子を発現させるのが非常に望ましい。
【0133】
(d)他のタンパク質
本発明は、サイトカインのみ、およびこれらのサイトカインに対して生成した抗体の生産に限定されない。本発明の安定なヒト細胞系を用いて、限定されるものではないが、キナーゼおよび他の酵素などの他のヒトタンパク質を本発明に従って発現させることができる。かくして、本発明はまた、アルブミン、IgG、IgA、IgM、IgD、IgE、α-1-プロテイナーゼインヒビター、血液前凝固タンパク質、血液抗凝固タンパク質、血栓溶解剤、抗血管形成タンパク質、α-2-抗プラスミン、C-1エステラーゼ阻害剤、アポリポタンパク質、HDL、LDL、フィブロネクチン、β-2-糖タンパク質I、フィブリノゲン、プラスミノゲン、プラスミン、プラスミノゲン活性化因子、プラスミノゲン阻害因子、血漿プロテアーゼ阻害剤、抗トロンビンIII、ストレプトキナーゼ、インター-α-トリプシン阻害剤、α-2-マクログロブリン、アミロイドタンパク質、フェリチン、プレアルブミン、GC-グロブリン、ヘモペキシン、C3-補体、トランスフェリン、ウロキナーゼ、α-1-酸-糖タンパク質、凝固因子、抗凝固因子(第II因子、第V因子、第VII因子、第VIII因子、von Willebrand因子、第VIII--von Willebrand因子複合体、第IX因子、第X因子、第XI因子、C1インヒビター、プロテインCおよびプロテインSなど)、細胞外膜タンパク質、または受容体の細胞外ドメインからなる群より選択される真正ヒト血漿タンパク質の組換え生産も包含する。
【0134】
7. 精製
真正様組換え体の精製を、大腸菌培養物中で標的インターフェロンの必要量を拡張させた後、細胞、およびHEK細胞などのヒト細胞、ならびに他の関連するヒト細胞の発現のために仕立てる。特定のインターフェロンに用いられる細胞を選択し、正確なヒト成分に由来するベクターを選択した特定のベクターのために仕立てる。個々のインターフェロンのために選択された特定のヒト細胞は、最適なヒト細胞系の選択を必要とする。細胞が細胞懸濁培養無血清培地に適合されるという事実に起因して、収穫された培地に適用される精製方法は、細胞培養培地を含有する血清と比較した場合、設計が容易である。
【0135】
例えば、無血清培地の上清を遠心分離により回収し、細胞ペレットをサイトカインのさらなる生産のために新鮮な無血清培地中に再懸濁することができる。サイトカインの発現を、公知の分子量によるクマシー染色を用いるSDS-PAGEゲル分析上で、または伝統的なウェスタンブロット分析を介して容易に同定することができる。サイトカインを捕捉するために、上清を最初に固定化金属アフィニティクロマトグラフィー(IMAC)カラム上に載せた。その特性に基づいて、いくらかのサイトカインはIMACカラムに結合したが、いくらかは流出物中に見出された。次の精製工程として、サイトカイン画分のプールを適切なバッファー条件にバッファー交換した後、イオン交換クロマトグラフィー(IEX)カラム上に載せた。最後に、研磨工程として、サイトカイン画分のプールを別のIEXまたは異なるアフィニティクロマトグラフィーカラム(たとえば、ヘパリン樹脂)上に載せた。
【0136】
(b)純度
(i)サイトカイン純度レベル
最大3回のクロマトグラフィー工程の後、サイトカインは、SDS-PAGEゲル上でのクマシー染色(図7)および利用可能な抗体を用いるウェスタンブロット(図8)により判定したところ、95%を超えて純粋であった。次いで、純粋なサイトカインを、当業者には利用可能な公知の方法(例えば、Bradfordアッセイ、ゲル上でのクマシー染色、およびOD280 nm)を用いて定量した。定量の後、サイトカインを、製造業者のマニュアルに従ってLonza (Allendale, NJ)社製の内毒素検出キットにより内毒素レベルを分析し、必要量に基づいて分注し、商業化のために凍結乾燥した。
【0137】
(ii)低夾雑物
内毒素は、細菌および他の発現系から調製されたサイトカインにおける主要な夾雑物である。低レベルの内毒素でも、細胞または生物にとって毒性である可能性があり、除去しなければならない。商業的に供給されるサイトカインに関する工業的に標準的な報告値は、1.0 EU/μg未満である。本発明の方法は、超低レベルの内毒素夾雑物を含む、様々なヒトサイトカインなどのタンパク質を生産することができる。以下に開示されるように、標準的な商業用調製物で報告されたレベルよりも10倍〜1000倍少ない内毒素を含むサイトカインが本発明に従って調製された。
【0138】
8. アッセイ
サイトカインの「純度」、「活性」を確認し、サイトカインの濃度を定量するか、またはサイトカインを発現する細胞を検出するための多くの異なるアッセイ系が利用可能である。サイトカイン生物アッセイは、例えば、(i)サイトカインにより誘導される細胞増殖、(ii)走化性、(iii)細胞傷害性、(iv)コロニー形成を誘導する能力、(v)細胞脱顆粒化、または(vi)さらなるサイトカインもしくは他の化合物の分泌の誘導を測定する。
【0139】
(a)活性
上記のように、サイトカイン活性を決定するための標準的なアッセイは、(a)指示細胞系のサイトカインにより誘導される増殖;(b)サイトカインにより誘導されるアポトーシス;(c)ウイルス感染に対するサイトカインにより誘導される防御;および(4)サイトカインにより誘導されるサイトカインの産生を含む。それぞれの特定の方法に関する詳細は当業者にはよく知られており、参照により本明細書に組み入れられるものとする「Cytokine Bioassays」(www.ebioscience.com/ebioscience/appls/BAC.htm)に見出すことができる。
【0140】
サイトカインにより誘導される生物学的応答は、飽和速度を示し、これを用いて、用量応答曲線からその量を定量することができる。これらのアッセイは、一次細胞培養物および、より頻繁には、増殖もしくは生存に関して特定のサイトカインの存在に依存するか、または特定の方法で所与のサイトカインに応答する確立された細胞系の使用を含む(www.copewithcytokines.de/cope.cgi?key=bioassaysを参照)。1つの方法は、細胞増殖に対するサイトカインの効果を決定する定量的比色方法であるMTTアッセイである。MTTアッセイは、増殖中の細胞のミトコンドリアのコハク酸デヒドロゲナーゼ活性により代謝されて、比色計を用いて検出することができる紫色のホルマザン反応産物を得る黄色のテトラゾリウム塩[3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウム-ブロミド]を用いる。
【0141】
他のサイトカインアッセイとしては、(1)一般的には、免疫反応性を測定し、従って、サイトカインの存在の有用な指示因子である免疫アッセイが挙げられ、(a)ラジオイムノアッセイ、(b)免疫放射定量測定法、および(c)酵素結合免疫吸着アッセイが挙げられる。これらの特定のアッセイは、サイトカイン特異的抗体または標識されたサイトカイン、受容体、もしくは抗体を必要とする。従って、本発明により作製された高親和性抗体は、特に、in vivoでのいくつかのサイトカインの合成が、標準的な免疫アッセイ技術によってその存在を検出するのが困難であるような低レベルで起こることが多いため、そのような免疫アッセイを実行するのに理想的に有用である;(2)サイトメトリックビーズアレイは、特徴的な複数の粒子の同時測定のためにサンドイッチ免疫アッセイとフローサイトメトリーを組合わせたものであり、少量の様々なサイトカインの同時決定に適合化されたものである;(3)免疫アッセイは多くのサイトカインについて市販されている;(5)放射性受容体アッセイは、細胞に結合した受容体からリガンドを置換することによりサイトカインの濃度を測定する;(6)逆溶血プラークアッセイは、サイトカインを分泌する個々の細胞を検出し、この細胞により分泌される特定のサイトカインの量を決定するのに用いることができる免疫グロブリン分泌細胞プラークアッセイの改作である;(7)細胞ブロットアッセイも、産生細胞によるサイトカインの放出の可視化を可能にする;(8)キナーゼ受容体活性化アッセイは、受容体へのリガンド結合が受容体のチロシンリン酸化を引き起こすことができ、従って、細胞増殖もしくは細胞生存よりもむしろ受容体ホスホチロシンの量を測定することにより活性を推測することができるという事実を利用する;(9)因子依存的細胞系アッセイは、細胞が個々のサイトカインもしくは新鮮に単離された細胞に対して特定の方法で応答するアッセイである;(10)サイトカイン免疫トラッピングは、サイトカインの産生および消費もしくは分解の速度を研究するためのアッセイである;(11)プローブおよびPCRプライマーを用いるサイトカインmRNAのRT-PCR定量を、サイトカイン遺伝子もしくはその選択的スプライス変異体にアニーリングし、これを増幅するように設計することができ、例えば、HGF/NK1、HGF/NK2、HGF/NK4と呼ばれるHGFのスプライス変異体を、変異体特異的プライマーもしくはプローブを用いて増幅もしくは検出することができる。
【0142】
特に、発現されたサイトカインの生物活性を、サイトカインの性質に基づいて、用量依存的細胞傷害性(例えば、TNFα)に関するED50、増殖の刺激(例えば、IL-2)、または有効な細胞に対する他のサイトカインにより誘導される増殖の阻害(例えば、TGF-β1)により測定することができる。
【0143】
(b)比較アッセイ
また、2つのタンパク質産物間の純度および糖鎖付加状態の差異を証明するための、本発明の系により発現されたサイトカインと、非ヒト細胞中で発現された同じサイトカインとの対照比較も提供する。図7および8を参照されたい。
【0144】
9. 組換え生産された真正サイトカインの治療的使用例
上記の節で詳述された通り、本発明の安定なヒト細胞発現系から発現されたサイトカインは、より「ヒトに近い」もしくはより「真正な」折畳み、糖鎖付加、リン酸化状態、エピトープ提示、および天然のダイマー化特性などの、他の細胞系において産生されるサイトカインに対するいくつかの利点および利益を有する。従って、本発明の方法に従って生産される実際のタンパク質構造は、その天然の内因性対応物により類似している。これは、これらの真正組換えサイトカインに関する治療的使用の文脈における有意な利点と言い換えることができる。また、様々なサイトカインと機能の相関については、以下の表2も参照されたい。当業者であれば、特定の障害および疾患と、異常な、もしくは機能不全であるサイトカイン活性とを相関させることによって、以下により詳細に考察されるように、その異常性を相殺するか、または修正するための療法を考案することができる。
【0145】
非ヒト細胞系中で発現されたサイトカインは真正ではなく、例えば、それらはヒト特異的糖鎖付加パターンを欠き、非ヒト糖鎖に共有結合するか、または不正確に折畳まれる。さらに、これらの細胞培養物は補充することができない、すなわち、組換えタンパク質が発現され、それから単離された後は細胞の培養物を再使用することができない。これらの理由から、そのような非真正サイトカインは、低い効力、短い半減期を有し、アレルギーおよび身体からの望ましくない免疫応答を誘導し得る。
【0146】
対照的に、本発明のサイトカインは真正かつヒトに近い。従って、本発明により生産されるサイトカインは、より高い効力および長い半減期を有し、これは現実的かつ実用的な用語では、それを必要とする個体に投与する必要があるサイトカインの用量がより低いことを意味する。より低い用量およびより長い半減期はまた、投薬の頻度を低下させることができることを意味する。さらに、本発明のサイトカインはよりヒトに近いため、それらはアレルギーを誘導するか、または免疫原性である可能性が低い。従って、全体として、治療を受ける必要がある個体を、彼または彼女が、サイトカインのより少ないピルもしくは錠剤製剤を摂取するか、またはサイトカイン調製物の注射を受ける必要があり、またそれほど頻繁ではないが、本発明の非真正サイトカインにより誘発される免疫応答に起因する副作用の恐れがない治療過程に入れることができる。例えば、組換えIFN-α2aを含有するように製剤化されたRoferon(登録商標)などの現在利用可能な薬剤に関連する潜在的な副作用および問題を参照されたい。www.fda.gov/cder/foi/label/2002/ifnahof081502lb.pdfおよびwww.rocheusa.com/products/roferon/roferon_medguide_vials.pdfを参照されたい。
【0147】
これに関連して、本発明は高度に真正なヒトサイトカインタンパク質の組換え生産を提供するため、特定の用途に必要とされるサイトカインの投与量は、異なる細胞型において異なる構築物から生産された同じサイトカインについて必要とされる投与量よりも劇的に低い。例えば、非真正ヒト白血球インターフェロンから同じ効果を引き出すのに4000万単位が必要とされるのと比べて、高度に真正なヒト白血球インターフェロンの組換え発現には、わずかに300〜500万IUでよい(本発明により生産されるサイトカインの収率および真正性分析に基づく)。これは、現在生産されている組換えヒトインターフェロンαよりもlog-10高い効力である。従って、インターフェロンαによりもたらされる副作用は、300〜500万単位では、たとえあったとしても最少であるが、300〜500万単位と同じ効果をもたらすのに用いられる4000万単位は、重篤な神経学的副作用などの非常に重篤な副作用をもたらす。
【0148】
当業者であれば、本発明の真正ヒトサイトカインのための様々なin vivoおよびex vivoでの治療的使用を知っているであろう。例えば、本発明は、限定されるものではないが、
(1)多発性硬化症、免疫介在疾患、癌、自己免疫疾患(狼瘡、喘息、およびクローン病)、ならびにウイルス性肝炎を治療するための組換え生産された真正インターフェロン;
(2)自己免疫、癌を治療するための組換え生産された真正インターロイキン;キャッスル万病を治療するためのIL-6(Tocilizumab);免疫細胞調節を治療するためのIL-10、IL-11、IL-12、およびIL-13;マウスにおける癌モデルを調製するためのIL-21およびその受容体;自己免疫疾患(慢性関節リウマチおよび乾癬など)を治療するためのIL-1;喘息を治療するためのIL-4受容体およびIL-5;乾癬を治療するためのIL-8;ならびにTH1媒介性自己免疫を治療するためのIL-12、IL-13、IL-17およびIL-18;
(3)FDAに認可され、後続の薬剤における組換え生産された真正TNF-αおよびその阻害剤、例えば、限定されるものではないが、Enbrel(Etanercept)、Remicade (Infliximab)、Golimumab (CNTO 148)、Humira (Adalimumab)、Cimzia (Certolizumab Pegol)、自己免疫および炎症におけるさらなるTNF-α抗体阻害剤;ならびに癌および感染を治療するための腫瘍壊死因子-α;
(4)自己免疫疾患、癌を治療するための組換え生産された真正ケモカイン;抗炎症剤としての使用のためのCCR2;
(5)増殖因子およびコロニー刺激因子に関する障害のための治療剤の開発のための組換え生産された真正タンパク質、例えば、限定されるものではないが、血管形成、血管形成抗体を治療するためのVEGF(AvastinおよびLucentis)、VEGFアンタゴニストMacugen、マルチキナーゼ阻害剤SutentおよびNexavar、VEGFモノクローナルおよび阻害剤、VEGF遺伝子療法;肝細胞増殖因子;血小板由来増殖因子;Gleevecおよび他のタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤;線維芽細胞増殖因子;TGF結合タンパク質、およびTGFβシグナリングの阻害剤;インスリン様増殖因子;ケラチノサイト増殖因子;口腔粘膜炎を治療するためのrhKGF;結合組織増殖因子(CTGF);コロニー刺激因子(CSF);エリスロポエチン;トロンボポエチン;アンギオポエチン;骨形態形成タンパク質および増殖分化因子;rhBMP、ミオスタチンの阻害剤;ならびに発達障害を治療するための神経栄養因子、
の使用を包含する。
【0149】
本発明の組換え生産された真正ヒトタンパク質を、薬剤、ワクチン、リポソーム中に製剤化するか、またはタンパク質として直接in vivoで個体に送達するか、またはin vitroもしくはex vivoで細胞もしくは細胞培養物に投与することができる。例えば、当業者であれば、治療用途のためにペプチドを改変するのに用いられてきたいくつかの手法を知っているであろう。1つの手法は、ペプチドもしくはタンパク質を、ポリエチレングリコール(PEG)およびポリプロピレングリコール(PPG)などの様々なポリマーに連結することである。例えば、米国特許第5,091,176号、第5,214,131号および第5,264,209号(参照により本明細書に組み入れられるものとする)を参照されたい。
【0150】
従って、本発明の組換え生産された真正ヒトタンパク質を、経口または非経口投与のための医薬調製物中に好適に製剤化することができる。非経口投与のための製剤としては、限定されるものではないが、注射可能な溶液もしくは懸濁液および輸液のための液体が挙げられる。非経口剤形の調製物のために、有効量の活性成分を滅菌担体中に溶解もしくは懸濁し、必要に応じて可溶化剤、等張性剤、保存剤、安定化剤、乳化剤もしくは分散剤などの賦形剤を添加した後、密閉バイアルもしくはアンプル中に分配する。
