説明

ヒトDKKL1の新規スプライス改変体

本発明は癌を含む疾患の検出、診断および治療において使用するための新規な配列に関する。本発明はDKKL1遺伝子の新規なスプライス型を提供する。本発明は、ヒトDKKL1配列の新規なスプライス改変体を有するポリヌクレオチド、その相当する遺伝子産物および遺伝子産物に特異的な抗体を関連する癌の検出、診断、防止および/または治療において使用する方法を提供する。例えば、本発明によって、(a)図3A〜3Eに示すクローン379−R8およびクローン379−RS3のヌクレオチド配列の一部など、および(b)図3A〜3Eに示すクローン379−R4、クローン379−R5、クローン379−R2、クローン379−RS7およびクローン379−RS4のヌクレオチド配列の一部などからなる群より選択されるポリヌクレオチド配列の少なくとも10の連続するヌクレオチドを含む、単離された核酸。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2003年9月30日に出願の米国仮出願第60/507,682号に対して優先権を主張するのであり、この出願は、すべての目的のために、本願明細書中において、参考として援用される。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は一般的に癌関連遺伝子の分野に関する。特に癌の診断および治療において使用するためのヒト組織におけるヒトDKKL1遺伝子の新規なスプライス改変体を示すヌクレオチド配列、並びに、スクリーニング方法における新規な配列の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
癌遺伝子は癌を誘発する遺伝子である。腫瘍形成は広範な種類の機序、例えば癌遺伝子を含有するウィルスによる細胞の感染、宿主ゲノム内のプロト癌遺伝子の活性化、およびプロト癌遺伝子および腫瘍抑制遺伝子の突然変異により起こりえる。腫瘍形成は基本的には体細胞の進化(すなわち、生育の制御の進行的損失を伴う突然変異および天然の選択)により駆動される。これらの体細胞突然変異のための標的として作用する遺伝子はそれぞれその突然変異体の表現型が優性または劣性のどちらかに応じて、プロト癌遺伝子または腫瘍抑制遺伝子のいずれかに分類される。
【0004】
特定の生細胞における遺伝子発現のパターンはその現状に特徴的なものである。細胞の状態または型のほぼ全ての相違点は遺伝子1つ以上のRNA水準の定性的および定量的な相違点に反映されている。例えば癌遺伝子は腫瘍形成の正の調節因子であるが、腫瘍抑制遺伝子は腫瘍形成の負の調節因子である(非特許文献1;非特許文献2)。
【0005】
分泌タンパク質は直接接触していない細胞同士の間のシグナル伝達に関与しており、哺乳類の細胞の分化においてある役割を果たしている。wnt遺伝子ファミリーはInt1/Wnt1プロト癌遺伝子に関係する分泌タンパク質のクラスをコードしている(非特許文献3).Dickkopf(Dkk)はWntシグナル伝達の負の調節物質である(非特許文献4;非特許文献5)。Dkkタンパク質は分泌され、システインリッチである。ヒトDickkopfタンパク質(「システインリッチ分泌タンパク質」またはCRSPとも称する)のファミリーが報告されている(特許文献1(McCarthy)を参照)。これらは種々の活性を有するヒトゲノムにおける4Dkkのメンバーである。一部はWntシグナル伝達を抑制しない(非特許文献6)。Dkkの非脊椎動物ホモログは存在しない。
【0006】
ヒトDickkopf遺伝子ファミリーの別のメンバーは配列相同性により発見されている。DKKL−1(またはSoggy−1)と称されるDkk様タンパク質が報告されている(非特許文献7;特許文献1(McCarthy)を参照のこと)。DKKL−1のマウスオーソログが報告されている(非特許文献8)。
【0007】
免疫療法または治療目的の抗体の使用は癌の治療のために近年用いられている。受動免疫療法には癌治療におけるモノクローナル抗体の使用が含まれる。例えば、非特許文献9を参照のこと。これらの抗体に固有の治療上の生物活性は腫瘍細胞の成育または生存の直接の抑制、および身体の免疫系の天然の細胞殺傷活性を収集する能力を包含する。このような物質は単独で、または、放射線または化学療法と組み合わせて投与される。リンパ腫および乳癌に関して認可されたRituxan(登録商標)およびHerceptin(登録商標)はそれぞれこのような療法の2つの例である。あるいは、抗体を用いて、抗体が毒性物質に連結され、そして腫瘍への特異的結合により腫瘍に対してその物質を指向させるような抗体コンジュゲートを作製してよい。Mylotarg(登録商標)は白血病の治療に用いられる認可された抗体コンジュゲートの一例である。
【0008】
従って、診断および/または治療用の抗体のための標的としての種々の癌に関連する抗原(癌関連ポリペプチド)を提供することが本発明の別の目的である。これらの抗原は薬剤の発見(例えば小分子)のため、および、細胞の調節、生育および分化を更に特性化するために有用である。
【特許文献1】国際公開第00/52047号パンフレット
【非特許文献1】Marshall,Cell,1991年 第64巻 p.313−326
【非特許文献2】Weinberg,Science,1991年 第254巻 p.1138−1146
【非特許文献3】Cadigan and Nusse,Genes&Development 1997年 第11巻 p.3286−3305
【非特許文献4】Glinka A,et al.Nature,1998年1月222日第391(6665)巻 p.357−362
【非特許文献5】Niehrs C Trends Genet.1999年8月第15(8)巻p.314−319
【非特許文献6】Wu W.et al.Cur.Biol.2000年12月14日−28日;第10(24)巻 p.1611−1614
【非特許文献7】Krupnick VE,et al.,Gene 1999年 第238(2)巻p.301−313
【非特許文献8】Kaneko KJ et al.,Nuc.Acids Res.2000年 第28(20)巻 p.3982−3990
【非特許文献9】Cancer:Principles and Practice of Oncology,第6版 2001年 第20章 p.495−508
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的に従って、本発明はヒトDKKL−1遺伝子の2種の新規なスプライス改変体を提供する。
【0010】
1つの態様において、本発明は図3A〜3Eに記載するDKKL−1のスプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリヌクレオチドを提供する。新規なアイソフォーム2は図3A〜3Eに示すクローン(clone)379−R8および379−RS3のヌクレオチド配列の329位および330位にわたる少なくとも4、6、10、15、20、25または30の連続するヌクレオチドを含む新規なスプライス接合体を含み、そしてDKKL−1ポリヌクレオチド配列またはその相補体にハイブリダイズする。新規なアイソフォーム3は図3A〜3Eに示すクローン379−R4、クローン379−R5、クローン379−R2、クローン379−RS7およびクローン379−RS4のヌクレオチド配列の188位および189位にわたる少なくとも4、6、10、15、20、25または30の連続するヌクレオチドを含む新規なスプライス接合体を含み、そしてDKKL−1ポリヌクレオチド配列またはその相補体にハイブリダイズする。
【0011】
別の態様において、本発明は図4A〜4Bに示すDKKL−1のスプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリペプチドを提供する。新規なアイソフォーム2は図4A〜4Bに示すクローン379−R8およびクローン379−RS3のポリペプチド配列の108位および109位にわたる少なくとも2、4、6、8、10、12、15または20つ連続する残基を含む新規なスプライス接合体を含み、そしてDKKL−1ポリペプチド配列またはそのフラグメントを含む。新規なアイソフォーム3は図4A〜4Bに示すクローン379−R4、クローン379−R5、クローン379−R2、クローン379−RS7およびクローン379−RS4のポリペプチド配列の61位および62位にわたる少なくとも2、4、6、8、10、12、15または20つ連続する残基を含む新規なスプライス接合体を含み、そしてDKKL−1ポリペプチド配列またはそのフラグメントを含む。
【0012】
本発明は原発腫瘍上のDKKL1スプライス改変体の発現プロファイリングによるヒト癌の指標を提供する。1つの実施形態において、新規なスプライス改変体はDKKL1遺伝子座のDNA増幅に関連する。1つの実施形態において、新規なアイソフォーム2および3の形成に関連するDKKL1遺伝子座のスプライシング現象の誤調節が種々の原発腫瘍において起こる。
【0013】
1つの態様において、薬剤候補のスクリーニング方法はDKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリヌクレオチドを発現する細胞を提供することを含む。好ましい実施形態は他の細胞と比較して癌細胞、好ましくはリンパ、乳房、前立腺、精巣または上皮細胞において示差的に発現される。方法は更に、薬剤候補を細胞に添加すること、および、DKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリヌクレオチドの発現に対する薬剤候補の作用を測定することを包含する。
【0014】
1つの実施形態において、薬剤候補をスクリーニングする方法は薬剤候補の非存在下の発現の水準を薬剤候補の存在下の発現の水準と比較することを包含する。
【0015】
更にまた、DKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドに結合することのできる生物活性剤を得るスクリーニングの方法も本発明において提供され、方法は、ポリペプチドと候補生物活性剤を組み合わせること、および、ポリペプチドへの候補薬剤の結合を測定することを含む。
【0016】
更にまた、ポリペプチドの活性を調節することのできる生物活性剤を得るスクリーニングのための方法も本発明において提供される。1つの実施形態において、方法はポリペプチドと候補生物活性剤を組み合わせること、および、ポリペプチドの生物活性に対する候補薬剤の作用を測定することを含む。
【0017】
更にまた患者に薬剤を投与すること、および、患者から細胞試料を採取することを含む候補癌用薬剤の作用を評価する方法も本発明において提供される。次にDKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリヌクレオチドの発現について、細胞の発現プロファイルを測定する。この方法は更に、患者の発現プロファイルを健康な個体の発現プロファイルと比較することを含んでよい。
【0018】
別の態様において、DKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質の活性を抑制する方法が提供される。1つの実施形態において、方法はDKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質の抑制剤を患者に投与することを含む。タンパク質の作用を中和する方法も提供される。好ましくは、方法は中和を起こすために十分な量の該タンパク質に該タンパク質に特異的な物質を接触させることを含む。
【0019】
更にまた、DKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含む核酸セグメントポリヌクレオチドを含むバイオチップが本発明において提供される。更にまた個体の癌またはリンパ腫の遺伝子少なくとも1つを配列決定することによる癌、特にリンパ腫または白血病または癌腫の罹患し易さを診断または決定するための方法も本発明において提供される。本発明の更に別の態様においては、個体におけるリンパ腫および白血病の遺伝子のコピー数を含む癌を調べるための方法が提供される。
【0020】
本発明はDKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリヌクレオチドの配列からなる群より選択される配列の少なくとも10、12、15、20または30の連続するヌクレオチドを含む単離された核酸およびそれを含む宿主細胞を提供する。
【0021】
一部の実施形態においては、ポリヌクレオチドまたはその相補体またはフラグメントは検出可能な標識をさらに含むか、固体支持体に結合されるか、少なくとも部分的に化学合成により製造されるか、アンチセンスフラグメントであるか、1本鎖であるか、2本鎖であるかまたはマイクロアレイを含む。
【0022】
本発明はDKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3のうちの1つ以上を含むポリヌクレオチドのオープンリーディングフレーム内にコードされる、単離されたポリペプチドを提供する。本発明はDKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列をポリペプチドが含むような単離されたポリペプチドを提供する。本発明は更にDKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列のエピトープのアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドを提供する。1つの実施形態において、本発明はそのようなポリペプチドに結合する単離された抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)またはその抗原結合フラグメントを提供する。単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、固体支持体に結合するか、更に検出可能な標識を含んでよい。
【0023】
1つの実施形態において、本発明は被験試料中の癌の存在を診断するためのキットを提供し、該キットはDKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリヌクレオチド配列またはその相補体に選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチド少なくとも1つを含む。別の実施形態においては、本発明はDKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはそのフラグメントを含む電子ライブラリを提供する。
【0024】
1つの実施形態において、本発明は(a)DKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリヌクレオチドからなる群より選択される核酸配列またはそのフラグメントによりコードされる癌関連(CA)遺伝子を発現する細胞を調製する工程;(b)抗癌剤候補に癌細胞から誘導した組織試料を接触させること;(c)組織試料中のポリヌクレオチドの発現に対する抗癌剤候補の作用をモニタリングすること;および、場合により(d)該薬剤候補の非存在下の発現水準を薬剤候補の存在下の発現水準と比較すること、を含む抗癌活性についてスクリーニングする方法を提供する。
【0025】
1つの実施形態において、本発明は、被験細胞試料中のポリペプチドの発現に関連する癌を検出するための方法であって、以下の工程、即ち:(i)図4Aおよび4Bに示すDKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリペプチドまたはそのフラグメントからなる群より選択されるポリペプチド少なくとも1つの発現水準を検出すること;および(ii)被験試料中のポリペプチドの発現水準を正常細胞試料中のポリペプチドの発現水準と比較すること、ここで正常細胞中のポリペプチド発現水準と相対比較して改変された正常細胞試料中のポリペプチド発現水準は被験細胞試料中の癌の存在を示すものであること、を含む、方法を提供する。
【0026】
別の実施形態において、本発明は、被験細胞試料中のポリペプチドの発現に関連する癌を検出するための方法であって、以下の工程、即ち:(i)図4Aおよび4Bに示すDKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリペプチドまたはそのフラグメントからなる群より選択されるポリペプチド少なくとも1つの活性水準を検出すること;および(ii)被験試料中のポリペプチドの活性水準を正常細胞試料中のポリペプチドの活性水準と比較すること、ここで正常細胞中のポリペプチド活性水準と相対比較して改変された被験細胞試料中のポリペプチド活性水準は被験細胞試料中の癌の存在を示すものであること、を含む、方法を提供する。
【0027】
別の実施形態において、本発明は、被験血清試料中の抗体の存在に関連する癌を検出するための方法であって、以下の工程、即ち:(i)図4Aおよび4Bに示すDKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリペプチドまたはそのフラグメントからなる群より選択される抗原性ポリペプチドに対する抗体の水準を検出すること;および(ii)被験試料中の該抗体の該水準を対照試料中の該抗体の水準と比較すること、ここで対照試料中の抗体の水準と相対比較して改変された該被験試料中の抗体水準は被験血清試料中の癌の存在を示すものであること、を含む、方法を提供する。
【0028】
本発明は、タンパク質の活性を調節することができる生物活性剤のスクリーニングのための方法であって、該タンパク質が図3A〜3Eに示すDKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリヌクレオチドからなる群より選択される核酸配列を含む核酸によりコードされ、該方法は以下の工程、即ち:a)該タンパク質と候補生物活性剤を組み合わせること;およびb)該タンパク質の生物活性に対する候補薬剤の作用を測定すること、を含む、方法を提供する。
【0029】
1つの実施形態において、本発明は、以下の工程、即ち:a)第1の個体の第1の組織における図3A〜3Eに示すDKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリヌクレオチドからなる群より選択される核酸配列を含む遺伝子1つ以上の発現を測定すること;およびb)該第1の個体の第2の正常組織型または第2の未罹患個体に由来する該遺伝子の該発現を比較すること、ここで該発現の差は第1の個体が癌を有することを示すものであること、を含む癌を診断するための方法を提供する。
【0030】
別の実施形態においては、本発明はタンパク質の活性を調節する生物活性剤を患者に投与することを含む癌を処置するための方法であって、ここで、該タンパク質は図3A〜3Eに示すDKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリヌクレオチドからなる群より選択される核酸配列を含む核酸によりコードされ、そして更に、生物活性剤がタンパク質に結合し、これはDkk受容体との相互作用;膜結合Dkk受容体を介した細胞内タンパク質との相互作用、細胞外タンパク質との相互作用、細胞シグナル導入のモジュレーション、wnt媒介シグナル導入のモジュレーション、発生または分化に関与する細胞内の遺伝子発現の調節からなる群より選択される活性を有する、方法を提供する。
【0031】
本発明はまた個体内の癌細胞の存在または非存在を検出するための方法を提供し、方法は、本発明の抗体に個体由来の細胞を接触させること;および、癌細胞および抗体に由来するDKKL1の新規なアイソフォームによりコードされるタンパク質の複合体を検出することを含み、ここで複合体の検出は個体内の癌細胞の存在と相関している。1つの実施形態において、本発明は個体内の癌細胞の成育を抑制するための方法を提供し、方法は本発明の薬学的組成物の有効量を個体に投与することを含む。別の実施形態においては、本発明は個体内の癌細胞に治療薬を送達するための方法を提供し、方法は本発明の薬学的組成物の有効量を個体に投与することを含む。
【0032】
癌に関連する新規な配列もまた本発明において提供される。本発明の他の態様は本発明の以下の説明により当業者には明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
定義
「新規なアイソフォーム2を含むポリヌクレオチド」はヌクレオチドの329位および330位にわたる少なくとも4、6、10、15、20、25または30の連続するヌクレオチドを含む新規なスプライス接合体を含む。
【0034】
図3A〜3Eに示すクローン379−R8およびクローン379−RS3の配列は図3A〜3Eに示すとおりであり、そして、DKKL−1ポリヌクレオチド配列またはその相補体にハイブリダイズする。「新規なアイソフォーム3を含むポリヌクレオチド」は図3A〜3Eに示すクローン379−R4、クローン379−R5、クローン379−R2、クローン379−RS7およびクローン379−RS4のヌクレオチド配列の188位および189位にわたる少なくとも4、6、10、15、20、25または30の連続するヌクレオチドを含む新規なスプライス接合体を含み、そして、DKKL−1ポリヌクレオチド配列またはその相補体にハイブリダイズする。
【0035】
「新規なアイソフォーム2を含むポリペプチド」は図4A〜4Bに示すクローン379−R8およびクローン379−RS3のポリペプチド配列の108位および109位にわたる少なくとも2、4、6、8、10、12、15または20つ連続する残基を含む新規なスプライス接合体を含み、そしてDKKL−1ポリペプチド配列またはそのフラグメントを含む。「新規なアイソフォーム3を含むポリペプチド」は図4A〜4Bに示すクローン379−R4、クローン379−R5、クローン379−R2、クローン379−RS7およびクローン379−RS4のポリペプチド配列の61位および62位にわたる少なくとも2、4、6、8、10、12、15または20つ連続する残基を含む新規なスプライス接合体を含み、そしてDKKL−1ポリペプチド配列またはそのフラグメントを含む。
【0036】
本発明の方法を用いて診断またはスクリーニングできる適当な癌は部位により、または組織学的な型により分類される癌を包含する。部位により分類される癌は口腔および咽頭の癌(口唇、舌、唾液腺、口腔床、歯肉および他の口内部位、鼻咽頭、扁桃、口腔咽頭部、下咽頭、他の口腔/咽頭部)の癌;消化系(食道;胃;小腸;結腸および直腸;肛門、肛門管、および肛門直腸;肝臓;肝臓内胆管;胆嚢;他の胆嚢部分;膵臓;腹膜後部;腹膜;網および腸間膜;他の消化器官)の癌;呼吸器系(鼻腔、中耳および副鼻腔;喉頭;肺および気管支;胸膜;気管、縦隔および他の呼吸器)の癌;中皮腫;骨および関節;および軟組織、例えば心臓の癌;皮膚癌、例えば黒色腫および他の非上皮の皮膚癌;カポジ肉腫および乳癌;女性生殖器(子宮頸部;子宮体部;子宮、nos;卵巣;膣;陰門;および他の女性生殖器)の癌;男性生殖器系(前立腺;精巣;睾丸;陰茎;および他の男性生殖器)の癌;尿路系(膀胱、腎臓および腎盂;尿管;および他の尿路系)の癌;眼球および眼窩の癌;脳および神経系(脳;および他の神経系)の癌;内分泌系(甲状腺および他の内分泌系、例えば胸腺)の癌;リンパ腫(ホジキン病および非ホジキン性リンパ腫)、多発性骨髄腫および白血病(リンパ性白血病;骨髄性白血病;単球性白血病;および他の白血病)を包含する。
【0037】
本発明の配列に関連する組織学的な型により分類される他の癌は、例えば、新生物、悪性;癌、NOS;癌、未分化、NOS;巨細胞および紡錘細胞の癌;小細胞癌、NOS;乳頭状癌、NOS;扁平上皮細胞癌、NOS;リンパ上皮癌;基底細胞癌、NOS;毛質性癌;移行上皮癌、NOS;乳頭状移行上皮癌;腺癌、NOS;ガストリノーマ、悪性;胆管癌;肝細胞癌、NOS;複合肝細胞癌および胆管癌;小柱腺癌;腺様嚢胞癌;腺腫様ポリープの腺癌;腺癌、家族性結腸ポリポーシス;固形癌、NOS;類癌腫、悪性;気管支肺胞腺癌;乳頭状腺癌、NOS;嫌色素性癌腫;好酸性癌;好酸素性腺癌;好塩基性癌;明細胞腺癌、NOS;顆粒細胞癌;小胞状腺癌、NOS;乳頭および小胞状腺癌;非被包性硬化癌;副腎皮質癌;子宮内膜様癌;皮膚付属器癌;アポクリン腺癌;皮脂腺癌;耳腺癌;粘液性類表皮癌;嚢胞腺癌、NOS;乳頭状嚢胞腺癌、NOS;乳頭状漿液嚢胞腺癌;粘液性嚢胞腺癌、NOS;粘液性腺癌;印環細胞癌;浸潤性腺管癌;髄様癌、NOS;小葉癌;炎症性癌;パジェット病、乳房;腺房細胞癌;腺扁平上皮癌;腺癌+扁平上皮化生;胸腺腫、悪性;卵巣間質腫、悪性;莢膜細胞腫、悪性;顆粒膜細胞腫、悪性;男性ホルモン産生細胞腫、悪性;セルトーリ細胞癌;ライディヒ細胞腫、悪性;脂肪細胞腫、悪性;パラガングリオーマ、悪性;乳房外パラガングリオーマ、悪性;褐色細胞腫;グロムス血管肉腫;悪性黒色腫、NOS;メラニン欠乏性黒色腫;表在拡大型黒色腫;巨大色素性母斑の悪性黒色腫;類上皮細胞黒色腫;青色母斑、悪性;肉腫、NOS;腺維肉腫、NOS;線維性組織球腫、悪性;粘液肉腫;脂肪肉腫、NOS;平滑筋肉腫、NOS;横紋筋肉腫、NOS;胚性横紋筋肉腫;胞状横紋筋肉腫;支質肉腫、NOS;混合腫瘍、悪性、NOS;ミュラー管混合腫瘍;腎芽細胞腫;肝芽細胞腫;癌肉腫、NOS;間葉腫、悪性;ブレンナー腫、悪性;葉状腫瘍、悪性;滑膜肉腫、NOS;中皮腫、悪性;未分化胚細胞腫;胚性癌腫、NOS;奇形腫、悪性、NOS;卵巣甲状腺腫、悪性;絨毛癌;中腎腫、悪性;血管肉腫;血管内皮腫、悪性;カポジ肉腫;血管周囲細胞腫、悪性;リンパ管肉腫;骨肉腫、NOS;皮質近接部骨肉腫;軟骨肉腫、NOS;軟骨芽細胞腫、悪性;間葉軟骨肉腫;骨巨細胞腫;ユーイング肉腫;歯原性腫瘍、悪性;エナメル上皮歯牙腫;エナメル上皮腫、悪性;エナメル上皮線維肉腫;松果体腫、悪性;脊索腫;神経膠腫、悪性;脳室上衣細胞腫、NOS;星状細胞腫、NOS;原形質性星状細胞腫;線維性星状細胞腫;星状芽細胞腫;神経膠芽細胞腫、NOS;乏突起膠腫、NOS;稀突起膠芽細胞腫;未分化神経外胚葉性腫瘍;小脳肉腫、NOS;神経節神経芽腫;神経芽腫、NOS;網膜芽腫、NOS;嗅神経原性腫瘍;髄膜腫、悪性;神経線維肉腫;神経鞘腫、悪性;顆粒細胞腫、悪性;悪性リンパ腫、NOS;ホジキン病、NOS;ホジキンパラ肉芽腫、NOS;悪性リンパ腫、小リンパ球;悪性リンパ腫、大細胞、散在;悪性リンパ腫、小胞、NOS;菌状息肉腫;他の特定の非ホジキン型リンパ腫;悪性組織球増殖症;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖小腸症;白血病、NOS;リンパ性白血病;NOS;形質細胞性白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞性白血病;骨髄性白血病、NOS;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病、NOS;肥満細胞性白血病;巨核芽球性白血病;骨髄性肉腫;およびヘアリーセル白血病を包含する。
【0038】
