説明

ヒンジ装置及びそれを用いた超低温フリーザ

【課題】取付ベースに取り付けられたカバーの着脱作業性を向上させる。
【解決手段】取付ベース及びナックル部を有し、ナックル部に挿通されたヒンジピン30を中心として回動可能に連結されるヒンジ装置1において、各取付ベース11、21の取付用ネジを隠蔽するカバー31を備え、取付ベースは、非枢支側側面11Aに形成された凹部19と、ヒンジピン30の軸方向の両端部側側面11Bに形成され、側面11Aまで延在する溝17と、各溝内にそれぞれ凹陥形成された被係合部18とを有し、カバー31の内側には、溝17内に挿入され、カバー31装着時に各被係合部18に着脱可能に係合する係合部32と、凹部19内に進入して係合する突起33を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドア等の開放状態や閉塞状態を回動自在に連結して保持するヒンジ装置及びこれを用いた超低温フリーザに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、開口に設けられたドアやカバーは、当該開口の一側に回動自在に枢支されたヒンジ装置によって開放状態と閉塞状態とが保持されている。例えば、特許文献1に示すヒンジ装置は、本体側にネジ止めされる第1のヒンジ部材と、扉側にネジ止めされる第2のヒンジ部材と、ヒンジピン(ピン集合体)とから構成されている。
【0003】
第1のヒンジ部材は、取付ベースと、当該取付ベースにヒンジピンの延在方向に所定寸法離間して形成された2つのナックルを有している。第2のヒンジ部材は、取付ベースと、当該取付ベースに前記第1のヒンジ部材のナックルとの間に介装される回止めのための係止ナックルを有している。第1及び第2のヒンジ部材の各ナックルには、ヒンジピンの延在方向に貫通孔がそれぞれ形成されており、各貫通孔が重合された状態でヒンジピンが挿通されることにより、第2のヒンジ部材の取付ベースが固定された扉は、該ヒンジピンを中心として第1のヒンジ部材の取付ベースが固定された本体に対し、回動自在に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−61306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、従来のヒンジ装置では、各取付ベースには、本体又は扉にネジ止めするための複数のネジ孔が形成されている。そして、当該取付ベースには、係るネジ孔に挿通される取付用のネジを隠蔽するためのカバーが着脱可能に取り付けられている。
【0006】
一般に、取付ベースは、亜鉛ダイカストにて形成されているのに対し、カバーはステンレスなどの金属材料にて構成されている。そして、取付ベースの外面及びヒンジピンの軸方向の両端部側に位置する側面に渡ってカバー取付用に落ち込んだ段差部が形成されていると共に、各両側面にカバー側に形成された突起を嵌合保持する溝が形成されている。
【0007】
これにより、カバーを少許撓ませながら取付ベースの段差部に嵌合させ、カバー側の内面に形成された突起を各取付ベース側の溝に嵌合させることで、カバーを取付ベースに取付可能としていた。
【0008】
しかしながら、係る構成では、メンテナンス等のため、カバーを取付ベースから取り外す際、マイナスドライバー等の工具を取付ベースのヒンジピンの軸方向の両端部側に位置する側面と、カバーとの間に挿入しなければ容易に取り外すことができないという問題があった。
【0009】
そのため、カバーの取り外し作業性が煩雑となるばかりでなく、カバーや取付ベースの側面が工具によって傷つき、外観の低下や、破損等の原因となる問題があった。
【0010】
