説明

ヒンジ

【課題】従来のスライダおよび巻きバネを具備するヒンジに比べて小型化および部品点数の削減を図りつつ、ヒンジが回動するときに十分な摩擦による抵抗力を発生することが可能なヒンジを提供する。
【解決手段】ヒンジ100に、第一支持部および第一本体部13を備える第一固定部材10と、第二支持部および第二本体部23を備える第二固定部材20と、第一固定部材10および第二固定部材20を回動可能に連結する回動ピン30と、第一固定部材10および第二固定部材20を付勢する捩りバネと、を具備し、第一支持部と第二本体部23とが当接する第一当接部51・52および第二支持部と第一本体部13とが当接する第二当接部61・62に回動ピン30の接線方向の摩擦力が発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つの部材を回動可能に連結するヒンジに関する。より詳細には、二つの部材の一方が他方に対して回動するときに摩擦による抵抗力が発生するヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、ファクシミリ、スキャナー等、オフィスで使用される事務機器の本体と原稿読み取り部に載置された原稿を原稿読み取り部に密着させて当該原稿読み取り部に対する原稿の位置を保持する原稿圧着板とを回動可能に連結するヒンジが知られている。
【0003】
このようなヒンジの多くは、内部に空間が形成されるとともに事務機器の本体に固定されるケース状の第一部材、カムを有するとともに原稿圧着板に固定される第二部材、上記第一部材および第二部材を回動可能に連結する回動軸、第一部材の内部に形成された空間に移動可能に収容されるスライダ、および第一部材の内部に形成された空間に収容されるとともにスライダを第二部材のカムに当接する方向に付勢する巻きバネを具備する。
上記ヒンジは、巻きバネの付勢力で原稿圧着板の重量を支えることにより事務機器の本体に対する原稿圧着板の回動角度(開閉角度)を任意の角度で保持し(フリーストップ機能)、ひいては作業者が原稿圧着板を回動(開閉)させて原稿読み取り部へ原稿を載置する作業を容易にしている。
【0004】
また、上記ヒンジの如く第一部材、第二部材、回動軸、スライダおよび巻きバネを具備し、さらに原稿圧着板の自重によるヒンジの回動に対して「摩擦による抵抗力」を発生し、巻きバネの付勢力を補う機能を有するヒンジも知られている。例えば、特許文献1から特許文献3に記載の如くである。
特許文献1に記載のヒンジの場合、固定側ヒンジ体(上記第一部材に相当)の軸受壁部の上端縁に小さい突子が形成され、可動側ヒンジ体(上記第二部材に相当)の張出壁の内面に形成された摺動凹円弧面の中途部に隆起段部が形成される。そして、小さい突子が隆起段部に当接し、これらが当接した部分に「摩擦による抵抗力」が発生することにより、原稿圧着板が閉じる速度が小さくなる。
特許文献2に記載のヒンジの場合、ケース(上記第一部材に相当)の内壁に摺接面が形成され、回動体(上記第二部材に相当)に摺接部が形成される。そして、摺接部が摺接面に当接し、これらが当接した部分に「摩擦による抵抗力」が発生することにより、原稿圧着板が閉じる速度が小さくなる。
特許文献3に記載のヒンジの場合、回転体(上記第二部材に相当)に形成された圧接部とケース(上記第一部材に相当)の側壁とが当接し、これらが当接した部分に「摩擦による抵抗力」が発生することにより、原稿圧着板が閉じる速度が小さくなる。
【0005】
近年、ヒンジの更なる小型化および低コスト化が要求され、このような要求に応えるべく、上記ヒンジのスライダおよび巻きバネを省略し、代わりに捩りバネを具備するヒンジが検討されている。
このような捩りバネを具備するヒンジは、スライダおよび巻きバネを収容するスペースが不要であるため更なる小型化が容易であり、全体として部品点数が減少するため製造コストの削減が容易であるという点において、上記スライダおよび巻きバネを具備するヒンジよりも有利である。
【0006】
一方、原稿圧着板の重量は近年において益々増加する傾向があり、ヒンジのフリーストップ機能を向上させる(より重い原稿圧着板の場合であっても事務機器の本体に対する原稿圧着板の回動角度を一定に保持可能とする)ことも要求される。
捩りバネを具備するヒンジのフリーストップ機能を向上させる一般的な方法としては捩りバネの弾性力を大きくすることが挙げられる。また、捩りバネの弾性力を大きくする方法としては、よりバネ定数が大きい材料を用いて捩りバネを製造すること、あるいは捩りバネの線径を大きくすること、等が挙げられる。しかし、上記方法は捩りバネの製造コストおよびサイズの増大を招来するので、好ましくない。
また、捩りバネを具備するヒンジにおいて回動軸を捩りバネに貫通させる構造を採用した場合、捩りバネの弾性力はヒンジの回動角度に概ね比例するが、原稿圧着板に起因するトルクはヒンジの回動角度に比例しない(通常は、正弦関数あるいは余弦関数に近似の関係となる)。従って、フリーストップ機能を持たせるためには別途摩擦力等を用いてヒンジに作用するトルクを平衡させる必要がある。
【0007】
ここで、特許文献1から特許文献3に記載のヒンジにおける「巻きバネの付勢力を補う機能」は、スライダおよびスライダに当接するカムの形状を適宜選択することによりヒンジの回動角度と巻きバネ付勢力との関係を適宜調整することが可能な従来のヒンジに適用されることを前提としており、「スライダおよび巻きバネの配置およびスライダの移動方向」を基準として定められる。従って、「巻きバネの付勢力を補う機能」をそのまま上記捩りバネを具備するヒンジに適用することはできない。
より詳細には、特許文献1に記載の「巻きバネの付勢力を補う機能」をそのまま上記捩りバネを具備するヒンジに適用した場合、摩擦による抵抗力を大きくするためには小さい突子と隆起段部とが当接する面積、ひいては軸受壁部の厚さ(回動軸の軸線方向の厚さ)を大きくする必要があり、却ってヒンジが大型化する場合がある。
