説明

ヒンジ装置並びにヒンジ装置を用いた電子機器

【課題】本発明は、従来にない作用効果を発揮する画期的なヒンジ装置並びにヒンジ装置を用いた電子機器を提供することを目的とする。
【解決手段】第一部材1と第二部材2とを回動自在に連結するヒンジ装置であって、前記第一部材1若しくは前記第二部材2に凸部3Aを有するカム部3を回り止め状態に設け、このカム部3の前記凸部3Aと凹凸係合する凹部4Aを有するカム係合部4を前記第二部材2若しくは前記第一部材1に回り止め状態に設け、前記カム部3と前記カム係合部4とを相対回動自在に設けると共に係合付勢バネ5の係合付勢に抗して離反方向に移動自在となるように構成して、前記カム部3と前記カム係合部4とが前記係合付勢バネ5により付勢係合することで、前記第一部材1に対して前記第二部材2の回動位置が保持されるように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジ装置並びにヒンジ装置を用いた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば携帯電話やノート型パソコンなどの折畳式となる筐体同士を枢着するヒンジ装置として様々なヒンジ装置が提案されており、本出願人は、特開2003−65321号に開示されるヒンジ装置を提案している。
【0003】
具体的には、取付ケース体内に回り止め状態にカム部を設け、このカム部は、取付ケース体内に設けた係合付勢バネに抗して取付ケース体内でスライド移動自在に設け、このカム部に対向して係合付勢バネによりカム部と付勢係合するカム係合部を設け、このカム係合部を前記取付ケース体の一側に配設し、第一部材,第二部材のいずれか一方に取付ケース体を固定状態に設け、いずれか他方にカム係合部を固定状態に設け、第一部材に対して第二部材を回動させると、係合付勢バネに抗してカム部を離反させつつカム部とカム係合部とが係脱して相対回動し、このカム部とカム係合部とが付勢係合した状態では第一部材に対する第二部材の回動位置が保持されるように構成している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種のヒンジ装置において、ますます小型化が要求される中、このヒンジ装置における第一部材,第二部材に対する堅固な取付け(例えば取付ケース体の一側から突出するカム係合部の固定)を達成すべく、例えばカム係合部を断面多角形状にするなど種々の回り止め構造が提案されているが、いずれも未だ不十分である。
【0005】
また、このヒンジ装置の部品(例えば第二部材の取付凹部に取付けるカム係合部)に対し、小型化しつつ求められる強度がより一層高くなる中(筐体としての第一部材,第二部材が大型化しており、これら筐体同士の相対回動の際にかかる応力に耐え得る強度が求められている。)、従来から提案される構造をそのまま小型化したのでは、第一部材と第二部材とを相対回動させた際にかかる応力を良好に受けることができず、よって、前述した十分な回り止め構造を具備しつつ、且つ、十分な強度を具備したものは提案されていない。尚、この問題は、このヒンジ装置を取付ける筐体における樹脂製の取り付け部分(例えば第二部材の取付凹部)の耐久性にも関わる問題である。
【0006】
本発明は、上述した問題点に鑑み、種々の実験・研究を繰り返し行なった結果、従来にない作用効果発揮する画期的なヒンジ装置並びにヒンジ装置を用いた電子機器を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0008】
第一部材1と第二部材2とを回動自在に連結するヒンジ装置であって、前記第一部材1若しくは前記第二部材2に凸部3Aを有するカム部3を回り止め状態に設け、このカム部3の前記凸部3Aと凹凸係合する凹部4Aを有するカム係合部4を前記第二部材2若しくは前記第一部材1に回り止め状態に設け、前記カム部3と前記カム係合部4とを相対回動自在に設けると共に係合付勢バネ5の係合付勢に抗して離反方向に移動自在となるように構成して、前記カム部3と前記カム係合部4とが前記係合付勢バネ5により付勢係合することで、前記第一部材1に対して前記第二部材2の回動位置が保持されるように構成したヒンジ装置において、前記第二部材2若しくは前記第一部材1に設けた取付凹部6に前記カム係合部4を挿入して回り止め状態で取り付ける構成とし、この取付凹部6に前記カム係合部4を挿入した際、前記取付凹部6の内面部に設けた回り止め凸部6aが係合する回り止め凹部4aを前記カム係合部4の側周面に設け、このカム係合部4の側周面のうち、前記カム部3の前記凸部3Aが前記カム係合部4の前記凹部4Aから係脱して回動移動する際の前記凹部4A外の凸摺動面部4Bが設けられる部位の脇の側周面でなく、前記凹部4Aが設けられる部位の脇の側周面に前記回り止め凹部4aを設けたことを特徴とするヒンジ装置に係るものである。
