説明

ヒドロラーゼを用いるcis−配置3−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸誘導体のエナンチオマー体を製造する方法

本発明は、式(Ia)及び(Ib)のキラル性であり、且つ、非ラセミ体のcis−配置シクロヘキサノール又はシクロヘキサノール誘導体、ここで、基は明細書に記載された意味を有する、を、酵素によるラセミ体分割により製造する方法に関する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I):
【化1】

の、キラル性で、且つ、非ラセミ体の、cis−配置シクロヘキサノール又はシクロヘキサノール誘導体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
式(I)のcis−配置ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸誘導体(I)は、独国特許出願第10308355.3号又は国際公開特許第2004/076426号に記載された医薬として活性な化合物の中心的な構成ブロック又は直接の前駆体であり、それらは、脂質及び/又は炭水化物代謝の治療的な調節を可能にし、従って、II型糖尿病及び動脈硬化症の予防及び/又は治療に好適である。
【0003】
上記の特許出願に記載された、非ラセミ体のシス−配置シクロヘキサノールの構成ブロック又は誘導体の合成は、工業的方法として実用に不適であり、即ち、異性体の分離、例えば、キラル相上でのクロマトグラフィーによるエナンチオマーの分離(ラセミ体分割)は、あまりにも複雑で、そしてあまりにも高価である。更に、エナンチオマーのクロマトグラフィーによる分離を行うには、ラセミ体化合物が良好な化学的純度を有していることが必要であり、多くの場合、上流にクロマトグラフィーを追加することによってのみ、達成可能である。
【0004】
加えて、多くの反応を工業的スケールで行うことは出来ない。これらには、特に、DMF中でのNaHによるアルキル化が含まれ、これは、公知の様に、高い安全上のリスクを有する (C&EN, September 13, 1982, 5)。
【0005】
文献で公知の光学的に純粋な、cis−配置3−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸誘導体を合成する方法は、上記の医薬として活性な化合物の中心的な構成ブロックを比較的大量に製造するためには不適当であり、又は、工業的方法を開発するためには不適当である。何故なら、多くの工程及び/又は収率、精製のための、特にcis/trans分離のための費用、そして、多くの場合、その光学的純度は受け入れられない。
【0006】
例えば、光学的に純粋なcis−配置3−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸誘導体を製造するための文献に記載されたある種の合成方法は、m−ヒドロキシ安息香酸又はその誘導体の水素化又は非芳香族化と、それに続く塩の生成による古典的なラセミ体分割を基にしている。エタノール中、PtO2の存在下で、m−ヒドロキシ安息香酸を水素化する場合、ラセミ体のcis−3−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸を化学的に純粋に、収率13.8%で得るためには、6回の結晶化が必要であると記載されている (D. S. Noyce, D. B. Denney, J. Am. Chem. Soc. 1952, 74, 5912; cf. J.A.Hirsch, V. C. Truc, J.Org. Chem. 1986, 51, 2218)。Noyce及びDenneyは、又、cis−3−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸のラセミ体分割をキニン三水和物を用いて行うことを述べている。キニン三水和物(500g)及び(R,S)−cis−3−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸(188.3g)から出発し、数回の結晶化工程の後、(+)−cis−3−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸・キニン塩(162g)を得る。光学的純度(ee)に関する詳細は与えられておらず、旋光度が述べられている。
光学的に活性なcis−3−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸を製造するための更なる方法において、ラセミ体のcis−配置カルボン酸のシンコニジンによる沈殿 [(a) D. S. Noyce, D. B. Denney, J. Am. Chem. Soc. 1952, 74, 5912; (b) M. Nakazaki, K. Naemura, S. Nakahara, J.Org. Chem. 1979, 44, 2438]と、それに続いて、得られた塩のメタノール又はエタノールからの再結晶が用いられる。
【0007】
この記述の方法は、光学的に活性なcis−3−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸誘導体を、比較的大量に製造するためには不適当である。何故なら、多くの化学的工程及び/又は精製工程、ラセミ分割のための大量の光学的に純粋なキラル助剤の使用、所望の立体異性体の塩からの避けがたい遊離、そして、とりわけ、低い全収率は非実用的であり、非経済的である。
【0008】
cis−3−アセトキシシクロヘキサンカルボン酸メチルの製造は、ラセミ体ではあるが、D. S. Noyce, H. I. Weingarten, J. Am. Chem. Soc. 1957, 70, 3098に記載されている。
【0009】
より最近の出版物 (C. Exl, E. Ferstl, H. Honig, R. Rogi-Kohlenprath, Chirality 1995, 7, 211) には、3−アセトキシ安息香酸(−)−メンチル及び4−ヒドロキシ安息香酸(−)−メンチルのメタノール/酢酸中、100bar、40℃及び35℃での、Rh−触媒による水素化がそれぞれ記載されている。両反応において、少なくとも4種の生成物、とりわけ所望の生成物が得られる。反応の実質的に不利な点としては、a)光学的に活性な安息香酸エステルの製造及びそれに続くキラル助剤の除去のための多数の工程;b)技術的に困難な反応条件(100bar);c)不満足な収率及び大量の副生成物のための複雑な精製、そしてd)低い光学的純度がある。結局、その方法は実用的価値が殆んどないとの結論を筆者は引き出している。
【0010】
D. A. Evans, G. C. Fu 及び A. H. Hoveyda (J. Am. Chem. Soc. 1992, 114, 6671)は、3−シクロヘキセンカルボン酸の第二級又は第三級アミドの、Ir(I)触媒による水素化を述べている。収率及びジアステレオマーの選択性は良好であるが、trans−異性体の除去に問題がある。加えて、上記アミドの、所望の式(I)の化合物への転換が、比較的厳しい条件下での部分的エピマー化及びラクトン化を伴うアミド結合の開裂、又は、該アミドの、所望の式(I)の化合物への直接転移を必要とし、それは、例えば、アミノ酸基の立体選択的合成を意味し、そして、多数の工程を包含し、それ故、非経済的である。この方法は、工業的方法として実用には不適当である。
【0011】
(1R,3S)−3−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸メチルの直接的前駆体である、(1R,3R)−3−ヒドロキシ−4−シクロヘキセンカルボン酸メチルの、500mgスケールでの合成が記載されている (J. A. Marshall, S. Xie, J. Org. Chem. 1995, 60, 7230 及び引用文献)。この合成の重要な工程は、TiCl4の存在下、光学的に活性なビスアクリレート及びブタジエン間の不斉[4+2]−環化付加である。キラル助剤を除去して、(R)−3−シクロヘキセンカルボン酸を95%eeで得、それをヨードラクトン化及びそれに続くHIの脱離を経て、(1R,5R)−7−オキサビシクロ[3.2.1]オクタ−2−エン−6−オンに転換する。不飽和のラクトンを、NaHCO3/MeOHを用いて開環し、(1R,3R)−3−ヒドロキシ−4−シクロヘキセンカルボン酸メチルを生成する。(R)−、又は、(S)−3−シクロヘキセンカルボン酸の、環化付加を経由した合成の幾つかの事例がある。本質的には、多数の実例は、用いるキラル助剤において異なる。幾つかの文献を、例として挙げることができる:(a)W. Oppolzer, C. Chapuis, D. Dupuis, M. Guo, Helv. Chim. Acta 1985, 68, 2100; (b)C. Thom, P. Kocienski, K. Jarowicki, Synthesis 1993, 475; (c)B. M. Trost, Y.Kondo, Tetrahedron Lett. 1991, 32, 1613。工業的スケールにおいては、これらの反応は、アクリレート及びブタジエンの取り扱いに安全を確保するため、特別の手段を必要とする。
【0012】
これらの合成の大きな不都合は、シクロヘキセンカルボン酸をラクトン化するために使用する大量のヨウ素及びヨウ化カリウムであり、J.A. Marshall及び S.Xieの文献においては、ヨウ素(1.61g、約1当量)及びヨウ化カリウム(6.0g、約6当量)が、(1R,3R)−3−ヒドロキシ−4−シクロヘキセンカルボン酸メチル(460mg)を、シクロヘキセンカルボン酸(760mg)の分子内環化により製造するために必要である。A. S.Raw 及び E.B.Jang, (Tetrahedron 2000, 56, 3285) の文献において、ヨードラクトン化は、3倍量のヨウ素を用いて行われる。安全性への配慮の故に、そして、環境保護上の観点から、その様な反応を数kgスケールで行うことは非現実的である。更に、上記のラクトンの製造には、クロマトグラフィーによる精製が必要である。
【0013】
フェニルセレノ−及びフェニルスルフェノのラクトン化 [(a) K.C.Nicolaou, S.P.Seitz, W.J.Sipio, J. F. Blount, J. Am. Chem. Soc. 1979, 101, 3884; (b)K.C.Nicolaou, Tetrahedron 1981, 37, 4097] は、好適な選択肢ではない。 使用する試剤及び/又は生成物並びに副生成物は、高度に悪臭を有するだけでなく、多くの場合、それらは、又、毒性があり、環境保護上の障害をもたらす。大半の事例においては、クロマトグラフィーによる精製が、不要なSe又はS副生成物を除去するために必要である。それ故、その様な反応を数kgスケールで行うことは非現実的である。
ブロモラクトン化(C. Iwata, A. Tanaka, H. Mizuno, K. Miyashita, Heterocycles 1990, 31, 987、及びそれに引用されている文献)も、又、工業的スケールでの別の選択肢を提供するものではない。何故なら、臭化物又は臭素源は、環境保護的理由から避けるべきであり、及び/又は、特別の予防措置が必要とされるからである。
【0014】
(R)−シクロヘキセンカルボン酸は、更に又、1,2−シクロヘキサ−4−エンジカルボン酸エステルの酵素的非対称化により得ることができる(P.Kocienski, M.Stocks, D.Donald, M.Perry, Synlett 1990, 38)が、しかし、ここでも、又、上記のヨードラクトン化の不都合が挙げられる。
【0015】
更なる選択肢は、シクロヘキセンカルボン酸のヨードラクトン化の直接の生成物である、2−ヨード−7−オキサビシクロ[3.2.1]オクタ−6−オン(又、4−ヨード−6−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−7−オンとも呼ばれる)を、Bu3SnHを用いて還元して飽和のラクトンを得、それを、例えば、エタノール中のNaOEtを用いて、3−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸エチルに転換することが可能である。ヨウ素の脱離は、多くの事例、とりわけ、A.S.Raw, E.B. Jang, Tetrahedron 2000, 56, 3285において記載されている。Bu3SnH反応の処理、及び、得られたSn及びヨウ素の化合物を完全に除去することはしばしば困難であり、そして、多くの場合、追加のクロマトグラフィー精製が必要となり、それは、工業的方法においては、好ましいものではない。同様のことが、フェニルセレノ、フェニルスルフェノ及びブロモラクトン化の場合における、Se、S及びBr化合物の除去にも適用される。
【0016】
cis−3−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸メチル又はテトラヒドロピラニル誘導体の、α−キモトリプシン触媒を用いたエステルの加水分解による、酵素ラセミ体分割(J.B. Jones, P. W. Marr, Tetrahedron Lett. 1973, 3165)も、又、好適な方法ではない。何故なら、生成物の光学的純度は不満足であり、行われた実験では、それぞれ42%及び50%eeであった。最適化条件の転換を用いることによって、85%eeを達成することが可能である。一方ではこれは不満足であるが、他方、これは、かなり低い収率を受け入れることによってのみ可能である。
【0017】
液体アンモニア中のナトリウムを用いたm−メトキシ安息香酸の還元による、
3−オキソシクロヘキセン−1−カルボン酸メチル及び3−オキソシクロヘキサンカルボン酸メチルの製造は、M. E. C. Biffin, A. G. Moritz, D. B. Paul, Aust. J. Chem. 1972, 25, 1320に記載されている。
【0018】
リゾプスアリズス(Rhizopus arrhizus)を用いた、ラセミ体の3−オキソシクロヘキサ
ンカルボン酸エステルの立体選択的微生物還元及びそれに続くジアステレオマーの分離によっても、又、光学的に活性なcis−3−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸エステルが得られる(F.Trigalo, D.Buisson, R. Azerad, Tetrahedron Lett., 1988, 29, 6109、及び引用文献)。ジアステレオマーの複雑な分離は、工業的スケールへのスケールアップを魅力のないものにしている。
【0019】
(R)−3−オキソシクロヘキサンカルボン酸メチルの、NADHの存在下でのHLAD(馬肝臓アルコールデヒドロゲナーゼ)による還元により、3−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸メチルのcis/trans混合物が生成する(J. J. Willaert, G. L. Lemiere, L. A. Joris, J.A. Lepoivre, F. C. Alderweireldt, Bioorganic Chemistry 1988, 16, 223)。従って、この方法も、又、光学的に純粋なcis3−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸構成ブロックを製造するためには不適当である。
【0020】
3−オキソシクロヘキセン−1−カルボン酸イソプロピルの不斉還元をゲオトリクムカンジドゥムで行うこと(Geotrichum candidum)(L. Fonteneau, S. Rosa, D. Buisson, Tetrahydron: Asymmetry 2002, 13, 579)も、又、興味がない。何故ならば、3−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸イソプロピルのtrans異性体のみ生成するからである。
【0021】
NADPH存在下での、シキメートデヒドロゲナーゼ(shikimate dehydrogenase)の3−オキソシクロヘキサンカルボン酸との反応の検討は、この酵素は、(S)−エナンチオマーを対応するtrans−3−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸へ、収率90%で転換することが示す(T. D. H. Bugg, C. Abell, J. R. Coggins, Tetrahedron Lett. 1988, 29, 6779)。従って、この反応も、又、不適当である。
【0022】
アリシクロバシルスアシドカルダリウス(Alicyclobacilus acidocaldarius)(以前は、バシルスアシドカルダリウス(Bacillus acidocaldarius))及びストレプトマイセスコリヌス(Streptomyces collinus)中でのシクロヘキサンカルボン酸の生合成の工業的応用は、シキミ酸で出発し、3−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸を経由して進行するが、可能性がない。何故なら、3−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸は、trans−配置の(1S,3S)−異性体であるからである (B. S. Moore, K. Poralla, H. G. Floss, J. Am. Chem. Soc. 1993, 115, 5267)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
従って、本発明の目的は、上記の不都合を持たない方法を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、式(Ia)及び(Ib):
【化2】

