説明

ヒドロキシアルキル置換ピリド−7−ピリミジン−7−オン類

本発明は、式(I)[式中、X1、Ar1、R1及びR2はここで定義されたとおりである]の化合物及びそれらを含む組成物を提供する。本発明は、患者におけるp38により媒介される障害の治療において、式(I)の化合物を使用する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピリドピリミジン類及びそれらの誘導体に関する。特に、本発明は、2,6−二置換7−オキソピリド[2,3−d]ピリミジン類、それらの製造のための方法、それらを含む医薬調製物及びそれらを使用するための方法を提供する。
【0002】
マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAP)は、二重リン酸化により基質を活性化するプロリン指向性セリン/トレオニンキナーゼのファミリーである。キナーゼは、栄養的及び浸透圧的なストレス、UV光、増殖因子、内毒素並びに炎症性サイトカインを含む多様なシグナルにより活性化される。MAPキナーゼの一つの群は、様々なアイソフォーム(例えば、p38α、p39β、p38γ及びp38δ)を含むp38キナーゼ群である。p38キナーゼは、転写因子及びその他のキナーゼのリン酸化及び活性化を担っており、物理学的及び化学的なストレス、炎症誘発性サイトカイン並びに細菌リポ多糖により活性化される。
【0003】
より重要なこととして、p38リン酸化の産物は、TNF及びIL−1を含む炎症性サイトカイン並びにシクロオキシゲナーゼ−2の産生を媒介することが示されている。これらのサイトカインは、各々、多数の疾患状態及び条件に関連づけられている。例えば、TNF−αは、活性化された単球及びマクロファージにより主に産生されるサイトカインである。その過剰な又は制御されない産生は、慢性関節リウマチの病原において原因的な役割を果たしているとして関連づけられている。さらに最近、TNF産生の阻害が、炎症、炎症性腸疾患、多発性硬化症及び喘息の治療において、広範に適用され得ることが示されている。
【0004】
TNFは、とりわけ、HIV、インフルエンザウイルス並びに単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)、単純ヘルペスウイルス2型(HSV−2)、サイトメガロウイルス(CMV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン・バーウイルス、ヒトヘルペスウイルス−6(HHV−6)、ヒトヘルペスウイルス−7(HHV−7)、ヒトヘルペスウイルス−8(HHV−8)、仮性狂犬病及び鼻気管支炎を含むヘルペスウイルスのようなウイルス感染にも関連づけられている。
【0005】
同様に、IL−1は、活性化された単球及びマクロファージにより産生され、慢性関節リウマチ、発熱及び骨吸収の減少を含む多くの病態生理学的応答において役割を果たしている。
【0006】
さらに、発作、アルツハイマー病、骨関節炎、肺損傷、敗血症ショック、血管形成、皮膚炎、乾癬及びアトピー性皮膚炎へのp38の関与も示されている。J.Exp.Opin.Ther.Patents, 2000, 10(1)。
【0007】
p38キナーゼの阻害によるこれらのサイトカインの阻害は、これらの疾患状態の多くの制御、減少及び軽減において有益である。
【0008】
ある種の6−アリールピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン類、−7−イミン類及び7−チオン類は、WO96/34867において、プロテインチロシンキナーゼにより媒介される細胞増殖の阻害剤として開示されている。その他の6−アリールピリド[2,3−d]ピリミジン類及びナフチリジン類も、WO96/15128において、チロシンキナーゼの阻害剤として開示されている。6−アルキルピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン類は、WO98/33798において、サイクリン依存性キナーゼの阻害剤として開示されている。ある種の4−アミノピリドピリミジン類は、EP0 278 686A1において、ジヒドロ葉酸還元酵素の阻害剤として開示されている。
【0009】
一つの実施態様において、本発明は、式I:
【0010】
【化4】

【0011】
[式中、
1は、O、C=O又はS(O)(ここで、nは0、1又は2である)であり;
Ar1は、アリール又はヘテロアリールであり;
1は、アルコキシアルキル、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、ヒドロキシアルキル又はヒドロキシシクロアルキルであり;そして
2は、ヒドロキシアルキル、オキソアルキル又はヒドロキシシクロアルキルである]
の化合物を提供する。
【0012】
ある種の置換ピリド−7−ピリミジン−7−オン類は、p38に対する酵素インビトロアッセイにおいて活性であることが既知であるが(例えば、参照により全文がここに組み入れられるUS−2003−0171584−A1を参照されたい)、驚くべきことに、そして予想されなかったことに、本発明者は、式Iの化合物が、リポ多糖(LPS)誘導ヒト全血システイン産生アッセイにおいて、従来開示されていた化合物より有意に高い活性を有していることを発見した。
【0013】
式Iの化合物は、プロテインキナーゼの阻害剤であり、インビボでp38に対する有効な活性を示す。それらは、サイクリン依存性キナーゼ及びチロシンキナーゼと比較して、p38キナーゼに選択的である。したがって、本発明の化合物は、TNF及びIL−1のような炎症誘発性サイトカインにより媒介される疾患の治療のために使用され得る。そこで、本発明のもう一つの態様は、治療的に有効な量の式Iの化合物が患者に投与される、p38により媒介される疾患又は条件を治療するための方法を提供する。
【0014】
特記しない限り、明細書及び特許請求の範囲において使用される以下の用語は、下記の意味を有する。
【0015】
「アルコキシアルキル」とは、R−O−R−[式中、Rはアルキルであり、そしてRはここで定義されるようなアルキレンである]の部分を意味する。例示的なアルコキシアルキル基には、例えば、2−メトキシエチル、3−メトキシプロピル、1−メチル−2−メトキシエチル、1−(2−メトキシエチル)−3−メトキシプロピル及び1−(2−メトキシエチル)−3−メトキシプロピルが包含される。
【0016】
「アルキル」とは、炭素原子1〜6個の直鎖型飽和一価炭化水素基又は炭素原子1〜6個の分岐型飽和一価炭化水素基、例えば、メチル、エチル、プロピル、2−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、ペンチル等を意味する。
【0017】
「アルキレン」とは、炭素原子1〜6個の直鎖型飽和二価炭化水素基又は炭素原子1〜6個の分岐型飽和二価炭化水素基、例えば、メチレン、エチレン、2,2−ジメチルエチレン、プロピレン、2−メチルプロピレン、ブチレン、ペンチレン等を意味する。
【0018】
「アリール」とは、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ハロ、ニトロ、シアノ、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ及びアシルからなる群より好ましくは選択される置換基1個以上、好ましくは1個、2個又は3個によって、場合により独立に置換されていてもよい一価の単環式又は二環式の芳香族炭化水素基を意味する。特に好ましいアリール置換基は、ハロゲンである。より具体的には、アリールという用語は、フェニル、クロロフェニル、フルオロフェニル、(2,4−及び2,6−ジフルオロフェニルのような)ジフルオロフェニル、メトキシフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル及びそれらの誘導体を包含するが、これらに限定されない。
【0019】
「シクロアルキル」とは、3〜7員の飽和一価環式炭化水素基、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル等をさす。シクロアルキルは、場合により1個以上、好ましくは1個、2個又は3個の置換基で置換されていてもよい。好ましくは、シクロアルキル置換基は、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ハロ、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ及びアシルからなる群より選択される。特に好ましいシクロアルキル置換基の群には、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ及びハロが包含される。特別に好ましいシクロアルキル置換基の群には、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ及びハロが包含される。
【0020】
「シクロアルキルアルキル」とは、式R−R−[式中、Rはシクロアルキルであり、そしてRはここで定義されたようなアルキレンである]の部分をさす。
【0021】
「ハロ」及び「ハライド」は、ここでは交換可能に使用され、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを示す。好ましいハロゲンは、フルオロ及びクロロであり、フルオロが特に好ましいハロゲンである。
【0022】
「ハロアルキル」とは、1個以上の同じ又は異なるハロ原子で置換されたアルキル、例えば、−CH2Cl、−CF3、−CH2CF3、−CH2CCl3等である。
【0023】
「ヘテロアリール」とは、ヘテロアリール基の結合点が芳香環上にあることを条件として、N、O又はS(好ましくはN又はO)より選択される環ヘテロ原子1個、2個又は3個を含有しており、かつ残りの環原子がCである芳香環少なくとも1個を有する、5〜12員の一価の単環式又は二環式の基を意味する。ヘテロアリール環は、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロ、ニトロ又はシアノより選択される置換基1個以上、好ましくは1個又は2個で独立に置換されていてもよい。より具体的には、ヘテロアリールという用語には、ピリジル、フラニル、チエニル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、ピロリル、ピラゾリル、ピリミジニル、ベンゾフラニル、テトラヒドロベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、インドリル、イソインドリル、ベンゾオキサゾリル、キノリル、テトラヒドロキノリニル、イソキノリル、ベンゾイミダゾリル、ベンソイソオキサゾリル又はベンゾチエニル、イミダゾ[1,2−a]ピリジニル、イミダゾ[2,1−b]チアゾリル及びそれらの誘導体が包含されるが、これらに限定されない。
【0024】
