説明

ヒドロアミノ化触媒の前処理法

本発明は、ヒドロアミノ化触媒の前処理法において、ヒドロアミノ化触媒を、オレフィンとアンモニア、1級又は2級アミンとの反応の前に、アンモニア含有混合物と接触させ、その際、アンモニア含有混合物がオレフィン40質量%未満を含有することを特徴とする方法に関する。さらに、本発明は、ヒドロアミノ化触媒をアンモニア含有混合物と接触させ、その際、アンモニア含有混合物がオレフィン40質量%未満を含有することによって、オレフィンの反応前に本発明により前処理されるヒドロアミノ化触媒上でのオレフィンとアンモニア、1級又は2級アミンとの反応によるアルキルアミンの製造法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロアミノ化触媒の前処理法に関する。更に、本発明は、オレフィンとアンモニアとの反応の前にアンモニア含有混合物と接触させ、その際、アンモニア含有混合物がオレフィン40質量%未満を含有するヒドロアミノ化触媒上で、オレフィンとアンモニア、1級又は2級アミンとを反応させることによるアルキルアミンの製造法に関する。
【0002】
EP−A−0133938から、ヒドロアミノ化反応において使用されるアルミノ−ゼオライト触媒は、該触媒上での使用されるオレフィンの重合ないしオリゴマー化、及び、これに続く該触媒上での該ポリマーないしオリゴマー残滓の炭化を促進するため、迅速に失活することは公知である。EP−A−0133938には、アンモニア、1級又は2級アミンとオレフィンとを、ペンタシル型のボロシリケート−又はボロゲルマネートゼオライト触媒の存在下に反応させ、得られたアミンを分離し、かつ未反応の使用物質を返送した場合、触媒の失活を低減させることができることが教示されている。更に、空気又は空気/窒素混合物を失活した触媒に400〜550℃で導通することによって、この失活した触媒を再生することができることが開示されている。
【0003】
WO−A−97/07088には、ボロ−ベータ−ゼオライト系触媒の存在下でのオレフィンのヒドロアミノ化が開示されている。前記出願では、触媒の失活に影響を及ぼし得る種々の要因が記載されている。例えば、モノオレフィンが、ジオレフィン又はポリオレフィンよりも低い顕著な重合傾向を有することが教示されている。比較的高い温度によって、使用されるオレフィンの重合及びクラック反応が促進される。触媒活性の回復は、該開示によれば、比較的高温での酸素含有ガス中での再生により行うことができる。
【0004】
従来技術は、ヒドロアミノ化で使用されるオレフィンの重合及びそこから生じる炭化が、使用される触媒の失活を招き得ることを教示している。触媒の種類及び性質、反応温度、オレフィンの種類といった因子は、失活の速度及び程度に影響を及ぼし得る。通常、活性は、酸素含有ガスを400〜550℃の範囲内の温度で触媒に導通させて触媒を再生することによって回復される。
【0005】
DE−A−10313853には、焼結されたゼオライト系触媒を反応の開始前に100〜550℃の範囲内の温度で酸素含有ガス流中で最大24時間処理することによって、焼結されたゼオライト系触媒の活性を増大させることができることが教示されている。該開示によれば、活性の増大は、該触媒をヒドロアミノ化に初めて使用するか、又は既に再生された触媒を使用するかに関係なく生じる。
【0006】
DE−A−102005051044には、ヒドロアミノ化は通常断熱運転される反応ユニット内で行われることが教示されている。
【0007】
ゼオライト系触媒のスタートアップ時、即ち、触媒と、オレフィンとアンモニアないしアミンとからの出発材料混合物とを最初に接触させた際に、通常、高度の温度上昇が認められる。なぜならば、スタートアップの際に生じた熱は、大工業的な断熱運転される反応器の場合、極めて排出が困難であるためである。通常、この温度上昇は、使用されるオレフィンのオリゴマー化を促進する。オリゴマー化は一般に発熱反応であるため、この反応の際に放出される熱は更に温度上昇を助長する。スタートアッププロセスの際に生じる高温は、通常、オレフィンオリゴマーが触媒表面上及び細孔中に堆積することによる触媒の損傷、又はその上、ゼオライト構造自体の変化を招く。
【0008】