ここで、
1は、
【化3】

であり、ここで、
3 は、H、(C1−C6)−アルキル、(C3−C8)−シクロアルキル、(C1−C3)−アルキル−(C3−C8)−シクロアルキル、フェニル、(C1−C3)−アルキル−フェニル、(C5−C6)−ヘテロアリール、(C1−C3)−アルキル−(C5−C6)−ヘテロアリール、又は全て若しくは部分的にFで置換された(C1−C3)−アルキルであり;
4、R5は、互いに独立に、H、F、Cl、Br、CF3、OCF3、(C1−C6)−アルキル、O−(C1−C6)−アルキル、SCF3、SF5、OCF2−CHF2、(C6−C10)−アリール、(C6−C10)−アリールオキシ、OH、NO2であり;又は
4及びR5は、それらが結合する炭素原子と一緒になって、縮合した、部分的飽和又は不飽和の二環式(C6−C10)−アリール又は(C5−C11)−ヘテロアリール環を形成し;
Wは、n=1の場合、CH、Nであり;
Wは、n=0の場合、O、S、NR6であり;
mは、1〜6であり;
6は、H、(C1−C6)−アルキル−フェニル、(C1−C6)−アルキルであり;又は
1は、例えば、ベンジルオキシメチル、ベンジル、p−メトキシベンジル、tert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)、tert−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、テトラヒドロピラニル(THP)、1−エトキシエチル(EE)、1−メチル−1−メトキシエチル又は1−メチル−1−ベンジルオキシエチルなどのOH保護基(PG)であり;そして
【0025】
2は、
【化4】

であり、ここで、
pは、0〜2であり;
7は、H、(C1−C6)−アルキルであり;
8は、H、(C1−C6)−アルキルであり;
9は、H、F、(C1−C6)−アルキルであり;
10は、H、F、(C1−C6)−アルキル、O−(C1−C6)−アルキル、(C2−C6)−アルケニル、(C2−C6)−アルキニル、(C3−C8)−シクロアルキル、フェニルであり、ここで、アルキル、アルケニル、アルキニル及びシクロアルキルは、場合により、ヒドロキシル、フェニル、(C5−C11)−ヘテロアリール、O−(C1−C6)−アルキル及びNR1314から成るグループからの1つ又はそれ以上の基で置換されても良く、そして、フェニルは、場合により、ヒドロキシル、O−(C1−C6)−アルキル、F及びCF3から成るグループからの1つ又はそれ以上の基で置換されても良く、但し、R9=Fの場合、R10は、NR1314又はO−(C1−C6)−アルキルではなく;
9及びR10は、それらが結合する炭素原子と一緒になって、(C3−C8)−シクロアルキルであり;
10及びR12は、n=0の場合、それらが一緒になって、ピロリジン及びピペリジンであり;
11は、H、(C1−C8)−アルキル、ベンジル、(C1−C4)−アルキル−(C6−C10)−アリール、(C1−C4)−アルキル−O−(C1−C4)−アルキル、フェニル−(C1−C4)−アルキルであり、ここで、アルキル、ベンジル、フェニル、アリールは、場合により、O−(C1−C6)−アルキル、OCH2CH2−OMe、F、Cl、Br、I、Si(CH33、OSi(CH33、Si(iPr)3、OSi(iPr)3、OCH2CH2−SiMe3、OCH2−Si(iPr)3、O−CH2−C65、SO264−p−Me、SMe、CN、NO2、CH2COC65により、一置換又は多置換されても良く;
12は、H、(C1−C6)−アルキル、(C2−C6)−アルケニル、(C2−C6)−アルキニル、ベンジル、CO−(C1−C6)−アルキル、CO−フェニル、C(O)−O−(C1−C6)−アルキル、アリルオキシカルボニル(ALOC)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz、Z)、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)、(C1−C4)−アルキル−(C6−C10)−アリール、(C1−C4)−アルキル−(C5−C11)−ヘテロアリール、(C1−C4)−アルキル−O−(C1−C4)−アルキル、フェニル−(C1−C4)−アルキル、(C5C6)−ヘテロアリール−(C1−C4)−アルキル、SO2−(C1−C6)−アルキル、SO2−(C1−C6)−アルキル−SO2−(C1−C6)−アルキル、SO2−フェニルであり、ここで、フェニルは、場合により、(C1−C6)−アルキル、O−(C1−C6)−アルキル、F、Clで置換されても良く;
13は、(C1−C6)−アルキルであり;
14は、(C1−C6)−アルキル−フェニル、(C1−C6)−アルキルである;
のキラル性で、且つ、非ラセミ体の化合物を製造する方法であって、
【0026】
A)
a)ラクトン開環(LO)
式(II):
【化5】

のラセミ体の6−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−7−オンを、式(III):
HO−R15 (III)
ここで、
15は、H、(C1−C8)−アルキル、(C3−C8)−シクロアルキル、 (C2−C8)−アルケニル、(C2−C8)−アルキニル、ベンジル、(C1−C4)−アルキル−(C6−C10)−アリール、(C1−C4)−アルキル−(C5−C11)−ヘテロアリール、(C1−C4)−アルキル−O−(C1−C4)−アルキル、フェニル−(C1−C4)−アルキル、(C5−C6)−ヘテロアリール−(C1−C4)−アルキルであり、ここで、アルキル、ベンジル、フェニル、アリール、ヘテロアリールは、場合により、フェニル、O−(C1−C6)−アルキル、OCH2CH2−OMe、OTs、F、Cl、Br、I、Si(CH33 OSi(CH33、Si(iPr)3、OSi(iPr)3、OCH2CH2−SiMe3、OCH2−Si(iPr)3、OTHP、O−CH2−C65、SO264−p−Me、SMe、CN、NO2、COOH、CONH2、CH2COC65、CO−ベンジルオキシ、CO−O(C1−C6)−アルキル、NHTs、NHAc、NHBoc、NHAloc、NHベンジルにより、一置換又は多置換されても良い;
の化合物と、好適な塩基又は酸の存在下、好適な溶媒中で(例えば、水中のNaOH又はCsOHの様なヒドロキシドと、又は、例えば、アルコール中のK2CO3の様な炭酸塩と、又は、例えば、水中のHClの様な酸と)反応させ、又は、アルコール中の塩化アセチルの様な、好ましくは、イソプロパノール中の塩化アセチルの様な酸ハライドと反応させ(ここで、水性反応の場合、処理条件によって、例えば、Cs(例えば、CsOHが使われる場合)、又はNa(例えば、NaOHが使われる場合)、又はアンモニウム塩(例えば、NH3が使われる場合)、又はその他の遊離酸のいずれが得られるかが決まる)、例えば、式(IV):
【化6】

ここで、
15は、上記で定義した通りである;
のラセミ体で、且つ、cis−配置の化合物を得、又は、処理条件に依存して、例えば、R15は、又、Cs、Li、K、NH4、Ca、Ba、Mgであり、Cs+、Li+、K+、NH4+、Ca2+、Ba2+、Mg2+塩の様なイオン形体で存在しても良い、式(IV)の化合物を得、そして適切な場合、得られる生成物、例えば、R15=Csである式(IV)の化合物は、臭化ベンジルの様なアルキル化剤を用いて、R15=CH265である式(IV)の化合物、即ち、R15が上記で定義した様な別の生成物に更に転換され;
【0027】
b)酵素によるエステル形成(EF)+分離(s)
得られた式(IV)の化合物は、立体選択的な酵素によるエステル形成(EF)を受け、この場合、アシルドナー(例えば、ビニルエステルR16OCH=CH2、好ましくは酢酸ビニル、又は、酸無水物R16OR16、好ましくは、無水コハク酸及びグルタル酸無水物など)及び酵素を有機溶媒(例えば、ジクロロメタンなど)中のヒドロキシル化合物に加え、得られた混合物を−20〜80℃で撹拌し、反応が完結した後、1つの立体異性体は式(Vb):
【化7】

ここで、
16は、C(=O)−(C1−C16)−アルキル、C(=O)−(C2−C16)−アルケニル、C(=O)−(C3−C16)−アルキニル、C(=O)−(C3−C16)−シクロアルキルであり、ここで、1つ又はそれ以上の炭素原子は酸素原子で置換されても良く、そして、F、Cl、Br、CF3、CN、NO2、ヒドロキシル、メトキシ、エトキシ、フェニル、CO−O(C1−C4)−アルキル及びCO−O(C2−C4)−アルケニルから成るグループからの1〜3個の置換基で置換されても良く、ここで、フェニル、CO−O(C1−C4)−アルキル及びCO−O(C2−C4)−アルケニルの部分は、F、Cl、Br、CF3から成るグループからの1〜3個の置換基で置換されても良く;
15は、上記で定義した通りである;
のエステルとして存在し、そして、他の立体異性体は、式(IVa):
【化8】

のアルコールとして、変化せずに存在し、そして、これらの化合物は、それ故、異なった化学的又は物理化学的特性(例えば、Rf値又は水若しくは他の溶媒中での溶解性の差異)を利用して、例えば、シリカゲルを用いた簡単なクロマトグラフィーにより、抽出(例えば、ヘプタン/メタノール又は有機溶媒/水)により、互いに分離(分離S)することができ、又は、後に続く、エステルが関与しない、例えば、ヒドロキシル化合物の化学的後続反応により更に処理することができ、ここで、
アルコールとして得られる式(IVa)のエナンチオマーは、d)に記載する様に更に処理し;又は
【0028】
c)エステルの開裂(EC)
アシル化した化合物として得られる式(Vb)のエナンチオマーを、公知の方法で加水分解し、化学的にエナンチオマー性のアルコール(IVb):
【化9】

を得、又は、例えば、メタノール中のK2CO3との反応により、分子内エステル交換し、光学的に活性な(1S,5R)−6−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−7−オンを得、この化合物を、1つの異性体形態の生成物に転換することが可能であり(以下のスキーム参照)、又は、式(Vb)の化合物を、例えば、リパーゼ触媒により両者のエステル官能基を開裂し、光学的に活性な化合物(R15=Hの場合、IVb)に転換し、それを、1つの異性体形態の生成物に転換することができ(以下のスキーム参照);
【0029】
d)アルキル化(Alk−R1/Alk−PG)
式(VI):
1−X (VI)
ここで、
1は、
【化10】

であり、そして、
3、R4、R5、W、n及びmは、上記で定義した通りである;又は、
1は、THP、EE、1メチル−1−メトキシエチル又は1−メチル−1−ベンジルオキシエチルを除き、上記で定義したOH保護基であり;そして
Xは、Cl、Br、I、OTs、OMs、OTfである;
の化合物との、好適な溶媒中、好適な塩基の存在下での、更なる転換により、式(VIIa)又は(VIIb):
【化11】

の化合物を得;又は、R1=PGの場合、式(VIIa)又は(VIIIb):
【化12】

の化合物を得;又は、
1は、テトラヒドロピラニル(THP)、1−エトキシエチル、1−メチル−1−メトキシエチル又は1−メチル−1−ベンジルオキシエチルなどの、OH保護基(PG)であり;そして、
OH保護基を導入するために、式(IVa)又は(IVb)の化合物を、酸触媒下で、適切な公知のエノールエーテルと反応させ、式(VIIIa)又は(VIIIb)の化合物を得;そして
【0030】
e)直接反応又はエステル開裂&カップリング(DR又はEC+C)
e1)得られた式(VIIa)若しくは(VIIb)の化合物、又は式(VIIIa)若しくは(VIIIb)の化合物を、直接反応(DR)で、例えば、式(IX):
2−H (IX)
ここで、
2は、
【化13】