そこで、本発明は従来の技術的課題を解決するためになされたものであり、取付ベースに取り付けられたカバーの着脱作業性を向上させることができるヒンジ装置及びこれを用いた超低温フリーザを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のヒンジ装置は、取付ベースと該取付ベースの一側に形成されたナックル部をそれぞれ有する第1のヒンジ部材及び第2のヒンジ部材から成り、各ナックル部のピン孔にヒンジピンを挿通することにより、第1のヒンジ部材に対して第2のヒンジ部材を回動可能に連結して成るものであって、各取付ベースに形成されたネジ孔に挿通される取付用のネジを隠蔽するためのカバーを備え、取付ベースは、他側に位置する側面に形成された凹部と、ヒンジピンの軸方向の両端部側に位置する側面にそれぞれ形成され、他側に位置する側面まで延在する溝と、各溝内にそれぞれ凹陥形成された被係合部とを有し、カバーの内側には、各溝内にそれぞれ挿入され、カバーがネジを隠蔽した状態で各被係合部にそれぞれ着脱可能に係合する係合部と、凹部内に進入して係合する突起が形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、上記発明において、突起とは反対側に位置する係合部の端部は傾斜面とされていることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、上記各発明において、カバーは、各溝内にそれぞれ進入して係合する突条を備え、係合部は突条より突出して形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、上記各発明において、凹部及び突起は複数形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明は、上記各発明において、ネジ孔は、取付ベースに形成された凹陥部内に形成されており、該凹陥部には補強リブが形成され、カバーは該補強リブも合わせて隠蔽することを特徴とする。
【0016】
請求項6の発明のヒンジ装置は、取付ベースと該取付ベースの一側に形成されたナックル部をそれぞれ有する第1のヒンジ部材及び第2のヒンジ部材から成り、各ナックル部のピン孔にヒンジピンを挿通することにより、第1のヒンジ部材に対して第2のヒンジ部材を回動可能に連結して成るものであって、各取付ベースに形成されたネジ孔に挿通される取付用のネジを隠蔽するためのカバーを備え、取付ベースは、ヒンジピンの軸方向の両端部側に位置する側面にそれぞれ形成され、他側に位置する側面まで延在する溝と、各溝内にそれぞれ凹陥形成された被係合部とを有し、カバーの内側には、各溝内にそれぞれ挿入され、カバーがネジを隠蔽した状態で各被係合部にそれぞれ着脱可能に係合する係合部と、他側に位置する側面まで延在し、各溝内にそれぞれ進入して係合する突条を備え、係合部は突条より突出して形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項7の発明の超低温フリーザは、断熱壁から構成され、内部に貯蔵室を有する本体と、該貯蔵室の開口を閉塞する断熱扉とを備え、請求項1乃至請求項6のうちの何れかに記載のヒンジ装置の第1のヒンジ部材を本体にネジ止めし、第2のヒンジ部材を断熱扉にネジ止めして、本体に断熱扉を開閉自在に枢支したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、取付ベースと該取付ベースの一側に形成されたナックル部をそれぞれ有する第1のヒンジ部材及び第2のヒンジ部材から成り、各ナックル部のピン孔にヒンジピンを挿通することにより、第1のヒンジ部材に対して第2のヒンジ部材を回動可能に連結して成るヒンジ装置において、各取付ベースに形成されたネジ孔に挿通される取付用のネジを隠蔽するためのカバーを備え、取付ベースは、他側に位置する側面に形成された凹部と、ヒンジピンの軸方向の両端部側に位置する側面にそれぞれ形成され、他側に位置する側面まで延在する溝と、各溝内にそれぞれ凹陥形成された被係合部とを有し、カバーの内側には、各溝内にそれぞれ挿入され、カバーがネジを隠蔽した状態で各被係合部にそれぞれ着脱可能に係合する係合部と、凹部内に進入して係合する突起が形成されていることにより、カバーの係合部を取付ベースの他側に位置する側面側の端部から溝内に挿入し、スライドして行って被係合部に係合させ、突起を凹部に係合させることで、カバーを取付ベースに着脱可能に取り付けることができる。
