説明

ヒトC型肝炎ウイルスの全長ゲノムを含む核酸構築物及び該核酸構築物を導入した組換え全長ウイルスゲノム複製細胞、並びにC型肝炎ウイルス粒子の作製方法

本発明は、HCV全長ゲノム配列を含むRNAを効率良く複製する方法、及び全長HCVレプリコンRNA又は全長HCVゲノムRNAを含有するHCVウイルス粒子を細胞培養系により製造する方法を提供する。また本発明は、遺伝子型2aのC型肝炎ウイルスの全長ゲノムRNA配列と、少なくとも1つの選択マーカー遺伝子及び/又は少なくとも1つのリポーター遺伝子と、少なくとも1つのIRES配列とを含む塩基配列からなるレプリコンRNA、あるいは遺伝子型2aのC型肝炎ウイルスの全長ゲノムRNAを導入した細胞を培養して、培養物中にウイルス粒子を産生させることを含む、C型肝炎ウイルス粒子の製造方法に関する。さらに本発明は、C型肝炎ワクチン及びC型肝炎ウイルス粒子に対する抗体にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、C型肝炎ウイルスの全長ゲノムを含む核酸構築物、C型肝炎ウイルス粒子のin vitroでの作製方法、及び作製したC型肝炎ウイルス粒子の使用に関する。
【背景技術】
C型肝炎ウイルス(Hepatitis C virus、HCV)は、フラビウイルス科に属する、一本鎖の(+)鎖センスRNAをゲノムとするウイルスであり、C型肝炎の原因となることが知られている。
HCVは持続的に感染することにより慢性肝炎を引き起こす。現在、世界的規模で認められる慢性肝炎の主たる原因がHCV持続感染である。実際、持続感染者の50%程度が慢性肝炎を発症し、そのうち約20%の患者が10年〜20年を経て肝硬変に移行し、さらにその一部は肝癌といった致死的な病態へと進展する。
C型肝炎に対する現在の主な治療は、インターフェロン−α、インターフェロン−β、及びインターフェロン−αとプリン−ヌクレオシド誘導体であるリバビリンとの併用療法により行われている。しかしながら、これらの治療を行っても、全治療者の約60%に治療効果が認められるだけであり、効果が出た後に治療を中止すると半分以上の患者が再燃する。
工業国において罹患率が高く、最終的に深刻な結果を招き、かつ現在は原因治療法が存在しないC型肝炎に対する効果的な治療薬又は予防薬の開発は重要な目標である。そのため、HCV特異的な化学療法、ワクチン療法の発展が切望されている。抗HCV薬開発のターゲットとしては、HCVの複製抑制やHCVの細胞感染の抑制が考えられる。
最近になって、HCV由来の自律複製能を有するRNAとして、HCVサブゲノムRNAレプリコンシステムが作製された(特許文献1、2及び3、非特許文献1〜4)。HCVサブゲノムRNAレプリコンシステムは、HCVゲノムの構造遺伝子を取り除いて代わりに選択薬剤マーカー遺伝子を挿入したHCVレプリコンRNAを作製し、そのレプリコンRNAを培養細胞内に導入し、細胞内でレプリコンRNAを自律的に複製させるシステムである。これにより、培養細胞を用いてHCVの複製機構を解析することが可能になったが、これはHCVウイルスの増殖複製過程におけるウイルスRNA複製のみを評価することが可能な実験系であり、HCVウイルス粒子の感染細胞内での形成と細胞外への放出、さらに新たな細胞への感染という過程は解析できない。
現在、HCVウイルス粒子の形成と細胞外への放出、さらに新たな細胞への感染という過程を評価する方法としては、チンパンジーなどの動物を用いた実験系しかない(非特許文献5)。しかしながら、動物という生体をそのまま用いた実験系は、煩雑で解析が極めて困難である。したがって、HCVウイルス粒子の感染細胞内での形成と細胞外への放出、さらに新たな細胞への感染という過程を解析および、これらの過程の阻害を作用メカニズムとした抗HCV薬を作製するには、これらの過程を再現できる極めて単純化した実験系、すなわち、培養実験系でのHCVウイルス粒子の作製系を構築する必要がある。
また、細胞培養系を用いて安定してHCVウイルス粒子を供給可能になれば、ウイルスを弱毒化したり、分子生物学的手法を用いて非感染性のHCVウイルスを作製したりして、それをワクチンに用いることができる。
【特許文献1】 特開2001−17187号公報
【特許文献2】 国際出願PCT/JP03/15038
【特許文献3】 特願2003−329082
【非特許文献1】 Lohmann et al.,Science,(1999)285,p.110−113
【非特許文献2】 Blight et al.,Science,(2000)290,p.1972−1974
【非特許文献3】 Friebe et al.,J.Virol.,(2001)75(24):p.12047−12057
【非特許文献4】 Ikeda et al., J.Virol.,(2002)76(6):p.2997−3006
【非特許文献5】 Kolykhalov et al.,Science,(1997)277,p.570−574
【非特許文献6】 Kato et al.,Gastroenterology,(2003)125,p.1808−1817
【非特許文献7】 Yanagi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,(1997)96(16):p.8738−8743
【非特許文献8】 Okamoto et al.,J.Gen.Virol.,(1991)73,p 2697−26704
【非特許文献9】 Aoyagi et al.,J.Clin.Microbiol.,(1999)37(6):p.1802−1805
【発明の開示】
本発明は、これまで成功していない、HCV全長ゲノム配列を含むRNAを効率良く複製する方法、及び全長HCVレプリコンRNA又は全長HCVゲノムRNAを含有するHCVウイルス粒子を細胞培養系により製造する方法、を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、HCVウイルス粒子を細胞培養系で作製する方法を開発した。すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]遺伝子型2aのC型肝炎ウイルスのゲノムRNAの、5’非翻訳領域、coreタンパク質コード配列、E1タンパク質コード配列、E2タンパク質コード配列、NS2タンパク質コード配列、NS3タンパク質コード配列、NS4Aタンパク質コード配列、NS4Bタンパク質コード配列、NS5Aタンパク質コード配列、NS5Bタンパク質コード配列、及び3’非翻訳領域と、少なくとも1つの選択マーカー遺伝子及び/又は少なくとも1つのリポーター遺伝子と、少なくとも1つのIRES配列と、を含む塩基配列からなる、レプリコンRNA。
このレプリコンRNAにおいては、好ましくは、前記塩基配列が、前記の5’非翻訳領域、少なくとも1つの選択マーカー遺伝子及び/又は少なくとも1つのリポーター遺伝子、少なくとも1つのIRES配列、coreタンパク質コード配列、E1タンパク質コード配列、E2タンパク質コード配列、NS2タンパク質コード配列、NS3タンパク質コード配列、NS4Aタンパク質コード配列、NS4Bタンパク質コード配列、NS5Aタンパク質コード配列、NS5Bタンパク質コード配列、及び3’非翻訳領域を、5’から3’方向へこの順番で含む。
このレプリコンRNAのより好ましい実施形態では、遺伝子型2aのC型肝炎ウイルスのゲノムRNAが、配列番号12に示す塩基配列からなるRNAである。
このレプリコンRNAのさらに好ましい実施形態では、5’非翻訳領域が配列番号1に示す塩基配列からなり、coreタンパク質コード配列が配列番号2に示す塩基配列からなり、E1タンパク質コード配列が配列番号3に示す塩基配列からなり、E2タンパク質コード配列が配列番号4に示す塩基配列からなり、NS2タンパク質コード配列が配列番号5に示す塩基配列からなり、NS3タンパク質コード配列が配列番号6に示す塩基配列からなり、NS4Aタンパク質コード配列が配列番号7に示す塩基配列からなり、NS4Bタンパク質コード配列が配列番号8に示す塩基配列からなり、NS5Aタンパク質コード配列が配列番号9に示す塩基配列からなり、NS5Bタンパク質コード配列が配列番号10に示す塩基配列からなり、3’非翻訳領域が配列番号11に示す塩基配列からなる。
[2]以下の(a)又は(b)のRNAからなるレプリコンRNA。
(a)配列番号13に示す塩基配列からなるRNA。
(b)配列番号13に示す塩基配列において1〜100個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるRNAであって、自律複製能及びウイルス粒子産生能を有するRNA。
[3]上記[1]又は[2]記載のいずれかのレプリコンRNAを細胞に導入することを含む、該レプリコンRNAを複製しかつウイルス粒子を産生する細胞を製造する方法。
この方法では、細胞が増殖性細胞であることが好ましい。あるいは、この方法における細胞は、真核細胞であることが好ましい。
この方法では、好ましくは、真核細胞はヒト肝由来細胞、ヒト子宮頸由来細胞、又はヒト胎児腎由来細胞である。さらに好ましくは、真核細胞がHuh7細胞、HepG2細胞、IMY−N9細胞、HeLa細胞、又は293細胞である。
[4]上記[3]記載の方法により製造される、レプリコンRNAを複製しかつウイルス粒子を産生する細胞。
[5]上記[4]記載の細胞を培養してウイルス粒子を産生させることを含む、C型肝炎ウイルス粒子の製造方法。
[6]上記[5]記載の方法により製造される、C型肝炎ウイルス粒子。
[7]上記[4]記載の細胞を培養し、培養物中のウイルス粒子を他の細胞に感染させることを含む、C型肝炎ウイルス感染細胞を製造する方法。
[8]上記[7]記載の方法によって製造される、C型肝炎ウイルス感染細胞。
[9]被験物質の存在下で、下記(a)〜(c):
(a)上記[4]記載の細胞
(b)上記[8]記載のC型肝炎ウイルス感染細胞、並びに
(c)上記[6]記載のC型肝炎ウイルス粒子及びC型肝炎ウイルス感受性細胞、
のうちの少なくとも1つを培養し、得られる培養物中のレプリコンRNA又はウイルス粒子を検出することを含む、抗C型肝炎ウイルス物質をスクリーニングする方法。
[10]上記[6]記載のC型肝炎ウイルス粒子又はその一部分を含有するC型肝炎ワクチン。
[11]上記[6]記載のC型肝炎ウイルス粒子又はその一部分を抗原として使用して、C型肝炎ワクチンを製造する方法。
[12]上記[1]又は[2]記載のいずれかのレプリコンRNAを使用して、遺伝子治療のための肝細胞指向性ウイルスベクターを製造する方法。
[13]上記[12]に記載の方法により製造される、肝細胞指向性ウイルスベクター。
[14]外来遺伝子をコードするRNAを上記[1]又は[2]記載のいずれかのレプリコンRNA中に挿入し、それを細胞中に導入することを含む、該細胞内で外来遺伝子を複製及び/又は発現させる方法。
[15]配列番号12に示す塩基配列からなるRNAを細胞に導入することを含む、該RNAを複製しかつウイルス粒子を産生する細胞を製造する方法。
[16]配列番号12に示す塩基配列からなるRNAを細胞に導入し、その細胞を培養してウイルス粒子を産生させることを含む、C型肝炎ウイルス粒子の製造方法。
[17]細胞が増殖性細胞である、上記[15]又は[16]記載の方法。
[18]配列番号12に示す塩基配列からなるRNAに外来遺伝子をコードするRNAを挿入し、それを細胞に導入し、その細胞を培養してウイルス粒子を産生させることを含む、外来遺伝子を含有するウイルスベクターを製造する方法。
