説明

ヒンジ機構および無線通信端末

【課題】 角度を検知することが可能なヒンジ機構を提供し、かかるヒンジ機構を利用することで、無線通信端末のヒンジ機構の経年劣化を判定することができ、さらにアンテナを適した方向に向けさせ、無線通信の最適化を図ることが可能となる。
【解決手段】
本発明のヒンジ機構130は、固定部250と、固定部250に対して回転自在に嵌合された回転部260と、回転部260の外縁に設けられた複数の溝262と、溝262に設けられた被膜264と、固定部250に設けられ、溝262に被膜264を介して掛合し回転部260を掛止する掛止部252と、を備え、溝262に設けられた被膜264は隣接する溝262に設けられた被膜264と異なる抵抗値を有するように形成されることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジ機構および無線通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、携帯電話やPHS(Personal Handy-phone System)、PDA(Personal Digital Assistant)など、様々な携帯通信端末が提供されている。これらの携帯通信端末は表示インターフェースとして液晶などの表示部、複数のスイッチ(キー)やタッチパネルといった操作部を備え、使用者が外出先で簡便に情報を参照、入力しうるように構成されている。
【0003】
特に近年、技術の進歩により上述した様々な携帯通信端末は、高機能化の一途をたどり、例えば電話帳などのリストを参照するに留まらず、ウェブブラウザやゲームなどの様々なアプリケーションが実行可能となっている。かかる携帯通信端末で上記様々なアプリケーションを実行するためにはある程度の大きさおよび解像度を備えた表示部が必要となる。
【0004】
そこで、様々なアプリケーションが実行可能となる表示領域の広い表示部が設置可能であり、かつ携帯性を向上させるため端末自体がコンパクトになる折り畳み式の携帯通信端末(以下、単に折り畳み端末と称する)が広く採用されている。
【0005】
折り畳み端末は、上述したように、内側に表示インターフェースとしての表示部を備え、内側の他面には複数のスイッチ(キー)等の操作部が設けられる。折り畳み端末は不使用時には折り畳むことができるため、表示部や操作部の擦過を防ぐことができ、さらには操作部の誤操作も防止できる。
【0006】
しかし、折り畳み端末は形態の変化に応じた機能の切換が必要となる。例えば、表示部は、折り畳んだ状態(閉状態)では画面を表示する必要がなく消費電力の削減のために表示機能をオフにし、折り畳み端末を開いた状態(開状態)にある場合にのみ表示機能をオンにする。
【0007】
そこで、表示部が設けられた筐体に永久磁石を設置し、操作部が設けられた筐体にリードスイッチを設け、リードスイッチが磁力を検知することで、折り畳み端末の開閉を検知する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−257754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、近年、インターネット等の通信ネットワークのブロードバンド化が進んでおり、携帯電話網にも利用されているCDMA(Code Division Multiple Access)、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)や、データ通信を主眼としたiBurst(登録商標)が利用されている。
【0009】
上述したiBurst(登録商標)等を採用する無線通信端末は、PCMCIA(Personal Computer Memory Card International Association)スロットやUSB(Universal Serial Bus)を介し、パーソナルコンピュータ(PC)と接続して使用される使用形態が一般的である。この場合、最適に無線通信を行うために無線通信端末に設けられたアンテナの方向は、無線通信端末の設置形態によって異なる。そのため、最善のアンテナ方向に設置されるとは限らなかった。
【0010】
最善のアンテナ方向を実現するためには、少なくとも折り畳み端末の開閉状態を検知する必要があるが、上述した特許文献1に記載された技術では、開状態および閉状態の2つの状態しか検知することはできない。かかる2つの状態ではアンテナは略同一の方向を向くことになるため、無線通信端末のアンテナを適した方向に向かせる(合致度)ためには利用できない。