「ヘテロシクリル」とは、1個又は2個の環原子がN、O又はS(O)(式中、nはO〜2の整数である)、好ましくはN又はOより選択されるヘテロ原子であり、かつ残りの環原子がCであり、場合によっては1個又は2個のC原子がカルボニル基で置き換えられていてもよい、3〜8員の飽和又は不飽和の非芳香族環式基を意味する。ヘテロシクリル環は、場合によってはアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ハロ、ニトロ、シアノ、シアノアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アラルキル、−(X)−C(O)R(式中、Xは、O又はNRであり、nは、O又は1であり、Rは、水素(XがNRである場合)、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシ(nが0である場合)、アルコキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ又は置換されていてもよいフェニルであり、そしてRは、H又はアルキルである)、−アルキレン−C(O)R(式中、Rは、アルキル、−OR又はNRであり、そしてRは、水素、アルキル又はハロアルキルであり、かつR及びRは、独立に水素又はアルキルである)又は−S(O)(式中、nは0〜2の整数であり、nが0である場合、Rは水素、アルキル、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキルであり、nが1又は2である場合、Rはアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アミノ、アシルアミノ、モノアルキルアミノ又はジアルキルアミノである)より選択される置換基1個、2個又は3個で独立に置換されていてもよい。特に好ましいヘテロシクリル置換基の群には、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アラルキル及びS(O)が包含される。特に、ヘテロシクリルという用語には、各々置換されていてもよいテトラヒドロフラニル、ピリジニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジノ、N−メチルピペリジン−3−イル、ピペラジノ、N−メチルピロリジン−3−イル、3−ピロリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオモルホリノ−1−オキシド、チオモルホリノ−1,1−ジオキシド、4−(1,1−ジオキソテトラヒドロ−2H−チオピラニル)、ピロリニル、イミダゾリニル、N−メタンスルホニルピペリジン−4−イル及びそれらの誘導体が包含されるが、これらに限定されない。
【0025】
「ヒドロキシアルキル」とは、同じ炭素原子が1個を超えるヒドロキシ基を保持していないことを条件として、1個以上、好ましくは1個、2個又は3個のヒドロキシ基で置換された、ここで定義されたようなアルキル部分を意味する。代表例には、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、1−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピル、2−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、4−ヒドロキシブチル、2,3−ジヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチルエチル、2,3−ジヒドロキシブチル、3,4−ジヒドロキシブチル及び2−(ヒドロキシメチル)−3−ヒドロキシプロピルが包含されるが、これらに限定されない。
【0026】
「ヒドロキシシクロアルキル」とは、シクロアルキル基の中の1個、2個又は3個の水素原子がヒドロキシ置換基に交換されている、ここで定義されたようなシクロアルキル部分を意味する。代表例には、2−、3−又は4−ヒドロキシシクロヘキシル等が包含されるが、これらに限定されない。
【0027】
「脱離基」とは、合成有機化学においてそれに一般的に関連づけられている意味を有し、すなわち、求核剤により交換され得る原子又は基であり、(クロロ、ブロモ及びヨードのような)ハロ、アルカンスルホニルオキシ、アレーンスルホニルオキシ、アルキルカルボニルオキシ(例えば、アセトキシ)、アリールカルボニルオキシ、メシルオキシ、トシルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ、アリールオキシ(例えば、2,4−ジニトロフェノキシ)、メトキシ、N,O−ジメチルヒドロキシルアミノ等を包含する。
【0028】
「置換されていてもよいフェニル」とは、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ハロ、ニトロ、シアノ、アミノ、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ及びアシルからなる群より選択される置換基1個以上、好ましくは1個又は2個で独立に置換されていてもよいフェニル環を意味する。
【0029】
「オキソアルキル」とは、式R−C(=O)−R−[式中、Rはアルキレンであり、そしてRはアルキルである]の部分のような、1個以上のカルボニル酸素部分(すなわち、=O)で置換されたアルキル基を意味する。例示的なオキソアルキル基には、2−プロパノン−3−イル、2−メチル−3−ブタノン−4−イル等が包含される。
【0030】
「医薬的に許容される賦形剤」とは、一般的に安全であり、非毒性であり、かつ生物学的にもその他の面からも望ましくなくない、医薬組成物の調製において有用な賦形剤を意味し、獣医学的使用にもヒトにおける医薬的使用にも許容される賦形剤を含む。「医薬的に許容される賦形剤」には、明細書及び特許請求の範囲において使用されるように、1種のそのような賦形剤及び2種以上のそのような賦形剤の両方が包含される。
【0031】
化合物の「医薬的に許容される塩」とは、医薬的に許容され、かつ親化合物の所望の薬理学的活性を保有している塩を意味する。そのような塩には、(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等のような無機酸により形成された酸付加塩;もしくは酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、ショウノウスルホン酸、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクタ−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert−ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸等のような有機酸により形成された酸付加塩;又は(2)親化合物内に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオンもしくはアルミニウムイオンに交換されるか、又はエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミン等のような有機塩基が配位した場合に形成される塩が包含される。
【0032】
「プロ−ドラッグ」及び「プロドラッグ」という用語は、ここで交換可能に使用され、そのようなプロドラッグが哺乳動物対象に投与された場合に、in vivoで式Iに係る活性の親薬物を放出する化合物をさす。式Iの化合物のプロドラッグは、in vivoで修飾が切断され親化合物が放出されるよう、式Iの化合物内に存在する1個以上の官能基を修飾することにより調製される。プロドラッグには、式Iの化合物中のヒドロキシ基、アミノ基、スルフヒドリル基、カルボキシ基又はカルボニル基が、それぞれ、遊離のヒドロキシル基、アミノ基又はスルフヒドリル基が再生するようにin vivoで切断され得る、任意の基と結合している、式Iの化合物が包含される。プロドラッグの例には、式Iの化合物内のヒドロキシ官能基のエステル類(例えば、酢酸、ジアルキルアミノ酢酸、ギ酸、リン酸、硫酸及び安息香酸誘導体)及びカルバマート類(例えば、N,N−ジメチルアミノカルボニル)、カルボキシル官能基のエステル類(例えば、エチルエステル、モルホリノエタノールエステル)、アミノ官能基のN−アシル誘導体(例えば、N−アセタール)、N−マンニッヒ塩基、シッフ塩基及びエナミノン類、ケトン及びアルデヒド官能基のオキシム類、アセタール類、ケタール類及びエノールエステル類等が包含されるが、これらに限定されない。Bundegaard, ”Design of Prodrugs”p1-92, Elsevier, New York-Oxford(1985)を参照されたい。
【0033】
「保護基」とは、分子内の反応基に付加された場合に、その反応性を遮蔽するか、減少させるか又は防止する原子団を示す。保護基の例は、Green, Wuts, Protective Groups in Organic Chemistry, (Wiley, 第2版 1991)及びHarrison, Harrison ら、Compendium of Syrthetc Organic Methods, Vols.1-8(John Wiley and sons, 1971-1996)に見出され得る。代表的なアミノ保護基には、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、トリメチルシリル(TMS)、2−トリメチルシリル−エタンスルホニル(SES)、トリチル基及び置換されたトリチル基、アリルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)、ニトロベラトリルオキシカルボニル(NVOC)等が包含される。代表的なヒドロキシ保護基には、ベンジルエーテル及びトリチルエーテル、並びにアルキルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、トリアルキルシリルエーテル及びアリルエーテルのような、ヒドロキシ基がアシル化又はアルキル化されるものが包含される。
【0034】
疾患の「治療すること」又は「治療」には、(1)疾患を予防すること、すなわち、疾患に曝されているかもしくは疾患の素因を有しているが、まだ疾患の症状を経験していないかもしくは示していない哺乳動物において、疾患の臨床的症状が発生しないようにすること;(2)疾患を阻害すること、すなわち、疾患もしくはその臨床的症状の発生を阻止するか、又は減少させること;あるいは(3)疾患を緩解させること、すなわち、疾患又はその臨床的症状の減退を引き起こすことが包含される。
【0035】
「治療的に有効な量」とは、疾患を治療するため哺乳動物へ投与された場合に、そのような疾患の治療を達成するのに十分な化合物の量を意味する。「治療的に有効な量」は、化合物、疾患及びその重症度、並びに治療を受ける哺乳動物の年齢、体重等によって変動するであろう。
【0036】
「処理すること」、「接触させること」又は「反応させること」という用語は、化学反応をさす場合、示された及び/又は所望の生成物が生成するよう適切な条件の下で、2種以上の試薬を添加又は混合することを意味する。示された及び/又は所望の生成物を生成させる反応は、必ずしも、最初に添加された2種の試薬の組み合わせに直接起因しなくてもよく、すなわち、1種以上の中間体が混合物中に生成し、それが、示された及び/又は所望の生成物の形成に最終的に至るのであってもよい。
【0037】
本発明の化合物は、非溶媒和型で存在してもよいし、水和型を包含する溶媒和型で存在してもよい。一般的に、水和型を包含する溶媒和型は、非溶媒和型と等価であり、本発明の範囲内に包含されるものとする。前記の化合物に加え、本発明の化合物には、全ての互変異性体の形態が含まれる。さらに、本発明には、化合物のプロドラッグ型と共に、化合物の医薬的に許容される全ての塩も含まれ、純粋なキラル型であってもよいし、又はラセミ混合物もしくはその他の型の混合物であってもよい全ての立体異性体も含まれる。
【0038】
式Iの化合物は、さらに、医薬的に許容される酸付加塩を形成することができる。これらの型は、全て、本発明の範囲内である。
【0039】
式Iの化合物の医薬的に許容される酸付加塩には、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸等のような無機酸に由来する塩、並びに脂肪族のモノカルボン酸及びジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、アルカン二酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族のスルホン酸等のような有機酸に由来する塩が包含される。したがってそのような塩には、硫酸塩、ピロ硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、カプリル酸塩、イソ酪酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、フタル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩等が包含される。アルギン酸塩等のようなアミノ酸の塩、及びグルコン酸塩、ガラクツロン酸塩も企図される(例えば、Bergeら、J.of Pharmaceutical Science 66: 1-19(1977)を参照されたい)。