【0151】
本発明はまた、本明細書に開示される方法により生産された真正ヒトタンパク質のコンジュゲートも意図する。例えば、真正ヒトタンパク質を製薬上許容し得る担体、希釈剤もしくは賦形剤と混合して、医薬組成物(ヒト用もしくは動物用のものであってよい)を製造することができる。好適な担体および希釈剤としては、等張性塩水溶液、例えば、リン酸緩衝生理食塩水が挙げられる。賦形剤の詳細を、The Handbook of Pharmaceutical Excipients、第2版、Wade & Weller(編)、American Pharmaceutical Association(参照により本明細書に組み入れられるものとする)に見出すことができる。本発明の組成物を直接注入により投与することもできる。かくして、本発明の治療用組成物を、非経口、筋肉内、静脈内、皮下、眼内、経口または経皮投与のために製剤化することができる。また、リポソーム形態のサイトカインなどのヒトタンパク質の調製物は、その生物活性を改善することもできる。
【0152】
本発明の治療用真正タンパク質を、毎日、毎週もしくは毎月の投与が所望の日用量を提供するように製剤化することができる。当業者であれば、そのような治療用組成物を、2、4、6、8、10もしくは12時間などのより頻度の低い投与のために都合良く製剤化することができることを理解するであろう。
【0153】
また、本発明の真正タンパク質を、患者もしくは個体に、または患者もしくは個体の細胞に直接的に真正ヒトタンパク質を投与することにより、これらのおよび他の疾患の遺伝子療法において用いることもできる。次いで、治療された細胞を患者または個体に再導入することができる。かくして、本発明の真正ヒトタンパク質をコードする所望のポリヌクレオチドを、裸の核酸構築物として直接投与し、また、内部発現カセット、および従って所望のポリヌクレオチドの宿主細胞ゲノム中への組込みを容易にする宿主細胞ゲノムと相同なフランキング配列に連結することもできる。前記個体は、任意の哺乳動物、爬虫類、鳥類、魚類、または両生類であってよい。一実施形態においては、遺伝子療法のレシピエント個体はヒトである。本発明の任意のベクターを用いて、所望の治療用サイトカインなどの所望のタンパク質を、in vivoで細胞中で直接発現させ、それによって特定の疾患、例えば、サイトカイン関連疾患もしくは障害の治療に対する遺伝子療法手法を提供することができる。
【0154】
本発明は、様々な疾患および障害の遺伝子療法治療における本明細書に開示される任意のベクターの使用を意図する。例えば、本発明は、嚢胞性線維症の治療のためのCFTR遺伝子(嚢胞性線維症膜貫通伝導調節因子);第VIII因子および第IX因子の遺伝子(その欠損はそれぞれ血友病AおよびBの原因である);癌細胞の細胞死もしくは正常細胞への逆転を引き起こすE1AおよびP53と呼ばれる遺伝子;心臓の収縮能力を増加させ、心不全時に役立つAC6遺伝子;ならびに血管疾患における使用の新血管の増殖(血管形成)を誘導する遺伝子であるVEGFをin vivoで発現させるための本明細書に開示される任意のベクターの使用を意図する。かくして、本発明の一実施形態においては、ベクターは、CFTR遺伝子、第VIII遺伝子、第IX遺伝子、E1A遺伝子、P53遺伝子、AC6遺伝子、およびVEGF遺伝子からなる群より選択される治療用タンパク質遺伝子をコードする所望のポリヌクレオチドを含む発現カセットを含有する。
【0155】
本発明の任意のベクターを用いる遺伝子療法を用いて治療することができる遺伝子疾患としては、限定されるものではないが、1型脊髄小脳失調、ハンチントン病、家族性高コレステロール血症(FH)、AIDS、メラノーマなどの癌、もしくは皮膚癌(腫瘍壊死因子(TNF)と呼ばれる抗癌タンパク質を含む遺伝子を患者自身の癌細胞の試験管サンプル中に導入した後、患者に再導入することを含む);脳の癌(この手法は疾患と闘うのに用いられる一般的な薬剤に対する癌細胞の感受性を増加させる特定の遺伝子を挿入することである);ならびに前立腺癌および頸部癌;ならびにゴーシェ病(この疾患はグルコセレブロシダーゼと呼ばれる酵素の産生を阻害する突然変異遺伝子により引き起こされる遺伝病である) の治療のための1個以上の遺伝子の発現が挙げられる。
【0156】
また、本発明のベクターを遺伝子療法において用いて、身体の免疫系のカスケードを誘導し、再狭窄を引き起こす手順であるバルーン血管形成術などの外科的手順に関連する問題を解決することもできる。
【0157】
かくして、遺伝子疾患に対抗するか、もしくはこれを治療するための好適な遺伝子を発現する本発明のベクターを患者に導入することにより治療することができる遺伝子療法の例としては、限定されるものではないが、(A) 2D型肢帯筋ジストロフィー(LGMD2D)を有する子供および成人を治療するための遺伝子導入療法であって、ベクターがLGMD2Dを有する患者のin vivoでrAAV1.tMCK.ヒト-α-サルコグリカンをコードし、発現する前記療法;(B)GX-12を発現する本明細書に開示される任意のベクターを用いてHIV-1感染患者を治療するための遺伝子療法;(C) Ad5-yCD/mutTKSR39rep-ADP、RTVP-1、Ad.hIL-12、FP253/フルダラビン、もしくはAd5-CMV-NIS遺伝子を用いる前立腺癌の遺伝子療法治療;(D) tgAAG76(rAAV 2/2.hRPE65p.hRPE65)を用いるレーバー先天性黒内障の遺伝子療法治療;(E) 鎌状赤血球貧血もしくは地中海貧血の遺伝子療法治療;(F) BG00001(アデノウイルス媒介性インターフェロン-β)を用いる胸膜悪性腫瘍の遺伝子療法治療;(G) 食細胞オキシダーゼサブユニットにより形質導入されたCD34造血幹細胞を用いる慢性肉芽腫性疾患の遺伝子療法治療;(H)INGN 241を用いるin transitメラノーマの遺伝子療法治療;(I) AdV-tkを用いる悪性グリオーマの遺伝子療法治療;(J) ProSavinを用いる特発性両側性パーキンソン病の遺伝子療法治療;(K) アデノウイルス媒介性ヒトインターロイキン-12を用いる転移性乳癌の遺伝子療法治療;(L) AAV6.SERCA2aを用いる左心補助装置を受け入れた患者の遺伝子療法治療;ならびに(M) rAAV2-hRPE65を用いることによってRPE65突然変異により引き起こされたレーバー先天性黒内障の遺伝子療法治療が挙げられる。
【0158】
従って、これらの遺伝子のいずれかを本明細書に開示されるベクターのいずれか1つの中に遺伝子操作した後、そのベクターを個体の細胞中に導入することができ、ここで該ベクターは、遺伝子ベースで、もしくは内在する疾患に基づいて反作用し、補正するか、またはさもなければ治療するように作用する細胞の存在下でコードされるタンパク質を発現する。治療用タンパク質をコードするベクターを、個体の外部で培養された細胞中に導入するか、または個体に直接投与し、コードされるタンパク質をin vivoで発現させることができる。かくして、本発明は、特定の疾患を治療するためのin vivoおよびex vivo/in vitroでの遺伝子療法の両方を意図する。
【0159】
かくして、本発明の一態様は、遺伝子療法におけるpHZhag、pHZA、pHZA、pHZI、pHZhagA、およびpHZhagIからなる群より選択されるベクターであって、該ベクター中に挿入された特定の発現カセットから治療用タンパク質を発現する前記ベクターの使用である。一実施形態においては、pHZhagベクターは(i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、および(iii)ヒトβ-グロビンイントロンの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む。別の実施形態においては、pHZAベクターは、(i)hCMVプロモーター、および(ii)ヒトフィブリノゲンサブユニットAシグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む。別の実施形態においては、pHZIベクターは、(i)hCMVプロモーター、および(ii)ヒトIgスーパーファミリー8シグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む。別の実施形態においては、pHZhagAベクターは、(i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、(iii)ヒトβ-グロビンイントロン、および(iv)ヒトフィブリノゲンサブユニットAシグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む。別の実施形態においては、pHZhagIベクターは、(i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、(iii)ヒトβ-グロビンイントロン、および(iv)ヒトIgスーパーファミリー8シグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む。
【0160】
哺乳動物細胞による本発明の発現カセットを含む、これらのものなどの裸の核酸ベクターの取込みを、例えば、トランスフェクション剤の使用などのいくつかの公知のトランスフェクション技術により増強することができる。これらの薬剤の例としては、陽イオン剤(例えば、リン酸カルシウムおよびDEAE-デキストラン)ならびにリポフェクタント(例えば、lipofectam.(商標)およびtransfectam.(商標))が挙げられる。必要に応じて、核酸構築物をトランスフェクション剤と混合して、組成物を作製してもよい。また、本発明の発現ベクターを、製薬上許容し得る担体または希釈剤と混合して、医薬組成物を作製してもよい。好適な担体および希釈剤としては、等張性塩水溶液、例えば、リン酸緩衝生理食塩水が挙げられる。前記組成物を、非経口、筋肉内、静脈内、皮下、眼内または経皮投与のために製剤化することができる。
【0161】
当業者であれば任意の特定の個体および症状にとって最適な投与経路および投薬計画を容易に決定することができるため、記載の投与経路および投薬計画は指針として意図されるに過ぎない。
【0162】
従って、本発明はまた、本明細書に開示されるもののいずれかなどの特定の疾患または障害を治療するのに有用である薬剤(医薬)の調製における、本発明の組換え生産された真正タンパク質のいずれかの使用を包含する。従って、本発明は、癌および細胞成長、細胞増殖、細胞分化に関する疾患異常、および炎症を治療するための薬剤の調製のための組換え生産された真正ヒトサイトカインの使用を包含する。従って、本発明の一態様は、癌を治療するための薬剤の調製のための組換え生産された真正ヒトサイトカインの使用である。従って、本発明の一態様は、細胞増殖に関連する障害または疾患を治療するための薬剤の調製のための組換え生産された真正ヒトサイトカインの使用である。また、本発明の一態様は、細胞成長に関連する障害または疾患を治療するための薬剤の調製のための組換え生産された真正ヒトサイトカインの使用である。本発明の別の態様は、細胞分化に関連する障害または疾患を治療するための薬剤の調製のための組換え生産された真正ヒトサイトカインの使用である。本発明の一態様は、炎症に関連する障害または疾患を治療するための薬剤の調製のための組換え生産された真正ヒトサイトカインの使用である。
【0163】
10. 組換え生産された真正サイトカインに対して生じた抗体の治療的使用例
特定のサイトカインの過剰発現は、特定の疾患および異常な病理学的状態と関連することが知られている。例えば、多すぎるTNFαは炎症および関節炎と関連する。従って、TNFα活性ならびにリガンドおよび受容体への結合を遮断する抗体は、炎症および関節炎に関連する問題を軽減するのに役立つ。同様に、特異的抗体結合によるVEGFサイトカイン活性の遮断は、血管形成を減少させることにより癌および望ましくない細胞増殖を治療するための有効な機構である。
【0164】
本発明のサイトカインはよりヒトに近く、従って他の細胞系において発現されたサイトカインよりも真正なエピトープをその表面に提示するため、それらに対して生成した抗体もin vivoで抗原としてそれらを認識し、標的化するその能力に関してより真正であるであろう。かくして、本発明の組換え生産された真正ヒトタンパク質に対して生成した抗体は、本発明の組換え生産された真正ヒトタンパク質に対して生成しなかった抗体よりも高い感受性および特異性を有する。
【0165】
かくして、本発明の方法により生産されたサイトカインに対して生成した本発明の抗体は、他の場所で生産されたサイトカインに対して生成した抗体よりも高い特異性および結合親和性を有する。
【0166】
サイトカインの場合のように、抗体はより高い親和性および特異性を有するため、特定のサイトカイン関連疾患または障害と闘うために抗体を投与する必要がある任意の治療計画においてより低い濃度または用量を使用することができる。
【0167】
当業者であれば、本発明の組換え生産された真正ヒトタンパク質を、現在利用可能なものなどの治療用抗癌抗体中に製剤化することができることを知っているであろう。すなわち、本発明の関連する組換え生産された真正ヒトタンパク質に対して生成した抗体を、限定されるものではないが、Panorex(登録商標)(エドレコロマブ)、Rituxan(登録商標)(リツキシマブ)、Herceptin(登録商標)(トラズツズマブ)、Mylotarg(登録商標)(ゲンツズマブ)、Campath(登録商標)(アレムツズマブ)、Zevalin(商標)(イブリツモマブ)、Erbitux(商標)(セツキシマブ)、およびAvastin(商標)(ベビシズマブ)などの抗体に基づく薬剤中に製剤化することができる。
【0168】
本発明の組換え生産された真正ヒトタンパク質に対して生成した抗体、またはそのような抗体のフラグメントは、免疫コンジュゲートされた抗癌抗体として有用であり得る。
【0169】
本発明の抗体はまた、心血管障害、感染症、および炎症性疾患を治療するのに有用であり;かくして、Raptiva(商標)(エファリズマブ)、Remicade(登録商標)(インフリキシマブ)、Humira(商標)(アダリムマブ)、およびXolair(商標)(オマリズマブ)などの、そのような障害および疾患を治療するために現在利用可能なものなどの薬剤中に製剤化することができる。
【0170】
本発明の抗体はまた、Orthoclone OKT3(登録商標)(ムロモマブ-CD3)、Simulect(登録商標)(バシリキシマブ)、およびZenapax(登録商標)(ダクリズマブ)のような薬剤などにおいて、移植の状況下で有用であり得る。
【0171】
従って、本発明はまた、本明細書に開示される任意のものなどの特定の疾患または障害を治療するのに有用である薬剤の調製における、本発明の組換え生産された真正タンパク質のいずれか1つに対して生成した抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)のいずれかの使用を包含する。従って、本発明は、細胞成長、細胞増殖、細胞分化、および炎症に関する癌および疾患異常を治療するための薬剤の調製のための、組換え生産された真正ヒトサイトカインの1個以上のエピトープに対して生成した抗体の使用を包含する。従って、本発明の一態様は、癌を治療するための薬剤の調製のための組換え生産された真正ヒトサイトカインに対して生成した抗体の使用である。本発明の一態様は、細胞増殖に関連する障害または疾患を治療するための薬剤の調製のための組換え生産された真正ヒトサイトカインに対して生成した抗体の使用である。本発明の一態様はまた、細胞成長に関連する障害または疾患を治療するための薬剤の調製のための組換え生産された真正ヒトサイトカインに対して生成した抗体の使用である。本発明の別の態様は、細胞分化に関連する障害または疾患を治療するための薬剤の調製のための組換え生産された真正ヒトサイトカインに対して生成した抗体の使用である。本発明の一態様は、炎症に関連する障害または疾患を治療するための薬剤の調製のための組換え生産された真正ヒトサイトカインに対して生成した抗体の使用である。
【0172】
11. 抗体および組換え生産された真正サイトカインのex vivoでの使用例および診断使用例
また、当業者であれば、本発明の真正タンパク質が診断環境においても、また特定の真正ヒトタンパク質への曝露を用いて、および用いずに候補薬剤および物質を試験するためのスクリーニングアッセイにおいて有用であり得ることを知っているであろう。本発明の組換え生産された真正ヒトタンパク質に対して生成した抗体は、本発明の組換え生産された真正ヒトタンパク質に対して生成しなかった抗体よりも高い感受性および特異性を有する。1つのそのような診断道具は、サイトカインビーズアレイである。Lambeckら、Clinical Cancer Research 13, 2385(2007年4月15日)(参照により本明細書に組み入れられるものとする)を参照されたい。その方法は、LINCOplexキットおよび関連するプロトコル(Linco research, St. Charles, MO)を用いることなどにより、少量の血清中で複数のサイトカインを同時に測定することができるものである。