[19]上記[6]記載のC型肝炎ウイルス粒子に対する抗体。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2004−045489号の明細書及び図面に記載される内容を包含する。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の全長HCVレプリコンRNA又は全長HCVゲノムRNAを作製するための鋳型DNAの構築手順を示す概略図である。図1の上段は、T7プロモーターの下流に全長HCVゲノムを挿入して作製したプラスミドクローンpJFH1の構造を示す。図1の下段は、pJFH1のT7プロモーターと5’非翻訳領域の下流にネオマイシン耐性遺伝子とEMCV IRESを含むDNA断片を挿入した、全長HCVゲノム配列を含むプラスミドクローンpFGREP−JFH1の構造を示す。図中の記号は以下のとおりである。T7:T7RNAプロモーター、5’UTR:5’非翻訳領域、C:コアタンパク質、E1、E2:エンベロープタンパク質。NS2、NS3、NS4A、NS4B、4A、4B:非構造タンパク質。3’UTR:3’非翻訳領域。Age I、Pme I、Xba I:制限酵素Age I、Pme I及びXba Iの切断部位。GDD:NS5Bタンパク質の活性中心に相当するアミノ酸モチーフGDDの位置。neo:ネオマイシン耐性遺伝子、EMCV IRES:EMCV IRES(脳心筋炎ウイルスの内部リボソーム結合部位)。
図2は、全長HCVゲノムRNAであるrJFH−1を導入したHuh7細胞におけるrJFH−1の複製を示すノーザンブロット解析の結果を示す写真である。
図3は、培地中のHCVコアタンパク質の定量の結果を示す。白抜きの円はrJFH1を導入した細胞、黒塗りの円はrJFH1/GNDを導入した細胞を示す。
図4は、rJFH−1を導入したHuh7細胞の培養上清をショ糖密度勾配により分画した各画分についての、HCVコアタンパク質量及び全長HCVゲノムRNA量、並びに比重を示すグラフである。黒塗りの円はHCVコア(core)タンパク質、白抜きの円は全長HCVゲノムRNA、網掛けの円は比重を示す。
図5は、全長HCVレプリコンRNAであるrFGREP−JFH1をトランスフェクションしたHuh7細胞のコロニー形成を示す写真である。
図6は、rFGREP−JFH1のHuh7細胞へのトランスフェクションにより樹立した全長HCVレプリコンRNA複製細胞クローンにおける、全長HCVレプリコンRNAの複製を示す写真である。
図7は、ゲノムDNA中へのネオマイシン耐性遺伝子の組み込みの有無を確認するための、宿主細胞のゲノムDNAを鋳型とし、ネオマイシン耐性遺伝子特異的プライマーを用いてPCR増幅した結果を示す写真である。M:DNAサイズマーカー、P:陽性対照、N:Huh7細胞。
図8は、全長HCVレプリコンRNAであるrFGREP−JFH1を導入したHuh7細胞におけるcoreタンパク質の発現を示すウェスタンブロット解析の結果を示す写真である。
図9は、全長HCVレプリコンRNAであるrFGREP−JFH1を導入したHuh7細胞におけるNS3タンパク質の発現を示すウェスタンブロット解析の結果を示す写真である。
図10は、全長HCVレプリコンRNAであるrFGREP−JFH1を導入したHuh7細胞におけるNS5Aタンパク質の発現を示すウェスタンブロット解析の結果を示す写真である。
図11は、rFGREP−JFH1を導入したHuh7細胞の培養上清をショ糖密度勾配により分画した各画分についての、HCV coreタンパク質の量及び全長HCVレプリコンRNA量、並びに比重を示すグラフである。黒塗りの円はHCVコア(core)タンパク質、白抜きの円は全長HCVレプリコンRNA、網掛けの円は比重を示す。
図12は、全長HCVレプリコンRNA複製細胞の培養上清に含まれるウイルス粒子を添加したHuh7細胞のコロニー形成を示す写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
1.全長HCVレプリコンRNA
C型肝炎ウイルス(HCV)のゲノムは、約9600ヌクレオチドからなる(+)鎖の一本鎖RNAである。このゲノムRNAは、5’非翻訳領域(5’NTR又は5’UTRとも表記する)、構造領域と非構造領域とから構成される翻訳領域、及び3’非翻訳領域(3’NTR又は3’UTRとも表記する)からなる。その構造領域にはHCVの構造タンパク質がコードされており、非構造領域には複数の非構造タンパク質がコードされている。
このようなHCVの構造タンパク質(core、E1、及びE2)と非構造タンパク質(NS2、NS3、NS4A、NS4B、NS5A、及びNS5B)は、翻訳領域から一続きのポリプロテインとして翻訳された後、プロテアーゼによる限定分解を受けて遊離、生成される。これらの構造タンパク質及び非構造タンパク質(すなわち、HCVのウイルスタンパク質)のうち、coreはコアタンパク質であり、E1及びE2はエンベロープタンパク質である。非構造タンパク質はウイルス自身の複製に関与するタンパク質であり、NS2はメタロプロテアーゼ活性、NS3はセリンプロテアーゼ活性(N末端側の3分の1)とヘリカーゼ活性(C末端側の3分の2)を有することが知られている。さらに、NS4AはNS3のプロテアーゼ活性に対するコファクターであり、NS5BはRNA依存RNAポリメラーゼ活性を有することも報告されている。
本発明者らは、HCVゲノムRNAを用いて、自律的に複製可能であり、かつウイルス粒子産生能を有するレプリコンRNAを構築した。
本明細書では、自律複製能を有しておりHCVゲノムRNAを改変して作製されたRNAを、「レプリコンRNA」又は「RNAレプリコン」と称する。本明細書においてHCV由来のレプリコンRNAは、HCV−RNAレプリコンとも称する。本明細書では、HCVゲノムRNAの全長を含む本発明のレプリコンRNAを、「全長HCVレプリコンRNA」と呼ぶ。本発明の全長HCVレプリコンRNAは、ウイルス粒子産生能を有する。
本発明の全長HCVレプリコンRNAの好適な実施形態では、C型肝炎ウイルスは、限定するものではないが、遺伝子型2aのC型肝炎ウイルスであることが好ましい。本発明において、「遺伝子型2aのC型肝炎ウイルス」「遺伝子型2aのHCV」とは、Simmondsら(Simmonds,P.et al,Hepatology,(1994)10,p.1321−1324を参照)による国際分類に従って遺伝子型2aと同定されるC型肝炎ウイルスを意味する。本発明における「遺伝子型2aのC型肝炎ウイルス」「遺伝子型2aのHCV」には、天然由来のHCVゲノムRNAを有するウイルスだけでなく、天然由来のHCVゲノム配列に人為的な改変を加えたゲノムRNAを有するウイルスも包含する。遺伝子型2aのHCVの具体例としては、JFH−1株(特開2002−171978号公報を参照)が挙げられる。
本明細書において「C型肝炎ウイルスのゲノムRNA」とは、C型肝炎ウイルスの一本鎖の(+)鎖センスRNAからなるゲノムの全長にわたる塩基配列を有するRNAを意味する。限定するものではないが、遺伝子型2aのC型肝炎ウイルスのゲノムRNAとしては、配列番号12に示す塩基配列からなるRNAが好ましい。
本発明に係る全長HCVレプリコンRNAの一つの実施形態は、C型肝炎ウイルスのゲノムRNA上の、5’非翻訳領域、coreタンパク質コード配列、E1タンパク質コード配列、E2タンパク質コード配列、NS2タンパク質コード配列、NS3タンパク質コード配列、NS4Aタンパク質コード配列、NS4Bタンパク質コード配列、NS5Aタンパク質コード配列、NS5Bタンパク質コード配列、及び3’非翻訳領域と、少なくとも1つの選択マーカー遺伝子又はリポーター遺伝子と、少なくとも1つのIRES配列と、を含む塩基配列からなる、レプリコンRNAである。
限定するものではないが、好ましくは、本発明の全長HCVレプリコンRNAは、5’非翻訳領域、少なくとも1つの選択マーカー遺伝子又はリポーター遺伝子、少なくとも1つのIRES配列、coreタンパク質コード配列、E1タンパク質コード配列、E2タンパク質コード配列、NS2タンパク質コード配列、NS3タンパク質コード配列、NS4Aタンパク質コード配列、NS4Bタンパク質コード配列、NS5Aタンパク質コード配列、NS5Bタンパク質コード配列、及び3’非翻訳領域を、5’から3’方向へこの順番で含む。
本明細書において、「5’非翻訳領域(5’NTR又は5’UTR)」、「coreタンパク質コード配列(core領域又はC領域)」、「E1タンパク質コード配列(E1領域)」、「E2タンパク質コード配列(E2領域)」、「N2タンパク質コード配列(NS2領域)」、「NS3タンパク質コード配列(NS3領域)」、「NS4Aタンパク質コード配列(NS4A領域)」、「NS4Bタンパク質コード配列(NS4B領域)」、「NS5Aタンパク質コード配列(NS5A領域)」、「NS5Bタンパク質コード配列(NS5B領域)」、及び「3’非翻訳領域(3’NTR又は3’UTR)」、並びにその他の特定の領域若しくは部位は、遺伝子型2aのC型肝炎ウイルスであるJFH−1株(特開2002−171978号公報)のゲノムの全領域からなる全長ゲノムRNA(配列番号12)を基準として定めることができる。
あるいは、本願発明におけるC型肝炎ウイルス(HCV)ゲノム中の部分領域又はその部位は、JFH−1株のゲノムRNA(配列番号12)の部分塩基配列である配列番号1〜11に示す配列を基準として定めることもできる。JFH−1株の全長ゲノムRNA(JFH−1クローン由来)(配列番号12)の「5’非翻訳領域」は、配列番号1に示す塩基配列からなる。また、「coreタンパク質コード配列」は配列番号2に示す塩基配列からなる。「E1タンパク質コード配列」は、配列番号3に示す塩基配列からなる。「E2タンパク質コード配列」は、配列番号4に示す塩基配列からなる。「NS2タンパク質コード配列」は、配列番号5に示す塩基配列からなる。「NS3タンパク質コード配列」は、配列番号6に示す塩基配列からなる。「NS4Aタンパク質コード配列」は、配列番号7に示す塩基配列からなる。「NS4Bタンパク質コード配列」は、配列番号8に示す塩基配列からなる。「NS5Aタンパク質コード配列」は、配列番号9に示す塩基配列からなる。「NS5Bタンパク質コード配列」は、配列番号10に示す塩基配列からなる。「3’非翻訳領域」は、配列番号11に示す塩基配列からなる。
例えば、HCV由来のRNA配列中の領域又は部位は、そのRNA配列を配列番号1〜12に示す塩基配列に対してアラインメントし、配列番号1〜12の配列中の塩基番号を基準として定めてもよい。このようなアラインメントにおいては、配列間でギャップ、付加、欠失、置換等が存在していてもよい。
本発明のさらなる好適な実施形態では、本発明の全長HCVレプリコンRNAに含まれる5’非翻訳領域、coreタンパク質コード配列、E1タンパク質コード配列、E2タンパク質コード配列、NS2タンパク質コード配列、NS3タンパク質コード配列、NS4Aタンパク質コード配列、NS4Bタンパク質コード配列、NS5Aタンパク質コード配列、NS5Bタンパク質コード配列、及び3’非翻訳領域が、それぞれ配列番号1〜11に示す塩基配列を有することが好ましい。
本発明に係る全長HCVレプリコンRNAの好適な実施形態は、配列番号1〜11に示す塩基配列と、少なくとも1つの選択マーカー遺伝子及び/又はリポーター遺伝子と、少なくとも1つのIRES配列と、からなるレプリコンRNAである。
本発明において「選択マーカー遺伝子」とは、その遺伝子が発現された細胞だけが選択されるような選択性を細胞に付与することができる遺伝子を意味する。選択マーカー遺伝子の一般的な例としては抗生物質耐性遺伝子が挙げられる。本発明において好適な選択マーカー遺伝子の例としては、ネオマイシン耐性遺伝子、チミジンキナーゼ遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ピリチアミン耐性遺伝子、アデニリルトランスフェラーゼ遺伝子、ゼオシン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子などが挙げられるが、ネオマイシン耐性遺伝子、チミジンキナーゼ遺伝子が好ましく、ネオマイシン耐性遺伝子がさらに好ましい。但し本発明における選択マーカー遺伝子はこれらに限定されるものではない。