【0040】
塩基性化合物の酸付加塩は、従来の様式で、塩が生成するよう、遊離塩基型を十分な量の所望の酸と接触させることにより調製され得る。遊離塩基型は、従来の様式で、塩型を塩基と接触させ、遊離塩基を単離することにより再生させられ得る。遊離塩基型は、それぞれの塩型とは、極性溶媒への溶解度のようなある種の物理学的特性に関して多少異なっているが、それ以外に関しては、本発明の目的にとって、塩はそれぞれの遊離塩基と等価である。
【0041】
一つの実施態様において、Ar1は、アリールである。特に好ましいAr1は、置換されていてもよいフェニルである。ある種の実施態様において、Ar1は、アルキル、ハロ、ハロアルキル又はアルコキシにより1回以上置換されていてもよいフェニルである。より好ましいAr1は、2,4−二置換フェニルのような二置換フェニルである。さらに好ましくは、Ar1は、2,4−二ハロ置換フェニルである。特に好ましいAr1は、2,4−ジフルオロフェニルである。
【0042】
さらにもう一つの実施態様において、X1はOである。
【0043】
もう一つの実施態様において、R1は、アルコキシアルキル、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヒドロキシアルキル又はヘテロシクリルである。この群の中で特に好ましいR1には、場合により置換されていてもよいテトラヒドロピラニル、1−メチル−2−メトキシエチル、場合により置換されていてもよいシクロペンチル、場合により置換されていてもよいシクロプロピル、イソプロピル、場合により置換されていてもよいシクロヘキシル、1−(2−ヒドロキシエチル)−3−ヒドロキシプロピル、1−ヒドロキシメチル−2−ヒドロキシプロピル、1−ヒドロキシメチル−3−ヒドロキシプロピル、1−メチルプロピル、2−ヒドロキシ−1−メチルエチル、1−(2−メトキシエチル)−3−メトキシプロピル、N−メタンスルホニルピペリジニル、エチル、メチル、2−ヒドロキシプロピル、ネオペンチル、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル、1−(ヒドロキシメチル)プロピル、2−メチルプロピル、シクロプロピルメチル、場合により置換されていてもよいシクロブチル、1,2−ジメチル−2−ヒドロキシプロピル及び1−(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチルが包含される。
【0044】
さらにもう一つの実施態様において、好ましいR1は、ヒドロキシアルキルであり、2−ヒドロキシ−1−メチルエチルが、特に好ましいR1である。特別に好ましいR1には、鏡像異性的に濃縮された2−ヒドロキシ−1−メチルエチル、すなわち、(R)−2−ヒドロキシ−1−メチルエチル及び(S)−2−ヒドロキシ−1−メチルエチルが包含される。
【0045】
一つの特定の実施態様において、R2は、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、1−(2−ヒドロキシエチル)−3−ヒドロキシプロピル又は2−オキソプロピルである。
【0046】
もう一つの実施態様において、R2は、ヒドロキシアルキルである。この群の中で特に好ましいR2は、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル及び1−(2−ヒドロキシエチル)−3−ヒドロキシプロピルである。特に好ましいR2は2−ヒドロキシプロピルである。もう一つの実施態様において、R2は、オキソアルキルである。
【0047】
さらに、ここに記載された好ましい基の組み合わせが、他の好ましい実施態様を形成する。例えば、特に好ましい一つの実施態様において、R1は(R)−又は(S)−2−ヒドロキシ−1−メチルエチルであり、R2は(R)−もしくは(S)−2−ヒドロキシプロピル又は2−オキソプロピルであり、X1はOであり、そしてAr1は2,4−ジフルオロフェニルである。
【0048】
一つの実施態様において、本発明は、Ar1がアリールであり、そしてX1がOである式Iの化合物を提供する。もう一つの実施態様において、本発明は、Ar1がアリールであり、X1がOであり、そしてR1がアルコキシアルキル、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヒドロキシアルキル又はヘテロシクリルである、式Iの化合物を提供する。さらにもう一つの実施態様において、本発明は、Ar1がアリールであり、X1がOであり、そしてR1がテトラヒドロピラニル、1−メチル2−メトキシエチル、シクロペンチル、シクロプロピル、イソプロピル、シクロヘキシル、1−(2−ヒドロキシエチル)−3−ヒドロキシプロピル、1−ヒドロキシメチル−2−ヒドロキシプロピル、1−ヒドロキシメチル−3−ヒドロキシプロピル、1−メチルプロピル、2−ヒドロキシ−1−メチルエチル、1−(2−メトキシエチル)−3−メトキシプロピル、N−メタンスルホニルピペリジニル、エチル、メチル、2−ヒドロキシプロピル、ネオペンチル、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル、1−(ヒドロキシメチル)プロピル、2−メチルプロピル、シクロプロピルメチル、シクロブチル、1,2−ジメチル−2−ヒドロキシプロピル又は1−(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチルである、式Iの化合物を提供する。さらにもう一つの実施態様において、本発明は、Ar1がアリールであり、X1がOであり、R1がテトラヒドロピラニル、1−メチル−2−メトキシエチル、シクロペンチル、シクロプロピル、イソプロピル、シクロヘキシル、1−(2−ヒドロキシエチル)−3−ヒドロキシプロピル、1−ヒドロキシメチル−2−ヒドロキシプロピル、1−ヒドロキシメチル−3−ヒドロキシプロピル、1−メチルプロピル、2−ヒドロキシ−1−メチルエチル、1−(2−メトキシエチル)−3−メトキシプロピル、N−メタンスルホニルピペリジニル、エチル、メチル、2−ヒドロキシプロピル、ネオペンチル、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル、1−(ヒドロキシメチル)プロピル、2−メチルプロピル、シクロプロピルメチル、シクロブチル、1,2−ジメチル−2−ヒドロキシプロピル又は1−(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチルであり、そしてR2が2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、1−(2−ヒドロキシエチル)−3−ヒドロキシプロピル又は2−オキソプロピルである、式Iの化合物を提供する。
【0049】
一つの実施態様において、本発明は、Ar1がアリールであり、X1がOであり、R1が(R)−2−ヒドロキシ−1−メチルエチル又は(S)−2−ヒドロキシ−1−メチルエチルであり、そしてR2が2−オキソプロピル、(R)−2−ヒドロキシプロピル又は(S)−2− ヒドロキシプロピルである、式Iの化合物を提供する。
【0050】
一つの実施態様において、本発明は、Ar1がアリールであり、X1がOであり、そしてR1がヒドロキシアルキルである、式Iの化合物を提供する。もう一つの実施態様において、本発明は、Ar1がアリールであり、X1がOであり、R1がヒドロキシアルキルであり、そしてR2がヒドロキシアルキルである、式Iの化合物を提供する。さらにもう一つの実施態様において、本発明は、Ar1がアリールであり、X1がOであり、R1がヒドロキシアルキルであり、そしてR2が2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル又は1−(2−ヒドロキシエチル)−3−ヒドロキシプロピルである、式Iの化合物を提供する。
【0051】
もう一つの実施態様において、本発明は、Ar1がアリールであり、X1がOであり、
1が(R)−2−ヒドロキシ−1−メチルエチルであり、そしてR2が(R)−2−ヒドロキシプロピルであるか;
1が(R)−2−ヒドロキシ−1−メチルエチルであり、そしてR2が(S)−2−ヒドロキシプロピルであるか;
1が(S)−2−ヒドロキシ−1−メチルエチルであり、そしてR2が(R)−2−ヒドロキシプロピルであるか;又は
1が(S)−2−ヒドロキシ−1−メチルエチルであり、そしてR2が(S)−2−ヒドロキシプロピルである、式Iの化合物を提供する。
【0052】
一つの実施態様において、本発明は、R1がヒドロキシアルキルである、式Iの化合物を提供する。もう一つの実施態様において、本発明は、R1がヒドロキシアルキルであり、かつR2がヒドロキシアルキルである、式Iの化合物を提供する。さらにもう一つの実施態様において、本発明は、R1がヒドロキシアルキルであり、R2がヒドロキシアルキルであり、かつAr1がアリールである、式Iの化合物を提供する。
【0053】
一つの実施態様において、本発明は、R2がヒドロキシアルキルである、式Iの化合物を提供する。
【0054】
ある種の実施態様において、本発明の化合物は、式:
【0055】
【化5】

【0056】
[式中、
mは0〜4であり;
各R3は、アルキル、ハロゲン、アルコキシ又はハロアルキルであり;そして
1及びR2は、ここで定義されたとおりである]
の化合物であり得る。
【0057】
特定の実施態様において、mは1であり、そしてR3はハロゲンである。
【0058】
さらに他の実施態様において、mは2であり、そしてR3はハロゲンである。
【0059】
一つの実施態様において、本発明は、R1がアルコキシアルキル、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヒドロキシアルキル又はヘテロシクリルである、式IIの化合物を提供する。
【0060】
一つの実施態様において、本発明は、R1がテトラヒドロピラニル、1−メチル−2−メトキシエチル、シクロペンチル、シクロプロピル、イソプロピル、シクロヘキシル、1−(2−ヒドロキシエチル)−3−ヒドロキシプロピル、1−ヒドロキシメチル−2−ヒドロキシプロピル、1−ヒドロキシメチル−3−ヒドロキシプロピル、1−メチルプロピル、2−ヒドロキシ−1−メチルエチル、1−(2−メトキシエチル)−3−メトキシプロピル、N−メタンスルホニルピペリジニル、エチル、メチル、2−ヒドロキシプロピル、ネオペンチル、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル、1−(ヒドロキシメチル)プロピル、2−メチルプロピル、シクロプロピルメチル、シクロブチル、1,2−ジメチル−2−ヒドロキシプロピル又は1−(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチルである、式IIの化合物を提供する。もう一つの実施態様において、本発明は、R1がテトラヒドロピラニル、1−メチル−2−メトキシエチル、シクロペンチル、シクロプロピル、イソプロピル、シクロヘキシル、1−(2−ヒドロキシエチル)−3−ヒドロキシプロピル、1−ヒドロキシメチル−2−ヒドロキシプロピル、1−ヒドロキシメチル−3−ヒドロキシプロピル、1−メチルプロピル、2−ヒドロキシ−1−メチルエチル、1−(2−メトキシエチル)−3−メトキシプロピル、N−メタンスルホニルピペリジニル、エチル、メチル、2−ヒドロキシプロピル、ネオペンチル、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル、1−(ヒドロキシメチル)プロピル、2−メチルプロピル、シクロプロピルメチル、シクロブチル、1,2−ジメチル−2−ヒドロキシプロピル又は1−(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチルであり、そしてR2が2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、1−(2−ヒドロキシエチル)−3−ヒドロキシプロピル又は2−オキソプロピルである、式IIの化合物を提供する。
【0061】
一つの実施態様において、本発明は、R1が(R)−2−ヒドロキシ−1−メチルエチル又は(S)−2−ヒドロキシ−1−メチルエチルであり、そしてR2が2−オキソプロピル、(R)−2−ヒドロキシプロピル又は(S)−2−ヒドロキシプロピルである、式IIの化合物を提供する。