【0173】
基本的には、本発明の診断または検出方法は、ELISAアッセイおよびサイトカインバイオアッセイおよび上記の小節8に記載の活性アッセイなどの滴定比較試験などにおいて、個体から取得したサンプルからの1種以上のサイトカインの発現レベルを、既知量の対照サイトカインに対して比較することが必要である。本発明に従えば、組換え生産された真正ヒトサイトカインなどの真正ヒトタンパク質は天然のサイトカインとサイズ、構造、および分子量において非常に類似しているため、それらを感受性の高い対照として用いることができる。かくして、本発明の真正ヒトサイトカインの既知の濃度に対する未知のサンプルの比較は、感受性が高く、かつ正確であろう。サイトカインレベルのその比較の結果に応じて、1種以上のサイトカインに関する個々の発現レベルが異常であるか否か、もしそうならば、その異常な発現レベルが特定の疾患もしくは障害を示唆するか、またはその診断となるかどうかに関する結論を得ることができる。
【0174】
従って、本発明に従う組換え真正タンパク質およびそれらに対して生成した抗体を、診断アッセイにおけるいくつかの異なるアレイおよび多重化アレイにおいて用いることができる。例えば、本発明は、サンドイッチアッセイ、抗原ダウンアッセイ、競合アッセイ、および逆相アッセイなどの多重免疫アッセイ設計;スライド上に被覆され、フロースルーチップ上に置かれ、多孔性フィルターに接着された膜上の96穴プレートなどのアレイ基質;タンパク質もしくは抗体を表面上に接触印刷するか、または非接触調剤において用いるアレイ製作;比色、蛍光、化学発光、表面プラズモン共鳴画像化技術などの検出方法;微小流体操作および弾性表面波プロセッシングなどのアレイプロセッシング;ならびに画像分析およびデータ獲得方法における本発明の真正タンパク質および抗体の使用を含む。
【0175】
本発明の真正タンパク質に対して生じた抗体はまた、ELISAアッセイおよびヒト組織切片に対する組織学的分析などの、in vitro試験においてサイトカインおよび関連する抗原を検出するための診断キットを製造するのに有用である。従って、本発明は、本発明のヒト細胞系により産生された1種以上のサイトカインに対して生じた1種以上の抗体を含むキットおよび試薬を包含する。
【0176】
サイトカインのその特異的受容体への結合を遮断し、その効果を中和する抗体(「中和抗体」)は、特定の疾患状態におけるサイトカイン機能の研究において非常に有用であり得る。従って、中和抗マウスおよび抗ヒトサイトカイン抗体を用いるin vitroバイオアッセイは、中和サイトカインにより誘導される細胞増殖、アポトーシス、ウイルス防御、および不適切なサイトカイン産生における特定の抗体の有効性を決定するのに有用である。www.ebioscience.com/ebioscience/appls/NU.htm#protocolAを参照されたい。
【0177】
例えば、世界保健機関の天然インターフェロンβ標準(Second International Standard for Interferon, Human Fibroblast GB 23 902 531)に対して補正された参照標準を用いて、真正組換えヒトインターフェロンβを試験し、WISH細胞および水疱性口内炎ウイルスを用いるin vitro細胞変性効果バイオアッセイにより特異的に決定された1 mgのインターフェロンβ1aあたり、約2億7000万国際単位(MIU)の抗ウイルス活性の比活性を有するRebif(登録商標)と呼ばれる組換えインターフェロン-β1a産物と比較することができる。Rebif 8.8 mcg、22 mcgおよび44 mcgは、この方法を用いる場合、それぞれ約2.4 MIU、6 MIUまたは12 MIUの抗ウイルス活性を含む。
【0178】
上記の小節に記載のように、モノクローナルおよびポリクローナル抗体の両方を、本発明の方法により産生される真正サイトカインに対して生じさせることができる。これは、高度に有効な様式で1種のサイトカインを特異的に認識し、これを標的化する抗体、ならびに様々なスプライシング機構によりin vivoで産生されたかもしれない密接に関連するサイトカイン相同体および変異体を認識し、これを標的化する抗体を生じさせることができることを意味する。
【0179】
診断キットに関しては、高親和性および特異的抗体が生じた本発明の真正サイトカイン自身を、ELISAアッセイまたは他の免疫学的キットを行うのに用いられるものなどのキットにおける滴定標準の作製に用いることができる。かくして、真正サイトカインおよびそれに対して生成した抗体を用いる場合、標準曲線は、抗体が非ヒト細胞から調製されたサイトカインに対して滴定された場合よりも、抗体-抗原結合の非常に正確な測定値である。かくして、本発明は、真正抗体、およびそのフラグメントだけでなく、抗体結合標準曲線をそのようなアッセイにおいて作製することができる標準物としての本発明の方法により生産された真正サイトカインのアリコートをも含有するキットを意図する。抗体-抗原結合の感度は高いであろう。かくして、生物学的サンプルまたは組織切片中の特定のサイトカインの存在および量の検出および定量を、これらの真正サイトカイン/抗体パートナーを用いて容易に、かつより正確に決定して、未知のサンプルを正確に比較し、定量することができる標準曲線を作製することができる。
【0180】
また、本発明の抗体を用いて、1つのアッセイにおいて、細胞溶解物、条件化培地、患者の血清、血漿、および尿などの様々な起源から複数のヒトサイトカインを同時に検出することができる、サイトカイン抗体アレイを調製および構築することができる。そのようなアレイは、特に、本発明の抗体を用いる場合、pg/ml範囲などの非常に低い濃度のサイトカインタンパク質の検出を可能にする高感度を有する。
【0181】
また、本発明の真正ヒトタンパク質および抗体をスクリーニングアッセイにおいて用いて、いくつかの方法で、候補物質、化学物質、化合物、およびそれらと相互作用する他のタンパク質を同定することができる。例えば、本発明の組換え生産された真正ヒトサイトカインを単離、精製した後、特定の候補物質に直接曝露し、続いて、当業者には公知の様々なアッセイのいずれか1つの下で、および上記のアッセイの小節で同定されたようにモニターして、任意の相互作用がタンパク質と候補物質との間で生じたかどうかを決定することができる。例えば、様々な化合物に曝露された場合、阻害剤のIC50値を同定し、記録するために組換え生産されたキナーゼp38αを用いる1つのそのようなスクリーニングアッセイの結果を関連づける表4も参照されたい。その実験は本明細書の他の場所により詳細に記載されているが、本発明のタンパク質または抗体をex vivoスタイルのスクリーニングアッセイにおいて用いることができる例として本明細書に記載されている。この現在の研究は、ヒト細胞中で産生されたヒトタンパク質キナーゼp38αの特性が非ヒト細胞型とは異なることを示している。薬剤スクリーニングのために高い真正性を有するヒトキナーゼを使用することにより、研究者は偽陽性のリードの購入および有望な標的の喪失を回避することができる。
【0182】
本発明の方法およびベクターにより生産されるタンパク質および抗体を、それら自身を助けるための試薬として用いることもできる。すなわち、本発明の組換え生産された真正サイトカインを、例えば、培養中の細胞成長および生存能力を促進するのを補助するためにサイトカインを添加することにより細胞培養物中で使用し、上記のように、本発明のベクターを、個体の細胞を用いて特定のタンパク質を発現させるための遺伝子療法計画において使用することができる。
【0183】
本明細書に開示される各参考文献および引用は、その全体が参照により本明細書に組み入れられるものとする。以下の実施例は単に例示的なものであり、いかなる意味でも本発明の範囲を限定するものではない。
【0184】
(実施例)
【実施例1】
【0185】
サイトカインのクローニング
遺伝子工学の当業者にとって利用可能な様々な方法により、サイトカインのクローニングを達成することができる。例えば、特定のサイトカイン発現が豊富なヒト組織サンプル(例えば、リンパ球)から全RNAまたはポリA RNAを精製し、遺伝子特異的RT-PCRのための鋳型として用いることができる。さらに、予め作製したcDNAライブラリーを商業的供給源から購入し、PCRを用いてサイトカインcDNAを直接増幅することができる。さらに、合成オリゴヌクレオチドを構築して、遺伝子受託番号と共に全米バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)で入手可能な配列情報に基づいて、サイトカインの合成遺伝子を作製することができる。さらに、完全長cDNAクローンを、例えば、IMAGEクローンコンソーシアム(image.llnl.gov/)またはOpenbiosystems (Huntsville, AL)から取得することができる。遺伝子受託番号を表3に提示する。
【0186】
サイトカインは、そのN末端にシグナルペプチドを含み、典型的には分泌形態では失われ、当業者には利用可能な多くの道具により同定することができる(例えば、Swiss-Protタンパク質知識ベース)。いくつかのサイトカインは、利用可能な道具により同定することもできる様々な転写により、いくつかの変異体を有する。分泌されたサイトカインの配列は、上記の第10節に列挙されている。
【0187】
様々なシグナルペプチドを含むサイトカインの迅速なクローニングを容易にするために、哺乳動物細胞(例えば、CHOおよびHEK293)中での分泌される組換えタンパク質の産生にとって好適であるpSecTag2c (Invitrogen, Carlsbad CA)を部位特異的突然変異誘発(Quick Change, Stratagene, Carlsbad, CA)によりpHZsecに改変して、突然変異誘発プライマーSecTag2c-srfIf (TCCACTGGTGACGCGCCCGGGCCGGCCAGGCGCGCC) (配列番号27)およびSecTag2c-srfIr (GGGGCGCCTGGCCGGCCCGGGCGCGTCACCAGTGGA) (配列番号33)を用いてIgκリーダー配列と読み枠を合わせたSrf I制限部位を導入した(以下の図解を参照)。切断部位の図解については図27を参照されたい。
【0188】
分泌形態のサイトカイン遺伝子を、設計されたプライマーを含むClontech社(Mountain View, CA)製のIn-Fusion(商標)PCR Cloning Kitsを用いて、プラスミドpHZsec中のSrfI部位に翻訳的に融合した。
【0189】
ベクター
(A)pHZsec:従来のCMV発現ベクター対照
ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターに基づくベクターは、典型的には哺乳動物細胞発現系において用いられるベクターの設計に用いられている。例えば、tools.invitrogen.com/content/sfs/productnotes/F_051025_MammalianExpressionVectors-TS-TL-MKT-HL.pdfで入手可能なInvitrogen社の製品ノート「Mammalian Expression Systems」(参照により本明細書に組み入れられるものとする)を参照されたい。
【0190】
(B)pHZhag:ヒトプロモーターとヒトイントロンを含むベクター
本明細書で設計されるpHZhagベクターは、ヒトβ-アクチンプロモーターとヒトβ-グロビンイントロンからなる。pHZhagベクターは、従来のCMVに基づくベクターよりも非常に高いレベルで所望のポリヌクレオチドまたは遺伝子配列を発現する;そして予想外にも、pHZhagベクターを発現する細胞は、より高い細胞生存能力を有し、精製の間に得られる夾雑バックグラウンドタンパク質がより少ない。
【0191】
サイトカインTGF-β1の発現プロフィールを、新規に構築されたpHZhagベクターとpHZsecベクターを用いてヒト細胞中で発現させた後に比較した。それぞれ、図11aおよび11bのpHZ-TGF-β1およびpHZhag-TGF-β1に関する発現の結果を参照されたい。それぞれのベクターでトランスフェクトされた細胞系が比較可能な細胞密度および生存能力に達した時、TGF-β1の発現レベルを比較した。その結果、pHZhagベクターでトランスフェクトされた細胞が、pHZsecに関する発現レベルよりも2〜3倍高くTGF-β1を発現することが示された。
【0192】
より高い発現に加えて、pHZhagでトランスフェクトされた細胞は、pHZsecでトランスフェクトされた細胞とは対照的に、7日目〜9日目の間のより高い細胞生存能力を有し、その生存能力は同じ期間に鋭く低下することが予想外にも観察された。
【0193】
詳細に詰めるために、典型的には培養細胞を、生細胞の細胞密度(「VCD」- 1ミリリットルあたり100万個の細胞)が300万個の細胞/mL(図12a)に達し、生存能力(%)が約60%(図12b)に達する7日目または8日目に収穫する。しかしながら、pHZhagでトランスフェクトされた細胞は10日目でも60%を超える生存能力を保持し(図12d)、300万個の細胞/mLを超えるVCDを有していた(図12c)。これは、pHZhagベクターに関する新しく予想外の知見である。
【0194】
(C)pHZAおよびpHZI:ヒトシグナルペプチド配列を含むベクター
高度に真正なヒトタンパク質を産生する高発現ベクターの設計における次の工程は、CHO細胞中で広く用いられているマウスIgκ鎖リーダーシグナルペプチド配列とヒトタンパク質シグナルペプチドとの置換であった。本明細書に示される結果は、ヒトシグナルペプチド配列の使用により発現レベルが少なくとも2倍改善されることを示している。
【0195】
候補シグナルペプチド配列を、フィブリノゲンAa鎖(hFbgA)、フィブリノゲンBb鎖(hFbgB)、フィブリノゲンg鎖(hFbgG)、およびヒト免疫グロブリンスーパーファミリー8シグナルペプチド前駆体(hIg8)をコードする遺伝子から選択した。タンパク質インフォマティクス分析により、良好なシグナルペプチドが高い含量のロイシン(L)を有することが示された。具体的には、hIg8シグナルペプチド前駆体は、高含量のロイシン残基(37%)および5個の保存的ロイシン(LLLLL)を有するため、このシグナルペプチドをヒト免疫グロブリンスーパーファミリー1、2、3および6のシグナルペプチドと比較した後、hIg8シグナルペプチド前駆体を選択した。
【0196】
それぞれのシグナルペプチドをコードする配列をpHZhagベクター中にサブクローニングし、TGFβ1の発現をモニターした。フィブリノゲンAa鎖シグナルペプチドを含むベクターpHZAがTGFβ1を良好に発現した。図13a、レーン4、5および6を参照されたい。ヒトIg8シグナルペプチド前駆体を発現するpHZIベクターもTGFβ1を良好に発現した。図13a、レーン7を参照されたい。
【0197】
pHZA-TGFβ1を好適な細胞密度まで培養し、その細胞生存能力をpHZ-TGFβおよびpHZhag-TGFβ1のものと比較可能になるように記録した。pHZIおよびpHZA-TGFβ1を発現する細胞は、pHZ-TGFβ1についてのものよりも2倍高いレベルのTGFβ1の発現を有していた。図13bを参照されたい。
【0198】
(D)pHZhagAおよびpHZhagI:ヒトプロモーター、ヒトイントロン、およびヒトシグナルペプチド配列を含むベクター
ヒトβ-アクチンプロモーター、ヒトイントロン配列、および上記のヒトシグナルペプチドのいずれか一方(hFbgAシグナルペプチドまたはhIg8シグナルペプチド)を含むベクターを本明細書で設計した。
【0199】
pHZhag-TGFβ1とpHZhagI-TGFβ1を比較するデータは、pHZhag-TGFβ1のものよりも約2倍高く、pHZsecベクターよりも4倍高いpHZhagI-TGFβ1の発現を示している。以下の比較発現研究を、命名された構築物:
プロモーター比較:pHZ-TGFβ対pHZhag-TGFβ1;
シグナルペプチド比較:pHZ-TGFβ1対pHZI-TGFβ1およびpHZhag-TGFβ1対pHZhagI-TGFβ1またはpHZhagA-TGFβ1;ならびに
プロモーターとシグナルペプチドの組合せ比較:pHZ-TGFβ1対pHZhagI-TGFβ1またはpHZhagA-TGFβ1、
を用いて実施することができる。
【0200】
これらのベクターの図式表示については図14を参照されたい。
【実施例2】
【0201】
HEK細胞の調製
ヒト胚性腎細胞を、推奨される培地(典型的には、10%ウシ胎仔血清/2 mM L-グルタミン/10 mM HEPES/1x MEM非必須アミノ酸)を含むDMEM培地)を含む100 mmペトリ皿上に播種した。細胞を3〜4回の継代の間保持して、プレートに付着した集団を選択した。次いで、プレート上に付着した細胞を、様々な無血清培地(293 SFM II、CD 293、FreeStyle 293、Hybridoma-SFM(Invitrogen社製);Ex-Cell 293 (JRH Biosciences))に、プレート中で4日間曝露して、無血清培地中で増殖するか、または生存する細胞を選択した。次いで、これらの細胞を10%血清培地中に戻し入れて、作業用細胞バンクを製造した。