従って本発明の目的は、ヒドロアミノ化触媒のスタートアップの際の該触媒の熱的な損傷を低減するヒドロアミノ化法を提供することであった。長い運転期間を有し、かつ、ヒドロアミノ化生成物を高い収率及び選択率で得ることを可能にするヒドロアミノ化法を提供することが望ましい。触媒の、場合により必要な再生までの運転期間は、高められることが望ましい。本発明のもう1つの課題は、使用される触媒のよりわずかな熱的損傷がもたらされるため、触媒活性が可能な限り長く保持される、ヒドロアミノ化触媒の前処理法を開発することであった。
【0009】
本発明によれば、前記課題は、ヒドロアミノ化触媒の前処理法において、ヒドロアミノ化触媒を、オレフィンとアンモニア、1級又は2級アミンとの反応の前に、アンモニア含有混合物と接触させ、その際、アンモニア含有混合物がオレフィン40質量%未満を含有することを特徴とする方法により解決された。
【0010】
前記課題は、更に、ヒドロアミノ化触媒上でのオレフィンとアンモニア、1級又は2級アミンとの反応によるアルキルアミンの製造法において、オレフィンとアンモニア、1級又は2級アミンとの反応の前に、ヒドロアミノ化触媒をアンモニア含有混合物と接触させ、その際、アンモニア含有混合物がオレフィン40質量%未満を含有することを特徴とする方法により解決される。
【0011】
本発明によれば、ヒドロアミノ化触媒は、オレフィンとアンモニア、1級又は2級アミンとの反応の前に、アンモニア含有混合物と接触され、その際、アンモニア含有混合物はオレフィン40質量%未満を含有する。
【0012】
有利に、アンモニア含有混合物は、市販のアンモニアからなる。通常、95質量%超、有利に98質量%超、特に有利に99質量%超、特に99.5質量%超のアンモニア含分を有する市販のアンモニアが使用される。
【0013】
他の有利な一実施態様において、ヒドロアミノ化触媒は、アンモニアの他に更にオレフィンを含有するアンモニア含有混合物と接触される。有利に、アンモニアの他に使用されるオレフィンは、後続のヒドロアミノ化反応において使用されるオレフィンである。
【0014】
本発明によれば、アンモニア含有混合物は、オレフィン40質量%未満を含有する。特に有利に、アンモニア含有混合物は、オレフィンを10質量%未満、特に有利に5質量%未満、特に有利に1質量%未満含有する。
【0015】
通常、アンモニア含有混合物は、アンモニア及び場合によりオレフィン以外の成分を含有しない。しかしながら、アンモニア含有混合物が更に他の成分、例えば水又は他の1級又は2級アミンを含有することもできる。しかしながら通常、他の成分の割合は有利に5質量%未満、特に有利に2質量%未満、特に有利に1質量%未満である。
【0016】
有利に、ヒドロアミノ化触媒とアンモニア含有混合物とは、0〜50℃、有利に10〜30℃の温度で接触される。
【0017】
ヒドロアミノ化触媒をアンモニア含有混合物と接触させる際の有利な圧力は、0.1〜50バール絶対の範囲内、有利に0.5〜20バール絶対の範囲内、特に有利に1〜10バール絶対の範囲内である。
【0018】
アンモニア含有混合物は、ガス状か又は液状で、ヒドロアミノ化触媒と接触されてよい。
【0019】
ヒドロアミノ化触媒は、通常、触媒を含有する反応器を液体アンモニア含有混合物で充填することによって、アンモニア含有混合物と接触される。有利に、反応器中に存在する全ヒドロアミノ化触媒は液体のアンモニア含有混合物で湿潤される。
【0020】
液体のアンモニア含有混合物は、連続的に、ヒドロアミノ化触媒に導通されてよい。触媒負荷は、一般に、(アンモニア含有混合物0.1〜20kg)/(触媒kg)/分、有利に(アンモニア含有混合物0.5〜10kg)/(触媒kg)/分の範囲内である。アンモニア含有混合物は、ガス状でヒドロアミノ化触媒に導通されてもよい。触媒負荷は一般に(アンモニア含有混合物0.1〜20L)/(触媒kg)/分、有利に(アンモニア含有混合物0.5〜10L)/(触媒kg)/分である。
【0021】
ヒドロアミノ化触媒とアンモニア含有混合物との接触時間は、一般に5分〜24時間、有利に10分〜12時間、特に有利に30分〜6時間である。
【0022】
ヒドロアミノ化触媒は、ヒドロアミノ化が実施される反応器の外部で、アンモニア含有混合物と接触される。しかしながら有利に、ヒドロアミノ化触媒は、後続のヒドロアミノ化が行われる反応器中でアンモニア含有混合物と接触される。該反応器は有利に連続的に運転される反応器、例えば、管型反応器又は流動層反応器である。
