説明

ヒータ制御装置、定着装置および画像形成装置

【課題】ヒータに供給される交流電流のゼロクロス信号のパルス幅が変化した場合にも、スルーアップ制御およびスルーダウン制御を安定的に実行することかできる。
【解決手段】交流電力を整流回路によって整流して得られた電力が、スイッチング素子がオン状態になることによりヒータランプに供給され、オフ状態になることによりヒータランプへの供給が停止される。スルーアップ制御時に、断続的にヒータランプに電力を供給するタイミングが、交流電力のゼロクロス信号のアクティブ期間の終了から計測される停止時間が経過した時点になるように、また、その後の電力供給の停止タイミングが、次のアクティブ期間の終了に同期するように、スイッチング素子が制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録シートに転写されたトナー画像を、記録シート上に定着する定着装置等に使用されるヒータ制御装置、および、そのヒータ制御装置を使用した定着装置並びに画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置、複写機等の電子写真方式の画像形成装置では、通常、画像データに対応した静電潜像を感光体上に形成し、形成された静電潜像をトナーによって現像した後に、記録紙、OHPシート等の記録シートに転写して、定着装置によって記録シートに熱定着する。
定着装置では、例えば、熱源としてヒータランプが使用された加熱ローラに、加圧ローラ、加圧ベルト、加圧部材等を圧接させることによって定着ニップを形成しており、記録シートが定着ニップを通過する間にトナーが加熱されて記録シート上に定着される。ヒータランプには、通常、商用の交流電源から出力される交流電力が、トライアック等のスイッチング素子を介して供給される。
【0003】
このような画像形成装置は、交流電源と同一電源系統に、蛍光灯等の他の負荷が接続されて使用される場合があり、この場合には、ヒータランプの点灯時に、ヒータランプに対する突入電力によって、蛍光灯等の他の負荷に対して供給される電力量が低下し、蛍光灯のちらつき、スイッチング素子の破損等が生じるおそれがある。また、ヒータランプの消灯時においても、他の負荷に供給される電力量が変動して、他の負荷に悪影響を与えるおそれがある。
【0004】
このために、ヒータランプを点灯する給電開始時には、ヒータランプに対する電力量を徐々に増加させるスルーアップ制御を実行し、また、ヒータランプを消灯する給電終了時には、ヒータランプに対する電力量を徐々に減少させるスルーダウン制御を実行することが提案されている。
図14は、従来のヒータランプに対するスルーアップ制御およびスルーダウン制御を説明するためのタイムチャートである。ヒータランプの制御系には、ヒータランプに供給される交流電圧がグランドレベル(ゼロレベル)になるタイミングを検出してゼロクロス信号を生成するゼロクロス信号生成部が設けられている。ゼロクロス信号は、例えば、ローレベルでオン状態(アクティブ状態)になる。なお、ゼロクロス信号がアクティブ状態になっている期間をアクティブ期間とする。
【0005】
ヒータランプには、整流された交流電力が、スイッチング素子としてのトライアックを介して供給される。トライアックは、制御部から出力されるヒータ点灯信号によってオン状態(導通状態)になり、電流が通過しなくなるタイミング(電圧がグランドレベル(ゼロレベル)になるタイミング)でオフ状態になる。
スルーアップ制御においては、ゼロクロス信号がn回(nは任意の自然数)にわたってアクティブ状態に変化する度(ローレベルに立ち下がる度)に、所定のアップ待機時間Tu1〜Tunがそれぞれ経過した後に、アクティブ状態になるヒータ点灯信号を出力する。これにより、電力供給が開始される。第1〜第nのアップ待機時間Tu1〜Tunのそれぞれは、徐々に短くなるように、予め設定されている。
【0006】
ヒータランプに対するそれぞれの電力供給は、トライアックがオフ状態になるまで継続する。従って、ゼロクロス信号がアクティブ状態になるn回のそれぞれの周期毎に、ヒータランプに対する電力の供給停止と電力開始とが実行される。スルーアップ制御が終了すると、ヒータランプには、交流電源からの電力が連続して供給される。これにより、ヒータランプは全点灯状態になる。
【0007】
また、スルーダウン制御では、ゼロクロス信号がn回にわたってアクティブ状態に変化する度(ローレベルに立ち下がる度)に、所定のダウン待機時間Td1〜Tdnがそれぞれ経過するのを待って、ローレベルのヒータ点灯信号を出力する。第1〜第nのアップ待機時間Td1〜Tdnも、徐々に長くなるように、予め設定されている。この場合も、トライアックは、オン状態になった時点から、交流電力の位相がゼロレベル(電圧がグランドレベル)になるまで電力を供給する。
【0008】
従って、スルーダウン制御では、ゼロクロス信号がアクティブ状態になるn回のそれぞれの周期毎に、ヒータランプに対する電力の供給停止と電力開始とが実行され、供給される電力量が徐々に減少するように、ヒータランプに電力が供給されない待機時間が徐々に増加する。スルーダウン制御が終了すると、ヒータランプには、交流電源からの電力の供給が停止される。
【0009】