【0009】
また、前記カム係合部4における前記カム部3との対向端面の複数箇所に前記凹部4Aを設けた際には、この凹部4A間における前記凸摺動面部4Bが設けられる部位の脇の側周面でなく、前記凹部4A夫々が設けられる部位の脇の側周面に前記回り止め凹部4aを設けたことを特徴とする請求項1記載のヒンジ装置に係るものである。
【0010】
また、前記カム係合部4の前記凹部4Aが設けられる部位の脇の側周面にして、前記カム部3と前記カム係合部4とが前記係合付勢バネ5により付勢係合する際に前記凸部3Aが落ち込み摺動する前記凹部4Aの落ち込み摺動面部4A’でない部位の脇の側周面にのみ前記回り止め凹部4aを設けたことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載のヒンジ装置に係るものである。
【0011】
また、前記回り止め凸部6aが突き当たり係合する前記回り止め凹部4aの係合面4a’は、前記カム係合部4の回動中心点を通過する面と同一平面状となるように形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のヒンジ装置に係るものである。
【0012】
また、前記回り止め凹部4aは、前記取付凹部6に対する前記カム係合部4の挿入方向に長さを有し、且つ、前記カム係合部4の正面及び背面に開口する凹条であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒンジ装置に係るものである。
【0013】
また、第一部材1と第二部材2とを回動自在に連結するヒンジ装置であって、前記第一部材1若しくは前記第二部材2に凸部3Aを有するカム部3を回り止め状態に設け、このカム部3の前記凸部3Aと凹凸係合する凹部4Aを有するカム係合部4を前記第二部材2若しくは前記第一部材1に回り止め状態に設け、前記カム部3と前記カム係合部4とを相対回動自在に設けると共に係合付勢バネ5の係合付勢に抗して離反方向に移動自在となるように構成して、前記カム部3と前記カム係合部4とが前記係合付勢バネ5により付勢係合することで、前記第一部材1に対して前記第二部材2の回動位置が保持されるように構成したヒンジ装置において、前記第二部材2若しくは前記第一部材1に設けた取付凹部6に前記カム係合部4を挿入して回り止め状態で取り付ける構成とし、この取付凹部6に前記カム係合部4を挿入した際、前記取付凹部6の内面部に設けた回り止め凸部6aが係合する回り止め凹部4aを前記カム係合部4の側周面に設け、前記回り止め凸部6aが突き当たり係合する前記回り止め凹部4aの係合面4a’は、前記カム係合部4の回動中心点を通過する面と同一平面状となるように形成されていることを特徴とすることを特徴とするヒンジ装置に係るものである。
【0014】
また、上面に操作部11を備えた本体部を前記第一部材1若しくは前記第二部材2とし、伏面にディスプレイ部12を備えた開閉部を前記第二部材2若しくは前記第一部材1とし、この本体部と開閉部との端部同士を前記請求項1〜6記載のヒンジ装置によって枢着連結したことを特徴とするヒンジ装置を用いた電子機器に係るものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上述のように構成したから、小型化の要求にも十分対応でき、ヒンジ装置本来の機能に支障を来たすことなく堅固な取付けが可能になるなど従来にない作用効果を発揮する画期的なヒンジ装置並びにヒンジ装置を用いた電子機器となる。
【0016】
また、請求項2,3記載の発明においては、前述した作用効果を確実且つ良好に発揮することができる極めて実用性に秀れた画期的なヒンジ装置となる。
【0017】
また、請求項4記載の発明においては、前述した作用効果に加え、第一部材と第二部材とを相対回動させた際にかかる応力を良好に受けて部品の変形を可及的に防止し得る極めて実用性に秀れた画期的なヒンジ装置となる。
【0018】