また本発明において「リポーター遺伝子」とは、その遺伝子発現の指標となる遺伝子産物をコードするマーカー遺伝子を意味する。リポーター遺伝子の一般的な例としては、発光反応や呈色反応を触媒する酵素の構造遺伝子が挙げられる。本発明において好適なリポーター遺伝子の例としては、トランスポゾンTn9由来のクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子、大腸菌由来のβグルクロニダーゼ若しくはβガラクトシダーゼ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、緑色蛍光タンパク質遺伝子、クラゲ由来のエクオリン遺伝子、分泌型胎盤アルカリフォスファターゼ(SEAP)遺伝子等が挙げられる。但し本発明におけるリポーター遺伝子はこれらに限定されるものではない。
上記の選択マーカー遺伝子やリポーター遺伝子は、全長HCVレプリコンRNA中にどちらか一方のみが含まれていてもよいし、両方が含まれていてもよい。選択マーカー遺伝子又はリポーター遺伝子は、全長HCVレプリコンRNAに1つ含まれていてもよいし、2つ以上含まれていてもよい。
本発明における「IRES配列」とは、RNAの内部にリボソームを結合させて翻訳を開始させることが可能な内部リボゾーム結合部位を意味する。本発明におけるIRES配列の好適な例としては、以下に限定するものではないがEMCV IRES(脳心筋炎ウイルスの内部リボゾーム結合部位)、FMDV IRES、HCV IRES、等が挙げられるが、EMCV IRES、及びHCV IRESがより好ましく、EMCV IRESが最も好ましい。
本発明に係る全長HCVレプリコンRNAのさらに好ましい1つの実施形態は、配列番号13に示す塩基配列からなるRNAである。さらに、この配列番号13に示す塩基配列において、1〜100個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜6個、最も好ましくは1〜数個(2〜5個)の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるRNAであって、かつ、自律複製能及びウイルス粒子産生能を有するRNAも、好適な実施形態として本発明の全長HCVレプリコンRNAの範囲に含まれる。
本発明に係る全長HCVレプリコンRNAは、その全長HCVレプリコンRNAを導入する細胞内で発現させたい任意の外来遺伝子をコードするRNAをさらに含んでもよい。外来遺伝子をコードするRNAは、5’非翻訳領域の下流に連結してもよいし、選択マーカー遺伝子若しくはリポーター遺伝子の上流又は下流に連結させてもよいし、3’非翻訳領域の上流に連結してもよい。また、coreタンパク質コード配列、E1タンパク質コード配列、E2タンパク質コード配列、NS2タンパク質コード配列、NS3タンパク質コード配列、NS4Aタンパク質コード配列、NS4Bタンパク質コード配列、NS5Aタンパク質コード配列、及びNS5Bタンパク質コード配列のいずれかの間に挿入してもよい。
外来遺伝子をコードするRNAを含む全長HCVレプリコンRNAは、導入された細胞内で翻訳される際に、該外来遺伝子にコードされる遺伝子産物を発現することができる。従って外来遺伝子をコードするRNAを含む全長HCVレプリコンRNAは、外来遺伝子の遺伝子産物を細胞内で生成させることを目的とする場合にも、好適に使用することができる。
本発明に係る全長HCVレプリコンRNAは、リボザイムを含んでいてもよい。全長HCVレプリコンRNA中の選択マーカー遺伝子及び/又はリポーター遺伝子の下流にリボザイムを連結しておき、そのリボザイムの自己切断活性によって、選択マーカー遺伝子及び/又はリポーター遺伝子が、IRES配列、coreタンパク質コード配列、E1タンパク質コード配列、E2タンパク質コード配列、NS2タンパク質コード配列、NS3タンパク質コード配列、NS4Aタンパク質コード配列、NS4Bタンパク質コード配列、NS5Aタンパク質コード配列、NS5Bタンパク質コード配列、及び3’非翻訳領域から切り離されるようにすることもできる。
本発明に係る全長HCVレプリコンRNAにおいては、上述したような選択マーカー遺伝子及び/若しくはリポーター遺伝子、ウイルスタンパク質をコードする配列、並びに外来遺伝子又はリボザイム等が、全長HCVレプリコンRNAから正しい読み枠で翻訳されるように連結される。全長HCVレプリコンRNAにコードされるタンパク質は、一続きのポリペプチドとして翻訳され発現された後でプロテアーゼによって各タンパク質へと切断され、遊離するように、プロテアーゼ切断部位等を介して互いに連結させることが好ましい。
本発明はまた、本願発明のレプリコンRNAをコードするDNAベクター、好ましくは発現ベクターにも関する。
なお、本発明においてRNAが「自律複製能を有する」とは、RNAを細胞中に導入したときに、そのRNAが自己増殖することを意味する。限定するものではないが、RNAの自律複製能は、例えば、対象とするRNAをHuh7細胞中にトランスフェクションし、そのHuh7細胞を培養し、得られる培養物中の細胞から抽出したRNAについて、導入したRNAを特異的に検出可能なプローブを用いたノーザンブロットハイブリダイゼーションによりRNAを検出することによって、確認することができる。自律複製能を確認するための具体的な操作は、本明細書の実施例に記載されたコロニー形成能の測定、HCVタンパク質の発現確認、レプリコンRNAの検出等の記載に例示されている。
さらに本発明において、RNAが「ウイルス粒子産生能を有する」とは、そのRNAを細胞(例えば、Huh7細胞などの培養細胞)に導入したときに、該細胞中でウイルス粒子が産生されることを意味する。ウイルス粒子産生能は、例えば、対象とするRNAを導入した細胞の培養上清について、そのRNAに特異的なプライマーを用いたRT−PCR法での検出を行う方法、又はその培養上清をショ糖濃度勾配法にかけてウイルス粒子を分離し、HCVタンパク質を検出する方法などにより、確認することができる。これらの具体的な操作は、本明細書の実施例に記載されたコロニー形成能の測定、HCVタンパク質の発現確認、レプリコンRNAの検出等の記載に例示されている。
2.全長HCVレプリコンRNAの作製
本発明に係る全長HCVレプリコンRNAは、当業者に公知である任意の遺伝子工学的手法を用いて作製することができる。限定するものではないが、全長HCVレプリコンRNAは、例えば遺伝子型2aのC型肝炎ウイルスとしてJFH−1株を用いる場合には以下のような方法で作製することができる。
まず、JFH−1株のゲノム全領域のRNA(配列番号12)に対応するDNA(この配列は、国際DNAデータバンクにアクセッション番号AB047639として登録されている)を、常法により再構築してRNAプロモーターの下流に挿入して、DNAクローンを作製する。ここで、「RNAに対応するDNA」とは、当該RNAの塩基配列のU(ウラシル)をT(チミン)に置き換えた塩基配列からなるDNAを意味する。前記RNAプロモーターは、プラスミドクローン中に含まれるものであることが好ましい。好適なRNAプロモーターとしては、限定するものではないが、T7 RNAプロモーター、SP6 RNAプロモーター、SP3 RNAプロモーターが挙げられるが、T7 RNAプロモーターが特に好ましい。
次に、選択マーカー遺伝子及び/又はレポーター遺伝子、並びにIRES配列をコードするDNAを上記DNAクローンに挿入する。5’非翻訳領域の下流に、選択マーカー遺伝子及び/又はレポーター遺伝子を、さらにその下流にIRES配列を、挿入することが好ましい。
次いで、以上のようにして作製されたDNAクローンを鋳型として、RNAポリメラーゼによりRNAを合成する。RNA合成は、5’非翻訳領域から、常法により開始させることができる。DNAクローンがプラスミドクローンの場合には、プラスミドクローンから制限酵素によって切り出したDNA断片を鋳型として用いてRNAを合成することもできる。なお、合成されるRNAの3’末端がウイルスゲノムRNAの3’非翻訳領域の末端と一致しており、他の配列が付加されたり削除されたりしないことが好ましい。このようにして合成されるRNAが、本発明に係る全長HCVレプリコンRNAである。
3.HCV粒子の作製
上記のようにして作製される全長HCVレプリコンRNAを細胞に導入することにより、全長HCVレプリコンRNAを複製することができ、好ましくは持続的に複製することができる(すなわち、レプリコンRNAの複製能を有する)組換え細胞を得ることができる。本明細書では、全長HCVレプリコンRNAを複製している組換え細胞を「全長HCVレプリコンRNA複製細胞」と称する。
この全長HCVレプリコンRNA複製細胞は、ウイルス粒子を産生することができる。産生されたウイルス粒子は、HCVのウイルスタンパク質から構成されるウイルス殻中に全長HCVレプリコンRNAを含有する。従って本発明の全長HCVレプリコンRNA複製細胞から産生されるウイルス粒子は、HCV粒子である。すなわち本発明では、全長HCVレプリコンRNA複製細胞を培養することにより、HCV粒子を細胞培養系にて作製することができる。好ましくは、全長HCVレプリコンRNA複製細胞を培養し、その培養物(好ましくは培養上清)中に産生されたウイルス粒子を採取することにより、HCV粒子を取得することができる。
あるいは、HCV粒子は、全長HCVゲノムRNAを導入して得られる組換え細胞によっても産生される。本発明に係る全長HCVゲノムRNA(好ましくはJFH−1クローン由来の全長HCVゲノムRNA、より好ましくは配列番号12に示す塩基配列を有するRNA)を導入した細胞では、その全長HCVゲノムRNAが高効率で複製される。本明細書では、全長HCVゲノムRNAを複製している組換え細胞を「全長HCVゲノムRNA複製細胞」と称する。この全長HCVゲノムRNA複製細胞によって産生されるウイルス粒子は、HCVのウイルスタンパク質から構成されるウイルス殻中に全長HCVゲノムRNAを含有する。すなわち、本発明の全長HCVゲノムRNAを導入した細胞から産生されるウイルス粒子は、HCV粒子である。限定するものではないが、好ましくは、JFH−1クローン由来の全長HCVゲノムRNA(例えば、配列番号12に示す塩基配列を有するRNA)を導入した細胞を培養することによって、HCV粒子を細胞培養系にて作製することができる。例えば、全長HCVゲノムRNA(例えば、配列番号12に示す塩基配列を有するRNA)を導入した細胞を培養し、その培養物(好ましくは、培養上清)中に産生されたHCV粒子を採取することにより、HCV粒子を取得することができる。
上記の全長HCVレプリコンRNA又は全長HCVゲノムRNAを導入する細胞としては、継代培養することが可能な細胞であれば任意の細胞を用いることができるが、真核細胞であることが好ましく、ヒト細胞であることがより好ましく、ヒト肝由来細胞、ヒト子宮頸由来細胞、又はヒト胎児腎由来細胞であることがさらに好ましい。これらの細胞としては、癌細胞株や幹細胞株などを含む増殖性細胞が好ましく、Huh7細胞、HepG2細胞、IMY−N9細胞、HeLa細胞、又は293細胞等がさらに好ましい。これらの細胞は、市販のものを利用してもよいし、細胞寄託機関から入手して使用してもよいし、任意の細胞(例えば癌細胞又は幹細胞)から株化した細胞を使用してもよい。
全長HCVレプリコンRNA又は全長HCVゲノムRNAの細胞内への導入は、当業者には公知の任意の技術を使用して行うことができる。そのような導入法としては、例えば、エレクトロポレーション、パーティクルガン法、リポフェクション法、リン酸カルシウム法、マイクロインジェクション法、DEAEセファロース法等が挙げられるが、エレクトロポレーションによる方法が特に好ましい。
全長HCVレプリコンRNA又は全長HCVゲノムRNAは、単独で導入してもよいし、他の核酸と混合させたものを導入してもよい。導入するRNA量を一定にしながら全長HCVレプリコンRNA又は全長HCVゲノムRNAの導入量を変更したい場合には、所望の導入量の全長HCVレプリコンRNA又は全長HCVゲノムRNAを、導入する細胞から抽出したトータル細胞性RNAと混合して一定のRNA総量とし、それを細胞内導入に用いればよい。細胞内導入に用いるレプリコンRNAの量は、使用する導入法に応じて決めればよいが、好ましくは1ピコグラム〜100マイクログラム、より好ましくは10ピコグラム〜10マイクログラムの量を使用する。
