説明

ヒト胚性幹細胞の分化のための組成物および方法

ヒト胚性幹細胞またはヒト胚性幹細胞集団から胚体内胚葉に特徴的な細胞または細胞集団への分化を誘導するための方法であって、上記細胞または細胞集団をGSK-3阻害剤とともにインキュベートするステップを含む方法が記載されている。また、胚体内胚葉に特徴的な細胞または細胞集団から肝細胞様細胞または肝細胞様細胞集団への分化を誘導するための方法、およびヒト胚性幹細胞またはヒト胚性幹細胞集団から肝細胞様細胞または肝細胞様細胞集団への分化を誘導するための方法も記載されている。さらに、該方法によって得られる細胞、ならびに治療および毒性スクリーニングにおけるそれらの使用が記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、ヒト胚性幹細胞の分化のための組成物および方法、特に、ヒト胚性幹細胞から胚体内胚葉(definitive endoderm)細胞への分化のための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト胚性幹細胞(ESC)は、無制限の自己再生、および発生中の胚の3つの胚葉を含む全細胞に分化する分化能の両方の驚くべき能力を有しており、そのため再生医療において使用するための細胞の供給源として、および初期のヒト発生のためのモデルとして魅力的である。
【0003】
マウスの胚性幹細胞は、グリコーゲン合成酵素キナーゼ-3(GSK-3)阻害剤を用いるインキュベーションを介して自己再生状態に保持することができる。例えば、Boneら(2009)において、マウスの胚性幹細胞の自己再生を促進することができる多くのGSK-3阻害剤が記載されている。
【0004】
インビボにおいて正常な発生中に起こる一連の現象は、ESC分化の制御を理解するための重要な手掛かりを提供する可能性が高い。胚体内胚葉(DE)は、一次胚葉の中胚葉、内胚葉および外胚葉の形成が起こる場合、初期胚発生の原腸形成段階中に生じる。この段階で、未分化胚盤葉上層細胞は、原始線条(PS)と呼ばれる構造中を遊走する。中胚葉およびDEは、PSの前部領域内に規定され、通常の前駆体集団である中内胚葉から生じると考えられる(Tadaら、2005)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Tada, S., Era, T., Furusawa, C., Sakurai, H., Nishikawa, S., Kinoshita, M., Nakao, K., and Chiba, T. (2005). Characterization of mesendoderm: a diverging point of the definitive endoderm and mesoderm in embryonic stem cell differentiation culture. Development 132, 4363-4374.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
肝臓、膵臓、肺、甲状腺および腸系譜を含めて、内胚葉由来細胞系譜を生じさせる前駆体細胞型である胚体内胚葉を効率的に生成するための能力は、臨床的に非常に重要である。特に、治療および医薬の観点から、肝臓分化能を有する内胚葉を誘導する必要がある。移植治療法に利用可能なドナー肝臓は不足している。さらに、予測毒性学において使用するための機能的肝細胞が必要とされている。現在、初代ヒト肝細胞は医薬スクリーニングに使用されるが、細胞の不足、ならびにこの細胞型の非効率的増殖および維持のため、代替供給源を見出さなければならず、ヒトESC由来肝細胞は非常に有望である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によると、ヒト胚性幹細胞またはヒト胚性幹細胞集団から胚体内胚葉に特徴的な細胞または細胞集団への分化を誘導するための方法であって、前記細胞または細胞集団をGSK-3阻害剤とともにインキュベートするステップを含む方法が提供される。
【0008】
驚くべきことに、マウスの胚性幹細胞の自己再生を促進する際のGSK-3阻害剤の役割とは正反対に、GSK-3阻害剤は、ヒト胚性幹細胞に投与されると分化を誘導することが可能であることが見出された。
【0009】
本発明の別の態様によると、ヒト胚性幹細胞またはヒト胚性幹細胞集団から胚体内胚葉に特徴的な細胞または細胞集団への分化を誘導するためのGSK-3阻害剤の使用が提供される。
【0010】
本発明の別の態様によると、ヒト胚性幹細胞またはヒト胚性幹細胞集団を、胚体内胚葉に特徴的な細胞または細胞集団へ分化させることができる、GSK-3阻害剤を含むヒト胚性幹細胞分化組成物が提供される。
【0011】
したがって、一実施形態において、ヒト胚性幹細胞のGSK-3阻害剤を含む、胚体内胚葉細胞への分化組成物が提供される。
【0012】
本発明の別の態様によると、胚体内胚葉に特徴的な細胞または細胞集団から肝細胞様細胞または肝細胞様細胞集団への分化を誘導するための方法であって、前記細胞または細胞集団をGSK-3阻害剤とともにインキュベートするステップを含む方法が提供される。
【0013】
本発明の別の態様によると、胚体内胚葉に特徴的な細胞または細胞集団から肝細胞様細胞または肝細胞様細胞集団への分化を誘導するための、GSK-3阻害剤の使用が提供される。
【0014】
本発明のさらなる態様によると、胚体内胚葉に特徴的な細胞または細胞集団を、肝細胞様細胞または肝細胞様細胞集団へ分化させることができる、GSK-3阻害剤を含む胚体内胚葉分化組成物が提供される。
【0015】
したがって、一実施形態において、GSK-3阻害剤含む、胚体内胚葉から肝細胞様細胞への分化組成物が提供される。
【0016】
本発明のさらなる態様によると、ヒト胚性幹細胞またはヒト胚性幹細胞集団から肝細胞様細胞または肝細胞様細胞集団への分化を誘導するための方法であって、前記細胞または細胞集団をGSK-3阻害剤とともにインキュベートするステップを含む方法が提供される。
【0017】
本発明の別の態様によると、ヒト胚性幹細胞またはヒト胚性幹細胞集団から肝細胞様細胞または肝細胞様細胞集団への分化を誘導するためのGSK-3阻害剤の使用が提供される。
【0018】
本発明の別の態様によると、ヒト胚性幹細胞またはヒト胚性幹細胞集団を、肝細胞様細胞または肝細胞様細胞集団へ分化させることができる、GSK-3阻害剤を含むヒト胚性幹細胞分化組成物が提供される。
【0019】
したがって、一実施形態において、GSK-3阻害剤を含む、ヒト胚性幹細胞から肝細胞様細胞への分化組成物が提供される。
【0020】
好ましくは、該方法はインビトロの方法である。
【0021】
本発明の別の実施形態において、本明細書に記載されている組成物を含む培養培地が提供される。好ましい培養培地の例には、mTeSRl(登録商標)化学合成hESC培地(Stem Cell Technologies製)、およびKO血清交換で補充されたノックアウト(KO)ダルベッコ改変イーグル培養培地(DMEM;Invitrogen製)が含められる。
【0022】
したがって、一実施形態において、GSK-3阻害剤を含む、ヒト胚性幹細胞から胚体内胚葉への分化培養培地が提供される。
【0023】
別の実施形態において、GSK-3阻害剤を含む、胚体内胚葉から肝細胞様細胞への分化培養培地が提供される。
【0024】
さらなる実施形態において、GSK-3阻害剤を含む、ヒト胚性幹細胞から肝細胞様細胞への分化培養培地が提供される。
【0025】
本発明のさらなる態様によると、本明細書に記載されている方法によって得られる細胞または細胞集団が提供される。
【0026】
本発明のさらなる態様は、対象における肝疾患の治療のためまたは損傷肝臓の再構築のための薬物の製造における、ヒト胚性幹細胞およびGSK-3阻害剤の使用に関する。
【0027】
本発明のさらなる態様は、対象における肝疾患の治療のためまたは損傷肝臓の再構築のための薬物の製造における、胚体内胚葉細胞およびGSK-3阻害剤の使用に関する。
【0028】
本発明のさらなる態様は、対象における肝疾患の治療のためまたは損傷肝臓の再構築のための薬物の製造における、本明細書に記載されている細胞または細胞集団の使用に関する。
【0029】
本発明の別の態様は、対象における肝疾患の治療のためまたは損傷肝臓の再構築のための方法であって、ヒト胚性幹細胞およびGSK-3阻害剤を含む組成物を対象に投与するステップを含む方法に関する。
【0030】
本発明のさらなる態様は、対象における肝疾患の治療のためまたは損傷肝臓の再構築のための方法であって、胚体内胚葉細胞およびGSK-3阻害剤を含む組成物を対象に投与するステップを含む方法に関する。
【0031】
本発明のさらなる態様は、対象における肝疾患の治療のためまたは損傷肝臓の再構築のための方法であって、本明細書に記載されている細胞または細胞集団を含む組成物を対象に投与するステップを含む方法に関する。
【0032】
好ましくは、肝疾患は、肝臓組織の損失、損傷または欠如を伴う。肝疾患の例として、肝炎、肝硬変、ヘモクロマトーシス、ウィルソン病、フェニルケトン尿症、または肝臓に影響する遺伝子疾患(例えば、クリグラー・ナジャー症候群)が挙げられる。
【0033】
損傷肝臓は、例えば、肝疾患の長期罹患の後、または肝臓の一部もしくは全部が除去される外科手術の後に生じ得る。したがって、「損傷肝臓の再構築」という用語は、対象における肝臓の全部または一部の再構築を指すことができる。
【0034】
好ましくは、対象は、肝疾患患者、または外科手術を受けてその肝臓の全部もしくは一部を除去した患者である。好ましくは、対象はヒトである。
【0035】
本発明による薬物を投与するために必要とされる手順は、関与する肝疾患または肝臓構築の性質に依存する。こうした手順は当業者に知られており、よって適用することができる。例えば、本発明の薬物または組成物を、必要部位に直接注入を介して投与することができるものであってもよい。別法として、該薬物または組成物は、外科手術中、例えば患者から肝臓の切片を除去した後に投与されてもよい。
【0036】
本発明のさらなる態様によると、薬物毒性のスクリーニングのための、本明細書に記載されている細胞または細胞集団の使用が提供される。例えば、本明細書に記載されている肝細胞様細胞は、薬物毒性のスクリーニング方法に使用することができる。
【0037】
本発明の一態様において、肝臓細胞に対する化合物の毒性を評価するための方法であって、
(i)前記化合物を、本明細書に記載されている細胞または細胞集団とともにインキュベートするステップ、および
(ii)前記細胞または細胞集団に対する前記化合物の毒性を評価するステップ
を含み、前記毒性が肝毒性を示す方法が提供される。
【0038】
毒性は、当業者に知られている方法によって測定することができる。一実施例において、細胞死が細胞への化合物の毒性を示す。一実施例において、溶解細胞から放出された乳酸脱水素酵素(LDH)の測定値が毒性を示す。別の実施例において、細胞の形態変化が毒性を示す。
【0039】
一実施例において、試料中の生細胞の数の減少が化合物の毒性を示す。試料中の生細胞の数は、生体色素で染色した後に計数することができる。細胞毒性アッセイキットは市販されており、こうしたキットの一例が、ミトコンドリア脱水素酵素を介して生細胞の活性を測定する、Sigma AldrichからのTOX1 Cell toxicity Colorimetric Assay Kitである。
【0040】
好ましくは、細胞または細胞集団は、本明細書に記載されている肝細胞様細胞または肝細胞様細胞集団である。
【0041】
したがって、一実施形態において、肝臓細胞に対する化合物の毒性を評価するための、本明細書に記載されている肝細胞様細胞または肝細胞様細胞集団の使用が提供される。
【0042】
好ましくは、該方法はインビトロの方法である。好ましくは、該方法は、化合物のインビボでの肝毒性を示す。
【0043】
好ましくは、GSK-3阻害剤は、以下の構造を有する化合物、またはその機能的誘導体、類似体もしくは同族体である。
【0044】
【化1】

