説明

ヒンジ機構

【課題】回転とスライドをメカニカルに関係付けた良好な操作性のヒンジ機構、および該ヒンジ機構を用いた携帯端末を提供する。
【解決手段】第1ユニットと第2ユニットとを接続したヒンジ機構について、前記第1ユニットに、前記第2ユニットをスライド移動許容する少なくとも2つのスライドガイドを該スライド方向に縦列配置すると共に、該スライドガイドの縦列配置の間に前記第2ユニットを回転許容する回転許容部を備え前記第2ユニットに、前記スライドガイドに係合して非回転に回転規制された状態でスライド移動し、かつ、前記回転許容部に位置すると前記回転規制が解除されて回転許容されるスライド回転係合部を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば第1筐体と第2筐体が回転およびスライド可能に連結された携帯電話機やPDA等の携帯端末に用いられるようなヒンジ機構および携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯端末の1つである携帯電話機として、表示手段の設けられたカバー筐体と、入力キーが設けられた本体筐体とが、ヒンジ装置で接続された携帯電話機が提供されている。
【0003】
このような携帯電話機は、通話機能だけでなく、インターネット機能やメール機能が付加されている。そして、最近では、テレビ放送の電波を受信してテレビ放送を視聴することができるテレビ機能の付加されたタイプも提供されている。
【0004】
携帯電話機の表示手段は、通常縦長の画面で構成されている。しかし、テレビ放送を視聴する場合には横長の画面が好ましい。このため、携帯電話機としての従来の使いやすさと、テレビ放送の視聴しやすさの両方を確保するためには、表示手段を90度回転可能に構成することが好ましいこととなる。
【0005】
このように表示手段を90度回転できるものとして、液晶表示部を縦長と横長とに切り替えることのできる折畳み式携帯電話が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
この折畳み式携帯電話は、折りたたみ可能な第1の筐体3により液晶表示部2を90度回転可能に支持している。従って、閉状態から第1の筐体3を折りたたみ開閉すると、縦長画面を実現でき、さらに液晶表示部2を90度回転すると、横長画面を実現できる。
しかし、この方式は、第1の筐体3の存在により外観の見栄えが悪くなるものであった。
【0007】
一方、従来から存在するヒンジ装置の延長線で考えると、液晶側とキー側をスライドさせる機構、および液晶側とキー側を回転させる機構を組み合わせることが考えられる。
【0008】
しかし、スライド機構と回転機構を単純に組み合わせた場合、スライドのどの位置でも回転することが可能になると考えられる。このようにスライドと回転が独立して行われると、それぞれ勝手な動きをすることになり、非常に使いづらいものになるという問題点がある。
【0009】
【特許文献1】特開2006−211576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は、上述した問題に鑑み、回転とスライドをメカニカルに関係付けた良好な操作性のヒンジ機構、および該ヒンジ機構を用いた携帯端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、第1ユニットと第2ユニットとを接続したヒンジ機構であって、前記第1ユニットに、前記第2ユニットをスライド移動許容する少なくとも2つのスライドガイドを該スライド方向に縦列配置すると共に、該スライドガイドの縦列配置の間に前記第2ユニットを回転許容する回転許容部を備え前記第2ユニットに、前記スライドガイドに係合して非回転に回転規制された状態でスライド移動し、かつ、前記回転許容部に位置すると前記回転規制が解除されて回転許容されるスライド回転係合部を備えたヒンジ機構であることを特徴とする。
【0012】
前記スライドガイドは、レール状の突起、またはレール状の溝など、スライド移動をガイドする部位で構成することができる。
前記スライド回転係合部は、前記スライドガイドに接触する接触面、凸部、あるいは凹部を備えるなど、前記スライドガイドに係合してスライド移動可能な適宜の形状に形成することができる。
【0013】
この発明により、回転とスライド移動が可能であり、かつ、スライド移動中は回転しないヒンジ機構を提供することができる。従って、回転とスライドをメカニカルに関係付けた良好な操作性のヒンジ機構を提供することができる。
【0014】