同様に、「組み換えタンパク質」とは組み換え技術を用いて、すなわち、上記した組み換え核酸の発現を介して作製されるタンパク質である。組み換えタンパク質は少なくとも1つ以上特徴により天然に存在するタンパク質とは識別される。例えば、タンパク質はそれがその野生型の宿主細胞において通常は会合しているタンパク質または化合物の一部または全てから単離または精製分離されてよく、そしてすなわち、実質的に純粋であってよい。例えば、単離されたタンパク質は、好ましくは所定の試料中の総タンパク質の少なくとも約0.5%、より好ましくは少なくとも約5重量%を構成する、天然の状態において通常それが会合している物質の少なくとも一部を伴っていない。実質的に純粋なタンパク質は総タンパク質の約50〜75重量%を含み、約80%が好ましく、そして約90%が特に好ましい。定義は、ある生物由来の癌関連タンパク質の、異なる生物または宿主細胞内での生産を包含する。あるいは、タンパク質は、タンパク質が上昇した濃度の水準において作製されるように、誘導プロモーターまたは高発現プロモーターの使用を介して、それが通常観察されるよりも有意に高値の濃度で作製してよい。あるいは、タンパク質は、後述するとおり、エピトープタグの付加またはアミノ酸の置換、挿入および欠失の場合のように、天然には通常存在しない形態であってよい。
【0039】
本発明の核酸は一般的にホスホジエステル結合を含有するが、場合により、後述する通り(例えばアンチセンス用途の場合、または、核酸が候補薬剤の場合)、核酸類縁体は例えばホスホロアミデート(全て参照により本明細書に組み込まれるBeaucage et al.,Tetrahedron 49(10):1925(1993)およびその参考文献;Letsinger,J.Org.Chem.35:3800(1970);Sprinzl et al.,Eur.J.Biochem.81:579(1977);Letsinger et al.,Nucl.Acids.Res.14:3487(1986);Sawai et al.,Chem.Lett.805(1984),Letsinger et al.,J.Am.Chem.Soc.110:4470(1988);およびPauwels et al/.Chemia Scripta 26:141 91986))、ホスホロチオエート(Mag et al.,Nucleic Acids Res.19:1437(1991);および米国特許5,644,048)、ホスホロジチオエート(Briu et al.,J.Am.Chem.Soc.111:2321(1989)、O−メチルホスホロアミダイト連結部(Eckstein,Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach,Oxford University Press参照)およびペプチド核酸骨格および連結部(Egholm,J.Am.Chem.Soc.114:1895(1992);Meier et al.,Chem.Int.Ed.Engl.31:1008(1992);Nielsen,Nature,365:566(1993);Carlsson et al.,Nature 380:207(1996)を参照)を含む別の骨格を有してよい。他の類縁体核酸は正の骨格(Denpcy et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:6097(1995);ノニオン系骨格(米国特許5,386,023、5,637,684、5,602,240,5,216,141および4,469,863;Kiedrowshi et al.,Angew.Chem.Intl.Ed.English 30:423(1991);Letsinger et al.,J.Am.Chem.Soc.110:4470(1988); Letsinger et al.,Nucleoside & Nucleotide 13:1597(1994);Chapters 2 and 3,ASC Symposium Series 580,”Carbohydrate Modifications in Antisense Research”,Ed.Y.S.Sanghui and P.Dan Cook; Mesmaeker et al.,Bioorganic & Medicinal Chem.Lett.4:395(1994);Jeffs et al.,J.Biomolecular NMR 34:17(1994);Tetrahedron Lett.37:743(1996))および非リボース骨格、例えば米国特許5,235,033および5,034,506およびChapters 6 and 7 ASC Symposium Series 580,”Carbohydrate Modifications in Antisense Research”,Ed.Y.S.Sanghui and P.Dan Cookに記載のものを有するものを包含する。炭素環糖1つ以上を含有する核酸もまた核酸の定義に包含される(Jenkins et al.,Chem.Soc.Rev.(1995)pp169−176参照)。幾つかの核酸類縁体がRawls,C&E News June 2,1997,p.35に記載されている。これらの参考文献は全て参照により本明細書に組み込まれる。リボース−ホスフェート骨格のこのような修飾は、種々の理由のため、例えばアンチセンス用途において使用するための生理学的環境における、または、バイオチップのプローブとしてのこのような分子の安定性および半減期を向上させるために行ってよい。
【0040】
当業者に公知である通り、これらの核酸類縁体の全てを本発明において使用してよい。更に、天然に存在する核酸および類縁体の混合物を作製することができ;あるいは、種々の核酸類縁体の混合物および天然に存在する核酸と類縁体の混合物を作製してよい。
【0041】
核酸は指定に従って1本鎖または2本鎖であってよく、または、2本鎖または1本鎖の配列の両方の部分を含有してよい。当業者の知る通り、1本鎖「ワトソン」の表記はまた他の鎖「クリック」の配列を定義し;すなわち、本明細書に記載する配列は配列の相補体も包含する。核酸はDNA、ゲノムおよびcDNA、RNAまたはハイブリッドであってよく、ここで核酸はデオキシリボおよびリボヌクレオチドのいずれかの組合せ、およびウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、イソシトシン、イソグアニン等を含む塩基のいずれかの組合せを含有する。本明細書においては、「ヌクレオシド」という用語はヌクレオチドおよびヌクレオシドおよびヌクレオチド類縁体および修飾されたヌクレオシド、例えばアミノ修飾ヌクレオシドを包含する。更にまた、「ヌクレオシド」には天然に存在しない類縁体構造が包含される。すなわち、例えば、各々が塩基を含有するペプチド核酸の個々の単位を本明細書においてはヌクレオシドと称する。
【0042】
本明細書においては、「タグ」、「配列タグ」、または「プライマータグ配列」という用語はこのようなタグを内部に保有しているポリヌクレオチドのバッチを発見するために役立つ特定の核酸配列を有するオリゴヌクレオチドを指す。後の分析においてその起源に応じてポリヌクレオチドを識別できるように、同じ生物学的起源に由来するポリヌクレオチドを特定の配列タグに共有結合によりタグ付けする。配列タグはまた核酸増幅反応のためのプライマーとして作用する。
【0043】
「マイクロアレイ」とは固体支持体の表面上に形成された所定の面積を各々が有する好ましくは個別の領域の直線的または二次元のアレイである。マイクロアレイ上の個別の領域の密度は単一の固相支持体表面上に検出される標的ポリヌクレオチドの総数により決定され、好ましくは少なくとも約50/cm、より好ましくは、少なくとも約100/cm、更に好ましくは少なくとも約500/cm、および更に好ましくは、少なくとも約1000/cmである。本明細書においては、DNAマイクロアレイは標的ポリヌクレオチドを増幅またはクローニングするために使用されるチップまたは他の表面上に配設されたオリゴヌクレオチドプライマーのアレイである。アレイ内のプライマーの各々の特定のグループの位置が既知であるため、標的ポリヌクレオチドのアイデンティティーはマイクロアレイ内の特定の位置へのその結合に基づいて決定できる。
【0044】
「リンカー」とは制限部位を含有する合成のオリゴデオキシリボヌクレオチドである。リンカーはDNAフラグメントの末端にブラント末端ライゲーションされていてよく、これにより後のフラグメントのベクター分子へのクローニングにおいて使用できる制限部位を作製する。
【0045】
「標識」という用語は、試験試料中の標的ポリヌクレオチドの存在を示す検出可能なシグナルを発生することができる組成物を指す。適当な標識は放射性同位体、ヌクレオチド発色団、酵素、基質、蛍光分子、ケミルミネセンス部分、磁性粒子、バイオルミネセント部分等を包含する。従って、標識は、分光光度的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的、化学的またはいずれかの他の適当な手段により検出可能ないずれかの組成物である。「標識」という用語は検出可能な物理的特性を有するいずれかの化学的な基または部分、または、検出可能な物理的特性を示す化学的な基または部分を誘発することが可能ないずれかの化合物、例えば基質から検出可能な生成物への変換を触媒する酵素を指す。「標識」という用語はまた特定の物理的特性の発現を抑制する化合物を包含する。標識はまた結合対の一員である化合物であってよく、その結合相手が検出可能な物理的特性を担持していてもよい。
【0046】
「支持体」という用語は従来の支持体、例えばビーズ、粒子、ディップスティック、ファイバー、フィルター、メンブレンおよびシランまたはシリケートの支持体、例えばスライドガラスを指す。
【0047】
「増幅する」という用語は、別の標的分子または標的様分子または、試料中の標的分子の存在により形成される分子である標的分子に相補的な分子を含む増幅産物を作製することを広範に意味する。標的が核酸である状況においては、増幅産物はDNAまたはRNAポリメラーゼまたは逆転写酵素を用いて酵素的に形成できる。
【0048】
本明細書においては、「生物学的試料」とは例えば、血液、血漿、血清、骨髄液、リンパ液、皮膚、呼吸器、腸および泌尿器管、涙液、唾液、乳汁、細胞(例えば赤血球含むがこれに限定されない)、腫瘍、臓器の使用、並びにインビトロ細胞培養成分の試料を含むがこれに限定されない、個体から単離した組織または体液を指す。
【0049】
「生物学的原料」という用語は本明細書においては標的ポリヌクレオチドの誘導元の原料を指す。原料は上記した「試料」のいずれかの形態であることができ、例えば細胞、組織または液体を包むがこれに限定されるものではない。「異なる生物学的原料」とは同じ個体の異なる細胞/組織/臓器または同じ腫の異なる個体に由来する細胞/組織/臓器または異なる種に由来する細胞/組織/臓器を指す。
【0050】
本発明のDKKL−1タンパク質は一般的に分泌タンパク質であり;その分泌は構成的であるか、または調節される。これらのタンパク質は分泌経路に分子をターゲティングするシグナルペプチドまたはシグナル配列を有する。分泌タンパク質は多くの生理学的事象に関与しており;その循環特性により、それらは種々の他の細胞型にシグナルを伝達する役割を果たす。分泌タンパク質はオートクリンの様式(因子を分泌した細胞に対して作用)、パラクリンの様式(因子を分泌した細胞に近接する細胞に対して作用)または内分泌の様式(遠隔の細胞に対して作用)において機能する。即ち分泌された分子は多くの生理学的態様をモジュレートまたは改変する場合に有用である。分泌タンパク質はそれらが例えば血液検査のための診断マーカーに対する良好な標的として働くことから、本発明において特に好ましい。
【0051】
DKKL−1の新規なアイソフォームの核酸
1つの態様において、本発明は図3A〜3Eに示すDKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリヌクレオチドを提供する。その天然の原料から単離した後、例えばプラスミドまたは他のベクター内に含有された状態、または、そこから直鎖核酸セグメントとして切り出された状態で、組み換え核酸は更に、DKKL1スプライス改変体の発現を発見するためのプローブとして使用できる。
【0052】
第1の実施形態においてはDKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリヌクレオチドにハイブリダイズできる核酸プローブを作製し、スクリーニングおよび診断の方法において、または遺伝子療法および/またはアンチセンス適用のために使用されるべきバイオチップに結合させる。あるいは、DKKL−1のコーディング領域を含むDKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリヌクレオチドをやはりスクリーニング目的または患者への投与のために、タンパク質の発現のための発現ベクターに導入することができる。
【0053】
DNAマイクロアレイ技術により単一の固相支持体上の複数の標的核酸分子の大規模試験を実施できるようになった。米国特許5,837,832(Chee等)および関連の特許出願は試料中の特定の核酸配列のハイブリダイゼーションおよび検出のためのオリゴヌクレオチドプローブのアレイを固定化することを記載している。目的の組織から単離された目的の標的ポリヌクレオチドをDNAチップにハイブリダイズし、そして特定の配列を標的ポリヌクレオチドの優先性および個々のプローブの位置におけるハイブリダイゼーションの程度に基づいて検出する。アレイの1つの重要な使用は種々の遺伝子発現の分析であり、その場合、異なる細胞、多くの場合目的の細胞と対照細胞の遺伝子の発現のプロファイルを比較し、各々の細胞の遺伝子発現の差が有ればそれを発見する。このような情報は特定の細胞または組織の型において発現された遺伝子の型の識別、および、発現プロファイルに基づいた癌の状態の診断のために有用である。
【0054】
代表的には、目的の試料に由来するRNAを逆転写に付すことにより標識されたcDNAを得る。米国特許6,410,229(Lockhart等)を参照のこと。次にcDNAをチップ上または他の表面上に既知順序でアレイ化された既知配列のオリゴヌクレオチドまたはcDNAにハイブリダイズさせる。標識されたcDNAがハイブリダイズするオリゴヌクレオチドの位置がcDNAに関する配列情報を提供し、標識されたハイブリダイズRNAまたはcDNAの量は目的のRNAまたはcDNAの相対的存在の推定を可能にする。Schena et al.,Science 270:467−470(1995)を参照。例えば、ヒト癌における遺伝子発現パターンを分析するためのcDNAマイクロアレイの使用はDeRisi,et al.(Nature Genetics 14:457−460(1996))に記載されている。
【0055】
好ましい実施形態においては、DKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリヌクレオチド(図に示す核酸配列および/またはその相補体の両方)に相当する核酸プローブを作製する。代表的には、これらのプローブは本発明に開示した配列に基づいて合成する。バイオチップに結合した核酸プローブは、標的配列と本発明のプローブの特異的なハイブリダイゼーションが起こるように、DKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリヌクレオチド、即ち標的配列(試料の標的配列または他のプローブ配列、例えばサンドイッチ試験の場合)に実質的に相補であるように設計する。後述するとおり、この相補性は、標的配列と本発明の1本鎖核酸との間のハイブリダイゼーションを妨害する塩基対ミスマッチがある程度の数は存在するという点で、完全である必要は無い。ヌクレオチドレベルにおける遺伝子の全体的相同性は約40%以上、恐らくは約60%以上、より確かには約80%以上であり、そして、約8〜12ヌクレオチド以上の相当する連続配列が存在することが予測される。しかしながら、ハイブリダイゼーションが最低のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下においても起こらないほど突然変異の数が多い場合は、配列は相補標的配列ではない。すなわち、「実質的に相補である」とは本明細書においては、プローブが通常の反応条件下、特に本明細書に記載する高ストリンジェンシーの条件下においてハイブリダイズできる程度に標的配列に対して十分相補であることを意味する。配列が本発明のDKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリヌクレオチドに独特であるか否かは当業者の知る技術により測定できる。例えば配列をデータバンク、例えばGeneBankの配列と比較することによりそれが未感染の宿主または他の生物中に存在するかどうかを調べることができる。配列はまた他のウィルス物質の既知配列、例えば癌を誘発するものとして知られているものと比較できる。
【0056】
核酸プローブは一般的に1本鎖であるが、部分的に1本鎖で部分的に2本鎖であることができる。プローブの鎖の程度は標的配列の構造、組成および性質により推定できる。一般的に、オリゴヌクレオチドプローブは約6、8、10、12、15、20、30または100塩基長の範囲であり、約10〜約80塩基が好ましく、約30〜約50塩基が特に好ましい。すなわち、一般的に全体の遺伝子はプローブとして殆ど使用されない。一部の実施形態においては、100塩基までの遥かに長い核酸を使用することができる。プローブは当業者の知る条件下で相補鋳型配列にハイブリダイズするのに十分特異的である。プローブ配列とそれがハイブリダイゼーションの間にハイブリダイズするその相補鋳型(標的)配列との間のミスマッチ数はFASTA(デフォルト設定)で測定した場合、一般的に15%を超えず、通常は10%を超えず、そして好ましくは5%を超えない。
【0057】
オリゴヌクレオチドプローブは核酸中に通常存在する天然に存在する複素環塩基(ウラシル、シトシン、チミン、アデニンおよびグアニン)並びに修飾された塩基および塩基類縁体を包含できる。標的配列へのプローブのハイブリダイゼーションに適合する何れの修飾された塩基または塩基類縁体も本発明の実施において有用である。プローブの糖またはグリコシド部分はデオキシリボース、リボースおよび/またはこれらの糖の修飾された形態、例えば2’−O−アルキルリボースを含むことができる。好ましい実施形態においては、糖部分は2’−デオキシリボースであるが;標的配列にハイブリダイズするプローブの能力に適合する如何なる糖部分も使用できる。
【0058】
1つの実施形態において、プローブのヌクレオシド単位は当業者のよく知る通りホスホジエステル骨格により連結される。別の実施形態においては、ヌクレオチド間連結は、例えばホスホロチオエート、メチルホスホネート、スルファメート(例えば米国特許5,470,967)およびポリアミド(即ちペプチド核酸)を含むがこれに限定されないプローブの特異的ハイブリダイゼーションに適合する当業者の知るいずれかの連結を包含できる。ペプチド核酸はNielsen et al.(1991)Science254:1497−1500、米国特許5,714,331およびNielsen(1999)Curr.Opin.Biotechnol.10:71−75に記載されている。
【0059】
特定の実施形態においては、プローブはキメラ分子であることができ;すなわち、塩基または糖のサブユニットの1つより多い型を含むことができるか、および/または連結は同じプライマー内の1つより多い型であることができる。プローブは当業者の知る通りその標的配列へのハイブリダイゼーションを促進するための部分、例えばインターカレーターおよび/またはマイナーグルーブバインダーを含むことができる。塩基、糖およびヌクレオシド間骨格の種々のもの、並びにプローブ上のいずれかの懸垂基の存在は、プローブが配列特異的な様式でその標的配列に結合する能力に適合するものである。既知および開発中の多数の構造的修飾がこれらの結合において可能である。好都合には、本発明のプローブはシグナルの増幅を可能にするような構造的特徴を有してよく、そのような構造的特徴は例えばUrdea et al.(Nucleic Acids Symp.Ser.,24:197−200(1991))または欧州特許EP−0225,807に記載されているもののような分枝鎖DNAプローブである。更にまたプローブを形成する種々の複素環塩基、糖、ヌクレオシドおよびヌクレオチドを製造するための合成方法および特定の所定の配列のオリゴヌクレオチドの製造は十分に開発されており、当該技術分野で既知である。オリゴヌクレオチド合成のための好ましい方法は米国特許5,419,966の開示内容を組み込んでいる。
【0060】
プローブは溶液中、例えばウェル中、またはマイクロアレイ表面上、または固体支持体に結合して存在してよい。使用できる固体支持体物質の例は、プラスチック、セラミック、金属、樹脂、ゲルおよびメンブレンを包含する。有用な型の固体支持体はプレート、ビーズ、磁性体物質、マイクロビーズ、ハイブリダイゼーションチップ、メンブレン、血晶、セラミックおよび自己組立単層を包含する。好ましい実施形態は2次元または3次元のマトリックス、例えば複数のプローブ結合部位を有するゲルまたはハイブリダイゼーションチップを含む(Pevzner et al.,J.Biomol.Struc.& Dyn.9:399−410,1991;Maskos and Southern,Nuc.Acids Res.20:1679−84,1992)。ハイブリダイゼーションチップは標的核酸に後にハイブリダイズさせられる極めて大型のプローブアレイを構築するために使用できる。チップのハイブリダイゼーションパターンの分析は標的ヌクレオチド配列の識別を支援する場合がある。パターンはマニュアルによるかコンピューターで分析することができるが、ハイブリダイゼーションによる位置的な配列決定はコンピューター分析および自動化に適合していることは明白である。配列再構築のために開発されているアルゴリズムおよびソフトウエアを本明細書に記載した方法に適用する(R.Drmanac et al.,J.Biomol.Struc.&Dyn.5:1085−1102,1991;P.A.Pevzner,J.Biomol.Struc.&Dyn.7:63−73,1989)。
【0061】
当業者の知る通り、核酸は種々の方法において固体支持体に結合または固定化することができる。「固定化」とは本明細書においては、核酸プローブと固体支持体との間の会合または結合が後述するとおり結合、洗浄、分析および除去の条件下で安定であるのに十分であることを意味する。結合は共有結合、または非共有結合であることができる。「非共有結合」および文法的同等語は、本明細書においては、静電気的、親水的および疎水的な相互作用のいずれかの1つ以上を意味する。非共有結合に含まれるものはストレプトアビジンのような分子の支持体への共有結合、および、ストレプトアビジンへのビオチニル化プローブの非共有結合である。「共有結合」および文法的同等語は本明細書においては2つの部分、即ち固体支持体とプローブがシグマ結合、パイ結合および配位結合を含む結合少なくとも1つに結合していることを意味する。共有結合はプローブと固体支持体の間に直接形成するか、交差結合剤により形成するか、または固体支持体またはプローブまたは両分子内に特異的反応基を取り込ませることにより行える。固定化はまた共有結合および非共有結合の相互作用の組合せを用いてもよい。
【0062】
核酸プローブは、共有結合により、例えばカップリング剤とのコンジュゲーションにより、または、共有結合または非共有結合、例えば静電気的相互作用、水素結合または抗体−抗原カップリングによるか、またはこれらの組合せにより固体支持体に結合してよい。典型的なカップリング剤はビオチン/アビジン、ビオチン/ストレプトアビジン、スタフィロコッカス・アウレウスプロテインA/IgG抗体Fフラグメント、および、ストレプトアビジン/プロテインAキメラ(T.Sano and C.R.Cantor,Bio/Technology 9:1378−81(1991))またはこれらの物質の誘導体または組合せを包含する。核酸は光切断性の結合、静電結合、ジスルフィド結合、ペプチド結合、ジエステル結合またはこれらの種類の結合の組合せにより固体支持体に結合される。アレイはまた4,4’−ジメトキシトリチルまたはその誘導体のような選択的に放出される結合により固体支持体に結合させてもよい。有用であることがわかっている誘導体は3または4[ビス−(4−メトキシフェニル)]−メチル−安息香酸、N−スクシンイミジル−3または4[ビス−(4−メトキシフェニル)]−メチル−安息香酸、N−スクシンイミジル−3または4[ビス−(4−メトキシフェニル)]−ヒドロキシメチル−安息香酸、N−スクシンイミジル−3または4[ビス−(4−メトキシフェニル)]−クロロメチル−安息香酸を包含する。
【0063】
一般的に、プローブは当業者の知る通り種々の方法においてバイオチップに結合させることができる。本明細書に記載する通り核酸は、まず最初に合成し、その後バイオチップに結合させるか、または、直接バイオチップ上に合成することができる。
【0064】
バイオチップは適当な固体基盤を含む。「基盤」または「固体支持体」または他の文法的同等語は本明細書においては、核酸プローブの結合または会合のために適切である個別の個々の部位を含有するように修飾することができ、そして少なくとも1つの検出方法に適合しているいずれかの物質を意味する。本発明の固相支持体はヌクレオチドのハイブリダイゼーションおよび合成を支援するために適するいずれかの固体の物質および構造のものであることができる。好ましくは、固相支持体はプライマーを固定化でき、逆転写反応を実施できる少なくとも1つの実質的に合成の表面を含む。ポリヌクレオチドマイクロアレイエレメントが安定に会合できる基盤は種々の物質、例えばプラスチック、セラミック、金属、アクリルアミド、セルロース、ニトロセルロース、ガラス、ポリスチレン、ポリエチレンビニルアセテート、ポリプロピレン、ポリメタクリレート、ポリエチレン、ポリエチレンオキシド、ポリシリケート、ポリカーボネート、テフロン(登録商標)、フルオロカーボン、ナイロン、シリコンゴム、ポリ無水物、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリオルトエステル、ポリプロピルフメレート、コラーゲン、グリコサミノグリカンおよびポリアミノ酸から作製してよい。基盤は二次元または三次元の形態、例えばゲル、メンブレン、薄膜、ガラス、プレート、シリンダー、ビーズ、磁気ビーズ、光ファイバー、織糸等であってよい。好ましいアレイの形態は三次元アレイである。好ましい三次元アレイはタグ付けされたビーズの収集物である。各々のタグ付けされたビーズは異なるプライマーを自身に結合させて保有している。タグは色素(Luminex、Illumina)および電磁場(Pharmaseq)のようなシグナル発生手段により検出可能とし、そしてタグ付けされたビーズ上のシグナルを遠隔的にも検出可能とする(例えば光ファイバー使用)。固体支持体のサイズはDNAマイクロアレイ技術のために有用であるいずれかの標準的なマイクロアレイのサイズであることができ、そして、サイズは本発明の反応を実施するために使用される特定の機器に適合するように調節してよい。一般的に、基盤は光学的検出を可能とし、蛍光を発さない。
【0065】
