説明

ヒトTh17細胞の選択的分化、同定および調節

ヒトTh17細胞の分化および活性の両方の調節のための実施形態が提供される。より具体的には、ヒトTH17細胞分化は、TGF−βおよびIL−21、ならびにそれらのアゴニストおよびアンタゴニストによって調節され得る。TH17細胞の機能は、例えば、BLT1もしくはポドプラニン、ならびにそれらのアゴニストおよびアンタゴニストによって調節され得る。さらに、TH17細胞の同定のための実施形態が提供される。より具体的には、ヒトTH17細胞は、BLT1およびポドプラニンを特異的にアップレギュレートする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(連邦政府の資金援助の説明)
本発明は、部分的に、National Institutes of Healthによって与えられた助成金第P01 NS038037号、第NS045937号および第30843号の下での政府の支援によってなされた。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0002】
(関連特許出願)
この出願は、2008年1月18日に出願された米国特許出願第61/006,541号および2008年2月27日に出願された米国特許出願第61/031,824号に関連し、これらからの優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
自己免疫疾患(このうちの80個より多くは、既に同定されている)は、顕著な病的状態および障害(disability)を引き起こし、よく知られているように、診断するのが困難である。2400万人程度の米国人が、自己免疫疾患に罹患しており、処置費用は、年間1000億ドルを超えている。
【0004】
近年、エフェクター細胞の新たな集団であるTH17細胞が同定され、種々の免疫関連状態において影響を与えていた。これら細胞の発見は、Th1/Th2パラダイムによって容易には説明されない免疫プロセスの理解に大きな影響を有した。重要なことには、TH17細胞は、ヒト自己免疫疾患(多発性硬化症、関節リウマチ、炎症性腸疾患、および乾癬が挙げられる)の病理と関連した。
【0005】
齧歯類モデルと関連して、ヒト細胞におけるTH17細胞の分化、増殖、および機能のさらなる理解、およびTH17細胞を特異的に同定するための方法は、未だに、自己免疫疾患および他のヒト疾患の探査における重要なゴールである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(要旨)
本発明の実施形態は、ヒトTH17細胞の分化を提供する。より具体的には、本発明は、ヒトCD4 T細胞からのIL−17A分泌の調節の理解をさらに正確にしかつ拡げ、ヒトTH17細胞分化に必要とされる条件を定義する。
【0007】
一実施形態において、本発明は、ヒトナイーブCD4 T細胞の集団からのヒトTH17細胞の分化を、上記T細胞と、TGF−βおよびIL−21とを、ヒトTH17細胞分化を増大させるに十分な量において接触させることによって、増大させるための方法を提供する。
【0008】
別の実施形態は、ヒトナイーブCD4 T細胞からのIL−17の発現のレベルを、上記細胞と、TGF−βおよびIL−21とを、IL−17発現を増大させるに十分な量において接触させることによって調節するための方法を提供する。
【0009】
さらに別の実施形態は、TH17細胞活性および/もしくはTH17細胞数を、TH17分化が所望される細胞(T細胞)もしくは細胞集団を(必要に応じて)同定し、上記細胞もしくは細胞集団と、TGF−βアゴニストおよびIL−21アゴニストとを、TH17細胞への分化を増大させるために十分な量において接触させ、それによって、TH17細胞活性および/もしくは細胞数を増大させることによって増大させるための方法を提供する。
【0010】
本発明はまた、TH17細胞もしくはTH17細胞集団への前駆T細胞もしくは前駆T細胞集団分化を、上記T細胞もしくはT細胞集団と、TGF−βのアンタゴニストおよびIL−21のアンタゴニストとを、もしくはTGF−βRおよびIL−21Rとを、TH17細胞分化を阻害するために十分な量において接触させることによって阻害するための方法を提供する。
【0011】
代替の実施形態は、T細胞もしくはTH17細胞、またはこれらの細胞集団におけるIL−17の活性、発現、分泌もしくはプロセシングのうちの1つ以上を調節するための方法を提供し、この方法は、IL−17の活性もしくはレベルの調節(増大もしくは減少)が所望される細胞を(必要に応じて)同定し;そして上記細胞もしくは細胞集団と、TGF−β/IL−21モジュレーター(例えば、TGF−β/IL−21のアゴニストもしくはアンタゴニスト)とを、上記細胞もしくは細胞集団におけるIL−17の活性もしくはレベルを調節するために十分な量において接触させることによって提供される。
【0012】
例えば、TH17細胞の移動活性は、U75−302(Th17特異的ロイコトリエンB4のアンタゴニスト)によって阻害され得る。同様に、TH17細胞の移動活性は、ポドプラニンによって阻害され得る。
【0013】
本発明はまた、TH17細胞を同定するための、ならびにTH17関連自己免疫疾患を診断および/もしくはモニターするための、組成物、方法およびキットを提供する。より具体的には、本発明は、TH17細胞において特異的にアップレギュレートされる表面分子を同定する。本発明の一局面において、上記分子は、ロイコトリエン(leukotreine)B4(LTBR4(BLT1ともいわれる))のレセプターである。別の局面において、上記分子は、ポドプラニンである。
【0014】
本発明はまたナイーブCD4+ T細胞の集団からのヒトTH17細胞の分化を増大させるための、TGF−βおよびIL−21もしくはこれらのアゴニストの使用に関する。
【0015】
本発明はまた、TH17細胞もしくはTH17細胞集団へのT細胞もしくはT細胞集団の分化を阻害するための、TGF−βのアンタゴニストおよびIL−21のアンタゴニストの使用に関する。
【0016】
本発明はまた、T細胞もしくはT細胞集団におけるIL−17の発現、活性、分泌もしくはプロセシングを増大させるための、TGF−βおよびIL−21もしくはこれらのアゴニストの使用に関する。
【0017】
本発明はまた、T細胞もしくはT細胞集団におけるIL−17の発現、活性、分泌もしくはプロセシングを減少させるための、TGF−βのアンタゴニストおよびIL−21のアンタゴニストの使用に関する。
【0018】
本発明はまた、TH17細胞活性によって影響を受けるもしくは媒介される障害の処置のための医薬の調製における、TGF−βのアゴニストおよびIL−21のアンタゴニストの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1a】図1a〜1cは、TGF−βおよびIL−21がナイーブCD4 T細胞からのTH17分化を促進することを示すデータを提示する。図1aは、ナイーブ(CD4 CD25 CD62L CD45RAhi)Tヘルパー細胞もしくは中心的記憶(Tcm)(CD4 CD25 CD62L CD45RA)Tヘルパー細胞について富化した集団へとソートした、健康な被験体の末梢血から得られたCD4 T細胞を示す。
【図1b】図1a〜1cは、TGF−βおよびIL−21がナイーブCD4 T細胞からのTH17分化を促進することを示すデータを提示する。図1bは、示したサイトカインの存在下で7日間にわたって刺激した、ソートしたT細胞集団を示す。その時点で上清を回収し、IFN−γおよびIL−17Aについて、ELISAによって評価した。エラーバーは、3名の関連しない被験体に由来するT細胞を使用する3回の独立した実験の中での標準偏差を示す。TGF−βとIL−21との組み合わせによるIL−17A分泌の誘導は、非常に顕著である(p<0.01)。
【図1c】図1a〜1cは、TGF−βおよびIL−21がナイーブCD4 T細胞からのTH17分化を促進することを示すデータを提示する。図1cは、TGF−βおよびIL−21の存在下もしくは非存在下で7日間にわたって刺激したナイーブCD4 T細胞を示す。この時点で、細胞を洗浄し、PMA/イオノマイシンで5時間にわたって刺激し、IL−17およびIFN−γの細胞内発現について染色した。比較結果を、5名の関連しないドナーにおいて得た。
【図2a】図2a〜2cは、TGF−βおよびIL−21が、ナイーブCD4 T細胞においてRORC2を誘導することを実証する。図2aは、示されたサイトカインの存在下で7日間にわたって刺激した健康な被験体の末梢血から得られたナイーブCD4 T細胞を示す。その時点で、RNAを回収し、RORC2、Tbet、GATA−3、IL−23R、およびFoxP3のレベルを、定量的RT−PCRによって測定した。3名の関連しない被験体に由来するT細胞を使用する3回の独立した実験の間の平均倍数誘導(外因性サイトカインの非存在下で刺激したT細胞に対して)および標準誤差を示す。
【図2b】図2a〜2cは、TGF−βおよびIL−21が、ナイーブCD4 T細胞においてRORC2を誘導することを実証する。図2bは、3回の独立した実験についてのIL−21およびIL−22の平均倍数誘導および平均誤差を示す。
【図2c】図2a〜2cは、TGF−βおよびIL−21が、ナイーブCD4 T細胞においてRORC2を誘導することを実証する。図2cは、ナイーブ(CD4 CD25 CD62L CD45RAhi)Tヘルパー細胞について富化された集団へとソートした臍帯血から得られたCD4 T細胞を示す。ソートしたT細胞を、示されたサイトカインの存在下で7日間にわたって刺激し、その時点で、RNAを回収し、IL−17AおよびRORC2のレベルを、定量的RT−PCRによって測定した。平均発現および標準誤差を、3名の異なるドナーに由来する臍帯血を使用する3回の独立した実験に基づいて報告する。
【図2d】図2dは、分化の7日後の臍帯血ナイーブT細胞に由来するIL−17およびIFN−γの細胞質内染色を示す。類似の結果は、別の独立したアッセイにおいて認められた。
【図3】図3は、LTB4がTH17細胞の選択的走化性を誘導することを実証するデータを示す。Th17細胞もしくはTh1細胞は、単独で、もしくはLTB4インヒビターであるU75−302の種々の濃度と一緒に、下側のウェルにおいて10−8MのLTB4を有する走化性チャンバの上側のウェルに添加した。細胞を、37℃において、10% CO中2時間にわたって維持した。次いで、下側のチャンバからの細胞を、抗CD4抗体で染色し、Golgi Stopの存在下で、PMA/イオノマイシンで4時間にわたって刺激した。細胞を透過性にし、IL−17もしくはIFN−γに対して細胞内で染色した。走化性指数を、LTB4含有ウェル中のCD4 IL−17移動細胞の数(Th17細胞についての)もしくはCD4 IFN−γ+移動細胞の数(Th1細胞について)を、培地単独で自発的に移動した、CD4 IL−17細胞の数(Th17細胞について)もしくはCD4 IFN−γ+細胞の数(Th1細胞について)で除算することによって計算した。
【図4】図4は、EAEを発症させるために、ミエリン抗原MOG35−55で免疫した野生型マウスおよびBLT1ノックアウト(BLT1 KO)マウスにおける自己免疫脳脊髄炎(EAE)の臨床的経過を示す。BLT1 KOマウスおよびC57BL/6野生型マウスを、MOG35−55および百日咳毒素で免疫した。マウスを、EAEスケールに従って、0〜5にスコア付けした。グラフは、経時的なEAEの臨床的経過を表す。
【図5】図5は、抗ポドプラニン抗体もしくはコントロールPBSで処置したC57BL/6マウスにおけるEAE経過を示す。C57BL/6マウスを、MOG35−55+百日咳毒素で免疫し、PBSもしくは100μgの抗ポドプラニン抗体を、免疫後の0日目、2日目、4日目、6日目、8日目に注射した。グラフは、各群についての経時的な平均EAE臨床スコアを表す(各群においてn=6マウス)。
【図6】図6は、サイトカインなし、IL−6、TGF−β、およびTGF−β+IL−6(Th17細胞)の存在下で活性化したナイーブCD4 T細胞の遺伝子発現プロフィールのヒートマップである。C57BL/6マウス由来のナイーブCD4 T細胞を、示された種々のサイトカインの存在下で、抗CD3抗体および抗CD28抗体で刺激した。これら種々の集団に由来するmRNAを、3日後に調製し、遺伝子発現プロフィール作成を、Affymetrix(登録商標)チップ(Santa Clara,CA)で行った。