また、請求項5記載の発明においては、より一層堅固な取付けが可能になるなど従来にない作用効果を発揮する画期的なヒンジ装置並びにヒンジ装置を用いた電子機器となる。
【0019】
また、請求項6記載の発明においては、第一部材と第二部材とを相対回動させた際にかかる応力を良好に受けて破損等を可及的に防止し得る極めて実用性に秀れた画期的なヒンジ装置となる。
【0020】
また、請求項7記載の発明においては、前述のような作用効果を発揮する画期的なヒンジ装置を用いた電子機器を提供できることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施例の使用状態説明図である。
【図2】本実施例を示す分解斜視図である。
【図3】本実施例に係る要部の説明斜視図である。
【図4】本実施例に係る要部を示す斜視図である。
【図5】本実施例に係る要部の説明図である。
【図6】本実施例に係る要部の説明断面図である。
【図7】別実施例を示す斜視図である。
【図8】別実施例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0023】
第二部材2に対するカム係合部4の取付けに際し、第二部材2に設けた取付凹部6にカム係合部4を挿入すると、取付凹部6の内面部に設けた回り止め凸部6aにカム係合部4の側周面に設けた回り止め凹部4aが回り止め状態で係合する。
【0024】
つまり、第二部材2に設けた取付凹部6に対する回り止め構造がカム係合部4の表面に突起物を設けたりするのではなく凹状の部位を設けることで得られる構造であるから、カム係合部4を小型化しても(大型化することなく)、第一部材1と第二部材2とを相対回動した際に生じるカム係合部4に対する応力に耐え得る良好な回り止め状態が確実に得られることになる。
【0025】
ところで、本発明は、前述したカム係合部4に設ける回り止め凹部4aを、カム係合部4の側周面のうち、カム部3の凸部3Aがカム係合部4の凹部4Aから係脱して回動移動する際の凹部4A外の凸摺動面部4Bが設けられる部位の脇の側周面でなく、凹部4Aが設けられる部位の脇の側周面に回り止め凹部4aを設けており、この構成から、カム係合部4の側周面に凹状の部位を設けることで危惧される、ヒンジ装置本来の機能に支障を来たしてしまうことを可及的に防止し得ることになる。
【0026】
即ち、第一部材1と第二部材2との相対回動に際して、カム部3の凸部3Aがカム係合部4の凹部4Aから係脱して該凹部4A外の凸摺動面部4Bを回動抵抗を生じながら摺動する構造(例えば第一部材1に対して第二部材2を所定角度開放状態で維持する所謂フリーストップ機能が発揮される構造)において、仮にカム係合部4に設ける回り止め凹部4aを当該凸摺動面部4Bが設けられる部位の脇の側周面に設けた場合、この回り止め凹部4aが前記凸摺動面部4Bに開口したものであると、当該部位をカム部3の凸部3Aが通過する際には、その他の部位に比して回動抵抗が弱くなってしまい、よって、凸部3Aが凸摺動面部4Bを摺動する際には部位によって回動抵抗の強弱にばらつきが生じる(部分的にフリーストップ機能の効きに変化が生じ、第一部材1と第二部材2とを相対回動させる際の回動操作感が悪くなる)など、商品価値が著しく低下するという問題が生じてしまう。
【0027】
更に具体的には、前述したカム係合部4は、第二部材2に設けた取付凹部6に挿入して取付ける構造であり、しかも、制作上の容易性から打ち抜きや引き抜きにより成形することが一般的であり、よって、このカム係合部4に設けられる回り止め凹部4aはカム係合部4の正面及び背面に開口する構造となるが、その構造上、前述したようにカム係合部4を小型化(小径化)するに際し、カム係合部4に設ける回り止め凹部4aを当該凸摺動面部4Bが設けられる部位の脇の側周面に設けることとした場合、回り止め凹部4aは前記カム係合部4の前記凸摺動面部4Bとなる正面及び背面に開口することになる。
【0028】
従って、この凸摺動面部4Bを摺動するカム部3の凸部3Aが回り止め凹部4aが開口する部位(摺動面が無い部位)を通過した際には、接触面積が減る分、回動抵抗が弱くなってしまうのである。
【0029】