であり;
R7、R8、R9、R10、R11、R12及びpは、上記で定義した通りである;
のアミン、又は、対応するリチウム若しくはジメチルアルミニウム誘導体と反応させることにより、又は、式(VIIa)若しくは(VIIb)の化合物、又は、
式(VIIIa)若しくは(VIIIb)の化合物を、式(IX)のアミン若しくはアミノ酸誘導体R2−Hと、活性化試剤、又は、例えば、シアニドイオンの様な触媒の存在下で反応させ、式(Ia)若しくは(Ib):
【化14】

の化合物又はその異性体を得、又は、
1=PGの場合、式(Xa)又は(Xb):
【化15】

の化合物を得;又は、
【0031】
e2)得られた式(VIIa)若しくは(VIIb)、又は(VIIIa)若しくは(VIIIb)の化合物は、エステル開裂、例えば、NaOH水溶液を用いた塩基性加水分解、HCl水溶液を用いた酸性加水分解、リパーゼを用いた酵素加水分解、又は、Pd/C存在下でのH2を用いた水素化を行い、そして、得られた式(XIa)若しくは(XIb)、又は(XIIIa)若しくは(XIIIb):
【化16】

の化合物、又は、対応する塩、例えば、これらの化合物のLi、Na、K、C5又はNH4塩を、引き続いて、式(IX):
2−H (IX)
ここで、
2は、
【化17】

であり;
R7、R8、R9、R10、R11、R12及びpは、上記で定義した通りである;
の化合物と、脱水剤又は活性化試剤、例えば、PPA(プロパンホスホン酸無水物)、TOTU([シアノ(エトキシカルボニル)メチレンアミノ]−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム・テトラフルオロボレート)、EDC(1−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−3−エチルカルボジイミド・塩酸塩)、HOBt(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)、DMAP(4−ジメチルアミノピリジン)、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)、CDI(N,N’−カルボニルジイミダゾール)の存在下で、カップリングさせ、式(Ia)若しくは(Ib):
【化18】

の化合物、又はその異性体を得、そして、適切であれば、
【0032】
f)保護基PGの脱離(RPG)
1が、上記のR1で定義したOHの保護基(PG)である場合、式(Xa)又は(Xb):
【化19】

ここで、
2及びPGは上記で定義した通りである;
の化合物を、公知の方法により、例えば、PG=ベンジルオキシメチル又はPG=ベンジルの、Pd/C上の水素化による脱離、又は、PG=パラ−メトキシベンジルの、例えば、DDQ(2,3ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン)を用いた脱離、PG=tert−ブチルジメチルシリルの、例えば、Bu4NFを用いた脱離、又は、PG=テトラヒドロピラニル(THP)、PG=1−エトキシエチル、PG=1−メチル−1−メトキシエチル又はPG=1−メチル−1−ベンジルオキシエチルの、例えば、p−トルエンスルホン酸又はHClを用いた酸触媒下での脱離により、保護基を脱離し、式(XIIa)又は(XIIb):
【化20】

ここで、
2は、上記で定義した通りである;
の化合物へ転換し、次いで、前記の方法の変形法に従って式(Ia)若しくは(Ib)の化合物又はそれらの異性体に転換し;
【0033】
ここで、上記のA)で記載した個々の反応工程の順序を、
A)LO→EF+S[→EC]→Alk−R1→DR、又は、EC+C→生成物/異性体;から、
B)LO→EF+S[→EC]→DR、又は、EC+C→Alk−R1→生成物/異性体;又は、
C)LO→DR、又は、EC+C→EF+S→[EC]→Alk−R1→生成物/異性体;又は、
D)LO→EF+S→[EC]→Alk−PG→DR、又は、EC+C→RPG→Alk−R1→生成物/異性体:又は
E)LO→Alk−PG→DR、又は、EC+C→RPG→EF+S→[EC]→Alk−R1→生成物/異性体;
へ変えることも、又、可能である;
方法を提供する。
【0034】
可能性のある変形法は、以下のスキームI〜Vに示される。
【化21】

【0035】
【化22】

【0036】
【化23】

【0037】
【化24】

【0038】
【化25】

【0039】
式(Ia)及び(Ib)の化合物は、シクロヘキサン環上に、2つの不斉中心がある。
ここでは、cis配置が重要である。しかしながら、更なる不斉中心、例えば、R2基に存在する不斉中心もあり得る。式(Ia)及び(Ib)の化合物は、それ故、ラセミ体、ラセミ混合物、純粋エナンチオマー、ジアステレオマー及びジアステレオマー混合物の形態としても存在し得る。本発明は、式(Ia)及び(Ib)の化合物のこれらあらゆる異性体をも含む。たとえ、エクスプレシス・ヴェルビス(expressis verbis)に記載されていない場合でも、これらの異性体は公知の方法で入手可能である。
【0040】
ヘテロ芳香族環は、最高4個のヘテロ原子有する、特に、4個までの窒素原子及び/又は1個の酸素原子又は1個の硫黄原子を有する、例えば、フラン、チオフェン、チアゾール、オキサゾール、チアジアゾール、トリアゾール、ピリジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、インドール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾトリアゾールの様な単環式及び二環式環の双方を意味すると理解すべきである。芳香族環は、単環式又は二環式であり、そして、例えば、ナフチル、ベンゾ[1,3]ジオキソール、ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシンの様に縮合していても良い。
【0041】
本発明に従う方法は経済的であり、簡便であり、そして、迅速である。それは、等モルの光学的に純粋な出発物質若しくは助剤、又は高価な試剤、又は特別のリスクをもたらす試剤など、又はキラル相でのクロマトグラフィーによるラセミ体分割、又は異常に大量の溶剤、又はコストの高い操作などを必要としない。
【0042】
好ましくは、上記のA)、B)及びD)の方法であり、方法A)が特に好ましい。
【0043】
好ましくは、式(Ia)及び(Ib)の化合物を製造する方法であって、1つ又はそれ以上の基が以下に定義される化合物、即ち:
1は、
【化26】

であり、又は、
1は、例えば、ベンジルオキシメチル、ベンジル、パラ−メトキシベンジル、tert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)、tert−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、テトラヒドロピラニル(THP)、1−エトキシエチル(EE)、1−メチル−1−メトキシエチル又は1−メチル−1−ベンジルオキシエチルの様な、OH保護基(PG)であり、
ここで、
4は、F、Br、CF3、OCF3、(C1−C6)−アルキル、O−(C1−C6)−アルキル、フェニルであり;又は以下の置換基を有するもの、即ち:
4は、メタ又はパラ位に位置し;又は
5は、水素であり;又は
4及びR5は、フェニル環と一緒になって、ナフチルであり;又は
3は、H、(C1−C6)−アルキル、(C3−C8)−シクロアルキル、(C1−C3)−アルキル−(C5−C6)−シクロアルキル、フェニル、(C1−C3)−アルキル−フェニルであり;又は
Wは、n=1の場合、CHであり;又は
mは、1である;
であり;又は
【0044】
2は、
【化27】