全長HCVレプリコンRNA複製細胞は、全長HCVレプリコンRNAに含まれる選択マーカー遺伝子又はリポーター遺伝子の発現を利用して、選択することができる。具体的には、例えば、そのような全長HCVレプリコンRNAの細胞内導入処理を施した細胞を、選択マーカー遺伝子の発現により選択可能となる培地において培養すればよい。あるいは、そのような全長HCVレプリコンRNAの細胞内導入処理を施した細胞を培養した後、リポーター遺伝子(例えば、蛍光タンパク質)の発現について検出すればよい。
一例として、全長HCVレプリコンRNAにネオマイシン耐性遺伝子が選択マーカー遺伝子として含まれる場合には、その全長HCVレプリコンRNAを用いてエレクトロポレーション処理した細胞を培養ディッシュに播種し、12〜72時間、好ましくは16〜48時間培養した後に、培養ディッシュにG418(ネオマイシン)を0.05ミリグラム/ミリリットル〜3.0ミリグラム/ミリリットルの濃度で添加し、その後、週に2回培養液を交換しながら培養を継続し、播種時から好ましくは10日間〜40日間、より好ましくは14日間〜28日間培養した後にクリスタルバイオレットで生存細胞を染色することにより、導入された全長HCVレプリコンRNAが複製されている細胞を、コロニーとして選択することができる。
形成されたコロニーからは、常法により細胞をクローン化することができる。こうして得られる全長HCVレプリコンRNAを複製している細胞クローンを、本明細書では「全長HCVレプリコンRNA複製細胞クローン」と称する。本発明の全長HCVレプリコンRNA複製細胞は、全長HCVレプリコンRNA複製細胞クローンを包含する。
全長HCVレプリコンRNA複製細胞については、複製された全長HCVレプリコンRNAを検出し、全長HCVレプリコンRNA中の選択マーカー遺伝子又はリポーター遺伝子が細胞の宿主ゲノムDNAに組み込まれていないことを確認し、さらにHCVタンパク質の検出を行うことにより、実際に該細胞又は細胞クローンが全長HCVレプリコンRNAを複製していることを確認することができる。
複製された全長HCVレプリコンRNAの検出は、当業者には公知の任意のRNA検出法に従って行えばよいが、例えば、細胞から抽出したトータルRNAについて、導入された全長HCVレプリコンRNAに対して特異的なDNA断片をプローブとして用いるノーザンハイブリダイゼーション法を実施することにより検出することができる。
また全長HCVレプリコンRNA中の選択マーカー遺伝子又はリポーター遺伝子が細胞の宿主ゲノムDNAに組み込まれていないことの確認は、限定するものではないが、例えば、細胞から抽出したゲノムDNAについて該選択マーカー遺伝子又はリポーター遺伝子の少なくとも一部を増幅するPCRを行い、その増幅産物の有無を確認することによって行うことができる。増幅産物が確認された細胞では、宿主ゲノム中に選択マーカー遺伝子又はリポーター遺伝子が組み込まれていると判断されることから、全長HCVレプリコンRNA自体は複製されていない可能性がある。この場合、全長HCVレプリコンRNAが複製されているか否かを、次に説明するHCVタンパク質の検出によって、さらに確認することができる。
HCVタンパク質の検出は、例えば、導入された全長HCVレプリコンRNAから発現されるべきHCVタンパク質に対する抗体を、細胞から抽出したタンパク質と反応させることによって行うことができる。この方法は、当業者には公知の任意のタンパク質検出法によって行うことができるが、具体的には、例えば、細胞から抽出したタンパク質試料をニトロセルロース膜にブロッティングし、それに対して抗HCVタンパク質抗体(例えば、抗NS3特異的抗体、又はC型肝炎患者から採取した抗血清)を反応させ、さらにその抗HCVタンパク質抗体を検出することによって行うことができる。細胞から抽出したタンパク質中からHCVタンパク質が検出されれば、その細胞は、全長HCVレプリコンRNAを複製し、HCVタンパク質を発現しているものと判断することができる。
本発明の全長HCVレプリコンRNA複製細胞又は全長HCVゲノムRNA複製細胞のウイルス粒子産生能は、当業者には公知の任意のウイルス検出法に従って確認すればよい。例えば、ウイルス粒子を産生していると思われる細胞の培養上清をショ糖密度勾配により分画し、各分画の密度、HCVコアタンパク質濃度、及び全長HCVレプリコンRNA若しくは全長HCVゲノムRNAの量を測定した結果、HCVコアタンパク質と全長HCVレプリコンRNA若しくは全長HCVゲノムRNAのピークが一致し、しかもそのピークが検出される画分の密度が、培養上清を25%NP40(ポリオキシエチレン(9)オクチルフェニルエーテル[Polyoxyethylene(9)Octylphenyl Ether])で処理してから分画した場合の同画分の密度と比較して軽い(例えば、1.18〜1.20mg)場合には、該細胞はウイルス粒子産生能を有すると判定することができる。
培養上清中に放出されたHCVウイルス粒子は、例えば、coreタンパク質、E1タンパク質、又はE2タンパク質に対する抗体を用いて検出することもできる。また、培養上清中の全長HCVレプリコンRNAを、特異的プライマーを用いたRT−PCR法により増幅して検出することによって、HCVウイルス粒子の存在を間接的に検出することもできる。
4.本発明のHCV粒子の他の細胞への感染
本発明のHCVウイルス粒子は、細胞(好ましくはHCV感受性細胞)への感染能を有する。本発明は、全長HCVレプリコンRNA複製細胞又は全長HCVゲノムRNA複製細胞を培養し、得られた培養物(好ましくは、培養上清)中のウイルス粒子を他の細胞(好ましくはHCV感受性細胞)に感染させることを含む、C型肝炎ウイルス感染細胞を製造する方法にも関する。本発明において、HCV感受性細胞とは、HCVに対し感染性を有する細胞であり、好ましくは肝臓細胞またはリンパ球系細胞であるが、これらに限定されるものでは無い。具体的には、肝臓細胞としては初代肝臓細胞や、Huh7細胞、HepG2細胞、IMY−N9細胞、HeLa細胞、203細胞などが挙げられ、リンパ球系細胞としてはMolt4細胞や、HPB−Ma細胞、Daudi細胞などが挙げられるが、これらに限定されるものでは無い。
本発明の全長HCVレプリコンRNA複製細胞において産生されたHCV粒子を細胞(例えば、HCV感受性細胞)に感染させると、その感染細胞中では全長HCVレプリコンRNAが複製され、さらにウイルス粒子が形成される。全長HCVレプリコンRNA複製細胞において産生されたウイルス粒子に感染した細胞は、選択マーカー遺伝子及び/又はリポーター遺伝子を発現するので、その発現を利用して選択及び/又は検出することが可能である。本発明の全長HCVレプリコンRNA複製細胞において産生されたウイルス粒子を細胞に感染させることにより、全長HCVレプリコンRNAが細胞内で複製され、ウイルス粒子をさらに製造することができる。
さらに、本発明の全長HCVゲノムRNA複製細胞において産生されたHCV粒子を細胞(例えば、HCV感受性細胞)に感染させることにより、その感染細胞中で全長HCVゲノムRNAが複製され、ウイルス粒子が形成される。本発明の全長HCVゲノムRNA複製細胞において産生されたウイルス粒子を細胞に感染させることにより、全長HCVゲノムRNAが細胞内で複製され、ウイルス粒子をさらに製造することができる。
本発明の全長HCVレプリコンRNA複製細胞又は全長HCVゲノムRNA複製細胞において産生されたHCVウイルス粒子は、チンパンジーなどのHCVウイルスに感染しうる動物に感染して、HCV由来の肝炎を引き起こすことができる。
5.本発明の他の実施形態
本発明の全長HCVレプリコンRNA複製細胞では、全長HCVレプリコンRNAが高効率で複製される。また本発明の全長HCVゲノムRNA複製細胞でも、全長HCVゲノムRNAが高効率で複製される。従って、本発明の全長HCVレプリコンRNA複製細胞又は全長HCVゲノムRNA複製細胞を用いて、全長HCVレプリコンRNA又は全長HCVゲノムRNAを高効率で製造することができる。
本発明では、全長HCVレプリコンRNA複製細胞を培養し、培養物(培養細胞及び/又は培養培地)からRNAを抽出し、それを電気泳動法にかけ、分離された全長HCVレプリコンRNAを単離精製することによって、全長HCVレプリコンRNAを製造することができる。全長HCVゲノムRNA複製細胞を用いた場合にも、同様の方法で全長HCVゲノムRNAを製造することができる。このようにして製造されるRNAは、C型肝炎ウイルスの全長ゲノム配列を含む。この場合、C型肝炎ウイルスの全長ゲノム配列は、選択マーカー遺伝子及び/又はリポーター遺伝子並びにIRES配列によって分断されていてもよい。C型肝炎ウイルスの全長ゲノム配列を含むRNAの製造方法が提供されることにより、C型肝炎ウイルスゲノムに関してより詳細な分析が可能となる。
さらに本発明の全長HCVレプリコンRNA複製細胞又は全長HCVゲノムRNA複製細胞は、HCVタンパク質を製造するために好適に使用することができる。HCVタンパク質の製造は、当業者に周知の任意の方法によって行えばよいが、例えば、全長HCVレプリコンRNA又は全長HCVゲノムRNAを細胞に導入して組換え細胞を作製し、該組換え細胞を培養し、得られる培養物(培養細胞及び/又は培養培地)から常法によりタンパク質を回収することによって行えばよい。
また本発明のHCVウイルス粒子は、肝細胞指向性を有しうる。そのため本発明の全長HCVレプリコンRNAを使用して、肝細胞指向性ウイルスベクターを製造することができる。このウイルスベクターは、遺伝子治療用に好適に用いられる。本発明では、外来遺伝子をコードするRNAを全長HCVレプリコンRNA又は全長HCVゲノムRNAに組み込み、そのRNAを細胞に導入することにより、該外来遺伝子を細胞中に導入し、細胞内で複製させ、さらに発現させることができる。さらに、全長HCVレプリコンRNA又は全長HCVゲノムRNA中のE1タンパク質コード配列、及び/又はE2タンパク質コード配列を、他の生物種由来のウイルスの外殻タンパク質に変換したRNAを作製することにより、そのRNAを様々な生物種の細胞に感染させることも可能となる。この場合にも、全長HCVレプリコンRNA又は全長HCVゲノムRNAにさらに外来遺伝子を組み込んで、それを、該外来遺伝子を肝細胞で発現させるための肝細胞指向性ウイルスベクターとして使用することができる。
本発明は、配列番号12に示す塩基配列からなるRNAに外来遺伝子をコードするRNAを挿入し、それを細胞に導入し、その細胞を培養してウイルス粒子を産生させることを含む、外来遺伝子を含有するウイルスベクターを製造する方法にも関する。
本発明は、本発明に係るHCV粒子又はその一部分をワクチン抗原として含有するC型肝炎ワクチン、及び本発明に係るHCV粒子又はその一部分を抗原として用いてC型肝炎ワクチンを製造する方法も、提供する。
具体的には、作製されたHCV粒子を直接ワクチンとして使用することもできるし、当該分野で既知の方法により弱毒化または不活化して用いることもできる。例えば、調製したHCV粒子を、カラムクロマトグラフィー、ろ過、遠心等により精製することにより、HCVワクチン原液を得た後、かかる原液から、弱毒生HCVワクチンあるいは不活化HCVワクチンを調製すればよい。尚、ウイルスの不活化は、ホルマリン、β−プロピオラクトン、グルタルジアルデヒド等の不活化剤を、例えば、ウイルス浮遊液に添加して混合し、ウイルスと反応させることによって達成することができる(Appaiahgari et al.,Vaccine,(2004)22(27−28),p.3669−3675)。
本発明のワクチンの製造には、HCVレプリコンRNAに公知の技術を用いて変異を導入し病原性を原弱もしくは消失させたものを使用することも可能である。