【図7】図7は、種々のサイトカインの存在下で刺激したナイーブCD4 T細胞におけるBLT1の相対的発現を示す。C57Bl/6マウスに由来するナイーブCD4 T細胞を、種々のサイトカインの存在下で、抗CD3および抗CD28で刺激した。IL−17およびBLT1のmRNAの相対的発現を、インビトロ培養の3日後に、特異的プライマーおよびプローブを使用してリアルタイムPCRによって決定した。
【図8】図8は、ヒトTH17細胞を誘導するために、サイトカインなし、もしくはIL−21+TGF−βのいずれかの存在下で刺激したCD4 ヒトT細胞上でのBLT1の発現を示す。
【図9】図9は、ThサブセットにおけるBLT1およびIL−17の発現を示す棒グラフである。ナイーブCD4 T細胞を、Th1細胞についてはIL−12および抗IL−4の存在下で、Th2細胞についてはIL−4および抗IFN−γの存在下で、ならびにTh17についてはIL−6およびTGF−βの存在下で、抗CD3および抗CD28で刺激した。
【図10】図10は、種々のサイトカインの存在下で刺激したCD4 T細胞におけるIL−17およびポドプラニンの相対的発現に関するデータを示す。
【図11】図11は、種々のTh細胞サブセットに関するポドプラニンの表面発現を示す。
【図12】図12は、EAEの経過の間のCNSからのマクロファージおよびミクログリア上での、IL−17およびポドプラニンの発現を示す。C57BL/6マウスを、MOG35−55および百日咳毒素で免疫した。マウスが、上記疾患のピークにおいて麻痺した場合、そのCNSを回収し、単一の細胞懸濁物を調製した。マクロファージ(CD11b,CD45RBhi)およびミクログリア細胞(CD11b,CD45RBlow)を、フローサイトメトリーによってソートした。これら2つの集団からmRNAを調製し、IL−17およびポドプラニンの発現を、特異的プライマーおよびプローブを使用して、リアルタイムPCRによって決定した。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(詳細な説明)
本発明が本明細書に記載される特定の方法論、プロトコル、および試薬などに限定されず、よって、変動し得ることは、理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記載する目的に過ぎず、本発明の範囲を限定することは意図されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0021】
本明細書でおよび特許請求の範囲において使用される場合、単数形は、複数形を含み、状況が明らかに逆のことを示さなければ、逆もまた同様である。作業実施例における以外は、もしくは他のことが示されている場合は、本明細書で使用される成分もしくは反応条件を表す全ての数値は、用語「約」が全ての場合において修飾すると理解されるべきである。
【0022】
同定される全ての特許および他の刊行物は、例えば、本発明に関連して使用され得るこのような刊行物に記載される方法論を記載および開示する目的で、本明細書に明示的に参考として援用される。これら刊行物は、本願の出願日前にそれらの開示についてのみ提供される。この点に関しては、本発明者らは、先行発明によってもしくはいかなる他の理由によってもこのような開示が先にくる権利があるということを認めるものとして解釈されるべきことは何らない。これら文書の内容に関する日付もしくは提示に関する全ての主張は、出願人に入手可能な情報に基づき、これら文書の日付もしくは内容の正確さに関して何らかの容認を構成しない。
【0023】
別段定義されなければ、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者に通常理解されるものと同じ意味を有する。任意の公知の方法、デバイスおよび材料が、本発明の実施もしくは試験において使用され得るが、この点に関しては、上記方法、デバイスおよび材料は、本明細書で記載されている。
【0024】
適応免疫系のCD4 Tヘルパー細胞(Th細胞)は、特定の病原体に対して宿主を保護するように進化してきた。Th細胞は、これらが生成するサイトカインおよびこれらが達成するエフェクター機能の両方に依存して、3つのサブセットに分けられてきた。これらTh細胞サブセットは、Th1細胞、Th2細胞、およびTH17細胞と称されている。近年、TH17細胞は、炎症および自己免疫疾患の強力な誘導因子として明らかになってきた。それらの病原性機能を達成するためにTH17細胞によって使用される機構は、未だにわかりにくく、よって、ヒトTH17細胞の分化、特徴付け、および機能へのさらなる理解の必要性を駆り立てている。
【0025】
本発明は、ヒトTH17細胞分化に必要とされる条件、ならびにヒトTH17細胞分化および機能性を調節するにおいて有用な組成物および方法を定義する。
【0026】
IL−17(TH17細胞)の分泌によって特徴付けられるCD4 T細胞および調節性FoxP3 CD4 T細胞(nTreg)の近年の発見は、伝統的なTh1/Th2パラダイムによって容易には説明されない免疫プロセスの理解に大きな衝撃を与えた。Kiklyら,18 Curr.Opin.Immunol.670−75(2006);Wilsonら,8 Nature Immuno.950−57(2007)。近年の研究は、TGF−βおよびIL−6が、ナイーブマウスT細胞の、TH17細胞への分化を担うことを実証し、Th17表現型の安定化において重要な役割を果たし得ることが提唱されている。Bettelliら,441 Nature 235−58(2006);Manganら,441 Nature 231−34(2006);Veldhoenら,24 Immunity 179−89(2006)。TGF−βとIL−21との組み合わせがIL−6の非存在下でマウスTH17細胞の分化を誘導し得る第2の経路もまた、発見された。Kornら,448 Nature 484−87(2007);Nurievaら,448 Nature 480−83(2007);Zhouら,8 Nature Immunol.967−74(2007)。
【0027】
しかし、TGF−βおよびIL−6は、ヒトTH17細胞を分化し得ない。Wilsonら,2007;Acosta−Rodriguezら,8 Nature Immunol.942−49(2007)。TGF−βは、実際は、ヒトTH17細胞の発生を抑制し得ることが示唆された。Evansら,104 P.N.A.S.17034−39(2007)。事実、サイトカインIL−1β、IL−6、およびIL−23は、ヒト末梢血から単離された短期間CD4 T細胞株においてIL−17分泌を駆動し得ることが近年示された(Laurence & Shea,8 Nature Immunol.903−05(2007))が、ナイーブヒトCD4の、TH17細胞への分化に必要される因子は、本発明まで未知のままであった。本発明は、IL−1βおよびIL−6が、ヒト中心的記憶CD4 T細胞からIL−17A分泌を誘導するが、TGF−βおよびIL−21は、ヒトナイーブCD4 T細胞の、TH17細胞への分化(RORC2の発現によって達成される)を特有に促進することを提供する。本発明は、いまや、ヒト炎症性疾患においてTH17細胞の集団が果たす役割の調査を促進する。
【0028】
ヒトCD4 T細胞からのIL−17A分泌の調節のよりよい理解は、ナイーブCD4 リンパ球の、TH17細胞への分化に対して、記憶T細胞からの、IL−17発現細胞の増殖に対する種々のサイトカイン組み合わせの効果の評価を可能にするストラテジーを要した。具体的には、高速フローサイトメトリーを使用して、健康な被験体の末梢血からCD4 T細胞のこれら2つの別個の集団をソートした:ナイーブT細胞について高度に富化した、CD4 CD25 CD62L CD45RAhi細胞および中心的記憶T細胞(Tcm)について富化された、CD4 CD25 CD62L CD45RA細胞(図1a)。ナイーブ表現型について富化された細胞は、CCR7発現について一様に陽性であった。次いで、これら2つのT細胞集団を、プレート結合抗CD3モノクローナル抗体および可溶性抗CD28モノクローナル抗体で、CD4 T細胞分化に関与するサイトカインの種々の組み合わせを含む無血清培地中で、7日間にわたって刺激した。以前に報告されたように、サイトカインであるインターロイキン−1βは、Tcmから最も多量のIL−17A分泌を誘導した(図1b)。IL−6単独の添加は、IL−17Aの誘導に対してほとんど影響を有さず、IL−1βとともに添加した場合、IL−17A生成に対して相加効果も相乗効果も有さなかった。IL−23の添加はまた、TcmからのIL−17A分泌を適度に増強することができた。しかし、IL−1β単独もしくはIL−6と一緒のいずれも、ナイーブCD4 T細胞からIL−17A分泌を誘導できなかった。
【0029】
顕著に対照的に、TGF−βとIL−21との組み合わせは、特有に、TH17分化を誘導することができた。IL−21、IL−1β、もしくはIL−6は、ナイーブT細胞から顕著な量のIFN−β分泌を誘導したのに対して、TGF−βとIL−21との添加は、IFN−β分泌を抑制し、TH17細胞の分化を誘導した。細胞質内染色は、ELISA結果と一致して、TGF−βとIL−21との組み合わせが、IL−17Aのみを分泌し、IFN−βを分泌しないCD4 T細胞を分化させることを実証した(図1c)。FACSで単離したナイーブCD4 T細胞で始める場合、CD4 T細胞のうちの10%〜15%が、分化のちょうど7日後にIL−17Aを分泌する。
【0030】
マウスモデルにおいて、TH17分化は、マウスRORγt(マウスIL−17分泌T細胞の分化にとって重要な転写因子)の発現と一致する。RORC2は、マウスRORγtのヒトホモログであるので、定量的RT−PCRを使用して、RORC2およびTH17分化に関与する他の分子のmRNAレベルを評価した。TGF−βとIL−21との組み合わせは、ナイーブヒトCD4 T細胞からIL−17A分泌を誘導するそれらの能力と一致して、高レベルのRORC2(図2a)を誘導した。マウスT細胞におけるTH17分化を誘導する、TGF−βとIL−6との組み合わせまた、ナイーブヒトCD4細胞におけるRORC2の発現を誘導することは、特に興味深かった。しかし、サイトカインのこの組み合わせがIL−17A分泌を誘導しなかったので、これらデータは、ヒトにおけるRORC2の発現が、本来IL−17生成を誘導するに十分ではなく、もう一つは、RORC2との組み合わせにおいて未だ同定されていない転写因子がIL−17A分泌Th17細胞を誘導するために必要であり得ることを示す。
【0031】
Th1およびTh2細胞分化に関与するさらなる転写因子をまた、試験した:T−betは、IFN−γ分泌Th1細胞の主要レギュレーターであり、GATA−3は、IL−4分泌Th2細胞を誘導する。T−betのmRNA発現レベルは、IFN−γ分泌の量と非常に一致し、TGF−βおよびIL−21が、RORC2発現とともにTH17細胞分化を誘導するが、TGF−βは、IL−21によるT−betの誘導を抑制するという知見と一致した。同様に、TGF−βおよびIL−21でのGATA−3の誘導はなかった。サイトカインIL−6、IL−21およびIL−1βは、TGF−βを除いて、刺激したナイーブCD4 T細胞においてIL−23レセプターアップレギュレーションを誘導した。Treg転写因子FoxP3の発現をまた、試験した。マウスおよびヒトの両方の系で以前に報告されたように、FoxP3は、TGF−βによって誘導された。FoxP3のこの誘導は、IL−6およびより大きい程度にIL−21の両方(RORC2を誘導する転写因子)によって阻害された。従って、RORC2転写因子およびFoxP3転写因子の誘導は、マウスとヒトのナイーブCD4細胞との間で非常に類似していたが、TGF−βとの組み合わせでのIL−6によるIL−17Aの誘導は、種間で一致しない。
【0032】
マウスCD4 T細胞により分泌されるIL−21が、自己分泌ループにおいてIL−21の分泌を誘導し得ることは、以前に示された。Kornら,2007;Nurievaら,2007;Zhouら,2007;Weoら,282 J.Biol.Chem.34605−10(2007)。従って、ヒトIL−21が、ナイーブCD4+ T細胞からのIL−21分泌を誘導したか否かを評価し、TGF−βとIL−21およびIL−1βとの組み合わせの効果を、これらサイトカインがナイーブかつ中心的記憶CD4 T細胞からIL−17を誘導する能力を仮定して、同様に評価した。マウスにおいて認められた結果と一致して、IL−21は、IL−21を顕著にアップレギュレートしたが、IL−1βは、さらに多くの量のIL−21 mRNAを誘導した(図2b)。しかし、マウスで認められたこととは対照的に、IL−21はまた、いかなる外因性IL−23の非存在下でもナイーブCD4 T細胞におけるIL−22 mRNAレベルを誘導した。TGF−βは、対照的に、IL−21 mRNAおよびIL−22 mRNAの発現がIL−21によって誘導されたことを示唆した(図2b)。これらデータは、マウスとヒトのCD4 T細胞の間の差異をさらに強調する:IL−21は、IL−21およびIL−22を誘導するが、TGF−βでのTH17細胞へのT細胞分化は、これらサイトカインの発現を阻害する。