であり、ここで、
pは、0であり;又は
R9は、H、(C1−C6)−アルキルであり;又は
R9及びR10は、それらが結合する炭素原子と一緒になって、(C3−C6)−シクロアルキル、特に、シクロペンチルであり;
R10は、(C1−C6)−アルキルであり、ここで、アルキルは、場合により、ヒドロキシル、フェニル、(C5−C11)−ヘテロアリール、(C1−C6)−アルコキシ及びNR13R14から成るグループからの1つ又はそれ以上の置換基で置換されても良く、ここで、R13及びR14は、H、(C1−C6)−アルキルであり;
R11は、H、(C1−C8)−アルキル、ベンジル、(C1−C4)−アルキル−(C6−C10)−アリールであり、ここで、アルキル、ベンジル、アリールは、OMe、OCH2CH2−OMe、F、Cl、Br、Si(CH33、OSi(CH33、OCH2CH2−SiMe3、OCH265、SMe、CN、NO2、CH2COC65により、1つ又は多数個置換されても良い;
化合物を製造する方法である。
更に、特に好ましくは、式(Ia)及び(Ib)の化合物を製造する方法であって、ここで、
R10は、(C1−C4)−アルキル、(C1−C4)−アルキル−O−(C1−C4)−アルキル又はベンジルであり;
R11は、H、(C1−C8)−アルキル、ベンジルである;
化合物を製造する方法であり、非常に特に好ましくは、
R10は、(C1−C4)−アルキル又はベンジルであり;
R11は、H、(C1−C8)−アルキルである;
化合物を製造する方法である。
非常に好ましくは、又、式(Ia)及び(Ib)の化合物を製造する方法であって、ここで、
R4は、Br、CF3、OCF3、(C1−C6)−アルキル、O−(C1−C6)−アルキルであり;
R5は、H、(C1−C6)−アルキル、O−(C1−C6)−アルキルであり;又は
R4及びR5は、フェニル環と一緒になって、ナフチルであり;
R3は、CF3、(C1−C6)−アルキル、(C3−C6)−シクロアルキル、フェニルであり;
Wは、n=1の場合、CHであり;
mは、1であり;
pは、0であり;
R9は、H、(C1−C6)−アルキルであり;
R10は、(C1−C6)−アルキルであり、ここで、アルキルは場合によりフェニルで置換されても良く;
R10及びR12は、p=0の場合、それらが結合する原子と一緒になって、ピロリジンであり;
R9及びR10は、それらが結合する炭素原子と一緒になって、(C3C6)−シクロアルキルであり;
R11はHであり;
R12は、H、(C1−C6)−アルキル、ベンジルである;
化合物を製造する方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
式(IV)のラセミ化合物は、アルコールにより、又は水の存在下で、6−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−7−オンを開環することによって製造される。ラセミ体の6−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−7−オン(II)は市販されており、そして、例えば、m−ヒドロキシ安息香酸又はm−ヒドロキシ安息香酸誘導体の水素化による非芳香族化、及びcis−3−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸の環化により合成することができる。
ラクトン環の開環は、多数のラクトン環に対して文献(例えば、M. Carballido, L. Castedo, C. Gonzalez, Tetrahedron Lett. 2001, 42, 3973)に記載されている通りに、酸性条件又は塩基性条件下で行うことができ、例えば、LiOHの様な水酸化物の存在下で水を用い、例えば、酢酸の様な酸の存在下で水を用い、例えば、K2CO3の様な塩基の存在下でアルコールを用い、そして、例えば、HClの様な酸の存在下でアルコールを用いて行うことが可能である。
ラクトン環の開環に対しては、アルコール中で塩化アセチルを用いることが好ましい。
【0046】
ラセミ体のヒドロキシル化合物を分割するために、これらを、例えば、ジメトキシエタン(DME)、メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)、ジイソプロピルエーテル(DIPE)、THF、n−ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、クロロベンゼン、アセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン及びtert−ブタノールの様な有機溶媒に取り込み、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、2H,2H−ペルフルオロデカン酸2,2,2−トリフルオロエチル、酢酸エトキシビニル、酢酸p−ニトロ−又はp−クロロフェニル、オキシムエステル、無水酢酸、プロピオン酸無水物、無水コハク酸、グルタル酸無水物、イソ吉草酸無水物、酪酸2,2,2−トリクロロエチルなどのアシルドナーを加え、次いで、好適な酵素を反応混合物に加え、−20℃から80℃で撹拌する。溶液中の共溶媒の割合は、10〜90%が好ましく、しかし、適切な場合は、酵素反応を純粋のアシルドナー中で、例えば、共溶媒なしで酢酸ビニル中で行うことが有利である。
【0047】
反応が完結した後、生成物又はエナンチオマーは、簡単な方法で、例えば、文献で知られた方法に従って抽出により[(a).T. Yamano, F. Kikumoto, S. Yamamoto, K. Miwa, M. Kawada,T.Ito, T.Ikemoto, K. Tomimatsu, Y. Mizuno, Chem. Lett. 2000, 448; (b). B. Hungerhoff, H.Sonnenschein, F. Theil, J. Org. Chem. 2002, 67, 1781]、又はクロマトグラフィー法を用いて分離することができる。
更に別の方法において、酵素反応が完了した後、残留するヒドロキシル化合物の水に対する溶解度は、誘導体化することにより、例えば、環状酸無水物、例えば、グルタル酸無水物を用いたアシル化により、又は、コリンエステルへの転換[(a). H. Kunz, M. Buchholz, Chem. Ber. 1979, 112, 2145; (b) M. Schelhaas, S. Glomsda, M. Hansler, H.-D. Jakubke, H.Waldmann, Angew. Chem. 1996, 108, 82]によりかなり増加するので、水に不溶性のエステル又は水に難溶性のエステルから抽出により分離することができる。分離した後、アルコールへの誘導体化は、化学的又は酵素的加水分解により変更することができる。
エナンチオマー分離の特に興味ある選択肢において、酵素アシル化の場合、アシルドナーは、アシル化されたエナンチオマーが、未反応のヒドロキシル化合物より、水に対する溶解性がかなり高まるように選択される。好適なアシルドナーは、例えば、無水コハク酸の様な環状酸無水物である。酵素アシル化が完了した後、アシル化生成物は、遊離のカルボキシル基を有し、それが、例えば、NaHCO3飽和水溶液を用いた塩基性媒体中での水性抽出により、生成物の迅速な除去を可能にする。
【0048】
用いられる酵素としては、例えば、豚すい臓(porcine pancreas)(Fluka製)又は微生物からのリパーゼなど、例えば、カンジダアンタークチカ(Candida Antarctica)(Roche Diagnostics製)からのリパーゼB、カンジダアンタークチカ (Candida Antarctic) (Roche Diagnostics製)からのリパーゼA、カンジダルグサ (Candida rugosa) (Meito Sangyo製)からのリパーゼOF、シュードモナスセパシア(Pseudomonas cepacia) (Meito Sangyo製)からのリパーゼSL、アルカリゲネス種 (Alcaligenes spec.) (Roche Diagnostics製)からのリパーゼL−10、アルカリゲネス種 (Alcaligenes spec.) (Meito Sangyo製)からのリパーゼQLなどの、哺乳類の肝臓からのヒドロラーゼ、及びグルタリル−7−ACA−アシラーゼ(Roche Diagnostics製)が好ましい。特に好ましいのは、カンジダアンタークチカ(Roche Diagnostics製)からのリパーゼBであり、そして、遊離の酵素又は固定化した形態の酵素、例えば、現在市販されている3種の製品の内の1つを使うことが有利であろう。
【0049】
上記の各酵素は、遊離の又は固定化した形体で用いることができる(Immobilized Biocatalysts, W. Hartmeier, Springer Verlag Berlin, 1988)。酵素の量は、反応速度、又は予定の反応時間及び酵素の種類(例えば、遊離又は固定化)に依存して自由に選択でき、簡単な予備実験で容易に定量できる。酵素は凍結乾燥により回収することができる。酵素の分離(そして、適切な場合は、後で再使用する)は、固定化により促進することができる。
【0050】
好適な方法で反応を行うことにより、光学的に少なくとも1種のエナンチオマーを純粋な形体で得ることが可能である。所望の生成物が光学的に純粋なエステルである場合、酵素によるエステル生成の転換率は50%未満(又は同等)とすべきである。所望の生成物が光学的に純粋なアルコールである場合、酵素触媒によるエステルの生成において、転換率は50%超(又は同等)とすべきである。酵素反応の転換率は、反応混合物から直接GC又はHPLCにより、又は、反応生成物(エステル及び酸)の光学的純度からの計算で定量し、該光学的純度は、又、反応混合物からGC又はキラル相上のHPLCを用いて直接定量した。
【0051】
前駆体として使うことができる、式(VI)の化合物R1−X及び対応するアルコールR1OHは市販されており、又は、文献で公知の方法により製造することができる[(a) The Chemistry of Heterocyclic Compounds (Ed.: A. Weissberger, E. C. Taylor): Oxazoles (Ed.: I. J. Turchi); (b) Methoden der Organischen Chemie [Methods of organic chemistry], Houben-Weyl 4thedition, Hetarene III, subvolume 1; (c) O. Diels, D. Riley, Ber. Dtsch. Chem. Ges. 1915, 48, 897; (d) W. Dilthey, J. Friedrichsen, J. Prakt. Chem. 1930, 127, 292; (e) A.W.Allan, B.H.Walter, J. Chem. Soc. (C) 1986, 1397; (f) P. M. Weintraub, J. Med. Chem. 1972, 15, 419; (g) I. Simit, E. Chindris, Arch. Pharm. 1971, 304, 425; (h) Y. Goto, M. Yamazaki, M. Hamana, Chem. Pharm. Bull. 1971, 19 (10), 2050-2057]。
【0052】
式(VI)の化合物R1−Xを、塩基の存在下で光学的に純粋なcis−配置3−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸誘導体と反応させる。好適な塩基としては、例えば、KOHの様な水酸化物、Cs2CO3の様な炭酸塩、KOtBuの様なアルコキシド、そして、又、LDA、BuLi、LiHMDS、KHMDS、NaH及びNaHMDSの様な化合物である。好適な溶媒としては、例えば、THF、MTBE、DME、NMP、DMF、トルエン及びクロロベンゼンがある。式(IVa)及び(IVb)の化合物を式(VI)の化合物と反応させることによるOH保護基(PG)の導入が、文献からの公知の方法(T. W. Greene, P. G. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd edition, John Wiley & Sons, Inc., 1999) により行われる。
加えて、テトラヒドロピラニル、1−エトキシエチル、1−メチル−1−メトキシエチル又は1−メチル−1−ベンジルオキシエチルの様なOH保護基を、式(IVa)及び(IVb)の化合物へ導入するために、公知の対応するエノールエーテル(例えば、ジヒドロピラン及びエチルビニルエーテル)を用いることができる (T. W. Greene, P. G. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd edition, John Wiley & Sons, Inc., 1999)。
【0053】
後半の合成過程の間で、PGの脱離が容易で、且つ、選択的であり得るように、PGとしてのR1が選択される。それ故、PGとしては、例えば、ベンジルオキシメチル、ベンジル、パラ−メトキシベンジル、tert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)、tert−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、1−エトキシエチル(EE)又はテトラヒドロピラニル(THP)がある。保護基の後半での脱離は、例えば、PG=ベンジルオキシメチル又はPG=ベンジルのPd/Cによる水素化での脱離、又は、PG=パラ−メトキシベンジルの、例えば、DDQ(2,3ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン)を用いた脱離、PG=tert−ブチルジメチルシリル又はPG=tert−ブチルジフェニルシリルの、例えば、Bu4NFを用いた脱離、又は、PG=テトラヒドロピラニル(THP)、PG=1−エトキシエチル、PG=1−メチル−1−メトキシエチル又はPG=1−メチル−1−ベンジルオキシエチルの、例えば、p−トルエンスルホン酸又はHClを用いた酸触媒下での脱離などの公知の方法に従って実施される。
【0054】
式(IX)のアミン又はアミノ酸誘導体は、容易に入手可能である。タンパク質起源及び非タンパク質起源の誘導体の両者は、主にぺプチド化学で公知の構成ブロックであり、その異なった異性体は、純粋な異性体化合物として市販されている。更に、使用される式(IX)のアミノ酸誘導体を、文献で公知の方法の助力を得て、製造することができる [(a) Houben-Weyl, Methoden der Organischen Chemie, 4thedition, volume E16d, subvolumes I and II; (b) C. Cativiela, M. D. Diaz-de-Villegas, Tetrahedron: Asymmetry 1998, 9, 3517; c) M. Beller, M. Eckert, Angew. Chem. 2000, 112, 1026]。
【0055】
式(IVa)又は(IVb)、(VIIa)又は(VIIb)、式(VIIIa)又は(VIIIb)のエステルと式(IX)のアミン又はアミノ酸誘導体との直接反応は、文献からの公知の方法[(a) M. B. Smith, J.March, March's Advanced Organic Chemistry,
5th edition, John Wiley & Sons, Inc., 2001, p.510 and literature cited therein;
(b) literature review R. C.Larock, Comprehensive Organic Transformations, p. 987, VCH Publishers, Inc., 1989] を用いて、例えば、対応するリチウム又はジメチルアルミニウム誘導体を経由して、又は、例えば、シアニドイオンのような好適な触媒の存在下で行うことができる。
【0056】
エステルの加水分解は、文献で公知の方法(M.B.Smith, J. March, March's Advanced Organic Chemistry, 5thedition, John Wiley & Sons, Inc., 2001, p. 469 及びそれに引用された文献)、例えば、NaOH水溶液を用いた塩基性加水分解、HCl水溶液を用いた酸性加水分解又はリパーゼを用いた酵素加水分解、又は、例えば、ベンジルエステルの場合、Pd/C存在下でのH2を用いた水素化分解に従って行うことができる。
【0057】
エステル加水分解により生成したシクロヘキサンカルボン酸の、式(XIa)又は(XIb)の化合物への転換は、文献で公知のアミド又はペプチドカップリング法により行われる。アミド結合を形成する数多くの方法が利用可能である[(a) Houben-Weyl, Methoden der Organischen Chemie, 4thedition, volume XV, subvolumes 1 and 2; (b) G. Benz in Comprehensive Organic Synthesis (ed.: B. M. Trost), 1991, p. 381; (c) Miklos Bodansky, Peptide Chemistry, 2nd edition, Springer Verlag, p. 55]。
【0058】
以下に示す実施例は、本発明をより詳細に説明するためのものである。
スキームA用:
〔実施例1〕
ラセミ体cis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピルの製造
【化28】

塩化アセチル(245ml)をイソプロパノール(2.1l)中に、撹拌しつつ徐々に加えた。添加の間、温度が45℃に上昇したが、その後、急速に35℃に低下した。次いで、ラセミ体の6−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−7−オン(350g、2.72mol)及びイソプロパノール(1.4l)の溶液を、ゆっくりと滴下しながら加え、そして、混合物を20〜25℃で撹拌した。3時間撹拌し、終夜放置後、反応が終了した。反応混合物を減圧下で濃縮し、塩化メチレン(約1.3l)に取り込み、そして、半飽和の重炭酸ナトリウム溶液(1l)で洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥し、減圧下で濃縮した;収率:501g(98.9%);1H−NMR(CDCl3):δ=1.23(d,6H),1.20−1.45(m,4H),1.68(d,1H),1.86(m,2H),1.95(m,1H),2.18(m,1H),2.34(m,1H),3.63(m,1 H),5.00(sept,1H)。
【0059】
〔実施例2〕
cis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1カルボン酸イソプロピルの酵素によるラセミ体分割
【化29】

ラセミ体の3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピル(800g)を、酢酸ビニル(1.5l)、塩化メチレン(5l)及びノボジム435(Novozym 435)(137g)と一緒に20〜23℃でゆっくりと撹拌した。約4時間後、混合物を濾過し、減圧下で濃縮した。これにより940gの生成物を得、シリカゲル(6kg)(n−ヘプタン/EA2:1−EA/n−ヘプタン3:1)を用いたクロマトグラフィーで精製した:第一画分:(1S,3R)−3−アセトキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピル(484g);1H−NMR(CDCl3):δ=1.22(d,6H),1.2−1.6(m,4H),1.8−2.0(m,3H),2.03(s,3H),2.20(m,1H),2.36(m,1H),4.70(m,1H),5.00(sept,1H);80%ee(HPLC:Chiralpak-ADH 32:250×4.6;1ml/min,ヘプタン/EtOH=3:1)。第二画分:混合物、第三画分:(1R,3S)−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1カルボン酸イソプロピル(324g);1H−NMR(CDC
3):δ=1.23(d,6H),1.20−1.45(m,4H),1.68(d,1H),1.86(m,2H),1.95(m,1H),2.18(m,1H),2.34(m,1H),3.63(m,1H),5.00(sept,1H);>99%ee(HPLC:Chiralpak-ADH 32:250×4.6;1ml/min,ヘプタン/EtOH=3:1)。
【0060】
〔実施例3〕
4−ヨードメチル−5−メチル−2−p−トリルオキサゾールを用いた、(1R,3S)−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1カルボン酸イソプロピルのアルキル化による、(1R,3S)−3−(5−メチル−2−p−トリルオキサゾール−4−イルメトキシ)シクロヘキサンカルボン酸イソプロピルの製造
【化30】

2雰囲気下、(1R,3S)−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピル(100g、0.54mol)、及び、4−ヨードメチル−5−メチル−2−p−トリルオキサゾール(151g、0.48mol)を、最初NMP(1l)中に投入し、そして、−20℃に冷却した。約1時間後に、NaH(20.4g)を少しずつ加えた。添加中は、温度を−15℃以下に保持した。次いで、混合物を−15℃で撹拌した。7時間後、反応を終了した。反応混合物を、水(3l)及び氷酢酸(40ml)の混合物に注いだ。生成物をMTBエーテル(2×700ml)で抽出した。有機相を減圧下で濃縮した。これにより、粗生成物(180g)を得、これを直接、次の工程で反応させた。
【0061】
〔実施例4〕
(1R,3S)−3−(5−メチル−2−p−トリルオキサゾール−4−イルメトキシ)シクロヘキサンカルボン酸の、イソプロピルエステルの加水分解による製造
【化31】