【0045】
式中、
R1は、H、C1〜C6アルキル(好ましくはCH3)またはCH2O(CH2)2SiCH3であり、
R2は、H、C1〜C6アルキル(好ましくはCH3)またはCH2O(CH2)2SiCH3であり、または
R1およびR2は一緒になって、非置換であるまたはOR6もしくはR7によって置換されている-(CH2)n-、あるいは-(CH2CH2O)m(CH2)2-であり、
R3は、HまたはC1〜C6アルキル(好ましくはCH3)であり、
R4は、HまたはC1〜C6アルキル(好ましくはCH3)であり、
R5は、HまたはCH2アリールであり、ここで、アリールは非置換であるか、またはアルコキシ(好ましくはメトキシ)によって置換されており、
R6は、H、CH2CH=CH2、CH2CH2CH=CH2、CH2OCH2CH=CH2またはSitBuPh2であり、
R7は、H、CH2CH=CH2、CH2CH2CH=CH2、CH2OCH2CH=CH2またはSitBuPh2であり、
nは、6、7、8、9、10または11であり、
mは、3または4であり、
XおよびYは、独立して、CまたはNである。
【0046】
SitBuPh2は、tert-ブチルジフェニルシリルを意味する。
【0047】
好ましくは、R1およびR2は一緒になって、-(CH2)pCH(OR6)(CH)q-または-CH(R7)(CH2)q-であり、ここで、pは1、2、3または4であり、qは4、5、6、7または8である。
【0048】
好ましいGSK-3阻害剤の構造は、上記の式Aを参照にしてTable 3(表3)から明らかに誘導することができる。
【0049】
特に好ましい実施形態において、GSK-3阻害剤は、以下の構造の1つを有する化合物、またはその機能的誘導体、類似体もしくは同族体から選択される。
【0050】
【化2】

【0051】
他の実施形態において、GSK-3阻害剤は、以下の構造の1つを有する化合物、またはその機能的誘導体、類似体もしくは同族体から選択される:
【0052】
【化3】

【0053】
(式中、
R5は、HまたはCH2Phであり、
R6は、H、CH2CH=CH2、CH2CH2CH=CH2、CH2OCH2CH=CH2またはSitBuPh2であり、
R7は、H、CH2CH=CH2、CH2CH2CH=CH2、CH2OCH2CH=CH2またはSitBuPh2である)。
【0054】
他の実施形態において、GSK-3阻害剤は、BIO、またはその機能的誘導体、類似体もしくは同族体である。BIOは、以下の構造を有する市販のGSK-3阻害剤である。
【0055】
【化4】

【0056】
他の実施形態において、GSK-3阻害剤は、CHIR99021、またはその機能的誘導体、類似体もしくは同族体である。CHIR99021は、以下の構造を有する市販のGSK-3阻害剤である。
【0057】
【化5】