【0033】
ナイーブヒトCD4 T細胞からのTH17細胞の分化におけるTGF−βおよびIL−21の特有の機能を、CD4 CD25 CD62L CD45RAhi細胞を、ヒト臍帯血からソートすることによって確認した。臍帯血中のより高い割合のCD4細胞は、健康な成人被験体から得られた末梢血と比較して、このナイーブ表現型を示した。刺激したナイーブ臍帯血T細胞から、IL−17A分泌を検出するのは困難であったが、TGF−βおよびIL−21は、IL−17A mRNAおよびRORC2 mRNAのアップレギュレーションを誘導した(図2c)。さらに、IL−21単独で、RORC2を適度に誘導したが、TGF−βおよびIL−21のみが、IL−17A mRNAを誘導することができた。これらのデータは、TGF−βおよびIL−21が、ヒトおよびマウスの両方のTH17細胞の分化に重要であることをさらに示す。
【0034】
本発明は、ヒトCD4 T細胞からのIL―17A分泌の調節の理解を正確にしかつ拡げ、ヒトTH17細胞分化に必要とされる条件を定義する。IL−6もしくはIL−23と一緒のIL−1βは、IL−17A分泌を誘導し得るが、これらサイトカインは、ヒト記憶CD4 T細胞からのIL−17A発現を誘導するが、ヒトナイーブCD4 T細胞からは誘導しない。TGF−βおよびIL−21は、組み合わせると、ヒトナイーブT細胞からのTH17細胞の分化に必要とされる。
【0035】
文献において以前に報告された異なる結果の説明は、磁性ビーズ単離を用いて十分に純粋なナイーブT細胞を得ることができなかったか、またはIL−6およびTGF−βの両方の実質的な量を含むことが公知のヒト血清を含む培地の使用(Wilsonら,2007)、および上記のサイトカインに加えて、IFN−βおよびIL−4の両方に対する中和抗体の使用のいずれかに起因し得る。Acosta−Rodriguezら,2007。
【0036】
本研究は、炎症性応答の初期段階の間に誘導されたIL−1βおよびIL−6が、記憶T細胞に対して作用して、IL−17およびIL−21の分泌を促進し得、誘導されたIL−21が、TGF−βとともに、ナイーブCD4 T細胞からのTH17細胞の分化を促進し得るように相乗的に作用し得ることを示唆する。TGF−βの一般的な免疫抑制性の特性は、IL−21もしくはIL−6によって誘導されるIFN−γの抑制の原因であり得る。にも拘わらず、IFN−γが単純にないことが、ナイーブCD4 T細胞からのTH17分化を促進するには十分でない。なぜなら、TH17分化は、IFN−γ分泌が十分に抑制された場合に、TGF−βとIL−6との組み合わせで達成されなかったからである。広い範囲のTGF−βの用量を試験した。これは、1ng/ml〜100ng/mlの範囲であり、実際には、高用量のTGF−βにおいて、全ての分化/増殖が抑制された。成人および臍帯血の両方から上記FACSでソートしたナイーブCD4 T細胞は、FoxP3発現に関してほとんど〜全く、検出可能でなかった。さらに、IL−21単独では、ヒトTH17分化を誘導せず、これは、TGF−βの存在を要する。従って、これらデータは、IL−21が、Treg活性を抑制することによって、TH17分化を単純に促進しないということを示す。さらに、T細胞が、IL−21とともに相乗的に効果を発揮して、TH17分化を促進するのに十分な量のTGF−βを生成し得ることは考えられるが、本明細書で表されるナイーブCD4 T細胞は、十分量を生成しない。なぜなら、IL−21単独の添加は、TGF−βの内因性レベルとともに相乗的に効果を発揮して、IL−17分泌を促進できなかったからである。
【0037】
最終的には、サイトカインの組み合わせに応じるナイーブ細胞集団および記憶細胞集団の両方を同時に比較する実験的アプローチは、他者によって実験されるように、特定のサイトカインに応答する細胞集団についてのより信頼できる主張、すなわち、IL−1βおよびIL−6は、記憶CD4 T細胞からのIL−17分泌を誘導し、TGF−βおよびIL−21は、ナイーブCD4+ T細胞からのIL−17分泌CD4 T細胞の分化を誘導するという主張を可能にする。本発明は、いまや、感染および自己免疫疾患と関連するヒト炎症性Th17レセプターの特徴付けを可能にする。
【0038】
従って、本発明の実施形態は、TH17細胞分化および活性を調節するための方法および組成物に関する。上記方法および組成物は、例えば、本明細書に記載されるTGF−βおよびIL−21のアゴニストもしくはアンタゴニストは、免疫関連の病気(例えば、喘息、アレルギー、関節リウマチ、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、I型糖尿病、クローン病、乾癬、重症筋無力症、もしくはTH17分化と関連した他の自己免疫障害)を処置(例えば、治癒、緩和、遅延もしくはその開始を予防、またはその再発もしくは逆戻りを予防)または予防することにおいて有用である。
【0039】
一実施形態において、上記方法は、ヒトT細胞もしくはヒトT細胞集団と、TGF−βアゴニストおよびIL−21アゴニストとを、上記T細胞もしくはT細胞集団の、TH17細胞もしくはTH17細胞集団への分化を誘導するのに十分な量において接触させる工程を包含する。従って、TH17細胞活性および/もしくはTH17細胞数を増大させるための方法が提供される。例えば、TH17の細胞活性および/もしくは細胞数は、TH17細胞への分化(例えば、ナイーブT細胞の分化)を増大させることによって増大され得る。上記方法は、増大した分化が所望される細胞(T細胞)もしくは細胞集団を(必要に応じて)同定する工程、および上記細胞もしくは細胞集団と、TGF−β/IL−21アゴニストとを、TH17細胞への分化を増大させ、それによって、TH17の細胞活性および/もしくは細胞数を増大させるために十分な量において接触させる工程を包含する。
【0040】
関連の実施形態において、上記接触させる工程は、エキソビボ、インビトロもしくはインビボで行われる。いくつかの実施形態において、上記接触させる工程は、哺乳動物細胞もしくはヒト細胞を用いて行われるか、または患者(例えば、ヒト患者)において行われる。例えば、免疫細胞(例えば、本明細書に記載されるように、T細胞)が、培養培地中、インビトロで培養され得、上記接触させる工程は、1種以上のTGF−β/IL−21モジュレーター(TGF−β/IL−21アゴニストもしくはアンタゴニスト)を培養培地に添加することによって行われ得る。あるいは、上記方法は、インビボでの(治療的もしくは予防的)プロトコルの一部として、被験体において存在する細胞(例えば、免疫細胞もしくはT細胞)で行われる。
【0041】
上記TGF−βアゴニストは、TGF−βポリペプチド、ヒトTGF−βポリペプチド、もしくはこれらの活性フラグメント(例えば、組換えヒトTGF−βポリペプチドもしくはそのコード核酸)であり得る。上記TGF−βアゴニストは、別のポリペプチド(例えば、免疫グロブリンポリペプチドもしくはその一部(例えば、免疫グロブリンポリペプチドのFc領域))に融合されたTGF−βポリペプチド(例えば、ヒトTGF−βポリペプチド)もしくはそのフラグメントを含む融合タンパク質;上記TGF−βレセプターTGF−βR)に対するアゴニスト抗体;または低分子アゴニストであり得る。ヒト組換えTGF−βは、市販されている(例えば、Bioclone,Inc.,San Diego,CAおよびR&D Systems,Minneapolis,MNから)。組換えTGF−βR複合体の再構成およびトランスリン酸化(transphosphorylation)がまた、報告された。Venturaら,13(23) EMBO J.5581−89(1994)。TGF−β発現はまた、他のサイトカイン(例えば、TNF−α)を使用してアップレギュレートされ得る。Sullivanら,AJRCMB(Jan.14,2005)。
【0042】
上記IL−21アゴニストは、IL−21ポリペプチド、ヒトIL−21ポリペプチド、もしくはその活性フラグメント(例えば、組換えヒトIL−21ポリペプチドもしくはそのコード核酸)であり得る。上記IL−21アゴニストは、別のポリペプチド(例えば、免疫グロブリンポリペプチドもしくはその一部(例えば、免疫グロブリンポリペプチドのFc領域))に融合されたIL−21ポリペプチド(例えば、ヒトIL−21ポリペプチド)もしくはそのフラグメントを含む融合タンパク質;上記IL−21レセプター(IL−21R)に対するアゴニスト抗体;または低分子アゴニストであり得る。組換えヒトIL−21は、市販されている(例えば、Prospec Protein Specialists(Rehovot,Israel)から)。さらに、ヒトIL−21のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、Genbank Acc.No.X_011082において入手可能である。マウスIL−21ポリペプチドおよびこのようなポリペプチドをコードする核酸は、WO/2004/007682において例示されている。他の実施形態において、上記IL−21アゴニストは、IL−21の活性もしくはレベルを、例えば、機能的IL−21の発現、プロセシングおよび/もしくは分泌を増大させることによって、増大させる薬剤である。
【0043】
別の実施形態において、本発明は、TH17細胞もしくはTH17細胞集団への前駆T細胞もしくは前駆T細胞集団の分化を阻害するための方法を提供する。上記方法は、上記T細胞もしくはT細胞集団と、TGF−βのアンタゴニストおよびIL−21のアンタゴニストとを、またはTGF−βRおよびIL−21Rとを、TH17細胞分化を阻害するのに十分な量において接触させる工程を包含する。上記TGF−βアンタゴニストは、例えば、抗TGF−βR抗体、抗TGF−βR抗体の抗原結合フラグメント、またはTGF−βRの可溶性フラグメントであり得る。上記IL−21アンタゴニストは、例えば、抗IL21R抗体、抗IL21R抗体の抗原結合フラグメント、またはIL−21Rの可溶性フラグメントであり得る。TGF−βおよびIL−21、もしくはそれらのレセプター遺伝子の発現は、例えば、dsRNA、ssRNA、siRNA、miRNA、前述の人工誘導体などでのRNA干渉によって抑制し得る。
【0044】
TGF−β/IL−21媒介性のTヘルパー細胞効果を阻害するTGF−βおよびIL−21のアンタゴニスト、TGF−βのTGF−βRへの相互作用もしくはIL−21のIL−21Rへの相互作用をブロックするもしくは別の方法で阻害する薬剤が、T細胞もしくはT細胞の集団に添加され得る。これらアンタゴニストとしては、例えば、TGF−βもしくはIL−21ポリペプチドの可溶性フラグメント、TGF−βRフラグメントもしくはIL−21Rフラグメント、これらフラグメントを含む融合タンパク質、およびこれらフラグメントに対する抗体が挙げられる。
【0045】
抗体は、ヒト抗体種の全てのこのようなクラス、サブクラスおよびタイプを含む。例えば、TGF−βポリペプチドもしくはTGF−βRポリペプチドに対する抗体はまた、TGF−βポリペプチドもしくはTGF−βRポリペプチド、またはTGF−βポリペプチドもしくはTGF−βRポリペプチドのフラグメントを含む融合タンパク質に対する抗体を含む。同様に、IL−21ポリペプチドもしくはIL−21Rポリペプチドに対する抗体はまた、IL−21ポリペプチドもしくはIL−21Rポリペプチド、またはIL−21ポリペプチドもしくはIL−21Rポリペプチドのフラグメントを含む融合タンパク質に対する抗体を含む。
【0046】