【0062】
一つの実施態様において、本発明は、R1及びR2がヒドロキシアルキルである、式IIの化合物を提供する。
【0063】
一つの実施態様において、本発明は、
1が(R)−2−ヒドロキシ−1−メチルエチルであり、そしてR2が(R)−2−ヒドロキシプロピルであるか;
1が(R)−2−ヒドロキシ−1−メチルエチルであり、そしてR2が(S)−2−ヒドロキシプロピルであるか;
1が(S)−2−ヒドロキシ−1−メチルエチルであり、そしてR2が(R)−2−ヒドロキシプロピルであるか;又は
1が(S)−2−ヒドロキシ−1−メチルエチルであり、そしてR2が(S)−2−ヒドロキシプロピルである、式IIの化合物を提供する。
【0064】
もう一つの実施態様において、本発明は、R1及びR2がヒドロキシアルキルであり、nが1であり、そしてR3がハロである、式IIの化合物を提供する。
【0065】
もう一つの実施態様において、本発明は、R1及びR2がヒドロキシアルキルであり、nが2であり、そしてR3がハロである、式IIの化合物を提供する。
【0066】
本発明に係る代表的な化合物を、表Iに示す。
【0067】
【表1】







【0068】
ここで、本発明の形式は、現在好ましい実施態様を構成しているが、他の多くのものも可能である。可能性のある本発明の等価な形式又は分枝の全てに言及することは意図されていない。ここで使用された用語は、制限的なものではなく単なる説明的なものであり、本発明の精神又は範囲を逸脱することなく、様々な変化がなされ得ることが理解される。
【0069】
本発明の化合物は、既に参照により組み入れられた同一出願人によるUS−2003−0171584−A1に開示された方法を含む、多様な方法により調製され得る。本発明の一つの態様において、式Iの化合物を調製するための方法は、下記スキーム1に示される。スキームはしばしば正確な構造を示しているが、有機化学の分野において標準的な方法により、反応官能基の保護及び脱保護が適切に考慮されるのであれば、本発明の方法は、式Iの類似化合物に広範囲に適用される。例えば、ヒドロキシ基は、不要な副反応を防止するために、分子内の他の部位における化学反応の間、保護される(例えば、エーテル又はエステルへ変換される)必要がある場合がある。次いで、ヒドロキシ保護基は、遊離ヒドロキシ基を与えるように除去される。同様に、アミノ基及びカルボキシル基も、不要な副反応からそれらを保護するために、(例えば、誘導体化により)保護され得る。典型的な保護基、及びそれらを付加又は切断するための方法は、Greene, Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 第3版, John Wiley and Sons, New York, 1999、及びHarrison, Harrison ら、Compendium of Synthetic Organic Methods, 第1〜8巻(John Wiley and Sons, 1971-1996)による上に組み入れられた参考文献に、十分に記載されている。
【0070】
【化6】

【0071】
ヒドロキシアルキルアミン(R2−NH2)による式Iaの化合物の処理は、式Ibの化合物を提供する。この反応は、反応条件下で不活性な溶媒、好ましくはハロゲン化脂肪族炭化水素、特にジクロロメタン、ハロゲン化されていてもよい芳香族炭化水素、又はテトラヒドロフラン(THE)のような開環もしくは環式のエーテル、ホルムアミド又は低級アルカノールの中で、好都合に実施される。好適には、反応は、約−20〜120℃、典型的には約0℃で実施される。しばしばトリアルキルアミン、好ましくはトリエチルアミンのような塩基が、反応混合物に添加される。
【0072】
式Ibの化合物の還元は、式Icのアルコールを提供する。この還元は、典型的には、当業者に周知の様式で(例えば、還元の条件下で不活性である溶媒、好ましくは、開環又は環式のエーテル、特にTHFの中で、約−20〜70℃、好ましくは約0℃〜室温(RT)で)、水素化リチウムアルミニウムを使用して実施される。
【0073】
式Icのアルコールの酸化は、式Idのカルボキシアルデヒドを提供する。酸化は、典型的には二酸化マンガンを用いて実施されるが、他の多数の方法も利用され得る(例えば、ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY, 第4版, March, John Wiley and Sons, New York(1992)を参照されたい)。利用される酸化剤によって、反応は、特定の酸化条件下で不活性である溶媒、好ましくはハロゲン化脂肪族炭化水素、特にジクロロメタン、又はハロゲン化されていてもよい芳香族炭化水素の中で、好都合に実施される。好適には、酸化は、約0〜60℃で実施される。
【0074】
塩基の存在下における式IdのカルボキシアルデヒドのエステルAr1−X1CH2−CO2R’(式中、R’はアルキル基であり、Ar1及びX1はここで定義されたものである)との反応は、式Ieの化合物を提供する。カルボン酸カリウム、カルボン酸リチウム及びカルボン酸ナトリウムのようなカルボン酸塩;炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム及び炭酸水素ナトリウムのような炭酸水素塩;第二級及び第三級アミンのようなアミン;並びに1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−2H−ピリミド[1,2−a]ピリミジンのような樹脂結合アミンを含む、比較的非求核性の塩基が使用され得る。好都合には、反応は、比較的極性であるが反応条件下で不活性である溶媒、好ましくは、ジメチルホルムアミド、N−置換ピロリジノン、特に1−メチル−2−ピロリジノンのようなアミドの中で、約25〜150℃の温度で実施される。
【0075】
酸化剤、例えば、3−クロロ過安息香酸(すなわち、MCPBA)又はオキソン(Oxone)(登録商標)のような過酸によるIeの酸化は、多様な標的化合物へと変換され得るスルホン(If)を提供する。典型的には、Ieの酸化は、酸化の条件下で不活性である溶媒の中で実施される。例えば、MCPBAが酸化剤として使用される場合、溶媒は、好ましくはハロゲン化脂肪族炭化水素、特に、クロロホルムである。オキソン(Oxone)(登録商標)が酸化剤として使用される場合、溶媒は、好ましくはメタノール、エタノール水溶液又はTHF水溶液である。反応温度は、使用される溶媒による。有機溶媒の場合、反応温度は、一般的に約−20〜50℃、好ましくは約0℃〜RTである。水が溶媒として使用される場合、反応温度は、約0〜50℃、好ましくは約0℃〜RTである。又は、酸化は、レニウム/過酸化物に基づく試薬を用いて触媒条件下で実施され得る。例えば、Lahti ら、Inorg.Chem., 2000, 39, 2164-2167; Catal.Today, 2000, 55, 317-363、及びCoperet ら、J.Org.Chem., 1998, 63, 1740-1741を参照されたい。
【0076】
化合物Ifのアミン(R1−NH2)との反応は、式Iの化合物を提供する。反応は、溶媒の存在下又は非存在下で実施され得る。好都合には、反応は、約0〜200℃、より好ましくは約RT〜150℃の温度で実施される。又は、いくつかの場合には、スルホンIfを使用するのではなく、式Iの化合物が提供されるよう、スルフィドIe又は対応するスルホキシドをアミン(R1−NH2)と直接に反応させてもよい。
【0077】
当業者であれば、上記スキームに対するある種の修飾が企図され、本発明の範囲内であることを理解するであろう。例えば、ある種の工程は、特定の反応条件と適合しない官能基のための保護基の使用を含むであろう。
【0078】
又は、式Iの化合物は、下記スキーム2に示される方法によっても調製され得る。スキーム2の反応は、特定の化合物に関して示されているが、スキーム2の方法は、本発明の全ての化合物で使用され得ることが、当業者には容易に明らかであろう。
【0079】
スキーム2に示されるように、ジエチルアセタールIIaのチオ尿素による処理は、ピリミジン化合物IIbを提供する。この反応は、ナトリウムメトキシドのような塩基の存在下で、アルコール溶媒の中で好都合に実施される。次いで、例えば、ヨウ化メチルによるチオール基のメチル化が、チオエーテルIIcを提供する。
【0080】
次いで、チオエーテルIIcは、(2,4−ジフルオロフェノキシ)酢酸エチルのようなα−アリールオキシエステルIIdにより処理され、ピリドピリミドンチオエーテルIIeを与える。この反応は、例えば、n−メチルピロリジノン又はその他の極性非プロトン溶媒の中で、炭酸ナトリウム又はその他の穏和な塩基の存在下に加熱することによって実施され得る。
【0081】
極性非プロトン溶媒条件下での、チオエーテルIIeの炭酸プロピレン又は同様の炭酸塩との反応は、N−ヒドロキシアルキルピリドピリミドンチオエーテルIIfを与える。この反応は、炭酸カリウムの存在下に加熱することにより促進され得る。
【0082】
次いで、チオエーテルIIfが酸化され、対応するピリドピリミドンスルホンIIgを提供する。この酸化は、メチレンジクロリドのような極性溶媒の中で、酢酸の存在下に過酸化水素を使用して実施され得る。又は、酸化は、上記のスキーム1の場合と同様に、オキソン(Oxone)(登録商標)又はMCPBAを使用して実施されてもよい。
【0083】
ヒドロキシル基が適切に保護されているヒドロキシアミンによる、スルホンIIgの処理は、本発明に係るピリドピリミドン化合物IIhを与える。この反応は、スキーム1に関して上に記載されたような加熱により実施される。
【0084】
【化7】

【0085】
下記スキーム3に示されるように、カルボン酸塩ではなくエポキシドにより、ピリドピリミジノンIIeをアルキル化することによっても、ピリドピリミジノンIIfが調製され得る。スキーム3の反応は、N−メチルピロリジノン又その他の極性非プロトン溶媒条件下で、過剰のプロピレンオキシドの存在下に、化合物IIeを加熱することにより実施することができる。
【0086】
【化8】

【0087】
式Iの化合物は、医薬品として、例えば、医薬調製物の形態で使用され得る。医薬調製物は、経腸的に、例えば、錠剤、被包錠、糖衣錠、硬質及び軟質ゼラチンカプセル、液剤、乳濁剤、もしくは懸濁剤の形態で経口的に、例えば鼻スプレーの形態で、経鼻的に、又は、例えば坐剤の形態で、直腸内に、投与され得る。しかし、それらは、例えば注射液の形態で非経口的に投与されてもよい。
【0088】
本発明のもう一つの態様は、式Iの化合物と、それのための医薬的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤とを含む医薬製剤を提供する。
【0089】
式Iの化合物は、医薬調製物の作製のため、医薬的に不活性な有機又は無機の担体と共に加工され得る。例えば、錠剤、被包錠、糖衣錠及び硬質ゼラチンカプセルのためのそのような担体としては、乳糖、コーンスターチ又はそれらの誘導体、タルク、ステアリン酸又はその塩等が使用され得る。軟質ゼラチンカプセルのための適切な担体は、例えば、植物油、ロウ、脂肪、半固体及び液体のポリオール等である。しかしながら、活性成分の性質によっては、軟質ゼラチンカプセルの場合、通常、担体は必要とされない。液剤及びシロップ剤の作製のための適切な担体は、例えば、水、ポリオール、ショ糖、転化糖、グルコース等である。坐剤のための適当な担体は、例えば、天然又は硬化油、ロウ、脂肪、半液体又は液体のポリオール等である。
【0090】
医薬調製物は、保存剤、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、芳香剤、浸透圧を変動させるための塩、緩衝剤、マスキング剤又は抗酸化剤も含有し得る。それらは、式Iの化合物の他に、治療的に有益な物質を含有していてもよい。
【0091】
適合性の医薬的担体材料と共に式Iの化合物を含有している薬剤も、本発明の目的であり、これらの化合物又は塩のうちの1種以上と、所望により1種以上の他の治療的に有益な物質とを、適合性の医薬担体と共に投与剤形にすることを含む、そのような薬剤の作製のための方法も本発明の目的である。