【0058】
さらなるGSK-3阻害剤は、当業者に知られている。さらに、当業者は、Boneら(2009)に記載されているものなど常法通りの方法によって、化合物がGSK-3阻害剤として機能することができるかどうかを確認することができる。
【0059】
本明細書に記載されているヒト胚性幹細胞が、幹細胞バンクから入手可能であることは理解されるであろう。したがって、本明細書において定義されている発明を反復するために、ヒト胚の破壊が必要とされないことが理解されよう。幹細胞バンク(例えば、UKSCB)からのヒト胚性幹細胞の入手に加えて、他の、非胚性の供給源が存在することが理解されよう。例えば、多くのグループによって記載されている通り、成体細胞は、胚性幹細胞と同等の多能性細胞に再プログラムすることができる。この一例は、Takahashiら(2007)によって記載されている通りである。したがって、胚性幹細胞が本明細書において言及される場合、これは、胚性幹細胞と同等の再プログラム化細胞、即ち誘導多能性幹細胞を包含することが意図される。
【0060】
ここで本発明の実例実施形態を、添付の図を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1−1】1Mを用いるhESCの処理が分化を誘導することを示す図である。ヒトESC[SHEF3]を、表示濃度のBIOもしくは化合物1Mで処理するか、または対照として未処理のままにし、7日間培養した。(A)画像は、表示されている処理に続いて形成された典型的コロニーを示す。スケールバーは1mmを表す。(B)多分化能マーカーのTra-1-60またはSSEA4に対する抗体での免疫染色に続いて、フローサイトメトリーによって分析されたESCのヒストグラムプロット。パーセント陽性細胞および平均蛍光強度の分析がTable 1(表1)に示されている。(C)RNAを該細胞から抽出し、RT-PCR分析を、多能性遺伝子のOCT4およびNANOGならびにハウスキーピング遺伝子のβ-アクチンに対して特異的なプライマーを使用して行った。(D)ウエスタンブロット分析を、該細胞から抽出されたタンパク質において行い、Oct4に対して特異的な抗体で免疫ブロットした。ブロットを剥離し、抗Gapdh抗体で再プローブすることで、同等の負荷を評価した。
【図1−2】1Mを用いるhESCの処理が分化を誘導することを示す図である。ヒトESC[SHEF3]を、表示濃度のBIOもしくは化合物1Mで処理するか、または対照として未処理のままにし、7日間培養した。(E)化合物1OもヒトESCの分化を誘導する。SHEF3細胞を、表示されている濃度の1Oで7日間処理した。画像は典型的コロニー形態を示す。(F)Tra-1-60およびSSEA4抗体での染色に続いて、フローサイトメトリーによって分析されたESCのヒストグラムプロット。パーセント陽性細胞の分析および平均蛍光性強度がプロットに表示されている。(G)OCT4およびNANOGの発現に関するRT PCR分析。遺伝子のそれぞれについてのバンドは、介在試料を除去した同じゲルに由来した。(H)OCT4タンパク質発現のウエスタンブロット分析。タンパク質バンドは、介在試料を除去した同じ免疫ブロットに由来した。
【図2】化合物1Mを用いるhESCの処理がGSK-3媒介シグナル伝達を阻害することを示す図である。(A)ESC[SHEF3]を、MEF上、またはmTeSRl(登録商標)培地中でMatrigel(登録商標)上で培養し、BIOまたは1Mで30分間処理した。タンパク質抽出物を調製し、免疫ブロットを、β-カテニンのリン酸化形態を検出する抗体を使用して行った。各場合における同じ免疫ブロットを、全β-カテニンを再プローブすることで負荷を評価した。(B)表示されている濃度でのBIOまたは1Mを用いて24時間処理されたESC[SHEF1]のTOPFlashルシフェラーゼレポーターアッセイ。ルシフェラーゼ活性は、未処理(Con)細胞における正規化TOPFlashルシフェラーゼ活性と比較された活性化における増加倍率として表されている。データは、3つの独立した実験の平均+/-SEMを表す。同様の結果がSHEF3 ESCに認められた。
【図3−1】1M処理が胚体内胚葉への分化を誘導することを示す図である。ヒトESC[SHEF3]を、化学合成mTeSRl(登録商標)培地中のMatrigel(登録商標)上にてフィーダーフリーで保持し、2μMの1Mを用いて表示されている日数の間処理した。(A)内胚葉マーカーのFoxA2、Sox17およびHNF4αの発現を免疫蛍光検査によって分析した。化合物1Mを用いる処理は、処理7日後に全てのマーカーの発現をもたらした。スケールバーは50μmを表す。(B)ESCを、1Mを用いる表示日数の間の処理に続いて、7日目に収集した。RNAを抽出し、RT-PCR分析を、表示されている遺伝子に対して選択的なプライマーを使用して行った。同様の結果がSHEF1ヒトESCにおいて認められた。
【図3−2】1M処理が胚体内胚葉への分化を誘導することを示す図である。ヒトESC[SHEF3]を、化学合成mTeSRl(登録商標)培地中のMatrigel(登録商標)上にてフィーダーフリーで保持し、2μMの1Mを用いて表示されている日数の間処理した。(C)BIOはDEへの分化を誘導する。SHEF3ESCを、2μMのBIOを用いて表示されている時間の間処理し、内胚葉マーカーのFOXA2、SOX17およびHF4αに対する抗体で免疫染色した。(D)化合物1LもDEへの分化を誘導する。SHEF1 ESCを、2μMの1Lを用いて表示されている時間の間処理し、内胚葉マーカーのFOXA2およびHF4αに対する抗体で免疫染色した。
【図4】1Mがアクチビン/Nodal経路の活性化を誘導することを示す図である。(A)RNAを、7日間2μMの1Mの存在下にて表示されている日数の間培養されたESC[SHEF1]から抽出した。RT-PCR分析を、表示されている遺伝子に対して選択的なプライマーを使用して行った。(B)ESC[SHEF1]を、2μMの1M単独または10μMのSB43125(S)と組み合わせて表示されている日数の間処理し、RT-PCRを、抽出されたRNA上で行った。(C)ESC[SHEF3]を、1M単独または1OOng/mlのアクチビンA(A)と組み合わせて表示されている日数の間処理し、RT-PCRを行った。(D)ESC[SHEF1]を、2μMの1M、または1OOng/mlのアクチビンA(A)単独もしくはIMと組み合わせて5日間処理した。内胚葉マーカーのFoxA2およびHNF4αの発現を免疫蛍光検査によって分析した。3つの視野から平均したパーセント陽性細胞の数+/-SDが表示されている。スケールバーは50μmを表す。(E)ESC[SHEF1]を、2μMの1M、または100ng/mlのアクチビンA(A)単独もしくは1Mと組み合わせて5日間処理した。DEマーカーCXCR4の発現をフローサイトメトリーによって分析した。
【図5−1】肝細胞様細胞へのヒトESCの分化を示す図である。(A)分化プロトコールの略図。(B)段階II(d14)および段階III(d25)における分化細胞の画像。(C)表示されている遺伝子に対して特異的なプライマー使用する、表示されている分化段階において細胞から調製されたRNAのRT-PCR発現分析。ヒト肝臓から抽出されたRNAを陽性対照として使用した。β-アクチンをハウスキーピング遺伝子として使用した。
【図5−2】肝細胞様細胞へのヒトESCの分化を示す図である。(D)分化の段階IIおよび段階IIIでの細胞におけるFoxA2ならびに初期肝臓マーカーHNF4α、AFPおよびTTRの発現を、免疫蛍光検査によって分析した。スケールバーは50μmを表す。(E)48時間の間馴化した段階III(d25)細胞および培地単独(MA)対照の培地(1μl)を、AFPに対する抗体で免疫ブロットすることによって分析した。HUH7細胞由来の精製AFPおよび馴化培地を対照として流した。(F)段階III(d25)培地のヒトアルブミンに関するELISAアッセイ。(G)肝細胞様細胞へのB1O由来DE細胞の分化。SHEF3 ESCを2μMのBIOを用いて5日間処理することで、DEへの分化を誘導した。ESCを次いで、実験手順および図5Aにおいて概略されている通り、肝臓誘導および成熟条件下で培養した。分化の段階IIおよび段階IIIでのESCにおけるFOXA2ならびに初期肝臓マーカーのHNF4α、AFPおよびTTRの発現を、免疫蛍光検査によって分析した。スケールバーは50μmを表す。(H)表示されている遺伝子に対して特異的なプライマーを使用する、BIO誘導DE分化に続いて分化の表示されている段階の細胞から調製されたRNAのRT-PCR発現分析。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本発明は、ヒト胚性幹細胞の分化を胚体内胚葉の細胞へ導くGSK-3阻害剤の使用、および肝細胞の表現型を有する細胞に関する。