好ましい実施形態においては、バイオチップの表面およびプローブは二者のその後の結合のために化学官能基で誘導体化してよい。すなわち、例えばバイオチップは、アミノ基、カルボキシ基、オキソ基およびチオール基を含むがこれに限定されない化学官能基で誘導体化してよく、アミノ基が特に好ましい。これらの官能基を用いれば、プローブはプローブ上に官能基を用いて結合できる。例えば、アミノ基を含有する核酸を、アミノ基を含む表面に、例えば当該技術分野で既知のリンカーを用いて結合することができ;例えば当該技術分野で周知のホモまたはヘテロ2官能性のリンカーを用いることができる(参照により本明細書に組み込まれる1994Pierce Chemical Company catalog,technical section on cross−linkers、155〜200ページを参照)。更にまた、一部の場合において、別のリンカー、例えばアルキル基(置換されたヘテロアルキルの基を含む)を使用してよい。
【0066】
本実施形態においては、オリゴヌクレオチドを当該技術分野で知られる通りに合成し、次に固体支持体の表面に結合させる。当業者なら理解するように、5’または3’末端のいずれかを固体支持体に結合させるか、または結合は内部ヌクレオシドを介して行ってよい。別の実施形態においては、固体支持体への固定化は極めて強固であるがなお非共有結合的であってよい。例えばストレプトアビジンで共有結合的にコーティングされた表面に結合するビオチニル化オリゴヌクレオチドを作製して結合させてよい。
【0067】
アレイはいずれかの従来の方法に従って、例えばポリヌクレオチドマイクロアレイエレメントを実施し、そして次にそれらを表面に会合させることにより製造してよい。あるいは、オリゴヌクレオチドは当該技術分野で知られる通り表面上で合成してよい。多くの種類のアレイの配置およびその製造方法が当業者に知られており、そして参照により全体が本明細書に組み込まれるWO95/25116およびWO95/35505(フォトリソグラフ法)、米国特許5,445,934(フォトリソグラフィーによるインサイチュ合成)、米国特許5,384,261(機械的に指向されたフローパスによるインサイチュ合成);および米国特許5,700,637(スポッティング、プリンティングまたはカップリングによる合成)に開示されている。ビーズにDNAをカップリングさせる別の方法は、ビーズに結合したリガンド結合分子に連結されるようにDNAの末端に結合した特異的リガンドを使用する。実行可能なリガンド結合相手の対はビオチン−アビジン/ストレプトアビジン、または種々の抗体/抗原対、例えばジゴキシフェニン−抗ジゴキシゲニン抗体(Smith et al.,”Direct Mechanical Measurements of the Elasticity of Single DNA Molecules by Using Magnetic Beads”,Science 258:1122−1126(1992))を包含する。支持体へのDNAの共有化学結合はホスホアミデート結合を介してコーティングされた微小球にDNA上の5’−ホスフェートを連結させる標準的なカップリング剤を用いて達成することができる。固相の基盤へのオリゴヌクレオチドの固定化のための方法は十分確立されている。Pease et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA91(11):5022−5026(1994)を参照のこと。固相の基盤にオリゴヌクレオチドを結合させる好ましい方法はGuo et al.,Nucleic Acid Res.22:5456−5465(1994)に記載されている。固定化はインサイチュDNA合成(Maskos and Southern,Nucleic Acids Research,20:1679−1684’1992))によるか、または、ロボットアレイ化技術と組み合わせた化学合成オリゴヌクレオチドの共有結合(Guo et al.,上出)により達成できる。
【0068】
バイオチップアレイでもたらされる固相技術に加えて、遺伝子発現はまた液相アレイを用いて定量することもできる。このような系の1つはダイナミックポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。ダイナミックPCRは特定の核酸配列の同時増幅および定量を可能とする。特異性は標的部位を包囲する1本鎖核酸配列に優先的に接着するように設計された合成オリゴヌクレオチドプライマーから誘導される。オリゴヌクレオチドプライマーのこの対が標的配列の各鎖上の特異的非共有結合的に結合した複合体を形成する。これらの複合体は反対方向の2本鎖DNAのインビトロ転写を容易にする。反応混合物のサーモサイクリングによりプライマー結合、転写、および核酸の個々の鎖への再融解の連続サイクルが生じる。結果として標的DNA産物の指数的増大が起こる。この産物はインターカレーション染料または配列特異的プローブを用いることによりリアルタイムで定量できる。SYBR(登録商標)GreeneIがインターカレーション染料の一例であり、これはdsDNAに優先的に結合し、蛍光シグナルの同時増大をもたらす。配列特異的プローブ、例えばTaqMan(登録商標)技術と共に用いられるものは、蛍光色素およびオリゴヌクレオチドの反対側末端に共有結合しているクエンチング分子よりなる。プローブは2プライマーの間の標的DNA配列に選択的に結合するように設計される。DNA鎖がPCR反応の間に合成される場合、蛍光色素はポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性によりプローブから切断され、シグナルの脱クエンチングをもたらす。プローブシグナル伝達方法はインターカレーション染料法より更に特異的であることができるが、各々の場合、シグナル強度は生成するdsDNA産物に比例している。各型の定量方法をマルチウェル液相アレイにおいて使用でき、各ウェルが目的の核酸配列に特異的なプライマーおよび/またはプローブとすることができる。組織または細胞系統のメッセンジャーRNA調製物と共に使用する場合は、プローブ/プライマー反応のアレイは目的の複数の遺伝子産物の発現を同時に定量で切る。Germer,S.,et al.,Genome Res.10:258−266(2000);Heid,C.A.,et al.,Genome Res.6,986−994(1996)を参照。
【0069】
(DKKL−1タンパク質の新規なアイソフォームの発現)
好ましい実施形態においては図4A〜4Bに示すDKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリペプチドをコードする核酸を用いて後述する通りスクリーニング試験において後に使用することができるタンパク質を発現させるための種々の発現ベクターを作製する。好ましい実施形態においては、ポリペプチドは図4A〜4Bに示すクローン379−R8およびクローン379−RS3のポリペプチド配列の108位および109位にわたる少なくとも2、4、6、8、10、12、15または20つ連続する残基を含む新規なスプライス接合体、または、図4A〜4Bに示すクローン379−R4、クローン379−R5、クローン379−R2、クローン379−RS7およびクローン379−RS4のポリペプチド配列の61位および62位にわたる少なくとも2、4、6、8、10、12、15または20つ連続する残基を含む新規なスプライス接合体を含む。
【0070】
発現ベクターは自己複製染色体外ベクターまたは宿主ゲノム内に組み込まれるベクターのいずれかであってよい。一般的に、これらの発現ベクターはタンパク質をコードする核酸に作動可能に連結した転写または翻訳の調節核酸を包含する。「制御配列」という用語は特定の宿主生物内の作動可能に連結したコード配列の発現のために必要なDNA配列を指す。原核生物に適する制御配列は、例えばプロモーター、場合によりオペレーター配列、およびリボソーム結合部位を包含する。真核細胞はプロモーター、ポリアデニル化シグナルおよびエンハンサーを利用することがわかっている。
【0071】
核酸はそれが他の核酸配列との機能的関係にある場合に「作動可能に連結」している。例えばプレ配列または分泌リーダーに対するDNAは、それがポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合に、そのポリペプチドに対するDNAに作動可能に連結しており;プロモーターまたはエンハンサーはそれが配列の転写に影響する場合にコード配列に作動可能に連結しており;または、リボソーム結合部位はそれが翻訳を促進するように位置づけられている場合にコード配列に作動可能に連結している。一般的に「作動可能に連結した」とは連結されるDNA配列が連続しており、そして、分泌リーダーの場合は、連続してリーディングフェーズ内にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは連続である必要はない。連結は好都合な制限部位でライゲーションによって実施する。そのような部位が存在しない場合は、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーを従来の慣行に従って使用する。転写および翻訳の調節核酸は一般的にタンパク質を発現するために使用される宿主細胞に対して適切なものとなる。多くの型の適切な発現ベクターおよび適当な調節配列が種々の宿主細胞について当該技術分野で知られている。
【0072】
一般的に転写および翻訳の調節配列は例えばプロモーター配列、リボソーム結合部位、転写開始および終止配列、翻訳開始および終止配列およびエンハンサーまたはアクティベーターの配列を含むがこれらに限定されない。好ましい実施形態においては、調節配列はプロモーターおよび転写開始および終止配列を包含する。
【0073】
プロモーター配列は構成または誘導プロモーターのいずれかをコードする。プロモーターは天然に存在するプロモーターまたはハイブリッドプロモーターのいずれかであってよい。1つのプロモーターより多いエレメントを組み合わせたハイブリッドプロモーターも当該技術分野で知られており、そして本発明において有用である。
【0074】
更にまた、発現ベクターは別のエレメントを含んでよい。例えば、発現ベクターは2つの複製システムを有してよく、即ち2種の生物中、例えば発現のためには哺乳類または昆虫の細胞内で、そしてクローニングおよび増幅のためには原核生物の宿主内で、維持できるようにしてよい。更にまた発現ベクターを組み込むためには、発現ベクターは宿主細胞ゲノムに相同の配列少なくとも1つ、好ましくは発現コンストラクトにフランキングする2つの相同配列を含有する。組み込まれるベクターはベクター内に封入するための適切な相同配列を選択することにより宿主細胞内の特定の遺伝子座に指向させてよい。組み込まれるベクターに関するコンストラクトは当該技術分野で周知である。
【0075】
更にまた、好ましい実施形態においては、発現ベクターは選択マーカー遺伝子を含有することにより形質転換された宿主細胞の選択を可能にする。選択遺伝子は当該技術分野で周知であり、使用される宿主細胞に応じて変動する。
【0076】
本発明のタンパク質はポリペプチドの発現を誘導または誘発する適切な条件下で図4A〜4Bに示すDKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリペプチドをコードする核酸を含有する発現ベクターで形質転換された宿主細胞を培養する工程により製造される。タンパク質の発現に適切である条件は発現ベクターおよび宿主細胞の選択により変動し、常法に従った実験により当業者が容易に確認できる。例えば発現ベクター中の構成プロモーターの使用は宿主細胞の生育および増殖を旨適化することを必要とし、誘導プロモーターの使用は誘導のための適切な生育条件を必要とする。更にまた、一部の実施形態においては採取時期も重要である。例えば昆虫細胞の発現において使用されるバキュロウィルスの系は溶菌性のウィルスであり、従って、採取時期の選択は産物の収量にとって決定的なものとなる。
【0077】
適切な宿主細胞には、コウボ、細菌、原始細菌、カビ、および昆虫、植物および動物の細胞、例えば哺乳類細胞を包含する。特に有利なものは、ドロソフィリア・メラノガスター細胞、サッカロマイセス・セレビシアエおよび他のコウボ、E.coli、バチルス・サブチルス、Sf9細胞、C129細胞、293細胞、ニューロスポラ、BHK、CHO、COS、HeLa細胞、THP1細胞系統(マクロファージ細胞系統)およびヒト細胞および細胞系統である。
【0078】
好ましい実施形態においては、図4A〜4Bに示すDKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリペプチドは哺乳類細胞において発現される。哺乳類発現系は当該技術分野で知られており、そしてレトロウィルス系を包含する。好ましい発現ベクター系は共に参照により本明細書に組み込まれるPCT/US97/01019およびPCT/US97/01048に一般的に記載されているもののようなレトロウィルスベクターである。哺乳類プロモーターとして特に使用されるものは、ウィルス遺伝子が高度に発現される場合が多く、広範な宿主領域を有することから、哺乳類ウィルス遺伝子由来のプロモーターである。例示されるものは、SV40早期プロモーター、マウス乳癌ウィルスLTRプロモーター、アデノウィルス主要後期プロモーター、単純疱疹ウィルスプロモーターおよびCMVプロモーターである。代表的には、哺乳類細胞により認識される転写終止およびポリアデニル化の配列は翻訳終止コドンに対して3’側に位置する調節領域であり、そして従って、プロモーターエレメントと共に、コード配列にフランキングする。転写終止およびポリアデニル化シグナルの例はSV40から誘導されるものを包含する。
【0079】
外因性核酸を哺乳類宿主並びに他の宿主に導入する方法は当該技術分野で周知であり、使用する宿主細胞により変動する。手法例はデキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈降、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、ウィルス感染、リポソーム中のポリヌクレオチドのカプセル化、および、核へのDNAの直接のマイクロインジェクションを包含する。
【0080】
好ましい実施形態においては、タンパク質は細菌系において発現される。細菌発現系は当該技術分野で周知である。バクテリオファージ由来のプロモーターもまた使用され、当該技術分野で知られている。更に、合成プロモーターおよびハイブリッドプロモーターも有用であり;例えばtacプロモーターはtrpおよびlacプロモーター配列のハイブリッドである。更にまた細菌プロモーターは細菌RNAポリメラーゼに結合して転写を開始する能力を有する非細菌の起源の天然に存在するプロモーターを包含できる。機能プロモーター配列に加えて、効率的なリボソーム結合部位が望ましい。発現ベクターはまた、細菌においてタンパク質の分泌をもたらすシグナルペプチド配列を含んでよい。タンパク質は生育培地中(グラム陽性細菌)、または、細胞の内膜と外膜の間に位置する原形質周囲の空間(グラム陰性細菌)のいずれかに分泌される。細菌発現ベクターはまた形質転換されている細菌株の選択を可能にするために選択マーカー遺伝子を含んでよい。適当な選択遺伝子はアンピシリン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、カナマイシン、ネオマイシンおよびテトラサイクリンのような薬剤に対して細菌を耐性とする遺伝子を包含する。選択マーカーはまた、ヒスチジン、トリプトファンおよびロイシン生合成経路におけるもののような生合成遺伝子を含む。これらの成分は発現ベクター内に組立てられる。細菌の発現ベクターは当該技術分野で周知であり、バチルス・サブチルス、E.coli、ストレプトコッカス・クレモリス、およびストレプトコッカス・リビダンス等のベクターを包含する。細菌発現ベクターは当該技術分野で周知の手法、例えば塩化カルシウム処理、エレクトロポレーション等を用いて細菌宿主細胞内に形質転換される。
【0081】
1つの実施形態において、タンパク質は昆虫細胞中で生産される。昆虫細胞の形質転換のための発現ベクター、特にバキュロウィルス系の発現ベクターが当該技術分野で周知である。
【0082】
好ましい実施形態においては、タンパク質はコウボ細胞中で生産される。コウボ発現系は当該技術分野で周知であり、サッカロマイセス・セレビシアエ、カンジダ・アルビカンスおよびC・マルトーサ、ハンセヌラ・ポリモルファ、クルイベロマイセス・フラギリスおよびK・ラクチス、ピチア・グイレリモンジおよびP・パストリス、スキゾサッカロマイセス・ポンベおよびヤロイア・リポリチカの発現ベクターを包含する。
【0083】
図4A〜4Bに示すDKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリペプチドはまた例えば、モノクローナル抗体作製のための当該技術分野で周知の手法を用いて融合タンパク質として製造してよい。所望のエピトープが小型である場合は、タンパク質はキャリアタンパク質に融合させて免疫原を形成してよい。あるいは、タンパク質は融合タンパク質として作製することにより発現の増大または他の目的を達成してよい。
【0084】
1つの実施形態において、本発明の核酸、タンパク質および抗体を標識してよい。「標識された」とは、本明細書においては、化合物が化合物の検出を可能にするために結合された少なくとも1つのエレメント、同位体または化学物質を有することを意味する。一般的に標識は以下の3種、即ちa)同位体標識、即ち放射性または重同位体;b)免疫標識、即ち抗体または抗原;およびc)色素または蛍光染料、に分類される。標識はいずれかの位置において核酸、タンパク質および抗体内に取り込んでよい。例えば標識は検出可能なシグナルを直接または間接的に生成することができなければならない。検出可能な部分は放射性同位体、例えばH、14C、32P、35Sまたは125I、蛍光または化学ルミネセント化合物、例えばフルオレセインイソチオシアネート、ローダミンまたはルシフェリン、または酵素、例えばアルカリホスファターゼ、ベータガラクトシダーゼまたはセイヨウワサビパーオキシダーゼであってよい。標識に抗体をコンジュゲートする当該技術分野で知られたいずれかの方法、例えばHunter et al.,Nature,144:945(1962);David et al.,Biochemistry,13:1014(1974);Pain et al.,J.Immunol.Meth.,40:219(1981);およびNygren,J.Histochem.and Cytochem.,30:407(1982)により記載されたものを使用してよい。
【0085】
一般的に「ポリペプチド」という用語は本明細書においては、所定のポリヌクレオチドによりコードされた完全長のポリペプチド、所定のポリヌクレオチドにより示される遺伝子によりコードされたポリペプチドの双方、並びにその部分またはフラグメントを指す。
【0086】
本発明は図4A〜4Bに示すDKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリペプチドの変異体を包含し、突然変異体、フラグメントおよび融合物を包含する。突然変異体はアミノ酸の置換、付加または欠失を含むことができる。アミノ酸置換は保存的なアミノ酸置換、または、非必須アミノ酸を排除するため、例えばグリコシル化部位、ホスホリル化部位またはアシル化部位を改変するため、または機能に必要ないシステイン残基1つ以上の置換または欠失により誤折り畳みを最小限とするための置換であることができる。保存的なアミノ酸置換は置換されたアミノ酸の全体的電荷、疎水性/親水性、および/または立体的な嵩を温存するようなものである。変異体はタンパク質の特定の領域(例えば機能的ドメインおよび/またはポリペプチドがタンパク質ファミリーのメンバーである場合はコンセンサス配列に関連する領域)の生物学的活性を保持または増強するように設計することができる。変異体の製造のためのアミノ酸改変の選択はアミノ酸の接近容易性(内部vs外部)(例えばGo et al.,Int.J.Peptide Protein Res.(1980)15:211参照)、変異体ポリペプチドの熱安定性(例えばQuerol et al.,Prot.Eng.(1996)9:265参照)、所望のグリコシル化部位(例えばOlsen and Thomsen,J.Gen.Microbiol.(1991)137:579参照)、所望のジスルフィド結合(例えばClarke et al.,Biochemistry(1993)32:4322;およびWakarchuk et al.,Protein Eng.(1994)7:1379参照)、所望の金属結合部位(例えばToma et al.,Biochemistry(1991)30:97およびHaezerbrouck et al.,Protein Eng.(1993)6:643参照)およびプロリンループ内の所望の置換(例えばMasul et al.,Appl.Env.Microbiol.(1994)60:3579)に基づくことができる。システイン枯渇ムテインは米国特許4,959,314に開示されている通り製造できる。
【0087】
変異体は本明細書に開示したポリペプチドのフラグメント、特に生物活性フラグメントおよび/または機能的ドメインに相当するフラグメントを包含する。目的のフラグメントは代表的には、少なくとも約8アミノ酸(aa)10aa、15aa、20aa、25aa、30aa、35aa、40aa、少なくとも約45aa長、通常は少なくとも約50aa長、少なくとも約75aa、少なくとも約100aa、少なくとも約125aa、少なくとも約150aa長、少なくとも約200aa、少なくとも約300aa、少なくとも約400aa、そして500aa長までの長さであることができるが、通常は1000aa長を超えず、その場合フラグメントは本明細書に記載したポリヌクレオチド配列のいずれか1つの配列をまたはそのホモログを有するポリヌクレオチドによりコードされるポリヌクレオチドに同一であるアミノ酸のストレッチを有することになる。本明細書に記載したタンパク質変異体は本発明の範囲内に包含されるポリヌクレオチドによりコードされる。遺伝コードは相当する変異体を構築するための適切なコドンを選択するために使用できる。
【0088】
図4A〜4Bに示すDKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリペプチドの共有結合修飾は本発明の範囲に包含される、共有結合修飾の1つの型はポリペプチドのターゲティングされたアミノ酸残基をポリペプチドの選択された側鎖またはNまたはC末端残基と反応することができる有機の誘導体化剤と反応させることを包含する。二官能性の物質を用いた誘導体化は、後述する通り、例えばポリペプチドを水不溶性支持体マトリックスまたは抗DKKL−1抗体の精製またはスクリーニング試験のための方法で用いる表面に交差結合させる場合に有用である。一般的に使用される交差結合剤は、例えば1,1−ビス(ジアゾアセチル)−2−フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば4−アジドサリチル酸とのエステル、ホモ2官能性イミドエステル、例えばジスクシンイミジルエステル、例えば3,3’−ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)、2官能性マレイミド、例えばビス−N−マレイミド−1,8−オクタンおよびメチル−3−[(p−アジドフェニル)ジチオ]プロピオイミデートのような物質を包含する。
【0089】
他の修飾には、グルタミニルおよびアスパルギニル残基から相当するグルタミルおよびアスパルチル残基へのそれぞれの脱アミド化、プロリンおよびリジンのヒドロキシル化、セリル、スレオニルまたはチロシル残基のヒドロキシル基のホスホリル化、リジン、アルギニンおよびヒスチジン側鎖のα−アミノ基のメチル化[T.E.Creighton,Proteins:Structure and Molecular Properties,W.H.Freeman&Co.,San Francisco,pp.79−86(1983)]、N−末端アミンのアセチル化、およびいずれかのC末端カルボキシル基のアミド化が包含される。
【0090】
共有結合修飾の別の型は、米国特許4,640,835;4,496,689;4,301,144;4,670,417;4,791,192または4,179,337に記載されている様式において、ポリペプチドを種々の非タンパク質性重合体、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシアルカン類の1つに連結することを含む。
【0091】
本発明の図4A〜4Bに示すDKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリペプチドはまた別の非相同のポリペプチドまたはアミノ酸配列に融合したポリペプチドを含むキメラ分子を形成するための方法において修飾してよい。1つの実施形態において、このようなキメラ分子は抗タグ抗体が選択的に結合できるエピトープを与えるタグポリペプチドとのポリペプチドの融合を含む。内部融合もまた一部の例においては耐容されるが、エピトープタグは一般的にはポリペプチドのアミノまたはカルボキシ末端に位置する。ポリペプチドのこのようなエピトープタグ付型の存在はタグポリペプチドに対する抗体を用いて検出できる。更にまた、エピトープタグが提供されれば、ポリペプチドは抗タグ抗体またはエピトープタグに結合するアフィニティーマトリックスの別の型を用いたアフィニティー精製により容易に精製できるようになる。別の実施形態においては、キメラ分子は免疫グロブリンまたは免疫グロブリンの特定の領域とのポリペプチドの融合を含んでよい。キメラ分子の2価の形態については、このような融合はIgG分子のFc領域に起こる。
【0092】
種々のタグポリペプチドおよびその対応する抗体が当該技術分野で知られている。例としては、ポリ−ヒスチジン(poly−his)またはポリ−ヒスチジン−グリシン(poly−his−gly)タグ;fluHAタグポリペプチドおよびその抗体12CA5[Field et al.,Mol.Cell.Biol.,8:2159−2165(1988)];c−mycタグおよびそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7および9E10抗体[Evan et al.,Molecular and Cellular Biology,5:3610−3616(1985)];および単純疱疹ウィルス糖タンパク質D(gD)タグおよびその抗体[Paborsky et al.,Protein Enginnering,3(6)547−553(1990)]が挙げられる。他のタグポリペプチドにはFlag−ペプチド[Hopp et al.,BioTechnology,6:1204−1210(1988)];KT3エピトープペプチド[Martin et al.,Science,255:192−194(1992)];チュブリンエピトープペプチド[Skinner et al.,J.Biol.Chem.,266:15163−15166(1991)];およびT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ[Lutz−Freyermuth et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:6393−6397(1990)]が包含される。
新規なDKKL−1抗原およびそれに対する抗体