実施例3の2回分の生成物(約360g)をNMP(1.6l)に溶解し、NaOH(400ml)を加え、そして混合物を室温で撹拌した、1.5時間後、反応は終了した。反応溶液を水(6l)中に注ぎ、MTBエーテル(各回2l)で3回洗浄し、濃HCl(約450ml)を用いて、水相をpH1に調節した。この操作中に沈殿した生成物を濾過し、水で洗浄し、50℃で乾燥した。収量:85g;融点:144〜146℃;1H−NMR(CDCl3):δ=1.23−1.53(m,4H),1.85−2.1(m,3H),2.36−2.45(m,8H),3.45(m,1H),4.49(dd,2H),7.23(d,2H),7.88(d,2H)。
【0062】
〔実施例5〕
3−メチル−2(S)−{[(1R,3S)−3−(5−メチル−2−p−トリルオキサゾール−4−イルメトキシ)シクロヘキサンカルボニル]アミノ}酪酸tert−ブチルの、(1R,3S)−3−(5−メチル−2−p−トリルオキサゾール−4−イルメトキシ)シクロヘキサンカルボン酸とt−ブチル(S)−バリネート・塩酸塩のカップリングによる製造
【化32】

(1R,3S)−3−(5−メチル−2−p−トリルオキサゾール−4−イルメトキシ)シクロヘキサンカルボン酸(85g)、t−ブチル(S)−バリネート・塩酸塩(70.4g)及びトリエチルアミン(128ml)を、撹拌しつつ、最初に、DMF(1.39l)中に投入した。混合物を約10分間撹拌し、次いで、0℃(氷/メタノール)に冷却し、TOTU(101g)を少しづつ、ゆっくりと加えた。混合物を0℃で15分間、次いで、約20℃で撹拌した。2時間後、反応は終了した。全反応混合物を水(4.5l)中に注ぎ、そして、MTBエーテルを用いて3回(各回700ml)抽出し、集めた有機相を水(約1l)で洗浄して、残留DMFを取り除き、MgSO4で乾燥し、減圧下で濃縮した。残留物をDIPEで粉砕し、吸引濾過した;収量:82g。母液を濃縮し、残留物を再度DIPEで粉砕した;全収量:90g;1H−NMR(CDCl3):δ=0.87−0.92(2d,6H),1.25−1.55(m,4H),1.46(s,9H),1.88(m,2H),2.10−2.35(m,4H),2.38(s,3H),2.40(s,3H),3.47(m,1H),4.46(dd,1H),4.49(s,2H),5.97(d,1H),7.22(d,2H),7.88(d,2H)。
【0063】
〔実施例6〕
3−メチル−2(S)−{[(1R,3S)−3−(5−メチル−2−p−トリルオキサゾール−4−イルメトキシ)シクロヘキサンカルボニル]アミノ}酪酸の製造
【化33】

3−メチル−2(S)−{[(1R,3S)−3−(5−メチル−2−p−トリルオキサゾール−4−イルメトキシ)シクロヘキサンカルボニル]アミノ}酪酸tert−ブチル(141.0g)を、塩化メチレン(700ml)に溶解し、トリフルオロ酢酸(252ml)を加えた。反応混合物を還流下で加熱した。約10時間の反応時間後、反応溶液を減圧下で濃縮し、トルエン(約100ml)を2度加え、混合物を減圧下で濃縮した。得られた残留物を水(1l)に取り込み、33%強度のNaOH水溶液(約150ml)を加えた。カルボン酸のNa塩を溶解し、そして溶液をMTBエーテルで2度(各回70ml)洗浄した。濃HClを用いて、水相をpH1に調節した。所望の生成物が沈殿し、それを吸引濾過し、水で洗浄し、減圧下、50℃で乾燥し、酢酸エチル(1l)で温浸した;収量:118.8g;融点:195〜196℃;1H−NMR(DMSO):δ=0.86(d,6H),1.05−1.3(m,4H),1.64(m,1H),1.76(m,1H),2.04(m,4H),2.36(s,3H),2.38(s,3H),〜3.35(m,1H),4.13(dd,1H),4.40(s,2H),7.31(d,2H),7.81(d,2H),7.84(d,1H),12.5(s,br.,1H)。
【0064】
〔実施例7〕
3−メチル−2(S)−{[(1R,3S)−3−(5−メチル−2−p−トリルオキサゾール−4−イルメトキシ)シクロヘキサンカルボニル]アミノ}ペンタン酸
実施例2〜6の反応系と同様に、(1R,3S)−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピル、4−ヨードメチル−5−メチル−2−p−トリルオキサゾール及びtert−ブチル(S)−ロイシネート・塩酸塩から、3−メチル−2(S)−{[(1R,3S)−3−(5−メチル−2−p−トリルオキサゾール−4−イルメトキシ)シクロヘキサンカルボニル]アミノ}ペンタン酸の生成物を得た;C253425(442.56),MS(ESI):443(M+H+)。
【化34】

【0065】
〔実施例8〕
3−メチル−2(S)−{[(1R,3S)−3−(5−メチル−2−p−トリルオキサゾール−4−イルメトキシ)シクロヘキサンカルボニル]アミノ}プロピオン酸
実施例7と同様に、(1R,3S)−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピル、4−ヨードメチル−5−メチル−2−p−トリルオキサゾール及びtert−ブチル(S)−アラネート・塩酸塩から、生成物、3−メチル−2(S)−{[(1R,3S)−3−(5−メチル−2−p−トリルオキサゾール−4−イルメトキシ)シクロヘキサンカルボニル]アミノ}プロピオン酸を得た;C222825(400.48),MS(ESI):401(M+H+)。
【化35】

【0066】
スキームB用:
〔実施例9〕
(1R,3S)−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピルの酵素によるラセミ分割による製造
【化36】

ラセミ体の3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピル(100g)を、室温において、酢酸ビニル(200ml)、塩化メチレン(800ml)及びノボジム435(Novozym 435)(20g)と一緒にゆっくりと撹拌した。約60%転換(GC)した後、混合物を濾過し、減圧下で濃縮した。これにより、生成物(110g)を得、シリカゲル(1kg)(n−ヘプタン/EA=2/1)を用いたクロマトグラフィーで精製した;第一画分:(1S,3R)−3−アセトキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピル(70.9g);
1H−NMR(CDCl3):δ=1.22(d,6H),1.2−1.6(m,4H),1.8−2.0(m,3H),2.03(s,3H),2.20(m,1H),2.36(m,1H),4.70(m,1H),4.99(sept,1H);62%ee(HPLC:Chiralpak-ADH 32:250×4.6;1ml/min,ヘプタン/EtOH=3:1)。第二画分:(1R,3S)−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピル(35.9g);1H−NMR(CDCl3):δ=1.23(d,6H),1.20−1.45(m,4H),1.68(d,1H),1.86(m,2H),1.95(m,1H),2.18(m,1H),2.34(m,1H),3.63(m,1H),5.00(sept,1H););>99%ee(HPLC:Chiralpak-ADH 32:250×4.6;1ml/min,ヘプタン/EtOH=3:1)。
【0067】
〔実施例10〕
(1R,3S)−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸の、光学的に純粋な(1R,3S)−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピルの塩基性加水分解による製造
【化37】

(1R,3S)−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピル(1g、5.4mmol)を、2NのNaOH(6ml)中、室温で終夜撹拌した。11NのNaOHを数滴加え、そして、混合物を再び終夜撹拌した。エステルは検出されなくなった。混合物をHClで酸性にし、減圧下で濃縮した。残留物をイソプロパノールで温浸し、濾過し、得られた溶液を減圧下で濃縮した;収量:0.6g;1H−NMR(D2O)は、ラセミ酸のNMRデータと一致した。
【0068】
〔実施例11〕
2(S)−[((1R,3S)−3−ヒドロキシシクロヘキサンカルボニル)アミノ]−3メチル酪酸tert−ブチルの、(1R,3S)−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸とtert−ブチル(S)−バリネート・塩酸塩のカップリングによる製造
【化38】

(1R,3S)−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸(8.15g、56.5mmol)、トリエチルアミン(19.6ml)及びtert−ブチル(S)−バリネート・塩酸塩(11.86g、56.5mmol)を、最初にDMF(100ml)に投入し、0℃に冷却し、TOTU([シアノ(エトキシカルボニル)メチレンアミノ]−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム・テトラフルオロボレート)(22.2g、67.8mmol)を少しづつ加えた。反応溶液を18〜22℃で終夜撹拌した。LC−MSによれば、出発物質は完全に転換していた。DMFを減圧下で蒸発させ、そして、残留物を酢酸エチルに取り込み、NaHCO3水溶液で洗浄した。有機相を乾燥(MgSO4)し、そして、減圧下で濃縮した。これにより赤褐色の油状物質(29.4g)を得た。精製のため、生成物をシリカゲル(n−ヘプタン/EA=2/1〜1/1)クロマトグラフィーで精製し、これにより黄色の固体(11.8g)を得、直接次の工程で反応させた;1H−NMR(CDCl3):δ=0.9(m,6H),1.25−1.57(m,4H),1.47(s,9H),1.78−1.95(m,3H),2.07−2.35(m,3H),3.67(m,1H),4.45(m,1H),6.0(d,br.,1H)。
4−ヨードメチル−5−メチル−2−p−トリルオキサゾールによるアルキル化により、2(S)−[((1R,3S)− 3−ヒドロキシシクロヘキサンカルボニル)アミノ]−3−メチル酪酸tert−ブチルを、3−メチル−2(S)−{[(1R,3S)−3−(5−メチル−2−p−トリルオキサゾール−4−イルメトキシ)シクロヘキサンカルボニル]アミノ}酪酸tert−ブチルに転換できた。
【0069】
〔実施例12〕
(1S,3R)−3−アセトキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピルからの、酵素によるエステル加水分解による(1S,3R)−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸の製造
【化39】

室温において、(1S,3R)−3−アセトキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピル(10g)を、リン酸緩衝液(100ml)、pH=7中で、ノボジム435(Novozym 435)(5g)と一緒に、20時間撹拌した。エステルが検出されなくなった(TLC又はGC)。固定化酵素を濾過し、濾液をHClで酸性にし、減圧下で濃縮した。残留物をイソプロパノールで温浸した。濾過後、得られた透明な溶液を減圧下で濃縮した;収量:7.2g;7.2g;1H−NMR(D2O)は、ラセミ酸のNMRデータと一致した。
【0070】
〔実施例13〕
2(R)−[((1S,3R)−3−ヒドロキシシクロヘキサンカルボニル)アミノ]−3メチル酪酸tert−ブチルの、(1S,3R)−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸とtert−ブチル(R)−バリネート・塩酸塩のカップリングによる製造
【化40】

(1S,3R)−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸(2.78g、19.3mmol)、トリエチルアミン(6.7ml)及びtert−ブチル(R)−バリネート・塩酸塩(4.04g、19.3mmol)を、最初にDMF(60ml)に投入し、そして0℃に冷却し、TOTU([シアノ(エトキシカルボニル)メチレンアミノ]−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム・テトラフルオロボレート)(7.57g、23.1mmol)を少しずつ加えた。反応溶液を、18〜22℃で終夜撹拌した。DMFを減圧下で蒸発させ、残留物を酢酸エチルに取り込み、NaHCO3水溶液で洗浄した。有機相を乾燥(MgSO4)し、減圧下で濃縮し、そして、精製のため、シリカゲル(n−ヘプタン/EA=2/1〜1/1)を用いたクロマトグラフィーで精製した;これにより、黄色の固体(4.96g)を得た;1H−NMR(CDCl3):δ=0.9(m,6H),1.25−1.57(m,4H),1.47(s,9H),1.78−1.95(m,3H),2.07−2.35(m,3H),3.67(m,1H),4.45(m,1H),6.0(d,br.,1H)。
4−ヨードメチル−5−メチル−2−p−トリルオキサゾールによるアルキル化により、2(R)−[((1S,3R)−3−ヒドロキシシクロヘキサンカルボニル)アミノ]−3−メチル酪酸tert−ブチルを、3−メチル−2(R)−{[(1S,3R)−3−(5−メチル−2−p−トリルオキサゾール−4−イルメトキシ)シクロヘキサンカルボニル]アミノ}酪酸tert−ブチルに転換できた。
【0071】
スキームC用:
〔実施例14〕
ラセミ体のcis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸の、rac−6−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−7−オンの塩基性加水分解による製造
【化41】

水(20ml)中のrac−6−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−7−オン(1g、7.9mmol)及びNaOH(0.64g、2当量)を、室温で終夜撹拌した。混合物をHCl又は酢酸で酸性にし、減圧下で濃縮し、残留物を酢酸エチル又はイソプロパノールで温浸し、得られた有機溶液を減圧下で濃縮した;収量:0.6〜0.7g;1H−NMR(D2O):δ=0.9−1.2(m,4H),1.6−1.77(m,3H),1.95(m,1H),2.17(m,1H),3.45(m,1H)。
【0072】
〔実施例15〕
ラセミ体のcis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸メチルの製造
【化42】

rac−6−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−7−オン(10g、79.3mmol)及びメタノール(100ml)に、塩化アセチル(7ml)を撹拌しつつ、氷で穏やかに冷却しながら、ゆっくりと加えた。添加中、温度が45℃に上昇したが、10分以内に30℃に低下した。1時間後、反応が終了し、反応混合物を減圧下で濃縮した;収量:12.1g;1H−NMR(CDCl3):δ=1.15−1.50(m,5H),1.8−2.0(m,3H),2.2(m,1H),2.37(m,1H),3.65(m,1H),3.7(s,3H)。
【0073】
〔実施例16〕
ラセミ体のcis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸の、ラセミ体メチルエステルの塩基性加水分解による製造
【化43】

cis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸メチル(1g、6.3mmol)を、室温で、THF(5ml)、水(1ml)及び11NのNaOH(1ml)中で終夜撹拌した。エステルが検出されなくなった。混合物をHClで酸性にし、減圧下で濃縮し、残留物を酢酸エチルで温浸し、濾過し、溶液を減圧下で濃縮した;収量:0.7g;1H−NMR(D2O)は、前の実施例のNMRデータと一致した。
【0074】
〔実施例17〕
ラセミ体のcis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸ベンジルの製造
【化44】