【0063】
小分子阻害剤の使用は、ESCから所望の細胞型への分化を効率的および再現性よく導くための強力な手法となる。マウスESCにおけるGSK-3を阻害する化合物のパネルが以前に合成され、特徴づけられた結果、増強された自己再生をもたらした(Boneら、2009)。本明細書に記載されている通り、これらのGSK-3阻害剤の1つである1Mを用いるヒトESCの処理は、驚くべきことに、DEへの分化をもたらし、長期処理の結果、初期の肝臓の特徴を呈する細胞集団の生成をもたらす。興味深いことに、1MはNodalシグナル伝達経路を活性化することができ、分化を促進するためのアクチビンAより良好であった。重要なことに、1M由来の内胚葉は、定義された培養条件下で、より成熟な肝細胞の表現型を有する細胞を生成することができた。同様の結果が構造的に関連しないGSK-3阻害剤BIOで得られ、これは、ヒトESCからDEへの分化も誘導することができた。
【0064】
さらに、1Mと同じ系列の化合物、例えば1Oおよび1Lは、 hESC分化を誘導する同様の能力を有し、化合物1LはDEへの分化を導くことが示された。
【0065】
本明細書に記載されている結果は、本発明の方法が既知のプロトコールより優れた多くの利点を有することを実証しており、それらは簡便および頑強であり、肝芽細胞までの分化を導くために単一の化学実体を必要とし、それらは単層ベースの手順に依存し、化学合成培地を利用し、独特なhESC系統に適用可能であり、容易に規模を変更することができる。
【0066】
本発明において使用される方法、および本発明の詳細な例を下記に述べる。
【0067】
この明細書内で、実施形態は、明確で簡潔な明細を記述できるように記載されているが、実施形態は本発明から逸脱することなく様々に組み合わせられ、または分離されることが意図されており、また理解されるであろう。
【0068】
この明細書内で、「含む(comprise)」および「含んでいる(comprising)」という用語は、「とりわけ含める(includes, among other things)」を意味すると解釈される。これらの用語は、「のみからなる(consists of only)」の意味に取られることを意図していない。
【0069】
GS-3阻害への言及は、1つまたは複数のGSK-3酵素の阻害を指す。したがって、GSK-3阻害剤は、GSK-3酵素のファミリーの1つのメンバー、いくつかのメンバーまたは全てのメンバーを阻害することができる。GSK-3酵素のファミリーはよく知られており、限定されないがGSK-3αおよびGSK-3βが挙げられる。当業者は、化合物が、Boneら(2009)に記載されているものなどの常法通りの方法によって、および図2との関連で上記した通りに、GSK-3阻害剤として機能することができるかどうか確定することができる。
【0070】
「胚体内胚葉(definitive endoderm)」という用語は、動物胚発生中に形成される胚葉の1つを指す。胚体内胚葉は、一次胚葉の中胚葉、内胚葉および外胚葉の形成が起こる場合、初期胚発生の原腸形成段階中に生じる。
【0071】
この明細書内で、細胞は、それらがマーカーのFoxA2、Sox17およびCXCR4に対して陽性であるならば、「胚体内胚葉」に特徴的である、または「胚体内胚葉細胞」であると定義することができる。
【0072】
この明細書内で、細胞は、それらがマーカーのHNF4α、AFP、アルブミンおよびトランスサイレチンに対して陽性であるならば、「肝細胞様細胞」であると定義することができる。
【0073】
この明細書内で、「約」という用語は、プラスまたはマイナス20%、より好ましくはプラスまたはマイナス10%、いっそう好ましくはプラスまたはマイナス5%、最も好ましくはプラスまたはマイナス2%を意味する。
【0074】
本発明は、上記に列挙されている化合物の使用に加えて、こうした化合物の機能的同族体、誘導体および類似体の使用を包含することがさらに意図される。この文脈において、同族体は、上に記載されている化合物と実質的な構造上の相似点を有する分子であり、類似体は、構造上の相似点に関わらず、実質的な生物学上の相似点を有する分子である。「誘導体」という用語は、上に記載されている化合物から誘導された分子を指す。こうした誘導体は、例えば、上に記載されている化合物の化学的消化生成物、または上に記載されている化合物の合成的に変更された誘導体であってよい。同族体、誘導体および類似体は、それらがGSK-3を阻害することができるならば、機能的同族体、誘導体および類似体であると言われる。
【0075】
結果
GSK-3阻害剤1Mを用いる処理はヒトESCの分化を誘導する。
マウスESCにおけるGSK-3を阻害する化合物のパネルは、Boneら、2009に記載されている。化合物は、BIOなどの市販されている阻害剤より選択的であり、増強された自己再生をもたらした。
【0076】
ここで、マウスにおいて認められた結果とは対照的に、GSK-3阻害剤の1Mを用いる処理は、ヒトESCの自己再生を維持しなかったが、代わりに分化を誘導したことが見出された。これは、実に驚くべきことであり、予想外であった。
【0077】
2μMの化合物1Mを用いる7日の時間周期にわたるヒトESCの処理は、KO DMEM中のMEF上、またはフィーダーフリーの、mTeSRl(登録商標)培地(図1)中のMatrigel(登録商標)上の化学合成系において培養された場合、増殖および分化の劇的増加をもたらした。これは、1Mを用いる処理に続く、多分化能マーカーのTra-1-60およびSSEA4の発現における劇的増加を示したフローサイトメトリーによる表面マーカーの分析に反映された(図IB;Table 1(表1))。遺伝子発現分析も多分化能マーカーのOCT4およびNANOGの損失を示し(図1C)、Oct4タンパク質発現の損失もある(図1D)。これらの結果は、SHEF1およびSHEF3の両細胞株において認められ、GSK-3阻害剤1MがヒトESCに対して強力かつ劇的な効果を有する結果、多分化能の損失および増殖における増加をもたらすことを示唆している。さらに、化合物I0を用いるSHEF3 ESCの処理も、両方の培養条件下で同様の分化を誘導する(図1E)。再び、これは、フローサイトメトリーによるTra-1-60およびSSEA4の発現減少(図1F)、OCT4およびNANOG遺伝子発現の損失(図1G)およびOCT4タンパク質発現の損失(図1H)によって実証された。
【0078】
化合物1Mは、マウスESCにおいて以前に認められた自己再生とは対照的に、ヒトESCにおける分化を強力に促進していたので、ヒトESCにおけるGSK-3を阻害するその能力がここでも確認された。結果を図2に示す。
【0079】
ヒトESCの1M処理は、DEへの分化を誘導する。
小分子GSK-3阻害剤1Mを用いるヒトESCの処理が分化を促進することが認められ、次に、どの系譜に細胞が分化しているのか決定された。
【0080】
