説明

ヒト血清アルブミン(HSA)の変異体と接合したαvβ3インテグリンに対して選択的なポリペプチドおよびその医薬上の使用

本発明は一般に、RGD モチーフ変異体 48ARLDDL53を有するロドストミン変異体を含む融合タンパク質に関し、ここで、ロドストミン変異体は、ヒト血清アルブミン (HSA)の変異体と接合している。本発明はまた、ανβЗインテグリン関連疾患の治療および予防のためのこれらの融合タンパク質の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は一般に、RGD モチーフ変異体 48ARLDDL53を有するロドストミン (rhodostomin)変異体を含む融合タンパク質に関し、ここで、ロドストミン変異体はヒト血清アルブミン (HSA)の変異体と接合(conjugated)している。本発明はまた、ανβЗ インテグリン関連疾患(integrin-associated disease)の治療および予防のためのかかる融合タンパク質の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
骨は、いくつかの細胞型から構成される複雑な組織であり、これら細胞型は「骨再形成」と称される再生および修復のプロセスを絶え間なく経ている。骨再形成を担う2つの主な細胞型は、骨を再吸収する破骨細胞と、新しい骨を形成する骨芽細胞である。骨再形成は、いくつかの全身ホルモン(例えば、副甲状腺ホルモン、1,25-ジヒドロキシビタミン D3、性ホルモン、およびカルシトニン)および局所因子(例えば、一酸化窒素、プロスタグランジン、成長因子、およびサイトカイン)によって制御されていることが知られている。
【0003】
インテグリンは、細胞を基質に固定し、外来性のシグナルを原形質膜を横切って伝達するヘテロ二量体マトリックス受容体である。インテグリンαvβ3は、インビボとインビトロとの両方にて破骨細胞-媒介骨吸収に関与している。このヘテロ二量体分子は、骨マトリックスタンパク質、例えば、オステオポンチンおよび骨シアロタンパク質に含まれるアミノ酸モチーフ Arg-Gly-Asp (RGD)を認識する。インテグリンαvβ3は破骨細胞において発現され、その発現は、吸収性(resorptive) ステロイドおよびサイトカインによって調節される。遮断(blocking)実験に基づいて、αvβ3インテグリンは、破骨細胞上の主な機能性の接着受容体であると同定された。インテグリンαvβ3の阻害剤は、破骨細胞が骨に結合し、骨を再吸収する能力を低下させる。インテグリンαvβ3は、破骨細胞の機能において主要な役割を果たし、このインテグリンの阻害剤は、骨粗しょう症、溶骨性転移、および悪性腫瘍誘導性 (malignancy-induced)高カルシウム血症を治療または予防すると考えられている。
【0004】
破骨細胞によって媒介される骨溶解に関連する多くの骨疾患が存在する。骨粗しょう症は、骨の吸収と形成とが調和されず、骨分解が骨構築を上回る場合に誘導される最も一般的な骨疾患である。骨粗しょう症は、その他の状況、例えば、ホルモンの不均衡、疾患、または薬物治療(例えば、コルチコステロイドまたは抗てんかん薬)によっても引き起こされる。骨は、ヒト乳癌、前立腺癌、肺癌および甲状腺癌、ならびにその他の癌による転移のもっとも一般的な部位の一つである。骨粗しょう症はまた、閉経後エストロゲン欠乏にも起因しうる。二次性骨粗しょう症には関節リウマチが伴うことがある。骨転移は、その他の器官の転移においてはみられない、破骨細胞骨吸収の非常に特有な工程を示す。癌を伴う骨溶解は本質的に破骨細胞によって媒介されることが広く受け入れられており、それは活性化されているようであり、骨芽細胞を介して間接的に活性化されている可能性も腫瘍の生成物によって直接的に活性化されている可能性もある。さらに、高カルシウム血症 (骨カルシウム濃度の上昇)は、溶骨性骨疾患の重要な合併症である。それは広範に骨が破壊されている患者において比較的頻繁に起こり、特に、乳癌、肺癌、腎臓癌、卵巣癌および膵臓癌ならびに骨髄腫において一般的である。
【0005】
ジスインテグリンは、血小板およびその他の細胞、例えば、血管内皮細胞およびいくつかの腫瘍細胞において発現しているインテグリンαIIbβ3、α5β1およびαvβ3に特異的に結合する低分子量 RGD-含有ペプチドのファミリーである。それらの強力な抗血小板活性に加えて、ジスインテグリンの研究により、心臓血管疾患の診断および動脈血栓症、骨粗しょう症および血管新生関連腫瘍増殖および転移における治療薬の設計において新規な用途が判明した。Colloselasma rhodostomaの毒液に由来するジスインテグリンであるロドストミン (Rho)は、インビボおよびインビトロにて血小板糖タンパク質 αIIbβ3の阻害を介して血小板凝集を阻害することが判明した。さらに、ロドストミンは、石灰化していない(unmineralized)および石灰化した(mineralized)骨細胞外マトリックスの両方に対する乳癌および前立腺癌細胞の接着を、腫瘍細胞の生存能力に影響を与えることなく用量依存的に阻害することが報告されている。さらに、ロドストミンは乳癌および前立腺癌細胞の遊走および浸潤を阻害する。ロドストミンはまた、脂質生成および肥満を阻害することも示されている。しかしながら、ロドストミンは、インテグリン αIIbβ3、α5β1およびαvβ3に非特異的に結合するため、ロドストミンの医薬としての使用は重篤な副作用を引き起こしうる。例えば、癌の治療においてロドストミンを適用する場合、血小板凝集の阻害が望ましくない副作用である。
【0006】
αvβ3 インテグリンの骨疾患における役割はよく記載されている。例えば、F. Patrick Ross et al, Nothing but skin and bone, the Journal of Clinical Investigation, Vol. 116, #5, May 2006; S.B. Rodan et al, Integrin function in osteoclasts, Journal of Endocrinology (1997) 154, S47-S56; Steven L. Teitelbaum, Editorial: Osteoporosis and Integrins, the Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism, April 2005, 90(4): 2466-2468; Steven L. Teitelbaum, Osteoclasts, integrins, and osteoporosis, Journal of Bone and Mineral Metabolism, (2000) 18: 344-349; Ichiro Nakamura et al, Involvement of αvβ3 integrins in osteoclast function, Journal of Bone and Mineral Metabolism, (2007) 25: 337-344; Le T. Duong et al, The role of integrins in osteoclast function, Journal of Bone and Mineral Metabolism, (1999) 17: 1-6; およびA Teti et al, The Role of the AlphaVbeta3 Integrin in the Development of Osteolytic Bone Metastases: A Pharmacological Target for Alternative Therapy?, Calcified Tissue International (2002) 71: 293-299を参照されたい。
【0007】
骨疾患に加えて、αvβ3 インテグリンは、骨疾患に関連しない症状における血管形成および腫瘍増殖に重要な役割を果たす。
【0008】
したがって、改善された安定性および永続効果を有するαvβ3 インテグリンに選択的なポリペプチドを作成することが望ましい可能性がある。これらのポリペプチドは、αvβ3 インテグリンを伴う疾患および症状、例えばこれらに限定されないが、様々な骨疾患、癌、および血管形成を伴う疾患を治療するために潜在的に好適であろう。
【0009】
ヒト血清アルブミン (HSA) 融合技術は、当該技術分野において長時間作用型タンパク質製剤を作るために用いられてきた。しかしながら、HSAと接合されたポリペプチドは、特に酸性条件においてジスルフィド架橋による凝集を起こしやすい傾向があり得、その結果、分子間二量体の形成が起こる。分子間二量体の形成は、ポリペプチドの活性を低下させる、および/または、これらのポリペプチドが哺乳類に投与された場合に免疫原性を引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、当該技術分野において、野生型 HSAと融合したポリペプチドと比較して安定性がよりよく、分子間二量体がより少ない、αvβ3 インテグリンに選択的なポリペプチドを作成する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要
一つの態様において、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは該ポリペプチドの医薬上許容される塩に関し、ここで該ポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列を含むヒト血清アルブミン (HSA)の変異体と接合している。
【0012】
配列番号1は、RGD モチーフ変異体 48ARLDDL53を有するロドストミン変異体のアミノ酸配列を表す。
【0013】
配列番号2および配列番号3は、RGD モチーフ変異体 48ARLDDL53を有するロドストミン変異体をコードする可能なヌクレオチド配列の2つを表す。
【0014】
配列番号4は、HSA 変異体のアミノ酸配列を表し、ここで、HSA アミノ酸配列の位置 34のシステイン残基がセリンによって置換されている。この HSA 変異体をHSA C34Sと称する。
【0015】
配列番号5は、HSA C34S 変異体をコードするヌクレオチド配列を表す。
【0016】
別の態様において、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは該ポリペプチドの医薬上許容される塩に関し、ここで、該ポリペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列を含むHSAの変異体と接合している。
【0017】
配列番号6は、HSA 変異体のアミノ酸配列を表し、ここで、HSA アミノ酸配列の位置 34のシステイン残基がアラニンにより置換されている。このHSA 変異体を HSA C34Aと称する。
【0018】
配列番号7は、HSA C34A 変異体をコードするヌクレオチド配列を表す。
【0019】
好ましい態様において、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは該ポリペプチドの医薬上許容される塩を提供し、ここで、該ポリペプチドは、配列番号4または配列番号6のアミノ酸配列を含むHSAの変異体と接合しており、ここで、該ポリペプチドはさらにリンカーアミノ酸配列を含む。
【0020】
より好適な態様において、リンカーアミノ酸配列は、グリシンおよびセリンアミノ酸の組合せを含む。
【0021】
より好適な態様において、リンカーアミノ酸配列は、配列番号8のアミノ酸配列を含む。
【0022】