また、この凸摺動面部4Bが設けられる部位は、係合付勢バネ5によって凸部3Aが強く押し当てられるという特に強い応力がかかる部位であり、よって、当該部位は、第一部材1と第二部材2とを相対回動させて応力がかかった際には歪み(変形)が生じてしまい、凸部3Aが凸摺動面部4Bを摺動する際には部位によって回動抵抗の強弱にばらつきが生じる(部分的にフリーストップ機能の効きに変化が生じ、第一部材1と第二部材2とを相対回動させる際の回動操作感が悪くなる)など、この点においても商品価値が著しく低下するという問題が生じてしまう。
【0030】
この点、本発明は、カム係合部4の側周面のうち、カム部3の凸部3Aがカム係合部4の凹部4Aから係脱して回動移動する際の凹部4A外の凸摺動面部4Bが設けられる部位の脇の側周面でなく、凹部4Aが設けられる部位の脇の側周面に回り止め凹部4aを設けており、つまり、カム係合部4の側周面における前述した凸部3Aが摺動する部位(凸摺動面部4B)とは関係の無い部位に設けたから(カム係合部4の変形を可及的に防止し得ることになるから)、前述した十分な回り止め状態での取付けを実現しつつ、この種のヒンジ装置が持つ本来の機能(例えば回動抵抗を利用したフリーストップ機能や回動操作感)に支障を来たすことなく確実に実現し得ることになる。
【0031】
また、請求項3記載の発明のように、カム部3とカム係合部4とが係合付勢バネ5により付勢係合する際に凸部3Aが落ち込み摺動する凹部4Aの落ち込み摺動面部4A’でない部位の脇の側周面にのみ回り止め凹部4aを設けた場合には、前述した作用効果が得られるのは勿論、落ち込み摺動も良好に達成されることになる。
【0032】
また、請求項4記載の発明のように、回り止め凸部6aが突き当たり係合する回り止め凹部4aの係合面4a’は、カム係合部4の回動中心点を通過する面と同一平面状となるように形成されている場合には、第一部材1と第二部材2とを相対回動させた際にカム係合部4にかかる応力を回動中心に作用させることができ、この点においてもカム係合部4にかかる応力を良好に受けてカム係合部4の歪み(変形)を可及的に防止し得ることになり、一方、このカム係合部4にかかる応力を回動中心に作用させることは、カム係合部4を取付ける取付凹部6の一部分への偏った応力の集中を防止することにもなり、該取付凹部6の耐久性をも飛躍的に向上し得ることになる。
【0033】
例えば特に取付凹部6を設ける箇所が樹脂製の場合、カム係合部4との間に生じる応力はカム係合部4にのみ影響を及ぼすのではなく、むしろ樹脂で形成される取付凹部6に影響するものであり、前述したカム係合部4にかかる応力を回動中心に作用させる構成は取付凹部6の耐久性の向上の点から極めて重要である。
【実施例】
【0034】
本発明の具体的な一実施例について図面に基づいて説明する。
【0035】
本実施例は、携帯電話の本体部と該本体部に重合する重合部との枢着部に本発明のヒンジ装置Hを設けた場合を示しているが、重合部(第二部材2)の基部に取付凹部6を設け、操作キーを有する本体部(第一部材1)の基部に取付凹部7を設け、この双方の取付凹部6,7が連通するように本体部(第一部材1)と重合部(第二部材2)との基部同士を組み合わせ、この連通する取付凹部6,7に棒状のヒンジ装置Hが挿入配設されるように構成している。
【0036】
この第一部材1の取付凹部7はヒンジ装置Hの第一取付部(取付ケース体8)が挿入されて回り止め係合され、第二部材2の取付凹部6には回り止め状態にヒンジ装置Hの第二取付部(カム係合部4)が挿入されて回り止め係合されるように構成している。尚、後述するカム部3の替わりにカム係合部4をスライド自在に設けることとした場合、このカム係合部4をスライド自在に保持する部位(取付ケース体8)を第二部材2若しくは第一部材1の取付凹部6,7として機能せしめる場合も含むものである。この場合、後述するカム係合部4の側周面に形成される回り止め凹部4aに係合する回り止め凸部6aを取付ケース体8の内周面に設けることになる。
【0037】
この本実施例のヒンジ装置Hについて更に説明する。
【0038】
本実施例は、第一部材1に凸部3Aを有するカム部3を回り止め状態に設け、このカム部3の前記凸部3Aと凹凸係合する凹部4Aを有するカム係合部4を前記第二部材2に回り止め状態に設け、前記カム部3と前記カム係合部4とを相対回動自在に設けると共に係合付勢バネ5の係合付勢に抗して離反方向に移動自在となるように構成して、前記カム部3と前記カム係合部4とが前記係合付勢バネ5により付勢係合することで、前記第一部材1に対して前記第二部材2の回動位置が保持されるように構成したものである。
【0039】