この発明の態様として、前記第1ユニットに、前記スライド回転係合部に対して所定の回転角度のときにスライド規制解除してスライド許容し、該所定の回転角度以外のときにスライド規制してスライド不可能にするスライド規制部を備えることができる。
前記所定の回転角度は、目的に応じて適宜の角度に設定にすることができ、例えば90度または−90度とすることができる。
この態様により、所定の角度以外での回転動作を安定させることができ、所定の回転角度となったときにスムーズにスライド移動に移行させることができる。
【0015】
またこの発明の態様として、前記スライド回転係合部を、平行直線側面と円弧側面とを有する略小判形状を有する回転部材で形成し、前記スライドガイドを、前記スライド回転係合部の各平行直線側面に接触し得る2本の平行な直線ガイドで形成し、前記スライド規制部を、該直線ガイドの回転許容部側終端部に設けることができる。
これにより、スライド動作と回転動作を安定化することができ、かつ、回転動作とスライド動作の切り替えをスムーズに行うことができ、良好な操作性を得ることができる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記スライド回転係合部が前記所定の角度となったときに回転を一旦係止する角度規制手段を備えることができる。
前記角度規制手段は、カムあるいはクリックなど、回転を一旦係止できる手段で構成することができる。
これにより、回転動作からスライド動作に切り替える際に、回転しすぎることを防止でき、良好な操作性を得ることができる。
【0017】
またこの発明の態様として、前記角度規制手段を、前記スライド回転係合部と共に回転するカムと、該カムを回転側面から付勢する付勢手段とで構成することができる。
これにより、付勢手段の付勢力で回転係止することができ、また付勢手段の付勢力に逆らって手動で回転させて回転係止を解除することができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記カムを、回転中心と外形の中心を偏心させた偏心カムで構成することができる。
これにより、付勢手段の付勢力で回転を付勢することができる。従って、途中まで回転させると後は付勢手段の付勢力で自動的に回転するセミオート回転を実現できる。
【0019】
またこの発明の態様として、前記第1ユニットと第2ユニットの一方に回転範囲を定める回転規制ガイドを設け、他方に該回転規制ガイドに係合する回転規制ガイド係合部を設けることができる。
これにより、必要以上に回転することや、反対向きに回転することを防止でき、操作性を良好にすることができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記第1ユニットと第2ユニットの間に中間ユニットを備え、該中間ユニットと前記第1ユニットを、前記スライド移動方向へスライド移動可能に接続し、前記中間ユニットと前記第2ユニットを、前記回転方向へ相対回転可能に軸支し、前記スライド回転係合部を、前記中間ユニットの前記第1ユニット側に配置して前記軸支部分を介して前記第2ユニットに固定することができる。
これにより、スライド移動と回転動作をより安定化させることができ、ガタツキのないスムーズな動作を実現できる。また、全体の強度を高めることができ、耐久性を高めることができる。
【0021】
またこの発明は、前記ヒンジ機構と、前記第1ユニットが装着される前記第1筐体と、前記第2ユニットが装着される前記第2筐体とを備え、前記第1筐体と前記第2筐体の少なくとも一方に、画像を表示する表示手段と入力操作を許容する入力手段の少なくとも一方を備えた携帯端末とすることができる。
【0022】
これにより、回転とスライドをメカニカルに関係付けた良好な操作性の携帯端末を提供することができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明により、回転とスライドをメカニカルに関係付けた良好な操作性のヒンジ機構、および該ヒンジ機構を用いた携帯端末を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1は、携帯電話機1の各状態を斜視図により説明する説明図であり、図2は、携帯電話機1を正面側から見た分解斜視図であり、図3は、携帯電話機1を背面側から見た分解斜視図であり、図4は、正面側から見たヒンジ装置10の部分拡大分解斜視図であり、図5は、背面側から見たヒンジ装置10の部分拡大分解斜視図であり、図6はヒンジ装置10を正面側から見た斜視図であり、図7はヒンジ装置10を背面側から見た斜視図である。
【0025】