もっとも好適な態様において、本発明は、配列番号9のアミノ酸配列を含むポリペプチド、または該ポリペプチドの医薬上許容される塩に関する。
【0023】
配列番号9は、HSA(C34S)-ARLDDL 融合タンパク質のアミノ酸配列を表し、ここで、ARLDDL ロドストミン変異体は、配列番号8のリンカーアミノ酸配列を介してHSA C34S 変異体に融合している。
【0024】
別の好適な態様において、本発明は、配列番号11のアミノ酸配列を含むポリペプチドに関する。
【0025】
配列番号11は、HSA(C34A)-ARLDDL 融合タンパク質のアミノ酸配列を表し、ここで、ARLDDL ロドストミン変異体は配列番号8のリンカーアミノ酸配列を介してHSA C34A 変異体に融合している。
【0026】
一つの態様において、本発明は、配列番号10のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドに関する。
【0027】
別の態様において、本発明は、配列番号12のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドに関する。
【0028】
遺伝暗号の縮重のために、配列番号10および配列番号12のヌクレオチド配列を改変して本発明のポリペプチドをコードするその他のポリヌクレオチドを作成することは当該技術分野における技術範囲内である。それゆえ、その他のポリヌクレオチドによってコードされる本発明のポリペプチドも本発明により包含される。
【0029】
本発明のポリペプチドは、一般にαvβ3 インテグリンに対して高度に選択的であり、野生型ジスインテグリンと比較してαIIbβ3 および/または α5β1 インテグリンに対する低減した結合を示す。
【0030】
本発明のポリペプチドは一般に、ロドストミンと比較して、αIIbβ3 および/または α5β1に対する親和性において少なくとも 約5、50、または100-倍の低下を示す。
【0031】
別の態様において、本発明のポリペプチドは一般に、ロドストミンと比較してαIIbβ3 インテグリンに対する親和性において少なくとも 約 200-倍の低下を示し、より好ましくは、ロドストミンと比較してαIIbβ3 インテグリンに対する親和性において少なくとも 約 500-倍の低下を示す。
【0032】
別の態様において、本発明のポリペプチドは一般に、ロドストミンと比較してα5β1 インテグリンに対する親和性において少なくとも 約20-倍の低下を示し、より好ましくは、ロドストミンと比較してα5β1 インテグリンに対する親和性において少なくとも 約70または90-倍の低下を示す。
【0033】
本発明のポリペプチドは一般に、ロドストミンと比較して血小板に対する親和性において少なくとも 約 5、50、100、または150-倍の低下を示す。
【0034】
本発明のさらに別の態様において、ポリペプチドは、ロドストミンおよび/または野生型ジスインテグリンと比較して血液凝固時間の延長において実質的に低下した活性を示す。
【0035】
別の態様において、本発明は、本発明のポリペプチド、またはその医薬上許容される塩、および医薬上許容される担体を含む生理的に許容される組成物に関する。
【0036】
好ましい態様において、本発明は、配列番号9のアミノ酸配列を含むポリペプチド、または該ポリペプチドの医薬上許容される塩、および医薬上許容される担体を含む生理的に許容される組成物に関する。
【0037】
別の好適な態様において、本発明は、配列番号10のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、または該ポリペプチドの医薬上許容される塩、および医薬上許容される担体を含む生理的に許容される組成物に関する。
【0038】
別の態様において、本発明は、それを必要とする哺乳類に治療上有効量の配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは該ポリペプチドの医薬上許容される塩を投与することを含むαvβ3 インテグリン関連疾患の治療および/または予防のための方法に関し、ここで該ポリペプチドは配列番号4または配列番号6のアミノ酸配列を含むHSAの変異体に接合している。
【0039】
好ましい態様において、本発明は、それを必要とする哺乳類に、治療上有効量の、配列番号9のアミノ酸配列を含むポリペプチド、または該ポリペプチドの医薬上許容される塩を投与することを含むαvβ3 インテグリン関連疾患の治療および/または予防のための方法に関する。
【0040】
別の好適な態様において、本発明は、それを必要とする哺乳類に、治療上有効量の、配列番号10のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、または該ポリペプチドの医薬上許容される塩を投与することを含むαvβ3 インテグリン関連疾患の治療および/または予防のための方法に関する。
【0041】
本発明の一つの態様において、αvβ3 インテグリン関連疾患としてはこれらに限定されないが、骨粗しょう症、骨腫瘍または癌増殖およびそれらに関連する症状、血管新生関連腫瘍増殖および転移、骨における腫瘍転移、悪性腫瘍誘導性高カルシウム血症、パジェット病、卵巣摘出-誘導性生理的変化、リウマチ性関節炎(rheumatic arthritis)、骨関節炎および血管形成関連眼疾患(angiogenesis-related eye disease)、例えばこれらに限定されないが、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、角膜新血管新生疾患 (corneal neovascularizing disease)、虚血誘導性新血管形成網膜症(ischaemia-induced neovascularizing retinopathy)、高度近視および未熟児網膜症が挙げられる。
【0042】
別の態様において、本発明は、哺乳類における骨またはその他の器官における腫瘍細胞増殖およびそれに関連する症状の阻害および/または予防のための本発明のポリペプチドの使用方法に関する。
【0043】
別の態様において、αvβ3 インテグリン関連疾患の治療および/または予防方法は、それを必要とする哺乳類に、治療上有効量の、配列番号9のアミノ酸配列を含むポリペプチド、または該ポリペプチドの医薬上許容される塩を、治療上有効量のその他の活性薬剤と組み合わせて投与することを含む。その他の活性薬剤は、本発明のポリペプチドの投与の前、最中または後に投与することができる。
【0044】
好ましい態様において、その他の活性薬剤は、VEGF アンタゴニスト、抗炎症薬、ビスホスフォネートおよび細胞毒性薬からなる群から選択される。
【0045】
別の態様において、本発明は、以下を含む、本発明のポリペプチドを作成する方法に関する:(a)本発明のポリペプチドをコードする遺伝子を構築する工程; (b)宿主細胞に工程 (a)の遺伝子をトランスフェクトする工程; (c)培地において該宿主細胞を成育させる工程;および (d) 該ポリペプチドを単離する工程。
【0046】
好ましい態様において、本発明は、以下を含む、配列番号9のアミノ酸配列を含むポリペプチドを作成する方法に関する:(a)該ポリペプチドをコードする遺伝子を構築する工程; (b)工程 (a)の遺伝子を宿主細胞にトランスフェクトする工程; (c)培地において該宿主細胞を成育させる工程;および (d) 該ポリペプチドを単離する工程。
【0047】
本発明のポリペプチドを作成する方法はさらに、アミノ酸を含まない培地において宿主細胞を成育させる工程;および上清を収集して該ポリペプチドを得る工程を含みうる。
【0048】
これらの方法はさらに、宿主細胞におけるポリペプチド発現を誘導するために培地にメタノールを添加する工程を含みうる。
【0049】
該方法はさらに、該ポリペプチドを得るためにカラムクロマトグラフィーを行う工程を含みうる。
【0050】
一つの態様において、該方法はさらに単離ポリペプチドを得るために高性能液体クロマトグラフィー (HPLC)を行う工程を含みうる。
【0051】
これらおよびその他の側面は、添付の図面と併せてとられる様々な態様の以下の記載から明らかになろうが、そのなかでの変更および改変は本開示の新規な概念の精神と範囲とを逸脱することなく行われうる。
【0052】
上記の一般的記載および以下の詳細な説明はともに単に例示的かつ説明的なものであり、請求項に記載の本発明を制限するものではないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1Aおよび1Bは、それぞれ、HSA-ARLDDL および HSA(C34S)-ARLDDLのHPLC プロファイルを示す。図1Cおよび1Dは、それぞれ、HSA-ARLDDL および HSA(C34S)-ARLDDLのサイズ排除クロマトグラフィー (SEC) プロファイルを示す。図1E および1Fは、それぞれHSA-ARLDDL および HSA(C34S)-ARLDDLのSDS-PAGE プロファイルの写真を示す。図1Gは、HSA-ARLDDL、HSA(C34S)-ARLDDL および HSAの2D SDS-PAGE プロファイルの写真を示す。図1Hは、HSA(C34S)-ARLDDL およびBSAのNMR スペクトルを示す。
【図2】図2は、ロドストミンのARLDDL 変異体のアミノ酸配列、配列番号1を示す。
【図3】図3Aは、ロドストミンのARLDDL 変異体のヌクレオチド配列、配列番号2を示す。図3Bは、ロドストミンのARLDDL 変異体のヌクレオチド配列、配列番号3を示す。
【図4】図4Aおよび 4Bは、それぞれHSA C34S 突然変異体のアミノ酸配列、配列番号4 およびヌクレオチド配列、配列番号5を示す。
【図5】図5Aおよび5Bは、それぞれHSA C34A 突然変異体のアミノ酸配列、配列番号6およびヌクレオチド配列、配列番号7を示す。
【図6】図6は、リンカーアミノ酸のアミノ酸配列、配列番号8を示す。
【図7】図7A および 7Bは、それぞれ、HSA(C34S)-ARLDDLのアミノ酸配列、配列番号9 およびヌクレオチド配列、配列番号10を示す。
【図8】図8Aおよび 8Bは、それぞれ、HSA(C34A)-ARLDDLのアミノ酸配列、配列番号11 およびヌクレオチド配列、配列番号12を示す。
【図9】図9A、9B および9Cは、HSA(C34S)-ARLDDL が破骨細胞の分化を阻害することを示す、骨髄の造血細胞の写真である。
【図10】図10A、10B および 10Cは、HSA-ARLDDL および HSA(C34S)-ARLDDL が破骨細胞の分化を阻害することを示すグラフである。
【図11】図11A、11B、11Cおよび11Dは、HSA-ARLDDL およびHSA(C34S)-ARLDDLが未熟児網膜症 (ROP)のマウスモデルにおける血管形成を阻害することを示すグラフである。図11E、11F および11Gは、酸素誘導性網膜症のマウスモデルにおける血管形成を示す写真である。これらは、HSA(C34S)-ARLDDL が酸素誘導性網膜症マウスにおいて血管形成を阻害することを示す。
【図12】図12Aおよび12Bは、ヒト PC-3 腫瘍細胞を注射されたマウスの写真である。図12Aは対照であり、図12Bは、HSA(C34S)-ARLDDLで処置された2匹のマウスを示す。図12Cおよび12Dは、対照マウスおよびHSA(C34S)-ARLDDLで処置されたマウスからそれぞれ切除された腫瘍の写真である。
【図13】図13は、HSA(C34S)-ARLDDLが、ヒト PC-3 腫瘍細胞を注射されたマウスにおいて腫瘍サイズおよび腫瘍重量を有意に低下させたことを示すグラフである。