【0023】
有利な一実施態様において、アンモニア含有混合物は不活性ガス、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム又はその混合物と一緒にヒドロアミノ化触媒と接触される。アンモニア含有混合物への不活性ガスの供給は、不活性ガスが触媒の熱を排出し得るという利点を有する。
【0024】
ヒドロアミノ化触媒への不活性ガスの流れは、通常、(不活性ガス1L)/(触媒kg)/分〜(不活性ガス1000L)/(触媒kg)/分、有利に(不活性ガス5L)/(触媒kg)/分〜(不活性ガス100L)/(触媒kg)/分、特に有利に(不活性ガス10L)/(触媒kg)/分〜(不活性ガス50L)/(触媒kg)/分の範囲内である。
【0025】
特に有利な一実施態様において、ヒドロアミノ化触媒はDE−A−10313853の教示に従って熱処理され、その後、該触媒をアンモニア含有混合物と接触させる。熱処理は有利に100〜550℃の範囲内の温度で、空気、窒素、他の不活性ガス又はその混合物からのガス流中で行うことができる。
【0026】
有利な一実施態様において、本発明による方法において使用されるヒドロアミノ化触媒は、まだヒドロアミノ化反応で使用されておらず、つまり、該触媒上でオレフィンとアンモニア、1級又は2級アミンとの反応がまだ行われていないような触媒である。
【0027】
しかしながら、すでにヒドロアミノ化反応に使用されており、かつ、ヒドロアミノ化反応に引き続き、酸素含有ガス中で高められた温度で、有利に400〜550℃の温度で通常の様式で再生されたヒドロアミノ化触媒を方法において使用することもできる。
【0028】
ヒドロアミノ化触媒をアンモニア含有混合物と接触させた後、ヒドロアミノ化触媒上で、オレフィンとアンモニア、1級又は2級アミンとを反応させて、アルキルアミンへと変換することができる。それに応じて、本発明は、オレフィンとアンモニア、1級又は2級アミンとの反応前に、本発明により、ヒドロアミノ化触媒をアンモニア含有混合物と接触させ、その際、アンモニア含有混合物がオレフィン40質量%未満を含有することによって前処理することを特徴とする、ヒドロアミノ化触媒上でのオレフィンとアンモニア、1級又は2級アミンとの反応によるアルキルアミンの製造法に関する。
【0029】
ヒドロアミノ化触媒として、有利に、焼結されたゼオライト系触媒が使用される。
【0030】
ゼオライト系ヒドロアミノ化触媒の場合、活性材料はゼオライトから構成されている。通常、ゼオライト系ヒドロアミノ化触媒は、更に、触媒成形体の製造に必要なバインダーを含有する。相応する成形材料から触媒成形体を製造する場合、通常、最終的な触媒を得るために、乾燥後にさらに焼結される。
【0031】
触媒成形体の成形を終結する工程は、焼結である。この場合、通常、バインダー材料の硬化のためには400℃を上回る温度が必要である。最高温度は、550℃を上回る温度でその結晶性が失われるゼオライトの安定性により制限される。焼結は、大工業的には、回転管中で400〜560℃の範囲内の温度で2〜4時間の滞留時間で行われる。実験室内では、通常、炉中で480〜520℃の温度で2〜32時間の期間で運転される。
【0032】
オレフィンとアンモニア及び/又は1級又は2級アミンとのヒドロアミノ化のためのヒドロアミノ化触媒は、通常、ゼオライト、特に、フォージャサイト、例えば、X−、Y−及びUSY−ゼオライト、エリオン沸石、斜方沸石、モルデン沸石、オフレット沸石、クリノプチオライト、ペンタシル、例えば、ZSM−5及びZBM−10、ZSM−11、ZSM−12、MCM−22、MCM−41、MCM−48、MCM−49、MCM−56、EMT、SSZ−26、SSZ−33、SSZ−37、CIT−1、PSH−3、NU−85、ベータ並びにホウ素含有形、例えば、ZBM−11、H−Bor−ZSM−5、H−Bor−ベータ、H−Bor−ZSM−11並びにガリウム−又はチタン含有形である。前記触媒は、触媒活性中心の数が多く、かつ表面積が大きいことが特徴的である。
【0033】
記載されたゼオライトは、その製造後の後処理のタイプ及び種類が異なる(例えば、熱処理、脱アルミニウム、酸処理、金属イオン交換等)。
【0034】