1つの実施形態において、本発明は図4A〜4Bに示すDKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリペプチドに対する特異的な抗体を提供する。好ましい実施形態において、ポリペプチドは図4A〜4Bに示すクローン379−R8およびクローン379−RS3のポリペプチド配列の108位および109位にわたる少なくとも2、4、6、8、10、12、15または20つ連続する残基を含む新規なスプライス接合体、または、図4A〜4Bに示すクローン379−R4、クローン379−R5、クローン379−R2、クローン379−RS7およびクローン379−RS4のポリペプチド配列の61位および62位にわたる少なくとも2、4、6、8、10、12、15または20つ連続する残基を含む新規なスプライス接合体を含む少なくとも1つのエピトープまたは抗原決定基を有する。「エピトープ」または「抗原決定基」とは本明細書においては、抗体またはMHCの関連においてT細胞受容体の形成および/または結合をもたらすタンパク質の部分を意味する。
【0093】
本発明の抗体は図4A〜4Bに示すDKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリペプチドに特異的に結合する。「特異的に結合する」とは本明細書においては、10−4〜10−6−1の範囲の結合定数で抗体がタンパク質に結合することを意味し、好ましい範囲は10−7〜10−9−1である。好ましい実施形態においては、エピトープは独特であり;すなわち、独特のエピトープに対して形成された抗体の交差反応性は殆どまたは全くない。
【0094】
図4A〜4Bに示すDKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリペプチドはポリペプチドの特定の好ましい領域を決定するために分析してよい。高抗原性の領域は免疫応答の開始の過程において抗原の認識が起こる環境においてポリペプチドの表面上に曝露されると考えられるポリペプチドの領域を示す数値を選択することによりDNASTAR分析によりデータから決定される。例えば、ポリペプチドのアミノ酸配列はDNASTARコンピューターアルゴリズムのデフォルトパラメーターを用いて分析してよい(DNASTAR,Inc.,Madison,Wis.;http://www.dnastar.com/)。
【0095】
DNASTARコンピューターアルゴリズムを用いて常法で得てよいポリペプチドの特徴には、例えばGarnier−Robsonアルファ領域、ベータ領域、ターン領域およびコイル領域(Garnier et al.,J.Mol.Biol.,120:97(1978));Chou−Fasmanアルファ領域、ベータ領域およびターン領域(Adv.in Enzymol.,47:45−148(1978));Kyte−Doolittle親水性領域および疎水性領域(J.Mol.Biol.,157:105−132(1982));Eisenbergアルファおよびベータ両親媒性領域;Karplus−Schulz可撓性領域;Emini表面形成領域(J.Virol.,55(3):836−839(1985));および高抗原性指数のJameson−Wolf領域(CABIOS,4(1):181−186(1988))を含むがこれらに限定されるものではない。Kyte−Doolittle親水性領域および疎水性領域、Emini表面形成領域および高抗原性指数のJameson−Wolf領域(即ちJameson−Wolfプログラムのデフォルトパラメーターを用いて識別すれば1.5以上の抗原性指数を有する連続するアミノ酸4個以上を有する)は抗原性に関する高い程度の潜在性を示すポリペプチド領域を決定するために常法として使用できる。タンパク質に対する抗体を作製する1つの方法はタンパク質の全部または一部のアミノ酸配列の選択および作製、配列の化学合成およびそれを適切な動物、代表的には、ウサギ、ハムスターまたはマウスに注射することである。オリゴペプチドは成熟タンパク質内で曝露されていると考えられる親水性領域内に存在するオリゴペプチドに基づいてタンパク質に対する抗体を製造するための候補として選択できる。別のオリゴペプチドは例えば参照により本明細書に組み込まれるthe Antigenicity Index,Welling,G.W. et al.,FEBS Lett.188:215−218(1985)を用いて決定できる。
【0096】
1つの実施形態において「抗体」という用語は当該技術分野で知られる通り、全抗体の修飾により作製されるか、組み換えDNA技術により新規に合成されたもののいずれかである抗体フラグメント、例えばFab、Fab2、一本鎖抗体(例えばFv)、キメラ抗体等を包含する。
【0097】
ポリクローナル抗体を作製する方法は当業者に知られている。ポリクローナル抗体は哺乳類において、例えば免疫剤、および、所望によりアジュバントの注射一回以上により形成させることができる。代表的には、免疫剤および/またはアジュバントは複数の皮下または腹腔内注射により哺乳類内に注射する。免疫剤は図の核酸によりコードされるタンパク質またはそのフラグメントまたはその融合タンパク質を包含してよい。免疫の対象となる哺乳類において免疫原性があることがわかっているタンパク質に免疫剤をコンジュゲートすることが有用である。このような免疫原性のタンパク質の例はキーホルリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリンおよびダイズトリプシン阻害剤を包含する。使用してよいアジュバントの例はフロイントの完全アジュバントおよびMPL−TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコレート)を包含する。免疫のプロトコルは予定外の実験を行うことなく当業者により選択されてよい。
【0098】
あるいは、抗体はモノクローナル抗体であってよい。モノクローナル抗体はKohler and Milstein,Nature,256:495(1975)に記載のもののようなハイブリドーマ法を用いて作製してよい。ハイブリドーマ法においては、マウス、ハムスターまたは他の適切な宿主動物を代表的には、免疫剤で免疫することにより免疫剤に特異的に結合する抗体を生産する、または生産可能であるリンパ球を発生させる。あるいは、リンパ球はインビトロで免疫してよい。免疫剤は代表的には、新規なDKKL−1アイソフォーム配列の核酸によりコードされるポリペプチドまたはそのフラグメントまたはその融合タンパク質を包含する。一般的に、ヒト起源の細胞が望まれる場合は末梢血液リンパ球(PBL)が使用され、非ヒト哺乳類原料が望まれる場合は脾細胞またはリンパ節細胞が使用される。次にリンパ球を適当な融合剤、例えばポリエチレングリコールを用いて免疫細胞系統に融合させることによりハイブリドーマ細胞を形成する(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press(1986)pp.59−103)。不朽化細胞系統は通常は形質転換された哺乳類細胞、特、にげっ歯類、ウシおよびヒト起源の骨髄腫細胞である。通常はラットまたはマウスの骨髄腫細胞系統を使用する。ハイブリドーマ細胞は好ましくは未融合の不朽化細胞の成育または生存を抑制する物質1つ以上を含有する適当な培地中で培養する。例えば親細胞がヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠損している場合は、ハイブリドーマ用の培地は代表的には、HGPRT欠損細胞の成育を抑制する物質であるヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む(HAT培地)。
【0099】
研究、診断および治療を実施する際には、モノクローナル抗体技術を使用する。モノクローナル抗体はラジオイムノアッセイ、酵素結合免疫吸着試験、免疫細胞病理学およびフローサイトメトリーにおいて、インビトロの診断のため、およびヒト疾患の診断および免疫療法のためにインビボで使用する。Waldmann,T.A.(1991)Science252:1657−1662。特にモノクローナル抗体は、正常な組織を回避しながら悪性の患部をターゲティングすることが望ましいような癌の診断および治療に広範に適用されている。例えば、Frankel等への米国特許4,753,894;Ring等への4,938,948;およびBjorn等への4,956,453を参照できる。
【0100】
1つの実施形態において、抗体は二重特異性抗体である。二重特異性抗体は少なくとも2つの抗原に対して結合特異性を有するモノクローナルの好ましくはヒトまたはヒト化の抗体である。非ヒト免疫グロブリンから誘導された抗原結合部位を含む「ヒト化」抗体分子の多くが報告されており、例えばげっ歯類V領域を有するキメラ抗体およびヒト定常ドメインに融合したその関連CDR(Winter et al.(1991) Nature 349:293−299;Lobuglio et al.(1989) Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:4220−4224;Shaw et al.(1987)J Immunol.138:4534−4538;およびBrown et al.(1987)Cancer Res.47:3577−3583)、適切なヒト抗体定常ドメインとの融合の前にヒト支持FRに移植されたげっ歯類CDR(Riechmann et al.(1988)Nature 332:323−327;Verhoeyen et al.(1988)Science 239:1534−1536;およびJones et al.(1986)Nature 321:522−525)および組み換えベニアリングされたげっ歯類FRにより支持されたげっ歯類CDR(欧州特許出願519,596、1992年12月23日公開)が挙げられる。これらの「ヒト化」分子は、ヒトレシピエントにおけるこれらの部分の治療用途における持続性および有効性を制限するげっ歯類抗ヒト抗体分子への望ましくない免疫応答を最小限にするために設計される。本発明の場合には、結合特異性の1つは新規なDKKL−1異性体配列の核酸によりコードされるタンパク質またはそのフラグメントに対するものであり、もう1つはいずれかの他の抗原に対する、好ましくは細胞表面タンパク質または受容体または受容体サブユニット、好ましくは腫瘍特異的なものに対するものである。
【0101】
好ましい実施形態においては、図4A〜4Bに示すDKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリペプチドに対する抗体は、ポリペプチドの生物学的機能を低減または排除することができる。一般的に少なくとも25%の活性低下が好ましく、少なくとも約50%が特に好ましく、そして約95〜100%低下がとりわけ好ましい。
【0102】
好ましい実施形態においては、抗体はヒト化抗体である。「ヒト化」抗体とは非ヒト種由来の免疫グロブリンから実質的に誘導された抗原結合部位およびヒト免疫グロブリンの構造および/または配列に基づいた分子の残りの免疫グロブリン構造を有する分子を指す。抗原結合部位は定常ドメイン上に融合した完全な可変ドメインまたは可変ドメイン内の適切なフレームワーク領域上にグラフトされた相補性決定領域(CDR)のみのいずれかを含んでよい。抗原結合部位は野生型であるか、または、1つ以上のアミノ酸置換により修飾、例えばヒト免疫グロブリンにより近似するように修飾されていてよい。あるいは、ヒト化抗体は親の非ヒト抗体の抗原結合特性を保持または実質的に保持しているが、ヒトに投与された場合に親抗体と比較して免疫原性が減衰しているキメラ抗体から誘導してよい。「キメラ抗体」という用語は本明細書においては、代表的には、異なる種を起源とする2種の異なる抗体(例えば、米国特許4,816,567)から誘導された配列を含有する抗体を指す。代表的には、これらのキメラ抗体においては軽鎖および重鎖の双方の可変領域が哺乳類の一方の種から誘導された抗体の可変領域を模倣しているが、定常部分はもう一方から誘導した抗体の配列に相同である。最も代表的には、キメラ抗体はヒトおよびネズミの抗体フラグメント、一般的にヒト定常領域およびマウス可変領域を含む。ヒト化抗体はレシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が所望の特異性、アフィニティーおよび能力を有するマウス、ラットまたはウサギのような非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基で置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を包含する。一部の場合においては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は相当する非ヒト残基により置き換えられている。ヒト化抗体はまたレシピエントの抗体にも移入されたCDRまたはフレームワーク配列内にも存在しない残基を含んでよい。一般的に、ヒト化抗体は少なくとも1つ、そして代表的には、2つの可変ドメインの実質的に全てを含んでおり、そこにおいては、CDR領域の全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものに相当し、そしてフレームワーク残基(FR)領域の全てまたは実質的に全てがヒト化免疫グロブリンのコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体は理想的にはやはり、免疫グロブリンの定常領域(Fc)、代表的には、ヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部を含む(Jones et al.,Nature,321:522−525(1986);Riechmann et al.,Nature,332:323−329(1988);およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593−596(1992))。このようなキメラ形態の1つの明確な利点は、例えば可変領域が例えばヒト細胞調製物から誘導した定常領域と組み合わせながら、容易に入手できるハイブリドーマまたは非ヒト宿主生物由来のB細胞を用いて現在知られている原料から好都合に誘導できることである。可変領域は作製が容易であるという利点を有し、そして特異性はその原料により影響を受けないが、ヒトの定常領域は非ヒト原料の定常領域の場合と比較して抗体が注射された場合にヒト対象から免疫応答を引き出す可能性は低い。しかしながら、定義はこの特定の例に限定されない。
【0103】
ヒト化抗体は親マウスモノクローナル抗体よりも遥かに低免疫原性であるため、それらはアナフィラキシーの遥かに低い危険性においてヒトの治療に使用できる。すなわち、これらの抗体はヒトへのインビボの投与を含む治療用途、例えば、新生物疾患の治療のための放射線増感剤としての使用、または、例えば癌治療の副作用を低減するための方法における使用において好ましい。非ヒト抗体をヒト化するための方法は当該技術分野で知られている。一般的にヒト化抗体は非ヒトである原料からそれに導入されたアミノ酸残基1つ以上を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は移入可変ドメインから代表的には、取り出される移入残基と称される場合が多い。ヒト化は本質的にはWinter等の方法に従って(Jones et al.,Nature 321:522−525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323−327(1988);Verhoeyen et al.,Science239:1534−1536(1988))、げっ歯類CDRまたはCDR配列とヒト抗体の相当する配列を置換することにより行うことができる。従って、このようなヒト化抗体はキメラ抗体(米国特許4,816,567)であり、この場合、非ヒト種由来の相当する配列による置換は未損傷のヒト可変ドメインよりも実質的に少なくなっている。実際は、ヒト化抗体は代表的には、一部のCDR残基および恐らくは一部のFR残基がげっ歯類抗体の類似の部位に由来する残基で置換されているヒト抗体である。
【0104】
ヒト抗体はまたファージディスプレイライブラリを含む当該技術分野で知られた種々の手法を用いて作製できる[Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581(1991)]。Cole等およびBoerner等の手法もまたヒトモノクローナル抗体の製造のために使用できる[Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985)およびBoerner et al.,J.Immunol.,147(1):86−95(1991)]。ヒト化抗体は種々の方法、例えば(1)非ヒト相補性決定領域(CDR)をヒトフレームワークおよび定常領域上にグラフトすること(当該技術分野では「ヒト化」と称される方法)または、(2)全非ヒト可変ドメインを移植するがそれらをヒト様表面で、表面残基の置き換えにより「被覆(cloaking)」すること(当該技術分野では「ベニアリング」と称される方法)により達成してよい。本明細書においては、ヒト化抗体は「ヒト化」および「ベニアリングされた」抗体の両方を包含する。同様に、ヒト抗体はヒト免疫グロブリン遺伝子座をトランスジェニック動物、例えば内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されているマウス内に導入することにより行うことができる。チャレンジによりヒト抗体の生産が観察され、これは遺伝子再配列、組立および抗体レパートリーを含む全ての点においてヒトにおいて観察されるものに緊密に近似している。この方法は、例えば、米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126同第;同第5,633,425号;同第5,661,016号および以下の科学出版物、すなわち、Marks et al.,Bio/Technology 10,779−783(1992);Lonberg et al.,Nature 368 856−859(1994);Morrison,Nature 368,812−13(1994);Fishwild et al.,Nature Biotechnology 14,845−51(1996);Neuberger,Nature Biotechnology 14,826(1996);Lonberg and Huszar,Intern. Rev.Immunol.13 65−93(1995);Jones et al.,Nature 321:522−525(1986);Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,81:6851−6855(1984);Morrison and Oi,Adv.Immunol.,44:65−92(1988);Verhoeyer et al.,Science 239:1534−1536(1988);Padlan,Molec.Immun.28:489−498(1991);Padlan,Molec.Immunol.31(3):169−217(1994);およびKettleborough,C.A.et al.,Protein Eng.4(7):773−83(1991)に記載されており、これらの各々は、本明細書において、参考として援用される。
【0105】
「相補性決定領域」という用語は本来の免疫グロブリン結合部位の天然のFv領域の結合親和性および特異性を共に定義するアミノ酸配列を指す。例えばChothia et al.,J.Mol.Biol.196:901−917(1987);Kabat et al.,U.S.Dept.of Health and Human Services NIH Publication No.91−3242(1991)を参照。「定常領域」という用語はエフェクター機能を与える抗体分子の部分を指す。本発明においては、マウス定常領域をヒト定常領域で置換する。対象のヒト化抗体の定常領域はヒト免疫グロブリンから誘導する。重鎖定常領域は5種のアイソタイプ、即ちアルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)またはミュー(μ)のいずれかから選択できる。抗体をヒト化する1つの方法は非ヒト重鎖および軽鎖配列をヒト重鎖および軽鎖配列にアラインすること、このようなアライメントに基づいて非ヒトフレームワークをヒトフレームワークと置き換えること、ヒト化配列のコンホーメーションを予測するように分子モデリングすること、および、親抗体のコンホーメーションと比較することを含む。この過程の後に、ヒト化配列モデルの予測コンホーメーションが親非ヒト抗体の非ヒトCDRのコンホーメーションに近似するまでCDRの構造をかく乱するCDR領域内の残基の反復復帰突然変異を行う。このようなヒト化抗体は例えばAshwell受容体を介して取り込みとクリアランスを促進するために更に誘導体化してよい。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,530,101号および同第5,585,089号を参照のこと。
【0106】
ヒト化抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含有するように操作されたトランスジェニック動物を用いて作製できる。例えば、WO98/24893はヒトIg遺伝子座を有するトランスジェニック動物を開示しており、その動物は内因性の重鎖および軽鎖の遺伝子座の不活性化のため機能的内因性免疫グロブリンを生産しない。WO91/10741もまた免疫原への免疫応答を搭載することができるトランスジェニック非霊長類哺乳類宿主を開示しており、この場合、抗体は霊長類の定常および/または可変領域を有し、そして内因性免疫グロブリンコード遺伝子座は置換されるか不活性化されている。WO96/30498は修飾された抗体分子を形成するために定常または可変領域の全てまたは一部を置き換えるなど、哺乳類における免疫グロブリン遺伝子座を修飾するためのCre/Lox系の使用を開示している。WO94/02602は不活性化された内因性Ig遺伝子座および機能的ヒトIg遺伝子座を有する非ヒト哺乳類宿主を開示している。米国特許5,939,598はマウスが内因性重鎖を欠失し、外来性の定常領域1つ以上を含む外因性免疫グロブリン遺伝子座を発現するトランスジェニックマウスを作製する方法を開示している。
【0107】
上記したトランスジェニック動物を用いながら、免疫応答を選択された抗原分子に対して発生させることができ、そして抗体生産細胞を動物から摘出してヒトモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを作製するために使用できる。免疫プロトコル、アジュバント等は当該技術分野で知られており、そして例えばWO96/33735に記載されたトランスジェニックマウスの免疫において使用する。モノクローナル抗体は相当するタンパク質の生物活性または生理学的作用を抑制または中和する能力について試験できる。
【0108】
本発明においては、本発明のポリペプチドおよびその変異体を用いて上記した通りトランスジェニック動物を免疫する。モノクローナル抗体は当該技術分野で知られた方法を用いて作製し、そして抗体の特異性は単離されたポリペプチドを用いて試験する。ヒトまたは霊長類のポリペプチドまたはそのエピトープの製造方法は例えば化学合成、組み換えDAN手法または生物試料からの単離を含むがこれらに限定されるものではない。ペプチドの化学合成は例えば固相ペプチド合成の伝統的なMerrifeld法(参照により本明細書に組み込まれるMerrifeld,J.Am.Chem.Soc.85:2149,1963)または急速自動複数ペプチド合成システム(E.I.DuPont de Nemours Company,Wilmington,DE)上のFMOC法(参照により本明細書に組み込まれるCaprino and Han,J.Org.Chem.37:3404,1972)により行うことができる。
【0109】
ポリクローナル抗体は抗原を注射することによりウサギまたは他の動物を免疫し、その後適切な時間間隔においてブーストすることにより作製できる。動物を育種し、血清を精製タンパク質に対して、通常はELISAによるか、またはタンパク質の作用をブロックする能力に基づいたバイオアッセイにより試験する。鳥類の種、例えばニワトリ、シチメンチョウ等を使用する場合は、抗体は卵黄から単離することができる。モノクローナル抗体は骨髄腫またはリンパ腫の細胞のような継続的に複製する腫瘍細胞に免疫マウス由来の脾細胞を融合することによりMilstein and Kohlerの方法に順じて製造できる(参照により本明細書に組み込まれるMilstein and Kohler,Nature 256:495−497,1975;Gulfre and Milstein,Methods in Enzymology: Immunochemical Techniques 73:1−46,Langone and Banatis eds.,Academic Press,1981)。このようにして形成されたハイブリドーマ細胞を次に制限希釈法によりクローニングし、そして上澄みをELISA、RIAまたはバイオアッセイにより抗体の生産について試験する。
【0110】
標的タンパク質を認識して特異的に結合する抗体の独特の能力はタンパク質の過剰発現を処置するための方策を与える。すなわち、本発明の別の態様はタンパク質に対する特異的抗体用いた患者の治療によりポリペプチドの過剰発現の関与する疾患を防止または処置するための方法を提供する。
【0111】
タンパク質に対するポリクローナルまたはモノクローナルである特異的抗体は、上記した当該技術分野で知られたいずれかの適当な方法により製造できる。例えばネズミまたはヒトのモノクローナル抗体はハイブリドーマ技術により製造するか、または、図4A〜4Bに示すDKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリペプチドまたはその免疫学的に活性なフラグメントまたは抗イディオタイプ抗体またはそのフラグメントはタンパク質を認識して結合することができる抗体の生産を誘発するために動物に投与することができる。このような抗体はいずれかのクラスの抗体、例えばIgG、IgA、IgM、IgDおよびIgE、または鳥類の種の場合は、IgYに属するもの、およびいずれかの抗体サブクラスに属するものであることができる。
【0112】
好ましい実施形態においては分泌成長因子をコードする癌遺伝子は上記した通り本発明の分泌タンパク質に対する抗体を形成させることにより抑制してよい。理論に拘束されるものではないが、治療に使用する抗体は分泌タンパク質に結合してその受容体への結合を防止することにより分泌タンパク質を不活性化する。
【0113】
別の好ましい実施形態においては、抗体は治療薬部分にコンジュゲートする。1つの態様において、治療薬部分はタンパク質の活性を調節する小分子である。別の態様においては、治療薬部分はタンパク質に会合しているか、近接している分子の活性を調節する。治療薬部分は癌に関連するプロテアーゼまたはタンパク質キナーゼの活性のような酵素活性を阻害する場合がある。
【0114】