【図14】図14Aは、非処置対照マウスとの比較においてHSA(C34S)-ARLDDLで処置されたC57BL/6マウスからのマトリゲル(商標) プラグにおける低下した血管密度を示す写真のセットである。図14Bは、非処置対照マウスとの比較においてHSA(C34S)-ARLDDL で処置されたC57BL/6マウスからのマトリゲル(商標) プラグにおける低下したヘモグロビン含有量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
発明の詳細な説明
本発明の様々な態様を以下に詳細に記載する。本明細書においておよび特許請求の範囲にわたって用いられる場合、「ある」、「1つの」および「その」の意味は、文脈上明白に別のことが示されない限り複数形も含む。また、明細書においておよび特許請求の範囲にわたって用いられる場合、「の中に」の意味は、文脈上明白に別のことが示されない限り「の中に」および「の上で」を含む。さらに、本明細書において用いられるいくつかの用語をより具体的に以下に定義する。
【0055】
定義
本明細書において用いられる用語は、本発明の文脈内において、および各用語が用いられている具体的な文脈内において、当該技術分野における通常の意味を一般に有する。本発明の記載に用いられている特定の用語は、本発明の記載に関して当業者に追加の指針を与えるために、以下またはその他の本明細書中に説明される。特定の用語についての同義語が提供される。1以上の同義語の説明は、別の同義語の使用を排除するものではない。本明細書中に記載されるあらゆる用語の例を含む本明細書における例の使用は、単に例示的なものであり、本発明またはいかなる例示された用語の範囲も意味も限定するものではない。本発明は本明細書において与えられた様々な態様に限定されない。
【0056】
特に断りのない限り、本明細書において用いられるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。矛盾がある場合は、定義を含む本明細書が優先される。
【0057】
「ほぼ」、「約」または「およそ」は一般に、所与の値または範囲の20 パーセント以内、10 パーセント以内、5、4、3、2または1 パーセント以内を意味する。与えられた数量はおおよそのものであり、用語「ほぼ」、「約」または「およそ」が明示されなくても黙示され得ることを意味する。
【0058】
用語「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、「核酸」、「核酸分子」、「核酸配列」、「ポリヌクレオチド配列」および「ヌクレオチド配列」はあらゆる長さのヌクレオチドの多量体形態を指すために互換的に用いられる。ポリヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、および/またはそれらの類似体または誘導体を含みうる。該用語は変異体を含む。変異体は、挿入、付加、欠失または置換を含みうる。ヌクレオチド配列は5’から 3’方向に並べられる。
【0059】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、あらゆる長さのアミノ酸の多量体形態を指すために互換的に用いられ、天然アミノ酸、コードされるおよびコードされないアミノ酸、化学的または生化学的に改変、誘導体化、または設計されたアミノ酸、アミノ酸類似体、ペプチド模倣薬、およびデプシペプチドを含んでいてもよく、そして改変された、環状、二環式、デプシ環状(depsicyclic)またはデプシ二環式ペプチドバックボーンを有するポリペプチドを含みうる。該用語は、一本鎖タンパク質ならびに多量体を含む。
【0060】
該用語はまた融合タンパク質も含み、例えば、これらに限定されないが、グルタチオン S-トランスフェラーゼ (GST) 融合タンパク質、異種アミノ酸配列、例えば、生物発光タンパク質、例えば、ルシフェリン、またはエクオリン (緑色蛍光タンパク質) との融合タンパク質、異種および同種リーダー配列との融合タンパク質、N-末端メチオニン残基を有するまたは有さない融合タンパク質、ペグ化タンパク質、および免疫学的にタグ付加、またはhis-タグ付加されたタンパク質が挙げられる。かかる融合タンパク質はまた、エピトープとの融合も含む。かかる融合タンパク質は、本発明のペプチドの多量体、例えば、ホモ二量体またはホモ多量体、およびヘテロ二量体およびヘテロ多量体を含みうる。該用語はまた、ペプチドアプタマーも含む。
【0061】
ポリヌクレオチドの文脈における用語、「特異的にハイブリダイズする」は、ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションをいう。DNA/DNAおよび DNA/RNAの両方のハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーを高める条件は、当該技術分野において広く知られており、公表されている。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例としては、約 65-70℃での4 X 塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム (SSC)中でのハイブリダイゼーション、または約 42-50 ℃での4 X SSC+ 50% ホルムアミド中でのハイブリダイゼーション、次いで、約 65-70 ℃での1回以上の1X SSC中での洗浄が挙げられる。
【0062】
用語「リガンド」は、別の分子、例えば、受容体に結合する分子をいう。
【0063】
用語「哺乳類」には、限定されないがヒトが含まれる。
【0064】
用語「宿主細胞」は、あらゆる組換えベクターまたはポリヌクレオチドのレシピエントであり得るまたはレシピエントであった個々の細胞または細胞培養物である。宿主細胞は単一の宿主細胞の子孫を含み、該子孫は(形態または全DNA 相補体(complement)において)、自然、偶発、または計画的突然変異および/または変化に起因して、元の親細胞と完全に同一である必要はない。宿主細胞は、本発明の組換えベクターまたはポリヌクレオチドによってインビボまたはインビトロでトランスフェクトまたは感染された細胞を含む。本発明の組換えベクターを含む宿主細胞は、「組換え宿主細胞」と称されうる。
【0065】
用語「処置」は、哺乳類における疾患のための治療薬のあらゆる投与または適用をいい、例えば、失われた、欠けている、または欠陥がある機能の、退行、または回復または修復をもたらすことによる、疾患の阻害、その進行の阻止、疾患の軽減; あるいは効果のないプロセスの刺激が含まれる。該用語は、哺乳類における病状または障害のあらゆる処置を包含し、所望の薬理学的および/または生理的効果を得ることを含む。効果は、障害またはその症状を完全にまたは部分的に予防するということに関して予防的であってもよいし、および/または、障害および/または障害に起因する有害作用についての部分的または完全な治癒ということに関して治療的であってもよい。それには、以下が含まれる:(1)障害に対して素因があり得るがまだ症候性ではない対象において障害が起こることまたは再発することを防ぐこと、(2)障害を阻害すること、例えば、その進行を阻止すること、(3)障害または少なくともその関連症状を停止または終結させて、宿主が障害またはその症状に罹患しないようにすること、例えば、失われた、欠けているまたは欠陥がある機能の回復または修復、あるいは効果のないプロセスの刺激によって、例えば、障害またはその症状の退行をもたらすこと、あるいは (4)障害、またはそれに伴う症状を軽減、緩和または改善すること、ここで改善することは、パラメーター、例えば、炎症、疼痛および/または腫瘍サイズの程度の少なくとも低下をいうために広い意味で用いられる。
【0066】
用語「医薬上許容される担体」は、あらゆる常套のタイプの非毒性の固体、半固体または液体の、充填剤、希釈剤、カプセル化材料、製剤補助剤、または賦形剤をいう。医薬上許容される担体は、用いられる用量および濃度にてレシピエントに対して非毒性であり、製剤のその他の成分と適合性である。
【0067】
用語「組成物」は、担体、例えば、当該技術分野において常套的であり、治療的、診断的、または予防的目的のために対象への投与に好適である医薬上許容される担体または賦形剤を通常含む混合物をいう。それは、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドが細胞または培地中に存在する細胞培養物を含みうる。例えば、経口投与のための組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル、徐放製剤、含嗽液または散剤を形成しうる。
【0068】
用語「疾患」は、医学的介入を必要とする、または医学的介入が望ましいあらゆる症状、感染、障害または症候群をいう。かかる医学的介入は、治療、診断および/または予防を含みうる。
【0069】
略語「Rho」は、Colloselasma rhodostomaの毒液に由来するジスインテグリンである「ロドストミン」を意味する。ロドストミンは、インテグリンαIIbβ3、α5β1およびαvβ3に非特異的に結合し、血小板糖タンパク質 αIIbβ3の阻害を介して血小板凝集を阻害することにより血液凝固時間を延長する。
【0070】
用語「IC50」または「最大半量阻害濃度」は、その受容体の50% 阻害に必要とされるRhoまたはその変異体の濃度をいう。IC50 は、生物学的プロセスを50%阻害するためにどの程度のRhoまたはその変異体が必要であるかの尺度であり、例えば、変異体のその受容体への親和性の尺度である。
【0071】
用語「治療上有効量」は、生体に投与された場合に、生体に対する所望の効果を達成する量をいう。例えば、生体への投与のための本発明のポリペプチドの有効量は、インテグリン αvβ3-媒介疾患を予防および/または治療する量である。正確な量は、処置の目的に依存するであろうし、公知の技術を用いて当業者によって確かめられるであろう。当該技術分野において知られているように、全身対局所送達、年齢、体重、全体的な健康、性別、食餌、投与の時間、薬物間相互作用および症状の重篤度についての調整が必要であり得、当業者によって常套的な実験により確かめられるであろう。
【0072】
用語「受容体アンタゴニスト」は、アゴニストの受容体への結合を遮断することにより受容体の機能を阻害するか、またはアゴニストの結合を許可するが、アゴニストが受容体を活性化する能力を阻害する、受容体に結合するリガンドをいう。
【0073】
用語「実質的に低下したインテグリンαIIbβ3 および/またはα5β1受容体-遮断活性」とは、野生型ロドストミンまたはその他のジスインテグリンと比較した場合の、インテグリンαIIbβ3および/またはα5β1受容体の遮断における少なくとも5倍の低下した活性をいう。例えば、αIIbβ3および/またはα5β1受容体-遮断活性の低下を計算するために、マトリックスタンパク質、例えば フィブリノゲンへのインテグリン αIIbβ3 および/または α5β1の結合の阻害についてのロドストミン変異体のIC50が、RhoのIC50 と比較される。
【0074】
用語「RGD モチーフ変異体」は、対応する野生型配列のRGD 配列、例えば、ロドストミンにおけるRGDを含む配列に渡る(span) アミノ酸配列において改変を含むペプチドをいう。
【0075】
用語「ARLDDL」は、RGD モチーフ変異体 48ARLDDL53を有するロドストミン変異体をいう。数「48」および「53」は、野生型ロドストミンのアミノ酸配列におけるこれらのアミノ酸の位置を指す。
【0076】
用語「HSA C34S」は、ヒト血清アルブミン (HSA) 変異体であって、野生型 HSA アミノ酸配列の位置 34におけるシステイン残基がセリンに置換されたものをいう。HSA C34Sは配列番号4を含む。