【0019】
このとき、カバーは取付ベースの他側においては突起が凹部内に進入し、ヒンジピンの軸方向の両端部側においては係合部が被係合部に係合するので、被係合部と係合部との係合度合いを過剰に強くすること無く、カバーは安定的に取付ベースに取り付けることが可能となる。
【0020】
従って、従来の如く工具を用いること無くカバーを着脱することが可能となる。また、係合部は溝に案内されて被係合部に係合するので、取り付ける際の操作性も良好となる。
【0021】
請求項2の発明によれば、上記発明に加えて、突起とは反対側に位置する係合部の端部は傾斜面とされているので、カバーの係合部を容易に溝内に進入させ、被係合部に係合させることができるようになる。これにより、より一層、カバーの取付作業性を向上させることができる。
【0022】
請求項3の発明によれば、上記各発明に加えて、カバーは、各溝内にそれぞれ進入して係合する突条を備え、係合部は突条より突出して形成されているので、カバーの突条も溝内に進入して係合する構成とすることができ、更に安定的(外れ防止)にカバーを取り付けることができる。
【0023】
また、係合部を溝に挿脱する際も突条と溝は係合しているので、取付ベースに対しカバーが傾かずに容易に挿脱することができる。
【0024】
請求項4の発明によれば、上記各発明に加えて、凹部及び突起は複数形成されているので、取付ベースの他側における係合強度(保持力)が向上し、浮き上がりや外れを防止できる。
【0025】
請求項5の発明によれば、上記各発明に加えて、ネジ孔は、取付ベースに形成された凹陥部内に形成されており、該凹陥部には補強リブが形成され、カバーは該補強リブも合わせて隠蔽することにより、補強リブによって取付ベースを補強することができ、該取付ベースの割れの発生を防止若しくは抑制することが可能となる。また、カバーは補強リブも隠蔽するため、外観の向上を図ることができる。
【0026】
請求項6の発明によれば、取付ベースと該取付ベースの一側に形成されたナックル部をそれぞれ有する第1のヒンジ部材及び第2のヒンジ部材から成り、各ナックル部のピン孔にヒンジピンを挿通することにより、第1のヒンジ部材に対して第2のヒンジ部材を回動可能に連結して成るヒンジ装置において、各取付ベースに形成されたネジ孔に挿通される取付用のネジを隠蔽するためのカバーを備え、取付ベースは、ヒンジピンの軸方向の両端部側に位置する側面にそれぞれ形成され、他側に位置する側面まで延在する溝と、各溝内にそれぞれ凹陥形成された被係合部とを有し、カバーの内側には、各溝内にそれぞれ挿入され、カバーがネジを隠蔽した状態で各被係合部にそれぞれ着脱可能に係合する係合部と、他側に位置する側面まで延在し、各溝内にそれぞれ進入して係合する突条を備え、係合部は突条より突出して形成されているので、カバーの係合部を取付ベースの他側に位置する側面側の端部から溝内に挿入し、スライドして行って被係合部に係合させ、このとき、他側に位置する側面まで延在する突条を溝内に進入させて係合させることで、カバーを取付ベースに着脱可能に取り付けることができる。
【0027】
このとき、カバーの突条は、他側に位置する側面まで延在して形成されているため、被係合部と係合部との係合度合いを過剰に強くすること無く、更に安定的(外れ防止)にカバーを取り付けることができる。従って、従来の如く工具を用いること無くカバーを安定的に取付ベースに着脱することが可能となる。
【0028】
請求項7の発明によれば、断熱壁から構成され、内部に貯蔵室を有する本体と、該貯蔵室の開口を閉塞する断熱扉とを備えた超低温フリーザにおいて、請求項1乃至請求項6のうちの何れかに記載のヒンジ装置の第1のヒンジ部材を本体にネジ止めし、第2のヒンジ部材を断熱扉にネジ止めして、本体に断熱扉を開閉自在に枢支したにより、超低温フリーザの断熱扉は断熱厚みが大きくなるため、重量も嵩むこととなるが、第1及び第2のヒンジ部材の取付ベースをネジ止めするかたちのヒンジ装置によれば、この重い断熱扉を支障無く枢支でき、上記各発明は超低温フリーザには好適なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のヒンジ装置を適用した超低温フリーザの斜視図である。
