説明

ヒンジ機構及び携帯端末

【課題】携帯端末を開操作する場合に僅かな操作力でロック解除できるようにしたヒンジ機構及び携帯端末を提供する。
【解決手段】2枚重ねされた筐体を、スライド操作に連動させて開操作するヒンジ機構であって、一方の筐体が押されることに連動して軸方向に摺動される回転停止カムを有し、該回転係止カムが押圧付勢手段に押圧されて軸方向に摺動したとき、第1筐体に固定されているロック部材が該回転係止カムを非回転にロックするロック手段と、前記回転係止カムが前記押圧付勢手段の付勢力に逆らって軸方向に摺動したとき、前記ロック部材と該回転係止カムとのロックを解除するロック解除手段とを備え、前記回転係止カムの軸心から離れた外周部に、前記ロック部材と係脱してロックまたはロック解除されるロック係脱部を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば第1筐体と第2筐体が折畳み開閉可能に連結された携帯電話機やPDA等の携帯端末に用いられるようなヒンジ機構及び携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機などの携帯端末では、クラムシェルタイプと呼ばれる折畳み開閉を行うヒンジ機構が多く用いられている。このような折畳み開閉を行うヒンジ機構として、ヒンジ部分の筐体側面に開操作用の押しボタンが設けられたヒンジユニットが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このヒンジユニットは、押しボタンが押されるとロック機構が離脱し、コイルスプリングの自己解放トルクによって、2枚の折畳まれた筐体が閉状態から例えば約150度開いた使用状態に移行する。これにより、閉状態からワンタッチで使用状態にできるとされている。
【0004】
しかし、このヒンジユニットは、押しボタンが小さく押しづらいという問題点がある。また、閉状態のとき押しボタンにはコイルスプリングのトルクが常にかかっており、そのトルクに打ち勝つ強い力で押しボタンを押し込まなければ開かないという問題点がある。
【0005】
また、このような折畳み部分に用いられるヒンジ装置として、ヒンジ部分の軸方向の動きに連動させて筐体を開操作する連動型の回転構造が必要になる。例えば、連動型の回転構造として、1つの回動軸線上で軸方向に進退するロック部材を前進させてカム部材の回転を係止させることで該カム部材の回転を規制し、ロック部材を軸方向に引き抜くように退避させることでカム部材の回転を許可し、ロック部材の進退により、カム部材を回動支点とする2枚の筐体を開閉するものが知られている(例えば特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、このようなヒンジ装置では、小さな配置空間に摺動及び回転する各部品を連携させて組み込むため配置制限を受けて内蔵され、軸方向の動きと回転方向との動きを連動させる場合に適切な伝達構造がとれなかった。特に、筐体を開閉させるためのロック部材にあっては、ロックする部分が環状のカム部材の径方向の軸心に近い位置に設けられているため、該カム部材の回転トルクによる摩擦抵抗が大きく、ロックを解除するのに大きな力が必要になっていた。このため、利用者が携帯端末などの筐体を開操作する場合に強い操作力を要して利用者の操作負担が大きくなるという問題を有していた。それゆえ、操作力を小さく設定するためにロック部材をカム部材の外径側に配置することが考えられるが、小さな配置空間と他の部品との関係で実現できず、小さな操作力で開操作できるヒンジ機構の開発が望まれていた。
【0007】
【特許文献1】特開2001−223479号公報
【特許文献2】特開2003−134203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、上述の問題点に鑑み、携帯端末を開操作する場合に僅かな操作力でロック解除できるようにしたヒンジ機構及び携帯端末を提供し、利用者の利便性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、携帯端末を構成する第1筐体と第2筐体を回動により折畳み開閉可能に接続するヒンジ機構であって、前記第1筐体に対して非回転で且つ前記回動の軸方向へ摺動自由に固定される第1カムと、前記第2筐体