具体的には、取付ケース体8内に回り止め状態にカム部3を設け、このカム部3は、取付ケース体8内に設けた係合付勢バネ5に抗して取付ケース体8内でスライド移動自在に設け、このカム部3に対向して前記係合付勢バネ5によりカム部3と付勢係合するカム係合部4を設け、このカム係合部4を取付ケース体8の一側に配設されている。本実施例では、取付ケース体8内へ配される回動支軸9によりカム係合部4とカム部3とが相対回動自在に設けられ、またカム係合部4に取付部を設けてはいなく、取付ケース体8の内方側にカム部3と係合する凹部4Aを内面対向位置に設けたカム係合部4が取付ケース体8の一側に配設されるように構成し、このカム係合部4が前記取付凹部6に回り止め状態に挿入係合するように構成している。
【0040】
従って、第一部材1に対して第二部材2を回動させると、係合付勢バネ5に抗してカム部3が離反しつつカム部3とカム係合部4とが係脱して回動支軸9を軸に相対回動し、このカム部3とカム係合部4とが付勢係合した状態(カム部3がカム係合部4に対して係合途中状態若しくは係合完了状態)では第一部材1に対する第二部材2の回動位置が保持されるように構成している。
【0041】
即ち、本実施例では、第一部材1(本体部)に対して第二部材2(重合部)を閉塞状態から開放状態へと回動させると、第二部材2の回動に伴って回り止め状態に取付凹部6に係合しているカム係合部4が回動して取付ケース体8に内装されているカム部3に対して相対回動する。このカム部3は取付ケース体8を介して第一部材1の取付凹部7に回り止め状態に固定されている。
【0042】
そして、カム部3に対してカム係合部4が回動する際には、カム部3は取付ケース体8内において係合付勢バネ5に抗してカム係合部4から離反移動しつつカム係合が係脱してすり合わせ状態で回動する。このカム係合の形状や係合付勢バネ5の押圧力の設定によっては、係脱回動位置で手を放せばその位置(カム係合部4の凹部4Aから係脱して回動移動する際の凸摺動面部4Bに対して凸部3が摺動する位置)で第二部材2(重合部)が停止するフリーストップ機能が実現できるように構成している。尚、係脱した後再びすり合わせ面の傾斜によってカム係合しようとする回動付勢力が生じるように構成しても良い。
【0043】
即ち、本実施例ではカム部3とカム係合部4との間にフリーストップ機能が発揮される構成としたが、第一部材1と第二部材2を少し回動した回動範囲ではカム係合部が係脱しきらずに戻り閉じ付勢力が生じるように構成し、この回動範囲を超えて回動すると、カム係合が係脱するが、すり合わせ面の傾斜によって再びカム係合しようと開き付勢力が生じ、自動的に開き回動し、再びカム係合することで開放位置がこのカム係合によって保持されるように構成することもできる。
【0044】
また、第一部材1と第二部材2とが重合閉塞した状態では、完全にカム部3とカム係合部4とが完全にはカム係合せず、係合途中位置(凸部3Aが凹部4Aの落ち込み摺動面部4A’で止まった状態)となるように設定することで閉塞状態においても閉じ付勢(落ち込み係合付勢力:通称吸い込み力)が生じるように構成している。
【0045】
また、本実施例は、前述したように第二部材2に設けた取付凹部6にカム係合部4を挿入して回り止め状態で取り付ける構成であり、この取付凹部6にカム係合部4を挿入した際、取付凹部6の内面部に設けた回り止め凸部6aが係合する回り止め凹部4aをカム係合部4の側周面に設け、このカム係合部4の側周面のうち、カム部3の凸部3Aがカム係合部4の凹部4Aから係脱して回動移動する際の凹部4A外の凸摺動面部4Bが設けられる部位の脇の側周面でなく、凹部4Aが設けられる部位の脇の側周面に回り止め凹部4aを設けている。
【0046】
また、具体的には、本実施例ではカム係合部4におけるカム部3との対向面の複数箇所(2箇所)に凹部4Aを形成しており、この夫々の凹部4A間における凸摺動面部4B夫々が設けられる部位の脇の側周面でなく、凹部4A夫々が設けられる部位の脇の側周面に回り止め凹部4aを設けている。
【0047】
更に具体的には、カム係合部4の凹部4Aは、凸摺動面部4Bに連続し凸部3Aが落ち込み摺動する下り傾斜状の落ち込み摺動面部4A’と、該落ち込み摺動面部4A’に連続する底面部4A”とから成り、この底面部4A”の側周面に回り止め凹部4aを設けており、この構成から、より本来の機能とは関係の無い部位(カム部3の凸部3Aが回動抵抗を生じながら摺動する凸摺動面部4B及び凸部3Aが回動付勢を生じながら落ち込み摺動する下り傾斜面部4A’が設けられる部位以外の部位の側周面)に設けることでカム係合部4が変形することの影響を可及的に受けないことになる。