【0011】
また、上述した折り畳み端末は、頻繁に開閉を行うものであるため、ヒンジ機構が破損する場合も多い。そこでヒンジ機構が破損した場合に、製品寿命であるのか、落下や衝撃などの不慮の事故によるものなのか等の故障原因を特定したいという要望もある。
【0012】
そこで、本発明は、このような問題に鑑み、角度を検知することが可能なヒンジ機構を提供し、かかるヒンジ機構を利用することで、無線通信端末のヒンジ機構の経年劣化を判定することができ、さらにアンテナを適した方向に向かせ、無線通信の最適化を図ることが可能な無線通信端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明にかかるヒンジ機構の代表的な構成は、固定部と、固定部に対して回転自在に嵌合された回転部と、回転部の外縁に設けられた複数の溝と、溝に設けられた被膜と、固定部に設けられ、溝に被膜を介して掛合し回転部を掛止する掛止部と、を備え、溝に設けられた被膜は隣接する溝に設けられた被膜と異なる抵抗値を有するように形成されることを特徴とする。上記掛止部が接触した被膜の抵抗値に基づいて固定部と回転部とが成す角度を導出する角度導出部をさらに含んでもよい。
【0014】
溝と掛止部によるラッチ機構により、回転部を所定の角度で掛止することができ、さらに、溝ごとに被膜の抵抗値が異なるため、掛止部に接触している被膜の抵抗値を測るだけでその掛止された角度を検知することができる。
【0015】
上記被膜は、その材質の違いによって異なる抵抗値を実現してもよい。これにより、膜厚を変更することなく、即ち、溝と掛止部との相対距離を変更することなく、それぞれの溝の抵抗値を異ならせることが可能となる。
【0016】
上記被膜は、その厚みによって異なる抵抗値を実現してもよい。これにより、同一の材質の被膜の厚みを変更するだけで、溝ごとに抵抗値を変更させることができる。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明にかかる無線通信端末の代表的な構成は、第1筐体の一端に設けられた固定部と、第2筐体の一端に設けられ、固定部に対して回転自在に嵌合された回転部と、回転部の外縁に設けられた複数の溝と、溝に設けられた被膜と、固定部に設けられ、溝に被膜を介して掛合し回転部を掛止する掛止部と、掛止部が接触した被膜の抵抗値に基づいて固定部と回転部とが成す角度を導出する角度導出部と、を備えることを特徴とする。
【0018】
第2筐体に設けられた溝と第1筐体に設けられた掛止部によるラッチ機構により、第2筐体を所定の角度で掛止することができ、さらに、溝ごとに被膜の抵抗値が異なるため、掛止部に接触している被膜の抵抗値を測るだけでその掛止された第1筐体と第2筐体が成す角度を検知することができる。
【0019】
上記導出された角度の変位履歴に応じて、固定部および回転部の劣化を推定する劣化推定部をさらに備えてもよい。
【0020】
このように、確実に固定部および回転部の劣化すなわち固定部と回転部が摺動することで生じる消耗を推定することができる。したがって、交換予測が可能な部品に関して、ユーザは大事に至る前にその消耗を把握することができる。また、固定部と回転部の嵌合する箇所に不具合があった場合、それが経時劣化であるか、突発的に加えられた外力によるものであるかを容易に判断することができ、不具合の原因を迅速に特定することが可能となる。
【0021】
上記第1筐体または第2筐体の一方に設けられたI/Fコネクタと、第1筐体または第2筐体の他方に設けられた指向性アンテナと、導出された角度に応じて電波の送受信が有効な方向を決定し、当該有効な方向に指向性アンテナを向けさせる方向決定部と、をさらに備えてもよい。
【0022】
第1筐体と第2筐体とが成す角度すなわちI/Fコネクタと指向性アンテナとが成す角度に応じて、電波の送受信が有効な方向を決定することで、指向性アンテナを最適な方向に向けることができ、好適に無線通信を行うことが可能となる。
【0023】
上記指向性アンテナは、電波の送受信が有効な方向を異ならせて複数設置され、方向決定部は、導出された角度に応じて、電波の送受信が有効な方向にある指向性アンテナに切り換えさせてもよい。
【0024】