に固定される第2カムと、前記第1カムの外周面上に回転自由に軸支される回転係止カムと、前記第1カム及び回転係止カム側と第2カム側とを同一の軸線上に相対向させて配置し、且つ相対向する回転停止カムと第2カムとを相対回転可能に連結する連結部と、前記第2カム側を同一軸線上の前記第1カム及び回転係止カム側に向けて付勢する押圧付勢手段と、前記押圧付勢手段の反押圧付勢方向に前記第2筐体が押されることに連動して、前記回転停止カムを反押圧付勢方向に摺動させる摺動軸と、前記摺動軸を元の位置に付勢して復帰させる復帰手段と、前記回転係止カムが前記押圧付勢手段に押圧されて軸方向に摺動したとき、第1筐体に固定されているロック部材が該回転係止カムを非回転にロックするロック手段と、前記回転係止カムが前記押圧付勢手段の付勢力に逆らって軸方向に摺動したとき、前記ロック部材と該回転係止カムとのロックを解除するロック解除手段とを備え、前記回転係止カムの軸心から離れた外周部に、前記ロック部材と係脱してロックまたはロック解除されるロック係脱部を構成したヒンジ機構であることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、ロック係脱部を回転係止カムの軸心から離れた外周部に設けているため、回転係止カムを動かしてロック解除する場合に、該回転係止カムに対する最も小さな力でロック解除できるようになる。これはロック係脱部からロック部材が離脱してロック解除する際のロック解除力が、回転係止カムの軸心部から径方向に離れる程小さくなるためである。よって、ヒンジ部を回動支点とする2枚の筐体が折畳まれた閉状態から例えば約160度開いた使用状態へと、第1カムと第2カムと押圧付勢手段により回動して移行するような場合、そのヒンジ部に対する小さな操作力で容易に筐体を開操作することができる。
【0011】
この発明の態様として、前記第1カムは、該第1カムを内筒とし、前記回転係止カムを外筒とする内外の2重の環状に配置し、該第1カムの軸方向非カム側の端部に、前記回転係止カムと略同外径のフランジを形成し、該フランジの外周部に前記ロック部材に係止されて回転規制される回転規制部を備えて構成することができる。
【0012】
これにより、小さな配置空間を有効利用すべく同一軸上に内筒と外筒に分けて内外の2重に環状配置した場合であっても、その内筒のフランジが外筒と同径を有して、外筒の外周部に内筒に形成されたフランジの外周部を露出させることができるため、このフランジの外周部に回転規制部を形成できる。よって、この回転規制部にロック部材を係止させることで、内筒として配置された第1カムを軸心部から離れた位置で回転規制することができる。
【0013】
またこの発明の態様として、前記ロック部材は、前記第1筐体に取り付ける第1筐体取付部材の一部に構成され、前記回転係止カムが軸方向に摺動する摺動長さに対応して該回転係止カムのロック係脱部と係脱する長さに構成することができる。
これにより、ロック部材は第1筐体の取付部材を兼ねることができるため、部品点数を少なくすることができる。
【0014】
またこの発明は、前記ヒンジ機構と前記第1筐体と前記第2筐体とを備え、前記第1筐体と前記第2筐体の少なくとも一方に、画像を表示する表示手段と入力操作を許容する入力手段の少なくとも一方を備えた携帯端末とすることができる。
これにより、携帯端末を開操作する場合に僅かな操作力でロック解除でき、利用者の扱い易い開操作ができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明により、携帯端末を開操作する場合に僅かな操作力でロック解除できるようにしたヒンジ機構及び携帯端末を提供し、利用者の利便性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
【実施例】
【0017】
図1は正面右上から見た開状態の携帯電話機1の斜視図を示し、図2はヒンジ装置10と筐体2,4との取付け状態を示す要部分解斜視図を示し、図3はヒンジ装置10を正面側から見た分解斜視図を示し、図4はヒンジ装置10のカム部分を背面側から見た要部分解斜視図を示し、図5(A)は正面右上から見たヒンジ装置10の斜視図、図5(B)は背面右上から見たヒンジ装置10の斜視図を示し、図6は閉状態の携帯電話機1の縦断面図を示し、図7はヒンジ装置10を斜め下方から見た斜視図を示す。