また、特許文献3に記載の「巻きバネの付勢力を補う機能」をそのまま上記捩りバネを具備するヒンジに適用した場合、摩擦による抵抗力するためにはケースの側壁の「回動軸の軸線方向における弾性変形量」を大きくする必要がある。しかし、当該弾性変形量を大きくした場合にはケースの破損を防止するためにケースの側壁の厚さ(回動軸の軸線方向の厚さ)を大きくする必要があり、却ってヒンジが大型化する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−98839号公報
【特許文献2】特開2004−116208号公報
【特許文献3】特開2005−299748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものである。
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、従来のヒンジ(スライダおよび巻きバネを具備するヒンジ)に比べて小型化および部品点数の削減が可能であり、かつヒンジが回動するときに十分な摩擦による抵抗力を発生することが可能なヒンジを提供すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下では、上記課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
即ち、請求項1においては、
第一連結対象物および第二連結対象物を回動可能に連結するヒンジであって、
前記第一連結対象物に固定される第一固定部材と、
前記第二連結対象物に固定される第二固定部材と、
前記第一固定部材および前記第二固定部材を回動可能に連結する回動軸と、
一端部が前記第一固定部材に係止され、中途部が前記回動軸に貫通され、他端部が前記第二固定部材に係止され、前記第一固定部材に対する前記第二固定部材の回動角度が大きくなる方向に前記第一固定部材および前記第二固定部材を付勢する捩りバネと、
を具備し、
前記第一固定部材は、
前記回動軸を支持する支持孔が形成される第一支持部と、
前記第一支持部に相対移動不能に固定される第一本体部と、
を備え、
前記第二固定部材は、
前記回動軸を支持する支持孔が形成される第二支持部と、
前記第二支持部に相対移動不能に固定される第二本体部と、
を備え、
前記第一支持部が前記第二本体部に当接し、前記第一支持部と前記第二本体部とが当接する部分である第一当接部に前記回動軸の半径方向の応力が作用することにより、前記第一当接部に前記回動軸の接線方向の摩擦力が発生し、
前記第二支持部が前記第一本体部に当接し、前記第二支持部と前記第一本体部とが当接する部分である第二当接部に前記回動軸の半径方向の応力が作用することにより、前記第二当接部に前記回動軸の接線方向の摩擦力が発生する。
【0012】
請求項2においては、
前記第一固定部材に対する前記第二固定部材の回動角度が最小値になったとき、前記第一支持部は前記第二本体部に当接せず、かつ、前記第二支持部は前記第一本体部に当接しない。
【0013】
請求項3においては、
前記第一固定部材に対する前記第二固定部材の回動角度が最大値になったとき、前記第一支持部は前記第二本体部に当接せず、かつ、前記第二支持部は前記第一本体部に当接しない。
【0014】
請求項4においては、
前記第一固定部材に対する前記第二固定部材の回動角度が最大値になったとき、前記捩りバネは弾性変形していない。
【0015】
請求項5においては、
前記回転軸の軸線方向から見たときの前記回動軸および前記第一当接部を結ぶ線と前記回動軸および前記第二当接部を結ぶ線との成す角度である当接部間角度は120°よりも大きい。
【0016】
請求項6においては、
前記当接部間角度は180°である。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、従来のヒンジに比べて小型化および部品点数の削減が可能であり、かつヒンジが回動するときに十分な摩擦による抵抗力を発生することが可能である、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るヒンジの実施の一形態を具備するコピー機を示す左側面図。
【図2】(a)本発明に係るヒンジの実施の一形態を示す左前上方から見た斜視図、(b)本発明に係るヒンジの実施の一形態を示す右後下方から見た斜視図。
【図3】(a)本発明に係るヒンジの実施の一形態を示す正面図、(b)本発明に係るヒンジの実施の一形態を示す背面図。
【図4】(a)本発明に係るヒンジの実施の一形態を示す平面図、(b)本発明に係るヒンジの実施の一形態を示す底面図。
【図5】本発明に係るヒンジの実施の一形態を示す左側面図(回動角度θ=0°)。
【図6】本発明に係るヒンジの実施の一形態を示す右側面図(回動角度θ=0°)。
【図7】本発明に係るヒンジの実施の一形態を示す左側面断面図(図3(a)のA−A矢視断面図、回動角度θ=0°)。
【図8】本発明に係るヒンジの実施の一形態における第一固定部材を示す左前上方から見た斜視図、(b)本発明に係るヒンジの実施の一形態における第一固定部材を示す右後下方から見た斜視図。
【図9】本発明に係るヒンジの実施の一形態における第二固定部材を示す左前上方から見た斜視図、(b)本発明に係るヒンジの実施の一形態における第二固定部材を示す右後下方から見た斜視図。
【図10】(a)本発明に係るヒンジの実施の一形態における回動軸を示す左前上方から見た斜視図、(b)本発明に係るヒンジの実施の一形態における捩りバネを示す左前上方から見た斜視図。
【図11】本発明に係るヒンジの実施の一形態を示す左側面図(回動角度θ=45°)。
【図12】本発明に係るヒンジの実施の一形態を示す左側面断面図(回動角度θ=45°)。