【0077】
用語「HSA C34A」は、HSA 変異体であって、野生型 HSA アミノ酸配列の位置 34 におけるシステイン残基がアラニンに置換されたものをいう。HSA C34Aは配列番号6を含む。
【0078】
用語「HSA(C34S)-ARLDDL」は以下を含む融合タンパク質をいう: a)ヒト血清アルブミン (HSA) 変異体であって、野生型 HSA アミノ酸配列の位置 34におけるシステイン残基がセリンに置換されたもの、b)配列番号8のリンカーアミノ酸配列、および c) RGD モチーフ変異体 48ARLDDL53を有するロドストミン変異体。
【0079】
HSA(C34S)-ARLDDLは配列番号9によって表される。
【0080】
用語「HSA(C34A)-ARLDDL」は以下を含む融合タンパク質をいう:a) ヒト血清アルブミン (HSA) 変異体であって、野生型 HSA アミノ酸配列の位置 34 におけるシステイン残基がアラニンに置換されたもの、b)配列番号8のリンカーアミノ酸配列、およびRGD モチーフ変異体 48ARLDDL53を有するロドストミン変異体。
【0081】
HSA(C34A)-ARLDDLは配列番号11によって表される。
【0082】
用語「αIIbβ3 および/または α5β1 受容体と比べてのインテグリン αvβ3に対する阻害選択性」は、αIIbβ3 および/または α5β1 受容体よりもインテグリン αvβ3に対するポリペプチドの結合選択性をいい、αIIbβ3 および/または α5β1 受容体の阻害についての変異体のIC50のαvβ3 受容体の阻害についてのものに対する比によって表される。
【0083】
用語「血液出血時間の延長における実質的に低下した活性」は、本明細書において記載される出血時間実験によって測定した場合に統計的に有意に血液凝固を阻害するポリペプチドの低下した能力をいう。
【0084】
用語「ペグ化-ARLDDL」または「ペグ-ARLDDL」は、ARLDDL タンパク質のペグ化産物をいう。
【0085】
用語「アルブミン-ARLDDL」または「HSA-ARLDDL」は、ARLDDL タンパク質のヒトアルブミン-接合産物をいう。
【0086】
発明の概要
選択的 αvβ3 ジスインテグリン変異体
米国特許出願第12/004,045号には、αvβ3 インテグリンに対して選択的であって、野生型ジスインテグリンと比較して低下したインテグリン αIIbβ3 および/または α5β1 受容体-遮断活性を示す様々なポリペプチドが記載されている。これらのポリペプチドは、改変アミノ酸配列をコードする改変ジスインテグリンヌクレオチド配列によってコードされる。その結果、実質的に低下した インテグリン αIIbβ3 および/または α5β1 受容体-遮断活性を有するポリペプチドが作られる。
【0087】
ジスインテグリン変異体、例えば、RD-関連化合物は、破骨細胞のインビトロでの分化を強力に阻害する。それらは、動物研究において、破骨細胞再吸収活性および破骨細胞形成における卵巣摘出-誘導性上昇もまた阻害する。さらに、RDは骨におけるヒト前立腺癌および乳癌細胞の腫瘍増殖も阻害する。悪性腫瘍誘導性高カルシウム血症もまた、RD-関連タンパク質によって効果的に阻止された。パジェット病 (変形性骨炎としても知られる)は、骨組織の不規則な分解および形成に起因する肥大した奇形の骨を典型的にはもたらす慢性骨障害である。ビスホスフォネートがパジェット病の処置のために認可されている。骨関節炎はまた破骨細胞活性の上昇にも関連する。類似の作用機序に基づき、RD 誘導体もまたこれら骨障害の処置のために有効であるはずである。30 mg/kgという非常に大用量でのRDまたはPGPの静脈内注射はマウス (n=3)の生存に影響を与えなかった。さらに、6 週間にわたるPGP (静脈内、0.5 mg/kg/日)の長期投与は、クレアチニン、GOT、およびGPTの血清レベルに影響を有さず、腎臓および肝臓に対して副作用がないことを示唆している。それゆえ、RDおよびその誘導体、特にARLDDLは、骨粗しょう症、骨腫瘍、悪性腫瘍誘導性高カルシウム血症、パジェット病、リウマチ性関節炎、骨関節炎および血管形成関連眼疾患の処置のための潜在的薬剤候補である。
【0088】
本発明者らは明示的に、ポリペプチドを含む、米国特許出願第12/004,045号における開示のすべてを引用により本明細書に含める。
【0089】
本発明は一般に、配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドに関し、ここでこれらのポリペプチドはヒト血清アルブミン (HSA)の変異体に接合しており、ここでHSA アミノ酸配列の位置 34におけるシステイン残基は、セリンにより置換されてHSA C34S 突然変異体タンパク質を作るか、またはアラニンにより置換されて HSA C34A 突然変異体タンパク質を作る。
【0090】
配列番号1は、RGD モチーフ変異体 48ARLDDL53を有するロドストミン変異体のアミノ酸配列を表す。
【0091】
配列番号2および配列番号3は、RGD モチーフ変異体 48ARLDDL53を有するロドストミン変異体をコードする可能なヌクレオチド配列の2つを表す。
【0092】
配列番号4は、HSA C34S 突然変異体タンパク質のアミノ酸配列を表す。
【0093】
配列番号5は、HSA C34S 変異体をコードするヌクレオチド配列を表す。
【0094】
配列番号6は、HSA C34A 突然変異体タンパク質のアミノ酸配列を表す。
【0095】
配列番号7は、HSA C34A 変異体をコードするヌクレオチド配列を表す。
【0096】
好ましい態様において、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチド、または該ポリペプチドの医薬上許容される塩を提供し、ここで該ポリペプチドは配列番号4または配列番号6のアミノ酸配列を含むHSAの変異体と接合しており、ここで該ポリペプチドはさらにリンカーアミノ酸配列を含む。
【0097】
好ましい態様において、リンカーアミノ酸配列は、グリシンおよびセリンアミノ酸の組合せを含む。
【0098】
別の好適な態様において、リンカーアミノ酸配列は、配列番号8のアミノ酸配列を含む。
【0099】
もっとも好適な態様において、本発明は、配列番号9のアミノ酸配列を含むポリペプチド、または該ポリペプチドの医薬上許容される塩に関する。
【0100】
配列番号9は、HSA(C34S)-ARLDDL 融合タンパク質のアミノ酸配列を表し、ここでARLDDL ロドストミン変異体が配列番号8のリンカーアミノ酸配列を介してHSA C34S 変異体に融合している。
【0101】
別の好適な態様において、本発明は、配列番号11のアミノ酸配列を含むポリペプチドに関する。
【0102】
配列番号11は、HSA(C34A)-ARLDDL 融合タンパク質のアミノ酸配列を表し、ここでARLDDL ロドストミン変異体が配列番号8のリンカーアミノ酸配列を介してHSA C34A 変異体に融合している。
【0103】
一つの態様において、本発明は、配列番号10のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドに関する。
【0104】
別の態様において、本発明のポリペプチドは、配列番号12のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる。
【0105】
遺伝暗号の縮重によって、配列番号10 および配列番号12のヌクレオチド配列を改変して本発明のポリペプチドをコードするその他のポリヌクレオチドを作成することは当該技術分野における技術範囲内である。それゆえ、その他のポリヌクレオチドによってコードされる本発明のポリペプチドもまた本発明に包含される。
【0106】
本発明のポリペプチドは一般に、αvβ3 インテグリンに対して高度に選択的であり、野生型ジスインテグリンと比較してαIIbβ3 および/または α5β1 インテグリンに対する低下した結合を示す。
【0107】
本発明のポリペプチドは一般に、ロドストミンと比較してαIIbβ3 および/または α5β1に対する親和性において少なくとも 約 5、50、または100-倍の低下を示す。
【0108】
別の態様において、本発明のポリペプチドは一般に、ロドストミンと比較してαIIbβ3 インテグリンに対する親和性において少なくとも 約 200-倍の低下を示し、より好ましくは、ロドストミンと比較してαIIbβ3 インテグリンに対する親和性において少なくとも 約 500-倍の低下を示す。
【0109】
本発明のポリペプチドは一般に、ロドストミンと比較してα5β1 インテグリンに対する親和性において少なくとも 約 20-倍の低下を示し、より好ましくは、ロドストミンと比較してα5β1 インテグリンに対する親和性において少なくとも 約70または90-倍の低下を示す。
【0110】
本発明のポリペプチドは一般に、ロドストミンと比較して血小板に対する親和性において少なくとも 約 5、50、100、または150-倍の低下を示す。
【0111】
本発明のさらに別の態様において、ポリペプチドは、ロドストミンおよび/または野生型ジスインテグリンと比較して、血液凝固時間の延長において実質的に低下した活性を示す。
【0112】
本発明のポリペプチド
本発明のポリペプチドは、当該技術分野において公知の方法を用いて作成および発現させることができる。細胞に基づく方法および無細胞方法が、本発明のポリペプチドの生産のために好適である。細胞に基づく方法は一般に、核酸コンストラクトを宿主細胞にインビトロで導入することおよび宿主細胞を発現に好適な条件下で培養すること、次いで、ペプチドを、培地または宿主細胞から(例えば、宿主細胞の破壊によって)、あるいは両方から収集することを伴う。本発明はまた、無細胞-インビトロ転写/翻訳方法を用いてペプチドを生産する方法も提供し、かかる方法は当該技術分野において周知である。
【0113】
好適な宿主細胞には原核または真核細胞が含まれ、例えば、細菌、酵母、真菌、植物、昆虫および哺乳類細胞が挙げられる。
【0114】
以下の実施例 1 は本発明による一つのポリペプチドである、HSA(C34S)-ARLDDLの構築および発現を記載する。
【0115】
典型的には、本発明のポリペプチドはそのままで発現させてもよいし、分泌シグナルおよび/または分泌リーダー配列を含んでいてもよい。本発明の分泌リーダー配列は、特定のタンパク質を小胞体 (ER)へと向かわせることができる。ER は膜結合タンパク質をその他のタンパク質から分離する。いったん ERへ局在化されると、タンパク質はさらに、分泌小胞、原形質膜、リソソームおよびその他のオルガネラを含む小胞への分配のためにゴルジ体へと向かわされうる。
【0116】
さらに、ペプチド部分および/または精製タグを変異体 HSA に加えて本発明のポリペプチドに付加してもよい。これらのペプチド部分および/または精製タグは、ポリペプチドの最終的調製の前に除去されうる。好適な精製タグとしては、例えば、V5、ポリヒスチジン、アビジンおよびビオチンが挙げられる。ペプチドの、化合物、例えば、ビオチンとの接合(conjugation)は、当該技術分野において周知の技術を用いて達成することができる (Hermanson ed. (1996) Bioconjugate Techniques; Academic Press)。本発明のポリペプチドはまた、当該技術分野において公知の技術を用いて、放射性同位体、毒素、酵素、蛍光標識、コロイド金、核酸、ビノレルビンおよびドキソルビシンと接合されうる (Hermanson ed. (1996) Bioconjugate Techniques; Academic Press; Stefano et al. (2006))。