【0018】
図1に示すように、携帯電話機1は、上筐体2と下筐体4とが連結筐体3により折畳み開閉可能に接続されている。この連結筐体3は、上筐体2に対しては、接続部分の端面中央に設けられた凹部2a内に嵌まり込むように接続され、下筐体4に対しては、接続部分の折畳み内側面(図1の上面)に突出するように接続されている。
【0019】
上筐体2には、液晶ディスプレイなどの表示装置D、及び音声出力用のスピーカSが折畳み内側面に設けられている。下筐体4には、押下ボタンなどの入力装置N、及び集音用のマイクMが折畳み内側面に設けられている。
【0020】
連結筐体3は、図2及び図3に示すように、摺動軸20、復帰バネ30、ロックプレート40、内側カム50、外側カム60、スライドカム70、筒体ケース80、大径の押圧バネ81、中径の押圧バネ82、小径の押圧バネ83及びEリング91で構成されるヒンジ装置10と、このヒンジ装置10を被覆するカバーとなるハウジング15とにより構成されている。
【0021】
ハウジング15は、内部に円筒形の枢支孔18を備えており、この枢支孔18の一端側に上筐体2の凹部2aに枢軸方向に突出された枢支軸5が挿通される。また、この枢支孔18には、ヒンジ装置10が挿通される。ハウジング15の下面は平面に形成されており、この平面部分にスライド許容孔16が形成されている。このスライド許容孔16には、ヒンジ装置10のロックプレート40が通される。
【0022】
このロックプレート40の下端部は、下筐体4の接続部分の端面中央に設けられた固定溝4aに装着固定される。これにより、ロックプレート40は、下筐体4と一体になる。そして、このロックプレート40を基点に上筐体2側が枢軸方向にスライド移動及び回転する。
【0023】
前記ロックプレート40は、L型の板状に形成され、該ロックプレート40の上部片面側に軸支筒体42を備え、他方の上部片面側にロック突起43を備えている。軸支筒体42とロック突起43はロックプレート40を基準とする一方と他方の相反する枢軸方向に水平に突設して形成され、このうち軸支筒体42は断面小判型の摺動孔41を有しており、ロック突起43は枢軸方向に細長く両側に平行して突出している。ロックプレート40の下部には、下筐体4にネジ止め等により固定するための固定孔44が設けられている。そして、このロックプレート40の摺動孔41に後述する摺動軸20が摺動可能に軸支される。
【0024】
上述の摺動軸20は、断面小判型に形成された長尺の細軸21を先端側に有し、基端側に断面小判型に形成された短尺の太軸22を有している。細軸21は、先端部にEリング嵌着用のリング溝23を有し、このリング溝23にEリング91が嵌着される。これにより、摺動軸20上のヒンジ構成部材を軸方向から抜け止めする。太軸22は、前記摺動孔41に摺動支持される断面小判型に形成されて軸方向に一定長さが摺動可能に支持される。また、太軸22の端部には摺動力受圧用の円盤24が固定されている。この円盤24が上筐体2の枢支軸5の一端面に対応し、上筐体2と一体の枢支軸5が枢軸方向に押されることで摺動軸20が摺動される。
【0025】
復帰バネ30は、コイル状に巻かれた弦巻バネであり、枢軸方向に対向するロックプレート40と円盤24との対向面間に圧縮状態に介在されている。これにより、復帰バネ30はロックプレート40を基点に、摺動軸20をロックプレート40から離れる方向に付勢する。そして、摺動軸20に対する反付勢方向の摺動力が解放された時点で該復帰バネ30の付勢力により摺動軸20を摺動前の待機位置に復帰させる。
【0026】
内側カム50と外側カム60は、内側カム50を内筒とし、外側カム60を外筒とする内外の2重に環状配置して構成する。
まず内側カム50は、先端部に内側カム面51を有する小径筒体と、基端部にフランジ52を有する大径部との段付き筒体を有している。内側カム面51は、開状態係止斜面53、回動許容平面54、回動補助斜面55がカム面として連続して円形配置されている。
【0027】
また、内側カム50の軸心部には小判型に開口された軸孔57を有しており、ここに摺動軸20の細軸21が挿通される。さらに、フランジ52の基端側端面58に細軸21と太軸22との段差が形成された太軸22の段差端面25が対向して係止される。これにより、摺動軸20が軸方向に押されると、太軸22の段差端面25がフランジ52の基端側端面58を軸方向に押して、内側カム50を軸方向に摺動させる。