当該無線通信端末がI/Fコネクタを介してパーソナルコンピュータ等に接続されて利用される場合に、固定的に位置決めされるI/Fコネクタに基づいて電波の送受信が有効な方向を決定することができる。そして、上記指向性アンテナを複数備える構成により、決定された電波の送受信が有効な方向にある指向性アンテナに切り換えさせることができ、最適な電波の送受信を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように本発明のヒンジ機構によれば、角度を検知することが可能となる。また、かかるヒンジ機構を利用した無線通信端末によれば、無線通信端末のヒンジ機構の経年劣化を判定することができ、さらにアンテナを適した方向に向かせ、無線通信の最適化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0027】
(第1の実施形態:ヒンジ機構130およびこれを備えた無線通信端末100)
図1は、本実施形態にかかる無線通信端末の概略的な構成を説明するための外観図であり、図2は、無線通信端末に設けられたヒンジ機構を説明するための説明図である。特に、図2(a)は、ヒンジ機構の説明図を、図2(b)は、回転部と固定部との嵌合箇所を拡大した図を示している。上記無線通信端末100は、折り畳み式携帯電話、折り畳み式PHS、PDAの他に、ノート型パーソナルコンピュータ等のヒンジ機構を有する様々な電子機器で構成することができる。本実施形態では理解を容易にするため、特に無線通信端末100として折り畳み式PHSを挙げている。
【0028】
図1に示すように、無線通信端末100は、第1筐体110と、第2筐体120と、第1筐体110と第2筐体120を連結するヒンジ機構130とからなる。本実施形態では、主に操作部216を有する筐体を第1筐体110とし、また、主に表示部214を有する筐体を第2筐体120として説明するが、これに限らず、主に表示部214を有する筐体を第1筐体とし、また、主に操作部216を有する筐体を第2筐体とすることもできる。
【0029】
図2に示すように、ヒンジ機構130は、第1筐体110の一端に設けられた固定部250と、第2筐体120の一端に設けられ、固定部250に対して回転自在に嵌合された回転部260(例えば、SUS等の金属で構成される)とを含んで構成される。
【0030】
本実施形態において、回転部260の外縁に複数(本実施形態では5つ)の溝262(図2(b)中262aから262e)が設けられ、溝262にはそれぞれ異なる被膜264(図2(b)中264aから264e:ハッチングで示す)が設けている。また、固定部250には、掛止部252(例えば、金属で構成される)が設けられており、掛止部252は、被膜264を介して(被膜264に接触しつつ)溝262に掛合し回転部260を掛止する(図2(b)参照)。
【0031】
図3は、本実施形態にかかる掛止部と溝との嵌合位置および当該嵌合位置における無線通信端末の形態を説明するための説明図である。
【0032】
図3に示すように、掛止部252が溝262aと嵌合している場合、無線通信端末100の第1筐体110と第2筐体120の成す角は略0度すなわち無線通信端末100は閉状態となる(図3(a))。掛止部252が溝262bと嵌合している場合、無線通信端末100の第1筐体110と第2筐体の成す角は略45度となり(図3(b))、掛止部252が溝262cと嵌合している場合、無線通信端末100の第1筐体110と第2筐体120の成す角は略90度となる(図3(c))。さらに、掛止部252が溝262dと嵌合している場合、無線通信端末100の第1筐体110と第2筐体120の成す角は略135度となり(図3(d))、掛止部252が溝262eと嵌合している場合、無線通信端末100の第1筐体110と第2筐体120の成す角は略180度すなわち無線通信端末100は開状態となる(図3(e))。
【0033】
本実施形態において、溝262は、回転部260に略等しい間隔で5つ設けられているため、固定部250を有する第1筐体110に対して、回転部260を有する第2筐体120は、略45度毎に掛合しつつ回動することになる。しかし、溝262の数や、溝262の間隔は、かかる5回や45度に限らず、任意に設定することができる。
【0034】
ここでは、上述した溝262と掛止部252によるラッチ機構により、回転部260を所定の角度で掛止することができる。
【0035】