図1に示すように、携帯電話機1は、長方形のキー側筐体5におけるキー配置面6側に、表示側筐体2の背面が重ね合わせられ、この状態でヒンジ装置10(図2参照)により接続されている。表示側筐体2の正面には、表示部3が設けられている。キー側筐体5のキー配置面6には、入力操作キーが複数配置されている。表示側筐体2の表示部3には、液晶表示装置などの表示装置が配置されている。
【0026】
図2に示すように、ヒンジ装置10は、表示側筐体2に固定される表示側ユニット11、キー側筐体5に固定されるキー側ユニット14、および表示側ユニット11とキー側ユニット14を接続する中間ユニット13により主に構成されている。
【0027】
表示側ユニット11は、略長方形の表示側プレート20により構成されている。
この表示側プレート20は、左右の長辺がコ字型に左右対称に屈曲されて平行なガイド溝21が形成されている。また、表示側プレート20の中央には、長手方向に伸びる凹部29が設けられている。
【0028】
2つのガイド溝21は、一直線状に形成されて互いに平行に対向配置されている。また、表示側プレート20のガイド溝21より内側には、ガイド溝21より短い4つのガイドレール23が、いずれもガイド溝21と平行に形成されている。このガイドレール23は、幅方向に2つ互いに平行で間が等間隔となるように対向配置されたペアが、スライド方向前後に縦列に配置されている。この縦列配置は、前後のガイドレール23が一直線上に並ぶように配置されている。
【0029】
各ガイドレール23は、断面L字に形成された板部材22の方片が、表示側プレート20に形成されている溝穴27(図6参照)に挿入されて形成されている。この板部材22の反対側の方片は、表示側プレート20の裏側で装着片24として表示側プレート20に固着されている。この固着は、リベットによるはめ殺し、ネジ止め、あるいは接着といった適宜の方法で実施されている。
【0030】
なお、ガイドレール23は、このように板部材22として取り付けるに限らず、一枚の鉄板を曲げ形成してガイドレール23を有する表示側プレート20を製造するなど、適宜の方法により形成すると良い。
【0031】
また、表示側プレート20は、スライド方向前後に配置されたガイドレール23の間に、回転許容空間28が設けられている。従って、ガイドレール23は、回転許容空間28を間に挟んでスライド方向前後に縦列配置されている。
【0032】
このように形成された表示側プレート20は、表示側筐体2の裏面(キー側筐体5との重ねあわせ面)に形成された凹部2a(図3参照)に、ガイドレール23と反対側の面が固着される。
【0033】
中間ユニット13は、保持部材30と、スライドプレート60と、偏心カム70(図5参照)とで構成されている。
保持部材30は、基材部32の背面に円筒形の軸支持部33が立設されている。また、基材部32には、保持部材30をスライドプレート60に固定するための固定アーム31が設けられている。この固定アーム31に形成された穴にリベットRが差し込まれてスライドプレート60に保持部材30が固定される。なお、リベットRではなくネジ止めによってスライドプレート60に保持部材30を固定してもよい。
【0034】
また、保持部材30には、ケーブル用穴34が設けられている。このケーブル用穴34は、軸支持部33の軸内孔35に連通している。従って、表示側プレート20の凹部29からケーブル用穴34および軸内孔35を通じて、表示側筐体2とキー側筐体5の各装置を有線で電気的に接続することができる。
【0035】
スライドプレート60は、金属プレート61により構成されている。金属プレート61の両側部には、前記表示側プレート20のガイド溝21に係合するスライドレール62が左右対称にそれぞれ形成されている。これにより、スライドレール62が表示側プレート20のガイド溝21内で上下方向にスライド移動可能となり、表示側プレート20とスライドプレート60のスムーズなスライド移動が実現される。そして、この表示側プレート20とスライドプレート60の重ね合わせの隙間部分に、回転規制カム50が挟み込まれる配置関係となる。
【0036】
金属プレート61の中央には、回転規制カム50の円筒形の軸支部54を挿通する軸孔63が形成されている。また、軸孔63の近傍位置に、偏心カム70の回転規制突起75を挿通する挿通孔64(図4参照)が設けられている。
【0037】
金属プレート61の裏面には、偏心カム70が固定される。この偏心カム70は、略ドーナツ型で内周(挿通孔77)と外周が偏心して構成されており、片面に回転規制突起75が形成されている。偏心カム70の外周には、3箇所に凹部71,72,73が形成されている。この偏心カム70は、4つのリベットRでスライドプレート60の金属プレート61に非回転に固着される。