以下の実験は全て、化学合成mTeSRl(登録商標)培地中でMatrigel(登録商標)上にて、フィーダーフリーで培養されたヒトESCに行った。この系は簡便性および信頼性の利点を有し、細胞培養および分化の一致性および再現性につながる。DE、FoxA2、Sox17において発現される転写因子および肝細胞核因子4α(HNF4α)に対する抗体を用いる1M処理ヒトESCの免疫染色は、細胞が時間依存性様式においてDEへ分化していることを示唆した(図3A)。分化の7日にわたる遺伝子発現分析は、PSからDEへではあるが分化の進行を示した(図3B)。分化の誘導は、OCT4およびNANOGの発現の損失によって示唆された。当初、PSの形成を定義し、DEにおいて下方制御されるブラキュリ(T)の上方制御が認められた。他の原始線条マーカーのグースコイド(GSC)およびMIXL1を、初期の時点で同様に上方制御した。これに続いて、PSにおいて発現され、DE前駆体において保持されている肝細胞核因子(HNF)3β(FOXA2)およびCXCR4、ならびにDEマーカーSOX17が発現した。SOX17およびFOXA2は、DEだけでなく原始内胚葉においても発現される。しかし、CXCR4は、DEおよび中胚葉において発現されるが原始内胚葉(McGrathら、1999)においては発現されず、マウス(Yasunagaら、2005)およびヒト(D'Amourら、2005)のESCにおける原始内胚葉および胚体内胚葉を見分けるためのマーカーとして使用されてきた。重要なことに、ESC(表面受容体CXCR4のために濃縮される)は、肝細胞の表現型細胞(Gouon-Evansら、2006)または膵内分泌細胞(D'Amourら、2006)のいずれかに関する内胚葉細胞に分化する。SOX17、GSCおよびFOXA2の発現は、原始内胚葉への分化の結果ではない。興味深いことに、1Mを用いる7日の処理に続いて、HNF4αおよびα-フェトプロテイン(AFP)の発現が認められた。AFPは、発生の初期段階における原始(内蔵)内胚葉のためのマーカーであるが、後にそれは肝臓系譜に対する最も初期の指定を示す。HNF4αは、肝臓特異的転写のカスケードを調節する重要な転写因子である。同時に、7日目までのAFPおよびHNF4αの発現は、初期の肝臓系譜へのDE指定細胞の成熟を示唆する。
【0081】
BIOを用いる処理は、DEマーカーのFOXA2、SOX17およびHNF4αに対する抗体での免疫染色によって表示されている通り、DEへの分化も誘導する(図3C)。同様に、化合物1Lを用いるSHEF3 ESCの処理も、DEへの分化誘導する(図3D)。
【0082】
1M誘導DEにおけるアクチビン/Nodalシグナル伝達の関与
初期の胚発生中、TGFβシグナル伝達経路は、PS、中胚葉およびDEの形成に関与する。高レベルの、TFGβスーパーファミリーのメンバーであるNodalは、PSの前部領域を介する前駆細胞の移行に続く内胚葉の指定に必要とされる。アクチビンは、Nodalと同じ受容体に結合するTGFβスーパーファミリーの別のメンバーであり、インビトロにおけるNodal活性を模倣するのに使用される。ヒトESCにおいて、DEの生成は、アクチビンNodal経路の活性化に依存してきた(D'Amourら、2005)。したがって、次に、1M化合物はNodal経路も活性化しているかどうかが決定された。実際に、1Mを用いるわずか1日間の処理に続いて、NODAL遺伝子発現における増加が見られ、これは、最大3日間保持され、次いで7日目までに基底レベルに低下した(培地が新鮮な化合物で1日おきに変えられたにもかかわらず)(図4A)。NODAL発現の誘導は、アクチビン受容体様キナーゼ4/5/7(ALK)阻害剤SB43125によって部分的にのみ阻害された(図4B)。しかし、SB34125を用いる処理は、Nodalシグナル伝達の下流標的である1M誘導GSCおよびFOXA2発現を劇的に低減した。これらのデータは、1Mが、1M誘導DE形成に必要とされるNodalシグナル伝達経路を直接的または間接的に活性化していることを示唆する。
【0083】
次に、単独または1Mと組み合わせたアクチビンA処理と比較した1M誘導DE形成の効率を調べた。遺伝子発現分析(図4C)は、3日の処理に続いて、アクチビンAとの組合せにおいてわずかに高い発現が現れたものの1MがアクチビンA単独と比較してPSマーカーのTおよびGSCの発現の同様レベルを誘導することを示した。7日の誘導に続いて、1M処理単独後にTもしくはGSCの発現が少し認められたか、または全く認められず、PSを介する移行を示した。GSC発現は、GSCがNodalシグナル伝達の下流転写標的であるので、アクチビンA(単独で、または1Mと組み合わせて)の存在下で保持した。DEマーカーのSOX17およびFOXA2ならびに初期の肝臓特異的転写因子HNF4αの発現が、1Mを単独で、またはアクチビンAと組み合わせて用いる処理に続いて同様に現れた。興味深いことに、AFPの1M誘導発現はアクチビンAの存在下で失われた。Nodalシグナル伝達は、DEの形成まで原腸形成の間持続し、この後発現が低下し、成熟および腸管形成を可能にした(Collingnonら、1996)。近年、マウスESCにおいて、誘導Nodal発現がDE指定をもたらし、それに続くNodal下方制御がDEの成熟を促進した(Takenagaら、2007)。ここにおいて、1M誘導AFP発現は、Nodal遺伝子発現の減少とも相互に関連した。維持されたアクチビン/Nodalシグナル伝達によるDE成熟の阻害は、保持されたOCT4発現の結果であり得る。Nodalシグナル伝達は多分化能の維持に関与し、原腸形成中のOCT4発現を維持するのに不可欠である。多分化能マーカーのNANOGおよびOCT4の両方が、7日間のアクチビンAを用いる処理に続いて保持される。しかし、1Mの存在下で、OCT4およびNANOGのアクチビンA誘導発現は保持されないが、GSCのレベル上昇がアクチビンAの存在下におけるPS段階からの1M誘導成熟の阻害を示唆する。これらの結果は、Nodalシグナル伝達経路の1M誘導一時的活性化が、DEに対する指定およびその後続の、初期の肝臓の表現型への成熟をもたらすことを示唆する。
【0084】
DE形成の効率をさらに検査するため、FoxA2およびHNF4αの発現を免疫蛍光検査によって分析した(図4D)。1Mを用いる5日間の処理は、高い比率のFoxA2(73%陽性)を発現する細胞のクラスターをもたらす一方で、全集団におけるFOXA2の発現は35〜40%であった。アクチビンA処理は、より低い比率の、FOXA2を発現する細胞を生成し(平均で8%)、これらは、集団の至るところに分散されていた。
【0085】
アクチビンAの添加は、1M誘導FoxA2発現をさらに増強させることはなかった。化合物1Mはまた、アクチビンA単独(3%)よりも多くHNF4α発現細胞(20%)を生成すると思われた。興味深いことに、アクチビンAは、1M誘導HNF4α発現細胞の生成を阻害すると思われた。フローサイトメトリーによるCXCR4発現の分析(図4E)は、1Mを用いる処理が、アクチビンA単独(26.5%)と比較して増強したCXCR4発現(53.0%)をもたらす一方で、アクチビンAと組み合せた1Mは、さらに増加したCXCR4発現(85.0%)をもたらすことを示した。
【0086】
得られた結果は、本明細書に記載されている培養条件下で、1M誘導DE形成の効率がアクチビンA単独と同様またはより良好であることを示す。アクチビンAと組み合せた1M処理は、CXCR4発現によって評価された通りDE形成増加をもたらし得るが、HNF4αおよびAFP発現の損失を有する初期の肝臓の表現型へのさらなる分化を阻害する。
【0087】
1M誘導DEはインビトロにおける肝細胞様分化能を有する。
次に、肝細胞様細胞(HLC)を生成する、化学的に誘導されたDEの分化能を調査した。HLCを生成する能力は、機能的HLCを生成するという最終目標とともに、化学的に誘導されたDEの発生分化能の目安となる。この分化能に取り組み始めるために、Argawalら、2008による研究に基づく分化プロトコールを用いて、実験手順および図5Aに概略されている通り、HLCを生成した。DEの1M誘導生成に続いて、肝臓誘導を、肝細胞成長因子(HGF)および線維芽細胞成長因子4(FGF4)において培養することによって開始し、続いて、HGF、FGF4、オンコスタチンM(OSM)およびデキサメタゾン(Dex)のカクテルによって、HLCの成熟を誘導した。肝臓誘導(段II)に続いて、細胞は肝臓の特徴に適応し始める(図5B)。それらは増加したレベルのAFPを発現し、アルブミン(ALB)、トランスフェリン(TFN)およびトランスサイレチン(TTR)の発現が、初期の肝臓分化と相関して見られ始めた(図5C)。肝臓の成熟ステップに続いて、段階IIIの細胞は、1つまたは2つの顕著な核小体とともに多角形の形態の、明瞭な丸い核を持つ肝細胞の特徴を有し、多くは二核性であった。段階IIの細胞と比較して、成熟した細胞は、増加したALB遺伝子発現(図5C)、ならびに、免疫染色によって検出された通り、増加したHNF4α、AFPおよびTTRタンパク質を有していた(図5D)。肝臓特異的機能を評価するため、重要な血清タンパク質、AFPおよびアルブミンの分泌を決定した。AFPおよびアルブミンの両方は(図5Eおよび5F)、1M誘導DEから由来の段階IIIの細胞の培地において検出した。これらの結果は、1M由来の胚体内胚葉が、肝細胞の特徴を有する細胞に分化させる分化能を有することを示す。BIO由来のDE細胞(図5GおよびH)を使用しても同様の結果が出た。