好ましい実施形態においては、図4A〜4Bに示すDKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3の1つ以上を含むポリペプチドは発現の後、精製されるか単離される。タンパク質は試料中に存在する別の成分に応じて当業者に既知の種々の方法で単離または精製してよい。標準的な精製方法は電気泳動、分子、免疫学的およびクロマトグラフィーによる手法、例えばイオン交換、疎水、アフィニティーおよび逆相HPLCクロマトグラフィーおよびクロマトフォーカシングを包含する。例えばタンパク質は標準的な抗体カラムを用いて精製してよい。限外濾過および透析濾過の手法をタンパク質濃縮と組み合わせることも有用である。適当な精製の手法に関する一般的な説明はScopes,R.,Protein Purification,Springer−Verlag、NY(1982)を参照のこと。必要な精製の程度はタンパク質の使用に応じて変動する。一部の例において精製は必要ない。
【0115】
発現され、必要に応じて精製された後、新規なアイソフォーム2および3に相当するタンパク質および核酸は多くの用途において有用である。1つの態様において、遺伝子の発現水準は癌の表現型における種々の細胞の状態に関して決定され;すなわち、正常組織および癌組織における遺伝子の発現水準(そして一部の場合においては後述するとおり予後に関連するリンパ腫の種々の重症度について)を評価することにより発現プロファイルが得られる。特定の細胞の状態または発生の時点の発現プロファイルは本質的には状態の「フィンガープリント」であり;2つの状態はいずれかの特定の遺伝子を同様に発現する場合もあるが、多くの遺伝子の評価は同時に細胞の状態に独特である遺伝子発現のプロファイルの形成を可能にする。異なる状態の細胞の発現プロファイルを比較することにより、これらの状態の各々においてどの遺伝子が重要(遺伝子のアップおよびダウンレギュレーションの両方を含む)であるかどうかに関する情報が得られる。次に、特定の患者に由来する組織が正常または癌の組織の遺伝子発現プロファイルを有するかどうかを診断または確認する。
【0116】
「示差的発現」または同等用語は本明細書においては、細胞内および細胞間の遺伝子の一次的および/または細胞内の発現における定性的並びに定量的な差の両方を指す。即ち示差的に発現された遺伝子は、例えば、正常 対(vs) 癌組織において活性化または不活性化を含むその発現の定量的改変を行える。すなわち、遺伝子は別の状態と相対比較した場合の特定の状態においてターンオンまたはターンオフされてよい。当業者の知る通り、2状態以上のいずれかの比較を行える。このように定性的に調節された遺伝子は1つのそのような状態または細胞型において標準的手法により検出可能であるが、両者においては検出可能でない状態または細胞型における発現パターンを示す。あるいは、決定は発現が増大または低減されるという点において定量的であり;すなわち、遺伝子の発現はアップレギュレートされて転写物の増量をもたらすか、ダウンレギュレートされて転写物の減量をもたらすかのいずれかである。発現が異なる程度は参照により本明細書に組み込まれるAffymetrix GeneChip(登録商標)発現アレイ、Lockhart,Nature Biotechnology,14:1675−1680(1996)を使用するなど、後述するような標準的な特性化の手法を介して定量するのに十分大きければよい。他の手法としては、例えば、定量的逆転写酵素PCR、ノーザン分析およびRNaseプロテクションが挙げられるがこれらに限定されない。上記した通り、好ましくは発現における変化(即ちアップレギュレーションまたはダウンレギュレーション)は少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約100%、より好ましくは少なくとも約150%、より好ましくは少なくとも約200%であり、300〜少なくとも1000%が特に好ましい。
【0117】
当業者の知る通り、これは遺伝子の転写物またはタンパク質のレベルのいずれかで評価することにより行ってよく;即ち遺伝子発現の量は遺伝子転写物のDNAまたはRNA等価物に対する核酸プローブを用いてモニタリングしてよく、あるいは、最終遺伝子産物自体(タンパク質)を例えばタンパク質に対する抗体および標準的イムノアッセイ(ELISA等)または他の手法、例えば質量スペクトル試験、2Dゲル電気泳動法等を介してモニタリングすることができる。
【0118】
好ましい実施形態においては、遺伝子発現のモニタリングを行い、そしてDKKL−1の新規なアイソフォーム2および3を含む発現プロファイルを形成する多くの他の遺伝子を同時にモニタリングする。複数のタンパク質の発現のモニタリングも同様に行える。本実施形態においては、核酸プローブを本明細書に記載の通りバイオチップに結合させ、特定の細胞におけるDKKL−1配列の新規なアイソフォーム2および3の検出および定量に供してよい。試験は当該技術分野で知られる通り実施される。更にまた、固相試験を記載するが、いずれかの数量の溶液系の試験も同様に行ってよい。
【0119】
ターゲティングされた薬剤のスクリーニング
1つの実施形態において本明細書に記載した配列は薬剤のスクリーニング試験において使用する。DKKL−1タンパク質、抗体、核酸、新規なアイソフォーム2および3に相当する修飾タンパク質およびこのような配列を含有する細胞を、薬剤スクリーニング試験において、または、「遺伝子発現プロファイル」またはポリペプチドの発現プロファイルに対する薬剤候補の作用を評価することにより、使用する。1つの実施形態において、発現プロファイルを、好ましくは高スループットスクリーニング手法と組み合わせて使用することにより候補薬剤を用いた治療の後の発現プロファイル遺伝子のモニタリングを可能とする(Zlokarnik,et al.,Science 279,84−8(1998),Heid,et al.,Genome Res.,6:986−994(1996))。
【0120】
候補生物活性剤は遺伝子を調節する能力についてスクリーニングする。即ち「モジュレーション」とは遺伝子の発現または活性の増大または減少の両方を包含する。モジュレーションの好ましい量は正常vs腫瘍組織における遺伝子発現の元の変化により異なり、少なくとも10%、好ましくは50%、より好ましくは100〜300%、そして一部の実施形態においては300〜1000%以上の変化である。すなわち、遺伝子が正常組織と比較して腫瘍において4倍増大を示す場合、約4倍低減が望まれ;正常組織と比較して腫瘍において10倍低減は候補薬剤について発現の10倍増大をもたらすことが望ましい。
【0121】
当業者の知る通り、これは遺伝子またはタンパク質のレベルのいずれかにおいて評価することにより行われ;すなわち、遺伝子発現の量は核酸プローブを用いてモニタリングでき、そして遺伝子発現の水準の定量、または、あるいは、遺伝子産物そのものの水準は、例えばタンパク質に対する抗体および標準的なイムノアッセイの使用によりモニタリングできる。あるいは、タンパク質による結合および生物活性の試験は後述するとおり行ってよい。
【0122】
「候補生物活性剤」または「薬剤候補」という用語または文法的同等語は、本明細書においては、癌の表現型を直接または間接的に改変し、タンパク質に結合および/またはその生物活性または核酸配列およびタンパク質配列の両方を含む配列の発現を調節することができる生物活性剤に関して試験されるいずれかの分子、例えばタンパク質、オリゴペプチド、小型有機または無機分子、多糖類、ポリヌクレオチド等の分子のいずれかを指す。特に好ましい実施形態においては、候補薬剤は例えば正常な組織のフィンガープリントまで表現型を抑制する。一般的に複数の試験混合物を異なる薬剤濃度を用いて平行して実験することにより種々の濃度に対する示差的な応答を得る。代表的には、これらの濃度の1つが陰性対照、即ちゼロ濃度または検出限界未満として使用される。
【0123】
候補薬剤は多くの化学的クラスを包含するが、代表的には、有機または無機の分子であり、好ましくは分子量100超〜約2500ダルトン未満の小型の有機化合物である。好ましい小型分子は2000未満、または1500未満または1000未満または500D未満である。候補薬剤はタンパク質との構造的相互作用のために必要な官能基、特に水素結合を含み、そして代表的には、少なくともアミン、カルボニル、ヒドロキシルまたはカルボキシル基、好ましくは少なくとも2つの官能性化学基を含む。候補薬剤は上記した官能基の1つ以上で置換された、環状の炭素または複素環の構造および/または芳香族または多芳香族の構造を含む場合が多い。候補薬剤はまた生体分子、例えばペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン類、ピリミジン類、その誘導体、構造的類縁体またはその組合せの中にも存在する。特に好ましいものはペプチドである。
【0124】
候補薬剤は合成または天然の化合物のライブラリを含む広範な種類の原料から得る。例えば広範な有機化合物および生体分子のランダムおよび指向性の合成のために多くの手段が使用され、例えばランダム化オリゴヌクレオチドの発現を行う。あるいは、細菌、カビ、植物および動物の抽出物の形態の天然の化合物のライブラリも入手可能であり、容易に作製できる。更にまた天然および合成により作製されたライブラリおよび化合物が従来の化学的、物理的および生化学的な手段を介して容易に修飾される。既知の薬理学的物質をアシル化、アルキル化、エステル化またはアミド化のような指向性またはランダムの化学的修飾に付すことにより構造的類縁体を作製してよい。
【0125】
1つの実施形態において、候補生物活性剤は、タンパク質である。「タンパク質」とは本明細書においては、少なくとも2つの共有結合したアミノ酸を意味し、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチドおよびペプチドを包含する。タンパク質は天然に存在するアミノ酸およびペプチド結合からなるものであるか、または合成のペプチドミメティック構造であってよい。即ち「アミノ酸」または「ペプチド残基」は本明細書においては、天然に存在する、そして合成のアミノ酸の両方を意味する。例えばホモフェニルアラニン、シトルリンおよびノルロイシンは本発明の目的のためにはアミノ酸とみなされる。「アミノ酸」はまたイミノ酸残基、例えばプロリンおよびヒドロキシプロリンも包含する。側鎖は(R)または(S)配置のいずれかであってよい。好ましい実施形態においては、アミノ酸は(S)またはL−配置である。天然に存在しない側鎖を用いる場合は、例えばインビボの分解を防止または遅延させるために非アミノ酸置換を使用してよい。
【0126】
好ましい実施形態においては、候補生物活性剤は天然に存在するタンパク質または天然に存在するタンパク質のフラグメントである。即ち例えば、タンパク質含有細胞抽出物またはタンパク質様の細胞抽出液のランダムまたは指向性の消化物を使用してよい。この方法において、原核生物および真核生物のタンパク質のライブラリを本発明の方法におけるスクリーニングのために作製してよい。この実施形態において特に好ましいものは、細菌、カビ、ウィルスおよび哺乳類タンパク質のライブラリであり、特に後者が好ましく、ヒトタンパク質が特に好ましい。
【0127】
別の好ましい実施形態においては、候補生物活性剤は約5〜約30アミノ酸のペプチドであり、約5〜約20アミノ酸が好ましく、約7〜約15が特に好ましい。ペプチドは上記した通り天然に存在するタンパク質の消化物、ランダムペプチドまたは「バイアスを有する」ランダムペプチドである。「ランダム化」または文法的同等語は、本明細書においては、各核酸およびペプチドが本質的にランダムのヌクレオチドおよびアミノ酸からそれぞれなることを意味する。一般的にこのようなランダムペプチド(または核酸、後述)は化学的に合成されるため、これはいずれかのヌクレオチドまたはアミノ酸をいずれかの位置に取り込んでよい。合成の過程はランダム化タンパク質または核酸を形成するように設計でき、これにより配列の長さに渡り可能な組合せの全てまたは殆どの形成が可能になり、従って、ランダム化された候補生物活性タンパク質性物質のライブラリが形成される。
【0128】
1つの実施形態において、ライブラリは完全にランダム化され、配列の優先性や一定性は如何なる位置にも存在しない。好ましい実施形態においては、ライブラリはバイアスを有する。すなわち、配列内のある位置は一定に保持されるか、限定数量の可能性から選択される。例えば好ましい実施形態においてはヌクレオチドまたはアミノ酸残基は所定のクラス内で、例えば疎水性アミノ酸、親水性残基、立体的にバイアスを有する(小型または大型)の残基、核酸結合ドメインを形成する傾向、システインの形成、交差結合、SH−3ドメインに関するプロリン類、ホスホリル化部位に関するセリン類、スレオニン類、チロシン類またはヒスチジン類等、またはプリン類において、ランダム化される。
【0129】
1つの実施形態において、候補生物活性剤は核酸である。タンパク質に関して一般的に記載したとおり、核酸候補生物活性剤は天然に存在する核酸、ランダム核酸または「バイアスを有する」ランダム核酸であってよい。他の実施形態においては、候補生物活性剤は有機化学分子であり、その広範な種類のものは文献既知である。
【0130】
本明細書に記載した反応は種々の方法において当業者が知る通り達成してよい。反応の成分は同時に、または逐次的にいずれかの順序において添加してよく、好ましい実施形態は後述する通りである。更に、反応は試験における種々の他の試薬を含んでよい。これらには塩、緩衝液、中性タンパク質、例えばアルブミン、洗剤等が包含され、これらは旨適ハイブリダイゼーションおよび検出の促進および/または非特異的またはバックグラウンドの相互作用の低減のために使用してよい。試験の効率をその他の方法で向上させる試薬はまた、例えばプロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗微生物剤等を試料調製法および標的純度に応じて使用してよい。更にまた、固相または溶液系(即ちカイネティックPCR)試験を使用してよい。
【0131】
試験を実施した後は、データを分析して個々の遺伝子の発現の水準および状態間での発現水準の変化を求め、遺伝子発現プロファイルを形成する。好ましい実施形態においては、診断および予後の用途について、いずれかの1つの状態において重要である示差的に発現される遺伝子または突然変異下遺伝子を発見した場合、スクリーニングを行うことによりDKKL−1ポリヌクレオチドの新規なアイソフォームの発現の改変について個々に試験することができる。すなわち、単一の遺伝子の発現の調節のモジュレーションについてスクリーニングすることができる。即ち例えば、存在または非存在が2つの状態の間で独特である標的遺伝子の場合は、スクリーニングは標的遺伝子の発現のモジュレーターについて行う。
【0132】
更に、スクリーニングは候補薬剤に応答して誘導される新規な遺伝子について行うことができる。DKKL−1の発現およびスプライシングのパターンを抑制して正常な発現パターンをもたらす能力に基づいて候補薬剤を発見した後、上記したスクリーニングを行うことにより薬剤に応答して特異的にモジュレートされる遺伝子を発見することができる。正常組織と薬剤投与組織との間の発現プロファイルを比較することにより、正常組織または疾患組織では発現されないが、薬剤投与組織で発現される遺伝子が発見される。
【0133】
本発明の用途
1つの実施形態において、本発明は種々の組織におけるDKKL1遺伝子の新規なスプライス改変体の腫瘍形成性を評価するための方法を提供する。評価は形質転換試験、コロニー形成試験およびヌードマウス試験を含む複数の異なる生物学的試験において実施できる。
【0134】
スプライス改変体によりコードされるタンパク質は組み換え系から精製され、治療目的のためのモノクローナル抗体の作製のための免疫原として使用される。
【0135】
DKKファミリーメンバーはwntシグナル伝達経路のアゴニストまたは拮抗剤のいずれかとして作用する分泌成長因子として知られている。本発明はDKKL1の生理学的受容体を提供する。本発明は更にwntシグナル伝達または新規な受容体のシグナル伝達のいずれかにおいて種々のDKKL−1スプライス改変体の作用を調節するための方法を提供する。
【0136】
DKKL1アイソフォームの過剰発現により誘導されるシグナル伝達経路およびこれらのシグナル伝達事象に関連する腫瘍形成性の表現型を提供する。DKKL1癌遺伝子のシグナル伝達能力に影響する可能性のある治療用物質のスクリーニングのためのこのような経路の使用のための方法を提供する。
【0137】
原発腫瘍上の発現プロファイリングによるDKKL1に関するヒト癌の指標が提供される。他の潜在的腫瘍形成機序、例えば遺伝子座のDNA増幅および種々の原発腫瘍上のDKKL1遺伝子座のスプライシング事象の誤調節もまた癌の状態を検出するための方法として提供される。
【0138】
1つの実施形態において、癌細胞の分裂を抑制する方法が提供される。別の実施形態においては、腫瘍の生育を抑制する方法が提供される。更に別の実施形態においては癌を有する細胞または個体を治療する方法が提供される。
【0139】
方法は癌抑制剤の投与を包含する。特定の実施形態においては、癌抑制剤はアンチセンス分子、薬学的組成物、治療薬または小分子、またはモノクローナル、ポリクローナル、キメラまたはヒト化抗体である。特定の実施形態においては、治療薬は抗体、好ましくはモノクローナル抗体とカップリングさせる。
【0140】
別の実施形態において、個体における癌細胞の検出または診断のための方法が提供される。特定の実施形態においては、診断/検出用の薬剤は本発明のDKKL−1アイソフォームに優先的に結合する小分子である。1つの実施形態において、診断/検出用の薬剤は好ましくは検出可能な物質に連結された抗体、好ましくはモノクローナル抗体である。
【0141】
本発明の他の実施形態において、動物モデルおよびトランスジェニック動物が提供され、これらは癌、特にリンパ腫および癌腫の動物モデル作製において使用できる。
(a)アンチセンス分子
1つの実施形態において、癌抑制剤はアンチセンス分子である。本明細書において使用されるアンチセンス分子は癌分子の標的mRNA(センス)またはDNA(アンチセンス)配列に結合することのできる1本鎖の核酸配列(RNAまたはDNA)を含むアンチセンスまたはセンスのオリゴヌクレオチドを包含する。アンチセンスまたはセンスのオリゴヌクレオチドは本発明によれば一般的に少なくとも約14ヌクレオチド、好ましくは約14〜30ヌクレオチドのフラグメントを含む。所定のタンパク質をコードするcDNA配列に基づいてアンチセンスまたはセンスのオリゴヌクレオチドを誘導する能力は、例えばStein and Cohen,Cancer Res.48:2659(1988)およびvan der Krol et al.,BioTechniques 6:958(1988)に記載されている。
【0142】
アンチセンス分子は修飾または未修飾のRNA、DNAまたは混合の重合体オリゴヌクレオチドであることができる。これらの分子は立体的ブロッキングによるか、または、RNaseH酵素の活性化によりペプチド合成の阻害をもたらすマッチ配列への特異的結合により機能する(Wu−Pong,Nov.1994,BioPharm,20−33)。アンチセンス分子はまた、RNAのプロセシングまたは核から原形質内への移送を妨害することによりタンパク質の合成を改変することができる(Mukhopadhyay&Roth,1996,Crit.Rev. in Oncogenesis 7,151−190)。更にまた、1本鎖DNAからRNAへの結合はヌクレアーゼ媒介のヘテロ2本鎖の分解をもたらす(Wu−Pong、前掲)。これまでRNaseHの基質として作用することがわかっている骨格修飾DNA化学種はホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ボロントリフルオリデートおよび2’−アラビノおよび2’−フルオロアラビノ−含有オリゴヌクレオチドである。
【0143】
アンチセンス分子はWO91/04753に記載の通りリガンド結合分子とのコンジュゲートの形成により標的ヌクレオチド配列を含有する細胞内に導入してよい。適当なリガンド結合分子は、例えば細胞表面受容体、成長因子、他のサイトカイン、または細胞表面受容体に結合する他のリガンドを含むがこれに限らない。好ましくは、リガンド結合分子のコンジュゲーションはリガンド結合分子がその相当する分子または受容体に結合するか、センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはそのコンジュゲートした形態の細胞内への進入をブロックする能力を実質的に妨害しない。あるいは、センスまたはアンチセンスのオリゴヌクレオチドはWO90/10448に記載の通り、オリゴヌクレオチド−脂質複合体の形成により標的核酸配列を含有する細胞内に導入してよい。アンチセンス分子またはノックアウトおよびノックインモデルの使用はまた治療方法のほかに、上記したスクリーニング試験において使用してもよいと考えられる。
【0144】
(b)RNA干渉
RNA干渉とは低分子干渉RNA(siRNA)により媒介される動物における配列特異的な転写後の遺伝子サイレンシングの過程を指す(Fire et al.,Nature,391,806(1998))。植物における相当する過程は転写後の遺伝子サイレンシングまたはRNAサイレンシングと称され、またカビにおいてはクエリング(quelling)とも称される。細胞におけるdsRNAの存在はなお完全に特性化すべき機序を介したRNAi応答をトリガーする。この機序はリボヌクレアーゼLによるmRNAの非特異的切断をもたらすタンパク質キナーゼPKRおよび2’,5’−オリゴアデニレート合成酵素のdsRNA媒介活性化から生じるインターフェロン応答とは異なると考えられる(Sharp,P.A.,RNA interference−2001,Genes&Development 15:485−490(2001)において考察されている)。
【0145】
低分子干渉RNA(siRNA)はRNA干渉(RNAi)として知られる過程を介して培養哺乳類細胞において遺伝子の発現を抑制するように設計された強力な配列特異的試薬である。Elbashir,S.M.et al.,Nature 411:494−498(2001);Caplen,N.J.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:9742−9747(2001);Harborth,J.et al.,J.Cell Sci.114:4557−4565(2001)。「低分子干渉RNA」即ち「siRNA」という用語はRNA干渉”RNAi”が可能な2本鎖核酸分子を指す(Kreutzer et al.,WO00/44895;Zernicka−Goetz et al.,WO01/36646;Fire,WO99/32619;Mello and Fire,WO01/29058)。本明細書においては、siRNA分子はRNA分子に限定されないが、更に化学修飾されたヌクレオチドおよび非ヌクレオチドも包含する。siRNA遺伝子ターゲティング実験は細胞への一過性のsiRNA転移により行われている(リポソーム媒介トランスフェクション、エレクトロポレーションまたはマイクロインジェクションのような古典的な方法で行われる)。
【0146】
siRNAの分子は21〜23ヌクレオチドRNAであり、通常はRNAiを開始させる長2本鎖RNA(dsRNA)のRNaseIIIプロセシング産物に類似した特徴的な2〜3ヌクレオチドの3’オーバハング末端を有する。細胞に導入されると、それらはエンドヌクレアーゼ複合体(RNA誘導サイレンシング複合体)の今から識別すべきタンパク質と共に組立てられ、これは次に標的mRNAの切断の指針となる。標的mRNAの分解の結果として、相当するタンパク質産物の抑制の特定の表現型の特徴を有する細胞が得られる。siRNAの大きさは伝統的なアンチセンス分子と比較して小さいため、哺乳類細胞中に存在するdsRNA誘導性のインターフェロン系の活性化を防止する。これにより体細胞において30塩基対より大きいdsRNAにより通常は生産される非特異的表現型が回避される。
【0147】
低分子RNA分子の細胞内の転写は通常は低分子核RNA(snRNA)U6またはヒトRNaseP RNA H1をコードするRNAポリメラーゼIII(PolIII)転写単位内へのsiRNA鋳型のクローニングにより達成される。2種の方法がsiRNA発現のために開発されており、即ち:第1の方法ではsiRNA2本鎖を構成するセンスおよびアンチセンスの鎖を個々のプロモーターにより転写し(Lee,N.S. et al.,Nat.Biotechnol.20,500−505(2002).Miyagishi,M.&Taira,K.Nat.Biotechnol.20,497−500(2002);第2の方法では、細胞内プロセシングの後にsiRNAを生じさせるフォールドバックステムループ構造としてsiRNAを発現させる(Paul.C.P.et al.,Nat.Biotechnol.20:505−508(2002))。導入されたDNA鋳型からのsiRNAの内因性発現は外因性siRNA送達の一部の制約事項、特に表現型の一過性の消失を克服できると考えられる。U6およびH1RNAプロモーターはPolIIIプロモーターのIII型のクラスのメンバーである(Paule,M.R.&White,R.J.Nucleic Acids Res.28,1283−1298(2000))。
【0148】
センスおよびアンチセンスsiRNAの同時発現は標的遺伝子のサイレンシングを媒介するが、センスまたはアンチセンスsiRNAの発現のみでは標的遺伝子の発現に大きく影響しない。合成siRNAではなくプラスミドDNAのトランスフェクションはRNaseの汚染の危険性および化学構成されたsiRNAまたはsiRNA転写キットのコストを考慮すると好都合であると考えられる。siRNAの安定な発現は難治性のウィルス感染の治療のような新規な遺伝子療法の用途を与える。siRNAの高い特異性を考慮すると、方法はまた残存する野生型対立遺伝子の改変を伴うことなくRASまたはTP53癌遺伝子のような点突然変異を有する疾患誘導転写物のターゲティングを可能にする。最終的に、種々のゲノムの高スループット配列分析により、DNA系の方法は、特にミニサイズ化されたアレイ系の表現型スクリーニングと組み合わせた場合に、自動化ゲノムワイドの機能消失表現型分析に変わる費用効率的な代替法となる(Ziauddin,J.&Sabatini,D.M.Nature 411:107−110(2001))。
【0149】
細胞内の長dsRNAの存在はダイサーと称されるリボヌクレアーゼIII酵素の活性を刺激する。ダイサーは低分子干渉RNA(siRNA)として知られるdsRNAの低分子断片へのdsRNAのプロセシングに関与している(Berstein et al.2001,Nature,409:363(2001))。ダイサー活性から誘導された低分子干渉RNAは代表的には、約21〜23ヌクレオチド長であり、約19個の塩基対2本鎖を含む。ダイサーは翻訳の制御に関与するとされている保存された構造の前駆体RNAからの21および22ヌクレオチドの小分子一過性RNA(stRNA)の切り出しに関与するとされている(Hutvagner et al.,Science,293,834(2001))。RNAi応答はsiRNAに相同の配列を有する1本鎖RNAの切断を媒介するRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)とも一般的に称されているsiRNAを含有するエンドヌクレアーゼ複合体を特徴としている。標的RNAの切断はsiRNA2本鎖のガイド配列に相補である領域の中央において起こる(Elbashir et al.,Genes Dev.,15,188(2001))。