【0117】
本発明の突然変異体 HSA-ジスインテグリン融合タンパク質がさらにその他のタンパク質と融合された融合タンパク質を作ることも可能であろう。かかる使用に好適な融合パートナーとしては、例えば、フェチュイン、Fc および/または1以上のそれらの断片が挙げられる。ポリエチレングリコールと本発明の融合タンパク質との接合体も提供される。
【0118】
本発明のポリペプチドはまた、当該技術分野において公知の技術を用いて化学合成することもできる (例えば、Hunkapiller et al., Nature, 310:105 111 (1984); Grant ed. (1992) Synthetic Peptides, A Users Guide, W.H. Freeman and Co.; 米国特許第6,974,884号参照)。例えば、ポリペプチドの断片に対応するポリペプチドは、ペプチド合成機の使用により、または、当該技術分野において公知の固相方法の使用を介して、合成することができる。
【0119】
さらに、所望の場合、非古典的アミノ酸または化学的アミノ酸類似体を、置換または付加としてポリペプチド配列へと導入してもよい。非古典的アミノ酸としては、これらに限定されないが、一般的アミノ酸のD-異性体、2,4-ジアミノ酪酸、a-アミノイソ酪酸、4-アミノ酪酸、Abu、2-アミノ酪酸、g-Abu、e-Ahx、6-アミノヘキサン酸、Aib、2-アミノイソ酪酸、3-アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、b-アラニン、フルオロ-アミノ酸、設計(designer)アミノ酸、例えば、b-メチルアミノ酸、Ca-メチルアミノ酸、Na-メチルアミノ酸、およびアミノ酸類似体が一般的に挙げられる。さらに、アミノ酸はD (右旋性)であってもL (左旋性)であってもよい。
【0120】
本発明のポリペプチドは、標準的方法によって化学合成および組換え細胞培養物から回収および精製することができ、標準的方法としては、これらに限定されないが、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーが挙げられる。一つの態様において、高性能液体クロマトグラフィー (「HPLC」)が精製のために用いられる。ポリペプチドが単離および/または精製の際に変性している場合は、タンパク質を再フォールディングするための周知の技術を用いて活性なコンフォメーションを再生することができる。
【0121】
本発明のポリペプチドまたはペプチド模倣薬はさらに、ポリペプチドの溶解度および循環半減期を高めるために、様々な親水性ポリマーの1以上により改変してもよく、またはそれらと共有結合させてもよい。ペプチドとの結合のために好適な非タンパク性親水性ポリマーとしては、これらに限定されないが、ポリアルキルエーテル、例えば、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリオキシアルケン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロースおよびセルロース誘導体、デキストラン、およびデキストラン誘導体が挙げられる。一般に、かかる親水性ポリマーは、約 500 〜 約 100,000 ダルトン、約 2,000 〜 約 40,000 ダルトン、または約 5,000 〜 約 20,000 ダルトンの範囲の平均分子量を有する。ペプチドは、Zallipsky、S. (1995) Bioconjugate Chem.、6:150-165; Monfardini、C.、et al. (1995) Bioconjugate Chem. 6:62-69; 米国特許第 4,640,835; 4,496,689; 4,301,144; 4,670,417; 4,791,192; 4,179,337号、または WO 95/34326に示す方法のいずれかを用いてかかるポリマーによって誘導体化することができるし、あるいはかかるポリマーに結合させることができる。
【0122】
本発明のポリペプチドは、天然および非天然アミノ酸を含みうる。ポリペプチドは特別の性質を与えるために、D-アミノ酸、D- およびL-アミノ酸の組合せ、および様々な「設計(designer)」または「合成」アミノ酸(例えば、β-メチルアミノ酸、Cα-メチルアミノ酸、およびNα-メチルアミノ酸等)を含みうる。さらに、ポリペプチドは環状であってもよい。ポリペプチドはあらゆる既知の非古典的アミノ酸を含みうる。さらに、アミノ酸類似体およびペプチド模倣薬を、特別の二次構造を誘導するか、特別の二次構造に有利に働くように、ポリペプチドに組み込んでもよく、特別の二次構造としては、例えば、これらに限定されないが、LL-Acp (LL-3-アミノ-2-プロペニドン-6-カルボン酸)、β-ターン誘導性ジペプチド類似体; β-シート誘導性類似体; β-ターン誘導性類似体; α-ヘリックス誘導性類似体; γ-ターン誘導性類似体; Gly-Ala ターン類似体; アミド結合アイソスター(isostere) ;またはトレトラゾル(tretrazol)等が挙げられる。
【0123】
さらに、デスアミノまたはデスカルボキシ残基を、プロテアーゼに対する感受性を低めるために、またはコンフォメーションを制限するために、ポリペプチドの末端に組み込んでもよい。
【0124】
一つの態様において、本発明のポリペプチドのC-末端官能基には、アミド、アミド低級アルキル、アミドジ-低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ、カルボキシ、それらの低級エステル誘導体、およびそれらの医薬上許容される塩が含まれる。
【0125】
医薬組成物
別の態様において、本発明は、本発明のポリペプチド、またはその医薬上許容される塩、および医薬上許容される担体を含む生理的に許容される組成物に関する。
【0126】
好ましい態様において、本発明は、配列番号9のアミノ酸配列を含むポリペプチド、または該ポリペプチドの医薬上許容される塩、および医薬上許容される担体を含む生理的に許容される組成物に関する。
【0127】
別の好適な態様において、本発明は、配列番号10のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、または該ポリペプチドの医薬上許容される塩、および医薬上許容される担体を含む生理的に許容される組成物に関する。
【0128】
本発明の医薬組成物は、当該技術分野において公知の医薬上許容される担体、賦形剤および希釈剤との製剤として提供されうる。これらの医薬用の担体、賦形剤および希釈剤としては、USP 医薬賦形剤リストに列挙されているものが挙げられる(USP and NF Excipients, Listed by Categories, p. 2404-2406, USP 24 NF 19, United States Pharmacopeial Convention Inc., Rockville, Md. (ISBN 1-889788-03-1))。医薬上許容される賦形剤、例えば、媒体、補助剤、担体または希釈剤は容易に公に入手できる。さらに、医薬上許容される補助物質、例えば、pH 調整剤および緩衝剤、浸透圧調整剤、安定化剤、湿潤剤等は容易に公に入手できる。
【0129】
好適な担体としては、これらに限定されないが、水、デキストロース、グリセロール、生理食塩水、エタノール、およびそれらの組み合わせが挙げられる。担体は、さらなる剤、例えば、湿潤または乳化剤、pH 緩衝剤、または製剤の有効性を高める補助剤を含んでいてもよい。局所用担体としては、石油、パルミチン酸イソプロピル、ポリエチレングリコール、エタノール (95%)、水中のポリオキシエチレンモノラウレート (5%)、または水中のラウリル硫酸ナトリウム (5%)が挙げられる。その他の物質、例えば、抗酸化剤、保湿剤、粘度安定化剤、および類似の剤が必要な場合添加されうる。経皮浸透促進剤、例えば Azoneも含めてもよい。
【0130】
本発明のポリペプチドはそれらを水性または非水性溶媒、例えば、植物油またはその他の類似の油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸のエステルまたはプロピレングリコールに、所望の場合、常套の添加剤、例えば、可溶化剤、等張剤、懸濁剤、乳化剤、安定化剤および保存料とともに、溶解、懸濁または乳化させることによって注射のための調製物へと製剤できる。その他の経口または非経口送達のための製剤も、当該技術分野において常套的なように用いることができる。
【0131】
本発明の医薬組成物は、固体、半固体、液体またはガス状形態における調製物、例えば、錠剤、カプセル、散剤、顆粒、軟膏、溶液、坐薬、注射剤、吸入剤およびエアロゾルへと製剤することができる。
【0132】
医薬用量形態において、本発明の組成物はその医薬上許容される塩の形態において投与してもよいし、単独で用いてもよいし、その他の医薬上活性な化合物を適宜ともなってあるいは組み合わせて用いてもよい。対象である組成物は、可能性のある投与様式に応じて製剤される。
【0133】
処置方法
別の態様において、本発明は、それを必要とする哺乳類に治療上有効量の配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは該ポリペプチドの医薬上許容される塩を投与することを含むαvβ3 インテグリン関連疾患の治療および/または予防のための方法に関し、ここで、該ポリペプチドは、配列番号4または配列番号6のアミノ酸配列を含むHSAの変異体と接合している。
【0134】
好ましい態様において、本発明は、それを必要とする哺乳類に治療上有効量の、配列番号9のアミノ酸配列を含むポリペプチド、または該ポリペプチドの医薬上許容される塩を投与することを含む、αvβ3 インテグリン関連疾患の治療および/または予防のための方法に関する。
【0135】
別の好適な態様において、本発明は、それを必要とする哺乳類に治療上有効量の、配列番号10のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、または該ポリペプチドの医薬上許容される塩を投与することを含む、αvβ3 インテグリン関連疾患の治療および/または予防のための方法に関する。
【0136】
αvβ3 インテグリン関連疾患としては、これらに限定されないが、骨粗しょう症、骨腫瘍または癌増殖およびそれに関連する症状、血管新生関連腫瘍増殖および転移、骨における腫瘍転移、悪性腫瘍誘導性高カルシウム血症、多発性骨髄腫、パジェット病、卵巣摘出-誘導性生理的変化、リウマチ性関節炎、骨関節炎および血管形成関連眼疾患、例えば、これらに限定されないが、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、角膜新血管新生疾患、虚血誘導性新血管形成網膜症、高度近視および未熟児網膜症が挙げられる。
【0137】
骨粗しょう症は、閉経後エストロゲン欠乏、二次性骨粗しょう症、関節リウマチ、卵巣摘出、パジェット病、骨癌、骨腫瘍、骨関節炎、上昇した破骨細胞形成および上昇した破骨細胞活性から選択される病状に伴いうる。さらに、骨粗しょう症としては、これらに限定されないが、卵巣摘出-誘導性または閉経後骨粗しょう症、生理的変化または骨欠損が挙げられる。
【0138】
別の態様において、本発明は、それを必要とする哺乳類における骨またはその他の臓器における腫瘍細胞増殖およびそれに関連する症状の阻害および/または予防のために本発明のポリペプチドを使用する方法に関する。
【0139】