【0092】
前述のように、式Iの化合物は、治療的に活性な物質として、特に、抗炎症剤として、又は移植手術後の移植片拒絶の予防のため、本発明に従い使用され得る。投薬量は限度内で変動することができ、当然、特定の各症例において個々の要件に適合させられるであろう。一般的に、成人への投与の場合、好都合な一日投薬量は、約0.1〜100mg/kg、好ましくは約0.5〜5mg/kgであるべきである。一日投薬量は単一用量として投与されてもよいし、又は分割された用量で投与されてもよく、さらに、必要性が見出されたのであれば、前述の投薬量の上限を超えることもできる。
【0093】
最後に、特に、炎症性障害、免疫的障害、腫瘍的障害、気管支肺障害、皮膚的障害及び心臓血管障害の治療又は予防のための薬剤の作製のための、喘息、中枢神経系障害もしくは糖尿病合併症の治療における、又は移植手術後の移植片拒絶の予防のための、式Iの化合物の使用も、本発明の目的である。
【0094】
式Iの化合物は、ヒト又はその他の哺乳動物による、過剰の又は制御されないTNF又はp38キナーゼの産生により、増悪化され又は引き起こされる、そのような哺乳動物における障害又は疾患状態の治療に有用であるが、これらに限定されない。したがって、本発明は、有効なサイトカイン干渉量の式Iの化合物又はその医薬的に許容される塩もしくは互変異性体を投与することを含む、サイトカインにより媒介される疾患を治療する方法を提供する。
【0095】
式Iの化合物は、対象における炎症の治療、及び発熱の治療のための解熱薬としての使用に有用であるが、これらに限定されない。本発明の化合物は、関節リウマチ、脊椎関節症、痛風関節炎、骨関節炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、全身性ループスエリテマトーデス及び若年性関節炎、骨関節炎、痛風関節炎並びにその他の関節炎条件を含むが、これらに限定されない関節炎を治療するのに有用であろう。このような化合物は、成人型呼吸窮迫症候群、肺サルコイドーシス、喘息、ケイ肺症及び慢性肺炎症疾患を包含する肺障害又は肺炎症の治療に有用であろう。化合物は、敗血症、敗血ショック、グラム陰性敗血症、マラリア症、髄膜炎、感染又は悪性疾患からの二次性の悪液質、後天性免疫不全症候群(エイズ)からの二次性の悪液質、エイズ、ARC(エイズ関連症候群)、肺炎及びヘルペスウイルスを含むウイルス及び細菌の感染の治療にも有用である。化合物は、骨粗鬆症のような骨吸収疾患、内毒素ショック、毒素ショック症候群、再灌流傷害、宿主対移植片反応及び同種移植片拒絶を含む自己免疫疾患、アテローム性動脈硬化症、血栓症、うっ血性心不全及び心臓再灌流傷害を含む心臓血管疾患、腎臓再灌流傷害、肝臓疾患及び腎炎並びに感染による筋肉痛の治療にも有用である。
【0096】
化合物は、アルツハイマー病、インフルエンザ、多発性硬化症、癌、糖尿病、全身性ループスエリテマトーデス(SLE)、乾癬、湿疹、熱傷、皮膚炎、ケロイド形成及び瘢痕組織形成のような皮膚関連条件の治療にも有用である。それに加えて、本発明の化合物は、炎症性腸疾患、クローン病、胃炎、過敏性腸症候群及び潰瘍性大腸炎のような胃腸条件の治療において有用である。化合物は、網膜炎、網膜症、ブドウ膜炎、羞明のような眼科疾患、及び眼組織への急性傷害の治療においても有用である。化合物は、新形成を含む血管新生;転移;角膜移植片拒絶、眼新血管新生、傷害又は感染の後の新血管新生を含む網膜新血管新生、糖尿病性網膜症、水晶体後繊維増殖症および新生血管緑内障のような眼科学的条件;胃潰瘍のような潰瘍性疾患;乳児血管腫を含む血管腫、鼻咽腔の血管線維腫および骨の虚血壊死のような病理学的であるが悪性ではない条件;糖尿病性腎症および心筋症;並びに子宮内膜症のような女性の生殖系の障害の治療においても使用され得る。化合物は、さらに、シクロオキシゲナーゼ−2の産生の防止のために使用されることができ、鎮痛特性を有している。したがって、式Iの化合物は、疼痛の治療に有用である。
【0097】
式Iの化合物のその他の使用には、HCV、重度の喘息、乾癬、慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び抗TNF化合物により治療され得るその他の疾患の治療が包含される。
【0098】
ヒト治療に有用であるだけでなく、これらの化合物は、哺乳類、齧歯類等を含むペット、外来動物及び家畜の獣医学的治療にも有用である。より好ましい動物には、ウマ、イヌ及びネコが包含される。
【0099】
本発明の化合物は、他の従来の抗炎症剤の代わりに、例えば、ステロイド、シクロオキシゲナーゼ2阻害剤、NSAID、DMARDS、免疫抑制剤、5−リポオキシゲナーゼ阻害剤、LTB4アンタゴニスト及びLTA4ヒドロラーゼ阻害剤との併用療法において、部分的に又は完全に使用されてもよい。
【0100】
ここで使用されるように、「TNFにより媒介される障害」とは、TNF自体の調節により、又はIL−1、IL−6又はIL−8のようなもう一つのモノカインの放出をTNFが引き起こすことにより、TNFが役割を果たしている任意の全ての障害及び疾患状態をさすが、これに限定されない。したがって、例えば、IL−1が主要成分であり、その産生又は作用がTNFに応答して増悪化又は分泌される疾患状態は、TNFにより媒介される障害と見なされるであろう。
【0101】
ここで使用されるように、「p38により媒介される障害」とは、p38自体の調節により、又はIL−1、IL−6又はIL−8のような、もう一つの因子の放出をp38が引き起こすことにより、p38が役割を果たしている任意の全ての障害及び疾患状態をさすが、これに限定されない。したがって、例えば、IL−1が主要成分であり、その産生又は作用がp38に応答して増悪化又は分泌される疾患状態は、p38により媒介される障害と見なされる。
【0102】
TNF−βは、TNF−α(カケクチンとしても既知)と密接な構造的相同性を有しており、各々が類似の生物学的応答を誘導し、同一の細胞受容体に結合するため、TNF−α及びTNF−β両方の合成が、本発明の化合物によって阻害され、したがって、他に特記しない限り、ここで集合的に「TNF」と呼ばれる。
【0103】
実施例
本発明のさらなる目的、利点及び新規の特性は、制限的なものではない以下の例示的な実施例を検討することにより、当業者に明らかになるであろう。
【0104】
実施例1:6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−2−((S)−(+)−2−ヒドロキシ−1−メチルエチルアミノ)−8−((S)−2−ヒドロキシプロピル)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(化合物16)の調製
工程A:4−((S)−2−ヒドロキシプロピルアミノ)−2−メチルスルファニルピリミジン−5−カルボン酸エチルの調製
4−クロロ−2−メチルチオピリミジン−5−カルボン酸エチル(Aldrich、65g、280mmol)のTHF溶液500mLに、0℃で、トリエチルアミン(140mL 1000mmol)及び(S)−1−アミノ−2−プロパノール(21g、280mmol)を添加した。4時間攪拌した後,水(200mL)を添加し、相を分離した。水相をジクロロメタンで抽出した。有機層を濃縮し、その残渣をジクロロメタンに溶解させ、塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾過し、その濾液から揮発分を減圧下で蒸発させ、4−(S)−2−ヒドロキシプロピルアミノ)−2−メチルスルファニルピリミジン−5−カルボン酸エチル77gを、白色固体として得た。
【0105】
工程B:4−((S)−2−ヒドロキシプロピルアミノ)−2−メチルスルファニルピリミジン−5−メタノールの調製
水素化リチウムアルミニウム(5.7g、150mmol)を無水THF(500mL)中で5℃で攪拌し、4−((S)−2−ヒドロキシプロピルアミノ)−2−メチルスルファニルピリミジン−5−カルボン酸エチル(27g、100mmol)の無水THF溶液(450mL)を滴下した。その反応混合物を15分間攪拌し、次いで、水(18mL)を注意しながら滴下した。その反応物を30分間攪拌し、次いで、水酸化ナトリウム水溶液(15%、8.5mL)、続いて水(25.5mL)を滴下した。得られた懸濁液を、RTで17時間攪拌し、次いで濾過した。濾過残渣をイソプロパノール(2×100mL)で洗浄し、合わせた濾液と洗浄液から揮発分を減圧下で蒸発させ、4−((S)−2−ヒドロキシプロピルアミノ)−2−メチルスルファニルピリミジン−5−メタノール25.8gを得た。
【0106】
工程C:4−((S)−2−ヒドロキシプロピルアミノ)−2−メチルスルファニルピリミジン−5−カルバルデヒドの調製
4−((S)−2−ヒドロキシプロピルアミノ)−2−メチルスルファニルピリミジン−5−メタノール(26g、10mmol)及びジクロロメタン1Lを、攪拌しながら合わせ、二酸化マンガン(102g、1mol)により処理した。得られた懸濁液を24時間攪拌し、次いで、セライトで濾過した。濾過残渣をジクロロメタン(100mL)で洗浄し、合わせた濾液及び洗浄液から揮発分を減圧下で蒸発させ、4−((S)−2−ヒドロキシプロピルアミノ)−2−メチルスルファニルピリミジン−5−カルバルデヒド16.5gを、白色固体として得た。
【0107】
スルホン
工程A:6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−8−((S)−2−ヒドロキシプロピル)−2−メチルスルファニル−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンの調製
無水ジメチルホルムアミド(300mL)中の4−((S)−2−ヒドロキシプロピルアミノ)−2−メチルスルファニルピリミジン−5−カルバルデヒド(16.5g、73mmol)と(2,4−ジフルオロフェノキシ)酢酸メチルエステル(29.4g、145mmol)の混合物に、炭酸カリウム(30g、218mmol)を添加した。その反応混合物を60℃に加熱し、18時間後、反応混合物を冷却し、ジメチルホルムアミドを真空下で蒸留除去した。粗残渣を水(300mL)に懸濁させ、ジクロロメタンで抽出し、塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。ろ過し、真空下で濃縮し、粗物質41gを得て、それを1%メタノールを含むジクロロメタンで溶離させるシリカゲルカラム上でのクロマトグラフィーに供し、6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−8−((S)−2−ヒドロキシプロピル)−2−メチルスルファニル−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(質量スペクトルM+1=274)30gを得た。
【0108】
工程B:6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−8−((S)−2−ヒドロキシプロピル)−2−メタンスルホニル−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンの調製
6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−8−((S)−2−ヒドロキシプロピル)−2−メチルスルファニル−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(29.7g、108mmol)のジクロロメタン(500mL)溶液に、5℃で、m−クロロ過安息香酸(55g、240mmol)を数回に分けて添加し、24時間攪拌した。反応混合物を、亜硫酸ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾過し、揮発分を蒸発させて、6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−8−((S)−2−ヒドロキシプロピル)−2−メタンスルホニル−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(質量スペクトルM+1=412)24gを得た。
【0109】