【0028】
さらに、フランジ52の外周面には、凹型状で軸方向に貫通するロック用の回転係止溝59が形成されている。回転係止溝59は両側に平行して形成され、ここに枢軸方向に突出しているロック突起43が係合する。これにより、内側カム50はロックプレート40に対して軸線方向の摺動のみが許容され、回転は規制される。また、内側カム50が小径であっても、その一部にフランジ52を設けることによって、回転係止溝59をフランジ52の外周部に設けることができ、内側カム50の回転規制位置をフランジ52の外周部に設定して回転係止溝59を安定して回転規制することができる。
【0029】
外側カム60は、内側カム50の外周面上に回転自由に軸支される円筒状を有し、内側カム50の外周囲で回転フリーな支持状態にある。その円筒状の先端部に外側カム面61を有し、基端部の両側に軸方向に細長く切欠いたロック係脱溝62を有している。ロック係脱溝62は外側カム60が軸線方向に摺動する摺動長さに対応して設けられ、該ロック係脱溝62に枢軸方向に突出するロック突起43の先端部が回転係止溝59を貫通して係合する。そして、外側カム60がロック突起43と離れる方向に摺動したとき、ロック突起43から離脱する。これにより、外側カム60は回転自由になる。外側カム60は基端側端面67が、内側カム50のフランジ52の先端側端面に平面対向して係止される。これにより、内側カム50が軸方向に押されて摺動することに伴い外側カム60も軸方向に摺動する。
【0030】
外側カム面61は、カム面としての開状態係止斜面63、回動許容平面64、回動補助斜面65、及び閉状態吸い込み係止斜面66が連続して円形配置されている。また、外側カム面61と内側カム面51とのカム形状は軸心を中心とする周方向に2重に配置され、両カム面51,61は軸方向先端が揃えられて段差がなく配置されている。
【0031】
スライドカム70は、外側カム60と略同径の円盤状に設けられ、軸方向の一端にカム突起71が設けられ、他端に軸支筒体72が設けられている。カム突起71は、上下に2枚のカム突起71を突出しており、これらのカム突起71が内側カム50と外側カム60の各カム面(53〜55、63〜66)に当接する。これにより、回転係止、回転許容、及び回転補助を行う。軸支筒体72は軸方向に細軸挿通孔73を有し、ここに摺動軸20の細軸21が摺動可能に挿通される。さらに、スライドカム70の外周部には摺動用の摺動突起74を突設している。
【0032】
筒体ケース80は、一端面を開放し、他端面を閉鎖した円筒形に形成され、上筐体2の枢支軸5と対向する摺動方向に該筒体ケース80の軸方向を向けて該上筐体2に固定される。筒体ケース80の外周部には軸方向にスライドレール溝84を突設している。このスライドレール溝84の内側が凹状であり、筒体ケース80に収納されたスライドカム70の外周部の摺動突起74がスライドレール溝84に摺動支持される。これに伴い回転規制される。筒体ケース80の内部には大径の押圧バネ81と、中径の押圧バネ82と、小径の押圧バネ83との径方向に大きさの異なる3個の押圧バネ81〜83が3重の環状に収納されている。
【0033】
押圧バネ81〜83は、コイル状に巻かれた弦巻バネであり、両端部分が平面となるように形成されている。これらの押圧バネ81〜83は、スライドカム70を軸方向に押してスライドカム70がロックプレート40側に近づく向きに付勢する。この付勢により、スライドカム70は内側カム50と外側カム60に近づく方向へ向けて付勢されつつ、軸方向にスライドして押圧される。
【0034】
筒体ケース80は閉鎖端面の軸心部に、軸挿通孔85を開口しており、ここに摺動軸20の細軸21が挿通される。そして、筒体ケース80内から閉鎖端面の外部へと突出した細軸21のリング溝23にEリング91を嵌着することで、摺動軸20が閉鎖端面に抜止めされる。従って、摺動軸20は軸方向に配設される筒体ケース80、押圧バネ81〜83、スライドカム70、外側カム60、内側カム50、ロックプレート40、復帰バネ30の軸心部を通して配設されることになり、これらのヒンジ構成部品を軸方向に連結している。また、摺動軸20には筒体ケース80と内側カム50が軸方向に動かないように固定される。さらに、摺動軸20上において、ロックプレート40は、復帰バネ30の軸方向の付勢力により内側カム50へ向けて付勢されつつ、軸方向にスライドされる。