図4は、本実施形態にかかる無線通信端末のハードウェア構成を示したブロック図である。図4に示すように、無線通信端末100は、端末制御部210と、メモリ212と、表示部214と、操作部216と、音声入力部218と、音声出力部220と、無線通信部222とを含んで構成される。かかる構成要素の無線通信端末100における配置は、上述した図1に示されている。
【0036】
端末制御部210は、中央処理装置(CPU)を含む半導体集積回路により無線通信端末100全体を管理および制御し、メモリ212のプログラムを用いて、通話機能、メール送受信機能、撮像機能、音楽再生機能、TV視聴機能も遂行する。メモリ212は、ROM、RAM、EEPROM、不揮発性RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、端末制御部210で処理されるプログラムを記憶する。
【0037】
表示部214は、液晶ディスプレイ、EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等で構成され、メモリ212に記憶された、または通信網104を介してサーバ(図示せず)から提供される、WebコンテンツやアプリケーションのGUI(Graphical User Interface)を表示することができる。
【0038】
操作部216は、キーボード、十字キー、ジョイスティック、タッチパネル等のスイッチで構成され、ユーザの操作入力を受け付ける。
【0039】
音声入力部218は、マイク等の音声変換手段で構成され、通話時に入力されたユーザの音声を無線通信端末100内で処理可能な電気信号に変換する。音声出力部220は、スピーカで構成され、無線通信端末100で受信した通話相手の音声信号を音声に変えて出力する。また、音声出力部220は、着信音や、操作部216の操作音、アラーム音等も出力できる。
【0040】
無線通信部222は、例えば、ARIB STD T95やPHS MoU等の次世代PHS通信技術が採用され、OFDMA/TDD(Time Division Duplex:時分割双方向伝送方式)/(またはOFDM/TDD)方式に基づいた無線通信方式を通じて基地局102との無線通信を確立し、通信相手との音声通信やWeb情報の取得等のデータ通信を実行する。
【0041】
また、本実施形態において、端末制御部210は、角度導出部270、劣化推定部272としても機能する。
【0042】
角度導出部270は、上記掛止部252が接触した被膜264の抵抗値に基づいて固定部250と回転部260とが成す角度すなわち、第1筐体110と第2筐体120が成す角度を導出する。
【0043】
本実施形態において、溝262に設けられた被膜264は、隣接する溝262に設けられた被膜264と異なる抵抗値(電気抵抗値)を有するように形成される。詳細には、被膜264は、その材質の違いによって異なる抵抗値を実現する。例えば、銅、アルミニウム、クロム等を成膜する。これにより、膜厚を変更することなく、すなわち、溝262と掛止部252との相対距離を変更することなく、それぞれの溝262の抵抗値を異ならせることが可能となる。
【0044】
本実施形態では、溝262ごとに異なる抵抗値を有する金属を成膜することで被膜264を形成しているが、1の溝262には、被膜264を形成しないことで抵抗値を0としたり、絶縁物質を被膜264とすることで抵抗値を大きくしたりすることもできる。
【0045】
また、上記被膜264は、その厚みによって異なる抵抗値を実現することもできる。これにより、同一の材質の被膜の厚みを変更するだけで、溝262ごとに抵抗値を変更させることができる。
【0046】
当該無線通信端末100に設けられたヒンジ機構130は、溝262ごとに被膜264の抵抗値が異なるため、角度導出部270が掛止部252に接触している被膜264の抵抗値を測るだけでその掛止された第1筐体110と第2筐体120が成す角度を検知することができる。
【0047】
本実施形態において、被膜264は、溝262の全面に形成されているが、これに限定されず、掛止部252の形状に応じて掛止部252と当接する箇所に形成すれば足りる。例えば、掛止部252が溝262の縁(図2(b)参照)にのみ当接することが予め判明している場合には当該縁にのみ被膜264を形成すればよく、掛止部252が溝262の底部にのみ当接することが予め判明している場合には当該底部にのみ被膜264を形成すればよい。
【0048】