工程C:6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−2−((S)−2−ヒドロキシ−1−メチルエチルアミノ)−8−((S)−2−ヒドロキシプロピル)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンの調製
6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−8−((S)−2−ヒドロキシプロピル)−2−メタンスルホニル−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(400mg、1mmol)のTHF(5mL)溶液に、(S)−2−アミノ−1−プロパノール(0.38mL、5mmol)を添加し、RTで一夜攪拌した。真空下で濃縮し、2%メタノールを含むジクロロメタンで溶離させるシリカゲルクロマトグラフィーに供し、そして塩酸塩に変換して、6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−2−((S)−(+)−2−ヒドロキシ−1−メチルエチルアミノ)−8−((S)−2−ヒドロキシプロピル)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(質量スペクトルM+1=407、MP=175.1〜179.1℃)320mgを得た。
【0110】
実施例2:6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−2−(R)−(−)−2−ヒドロキシ−1−メチルエチルアミノ)−8−((S)−2−ヒドロキシプロピル)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(化合物17)の調製
6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−8−((S)−2−ヒドロキシプロピル)−2−メタンスルホニル−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(400mg、1mmol)のTHF(5mL)溶液に、(R)−2−アミノ−1−プロパノール(0.38mL、5mmol)を添加し、RTで一夜攪拌した。真空下で濃縮し、2%メタノールを含むジクロロメタンで溶離させるシリカゲルクロマトグラフィーに供し、塩酸塩に変換し、6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−2−((R)−2−ヒドロキシ−1−メチルエチルアミノ)−8−((S)−2−ヒドロキシプロピル)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(質量スペクトルM+1=407、MP=174.9〜178.1℃)370mgを得た。
【0111】
実施例3:6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチルアミノ)−8−((S)−2−ヒドロキシプロピル)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(化合物36)の調製
6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−8−((S)−2−ヒドロキシプロピル)−2−メタンスルホニル−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(717mg、1.74mmol)のTHF(10mL)溶液に、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(1.55g、17.43mmol)を添加し、RTで一夜攪拌し、真空下で濃縮し、4%メタノールを含むジクロロメタンで溶離させるシリカゲルクロマトグラフィーに供し、塩酸塩に変換した後、6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチルアミノ)−8−((S)−2−ヒドロキシプロピル)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン291mgを、白色固体として得た(質量スペクトルM+1=421、MP=187.4〜189.9℃)。
【0112】
実施例4:6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−2−((S)−2−ヒドロキシ−1−メチルエチルアミノ)−8−((R)−2−ヒドロキシプロピル)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(化合物41)の調製
工程A:4−((R)−2−ヒドロキシプロピルアミノ)−2−メチルスルファニルピリミジン−5−カルボン酸エチルの調製
4−クロロ−2−メチルチオピリミジン−5−カルボン酸エチル(Aldrich、62.6g、269mmol)のTHF溶液1Lに、0℃で、トリエチルアミン(135mL 1000mmol)及び(R)−1−アミノ−2−プロパノール(30g、400mmol)を添加した。4時間攪拌した後、減圧下で揮発分を蒸発させ、4−(R)−2−ヒドロキシプロピルアミノ)−2−メチルスルファニルピリミジン−5−カルボン酸エチル66.6gを、白色固体として得た。
【0113】
工程B:4−((R)−2−ヒドロキシプロピルアミノ)−2−メチルスルファニルピリミジン−5−メタノールの調製
水素化リチウムアルミニウム(14g、368mmol)を、無水THF(500mL)中で5℃で攪拌し、4−(R)−2−ヒドロキシプロピルアミノ)−2−メチルスルファニルピリミジン−5−カルボン酸エチル(66.6g、246mmol)を含む無水THF(150mL)の溶液を滴下した。その反応混合物を15分間攪拌し、次いで、水(18mL)を注意しながら滴下した。その反応物を30分間攪拌し、次いで、水酸化ナトリウム水溶液(15%、8.5mL)、続いて水(25.5mL)を滴下した。得られた懸濁液をRTで17時間攪拌し、次いで濾過した。濾過残渣をイソプロパノール(2×100mL)で洗浄し、合わせた濾液と洗浄液から揮発分を減圧下で蒸発させ、4−(R)−2−ヒドロキシプロピルアミノ)−2−メチルスルファニルピリミジン−5−メタノール58.6gを得た。
【0114】
工程C:4−((R)−2−ヒドロキシプロピルアミノ)−2−メチルスルファニルピリミジン−5−カルバルデヒドの調製
4−(R)−2−ヒドロキシプロピルアミノ)−2−メチルスルファニルピリミジン−5−メタノール(58.6g、256mmol)及びジクロロメタン1Lを、攪拌しながら合わせ、二酸化マンガン(222g、2.560mol)により処理した。得られた懸濁液を24時間攪拌し、次いで、セライトで濾過した。濾過残渣をジクロロメタン(100mL)で洗浄し、合わせた濾液と洗浄液から揮発分を減圧下で蒸発させ、4−((R)−2−ヒドロキシプロピルアミノ)−2−メチルスルファニルピリミジン−5−カルバルデヒド34gを、白色固体として得た。
【0115】
スルホン
工程A:6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−8−((R)−2−ヒドロキシプロピル)−2−メチルスルファニル−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンの調製
無水ジメチルホルムアミド(300mL)中の4−((R)−2−ヒドロキシプロピルアミノ)−2−メチルスルファニルピリミジン−5−カルバルデヒド(17.7g、78mmol)と(2,4−ジフルオロフェノキシ)酢酸メチルエステル(31.6g、156mmol)の混合物に、炭酸カリウム(30g、218mmol)を添加した。その反応混合物を60℃に加熱し、18時間後、反応混合物を冷却し、DMFを蒸留除去した。残渣を水(300mL)に懸濁させ、ジクロロメタンで抽出し、塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。ろ過し、真空下で濃縮し、粗物質29.5gを得て、それを1%メタノールを含むジクロロメタンで溶離させるシリカゲルカラム上でのクロマトグラフィーに供し、6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−8−((R)−2−ヒドロキシプロピル)−2−メチルスルファニル−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン7−オン(質量スペクトルM+1=274)17.5gを得た。
【0116】
工程B:6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−8−((R)−2−ヒドロキシプロピル)−2−メタンスルホニル−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンの調製
6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−8−((R)−2−ヒドロキシプロピル)−2−メチルスルファニル−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(9.38g、24.7mmol)のジクロロメタン(200mL)溶液に、5℃で、m−クロロ過安息香酸(12.5g、54mmol)を数回に分けて添加し、24時間攪拌した。その反応混合物を、亜硫酸ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。ろ過し、揮発分を蒸発させ、6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−8−((R)−2−ヒドロキシプロピル)−2−メタンスルホニル−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(質量スペクトルM+1=412)10.7gを得た。
【0117】
工程C:6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−2−((S)−2−ヒドロキシ−1−メチルエチルアミノ)−8−((R)−2−ヒドロキシプロピル)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンの調製
6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−8−((R)−2−ヒドロキシプロピル)−2−メタンスルホニル−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(615mg、1.5mmol)のTHF(5mL)溶液に、(S)−2−アミノ−1−プロパノール(1.2mL、15mmol)を添加し、RTで一夜攪拌した。真空下で濃縮し、2%メタノールを含むジクロロメタンで溶離させるシリカゲルクロマトグラフィーに供し、そして塩酸塩に変換して、6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−2−((S)−2−ヒドロキシ−1−メチルエチルアミノ)−8−((R)−2−ヒドロキシプロピル)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(質量スペクトルM+1=407、MP=186.0〜189.1℃)295mgを得た。
【0118】
実施例5:6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−2−(R)−2−ヒドロキシ−1−メチルエチルアミノ)−8−((R)−2−ヒドロキシプロピル)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(化合物48)の調製