【0035】
これらの構成要素を組み合わせたヒンジ装置10は、図6に示すように携帯電話機1に組み込まれる。このとき、図示するように外部から視認できる部分がハウジング15のみとなり、良好な美観を得ることができる。ハウジング15を図示省略すると、図7に示すように、ヒンジ装置10が上筐体2に装着される。
【0036】
ヒンジ装置10における内側カム50と外側カム60がロックプレート40により回転規制された非回転の状態では、内側カム50と外側カム60との軸方向先端部の上下部に、双方の先端が異径の段差位置でV字形に交差するカム係止部68(図12参照)が形成される。このカム係止部68にスライドカム70のカム突起71を突き合わせるごとく軸方向に押圧して相対向させることでスライドカム70のカム突起71がV字形のカム係止部68に係止される。
【0037】
このように、内側カム50及び外側カム60側と、スライドカム70側とのカム対向面間では、互いに押圧状態を保つことで相対回転しないように固定され、一体化する。そして、ロックプレート40によるロックが外れて外側カム60が内側カム50に対して回転フリーになると、この係止状態が解放され、スライドカム70のカム突起71が内側カム50の回動補助斜面55上を滑り落ち、回転許容される。
【0038】
図8は携帯電話機1の閉状態と上筐体2側のスライド状態を示す斜視図を示し、図9及び図10はヒンジ装置10の動作状態を示す斜視図を示し、図11〜図14はカム対応部分の動作説明図を示し、図15は携帯電話機1の閉状態と下筐体4側のスライド状態を示す斜視図を示す。
【0039】
携帯電話機1は閉状態のとき、図8(A)に示すように、平面的に対向する上筐体2と下筐体4がずれなくピタリと重なった状態にある。このとき、図9(A)及び図11に示すように、スライドカム70のカム突起71は、内側カム50と外側カム60とで作るV字形のカム係止部68に係止されてスライドカム70は回転規制されている。また、カム係止部68へは押圧バネ81〜83によりスライドカム70のカム突起71が押圧されている。このため、カム係止部68とカム突起71との係止を解放しない限り回転規制状態が保たれる。
【0040】
図8(B)に示すように、利用者の手によって上筐体2と下筐体4が回転軸と平行に押圧されると、上筐体2と下筐体4が相対向する方向にスライド移動する。このとき、図6に矢印Yで示したように、上筐体2は押下されたY方向にスライドする。またとき、図9(B)に示すように、摺動軸20が上筐体2と共に押されることで、摺動軸20の段差端面25(図3参照)が内側カム50の基端側端面58を押し、この内側カム50に連動して同軸上の外側カム60が押される。これにより、外側カム60のロック係脱溝62がロック突起43と離脱する方向へスライド移動する。
【0041】
その後、図9(C)に示すように、さらに摺動軸20が押されることで、ロック係脱溝62がロック突起43と離脱する。このとき、外側カム60はロック突起43による係止作用から解放されて回転許容される。そして、外側カム60は押圧バネ81〜83の付勢力を受けたスライドカム70に押されるに従って回動し、またスライドカム70も図12に示すように、カム突起71が傾斜面になっている回動補助斜面55を滑り落ちて回転する。さらに、この回転の惰性でカム突起71が水平面または斜面になっている回動許容平面54上を滑り、図13に示すように、凹状の開状態係止斜面53に落ち込んで回転停止する。このとき、回転自由になっている外側カム60は、スライドカム70と共に回転し、開状態係止斜面63にカム突起71が落ち込んで回転停止する。このとき、外側カム60の開状態係止斜面63と内側カム50の開状態係止斜面53は、図13に示すように重なり、この開状態係止斜面63と開状態係止斜面53の両方にカム突起71が落ち込んだ状態となる。
【0042】
この場合に、上筐体2が連動して開動作し、全開状態の角度で外側カム60のロック係脱溝62がロック突起43と対応して係止される。これにより、上筐体2は図10(A)にも示すように、全開状態の角度で回転係止される。
【0043】