DMF(4ml)中のrac−6−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−7−オン(0.99g、7.9mmol)を、20〜23℃で、ベンジルアルコール(0.97ml、1.2当量)及び炭酸カリウム(1.3g、2.2当量)と一緒に撹拌した。反応が終了した後、水を加え、混合物をMTBEで抽出した。集めた有機相をNaCl飽和水溶液で洗浄し、MgSO4で乾燥し、そして、減圧下で濃縮した。
シリカゲルを用いたクロマトグラフィー(CH2Cl2−CH2Cl2/アセトン=19/1−CH2Cl2/MeOH=18/1)で精製し、所望の生成物(0.55g)を得た。1H−NMR(CDCl3)は、ラセミ体のcis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸セシウム塩と臭化ベンジルとの反応からの1HNMRと一致した。
【0075】
〔実施例18〕
cis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸の、cis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸ベンジルの水素化による製造
【化45】

cis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸ベンジル(4g、17.1mmol)を室温でMeOH(100ml)に溶解した。Pd(10%炭素上)を触媒量加え、そして、混合物を5barで水素化した。反応が終了した(TLC、LCMS)後、触媒をCeliteを通して濾過し、減圧下で溶媒を蒸発させた。濁った残留物を酢酸エチルで温浸し、濾過し、得られた溶液を減圧下で濃縮した;収量:2.0g;1HNMR(D2O)は、上記のNMRデータと一致した。
【0076】
〔実施例19〕
2(S)−[((1R,3S)−3−ヒドロキシシクロヘキサンカルボニル)アミノ]−3メチル酪酸tert−ブチルの、ラセミ体のcis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸とtert−ブチル(S)−バリネート・塩酸塩とのカップリングによる製造及びそれに続く立体選択的酵素アシル化
【化46】

ラセミ体のcis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸及び光学的に純粋なtert−ブチル(S)−バリネート・塩酸塩を、DMF中のトリエチルアミンの存在下で、TOTU([シアノ(エトキシカルボニル)メチレンアミノ]−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム・テトラフルオロボレート)を用いてカップリングさせ(反応条件は、実施例11参照)、反応溶液を処理した。
酢酸ビニル(300ml)中の、この方法で得られたジアステレオマーの混合物(10g)を、カンジダアンタークチカ(Candida Antarctica)からのリパーゼB(1g)と一緒に20〜23℃で撹拌した。約53%転換した後、ヒドロキシル基の立体選択的アシル化を、酵素を濾別することにより終了させた。クロマトグラフィーによる精製で、2(S)−[((1R,3S)−3ヒドロキシシクロヘキサンカルボニル)アミノ]−3−メチル酪酸tert−ブチル(4g)を、96.4%de(HPLC:Chiralpak-AD:250×4.6;1ml/min、ヘプタン/EtOH/MeOH=20/1/1+0.1%TFA)で、及び(S)−2−(1S,3R)−アセテート(6g)を、80%de超で得た。
4−ヨードメチル−5−メチル−2−p−トリルオキサゾールによるアルキル化で、この物質を3−メチル−2(S)−{[(1R,3S)−3−(5−メチル−2−p−トリルオキサゾール−4イルメトキシ)シクロヘキサンカルボニル]アミノ}酪酸tert−ブチルに転換した。
【0077】
スキームD用:
〔実施例20〕
(1R,3S)−3−(tert−ブチルジフェニルシラニルオキシ)シクロヘキサンカルボン酸イソプロピルの合成
【化47】

光学的に純粋な(1R,3S)−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピル(5.8g)をDMF(20ml)に溶解し、そして、TBDPSCl(tert−ブチルジフェニルシリルクロリド)(9.74ml)、イミダゾール(3.2g)及びDMAP(ジメチルアミノピリジン)(100mg)を加え、混合物を18〜23℃で4時間撹拌した。溶媒の大半を減圧下で蒸留させ、油状の残留物をMTBE及び水の間で分配した。有機相を乾燥(MgSO4)し、溶媒を減圧下で蒸留した;収量:粗生成物14g。シリカゲルを用いたクロマトグラフィー(EA/n−ヘプタン=1/6)で精製し、(1R,3S)−3−(tert−ブチルジフェニルシラニルオキシ)シクロヘキサンカルボン酸イソプロピル(7.0g)を得た;1H−NMR(CDCl3):δ=1.04(s,9H),1.19(d,6H),1.0−1.35(m,3H),1.48(m,1H),1.65−1.82(m,3H),2.06(m,2H),3.57(m,1H),4.95(m,1H),7.34−7.43(m,6H),7.66−7.68(m,4H)。
【0078】
〔実施例21〕
(1R,3S)−3−(tert−ブチルジフェニルシラニルオキシ)シクロヘキサンカルボン酸メチルの合成
【化48】

(1R,3S)−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸メチル(11.5g、>99%ee)を、DMF(100ml)に溶解し、TBDPSCl(tert−ブチルジフェニルシリルクロリド)(21.5g)、イミダゾール(6.5g)及びDMAP(ジメチルアミノピリジン)(500mg)を加え、混合物を18〜23℃で終夜撹拌した。大半の溶媒を減圧下で蒸留し、油状の残留物をMTBEに取り込み、水で洗浄した。有機相を乾燥(MgSO4)し、そして、溶媒を減圧下で蒸留した。これにより、(1R,3S)−3−(tert−ブチルジフェニルシラニルオキシ)シクロヘキサンカルボン酸メチル(28g)を黄色の油状物質として得た;C24323Si(396.61),MS(ESI):397(M+H+)。
この物質は塩基性でのエステル加水分解、及びそれに続く、アミノ酸誘導体、例えば、アラニン、ロイシン及びバリンのtert−ブチルエステル又は対応する塩酸塩とのカップリングに直接使用することができた。
【0079】
〔実施例22〕
2(S)−{[(1R,3S)−3−ヒドロキシシクロヘキサンカルボニル]アミノ}−(3S)−メチル酪酸tert−ブチルの、(1R,3S)−3−(tert−ブチルジフェニルシラニルオキシ)シクロヘキサン−1−カルボン酸からの二段階合成
【化49】

光学的に純粋な(1R,3S)−3−(tert−ブチルジフェニルシラニルオキシ)シクロヘキサンカルボン酸(0.35g)(例えば、対応するイソプロピルエステルを、水/イソプロパノール中でNaOHを用いた加水分解により製造された)、t−ブチル(S)−バリネート・塩酸塩(0.38g)及びトリエチルアミン(0.45ml)を、撹拌しつつ、最初にDMF(4ml)中に投入した。0〜5℃において、TOTU([シアノ(エトキシカルボニル)メチレンアミノ]−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム・テトラフルオロボレート)(0.36g)を少量加え、冷却しつつ、混合物を約5分間撹拌した。撹拌を室温で継続し、16時間後、反応を終了させた。全反応混合物を水(約60ml)中に注ぎ、酢酸エチル(各回50ml)で2度抽出した。有機相をMgSO4で乾燥し、減圧下で濃縮した。残留物(1.4g)を、シリカゲル(n−ヘプタン/EA=1/1)を用いて精製した;収量:白色固体394mg。
TBDPS保護基を脱離させるため、2(S)−{[(1R,3S)−3−(tert−ブチルジフェニルシラニルオキシ)シクロヘキサンカルボニル]アミノ}−3−メチル酪酸tert−ブチルを、THF中、テトラブチルアンモニウム・フルオリドと反応させた。この反応混合物を濃縮し、シリカゲル(n−ヘプタン/EA=3/1)を用いて精製し、所望の化合物(197mg)を得た;C1629NO4(299.41),MS(ESI):300(M+H+);HPLC(Chiralpak-AD:250×4.6;1ml/min、ヘプタン/EtOH/MeOH=20/1/1+0.1%TFA):Rt=4.9分。
【0080】
スキームA、B及びD用:
〔実施例23〕
(1S,3R)−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸メチルの、(1S,5R)−6−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−7−オンを経由した(1S,3R)−3−アセトキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピルからの製造
【化50】

酢酸ビニル/塩化メチレン中、ノボジム435(Novozym 435)を用いた、ラセミ体のcis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピルの酵素による立体選択的エステル生成から得られた、(1S,3R)−3−アセトキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピル(2.74g)を、20〜23℃において、メタノール(30ml)中のK2CO3(0.3g)と一緒に撹拌し、ほぼ定量的収率で(1S,5R)−6−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−7−オン:
【化51】

に転換した。濾過及び減圧下での溶媒の濃縮の後、(1R,5S)−6−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−7−オンをメタノール(30ml)に取り込み、撹拌しつつ、氷で穏やかに冷却し、塩化アセチル(1〜2ml)を加えた。反応が終了した後、反応混合物を減圧下で濃縮した;収量:1.5g;1H−NMR(CDCl3):δ=1.15−1.50(m,5H),1.8−2.0(m,3H),2.2(m,1H),2.37(m,1H),3.65(m,1H),3.7(s,3H)。
(1S,3R)−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸メチルは、直接、次の反応に用いた。
【0081】
式(II)の化合物からラセミ体の式(IV)の化合物への、スキームA、B、C、D、E−二段階転換用:
〔実施例24〕
ラセミ体のcis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸セシウム塩の製造
【化52】

rac−6−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−7−オン(10g、79.3mmol)及び水酸化セシウム一水和物(13.5g、80.3mmol)を、水(50ml)中、室温で撹拌した。2時間後、反応が終了した。混合物を減圧下で濃縮し、DMF(各回50ml)を2回加え、混合物を減圧下で濃縮した;収率:19.6g(89.5%);1H−NMR(D2O):δ=1.1−1.37(m,4H),1.75−2.25(m,5H),3.63(m,1H)。
【0082】
〔実施例25〕
ラセミ体のcis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸ベンジルの製造
【化53】

ラセミ体のcis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸セシウム塩(2g、7.24mmol)及び臭化ベンジル(1.1g、0.81ml、6.82mmol)を、DMF(10ml)中、室温で撹拌した。4時間撹拌し、終夜放置した後、ベンジル化が完了した。反応混合物を水(約100ml)中に入れ、MTBE(各回約50ml)で2回抽出した。集めた有機相を水で1回洗浄し、次いで、MgSO4を用いて乾燥し、減圧下で濃縮した;粗収率:1.3g(76.6%)。粗生成物を直接次の反応用いるか、又は、クロマトグラフィーで精製した;1H−NMR(CDCl3):δ=1.17−1.50(m,4H),1.62(d,1H),1.80−2.0(m,3H),2.22(m,1H),2.43(m,1H),3.62(m,1H),5.12(s,2H),7.28−7.40(m,5H)。
立体選択的エステル形成による、酵素ラセミ体分割の更なる実施例:
【0083】
〔実施例26〕
cis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸メチルの立体選択的アシル化
【化54】

ラセミ体の3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸メチル(500mg)、酢酸ビニル(1ml)、塩化メチレン(4ml)及びノボジム435(Novozym 435)(25mg)を室温でゆっくりと撹拌した。約54%の転換(GC)後、反応を酵素の濾過により終了させた。(1R,3S)−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸メチルの光学的純度は、>99%eeと定量された。
【0084】
〔実施例27〕
ラセミ体のcis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸ベンジルの立体選択的アシル化による、(1R,3S)−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸ベンジルの合成
【化55】