【図2】図1の超低温フリーザのヒンジ装置部分の拡大斜視図である。
【図3】ヒンジ装置の斜視図である。
【図4】カバーを外した状態を示すヒンジ装置の分解斜視図である。
【図5】カバーの平面図である。
【図6】他の実施例としてのカバーを外した状態を示すヒンジ装置の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明のヒンジ装置1の実施の形態について、当該ヒンジ装置1を適用した超低温フリーザSを例に挙げて詳細に説明する。図1は超低温フリーザSの斜視図、図2はヒンジ装置1部分の拡大図をそれぞれ示している。
【0031】
本実施例の超低温フリーザ(超低温貯蔵庫)Sは、例えば長期低温保存を行う冷凍食品の貯蔵や、生体組織や検体などの超低温保存に用いられるものであり、前面に開口した断熱箱体2により本体が構成されている。
【0032】
断熱箱体2は、いずれも前面に開口した鋼板製の外箱3と内箱と、これら両箱の前端間を接続する合成樹脂製の図示しないブレーカと、これら外箱3、内箱、ブレーカにて囲繞された空間内を現場発泡方式にて充填されたポリウレタン樹脂断熱材とから構成されており、上記内箱内を前面に開口した貯蔵室としている。
【0033】
ブレーカの前面は階段状に成形されており、そこに図示しないパッキンを介して断熱扉5が一端、本実施例では、一側端を中心に複数の本願発明に係るヒンジ装置1、1により回動自在に設けられる。これにより、断熱扉5にて断熱箱体(本体)2内部の貯蔵室の前面開口は、開閉自在に閉塞される。
【0034】
そして、この断熱箱体2の下方には、貯蔵室内を所定の冷却温度、例えば、−85℃以下の超低温に冷却するための冷却ユニットが配設されたユニット部6が設けられている。また、断熱扉5の前面には、当該超低温フリーザ6の各種設定を行うための操作パネル7が設けられている。
【0035】
本実施例では、目標とする貯蔵室内温度(庫内温度)を例えば−85℃以下とするため、貯蔵室内と外気とを区画する断熱箱体2は、庫内温度を0℃付近に設定する低温庫に比して大きな断熱能力が必要とされる。そのため、上述したようなポリウレタン樹脂断熱材のみにより当該断熱能力を確保するためには、相当の厚さに形成しなければならず、限られた本体寸法では、貯蔵室の収納量を十分に確保することができないこととなる。そのため、本実施例における断熱箱体2は、外箱3の内壁面にガラスウール製の真空断熱材が配置されており、当該真空断熱材による断熱能力に応じて、ポリウレタン樹脂断熱材の厚さ寸法を小さく形成している。
【0036】
また、超低温となる貯蔵室の前面開口を開閉自在に閉塞する断熱扉5は、大きな断熱能力を実現するため、断熱箱体2と同様にポリウレタン樹脂断熱材やガラスウール製の真空断熱材によって構成される。しかしながら、該断熱扉5の厚さ寸法は、通常、6cm程度を必要とし、これにより、断熱扉5自体の重量は20kg程度にまで及ぶこととなり、該断熱扉5を本体である断熱箱体2に回動自在に保持可能とするヒンジ装置1は、相当の重量を保持可能なものが要求されることとなる。
【0037】
以下に本願発明に係るヒンジ装置1の詳細について図2乃至図5を参照して説明する。図2は図1の超低温フリーザのヒンジ装置1部分の拡大斜視図、図3はヒンジ装置1の斜視図、図4はカバーを外した状態を示すヒンジ装置1の分解斜視図、図5はカバーの平面図をそれぞれ示している。
【0038】
ヒンジ装置1は、超低温フリーザの断熱箱体2の側面の前縁部(前面開口側縁部)にネジ止めにて固定される第1のヒンジ部材10と、当該断熱箱体2の前面開口を開閉自在に閉塞する断熱扉5にネジ止めにて固定される第2のヒンジ部材20と、これらヒンジ部材10、20の各ナックル部のピン孔に挿通されるヒンジピン30とから成る。
【0039】
第1のヒンジ部材10及び第2のヒンジ部材20は、それぞれ一側(枢支側)に複数の(この場合2つの)ナックル部12、12、若しくは22、22が形成された取付ベース11、21から成る。当該取付ベース11、21は亜鉛ダイカストにて成型されている。