【0202】
(A)無血清かつ化学規定培地に適合させた細胞系
HZ-293TS:HEK293T(または293T)は、HEK293細胞の遺伝的変異体(ATCC CRL-11268)である。この細胞系を、製造業者の試薬(Invitrogen)を用いて無血清かつ化学規定培地に適合させた。懸濁液および完全に無血清かつ化学規定培地へのHEK293T細胞の適合は新規である。HZ-293TSは、懸濁培養物中で少なくとも約500〜600万個の細胞/ml(VCD)に達する(図15b、表)。HZ-293TSと命名されたヒト細胞系は、 付けでATCC生物寄託受託番号 の下で寄託されており、当該受託番号を有する。
【0203】
HZ-293TS細胞系を、プレート上への付着物として血清培地中で、ならびに振とうフラスコ、スピナー、およびバイオリアクター中の懸濁液として無血清かつ化学規定培地中で培養することができる。この特徴により、HZ-293TS細胞を血清培地中で単層として播種した後、トランスフェクトすることができる。次いで、トランスフェクトされた細胞は直接懸濁液に行くか、またはシャトル系などの懸濁培養の前にプレート上で選択することができる。
【0204】
懸濁培養に利用できると報告された293細胞系は3種類あった:HEK293S、FreeStyle293、293EBNA。3種のうち、HEK293SおよびFreeStyle293は、目的のプラスミドのエピソーム増幅を可能にする293Tおよび293EBNAよりも非常に低い組換えタンパク質発現を有することが知られたHEK293細胞系である。FreeStyle293および293EBNAを超えるHZ-293TSのさらなる利点は、目的の組換え体を安定に発現する選択された細胞は多用途の拡張性および連続培養を有する(発現レベルを失うことなく20回を超える継代が可能)が、懸濁液中のトランスフェクトされた293EBNAおよびFreeStyle293は短期間のうちでは大抵は1回の収穫であるということである。組換えタンパク質発現レベルに関してHZ-293TSの特徴がどのようなものであるかを評価するために、ヒトFGF8bサイトカインをシャトル方式を用いてHZ-293TSにトランスフェクトし、その発現レベルを以下の小節2に記載の現在のHEK293T系に由来するものと比較した。
【0205】
HZ-293S:無血清かつ化学規定培地に適合させたHEK293細胞系(ATCC CRL-1573)である。この細胞系は組換えタンパク質産生についてまだ試験されていない。
【0206】
HZ-293EBNA:無血清かつ化学規定培地に適合させた293EBNA細胞系(Invitrogen R6200&7)である。293EBNAはHEK293Tと同様、エピソーム増殖能を有するが、プラスミド中にOriP(EBVの複製起点)を必要とし、この細胞系のさらなる使用を制限してきた。この細胞系は組換えタンパク質発現についてまだ試験されていない。
【0207】
(B)組換えサイトカイン産生へのHZ-293TSの適用
懸濁培養物中での維持および単層培養への適合が容易なため、ヒトFGF8bサイトカインをコードするプラスミドを発現させるために、HZ-293TS細胞系を、その組換えタンパク質産生能力についてHEK293Tのものと比較して試験した。両方の細胞系が比較可能な細胞密度および生存能力に達する時、HZ-293TS細胞中でのサイトカイン発現は予想外にも、293Tのものよりも2〜3倍高かった。かくして、HZ-293TSは293Tとは非常に異なる細胞系になり、それがより高い組換えサイトカイン発現の理由であり得る。
【0208】
限定されるものではないが、アクチビンA、塩基性FGF、IL-1β、IL-23、VEGF165、およびTGFβ1の発現などの他のタンパク質が、HEK293T細胞中よりも本発明のHZ-293TS細胞中で非常に高いレベルで発現された。例えば、塩基性FGFおよびTGFβ1について図面に提示された比較データを参照されたい。
【実施例3】
【0209】
トランスフェクション
トランスフェクションの1日前に、細胞の集密な100 mm皿を5個の皿に移動させた(70〜80%集密度)。100 mm皿のトランスフェクションには、製造業者のマニュアルに従えば、補給物質を含まない500μlのDMEM培地、10μgのプラスミドDNA、および特定量のトランスフェクタント(FuGene 6、FuGene HD(Roche社製);Lipofectamin、Lipofectamin 2000、293fectin (Invitrogen);Polyetheleneimine)が必要である。トランスフェクション材料の混合物を滴下しながら培養皿に添加した。
【実施例4】
【0210】
抗生物質選択
48時間後、トランスフェクトされた細胞をトリプシン処理後に遠心分離により収穫した。細胞ペレットを5 mlの新鮮な10%血清培地中に再懸濁した。100μlの再懸濁した細胞を、特定の濃度の抗生物質(例えば、400μg/mlもしくは800μg/ml)(ネオマイシン(G418)、ヒグロマイシン、ゼオシン、ブラスチシジン)を含む2 mlの血清培地を含む6穴プレートに添加した。
【0211】
6穴プレート中の培地を、トランスフェクトされた細胞が細胞コロニーとして増殖するが、トランスフェクトされていない細胞が死ぬまで2週間にわたって3〜4日毎に抗生物質を含む新鮮なものと交換した。細胞コロニーをトリプシン処理を用いて収穫し、1/4の濃度の抗生物質を含む新鮮な血清培地を含む新しいプレート中に移し、2週間増殖させた。
【実施例5】
【0212】
懸濁液適合
一度、選択された細胞がプレート中で集密まで増殖したら、細胞をトリプシン処理してプレートから剥離させた。プレート2個分の量の細胞をトリプシン処理後に収穫し、1%の血清および抗生物質を含有する10 mlの無血清培地(例えば、CD293)中に再懸濁した。適合には最大で8週間かかり、細胞の状態に応じて3〜4日毎に培地を交換した。次いで、細胞を無血清培地と抗生物質のみに移した。この適合には最大で4週間かかり、細胞の状態に応じて3〜4日毎に培地を交換した。一度、懸濁液適合されたら、細胞を生産のためにより大規模まで連続的に増殖させ、将来の生産のために10%のDMSOを含む新鮮な培地中で凍結保存した。
【実施例6】
【0213】
サイトカインを発現する安定なHEK293細胞のトランスフェクションおよび確立
製造業者の推奨に従ってトランスフェクタントFuGene 6 (Roche)を用いて、100 mmペトリ皿中、組織内で無血清適合させた293細胞系、またはその誘導体(例えば、HEK 293T、HEK 293S、およびHEK 293 EBNA)中にサイトカイン発現プラスミドをトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞を、10%BCS、1%MEM非必須アミノ酸、1%ペニシリン-ストレプトマイシンおよび2 mM L-グルタミンを補給したDMEM培地中で増殖させた。48時間後、トランスフェクトされた細胞をトリプシン処理後の遠心分離により収穫した。細胞ペレットを5 mlの新鮮な10%血清培地中に再懸濁した。100μlの再懸濁された細胞を、特定の濃度の抗生物質(例えば、400μg/mlまたは800μg/mlのゼオシン)を含む2 mlの血清培地を含む6穴プレート中に添加した。
【0214】
6穴プレート中の培地を、トランスフェクトされた細胞が細胞コロニーとして増殖するが、トランスフェクトされていない細胞が死ぬまで2週間にわたって3〜4日毎に抗生物質を含む新鮮なものと交換した。細胞コロニーをトリプシン処理を用いて収穫し、1/4の濃度の抗生物質を含む新鮮な血清培地を含む新しいプレート中に移し、2週間増殖させた。
【0215】
一度、選択された細胞がプレート中で集密まで増殖したら、細胞をトリプシン処理してプレートから剥離させた。プレート2個分の量の細胞をトリプシン処理後に収穫し、1%の血清および抗生物質を含有する10 mlの無血清培地(例えば、CD293)中に再懸濁した。適合には最大で8週間かかり、細胞の状態に応じて3〜4日毎に培地を交換した。次いで、細胞を無血清培地と抗生物質のみに移した。この適合には最大で4週間かかり、細胞の状態に応じて3〜4日毎に培地を交換した。一度、懸濁液適合されたら、細胞を生産のためにより大規模まで連続的に増殖させ、将来の生産のために10%のDMSOを含む新鮮な培地中で凍結保存した。
【実施例7】
【0216】
サイトカインの精製
ヒトサイトカインは、糖鎖付加、リン酸化、および重合などの複雑な翻訳後分子機構により修飾され、ならびに多数のアミノ酸配列に基づいてその固有の物理化学的特性を改変し、特にタグを用いないその精製を困難にする複雑な切断および転換プロセスにかける。本発明は、最大で3つの工程の従来のクロマトグラフィーを使用し、SDS-PAGE上で95%を超える純度が得られる効率的な精製スキームの開発を包含する。この精製スキームは、固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィーを用いる捕捉、次いでイオン交換クロマトグラフィーを用いる精製および研磨からなる。
【0217】
6日間の増殖の後、無血清培地の上清を遠心分離により回収し、サイトカインのさらなる生産のために新鮮な無血清培地中に細胞ペレットを再懸濁した。サイトカインの発現を、既知の分子量によるクマシー染色を用いてSDS-PAGEゲル上で、またはウェスタンブロットを用いてPVDF膜上で同定した。サイトカインを捕捉するために、まず上清を固定化金属アフィニティクロマトグラフィー(IMAC)カラム上に載せた。その特性に基づいて、いくらかのサイトカインはIMACカラム上に結合したが、いくらかは流出物中に見出された。次の精製工程として、サイトカイン画分のプールを、適切なバッファー条件にバッファー交換した後、イオン交換クロマトグラフィー(IEX)カラム上に載せた。最後に、研磨工程として、サイトカイン画分のプールを別のIEXまたは異なるアフィニティクロマトグラフィー(例えば、ヘパリン樹脂)カラム上に載せた。
【0218】
最大3回のクロマトグラフィー工程の後、サイトカインは、SDS-PAGEゲル上でのクマシー染色(図7)および利用可能な抗体を用いるウェスタンブロット(図8)により判定したところ、95%を超えて純粋であった。次いで、純粋なサイトカインを、当業者には利用可能な公知の方法(例えば、Bradfordアッセイ、ゲル上でのクマシー染色、およびOD280 nm)を用いて定量した。定量の後、サイトカインを、製造業者のマニュアルに従ってLonza (Allendale, NJ)社製の内毒素検出キットにより内毒素レベルを分析し、必要量に基づいて分注し、商業化のために凍結乾燥した。
【0219】
本発明のヒト細胞発現系を用いて組換え生産されたGM-CSF、IL-4、およびIL-6は、様々な糖鎖付加度を有する糖タンパク質である。開示される本発明の効率的な精製スキームにより、様々な異種性糖鎖を有するGM-CSF(図17A)、ならびに異なる糖鎖を有するIL-4およびIL-6(図17B&C)が高純度で得られた。また、この精製スキームを真正ホモダイマーNoggin精製物を精製するためにも適用した(図17D)。
【実施例8】
【0220】
活性アッセイ
サイトカインの生物学的活性を、サイトカインの性質に基づいて、用量依存的細胞傷害性(例えば、TNFα)、増殖の刺激(例えば、IL-2)、または有効な細胞に対する他のサイトカインにより誘導される増殖の阻害(例えば、TGF-β1)に関してED50により測定した。図6A-Mを参照されたい。
【実施例9】
【0221】
本発明のヒト細胞系および非ヒト細胞から発現されたサイトカインの比較分析
本発明の方法に従って発現されたサイトカインと、非ヒト細胞中で発現されたものとの間の糖鎖付加の純度および程度を比較するための実験を行った。図7および8は、非還元および還元非ヒト細胞に対して比較した非還元および還元ヒト細胞中での様々なサイトカインのSDS-PAGEゲル分析の対照比較を示す。そのような様式で比較されたサイトカインとしては、EPO、Noggin、G-CSF、SCF、GM-CSF、ソマトトロピン、IL-2、TGFβ1、IL-4、TNFα、IL-6、VEGF-165、およびM-CSFが挙げられる。図8は、本発明のヒト発現系と非ヒト発現系との間のこれらの同じサイトカインのウェスタンブロット分析の比較結果を示す。このデータは、本発明の安定なヒト細胞培養物が、天然のヒトサイトカインと同等の分子量および真正の三次元構造および活性を有し、非ヒト細胞から発現されたサイトカインのサイズおよび構造とは異なるサイトカインを発現したことを示している。さらに、真正サイトカインに対して生じた抗体は、真正のエピトープ表面の提示に起因して、高い親和性結合特性を有する。
【実施例10】
【0222】
VEGF165とIL-4の比較データ
VEGF165は、正常な血管形成および病的な血管形成において大きな役割を果たしている。VEGFに特異的なモノクローナル抗体を用いる処理によるVEGF活性の阻害はin vivoで腫瘍増殖を抑制することができることが証明されている。現在、市販のVEGF165タンパク質試薬は大腸菌および昆虫細胞などの非ヒト細胞から生産されている。本明細書に開示される本発明の方法は遺伝子操作されたヒト293細胞からVEGF165を生産するのに用いられた。図9は、大腸菌とヒト細胞との間で発現されたVEGF165の活性の比較を示し、大腸菌により発現されるタンパク質の分子量はモノマーで18 kDである。これは糖鎖付加に起因して28 kDのバンドとして移動する本発明のVEGF165と同等である。ヒトおよび非ヒト細胞系におけるVEGFの比較活性については図9を参照されたい。
【0223】
本発明の安定なヒト細胞により産生されたVEGF165の生物活性を、ヒト臍帯静脈内皮細胞の増殖を誘導するその能力により決定したところ、VEGF165は大腸菌により発現されるタンパク質よりも6倍活性が高いことが示された。
【0224】
IL-4は、アレルギー性炎症および喘息の発生において重要な役割を果たしている。現在、市販のIL-4タンパク質試薬は大腸菌から生産されており、14 kDの分子量を有する(図7C)。これは、糖鎖付加に起因して19 kDの主要なバンドとして移動するヒト細胞に由来するIL4と同等である。IL-4の生物学的活性を、ヒトTF-1細胞の増殖の用量依存的刺激により決定した。図10に示されるように、IL4は大腸菌により発現されるサイトカインよりも4倍高い効力を有する。ヒトおよび非ヒト細胞系におけるIL4の比較活性については図10を参照されたい。
【0225】
大腸菌中で産生されるサイトカインは糖鎖付加されておらず、秘密の、または通常は隠れたエピトープを露出し得る。従って、抗体は大腸菌により産生されるタンパク質と比較して天然のヒトタンパク質に対する異なる親和性を有し得る。実際、ウェスタンブロット分析は、昆虫細胞に由来する完全長タンパク質に対して生じたモノクローナル抗体が、大腸菌ならびに微小凝集物に対応し得る他の高度に反応性の種に由来するVEGF165を認識することを示している(図8C)。対照的に、ヒト細胞型についてはただ1つのバンドが認められる。大腸菌に由来する完全長タンパク質に対して生じたモノクローナル抗体は、還元的および非還元的条件下で大腸菌に由来するタンパク質を認識する。対照的に、ヒト細胞型については、非還元的条件下でそのタンパク質のみが検出される。
【実施例11】
【0226】
真正TGF-β1
トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)は、細胞スイッチとして作用し、免疫機能、増殖および上皮間葉移行を調節する高度に多面的なサイトカインである。これらのタンパク質は前駆体として産生される。フリン様転換酵素はプロタンパク質を加工して、N末端の潜伏関連ペプチド(LAP)およびC末端の成熟TGF-βを生成する。LAPとTGF-βのジスルフィド結合したホモダイマーは分泌後にも非共有結合したままであり、小さい潜伏TGF-β複合体を形成する。LAPの潜伏TGF-β結合タンパク質への共有結合は、細胞外マトリックスと相互作用し得る大きい潜伏複合体を作製する。市販のTGF-βタンパク質は、CHO細胞中で発現される組換えタンパク質として、またはヒト血小板から精製された天然タンパク質として生産されている。複雑なタンパク質溶解後修飾に起因して、TGF-βの収率は低く、製品は経済的なバルク量では入手できない。効率的な本発明のヒト細胞に基づく発現系が、様々なヒトサイトカインの拡張可能な生産のために本明細書で開発されており、遺伝子操作されたヒト293細胞から高度に真正なヒトTGF-β1、β2およびβ3タンパク質を生産している。これらのタンパク質は、25 kDの高度に精製されたジスルフィド結合したダイマーであり、大規模で費用効果的に生産することができる(図18B)。
【0227】
IL-17を産生するCD4+ T細胞(Th-17細胞)は、Th1とは異なる経路、およびTh2細胞分化経路に沿って発生するTh細胞のユニークなサブセットとして同定されている。この知見は、免疫調節、宿主防御および自己免疫疾患の病因に刺激的な新しい洞察を提供した。最近、ヒトTh17分化を駆動するのにIL1β、IL6およびIL23が重要であることが示された。しかしながら、マウスTh17細胞の分化にとって重要であるTGF-β1は必要ではないばかりか、ヒトTh17分化を阻害すると報告されている(McGeachy & Cua (2008) Immunity 28:445、Chen & O'Shea (2008) Cytokines 41:71)。この研究においては、健康なドナーから単離された全CDE4+細胞を、本発明のヒト細胞発現系および昆虫細胞もしくは細菌発現系に由来するTh17分極サイトカインの存在下、10μg/mLのプレートに結合した抗CD3および10μg/mlの可溶性抗CD28で刺激した。5日後、ELISAによるIL-17の測定のために上清を収穫した。