【0048】
尚、落ち込み摺動面部4A’は落ち込み摺動する凸部3Aが係合途中となって止まる位置までを示すものである。
【0049】
また、本実施例は、回り止め凸部6aが突き当たり係合する回り止め凹部4aにおける傾斜状の係合面4a’は、カム係合部4の回動中心点Pを通過する面と同一平面状となるように形成されており、この構成から、第一部材1と第二部材2とを相対回動させた際にカム係合部4にかかる応力を回動中心に作用させることができ、この点においてもカム係合部4にかかる応力を良好に受けてカム係合部4の変形を可及的に防止し得ることになる。
【0050】
また、本実施例は、回り止め凹部4aは、取付凹部6に対するカム係合部4の挿入方向に長さを有する凹条であり、カム係合部4の正面及び背面に開口状態に設けられている。
【0051】
従って、この構成から、単なる点での係合でなく線若しくは面での係合となりより一層堅固な回り止め状態が得られることになる。
【0052】
また、カム係合部4の正面視形状として、図1〜6に図示したように正面視正方形状に限らず、図7,8に図示したように正面視細長形状(小判形状や長方形状や楕円形状など)としても良い。
【0053】
この正面視細長形状の場合、カム係合部4の回動半径が長い部位(対向端部)夫々に凹部4A及び回り止め凹部4aを設けており、この部位はその他の部位(回動半径が短い部位)に比して回動応力に対する強度の高い部位であるから、この点においてもカム係合部4の変形を防止し得ることになる。
【0054】
本実施例は上述のように構成したから、第二部材2に対するカム係合部4の取付けに際し、第二部材2に設けた取付凹部6にカム係合部4を挿入すると、取付凹部6の内面部に設けた回り止め凸部6aにカム係合部4の側周面に設けた回り止め凹部4aが回り止め状態で係合する。
【0055】
従って、カム係合部4を小型化しても(大型化することなく)、第一部材1と第二部材2とを相対回動した際に生じるカム係合部4に対する応力に耐え得る良好な回り止め状態が確実に得られることになる。
【0056】
また、本実施例は、前述したカム係合部4に設ける回り止め凹部4aを、カム係合部4の側周面のうち、カム部3の凸部3Aがカム係合部4の凹部4Aから係脱して回動移動する際の凹部4A外の凸摺動面部4Bが設けられる部位の脇の側周面でなく、凹部4Aが設けられる部位の脇の側周面に回り止め凹部4aを設けており、この構成から、前述した十分な回り止め状態での取付けを実現しつつ、この種のヒンジ装置が持つ本来の機能(例えば回動抵抗を利用したフリーストップ機能や回動操作感)に支障を来たすことなく確実に実現し得ることになる。
【0057】
また、本実施例は、回り止め凸部6aが突き当たり係合する回り止め凹部4aにおける係合面4a’は、カム係合部4の回動中心点を通過する面と同一平面状となるように形成されているから、第一部材1と第二部材2とを相対回動させた際にカム係合部4にかかる応力を回動中心に作用させることができ、この点においてもカム係合部4にかかる応力を良好に受けてカム係合部4の歪み(変形)を可及的に防止し得ることになり、一方、このカム係合部4にかかる応力を回動中心に作用させることは、カム係合部4を取付ける取付凹部6の一部分への偏った応力の集中を防止することにもなり、該取付凹部6の耐久性をも飛躍的に向上し得ることになる。
【0058】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、例えば携帯電話やノート型パソコンなどの折畳式となる筐体同士を枢着するヒンジ装置として有用である。
【符号の説明】
【0060】
1 第一部材
2 第二部材
3 カム部
3A 凸部
4 カム係合部
4’係合面
4a 回り止め凹部
4A 凹部
4A’ 落ち込み摺動面部
4B 凸摺動面部
5 係合付勢バネ
6 取付凹部
6a 回り止め凸部
11 操作部
12 ディスプレイ部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0061】