【0040】
そして、各取付ベース11、21に形成された各ナックル部12、22は、いずれもヒンジピン30の軸方向に貫通するピン孔12A(ナックル部22のピン孔は図示しない)が形成されている。ここで、各ヒンジ部材10、20に形成されたナックル部12、22は、互いに噛み合わされる位置にて取付ベース11、21より突出して構成されており、これにより、これらナックル部12、22が交互に隣接して嵌め合わされた状態で、各ピン孔は重合され、ヒンジピン30が隣接する各ナックル部12、22に挿通可能とされる。
【0041】
また、各取付ベース11、21の外面側には、外周端部よりも断熱箱体2若しくは断熱扉5側に後退した凹陥部13、23が形成されており、当該凹陥部13、23に断熱箱体2又は断熱扉5に固定する図示しない取付用のネジを挿通する複数のネジ孔14、24が形成されている。本実施例では、各ネジ孔14、24は、いずれもヒンジピン30の軸方向に複数穿設されている。
【0042】
また、本実施例では、凹陥部13、23内に、当該各ネジ孔14、24を回避した位置であって、ヒンジピン30の軸方向と略直交する方向に複数の補強リブ15、25が形成されている。これにより、比較的重量の大きい断熱扉5がネジ止めによって保持されることで、各ネジ孔14、24箇所において、ヒンジピン30の軸方向に荷重がかかっても、ヒンジピン30の軸方向と略直交する方向に延在する各補強リブ15、25によって、効果的に補強することができる。そのため、特に本実施例の如き重量の大きな断熱扉5を回動自在に保持するヒンジ装置1の場合であっても、取付ベース11、21の割れの発生を防止若しくは抑制することが可能となる。そのため、断熱扉5の脱落等を回避することができ、安全な開閉を実現することが可能となる。
【0043】
一方、各取付ベース11、21には、凹陥部13、23に形成された各ネジ孔14、24、補強リブ15、25、ネジ孔14、24に挿通された取付用のネジを隠蔽するためのカバー31、31が着脱自在に取り付けられる。尚、各取付ベース11、21に取り付けられるカバー31は、ヒンジピン30の軸方向に逆転させることで共用することができる。
【0044】
各取付ベース11、21はそれぞれナックル部12、22側とは反対側となる他側(非枢支側)に位置する側面11A、21A及びヒンジピン30の軸方向の両端部側に位置する側面11B、21Bには、カバー30を各側面11A、21A、11B、21Bと図3に示すように略面一にて収納保持する段差部16、26が形成されている。
【0045】
各側面11A、21Aに位置する段差部16、26には、当該段差部16、26よりも更に内方に向けて凹んだ凹部19(側面21A側の凹部は図示してしない)が形成されている。本実施例では、各凹部19は、ヒンジピン30の軸方向に複数、例えば2つ並設している。尚、当該凹部19の数はこれに限定されるものではなく、単一、若しくは3つ以上であってもよい。
【0046】
また、側面11B、21Bに形成された段差部16、26には、ヒンジピン30側からそれぞれ側面11A、21Aにまで延在する溝17、27がそれぞれ形成されている。この溝17、27内のヒンジピン30側の端部には、更にこの溝を深くした被係合部18、28が形成されている。
【0047】
一方、カバー31は、例えば、硬質合成樹脂(一例としてABS)にて形成されたものであって、取付ベース11、21側及びヒンジピン30側の面が開口した矩形体を呈している。このカバー31は、ヒンジピン30の軸方向の両端部側に対応する内面(上記側面11B、21Bに対応する面)31Bに、各段差部16、26側に突出する係合部32、32が形成されている。
【0048】
この係合部32は、側面11A、21A側において開口された各溝端部17A、27Aより該溝17、27内に挿入され、当該溝17、27にて案内されることで摺動可能とされると共に、該カバー31が各取付ベース11、21の凹陥部13、23を隠蔽した状態で各被係合部18、28に着脱可能に係合される。
【0049】