【0150】
本発明は新規なDKKL−1アイソフォームのポリヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズすることのできる配列を含む単離された核酸分子を含む発現系を提供する。1つの実施形態において、核酸分子は相当するタンパク質の発現を抑制することができる。低分子RNAのベクター指向性発現により細胞内の新規なDKKL−1アイソフォームの発現を抑制する方法においては、低分子RNAが内部に折り込んで新規なDKKL−1アイソフォームのmRNA配列のアイデンティティーを有し細胞内の新規なDKKL−1アイソフォーム遺伝子の転写後の遺伝子サイレンシングまたはRNA干渉(RNAi)をトリガーできる2本鎖を形成する。別の方法においては、新規なDKKL−1アイソフォームのmRNA配列のアイデンティティーを有する低分子2本鎖RNAを細胞内部に送達して新規なDKKL−1アイソフォームの転写後の遺伝子サイレンシングまたはRNAiをトリガーする。種々の実施形態において、核酸分子は少なくとも7量体、少なくとも10量体、または少なくとも20量体である。別の実施形態において、配列は独特である。
【0151】
(c)薬学的組成物
本発明により包含される薬学的組成物は活性薬剤として、治療有効量の本明細書に開示した本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは抗体を含む。「有効量」とは臨床的結果を含む有利または所望の結果を起こすのに十分な量である。有効量は1回以上の投与において投与できる。本発明の目的のためにはアデノウィルスベクターの有効量は疾患の状態を緩和、軽減、安定化、退行、緩徐化または進行を遅延させるのに十分な量である。
【0152】
組成物は癌並びに原発癌の転移を治療するために使用できる。更にまた、薬学的組成物は例えば放射線療法または従来の化学療法に対して腫瘍を感受性にするために癌の治療の従来の方法と組み合わせて使用できる。「治療」、「治療している」、「治療する」等の用語は本明細書においては一般的に所望の薬理学的および/または生理学的作用を得ることを意味する。作用は疾患またはその症状を完全または部分的に防止するという意味において予防的であってよく、および/または、疾患および/または疾患に起因する副作用を部分的または完全な安定化または治癒という意味において治療的であってよい。「治療」とは本明細書においては、哺乳類、特にヒトにおける疾患の如何なる治療も網羅するものであり、そして(a)疾患または症状に罹患し易いがまだ疾患を有するとは診断されていない対象において生じている疾患または症状を防止すること;(b)疾患症状を抑制、即ちその発症を停止させること;または(c)疾患症状を緩解すること、即ち疾患または症状の後退を誘発すること、を包含する。
【0153】
薬学的組成物が示差的に発現されるポリヌクレオチドによりコードされた遺伝子産物に特異的に結合する抗体を含む場合、抗体は治療部位への送達のために薬剤にカップリングされるか、または、前立腺癌の細胞のような癌細胞を含む部位の画像化を促進するための検出可能な標識にカップリングされる。薬剤への抗体のカップリングのための方法は、検出可能な標識を用いた画像化のための方法と同様、当該技術分野で周知である。
【0154】
「患者」とは、本発明の目的のためには、ヒトおよび他の動物、特に哺乳類および生物の両方を包含する。すなわち、方法はヒトの治療および家畜用途の両方に適用される。好ましい実施形態においては、患者は哺乳類であり、最も好ましい実施形態において、患者はヒトである。
【0155】
「治療有効量」という用語は本明細書においては、所望の疾患または状態を治療、緩解または防止するため、あるいは、検出可能な治療上または予防上の作用を示すための治療薬の量を指す。作用は例えば化学的マーカーまたは抗原の濃度により検出できる。治療作用はまた低下した体温のような身体的症状の減少も包含する。対象に対する厳密な有効量は対象の体格および健康状態、状態の性質および程度、および、投与のために選択された治療薬または治療薬の組合せに応じて変動する。ある状況に対する有効量は慣用的な実験により決定され、そして医師の判断の範囲内である。本発明の目的のためには有効用量は一般的に本発明の組成物を投与する個体において約0.01mg/kg〜約5mg/kg、または約0.01mg/kg〜約50mg/kg、または約0.05mg/kg〜約10mg/kgである。
【0156】
薬学的組成物はまた薬学的に受容可能なキャリア(担体)を含有できる。「薬学的に受容可能なキャリア」という用語は抗体またはポリペプチド、遺伝子および他の治療薬のような治療薬の投与のためのキャリアを指す。用語は組成物を与えられる個体に対して有害な抗体の生産を自身が誘導することが無く、そして予定外の毒性を伴うことなく投与できるいずれかの製薬用キャリアを指す。適当なキャリアは大型で緩徐に代謝される巨大分子、例えばタンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合体アミノ酸、アミノ酸共重合体、および不活性のウィルス粒子であることができる。このようなキャリアは当該技術分野で周知である。治療用組成物中の薬学的に受容可能なキャリアは水、食塩水、グリセロールおよびエタノールのような液体を含むことができる。補助的な物質、例えば湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質等もまたこのようなビヒクル中に存在できる。代表的には、治療用組成物は液体の溶液または懸濁液のいずれかである注射液として調製され;注射前に液体ビヒクル中の溶液または懸濁液とするのに適する固体の形態も調製できる。リポソームも薬学的に受容可能なキャリアの定義に包含される。薬学的に受容可能な塩もまた薬学的組成物中に存在でき、例えば鉱物性の酸の塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩等;および有機酸の塩、例えば酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩等が挙げられる。薬学的に受容可能な賦形剤に関する詳細な解説はRemington:The Science and Practice of Pharmacy (1995) Alfonso Gennaro,Lippincott,Williams,& Wilkinsに記載されている。
【0157】
薬学的組成物は種々の形態、例えば、顆粒、錠剤、丸薬、座剤、カプセル、懸濁液、軟膏、ローション等に調製できる。経口および局所投与に適する医薬品等級の有機または無機のキャリアおよび/または希釈剤を用いて治療活性化合物を含有する組成物を製造できる。当該技術分野で知られた希釈剤は水性の媒体、植物性および動物性の油脂および脂肪を包含する。安定化剤、湿潤剤および乳化剤、浸透圧を変化させるための塩類、または、適切なpH値を確保するための緩衝物質、および皮膚浸透性増強剤を補助剤として使用できる。
【0158】
本発明の薬学的組成物は好ましくは水溶性の形態であり、例えば薬学的に受容可能な塩として存在し、これは酸付加塩および塩基付加塩の両方を包含する。「薬学的に受容可能な酸付加塩」とは、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等、および、有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイヒ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸等から形成された、遊離の塩基の生物学的有効性を保持しており、そして、生物学的またはその他の面で望ましくないものではない塩を指す。「薬学的に受容可能な塩基付加塩」とは、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムの塩等のような無機の塩基から誘導されたものを包含する。特に好ましいものはアンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウムおよびマグネシウムの塩である。薬学的に受容可能な有機非毒性塩基から誘導された塩は、第1、第2および第3アミン、置換アミン、例えば天然に存在する置換アミン、環状アミンおよび塩基性のイオン交換樹脂、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミンおよびエタノールアミンの塩を包含する。
【0159】
薬学的組成物はまた1つ以上の以下の物質、即ち:キャリアタンパク質、例えば血清アルブミン;緩衝液;充填剤、例えば微結晶セルロース、乳糖、コーンスターチおよび他の澱粉;結合剤;甘味料および他のフレーバー剤;着色料;およびポリエチレングリコールを含んでよい。添加剤は当該技術分野で周知であり、種々の製剤中で使用される。
【0160】
所望の薬理学的活性を有する化合物は前述の通り宿主に対し、生理学的に許容されるキャリア中で投与してよい。薬剤は種々の方法において、経口、非経腸、例えば皮下、腹腔内、血管内等で投与してよい。導入の様式に応じて、化合物は種々の方法で製剤してよい。治療活性化合物の製剤中の濃度は約0.1〜100%w/vの範囲であってよい。製剤後本発明の意図する組成物は(1)対象に直接投与(例えばポリヌクレオチド、ポリペプチド、小分子アゴニストまたは拮抗剤等として)するか;(2)エキソビボで対象から誘導した細胞に送達する(例えばエキソビボ遺伝子療法の場合)。組成物の直接の送達は一般的には非経腸の注射、例えば皮下、腹腔内、静脈内または筋肉内、腫瘍内または組織の間質空隙に対して行われる。他の投与様式には経口および肺内の投与、座剤および経皮投与、ニードルおよび遺伝子銃またはハイポスプレーを包含する。投薬は単回投与スケジュールまたは多数回投与スケジュールであることができる。
【0161】
エキソビボ送達および形質転換細胞の対象への再移植は当該技術分野で知られており、例えば、国際特許出願公開WO93/14778に記載されている。エキソビボ用途において有用な細胞の例は、例えば幹細胞、特に造血性、リンパ球、マクロファージ、樹状細胞または腫瘍細胞を包含する。一般的に、エキソビボおよびインビトロの適用の両方に関する核酸の送達は例えばデキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソーム中のポリヌクレオチドのカプセル化、および、核へのDNAの直接のマイクロインジェクションにより達成でき、これらは全て当該技術分野で周知である。
【0162】
本発明の薬学的組成物の投与の用量および手段は治療用組成物の特定の性質、患者の状態、年齢および体重、疾患の進行、および、他の関連の要因に基づいて決定する。例えば、ポリヌクレオチド治療用組成物の投与は局所または全身投与、例えば注射、経口投与、粒子銃またはカテーテル投与、および、局部への投与を包含する。好ましくは、治療用ポリヌクレオチド組成物は本明細書に開示したポリヌクレオチドの少なくとも12、22,25、30または35ntの連続したポリヌクレオチドに作動可能に連結したプロモーターを含む発現コンストラクトを含有する。種々の方法を用いて身体内の特定の部位に直接治療用組成物を投与することができる。例えば小型の転移性の患部を位置特定し、治療用組成物を腫瘍本体内部の幾つかの異なる位置において数回注射する。あるいは、腫瘍に栄養補給している動脈を発見し、治療用組成物をその動脈に注射し、これにより腫瘍内に直接組成物を送達することができる。壊死性の中心部を有する腫瘍を吸引除去し、空隙となった腫瘍内の中心部に直接組成物を注射する。アンチセンス組成物は例えば組成物の局所投与により腫瘍の表面に直接投与する。X線画像化を用いて上記送達方法の特定のものを支援する。
【0163】
アンチセンスポリヌクレオチド、サブゲノムポリヌクレオチドまたは特定の組織に対する抗体のターゲティングされた送達もまた使用できる。受容体媒介DNA送達手法は例えばFindeis et al.,Trends Biotechnol.(1993)11:202;Chiou et al.,Gene Therapeutics:Methods And Applications Of Direct Gene Transfer (J.A.Wolff,ed.)(1994);Wu et al.,J.Biol.Chem.(1988)263:621;Wo et al.,J.Biol.Chem.(1994)269:542;Zenke et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)(1990)87:3655;Wu et al.,J.Biol.Chem.(1991)266:388に記載されている。ポリヌクレオチドを含有する治療用組成物は遺伝子療法プロトコルにおいて局所投与のためにDNA約100ng〜約200mgの範囲で投与される。DNA約500ng〜約50mg、約1μg〜約2mg、約5μg〜約500μgおよび約20μg〜約100μgの濃度範囲もまた遺伝子療法プロトコルにおいて使用できる。作用の方法(例えばコードされた遺伝子産物の増強または抑制の程度に関する)および形質転換および発現の効率のような要因はアンチセンスサブゲノムポリヌクレオチドの最終的な薬効のために必要な用量に影響する懸案事項である。より広範な領域の組織に渡ってより多大な発現を望む場合は、より大量のアンチセンスサブゲノムポリヌクレオチドまたは連続投与プロトコルにおける同じ量の反復投与、または例えば腫瘍部位に隣接または近接する異なる組織の部位への数回の投与が明確な治療結果を得るためには必要となる場合がある。全ての場合において、臨床治験における常法実験により旨適治療作用のための特定の範囲を決定する。
【0164】
本発明の治療用のポリヌクレオチドおよびポリペプチドは遺伝子送達ビヒクルを用いて送達できる。遺伝子送達ビヒクルはウィルスまたは非ウィルスの起源であることができる(一般的には、Jolly,Cancer Gene Therapy(1994)1:51; Kimura,Human Gene Therapy(1994)5:845;Connelly,Human Gene Therapy(1995)1:185;およびKaplitt,Nature Genetics(1994)6:148参照)。そのようなコード配列の発現は内因性の哺乳類または非相同のプロモーターを用いて誘導できる。コード配列の発現は構成的であるか、調節されることができる。
【0165】
所望のポリヌクレオチドの送達および所望の細胞内における発現のためのウィルス系のベクターは当該技術分野で周知である。例示されるウィルス系のビヒクルは例えば組み換えレトロウィルス(例えばWO90/07936;WO94/03622;WO93/25698;WO93/25234;米国特許5,219,740;WO93/11230;WO93/10218;米国特許4,777,127;GB特許2,200,651;EP0345242;およびWO91/02805参照)、アルファウィルス系ベクター(例えばシンドビスウィルスベクター、Semliki forestウィルス(ATCCVR−67;ATCCVR−1247)、ロスリバーウィルス(ATCCVR−373;ATCCVR−1246)およびベネズエラウマ脳炎ウィルス(ATCCVR−923;ATCCVR−1250;ATCCVR−1249;ATCCVR−532))、およびアデノ関連ウィルス(AVV)ベクター(例えばWO94/12649、WO93/03769;WO93/19191;WO94/28938;WO95/11984およびWO95/00655参照)を含むがこれらに限定されない。Curiel,Hum.Gene Ther.(1992)3:147に記載されている死滅アデノウィルスに連結したDNAの投与も使用できる。
【0166】
非ウィルス送達ビヒクルおよび方法もまた使用してよく、例えば、死滅アデノウィルス単独に連結または未連結のポリカチオン性縮合DNA(例えばCuriel,Hum.Gene Ther.(1992)3:147参照);リガンド連結DNA(例えばWu,J.Biol.Chem.(1989)264:16985参照);真核細胞送達ビヒクル細胞(例えば米国特許5,814,482;WO95/07994;WO96/17072;WO95/30763;およびWO97/42338参照)および核電荷中和または細胞膜融合が挙げられる。ネイキッドDNAもまた使用できる。ネイキッドDNA導入方法の例はWO90/11092および米国特許5,580,859に記載されている。遺伝子送達ビヒクルとして機能できるリポソームは米国特許5,422,120;WO95/13796;WO94/23697;WO91/14445;およびEP0524968に記載されている。別の方法はPhilip,Mol.Cell Biol.(1994)14:2411およびWoffendin,Proc.Natl.Acad.Sci.(1994)91:1581に記載されている。
【0167】
使用に適する別の非ウィルス送達はWoffendin,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1994)91(24):11581に記載さている方法のような機械的送達系を包含する。更にまた、コード配列およびその発現産物は光重合ヒドロゲル物質の付着またはイオン化照射の使用により送達できる(例えば米国特許5,206,151およびWO92/11033参照)。コード配列の送達のために使用できる他の従来の遺伝子送達法は例えばハンドヘルド遺伝子転移粒子銃の使用(例えば、米国特許5,149,655参照);転移された遺伝子を活性化するためのイオン化照射の使用(例えば米国特許5,206,151およびWO92/11033参照)を包含する。
(d)抗体
1つの実施形態において、癌抑制剤は上記した抗体である。1つの実施形態においては本発明の新規なDKKL−1アイソフォームタンパク質を用いて本明細書に記載する通り有用であるタンパク質に対するポリクローナルまたはモノクローナル抗体を作製する。同様に、タンパク質を標準的な技術を用いてアフィニティークロマトグラフィーカラムにカップリングすることができる。次にこれらのカラムを用いて新規なDKKL−1アイソフォームのポリペプチドに対する抗体を精製する。好ましい実施形態においては、抗体はタンパク質に独特のエピトープに対して作製し;すなわち、抗体の他のタンパク質への交差反応性は殆どまたは全くない。これらの抗体は多くの用途に使用できる。例えば抗体を標準的アフィニティークロマトグラフィーカラムにカップリングさせて新規なDKKL−1アイソフォームタンパク質を精製するために使用してよい。抗体はまた、それらがタンパク質に特異的に結合することから、上記した通りブロッキングポリペプチドとして治療上使用してよい。
【0168】
適当な対照と比較した場合のコードされた癌関連ポリペプチドに特異的な抗体の特異的結合の検出は、試料中にコードされたポリペプチドが存在することを示す。適当な対照はコードされた新規なDKKL−1アイソフォームポリペプチドを含有しないことがわかっている、または、ポリペプチドの上昇した濃度を含有しないことがわかっている試料を包含し;例えば正常組織が挙げられ、そして試料をコードされたポリペプチドに対して特異的ではない抗体、例えば抗イディオタイプ抗体に接触させる。特異的な抗体−抗原の相互作用を検出するための種々の方法が当該技術分野で知られており、そして例えば標準的な免疫組織学的方法、免疫沈降、酵素イムノアッセイおよびラジオイムノアッセイを含むがこれらに限定されない方法において使用できる。一般的に、特異的抗体は直接または間接的に検出可能な標識である。直接の標識は放射性同位体;生成物が検出される酵素(例えばルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ等);蛍光標識(例えばフルオレセイン、イソチオシアネート、ローダミン、フィコエリスリン等);EDTAのような金属キレート形成基を介して抗体に結合させた蛍光発生金属、例えば152Euまたは他のランタニド系列;ケミルミネセント化合物、例えばルミノール、イソルミノール、アクリジニウム塩等;バイオルミネセント化合物、例えばルシフェリン、エクオリン(緑色蛍光タンパク質)等を包含する。抗体はポリスチレンプレートまたはビーズのような不溶性支持体に結合(カップリング)させてよい。間接的な標識は、コードされたポリペプチドに特異的な抗体(「第1の特異的抗体」)に対して特異的な第2の抗体、ここで第2の抗体は上記した通り標識されたもの;および特異的結合対のメンバー、例えばビオチン−アビジン等を包含する。生物学的試料は細胞、細胞粒子または可溶性タンパク質を固定化できるニトロセルロースのような固体支持体またはキャリアに接触させてこれに固定化してよい。次に支持体を適当な緩衝液で洗浄し、その後検出可能に標識された第1の特異的抗体と接触させる。検出方法は当該技術分野で知られており、検出可能な標識により発せられたシグナルに対して適当であるように選択される。検出は一般的に適当な対照と、そして適切な標準物質と比較しながら行われる。
【0169】
一部の実施形態においては、方法は例えば癌細胞が存在する部位を位置決めまたは識別するためにインビボで使用するために適合させる。これらの実施形態においては、検出可能に標識された部分、例えば癌関連ポリペプチドに特異的な抗体を個体に投与(例えば注射による)し、そして標識された細胞を例えば磁気共鳴画像化、コンピューター断層撮影スキャニング等を含むがこれらに限らない標準的な画像化手法により位置決めする。この方法により癌細胞を示差的に標識する。
(e)癌の検出および診断
理論に拘泥するものではないが、種々の新規なDKKL−1アイソフォーム配列が癌において重要であると考えられる。1つの実施形態において、本発明は新規なスプライス型ポリヌクレオチドを含有する細胞を識別するための方法を提供する。当業者の知る通り、これは多くの配列決定の手法を用いて行ってよい。
【0170】
好ましい実施形態においては、新規なDKKL−1アイソフォーム配列をプローブとして使用しながらゲノム内のDKKL−1遺伝子のコピー数を測定する。例えば、一部の癌は染色体の欠失または挿入を示し、遺伝子のコピー数の改変をもたらす。
【0171】
本発明は癌細胞を検出するため、対象における癌および癌の重症度(例えば腫瘍の等級、腫瘍負荷等)の診断を容易にするため、被験体における予後の決定を促進するため、および、治療に対する被験体の応答性を評価する(例えば化学療法過程の間またはその後の腫瘍負荷を評価することを介して治療効果の尺度を与えることによる)ための、本明細書に記載したポリヌクレオチドの使用方法を提供する。検出は癌細胞において示差的に発現されるポリヌクレオチドの検出および/またはがん細胞において示差的に発現されるポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの検出に基づく。本発明の検出方法はインビトロおよびインビボにおいて、単離された細胞に対し、または全組織または体液において、例えば血液、血漿、血清、尿等において実施できる。
【0172】
一部の実施形態においては、がん細胞において示差的に発現される転写物の細胞中の発現を検出することにより癌を検出するための方法が提供される。検出のためには種々の既知の方法のいずれか、例えば前立腺癌において示差的に発現されるポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションによる転写物の検出;特異的オリゴヌクレオチドプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応による転写物の検出;前立腺癌において示差的に発現される遺伝子にハイブリダイズするポリヌクレオチドをプローブとして用いる細胞のインサイチュハイブリダイゼーションを含むがこれらに限らない方法が使用できる。方法は癌細胞において示差的に発現される遺伝子の検出および/またはmRNA濃度の測定に使用できる。一部の実施形態においては、方法は、a)ハイブリダイゼーションを可能にする条件下で本明細書に記載した示差的に発現される遺伝子に相当するポリヌクレオチドに試料を接触させること;およびb)ハイブリダイゼーションがあればそれを検出することを含む。
【0173】
適当な対照と比較した場合の示差的ハイブリダイゼーションの検出は、癌細胞において示差的に発現されるポリヌクレオチドの試料中の存在を示す。適切な対照は例えば癌細胞において示差的に発現されるポリヌクレオチドを含有しないことがわかっている試料および癌細胞において示差的に発現されるポリヌクレオチドと同じ「センス」の標識ポリヌクレオチドの使用を包含する。ハイブリダイゼーションを可能にする条件は当該技術分野で知られており、上記において詳述したとおりである。検出はまたいずれかの既知の方法、例えば、インサイチュハイブリダイゼーション、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、RT−PCR(逆転写−PCR)、TMA、bDNAおよびNasbauおよび「ノーザン」またはRNAブロッティングを含むがこれらに限らない方法、またはこのような手法の組み合わせにより、適当に標識されたポリヌクレオチドを使用しながら達成してよい。ポリヌクレオチドに関する種々の標識および標識方法が当該技術分野で知られており、本発明の試験方法において使用できる。ハイブリダイゼーションの特異性は適切な対照との比較により測定できる。
【0174】
本明細書に記載するポリヌクレオチドの少なくとも10nt、少なくとも12nt、少なくとも15連続ヌクレオチドを一般的に含むポリヌクレオチドは種々の目的、例えば前立腺癌細胞において示差的に発現されるポリヌクレオチドの検出および/または転写水準の測定のためのプローブとして使用される。当業者の知る通り、プローブは検出可能に標識され、例えば被験試料から得た固定化ポリヌクレオチド(例えばmRNA)を含むアレイに接触させる。あるいは、プローブはアレイ上に固定化し、被験試料を検出可能に標識することができる。本発明のこれらおよびその他の変形例は当業者の知る通りであり、本発明の範囲に包含される。
【0175】
提供されたポリヌクレオチドに相当する遺伝子の発現を検出するためにヌクレオチドプローブを用いる。ノーザンブロットにおいては、mRNAを電気泳動により分離し、プローブと接触させる。プローブは特定の大きさのmRNAシリーズにハイブリダイズするものとして検出される。ハイブリダイゼーションの量を定量することにより例えば特定の条件下における発現の相対的な量を測定できる。プローブは発現を検出するために細胞へのインサイチュハイブリダイゼーションのために使用される。プローブはまたハイブリダイゼーション配列の診断上の検出のためにインビボで使用することができる。プローブは代表的には、放射性同位体で標識する。他の方の検出可能な標識、例えば発色団、蛍光団、酵素も使用できる。ヌクレオチドハイブリダイゼーション試験の他の例はWO92/02526および米国特許5,124,246に記載されている。
【0176】