ラセミ体の3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸ベンジル(108mg、0.5mmol)を室温で、酢酸ビニル(5ml)及び塩化メチレン(4ml)中、ノボジム435(Novozym 435)(54mg)と一緒にゆっくり撹拌した。濾過及び減圧下での濃縮の後、生成物を、シリカゲルを用いたクロマトグラフィー(n−ヘプタン/EA=2/1)で精製した;収量:56mg:(1R,3S)−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸ベンジル;1H−NMR(CDCl3):δ=1.15−1.5(m,4H),1.63(d,1H),1.85(m,1H),1.95(m,2H),2.23(m,1H),2.41(m,1H),3.62(m,1H),5.11(s,2H),7.35(m,5H);ee>99%(HPLC:Chiracel OJ:250×4.6;1ml/min,ヘプタン/EtOH/MeOH=70/1/1)。
【0085】
〔実施例28〕
(1R,3S)−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸ベンジルの、ラセミ体cis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸ベンジルのラセミ分割による合成
【化56】

cis−(1RS,3SR)−3−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸ベンジル(29.5g)を酢酸ビニル(約200ml)に溶解し、ノボジム435(Novozym 435)(15g)を加え、混合物を20〜23℃で撹拌した。75分後、酵素を濾過し、溶液を減圧下で濃縮した。シリカゲルを用いたクロマトグラフィー(n−ヘプタン/酢酸エチル=2/1)により、(1R,3S)−3−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸ベンジル(12g)を得た;>99%ee(HPLC:Chiracel-OJ:250×4.6;1 ml/min,ヘプタン/EtOH/CH3OH=70/1/1);1H−NMR(DMSO),δ=0.98−1.30(m,4H),1.66−1.82(m,4H),2.04(m,1H),2.39(m,1H),3.39(m,1H),4.63(dd,2H),5.08(m,1H),7.30−7.40(m,5H)。
又、この反応で(1S,3R)−アセチル化合物(17g)を得た;94%ee(HPLC:Chiracel-OJ:250×4.6;1ml/min,ヘプタン/EtOH/CH3OH=70/1/1,アセチル基脱離後)。
【0086】
〔実施例29〕
cis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピルのラセミ体分割
【化57】

ラセミ体のcis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピル(200mg、1.07mmol)をアセトン(10ml)に溶解し、無水コハク酸(584mg、5.78mmol)及びノボジム435(Novozym 435)(40mg)を加え、混合物を5℃で撹拌した。40〜45%転換した後、反応を酵素の濾過により終了させた。濃縮した試料を用いて、未反応の基剤とアシル化生成物の両者の光学的純度を定量した。(1R,3S)−3ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピルの光学的純度は72%ee(HPLC:Chiralpak AD-H:250×4.6;1ml/min,ヘプタン/MeOH/EtOH/TFA=500/100/100/0.7)、(1R,3S)−コハク酸モノ(cis−3−イソプロポキシカルボニルシクロヘキシル)の光学的純度は、>97%ee(HPLC:Chiralpak-AD-H:250×4.6;1ml/min,ヘプタン/MeOH/EtOH/TFA=500/100/100/0.7)であった。
【0087】
〔実施例30〕
cis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピルのラセミ体分割
【化58】

ラセミ体のcis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピル(200mg、1.07mmol)をDIPE(10ml)に溶解し、無水コハク酸(584mg、5.78mmol)及びノボジム435(Novozym 435)(40mg)を加え、混合物を35℃で撹拌した。約40%転換した後、反応を酵素の濾過により終了させた。濃縮した試料を用いて、未反応の基剤とアシル化生成物の両者の光学的純度を定量した。(1R,3S)−3ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピルの光学的純度は61%eeであった(HPLC:Chiralpak AD-H:250×4.6;1ml/min,ヘプタン/MeOH/EtOH/TFA=500/100/100/0.7)、(1R,3S)−コハク酸モノ(cis−3−イソプロポキシカルボニルシクロヘキシル)の光学的純度は94%ee(HPLC:Chiralpak AD-H:250×4.6;1ml/min,ヘプタン/MeOH/EtOH/TFA=500/100/100/0.7)であった。
【0088】
〔実施例31〕
cis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピルのラセミ体分割
【化59】

ラセミ体のcis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピル(200mg、1.07mmol)をアセトン(10ml)に溶解し、無水コハク酸(584mg、5.78mmol)及びノボジム435(Novozym 435)(160mg)を加え、混合物を35℃で撹拌した。45〜49%転換した後、反応を酵素の濾過により終了させた。濃縮した試料を用いて、未反応の基剤とアシル化生成物の両者の光学的純度を定量した。(1R,3S)−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピルの光学的純度は、84%ee(HPLC:Chiralpak AD-H:250×4.6;1ml/min,ヘプタン/MeOH/EtOH/TFA= 500/100/100/0.7)、(1R,3S)−コハク酸モノ(cis−3−イソプロポキシカルボニルシクロヘキシル)の光学的純度は96%ee(HPLC:Chiralpa AD-H:250×4.6;1ml/min,ヘプタン/MeOH/EtOH/TFA=500/100/100/0.7)であった。
【0089】
〔実施例32〕
cis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピルのラセミ体分割
【化60】

ラセミ体のcis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピル(200mg、1.07mmol)をMTBEエーテル(10ml)に溶解し、無水コハク酸(119mg、1.18mmol)及びノボジム435(Novozym 435)(160mg)を加え、混合物を35℃で撹拌した。33〜37%転換した後、反応を酵素の濾過により終了させた。濃縮した試料を用いて、未反応の基剤とアシル化生成物の両者の光学的純度を定量した。(1R,3S)−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピルの光学的純度は、46%ee(HPLC:Chiralpak AD-H:250×4.6;1ml/min,ヘプタン/MeOH/EtOH/TFA=500/100/100/0.7)、(1R,3S)−コハク酸モノ(cis−3−イソプロポキシカルボニルシクロヘキシル)の光学的純度は93%ee(HPLC:Chiralpak AD-H:250×4.6;1ml/min,ヘプタン/MeOH/EtOH/TFA=500/100/100/0.7)であった。
【0090】
〔実施例33〕
cis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピルのラセミ体分割
【化61】

ラセミ体のcis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピル(200mg、1.07mmol)をTHF(10ml)に溶解し、ノボジム435L−2(Novozym 435 L-2)を加え、混合物を35℃で撹拌した。約40%転換した後、反応を酵素の濾過により終了させた。濃縮した試料を用いて、未反応の基剤とアシル化生成物の両者の光学的純度を定量した。(1R,3S)−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピルの光学的純度は、64%ee(HPLC:Chiralpak AD-H:250×4.6;1ml/min,ヘプタン/MeOH/EtOH/TFA=500/100/100/0.7)、(1R,3S)−コハク酸モノ(cis−3−イソプロポキシカルボニルシクロヘキシル)の光学的純度は97%eeであった(HPLC:Chiralpak AD-H:250×4.6;1ml/min,ヘプタン/MeOH/EtOH/TFA=500/100/100/0.7)。
【0091】
〔実施例34〕
cis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピルのラセミ体分割
【化62】

ラセミ体のcis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピル(200mg、1.07mmol)をDIPE(10ml)に溶解し、無水コハク酸(584mg、5.78mg)、ノボジム435(Novozym 435)(40mg)を加え、混合物を35℃で撹拌した。40〜45%転換した後、反応を酵素の濾過により終了させた。濃縮した試料を用いて、未反応の基剤とアシル化生成物の両者の光学的純度を定量した。(1R,3S)−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピルの光学的純度は、70%ee(HPLC:Chiralpak AD-H:250×4.6;1ml/min,ヘプタン/MeOH/EtOH/TFA=500/100/100/0.7)、(1R,3S)−コハク酸モノ(cis−3−イソプロポキシカルボニルシクロヘキシル)の光学的純度は92%ee(HPLC:Chiralpak AD-H:250×4.6;1ml/min,ヘプタン/MeOH/EtOH/TFA=500/100/100/0.7)であった。
【0092】
〔実施例35〕
cis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピルのラセミ体分割
【化63】

ラセミ体のcis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピル(200mg、1.07mmol)をn−ヘプタン(10ml)に溶解し、無水コハク酸(119mg、1.18mg)、ノボジム435(Novozym 435)(160mg)を加え、混合物を5℃で撹拌した。約30%転換した後、反応を酵素の濾過により終了させた。濃縮した試料を用いて、未反応の基剤とアシル化生成物の両者の光学的純度を定量した。(1R,3S)−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピルの光学的純度は、43%ee(HPLC:Chiralpak AD-H:250×4.6;1ml/min,ヘプタン/MeOH/EtOH/TFA=500/100/100/0.7)、(1R,3S)−コハク酸モノ(cis−3−イソプロポキシカルボニルシクロヘキシル)の光学的純度は96%ee(HPLC:Chiralpak AD-H:250×4.6;1ml/min,ヘプタン/MeOH/EtOH/TFA=500/100/100/0.7)であった。
【0093】
〔実施例36〕
cis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピルのラセミ体分割
【化64】

ラセミ体のcis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピル(200mg、1.07mmol)をトルエン(10ml)に溶解し、無水コハク酸(584mg、5.78mg)、ノボジム435(Novozym 435)(160mg)を加え、混合物を5℃で撹拌した。46〜49%転換した後、反応を酵素の濾過により終了させた。濃縮した試料を用いて、未反応の基剤とアシル化生成物の両者の光学的純度を定量した。(1R,3S)−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピルの光学的純度は、>76%ee(HPLC:Chiralpak AD-H:250×4.6;1ml/min,ヘプタン/MeOH/EtOH/TFA=500/100/100/0.7)、(1R,3S)−コハク酸モノ(cis−3−イソプロポキシカルボニルシクロヘキシル)の光学的純度は91%ee(HPLC:Chiralpak AD-H:250×4.6;1ml/min,ヘプタン/MeOH/EtOH/TFA=500/100/100/0.7)であった。
【0094】
〔実施例37〕
cis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピルのコハク酸無水物を用いた、立体選択的酵素アシル化による、(1R,3S)−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピル及び(1R,3S)−コハク酸モノ(3−イソプロポキシカルボニルシクロヘキシル)の製造
【化65】

ラセミ体のcis−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピル(2.0mg、10.7mmol)をMTBエーテル(100ml)に溶解し、無水コハク酸(5.84g、57.8mmol)、ノボジム435(Novozym 435)(1.6g)を加え、混合物を35℃で撹拌した。約50%転換した後、反応を酵素の濾過により終了させた。反応混合物をアセトンに溶解し、減圧下で濃縮し、ジイソプロピルエーテル/n−ヘプタン=4/1及び1MのNa2CO3水溶液間で分配した。有機相を濃縮し、(1R,3S)−3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸イソプロピル(890mg)を得た;1H−NMR(CDCl3):δ=1.23(d,6H),1.20−1.45(m,4H),1.68(d,1H),1.86(m,2H),1.95(m,1H),2.18(m,1H),2.34(m,1H),3.63(m,1H),5.00(sept,1H);光学的純度:90%ee(HPLC:Chiralpak AD-H:250×4.6;1ml/min,ヘプタン/MeOH/EtOH/TFA=500/100/100/0.7)。
2NのHClを用いて、水相をpH=6〜7に調節し、酢酸エチルで2回抽出した。乾燥(Na2SO4)後濃縮し、(1R,3S)−コハク酸モノ(3−イソプロポキシカルボニルシクロヘキシル)(1.39g)を得た;1H−NMR(CDCl3):δ=1.22(d,6H),1.24−1.41(m,3H),1.47(q,1H),1.83−2.01(m,3H),2.17−2.24(m,1H),2.35(tt,1H),2.58−2.64(m,2H),2.64−2.71(m,2H),4.69−4.79(m,1H),4.99(sept,1H);光学的純度:88%ee(HPLC:ChiralpakAD-H:250×4.6;1ml/min,ヘプタン/MeOH/EtOH/TFA=500:100:100:0.7)。
分離した生成物又は粗生成物の混合物は、1H−NMR、及び/又は、質量スペクトル、及び/又は、GC又はHPLCで同定した。
エステル及びアルコールの光学的純度は、HPLCにより、例えば、hiralpak AD:250×4.6(Daicel)又はChiracel-OD:250×4.6により定量した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Ia)及び(Ib):
【化1】

[ここで、
1は、
【化2】

であり、ここで、
3は、H、(C1−C6)−アルキル、(C3−C8)−シクロアルキル、(C1−C3)−アルキル−(C3−C8)−シクロアルキル、フェニル、(C1−C3)−アルキル−フェニル、(C5−C6)−ヘテロアリール、(C1−C3)−アルキル−(C5−C6)−ヘテロアリール、又は全て若しくは部分的にFで置換された(C1−C3)−アルキルであり;
4、R5は、互いに独立に、H、F、Cl、Br、CF3、OCF3、(C1−C6)−アルキル、O−(C1−C6)−アルキル、SCF3、SF5、OCF2−CHF2、(C6−C10)−アリール、(C6−C10)−アリールオキシ、OH、NO2であり;又は
4及びR5は、それらが結合する炭素原子と一緒になって、縮合した、部分的飽和又は不飽和の二環式(C6−C10)−アリール又は(C5−C11)−ヘテロアリール環を形成し;
Wは、n=1の場合、CH、Nであり;
Wは、n=0の場合、O、S、NR6であり;
mは、1〜6であり;
6は、H、(C1−C6)−アルキル−フェニル、(C1−C6)−アルキルであり;又は
1は、例えば、ベンジルオキシメチル、ベンジル、パラ−メトキシベンジル、tert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)、tert−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、テトラヒドロピラニル(THP)、1−エトキシエチル(EE)、1−メチル−1−メトキシエチル又は1−メチル−1−ベンジルオキシエチルの様なOH保護基(PG)であり;そして、
2は、
【化3】