【特許文献1】特開2003−65321号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材と第二部材とを回動自在に連結するヒンジ装置であって、前記第一部材若しくは前記第二部材に凸部を有するカム部を回り止め状態に設け、このカム部の前記凸部と凹凸係合する凹部を有するカム係合部を前記第二部材若しくは前記第一部材に回り止め状態に設け、前記カム部と前記カム係合部とを相対回動自在に設けると共に係合付勢バネの係合付勢に抗して離反方向に移動自在となるように構成して、前記カム部と前記カム係合部とが前記係合付勢バネにより付勢係合することで、前記第一部材に対して前記第二部材の回動位置が保持されるように構成したヒンジ装置において、前記第二部材若しくは前記第一部材に設けた取付凹部に前記カム係合部を挿入して回り止め状態で取り付ける構成とし、この取付凹部に前記カム係合部を挿入した際、前記取付凹部の内面部に設けた回り止め凸部が係合する回り止め凹部を前記カム係合部の側周面に設け、このカム係合部の側周面のうち、前記カム部の前記凸部が前記カム係合部の前記凹部から係脱して回動移動する際の前記凹部外の凸摺動面部が設けられる部位の脇の側周面でなく、前記凹部が設けられる部位の脇の側周面に前記回り止め凹部を設けたことを特徴とするヒンジ装置。
【請求項2】
前記カム係合部における前記カム部との対向端面の複数箇所に前記凹部を設けた際には、この凹部間における前記凸摺動面部が設けられる部位の脇の側周面でなく、前記凹部夫々が設けられる部位の脇の側周面に前記回り止め凹部を設けたことを特徴とする請求項1記載のヒンジ装置。
【請求項3】
前記カム係合部の前記凹部が設けられる部位の脇の側周面にして、前記カム部と前記カム係合部とが前記係合付勢バネにより付勢係合する際に前記凸部が落ち込み摺動する前記凹部の落ち込み摺動面部でない部位の脇の側周面にのみ前記回り止め凹部を設けたことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載のヒンジ装置。
【請求項4】
前記回り止め凸部が突き当たり係合する前記回り止め凹部の係合面は、前記カム係合部の回動中心点を通過する面と同一平面状となるように形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のヒンジ装置。
【請求項5】
前記回り止め凹部は、前記取付凹部に対する前記カム係合部の挿入方向に長さを有し、且つ、前記カム係合部の正面及び背面に開口する凹条であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒンジ装置。
【請求項6】
第一部材と第二部材とを回動自在に連結するヒンジ装置であって、前記第一部材若しくは前記第二部材に凸部を有するカム部を回り止め状態に設け、このカム部の前記凸部と凹凸係合する凹部を有するカム係合部を前記第二部材若しくは前記第一部材に回り止め状態に設け、前記カム部と前記カム係合部とを相対回動自在に設けると共に係合付勢バネの係合付勢に抗して離反方向に移動自在となるように構成して、前記カム部と前記カム係合部とが前記係合付勢バネにより付勢係合することで、前記第一部材に対して前記第二部材の回動位置が保持されるように構成したヒンジ装置において、前記第二部材若しくは前記第一部材に設けた取付凹部に前記カム係合部を挿入して回り止め状態で取り付ける構成とし、この取付凹部に前記カム係合部を挿入した際、前記取付凹部の内面部に設けた回り止め凸部が係合する回り止め凹部を前記カム係合部の側周面に設け、前記回り止め凸部が突き当たり係合する前記回り止め凹部の係合面は、前記カム係合部の回動中心点を通過する面と同一平面状となるように形成されていることを特徴とすることを特徴とするヒンジ装置。
【請求項7】
上面に操作部を備えた本体部を前記第一部材若しくは前記第二部材とし、伏面にディスプレイ部を備えた開閉部を前記第二部材若しくは前記第一部材とし、この本体部と開閉部との端部同士を前記請求項1〜6記載のヒンジ装置によって枢着連結したことを特徴とするヒンジ装置を用いた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−159785(P2010−159785A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1008(P2009−1008)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(396019022)株式会社ストロベリーコーポレーション (88)
【Fターム(参考)】