PCRは標的核酸の少量を検出するための別の手段である(例えばMullis et al.,Meth.Enzymol.(1987)155:335;米国特許4,683,195;および米国特許4,683,202参照)。標的核酸にハイブリダイズする2つのプライマーオリゴヌクレオチドを、反応をプライミングするために使用する。プライマーは本明細書に記載したポリヌクレオチド内またはその3‘または5’側の配列よりなることができる。あるいは、プライマーがこれらのポリヌクレオチドの3’および5’側である場合、それらはそれらまたは相補体にはハイブリダイゼーションする必要はない。熱安定性ポリメラーゼを用いて標的の増幅を行った後、増幅された標的核酸は当該技術分野で知られた方法、例えばサザンブロットにより検出することもできる。mRNAまたはcDNAはまたSambrook et al.,”Molecular Cloning :A Laboratory Manual”(New York,Cold Spring Harbor Laboratory,1989)に記載の伝統的なブロッティング手法(例えばサザンブロット、ノーザンブロット等)により検出できる(例えばPCR増幅を行わない)。一般的にポリメラーゼ酵素を用いて形成されるmRNAまたはcDNAは、ゲル電気泳動を用いて精製および分離し、そしてニトロセルロースのような固体支持体に転移させる。固体支持体は標識されたプローブに曝露し、未ハイブリダイズのプローブがあれば洗浄除去し、そして標識されたプローブを含有する2本鎖を検出する。
【0177】
PCR増幅を用いる方法は1細胞由来のDNAに対して実施できるが、少なくとも約10個の細胞を用いるのが好都合である。ポリメラーゼ連鎖反応の使用はSaiki et al.(1985)Science 239:487に記載されており、そして現在の技術の解説はSambrook et al.,Molecular Cloning :A Laboratory Manual CSH Press 1989,pp.14.2−14.33に記載されている。検出可能な標識を増幅反応に含めてよい。適当な検出可能な標識は蛍光色素(例えばフルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、テキサスレッド、フィコエリスリン、アロフィコシアニン、6−カルボキシフルオレセイン(6−FAM)、2’,7’−ジメトキシ−4’,5’−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン、6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、6−カルボキシ−2’,4’,7’,4’,7’−ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、5−カルボキシフルオレセイン(5−FAM)またはN,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA))、放射性標識(例えば32P、35S、H等)等を包含する。標識は2段階の系であってよく、その場合はポリヌクレオチドを高いアフィニティーの結合相手、例えばアビジン、特異的抗体等を有するビオチン、ハプテン等にコンジュゲートさせ、その場合、結合相手は検出可能な標識にコンジュゲートさせる。標識はプライマーの片方または両方にコンジュゲートしてよい。あるいは、標識が増幅産物内に取り込まれるように増幅に使用するヌクレオチドのプールを標識する。
【0178】
検出方法はキットの部分として提供することができる。すなわち、本発明は更に生物学的試料中の、癌細胞において示差的に発現されるポリヌクレオチド(例えば目的の示差的に発現される遺伝子によりコードされるmRNAの検出による)および/またはそれによりコードされるポリペプチドの存在および/または水準の検出のためのキットを提供する。これらのキットを使用する操作法は臨床研究室、実験研究室、医療担当者または一個人により実施できる。癌細胞に置いて示差的に発現されるポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドを検出するための本発明のキットはポリペプチドまたはそのフラグメントに結合する抗体であってよい、ポリペプチドに特異的に結合する部分を含んでよい。前立腺癌において示差的に発現されるポリヌクレオチドを検出するために使用される本発明のキットは、このようなポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズする部分を含んでよい。キットは場合により緩衝液、発色試薬、標識、反応表面、検出手段、対照試料、標準物質、取扱説明書、および解釈用の情報を含むがこれらに限らない、操作に有用な別の要素を提供する。
【0179】
本発明は更に、哺乳類(例えばヒト)における新生物または前新生物性の状態を検出および/または診断する方法に関する。「診断」とは本明細書においては、一般的に疾患または障害に罹患しやすい被験体の判定、疾患または障害により被験体が現在影響を受けているかどうかの判定、疾患または障害により影響を受けている被験体の予後(例えば前転移または転移の癌の状態の発見、癌の段階または治療に対する癌の応答性)およびセラメトリックス(例えば治療の作用または薬効に関する情報を提供するために被験体の状態をモニタリングすること)を包含する。
【0180】
「治療」、「治療すること」、「治療する」等の用語は本明細書においては、一般的に所望の薬理学的および/または生理学的作用を得ることを指す。作用は疾患またはその症状を完全または部分的に防止するという観点において予防的であってよく、および/または疾患および/または疾患に起因する副作用について部分的または完全な安定化または治癒の観点において治療的であってよい。「治療」とは本明細書においては、哺乳類、特にヒトにおける疾患の何れの治療も対象としており、そして(a)疾患または症状に罹患し易いがまだ疾患を有するとは診断されていない被験体において生じている疾患または症状を防止すること;(b)疾患症状を抑制、即ちその発症を停止させること;または(c)疾患症状を緩解すること、即ち疾患または症状の後退を誘発すること、を包含する。
【0181】
「有効量」とは、臨床結果を含む、有利または所望の結果をもたらすために十分な量である。有効量とは一回以上の投与において投与できる。
【0182】
「細胞試料」とは個体から得られる試料の方の種々のものを包含し、そして診断またはモニタリング試験において使用できる。定義には血液および生物起源の他の液体試料、固体の組織試料、例えば生検標本または組織培養物またはそれより誘導された細胞、および、その子孫を包含する。定義はまたその獲得の後にいずれかの方法、例えば試薬、可溶化剤の投与または特定の成分、例えばタンパク質またはポリヌクレオチドのリッチ化などにより操作されている試料を含む。「細胞試料」という用語は臨床試料を包含し、そしてまた培養されている細胞、細胞上澄み、細胞溶解物、血清、血漿、生物学的液体および組織の試料を包含する。
【0183】
本明細書においては、「新生物細胞」、「新生物形成」、「腫瘍」、「腫瘍細胞」、「癌」および「癌細胞」という用語(互換的に使用)は細胞増殖の制御の顕著な消失(即ち脱調節された細胞分裂)を特徴とする異常な生育の表現型を示すように比較的自発的な生育を示す細胞を指す。新生物細胞は悪性または両性であってよい。
【0184】
「個体」、「被験体」、「宿主」および「患者」という用語は本明細書においては互換的に使用し、そして診断、投与または治療が望まれるいずれかの哺乳類被験体、特にヒトを指す。他の被験体はウシ、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ等を包含してよい。これらの方法に従って検出/診断できる状態の例は癌を包含する。適切な発現パターンを示す遺伝子に相当するポリヌクレオチドは被験体における癌を検出するために使用できる。癌のマーカーの解説については、例えばHanahan et al.,Cell 100:57−70(2000)を参照のこと。
【0185】
この方法において使用するのに適する生物学的試料は生物学的液体、例えば血清、血漿、肋膜滲出物、尿および脳脊髄液、CSFを包含し、生検試料から誘導した試料も含む組織試料(例えば乳房の腫瘍または前立腺の組織の薄片)もまた本発明の方法において使用できる。例えば組織生検から誘導した細胞培養物または細胞抽出液もまた使用できる。
【0186】
化合物は好ましくは結合タンパク質、例えば、ポリクローナルまたはモノクローナルの抗体またはその抗原結合フラグメントであり、これは検出可能なマーカー(例えば蛍光団、発色団または同位体等)で標識できる。適宜、化合物はビーズ、プレート、フィルター、樹脂等のような固体支持体に結合することができる。複合体の形成の決定は第1の成分(または複合体)に特異的に結合する別の化合物(例えば抗体)に複合体を接触させることにより行うことができる。第1の化合物と同様、別の化合物も固体支持体に結合および/または検出可能なマーカーで標識することができる。
【0187】
本発明の新規なDKKL−1アイソフォームポリペプチドの上昇した濃度の発見はアジュバント治療が有益と考えられる被験体(患者)の発見を可能とする。例えば、初期治療後の被験体(例えば手術を受けた被験体)から得た生物学的試料を循環タンパク質の存在についてスクリーニングすることができ、正常集団の試験に基づいた場合に存在するタンパク質の水準が上昇していれば残存する腫瘍組織を示している。同様に、外科的に摘出された腫瘍の切除部位から得た組織を検査(例えば免疫蛍光分析)することができ、産物の上昇した水準の存在(周囲組織と比較して)は腫瘍の不完全な摘出を示している。▲このような被験体を発見する能力は特定の対象の必要性に治療を適合させることができる。非外科的治療、例えば化学療法または放射線療法を受けている対象もまたモニタリングでき、タンパク質の上昇した水準の対象から得た試料の存在は継続治療の必要性を示している。疾患の段階の決定(例えば治療予定を旨適化する目的のため)もまた、例えば生検により行うことができる。
【0188】
本発明の特定の態様は以下に示す非限定的な実施例においてより詳細に説明する。
【実施例】
【0189】
以下の実施例は本発明の作製および使用の方法に関する完全な開示および説明を当業者に与えるために提示するものであり、本発明者らが本発明であるとみなす範囲を限定する意図はなく、また以下に記載する実験が実施した実験の全てであることを示すわけではない。使用した数(例えば量、温度等)に関する正確さを確保するために努力したが一部の実験的誤差および偏移は許容されなければならない。特段の記載が無い限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧およびその近傍である。
【0190】
(実施例1 DKKL−1の新規なスプライス型の検出)
ヒトDKKL1遺伝子の発現産物をDKKL1の公開されている配列:NM_014419およびAF177398に対して設計された遺伝子特異的プライマーを用いてヒト精巣組織の遺伝子発現ライブラリであるOrigeneの”Multiple−choice first−strand cDNA CH−1011−testis”から増幅してクローニングした。既知のアイソフォーム1のほかに、ヒトDKKL1遺伝子の2種の新規なスプライス改変体を変異した大きさにより識別し、配列決定した。
【0191】
図1に示すDKKL−1のCelera(hCG16206およびhCT_7238)配列を用いてアライメントを行った。複雑性に関するアライメントのダイアグラムはCeleraのhCT_7238のコード配列を用いて図2に示す。
【0192】
(実施例2 DKKL−1の新規なスプライス型の特性化)
CeleraのhCT_7238のコード配列によるDKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3のヌクレオチド配列アライメントを図3A〜3Eに示す。Sagresのクローン379−stop、379−R6、379−R7、379−R3および379−RS2はアイソフォーム1の既知の正常なスプライスパターンを示す。コード配列は、開始コドンの前−4位から始まりDKKL−1に関する終止コドンで終わるSagresのクローンの配列とアラインした。新規なアイソフォーム2は図3A〜3Eに示すクローン379−R8およびクローン379−RS3のヌクレオチド配列を含み、エクソン4を欠いている。アイソフォーム2の新規なスプライス接合体はDKKL−1コード配列のヌクレオチド329〜330にわたる。新規なアイソフォーム3は図3A〜3Eに示すクローン379−R4、クローン379−R5、クローン379−R2、クローン379−RS7およびクローン379−RS4のヌクレオチド配列を含み、エクソン3および4を欠いている。アイソフォーム3の新規なスプライス接合体はDKKL−1コード配列の188位および189位にわたる。
【0193】
正常なアイソフォーム1およびCeleraのhCT_7238とのDKKL−1スプライス産物の新規なアイソフォーム2および3のポリペプチド配列アライメントを図4A〜4Bに示す。新規なアイソフォーム2は図4A〜4Bに示すクローン379−R8およびクローン379−RS3のポリペプチド配列の108位および109位にわたる新規なスプライス接合体を有する。新規なアイソフォーム3は図4A〜4Bに示すクローン379−R4、クローン379−R5、クローン379−R2、クローン379−RS7およびクローン379−RS4のポリペプチド配列の61位および62位にわたる新規なスプライス接合体を含む。
【0194】
これらのスプライス改変体(アイソフォーム1、2および3)は過剰発現された場合に分泌され、一部の被験癌細胞系統の原形質膜に局在化する。この挙動は既知のヒトDickkopf(dkk)タンパク質と同様である。
【0195】
(実施例3 アレイを用いた癌に関連するcDNAの上昇した濃度の検出)
癌における示差的発現があるものをスクリーニングするための新規なDKKL−1アイソフォームを示すcDNA配列はポリヌクレオチドアレイ上のハイブリダイゼーションにより試験する。cDNA配列は目的の細胞系統または組織から単離したcDNAクローンを包含する。cDNAはcDNAの約200ng/μl溶液0.8μlを用いて2連でスポットした4,068配列(対照を含む)を示すように、スライドあたり9,216スポットの密度で当該技術分野で周知の方法に従って反射スライド(Amersham)上にスポットする。
【0196】
目的の遺伝子産物に相当する選択されたcDNAクローンのPCR産物を50%DMSO溶液中に調製する。これらのPCR産物をMolecular Dynamics Generation IIIスポッティングロボットを用いてアレイ当り9216クローンの密度でAmershamのアルミニウムマイクロアレイスライド上にスポットする。クローンはチップ当り合計4608種の異なる配列につき2連でスポットする。
【0197】
cDNAプローブは患者から単離した腫瘍組織試料および正常組織試料のレーザーキャプチャーマイクロディセクション(LCM,Arcturus Enginering Inc.,Mountain View,CA)により得られた全RNAから調製する。
【0198】
全RNAはT7RNAポリメラーゼプロモーターを含有するプライマーを用いてcDNA上に逆転写し、その後第2の鎖のDNA合成を行う。次にcDNAを、T7プロモーター媒介発現を用いてアンチセンスRNAを生成するためにインビトロで転写(例えばLuo et al.(1999)Nature Med5:117−122)し、そして次にアンチセンスRNAをcDNAに変換する。cDNAの第2のセットを、再度T7プロモーターを用いてインビトロで転写し、アンチセンスRNAを作製する。このアンチセンスRNAを次に蛍光標識するか、または、RNAを再度cDNAに変換し、第3ラウンドのT7媒介増幅を行い、より多くのアンチセンスRNAを生成する。すなわち、操作法は蛍光標識のために使用される最終RNAを生成するために、インビトロの転写の2または3ラウンドを可能にする。プローブはRNA原料物質から蛍光標識cDNAを作製することにより標識される。腫瘍RNA試料から作製された蛍光標識cDNAを正常細胞RNA試料から作製された蛍光標識cDNAと比較する。例えば、正常細胞由来のcDNAプローブをCy3蛍光染料(緑)で標識し、そして癌が疑われる細胞から調製したcDNAプローブをCy5蛍光染料(赤)で標識する。
【0199】
示差的発現試験は、腫瘍細胞および同じ患者の正常細胞に由来するプローブの等量を混合することにより実施する。アレイは5xSSC、0.2%SDS、1mMEDTA中60℃で約2時間インキュベーションし、次に水中で3回そしてイソプロパノール中で2回洗浄することにより予備ハイブリダイズする。アレイの予備ハイブリダイゼーションの後、次に、プローブ混合物を高ストリンジェンシー(50%ホルミアミド、5xSSCおよび0.2%SDS42℃で終夜)の条件下にアレイにハイブリダイズする。ハイブリダイゼーションの後、アレイを55℃で3回、以下の通り洗浄、即ち1)1回目は1xSSC/0.2%SDSで洗浄;2)2回目は0.1xSSC/0.2%SDSで洗浄;そして3)3回目は0.1xSSCで洗浄する。
【0200】
次にアレイをMolecular Dynamics Generation IIIデュアルカラーレーザースキャナー/検出器を用いて緑色および赤色蛍光についてスキャニングする。画像をBioDiscovery Autogeneソフトウエアを用いて処理し、そして各スキャンセットのデータを企画化する。実験を反復するが、今回は逆の色で2プローブを標識することにより両方の「色方向」で試験を実施する。各実験は場合により更に2枚のスライド(1枚各色方向)を用いて反復する。各スキャンのデータを規格化し、アレイ上の各配列の蛍光の水準を4アレイの8連のスポット/遺伝子または2アレイまたは他の列の4連のスポット/遺伝子の幾何平均の比として表示する。
【0201】
規格化:規格化の目的は特定の細胞の型または組織において発現される全ての転写物が等しく表示されるcDNAライブラリを作製することであり(S.M.Weissman,Mol.Biol.Med.4(3):133−143(1987);Patanjali,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88(5):1943−1947(1991))、従って、旨適規格化ライブラリ中わずか30,000組み換えクローンの単離で、細胞当たり10,000と推定される細胞の全遺伝子発現レパートリーを表してよい。
【0202】
全RNAは製造元の推奨する操作法に従ってRNeasy(商標)Protect Kit(Qiagen,Valencia,CA)を用いながら採取細胞から抽出する。RNAはRiboGreen(商標)RNA定量キット(Molecular Probes,Inc.Eugene,OR)を用いて定量する。全RNAの1μgを逆転写し、そして、SMART(商標)PCRcDNA合成キット(ClonTech,Palo Alto,CA)を用いてPCR増幅する。cDNA産物は標準的操作法を用いてアガロースゲル電気泳動によりサイズ選択する(Sambrook,J.T.,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY)。cDNAはBio101Geneclean登録商標IIキットを用いて抽出する(Qbiogene,Carlsbad,CA)。cDNAの規格化はハイブリダイゼーション原理の速度論を用いて実施、即ち:cDNA1.0μgを10分間100℃で加熱することにより変性し、次に120mMNaCl、10mMTrisHCl(pH=8.0)、5mMEDTA.Naおよび50%ホルムアミドの存在下42時間42℃でインキュベートする。1本鎖cDNA(規格化)は製造元の推奨する操作法に従ってヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー(#130−0520、BioRad、Hercules,CA)により精製し、PCR増幅3サイクルにより増幅して2本鎖cDNAに変換し、そして標準的な操作法を用いてプラスミドベクターにクローニングする(Sambrook,J.T.,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY)。規格化およびクローニング方法において使用される全てのプライマー/アダプターはSMART(商標)PCRcDNA合成キットにおいて製造元により提供される(ClonTech,Palo Alto,CA)。スーパーコンポーネント細胞(XL−2Blue Ultracompetent Cells,Stratagene,California)を規格化されたcDNAライブラリでトランスフェクトし、固体媒体上にプレーティングし、そして36℃で一夜生育させる。
【0203】
規格化ライブラリ当たり10,000組み換え体の配列をABIPRISM3700DNAAnalyzer(Applied Biosystems,California)を用いてキャピラリー配列決定により分析する。ライブラリの転写物の表示を決定するために、BLAST分析をクローン配列に対して実施することにより各単離クローンに転写物のアイデンティティーを割り付け、即ち単離されたポリヌクレオチドの配列をまずXBLASTマスキングプログラムを用いてマスキングすることにより低複雑性の配列を排除する(Claverie “Effective Large−Scale Sequence Similarity Searches”,Computer Methods for Macromolecular Sequence Analysis,Doolittle,ed.,Meth.Enzymol. 266:212−227 Academic Press,NY,NY(1996);特にClaverie,“Automated DNA Sequencing and Analysis Techniques”,Adams et al.,eds.,Chap.36,p.267 Academic Press,San Diego,1994 and Claverie et al.,Comput.Chem.(1993)17:191参照)。一般的に、マスキングは、比較的低関心の配列をその低い複雑性により排除すること、および、複数の配列、例えばAluリピートに共通する反復領域に対する同様性に基づいて複数の「ヒット」を排除することを除き、最終検索結果に影響しない。次に残存する配列をBLASTNvsGenBank検索において使用する。配列はまたBLASTXvsNRP(非縮重タンパク質)データベース検索においてクエリー配列として使用する。
【0204】
自動化配列決定反応は、製造元の指示に従って、AmpliTaq DNA Polymerase,FSを含有するPerkin−Elmer PRISM Dye Terminator Cycle Sequencing Ready Kitを用いて実施する。反応は1分間20℃または30℃でアニーリングする以外は製造元の指示に従ってGeneAmpPCR System 9600においてサイクリングする。配列決定反応混合物をエタノール沈殿し、ペレットをローディング緩衝液8マイクロリットル中に再 懸濁し、1.5マイクロリットルを配列決定ゲル上にロードし、データをABI PRISM 3700 DNA Sequencer(Applied Biosystems,Foster City,CA)により収集する。
【0205】
ライブラリ中で配列が表示された回数は、クローニングされたcDNA配列に対して配列同一性分析を実施すること、および、転写物のアイデンティティーを各単離クローンに帰属させることにより決定する。第1に、各配列が細菌性、リボソームまたはミトコンドリアの夾雑物であるかどうかを決定するために検査する。このような配列はその後の分析から除外する。第2に、配列の人為的要素、例えばベクターおよび反復エレメントをマスキングおよび/または各配列から除外する。
【0206】
残りの配列をBLAST(Altschul et al,J.Mol.Biol.,215:40,1990)を介して遺伝子の同定のためのGenBankおよびESTデータベースと比較し、そして、FastA(Pearson&Lipman,PNAS,85:2444,1988)を介して相互に比較することにより、企画化されたcDNAライブラリにおけるcDNA発生の頻度を計算する。配列はまたBLASTINプログラム(BLASTIN 1.3MP:Altshul et al.,J.Mol.Bio.215:403,1990)を用いてGenBankおよびGeneSeqヌクレオチドデータベースに対しても検索する。第4に、配列を非縮重タンパク質(NRP)データベースに対してBLASTXプログラム(BLASTX 1.3MP:Altshul et al.,上出)を用いて分析する。このタンパク質データベースはSwiss−Prot,PIRおよびNCBI GenPeptタンパク質データベースの組み合わせである。BLASTXプログラムはデフォルトBLOSUM−62置換マトリックスおよびフィルターパラメーター:“xnu+seg”を用いて実施する。使用するスコアカットオフは75である。重複クローンのコンティグへの組み立てはプログラムSequencher(Gene Codes Corp.;Ann Arbor,Mich)を用いて行う。組み立てられたコンティグはGCGパッケージ(Genetic Computer Group,University Research Park,575 Science Drive,Madison,Wis,53711)Suite Version 10.1中のプログラムを用いて分析する。
(実施例4)
【0207】
ヒト癌細胞および組織における新規なDKKL−1アイソフォームの検出
ヒト癌組織、ヒト結腸、正常ヒト組織由来、および、他のヒト細胞系統由来のDNAをDelli Bovi etal.(1986,Cancer Res.46:6333−6338)の操作法に従って抽出する。DNAは0.05MTrisHCl緩衝液、pH7.8および0.1mMEDTAを含有する溶液中に再懸濁し、そして回収したDNAの量をHoechst 33258染料を用いてマイクロ蛍光分析により測定する。Cesarone,C.et al.,Anal Biochem 100:188−197(1979)。
【0208】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は緩衝液、Mg2+、およびヌクレオチドの濃度に関して製造元(Perkin Elmer Cetus)により推奨される条件に従ってTaqポリメラーゼを用いて実施する。サーモサイクリングはDNAサイクラー中、変性を94℃3分、その後35または50サイクルの94℃1.5分、50℃2分、および72℃3分で実施する。遺伝子の選択された領域を増幅するPCRの能力はポジティブの鋳型としてクローニングしたポリヌクレオチドを用いて試験する。旨適Mg2+、プライマー濃度および種々のサイクリング温度の条件をこれらの鋳型を用いて測定する。製造元により推奨されるマトリックス混合物を使用する。マスターミックス成分の考えられる夾雑汚染を検出するために、鋳型を用いない反応を通常通り試験する。
【0209】
サザンブロッティングおよびハイブリダイゼーションはランダムプライマー操作法(Feinberg,A.P.,et al.,1983,Anal.Biochem.132:6−13)により標識されたクローニングされた配列を用いて、Southern,E.M.(J.Mol.Biol.98:503−517,1975)の記載するとおり実施する。予備ハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションは6xSSPE、5%Denhardt’s、0.5%SDS,50%ホルムアミド、100μg/ml変性サケ精巣DNAを含有する溶液中で実施し、42℃で18時間インキュベートし、その後室温および37℃で2xSSCおよび0.5%SDSを用いて、最後は68℃で30分0.1xSSC+0.5%SDS中で洗浄した(Sambrook et al.,1989,”Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,Cold Spring Harbor Lab.Press)。パラフィン包埋組織切片については、Wright and Manos(1990,“PCR Protocols”,Innis et al.,eds.,Academic Press,pp.153−158)の記載した条件に従い、250bp配列を検出するために設計したプライマーを用いる。