本発明のワクチンは、溶液または懸濁液のいずれかとして、投与可能に調製される。液体中の溶解または懸濁に適した固形物の形態で調製することができる。調製物は乳濁され、またはリポソームにカプセル化され得る。HCV粒子などの活性免疫原性成分は、医薬上許容される、活性成分に適合した賦形剤がしばしば混合される。適切な賦形剤には、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびそれらの混合物がある。さらに、所望であれば、ワクチンは、少量の補助剤(例えば加湿剤または乳化剤)、pH緩衝剤、および/またはワクチンの効能を高めるアジュバントを含有し得る。有効であり得るアジュバントの例は、限定されないが、以下を包含する。水酸化アルミニウム、N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(CGP11637、nor−MDPと称せられる)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(CGP19835A、MTP−PEと称せられる)、およびRIBI。RIBIは、バクテリアから抽出した3成分、すなわちモノホスホリルリピドA、トレハロースジミコレート、および細胞壁骨格(HPL+TDM+CWS)を2%スクアレン/Tween(登録商標)80エマルジョン中に含有している。アジュバントの効能は、HCV粒子から構成されるワクチンを投与することにより生じるこの免疫原性HCV粒子に対する抗体の量を測定することにより、決定され得る。
本ワクチンは、通常非経口的に、例えば皮下注射または筋内注射のような注射により投与される。他の投与経路に適した別の剤形として、坐薬、および場合により経口製剤が挙げられる。
所望により、アジュバント活性を有する1以上の化合物をHCVワクチンに加えることができる。アジュバントは、該免疫系の非特異的刺激因子である。それらは、HCVワクチンに対する宿主の免疫応答を増強する。当技術分野で公知のアジュバントの具体例としては、フロイント完全および不完全アジュバント、ビタミンE、非イオンブロック重合体、ムラミルジペプチド、サポニン、鉱油、植物油およびCarbopolが挙げられる。粘膜適用に特に適したアジュバントとしては、例えば、大腸菌(E.coli)易熱性毒素(LT)またはコレラ(Cholera)毒素(CT)が挙げられる。他の適当なアジュバントとしては、例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムまたは酸化アルミニウム、油性乳剤(例えば、Bayol(登録商標)またはMarcol 52(登録商標)のもの)、サポニンまたはビタミンEソリュビリゼートが挙げられる。好ましい形態においては、本発明のワクチンはアジュバントを含む。
例えば、皮下、皮内、筋肉内、静脈内に投与する注射剤において、本発明のHCVワクチンとともに含められる医薬上許容される担体または希釈剤の他の具体例としては、安定化剤、炭水化物(例えば、ソルビトール、マンニトール、デンプン、ショ糖、グルコース、デキストラン)、アルブミンまたはカゼインなどのタンパク質、ウシ血清または脱脂乳などのタンパク質含有物質、およびバッファー(例えば、リン酸バッファー)などが挙げられる。
坐薬に使用される従来の結合剤および担体には、例えば、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドが包含され得る。坐薬は、活性成分を0.5%から50%までの範囲で、好ましくは1%から20%までの範囲で含有する混合物から形成することができる。経口製剤は、通常用いられる賦形剤を含有してもよい。この賦形剤としては、例えば、製薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。
本発明のワクチンは、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル剤、持続放出製剤、または粉剤の剤形をとることができ、10%〜95%、好ましくは25%〜70%の活性成分(ウイルス粒子又はその一部分)を含有する。
本ワクチンは、投与剤形に適した方法で、そして予防および/または治療効果があるような量で投与される。投与されるべき量は、通常1回の投与当たり抗原を0.01μgから100,000μgまでの範囲であり、これは、処置される患者、その患者の免疫系での抗体合成能、および所望の防御の程度に依存し、経口、皮下、皮内、筋肉内、静脈内経路などの投与経路にも依存する。
本ワクチンは、単独投与スケジュールで、または好ましくは複合投与スケジュールで与えられ得る。複合投与スケジュールでは、接種の開始時期に1〜10回の個別の投与を行い、続いて免疫応答を維持するおよびまたは強化するのに必要とされる時間間隔で、例えば2回目の投与として1〜4ヵ月後に、別の投与を行い得る。必要であれば、数ヶ月後に引続き投与を行い得る。投与レジメもまた、少なくとも部分的には、個々の患者の必要性により決定され、医師の判断に依存する。
さらに、免疫原性HCV粒子を含有するワクチンは、他の免疫制御剤(例えば、免疫グロブリン)と共に投与してもよい。
HCV粒子ワクチンは、健常人に投与して、健常人にHCVに対する免疫応答を誘導することにより、新たに生じ得るHCV感染に対して予防的に使用することもできる。更に、HCV粒子ワクチンをHCVに感染した患者に投与し、生体内にHCVに対する強い免疫反応を誘導することにより、HCVを排除する治療的ワクチンとして使用することもできる。
本発明の全長HCVレプリコンRNA複製細胞又は全長HCVゲノムRNA複製細胞、又はそれらの細胞において産生されるウイルス粒子を感染させたC型肝炎ウイルス感染細胞を、例えばC型肝炎ウイルスの複製、ウイルス粒子の再構築、ウイルス粒子の放出を促進又は抑制する物質(抗C型肝炎ウイルス物質)をスクリーニングするための試験系として使用することもできる。具体的には、例えば、被験物質の存在下でそれらの細胞を培養し、得られる培養物中の全長HCVレプリコンRNA若しくは全長HCVゲノムRNA又はウイルス粒子を検出し、その被験物質がレプリコンRNA若しくは全長HCVゲノムRNAの複製又はウイルス粒子の形成若しくは放出を促進又は抑制するかどうかを判定することにより、C型肝炎ウイルスの増殖を促進又は抑制する物質をスクリーニングすることができる。この場合、培養物中の全長HCVレプリコンRNA若しくは全長HCVゲノムRNAの検出は、上記細胞から抽出したRNA中の全長HCVレプリコンRNA若しくは全長HCVゲノムRNAの量、割合若しくは有無を測定することによるものであってよい。培養物(主として培養上清)中のウイルス粒子の検出は、培養上清中に含まれるHCVタンパク質の量、割合若しくは有無を検出するものであってよい。
また本培養物中のウイルス粒子を検出することにより、HCV感染患者血清から精製した免疫グロブリンが本発明によるHCVウイルス粒子の感染を阻止する能力を有するかどうかを検討することができる。この試験においては、本発明のHCVウイルス粒子により免疫したマウス、ラット、ウサギなどの血清を用いても良い。HCVの部分蛋白質、HCV遺伝子などによる免疫を利用してもよい。抗体分子以外の、感染を阻止できる他の物質についても、この試験を同様に適用することができる。
本発明のHCVウイルス粒子に対して産生される本発明の抗体には、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を包含する。ポリクローナル抗体が望ましい場合、まず、選択された哺乳類(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウマなど)を、本発明のHCV粒子で免疫感作する。感作動物由来の血清を採集し、既知の手法に従って処理する。HCVエピトープに対するポリクローナル抗体を含有する血清が他の抗原に対する抗体を含有する場合には、このポリクローナル抗体をイムノアフィニティークロマトグラフィーにより精製すればよい。ポリクローナル抗血清を産生させる方法およびそれを処理する方法は当該分野で既知である。ポリクローナル抗体は、既にHCVに感染した哺乳類から単離してもよい。
HCVエピトープに対するモノクローナル抗体もまた、当業者により容易に製造され得る。モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを製造する一般的な方法は、周知である。例えば、Current Protocols in Immunology(John Wiley & Sons,Inc.)に記載された方法を用いることができる。
モノクローナル抗体産生細胞株は、細胞融合により生成してもよく、また、腫瘍遺伝子DNAによるBリンパ球の直接形質転換またはEpstein−Barrウイルスでの形質移入のような他の方法によっても生成してもよい。
これらの方法によって得られたモノクローナル抗体や、ポリクローナル抗体は、HCVの診断や治療、予防に有用である。
本発明のHCV粒子を用いて作製された抗体は、医薬上許容される、溶解剤、添加剤、安定化剤、バッファーなどともに投与される。投与経路は、いずれの投与経路でも良いが、好ましくは、皮下、皮内、筋肉内投与であり、より好ましくは、静脈内投与が好ましい。
本発明の全長HCVレプリコンRNA複製細胞又は全長HCVゲノムRNA複製細胞において産生されたHCV粒子とHCV感受性細胞とを、HCVの細胞への結合を促進又は抑制する物質をスクリーニングするための試験系として使用することもできる。具体的には例えば、被験物質の存在下で、本発明の全長HCVレプリコンRNA複製細胞において産生されたHCV粒子とともにHCV感受性細胞を培養し、得られる培養物中の全長HCVレプリコンRNA又はウイルス粒子を検出し、その被験物質がレプリコンRNAの複製又はウイルス粒子の形成を促進又は抑制するかどうかを判定することにより、C型肝炎ウイルスの増殖を促進又は抑制する物質をスクリーニングすることができる。
このような全長HCVレプリコンRNA若しくは全長HCVゲノムRNA又はウイルス粒子の検出は、上述の手法又は後述の実施例に従って行うことができる。上記試験系は、C型肝炎ウイルス感染の予防剤、治療剤若しくは診断剤の製造又は評価のためにも使用することができる。
具体的には、本発明の上記試験系の利用例としては以下が挙げられる。
(1)HCVの増殖及び感染を抑制する物質の探索
HCVの増殖及び感染を抑制する物質としては、例えば、直接的若しくは間接的にHCVの増殖及び感染に影響を及ぼす有機化合物、あるいはHCVゲノム若しくはその相補鎖の標的配列にハイブリダイズすることによりHCVの増殖若しくはHCVタンパク質の翻訳に直接的又は間接的に影響を及ぼすアンチセンスオリゴヌクレオチド等が挙げられる。
(2)細胞培養中で抗ウイルス作用を有する各種物質の評価
前記各種物質としては、合理的ドラッグデザイン又はハイスループットスクリーニングを用いて得られた物質(例えば単離精製された酵素)等が挙げられる。
(3)HCVに感染した患者の治療のための、新規攻撃標的の同定
例えばHCVウイルス増殖のために重要な役割を果たす宿主細胞性タンパク質を同定するために、本発明に係る全長HCVレプリコンRNA複製細胞又は全長HCVゲノムRNA複製細胞を使用することができる。
(4)HCVウイルスの薬剤等に対する耐性獲得能の評価及び該耐性に関わる変異の同定
(5)C型肝炎ウイルス感染の診断薬又は治療薬の開発、製造及び評価のために使用可能な抗原としてのウイルスタンパク質の製造
(6)C型肝炎ウイルス感染のワクチンの開発、製造及び評価のために使用可能な抗原としてのウイルスタンパク質及び弱毒化HCVの製造
(7)C型肝炎ウイルス感染の診断又は治療用のポリクローナル抗体もしくはモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体の製造。
本発明を、以下の実施例及び図面に基づいてさらに具体的に説明する。但し本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
全長HCVゲノムRNA由来の全長HCVレプリコンRNAの作製
(A)発現ベクターの構築
劇症肝炎の患者から分離したC型肝炎ウイルスであるJFH−1株(遺伝子型2a)のゲノム全長cDNAを含むDNA(JFH−1クローン)を、pUC19プラスミド中でT7 RNAプロモーター配列の下流に挿入したプラスミドDNAを作製した。