特許文献1には、スルーアップ制御において、ゼロクロス信号がアクティブ状態になってから所定時間tw経過後から所定の待機時間が計測され、その待機時間が経過した後に、電力供給を開始する構成が開示されている。従って、所定の時間tw以内に、ノイズが発生しても、そのノイズを無視することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−334663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
画像形成装置では、ヒータランプに交流電力を供給する交流電源と同一電源系統に、他の負荷が接続されていると、ヒータランプに供給される交流電流の振幅(電圧)、周波数等が、他の負荷の電圧変動によって変動するおそれがある。また、商用の交流電源の場合には、送電される交流電流自体に、電圧(振幅)変動、周波数変動等が生じるおそれもある。交流電流の振幅、周波数等が変動すると、ゼロクロス信号におけるアクティブ信号がローレベルになる期間(パルスの幅、アクティブ期間)も変化する。
【0012】
このために、特許文献1に開示されているように、ゼロクロス信号に基づいて待機時間等の計測を開始し、トライアックがオフするまでヒータランプに電力を供給する構成では、ゼロクロス信号におけるアクティブ期間が変化すると、ヒータランプに対する電力の供給開始タイミングも変化することになる。
例えば、図15の二点鎖線で示すように、交流電力における電圧の振幅が小さくなると、ゼロクロス信号におけるアクティブ期間の開始タイミングが早くなる。これにより、待機時間Tu1の計測の開始が早くなり、ヒータランプへの電力供給タイミングも早くなる。ヒータランプに対する電力の供給は、交流電力の電圧がゼロレベルになるタイミングで終了するために、交流電力における電圧変動が生じても、電力供給の終了タイミングはほぼ一定になる。従って、電力供給の開始タイミングが速くなると、ヒータランプに供給される電力量が増加することになる。
【0013】
同様に、交流電力における電圧の振幅が大きくなると、ゼロクロス信号におけるアクティブ期間の開始タイミングが遅くなり、ヒータランプに供給される電力量が減少することになる。
これにより、ヒータランプに対する通電量を徐々に増加または減少させるスルーアップ制御またはスルーダウン制御を安定的に実行することができず、電力量が急激に変動することによって、他の負荷に対して悪影響を及ぼすおそれがある。
【0014】
このような問題は、定着装置に設けられたヒータランプに限らず、一般的なヒータにおいても生じる。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ヒータに供給される交流電流のゼロクロス信号におけるアクティブ期間が変動した場合にも、スルーアップ制御およびスルーダウン制御を安定的に実行することかできるヒータ制御装置を提供することにある。本発明の他の目的は、そのようなヒータ制御装置を有する定着装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明に係るヒータ制御装置は、交流電力を整流する整流回路から出力される電力を、スイッチング素子を介してヒータに供給を開始する際に、前記交流電力がゼロクロスポイントになる直前および直後にわたってアクティブ信号を出力するゼロクロス信号生成手段から複数周期にわたってアクティブ信号が出力される間に、それぞれの周期毎にヒータへの電力の供給と停止とを実行しつつ、各周期におけるヒータへの電力供給の停止時間を徐々に短くするスルーアップ制御と、ヒータへの電力の供給を終了する際に、前記ゼロクロス信号生成手段から複数周期にわたってアクティブ信号が出力される間に、それぞれの周期毎に電力の供給と停止とを実行しつつ、各周期における停止時間を徐々に長くするスルーダウン制御とのいずれか一方または両方を実行するヒータ制御装置であって、前記スイッチング素子は、オン指示があると前記ヒータに対して電力の供給を開始して、オフ指示があるまで電力の供給を継続する構成であり、前記スルーアップ制御および前記スルーダウン制御のそれぞれにおいて、前記スイッチング素子のオン指示は、前記アクティブ信号の開始または終了に対して所定のタイミングで発せられ、オフ指示は、次のアクティブ信号の終了に同期して発せられることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る定着装置は、前記ヒータ制御装置によって制御されるヒータにより、記録シート上のトナー画像を加熱して定着させることを特徴とする。
また、本発明に係る画像形成装置は、前記定着装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のヒータ制御装置では、スルーアップ制御およびスルーダウン制御の少なくとも一方において、スイッチング素子がオフされるタイミングが、アクティブ信号の終了エッジに同期しており、従って、スイッチング素子がオフされるまでヒータに対して電力が供給される。このために、ゼロクロス信号におけるアクティブ期間が変動して、ヒータに対する電力供給の開始タイミングが変化した場合にも、アクティブ期間に応じて、ヒータに対する電力供給の終了タイミングも変化することになる。これにより、ヒータに供給される電力が変動することを抑制することができ、スルーアップ制御およびスルーダウン制御のそれぞれを安定的に実行することができる。
【0018】
好ましくは、各周期における前記停止時間は、予め設定されていることを特徴とする。
好ましくは、前記停止時間として、商用の交流電力の異なる周波数のそれぞれに対応して異なる時間が設定されており、前記スルーアップ制御が開始される前に、前記アクティブ信号をサンプリングして得られる周波数に対応する停止時間が選択されることを特徴とする。