より具体的には、上記TGF−βアンタゴニストは、TGF−βもしくはヒトTGF−β、またはTGF−βRポリペプチドに対する、例えば、抗体(例えば、モノクローナル抗体もしくは単一特異性抗体)であり得る。上記抗体は、ヒトTGF−βポリペプチドもしくはヒトTGF−βRポリペプチドに対する、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、もしくはインビトロで生成された抗体であり得る。他の実施形態において、上記アンタゴニストは、TGF−βポリペプチドのフラグメント(例えば、TGF−βポリペプチドのTGF−β結合ドメイン)を含む。あるいは、上記アンタゴニストは、TGF−βRポリペプチドのフラグメント(例えば、TGF−βRポリペプチドのTGF−β結合ドメイン)を含む。一実施形態において、上記アンタゴニストは、第2の部分(例えば、ポリペプチド(例えば、免疫グロブリン鎖))に融合された前述のTGF−βポリペプチドもしくはTGF−βRポリペプチド、またはこれらのフラグメントを含む融合タンパク質である。抗TGF−β抗体は、TGF−βシグナル伝達経路に関与するタンパク質を標的とする多くの抗体と同様に、市販されている(例えば、Invitrogen Corp.(Carlsbad,CA))。内因性TGF−βを阻害する薬剤は、ピルフェニドン(pirfenidone)(Liuら,5 Am.J.Transplantation,1266−63(2005)、もしくは米国特許第7,314,939号に記載されるもののような他の化合物を含む。TGB−βシグナル伝達を阻害する薬剤は、ハロフジノン(Halofuginone)(Figueiro−Pontsら,92(2)Haematologica 177(2007))、ゲニステイン、およびクルクミン(Santibanezら,37(1)Nutrition & Cancer,49−54(2000))を含む。
【0047】
さらなるTGF−βスーパーファミリーモジュレーターとしては、Amnionless NCAM−1/CD56、BAMBI/NMA Noggin、BMP−1/PCP NOMO、Caronte PRDC、Cerberus 1 SKI、Chordin Smad1、Chordin−Like 1 Smad2、Chordin−Like 2 Smad3、COCO Smad4、CRIM1 Smad5、Cripto Smad7、Crossveinless−2 Smad8、Cryptic SOST/Sclerostin、DAN Latent TGF−β bp1、Decorin Latent TGF−β bp2、Dermatopontin Latent TGF−β bp4、FLRG TMEFF1/Tomoregulin−1、Follistatin TMEFF2、Follistatin−like 1 TSG、GASP−1/WFIKKNRP TSK、GASP−2/WFIKKN Vasorin、Gremlin(R&D Systems(Minneapolis,MN)から)が挙げられる。
【0048】
上記IL−21アンタゴニストは、IL−21もしくはヒトIL−21、またはIL−21Rポリペプチドに対する、例えば、抗体(例えば、モノクローナル抗体もしくは単一特異性抗体)であり得る。上記抗体は、ヒトIL−21ポリペプチドもしくはヒトIL−21Rポリペプチドに対する、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、もしくはインビトロで生成される抗体であり得る。他の実施形態において、上記アンタゴニストは、IL−21ポリペプチドのフラグメント(例えば、IL−21ポリペプチドのIL−21R結合ドメイン)を含む。あるいは、上記アンタゴニストは、IL−21Rポリペプチドのフラグメント(例えば、IL−21RポリペプチドのIL−21結合ドメイン)を含む。一実施形態において、上記アンタゴニストは、第2の部分(例えば、ポリペプチド(例えば、免疫グロブリン鎖))に融合された前述のIL−21ポリペプチドもしくはIl−21Rポリペプチドまたはそれらのフラグメントを含む融合タンパク質である。
【0049】
例えば、市販のIL−21モジュレーターとしては、ヒトIL−21R、組換えヒトIL−21R/Fcキメラ、ヒトIL−21RアロフィコシアニンMAb、ヒトIL−21Rビオチン化PAb、ヒトIL−21R MAb、およびヒトIL−21RフィコエリトリンMAb(R&D Systems(Minneapolis,MN)製)が挙げられる。他の薬剤は、IL−21遺伝子発現のアンタゴニストとして働き得る。例えば、シクロスポリンは、上記IL−21プロモーターを阻害する。Kimら,280(26) J.Biol.Chem.(2005)。他のIL−21アンタゴニストは、米国特許第7,186,805号および同第6,929,932号に報告されている。IL−21Rに結合するIL−21変異体に関する。
【0050】
別の実施形態において、本発明は、ヒト、T細胞もしくはヒトT細胞集団において、サイトカイン(例えば、IFN−γもしくはIL−17)の活性もしくはレベルを調節する(例えば、増大もしくは減少もしくは阻害するための方法)を特徴とする。例えば、T細胞もしくはTH17細胞、もしくはこれらの細胞集団における、IL−17の活性、発現、分泌、もしくはプロセシングのうちの1つ以上を調節するための方法が、提供される。上記方法は、IL−17の活性もしくはレベルの調節(増大もしくは減少)が所望される細胞を、(必要に応じて)同定する工程;および上記細胞もしくは細胞集団と、上記細胞もしくは細胞集団におけるIL−17の活性もしくはレベルを調節するために十分な量のTGF−β/IL−21のモジュレーター(例えば、TGF−β/IL−21のアゴニストもしくはアンタゴニスト)とを接触させる工程を包含する。上記のように、上記接触させる工程は、エキソビボ、インビトロ、もしくはインビボで行われ得る。例えば、上記接触させる工程は、ヒト細胞を使用して行われ得るか、またはヒト患者において行われ得る。
【0051】
顕著なことには、本明細書で議論されるTGF−β/IL−21のモジュレーターは、IL−17レベルもしくは活性を特異的に阻害し得るが、同様に、IL−17発現もしくはTh17機能性と関連する他のサイトカインの活性もしくはレベルを減少もしくは阻害し得る。例えば、上記TGF−β/IL−21のアゴニストは、IFN−γ生成細胞(例えば、Th1細胞)によるIFN−γの生成を阻害する。
【0052】
上記TGF−βポリペプチドもしくはTGF−βRポリペプチド部分は、(変異されていない配列と比較して)タンパク質分解に対してより耐性のあるTGF−βもしくはTGF−βR配列を生じる、天然に存在するTGF−βもしくはTGF−βR配列(野生型)における変異を有する改変TGF−βもしくはTGF−βRポリペプチドであり得る。同様に、上記IL−21ポリペプチドもしくはIL−21Rポリペプチド部分は、(変異していない配列と比較して)タンパク質分解に対してより耐性のあるIL−21もしくはIL−21R配列を生じる、天然に存在するIL−21もしくはIL−21R配列(野生型)における変異を有する改変IL−21もしくは改変IL−21Rポリペプチドであり得る。
【0053】
TGF−β、TGF−βR、IL−21およびIL−21R、もしくはこれらタンパク質の活性フラグメントは、本明細書で記載される方法において使用するための免疫グロブリンのようなキャリア分子に融合され得る。例えば、上記レセプターの可溶性形態は、上記免疫グロブリンのFc部分もしくは上記免疫グロブリンの上記Fc部分に「リンカー」配列を介して融合され得る。他の融合タンパク質(例えば、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、LexA、もしくはマルトース結合タンパク質(MBP)を有するもの)がまた、使用され得る。
【0054】
さらなる実施形態において、TGF−β、TGF−βR、IL−21もしくはIL−21Rの融合タンパク質は、1つ以上のさらなる部分に連結され得る。例えば、上記融合タンパク質は、GST融合タンパク質にさらに連結され得る。ここで上記融合タンパク質配列は、上記GST配列のC末端に融合される。このような融合タンパク質は、上記TGF−β、TGF−βR、IL−21もしくはIL−21Rの融合タンパク質の精製を容易にし得る。
【0055】
別の実施形態において、上記融合タンパク質は、TGF−β、TGF−βR、IL−21もしくはIL−21Rの核酸)によって天然にコードされるポリペプチドに存在しない異種シグナル配列(すなわち、ポリペプチド配列を、そのN末端において含む。例えば、上記ネイティブのシグナル配列は除去され得、別のタンパク質に由来するシグナル配列で置換され得る。
【0056】
本発明のキメラタンパク質もしくは融合タンパク質は、標準的な組換えDNA技術によって生成され得る。例えば、異なるポリペプチド配列をコードするDNAフラグメントは、従来の技術に従って、例えば、連結のための平滑末端化したもしくは付着末端化した末端、適切な末端を提供するための制限酵素消化、適切な場合、粘着末端を充填すること、望ましくない結合を回避するためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素的連結を使用することによって、インフレームで一緒に連結される。別の実施形態において、上記融合遺伝子は、自動化DNA合成機を含む従来の技術によって合成され得る。
【0057】
上記のように、本明細書に記載される方法は、インビトロもしくはエキソビボで、細胞(例えば、T細胞)で使用され得る。あるいは、上記方法は、インビボ(例えば、治療的もしくは予防的)プロトコルの一部として、被験体に存在する細胞に対して行われ得る。例えば、上記方法は、被験体におけるTh17媒介性障害を処置もしくは予防するために使用され得る。よって、本発明は、被験体におけるTh17関連障害を処置(例えば、治癒、抑制、緩和、遅延もしくはその開始を予防するか、またはその再発もしくは逆戻りを予防)するか、または予防するための方法を提供する。上記方法は、被験体に、TH17細胞活性および/もしくは細胞数を減少させるに十分な量において、TGF−β/IL−21のアンタゴニストを投与し、それによって、Th17関連障害を処置もしくは予防する工程を包含する。
【0058】
上記被験体は、異常なTH17細胞の数もしくは活性と関連する障害(例えば、免疫障害)に罹患している哺乳動物(例えば、ヒト)である。上記TH17細胞活性および/もしくはTH17細胞数を阻害もしくは低下させるために十分な量は、上記障害を緩和もしくは予防するために十分な量である。
【0059】
本発明において有効な上記TGF−β/IL−21のモジュレーター、より具体的には、アゴニストもしくはアンタゴニストとして働く化学的薬剤もしくは化合物としては、プロドラッグが挙げられる。用語「プロドラッグ」とは、このようなプロドラッグが哺乳動物被験体に投与された場合に、活性な親薬物をインビボで放出する任意の化合物をいう。化合物のプロドラッグは、代表的には、改変が上記親化合物を放出するように、インビボで切断され得る様式において、上記化合物に存在する1つ以上の官能基を改変することによって、調製される。プロドラッグの例としては、エステル(例えば、アセテート、ホルメート、およびベンゾエート誘導体)およびヒドロキシル官能基のカルバメート(例えば、N,N−ジメチルアミノカルボニル)、ならびにアミノ官能基のアミド、カルバメートおよびウレア誘導体などが挙げられるが、これらに限定されない。プロドラッグ形態は、しばしば、哺乳動物器官において、溶解度、組織適合性、もしくは遅延した放出に役立つ。Bundgard,Design Of Prodrugs,7−9,21−24(Elsevier,Amsterdam,1985);Silverman,Organic Chem.of Drug Design & Drug Action,352−401(Academic Press,San Diego,CA)を参照のこと。さらに、本発明のプロドラッグ誘導体は、バイオアベイラビリティーを増強するために、当業者に公知の他の特徴と組み合わせられ得る。
【0060】
本明細書に記載されるTGF−β/IL−21のモジュレーターは、便利には、薬学的組成物中に提供され得る。上記組成物は、内在的な使用に適している可能性があり、有効量の本発明の薬理学的に活性な化合物を、単独もしくは組み合わせにおいて、1種以上の薬学的に受容可能なキャリアとともに含む。上記化合物は、それらが、あるにしても、非常に低い毒性を有するという点で特に有用である。実際問題として、上記化合物もしくはそれらの薬学的に需要可能な塩は、所望の変化(例えば、TH17細胞分化の増大もしくは減少)をもたらすに十分な量において投与され、このような目的に最も適した薬学的形態において使用される。
【0061】