【図13】本発明に係るヒンジの実施の一形態を示す左側面図(回動角度θ=90°)。
【図14】本発明に係るヒンジの実施の一形態を示す左側面断面図(回動角度θ=90°)。
【図15】(a)本発明に係るヒンジの別実施形態(第一支持部および第二支持部を一つずつ備えるもの)を示す模式図、(b)本発明に係るヒンジの別実施形態(第一支持部を二つ備えるとともに第二支持部を一つ備えるもの)を示す模式図、(c)本発明に係るヒンジの別実施形態(第一支持部および第二支持部を二つずつ備え、かつこれらが回動軸の軸線方向において交互に配置されるもの)を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、図1を用いて本発明に係るヒンジの実施の一形態であるヒンジ100を具備するスキャナー1について説明する。スキャナー1は事務機器の実施の一形態であり、スキャナー本体2、原稿圧着板3およびヒンジ100を具備する。
【0020】
スキャナー本体2は本発明に係る第一連結対象物の実施の一形態である。「第一連結対象物」は本発明に係るヒンジにより回動可能に連結される二つの物品のうち、一方を指す。
スキャナー本体2は原稿読み取り装置、制御装置、表示装置および入力装置を具備する。スキャナー本体2の原稿読み取り装置はスキャナー本体2の上面に配置される。スキャナー本体2の原稿読み取り装置はスキャナー本体2の上面に載置された原稿を読み取る(原稿の画像情報を生成する)。スキャナー本体2の制御装置はスキャナー1の各部の動作、より詳細にはスキャナー本体2の原稿読み取り装置の動作を制御する。スキャナー本体2の制御装置はスキャナー本体2の原稿読み取り装置が生成した画像情報を記憶すること、および当該画像情報をスキャナー本体2に接続された回線(例えば、インターネット回線等)を通じて他の機器(パーソナルコンピュータ等)に送信することが可能である。スキャナー本体2の表示装置は例えば液晶パネルからなり、スキャナー1の動作状況等に係る情報を表示する。スキャナー本体2の入力装置は例えばボタン、スイッチ等からなり、作業者がスキャナー1に対する指示等を入力する際に操作する。スキャナー本体2の表示装置および入力装置はスキャナー本体2の前上部に配置される。
【0021】
原稿圧着板3は本発明に係る第二連結対象物の実施の一形態である。「第二連結対象物」は本発明に係るヒンジにより回動可能に連結される二つの物品のうち、他方を指す。
原稿圧着板3は板状の部材であり、スキャナー本体2の原稿読み取り装置の上に載置された原稿をスキャナー本体2の原稿読み取り装置に向かって押さえつける(圧着する)ことにより、原稿がスキャナー本体2の原稿読み取り装置に対して動くことを防止する。
【0022】
「事務機器」は、少なくとも原稿を読み取る(原稿の画像情報を取得する)機能を具備する装置を指す。
「原稿」は、シート状物(紙、樹脂製のシート等)のシート面(広い面)に文章、書画、写真等が記されたものを指す。
事務機器の具体例としては以下の(a)〜(d)等が挙げられる。
(a)原稿を読み取る機能および読み取った原稿に係る画像情報を他の機器(例えば、パーソナルコンピュータ)に送信する機能を具備するスキャナー。
(b)原稿を読み取る機能、読み取った原稿に係る画像情報を通信回線を介して他の機器に送信する機能および他の機器から取得した画像情報をプリントアウトする機能を具備するファクス。
(c)原稿を読み取る機能および読み取った原稿に係る画像情報をプリントアウトする機能を具備するコピー機(プリンタ)。
(d)上記スキャナー、ファクス、およびコピー機としての機能を兼ねる複合機。
【0023】
以下では、図1から図14を用いて本発明に係るヒンジの実施の一形態であるヒンジ100について説明する。
ヒンジ100はスキャナー本体2および原稿圧着板3を回動可能に連結する。
図2から図7に示す如く、第一固定部材10、第二固定部材20、回動ピン30および捩りバネ40(図7参照)を具備する。
【0024】
以下では「スキャナー本体2に対する原稿圧着板3の回動角度」および「第一固定部材10に対する第二固定部材20の回動角度」を同期させ、これらの回動角度をいずれも「回動角度θ」と定義し、これを用いて説明する。
本実施形態では原稿圧着板3がスキャナー本体2に対して閉じているときに回動角度θが0°であり、原稿圧着板3がスキャナー本体2に対して開く方向に回動したとき(図1において時計回りに回動したとき)に回動角度θが増加する(正の値となる)。
また、本実施形態における回動角度θの最小値(θmin)は0°であり、回動角度θの最大値(θmax)は90°である(0°=θmin≦θ≦θmax=90°)。
以下では便宜上、回動角度θ=0°のときの姿勢に基づいてヒンジ100を構成する各部材を説明する。
【0025】
以下では図1、図5、図6および図8を用いて本発明に係る第一固定部材の実施の一形態である第一固定部材10の詳細について説明する。図8に示す如く、第一固定部材10は第一左側支持部11、第一右側支持部12および第一本体部13を備える。
【0026】
第一左側支持部11および第一右側支持部12を合わせたものは本発明に係る第一支持部の実施の一形態である。本実施形態の第一左側支持部11および第一右側支持部12はそれぞれ第一固定部材10の左上部および右上部を成す部分であり、その形状はいずれも左右一対の板面を有する板状である。第一左側支持部11および第一右側支持部12にはそれぞれ左右一対の板面を貫通する支持孔11a・12aが形成される。支持孔11a・12aは後述する回動ピン30を支持するための孔である。
【0027】
図5に示す如く、左側面視で支持孔11aを中心としたとき、第一左側支持部11の前上部は第一左側支持部11の前部、上部、後上部および後部よりも支持孔11aの貫通方向に垂直な方向(後述する回動ピン30の軸線方向に垂直な方向)に突出している。