尚、本実施例では、当該係合部32が形成された位置に対応する位置における取付ベース11、21側の端面にマイナスドライバー等の工具を挿入可能とする切欠34、34が形成されていると共に、該係合部32の内側端面(溝17、27側に面する端面)32Aは、切欠34側に向けて後退した断面略台形状を呈している。
【0050】
更に、このカバー31は、各取付ベース11、21のナックル部12、22側とは反対側となる他側(非枢支側)に対応する内面(上記側面11A、21Aに対応する面)31Aに各段差部16、26側に突出する突起33が形成されている。この突起33は、取付ベース11、21の側面11A、21Aに形成された凹部19に対応した位置に形成されており、凹部19が複数形成されている場合には、当該凹部19の数に応じて形成されている。本実施例では、凹部19は2つ形成されているため、突起33も同様に2つ形成されている。
【0051】
以上の構成により、カバー31、31を取り外した状態で、第1のヒンジ部材10の取付ベース11を断熱箱体2の側面の前縁部に取付用のネジによって固定し、第2のヒンジ部材20の取付ベース21を断熱扉5の側面に取付用のネジによって固定する。これにより、第2のヒンジ部材20が固定された断熱扉5は、第1のヒンジ部材10が固定された断熱箱体2に対してヒンジピン30の軸方向を中心として回動自在とされ、断熱箱体2に断熱扉5を開閉自在に枢支される。
【0052】
各取付ベース11、21の凹陥部13、23をカバー31、31を取り付けることで隠蔽する。この際、まず、カバー31のヒンジピン30側に開口した端面を取付ベース11、21の側面11B、21Bの側面11A、21A側端部に宛がい、カバー31の内面31Bに形成された係合部32を取付ベース11、21の側面11B、21Bに形成された溝端部17A、27Aより該溝17、27内に挿入する。溝17、27にて案内されるように、カバー31をヒンジピン30側に摺動させ、カバー31が取付ベース11、21の凹陥部13、23(取付用のネジ)を隠蔽した状態で、カバー31の係合部32は、溝17、27内に形成された被係合部18、28内に落ち込んで係合する。
【0053】
また、この状態で、カバー31の内面31Aに形成された突起33、33は、取付ベース11、21の側面11A、21Aに形成された凹部19内部に進入して係合する。
【0054】
係る構成により、カバー31の係合部32を取付ベース11、21の側面11A、21A側の溝端部17A、27Aから溝17、27内に挿入し、スライドして行って被係合部18、28に係合させ、突起33を凹部19等に係合させることで、カバー31を各取付ベース11、21に着脱可能に取り付けることができる。
【0055】
このとき、カバー31は取付ベース11、21の側面11A、21A側(他側)においては突起33が凹部19内に進入し、ヒンジピン30の軸方向の両端部側(側面11B、21B側)においては係合部32が被係合部18、28に係合するので、被係合部18又は28と係合部32との係合度合いを過剰に強くすること無く、カバー31は安定的に各取付ベース11、21に取り付けることが可能となる。
【0056】
そして、カバー31を取り外す際には、カバー31をヒンジピン30とは離間する方向にスライドさせることにより、カバー31側の係合部32を被係合部18、28からその可撓性によって解除させ、同時に突起33と凹部19等との係合を解除させて取り外すことができる。
【0057】
従って、従来の如く工具を用いること無くカバー31を着脱することが可能となる。また、係合部32は溝17、27に案内されて被係合部18、28に係合するので、取り付ける際の操作性も良好となる。特に、カバー31の摺動(スライド)は、断熱扉5を閉じた状態で、断熱箱体2の側面に沿って、若しくは、断熱扉5の側面に沿って行うことができるため、これによってもカバー31の脱着作業性を良好とすることができる。
【0058】
また、カバー31に形成された突起33及び取付ベース11、21に形成された凹部19等は、複数形成されているため、カバー31が取付ベース11、21に取り付けられた状態で、取付ベース11、21の側面11A、21A側(他側)における係合強度(保持力)が向上し、浮き上がりや外れを防止することができる。