ゼオライトの例は、US−A4,375,002、US−A4,536,602、EP−A305564、EP−A101921及びDE−A4206992に記載されている。
【0035】
EP−A133938、EP−A431451及びEP−A132736から公知であり、場合により、記載されているように、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び遷移金属でドープされていてもよいボロ−、ガリウム−、アルミノ−及び鉄シリケートゼオライトも本発明による方法において使用することができる。
【0036】
更に、例えば、CA−A2092964から公知であり、5Åを上回る細孔径を有する所定の組成の結晶性アルミノシリケートとして定義されているベータ−ゼオライトを使用することもできる。
【0037】
有利に、DE−A19530177に記載されているような金属−又はハロゲン変性されたベータ−ゼオライトが使用される。
【0038】
EP−A132736に開示されているような、10以上のSiO2/Al23のモル比を有するペンタシル型のゼオライト触媒も特に有利である。
【0039】
アルミニウムホスフェート及びシリコアルミノホスフェートには、ゼオライト構造又はゼオライト類似構造を有する結晶系、例えば、DE−A19601409に記載されているようなSAPO−37、AlPO4−5、SAPO−5が含まれるが、例えばDE−A4431093に記載されているようなアモルファス系も含まれる。該系は一般に式Al23*25*xSiO2を有する。
【0040】
ヒドロアミノ化触媒は、粉末の形か又は有利に成形体、例えばストランド、タブレット又は粉砕片の形で使用することができる。成形のために、(成形すべき材料に対して)2〜60質量%のバインダーを添加することができる。バインダーとして、種々の酸化アルミニウム、有利に、ベーマイト、25:75〜95:5のSiO2/Al23のモル比を有するアモルファスアルミノシリケート、二酸化ケイ素、有利に高分散SiO2、例えばシリカゾル、高分散SiO2と高分散Al23とからの混合物、高分散TiO2並びにクレーが好適である。
【0041】
通常、ヒドロアミノ化触媒はH形で使用される。しかしながら、選択率、寿命及び可能な触媒再生の数を高めるために、更に、ヒドロアミノ化触媒に対して種々の変更を加えることができる。
【0042】
ヒドロアミノ化触媒の一変法において、未成形のヒドロアミノ化触媒を、アルカリ金属、例えば、Na及びK、アルカリ土類金属、例えば、Ca、Mg、重金属、例えばTl、遷移金属、例えば、Mn、Fe、Mo、Cu、Zn、Cr、貴金属及び/又は希土類金属、例えば、La、Ce又はYでイオン交換ないしドープすることができる。
【0043】
有利な触媒の一実施態様において、成形されたヒドロアミノ化触媒は流動管中に装入され、かつ、該触媒に、20〜100℃で、例えば、上記金属のハロゲン化物、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩又は硝酸塩が溶解形で導通される。このようなイオン交換は、例えば、ヒドロアミノ化触媒の水素−、アンモニウム−及びアルカリ形で行うことができる。
【0044】
ヒドロアミノ化触媒への金属施与のもう1つの可能性は、ゼオライト系材料に、例えば、水溶液又はアルコール溶液中の上記金属のハロゲン化物、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、硝酸塩又は酸化物を含浸させることである。
【0045】
イオン交換のみならず含浸にも、乾燥、選択的に繰り返しの焼結が引き続くことができる。金属ドープされたヒドロアミノ化触媒の場合、水素及び/又は水蒸気での後処理が有利であり得る。
【0046】
触媒の変性のもう1つの可能性は、成形されたか又は成形されていない不均一系触媒材料を、酸、例えば、塩酸(HCl)、フッ酸(HF)、リン酸(H3PO4)、硫酸(H2SO4)、シュウ酸(HO2C−CO2H)又はその混合物で処理することである。
【0047】
特別な一実施態様において、触媒粉末はその成形前にフッ酸(0.001〜2モル、有利に0.05〜0.5モル)で還流下に1〜3時間処理される。濾別及び洗浄後に、通常100〜160℃で乾燥され、かつ400〜550℃で焼結される。