骨における腫瘍細胞増殖に関連する病状としては、上昇した破骨細胞活性、上昇した骨吸収、骨病変、高カルシウム血症、体重低下、およびそれらのあらゆる組合せが挙げられる。骨における腫瘍細胞増殖としては、骨癌細胞および前立腺癌、乳癌、肺癌、腎臓癌、卵巣癌、膵臓癌または骨髄腫癌に由来する転移した癌細胞が挙げられる。
【0140】
本発明のポリペプチドは、注射による処置を必要とする対象に、例えば、静脈内注射により全身的に投与することができ;または関連部位への注射または適用により、例えば、部位が外科手術において曝露されている場合の該部位への直接注射または直接適用により; あるいは局所適用により投与することができる。
【0141】
本発明のポリペプチドは単剤療法として用いることができる。あるいは、本発明のポリペプチドは、αvβ3 インテグリン関連疾患を処置するためにその他の活性薬剤と組み合わせて用いることができる。
【0142】
別の態様において、αvβ3 インテグリン関連疾患の治療および/または予防の方法は、それを必要とする哺乳類に治療上有効量の、配列番号9のアミノ酸配列を含むポリペプチド、または該ポリペプチドの医薬上許容される塩を、治療上有効量のその他の活性薬剤と組み合わせて投与することを含む。その他の活性薬剤は、本発明のポリペプチドの投与の前、最中または後に投与することができる。
【0143】
好ましい態様において、その他の活性薬剤は、 VEGF アンタゴニスト、抗炎症薬、ビスホスフォネートおよび細胞毒性薬からなる群から選択される。
【0144】
活性薬剤の投与は様々な方法にて達成することができ、例えば、経口、口腔、経鼻、直腸、非経口、腹腔内、皮内、経皮、皮下、静脈内、動脈内、心腔内、脳室内、頭蓋内、気管内、および髄腔内投与、筋肉内注射、硝子体内注射、局所適用、例えば、これらに限定されないが、点眼剤、クリーム、および乳液、移植および吸入剤が挙げられる。
【0145】
ポリペプチドの製造方法
別の態様において、本発明は、以下を含む本発明のポリペプチドの製造方法に関する:(a)本発明のポリペプチドをコードする遺伝子を構築する工程; (b)工程 (a)の遺伝子を宿主細胞にトランスフェクトする工程; (c)該宿主細胞を培地において成育させる工程;および (d)該ポリペプチドを単離する工程。
【0146】
好ましい態様において、本発明は、以下を含む、配列番号9のアミノ酸配列を含むポリペプチドの製造方法に関する: (a) 該ポリペプチドをコードする遺伝子を構築する工程; (b)工程 (a)の遺伝子を宿主細胞にトランスフェクトする工程; (c)該宿主細胞を培地において成育させる工程; および (d)該ポリペプチドを単離する工程。
【0147】
本発明のポリペプチドを製造する方法はさらに、アミノ酸を含まない培地において宿主細胞を成育させる工程;および上清を収集して該ポリペプチドを得る工程を含みうる。
【0148】
これらの方法はさらに、宿主細胞におけるポリペプチド発現を誘導するために培地にメタノールを添加する工程を含んでいてもよい。
【0149】
該方法はさらに、カラムクロマトグラフィーを行って該ポリペプチドを得る工程を含んでいてもよい。
【0150】
一つの態様において、該方法はさらに、高性能液体クロマトグラフィー (HPLC)を行って単離ポリペプチドを得る工程を含んでいてもよい。
【0151】
本発明を以下の実施例においてより具体的に記載するが、それは単に例示の目的であり、そのなかでの多くの改変および変更が当業者に明らかであろう。
【実施例】
【0152】
ヒト 組換え RANKLおよびM-CSFはR&D Systems (Minneapolis、MN)から購入した。I型コラーゲン ELISA キットのC-末端テロペプチドは、Cross Laps (Herlev、Denmark)から得た。すべてのその他の化学物質はSigmaから得た。
【0153】
実施例 1
HSA(C34S)-ARLDDLをコードする遺伝子の構築
実施例 1A
オーバーラップ伸長(Overlap Extension) PCRおよびライゲーションを介するHSA(C34S)-ARLDDLをコードする遺伝子の構築
HSA C34Sの構造遺伝子を、鋳型としてHSA (Invitrogen(登録商標)、クローン ID: IOH23065)を用いて構築した。C34Sの突然変異は、2ステップポリメラーゼ連鎖反応 (PCR)により作った。第一のPCRは、C34S 突然変異部位を含むセンスプライマーおよびKpn I、Sac II 制限部位およびTAA 終止コドンを含むアンチセンスプライマーを用いて増幅した。第二のPCRは、BstB I 制限部位および分泌シグナル配列を含むセンスプライマーおよびKpn I、Sac II 制限部位およびTAA 終止コドンを含むアンチセンスプライマーを用いて増幅した。HSA プレプロペプチドの分泌シグナル配列、Saccharomyces cerevisiaeからのα 因子プレプロペプチドまたは、プレHSAおよびプロα因子融合ペプチドを分泌タンパク質発現のために用いた。ARLDDLの構造遺伝子は、Kpn I 制限部位およびGS 配列を含むスペーサー領域を含むセンスプライマーおよびSac II 制限部位およびTAA 終止コドンを含むアンチセンスプライマーを用いてPCRにより増幅した。分泌シグナルペプチドを有するHSA C34Sおよびスペーサー領域を有するRho ARLDDL 突然変異体のPCR産物を、Kpn I 制限酵素を用いて消化し、次いでライゲーションした。その結果得られた遺伝子産物を酵母組換えベクターのBstB IおよびSac II 部位にクローニングした。組換えプラスミドを次いで大腸菌 XL1-blue 株に形質転換し、コロニーを、低塩 LB (1% トリプトン、0.5% イーストエクストラクト、0.5% NaCl、1.5% 寒天、pH 7.0) および25 μg/mlの抗生物質ゼオシンを有する寒天プレートを用いて選択した。大腸菌 XL1-blue コロニーをピックアップし、プラスミド DNAを単離し配列決定した。
【0154】
実施例 1B
遺伝子合成を介するHSA(C34S)-ARLDDLをコードする遺伝子の構築
分泌シグナル配列 HSA(C34S)-ARLDDLをコードするDNAを合成した。 HSA プレプロペプチドの分泌シグナル配列、Saccharomyces cerevisiaeからのα 因子プレプロペプチド、または、プレHSA およびプロα 因子融合ペプチドを分泌タンパク質発現のために用いた。結果として得られた遺伝子産物を適切な制限部位を用いて酵母組換えベクターにクローニングした。組換えプラスミドを次いで大腸菌 XL1-blue 株に形質転換し、コロニーを、低塩 LB (1% トリプトン、0.5% イーストエクストラクト、0.5% NaCl、1.5% 寒天、pH 7.0)および25 μg/mlの抗生物質ゼオシンを有する寒天プレートを用いて選択した。大腸菌 XL1-blue コロニーをピックアップし、プラスミド DNAを単離し配列決定した。
【0155】
実施例 2
P. Pastoris におけるHSA(C34S)-ARLDDLのタンパク質発現および精製ならびにHSA(C34S)-ARLDDLの特徴決定
クローンを確認した後、全部で10 μgのプラスミドを適切な制限酵素部位で消化してプラスミドを直鎖化した。Pichia 宿主株を、Invitrogen(登録商標)からのPichia EasyComp(商標)キットを用いる熱ショック方法、またはエレクトロポーレーションによって、直鎖化したコンストラクトにより形質転換した。形質転換体は5’AOX1 遺伝子座に1回の交叉(single crossover)により組み込まれた。PCRを用いて Pichia 組込み体(integrant)を分析して、HSA(C34S)-ARLDDL 遺伝子が Pichia ゲノムに組み込まれているかを判定した。コロニーを、YPD (1% イーストエクストラクト、2% ペプトン、2% グルコース、および2% 寒天)および100μg/ml ゼオシンを含む寒天プレート上で選択した。複数コピー数の HSA(C34S)-ARLDDL 遺伝子挿入を有する多数のクローンを選択して最も高いタンパク質発現を示すクローンをピックアップした。その結果得られた組換え HSA(C34S)-ARLDDLは、HSAの585 アミノ酸、17 アミノ酸残基を含むスペーサー、およびロドストミン ARLDDL 突然変異体の68 アミノ酸を含んでいた。
【0156】
結果として得られた組換え HSA(C34S)-ARLDDL 融合タンパク質をさらにHPLC (逆相 C18 HPLC)により精製した。
【0157】
HSA-ARLDDL および HSA(C34S)-ARLDDL のHPLC プロファイルを、それぞれ図1Aおよび1Bに示す。
【0158】
精製した組換え HSA(C34S)-ARLDDLをさらにゲルろ過クロマトグラフィー (サイズ排除クロマトグラフィー (SEC)とも称される)により分析し、タンパク質をサイズによって分離した。
【0159】
HSA-ARLDDL および HSA(C34S)-ARLDDLのSEC プロファイルをそれぞれ図1C および1Dに示す。分析は HSA-ARLDDLにおける位置 34での C からSへの突然変異は凝集体の形成において約5-倍の低下をもたらしたことを示した。
【0160】
表 1 は、HSA(C34S)-ARLDDLについてのタンパク質凝集体の減少を示す。
表 1
HSA(C34S)-ARLDDLにおけるタンパク質凝集体の低下
【表1】

【0161】
図1Eおよび1Fは、それぞれHSA-ARLDDLおよびHSA(C34S)-ARLDDLのSDS-PAGE プロファイルの写真を示す。
【0162】
レーン 1は分子量マーカーを含む;
【0163】
レーン 2はメタノール誘導を含む;
【0164】
レーン 3はブルーセファロースクロマトグラフィーによって精製されたHSA-ARLDDLまたはHSA(C34S)-ARLDDLを含む;
【0165】
レーン 4は逆相 HPLC カラムによって精製されたHSA-ARLDDLまたはHSA(C34S)-ARLDDLを含む;
【0166】
レーン 5は市販の BSAを含む;
【0167】
レーン 6は2Meを有するブルーセファロースクロマトグラフィーによって精製されたHSA-ARLDDL または HSA(C34S)-ARLDDLを含む; そして、
【0168】
レーン 7は2Meを有する逆相 HPLC カラムによって精製されたHSA-ARLDDLまたはHSA(C34S)-ARLDDLを含む。
【0169】
写真は、HSA(C34S)-ARLDDLがHSA-ARLDDLよりも少ない二量体 (赤矢印によって表される)を有することを示す。
【0170】
HSA(C34S)-ARLDDL、HSA-ARLDDLおよびヒト血清アルブミン (HSA)を2D SDS-PAGEによっても分析した。HSA(C34S)-ARLDDL、HSA-ARLDDL および HSAの2D SDS-PAGEを図1Gに示す。
【0171】
分析は、HSAと同様に、Pichia Pastorisから生産された組換え HSA(C34S)-ARLDDL およびHSA-ARLDDLが等電点電気泳動法次元において少なくとも5つのアイソフォームを示したことを示す。
【0172】
HSA(C34S)-ARLDDL およびウシ血清アルブミン (BSA)を、核磁気共鳴 (NMR)分光学によって分析した。図1Hは、HSA(C34S)-ARLDDL および BSAのNMR スペクトルを示す。分析は、HSA(C34S)-ARLDDLのフォールディングがBSAのものと類似していたことを示した。矢印は、リンカー領域 (G4S)5からのHα プロトンシグナルを示す。
【0173】
実施例 3
細胞接着阻害アッセイ
インテグリンαvβ3、α5β1、および αIIbβ3に対する阻害効果
【0174】