【0038】
キー側ユニット14は、主に回転規制カム50と回転アシストユニット80とで構成されている。
回転規制カム50は、略小判型に形成されており、外周部に2つのガイド側面51が中心から等間隔で互いに平行に形成されている。この2つのガイド側面51の間の長さは、ガイドレール23の対向間の幅とほぼ同一あるいは僅かに短い長さに構成されている。従って、ガイド側面51がガイドレール23に対して平行な状態になると、回転規制カム50はガイドレール23の対向間に入ってスライド移動できる。
【0039】
また、回転規制カム50の他の外周部(2箇所)は円弧状に形成された係合側面53が設けられており、その一方に表示側プレート20側へ向かって凸となる円弧状の凸部52が設けられている。対向配置された2つの係合側面53は、回転規制カム50の軸心を通る直径の長さが、ガイドレール23の対向間の幅よりも長くなるように構成されている。従って、ガイド側面51がガイドレール23に対して平行でない状態では、ガイドレール23の対向間に回転規制カム50が入り込めずスライド規制される。
【0040】
また、係合側面53の端部から端部までの幅は、ガイドレール23の対向間の幅とほぼ同一あるいは僅かに短い長さに構成されている。従って、回転規制カム50が回転していくと、一方の係合側面53の両端が、対向配置されているガイドレール23の内側に位置する状態になる。このとき、回転規制カム50がガイドレール23の対向間に入ってスライド移動できる状態になる。
【0041】
回転規制カム50の中央には、片面側へ突出する円筒形の軸支部54が設けられている。この軸支部54の内側の孔は貫通している。この軸支部54は、スライドプレート60の軸孔63、摺動リング59、偏心カム70の挿通孔77、および摺動リング79に挿通される。
【0042】
また、回転規制カム50の軸支部54側の面には、半円形の回転規制溝56が形成されている。この回転規制溝56は、凹状であり、偏心カム70の回転規制突起75が係合する。このため、回転規制突起75は回転規制溝56内で円弧状に±90度回転可能となり、それ以外は回転不可能となる。
【0043】
軸支部54の端部には、外形が略小判型になるように一部切りかかれた係止凹部55が形成されている。この係止凹部55は、回転アシストユニット80のベース85に形成された挿通孔86の直線部分に係合する。これにより、回転規制カム50と回転アシストユニット80が非回転に固定される。
【0044】
回転アシストユニット80は、ベース85、弦巻バネS、シャフト91、台座95、スライドアーム81、およびローラ83で主に構成されている。
ベース85は、略四角形の板状で上部両肩部分に支持アーム87が形成されている。ベース85の中央には、略小判型の挿通孔86が形成されている。ベース85の下部には、台座95がリベットRにより固定される。
【0045】
この台座95の両端部分に形成された挿通孔95aと、ベース85の支持アーム87に形成された挿通孔87aに、弦巻バネSに挿通されたシャフト91がスライド可能に挿通される。シャフト91の一端91aは、スライドアーム81の装着孔81aに固定される。
【0046】
スライドアーム81の中央には、ローラ83がリベットRにより回転可能に取り付けられる。このローラ83は、外周面が偏心カム70の外周面に当接するように構成されている。
【0047】
回転アシストユニット80は、この構成により、ローラ83が装着されたスライドアーム81がベース85から遠ざかる方向へ移動できる。この移動のとき、シャフト91の支持部92で弦巻バネSが圧縮される。従って、弦巻バネSは、復帰する方向へ付勢する。これにより、偏心カム70の外周面に沿ってローラ83が転動する際に、キー側ユニット14と中間ユニット13の相対回転を付勢することができる。また、ローラ83が凹部71,72,73に当接したときに、相対回転を一時停止することができる。
【0048】
そして、円筒形で一方の開口部外周にフランジが形成されているボス99が、挿通孔86、摺動リング79、挿通孔77、軸孔63、摺動リング59、および軸支部54に挿通されて、回転規制カム50、スライドプレート60、偏心カム70、および回転アシストユニット80が取り付けられる。
これらの各部品を組み立てると、図6,7に示すヒンジ装置10が完成する。
【0049】
以上の構成を有するヒンジ装置10、およびこのヒンジ装置10を搭載した携帯電話機1は、次のように動作する。