上記劣化推定部272は、角度導出部270に導出された角度の変位履歴に応じて、固定部250および回転部260の劣化を推定する。詳細には、劣化推定部272は、角度導出部270が導出した角度が、任意の角度(例えば180度すなわち開状態)になった回数をカウントし、カウント数に基づいて固定部250および回転部260の劣化を推定する。
【0049】
このように、確実に固定部250および回転部260の劣化すなわち固定部250と回転部260が摺動することで生じる消耗を推定することができる。したがって、交換予測が可能な部品に関して、ユーザは大事に至る前にその消耗を把握することができる。また、固定部250と回転部260の嵌合する箇所に不具合があった場合、それが経時劣化であるか、突発的に加えられた外力によるものであるかを容易に判断することができ、不具合の原因を迅速に特定することが可能となる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態のヒンジ機構130によれば、角度を検知することが可能となる。また、かかるヒンジ機構130を利用した無線通信端末100によれば、無線通信端末100のヒンジ機構130の経年劣化を判定することができる。
【0051】
(第2の実施形態:無線通信端末300)
本実施形態では、上記第1の実施形態で説明したヒンジ機構130を利用してアンテナの制御を行う無線通信端末300について説明する。上記無線通信端末300は、折り畳み式携帯電話、折り畳み式PHS、PDAの他に、ノート型パーソナルコンピュータに接続される増設デバイス等のヒンジ機構を有する様々な電子機器で構成することができる。本実施形態では理解を容易にするため、特に無線通信端末300としてノート型パーソナルコンピュータ302に接続される増設デバイスを挙げ、無線通信方式としてiBurst(登録商標)を採用している。
【0052】
図5は、本実施形態にかかる無線通信端末の概略的な構成を説明するための外観図であり、図6は、本実施形態にかかる無線通信端末の使用形態図であり、図7は、本実施形態にかかる無線通信端末のハードウェア構成を示したブロック図である。特に図5(a)は正面図を示し、図5(b)は側面図を示す。なお、上述した無線通信端末100と実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
図5に示すように、本実施形態にかかる無線通信端末300は、第1筐体310と、第2筐体320と、第1筐体310と第2筐体320を連結するヒンジ機構130とからなる。本実施形態では、主にI/Fコネクタ340を有する筐体を第1筐体310とし、主に指向性アンテナ350を有する筐体を第2筐体320として説明するが、これに限らず、主に指向性アンテナ350を有する筐体を第1筐体とし、主にI/Fコネクタ340を有する筐体を第2筐体とすることもできる。
【0054】
図6に示すように、本実施形態にかかる無線通信端末300は第1筐体310に設けられたI/Fコネクタ340をノート型パーソナルコンピュータ302に接続して利用される。本実施形態においてI/Fコネクタ340は、USBに装着するコネクタであるが、これに限定されず、PCMCIAスロット等に装着可能なコネクタを利用することもできる。
【0055】
図7に示すように、無線通信端末300は、端末制御部410と、メモリ212と、無線通信部222、I/Fコネクタ340、指向性アンテナ350とを含んで構成される。ここでは、本実施形態の特徴である端末制御部410について詳述する。
【0056】
端末制御部410は、中央処理装置(CPU)を含む半導体集積回路により無線通信端末300全体を管理する。具体的には、ノート型パーソナルコンピュータ302における通話機能、メール送受信機能、音楽再生機能、TV視聴機能等のアプリケーション処理に伴い、無線通信が必要な場合、基地局102との無線通信を制御する。本実施形態において、端末制御部410は、角度導出部270、方向決定部412としても機能する。
【0057】
方向決定部412は、角度導出部270が導出した角度に応じて電波の送受信が有効な方向を決定し、当該有効な方向に指向性アンテナ350を向けさせる。指向性アンテナ350を有効な方向に向けさせる技術としては、例えば、アプリケーションにより当該有効な方向をノート型パーソナルコンピュータ302の表示部に表示させることで、ユーザに当該有効な方向へ指向性アンテナ350を向けさせるように促したり、指向性アンテナ350を自動的に回動させて方向決定部412が決定した有効な方向に向けさせる回動部を備えたりする技術がある。電波の送受信が有効な方向とは、一般的に指向性アンテナ350の方向が略水平な方向である。