【0088】
実験手順
細胞培養
SHEF1およびSHEF3のヒトESCをUKSCBから得て、それらのプロトコールに概略されている通りに培養した。簡潔には、20%(vol/vol)KO血清交換(KOSR;Invitrogen)、1mMの非必須アミノ酸(NEAA;Invitrogen)、1mMのグルタミン(Invitrogen)、0.1mMの2-メルカプトエタノール(BioRad)、ペニシリン/ストレプトマイシンおよび4ng/mlの組換えヒトFGF2(Peprotech)を補充したノックアウトダルベッコ変法イーグル培地(KO DMEM)(Invitrogen)中でマイトマイシンC不活性化マウス胚性線維芽細胞(MEF)フィーダー層上にESCを保持した。1mg/mlのコラゲナーゼを使用し、1:8から1:12の比で7日毎に培養を継代した。Stem Cell Technologiesのプロトコールに従って、mTeSRl(登録商標)(Stem Cell Technologies)培地におけるESC限定用Matrigel(登録商標)(BD)被覆プレート上でフィーダーフリーの化学合成培養系に培養液を移した。
【0089】
胚体内胚葉および肝細胞様細胞への分化
2μMの化合物1Mを7日間補充したmTeSRl(登録商標)培地におけるMatrigel(登録商標)被覆プレート上にてフィーダーフリーでESCを培養し、培地を1日おきに新しくした。胚体内胚葉の培養液を、コラゲナーゼ(1mg/ml)を用いて継代し、グルタミン、ペニシリン/ストレプトマイシン、NEAA、2%(v/v)KOSR、10ng/mlのHGF(Peprotech)および10ng/mlFGF4を補充したKO DMEMにおけるMatrigel(登録商標)上にて1:10の比で平板培養し、さらに7日間、培地を1日おきに新しくしながら培養した。HLCの成熟を可能にするため、10ng/mlのオンコスタチンM(Peprotech)および10-7のデキサメタゾン(SIGMA)を上記培地に添加し、1日おきに新鮮な培地を用いて追加の7日間細胞を培養した。
【0090】
逆転写ポリメラーゼ連鎖反応
全RNAを単離し、TRIzol試薬(Invitrogen)を使用して製造業者の使用説明書に従って精製した。全てのRNA試料をDNase I(Ambion)でcDNA合成前に処理することで、任意の混入ゲノムDNAを取り除いた。0ligo(dT)15(Promega)およびSuperScript II(Invitrogen)を使用して、RNA(1μg)をcDNAに逆転写した。Table 2(表2)に概略されているプライマーおよびアニーリング温度を使用して、遺伝子特異的PCRを実施した。
【0091】
免疫ブロット
以前記載されている通りに(Welhamら、1994)、細胞可溶化物(20μg)を調製し、SDS-PAGEによって分離し、ニトロセルロースに移した。一次抗体を使用し、以下の希釈度で免疫ブロットを実施した。1:5,000の抗Oct4(Santa Cruz Biotechnology;sc-9081)、1:2000の抗GAPDH (sc-20357)、1:10,000の抗ホスホ(Ser33/37/Thr41)β-カテニン(Cell signalling Technology;CST 9561)、1:1000の抗β-カテニン(CST 9562)。セイヨウワサビペルオキシダーゼ(DAKO)にコンジュゲートした抗ウサギ抗体を1:10,000で使用し、ブロットを、ECL Advance(GE Healthcare)またはChemiGlow(Alpha Innotech)を使用し、製造者の指示に従って展開した。画像を取り込み、ImageQuant RT ECLシステム(GE Healthcare)を使用して分析した。以前に記載されている通りに(Welhamら、1994)、ブロットを剥離し、再プローブした。
【0092】
フローサイトメトリー
ESCを10分間37℃でトリプシン処理し(0.05%トリプシン-EDTA)、2%(v/v)FBSを含有するPBS(FBS/PBS)中に再懸濁した。細胞を次いで、氷上にて45分間、Tra-1-60(10μg/ml;Abcam)、SSEA4(15μg/ml;クローンMC813 Abcam)またはフィコエリトリン(PE)コンジュゲート抗CXCR4(1:100;クローン12G5;R&D Systems)に対する抗体で染色した。細胞を洗浄し、必要であれば二次フルオレセインイソチオシアネート(FITC)コンジュゲート抗体(SIGMA)でさらに30分染色した。フローサイトメトリーをFACSCantoサイトメーター(Becton Dickenson)を使用して行い、データをFACSDivaソフトウェアで分析した。前方および側方散乱のパラメータに基づく分析のために死細胞を除外した。
【0093】
β-カテニン媒介転写活性を測定するためのルシフェラーゼレポーターアッセイ
TOPFlashルシフェラーゼレポータープラスミド(ホタルルシフェラーゼレポーターの発現を誘発する、c-fos最小プロモーターの4つのコンセンサスTCF結合部位上流を含有する)およびその陰性対照プラスミドFOPFlash(4つの突然変異体TCF結合部位を含有する)は、Dr C.Dani(CNRS、Nice、France)によって供給された。アッセイを正規化するため、ウミシイタケルシフェラーゼ対照ベクターphRL-TK(Promega)を内部対照として含めた。ESCをMatrigel(登録商標)被覆24ウェルプレート上で5日間平板培養し、次いで、3μlのリポフェクタミン2000(Invitrogen)と混合した0.6μgのTOPFlash(またはFOPFlash)および0.144μgのphRL-TKでトランスフェクトした。トランスフェクション混合物(0.1ml)を、0.5mlの新鮮なmTeSRl(登録商標)中の該細胞に添加した。24時間後、培地を交換し、表示されている化合物を含有し、さらに24時間インキュベートさせた。細胞抽出物を調製し、ホタルおよびウミシイタケルのシフェラーゼ活性を、二重のルシフェラーゼレポーターアッセイ系を使用し、製造業者(Promega)の使用説明書に従って決定した。TOPFlash(FOPFlash)ホタルルシフェラーゼ活性を、同時トランスフェクションしたphRL-TKウミシイタケルシフェラーゼ活性のものに正規化した。データは、非刺激対照FOPFlash値に対する増加倍率として表される。
【0094】
免疫蛍光検査
ESCをMatrigel(登録商標)被覆lumox(Greiner Bio One)トレー上で培養し、4%パラホルムアルデヒド(PFA)で20分間、室温で固定した。細胞をPBST(0.1%トリトンX-100とともに)中で透過処理し、10%遮断試薬(Roche)中で遮断した後、一次抗体を用いて2%遮断試薬中にて終夜4℃でインキュベートした。PBS中で洗浄した後、FITCコンジュゲート二次抗体(Vector Labs)を用いて3時間室温で細胞をインキュベートした。さらに洗浄した後、細胞を4,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)(SIGMA)で染色し、再度洗浄し、MOWIOL中に取り付けた。以下の抗体および希釈度を使用した。ヤギ抗FoxA2(1:100、R&D Systems)、マウス抗Soxl7(1:50、R&D Systems)、ウサギ抗HNF4α(1:100、Santa Cruz)、ウサギ抗AFP(1:100、DAKO)、ウサギ抗TTR(1:100、DAKO)。40×対物レンズを使用するZeiss 510 Meta共焦点顕微鏡において画像を取り込んだ。
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