(実施例5)
【0210】
宿主細胞におけるクローニングされたポリヌクレオチドの発現
新規なDKKL−1アイソフォームのタンパク質産物を試験するために、アイソフォーム2または3のcDNAに由来する制限フラグメントを発現ベクターpMT2(Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,pp.16.17−16.22(1989))内にクローニングし、そして10%FCSを添加したDMEM中に生育させているCOS細胞にトランスフェクトする。トランスフェクションはリン酸カルシウム沈殿法(Sambrook,et al.,(1989)pp.16.32−16.40、上出)を用いて実施し、細胞溶解物はトランスフェクトした、および未トランスフェクトのCOS細胞の両方からのトランスフェクションの後48時間に調製する。細胞溶解物は抗ペプチド抗体を用いたイムノブロッティングにより分析する。
【0211】
イムノブロッティング実験において、細胞溶解物の調製および電気泳動は標準的な操作法に従って実施する。タンパク質濃度はBioRadタンパク質試験溶液を用いて測定する。ニトロセルロースへの半乾燥電気泳動転移の後、メンブレンを500mMNaCl、20mMTris、pH7.5、0.05%Tween−20(TTBS)+5%乾燥乳中でブロッキングする。TTBS中で洗浄し、二次抗体(Amersham)とともにインキュベートした後、増強ケミルミネセンス(ECL)プロトコル(Amersham)を製造元の指示に従って実施することにより検出を容易にする。
【0212】
(実施例6 ポリペプチドに対する抗体の作製)
新規なアイソフォームによりコードされるポリペプチドは合成するか、または、細菌または他の(例えばコウボ、バキュロウィルス)発現系から単離し、そして、m−マレイミド安息香酸N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル(MBS)(Pierce,Rockford,III)を用いてウサギ血清アルブミン(RSA)にコンジュゲートする。これらのペプチドを用いる免疫のプロトコルは標準的な方法に従って実施する。まず、ウサギの予備採血を行った後に免疫を行う。第1回の免疫はFreundの完全アジュバントおよび500μgコンジュゲートペプチドまたは100μg精製ペプチドを使用する。前回の注射の4週間後に行う全てのその後の免疫は、Freundの不完全アジュバントと同量のタンパク質を使用する。血液は免疫の後7〜10日に実施する。
【0213】
抗体のアフィニティー精製のために、相当するポリペプチドをMBSを用いてRSAにコンジュゲートし、CNBr活性化セファロース(Pharmacia,Uppsala,Sweden)にカップリングさせる。抗血清を10mMTris−HCl、pH7.5中に10倍に希釈し、そしてアフィニティーマトリックスとともに一夜インキュベートする。洗浄後、結合した抗体を100mMグリシン、pH2.5で樹脂から溶出させる。
【0214】
(実施例7 新規なDKKL−1アイソフォームポリペプチドに対するモノクローナル抗体の作製)
非変性アジュバント(Ribi,R730,Corixa,Hamilton MT)はリン酸緩衝食塩水中、4mlまで再水和する。次にこの再水和アジュバント100μlをHank’s Balanced Salt Solution400μlで希釈し、次にこれを免疫のために用いる細胞ペレットと穏やかに混合する。約500μgのコンジュゲートペプチドまたは100μgの精製ペプチドおよびFreundの完全アジュバントを、一週間に1回足蹠部を介してBalb/cマウスに注射する。毎週注射6週間の後、各免疫動物の尾部より採血し、FACS分析を用いてポリペプチドに対する抗体の力価を試験する。力価が少なくとも1:2000に達した時点で、マウスをCOチャンバーで屠殺し、その後断首する。リンパ節を採取してハイブリドーマの製造に供する。最高力価のマウス由来のリンパ球を35%ポリエチレングリコール4000を用いてマウス骨髄腫細胞系統X63−Ag8.653と融合する。融合後10日目に、ハイブリドーマ上澄みを蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)により特異的なモノクローナル抗体の存在についてスクリーニングする。各ハイブリドーマ由来のコンディショニングされた媒体をPC3、Colo−205、LnCapまたはPanc−1細胞の混合物少量とともに30分間インキュベートする。インキュベーションの後、細胞試料を洗浄し、希釈剤0.1ml中に再懸濁し、4℃で30分間ヤギ抗マウスIgGのFITCコンジュゲートF(ab’)2フラグメント1μg/mlとともにインキュベートする。細胞を洗浄し、FACS希釈液0.5mlに再懸濁し、FACScan細胞分析器(Becton Dickinson;San Jose,CA)を用いて分析する。ハイブリドーマクローンをその後の増殖、クローニングおよび特性化に供するために、FACSで評価した場合のポリペプチドを発現する細胞系統1つ以上の表面へのその結合に基づいて選択する。
【0215】
(実施例8 DKKL−1アイソフォーム抗原を検出するためのELISA試験)
DKKL−1の新規なスプライス型によりコードされる組み換え的に作製された抗原に特異的に結合する抗体について血液試料を試験するために、以下の操作法を用いる。組み換えタンパク質を精製した後、組み換えタンパク質を5μg/ml(500ng/100μl)の濃度までPBS中に希釈する。希釈した抗原溶液100マイクロリットルを96穴のImmulon1プレート(Dynatech Laboratories,Chantilly,Va)の各ウェルに添加し、次にプレートを室温で1時間、または4℃で一夜インキュベートし、そしてPBS中0.05%Tween20で3回洗浄する。抗体の非特異的結合を低減するためのブロッキングはPBS/Tween20中のウシ血清アルブミンの1%溶液200μlを各ウェルに添加し、1時間インキュベートすることにより行う。ブロッキング溶液を吸引した後、ブロッキング溶液中1/16〜1/2048の範囲に希釈した一次抗体溶液(抗凝固全血、血漿または血清)100μlを添加し、室温で1時間または4℃で一夜インキュベートする。次にウェルを3回洗浄し、PBS/Tween20中1/500〜1/1000に希釈したセイヨウワサビパーオキシダーゼ(Organon Teknika,Durham,NC)にコンジュゲートしたヤギ抗ヒトIgG抗体100μl、塩酸o−フェニレンジアミン(OPD,Sigma)溶液100μlを各ウェルに添加し、5〜15分間インキュベートする。OPD溶液はHO中1%メタノール50ml中にOPD錠剤5mgを溶解し、使用直前に30%H50μlを添加することにより製造する。反応は4MHSO25lを添加することにより停止する。吸光度はマイクロプレートリーダー(Bio−Rad)中490nmで読み取る。
【0216】
(実施例9 治療薬を試験するための手段としてのポリペプチドを発現するトランスジェニック動物の作製)
前立腺腫瘍関連遺伝子の機能または調節の試験のための細胞系統における遺伝子的に修飾された非ヒト動物またはその部位特異的な遺伝子修飾を作製するため、または前立腺癌を含む疾患の動物モデルを作製するために新規なDKKL−1アイソフォーム核酸を用いる。「トランスジェニック」という用語は、遺伝子が配列において改変されて修飾されたタンパク質を形成するような宿主細胞において安定して伝達される外因性遺伝子を有するか、または、レポーター遺伝子に作動可能に連結された外因性LTRプロモーターを有する、遺伝子的に修飾された動物を包含する。トランスジェニック動物はゲノム内にランダムに組み込まれた核酸コンストラクトを介して作製してよい。安定な組み込みのためのベクターはプラスミド、レトロウィルスおよび他の動物ウィルスベクター、YAC等を包含する。有利なものは、トランスジェニック哺乳類、例えばウシ、ブタ、ヤギ、ウマ等、特にげっ歯類、例えばラット、マウス等である。
修飾された細胞または動物は遺伝子の機能および調節の研究において有用である。目的の特定のコンストラクトは例えば遺伝子の発現、優性阻害遺伝子の突然変異の発現、および遺伝子の過剰発現をブロックするためのアンチセンスコンストラクトを含むがこれらに限定されるものではない。通常は発現されない細胞または組織中または異常な発生時点における遺伝子またはその変異体の発現が可能になる。更にまたその他の点では通常は生産されない細胞内のDKKL−1ポリヌクレオチドから誘導されたタンパク質の発現を可能とすることにより、細胞挙動の変化を誘導できる。
ランダム組み込みのためのDNAコンストラクトは組み換えを媒介するために相同性の領域を含む必要はない。好都合には正および負の選択のためのマーカーを使用する。哺乳類細胞をトランスフェクションするための種々の手法はKeown et al.,Methods in Enzymology 185:527−537(1990)を参照のこと。
【0217】
胚性幹(ES)細胞については、ES細胞系統を使用するか、または、胚細胞を宿主、例えばマウス、ラット、モルモット等から新たに獲得する。そのような細胞は適切な腺維芽細胞フィーダー層上に生育させるか、または、適切な成長因子、例えば白血病抑制因子(LIF)の存在下に生育させる。ES細胞を形質転換する場合は、それらを使用してトランスジェニック動物を生産してよい。形質転換の後、細胞を適切な培地中のフィーダー層上にプレーティングする。コンストラクトを含有する細胞は選択培地を用いて検出してよい。コロニーが生育するのに十分な時間の後、それらを採集し、コンストラクトの組み込みが起こったかどうか分析する。次に陽性のコロニーを用いて胚の操作および胚盤胞の注入を行う。胚盤胞は4〜6週齢の過剰排卵メスから入手する。ES細胞をトリプシン処理し、修飾された細胞を胚盤胞の胞胚腔内に注入する。注入後、胚盤胞を擬似妊娠メスの各子宮角に戻す。次にメスに妊娠期間終了させ、得られたキメラ動物を、コンストラクトを担持した細胞に関してスクリーニングする。胚盤胞およびES細胞の異なる表現型を得ることにより、キメラ子孫を容易に検出できる。
キメラ動物は修飾された遺伝子の存在についてスクリーニングし、そして修飾を有するオスおよびメスを交配してホモ接合の子孫を作製する。遺伝子の改変が発達のある時点において致死的である場合は、組織または臓器を同種または同族のグラフトまたは移植片として、または、インビトロの培養において維持する。トランスジェニック動物はいずれかの非ヒト哺乳類、例えば実験動物、家畜等であってよい。トランスジェニック動物は機能試験、薬剤スクリーニング等において、例えば前立腺癌に対する候補薬剤の作用を測定するため、または、潜在的治療法または治療計画等を試験するために使用される。
【0218】
本明細書において引用した全ての刊行物および特許出願は個々の刊行物または特許出願が特定および個別に参照により組み込まれるように示されるように参照により本明細書に組み込まれる。
【0219】
理解を明確化する目的で説明および例示により上記の通り本発明を詳述したが、当業者は本発明の説明を参考にして特定の変化および変更を添付請求項の精神または範囲を外れることなく行える。
【図面の簡単な説明】
【0220】
【図1】図1はCeleraDKKL−1転写物と新規なスプライス改変体のアライメントを示す。
【図2】図2は複雑性に関するDKKL−1のスプライス改変体アイソフォームの転写物のアライメントを示す。
【図3A】図3A〜3Eはヌクレオチド配列によるDKKL−1のスプライス改変体アイソフォームの転写物のアライメントを示す。
【図3B】図3A〜3Eはヌクレオチド配列によるDKKL−1のスプライス改変体アイソフォームの転写物のアライメントを示す。
【図3C】図3A〜3Eはヌクレオチド配列によるDKKL−1のスプライス改変体アイソフォームの転写物のアライメントを示す。
【図3D】図3A〜3Eはヌクレオチド配列によるDKKL−1のスプライス改変体アイソフォームの転写物のアライメントを示す。
【図3E】図3A〜3Eはヌクレオチド配列によるDKKL−1のスプライス改変体アイソフォームの転写物のアライメントを示す。
【図4A】図4A〜4BはDKKL−1のスプライス改変体アイソフォームの転写物のアミノ酸配列アライメントを示す。
【図4B】図4A〜4BはDKKL−1のスプライス改変体アイソフォームの転写物のアミノ酸配列アライメントを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の物質:
(a)図3A〜3Eに示すクローン379−R8およびクローン379−RS3のヌクレオチド配列の329位および330位にわたるヌクレオチドまたはその相補体、および
(b)図3A〜3Eに示すクローン379−R4、クローン379−R5、クローン379−R2、クローン379−RS7およびクローン379−RS4のヌクレオチド配列の188位および189位にわたる連続ヌクレオチドまたはその相補体からなる群より選択されるポリヌクレオチド配列の少なくとも10の連続するヌクレオチドを含む、単離された核酸。
【請求項2】
請求項1に記載の組み換え核酸を含む、宿主細胞。
【請求項3】
請求項1に記載の単離された核酸を含む、発現ベクター。
【請求項4】
請求項3に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項5】
請求項1に記載のポリヌクレオチドであって、該ポリヌクレオチド、あるいはその相補体またはそのフラグメントが検出可能な標識をさらに含む、ポリヌクレオチド。
【請求項6】
請求項1に記載のポリヌクレオチドであって、該ポリヌクレオチド、あるいはその相補体またはそのフラグメントが支持体に結合されている、ポリヌクレオチド。
【請求項7】
請求項1に記載のポリヌクレオチドであって、該ポリヌクレオチド、あるいはその相補体またはそのフラグメントが、少なくとも部分的に、化学合成により製造される、ポリヌクレオチド。
【請求項8】
請求項1に記載のポリヌクレオチドであって、該ポリヌクレオチド、あるいはその相補体またはそのフラグメントがアンチセンスフラグメントである、ポリヌクレオチド。
【請求項9】
請求項1に記載のポリヌクレオチドであって、該ポリヌクレオチド、あるいはその相補体またはそのフラグメントが1本鎖である、ポリヌクレオチド。
【請求項10】
請求項1に記載のポリヌクレオチドであって、該ポリヌクレオチド、あるいはその相補体またはそのフラグメントが2本鎖である、ポリヌクレオチド。
【請求項11】
少なくとも15の連続するヌクレオチドを含む、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
少なくとも20の連続するヌクレオチドを含む、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項13】
下記の物質:
(a)図3A〜3Eに示すクローン379−R8およびクローン379−RS3のヌクレオチド配列の329位および330位にわたるヌクレオチドまたはその相補体、および
(b)図3A〜3Eに示すクローン379−R4、クローン379−R5、クローン379−R2、クローン379−RS7およびクローン379−RS4のヌクレオチド配列の188位および189位にわたる連続ヌクレオチドまたはその相補体
からなる群より選択される、DKKL1配列のオープンリーディングフレーム内にコードされる単離されたポリペプチド。
【請求項14】
下記の物質:
(a)図4A〜4Bに示すクローン379−R8およびクローン379−RS3のポリペプチド配列の108位および109位にわたる少なくとも4つ連続する残基、および
(b)図4A〜4Bに示すクローン379−R4、クローン379−R5、クローン379−R2、クローン379−RS7およびクローン379−RS4のポリペプチド配列の61位および62位にわたる少なくとも4連続残基からなる群より選択される、DKKL1配列のオープンリーディングフレーム内にコードされる、単離されたポリペプチド。
【請求項15】
請求項14に記載のポリペプチドであって、
該ポリペプチドが、下記の物質(a)および(b):
(a)図4A〜4Bに示すクローン379−R8およびクローン379−RS3のポリペプチド配列の108位および109位にわたる少なくとも4つ連続する残基、および
(b)図4A〜4Bに示すクローン379−R4、クローン379−R5、クローン379−R2、クローン379−RS7およびクローン379−RS4のポリペプチド配列の61位および62位にわたる少なくとも4つの連続残基からなる群より選択されるDKKL1ポリペプチドのアミノ酸配列のエピトープのアミノ酸配列
を含む、ポリペプチド。
【請求項16】
請求項14に記載のポリペプチドであって、該ポリペプチドまたはそのフラグメントが固体支持体に結合される、ポリペプチド。
【請求項17】
請求項13〜16のいずれか1項に記載のポリペプチドに結合する単離された抗体またはその抗体結合フラグメント。
【請求項18】
請求項17に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメントであって、該抗体またはそのフラグメントが固体支持体に結合される、抗体またはそのフラグメント。
【請求項19】
請求項17に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメントであって、該抗体がモノクローナル抗体である、抗体またはそのフラグメント。
【請求項20】
請求項17に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメントであって、該抗体がポリクローナル抗体である、抗体またはそのフラグメント。
【請求項21】
請求項17に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメントであって、該抗体またはそのフラグメントが検出可能な標識をさらに含む、抗体またはそのフラグメント。
【請求項22】
請求項13〜16のいずれか1項に記載のポリペプチドまたはその抗原結合フラグメントに結合する単離された抗体であって、以下の工程:
(i)該ポリペプチドまたはその抗原結合フラグメントを含む組成物で宿主動物を免疫する工程、および
(ii)抗原に対する抗体またはその抗原結合フラグメントを発現している該宿主から細胞を採取すること、を包含する方法により製造される、抗体。
【請求項23】
請求項19に記載のモノクローナル抗体であって、モノクローナル抗体が、下記の工程:
(a)モノクローナル抗体を生産できるハイブリドーマを調製する工程;および、
(b)ハイブリドーマによるモノクローナル抗体の生産をもたらす条件下にハイブリドーマを培養する工程、
を包含する方法により製造される、モノクローナル抗体。
【請求項24】
請求項19に記載のモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマ。
【請求項25】
請求項17に記載の抗体であって、抗体がヒト化抗体である、抗体。
【請求項26】
請求項17に記載の抗体を含む癌細胞を検出するためのキット。
【請求項27】
請求項19に記載のモノクローナル抗体を含む癌細胞を検出するためのキット。
【請求項28】
被験試料中の癌の存在を診断するためのキットであって、該キットが(a)図3A〜3Eに示すクローン379−R8およびクローン379−RS3のヌクレオチド配列の329位および330位にわたるヌクレオチドまたはその相補体、および(b)図3A〜3Eに示すクローン379−R4、クローン379−R5、クローン379−R2、クローン379−RS7およびクローン379−RS4のヌクレオチド配列の188位および189位にわたる連続ヌクレオチドまたはその相補体、からなる群より選択されるDKKL1ポリヌクレオチド配列に選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチドの少なくとも1つを含む、キット。
【請求項29】
抗癌活性についてスクリーニングする方法であって、
下記の工程(a)〜(c):
(a)核酸配列によってコードされるDKKL1遺伝子の発現を提供する工程であって、
該核酸配列が、以下の物質(a)および(b):
(a)図3A〜3Eに示すクローン379−R8およびクローン379−RS3のヌクレオチド配列の329位および330位にわたるヌクレオチドまたはその相補体;および
(b)図3A〜3Eに示すクローン379−R4、クローン379−R5、クローン379−R2、クローン379−RS7およびクローン379−RS4のヌクレオチド配列の188位および189位にわたる連続ヌクレオチドまたはその相補体
からなる群より選択される、工程;
(b)抗癌剤候補に癌細胞から誘導した組織試料を接触させる工程;および、
(c)組織試料中のDKKL1ポリヌクレオチドの発現に対する抗癌剤候補の作用をモニタリングする工程、
を包含する、方法。
【請求項30】
(d)該薬剤候補の非存在下の発現の水準を薬剤候補の存在下の発現の水準と比較する工程をさらに包含する、請求項29に記載の抗癌活性についてスクリーニングする方法。
【請求項31】
被験細胞試料中のポリペプチドの発現に関連する癌を検出するための方法であって、
下記の工程:
(i)以下の物質:
(a)図4A〜4Bに示すクローン379−R8およびクローン379−RS3のポリペプチド配列の108位および109位にわたる少なくとも4つ連続する残基、および
(b)図4A〜4Bに示すクローン379−R4、クローン379−R5、クローン379−R2、クローン379−RS7およびクローン379−RS4のポリペプチド配列の61位および62位にわたる少なくとも4連続残基からなる群より選択されるDKKL1ポリペプチドの少なくとも1つの発現の水準を検出する工程;および、
(ii)被験試料中のポリペプチドの発現の水準を正常細胞試料中のポリペプチドの発現の水準と比較する工程であって、ここで、正常細胞試料中のポリペプチド発現の水準と相対比較した場合の被験細胞試料中のポリペプチドの発現の改変された水準は被験細胞試料中の癌の存在を示す工程、
を包含する、方法。
【請求項32】
被験血清試料中の抗体の存在に関連する癌を検出するための方法であって、
下記の工程:
(i)以下の物質:
(a)図4A〜4Bに示すクローン379−R8およびクローン379−RS3のポリペプチド配列の108位および109位にわたる少なくとも4つ連続する残基、および
(b)図4A〜4Bに示すクローン379−R4、クローン379−R5、クローン379−R2、クローン379−RS7およびクローン379−RS4のポリペプチド配列の61位および62位にわたる少なくとも4連続残基からなる群より選択されるDKKL1ポリペプチドの少なくとも1つの発現の水準を検出することからなる群より選択される抗原ポリペプチドに対する抗体の水準を検出する工程;および、
(ii)被験試料中の該抗体の発現の水準を対照試料中の該抗体の水準と比較すること、ここで対照試料中の抗体の水準と相対比較した場合の該被験試料中の抗体の改変された水準は被験血清試料中の癌の存在を示す工程、
を包含する、方法。
【請求項33】
DKKL1タンパク質の活性を調節することができる生物活性剤をスクリーニングするための方法であって、
該タンパク質は、以下の物質:
(a)図3A〜3Eに示すクローン379−R8およびクローン379−RS3のヌクレオチド配列の329位および330位にわたるヌクレオチドまたはその相補体、および
(b)図3A〜3Eに示すクローン379−R4、クローン379−R5、クローン379−R2、クローン379−RS7およびクローン379−RS4のヌクレオチド配列の188位および189位にわたる連続ヌクレオチドまたはその相補体からなる群より選択される核酸配列を含む核酸によりコードされ、
該方法は、下記工程:
a)DKKL1タンパク質と候補生物活性剤を組み合わせる工程;および、
b)タンパク質の生物活性に対する候補薬剤の作用を測定する工程、
を包含する、方法。
【請求項34】
請求項33に記載の生物活性剤のスクリーニング方法であって、生物活性剤がDKKL1タンパク質の発現に影響する、方法。
【請求項35】
癌を処置するための方法であって、
DKKL1タンパク質の阻害剤を患者に投与する工程
を包含し、
該タンパク質が、以下の物質:
(a)図3A〜3Eに示すクローン379−R8およびクローン379−RS3のヌクレオチド配列の329位および330位にわたるヌクレオチドまたはその相補体、および
(b)図3A〜3Eに示すクローン379−R4、クローン379−R5、クローン379−R2、クローン379−RS7およびクローン379−RS4のヌクレオチド配列の188位および189位にわたる連続ヌクレオチドまたはその相補体からなる群より選択される核酸配列を含む核酸によりコードされる、
方法。
【請求項36】
請求項35に記載の癌を処置するための方法であって、DKKL1タンパク質の阻害剤がDKKL1タンパク質に結合する、方法。
【請求項37】
細胞内のDKKL1遺伝子の発現を抑制するための方法であって、下記工程:
RNA干渉を誘発するために十分な量の、以下の物質:(a)図3A〜3Eに示すクローン379−R8およびクローン379−RS3のヌクレオチド配列の329位および330位にわたるヌクレオチドまたはその相補体、および(b)図3A〜3Eに示すクローン379−R4、クローン379−R5、クローン379−R2、クローン379−RS7およびクローン379−RS4のヌクレオチド配列の188位および189位にわたる連続ヌクレオチドまたはその相補体のポリヌクレオチド配列に相当するDKKL1mRNAにハイブリダイズできる配列を含む2本鎖RNAにDKKL1遺伝子を発現する細胞を接触させる工程;および、
細胞内のDKKL1遺伝子の発現を抑制する工程
を包含する、方法。
【請求項38】
請求項37に記載の方法であって、2本鎖RNAがトランスフェクション、エレクトロポレーションおよびマイクロインジェクションからなる群より選択される方法により細胞内に低分子干渉RNA(siRNA)を導入することにより提供される、方法。
【請求項39】
請求項37に記載の方法であって、2本鎖RNAが発現ベクターにより細胞内に低分子干渉RNA(siRNA)を導入することにより提供される、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2007−508020(P2007−508020A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534476(P2006−534476)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/034256
【国際公開番号】WO2005/033343
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(591076811)カイロン コーポレイション (265)
【Fターム(参考)】