具体的には、JFH−1株のウイルスRNAを増幅したRT−PCR断片をpGEM−T EASY vector(Promega)にクローニングしてpGEM1−258、pGEM44−486、pGEM317−849、pGEM617−1323、pGEM1141−2367、pGEM2285−3509、pGEM3471−4665、pGEM4547−5970、pGEM5883−7003、pGEM6950−8035、pGEM7984−8892、pGEM8680−9283、pGEM9231−9634及びpGEM9594−9678の各プラスミドDNAを得た(非特許文献6を参照)。各プラスミドに含まれるウイルスゲノムRNA由来のcDNAをPCR法および制限酵素を用いてつなぎ合わせて、全長のウイルスゲノムcDNAをクローニングした。全長のウイルスゲノムの上流にT7R RNAプロモーター配列を挿入した。このようにして構築されたプラスミドDNAを、以下、pJFH1と称する(図1上段)。なお、上記JFH−1クローンの作製については、特許文献1及び非特許文献3に記載されている。またJFH−1クローンの全長cDNAの塩基配列は、国際DNAデータバンク(DDBJ/EMBL/GenBank)のアクセッション番号:AB047639に登録されている。
次に、プラスミドDNAであるpJFH1の5’非翻訳領域とcore領域の間に、EMCV−IRES(脳心筋炎ウイルスの内部リボゾーム結合部位)及びネオマイシン耐性遺伝子(neo;ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子とも称する)を挿入して、プラスミドDNAであるpFGREP−JFH1を構築した(図1の下段)。この構築手順は、既報(非特許文献4)に従った。また、pJFH1及びpFGREP−JFH1中のNS5B領域について、該領域にコードされるRNAポリメラーゼの活性中心に相当するアミノ酸モチーフGDDをGNDに変異させる突然変異を導入して、突然変異プラスミドクローンpJFH1/GND、及びpFGREP−JFH1/GNDも作製した。突然変異クローンpJFH1/GND及びpFGREP−JFH1/GNDは、それにコードされるNS5Bタンパク質の活性部位のアミノ酸配列が変異しているため、レプリコンRNAを複製するのに必要な活性NS5Bタンパク質を発現することができない。
さらに、レポーター遺伝子導入発現ベクターとして、pFGREP−JFH1の415から420番のMluIサイトと2075から2082番のPmeIサイトの間にルシフェラーゼ遺伝子を導入し、pFGREP−JFH1のネオマイシン耐性遺伝子をルシフェラーゼ遺伝子に置換したpFGREP−JFH1/Lucを作製した。また、pFGREP−JFH1/Lucの10933番をGからAに変異させ、NS5bのRNAポリメラーゼの活性中心のGDDモチーフをGNDに変えた変異体pFGREP−JFH1/Luc/GNDを作製した。
pFGREP−JFH1の415から420番のMluIサイトと1142から1149番のPmeIサイトの間に緑色蛍光タンパク質遺伝子を導入し、pFGREP−JFH1のネオマイシン耐性遺伝子を緑色蛍光タンパク質遺伝子に置換したpFGREP−JFH1/EGFPを作製した。さらに、pFGREP−JFH1/EGFPの10000番をGからAに変異させ、NS5bのRNAポリメラーゼの活性中心のGDDモチーフをGNDに変えた変異体pFGREP−JFH1/EGFP/GNDを作製した。
pFGREP−JFH1の415から420番のMluIサイトと1982から1989番のPmeIサイトの間に分泌型胎盤アルカリ性フォスファターゼ遺伝子を導入し、pFGREP−JFH1のネオマイシン耐性遺伝子を分泌型胎盤アルカリ性フォスファターゼ遺伝子に置換したpFGREP−JFH1/SEAPを作製した。また、pFGREP−JFH1/SEAPの10840番をGからAに変異させ、NS5bのRNAポリメラーゼの活性中心のGDDモチーフをGNDに変えた変異体pFGREP−JFH1/SEAP/GNDを作製した。
(B)全長HCVゲノムRNAと全長HCVレプリコンRNAの作製
全長HCVゲノムRNA合成及び全長HCVレプリコンRNA合成に用いる鋳型DNAを作製するために、上記のとおり構築した発現ベクターpJFH1、pJFH1/GND、pFGREP−JFH1、pFGREP−JFH1/GNDを、それぞれ制限酵素XbaIで切断した。次いで、これらのXbaI切断断片のそれぞれについて、10〜20μgを50μlの反応液中に含有させ、Mung Bean Nuclease 20 Uを用いて30℃で30分間インキュベートすることにより、さらに処理した。Mung Bean Nucleaseは、二本鎖DNA中の一本鎖部分を選択的に分解する反応を触媒する酵素である。通常、上記XbaI切断断片をそのまま鋳型として用いてRNA合成を行うと、XbaIの認識配列の一部であるCUGAの4塩基が3’末端に余分に付加されたレプリコンRNAが合成されてしまう。そこで本実施例では、XbaI切断断片をMung Bean Nucleaseで処理することにより、XbaI切断断片からCUGAの4塩基を除去した。この後、XbaI切断断片を含むMung Bean Nuclease処理後の溶液について、通常法に従ったタンパク質除去処理により、CUGAの4塩基が除去されたXbaI切断断片を精製して、これを鋳型DNAとした。
次に、この鋳型DNAから、T7 RNAポリメラーゼを用いてRNAをin vitro合成した。このRNA合成にはAmbion社のMEGAscriptを用いた。鋳型DNAを0.5〜1.0マイクログラム含む反応液20μlを製造業者の使用説明書に従って反応させた。
RNA合成終了後、反応溶液にDNase(2U)を添加して37℃で15分間反応させた後、さらに酸性フェノールによるRNA抽出を行って、鋳型DNAを除去した。このようにしてpJFH1、pJFH1/GND、pFGREP−JFH1、pFGREP−JFH1/GNDに由来する上述の鋳型DNAから合成したRNAを、それぞれrJFH1、rJFH1/GND、rFGREP−JFH1、rFGREP−JFH1/GNDと命名した。これらのRNAの塩基配列を、rJFH−1、rFGREP−JFH1については配列番号12及び13、rJFH1/GND、rFGREP−JFH1/GNDについては配列番号14及び15にそれぞれ示す。rJFH1は、JFH−1株の全長HCVゲノムと同じ配列構造をもつ、本発明の全長HCVゲノムRNAの一例である。rFGREP−JFH1は、本発明における全長HCVレプリコンRNAの一例である。
続いて、上述の通り作製した発現ベクターpFGREP−JFH1/Luc、pFGREP−JFH1/Luc/GND、pFGREP−JFH1/EGFP、pFGREP−JFH1/EGFP/GND、pFGREP−JFH1/SEAP、pFGREP−JFH1/SEAP/GNDをそれぞれ鋳型として用いて、HCVレプリコンRNAであるrFGR−JFH1/Luc(配列番号21)、rFGR−JFH1/Luc/GND(配列番号22)、rFGR−JFH1/EGFP(配列番号23)、rFGR−JFH1/EGFP/GND(配列番号24)、rFGR−JFH1/SEAP(配列番号25)、rFGR−JFH1/SEAP/GND(配列番号26)を上記と同様の方法で製造した。
【実施例2】
細胞内における全長HCVゲノムRNA複製細胞とウイルス粒子産生
(C)細胞内における全長HCVゲノムRNAの複製とウイルス粒子の産生
上記の通り合成した全長HCVゲノムRNA(rJFH1、rJFH1/GND)のそれぞれを、様々な量で、Huh7細胞から抽出したトータル細胞性RNAと混合して、RNA総量が10μgとなるように調製した。次いでその混合RNAをエレクトロポレーション法によりHuh7細胞に導入した。エレクトロポレーション処理を行ったHuh7細胞を培養ディッシュに播種し、12時間、24時間、48時間及び72時間培養した後に、細胞を回収して、細胞からRNAを抽出して、ノーザンブロットで解析した。ノーザンブロット解析は、Molecular Cloning,A laboratory Manual, 2nd edition,J.Sambrook,E.F.Fritsch,T.Maniatis著、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)の記載に従って行った。具体的には、培養後の細胞から抽出したRNAを変性アガロース電気泳動に供し、泳動終了後にRNAをポジティブチャージナイロン膜に転写した。pJFH1から作製した32PラベルしたDNAまたはRNAプローブを、前記のとおり膜に転写したRNAに対しハイブリダイゼーションさせ、次いでその膜を洗浄し、それをフィルムに感光させることにより、JFH−1クローンの全長HCVゲノムRNAに特異的なRNAバンドを検出した。
図2に示すように、rJFH1/GNDをトランスフェクションした場合、トランスフェクション4時間後において、導入したRNAバンドは弱いシグナルとして確認できたが、時間の経過とともにシグナルは減弱し、24時間後にはほとんどバンドのシグナルが確認できなかった。一方、rJFH1をトランスフェクションした場合、トランスフェクションの4時間後〜12時間後には、導入したRNAバンドのシグナルの強さはrJFH1/GNDを導入した場合と同様にいったん減弱したが、24時間以降にははっきりとしたRNAバンドのシグナルが確認できた。確認されたシグナルはHCVゲノムRNAに特異的であった。つまり導入した全長HCVゲノムRNAの一部が複製増殖したものと考えられた。RNA複製酵素であるNS5Bの活性モチーフを変異させたrJFH1/GNDでは複製はみられず、NS5Bの活性が全長HCVゲノムRNAの複製に重要であることが示された。一方、これまでに分離されたH77株(非特許文献7)、J6株(非特許文献8)や本発明者らが慢性肝炎から分離したJCH1株(非特許文献6)などのC型肝炎ウイルス株に由来する全長HCVゲノムRNAについても同様の実験をおこなったが、これらの株では全長HCVゲノムRNAの複製は全く確認できなかった。
(D)トランスフェクション細胞培養液中のHCVウイルス粒子の検出
上記に従ってエレクトロポレーション処理を行ったHuh7細胞を培養ディッシュに播種し、12時間、24時間、48時間、及び72時間培養した後、培養上清中のHCVコアタンパク質を測定した。測定はオーソHCV抗原IRMAテストによって行った(非特許文献9)。図3に示す通り、rJFH1をトランスフェクションして48時間後及び72時間後の培養上清中にコアタンパク質が検出された。このコアタンパク質がウイルス粒子として分泌されているかどうかを確認するため、rJFH1をトランスフェクションした72時間後の培養液をショ糖密度勾配により分画した。60%(重量/重量)ショ糖溶液(50mM Tris pH7.5/0.1M NaCl/1mM EDTAに溶解)2ml、50%ショ糖溶液1ml、40%ショ糖溶液1ml、30%ショ糖溶液1ml、20%ショ糖溶液1ml、10%ショ糖溶液1mlを遠心チューブに重層し、さらにその上にサンプルの培養上清を4ml重層した。これをベックマンローターS W41Tiで400,000RPM、4℃、16時間遠心した。遠心終了後遠心チューブの底から0.5mlずつ分画回収した。各分画の密度、HCVコア蛋白濃度、全長HCVゲノムRNA量を定量した。全長HCVゲノムRNAの定量的RT−PCRによる検出は、Takeuchi T,Katsume A,Tanaka T,Abe A,Inoue K,Tsukiyama−Kohara K,Kawaguchi R,Tanaka S,Kohara M.Real−Time detection system for quantification of Hepatitis C virus genome.Gastroenterology 116:636−642(1999)に従い、全長HCVゲノムRNAの5’非翻訳領域のRNAを検出することによって行った。具体的には、細胞から抽出したRNAに含まれる全長HCVゲノムRNAを、合成プライマー、R6−130−S17:5’−CGGGAGAGCCATAGTGG−3’(配列番号16)、R6−290−R19:5’−AGTACCACAAGGCCTTTCG−3’(配列番号17)、TaqMan Probe:R6−148−S21FT,5’−CTGCGGAACCGGTGAGTACAC−3’(配列番号18)とEZ rTth RNA PCR kitを用いてPCR増幅し、次いでABI Prism 7700 sequence detector systemにより検出した。