【0058】
図8は、本実施形態にかかる掛止部と溝との嵌合位置および当該嵌合位置における無線通信端末の形態を説明するための説明図である。本実施形態において、ヒンジ機構130の回転部260の溝262の被膜264は、溝262ごとに全て異なる必要はない。
【0059】
例えば、図8に示すように、指向性アンテナ350の方向(図8中白抜き矢印で示す)は、図8(a)で示す状態と、図8(e)で示す状態とで、略等しくなるからである。したがって、本実施形態では、溝262aと、溝262eに設けられる被膜264a、264eは、同一の抵抗値を有する材料を用いることができる。
【0060】
本実施形態にかかる無線通信端末300によれば、第1筐体310と第2筐体320とが成す角度すなわちI/Fコネクタ340と指向性アンテナ350とが成す角度に応じて、電波の送受信が有効な方向を決定することで、指向性アンテナ350を最適な方向に向けることができ、好適に無線通信を行うことが可能となる。
【0061】
(第3の実施形態:無線通信端末500)
本実施形態では、上記第1および第2の実施形態で説明したヒンジ機構130を利用してアンテナの方向制御を行う無線通信端末500について説明する。上記無線通信端末500は、折り畳み式携帯電話、折り畳み式PHS、PDAの他に、ノート型パーソナルコンピュータに接続される増設デバイス等のヒンジ機構を有する様々な電子機器で構成することができる。本実施形態では理解を容易にするため、上記第2の実施形態と同様に無線通信端末500としてノート型パーソナルコンピュータ302に接続される増設デバイスを挙げている。
【0062】
図9は、本実施形態にかかる無線通信端末のハードウェア構成を示したブロック図である。図9に示すように、無線通信端末500は、端末制御部510と、メモリ212と、無線通信部222と、I/Fコネクタ340と、複数(本実施形態では2つ)の指向性アンテナ350(図9中、350a、350b)を含んで構成される。本実施形態において、指向性アンテナ350は、電波の送受信が有効な方向を異ならせて複数設置されている。ここでは、本実施形態の特徴である端末制御部510について詳述する。なお、上述した無線通信端末100、300と実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0063】
端末制御部510は、中央処理装置(CPU)を含む半導体集積回路により無線通信端末500全体を管理および制御し、メモリ212のプログラムを用いて、通話機能、メール送受信機能、音楽再生機能、TV視聴機能も遂行する。本実施形態において、端末制御部510は、角度導出部270、方向決定部512、アンテナ切換部514としても機能する。
【0064】
本実施形態において、方向決定部512は、角度導出部270が導出した角度に応じて、電波の送受信が有効な方向を決定する。アンテナ切換部514は、方向決定部512が決定した方向にある指向性アンテナ350に切り替えて無線通信部222を介して通信を確立する。
【0065】
当該無線通信端末500がI/Fコネクタ340を介してノート型パーソナルコンピュータ302といったパーソナルコンピュータ等に接続されて利用される場合に、固定的に位置決めされるI/Fコネクタ340に基づいて電波の送受信が有効な方向を決定することができる。そして、指向性アンテナ350を複数備える構成により、決定された電波の送受信が有効な方向にある指向性アンテナ350に切り換えさせることができ、最適な電波の送受信を行うことが可能となる。
【0066】
以上説明したように、上記実施形態にかかるヒンジ機構130によれば、角度を検知することが可能となる。また、かかるヒンジ機構130を利用した無線通信端末100によれば、ヒンジ機構130の経年劣化を判定することができ、さらに無線通信端末300、無線通信端末500によれば、アンテナ(指向性アンテナ350)を適した方向に向けさせ、無線通信の最適化を図ることが可能となる。