【0228】
その結果は、組換え生産された真正ヒトIL1β、IL6およびIL23が、IL-17分泌の誘導において有意により有効であることを示している。より重要なことに、それは、組換え生産された真正ヒトTGF-β1もその効果を増強するのに有効であることを証明している。対照的に、昆虫細胞に由来するこのサイトカインはわずかな効果しか示さなかった。この結果は、より真正なサイトカインを用いることにより、Th17細胞分化をより効率的に誘導し、ヒトの生物プロセスのより正確な科学的理解をもたらすことができる。本発明のヒト細胞発現系に由来するTGF-β1、TGF-β2、およびTGF-β3を用いて同じ条件下で行った別々の研究(図18B)により、3種全ての生物学的に関連するサイトカインがTh17細胞分極を効率的に誘導することができることが証明された(図22E-G)。さらに、別の研究において、市販のTGF-β1サイトカインのうち、真正なTGF-β1(図22H)のみが、IL-17およびIFN-γを産生する細胞の集団に対するフローサイトメトリー分析(図22H)により提供されたナイーブなT細胞(Th0)のTh17細胞への分化におけるヒト血小板由来天然TGF-β1(図22Hにおける「陽性対照」)と一致した。
【実施例12】
【0229】
真正VEGF
VEGF165は、システインノット増殖因子スーパーファミリーの一員である。このサイトカインは、内皮細胞の増殖および生存を刺激し、血管形成および血管透過性を促進する。血管化された組織中で発現された場合、VEGF165は正常な血管形成および病的な血管形成において大きな役割を果たす。VEGF165に特異的なモノクローナル抗体を用いる処理によるVEGF165活性の阻害はin vivoで腫瘍増殖を抑制することができることが証明されている。
【0230】
現在、市販のVEGF165タンパク質試薬は大腸菌および昆虫細胞などの非ヒト細胞から生産されている。本明細書に開示される真正VEGF165は遺伝子操作されたヒト293細胞から生産されたものである。大腸菌により発現されるタンパク質は、モノマーとダイマーの混合物であり、SDS-PAGEで18および38 kDの分子量を有する。これは、糖鎖付加およびダイマー化に起因して45 kDの糖鎖バンドとして移動する組換え生産された真正ヒトVEGF165と同等である(図19)。組換え生産された真正ヒトVEGF165の生物活性を、ヒト臍帯静脈内皮細胞の増殖を誘導するその能力により決定した。これらの結果は、組換え生産された真正ヒトVEGF165の活性が、同じバイオアッセイ条件下で大腸菌により発現されたタンパク質の活性よりも10倍高い:組換え生産された真正ヒトVEGFタンパク質のED50が1 ng/mLであるのに対して、大腸菌により発現されたものは10 ng/mLである(図9)ことを示している。
【実施例13】
【0231】
真正EPO
エリスロポエチン(EPO)は、トロンボポエチンと関連する34 kDの糖タンパク質ホルモンである。このタンパク質は、初期の赤血球前駆体のアポトーシスを防止することにより赤血球形成を促進する。in vivoでの生物学的活性のためにはEPOの糖鎖付加が必要であることが示されている。現在、市販の組換えヒトEPOタンパク質はCHO細胞から生産されている。これらの組換えタンパク質は、SDS-PAGEゲル上で40 kDのより高い見かけの分子量を有し(図20A)、より低い含量の中性グリカンを有する(図20B)ことにより天然のヒトEPOと異なる。組換え生産された真正ヒトEPOは、本明細書では遺伝子操作されたヒト293細胞から生産されたものである。文献(Skibeliら(2001) Blood 98:3626)中の天然ヒトタンパク質と同様、組換え生産された真正ヒトEPOはより低い見かけの分子量および実質的により高い含量の中性グリカンを示す。さらに、組換え生産された真正ヒトEPOは、CHO細胞により産生された型よりも豊富であり多様なグリカンプロフィールを有する。組換え生産された真正ヒトEPO中で最も豊富なグリカンは、テトラ-アンテナ複合体型であるが、CHO EPO中のものは伸長した2アンテナ複合体型である(図20C)。
【実施例14】
【0232】
真正IL-23
現在、市販の組換えIL-23サイトカインは、昆虫細胞発現系からヘテロダイマーまたは融合タンパク質として生産されている。組換え生産された真正ヒトIL-23は、本明細書では遺伝子操作されたヒトHEK293細胞の安定な細胞培養物中で生産されている。このタンパク質は、55 kDのジスルフィド結合したヘテロダイマーとして発現され、安定な培養物の拡張性に起因して、費用効果的に生産し、効率的に精製することができる(図18A)。
【0233】
IL-17を産生するCD4+ T細胞(Th17細胞)は、Th1およびTh2細胞分化経路とは異なる経路に沿って発生するTヘルパー細胞のユニークなサブセットとして同定されている。この知見は、免疫調節、宿主防御および自己免疫疾患の病因に刺激的な新しい洞察を提供した。最近、ヒトTh17分化を駆動するのにTGF-β、IL-1β、IL-6およびIL-23が重要であることが示された(Chen & O'Shea (2008) Cytokines 41:71)。まず、ヒトおよび昆虫細胞に由来するIL-23の生物活性を、10 ng/mlのPMAで活性化されたマウス脾臓細胞からのIL-17の用量依存的分泌により決定したところ、組換え生産された真正ヒトIL-23の活性が10倍高いことが示された(図21A)。この活性を、健康なドナーから単離され、Th17分極サイトカインの存在下、10μg/mlのプレート結合抗CD3および10μg/mlの可溶性抗CD28で刺激したヒトCD4+細胞を用いてさらにアッセイした。5日後、ELISAによるIL-17の測定のために上清を収穫した。その結果は、組換え生産された真正ヒトIL-23が、2つの独立した試験において、IL-17分泌を誘導するのに100倍より強力であり、最大の誘導は、組換え生産された真正ヒトIL-23を用いた場合は0.1 ng/mlで達成されたのに対して、昆虫細胞により産生されたIL-23を用いた場合は10 ng/mlで達成されたことを示している(図21B)。これらの結果は、真正ヒト細胞により発現されたサイトカインが、生理的に関連する濃度でTh17細胞分化を誘導することができることを示している。
【0234】
IL-23は、IL12p40とIL23p19の糖鎖付加されたヘテロダイマータンパク質である。現在、市販の組換えIL-23サイトカインは昆虫細胞発現系に由来するヘテロダイマータンパク質または融合タンパク質として生産されている。真正IL-23は本明細書では遺伝子操作されたヒトHEK293細胞の安定な細胞培養物から生産されている。このタンパク質は55 kDの真正なジスルフィド結合したダイマーとして発現され、安定な培養物の拡張性に起因して、費用効果的に生産することができる(図18A)。
【実施例15】
【0235】
真正GM-CSFおよびIL-4は樹状細胞の培地交換不要分化を可能にする
精製されたヒト末梢血単球を、37℃、5%CO2を含有する加湿された空気中で合計7日間、5 x 105細胞/mlでG4 DC培地(以下に特定されるもの)中で培養した。HZ G4 DCを培地交換せずに5 ng/mlの組換え生産された真正ヒトGM-CSFおよびIL-4で用いたが、EC G4 DCを日常的に用いた(50 ng/mlの大腸菌GM-CSFおよびIL-4を3日目および5日目に50%の培地交換と共に用いた)。6日目に、リポ多糖(LPS)をウェルの半分に添加して、DC成熟を誘導したが、他の半分のウェルを偽処理として用いた。培養の終わりに(7日間)、サイトカイン測定のために上清を収穫したが、得られたDCをフローサイトメトリーによる表面マーカー、FITC-デキストランの食作用による抗原取込み、および同種異系MLRによる抗原提示能力について分析した。
【0236】
選択されたサイトカインおよびケモカインのDC生成のプロフィールを、Pierce Cytokine Arrayにより測定した。データは、HZ G4 DC(培地交換せずに5 ng/ml)の存在下で生成されたDCが、成熟の前後にEC G4 DC(培地交換せずに50 ng/ml)の存在下で生成されたDCと類似するサイトカインおよびケモカインのプロフィールを示したことを示している(図23A)。LPS成熟の前後にHZ G4 DCまたはEC G4 DCの存在下で分化したDCを、様々な比率の同種異系ヒト末梢血T細胞と共に5日間、3回培養した。培養物を、細胞収穫前の最後の18時間、3H-TdR(0.5 uCi/ウェル)でパルスした。Tリンパ球の増殖を、βシンチレーション計測により測定した。図23Bにより示されるように、HZ G4 DCまたはEC G4 DCの存在下で分化したDCは、特にDC:T比が低い場合、同種異系T細胞の増殖を刺激する能力が同様に低いことを示している。LPSにより成熟を誘導した後、両条件下で分化したDCは同種異系T細胞の増殖を刺激するその能力を増加させた。HZ G4 DCの存在下で生成されたDCは、この点でEC G4 DCの存在下で生成されたDCよりもさらに良好であるようであった(図23B)。従って、HZ G4 DCの存在下で分化したDCは、EC G4 DCの存在下で分化したDCと同様か、またはそれより良好な抗原提示能力を有していた。
【実施例16】
【0237】
真正Noggin
Nogginは、骨形態形成タンパク質(BMP)のアンタゴニストである分泌型ホモダイマー糖タンパク質である。フィーダー層または条件化培地を含まない(しかし、塩基性FGFを添加する)ヒト胚性幹細胞(hES)の培養の間に、Nogginの添加により、幹細胞はその未分化の多能状態を維持することができる。市販のNoggin製品は様々な形態で生産されているが、そのいずれも真正ではない:例えば、大腸菌中で発現された非糖鎖付加タンパク質;NS0中で発現された糖鎖付加されたFc-融合タンパク質。組換え生産された真正ヒトNogginは、本明細書では安定な遺伝子操作されたヒト293細胞発現系中で生産されている。このタンパク質は真正な糖鎖付加されたジスルフィド結合したダイマーとして発現される。組換え生産された真正ヒトホモダイマー性Nogginは、陰性および陽性対照(図24、レーン1および2)と比較して10 pg/ml濃度で処理(図24、レーン3)および20 pg/ml濃度で処理(図24、レーン4)した場合、未分化のhES細胞のマーカーであるOct3/4を効率的かつ一貫して発現する。参照により本明細書に組み入れられるものとするWangら、Biochem. Biophys. Res. Comm., 330:934-942 (2005)およびItsyksonら、Mol. Cell. Neurosci. 30:24-36 (2005)を参照されたい。
【実施例17】
【0238】
真正G-CSFに対するモノクローナル抗体
大腸菌中で産生されるサイトカインは糖鎖付加されておらず、秘密の、または通常は隠れたエピトープを露出し得る。同様に、SF9またはCHO細胞中で産生されたサイトカインはヒトに近いものではない翻訳後修飾を有する。これらの因子のため、抗体がヒト細胞により発現されたタンパク質抗原から作製されたか、または非ヒト細胞により発現されたタンパク質抗原から作製されたかに応じて、その抗体は異なる親和性を有し得る。
【0239】
SDS-PAGEゲル上で大腸菌に由来する18 kDのものと比較して、その糖鎖に起因して22〜25 kDのより高い見かけの分子量を有する、本発明のヒト細胞発現系に由来するG-CSFに対するいくつかのモノクローナル抗体が生成された(図25A)。特に、モノクローナル抗体HZmAb G-CSF-1はヒト細胞に由来するG-CSFのみを認識し、大腸菌に由来するG-CSFを認識しない(図25B)が、HZmAb G-CSF-2は両方のG-CSFを認識する(図25C)。これらの結果は、ヒト細胞発現系に由来する組換えサイトカインが、ヒト血清サイトカインのユニークなエピトープ部位を選択的に検出することができる抗体を生成させ、ならびにELISAアッセイにおける標準物として使用するための非常に好ましい抗原であることを示している。
【実施例18】
【0240】
本発明のヒト細胞系中で発現させることができる他のタンパク質
本発明のヒト発現系は、ヒトサイトカインの発現に限定されるわけではない。ヒトサイトカイン以外のヒトタンパク質を、本発明の安定なヒト細胞発現系中で発現させることができる。例えば、ヒトキナーゼ、およびヒトホスファターゼ、ならびに他のヒトタンパク質および酵素を、本発明のヒト細胞発現系中で真正に発現させて、組換えの真正ヒト様キナーゼ、ホスファターゼ、タンパク質、および酵素を生産することもできる。
【0241】
細胞内コミュニケーションにおけるその重要な役割に起因して、タンパク質キナーゼの調節異常は、癌、糖尿病、心臓病、神経障害および慢性関節リウマチなどの400種類ものヒト疾患に関与してきた。従って、タンパク質キナーゼは薬剤設計およびスクリーニングにとって重要である。現在、キナーゼは主に非ヒト細胞(例えば、大腸菌または昆虫細胞)において生産されており、その多くが発現系の制限に起因して、タンパク質トランケーションおよび/またはin vitroでの活性化工程を必要とする。本発明に従って、完全長であり、in vivoで活性化されるヒトタンパク質キナーゼを発現させることが可能である。一例としてp38αを用いて、本発明のヒト細胞系中で産生されたヒトタンパク質キナーゼの特性および阻害プロフィールが、非ヒト細胞系中で産生された同じ型のキナーゼと異なることが本明細書で証明された。
【0242】
組換え生産された真正ヒトp38αを、本発明に従って亜ヒ酸塩の存在下でヒト細胞中で産生させ、活性化した。Vendor AおよびBに由来するサンプルキナーゼを大腸菌から発現させ、精製し、MKK6によりin vitroで活性化し、再精製した。SDS PAGE分析により、ヒト細胞発現系中で産生されたp38αが純粋であり、60 kDの主要なバンドおよび23 kDの内因性ヒトGSTの小さいバンドを有することが示された。これをMS分析により確認したところ、他の夾雑タンパク質は認められなかった。真正p38αのKm.ATPは109±12μMであるが、Vendor調製物のKmは212±26μMであった。Vendor B酵素については120μMのKmが認められた。14種の既知の阻害剤について、IC50値を決定した。表4を参照されたい。両方のp38α調製物についてのSB-202190(公知のp38α選択的阻害剤)のIC50値は類似していたが(それぞれ、0.02μMおよび0.03μM)、この2つの調製物間で阻害剤に対する感受性には明確な差異がある。表4を参照されたい。Vendor A調製物はAMP-PNP(非加水分解性ATP類似体)に対してのみ感受性であった。しかし、このタンパク質はp38αよりも感受性が7倍低く、これはその高い方のKmと一致している。一方、p38αはスタウロスポリン、K252a、Ro 31-8220、KT5720、およびSB-202190に対する測定可能なIC50値を有していた。Vendor Aキナーゼの阻害プロフィールはVendor Bのものと同等である。表4を参照されたい。
【0243】
表
【表1】
【0244】
【表2】
【0245】
【表3】
【0246】
【表4】
【0247】
【表5】
【0248】
配列表
【0249】
【0250】
【0251】
【0252】
【0253】
【0254】
【0255】
【0256】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の機能し得る形で連結された発現エレメント:
(A)サイトメガロウイルスエンハンサーエレメント配列;
(B)(i)ヒトアクチンプロモーター配列、(ii)ヒト血清アルブミンプロモーター配列、および(iii)ヒトフィブリノゲンプロモーター配列からなる群より選択されるヒトプロモーター配列;
(C)ヒトグロビン遺伝子イントロン配列;ならびに
(D)ヒトシグナルペプチド配列、
を含むカセットを含む発現ベクター。
【請求項2】
シグナルペプチド配列の下流に位置し、請求項1に記載のエレメント(A)、(B)、(C)、および(D)に機能し得る形で連結された所望のポリヌクレオチドをさらに含む、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項3】
(i)所望のポリヌクレオチドが、ヒトシグナルペプチド配列の下流の発現ベクター中に位置する終結シグナル配列に機能し得る形で連結されるか、または(ii)所望のポリヌクレオチド自身が終結シグナル配列を含む、請求項2に記載の発現ベクター。
【請求項4】
ヒトプロモーター配列が機能的なヒトβ-アクチンプロモーター配列である、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項5】