図4に示すように11番のフラクションでコアタンパク質と全長HCVゲノムRNAのピークが一致した。このフラクションの密度は約1.18mg/mlであり、これまで報告されているコアタンパク質と核酸の結合物よりも軽い比重であった。さらに培養上清を0.25% NP40で処理した後に同様の分画を行うと、コアタンパク質と全長HCVゲノムRNAのピークは比重約1.28mg/mlへとシフトした。つまり、NP40処理により、脂質を含む比重の軽い表面膜がウイルス粒子から剥離して、核酸とコアタンパク質のみのコア粒子となった結果、比重が重くなったと考えられた。以上の結果から、rJFH1をHuh7細胞へトランスフェクションすることにより細胞内で全長HCVゲノムRNAが複製されたこと、さらにウイルス粒子が形成され、培養上清中に分泌されたことが明らかになった。
【実施例3】
(E)全長HCVレプリコンRNA複製細胞の作製及び細胞クローンの樹立
実施例1で作製したrFGREP−JFH1及びrFGREP−JFH1/GNDを、実施例2と同様にしてHuh7細胞へトランスフェクションして全長HCVレプリコンRNA複製細胞の作製を行い、さらに全長HCVレプリコンRNA複製細胞クローンの樹立を試みた。
まず、rFGREP−JFH1及びrFGREP−JFH1/GNDのそれぞれをHuh7細胞へトランスフェクションした後、培養ディッシュにその細胞を播種した。16時間から24時間培養した後にG418を様々な濃度で添加した。週に2回培養液を交換しながら培養を継続した。21日間培養した後、クリスタルバイオレットで生存細胞を染色した。染色されるコロニー数を計測し、トランスフェクションしたRNA重量あたりに得られたコロニー数を計算した。また、一部の培養ディッシュでは生存細胞のコロニーをクローン化して培養を継続した。クローン化された細胞からRNA、ゲノムDNA、タンパク質をそれぞれ抽出した後、全長HCVレプリコンRNAの検出、ネオマイシン耐性遺伝子のゲノムDNAへの組み込みの有無、HCVタンパク質の発現を検討した。これらの結果の詳細は下記に示す。
(F)コロニー形成能
上記のトランスフェクションの結果、トランスフェクションしたレプリコンRNA 1μg当たりのコロニー形成能は、rFGREP−JFH1をトランスフェクションしたHuh7細胞では、G418濃度が1.0mg/mlの場合、368 CFU(Colony Forming Unit;コロニー形成単位)/μg・RNAであった(図5の左側)。これに対して、rFGREP−JFH1/GNDをトランスフェクションしたHuh7細胞では、コロニー形成が認められなかった(図5の右側)。このことは、rFGREP−JFH1レプリコンRNAをトランスフェクションしたHuh7細胞のコロニー形成能は、rFGREP−JFH1から発現されるNS5B(RNAポリメラーゼ)の活性に依存することを示した。つまり、コロニーを形成した細胞では、rFGREP−JFH1から発現されるNS5BのはたらきによりrFGREP−JFH1レプリコンRNAが自律複製することによって、ネオマイシン耐性遺伝子が持続的に発現されG418耐性が維持される結果、細胞増殖が可能になったものと考えられた。
(G)樹立した細胞クローンにおける全長HCVレプリコンRNAの検出
上記(E)に従ってrFGREP−JFH1のHuh7細胞へのトランスフェクションにより樹立した全長HCVレプリコンRNA複製細胞クローンから、酸性フェノール抽出法によりトータルRNAを抽出した。次いでこのトータルRNAをノーザンブロット法により解析した。プローブとしてはpFGREP−JFH1特異的プローブを用いた。対照としては、トランスフェクションを行っていないHuh7細胞から同様に抽出したトータルRNA(図6中、「Huh7」として示す)、Huh7細胞から抽出したトータルRNAに試験管内で合成したレプリコンRNAを10の7乗コピー加えたサンプル(図6中、「10」として示す)、及びHuh7細胞から抽出したトータルRNAに試験管内で合成したレプリコンRNAを10の8乗コピー加えたサンプル(図6中、「10」として示す)を用いた。図6中、1〜4は細胞クローンの番号である。
この結果、rFGREP−JFH1と同程度の大きさのRNAがpFGREP−JFH1特異的プローブにより検出された(図6)。これにより、トランスフェクションしたrFGREP−JFH1レプリコンRNAが細胞クローン内で複製増殖していることが確認された。また細胞クローン間で、レプリコンRNAの量に差があることが示された。図6中、例えば、クローン2はレプリコンRNAの量が他のクローンに比べて少なかった。
(H)ネオマイシン耐性遺伝子のゲノムDNAへの組み込みの有無の確認
(E)に従って得られた細胞クローン1〜8(図7中ではFGR−JFH1/2−1〜FGR−JFH1/2−8と表記)について、その細胞クローンのG418に対する耐性がネオマイシン耐性遺伝子の宿主細胞ゲノムへの組み込みによるものでないことを確認するために、ネオマイシン耐性遺伝子特異的プライマー(センスプライマー、NEO−S3:5’−AACAAGATGGATTGCACGCA−3’(配列番号19),アンチセンスプライマー、NEO−R:5’−CGTCAAGAAGGCGATAGAAG−3’(配列番号20))を用いて、細胞クローンから抽出した宿主細胞のゲノムDNAを鋳型とするPCR増幅を行った。この結果、図7に示すとおり、ネオマイシン耐性遺伝子の増幅が示された陽性クローンは認められなかった。
この(H)の結果から、本発明の全長HCVレプリコンRNAをトランスフェクションし樹立した細胞クローンでは、全長HCVレプリコンRNAが複製されていることが確認された。
(I)HCVタンパク質の検出
rFGREP−JFH1をトランスフェクションし樹立した細胞クローンから常法によりタンパク質を抽出して、SDS−PAGE及びウェスタンブロット法による解析を行った。調べた細胞クローンは、上記(G)で用いたものと同じである。合成した全長HCVゲノムRNAをHuh7細胞に一過性にトランスフェクションして得られた細胞抽出液を陽性対照とした(図8、図9及び図10中、JFH−1として示す)。HCVのサブジェノミックRNAレプリコン(SGR−JFH1)をトランスフェクションして得られたクローン細胞抽出液をcoreタンパク質の陰性対照として、及びNS3、NS5aタンパク質の陽性対照として用いた(図8、図9及び図10中、SGR−JFH1として示す)。トランスフェクションしていないHuh7細胞抽出液は全ての陰性対照として用いた(図8、図9及び図10中、Huh7として示す)。それぞれの細胞クローンから抽出したタンパク質試料をPVDF膜(Immobilon−P,Millipore社製)にブロッティングし、抗core特異的抗体及び抗NS3特異的抗体(Dr.Moradpourより分与されたもの;Wolk B,et al,J.Virology.2000;74:2293−2304)を用いて、全長HCVレプリコンRNAにコードされているcoreタンパク質及びNS3タンパク質を検出した。図8及び図9に示される通り、rFGREP−JFH1をトランスフェクションし樹立した細胞クローン1〜4では、それぞれのタンパク質について陽性対照と同じ大きさのタンパク質が検出された。トランスフェクションしていないHuh7細胞ではcoreタンパク質、及びNS3タンパク質も検出されなかったため、細胞クローン1〜4では、トランスフェクションされた全長HCVレプリコンRNAが自律複製し、さらにcoreタンパク質やNS3タンパク質が発現されていることが確認された。
なお、C型肝炎患者の血清を抗体として用いることにより、上記でNS3タンパク質の発現が確認された各細胞クローンについて、全長HCVレプリコンRNAからのNS5Aタンパク質の発現も同様に確認した(図10)。
以上の(H)及び(I)の結果から、全長HCVレプリコンRNAをトランスフェクションし樹立した細胞クローンでは、全長HCVレプリコンRNAが複製され、さらにウイルスタンパク質が発現されていることが確認された。
(J)全長HCVレプリコンRNA複製細胞におけるウイルス粒子産生
上記(E)に従ってrFGREP−JFH1をHuh7細胞へトランスフェクションし、樹立した全長HCVレプリコンRNA複製細胞クローン2及び3(FGR−JFH1/2−3)(7)培養上清を回収して、上記(D)と同様の方法で、培養上清中のHCVウイルス粒子を測定した。この結果を図11に示す。図11中、網掛けの円は各フラクション(画分)の比重(g/ml)を示す。また黒塗りの円は、coreタンパク質の量(fmol/L)を示す。白抜きの円は、全長HCVレプリコンRNAの力価(×0.1コピー/mL)を示す。
図11に示すように、比重が約1.18〜1.20mg/mlとなるフラクションで、coreタンパク質と全長HCVレプリコンRNAのピークは一致していた。またそれよりも軽い分画にも小さなピークを認めた。以上の結果から、rFGREP−JFH11をトランスフェクションしたHuh7細胞中では、全長HCVレプリコンRNAが複製されたこと、及びウイルス粒子が形成されて培養上清中に分泌されたことが示された。
【実施例4】
(K)培養上清中のウイルス粒子の感染実験
(H)で用いた細胞クローン1〜8(FGR−JFH1/2−1、FGR−JFH1/2−2、FGR−JFH1/2−3、FGR−JFH1/2−4、FGR−JFH1/2−5、FGR−JFH1/2−6、FGR−JFH1/2−7、FGR−JFH1/2−8)のそれぞれの培養上清をHuh7細胞に添加して、培養上清中のウイルス粒子をHuh7細胞に感染させた。感染翌日に感染させたHuh7細胞の培養液にG418を0.3mg/ml添加し、さらに21日間培養した。培養終了後に細胞を固定し、クリスタルバイオレットで染色したところ、FGR−JFH1/2−3、FGR−JFH1/2−5、FGR−JFH1/2−6の培養上清を用いて感染させた細胞についてコロニー形成が観察された。一方、対照に用いたサブジェノミックレプリコン細胞SGR−JFH1/4−1(非特許文献6記載)の培養上清を用いて感染させた細胞ではコロニー形成はみられなかった。図12に、FGR−JFH1/2−3とSGR−JFH1/4−1の培養上清4mlまたは8mlをHuh7細胞に添加し、21日間培養した後に染色した培養ディッシュの写真を示す。FGR−JFH1/2−3の培養上清4mlを添加した細胞を播種したディッシュには3コロニー、FGR−JFH1/2−3の培養上清8mlを添加した細胞を播種したディッシュには9コロニーの形成を確認した。しかし、SGR−JFH1/4−1の培養上清を添加した細胞を播種したディッシュではコロニー形成はみられなかった。
FGR−JFH1/2−3、FGR−JFH1/2−5の培養上清を用いてC型肝炎ウイルスに感染させ、形成されたコロニーを、次いでクローン化した。FGR−JFH1/2−3の培養上清を用いた培養ディッシュから、FGR−JFH1/C2−3−11、FGR−JFH1/C2−3−12、FGR−JFH1/C2−3−13の3クローンを樹立した。FGR−JFH1/C2−5の培養上清を用いた培養ディッシュから、FGR−JFH1/C2−5−11、FGR−JFH1/C2−5−12の2クローンを樹立した。
FGR−JFH1/C2−3−11、FGR−JFH1/C2−3−12、FGR−JFH1/C2−3−13、FGR−JFH1/C2−5−11、FGR−JFH1/C2−5−12の各細胞クローンの培養上清を用いて再度Huh7細胞を感染させると、FGR−JFH1/C2−3−12、FGR−JFH1/C2−5−12の培養上清を用いた培養ディッシュではコロニーの形成が観察された。FGR−JFH1/C2−3−12の培養上清を用いて感染させた細胞から、さらにFGR−JFH1/C2−3−12−1,FGR−JFH1/C2−3−12−2の2クローンを樹立した。FGR−JFH1/C2−5−12の培養上清を用いて感染させた細胞から、さらにFGR−JFH1/C2−5−12−1、FGR−JFH1/C2−5−12−2の2クローンを樹立した。