薬学的使用に関しては、本発明のタンパク質は、従来の方法に従って、非経口的送達(特に、静脈内送達もしくは皮下送達)のために処方される。生体活性ポリペプチドもしくは本明細書に記載される抗体結合体は、静脈内に、動脈内に、もしくは導管内に送達され得るか、または意図した作用部位に局所的に導入され得る。静脈内投与は、1時間〜数時間の代表的期間にわたるボーラス注射もしくは注入物である。一般に、薬学的処方物は、薬学的に受容可能なビヒクル(例えば、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、水中の5% デキストロースなど)と組み合わせて、IL−21タンパク質を含む。処方物は、バイアル表面でのタンパク質損失を防止するなどのために、1種以上の賦形剤、保存剤、可溶化剤、緩衝化剤、アルブミンをさらに含み得る。処方の方法は、当該分野で周知であり、例えば、Remington: Sci. & Practice of Pharmacy(Gennaro,編,Mack Pub.Co.,Easton,PA,第19版,1995)に開示されている。治療的用量は、一般に、1日あたり患者の体重で、0.1μg/kg〜100μg/kgの範囲内(例えば、1日あたり0.5μg/kg〜20μg/kg)であり得る。正確な用量は、処置されるべき状態の性質および重篤度、患者の形質などを考慮に入れて、許容された標準に従って臨床医によって決定される。用量の決定は、当業者の技術レベルの範囲内である。上記タンパク質は、急性処置のために、1週間以下にわたって、しばしば、1〜3日間の期間にわたって投与されてもよいし、慢性処置において、数ヶ月もしくは数年にわたって使用されてもよい。一般に、治療上有効な量の上記TGF−β/IL−21のモジュレーターは、造血機能もしくは免疫機能において臨床的に顕著な変化を生じるに十分な量である。
【0062】
例えば、錠剤もしくはカプセル剤(例えば、ゼラチンカプセル剤)に形態における経口投与に関しては、上記活性な薬物成分は、経口用の、非毒性の薬学的に受容可能な不活性キャリア(例えば、エタノール、グリセロール、水など)と合わせられ得る。さらに、所望のもしくは必要な場合、適切な結合剤、滑沢剤、崩壊剤および着色剤がまた、上記混合物中に組み込まれ得る。適切な結合剤としては、デンプン、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、デンプンペースト、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/もしくはポリビニルピロリドン、天然の糖(例えば、グルコースもしくはβ−ラクトース)、トウモロコシ甘味剤、天然および合成のガム(例えば、アカシアガム、トラガカントガム)もしくはアルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ワックスなどが挙げられる。これら投薬形態において使用される滑沢剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、シリカ、タルク、ステアリン酸、そのマグネシウム塩もしくはカルシウム塩および/またはポリエチレングリコールなどが挙げられる。崩壊剤としては、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガム、デンプン、寒天、アルギン酸もしくはそのナトリウム塩、または起沸性の混合物(effervescent mixture)などが挙げられるが、これらに限定されない。希釈剤としては、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび/もしくはグリシンが挙げられる。
【0063】
注射用組成物は、好ましくは、等張性水溶液もしくは懸濁物であり、坐剤は、有利なことには、脂肪性エマルジョンもしくは懸濁物から調製される。上記組成物は、滅菌され得るか、そして/または補助剤(例えば、保存剤、安定化剤、湿潤剤もしくは乳化剤、可溶化促進剤、浸透圧を調節するための塩および/または緩衝化剤)を含み得る。さらに、それらはまた、他の治療上価値のある物質を含み得る。上記組成物は、それぞれ、従来の混合、過硫化もしくはコーティング方法に従って、調製され、約0.1%〜75%(例えば、約1%〜50%)の上記活性成分を含む。より具体的には、本明細書で議論される薬学的組成物のうちのいずれかが、0.1%〜99%(例えば、1%〜70%の上記TGF−β/IL−21、TGF−βR/IL−21R、TGF−β/IL−21アゴニスト、またはTGF−β/IL−21アンタゴニスト)を含み得る。
【0064】
本発明の化合物はまた、時間放出のおよび徐放性の錠剤もしくはカプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤、チンキ、懸濁物、シロップ剤およびエマルジョンのような経口投与形態において投与され得る。
【0065】
液体、特に注射用組成物は、例えば、溶解、分散などによって調製され得る。上記活性成分は、薬学的に純粋な溶媒(例えば、水、生理食塩水、デキストロース水溶液、グリセロール、エタノールなど)に溶解もしくは混合されて、それによって、注射用溶液もしくは懸濁物を形成する。さらに、注射前に液体に溶解するのに適した固体形態が、処方され得る。注射用組成物は、好ましくは、等張性水溶液もしくは懸濁物である。上記組成物は、滅菌され得、そして/または補助剤(例えば、保存剤、安定化剤、湿潤剤もしくは乳化剤、可溶化促進剤、浸透圧を調節するための塩および/または緩衝化剤)を含み得る。さらに、それらはまた、他の治療上価値のある物質を含み得る。
【0066】
本発明の化合物は、静脈内(ボーラスもしくは注入の両方)、腹腔内、皮下、もしくは筋肉内形態において、全て、薬学分野の当業者に周知の形態を使用して、投与され得る。注射物は、従来の形態において、液体溶液もしくは懸濁物のいずれかとして、調製され得る。
【0067】
非経口的な注射物投与は、一般に、皮下、筋肉内、もしくは静脈内の注射もしくは注入のために使用される。さらに、非経口投与のための1つのアプローチは、遅延放出もしくは徐放性の系の移植を使用し、これは、米国特許第3,710,795号によれば、一定レベルの投薬量が維持されることが確実である。
【0068】
さらに、本発明の化合物は、適切な鼻内ビヒクルの局所的使用を介して、もしくは経皮経路を介して、当業者に周知の経皮皮膚パッチの形態を使用して、鼻内形態において投与され得る。経皮送達システムの形態において投与されるために、上記投与量の投与は、当然のことながら、投与レジメン全体を通して断続性ではなく、連続性である。他の好ましい局所調製物としては、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、エアロゾルスプレーおよびゲルが挙げられ、ここで活性成分の濃度は、0.1%〜15%(w/wもしくはw/v)の範囲に及ぶ。
【0069】
固体組成物に関しては、賦形剤は、製薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどが挙げられ、これらが使用され得る。上記で定義される活性化合物はまた、キャリアとして例えば、ポリアルキレングリコール(例えば、プロピレングリコール)を使用して、坐剤として処方され得る。いくつかの実施形態において、坐剤は、有利なことには、脂肪性エマルジョンもしくは懸濁物から調製される。
【0070】
本発明の化合物はまた、リポソーム送達系(例えば、小さな単層小胞、大きな単層小胞、および多層小胞)の形態において投与され得る。リポソームは、種々のリン脂質(コレステロール、ステアリルアミンもしくはホスファチジルコリンを含む)から形成され得る。いくつかの実施形態において、脂質成分のフィルムは、薬物の水溶液で水和されて、米国特許第5,262,564号に記載されるように、上記薬物を被包する脂質層を、形成する。
【0071】
本発明の化合物はまた、上記化合物分子が連結される個々のキャリアとしてのモノクローナル抗体の使用によって送達され得る。本発明の化合物はまた、標的可能な薬物キャリアとして可溶性ポリマーと連結され得る。このようなポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピル−メタクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシエチルアスパナミドフェノール(polyhydroxyethylaspanamidephenol)、もしくはパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシドポリリジンが挙げられ得る。さらに、本発明の化合物は、薬物の制御放出を達成するにおいて有用な生分解性ポリマー(例えば、ポリ乳酸、ポリεカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレートおよびヒドロゲルの架橋されたもしくは両親媒性ブロックコポリマー)のクラスに連結され得る。
【0072】
あるいは、完全遺伝子送達ベクターが、組換えT細胞からインタクトなまま生成され得る場合(例えば、レトロウイルスベクター)、薬学的調製物は、上記遺伝子送達系を生成する1つ以上の細胞を含み得る。
【0073】
所望される場合、投与されるべき薬学的組成物はまた、微量の非毒性補助物質(例えば、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝化剤、および他の物質(例えば、酢酸ナトリウム、オレイン酸トリエタノールアミンなど))を含み得る。
【0074】
上記化合物を利用する投与レジメンは、種々の要因(患者のタイプ、種、年齢、体重、性別および医学的な状態;処置されるべき状態の重篤度;投与経路;上記患者の腎機能および肝機能;ならびに使用される特定の化合物もしくはその塩が挙げられる)に従って選択される。通常の技術をもった医師もしくは獣医師は、上記状態の進行を予防するか、これに対抗するか、もしくはこれを停止するために必要とされる薬物の有効量を容易に決定しかつ処方し得る。
【0075】
本発明の経口投薬量は、示される効果について使用される場合、経口で、約0.05mg/日〜1000mg/日の間の範囲に及ぶ。本発明の化合物の有効血漿レベルは、1日あたり、0.002mg〜50mg/kg 体重の範囲に及ぶ。本発明の化合物は、単一の1日用量で投与されてもよいし、合計の1日用量が、1日に2回、3回もしくは4回の分割用量において投与されてもよい。
【0076】
本発明のさらなる実施形態は、TH17細胞もしくはTH17細胞集団の活性を調節するための方法を提供し、上記方法は、上記細胞もしくは細胞集団と、TH17細胞もしくはTH17細胞集団の活性を調節するのに十分な量のTh17活性モジュレーターとを接触させる工程を包含する。例えば、TH17細胞の移動活性は、U75−302(Th17特異的ロイコトリエンB4のアンタゴニスト)によって阻害され得る。同様に、上記TH17細胞の移動活性は、ポドプラニンによって阻害され得る。このようなTh17活性特異的モジュレーターは、インビトロおよびインビボでの使用についての前述の議論に従って、処方され得る。
【0077】
本発明はまた、TH17細胞において特異的にアップレギュレートされる細胞表面分子を介したTH17細胞の同定を提供する。より具体的には、TH17細へと分化したナイーブT細胞と、IL−6単独もしくはTGF−β単独のいずれかの存在下で培養したT細胞とを比較する発現プロフィール作成は、TH17細胞(TGF−β+IL−6の存在下で分化した)において特異的に発現されるが、IL−6、TGF−β、もしくはサイトカインなしの存在下で活性化されたナイーブT細胞では発現されない遺伝子を同定した。発表された文献と一致して、IL−17A、ならびに転写因子であるRORγtおよびRORαは、他の条件で培養された細胞と比較すると、TH17細胞においてアップレギュレートされた。Ivanovら,126 Cell 1121−33(2006);Yangら,Immunity(2007)。2つの表面分子:BLT1(LTB4R1)(ロイコトリエンB4のレセプター)、およびポドプラニンは、TH17細胞において特異的にアップレギュレートされる(図6)。
【0078】
本発明のマーカーを使用すると、TH17細胞は、サンプル中で同定され得る。上記「サンプル」もしくは「生物学的サンプル」は、被験体のヒト(もしくは動物)から直接採取された任意の生物学的材料、もしくは培養(富化)後の任意の生物学的材料であり得る。生物学的材料は、任意の種の気管支洗浄(broncheolavage)の喀出物、血液、皮膚組織、生検物、精液、リンパ球、血液培養物質、コロニー、液体培養物、糞便サンプル、尿などが挙げられ得る。生物学的材料はまた、細胞培養物もしくはその液相を含み得る。用語「生物学的サンプル」とは、一般に、TH17細胞を含む任意の生物学的サンプル(組織もしくは流体)に言及し、血清もしくは血漿サンプルを含む。
【0079】