より詳細には、左側面視で支持孔11aから第一左側支持部11の前上部までの距離は、支持孔11aから第一左側支持部11の前部、上部、後上部および後部までの距離のいずれよりも長い。
同様に、図6に示す如く、右側面視で支持孔12aを中心としたとき、第一右側支持部12の前上部は第一右側支持部12の前部、上部、後上部および後部よりも支持孔12aの貫通方向に垂直な方向に突出している。
第一左側支持部11の前上部および第一右側支持部12の前上部はそれぞれ第一左側突起11bおよび第一右側突起12bを成す。
【0028】
図8に示す第一本体部13は本発明に係る第一本体部の実施の一形態であり、第一固定部材10の主たる構造体を成す部分である。
本実施形態の場合、樹脂材料を射出することにより第一固定部材10が製造され、第一左側支持部11、第一右側支持部12および第一本体部13は一体的に成形される。
従って、第一本体部13は第一左側支持部11および第一右側支持部12に相対移動不能に固定される。
【0029】
本実施形態の第一本体部13は前側連結部14、後側連結部15、底部16および延長部17を備える。
前側連結部14は前後一対の板面を有する板状の部分である。前側連結部14の左端部は第一左側支持部11の前下端部に連なり、前側連結部14の右端部は第一右側支持部12の前下端部に連なる。
後側連結部15は前後一対の板面を有する板状の部分である。後側連結部15の左端部は第一左側支持部11の後下端部に連なり、前側連結部14の右端部は第一右側支持部12の後下端部に連なる。
底部16は上下一対の板面を有する板状の部分である。底部16の前端部は前側連結部14の下端部に連なり、底部16の後端部は後側連結部15の下端部に連なり、底部16の左端部は第一左側支持部11の下端部に連なり、底部16の右端部は第一右側支持部12の下端部に連なる。
延長部17は上下方向に延びた概ね直方体形状の部分である。延長部17の基端部(上端部)は底部16の下側の板面(下面)の中央部に連なる。
延長部17の内部には肉抜き穴17a・17bが形成される。肉抜き穴17a・17bは上下方向に延びた穴であり、これらの下端部は閉塞され、これらの上端部は延長部17を超えてそれぞれ底部16の上側の板面(上面)の左半部および右半部に開口する。
【0030】
図1に示す如く、延長部17をスキャナー本体2の上面後部に形成された穴(不図示)に差し込むことにより、第一固定部材10がスキャナー本体2に固定される。
【0031】
以下では図1、図7および図9を用いて本発明に係る第二固定部材の実施の一形態である第二固定部材20の詳細について説明する。図9に示す如く、第二固定部材20は第二左側支持部21、第二右側支持部22および第二本体部23を備える。
【0032】
第二左側支持部21および第二右側支持部22を合わせたものは本発明に係る第二支持部の実施の一形態である。本実施形態の第二左側支持部21および第二右側支持部22は第二固定部材20の後下部を成す部分であり、左右方向に間隔を空けて配置される。
第二左側支持部21および第二右側支持部22の形状はいずれも左右一対の板面を有する板状である。第二左側支持部21および第二右側支持部22にはそれぞれ左右一対の板面を貫通する支持孔21a・22aが形成される。支持孔21a・22aは後述する回動ピン30を支持するための孔である。
【0033】
図7に示す如く、左側面視で支持孔22aを中心としたとき、第二右側支持部22の後上部は第二右側支持部22の後部、後下部、下部および前下部よりも支持孔22aの貫通方向に垂直な方向(後述する回動ピン30の軸線方向に垂直な方向)に突出している。
より詳細には、右側面視で支持孔22aから第二右側支持部22の後上部までの距離は、支持孔22aから第二右側支持部22の後部、後下部、下部および前下部までの距離のいずれよりも長い。
同様に、左側面視で支持孔21aを中心としたとき、第二左側支持部21の後上部は第二左側支持部21の後部、後下部、下部および前下部よりも支持孔21aの貫通方向に垂直な方向に突出している。
第二左側支持部21の後上部および第二右側支持部22の後上部はそれぞれ第二左側突起21bおよび第二右側突起22bを成す。
【0034】
図9に示す第二本体部23は本発明に係る第二本体部の実施の一形態であり、第二固定部材20の主たる構造体を成す部分である。
本実施形態の場合、樹脂材料を射出することにより第二固定部材20が製造され、第二左側支持部21、第二右側支持部22および第二本体部23は一体的に成形される。
従って、第二本体部23は第二左側支持部21および第二右側支持部22に相対移動不能に固定される。
本実施形態の第二本体部23は概ね左右方向に長い直方体であり、その後下部は曲面23dで切り欠かれている。第二左側支持部21の前上部は第二本体部23の曲面23dの左半部に連なり、第二右側支持部22の前上部は第二本体部23の曲面23dの右半部に連なる。
第二本体部23の左前下部には切り欠き部23aが形成される。第二本体部23には第二本体部23の上面から切り欠き部23aまで上下に貫通する貫通孔23bが形成される。
第二本体部23の曲面23dのうち第二左側支持部21および第二右側支持部22によって挟まれる部分には係止溝23cが形成される。
【0035】
図1に示す如く、第二本体部23の貫通孔23bにネジ(不図示)を差し込み、当該ネジを原稿圧着板3の後部に形成されたネジ穴(不図示)にねじ込むことにより、第二固定部材20が原稿圧着板3に固定される。
【0036】
以下では、図10の(a)、図3の(b)、図8および図9を用いて本発明に係る回動軸の実施の一形態である回動ピン30の詳細について説明する。回動ピン30は第一固定部材10および第二固定部材20を回動可能に連結する。図10の(a)に示す如く、回動ピン30は胴体部31および頭部32を有する。本実施形態の回動ピン30は金属材料からなる。