【0048】
もう1つの特別な実施態様において、不均一系触媒は、バインダーを用いて成形した後にHClで処理される。この場合、不均一系触媒は通常、3〜25%、特に12〜20%の塩酸で、60〜80℃の温度で1〜3時間処理され、引き続き洗浄され、100〜160℃で乾燥され、かつ400〜550℃で焼結される。
【0049】
触媒の変性のもう1つの可能性は、アンモニウム塩、例えば、NH4Cl、又はモノ−、ジ−又はポリアミンとの交換である。この場合、バインダーを用いて成形された不均一系触媒は、通常、60〜80℃で、10〜25%、有利に約20%のNH4Cl溶液で2時間、連続的に、1:15の不均一系触媒/塩化アンモニウム溶液の質量比で交換され、その後、100〜120℃で乾燥される。
【0050】
アルミニウム含有ヒドロアミノ化触媒に関して行うことのできるもう1つの変性は、脱アルミニウムであり、その際、アルミニウム原子の一部はケイ素で置換されるか、又は、ヒドロアミノ化触媒は、例えば熱水処理によりそのアルミニウム含分が低下される。熱水脱アルミニウムには、有利に、形成された非格子アルミニウムを除去するために酸又は錯化剤での抽出が引き続く。ケイ素によるアルミニウムの置換は、例えば、(NH42SiF6又はSiCl4を用いて行うことができる。Y−ゼオライトの脱アルミニウムの例は、Corma et al., Stud. Surf. Sci. Catal. 37 (1987), 第495-503頁に記載されている。
【0051】
ヒドロアミノ化触媒は、例えば直径1〜4mmのストランドとして、又は、例えば、直径3〜5mmのタブレットとして、オレフィンのヒドロアミノ化に使用することができる。
【0052】
成形後、押出物又は圧縮物は、有利に80〜150℃で2〜16時間、例えば、110℃で16時間乾燥され、かつ、300〜500℃で2〜16時間焼結され、その際、焼結、例えば活性化は、ヒドロアミノ化反応器中で直接行われてもよい。
【0053】
有利な実施態様において、本発明による方法において、焼結されたヒドロアミノ化触媒が使用される。
【0054】
無機固体酸の存在下でのオレフィンとアンモニア及び/又は1級又は2級アミンとの反応は、例えば、EP−A132736、EP−A752409、EP−A822179及びWO−A−02/00597に記載されているように行うことができる。
【0055】
反応は、連続運転法、バッチ運転法又はセミバッチ運転法で運転されてよい。
【0056】
有利にこの場合通常、アンモニア及び/又は1級アミン又は場合により2級アミンは、オレフィンと共に、1:1〜10:1、有利に1:1〜5:1、特に有利に1:1〜3:1のモル比で混合され、かつ、本発明により前処理されたヒドロアミノ化触媒を含む固定層−又は流動層反応器中で、40〜700バール絶対、有利に200〜300バール絶対の圧力で、かつ、80〜400℃、有利に230℃〜320℃の温度で、気相中か又は超臨界状態で反応される。
【0057】
それとは異なって、反応を液相中で40〜80バール絶対の圧力で、かつ、60〜120℃の温度で、本発明により前処理されたヒドロアミノ化触媒を含む固−液−流動層又は流動管型反応器中で実施することもできる。
【0058】
前記方法の特別な一実施態様において、アンモニア及び/又は1級ないし2級アミンは、オレフィン又はオレフィン混合物と共に、1:1〜5:1、有利に1:1〜3:1のモル比で混合して、本発明により前処理されたヒドロアミノ化触媒を含む固定層反応器に供給され、100〜320バール絶対、有利に150〜310バール絶対、特に200〜300バール絶対の圧力で、かつ、200〜350℃、有利に220〜330℃、特に230〜320℃の温度で、気相中か又は超臨界状態で反応される。
【0059】
平衡状態、及び、ひいては所望のヒドロアミノ化生成物への変換率は、選択される反応圧に著しく依存する。高い圧力は付加生成物を助長するが、一般には技術的及び経済的な理由から、300バール絶対までの圧力範囲が最適である。反応の選択率は、アンモニア/アミン過剰及び触媒といったパラメータの他に、温度によっても大きく影響を受ける。確かに、付加反応の反応速度は温度の上昇に伴って強度に増大するが、場合により選択率を低下させる副反応も同時に助長される。更に、熱動力学的観点から、温度上昇は大抵は有利でない。変換率及び選択率に関して最適な温度の位置は、オレフィン、使用される1級アミン及び触媒の構成に依存し、かつ大抵は220〜320℃の範囲内である。