上記サンプルは、被験体から回収され得、これは、健康状態および/もしくは疾患状態に、個体に言及する。被験体は、患者、研究参加者、コントロール被験体、スクリーニング被験体、もしくはサンプルが得られかつ本発明の状況において評価される任意の他のクラスの個体であり得る。被験体は、疾患を有すると診断され得、疾患の1つ以上の症状、もしくは疾患についての素因因子(例えば、家族(遺伝)歴もしくは病歴(医療的)因子とともに示され得る。あるいは、被験体は、前述の要因もしくは基準のうちのいずれかに関して健康であり得るが、用語「健康な」とは、特定の疾患、もしくは疾患要因、もしくは疾患基準に関するものであり、任意の絶対評価もしくは状態に対応するように定義することはできない。従って、任意の特定の疾患もしくは疾患状態に関して健康であると定義された個体は、実際には、任意の他の1つ以上の疾患を有すると診断され得るか、または他の1つ以上の疾患基準を示し得る。
【0080】
さらに、本発明の考察は、焦点を当て、ヒトおよびマウス細胞およびマーカーを使用して例示されるが、特定のマーカーは、他の非ヒト動物に適切であり得、そして研究および獣医学実践における用途を有し得る。
【0081】
本発明のTH17細胞特異的マーカーは、抗体によって同定され得る。このような抗体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、ヒト化抗体もしくはキメラ抗体、一本鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fab発現ライブラリーによって生成されたフラグメント、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、および上記のうちのいずれかのエピトープ結合フラグメントが挙げられ得るが、これらに限定されない。このような抗体は、例えば、生物学的サンプル中のTh17マーカーの検出において、あるいは本明細書で記載されるTh17機能のモジュレーターとして使用され得る。従って、このような抗体は、自己免疫もしくは他の疾患処置方法の一部として利用され得るか、そして/または診断技術の一部として使用され得、それによって、患者が、Th17特異的マーカーの異常なレベルについて試験され得る。
【0082】
免疫アッセイを行うための多くのプロトコルは、公知であり、これは、例えば、競合、もしくは直接反応、もしくはサンドイッチアッセイに基づいて使用され得る。プロトコルは、固体支持体もしくは免疫沈降を使用し得る。イムノアッセイは、一般に、標識された抗体もしくはポリペプチドの使用を包含する。上記標識は、例えば、蛍光分子、化学発光分子、放射活性分子、もしくは色素分子であり得る。本発明の特定の局面は、基材に結合したポドプラニンおよび/もしくはBLT1を認識し得る分子を提供する。
【0083】
本発明のマーカーはまた、核酸分子を介するそれらの発現を評価することによって、同定され得る。発現データを得るための多くの方法が公知であり、これら技術のうちのいずれか1つ以上は、単一でも組み合わせにおいても、本発明の状況において発現プロフィールを決定するために適している。例えば、発現パターンは、ノーザン分析、PCR、RT−PCR、Taq Man分析、FRET検出、1種以上の分子ビーコンのモニタリング、オリゴヌクレオチドアレイへのハイブリダイゼーション、cDNAアレイへのハイブリダイゼーション、ポリヌクレオチドアレイへのハイブリダイゼーション、液相マイクロアレイへのハイブリダイゼーション、微小電子アレイへのハイブリダイゼーション、cDNA配列決定、クローンハイブリダイゼーション、cDNAフラグメントフィンガープリント、遺伝子発現の逐次分析(SAGE)、差し引きハイブリダイゼーション、ディファレンシャルディスプレイおよび/またはディファレンシャルスクリーニングによって評価され得る。例えば、Lockhart & Winzeler 405 Nature 827−36(2000);米国特許第6,905,827号を参照のこと。
【0084】
本発明はまた、TH17細胞の同定のためのキットを提供する。代表的には、キットは、1つ以上のプローブ(例えば、抗体もしくは診断用ヌクレオチド)を含む。上記プローブは、適切な容器中にパッケージされた診断用ヌクレオチドプローブセットの一部、もしくは他の候補ライブラリーのセット(例えば、cDNA、オリゴヌクレオチド、もしくは抗体マイクロアレイ、または任意の発現プロフィール作成技術を使用して診断用遺伝子セットに関するアッセイを行うための試薬として)として存在し得る。上記キットは、1種以上のさらなる試薬(例えば、基材、標識、発現生成物を標識するためのプライマー、チューブおよび/もしくは他のアクセサリ、血液サンプルを採取するための試薬、緩衝化剤(例えば、赤血球溶解緩衝化剤、白血球溶解緩衝化剤)、ハイブリダイゼーションチャンバ、カバースリップなど、ならびにソフトウェアパッケージ(例えば、本発明の統計法(例えば、上記のもの)を含む)ならびに編集されたデータベースにアクセスするためのパスワードおよび/もしくはアカウント番号をさらに含み得る。上記キットは、必要に応じて、本発明の方法において診断用プローブを使用する好ましい方法を詳述する導入セットもしくはユーザーマニュアルをさらに含む。
【0085】
TH17細胞を同定するための方法およびキットは、被験体(例えば、および患者もしくは個体)がTH17細胞を有する場合、同定もしくは決定(定性的もしくは定量的に)ために使用され得る。いくつかの場合において、TH17細胞は、自己免疫障害と関連し得る。自己免疫障害は、患者の免疫系が、その患者の器官もしくは組織中の抗原を異物として認識し、活性化されてしまう疾患状態として定義される。次いで、上記活性化された免疫細胞は、上記刺激している器官もしくは組織に損傷を引き起こし得るか、または他の器官もしくは組織に損傷を引き起こし得る。いくつかの場合において、上記障害は、自己抗原を異物として認識するというよりむしろ、上記免疫系細胞の誤調節によって引き起こされ得る。誤調節された免疫細胞は、全身性の炎症を引き起こす炎症性サイトカインを分泌し得るか、または異物として自己抗原を認識し得る。
【0086】
自己免疫疾患の例としては、自己免疫性肝炎、多発性硬化症、重症筋無力症、I型糖尿病、関節リウマチ、乾癬、全身性エリテマトーデス、橋本甲状腺炎、グレーブス病、強直性脊髄炎、シェーグレン病、クレスト症候群、および強皮症が挙げられる。上記自己免疫疾患の大部分はまた、慢性炎症性疾患である。これは、炎症性細胞(白血球)の長期の(>6ヶ月)活性化と関連する疾患プロセスとして定義される。上記慢性炎症は、患者の器官もしくは組織の損傷をもたらす。多くの疾患は、慢性炎症性障害であるが、自己免疫ベースを有さないことも知られている。例としては、アテローム性動脈硬化症、うっ血性心不全、クローン病、潰瘍性大腸炎、結節性多発動脈炎、ホイップル病、および原発性硬化性胆管炎が挙げられる。
【0087】
TH17細胞の同定は、自己免疫障害を有する患者をモニターすることにおいて有用であり得る。モニターすることは、個体または個体の健康状態もしくは疾患状態についての有用な情報を提供するための、TH17細胞マーカーの観察を記載する。「モニターすること」は、予後の決定、リスク階層化、薬物治療の選択、進行中の薬物療法の評価、結果の予測、治療への応答を決定すること、疾患もしくは合併症の診断、疾患の以後の進行、または患者健康状態に関する任意の情報の提供が挙げられ得る。
【0088】
さらに関節リウマチ(RA)に関して、本発明のTh17特異的細胞表面分子は、RAの診断もしくはモニタリングにおいて使用され得る。RAは、米国において約200万人に変化をもたらし、慢性および衰弱していく炎症性関節炎であり、特に、関節の疼痛および破壊を伴う。RAはしばしば、患者が疼痛を有さない可能性があるので診断されないままであるが、上記疾患は、上記関節を活発に破壊する。他の患者は、RAを有することが既知であり、症状を緩和するために処置されているが、関節破壊が進行する速度は、容易にはモニターされない。薬物治療は利用可能であるが、最も有効な医薬は、毒性(例えば、ステロイド、メトトレキサート)であり、注意して使用されるべきである。新たなクラスの薬物療法(TNFブロッカー)は有効であるが、上記薬物は高価であり、副作用を有し、全ての患者が応答するわけではない。
【0089】
RA疾患基準は、疾患症状(例えば、関節疼痛、関節腫脹および関節硬直)、ならびにRAの診断、関節破壊の進行(例えば、連続的手動放射線写真(serial hand radiograph)、関節機能および関節可動性の評価によって測定される場合)、手術、薬物療法の必要性、炎症状態および非炎症状態のさらなる診断、ならびに臨床的実験測定値(差異とともに全血球数(complete blood count with differentials)、CRP、ESR、ANA、血清IL6、可溶性CD40リガンド、LDL、HDL、抗DNA抗体、リウマチ因子、C3、C4、血清クレアチニン、死亡、入院、および関節破壊に起因する障害(disability due to joint destruction)が挙げられる)に関するAmerican College for Rheumatology基準(Arnettら,31 Arthr.Rheum.315−24(1988)を参照のこと)のうちのいずれかに対応する。さらに、もしくは代わりに、疾患基準は、薬物治療への応答および副作用の存在もしくは非存在、またはAmerican College of Rheumatologyによって例示される改善の尺度「20%」および「50%」応答/改善率に対応する。Felsonら,38 Arthr.Rheum.531−37(1995)を参照のこと。本発明のTh17マーカーは、発赤(関節疼痛もしくは他の疼痛に付随する疾患の急性の悪化)、薬物処置への応答、および副作用の可能性を含む疾患進行を同定し、モニターし、そして予測する。
【0090】
結論として、TH17細胞は、炎症および自己免疫疾患の強力な誘導因子である。TH17細胞は、多くの自己免疫疾患の標的器官において見いだされている。しかし、本発明までは、これら細胞の表面上の既知のマーカーがないことで、組織から生きているTH17細胞を検出および単離すること、従って、自己免疫疾患の間のそれらのエフェクター機能の特徴付けは可能でなかった。TH17細胞の表面で特異的に発現される分子(例えば、BLT1およびポドプラニン)の同定は、これら細胞に関する基本的な研究、およびTh17関連の病気(例えば、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチおよびクローン病)の診断に大きく促進する。
【0091】
以下の実施例は、本発明の処置方法における組成物についての種々の方法を例示する。実施例は、例示であることが意図されるが、本発明の範囲を限定するとは決して意図されない。
【実施例】
【0092】
(実施例1. TH17分化、材料および方法)
細胞ソーティング:PBMCを、健康な被験体の末梢血から、もしくは施設のIRBプロトコルに従って、臍帯血(全細胞(AllCells))から得た。CD4+ T細胞を、磁性ビーズ(Miltenyi Biotech Inc.,Auburn,CA)を使用して、ネガティブ選択によってその後に単離した。ナイーブ(CD25 CD62L CD45RAhi)CD4 T細胞および中心的記憶(CD25 CD62L CD45RA)CD4 T細胞を、以下の抗体:CD62L−FITC、CD4−PerCP、CD45RA−PE−Cy7、CD25−APC−Cy7(BD Pharmingen,San Diego,CA)で染色することによって得、FACS Aria(BD Biosciences,Palo Alto,CA)でソートした。
【0093】
分化アッセイ:ナイーブCD4 T細胞もしくは中心的記憶CD4 T細胞を、無血清X−VIVO15培地(Biowhittaker Inc.,Walkersville,MD)およびサイトカイン(IL−6、25ng/ml;TGF−β、5ng/ml;IL−1β、12.5ng/ml;IL−21、25ng/ml;IL−23、25ng/ml)中で、7日間の期間にわたって、プレートに結合させた抗CD3および可溶性CD28モノクローナル抗体(各々1μg/ml)で刺激し、その時点で、上清を回収し、IFN−β(BD Biosciences)もしくはIL−17A(eBioscience,San Diego,CA)について、対になった抗体を用いてELISAによって試験した。細胞質内染色を、標準的な方法論および抗IL−17−APC抗体(R&D Systems,Minneapolis,MN)および抗IFN−β−PE抗体(BD Biosciences)を使用して行った。