CMVエンハンサーエレメントがCMV極初期エンハンサー配列である、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項6】
シグナルペプチド配列が免疫グロブリンスーパーファミリー8シグナルペプチド、またはα-フィブリノゲンシグナルペプチドである、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項7】
所望のポリヌクレオチドが、CMV極初期エンハンサー、β-アクチンプロモーター配列、ヒトグロビン遺伝子イントロン配列、および免疫グロブリンスーパーファミリー8シグナルペプチドに機能し得る形で連結された、請求項2に記載の発現ベクター。
【請求項8】
所望のポリヌクレオチドが、CMV極初期エンハンサー、β-アクチンプロモーター配列、ヒトグロビン遺伝子イントロン配列、およびα-フィブリノゲンシグナルペプチドに機能し得る形で連結された、請求項2に記載の発現ベクター。
【請求項9】
所望のポリヌクレオチドがサイトカインをコードする、請求項2に記載の発現ベクター。
【請求項10】
コードされるサイトカインが、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンA/2xINHbA、アクチビンB/2xINHbB、AMH/MIS、アルテミン、BDNF、BMP2、BMP15/GDF9B、BMP2/BMP2A、BMP3/オステオゲニン、BMP4、BMP4/BMP2B、BMP5、BMP7/OP-1、BMP1、BMP10、BMP15/GDF9B、β-NGF、シスタチンC、デルタ1、EGF、エリスロポエチン(EPO)、酸性FGF、塩基性FGF、FGF10、FGF5、FGF7、FGF8b、FLT3リガンド、G-CSF、GDF15、GDF2/BMP9、GDF3、GDF5/BMP14、GDF8/ミオスタチン、GDF9、GDNF、GM-CSF、HGF、HGH、IFN-α2A、IFN-α2B、IFN-γ、IFN-β1、IGF I、IGF II、IGF IIv1、IGF IIv2、IL10、IL11、IL12、IL15、IL17/IL17A、IL17F、IL1β、IL2、IL23、IL27、IL28A/IFN-λ-2、IL28B/IFN-λ-3、IL29/IFN-λ-1、IL1β、IL2 IL3、IL32、IL35、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、インヒビンA/INHa&INHbA、インヒビンB/INHa&INHbB、インヒビンC/INHa&INHbC、インヒビンE/INHa&INHbE、LEFTYB、LEFTY1/LeftyB、M-CSF、マウスCSF、マウスSCF、NODAL、Noggin、NT3 (ニューロトロフィン3)、オンコスタチンM、PDGFα、PDGFβ、ペルセフィン、SCF、SDF1α、SHH、ソマトトロピン、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3、TGFβ4/LEFTY2/LeftyA、TNFα、TPOα、VEGF121aa、VEGF165aa、WIF1、WNT1、Wnt10A、Wnt10B/12、Wnt11、Wnt16、Wnt2、Wnt2B/13、Wnt3、Wnt3A、Wnt4、Wnt5A、Wnt5B、Wnt6、Wnt7A、Wnt7B、Wnt8B、およびWnt9A/14からなる群より選択される、請求項9に記載の発現ベクター。
【請求項11】
コードされるサイトカインが、EPO、G-CSF、GM-CSF、IL-2、IL-4、IL-6、M-CSF、Noggin、SCF、ソマトトロピン、TGFβ1、TNFα、およびVEGF-165からなる群より選択される、請求項10に記載の発現ベクター。
【請求項12】
請求項2、7、または8に記載の発現ベクターをヒト細胞中に導入することを含み、所望のポリヌクレオチドがヒトタンパク質をコードし、ヒト細胞中での所望のポリヌクレオチドの発現が真正ヒトタンパク質を産生する、真正ヒトタンパク質を生産するための組換え方法。
【請求項13】
真正ヒトタンパク質が、天然型の同じヒトタンパク質のものと同様のサイズ、構造、分子量、糖鎖付加パターン、および転写後修飾を有する、請求項12に記載の組換え方法。
【請求項14】
所望のポリヌクレオチドが、サイトカイン、アルブミン、IgG、IgA、IgM、IgD、IgE、α-1-プロテイナーゼ阻害剤、血液前凝固タンパク質、血液抗凝固タンパク質、血栓溶解剤、抗血管形成タンパク質、α-2-抗プラスミン、C-1エステラーゼ阻害剤、アポリポタンパク質、HDL、LDL、フィブロネクチン、β-2-糖タンパク質I、プラスミノゲン、プラスミン、プラスミノゲン活性化因子、プラスミノゲン阻害因子、血漿プロテアーゼ阻害剤、抗トロンビンIII、ストレプトキナーゼ、インター-α-トリプシン阻害剤、α-2-マクログロブリン、アミロイドタンパク質、フェリチン、プレアルブミン、GC-グロブリン、ヘモペキシン、C3-補体、トランスフェリン、ウロキナーゼ、およびα-1-酸-糖タンパク質からなる群より選択されるタンパク質をコードする、請求項12に記載の組換え方法。
【請求項15】
所望のポリヌクレオチドがサイトカインをコードする、請求項12に記載の組換え方法。
【請求項16】
コードされるサイトカインが、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンA/2xINHbA、アクチビンB/2xINHbB、AMH/MIS、アルテミン、BDNF、BMP2、BMP15/GDF9B、BMP2/BMP2A、BMP3/オステオゲニン、BMP4、BMP4/BMP2B、BMP5、BMP7/OP-1、BMP1、BMP10、BMP15/GDF9B、β-NGF、シスタチンC、デルタ1、EGF、エリスロポエチン(EPO)、酸性FGF、塩基性FGF、FGF10、FGF5、FGF7、FGF8b、FLT3リガンド、G-CSF、GDF15、GDF2/BMP9、GDF3、GDF5/BMP14、GDF8/ミオスタチン、GDF9、GDNF、GM-CSF、HGF、HGH、IFN-α2A、IFN-α2B、IFN-γ、IFN-β1、IGF I、IGF II、IGF IIv1、IGF IIv2、IL10、IL11、IL12、IL15、IL17/IL17A、IL17F、IL1β、IL2、IL23、IL27、IL28A/IFN-λ-2、IL28B/IFN-λ-3、IL29/IFN-λ-1、IL1β、IL2 IL3、IL32、IL35、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、インヒビンA/INHa&INHbA、インヒビンB/INHa&INHbB、インヒビンC/INHa&INHbC、インヒビンE/INHa&INHbE、LEFTYB、LEFTY1/LeftyB、M-CSF、マウスCSF、マウスSCF、NODAL、Noggin、NT3 (ニューロトロフィン3)、オンコスタチンM、PDGFα、PDGFβ、ペルセフィン、SCF、SDF1α、SHH、ソマトトロピン、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3、TGFβ4/LEFTY2/LeftyA、TNFα、TPOα、VEGF121aa、VEGF165aa、WIF1、WNT1、Wnt10A、Wnt10B/12、Wnt11、Wnt16、Wnt2、Wnt2B/13、Wnt3、Wnt3A、Wnt4、Wnt5A、Wnt5B、Wnt6、Wnt7A、Wnt7B、Wnt8B、およびWnt9A/14からなる群より選択される、請求項15に記載の組換え方法。
【請求項17】
コードされるサイトカインが、EPO、G-CSF、GM-CSF、IL-2、IL-4、IL-6、M-CSF、Noggin、SCF、ソマトトロピン、TGFβ1、TNFα、およびVEGF-165からなる群より選択される、請求項16に記載の組換え方法。
【請求項18】
ヒト細胞が 付けでATCC生物寄託受託番号 の下で寄託され、且つ該受託番号を有するHZ-293TSである、請求項12に記載の組換え方法。
【請求項19】
ヒト細胞から真正ヒトタンパク質を単離することをさらに含む、請求項12に記載の組換え方法。
【請求項20】
固定化金属アフィニティクロマトグラフィー(IMAC)カラムを通してヒト細胞の抽出物を流し、真正ヒトタンパク質を単離することをさらに含む、請求項19に記載の組換え方法。
【請求項21】
所望のポリヌクレオチドがHIS-タグ非含有ポリペプチドまたはタンパク質をコードする、請求項12に記載の組換え方法。
【請求項22】
IMACカラムを通してヒト細胞の抽出物を流し、真正ヒトタンパク質を単離することをさらに含む、請求項21に記載の組換え方法。
【請求項23】
請求項2、7、または8に記載の発現ベクター中の所望のポリヌクレオチドを発現するヒト細胞により産生された組換え生産された真正ヒトタンパク質であって、所望のポリヌクレオチドがヒトタンパク質をコードし、所望のポリヌクレオチドの発現が真正ヒトタンパク質を産生する、前記真正ヒトタンパク質。
【請求項24】
所望のポリヌクレオチドが、サイトカイン、アルブミン、IgG、IgA、IgM、IgD、IgE、α-1-プロテイナーゼ阻害剤、血液前凝固タンパク質、血液抗凝固タンパク質、血栓溶解剤、抗血管形成タンパク質、α-2-抗プラスミン、C-1エステラーゼ阻害剤、アポリポタンパク質、HDL、LDL、フィブロネクチン、β-2-糖タンパク質I、フィブリノゲン、プラスミノゲン、プラスミン、プラスミノゲン活性化因子、プラスミノゲン阻害因子、血漿プロテアーゼ阻害剤、抗トロンビンIII、ストレプトキナーゼ、インター-α-トリプシン阻害剤、α-2-マクログロブリン、アミロイドタンパク質、フェリチン、プレアルブミン、GC-グロブリン、ヘモペキシン、C3-補体、トランスフェリン、ウロキナーゼ、およびα-1-酸-糖タンパク質からなる群より選択されるヒトタンパク質をコードする、請求項23に記載の組換え生産された真正タンパク質。
【請求項25】
真正ヒトタンパク質がヒトサイトカインである、請求項24に記載の組換え生産された真正ヒトタンパク質。
【請求項26】
ヒトサイトカインが、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンA/2xINHbA、アクチビンB/2xINHbB、AMH/MIS、アルテミン、BDNF、BMP2、BMP15/GDF9B、BMP2/BMP2A、BMP3/オステオゲニン、BMP4、BMP4/BMP2B、BMP5、BMP7/OP-1、BMP1、BMP10、BMP15/GDF9B、β-NGF、シスタチンC、デルタ1、EGF、エリスロポエチン(EPO)、酸性FGF、塩基性FGF、FGF10、FGF5、FGF7、FGF8b、FLT3リガンド、G-CSF、GDF15、GDF2/BMP9、GDF3、GDF5/BMP14、GDF8/ミオスタチン、GDF9、GDNF、GM-CSF、HGF、HGH、IFN-α2A、IFN-α2B、IFN-γ、IFN-β1、IGF I、IGF II、IGF IIv1、IGF IIv2、IL10、IL11、IL12、IL15、IL17/IL17A、IL17F、IL1β、IL2、IL23、IL27、IL28A/IFN-λ-2、IL28B/IFN-λ-3、IL29/IFN-λ-1、IL1β、IL2 IL3、IL32、IL35、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、インヒビンA/INHa&INHbA、インヒビンB/INHa&INHbB、インヒビンC/INHa&INHbC、インヒビンE/INHa&INHbE、LEFTYB、LEFTY1/LeftyB、M-CSF、マウスCSF、マウスSCF、NODAL、Noggin、NT3 (ニューロトロフィン3)、オンコスタチンM、PDGFα、PDGFβ、ペルセフィン、SCF、SDF1α、SHH、ソマトトロピン、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3、TGFβ4/LEFTY2/LeftyA、TNFα、TPOα、VEGF121aa、VEGF165aa、WIF1、WNT1、Wnt10A、Wnt10B/12、Wnt11、Wnt16、Wnt2、Wnt2B/13、Wnt3、Wnt3A、Wnt4、Wnt5A、Wnt5B、Wnt6、Wnt7A、Wnt7B、Wnt8B、およびWnt9A/14からなる群より選択される、請求項25に記載の組換え生産された真正ヒトタンパク質。
【請求項27】
ヒトサイトカインが、EPO、G-CSF、GM-CSF、IL-2、IL-4、IL-6、M-CSF、Noggin、SCF、ソマトトロピン、TGFβ1、TNFα、およびVEGF-165からなる群より選択される、請求項26に記載の組換え生産された真正ヒトタンパク質。
【請求項28】
ヒト細胞が 付けでATCC生物寄託受託番号 の下で寄託され、且つ該受託番号を有するHZ-293TSである、請求項24に記載の組換え生産された真正ヒトタンパク質。
【請求項29】
真正ヒトタンパク質の糖鎖付加パターンが、天然の内因型のそのヒトタンパク質と類似する、請求項24に記載の組換え生産された真正ヒトタンパク質。
【請求項30】
真正ヒトタンパク質のサイズ、構造、および分子量が、天然の内因型のそのヒトタンパク質のサイズおよび分子量と類似する、請求項24に記載の組換え生産された真正ヒトタンパク質。
【請求項31】
真正ヒトタンパク質がTGFβである、請求項24に記載の組換え生産された真正ヒトタンパク質。
【請求項32】
所望のポリヌクレオチドがnogginタンパク質をコードし、所望のポリヌクレオチドの発現が細胞中でジスルフィド結合したnogginダイマーを産生する、請求項24に記載の組換え生産された真正ヒトタンパク質。
【請求項33】
請求項24に記載の真正ヒトタンパク質のエピトープに対する抗体。
【請求項34】
請求項26に記載の真正ヒトタンパク質のエピトープに対する抗体。
【請求項35】
前記抗体がポリクローナルまたはモノクローナル抗体である、請求項33に記載の抗体。
【請求項36】
前記抗体がポリクローナルまたはモノクローナル抗体である、請求項34に記載の抗体。
【請求項37】
付けでATCC生物寄託受託番号 の下で寄託され、且つ該受託番号を有するHZ-293TSと呼ばれる安定なヒト細胞系。
【請求項38】
請求項2、7、または8に記載の発現ベクターを発現するヒト細胞。
【請求項39】
ヒト細胞が 付けでATCC生物寄託受託番号 の下で寄託され、且つ該受託番号を有するHZ-293TSである、請求項38に記載のヒト細胞。
【請求項40】
細胞成長、細胞増殖、細胞分化、または炎症に関連する症状を治療するための方法であって、(A)請求項23に記載の組換え生産された真正ヒトタンパク質、または(B)請求項23に記載の組換え生産された真正ヒトタンパク質に対する抗体を、細胞成長、増殖、分化、または炎症に関連する症状を有する個体に投与することを含む、前記方法。
【請求項41】
組換え生産された真正ヒトタンパク質が、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンA/2xINHbA、アクチビンB/2xINHbB、AMH/MIS、アルテミン、BDNF、BMP2、BMP15/GDF9B、BMP2/BMP2A、BMP3/オステオゲニン、BMP4、BMP4/BMP2B、BMP5、BMP7/OP-1、BMP1、BMP10、BMP15/GDF9B、β-NGF、シスタチンC、デルタ1、EGF、エリスロポエチン(EPO)、酸性FGF、塩基性FGF、FGF10、FGF5、FGF7、FGF8b、FLT3リガンド、G-CSF、GDF15、GDF2/BMP9、GDF3、GDF5/BMP14、GDF8/ミオスタチン、GDF9、GDNF、GM-CSF、HGF、HGH、IFN-α2A、IFN-α2B、IFN-γ、IFN-β1、IGF I、IGF II、IGF IIv1、IGF IIv2、IL10、IL11、IL12、IL15、IL17/IL17A、IL17F、IL1β、IL2、IL23、IL27、IL28A/IFN-λ-2、IL28B/IFN-λ-3、IL29/IFN-λ-1、IL1β、IL2 IL3、IL32、IL35、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、インヒビンA/INHa&INHbA、インヒビンB/INHa&INHbB、インヒビンC/INHa&INHbC、インヒビンE/INHa&INHbE、LEFTYB、LEFTY1/LeftyB、M-CSF、マウスCSF、マウスSCF、NODAL、Noggin、NT3 (ニューロトロフィン3)、オンコスタチンM、PDGFα、PDGFβ、ペルセフィン、SCF、SDF1α、SHH、ソマトトロピン、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3、TGFβ4/LEFTY2/LeftyA、TNFα、TPOα、VEGF121aa、VEGF165aa、WIF1、WNT1、Wnt10A、Wnt10B/12、Wnt11、Wnt16、Wnt2、Wnt2B/13、Wnt3、Wnt3A、Wnt4、Wnt5A、Wnt5B、Wnt6、Wnt7A、Wnt7B、Wnt8B、およびWnt9A/14からなる群より選択されるサイトカインである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