【0060】
反応後に、ヒドロアミノ化反応の生成物は、通常、例えば蒸留、精留、濾過、水洗浄又は吸着により分離される。
【0061】
未反応の出発材料又は供給された不活性ガスは、反応に返送することができる。
【0062】
本発明による方法において、アンモニア、1級又は2級アミンが使用される。1級又は2級アミンは、この場合有利にC1-20−アルキル基、特に有利にC1-6−アルキル基、特にメチル基又はエチル基を有する。
【0063】
オレフィンとして、有利に、脂肪族C2-20−オレフィンを使用することができる。この場合、前記オレフィンは直鎖又は分枝鎖であってよい。有利にC2-12−オレフィン、特にC2-6−オレフィンが使用される。好適なオレフィンの例は、エテン、プロペン、ブテン、イソブテン、例えば、1,3−ブタジエンである。特に有利な一実施態様において、オレフィンとしてイソブテンが使用される。
【0064】
アンモニアの他に、極めて特に有利であるアミンは、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、n−ブチルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン及びジ−n−ブチルアミンである。特に有利な一実施態様において、アンモニアが使用される。
【0065】
エーテルとアンモニアとに由来するヒドロアミノ化生成物は、モノ−、ジ−及び/又はトリエチルアミンであり;エーテルとモノエチルアミンとに由来するヒドロアミノ化生成物は、ジ−及び/又はトリエチルアミンであり、イソブテンとアンモニアとに由来するヒドロアミノ化生成物は、t−ブチルアミンであり、1,3−ブタジエンとアンモニアとに由来するヒドロアミノ化生成物は、1−アミノ−3−ブテン及び/又は2−アミノ−3−ブテンであり、1,3−ブタジエンとn−ブチルアミンとに由来するヒドロアミノ化生成物は、(2−ブテニル)−n−ブチルアミン及び/又は(3−ブテニル)−n−ブチルアミンであり、プロペンとイソプロピルアミンとに由来するヒドロアミノ化生成物は、ジイソプロピルアミンである。
【0066】
特に有利な一実施態様において、ヒドロアミノ化生成物は、イソブテンとアンモニアとに由来するt−ブチルアミンである。
【0067】
本発明により製造されたt−ブチルアミンは、ゴム工業における原料(加硫促進剤)として、又は、植物保護剤又は医薬品の製造のために使用することができる。
【0068】
本発明によるヒドロアミノ化触媒の前処理法によって、通常、ヒドロアミノ化触媒のスタートアップの際の該触媒の熱的な損傷が低減される。従って、長い運転期間を有し、かつ、ヒドロアミノ化生成物を高い収率及び選択率で得ることを可能にするヒドロアミノ化法が提供される。触媒の、場合により必要な再生までの運転期間は、本発明による方法により高められる。本発明のもう1つの課題は、使用される触媒のよりわずかな熱的な損傷がもたらされるため、触媒活性が可能な限り長く保持される、ヒドロアミノ化触媒のスタートアップのための方法を開発することであった。
【0069】
本発明を以下の実施例により詳説する。
【実施例】
【0070】
比較例1:
断熱熱量計において、SSZ−26型のゼオライトからなるヒドロアミノ化触媒にアンモニア及びイソブテンを流す。反応開始時の温度(開始温度)は22℃である。出発材料の添加後の温度上昇を測定する。熱量計中の温度は最高温度75℃にまで上昇する。厳密な試験パラメータを第1表に示す。
【0071】
実施例1:
断熱熱量計において、SSZ−26型のゼオライトからなるヒドロアミノ化触媒に、本発明によりまずアンモニアを流す。この場合、温度は21℃(開始温度)から42℃に上昇する。放圧し、それにより熱量計からアンモニアを除去した後に、触媒を調温して再度開始温度にし、かつアンモニア及びイソブテンを流す。出発材料を添加した後の温度上昇を測定する。熱量計中の温度は最高温度24℃にまで上昇する。厳密な試験パラメータを第2表に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