【0094】
リアルタイムPCR:全てのプライマーおよびプローブを、Applied Biosystems(Foster City,CA)から得、標準的な方法論に従って使用した。
【0095】
抗体:ポドプラニンを認識する抗体は、例えば、Abcam Inc.(Cambridge, MA)およびSanta Cruz Biotechnology,Inc.(Santa Cruz,CA)から市販されている。LTB4R1に対する抗体は、例えば、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)およびR&D Systems(Minneapolis,MN)から市販されている。上記抗BLT1(LTB4R1):FITC結合体化mAb(202/7B1)を、AbD Serotec(Raleigh,NC)から得た。Peterssonら.(2000)279 Biochem.Biophys.Res.Commun.520−25(2000)を参照のこと。FACS染色において使用される上記抗ポドプラニン抗体は、MBL International(Woburn,MA)から入手したラットモノクローナル8F11であった。Watanabeら,48 Cancer Res.6411-16(1988)を参照のこと。インビボ注射に使用される上記抗ポドプラニン抗体は、8.1.1.と称され、Studies Hybridoma Bank,University of Iowa(Iowa City,IA)から入手した。Farrら,J.Histochem. & Cytochem.(1992);Farrら,J.Exp.Med.(1992)を参照のこと。
【0096】
(実施例2. BLT1発現は、TH17細胞において特異的にアップレギュレートされる)
ロイコトリエンB4(LTB4)(アラキドン酸の分解生成物であり、炎症の部位において急激に生成される強力な脂質炎症性メディエーターである)は、サイトゾルホスホリパーゼA2(PLA2)、5−リポキシゲナーゼ(5−LO)、およびLTA4ヒドロラーゼの一連の作用によって、膜リン脂質から得られる。Jala & Haribabu,25 Trends Immunol.315−22(2004)。LTB4は、内皮への白血球の接着および凝集を引き起こし、炎症部位へと顆粒球およびマクロファージを補充する、強力な化学誘引物質である。近年の研究は、LTB4が、T細胞についての化学誘引物質としても機能し得ることを示した。Goodarziら,4 Nat.Immunol.965−73(2003);Tagerら,4 Nature Immunol.982−90(2003);Tager & Luster,69 Prostaglandins,Luekot.Essential Fatty Acids 123−34(2003);Medoffら,202 J.Exp.Med.97−110(2005);Miyaharaら,174 J.Immunol.4979−85(2005);Miyaharaら,172 Am.J.Critical Care Med.161−70(2005)。
【0097】
遺伝子発現プロフィール作成データは、BLT1が、IL−6とTGF−βとの組み合わせによって選択的に誘導され、この組み合わせはまた、IL−17を誘導し(図7)、TH17細胞の生成をもたらすことを示した。BLT1の発現がまた、ヒトTH17細胞において観察され得るか否かを決定するために、健康なドナーから採取され、かつIL−21とTGF−βとの組み合わせ(これは、ヒト細胞においてTH17細胞の分化を誘導する)の存在下で抗CD3および抗CD28で活性化したナイーブCD4 T細胞を、BLT1特異的抗体でBLT1の表面発現について分析した。Th17分化のサイトカインの非存在下で、T細胞のうちの5%のみが、BLT1を発現した(図8)。しかし、ヒトCD4 T細胞が、IL−21+TGF−βの存在下で分化した場合、上記CD4 T細胞のうちのいくらかは、BLT1を発現した。このことは、BLT1 mRNAおよびタンパク質の両方が、マウスおよび同様にヒトのTH17細胞上で急激にかつ特異的に発現されることを初めて示す。TH17細胞上でのこの選択的発現が、BLT1に制限され得:BLT2の発現が、TH17細胞上で認められなかったが、Th2細胞上で認められたことが注意され得る。
【0098】
(実施例3. ポドプラニン発現は、TH17細胞において特異的にアップレギュレートされる)
ポドプラニン(PDP)は、Th17細胞上で特異的に同定される別の表面分子である。ポドプラニンは、膜貫通ムチン含有分子であり、これは、病的条件下でリンパ内皮および腫瘍細胞上で発現される。22,23.Kanekoら,378 Gene,52−7(2006);Wicki & Christofori,96 Br.J.Cancer 96,1−5(2007)。これまで、PDPの発現は、造血細胞に関して記載されてこなかった。23. Wicki & Christofori, 2007。これは、PDPが、いくつかのT細胞上で発現され、より特異的に、分化している最中のTH17細胞上で発現されることを示す最初の研究である(図10)。
【0099】
重要なことには、ポドプラニンは、Th17特異的マーカーを構成し、なぜなら、その発現は、Th1細胞もしくはTh2細胞において認められなかったからである(図11)。従って、これは、T細胞の最小限の操作で、TH17細胞を単離し、識別することために、特異的マーカーを提供する。
【0100】
TH17細胞に加えて、EAEを有するマウスの中枢神経系(CNS)に由来するマクロファージ(CD11b+細胞)は、IL−17を生成できた(図12)。この集団上でのポドプラニンの発現の分析は、この集団がポドプラニンを同様に発現したことを明らかにした。対照的に、ミクログリア細胞は、IL−17もしくはポドプラニンのいずれの顕著なレベルをも発現しなかった。従って、ポドプラニン発現が、TH17細胞およびマクロファージの両方におけるIL−17発現を模倣するようであり、このことは、ポドプラニン発現が、病原性Th細胞(TH17細胞)のサブセット、および同様に、IL−17を生成する病原性マクロファージのサブセットの追跡を可能にし得ることを示す。
【0101】
(実施例4. BLT1は、Th17機能を調節する)
ロイコトリエンB4(LTB4)(これは、アラキドン酸の分解生成物であり、炎症の部位において急激に生成される強力な脂質炎症性メディエーターである)は、サイトゾルホスホリパーゼA2(PLA2)、5−リポキシゲナーゼ(5−LO)、およびLTA4ヒドロラーゼの一連の作用によって、膜リン脂質から得られる。Jala & Haribabu,25 Trends Immunol 315−22(2004)。LTB4は、内皮への白血球の接着および凝集を引き起こし、炎症部位へと顆粒球およびマクロファージを補充する、強力な化学誘引物質である。近年の研究は、LTB4が、T細胞についての化学誘引物質としても機能し得ることを示した。Goodarziら,4 Nat.Immunol.965−73(2003);Tagerら,4 Nature Immunol.982−90(2003);Tager & Luster,69 Prostaglandins,Luekot.Essential Fatty Acids 123−34(2003);Medoffら,202 J.Exp.Med.97−110(2005);Miyaharaら,174 J.Immunol.4979−85(2005);Miyaharaら,172 Am.J.Critical Care Med.161−70(2005)。
【0102】
LTB4は、炎症部位において種々の細胞タイプの補充に関与しているので、LTB4の発現がTH17細胞の選択的移動を誘導し得るか否かを、そのレセプターであるBLT1を操作することによって調査した。実際に、LTB4は、新たに分化したTH17細胞の選択的移動を誘導したが、Th1細胞では誘導しなかった(図3)。
【0103】
より具体的には、LTB4の2つのGタンパク質連結した7回膜貫通ドメインレセプターが、同定されかつ特徴付けされた。Tager & Luster,2003。BLT1(LTBR1ともいわれる)は、LTB4に対して特異的な高親和性レセプターであり、主に白血球で発現されるのに対して、BLT2(LTBR2)は、より遍在して発現される低い親和性レセプターである。同書。U−75302、6−(6−(3R−ヒドロキシ−1E,5Z−ウンデカジエン−1−イル)−2−ピリジニル)−1,5S−ヘキサンジオールは、合成物であり、BLT1を特異的に結合する。Richardsら,140 Ann.Rev.Respir.Dis.1712−16(1989)。U−75302は、例えば、Cayman Chemical(Ann Arbor,MI))から市販されている。LTB4のアンタゴニストとしてU75302を使用すると、LTB4が、Th17細胞の選択的移動を誘導し、これは、上記LTB4アンタゴニストであるU−75302の種々の用量の添加によって用量依存様式でブロックされ得る(図 3)ことが示された。
【0104】
さらに、TH17細胞上でのBLT1の発現はまた、本明細書で示されるように、TH17細胞の機能をインビボで調節する。これは、多発性硬化症の実験モデルである実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)の発症に対するBLT1除去の効果を試験することによって決定した。ここでTH17細胞は、重要な病原的な役割を果たしていることが示された。それを示すために、BLT1ノックアウト(BLT1 KO)マウスおよび野生型マウスを、ミエリン乏突起神経膠細胞糖タンパク質免疫優性(immunodominant)ペプチド配列MOG35−55(脳炎誘発性ペプチド)で免疫し、百日咳毒素とともに注射した。IACUCプロトコルに従って、マウスを維持した。上記MOG35−55/百日咳毒素プロトコルは、野生型動物において重篤な麻痺の発症を生じた(図4)。対照的に、上記ミエリン抗原MOGG35−55で免疫したBLT1 KOマウスは、上記野生型マウスと比較して、それほど重篤な疾患を発症しなかった。このことは、BLT1の欠如が、EAEの発症を低下させたことを示す。さらに、BLT1(LTB4R1)欠損マウスは、それらの野生型同腹仔よりもEAEの発症に対して耐性があった。まとめると、これらデータは、Th17細胞を選択的に追跡することに加えて、BLT1発現は、TH17細胞の機能をインビボで調節することを示す。
【0105】
(実施例5. ポドプラニンは、Th17機能を調節する)
ポドプラニンは、TH17細胞のマーカーとして同定され、多発性硬化症の動物モデル(EAE)の進行におけるその役割を、本明細書で探査した。抗ポドプラニン特異的抗体(Farrら,176 J.Exp.Med.1477−82(1992))を、EAEに耐えているマウスにインビボで注射した。コントロール抗体を受容したマウスは、重篤な疾患を発症し、麻痺したが、上記抗ポドプラニン特異的抗体を受容したマウスは、それほど重篤な疾患を発症させなかった。このことは、上記抗ポドプラニン抗体が、自己免疫疾患の進行を阻害したことを示す。従って、これらデータは、抗ポドプラニン抗体の注射が、TH17細胞、およびおそらくIL−17生成マクロファージの病原性活性をブロックし、従って、多発性硬化症の動物モデル(EAE)を使用して本明細書で例示されるように、自己免疫疾患の進行を制限するために使用され得ることを示す。図5を参照のこと。
【0106】
ポドプラニンは、腫瘍細胞の移動および侵襲性において重要な役割を果たすことが以前示された。Wicki & Christophori,96 Br.J.Cancer,1−5(2007)。ポドプラニンは、TH17細胞およびIL−17生成マクロファージにおいて特異的に発現された。さらに、抗ポドプラニン抗体の注射は、EAEの重篤度を低下させた。まとめると、これらデータは、ポドプラニンが、病原性Th17細胞およびおそらくIL−17生成マクロファージの移動を調節し得ることを示す。ポドプラニンがTH17細胞の移動にどのように関与しているかを決定することは、自己免疫の状況におけるポドプラニンの中和が、MS攻撃の間にCNSにおいてTh17細胞のさらなる移動を予防し得、再発性の軽減している疾患(relapsing remitting disease)を改善するので、自己免疫の処置に非常に関連性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトナイーブCD4 T細胞の集団からヒトTH17細胞の分化を増大させる方法であって、該方法は、該細胞と、TGF−βおよびIL−21とを、TH17細胞分化を増大させるために十分な量において接触させる工程を包含する、方法。