細胞接着阻害アッセイを米国特許出願第12/004,045号に記載のようにして行った。簡単に説明すると、96-ウェル Immulon-2 マイクロタイタープレート (Costar、Corning、USA)のウェルを50-500 nMの濃度にて基質を含む100 μlのリン酸緩衝生理食塩水 (PBS: 10 mM リン酸バッファー、0.15M NaCl、pH 7.4)で被覆し、一晩4 ℃でインキュベートした。基質およびその被覆濃度は、フィブリノゲン (Fg) 200 μg/ml、ビトロネクチン (Vn) 50 μg/ml、およびフィブロネクチン (Fn) 25 μg/mlであった。非特異的タンパク質結合部位を各ウェルを200 μlの熱変性させた1% ウシ血清アルブミン (BSA、Calbiochem)とともに室温 (25℃) で1.5時間インキュベートすることによりブロッキングした。熱変性させた BSAを棄て、各ウェルを 200 μlのPBSで2回洗浄した。
【0175】
αvβ3 (CHO-αvβ3) およびαIIbβ3 (CHO-αIIbβ3) インテグリンを発現するチャイニーズハムスター卵巣 (CHO) 細胞を100 μlのダルベッコ変法イーグル培地 (DMEM)中に維持した。インテグリンαvβ3 (CHO-αvβ3)およびαIIbβ3 (CHO-αIIbβ3)を発現するチャイニーズハムスター卵巣 (CHO) 細胞はDr. Y. Takada (Scripps Research Institute)から提供を受けた。ヒト赤白血病 K562 細胞をATCCから購入し、 5% 胎児ウシ血清を含むRPMI-1640 培地にて培養した。対数期中の成育しているCHOおよびK562 細胞をトリプシン処理により剥がし、それぞれ3 x 105 および2.5 x 105 細胞/mlにてアッセイに用いた。ARLDDL、ペグ化-ARLDDL、HSA-ARLDDL、およびHSA(C34S)-ARLDDLを培養細胞に添加し、37℃、5% CO2で15 分間インキュベートした。Rhoおよびその変異体を0.001-500 μMの濃度にて阻害剤として用いた。処理した細胞を次いで被覆したプレートに添加し、37℃、5% CO2で1時間反応させた。インキュベーション溶液を次いで棄て、非接着細胞を200 μl PBSで2回洗浄することにより除いた。結合した細胞をクリスタルバイオレット染色により定量した。簡単に説明すると、ウェルを100 μlの10% ホルマリンで10 分間固定し、乾燥させた。50μlの0.05% クリスタルバイオレットを次いで室温で20 分間ウェルに添加した。各ウェルを200 μlの蒸留水で4回洗浄し、乾燥させた。カラー化を150 μlのカラー化溶液 (50% アルコールおよび0.1% 酢酸)を添加することにより行った。その結果得られた吸光度を600 nmで読み、読み取り値を接着細胞の数について補正した。阻害は以下として定義した:% 阻害 = 100 - [OD600 (ロドストミン変異体-処理サンプル)/ OD600 (非処理サンプル)] × 100。
【0176】
血小板凝集に対する阻害効果
ARLDDLおよび融合タンパク質の血小板凝集に対する阻害効果の判定を米国特許出願第12/004,045号に記載のようにして行った。
【0177】
簡単に説明すると、薬物治療を少なくとも2週間まったく受けていない健康ドナーからの静脈血 (9 部) サンプルを3.8 % クエン酸ナトリウム (1 部)中に収集した。血液サンプルを150 x gで10分間遠心分離して血小板に富む血漿 (PRP)を得、5分間静置させ、PRP を回収した。血小板の少ない血漿 (PPP) を2000x g で25分間の遠心分離により残りの血液から調製した。PPPの血小板数は血液分析器で測定し、250,000 血小板/μlに希釈した。190 μlの PRPと10 μlのRho または PBS バッファーのいずれかとの溶液をHema Tracer 601 血小板凝集計中で5分間37℃でインキュベートした。10μlの 200 μM アデノシン二リン酸 (ADP)をさらに添加して、光透過率により血小板凝集の応答をモニターした。IC50が低ければ低いほど、変異体の特異性または強度が高い。
【0178】
結果
表 2は、インテグリンαvβ3、α5β1、および αIIbβ3および血小板凝集に対するHSA(C34S)-ARLDDLおよびその他の試験したタンパク質の阻害効果を示す。
【0179】
表 2
HSA(C34S)-ARLDDLおよびその他のタンパク質による血小板凝集および細胞接着の阻害
【表2】

【0180】
表 2が示すように、HSA-ARLDDL コンストラクトにおけるC34S 改変は、インテグリン αIIbβ3 または α5β1のマトリックスタンパク質への結合の阻害における活性に対して実質的に効果を有さなかった。しかしながら、インテグリン αvβ3に対する選択性は配列改変の結果として上昇した (IC50が 38 対 53)。
【0181】
実施例 4
破骨細胞形成に対するHSA(C34S)-ARLDDLの効果
破骨細胞は骨髄造血前駆細胞から分化する特化した単球/マクロファージファミリーのメンバーである。破骨細胞前駆細胞のM-CSF (20 ng/ml) および sRANKL (50 ng/ml)の存在下での8 日間の培養は、多核の大きな成熟破骨細胞の形成を誘導し、それらは成熟表現型マーカー、例えば、TRAPの獲得により特徴づけられた。骨髄の培養造血細胞からの破骨細胞形成の方法およびHSA(C34S)-ARLDDL および関連タンパク質の破骨細胞形成に対する効果を以下のようにして調べた。
【0182】
骨髄細胞を、6〜8-週齡 SDラットからの大腿骨の除去および骨髄腔に20 mM HEPESおよび10% 熱不活性化 FCS、2 mM-グルタミン、ペニシリン (100 U/ml)およびストレプトマイシン (100 μg/ml)を追加した a-MEMを流し込むことにより調製した。非接着細胞 (造血細胞)を収集し、24時間後に破骨細胞前駆細胞として用いた。細胞をヒト組換え可溶性 RANKL (50 ng/ml)およびマウス M-CSF (20 ng/ml)の存在下で24-ウェルプレート中で1×106 細胞/ウェル (0.5 ml)にて播種した。培地を3 日毎に交換した。破骨細胞形成を8日目に酒石酸塩耐性酸ホスファターゼ (TRAP) のアッセイにより確認した。簡単に説明すると、接着細胞をリン酸緩衝生理食塩水中の10% ホルムアルデヒドで 3分間固定した。エタノール/アセトン (50:50 v/v)での 1分間の処理後、細胞表面を風乾し、0.01% ナフトール AS-MX ホスファート (Sigma) および 0.03%ファーストレッドバイオレット(fast red violet) LB 塩 (Sigma)を含む酢酸バッファー (0.1 M 酢酸ナトリウム、pH 5.0) 中で50 mM 酒石酸ナトリウムの存在下で室温で10分間インキュベートした。各ウェルにおける破骨細胞-様 TRAP-陽性細胞を、TRAP-陽性であり、かつ4以上の核を含む多核細胞の数を数えることによりスコアづけした。
【0183】
HSA(C34S)-ARLDDLおよびHSA-ARLDDLは、破骨細胞の分化を顕著に阻害した。
【0184】
図9Aは対照である。それはいずれのポリペプチドによっても処理されなかった細胞における破骨細胞を示す。
【0185】
図9Bは10 nMの HSA(C34S)-ARLDDLで処理された細胞を示す。
【0186】
図9Cは 30 nMのHSA(C34S)-ARLDDLで処理された細胞を示す。
【0187】
図10Aはアレンドロネートの濃度が上昇した場合に破骨細胞の数が減少することを示すグラフである。アレンドロネートについてのIC50 は1.9 μMであると判定された。
【0188】
図10Bは HSA-ARLDDLの濃度が上昇すると破骨細胞の数が減少することを示すグラフである。HSA-ARLDDL についてのIC50は11.7 nMであると判定された。
【0189】
図10CはHSA(C34S)-ARLDDLの濃度が上昇すると破骨細胞の数が減少することを示すグラフである。 HSA(C34S)-ARLDDLについてのIC50は6.7 nMであると判定された。
【0190】
この実験が示すように、 HSA(C34S)-ARLDDLと HSA-ARLDDLとはともに、破骨細胞の数の低下においてアレンドロネートよりも有意に有効であった。
【0191】
実施例 5
未熟児網膜症のマウスモデルにおけるHSA-ARLDDL および HSA(C34S)-ARLDDLによる血管形成の阻害
マウスにおける未熟児網膜症の動物モデルを、Wilkinson-Berka et al. (Wilkinson-Berka, J.L., Alousis, N.S., Kelly D.J., et al (2003) COX-2 inhibition and retinal angiogenesis in a mouse model of retinopathy of prematurity. Invest Ophthalmol Vis Sci 44: 974-979.28)に記載されているようにして低酸素誘発性血管形成を用いることによって作成した。簡単に説明すると、7日齢の子マウスおよびそれらの母親を75% O2 および空気を含む密閉チャンバーにて飼育した。マウスはチャンバー内に5日間残り(高酸素期間、P7〜P12)、次いで室内空気中でさらに7日間飼育された (低酸素誘発性血管形成期間、生後 12 日〜生後 19 日、即ちP12〜P19)。様々な量のHSA-ARLDDL または HSA(C34S)-ARLDDLを硝子体内経路を介して12日目に投与し、マウスを19日目に屠殺した。
【0192】
各動物の眼の一方から3つの切片を作成し、脱パラフィン処理し、ヘマトキシリン・エオシンで染色した。血管プロファイル(BVP)を内網膜にて計数し、内境界膜に接着した血管も含めた。計数は 100xの倍率にて顕微鏡写真機 (Leica)で行った。
【0193】
図11Aに示されるように、HSA-ARLDDLは、未熟児網膜症 (ROP)のマウスモデルにおいて血管形成を阻害した。0.001、0.1 および 10 pg/眼の用量のHSA-ARLDDLは網膜切片当たりの血管数を正常生理食塩水処理群と比較して減少させた。データは平均±SEとして表す。0.001 pg/眼のHSA-ARLDDLを投与された群を例外として、p は0.001未満であった。
【0194】
内皮細胞を神経節細胞層の前部においておよび網膜の内境界膜上で同じ実体に対して見えない状態にされたヒトによって計数した。結果を図11Bに示す。
【0195】
結果は0.001 pg、0.1 pgおよび10 pg/眼のHSA-ARLDDLが正常生理食塩水処理群と比較して網膜切片当たりの内皮細胞数を減少させたことを示す。
【0196】
図11Cに示すように、HSA(C34S)-ARLDDLはまた、未熟児網膜症 (ROP)のマウスモデルにおける血管形成を阻害した。0.1、10 および 1000 pg/眼の用量のHSA(C34S)-ARLDDLは網膜切片当たりの血管数を正常生理食塩水処理群と比較して減少させた。データは平均±SEとして表す。すべての場合において、pは0.001未満であった。
【0197】
内皮細胞を神経節細胞層の前部においておよび網膜の内境界膜上で同じ実体に対して見えない状態にされたヒトによって計数した。結果を図11Dに示す。
【0198】
結果は、0.1 pg、10 pg および 1000 pg/眼のHSA(C34S)-ARLDDL が正常生理食塩水処理群と比較して網膜切片当たりの内皮細胞数を減少させたことを示す。
【0199】