【0059】
上述したように、各取付ベース11、21は、それ自体の強度を向上させるため、ネジ孔14、24が形成された凹陥部13、23に補強リブ15、25が形成されているが、当該補強リブ15、25も、ネジと共にカバー31にて隠蔽されるため、外観の向上を図ることができる。
【0060】
また、本実施例では、万一、樹脂にて形成されたカバー31が変形等し、円滑に取付ベース11、21に沿ってスライドさせることができなくなった場合には、マイナスドライバー等の工具を上記切欠34内に挿入することにより、該工具の端部を係合部32の台形状の内側端面32Aに沿わせることで、円滑に係合部32と被係合部18、28との係合を解除させることができる。これにより、万一の場合であっても、円滑にカバー31を取り外すことが可能となる。
【0061】
尚、他の実施例として図6に示すように、カバー31に形成される係合部32は、突起33とは反対側に位置する端部、即ちヒンジピン30側の端部32がヒンジピン30側に向けて低く傾斜した傾斜面とすると共に、当該係合部32の突起33側、即ち内面31A側に、該内面31A側に向けて延在すると共に、各溝17、27内に進入して係合する突条35を形成してもよい。係合部32は、当該突条35よりも突出して形成されているものとする。即ち、カバー31が取付ベース11、21に取り付けられた状態で、突条35の取付ベースの一側(ナックル部側)端部に、当該突条35よりも突出した係合部32が形成されている。
【0062】
係る構成とすることにより、突起33とは反対側に位置する係合部32の端部32Bに形成された傾斜面により、カバー31の係合部32を容易に溝17、27内に進入させ、被係合部18、28に係合させることができるようになる。これにより、より一層、カバー31の取付作業性を向上させることができる。
【0063】
また、カバーの内面31Bに溝17、27内にそれぞれ進入して係合する突条35を形成することにより、該突条35よりも突出して形成される係合部32と共に取付ベース11、21側の溝17、27内に進入して係合する構成とすることができる。従って、更に安定的(外れ防止)にカバー31を取り付けることができる。
【0064】
また、係合部32を溝17、27に挿脱する際も突条35と溝17、27は係合しているので、取付ベース11、21に対しカバー31が傾かずに容易に挿脱することができる。取り付ける際の操作性をより良好とすることができる。
【0065】
また、これ以外にも、カバー31の内面31Bに溝17、27内にそれぞれ進入して係合する突条35を他側に位置する側面、即ち、内面31Aまで延ばして形成することにより(図示しない)、該突条35よりも突出して形成される係合部32と共に、溝17、27全体に進入して係合する構成とすることができる。従って、被係合部18、28と係合部21との係合度合いを過剰に強くすること無く、更に安定的(外れ防止)にカバー31を取り付けることができる。従って、従来の如く工具を用いること無くカバー31を安定的に取付ベース11、21に着脱することが可能となる。
【0066】
尚、本実施例におけるヒンジ装置1は、上述したような超低温フリーザSにおける断熱扉5を断熱箱体2に対して開閉自在に枢支する場合について説明しているが、これに限定されるものではなく、一方に第1のヒンジ部材10を固定し、他方に第2のヒンジ部材20を固定することで、これらをヒンジピン30を中心として回動自在に連結するものであれば本願発明を適用することができる。
【0067】
しかしながら、上述したように超低温フリーザSのように回動自在に連結する断熱扉5の断熱厚みが大きく、重量も嵩む場合には、本願発明の如き第1及び第2のヒンジ部材10、20の取付ベース11、21をネジ止めするかたちのヒンジ装置1によれば、この重い断熱扉5を支障無く枢支でき、より好適なものとなる。
【符号の説明】
【0068】
S 超低温フリーザ
1 ヒンジ装置
2 本体
5 断熱扉
10 第1のヒンジ部材
11、21 取付ベース