図8は、閉状態のヒンジ装置10を背面から見た説明図であり、図9は、中間開状態のヒンジ装置10を背面から見た斜視図であり、図10は、90度回転状態のヒンジ装置10を背面から見た説明図であり、図11は、全開状態のヒンジ装置10を背面から見た説明図である。
【0050】
まず、図1(A)に示したように表示側筐体2とキー側筐体5が完全に重なり合った閉状態のとき、図8(A)に示すように、中間ユニット13およびキー側ユニット14は、表示側プレート20のスライド方向閉側端部(図示上部)に位置している。
【0051】
このとき、図8(B)に示すように、左右2本のガイドレール23間に回転規制カム50が入り込んでスライド移動可能な状態になっている。つまり、回転規制カム50の左右のガイド側面51は、ガイドレール23に対して平行で、それぞれガイドレール23と面接触して係合している。このため、安定してスライド移動可能となっている。また、回転規制カム50が2本のガイドレール23間に挟まれることで、非回転に回転規制されている。
【0052】
またこのとき、偏心カム70の回転規制突起75は、回転規制溝56の中央部に位置している。また、ローラ83は偏心カム70の凹部71に当接している。このローラ83は、弦巻バネSによって偏心カム70へ向けて付勢されているため、非回転状態が安定して保持されている。
【0053】
次に、上述した閉状態から、表示側筐体2とキー側筐体5が重なり合ったまま利用者によって相対的にスライド移動させられると、図1(B)に示す中間状態で一旦停止する。この状態では、図9(A)に示すように、中間ユニット13およびキー側ユニット14が、表示側プレート20のスライド可能距離の中間位置まで移動している。
【0054】
このとき、図9(B)に示すように、回転規制カム50の左右のガイド側面51は、全てのガイドレール23に対して非接触状態になる。このため、回転規制カム50に対する回転規制が解除され、回転規制カム50と該回転規制カム50に固定されているキー側ユニット14が、表示側ユニット11に対して相対回転可能になる。
【0055】
次に、この中間状態から表示側筐体2とキー側筐体5が重なり合ったまま利用者によって相対的に回転させられると、図1(C)に示す90度回転状態で停止する。このようにキー側筐体5に対して表示側筐体2が90度回転した状態では、キー側筐体5の上部に表示側筐体2の中央部が位置している。したがって、表示部3が横長となる。この状態は、テレビ視聴や映像視聴、ゲーム等に適した状態である。
この回転の際、図10(B)に示すように、常に、スライド方向前後に2つずつ配置されたガイドレール23のうち、少なくとも1つずつのガイドレール23の各スライド規制端23aに、回転規制カム50の各係合側面53が当接している。従って、表示側ユニット11とキー側ユニット14は、相対回転を始めると、係合側面53とスライド規制端23aの係合によってスライド移動できないようにスライド規制される。
【0056】
図示するように+90度回転した状態のとき、偏心カム70の回転規制突起75は、回転規制溝56の一端56aに当接して、これ以上回転しないように回転係止されている。そして、偏心カム70の凹部72にローラ83が当接している。このときも、ローラ83は、弦巻バネSによって偏心カム70へ向けて付勢されているため、+90度回転した状態が安定して保持されている。
【0057】
同様に−90度回転した状態のとき、偏心カム70の回転規制突起75は、回転規制溝56の他端56bに当接している。そして、偏心カム70の凹部73にローラ83が当接して、これ以上回転しないように回転係止されている。このときも、ローラ83は、弦巻バネSによって偏心カム70へ向けて付勢されているため、−90度回転した状態が安定して保持されている。
【0058】
なお、この実施例では±90度(左右両方)に回転可能に構成したが、いずれか一方にのみ90度回転可能に構成してもよい。
【0059】
このように90度回転した状態から、利用者の操作によって表示側筐体2とキー側筐体5が戻る方向へ90度回転させられると、図1(B)および図9に示した中間状態に戻る。
【0060】
この中間状態から、利用者の操作によって表示側筐体2とキー側筐体5がさらにスライド移動されると、図1(D)に示すように、表示側筐体2とキー側筐体5が一直線に長くなった全開状態になる。この状態は、携帯電話機1の電話機能を利用して通話するとき、メールを送受信するとき、インターネットを閲覧するとき等に便利な状態である。
【0061】
この全開状態では、図11(A)に示すように、中間ユニット13およびキー側ユニット14は、表示側プレート20のスライド方向開側端部(図示下部)に位置している。