【0037】
胴体部31は回動ピン30の胴体を成す略円柱形状の部分である。胴体部31の一端部(左端部)にはカシメ穴31aが形成される。カシメ穴31aが形成されることにより、胴体部31の一端部(左端部)には薄肉部(略円筒形状の部分)が形成される。
頭部32は胴体部31の他端部(左端部)に連なる略円盤形状の部分である。頭部32の外径(直径)は胴体部31の外径(直径)よりも大きい。
【0038】
回動ピン30の胴体部31は第一右側支持部12の支持孔12a、第二右側支持部22の支持孔22a、第二左側支持部21の支持孔21a、第一左側支持部11の支持孔11aを貫通し、胴体部31の一端部(左端部)は第一左側支持部11の左側方に突出し、頭部32は第一右側支持部12の右面に当接する(図3の(b)、図8および図9参照)。
本実施形態では支持孔11a・12aの内径(直径)は胴体部31の外径(直径)よりも僅かに小さく、かつ支持孔21a・22aの内径(直径)は胴体部31の外径(直径)よりも僅かに大きい。従って、回動ピン30は第二固定部材20に対しては回動可能に軸支され、第一固定部材10に対しては回動ピン30の軸線方向(本実施形態では、左右方向)に移動不能かつ回転不能に固定される。
その結果、回動ピン30は第一固定部材10および第二固定部材20を回動可能に連結し、第一固定部材10および第二固定部材20に対して脱落不能に支持される。
【0039】
回動ピン30が支持孔12a、支持孔22a、支持孔21aおよび支持孔11aを貫通した状態で胴体部31の一端部(右端部)に形成された薄肉部を回動ピン30の半径方向(回動ピン30の軸線方向に垂直な方向)に押し広げるようにカシメる(塑性変形させる)ことにより、回動ピン30の一端部、すなわちカシメられた部分の外径(直径)は支持孔11aの内径(直径)よりも大きくなる。また、頭部32の外径(直径)は支持孔12aよりも大きい。胴体部31の一端部(右端部)をカシメることにより、回動ピン30は第一固定部材10および第二固定部材20に対して脱落不能に支持される。
【0040】
以下では、図7および図10の(b)を用いて本発明に係る捩りバネの実施の一形態である捩りバネ40の詳細について説明する。本実施形態の捩りバネ40は金属材料(例えば、バネ鋼)からなる線材の中途部をコイル状に成形したものである。
図3の(b)および図7に示す如く、捩りバネ40の一端部が肉抜き穴17aに挿入されることにより捩りバネ40の一端部は第一固定部材10に係止される。
また、捩りバネ40の中途部(コイル状に成形された部分)は回動ピン30の胴体部31に貫通され、第一固定部材10の第一左側支持部11、第一右側支持部12、前側連結部14、後側連結部15および底部16により囲まれ、かつ第二左側支持部21および第二右側支持部22によって挟まれる位置に配置される。
また、図7に示す如く、捩りバネ40の他端部が係止溝23cに挿入されることにより捩りバネ40の他端部は第二固定部材20に係止される。
【0041】
図7に示す如く、回動角度θ=0°のとき、第二固定部材20に係止された捩りバネ40の他端部は回動ピン30を中心として反時計回りに傾倒し、捩りバネ40は弾性変形し、第一固定部材10および第二固定部材20には捩りバネ40の弾性力(捩りバネ40が元の形状(弾性変形する前の形状)に戻ろうとする力)が作用する。
その結果、回動ピン30は、回動角度θが大きくなる方向(図7において第二固定部材20が第一固定部材10に対して時計回りに回動する方向)に第一固定部材10および第二固定部材20を付勢する。
【0042】
以下では図1、図5、図6、図7、および、図11から図14を用いて、原稿圧着板3がスキャナー本体2に対して回動するときのヒンジ100の挙動について説明する。
【0043】
図7に示す如く、回動角度θ=0°のとき、すなわち原稿圧着板3がスキャナー本体2に対して閉じているとき、捩りバネ40の弾性力は最大となり、捩りバネ40の弾性力に起因するトルク(第一固定部材10に対して第二固定部材20を回動角度θが大きくなる方向に回転させようとする力)が最大となる。
一方、回動角度θ=0°のとき、第二固定部材20に固定された原稿圧着板3の自重に起因するトルク(第一固定部材10に対して第二固定部材20を回動角度θが小さくなる方向に回転させようとする力)も最大となる。
本実施形態では0°≦θ<90°のときには原稿圧着板3の自重に起因するトルクが捩りバネ40の弾性力に起因するトルクよりも大きくなり、θ=90°のときには原稿圧着板3の自重に起因するトルクおよび捩りバネ40の弾性力に起因するトルクが等しくなる(いずれもゼロになる)ように、捩りバネ40の形状、弾性定数等の特性が設定される。
【0044】
図5、図6および図7に示す如く、回動角度θ=0°のとき、第一左側支持部11の第一左側突起11bおよび第一右側支持部12の第一右側突起12bはいずれも第二本体部23(厳密には、曲面23d)に当接せず、かつ、第二左側支持部21の第二左側突起21bおよび第二右側支持部22の第二右側突起22bは第一本体部13(厳密には、後側連結部15の前側の板面(前面))に当接しない。
従って、回動角度θ=0°のとき、第一左側支持部11および第一右側支持部12と第二本体部23との間、ならびに、第二左側支持部21および第二右側支持部22と第一本体部13との間、には摩擦力が発生しない。
【0045】
以上より、回動角度θ=0°のとき、作業者が原稿圧着板3に外力を与えない限り、原稿圧着板3がスキャナー本体2に対して閉じた状態が保持される(回動角度θが0°に保持される)。
【0046】
図12に示す如く、回動角度θ=45°のとき、すなわち原稿圧着板3がスキャナー本体2に対して半分くらい開いているとき、捩りバネ40の弾性力および捩りバネ40の弾性力に起因するトルクはθ=0°のときよりは小さくなる。