6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−8−((R)−2−ヒドロキシプロピル)−2メタンスルホニル−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(400mg、1mmol)のTHF(5mL)溶液に、(R)−2−アミノ−1−プロパノール(0.38mL、5mmol)を添加し、RTで一夜攪拌した。真空下で濃縮し、2%メタノールを含むジクロロメタンで溶離させるシリカゲルクロマトグラフィーに供し、そして塩酸塩に変換して、6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−2−((R)−2−ヒドロキシ−1−メチルエチルアミノ)−8−((R)−2−ヒドロキシプロピル)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(質量スペクトルM+1=407、MP=181.5〜184.4℃)350mgを得た。
【0119】
実施例6:6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチルアミノ)−8−((R)−2−ヒドロキシプロピル)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(化合物31)の調製
6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−8−((R)−2−ヒドロキシプロピル)−2−メタンスルホニル−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(886mg、2.15mmol)と2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(5.15g、58mmol)の混合物を、窒素下で60℃に2時間加熱した。冷却し、2%メタノールを含むジクロロメタンで溶離させるシリカゲルクロマトグラフィーに供し、塩酸塩に変換した後、6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチルアミノ)−8−((R)−2−ヒドロキシプロピル)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(質量スペクトルM+1=421、MP=182.0〜183.9℃)385mgを得た。
【0120】
実施例7:6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−2−((S)−2−ヒドロキシ−1−メチルエチルアミノ)−8−(2−オキソプロピル)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(化合物45)の調製
工程a:6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−2−メタンスルホニル−8−(2−オキソプロピル)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンの調製
塩化オキサリル(1.05mL、12mmol)のジクロロメタン(100mL)溶液に、−60℃で、ジメチルスルホキシド(1.7mL、24mmol)及び6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−8−(2−ヒドロキシプロピル)−2−メタンスルホニル−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(4.12g、10mmol)を添加した。この混合物にトリエチルアミン(7mL、50mmol)を添加し、一夜攪拌した。水(100mL)を添加し、ジクロロメタンで抽出し、塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。ろ液を真空下で濃縮し、2%メタノールを含むジクロロメタンで溶離させるシリカゲルクロマトグラフィーに供し、6−(2,4−フルオロフェノキシ)−2−メタンスルホニル−8−(2−オキソプロピル)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(質量スペクトルM+1=410)1.0gを得た。
【0121】
工程b:6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−2−((S)−2−ヒドロキシ−1−メチルエチルアミノ)−8−(2−オキソプロピル)−8H−ピリド[2,3−]ピリミジン−7−オン(化合物45)の調製
6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−2−メタンスルホニル−8−(2−オキソプロピル)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(412mg、1mmol)のTHF懸濁液に、RTで(S)−2−アミノ−1−プロパノール(0.39mL、5mmol)を添加し、一夜攪拌した。真空下で濃縮し、2%メタノールを含むジクロロメタンで溶離させるシリカゲルクロマトグラフィーに供し、塩酸塩に変換した後、6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−2−((S)−2−ヒドロキシ−1−メチルエチルアミノ)−8−(2−オキソプロピル)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(質量スペクトルM+1=405、MP=207.9〜214.6℃)330mgを得た。
【0122】
実施例8:6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−2−((R)−2−ヒドロキシ−1−メチルエチルアミノ)−8−(2−オキソプロピル)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(化合物49)の調製
6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−2−メタンスルホニル−8−(2−オキソプロピル)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(417mg、1mmol)のTHF(10mL)懸濁液に、RTで(R)−(−)−2−アミノ−1−プロパノール(0.40mL、5mmol)を添加し、一夜攪拌した。真空下で濃縮し、22%メタノールを含むジクロロメタンで溶離させるシリカゲルクロマトグラフィーに供し、塩酸塩に変換した後、6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−2−((R)−2−ヒドロキシ−1−メチルエチルアミノ)−8−(2−オキソプロピル)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(質量スペクトルM+1=405、MP=207.8〜216.4℃)330mgを得た。
【0123】
実施例9:インビトロアッセイ
Ahn ら、J.Biol.Chem.266: 4220-4227(1991)に記載された方法をわずかに改良したものを使用して、p38キナーゼによるγ−33P−ATPからのミエリン塩基性タンパク質(MBP)へのγ−リン酸の転移を測定することにより、本発明の化合物のp38MAPキナーゼ阻害活性を決定した。組換えp38 MAPキナーゼのリン酸化型を大腸菌においてSEK−1及びMEKKと共発現させ(Khokhlatchev ら、J.Biol.Chem.272: 11057-11062(1997)を参照されたい)、次いで、ニッケルカラムを使用したアフィニティクロマトグラフィーにより精製した。リン酸化されたp38 MAPキナーゼをキナーゼ緩衝液(20mM 3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸、pH7.2、25mM β−グリセロールリン酸、5mM エチレングリコールビス(β−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸、1mM オルトバナジン酸ナトリウム、1mM ジチオトレイトール、40mM 塩化マグネシウム)で希釈した。DMSOに溶解したテスト化合物又はDMSOのみ(対照)を添加し、試料を30℃で10分間インキュベートした。MBP及びγ−33P−ATPを含有している基質カクテルの添加により、キナーゼ反応を開始させた。30℃でさらに20分間インキュベートした後、0.75%リン酸を添加することにより反応を終了させた。次いで、リン酸化されたMBPをホスホセルロースメンブレン(Millipore, Bedford, MA)を使用して、残りのγ−33P−ATPから分離し、シンチレーションカウンター(Packard, Meriden, CT)を使用して定量した。上記のアッセイを使用したところ、本発明の化合物は、p38 MAPキナーゼの阻害剤であることが示された。本発明の化合物は、0.001未満〜0.1μMの範囲のp38 IC50値を示した。例えば、6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−8−(3−ヒドロキシプロピル)−2−(テトラヒドロピラン−4−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンは、上記のアッセイを使用して、0.0008μMというIC50値を示した。
【0124】
実施例10:インビトロアッセイ
この実施例は、本発明の化合物を評価するための、ヒト全血(HWB)インビトロアッセイ(すなわち、p38 MAPキナーゼの阻害を介した未希釈ヒト全血におけるLPSにより誘導されるIL−1β産生)、及び対応するアルキル類似体の比較結果を説明する。ヒト全血のLPS(リポ多糖)処理は、IL−1β特異ELISAにより測定できるIL−1β(インターロイキン−1β)産生を誘導する。ヒト全血を、示された濃度の本発明の化合物を含む0.5%DMSO(最終濃度)と共に37℃で30分間予備インキュベートした。試料を0.5μg/mLのリポ多糖(LPS、Sigma製)(最終濃度)により18時間刺激して、IL−1βの合成及び分泌を誘導し、それをIL−1β ELISAを使用して測定した。
【0125】
化合物溶液
DMSO(Sigma製)中6mMのストック溶液を、化合物を含むDMSOをDMSO 449μLに溶解させることにより調製した。6mMのストック溶液から、6回のDMSOにおける連続半対数(half−log)段階希釈を実施し、以下の濃度を得た:1.9mM、600、190、60、19及び6μM。チューブを1〜7と標識した。チューブ1には6mMストック溶液を入れ、チューブ2〜7の各々にはDMSO 216μLを入れた。チューブ1から、100μLをチューブ2に移した。チューブ2をボルテックス処理し、100μLをチューブ2からチューブ3へ移した。この過程をチューブ7まで繰り返した。
【0126】
上記のようにして調製された化合物を含むDMSOの逐次希釈物を使用して、さらに1/20(濃度)の希釈(RPMI 1640培地(Gibco−BRL)190μLへ10μL)を実施し、30、10、2.9、1、0.3、0.1、0.03μMの最終化合物濃度曲線を得た。
【0127】
LPS溶液
LPSの再生:LPSの10mgバイアルに、1×リン酸緩衝生理食塩水(すなわち、1×PBS、Gibco−BRL製)10mLを添加し、よく混合し、50mLチューブに移した。さらに10mLをLPSバイアルに添加した後、濯ぎ、この濯ぎ液を50mLチューブに添加し、よく混合した。溶液を濾過し、滅菌し、所望の量に等分した(4プレートにはアリコート100μLで十分である)。これは、0.5mg/mLストックを与え、それをプロトコルにおいて使用するため1/100に希釈した。使用直前に、LPSストックを100倍希釈した(RPMI 10mLに100μL)。
【0128】
アッセイ手順