開状態から閉状態へ戻すときは、利用者の手によって上筐体2と下筐体4が閉方向に回動される。ここで、カム突起71が、回動許容平面64及び回動補助斜面65上を滑って元の位置へ戻るように移行し、図10(B)及び図14に示すように、カム突起71が回動補助斜面65を乗り越える時に適度なクリック感が得られる。そして、カム突起71が図9(A)及び図11に示したように、内側カム50と外側カム60とで作るV字形のカム係止部68に係止されることでスライドカム70が回転規制される。これにより、上筐体2と下筐体4が重なった完全閉状態となる。
【0044】
以上の構成及び動作により、利用者は、上筐体2と下筐体4を横方向にスライド移動させるだけで、携帯電話機1を全開状態にすることができる。特に、例えば右手で下筐体4を下から掴み、親指で上筐体2をスライド移動させたときに、右手親指で下筐体4の上面(上面のうち重なっていない部分)を抑えられる。このため、上筐体2が勢い良く開いても、下筐体4をしっかりと保持しておくことができ、携帯電話機1を落としてしまうことを防止できる。
【0045】
利用者が押圧できるのは、従来例のような小さなボタンではなく、上筐体2の側面全体であるから、携帯電話機1は、押圧しやすく良好な操作性を提供できる。また、従来例のような押圧用ボタンが不要なため、シンプルで美しい外観の携帯電話機1を提供することができる。
【0046】
また、ヒンジ装置10がハウジング15内に収まっているため、携帯電話機1の外観をシンプルで美しくすることができ、また外観デザインの設計自由度を高めることができる。
【0047】
また、上筐体2をスライドさせた際、連結筐体3と上筐体2が面接触している接続面間で相対的にスライド移動する。このため、下筐体4の凹部2a内における連結筐体3の位置が変化せず、スライド移動による隙間の発生を防止できる。これにより、シンプルで美しい外観の携帯電話機1を提供でき、また携帯電話機1の外観デザインの設計自由度を高めることができる。
【0048】
さらに、ロック部を構成するロック係脱溝62を外側カム60の軸心から離れた外周部に設けているため、ロック解除力を与える場合に外側カム60に対する最も小さな力でロック解除ができるようになる。つまり、ロック係脱溝62からロック突起43を軸方向に離脱させてロック解除する際のロック解除力は、外側カム60の軸心部から径方向に離れる程小さくできるためである。よって、ヒンジ部を回動支点とする上筐体2と下筐体4との上下2枚の筐体が折畳まれた閉状態から例えば約160度開いた使用状態に移行するような場合、そのヒンジ部に対する小さな操作力でロックを解除でき、容易に筐体を開操作することができる。さらに、ロック突起43は、下筐体4に固定されたロックプレート40に一体に形成できるので、部品点数を少なくして構成することができる。
【0049】
また、携帯電話機1を使用する場合、上筐体2と下筐体4とは軸方向に対して相対移動する構成のため、図15(A)に示すように、上筐体2と下筐体4の上下を逆にして、図15(B)に示すように、下筐体4側をスライド操作しても容易にスライド操作できる。さらに、図示しないが、連結筐体3の取付位置を上筐体2と下筐体4とで上下逆に配置しても構成することができる。つまり、ヒンジ装置10が内蔵される連結筐体3を上筐体2設け、これに嵌まり込む凹部を下筐体4側に設けて構成することもできる。この場合も、前記実施例と同様な作用効果が得られる。
【0050】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の携帯端末は、実施形態の携帯電話機1に対応し、
以下同様に、
第1筐体は、下筐体4に対応し、
第2筐体は、上筐体2に対応し、
ヒンジ機構は、ヒンジ装置10に対応し、
第1カムは、内側カム50に対応し、
第2カムは、スライドカム70に対応し、
回転係止カムは、外側カム60に対応し、
連結部は、ロックプレート40と摺動軸20とEリング91に対応し、
押圧付勢手段は、押圧バネ81と押圧バネ82と押圧バネ83に対応し、
復帰手段は、復帰バネ30に対応し、
ロック部材は、ロック突起43に対応し、
ロック手段は、ロック係脱溝62とロック突起43に対応し、
ロック解除手段は、スライドカム70と内側カム50と外側カム60と摺動軸20に対応し、
ロック係脱部は、ロック係脱溝62に対応し、
回転規制部は、回転係止溝59に対応し、
表示手段は、表示装置Dに対応し、