一方、回動角度θ=45°のとき、第二固定部材20に固定された原稿圧着板3の自重に起因するトルクもθ=0°のときよりは小さくなる。
回動角度θ=45°のとき、第二固定部材20に固定された原稿圧着板3の自重に起因するトルクは捩りバネ40の弾性力に起因するトルクよりも大きい。
【0047】
図11に示す如く、回動角度θ=45°のとき、第一左側支持部11の第一左側突起11bおよび第一右側支持部12の第一右側突起12bは第二本体部23(厳密には、曲面23d)に当接する。ここで、第一左側支持部11の第一左側突起11bと第二本体部23の曲面23dとが当接する部分を第一当接部51とし、第一右側支持部12の第一右側突起12bと第二本体部23の曲面23dとが当接する部分を第一当接部52とする。
第一左側突起11b、第一右側突起12bおよび第二本体部23において第一当接部51・52の近傍となる部分は弾性変形する。
その結果、第一当接部51・52には、これらの弾性変形した部分の弾性力(弾性変形した部分が元の形状に戻ろうとする力)に起因して、それぞれ回動ピン30の半径方向(厳密には、回動ピン30の軸線方向(左右方向)から見て第一当接部51・52から回動ピン30の中心に向かう方向)の応力が作用する。これらの応力の合力をF1とする。
そして、応力の合力F1に起因して、第一当接部51・52には回動ピン30の接線方向(回動ピン30の軸線方向に垂直、かつ回動ピン30の半径方向に垂直な方向)の摩擦力が発生する。
【0048】
図12に示す如く、回動角度θ=45°のとき、第二左側支持部21の第二左側突起21bおよび第二右側支持部22の第二右側突起22bは第一本体部13(厳密には、後側連結部15の前側の板面(前面))に当接する。ここで、第二左側支持部21の第二左側突起21bと後側連結部15の前側の板面とが当接する部分を第二当接部61とし、第二右側支持部22の第二右側突起22bと後側連結部15の前側の板面とが当接する部分を第二当接部62とする。
第二左側突起21b、第二右側突起22bおよび第一本体部13(後側連結部15)において第二当接部61・62の近傍となる部分は弾性変形する。
その結果、第二当接部61・62には、これらの弾性変形した部分の弾性力(弾性変形した部分が元の形状に戻ろうとする力)に起因して、それぞれ回動ピン30の半径方向(厳密には、回動ピン30の軸線方向(左右方向)から見て第二当接部61・62から回動ピン30の中心に向かう方向)の応力が作用する。これらの応力の合力をF2とする(図11参照)。
そして、応力の合力F2に起因して、第二当接部61・62には回動ピン30の接線方向(回動ピン30の軸線方向に垂直、かつ回動ピン30の半径方向に垂直な方向)の摩擦力が発生する。
【0049】
本実施形態では、「第二固定部材20に固定された原稿圧着板3の自重に起因するトルクと捩りバネ40の弾性力に起因するトルクとの差分」と「第一当接部51・52に作用する摩擦力および第二当接部61・62に作用する摩擦力に起因するトルク」とが平衡する。
以上より、回動角度θ=45°のとき、作業者が原稿圧着板3に外力を与えない限り、原稿圧着板3がスキャナー本体2に対して半分くらい開いた状態が保持される(回動角度θが45°に保持される)。
なお、本実施形態では、5°≦θ≦85°のときには「第二固定部材20に固定された原稿圧着板3の自重に起因するトルクと捩りバネ40の弾性力に起因するトルクとの差分」と「第一当接部51・52に作用する摩擦力および第二当接部61・62に作用する摩擦力に起因するトルク」とが平衡し、作業者が原稿圧着板3に外力を与えない限り、原稿圧着板3がスキャナー本体2に対して開いた状態が保持される(回動角度θが一定に保持される)ように第一固定部材10および第二固定部材20の形状が設定される。
【0050】
図14に示す如く、回動角度θ=90°のとき、すなわち原稿圧着板3がスキャナー本体2に対して完全に開いているとき、捩りバネ40は弾性変形していないため捩りバネ40の弾性力はゼロとなり、捩りバネ40の弾性力に起因するトルク(第一固定部材10に対して第二固定部材20を回動角度θが大きくなる方向に回転させようとする力)は最小(ゼロ)となる。
一方、回動角度θ=90°のとき、第二固定部材20に固定された原稿圧着板3の自重に起因するトルク(第一固定部材10に対して第二固定部材20を回動角度θが小さくなる方向に回転させようとする力)も最小(ゼロ)となる。
【0051】
図13および図14に示す如く、回動角度θ=90°のとき、第一左側支持部11の第一左側突起11bおよび第一右側支持部12の第一右側突起12bはいずれも第二本体部23(厳密には、曲面23d)に当接せず、かつ、第二左側支持部21の第二左側突起21bおよび第二右側支持部22の第二右側突起22bは第一本体部13(厳密には、後側連結部15の前側の板面(前面))に当接しない。
従って、回動角度θ=90°のとき、第一左側支持部11および第一右側支持部12と第二本体部23との間、ならびに、第二左側支持部21および第二右側支持部22と第一本体部13との間、には摩擦力が発生しない。
【0052】
以上より、回動角度θ=90°のとき、作業者が原稿圧着板3に外力を与えない限り、原稿圧着板3がスキャナー本体2に対して完全に開いた状態が保持される。
【0053】
以上の如くヒンジ100を構成することは、従来のヒンジ(スライダおよび巻きバネを具備するヒンジ)に対して以下の利点を有する。
すなわち、ヒンジ100は従来のヒンジにおけるスライダおよび巻きバネを省略し、代わりに捩りバネ40を具備するので、全体として部品点数を削減することが可能であり、ひいては製造コストの削減に寄与する。
また、ヒンジ100は従来のヒンジにおけるスライダおよび巻きバネを収容するスペースを必要としないので、小型化に寄与する。