大工業的規模において、スタートアップ時ないしは触媒に出発材料を流した際に生じる熱の排出は困難であるため、生じる温度上昇は触媒の熱的な損傷を招き得る。本発明による試験において、本発明によるヒドロアミノ化触媒の前処理によって、触媒のスタートアップ時に生じる熱量は明らかに低下され得ることが明らかであるため、ヒドロアミノ化触媒の熱的な損傷は十分に回避される。
【0074】
比較例2:
断熱熱量計において、NU−85型のゼオライトからなるヒドロアミノ化触媒にアンモニア及びイソブテンを流す。反応開始時の温度(開始温度)は22℃である。出発材料の添加後の温度上昇を測定する。熱量計中の温度は最高温度70℃にまで上昇する。厳密な試験パラメータを第1表に示す。
【0075】
実施例2:
断熱熱量計において、NU−85型のゼオライトからなるヒドロアミノ化触媒に、本発明によりまずアンモニアを流す。この場合、温度は21℃(開始温度)から44℃に上昇する。放圧し、それにより熱量計からアンモニアを除去した後に、触媒を調温して再度開始温度にし、かつアンモニア及びイソブテンを流す。出発材料を添加した後の温度上昇を測定する。熱量計中の温度は最高温度25℃にまで上昇する。厳密な試験パラメータを第2表に示す。
【0076】
【表2】

【0077】
比較例3:
断熱熱量計において、MCM−49型のゼオライトからなるヒドロアミノ化触媒にアンモニア及びイソブテンを流す。反応開始時の温度(開始温度)は22℃である。出発材料の添加後の温度上昇を測定する。熱量計中の温度は最高温度72℃にまで上昇する。厳密な試験パラメータを第1表に示す。
【0078】
実施例3:
断熱熱量計において、MCM−49型のゼオライトからなるヒドロアミノ化触媒に、本発明によりまずアンモニアを流す。この場合、温度は21℃(開始温度)から43℃に上昇する。放圧し、それにより熱量計からアンモニアを除去した後に、触媒を調温して再度開始温度にし、かつアンモニア及びイソブテンを流す。出発材料を添加した後の温度上昇を測定する。熱量計中の温度は最高温度26℃にまで上昇する。厳密な試験パラメータを第2表に示す。
【0079】
【表3】

【0080】
比較例4:
断熱熱量計において、γ−Al23−マトリックス中のボロ−ベータ−ゼオライト(ゼオライト含分:75質量%)からなるヒドロアミノ化触媒にアンモニア及びイソブテンを流す。反応開始時の温度(開始温度)は22℃である。出発材料の添加後の温度上昇を測定する。熱量計中の温度は最高温度73℃にまで上昇する。厳密な試験パラメータを第1表に示す。
【0081】
実施例4:
断熱熱量計において、γ−Al23−マトリックス中のボロ−ベータ−ゼオライト(ゼオライト含分:75質量%)からなるヒドロアミノ化触媒に、本発明によりまずアンモニアを流す。この場合、温度は21℃(開始温度)から44℃に上昇する。放圧し、それにより熱量計からアンモニアを除去した後に、触媒を調温して再度開始温度にし、かつアンモニア及びイソブテンを流す。出発材料を添加した後の温度上昇を測定する。熱量計中の温度は最高温度26℃にまで上昇する。厳密な試験パラメータを第1表に示す。
【0082】
【表4】

【0083】
比較例5:
断熱熱量計において、ボロ−MCM−22型のゼオライトからなるヒドロアミノ化触媒にアンモニア及びイソブテンを流す。反応開始時の温度(開始温度)は21℃である。出発材料の添加後の温度上昇を測定する。熱量計中の温度は最高温度78℃にまで上昇する。厳密な試験パラメータを第1表に示す。
【0084】
実施例5:
断熱熱量計において、ボロ−MCM−22型のゼオライトからなるヒドロアミノ化触媒に、本発明によりまずアンモニアを流す。この場合、温度は22℃(開始温度)から44℃に上昇する。放圧し、それにより熱量計からアンモニアを除去した後に、触媒を調温して再度開始温度にし、かつアンモニア及びイソブテンを流す。出発材料を添加した後の温度上昇を測定する。熱量計中の温度は最高温度25℃にまで上昇する。厳密な試験パラメータを第2表に示す。
【0085】
【表5】

【0086】
比較例6:
断熱熱量計において、NES型のゼオライトからなるヒドロアミノ化触媒にアンモニア及びイソブテンを流す。反応開始時の温度(開始温度)は22℃である。出発材料の添加後の温度上昇を測定する。熱量計中の温度は最高温度72℃にまで上昇する。厳密な試験パラメータを第1表に示す。