組換え生産された真正ヒトTNFαに対する抗体を、炎症または関節炎に関連する症状を有する個体に投与することを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
組換え生産された真正ヒトVEGFに対する抗体を、癌または細胞増殖に関連する症状を有する個体に投与することを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
サンプルから請求項24に記載の真正ヒトタンパク質を検出するための診断剤としての該ヒトタンパク質のエピトープに対する抗体の使用。
【請求項45】
前記抗体を、ヒトタンパク質を検出するためのELISAアッセイにおける診断剤として用いる、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
サンプルがヒト組織サンプル、ヒト細胞サンプル、ヒト血液サンプル、またはヒト体液サンプルである、請求項44に記載の使用。
【請求項47】
ヒトタンパク質がサイトカインである、請求項44に記載の使用。
【請求項48】
ex vivoでの研究道具としての請求項24に記載の組換え生産された真正タンパク質の使用。
【請求項49】
組換え生産された真正タンパク質を、そのタンパク質と相互作用する薬剤のためのタンパク質または細胞スクリーニングアッセイにおいて用いる、請求項48に記載の使用。
【請求項50】
細胞成長、細胞増殖、細胞分化、または炎症に関連する症状を治療する方法であって、タンパク質をコードする所望のポリヌクレオチドを発現するベクターを、細胞成長、増殖、分化、または炎症に関連する症状を有する個体に投与することを含み、該個体の細胞中で発現されたタンパク質が該症状を治療するのに役立つ、前記方法。
【請求項51】
前記ベクターがpHZhag、pHZA、pHZA、pHZI、pHZhagA、およびpHZhagIからなる群より選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
pHZhagベクターが、(i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、および(iii)ヒトβ-グロビンイントロンの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
pHZAベクターが、(i)hCMVプロモーター、および(ii)ヒトフィブリノゲンサブユニットAシグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
pHZIベクターが、(i)hCMVプロモーター、および(ii)ヒトIgスーパーファミリー8シグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
pHZhagAベクターが、(i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、(iii)ヒトβ-グロビンイントロン、および(iv)ヒトフィブリノゲンサブユニットAシグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
pHZhagIベクターが、(i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、(iii)ヒトβ-グロビンイントロン、および(iv)ヒトIgスーパーファミリー8シグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項57】
治療用タンパク質を発現する、遺伝子療法におけるpHZhag、pHZA、pHZA、pHZI、pHZhagAおよびpHZhagIからなる群より選択されるベクターの使用。
【請求項58】
前記ベクターが、サイトカイン、アルブミン、IgG、IgA、IgM、IgD、IgE、α-1-プロテイナーゼ阻害剤、血液前凝固タンパク質、血液抗凝固タンパク質、血栓溶解剤、抗血管形成タンパク質、α-2-抗プラスミン、C-1エステラーゼ阻害剤、アポリポタンパク質、HDL、LDL、フィブロネクチン、β-2-糖タンパク質I、フィブリノゲン、プラスミノゲン、プラスミン、プラスミノゲン活性化因子、プラスミノゲン阻害因子、血漿プロテアーゼ阻害剤、抗トロンビンIII、ストレプトキナーゼ、インター-α-トリプシン阻害剤、α-2-マクログロブリン、アミロイドタンパク質、フェリチン、プレアルブミン、GC-グロブリン、ヘモペキシン、C3-補体、トランスフェリン、ウロキナーゼ、およびα-1-酸-糖タンパク質からなる群より選択されるヒトタンパク質をコードする、請求項57に記載の使用。
【請求項59】
pHZhagベクターが、(i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、および(iii)ヒトβ-グロビンイントロンの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む、請求項57に記載の使用。
【請求項60】
pHZAベクターが、(i)hCMVプロモーター、および(ii)ヒトフィブリノゲンサブユニットAシグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む、請求項57に記載の使用。
【請求項61】
pHZIベクターが、(i)hCMVプロモーター、および(ii)ヒトIgスーパーファミリー8シグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む、請求項57に記載の使用。
【請求項62】
pHZhagAベクターが、(i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、(iii)ヒトβ-グロビンイントロン、および(iv)ヒトフィブリノゲンサブユニットAシグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む、請求項57に記載の使用。
【請求項63】
pHZhagIベクターが、(i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、(iii)ヒトβ-グロビンイントロン、および(iv)ヒトIgスーパーファミリー8シグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む、請求項57に記載の使用。
【請求項64】
治療用タンパク質が、CFTR遺伝子、第VIII因子遺伝子、第IX因子遺伝子、E1A遺伝子、P53遺伝子、AC6遺伝子、およびVEGF遺伝子からなる群より選択されるヒト遺伝子によりコードされる、請求項57に記載の使用。
【請求項65】
前記ベクターを個体に投与し、それが1個以上の個体の細胞中に進入し、該ベクターが該細胞の内部でコードされた治療用タンパク質を発現する、請求項57に記載の使用。
【請求項1】
以下の機能し得る形で連結された発現エレメント:
(A)サイトメガロウイルスエンハンサーエレメント配列;
(B)(i)ヒトアクチンプロモーター配列、(ii)ヒト血清アルブミンプロモーター配列、および(iii)ヒトフィブリノゲンプロモーター配列からなる群より選択されるヒトプロモーター配列;
(C)ヒトグロビン遺伝子イントロン配列;ならびに
(D)ヒトシグナルペプチド配列、
を含むカセットを含む発現ベクター。
【請求項2】
シグナルペプチド配列の下流に位置し、請求項1に記載のエレメント(A)、(B)、(C)、および(D)に機能し得る形で連結された所望のポリヌクレオチドをさらに含む、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項3】
(i)所望のポリヌクレオチドが、ヒトシグナルペプチド配列の下流の発現ベクター中に位置する終結シグナル配列に機能し得る形で連結されるか、または(ii)所望のポリヌクレオチド自身が終結シグナル配列を含む、請求項2に記載の発現ベクター。
【請求項4】
ヒトプロモーター配列が機能的なヒトβ-アクチンプロモーター配列である、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項5】
CMVエンハンサーエレメントがCMV極初期エンハンサー配列である、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項6】
シグナルペプチド配列が免疫グロブリンスーパーファミリー8シグナルペプチド、またはα-フィブリノゲンシグナルペプチドである、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項7】
所望のポリヌクレオチドが、CMV極初期エンハンサー、β-アクチンプロモーター配列、ヒトグロビン遺伝子イントロン配列、および免疫グロブリンスーパーファミリー8シグナルペプチドに機能し得る形で連結された、請求項2に記載の発現ベクター。
【請求項8】
所望のポリヌクレオチドが、CMV極初期エンハンサー、β-アクチンプロモーター配列、ヒトグロビン遺伝子イントロン配列、およびα-フィブリノゲンシグナルペプチドに機能し得る形で連結された、請求項2に記載の発現ベクター。
【請求項9】
所望のポリヌクレオチドがサイトカインをコードする、請求項2に記載の発現ベクター。
【請求項10】
コードされるサイトカインが、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンA/2xINHbA、アクチビンB/2xINHbB、AMH/MIS、アルテミン、BDNF、BMP2、BMP15/GDF9B、BMP2/BMP2A、BMP3/オステオゲニン、BMP4、BMP4/BMP2B、BMP5、BMP7/OP-1、BMP1、BMP10、BMP15/GDF9B、β-NGF、シスタチンC、デルタ1、EGF、エリスロポエチン(EPO)、酸性FGF、塩基性FGF、FGF10、FGF5、FGF7、FGF8b、FLT3リガンド、G-CSF、GDF15、GDF2/BMP9、GDF3、GDF5/BMP14、GDF8/ミオスタチン、GDF9、GDNF、GM-CSF、HGF、HGH、IFN-α2A、IFN-α2B、IFN-γ、IFN-β1、IGF I、IGF II、IGF IIv1、IGF IIv2、IL10、IL11、IL12、IL15、IL17/IL17A、IL17F、IL1β、IL2、IL23、IL27、IL28A/IFN-λ-2、IL28B/IFN-λ-3、IL29/IFN-λ-1、IL1β、IL2 IL3、IL32、IL35、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、インヒビンA/INHa&INHbA、インヒビンB/INHa&INHbB、インヒビンC/INHa&INHbC、インヒビンE/INHa&INHbE、LEFTYB、LEFTY1/LeftyB、M-CSF、マウスCSF、マウスSCF、NODAL、Noggin、NT3 (ニューロトロフィン3)、オンコスタチンM、PDGFα、PDGFβ、ペルセフィン、SCF、SDF1α、SHH、ソマトトロピン、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3、TGFβ4/LEFTY2/LeftyA、TNFα、TPOα、VEGF121aa、VEGF165aa、WIF1、WNT1、Wnt10A、Wnt10B/12、Wnt11、Wnt16、Wnt2、Wnt2B/13、Wnt3、Wnt3A、Wnt4、Wnt5A、Wnt5B、Wnt6、Wnt7A、Wnt7B、Wnt8B、およびWnt9A/14からなる群より選択される、請求項9に記載の発現ベクター。
【請求項11】
コードされるサイトカインが、EPO、G-CSF、GM-CSF、IL-2、IL-4、IL-6、M-CSF、Noggin、SCF、ソマトトロピン、TGFβ1、TNFα、およびVEGF-165からなる群より選択される、請求項10に記載の発現ベクター。
【請求項12】
請求項2、7、または8に記載の発現ベクターをヒト細胞中に導入することを含み、所望のポリヌクレオチドがヒトタンパク質をコードし、ヒト細胞中での所望のポリヌクレオチドの発現が真正ヒトタンパク質を産生する、真正ヒトタンパク質を生産するための組換え方法。
【請求項13】
真正ヒトタンパク質が、天然型の同じヒトタンパク質のものと同様のサイズ、構造、分子量、糖鎖付加パターン、および転写後修飾を有する、請求項12に記載の組換え方法。
【請求項14】
所望のポリヌクレオチドが、サイトカイン、アルブミン、IgG、IgA、IgM、IgD、IgE、α-1-プロテイナーゼ阻害剤、血液前凝固タンパク質、血液抗凝固タンパク質、血栓溶解剤、抗血管形成タンパク質、α-2-抗プラスミン、C-1エステラーゼ阻害剤、アポリポタンパク質、HDL、LDL、フィブロネクチン、β-2-糖タンパク質I、プラスミノゲン、プラスミン、プラスミノゲン活性化因子、プラスミノゲン阻害因子、血漿プロテアーゼ阻害剤、抗トロンビンIII、ストレプトキナーゼ、インター-α-トリプシン阻害剤、α-2-マクログロブリン、アミロイドタンパク質、フェリチン、プレアルブミン、GC-グロブリン、ヘモペキシン、C3-補体、トランスフェリン、ウロキナーゼ、およびα-1-酸-糖タンパク質からなる群より選択されるタンパク質をコードする、請求項12に記載の組換え方法。
【請求項15】
所望のポリヌクレオチドがサイトカインをコードする、請求項12に記載の組換え方法。
【請求項16】
コードされるサイトカインが、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンA/2xINHbA、アクチビンB/2xINHbB、AMH/MIS、アルテミン、BDNF、BMP2、BMP15/GDF9B、BMP2/BMP2A、BMP3/オステオゲニン、BMP4、BMP4/BMP2B、BMP5、BMP7/OP-1、BMP1、BMP10、BMP15/GDF9B、β-NGF、シスタチンC、デルタ1、EGF、エリスロポエチン(EPO)、酸性FGF、塩基性FGF、FGF10、FGF5、FGF7、FGF8b、FLT3リガンド、G-CSF、GDF15、GDF2/BMP9、GDF3、GDF5/BMP14、GDF8/ミオスタチン、GDF9、GDNF、GM-CSF、HGF、HGH、IFN-α2A、IFN-α2B、IFN-γ、IFN-β1、IGF I、IGF II、IGF IIv1、IGF IIv2、IL10、IL11、IL12、IL15、IL17/IL17A、IL17F、IL1β、IL2、IL23、IL27、IL28A/IFN-λ-2、IL28B/IFN-λ-3、IL29/IFN-λ-1、IL1β、IL2 IL3、IL32、IL35、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、インヒビンA/INHa&INHbA、インヒビンB/INHa&INHbB、インヒビンC/INHa&INHbC、インヒビンE/INHa&INHbE、LEFTYB、LEFTY1/LeftyB、M-CSF、マウスCSF、マウスSCF、NODAL、Noggin、NT3 (ニューロトロフィン3)、オンコスタチンM、PDGFα、PDGFβ、ペルセフィン、SCF、SDF1α、SHH、ソマトトロピン、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3、TGFβ4/LEFTY2/LeftyA、TNFα、TPOα、VEGF121aa、VEGF165aa、WIF1、WNT1、Wnt10A、Wnt10B/12、Wnt11、Wnt16、Wnt2、Wnt2B/13、Wnt3、Wnt3A、Wnt4、Wnt5A、Wnt5B、Wnt6、Wnt7A、Wnt7B、Wnt8B、およびWnt9A/14からなる群より選択される、請求項15に記載の組換え方法。
【請求項17】
コードされるサイトカインが、EPO、G-CSF、GM-CSF、IL-2、IL-4、IL-6、M-CSF、Noggin、SCF、ソマトトロピン、TGFβ1、TNFα、およびVEGF-165からなる群より選択される、請求項16に記載の組換え方法。
【請求項18】
ヒト細胞が 付けでATCC生物寄託受託番号 の下で寄託され、且つ該受託番号を有するHZ-293TSである、請求項12に記載の組換え方法。
【請求項19】
ヒト細胞から真正ヒトタンパク質を単離することをさらに含む、請求項12に記載の組換え方法。
【請求項20】
固定化金属アフィニティクロマトグラフィー(IMAC)カラムを通してヒト細胞の抽出物を流し、真正ヒトタンパク質を単離することをさらに含む、請求項19に記載の組換え方法。
【請求項21】
所望のポリヌクレオチドがHIS-タグ非含有ポリペプチドまたはタンパク質をコードする、請求項12に記載の組換え方法。
【請求項22】
IMACカラムを通してヒト細胞の抽出物を流し、真正ヒトタンパク質を単離することをさらに含む、請求項21に記載の組換え方法。
【請求項23】
請求項2、7、または8に記載の発現ベクター中の所望のポリヌクレオチドを発現するヒト細胞により産生された組換え生産された真正ヒトタンパク質であって、所望のポリヌクレオチドがヒトタンパク質をコードし、所望のポリヌクレオチドの発現が真正ヒトタンパク質を産生する、前記真正ヒトタンパク質。
【請求項24】