また、ヒンジ100の場合、第一当接部51・52および第二当接部61・62の両方に回動ピン30の接線方向の摩擦力が発生するので、ヒンジ100のサイズ(特に回動ピン30の軸線方向におけるサイズ)が同じであっても「第一当接部51・52および第二当接部61・62のうちいずれか一方にのみ摩擦力が発生する場合」に比べて摩擦力に起因するトルク(抵抗力)を大きくし、フリーストップ機能を発揮するために十分な大きさの摩擦力に起因するトルク(抵抗力)発生させることが可能である。
【0054】
スキャナー1は、スキャナー本体2の上面に原稿を載せる、あるいはスキャナー本体2の上面から原稿を取り出すといった作業を行うときを除き、通常は原稿圧着板3がスキャナー本体2に対して閉じている状態(回動角度θ=0°)または原稿圧着板3がスキャナー本体2に対して完全に開いている状態(回動角度θ=90°)で放置される。
ヒンジ100の場合、スキャナー1が放置されているときには第一左側支持部11の第一左側突起11bおよび第一右側支持部12の第一右側突起12bはいずれも第二本体部23に当接せず、第二左側支持部21の第二左側突起21bおよび第二右側支持部22の第二右側突起22bは第一本体部13に当接しない。
従って、スキャナー1が放置されているときには、第一左側支持部11、第一右側支持部12、第二本体部23、第二左側支持部21、第二右側支持部22および第一本体部13は弾性変形していないので、これらの部分におけるクリープ変形の発生を抑制し、ヒンジ100の長寿命化(破損の防止、性能の維持等)に寄与する。
【0055】
また、ヒンジ100は、回動角度θ=90°のとき(回動角度θが最大値になったとき)、第一左側支持部11、第一右側支持部12、第二本体部23、第二左側支持部21、第二右側支持部22および第一本体部13に加えて捩りバネ40も弾性変形していない(図10の(b)における二点鎖線および図14参照)。
従って、第一固定部材10、第二固定部材20、回動ピン30および捩りバネ40の姿勢をそれぞれ回動角度θ=90°のときに対応する姿勢に保持しつつヒンジ100を組み立てた場合にはこれらの部品間に弾性力が作用しないので、組み立てが容易である。
【0056】
以下では、図11および図12を用いて回動ピン30の軸線方向から見た回動ピン30、第一当接部51・52および第二当接部61・62の位置関係について説明する。
図11および図12に示す如く、本実施形態では回動ピン30の軸線方向(左右方向)から見たときの「回動ピン30および第一当接部51・52を結ぶ線71」と「回動ピン30および第二当接部61・62を結ぶ線72」との成す角度である当接部間角度φは129.3°である。
また、第一当接部51・52に作用する回動ピン30の半径方向の応力(の合力)F1と第二当接部61・62に作用する回動ピン30の半径方向の応力(の合力)F2との成す角度は当接部間角度φに等しい。
ここで、本実施形態では、第一当接部51・52および第二当接部61・62の弾性変形に関与する部分の面積および弾性変形量が適宜調整され、第一当接部51・52に作用する回動ピン30の半径方向の応力(の合力)F1および第二当接部61・62に作用する回動ピン30の半径方向の応力(の合力)F2が同じ大きさに設定される。
【0057】
本実施形態の如くF1=F2かつ当接部間角度φが120°よりも大きい場合(本実施形態ではφ=129.3°)、F1およびF2の合力F3と釣り合う力、すなわち回動ピン30と第一固定部材10との当接部分(第一固定部材10において支持孔11a・12aの周囲となる部分)および回動ピン30と第二固定部材20との当接部分(第二固定部材20において支持孔21a・22aの周囲となる部分)に作用する力F4はF1およびF2よりも小さくなり(F1=F2>F4(=F3))、回動ピン30と第一固定部材10との当接部分および回動ピン30と第二固定部材20との当接部分におけるクリープ変形の発生を抑制し、ヒンジ100の長寿命化(破損の防止、性能の維持等)に寄与する。
特に、当接部間角度φが180°である場合には、F1およびF2が互いに相殺されてF3=F4=0となるので、回動ピン30と第一固定部材10との当接部分および回動ピン30と第二固定部材20との当接部分への負担が更に軽減され、ヒンジ100の長寿命化(破損の防止、性能の維持等)に寄与する。
【0058】
本実施形態では第一左側支持部11、第一右側支持部12および第一本体部13を樹脂材料で一体成形することにより第一固定部材10を製造し、第二左側支持部21、第二右側支持部22および第二本体部23を樹脂材料で一体成形することにより第二固定部材20を製造するが、本発明に係る第一固定部材および第二固定部材はこれに限定されない。
すなわち、第一本体部、第一支持部、第二本体部および第二支持部をそれぞれ別部材とし、これらをネジ止め、溶着、接着、溶接等の方法で相互に固定することにより第一本体部を第一支持部に相対移動不能に固定し、第二本体部を第二支持部に相対移動不能に固定しても良い。
【0059】
本発明に係る第一支持部および第二支持部は、本実施形態の如く「第一左側支持部11および第一右側支持部12を合わせたもの」並びに「第二左側支持部21および第二右側支持部22を合わせたもの」に限定されない。
例えば、図15の(a)に示すヒンジ200、図15の(b)に示すヒンジ300および図15の(c)に示すヒンジ400は本発明に係るヒンジの別実施形態である。
【0060】
図15の(a)に示す如く、ヒンジ200は第一固定部材10、第二固定部材20、回動ピン30および捩りバネ40を具備する。ヒンジ200の第一固定部材10は一つの第一支持部11および一つの第一本体部13を備える。ヒンジ200の第二固定部材20は一つの第二支持部21および一つの第二本体部23を備える。ヒンジ200の第一支持部11と第二本体部23とが当接する部分は第一当接部51を成し、ヒンジ200の第二支持部21と第一本体部13とが当接する部分は第二当接部61を成す。