12、22 ナックル部
12A ピン孔
13、23 凹陥部
14、24 ネジ孔
15、25 補強リブ
16、26 段差部
17、27 溝
17A、27A 溝端部
18、28 被係合部
19 凹部
20 第2のヒンジ部材
30 ヒンジピン
31 カバー
32 係合部
32A 内側端面
32B 端部
33 突起
34 切欠
35 突条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付ベースと該取付ベースの一側に形成されたナックル部をそれぞれ有する第1のヒンジ部材及び第2のヒンジ部材から成り、前記各ナックル部のピン孔にヒンジピンを挿通することにより、前記第1のヒンジ部材に対して前記第2のヒンジ部材を回動可能に連結して成るヒンジ装置において、
前記各取付ベースに形成されたネジ孔に挿通される取付用のネジを隠蔽するためのカバーを備え、
前記取付ベースは、他側に位置する側面に形成された凹部と、前記ヒンジピンの軸方向の両端部側に位置する側面にそれぞれ形成され、前記他側に位置する側面まで延在する溝と、各溝内にそれぞれ凹陥形成された被係合部とを有し、
前記カバーの内側には、前記各溝内にそれぞれ挿入され、前記カバーが前記ネジを隠蔽した状態で前記各被係合部にそれぞれ着脱可能に係合する係合部と、前記凹部内に進入して係合する突起が形成されていることを特徴とするヒンジ装置。
【請求項2】
前記突起とは反対側に位置する前記係合部の端部は傾斜面とされていることを特徴とする請求項1に記載のヒンジ装置。
【請求項3】
前記カバーは、前記各溝内にそれぞれ進入して係合する突条を備え、前記係合部は前記突条より突出して形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のヒンジ装置。
【請求項4】
前記凹部及び突起は複数形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちの何れかに記載のヒンジ装置。
【請求項5】
前記ネジ孔は、前記取付ベースに形成された凹陥部内に形成されており、該凹陥部には補強リブが形成され、前記カバーは該補強リブも合わせて隠蔽することを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちの何れかに記載のヒンジ装置。
【請求項6】
取付ベースと該取付ベースの一側に形成されたナックル部をそれぞれ有する第1のヒンジ部材及び第2のヒンジ部材から成り、前記各ナックル部のピン孔にヒンジピンを挿通することにより、前記第1のヒンジ部材に対して前記第2のヒンジ部材を回動可能に連結して成るヒンジ装置において、
前記各取付ベースに形成されたネジ孔に挿通される取付用のネジを隠蔽するためのカバーを備え、
前記取付ベースは、前記ヒンジピンの軸方向の両端部側に位置する側面にそれぞれ形成され、他側に位置する側面まで延在する溝と、各溝内にそれぞれ凹陥形成された被係合部とを有し、
前記カバーの内側には、前記各溝内にそれぞれ挿入され、前記カバーが前記ネジを隠蔽した状態で前記各被係合部にそれぞれ着脱可能に係合する係合部と、前記他側に位置する側面まで延在し、前記各溝内にそれぞれ進入して係合する突条を備え、前記係合部は前記突条より突出して形成されていることを特徴とするヒンジ装置。
【請求項7】
断熱壁から構成され、内部に貯蔵室を有する本体と、該貯蔵室の開口を閉塞する断熱扉とを備え、請求項1乃至請求項6のうちの何れかに記載のヒンジ装置の前記第1のヒンジ部材を前記本体にネジ止めし、前記第2のヒンジ部材を前記断熱扉にネジ止めして、前記本体に前記断熱扉を開閉自在に枢支したことを特徴とする超低温フリーザ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−97407(P2012−97407A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243637(P2010−243637)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】