以上の通り全長HCVレプリコンRNA複製細胞の培養上清を用いて感染させ、その感染細胞より樹立したこれらの細胞クローンから、RNA、タンパク質、ゲノムDNAを抽出した。ゲノムDNAを鋳型としたPCRでネオマイシン耐性遺伝子の組み込みの有無を検討したところ、いずれも陰性であった。また、RNAを鋳型とする定量的PCR法により、細胞内で複製している全長HCVレプリコンRNAを検出することができた。さらに培養上清中にcoreタンパク質を検出することができた。この結果は、本発明の全長HCVレプリコンRNA複製細胞から産生された全長HCVレプリコンRNAを含むウイルス粒子が、新たな細胞に感染することができることを示している。
【産業上の利用可能性】
本発明の方法により、HCVウイルス粒子を細胞培養系で作製することができる。本発明のレプリコンRNAを用いれば、細胞培養系においてHCVの全長ゲノムRNAを含有するRNAを効率よく製造することができる。また本発明に係る全長HCVレプリコンRNA又は全長HCVゲノムRNAを導入した細胞を用いれば、全長HCVレプリコンRNA又は全長HCVゲノムRNAを複製し、本発明のHCVウイルス粒子を細胞培養系で持続的に産生させることができる。本発明の全長HCVレプリコンRNA又は全長HCVゲノムRNAを導入した細胞は、HCVの複製過程、ウイルス粒子形成過程、ウイルス粒子の細胞外放出過程に影響を及ぼす各種物質をスクリーニングするための試験系として利用することもできる。本発明の全長HCVレプリコンRNA及び全長HCVゲノムRNA並びにウイルス粒子は、外来遺伝子のウイルスベクターとしても有用である。本発明のウイルス粒子又はその一部分はまた、C型肝炎ウイルスに対するワクチン抗原としてワクチンに含有させることができる。さらに、本発明のウイルス粒子と他の細胞とを一緒に培養する系を、ウイルス粒子の細胞への感染に影響を及ぼす各種物質をスクリーニングするための試験系として利用することができる。本発明の全長HCVレプリコンRNA又は全長HCVゲノムRNAはまた、HCVの全長ゲノム配列を容易に複製することができる鋳型としても有用である。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願の全体を参照として本明細書に組み入れるものとする。
【配列表フリーテキスト】
配列番号1の配列は、JFH−1クローン由来のHCVゲノムRNAの5’非翻訳領域を示す。
配列番号2の配列は、JFH−1クローン由来のHCVゲノムRNAのcoreタンパク質コード配列を示す。
配列番号3の配列は、JFH−1クローン由来のHCVゲノムRNAのE1タンパク質コード配列を示す。
配列番号4の配列は、JFH−1クローン由来のHCVゲノムRNAのE2タンパク質コード配列を示す。
配列番号5の配列は、JFH−1クローン由来のHCVゲノムRNAのNS2タンパク質コード配列を示す。
配列番号6の配列は、JFH−1クローン由来のHCVゲノムRNAのNS3タンパク質コード配列を示す。
配列番号7の配列は、JFH−1クローン由来のHCVゲノムRNAのNS4Aタンパク質コード配列を示す。
配列番号8の配列は、JFH−1クローン由来のHCVゲノムRNAのNS4Bタンパク質コード配列を示す。
配列番号9の配列は、JFH−1クローン由来のHCVゲノムRNAのNS5Aタンパク質コード配列を示す。
配列番号10の配列は、JFH−1クローン由来のHCVゲノムRNAのNS5Bタンパク質コード配列を示す。
配列番号11の配列は、JFH−1クローン由来のHCVゲノムRNAの3’非翻訳領域を示す。
配列番号12の配列は、JFH−1クローン由来の全長HCVゲノムRNAを示す。
配列番号13の配列は、JFH−1クローン由来の全長HCVゲノムRNAを含むレプリコンRNAを示す。
配列番号14の配列は、アミノ酸モチーフGDDをGNDに変異させた、JFH−1クローン由来の全長HCVゲノムRNAを示す。
配列番号15の配列は、アミノ酸モチーフGDDをGNDに変異させた、JFH−1クローン由来の全長HCVゲノムRNAを含むレプリコンRNAを示す。
配列番号16〜20の配列は、プライマーを示す。
配列願号21の配列は、発現ベクターpFGREP−JFH1/Luc由来のレプリコンRNAを示す。
配列願号22の配列は、発現ベクターpFGREP−JFH1/Luc/GND由来のレプリコンRNAを示す。
配列願号23の配列は、発現ベクターpFGREP−JFH1/EGFP由来のレプリコンRNAを示す。
配列願号24の配列は、発現ベクターpFGREP−JFH1/EGFP/GND由来のレプリコンRNAを示す。
配列願号25の配列は、発現ベクターpFGREP−JFH1/SEAP由来のレプリコンRNAを示す。
配列願号26の配列は、発現ベクターpFGREP−JFH1/SEAP/GND由来のレプリコンRNAを示す。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子型2aのC型肝炎ウイルスのゲノムRNAの、5’非翻訳領域、coreタンパク質コード配列、E1タンパク質コード配列、E2タンパク質コード配列、NS2タンパク質コード配列、NS3タンパク質コード配列、NS4Aタンパク質コード配列、NS4Bタンパク質コード配列、NS5Aタンパク質コード配列、NS5Bタンパク質コード配列、及び3’非翻訳領域と、少なくとも1つの選択マーカー遺伝子及び/又は少なくとも1つのリポーター遺伝子と、少なくとも1つのIRES配列と、を含む塩基配列からなる、レプリコンRNA。
【請求項2】
前記塩基配列が、前記の5’非翻訳領域、少なくとも1つの選択マーカー遺伝子及び/又は少なくとも1つのリポーター遺伝子、少なくとも1つのIRES配列、coreタンパク質コード配列、E1タンパク質コード配列、E2タンパク質コード配列、NS2タンパク質コード配列、NS3タンパク質コード配列、NS4Aタンパク質コード配列、NS4Bタンパク質コード配列、NS5Aタンパク質コード配列、NS5Bタンパク質コード配列、及び3’非翻訳領域を、5’から3’方向へこの順番で含む、請求項1記載のレプリコンRNA。
【請求項3】
遺伝子型2aのC型肝炎ウイルスのゲノムRNAが、配列番号12に示す塩基配列からなるRNAである、請求項1又は2記載のレプリコンRNA。
【請求項4】
5’非翻訳領域が配列番号1に示す塩基配列からなり、coreタンパク質コード配列が配列番号2に示す塩基配列からなり、E1タンパク質コード配列が配列番号3に示す塩基配列からなり、E2タンパク質コード配列が配列番号4に示す塩基配列からなり、NS2タンパク質コード配列が配列番号5に示す塩基配列からなり、NS3タンパク質コード配列が配列番号6に示す塩基配列からなり、NS4Aタンパク質コード配列が配列番号7に示す塩基配列からなり、NS4Bタンパク質コード配列が配列番号8に示す塩基配列からなり、NS5Aタンパク質コード配列が配列番号9に示す塩基配列からなり、NS5Bタンパク質コード配列が配列番号10に示す塩基配列からなり、3’非翻訳領域が配列番号11に示す塩基配列からなる、請求項1〜3のいずれか1項記載のレプリコンRNA。
【請求項5】
以下の(a)又は(b)のRNAからなるレプリコンRNA。
(a)配列番号13に示す塩基配列からなるRNA。
(b)配列番号13に示す塩基配列において1〜100個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるRNAであって、自律複製能及びウイルス粒子産生能を有するRNA。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載のレプリコンRNAを細胞に導入することを含む、該レプリコンRNAを複製しかつウイルス粒子を産生する細胞を製造する方法。
【請求項7】
細胞が増殖性細胞である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
細胞が真核細胞である、請求項6又は7記載の方法。
【請求項9】
真核細胞がヒト肝由来細胞、ヒト子宮頸由来細胞、又はヒト胎児腎由来細胞である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
真核細胞がHuh7細胞、HepG2細胞、IMY−N9細胞、HeLa細胞、又は293細胞である、請求項8記載の方法。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれか1項記載の方法により製造される、レプリコンRNAを複製しかつウイルス粒子を産生する細胞。
【請求項12】
請求項11記載の細胞を培養してウイルス粒子を産生させることを含む、C型肝炎ウイルス粒子の製造方法。
【請求項13】
請求項12記載の方法により製造される、C型肝炎ウイルス粒子。
【請求項14】
請求項11記載の細胞を培養し、培養物中のウイルス粒子を他の細胞に感染させることを含む、C型肝炎ウイルス感染細胞を製造する方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法によって製造される、C型肝炎ウイルス感染細胞。
【請求項16】
被験物質の存在下で、下記(a)〜(c):
(a)請求項11記載の細胞
(b)請求項15記載のC型肝炎ウイルス感染細胞、並びに
(c)請求項13記載のC型肝炎ウイルス粒子及びC型肝炎ウイルス感受性細胞、
のうちの少なくとも1つを培養し、得られる培養物中のレプリコンRNA又はウイルス粒子を検出することを含む、抗C型肝炎ウイルス物質をスクリーニングする方法。
【請求項17】
請求項13記載のC型肝炎ウイルス粒子又はその一部分を含有する、C型肝炎ワクチン。
【請求項18】
請求項13記載のC型肝炎ウイルス粒子又はその一部分を抗原として使用して、C型肝炎ワクチンを製造する方法。
【請求項19】
請求項1〜5のいずれか1項記載のレプリコンRNAを使用して、遺伝子治療のための肝細胞指向性ウイルスベクターを製造する方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法により製造される、肝細胞指向性ウイルスベクター。
【請求項21】
外来遺伝子をコードするRNAを請求項1〜5のいずれか1項記載のレプリコンRNA中に挿入し、それを細胞中に導入することを含む、該細胞内で外来遺伝子を複製及び/又は発現させる方法。
【請求項22】
配列番号12に示す塩基配列からなるRNAを細胞に導入することを含む、該RNAを複製しかつウイルス粒子を産生する細胞を製造する方法。
【請求項23】
配列番号12に示す塩基配列からなるRNAを細胞に導入し、その細胞を培養してウイルス粒子を産生させることを含む、C型肝炎ウイルス粒子の製造方法。
【請求項24】
細胞が増殖性細胞である、請求項21又は22記載の方法。
【請求項25】
配列番号12に示す塩基配列からなるRNAに外来遺伝子をコードするRNAを挿入し、それを細胞に導入し、その細胞を培養してウイルス粒子を産生させることを含む、外来遺伝子を含有するウイルスベクターを製造する方法。
【請求項26】
請求項13記載のC型肝炎ウイルス粒子に対する抗体。

【国際公開番号】WO2005/080575
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【発行日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510335(P2006−510335)
【国際出願番号】PCT/JP2005/003232
【国際出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(591063394)財団法人 東京都医学研究機構 (69)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】