であり、ここで、
pは、0〜2であり;
7は、H、(C1−C6)−アルキルであり;
8は、H、(C1−C6)−アルキルであり;
9は、H、F、(C1−C6)−アルキルであり;
10は、H、F、(C1−C6)−アルキル、O−(C1−C6)−アルキル、(C2−C6)−アルケニル、(C2−C6)−アルキニル、(C3−C8)−シクロアルキル、フェニルであり、ここで、アルキル、アルケニル、アルキニル及びシクロアルキルは、場合により、ヒドロキシル、フェニル、(C5−C11)−ヘテロアリール、O−(C1−C6)−アルキル及びNR1314から成るグループからの1つ又はそれ以上の基で置換されても良く、そして、フェニルは、場合により、ヒドロキシル、O−(C1−C6)−アルキル、F及びCF3から成るグループからの1つ又はそれ以上の基で置換されても良く、但し、R9がFの場合、R10は、NR1314又はO−(C1−C6)−アルキルではなく;
9及びR10は、それらが結合する炭素原子と一緒になって、(C3−C8)−シクロアルキルであり;
10及びR12は、n=0の場合、それらが一緒になって、ピロリジン及びピペリジンであり;
11は、H、(C1−C8)−アルキル、ベンジル、(C1−C4)−アルキル−(C6−C10)−アリール、(C1−C4)−アルキル−O−(C1−C4)−アルキル、フェニル−(C1−C4)−アルキルであり、ここで、アルキル、ベンジル、フェニル、アリールは、場合により、O−(C1−C6)−アルキル、OCH2CH2−OMe、F、Cl、Br、I、Si(CH33、OSi(CH33、Si(iPr)3、OSi(iPr)3、OCH2CH2−SiMe3、OCH2−Si(iPr)3、O−CH2−C65、SO264−p−Me、SMe、CN、NO2、CH2COC65により、一置換又は多置換されても良く;
12は、H、(C1−C6)−アルキル、(C2−C6)−アルケニル、(C2−C6)−アルキニル、ベンジル、CO−(C1−C6)−アルキル、CO−フェニル、C(O)−O−(C1−C6)−アルキル、アリルオキシカルボニル(ALOC)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz、Z)、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)、(C1−C4)−アルキル−(C6−C10)−アリール、(C1−C4)−アルキル−(C5−C11)−ヘテロアリール、(C1−C4)−アルキル−O−(C1−C4)−アルキル、フェニル−(C1−C4)−アルキル、(C5−C6)−ヘテロアリール−(C1−C4)−アルキル、SO2−(C1−C6)−アルキル、SO2−(C1−C6)−アルキル−SO2−(C1−C6)−アルキル、SO2−フェニルであり、ここで、フェニルは、場合により、(C1−C6)−アルキル、O−(C1−C6)−アルキル、F、Clで置換されても良く;
13は、(C1−C6)−アルキルであり;
14は、(C1−C6)−アルキル−フェニル、(C1−C6)−アルキルである]
のキラル性で、且つ、非ラセミ体の化合物を製造する方法であって、
A)
a)ラクトン環の開環(LO)
式(II):
【化4】

のラセミ体の6−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−7−オンを、式(III):
HO−R15 (III)
[ここで、R15は、H、(C1−C8)−アルキル、(C3−C8)−シクロアルキル、(C2−C8)−アルケニル、(C2−C8)−アルキニル、ベンジル、(C1−C4)−アルキル−(C6−C10)−アリール、(C1−C4)−アルキル−(C5−C11)−ヘテロアリール、(C1−C4)−アルキル−O−(C1−C4)−アルキル、フェニル−(C1−C4)−アルキル、(C5−C6)−ヘテロアリール−(C1−C4)−アルキルであり、ここで、アルキル、ベンジル、フェニル、アリール、ヘテロアリールは、場合により、フェニル、O−(C1−C6)−アルキル、OCH2CH2−OMe、OTs、F、Cl、Br、I、Si(CH33、OSi(CH33、Si(iPr)3、OSi(iPr)3、OCH2CH2−SiMe3、OCH2−Si(iPr)3 OTHP、O−CH2−C65、SO264−p−Me、SMe、CN、NO2、COOH、CONH2、CH2COC65、CO−ベンジルオキシ、CO−O(C1−C6)−アルキル、NHTs、NHAc、NHBoc、NHAloc、NHベンジルにより、一置換又は多置換されても良い]
の化合物と、好適な塩基又は酸の存在下、好適な溶媒中で反応させ、又は、アルコール中の酸ハライドと反応させ、ここで、水性反応の場合、処理条件によって、塩又は遊離酸のいずれが得られるかが決まり、例えば、式(IV):
【化5】

(ここで、R15は、上記で定義した通りである)
のラセミ体で、且つ、cis−配置の化合物を得、又は、処理条件に依存して、例えば、R15は、又、Cs、Li、K、NH4、Ca、Ba、Mgであり、Cs+、Li+、K+、NH4+、Ca2+、Ba2+、Mg2+塩の様なイオン形態で存在しても良い、式(IV)の化合物を得、そして適切な場合、得られる生成物は、式(IV)の別の生成物に更に転換され;
b)酵素によるエステル形成(EF)+分離(S)
得られた式(IV)の化合物を、立体選択的な酵素によるエステル形成(EF)させ、この場合、アシルドナー及び酵素を有機溶媒中のヒドロキシル化合物に加え、得られた混合物を−20から80℃で撹拌し、反応が終了した後、1つの
立体異性体は式(Vb):
【化6】

[ここで、R16は、C(=O)−(C1−C16)−アルキル、C(=O)−(C2−C16)−アルケニル、C(=O)−(C3−C16)−アルキニル、C(=O)−(C3−C16)−シクロアルキルであり、ここで、1つ又はそれ以上の炭素原子が酸素原子で置換されても良く、そして、F、Cl、Br、CF3、CN、NO2、ヒドロキシル、メトキシ、エトキシ、フェニル、CO−O(C1−C4)−アルキル及びCO−O(C2−C4)−アルケニルから成るグループからの1〜3個の置換基で置換されても良く、ここで、フェニル、CO−O(C1−C4)−アルキル及びCO−O(C2−C4)−アルケニル部分は、F、Cl、Br、CF3から成るグループからの1〜3個の置換基で置換されても良く、そして
15は、上記で定義した通りである]
のエステルとして存在し、そして、他の立体異性体は、式(IVa):
【化7】

のアルコールとして、変化せずに存在し、そして、これらの化合物は、それ故、異なった化学的又は物理化学的特性を利用して、互いに分離することができ、又は、後に続く、エステルが関与しない化学的後続反応により更に処理することができ、ここで、
アルコールとして得られた式(IVa)のエナンチオマーは、以下のd)に記載されるように更に処理し、又は
c)エステルの開裂
アシル化した化合物として得られる式(Vb)のエナンチオマーを、公知の方法で加水分解して、化学的にエナンチオマー性のアルコール(IVb):
【化8】

を得、又は、例えば、メタノール中のK2CO3との反応により、分子内エステル交換し、1つの異性体形態の生成物に転換することが可能な光学的に活性な(1S,5R)−6−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−7−オンを得、又は、式(Vb)の化合物を、例えば、リパーゼ触媒により両者のエステル官能基を開裂し、1つの異性体形態の生成物に転換することが可能な、光学的に活性な式IVb(ここでR15がHである)の化合物に転換し;d)アルキル化(Alk−R1/Alk−PG)
式(VI):
1−X (VI)
[ここで、R1は、
【化9】

であり、そして、
3、R4、R5、W、n及びmは、上記で定義した通りである;又は、
1は、THP、EE、1メチル−1−メトキシエチル又は1−メチル−1−ベンジルオキシエチルを除く、上記で定義したOH保護基(PG)であり;そして
Xは、Cl、Br、I、OTs、OMs、OTfである]
の化合物との、好適な溶媒中、塩基の存在下での、更なる転換により、式(VIIa)又は(VIIb):
【化10】

の化合物を得;又は、R1がPGの場合、式(VIIIa)又は(VIIIb):
【化11】

の化合物を得、又は、
1は、テトラヒドロピラニル(THP)、1−エトキシエチル、1−メチル−1−メトキシエチル又は1−メチル−1−ベンジルオキシエチルの様なOH保護基(PG)であり;そして
OH保護基を導入するため、式(IVa)又は(IVb)の化合物を、酸触媒下で、適切な公知のエノールエーテルと反応させ、式(VIIIa)又は(VIIIb)の化合物を得;そして
e)直接反応又はエステル開裂及びカップリング(DR又はEC+C)
e1)得られた式(VIIa)若しくは(VIIb)の化合物、又は式(VIIIa)若しくは(VIIIb)の化合物を、直接反応(DR)で、例えば、式(IX):
2−H (IX)
(ここで、R2は、
【化12】

であり;
R7、R8、R9、R10、R11、R12及びpは、上記で定義した通りである)
のアミン、又は、対応するリチウム若しくはジメチルアルミニウム誘導体と反応させることにより、又は、式(VIIa)若しくは(VIIb)の化合物、又は、
式(VIIIa)若しくは(VIIIb)の化合物を、式(IX)のアミン若しくはアミノ酸誘導体R2−Hと、活性化試剤又は触媒の存在下で反応させ、式(Ia)若しくは(Ib):
【化13】

の化合物又はその異性体を得、又は、
1がPGの場合、式(Xa)又は(Xb):
【化14】

の化合物を得、又は、
e2)得られた式(VIIa)若しくは(VIIb)、又は式(VIIIa)若しくは(VIIIb)の化合物は、エステル開裂を行い、そして、得られた式(XIa)若しくは(XIb)、又は(XIIIa)若しくは(XIIIb):
【化15】

の化合物、又は、対応する塩を、引き続いて、式(IX):
2−H (IX)
(ここで、R2は、
【化16】

であり;
R7、R8、R9、R10、R11、R12及びpは、上記で定義した通りである)
の化合物と、脱水剤又は活性化試剤の存在下で、カップリングさせ、式(Ia)若しくは(Ib):
【化17】

の化合物、又はその異性体を得、そして、適切であれば、
f)保護基PGの脱離(RPG)
1が、上記のR1で定義したOHの保護基(PG)である場合、式(Xa)又は(Xb):
【化18】

(ここで、R2及びPGは、上記で定義した通りである)
の化合物を、公知の方法により保護基を脱離して、式(XIIa)又は(XIIb):
【化19】

(ここで、R2は、上記で定義した通りである)
の化合物へ転換し、次いで、上記の方法の変形法に従って式(Ia)若しくは(Ib)の化合物、又はそれらの異性体に転換し;
ここで、上記のA)で記載した個々の反応工程の順序を、
A)LO→EF+S[→EC]→Alk−R1→DR、又は、EC+C→生成物/異性体形態;から、
B)LO→EF+S[→EC]→DR、又は、EC+C→Alk−R1→生成物/異性体形態;又は、
C)LO→DR、又は、EC+C→EF+S→[EC]→Alk−R1→生成物/異性体形態;又は、
D)LO→EF+S→[EC]→Alk−PG→DR、又は、EC+C→RPG→Alk−R1→生成物/異性体形態;又は、
E)LO→Alk−PG→DR、又は、EC+C→RPG→EF+S→[EC]→Alk−R1→生成物/異性体形態;
へ変えることも、又、可能である;
上記の製造方法。
【請求項2】
方法A)、B)及びD)が採用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
方法A)が採用される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の式(Ia)及び(Ib)の化合物を製造する方法であって、
R4は、Br、CF3、OCF3、(C1−C6)−アルキル、O−(C1−C6)−アルキルであり;
R5は、H、(C1−C6)−アルキル、O−(C1−C6)−アルキルであり;又は
R4及びR5は、フェニル環と一緒になって、ナフチルであり;
R3は、CF3、(C1−C6)−アルキル、(C3−C6)−シクロアルキル、フェニルであり;
Wは、n=1の場合、CHであり;
mは、1であり;
pは、0であり;
R9は、H、(C1−C6)−アルキルであり;
R10は、(C1−C6)−アルキルであり、ここで、アルキルは、場合によりフェニルで置換されても良く;
R10及びR12は、p=0の場合、それらが結合する原子と一緒になって、ピロリジンであり;
R9及びR10は、それらが結合する炭素原子と一緒になって、(C3−C6)−シクロアルキルであり;
R11は、Hであり、
R12は、H、(C1−C6)−アルキル、ベンジルである;
上記の製造方法。

【公表番号】特表2008−509102(P2008−509102A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524225(P2007−524225)
【出願日】平成17年7月23日(2005.7.23)
【国際出願番号】PCT/EP2005/008058
【国際公開番号】WO2006/015716
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(397056695)サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (456)
【Fターム(参考)】