【0067】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、ヒンジ機構および無線通信端末に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】第1の実施形態にかかる無線通信端末の概略的な構成を説明するための外観図である。
【図2】無線通信端末に設けられたヒンジ機構を説明するための説明図である。
【図3】第1の実施形態にかかる掛止部と溝との嵌合位置および当該嵌合位置における無線通信端末の形態を説明するための説明図である。
【図4】第1の実施形態にかかる無線通信端末のハードウェア構成を示したブロック図である。
【図5】第2の実施形態にかかる無線通信端末の概略的な構成を説明するための外観図である。
【図6】第2の実施形態にかかる無線通信端末の使用形態図である。
【図7】第2の実施形態にかかる無線通信端末のハードウェア構成を示したブロック図である。
【図8】第2の実施形態にかかる掛止部と溝との嵌合位置および当該嵌合位置における無線通信端末の形態を説明するための説明図である。
【図9】第3の実施形態にかかる無線通信端末のハードウェア構成を示したブロック図である。
【符号の説明】
【0070】
100、300、500 …無線通信端末
110 …第1筐体
120 …第2筐体
130 …ヒンジ機構
250 …固定部
252 …掛止部
260 …回転部
262 …溝
264 …被膜
270 …角度導出部
272 …劣化推定部
340 …I/Fコネクタ
350 …指向性アンテナ
412、512 …方向決定部
514 …アンテナ切換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部と、
前記固定部に対して回転自在に嵌合された回転部と、
前記回転部の外縁に設けられた複数の溝と、
前記溝に設けられた被膜と、
前記固定部に設けられ、前記溝に前記被膜を介して掛合し前記回転部を掛止する掛止部と、
を備え、
前記溝に設けられた被膜は隣接する溝に設けられた被膜と異なる抵抗値を有するように形成されることを特徴とするヒンジ機構。
【請求項2】
前記被膜は、その材質の違いによって異なる抵抗値を実現することを特徴とする請求項1に記載のヒンジ機構。
【請求項3】
前記被膜は、その厚みによって異なる抵抗値を実現することを特徴とする請求項2に記載のヒンジ機構。
【請求項4】
前記掛止部が接触した被膜の抵抗値に基づいて前記固定部と回転部とが成す角度を導出する角度導出部をさらに含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のヒンジ機構。
【請求項5】
第1筐体の一端に設けられた固定部と、
第2筐体の一端に設けられ、前記固定部に対して回転自在に嵌合された回転部と、
前記回転部の外縁に設けられた複数の溝と、
前記溝に設けられた被膜と、
前記固定部に設けられ、前記溝に前記被膜を介して掛合し前記回転部を掛止する掛止部と、
前記掛止部が接触した被膜の抵抗値に基づいて前記固定部と回転部とが成す角度を導出する角度導出部と、
を備えることを特徴とする無線通信端末。
【請求項6】
前記導出された角度の変位履歴に応じて、前記固定部および回転部の劣化を推定する劣化推定部をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の無線通信端末。
【請求項7】
前記第1筐体または第2筐体の一方に設けられたI/Fコネクタと、
前記第1筐体または第2筐体の他方に設けられた指向性アンテナと、
前記導出された角度に応じて電波の送受信が有効な方向を決定し、該有効な方向に前記指向性アンテナを向けさせる方向決定部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項5または6に記載の無線通信端末。
【請求項8】
前記指向性アンテナは、電波の送受信が有効な方向を異ならせて複数設置され、
前記方向決定部は、前記導出された角度に応じて、電波の送受信が有効な方向にある前記指向性アンテナに切り換えさせることを特徴とする請求項7に記載の無線通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−109589(P2010−109589A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278597(P2008−278597)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】