【0062】
このとき、図11(B)に示すように、左右2本のガイドレール23間に回転規制カム50が入り込んでスライド移動可能な状態になっている。つまり、回転規制カム50の左右のガイド側面51は、ガイドレール23に対して平行で、それぞれガイドレール23と面接触して係合している。このため、安定してスライド移動可能となっている。また、回転規制カム50が2本のガイドレール23間に挟まれることで、非回転に回転規制されている。
【0063】
またこのとき、偏心カム70の回転規制突起75は、回転規制溝56の中央部に位置している。また、ローラ83は偏心カム70の凹部71に当接している。このローラ83は、弦巻バネSによって偏心カム70へ向けて付勢されているため、非回転状態が安定して保持されている。
この全開状態から中間状態や全閉状態へ戻すときは、上述した動作と逆の動作でスライド移動させて戻すことができる。
【0064】
以上の構成および動作により、スライド移動しているときは回転せず、回転動作しているときはスライド移動しないヒンジ装置10を提供することができる。そして、このヒンジ装置10を用いて、全閉状態、T字型の視聴状態、全開状態を実現した携帯電話機1を提供することができる。
【0065】
スライド移動の間は回転動作しないことにより、ユーザは、表示側筐体2とキー側筐体5のスライド移動をスムーズに行うことができる。従って、ユーザは、全閉状態から中間状態や全開状態までスムーズに移行させることができる。
【0066】
また、回転動作の間はスライド移動しないことにより、ユーザは、表示側筐体2とキー側筐体5の回転動作をスムーズに行うことができる。従って、ユーザは、中間状態から90度の開状態までスムーズに移行させることができる。
【0067】
また、+90度と−90度のときに回転規制カム50と回転アシストユニット80の作用によって回転停止状態が維持される。これにより、利用者は、携帯電話機1を安定した回転角度で便利に利用することができる。
【0068】
また、携帯電話機1の外観は、表示側筐体2とキー側筐体5で構成され、シンプルで見栄えの良い外観を実現できる。つまり、従来例の場合、キー側筐体に対して折りたたみ開閉する別筐体を備えて、その別筐体に表示側筐体を回転可能に取り付けるといった構成であり、別筐体の存在によって美観が損なわれていた。しかし、上述したヒンジ装置10を用いた携帯電話機1は、こういった別筐体の必要がなく、美しい美観を得ることができる。
【0069】
また、小判型の回転規制カム50と、平行配置した直線状のガイドレール23を用いたため、スライド移動と回転が片方ずつしか動作しない安定動作を簡潔な構造で実現することができる。
【0070】
なお、全閉状態、中間状態、および全開状態の各スライド位置では、適宜の方法によりスライド係止してクリック感を出すことが好ましい。例えば、表示側プレート20と回転規制カム50にそれぞれ凸部と凹部を設け、この凸部と凹部を閉状態、中間状態、および全開状態で係合する位置に配置すれば、これらの各状態となったときに係止されて安定する。
また他にも、山形のカムと該カムへ向けて当接体を付勢する付勢手段を備えてもよい。この場合、閉状態から手動である程度スライドさせると、当接体がカムの頂点を乗り越え、それ以降自動でスライド移動して中間状態まで移行する構成にすればよい。中間状態から全開状態へのスライド移動も同じ構成にすればよい。
このように構成することで、各状態での停止や動作が安定し、利用者の操作性を向上させることができる。
【0071】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の携帯端末は、実施形態の携帯電話機1に対応し、
以下同様に、
第1筐体は、表示側筐体2に対応し、
表示手段は、表示部3の表示装置に対応し、
第2筐体は、キー側筐体5に対応し、
入力手段は、キー配置面6の入力操作キーに対応し、
ヒンジ機構は、ヒンジ装置10に対応し、
第1ユニットは、表示側ユニット11に対応し、
中間ユニットは、中間ユニット13に対応し、
第2ユニットは、キー側ユニット14に対応し、
スライドガイドおよび直線ガイドは、ガイドレール23に対応し、
スライド規制部および回転許容部側終端部は、スライド規制端23aに対応し、
回転許容部は、回転許容空間28に対応し、
スライド回転係合部は、回転規制カム50に対応し、
平行直線側面は、ガイド側面51に対応し、
円弧側面は、係合側面53に対応し、
軸支部分は、軸支部54に対応し、
回転規制ガイドは、回転規制溝56に対応し、
角度規制手段およびカムは、偏心カム70に対応し、