図11E、11F および11Gは、酸素誘導性網膜症のマウスモデルにおける血管形成を示す写真である。図11Eは酸素正常状態 (対照群)を示し、図11Fは酸素誘導性網膜症マウスにおける血管形成を示し、図11Gは10 pgのHSA(C34S)-ARLDDLで処理された酸素誘導性網膜症マウスにおける血管形成の低減を示す。
【0200】
実験の結果は、HSA(C34S)-ARLDDL は酸素誘導性網膜症マウスにおける血管形成を阻害することを示す。
【0201】
実施例 6
HSA(C34S)-ARLDDLによる腫瘍増殖の阻害
ヒト PC-3 (前立腺癌) 細胞を非肥満糖尿病重症複合免疫不全症 (NOD-SCID) マウスに以下のように埋め込んだ。各マウスに右脇腹の皮下に1 x 107 細胞を注射した。腫瘍を2日毎にモニターした。研究の27日目に、動物を2群に分けた。1つの群は生理食塩水で処理し、もう1つの群はHSA(C34S)-ARLDDL (20 mg/kg、静脈内、週に2回)で処理した。
【0202】
mm3における腫瘍サイズを以下のように計算した:
腫瘍体積 = w2 x l/2、式中、wは腫瘍の幅 (mm)であり、lは腫瘍の長さ(mm)である。
【0203】
腫瘍重量は1 mgは1 mm3 の腫瘍体積に匹敵するという仮定に基づいて評価した。
【0204】
図12Aは、ヒト PC-3 細胞を注射された2匹のマウスの写真を示す対照である。図12Bは、ヒト PC-3 細胞を注射され、HSA(C34S)-ARLDDL (20 mg/kg、静脈内、週に2回)で処理された2匹のマウスの写真である。
【0205】
図12Cは、対照マウスから切り出した腫瘍の写真であり、図12Dは、HSA(C34S)-ARLDDLで処理されたマウスから切り出した腫瘍の写真である。
【0206】
図13は、 HSA(C34S)-ARLDDLは、腫瘍サイズにより測定した場合にこのタンパク質で処理されたマウスにおける腫瘍の成長を有意に阻害したことを示すグラフである。グラフ上の矢印は、 HSA(C34S)-ARLDDLの注射を示す。
【0207】
実施例 7
マトリゲル(商標) プラグ抗-血管形成アッセイ
HSA(C34S)-ARLDDLが血管形成を阻害することができるかどうかを調べるために、マトリゲル(商標) プラグ血管形成アッセイを米国特許出願公開2008-0188413 A1号に記載されているようにして用いた。簡単に説明すると、200ng/ml VEGFを含むマトリゲル(商標) (Becton Dickinson Lab.)のアリコート (500μl)を、6-8 週齡 C57BL/6 マウスの背面領域に皮下注射した。マトリゲル(商標)は迅速にプラグを形成した。10 mg/kg または1 mg/kg のHSA(C34S)-ARLDDLを2日目に1回静脈内投与し、マウスを7日目に屠殺した。図14Aはプラグの写真を示す。
【0208】
新血管を、Drabkin 方法および Drabkin 試薬キット 525 (Sigma)により血管形成の指標として、プラグのヘモグロビンを測定することにより定量した(図14B)。
【0209】
図14Aおよび14Bに示すように、HSA(C34S)-ARLDDLはマトリゲル(商標)プラグアッセイを用いた血管形成の阻害において有効であった。*: P < 0.05 対 対照。
【0210】
本出願に用いたアミノ酸およびヌクレオチド配列
配列番号1は、ロドストミンのARLDDL 変異体のアミノ酸配列である。それは図2に示される。
【0211】
配列番号2は、ロドストミンのARLDDL 変異体をコードする1つのヌクレオチド配列である。それは図3Aに示される。配列番号3は、ロドストミンのARLDDL 変異体をコードするもう1つのヌクレオチド配列である。それは図3Bに示される。
【0212】
配列番号4および5はそれぞれ、HSA C34S 突然変異体のアミノ酸およびヌクレオチド配列である。それらは図4Aおよび4Bに示される。
【0213】
配列番号6および7はそれぞれ、HSA C34A 突然変異体のアミノ酸およびヌクレオチド配列である。それらは図5Aおよび5Bに示される。
【0214】
配列番号8は、リンカーアミノ酸のアミノ酸配列である。それは図6に示される。
【0215】
配列番号9および10はそれぞれ、HSA(C34S)-ARLDDL 突然変異体のアミノ酸およびヌクレオチド配列である。それらは図7Aおよび7Bに示される。
【0216】
配列番号11および12はそれぞれ、HSA(C34A)-ARLDDL 突然変異体のアミノ酸およびヌクレオチド配列である。それらは図8Aおよび8Bに示される。
【0217】
本発明の例示的な態様の上記の説明は、例示および説明の目的のためのみに提示したものであり、網羅的でもないし、本発明を開示された厳密な形態に限定する意図でもない。多くの改変および変更が上記の教示を鑑みて可能である。
【0218】
本発明のその他の態様は、本明細書および本明細書に開示される本発明の実施を考慮することにより当業者に明白であろう。本明細書および実施例は例示のみとして考慮されるべきであり、本発明の真の範囲と精神は添付の請求の範囲によって示されることが意図される。
【図1−1】

【図1−2】

【図1−3】

【図1−4】

【図1−5】

【図1−6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは該ポリペプチドの医薬上許容される塩、ここで、該ポリペプチドは配列番号4のアミノ酸配列を含むヒト血清アルブミン (HSA)の変異体と接合している。
【請求項2】
配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは該ポリペプチドの医薬上許容される塩、ここで、該ポリペプチドは配列番号6のアミノ酸配列を含むヒト血清アルブミン (HSA)の変異体と接合している。
【請求項3】
該ポリペプチドがリンカーアミノ酸配列を含む請求項 1または2のポリペプチド。
【請求項4】
該リンカーアミノ酸配列がグリシンおよびセリンアミノ酸の組合せを含む請求項 3 のポリペプチド。
【請求項5】
該リンカーアミノ酸配列が配列番号8のアミノ酸配列を含む請求項 3のポリペプチド。
【請求項6】
配列番号9のアミノ酸配列を含むポリペプチド、または該ポリペプチドの医薬上許容される塩。
【請求項7】
配列番号11のアミノ酸配列を含むポリペプチド、または該ポリペプチドの医薬上許容される塩。
【請求項8】
配列番号10のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド。
【請求項9】
配列番号12のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド。
【請求項10】
請求項 1または2のポリペプチド、またはその医薬上許容される塩、および医薬上許容される担体を含む、生理的に許容される組成物。
【請求項11】
配列番号9のアミノ酸配列を含むポリペプチド、または該ポリペプチドの医薬上許容される塩、および医薬上許容される担体を含む、生理的に許容される組成物。
【請求項12】
配列番号10のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、または該ポリペプチドの医薬上許容される塩、および医薬上許容される担体を含む、生理的に許容される組成物。
【請求項13】
αvβ3 インテグリン関連疾患の治療および/または予防のための方法であって、それを必要とする哺乳類に治療上有効量の、請求項 1または2のポリペプチド、またはその医薬上許容される塩を投与することを含む方法。
【請求項14】
αvβ3 インテグリン関連疾患の治療および/または予防のための方法であって、それを必要とする哺乳類に治療上有効量の、配列番号9のアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはその医薬上許容される塩を投与することを含む方法。
【請求項15】
αvβ3 インテグリン関連疾患の治療および/または予防のための方法であって、それを必要とする哺乳類に治療上有効量の、配列番号10のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、またはその医薬上許容される塩を投与することを含む方法。
【請求項16】
該αvβ3 インテグリン関連疾患が骨における腫瘍増殖または腫瘍転移である請求項 14または15の方法。
【請求項17】
該αvβ3 インテグリン関連疾患が、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、角膜新血管新生疾患、加齢性虚血誘導性新血管形成網膜症、高度近視、および未熟児網膜症からなる群から選択される血管形成関連眼疾患である請求項 14 または15の方法。
【請求項18】
該αvβ3 インテグリン関連疾患が、骨粗しょう症、悪性腫瘍誘導性高カルシウム血症、多発性骨髄腫、およびパジェット病からなる群から選択される請求項 14または15の方法。
【請求項19】
該哺乳類に別の活性薬剤を共投与することをさらに含む請求項 14または15の方法。
【請求項20】
該別の活性薬剤が、VEGF アンタゴニスト、抗炎症薬、ビスホスフォネート、および細胞毒性薬からなる群から選択される請求項 19 の方法。
【請求項21】
以下の工程を含む、請求項 1 または 2のポリペプチドの製造方法:
(a)請求項 1または2のポリペプチドをコードする遺伝子を構築する工程、
(b)工程 (a)の遺伝子を宿主細胞にトランスフェクトする工程;
(c)該宿主細胞を培地において成育させる工程;および、
(d)該ポリペプチドを単離する工程。
【請求項22】
以下の工程を含む、配列番号9のアミノ酸配列を含むポリペプチドの製造方法:
(a)該ポリペプチドをコードする遺伝子を構築する工程、
(b)工程 (a)の遺伝子を宿主細胞にトランスフェクトする工程;
(c)該宿主細胞を培地において成育させる工程;および、
(d)該ポリペプチドを単離する工程。

【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9】
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【図10】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図11−3】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2012−533631(P2012−533631A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521703(P2012−521703)
【出願日】平成22年7月19日(2010.7.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/042423
【国際公開番号】WO2011/011315
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(502250743)國立成功大學 (16)
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL CHENG KUNG UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.1,Ta−Hsueh Road,East District,Tainan City,Taiwan(R.O.C.)
【出願人】(503209342)ナショナル タイワン ユニバーシティ (9)
【出願人】(511180134)ディシービー−ユーエスエイ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (2)
【氏名又は名称原語表記】DCB−USA, LLC
【Fターム(参考)】