【0087】
実施例6:
断熱熱量計において、NES型のゼオライトからなるヒドロアミノ化触媒に、本発明によりまずアンモニアを流す。この場合、温度は22℃(開始温度)から42℃に上昇する。放圧し、それにより熱量計からアンモニアを除去した後に、触媒を調温して再度開始温度にし、かつアンモニア及びイソブテンを流す。出発材料を添加した後の温度上昇を測定する。熱量計中の温度は最高温度24℃にまで上昇する。厳密な試験パラメータを第2表に示す。
【0088】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロアミノ化触媒の前処理法において、ヒドロアミノ化触媒を、オレフィンとアンモニア、1級又は2級アミンとの反応の前に、アンモニア含有混合物と接触させ、その際、アンモニア含有混合物がオレフィン40質量%未満を含有することを特徴とする方法。
【請求項2】
アンモニア含有混合物がオレフィン10質量%未満を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
アンモニア含有混合物を1以上の不活性ガスと一緒にヒドロアミノ化触媒と接触させる、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
ヒドロアミノ化触媒をアンモニア含有混合物と0.1〜50バールの絶対圧で接触させる、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ヒドロアミノ化触媒をアンモニア含有混合物と0〜50℃の温度で接触させる、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
まだヒドロアミノ化で使用されていないヒドロアミノ化触媒を使用する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
再生されたヒドロアミノ化触媒を使用する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
熱活性化されたヒドロアミノ化触媒を使用する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
焼結されたゼオライト系ヒドロアミノ化触媒を使用する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前処理を連続運転される反応器中で行う、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前処理を断熱運転される反応器中で行う、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
ヒドロアミノ化触媒上でのオレフィンとアンモニア、1級又は2級アミンとの反応によるアルキルアミンの製造法において、オレフィンとアンモニア、1級又は2級アミンとの反応の前に、ヒドロアミノ化触媒を請求項1から11までのいずれか1項記載の方法により前処理することを特徴とする方法。
【請求項13】
アンモニア、1級又は2級アミン対オレフィンのモル比が1:1〜3:1である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
オレフィンをアンモニアと反応させる、請求項12又は13記載の方法。
【請求項15】
オレフィンとしてイソブテンを使用する、請求項12から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
ゴム工業における原料(加硫促進剤)としての、又は、植物保護剤又は医薬品の製造のための、請求項12記載の方法により得ることができるt−ブチルアミンの使用。

【公表番号】特表2011−516255(P2011−516255A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503418(P2011−503418)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/054124
【国際公開番号】WO2009/124924
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】