アッセイは、96穴U底プレート(Costar製)において実施した。化合物の非存在下でLPSを含むプラス対照及び含まないマイナス対照、二つの対照を各アッセイに含めた。全ての試料及び対照を3個の一組で実施した。ヒト血液(少なくとも14日間薬剤を受容しておらず、48時間アルコールを摂取していないドナーから)を、ヘパリン(19単位/ml)を含有するシリコン化バキュテイナーに収集した。5%DMSOを含むRPMI1640のアリコート25μLを対照ウェル(LPSプラス対照及びマイナス対照)に添加した。上記のように調製した各化合物濃度のアリコート25μLを、指定されたウェルへ分配した。ヒト全血200μLを各ウェルに添加し、37℃及び5%CO2で30分間インキュベートした。希釈されたLPS 25μLを、LPSマイナス対照ウェルを除き、全てのウェルに分配した。RPMI 25μLを、LPSマイナス対照ウェルに添加した。プレートを37℃と5%CO2で18時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを400×gで遠心分離してペレットセル化し、ペレットを乱さないよう注意しながら血漿を収集した。血漿を新たな96穴ポリプロピレンプレートに移した。直ちにELISAを実施し、残りの血漿は、再試験が必要とされる場合、−20℃で保存した。
【0129】
ELISAプロトコル
IL−1βELISAは、2種の抗IL−1βモノクローナル抗体:ILβ1−H6(1mg/mL)及びILβ1−H67(2.71mg/mL)を使用した。
【0130】
材料
組換えヒトIL−1β(rhuIL−1β、2.5g/mL)は、R&Dシステムズ(R&D Systems)より得た。リン酸緩衝生理食塩水−ダルベッコ(1×PBS)は、Gibco−BRLより得た。リン酸緩衝生理食塩水(10×PBS)は、Gibco−BRLより得た。カルシウムとマグネシウムを含まないダルベッコ修飾、pH7.2。未開封のボトルをRTで保存した。ELISAインキュベーションバッファー(EIB):−0.1%BSA/PBS;1gウシ血清アルブミン(BSA);10×PBS 100mL;脱イオン水を1リットルまで添加し、4℃で保存した。ELISA洗浄バッファー(EWB):0.05%Tween/PBS;Tween20 0.5mL;10×PBS 100mL;脱イオン水を1リットルまで添加し、4℃で保存した。ブロッキングバッファー−3%無脂肪粉乳/PBS:無脂肪粉乳15g(Carnation);10×PBS 50mL;蒸留水を500mLまで添加し、4℃で保存した。ペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジン(Pharmingen製):EWBバッファーでおよそ1/3000に希釈した(10μL/30mL)。0.1Mクエン酸バッファー、pH4.5:クエン酸(MW192.1、Sigma製)9.6g;クエン酸三ナトリウム(MW294.1、Sigma製)14.7g;NaOHを使用してpH4.5に調整し、蒸留水を500mLまで添加した。4℃で保存する。OPD基質溶液:1mg/mL OPD/0.03%H22/クエン酸バッファー;o−フェニレンジアミン(OPD、Zymed製)1錠;30%過酸化水素12μL;0.1Mクエン酸バッファー12mL。
【0131】
標準の調整(プレート上に置く直前に新鮮に調製する)
rhuIL−1β(2.5μg/mL)のストック溶液を、標準曲線を構築するために使用した。曲線のための濃度は:12500、4167、1389、463、154、51及び17pg/mLである。チューブを1〜8と標識した。rhuIL−1βストック溶液をチューブ1で1/500に希釈した(ストック3μL+EWB 597μL)。EWB 400μLをチューブ2〜8に分配した。チューブ1から200μLをチューブ2に移し、ボルテックス処理した。200μLをチューブ2からチューブ3に移した。この過程をチューブ7まで繰り返した。チューブ8をELISAアッセイブランクとして使用した。血漿試料をEWBで1/4に希釈した(血漿20μL+EWB 60μL)。
【0132】
抗体溶液の調製
抗体ILβ1−H6を1×PBSで1/100に希釈し、10μg/mL溶液を作成した。1プレートにつき50μLの抗体をPBS 5mLで希釈した。抗体ILβ1−H67はEWBで100倍希釈し、2μg/mL溶液を作成した。1プレート当たり3.69μLの抗体をEIB 5mLで希釈した。
【0133】
手順
96穴EIAプレートを1ウェル当たり50μLの抗体ILβ1−H6(10μg/mL)でコーティングし、気泡がなくなるまで穏和に振とうし、プレートシーラーで密封し、4℃の加湿チャンバー内で一夜インキュベートした。プレートを空にし、リントフリーペーパータオル上で乾燥させた。1ウェル当たりブロッキングバッファー175μLで、RTで1〜2時間、非特異的結合部位をブロッキングした。プレートをEWBで1回洗浄した(すなわち、プレートを空にし、EWB 150μLを充填し、空にし、リントフリーペーパータオル上で乾燥させた)。3個で一組の標準のアリコート25μLを、適切なウェルに添加した。(各プレートがそれぞれの標準曲線を有する。)希釈した血漿25μLを、適切なウェルに添加した。全てのウェルにビオチン化モノクローナル抗体ILβ1−H67(2μg/mL)25μLを添加した。プレートをプレートシーラーで密封し、穏和に振とうしながらRTで2時間(又は、4℃で一夜)インキュベートした(Bellco Mini-Orbital Shaker、設定3.5)。インキュベーション後、プレートを(前記のように)EWBで3回洗浄した。EIBで1/3000に希釈したペルオキシダーゼ−ストレプトアビジン50μLを、各ウェルに添加した。プレートをプレートシーラーで密封し、穏和に振とうしながらRTで1時間インキュベートし、前記のように3回洗浄した。OPD錠をクエン酸バッファーに溶解させ(クエン酸バッファー12mLに1錠)、30%H22 12μLをOPD/クエン酸バッファーに添加した。OPD基質溶液50μLを各ウェルに分配し、発色のためプレートを暗所でRTで30分間インキュベートした。プレートを二重の波長で読み取った:すなわち、サンプルフィルター=450nm/リファレンスフィルター=650nm。標準を含有している試料からの値を、未知の試料の濃度を決定するために使用される標準曲線(吸光度対濃度)をグラフ化するために使用した。
【0134】
統計法
濃度−阻害曲線が50%の片側の点を含んでいない場合には、IC50は、>最高濃度又は<最低濃度として報告された。そうでない場合、濃度の数が≧5であった場合には、IC50を推定するために、データを以下の2−パラメータモデルに当てはめた。
【0135】
【数1】

【0136】
このモデルは、最小及び最大の応答がそれぞれ0%及び100%であったことを仮定しており、IC50及び傾きパラメータを推定する。非直線回帰が不可能である場合、又は試験された濃度の数が<5であった場合には、50%に隣接する2点を使用してIC50を推定するため、直線回帰が使用された。IC50を推定するため直線回帰が使用された場合、これはアッセイノートに出力され、IC50標準偏差及び傾きパラメータの存在(非直線回帰)又は欠如(直線回帰)により理解され得る。
【0137】
上記のアッセイを使用したところ、本発明の化合物は、前述のようなIL−1β産生を媒介するp38 MAPキナーゼの阻害を介して、未希釈ヒト全血におけるLPSにより誘導されるIL−1β産生を阻害することが示された。本発明の化合物は、<0.001〜0.30μMの範囲の、未希釈ヒト全血におけるLPSにより誘導されるIL−1β産生に対するIC50値を示した。例えば、6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−8−((R)−2−ヒドロキシプロピル)−2−(テトラヒドロピラン−4−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンは、0.001μMというIC50を示した。
【0138】
驚くべきことに、式(I)のR2がヒドロキシアルキル又はアルコキシアルキルである本発明の化合物を使用したLPSにより誘導されるIL−1β産生の阻害は、R2がメチル又はその他のアルキルである対応する化合物からの結果より実質的に大きかった。この予想外の本発明の利点は、(式Iの)R2がヒドロキシアルキルである代表的な本発明の化合物が、R2がメチルである対応する類似体と比較される表2に、より十分に例示される。表1の最初又は一番左のカラムの化合物は、ここの実施例に記載されたようにして調整され、表1にも示されている。表2の二番目又は中央のカラムの化合物は、WO02/064594に報告された手順に従い調製された。三番目又は一番右のカラムの値は、以下の比に相当する:
(R2=ヒドロキシアルキルの場合のIL−1β産生のIC50阻害)/(R2=メチルの場合のIL−1β産生のIC50阻害)
【0139】
表2から明らかなように、R2がヒドロキシアルキルである化合物は、対応するメチル類似体(R2=メチル)より、2.7〜>100倍大きい、すなわち、270〜10,000%の、未希釈ヒト全血におけるLPSにより誘導されるIL−1β産生の阻害を与える。
【0140】
【表2】







【0141】
以上の本発明の考察は、例示及び説明の目的のため提示された。以上は、ここに開示された一つ又は複数の形式に本発明を制限するためのものではない。本発明の説明は、一つ又は複数の実施態様、並びにある種の改変及び改良を含んでいるが、その他の改変及び改良も、本発明の範囲内であり、例えば、本開示を理解した後は、当業者の技術及び知識の範囲内であろう。特許請求の範囲に記載されたものに対して代替的な、交換可能な、及び/又は等価な構造、機能、範囲又は工程を、そのような代替的な、交換可能な、及び/又は等価な構造、機能、範囲又は工程がここに開示されていても又は開示されていなくても含む、許容される範囲で別の実施態様を含む権利を得ることを意図するものであって、特許可能な事項を公共に献ずることを意図してはいない。ここで引用された全ての出版物、特許及び特許出願が、参照により、全ての目的のため完全にここに組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】


[式中、
1は、O、C=O又はS(O)(ここで、nは0、1又は2である)であり;
Ar1は、アリール又はヘテロアリールであり;
1は、アルコキシアルキル、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、ヒドロキシアルキル又はヒドロキシシクロアルキルであり;そして
2は、ヒドロキシアルキル、オキソアルキル又はヒドロキシシクロアルキルである]
の化合物。
【請求項2】
式II:
【化2】


[式中、
mは、0〜4であり;
各R3は、アルキル、ハロゲン、アルコキシ又はハロアルキルであり;そして
1及びR2は、請求項1において定義されたとおりである]
を有する請求項1記載の式Iの化合物。
【請求項3】
治療的に活性な物質として使用するための、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
式If:
【化3】


[式中、Rは、C1〜C6アルキルであり、X1、Ar1及びR2は、請求項1において定義された意味を有する]の化合物を、式R1−NH2のアミンと反応させることを含む、請求項1記載の式Iの化合物を調製するための方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法に従って調製された、請求項1記載の式Iの化合物。
【請求項6】
p38キナーゼにより媒介される障害の管理又は予防のための薬剤を製造するための、請求項1記載の式Iの化合物の使用。
【請求項7】
医薬的に許容される賦形剤と請求項1記載の式Iの化合物とを含む組成物。
【請求項8】
治療的に有効な量の請求項1の化合物を患者に投与することを含む、p38キナーゼにより媒介される障害を治療するための方法。
【請求項9】
p38キナーゼにより媒介される障害が、関節炎、クローン病、過敏性腸症候群、成人型呼吸窮迫症候群、慢性閉塞性肺疾患又はアルツハイマー病である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
ここに記載されたような発明。

【公表番号】特表2007−510686(P2007−510686A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538744(P2006−538744)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012475
【国際公開番号】WO2005/047284
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】