回転規制ガイド係合部は、回転規制突起75に対応し、
付勢手段は、回転アシストユニット80に対応し、
所定の回転角度は、90度に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】携帯電話機の各状態を斜視図により説明する説明図。
【図2】携帯電話機を正面側から見た分解斜視図。
【図3】携帯電話機を背面側から見た分解斜視図。
【図4】ヒンジ装置の部分拡大分解斜視図。
【図5】ヒンジ装置の部分拡大分解斜視図。
【図6】ヒンジ装置を正面側から見た斜視図。
【図7】ヒンジ装置を正面側から見た斜視図。
【図8】全閉状態のヒンジ装置を背面から見た説明図。
【図9】中間状態のヒンジ装置を背面から見た斜視図。
【図10】90度回転状態のヒンジ装置を背面から見た説明図。
【図11】全開状態のヒンジ装置を背面から見た説明図。
【符号の説明】
【0073】
1…携帯電話機、2…表示側筐体、3…表示部、5…キー側筐体、6…キー配置面、10…ヒンジ装置、11…表示側ユニット、13…中間ユニット、14…キー側ユニット、23…ガイドレール、23a…スライド規制端、28…回転許容空間、50…回転規制カム、51…ガイド側面、53…係合側面、54…軸支部、56…回転規制溝、70…偏心カム、75…回転規制突起、80…回転アシストユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ユニットと第2ユニットとを接続したヒンジ機構であって、
前記第1ユニットに、
前記第2ユニットをスライド移動許容する少なくとも2つのスライドガイドを該スライド方向に縦列配置すると共に、
該スライドガイドの縦列配置の間に前記第2ユニットを回転許容する回転許容部を備え
前記第2ユニットに、前記スライドガイドに係合して非回転に回転規制された状態でスライド移動し、かつ、前記回転許容部に位置すると前記回転規制が解除されて回転許容されるスライド回転係合部を備えた
ヒンジ機構。
【請求項2】
前記第1ユニットに、前記スライド回転係合部に対して所定の回転角度のときにスライド規制解除してスライド許容し、該所定の回転角度以外のときにスライド規制してスライド不可能にするスライド規制部を備えた
請求項1記載のヒンジ機構。
【請求項3】
前記スライド回転係合部を、平行直線側面と円弧側面とを有する略小判形状を有する回転部材で形成し、
前記各スライドガイドを、前記スライド回転係合部の各平行直線側面に接触し得る2本の平行な直線ガイドで形成し、
前記スライド規制部を、該直線ガイドの回転許容部側終端部に設けた
請求項2記載のヒンジ機構。
【請求項4】
前記スライド回転係合部が前記所定の角度となったときに回転を一旦係止する角度規制手段を備えた
請求項2または3記載のヒンジ機構。
【請求項5】
前記角度規制手段を、前記スライド回転係合部と共に回転するカムと、該カムを回転側面から付勢する付勢手段とで構成した
請求項4記載のヒンジ機構。
【請求項6】
前記カムを、回転中心と外形の中心を偏心させた偏心カムで構成した
請求項5記載のヒンジ機構。
【請求項7】
前記第1ユニットと第2ユニットの一方に回転範囲を定める回転規制ガイドを設け、他方に該回転規制ガイドに係合する回転規制ガイド係合部を設けた
請求項1から6のいずれか1つに記載のヒンジ機構。
【請求項8】
前記第1ユニットと第2ユニットの間に中間ユニットを備え、
該中間ユニットと前記第1ユニットを、前記スライド移動方向へスライド移動可能に接続し、
前記中間ユニットと前記第2ユニットを、前記回転方向へ相対回転可能に軸支し、
前記スライド回転係合部を、前記中間ユニットの前記第1ユニット側に配置して前記軸支部分を介して前記第2ユニットに固定した
請求項1から7のいずれか1つに記載のヒンジ機構。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つに記載のヒンジ機構と、前記第1ユニットが装着される前記第1筐体と、前記第2ユニットが装着される前記第2筐体とを備え、
前記第1筐体と前記第2筐体の少なくとも一方に、画像を表示する表示手段と入力操作を許容する入力手段の少なくとも一方を備えた
携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−118228(P2009−118228A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289502(P2007−289502)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】