【0097】
【表3A】

【0098】
【表3B】

【0099】
小分子阻害剤の使用は、胚性幹細胞(ESC)から特異的細胞型への分化を導く強力な手法となる。肝臓および膵臓が発生する胚体内胚葉(DE)に特徴的な細胞の生成は、化学的に誘導される分化のための魅力的な標的である。特に、肝細胞を生成する能力は、再生医療において興味深いだけでなく、薬物毒性スクリーニングのための新規な構築基盤も提供する。GSK-3阻害剤を用いる処理は、ヒトESCからDEへの分化を促進し、長期処理が肝芽細胞の特徴を示す細胞集団の生成をもたらすことがここで実証された。順じて、これらの細胞は、定義された培養条件下で成熟な肝細胞の表現型に進む能力を有する。
【0100】
本明細書に記載されている現在好ましい実施形態に対する様々な変更および修正は、当業者に明らかであることが理解されるべきである。こうした変更および修正は、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、および付随する利点を減ずることなくなされ得る。したがって、こうした変更および修正は、添付の請求項によって包含されていると意図される。
【0101】
本明細書において引用されている全ての文献の内容を、参照によりそれらの全体を本明細書に組み込む。
【0102】
(参考文献)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト胚性幹細胞またはヒト胚性幹細胞集団の、胚体内胚葉に特徴的な細胞または細胞集団への分化を誘導するための方法であって、前記細胞または細胞集団をGSK-3阻害剤とともにインキュベートするステップを含む方法。
【請求項2】
胚体内胚葉に特徴的な細胞または細胞集団の、肝細胞様細胞または肝細胞様細胞集団への分化を誘導する方法であって、前記細胞または細胞集団をGSK-3阻害剤とともにインキュベートするステップを含む方法。
【請求項3】
ヒト胚性幹細胞またはヒト胚性幹細胞集団の、肝細胞様細胞または肝細胞様細胞集団への分化を誘導する方法であって、前記細胞または細胞集団をGSK-3阻害剤とともにインキュベートするステップを含む方法。
【請求項4】
GSK-3阻害剤が、以下の構造を有する化合物、またはその機能的誘導体、類似体もしくは同族体である、請求項1から3のいずれかに記載の方法:
【化1】

(式中、
R1は、H、C1〜C6アルキル(好ましくはCH3)またはCH2O(CH2)2SiCH3であり、
R2は、H、C1〜C6アルキル(好ましくはCH3)またはCH2O(CH2)2SiCH3であり、あるいは
R1およびR2は一緒になって、非置換であるまたはOR6もしくはR7によって置換されている-(CH2)n-、あるいは-(CH2CH2O)m(CH2)2-であり、
R3は、HまたはC1〜C6アルキル(好ましくはCH3)であり、
R4は、HまたはC1〜C6アルキル(好ましくはCH3)であり、
R5は、HまたはCH2アリールであり、ここで、アリールは非置換であるか、またはアルコキシ(好ましくはメトキシ)によって置換されており、
R6は、H、CH2CH=CH2、CH2CH2CH=CH2、CH2OCH2CH=CH2またはSitBuPh2であり、
R7は、H、CH2CH=CH2、CH2CH2CH=CH2、CH2OCH2CH=CH2またはSitBuPh2であり、
nは、6、7、8、9、10または11であり、
mは、3または4であり、
XおよびYは、独立して、CまたはNである)。
【請求項5】
GSK-3阻害剤が、以下の構造の1つを有する化合物、またはその機能的誘導体、類似体もしくは同族体から選択される、請求項4に記載の方法。
【化2】