【請求項2】
ヒトナイーブCD4 T細胞からのIL−17の発現のレベルを調節する方法であって、該方法は、該細胞と、TGF−βおよびIL−21とを、IL−17発現を増大させるために十分な量において接触させる工程を包含する、方法。
【請求項3】
TH17細胞活性および/もしくはTH17細胞数を増大させるための方法であって、該方法は、細胞もしくは細胞集団と、TGF−βアゴニストおよびIL−21アゴニストとを、該細胞もしくは細胞集団の、TH17細胞への分化を増大させ、それによって、TH17細胞活性および/もしくは細胞数を増大させるために十分な量において接触させる工程を包含する、方法。
【請求項4】
前記接触させる工程の前に、TH17分化が所望される細胞もしくは細胞集団を同定する工程をさらに包含する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞もしくは細胞集団は、T細胞もしくはT細胞集団である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
TH17細胞もしくはTH17細胞集団への、前駆T細胞もしくは前駆T細胞集団の分化を阻害するための方法であって、該方法は、該T細胞もしくはT細胞集団と、TGF−βのアンタゴニストおよびIL−21のアンタゴニストとを、もしくはTGF−βRおよびIL−21Rとを、TH17細胞分化を阻害するために十分な量において接触させる工程を包含する、方法。
【請求項7】
T細胞もしくはTH17細胞、またはこれらの細胞集団におけるIL−17の活性、発現、分泌もしくはプロセシングのうちの1つ以上を調節するための方法であって、該方法は、IL−17の活性もしくはレベルの調節が所望される細胞を同定する工程、および該細胞もしくは細胞集団と、該細胞もしくは細胞集団におけるIL−17の活性もしくはレベルを調節するのに十分な量のTGF−β/IL−21モジュレーターとを接触させる工程を包含する、方法。
【請求項8】
前記調節は、IL−17の活性、発現、分泌もしくはプロセシングにおける増大を含み、前記モジュレーターは、TGF−βのアゴニストおよびIL−21のアゴニストを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記調節は、IL−17の活性、発現、分泌もしくはプロセシングにおける減少を含み、前記モジュレーターは、TGF−βのアンタゴニストおよびIL−21のアンタゴニストを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
TH17細胞もしくはTH17細胞集団の活性を調節するための方法であって、該方法は、該細胞または集団と、Th17細胞もしくはTh17細胞集団の活性を調節するのに十分な量のTh17活性モジュレーターとを接触させる工程を包含する、方法。
【請求項11】
前記モジュレーターは、ポドプラニンアンタゴニストもしくはBLT1アンタゴニストを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
生物学的サンプル中のTh17細胞の存在を検出するための診断試験キットであって、該キットは、ポドプラニンを検出するための手段および/もしくはBLT1を検出するための手段を含み、ここで該ポドプラニンおよびBLT1の検出は、該生物学的サンプル中のTh17細胞の存在を示す、診断試験キット。
【請求項13】
TH17関連自己免疫疾患を診断するための診断試験キットであって、該診断キットは、ポドプラニンのためのプローブおよびBLT1のためのプローブを含み、ここで該ポドプラニンおよび/もしくはBLT1の存在は、Th17細胞の存在を同定する、診断試験キット。
【請求項14】
前記プローブは、固体基材に結合されている、請求項12または13に記載のキット。
【請求項15】
前記固体基材は、イムノブロットを行うための膜である、請求項14に記載の診断試験キット。
【請求項16】
Th17関連自己免疫疾患を診断するための診断試験キットであって、該診断試験キットは、生物学的サンプルと、ポドプラニンに結合する抗体とを、該抗体と該生物学的サンプル中に存在するポドプラニン保有Th17細胞との間で抗体−抗原複合体の形成を可能にする条件下で接触させるための手段、および該抗体を含む抗体−ポドプラニン複合体を検出するための手段を含み、ここで該抗体−ポドプラニン複合体の形成は、被験体のTh17関連自己免疫疾患を示す、診断試験キット。
【請求項17】
TH17関連自己免疫疾患を診断するための診断試験キットであって、該診断試験キットは、生物学的サンプルと、BLT1に結合する抗体とを、該抗体と該生物学的サンプル中に存在するBLT1保有Th17細胞との間で抗体−抗原複合体の形成を可能にする条件下で接触させるための手段、および該抗体を含む抗体−BLT1複合体を検出するための手段を含み、ここで該抗体−BLT1複合体の形成は、被験体のTH17関連自己免疫疾患を示す、診断試験キット。
【請求項18】
生物学的サンプル中のTh17細胞を検出する方法であって、該方法は、該生物学的サンプルと、2つの異なるTh17特異的表面分子に対して指向される少なくとも2つの異なるプローブとを、該TH17特異的表面分子への該プローブの結合に適した条件下で接触させる工程であって、ここで各プローブは、該Th17細胞上の別個の部位と反応性である、工程;および該プローブが、該生物学的サンプル中の該TH17特異的表面分子に結合するか否かを、フローサイトメトリーによって検出する工程であって、ここで該プローブが該TH17特異的表面分子に結合する場合、Th17細胞の存在が示される、工程、を包含する、方法。
【請求項19】
前記生物学的サンプルは、血液サンプル、血清サンプル、細胞サンプル、組織サンプル、骨髄および生検物からなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記プローブは、アレイ上に配置されている、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
診断試験キットであって、該キットは、少なくとも第1のプローブおよび第2のプローブ;ならびにTh17特異的表面分子を検出するための手段を含み、ここで該プローブは、該TH17特異的表面分子に指向され、各プローブは、Th17細胞上の別個の部位と反応性である、診断試験キット。
【請求項22】
前記プローブのうちの少なくとも一方は、蛍光色素で標識されている、請求項21に記載の診断試験キット。
【請求項23】
前記TH17特異的表面分子は、セファロース−ウェスタンブロッティングを介して検出される、請求項21に記載の診断試験キット。
【請求項24】
Th17特異的表面マーカーが、ディップ−スティックアッセイを介して検出される、請求項21に記載の診断試験キット。
【請求項25】
TH17細胞特異的表面マーカーを免疫学的に検出するための成分をさらに含む、請求項21に記載の診断試験キット。
【請求項26】
フローサイトメトリー検出のための診断試験キットであって、該キットは、少なくとも第1のプローブおよび第2のプローブ、ならびにTH17特異的表面分子を検出するための手段を含み、ここで該プローブは、第1および第2の該TH17特異的表面分子に対して指向され、ここで該TH17特異的表面分子は、Th17細胞上で特異的にアップレギュレートされている、診断試験キット。
【請求項27】
前記プローブのうちの少なくとも一方は、ビーズで標識されている、請求項26に記載の診断試験キット。
【請求項28】
診断試験キットであって、該キットは、セファロース−ウェスタンブロッティング手順を行って、TH17特異的表面分子を免疫学的に検出するための手段を含み、該手段は、異なるTH17特異的表面分子に対して指向される少なくとも1つの異なるプローブを含み、該プローブは、Th17細胞上の別個の部位と反応性である、診断試験キット。
【請求項29】
診断キットであって、該キットは、ディップ−スティックアッセイを行って、TH17特異的表面分子を免疫学的に検出するための手段を含み、該手段は、異なるTH17特異的表面分子に対して指向される少なくとも2つの異なるプローブを含み、各プローブは、Th17細胞上の別個の部位と反応性である、診断キット。
【請求項30】
生物学的サンプル中のTh17細胞の存在を検出するための方法であって、該方法は、ポドプラニンもしくはBLT1のいずれかをコードする核酸の存在を検出する工程を包含する、方法。
【請求項31】
(a)ポドプラニンコード標的ポリヌクレオチドもしくはBLT1コード標的ポリヌクレオチドまたはこれらのフラグメントのいずれかを含むと推測される生物学的サンプルから、核酸を得る工程;(b)該(a)の核酸と、該標的ポドプラニンコードポリヌクレオチドもしくはBLT1コードコードポリヌクレオチドにおける少なくとも1つの核酸配列を識別し得るオリゴヌクレオチドとを接触させる工程であって、該接触させる工程は、識別的なシグナルを発生させる、工程;(c)該(b)において得られた識別的なシグナルから、ポドプラニンコードポリヌクレオチドもしくはBLT1コードポリヌクレオチドまたはそのフラグメントの存在を推測し、従って、該生物学的サンプル中のTh17細胞の存在を検出する工程、を包含する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
被験体における自己免疫疾患を診断する方法であって、該方法は、(a)該被験体に由来するサンプル中においてポドプラニンを検出する工程;(b)該被験体に由来するサンプル中においてBLT1を検出する工程;および(c)ポドプラニンおよびBLT1の存在もしくはレベルに基づいて、該被験体における自己免疫疾患の存在もしくは重篤度を診断する工程、を包含する、方法。
【請求項33】
被験体における抗自己免疫疾患治療の効力をモニターする方法であって、該方法は、(a)抗自己免疫疾患治療を施された被験体に由来するサンプル中において、ポドプラニンを検出する工程;(b)該被験体に由来するサンプル中においてBLT1を検出する工程;および(c)ポドプラニンもしくはBLT1の存在もしくはレベルに基づいて、該被験体における自己免疫疾患の存在もしくは重篤度を検出し、それによって、抗自己免疫疾患治療の効力をモニターする工程、を包含する、方法。
【請求項34】
被験体における自己免疫疾患もしくは慢性炎症性疾患を診断するかもしくはモニターする方法であって、該方法は、該被験体におけるTH17細胞の存在を検出して、該被験体における該自己免疫疾患もしくは慢性炎症性疾患を診断もしくはモニターする工程を包含し、ここで該Th17細胞は、ポドプラニンおよびBLT1を特異的にアップレギュレートする、方法。
【請求項35】
ナイーブCD4+ T細胞の集団から、ヒトTH17細胞の分化を増大させるための、TGF−βおよびIL−21の使用。
【請求項36】
ナイーブCD4+ T細胞の集団から、ヒトTH17細胞の分化を増大させるための、TGB−βのアゴニストおよびIL−21のアゴニストの使用。
【請求項37】
TH17細胞もしくはTH17細胞集団への、T細胞もしくはT細胞集団の分化を阻害するための、TGF−βのアンタゴニストおよびIL−21のアンタゴニストの使用。
【請求項38】
T細胞もしくはT細胞集団におけるIL−17の発現、活性、分泌もしくはプロセシングを増大させるための、TGF−βおよびIL−21もしくはこれらのアゴニストの使用。
【請求項39】
T細胞もしくはT細胞集団におけるIL−17の発現、活性、分泌もしくはプロセシングを低下させるための、TGF−βのアンタゴニストおよびIL−21のアンタゴニストの使用。
【請求項40】
TH17細胞活性によって影響を与えるもしくは媒介される障害の処置のための医薬の調製における、TGF−βのアンタゴニストおよびIL−21のアンタゴニストの使用。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2011−509676(P2011−509676A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543306(P2010−543306)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/031477
【国際公開番号】WO2009/092087
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(504412945)ザ ブライハム アンド ウイメンズ ホスピタル, インコーポレイテッド (54)
【Fターム(参考)】