このように、本発明に係るヒンジは、第一固定部材が一つの第一支持部を備え、かつ第二固定部材が一つの第二支持部を備えていても良い。
【0061】
図15の(b)に示す如く、ヒンジ300は第一固定部材10、第二固定部材20、回動ピン30および捩りバネ40を具備する。ヒンジ300の第一固定部材10は二つの第一支持部11・12および一つの第一本体部13を備える。ヒンジ300の第二固定部材20は一つの第二支持部21および一つの第二本体部23を備える。ヒンジ300の第一支持部11と第二本体部23とが当接する部分および第一支持部12と第二本体部23とが当接する部分はそれぞれ第一当接部51・52を成し、ヒンジ300の第二支持部21と第一本体部13とが当接する部分は第二当接部61を成す。
このように、本発明に係るヒンジは、第一固定部材が二つの第一支持部を備えるとともに第二固定部材が一つの第二支持部を備えても良い。なお、ヒンジを構成する部材に作用する応力のバランスの観点からは、一つの第二支持部は回動軸の軸線方向において二つの第一支持部に挟まれる位置に配置されることがより好ましい。また、本発明に係るヒンジは、第一固定部材が一つの第一支持部を備えるとともに第二固定部材が二つの第二支持部を備えても良い。
【0062】
図15の(c)に示す如く、ヒンジ400は第一固定部材10、第二固定部材20、回動ピン30および捩りバネ40を具備する。ヒンジ400の第一固定部材10は二つの第一支持部11・12および一つの第一本体部13を備える。ヒンジ400の第二固定部材20は二つの第二支持部21・22および一つの第二本体部23を備える。ヒンジ400の第一支持部11と第二本体部23とが当接する部分および第一支持部12と第二本体部23とが当接する部分はそれぞれ第一当接部51・52を成し、ヒンジ400の第二支持部21・22と第一本体部13とが当接する部分は第二当接部61・62を成す。
このように、本発明に係るヒンジは、第一固定部材が二つの第一支持部を備えるとともに第二固定部材が二つの第二支持部を備え、かつ回動軸の軸線方向において第一支持部および第二支持部が交互に配置されても良い。
【符号の説明】
【0063】
2 スキャナー本体(第一連結対象物)、3 原稿圧着板(第二連結対象物)、10 第一固定部材、11 第一左側支持部(第一支持部)、12 第一右側支持部(第一支持部)、11a・12a 支持孔、13 第一本体部、20 第二固定部材、21 第二左側支持部(第二支持部)、22 第二右側支持部(第二支持部)、21a・22a 支持孔、23 第二本体部、30 回動ピン(回動軸)、40 捩りバネ、100 ヒンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一連結対象物および第二連結対象物を回動可能に連結するヒンジであって、
前記第一連結対象物に固定される第一固定部材と、
前記第二連結対象物に固定される第二固定部材と、
前記第一固定部材および前記第二固定部材を回動可能に連結する回動軸と、
一端部が前記第一固定部材に係止され、中途部が前記回動軸に貫通され、他端部が前記第二固定部材に係止され、前記第一固定部材に対する前記第二固定部材の回動角度が大きくなる方向に前記第一固定部材および前記第二固定部材を付勢する捩りバネと、
を具備し、
前記第一固定部材は、
前記回動軸を支持する支持孔が形成される第一支持部と、
前記第一支持部に相対移動不能に固定される第一本体部と、
を備え、
前記第二固定部材は、
前記回動軸を支持する支持孔が形成される第二支持部と、
前記第二支持部に相対移動不能に固定される第二本体部と、
を備え、
前記第一支持部が前記第二本体部に当接し、前記第一支持部と前記第二本体部とが当接する部分である第一当接部に前記回動軸の半径方向の応力が作用することにより、前記第一当接部に前記回動軸の接線方向の摩擦力が発生し、
前記第二支持部が前記第一本体部に当接し、前記第二支持部と前記第一本体部とが当接する部分である第二当接部に前記回動軸の半径方向の応力が作用することにより、前記第二当接部に前記回動軸の接線方向の摩擦力が発生する、
ヒンジ。
【請求項2】
前記第一固定部材に対する前記第二固定部材の回動角度が最小値になったとき、前記第一支持部は前記第二本体部に当接せず、かつ、前記第二支持部は前記第一本体部に当接しない、
請求項1に記載のヒンジ。
【請求項3】
前記第一固定部材に対する前記第二固定部材の回動角度が最大値になったとき、前記第一支持部は前記第二本体部に当接せず、かつ、前記第二支持部は前記第一本体部に当接しない、
請求項1または請求項2に記載のヒンジ。
【請求項4】
前記第一固定部材に対する前記第二固定部材の回動角度が最大値になったとき、前記捩りバネは弾性変形していない、
請求項3に記載のヒンジ。
【請求項5】
前記回転軸の軸線方向から見たときの前記回動軸および前記第一当接部を結ぶ線と前記回動軸および前記第二当接部を結ぶ線との成す角度である当接部間角度は120°よりも大きい、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のヒンジ。
【請求項6】
前記当接部間角度は180°である、
請求項5に記載のヒンジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−29118(P2013−29118A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163725(P2011−163725)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(592264101)下西技研工業株式会社 (108)
【Fターム(参考)】