【化3】

【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の方法によって得られる細胞または細胞集団。
【請求項7】
ヒト胚性幹細胞またはヒト胚性幹細胞集団の、胚体内胚葉に特徴的な細胞または細胞集団への分化を誘導するためのGSK-3阻害剤の使用。
【請求項8】
胚体内胚葉に特徴的な細胞または細胞集団の、肝細胞様細胞または肝細胞様細胞集団への分化を誘導するためのGSK-3阻害剤の使用。
【請求項9】
ヒト胚性幹細胞またはヒト胚性幹細胞集団の、肝細胞様細胞または肝細胞様細胞集団への分化を誘導するためのGSK-3阻害剤の使用。
【請求項10】
対象における肝疾患の治療のためまたは損傷肝臓の再構築のための薬物の製造における、ヒト胚性幹細胞およびGSK-3阻害剤の使用。
【請求項11】
対象における肝疾患の治療のためまたは損傷肝臓の再構築のための薬物の製造における、胚体内胚葉細胞およびGSK-3阻害剤の使用。
【請求項12】
GSK-3阻害剤が、以下の構造を有する化合物、またはその機能的誘導体、類似体もしくは同族体である、請求項7から11のいずれかに記載の使用:
【化4】

(式中、
R1は、H、C1〜C6アルキル(好ましくはCH3)またはCH2O(CH2)2SiCH3であり、
R2は、H、C1〜C6アルキル(好ましくはCH3)またはCH2O(CH2)2SiCH3であり、あるいは、
R1およびR2は一緒になって、非置換であるまたはOR6もしくはR7によって置換されている-(CH2)n-、あるいは-(CH2CH2O)m(CH2)2-であり、
R3は、HまたはC1〜C6アルキル(好ましくはCH3)であり、
R4は、HまたはC1〜C6アルキル(好ましくはCH3)であり、
R5は、HまたはCH2アリールであり、ここで、アリールは非置換であるか、またはアルコキシ(好ましくはメトキシ)によって置換されており、
R6は、H、CH2CH=CH2、CH2CH2CH=CH2、CH2OCH2CH=CH2またはSitBuPh2であり、
R7は、H、CH2CH=CH2、CH2CH2CH=CH2、CH2OCH2CH=CH2またはSitBuPh2であり、
nは、6、7、8、9、10または11であり、
mは、3または4であり、
XおよびYは、独立して、CまたはNである)。
【請求項13】
GSK-3阻害剤が、以下の構造の1つを有する化合物、またはその機能的誘導体、類似体もしくは同族体から選択される、請求項12に記載の使用。
【化5】

【請求項14】
GSK-3阻害剤を含む、ヒト胚性幹細胞の胚体内胚葉細胞への分化組成物。
【請求項15】
GSK-3阻害剤を含む、胚体内胚葉の肝細胞様細胞への分化組成物。
【請求項16】
GSK-3阻害剤を含む、ヒト胚性幹細胞の肝細胞様細胞への分化組成物。
【請求項17】
GSK-3阻害剤が、以下の構造を有する化合物、またはその機能的誘導体、類似体もしくは同族体である、請求項14から16のいずれかに記載の組成物:
【化6】

(式中、
R1は、H、C1〜C6アルキル(好ましくはCH3)またはCH2O(CH2)2SiCH3であり、
R2は、H、C1〜C6アルキル(好ましくはCH3)またはCH2O(CH2)2SiCH3であり、あるいは
R1およびR2は一緒になって、非置換であるまたはOR6もしくはR7によって置換されている-(CH2)n-、あるいは-(CH2CH2O)m(CH2)2-であり、
R3は、HまたはC1〜C6アルキル(好ましくはCH3)であり、
R4は、HまたはC1〜C6アルキル(好ましくはCH3)であり、
R5は、HまたはCH2アリールであり、ここで、アリールは非置換であるか、またはアルコキシ(好ましくはメトキシ)によって置換されており、
R6は、H、CH2CH=CH2、CH2CH2CH=CH2、CH2OCH2CH=CH2またはSitBuPh2であり、
R7は、H、CH2CH=CH2、CH2CH2CH=CH2、CH2OCH2CH=CH2またはSitBuPh2であり、
nは、6、7、8、9、10または11であり、
mは、3または4であり、
XおよびYは、独立して、CまたはNである)。
【請求項18】
GSK-3阻害剤が、以下の構造を有する化合物、またはその機能的誘導体、類似体もしくは同族体から選択される、請求項17に記載の組成物。
【化7】

【化8】

【請求項19】
請求項14から18のいずれかに記載の組成物を含む培養培地。
【請求項20】
ヒト胚性幹細胞およびGSK-3阻害剤を含む組成物を対象に投与するステップを含む、対象における肝疾患の治療または損傷肝臓の再構築のための方法。
【請求項21】
胚体内胚葉細胞およびGSK-3阻害剤を含む組成物を対象に投与するステップを含む、対象における肝疾患の治療または損傷肝臓の再構築のための方法。
【請求項22】
GSK-3阻害剤が、以下の構造を有する化合物、またはその機能的誘導体、類似体もしくは同族体である、請求項20または21に記載の方法:
【化9】

(式中、
R1は、H、C1〜C6アルキル(好ましくはCH3)またはCH2O(CH2)2SiCH3;であり、
R2は、H、C1〜C6アルキル(好ましくはCH3)またはCH2O(CH2)2SiCH3であり、または
R1およびR2は一緒になって、非置換であるまたはOR6もしくはR7によって置換されている-(CH2)n-、あるいは-(CH2CH2O)m(CH2)2-であり、
R3は、HまたはC1〜C6アルキル(好ましくはCH3)であり、
R4は、HまたはC1〜C6アルキル(好ましくはCH3)であり、
R5は、HまたはCH2アリールであり、ここで、アリールは非置換であるか、またはアルコキシ(好ましくはメトキシ)によって置換されており、
R6は、H、CH2CH=CH2、CH2CH2CH=CH2、CH2OCH2CH=CH2またはSitBuPh2であり、
R7は、H、CH2CH=CH2、CH2CH2CH=CH2、CH2OCH2CH=CH2またはSitBuPh2であり、
nは、6、7、8、9、10または11であり、
mは、3または4であり、
XおよびYは、独立して、CまたはNである)。
【請求項23】
GSK-3阻害剤が、以下の構造の1つを有する化合物、またはその機能的誘導体、類似体もしくは同族体から選択される、請求項22に記載の方法。
【化10】

【化11】

【請求項24】
対象における肝疾患の治療のためまたは損傷肝臓の再構築のための薬物の製造における、請求項6に記載の細胞または細胞集団の使用。
【請求項25】
請求項6に記載の細胞または細胞集団を含む組成物を対象に投与するステップを含む、対象における肝疾患の治療または損傷肝臓の再構築のための方法。
【請求項26】
薬物毒性のスクリーニングのための、請求項6に記載の細胞または細胞集団の使用。
【請求項27】
肝臓細胞に対する化合物の毒性を評価する方法であって、
(i)前記化合物を、請求項6に記載の細胞または細胞集団とともにインキュベートするステップ、および
(ii)前記細胞または細胞集団に対する前記化合物の毒性を評価するステップ
を含み、前記毒性が肝毒性を示す方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【公表番号】特表2013−511974(P2013−511974A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540491(P2012−540491)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【国際出願番号】PCT/GB2010/002184
【国際公開番号】WO2011/064549
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(512137706)ステム・セルズ・フォー・セイファー・メディスンズ・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】