所望のポリヌクレオチドが、サイトカイン、アルブミン、IgG、IgA、IgM、IgD、IgE、α-1-プロテイナーゼ阻害剤、血液前凝固タンパク質、血液抗凝固タンパク質、血栓溶解剤、抗血管形成タンパク質、α-2-抗プラスミン、C-1エステラーゼ阻害剤、アポリポタンパク質、HDL、LDL、フィブロネクチン、β-2-糖タンパク質I、フィブリノゲン、プラスミノゲン、プラスミン、プラスミノゲン活性化因子、プラスミノゲン阻害因子、血漿プロテアーゼ阻害剤、抗トロンビンIII、ストレプトキナーゼ、インター-α-トリプシン阻害剤、α-2-マクログロブリン、アミロイドタンパク質、フェリチン、プレアルブミン、GC-グロブリン、ヘモペキシン、C3-補体、トランスフェリン、ウロキナーゼ、およびα-1-酸-糖タンパク質からなる群より選択されるヒトタンパク質をコードする、請求項23に記載の組換え生産された真正タンパク質。
【請求項25】
真正ヒトタンパク質がヒトサイトカインである、請求項24に記載の組換え生産された真正ヒトタンパク質。
【請求項26】
ヒトサイトカインが、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンA/2xINHbA、アクチビンB/2xINHbB、AMH/MIS、アルテミン、BDNF、BMP2、BMP15/GDF9B、BMP2/BMP2A、BMP3/オステオゲニン、BMP4、BMP4/BMP2B、BMP5、BMP7/OP-1、BMP1、BMP10、BMP15/GDF9B、β-NGF、シスタチンC、デルタ1、EGF、エリスロポエチン(EPO)、酸性FGF、塩基性FGF、FGF10、FGF5、FGF7、FGF8b、FLT3リガンド、G-CSF、GDF15、GDF2/BMP9、GDF3、GDF5/BMP14、GDF8/ミオスタチン、GDF9、GDNF、GM-CSF、HGF、HGH、IFN-α2A、IFN-α2B、IFN-γ、IFN-β1、IGF I、IGF II、IGF IIv1、IGF IIv2、IL10、IL11、IL12、IL15、IL17/IL17A、IL17F、IL1β、IL2、IL23、IL27、IL28A/IFN-λ-2、IL28B/IFN-λ-3、IL29/IFN-λ-1、IL1β、IL2 IL3、IL32、IL35、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、インヒビンA/INHa&INHbA、インヒビンB/INHa&INHbB、インヒビンC/INHa&INHbC、インヒビンE/INHa&INHbE、LEFTYB、LEFTY1/LeftyB、M-CSF、マウスCSF、マウスSCF、NODAL、Noggin、NT3 (ニューロトロフィン3)、オンコスタチンM、PDGFα、PDGFβ、ペルセフィン、SCF、SDF1α、SHH、ソマトトロピン、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3、TGFβ4/LEFTY2/LeftyA、TNFα、TPOα、VEGF121aa、VEGF165aa、WIF1、WNT1、Wnt10A、Wnt10B/12、Wnt11、Wnt16、Wnt2、Wnt2B/13、Wnt3、Wnt3A、Wnt4、Wnt5A、Wnt5B、Wnt6、Wnt7A、Wnt7B、Wnt8B、およびWnt9A/14からなる群より選択される、請求項25に記載の組換え生産された真正ヒトタンパク質。
【請求項27】
ヒトサイトカインが、EPO、G-CSF、GM-CSF、IL-2、IL-4、IL-6、M-CSF、Noggin、SCF、ソマトトロピン、TGFβ1、TNFα、およびVEGF-165からなる群より選択される、請求項26に記載の組換え生産された真正ヒトタンパク質。
【請求項28】
ヒト細胞が 付けでATCC生物寄託受託番号 の下で寄託され、且つ該受託番号を有するHZ-293TSである、請求項24に記載の組換え生産された真正ヒトタンパク質。
【請求項29】
真正ヒトタンパク質の糖鎖付加パターンが、天然の内因型のそのヒトタンパク質と類似する、請求項24に記載の組換え生産された真正ヒトタンパク質。
【請求項30】
真正ヒトタンパク質のサイズ、構造、および分子量が、天然の内因型のそのヒトタンパク質のサイズおよび分子量と類似する、請求項24に記載の組換え生産された真正ヒトタンパク質。
【請求項31】
真正ヒトタンパク質がTGFβである、請求項24に記載の組換え生産された真正ヒトタンパク質。
【請求項32】
所望のポリヌクレオチドがnogginタンパク質をコードし、所望のポリヌクレオチドの発現が細胞中でジスルフィド結合したnogginダイマーを産生する、請求項24に記載の組換え生産された真正ヒトタンパク質。
【請求項33】
請求項24に記載の真正ヒトタンパク質のエピトープに対する抗体。
【請求項34】
請求項26に記載の真正ヒトタンパク質のエピトープに対する抗体。
【請求項35】
前記抗体がポリクローナルまたはモノクローナル抗体である、請求項33に記載の抗体。
【請求項36】
前記抗体がポリクローナルまたはモノクローナル抗体である、請求項34に記載の抗体。
【請求項37】
付けでATCC生物寄託受託番号 の下で寄託され、且つ該受託番号を有するHZ-293TSと呼ばれる安定なヒト細胞系。
【請求項38】
請求項2、7、または8に記載の発現ベクターを発現するヒト細胞。
【請求項39】
ヒト細胞が 付けでATCC生物寄託受託番号 の下で寄託され、且つ該受託番号を有するHZ-293TSである、請求項38に記載のヒト細胞。
【請求項40】
細胞成長、細胞増殖、細胞分化、または炎症に関連する症状を治療するための方法であって、(A)請求項23に記載の組換え生産された真正ヒトタンパク質、または(B)請求項23に記載の組換え生産された真正ヒトタンパク質に対する抗体を、細胞成長、増殖、分化、または炎症に関連する症状を有する個体に投与することを含む、前記方法。
【請求項41】
組換え生産された真正ヒトタンパク質が、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンA/2xINHbA、アクチビンB/2xINHbB、AMH/MIS、アルテミン、BDNF、BMP2、BMP15/GDF9B、BMP2/BMP2A、BMP3/オステオゲニン、BMP4、BMP4/BMP2B、BMP5、BMP7/OP-1、BMP1、BMP10、BMP15/GDF9B、β-NGF、シスタチンC、デルタ1、EGF、エリスロポエチン(EPO)、酸性FGF、塩基性FGF、FGF10、FGF5、FGF7、FGF8b、FLT3リガンド、G-CSF、GDF15、GDF2/BMP9、GDF3、GDF5/BMP14、GDF8/ミオスタチン、GDF9、GDNF、GM-CSF、HGF、HGH、IFN-α2A、IFN-α2B、IFN-γ、IFN-β1、IGF I、IGF II、IGF IIv1、IGF IIv2、IL10、IL11、IL12、IL15、IL17/IL17A、IL17F、IL1β、IL2、IL23、IL27、IL28A/IFN-λ-2、IL28B/IFN-λ-3、IL29/IFN-λ-1、IL1β、IL2 IL3、IL32、IL35、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、インヒビンA/INHa&INHbA、インヒビンB/INHa&INHbB、インヒビンC/INHa&INHbC、インヒビンE/INHa&INHbE、LEFTYB、LEFTY1/LeftyB、M-CSF、マウスCSF、マウスSCF、NODAL、Noggin、NT3 (ニューロトロフィン3)、オンコスタチンM、PDGFα、PDGFβ、ペルセフィン、SCF、SDF1α、SHH、ソマトトロピン、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3、TGFβ4/LEFTY2/LeftyA、TNFα、TPOα、VEGF121aa、VEGF165aa、WIF1、WNT1、Wnt10A、Wnt10B/12、Wnt11、Wnt16、Wnt2、Wnt2B/13、Wnt3、Wnt3A、Wnt4、Wnt5A、Wnt5B、Wnt6、Wnt7A、Wnt7B、Wnt8B、およびWnt9A/14からなる群より選択されるサイトカインである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
組換え生産された真正ヒトTNFαに対する抗体を、炎症または関節炎に関連する症状を有する個体に投与することを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
組換え生産された真正ヒトVEGFに対する抗体を、癌または細胞増殖に関連する症状を有する個体に投与することを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
サンプルから請求項24に記載の真正ヒトタンパク質を検出するための診断剤としての該ヒトタンパク質のエピトープに対する抗体の使用。
【請求項45】
前記抗体を、ヒトタンパク質を検出するためのELISAアッセイにおける診断剤として用いる、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
サンプルがヒト組織サンプル、ヒト細胞サンプル、ヒト血液サンプル、またはヒト体液サンプルである、請求項44に記載の使用。
【請求項47】
ヒトタンパク質がサイトカインである、請求項44に記載の使用。
【請求項48】
ex vivoでの研究道具としての請求項24に記載の組換え生産された真正タンパク質の使用。
【請求項49】
組換え生産された真正タンパク質を、そのタンパク質と相互作用する薬剤のためのタンパク質または細胞スクリーニングアッセイにおいて用いる、請求項48に記載の使用。
【請求項50】
細胞成長、細胞増殖、細胞分化、または炎症に関連する症状を治療する方法であって、タンパク質をコードする所望のポリヌクレオチドを発現するベクターを、細胞成長、増殖、分化、または炎症に関連する症状を有する個体に投与することを含み、該個体の細胞中で発現されたタンパク質が該症状を治療するのに役立つ、前記方法。
【請求項51】
前記ベクターがpHZhag、pHZA、pHZA、pHZI、pHZhagA、およびpHZhagIからなる群より選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
pHZhagベクターが、(i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、および(iii)ヒトβ-グロビンイントロンの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
pHZAベクターが、(i)hCMVプロモーター、および(ii)ヒトフィブリノゲンサブユニットAシグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
pHZIベクターが、(i)hCMVプロモーター、および(ii)ヒトIgスーパーファミリー8シグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
pHZhagAベクターが、(i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、(iii)ヒトβ-グロビンイントロン、および(iv)ヒトフィブリノゲンサブユニットAシグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
pHZhagIベクターが、(i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、(iii)ヒトβ-グロビンイントロン、および(iv)ヒトIgスーパーファミリー8シグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項57】
治療用タンパク質を発現する、遺伝子療法におけるpHZhag、pHZA、pHZA、pHZI、pHZhagAおよびpHZhagIからなる群より選択されるベクターの使用。
【請求項58】
前記ベクターが、サイトカイン、アルブミン、IgG、IgA、IgM、IgD、IgE、α-1-プロテイナーゼ阻害剤、血液前凝固タンパク質、血液抗凝固タンパク質、血栓溶解剤、抗血管形成タンパク質、α-2-抗プラスミン、C-1エステラーゼ阻害剤、アポリポタンパク質、HDL、LDL、フィブロネクチン、β-2-糖タンパク質I、フィブリノゲン、プラスミノゲン、プラスミン、プラスミノゲン活性化因子、プラスミノゲン阻害因子、血漿プロテアーゼ阻害剤、抗トロンビンIII、ストレプトキナーゼ、インター-α-トリプシン阻害剤、α-2-マクログロブリン、アミロイドタンパク質、フェリチン、プレアルブミン、GC-グロブリン、ヘモペキシン、C3-補体、トランスフェリン、ウロキナーゼ、およびα-1-酸-糖タンパク質からなる群より選択されるヒトタンパク質をコードする、請求項57に記載の使用。
【請求項59】
pHZhagベクターが、(i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、および(iii)ヒトβ-グロビンイントロンの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む、請求項57に記載の使用。
【請求項60】
pHZAベクターが、(i)hCMVプロモーター、および(ii)ヒトフィブリノゲンサブユニットAシグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む、請求項57に記載の使用。
【請求項61】
pHZIベクターが、(i)hCMVプロモーター、および(ii)ヒトIgスーパーファミリー8シグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む、請求項57に記載の使用。
【請求項62】
pHZhagAベクターが、(i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、(iii)ヒトβ-グロビンイントロン、および(iv)ヒトフィブリノゲンサブユニットAシグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む、請求項57に記載の使用。
【請求項63】
pHZhagIベクターが、(i)hCMV IE、(ii)ヒトβ-アクチンプロモーター、(iii)ヒトβ-グロビンイントロン、および(iv)ヒトIgスーパーファミリー8シグナルペプチドの機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む、請求項57に記載の使用。
【請求項64】
治療用タンパク質が、CFTR遺伝子、第VIII因子遺伝子、第IX因子遺伝子、E1A遺伝子、P53遺伝子、AC6遺伝子、およびVEGF遺伝子からなる群より選択されるヒト遺伝子によりコードされる、請求項57に記載の使用。
【請求項65】
前記ベクターを個体に投与し、それが1個以上の個体の細胞中に進入し、該ベクターが該細胞の内部でコードされた治療用タンパク質を発現する、請求項57に記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図6H】
【図6I】
【図6J】
【図6K】
【図6L】
【図6M】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20A−B】
【図20C】
【図21】
【図22A−D】
【図22E−G】
【図22H】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図6H】
【図6I】
【図6J】
【図6K】
【図6L】
【図6M】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20A−B】
【図20C】
【図21】
【図22A−D】
【図22E−G】
【図22H】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公表番号】特表2011−517554(P2011−517554A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−550870(P2010−550870)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/036975
【国際公開番号】WO2009/114702
【国際公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(510246068)ヒューマンザイム リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/036975
【国際公開番号】WO2009/114702
【国際公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(510246068)ヒューマンザイム リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
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