入力手段は、入力装置Nに対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】正面右上から見た開状態の携帯電話機の斜視図。
【図2】ヒンジ装置と筐体との取付け状態を示す要部分解斜視図。
【図3】ヒンジ装置を正面側から見た分解斜視図。
【図4】ヒンジ装置のカム部分を背面側から見た要部分解斜視図。
【図5】(A)は正面右上から見たヒンジ装置の斜視図、(B)は背面右上から見たヒンジ装置の斜視図。
【図6】閉状態の携帯電話機の縦断面図。
【図7】ヒンジ装置を斜め下方から見た斜視図。
【図8】(A)は携帯電話機の閉状態を示す斜視図、(B)は携帯電話機の上筐体のスライド状態を示す斜視図。
【図9】(A)はヒンジ装置の閉状態を示す斜視図、(B)はヒンジ装置のスライド状態を示す斜視図、(C)はヒンジ装置の開動作途中の状態を示す斜視図。
【図10】(A)はヒンジ装置の全開状態を示す斜視図、(B)はヒンジ装置の閉動作途中の状態を示す斜視図。
【図11】カム対応部分の閉状態の動作説明図。
【図12】カム対応部分の開途中状態の動作説明図。
【図13】カム対応部分の全開状態の動作説明図。
【図14】カム対応部分の閉途中状態の動作説明図。
【図15】携帯電話機の閉状態と下筐体側のスライド状態を示す斜視図。
【符号の説明】
【0052】
1…携帯電話機、2…上筐体、4…下筐体、10…ヒンジ装置、20…摺動軸、30…復帰バネ、40…ロックプレート、43…ロック突起、50…内側カム、60…外側カム、62…ロック係脱溝、70…スライドカム、71…カム突起、81〜83…押圧バネ、D…表示装置、N…入力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末を構成する第1筐体と第2筐体を回動により折畳み開閉可能に接続するヒンジ機構であって、
前記第1筐体に対して非回転で且つ前記回動の軸方向へ摺動自由に固定される第1カムと、
前記第2筐体に固定される第2カムと、
前記第1カムの外周面上に回転自由に軸支される回転係止カムと、
前記第1カム及び回転係止カム側と第2カム側とを同一の軸線上に相対向させて配置し、且つ相対向する回転停止カムと第2カムとを相対回転可能に連結する連結部と、
前記第2カム側を同一軸線上の前記第1カム及び回転係止カム側に向けて付勢する押圧付勢手段と、
前記押圧付勢手段の反押圧付勢方向に前記第2筐体が押されることに連動して、前記回転停止カムを反押圧付勢方向に摺動させる摺動軸と、
前記摺動軸を元の位置に付勢して復帰させる復帰手段と、
前記回転係止カムが前記押圧付勢手段に押圧されて軸方向に摺動したとき、第1筐体に固定されているロック部材が該回転係止カムを非回転にロックするロック手段と、
前記回転係止カムが前記押圧付勢手段の付勢力に逆らって軸方向に摺動したとき、前記ロック部材と該回転係止カムとのロックを解除するロック解除手段と、
を備え、前記回転係止カムの軸心から離れた外周部に、前記ロック部材と係脱してロックまたはロック解除されるロック係脱部を構成した
ヒンジ機構。
【請求項2】
前記第1カムは、
該第1カムを内筒とし、前記回転係止カムを外筒とする内外の2重の環状に配置し、該第1カムの軸方向非カム側の端部に、前記回転係止カムと略同外径のフランジを形成し、該フランジの外周部に前記ロック部材に係止されて回転規制される回転規制部を構成した
請求項1に記載のヒンジ機構。
【請求項3】
前記ロック部材は、
前記第1筐体に取り付ける第1筐体取付部材の一部に構成され、前記回転係止カムが軸方向に摺動する摺動長さに対応して該回転係止カムのロック係脱部と係脱する長さに構成した
請求項1または2に記載のヒンジ機構。
【請求項4】
請求項1、2または3に記載のヒンジ機構と前記第1筐体と前記第2筐体とを備え、
前記第1筐体と前記第2筐体の少なくとも一方に、画像を表示する表示手段と入力操作を許容する入力手段の少なくとも一方を備えた
携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−138790(P2009−138790A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−313426(P2007−313426)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】