【0019】
好ましくは、前記スイッチング素子が、IGBTまたはFETであることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の一例であるタンデム型カラーデジタル複写機の概略構成を示す模式図である。
【図2】その複写機に設けられた定着装置の構成を説明するための模式図である。
【図3】定着装置に設けられたヒータランプに対する電力を制御する制御系のブロック図である。
【図4】(a)および(b)は、それぞれ、電力制御部のROMに設けられたスルーアップテーブルおよびスルーダウンテーブルの一例である。
【図5】(a)は、電力制御部において実行されるスルーアップ制御の一例を示すタイムチャート、(b)は、スイッチング素子としてトライアックを使用して、スルーアップテーブルに記憶された基準アップ待機時間に基づいて実行される従来のスルーアップ制御の一例を示すタイムチャートである。
【図6】図5(a)にて示されるスルーアップ制御において、交流電力における電圧が変動した場合の電力量を説明するためのタイムチャートである。
【図7】図5(a)および(b)にてそれぞれ示すスルーアップ制御において、ヒータランプに供給される電力量の説明図である。
【図8】(a)は、電力制御部において実行されるスルーダウン制御を示すタイムチャート、(b)は、スイッチング素子としてトライアックを使用して、スルーダウンテーブルに記憶された基準アップ待機時間に基づいて実行される従来のスルーダウン制御を示すタイムチャートである。
【図9】図8(a)および(b)にてそれぞれ示すスルーダウン制御において、ヒータランプに供給される電力量の説明図である。
【図10】ヒータランプの電力制御と並行して実行されるゼロクロス信号のアクティブ期間等を取得するためのゼロクロス信号サンプリング制御における処理手順の一部を示すフローチャートである。
【図11】そのゼロクロス信号サンプリング制御おける処理手順の一部を示すフローチャートである。
【図12】ヒータランプの電力制御の処理手順を示すフローチャートである。
【図13】ヒータランプの電力制御におけるスルーダウン制御における処理手順を示すフローチャートである。
【図14】従来のヒータランプに対するスルーアップ制御およびスルーダウン制御を説明するためのタイムチャートである。
【図15】従来のヒータランプに対するスルーアップ制御において交流電力において電圧変動が生じた場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る画像形成装置の実施形態について説明する。
<画像形成装置の構成>
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の一例であるタンデム型カラーデジタル複写機の概略構成を示す模式図である。この複合機は、トナー画像を形成して記録シートに転写および定着する画像プロセス部10と、画像プロセス部10の下方に設けられた給紙部20と、画像プロセス部10の上方に設けられた画像読取部30と、画像読取部30上に設けられた自動原稿搬送装置(ADF)40とを有している。
【0022】
画像形成装置は、画像プロセス部10において、画像読取部30で読み取られた原稿の画像データに基づいてトナー画像を形成して、給紙部20から供給される記録シート上に定着する。
画像読取部30は、ADF40によって搬送される原稿または画像読取部30上に載置された原稿の画像を読み取る。
【0023】
画像読取部30およびADF40の構成は公知であるので、それぞれの説明については省略する。
画像プロセス部10の上下方向の略中央部には、周回移動域が水平方向に沿って長くなった中間転写ベルト18が配置されている。中間転写ベルト18は、駆動ローラ17aおよび従動ローラ17bと、一つテンションローラ17cとに巻き掛けられている。中間転写ベルト18は、矢印Xで示す方向に周回移動する。
【0024】
中間転写ベルト18の下方には、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kが設けられている。画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kは、中間転写ベルト18の周回移動方向に沿って、その順番で配置されている。
各画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kには、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の各色のトナーが供給される。各画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kは、感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kをそれぞれ有しており、供給される各色のトナーによって、各感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kの表面にトナー画像を形成する。
【0025】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kは、トナー画像を形成するためのトナーの色のみがそれぞれ異なっていること以外は概略同様の構成になっていることから、画像形成ユニット10Yの構成のみを主として説明して、他の画像形成ユニット10M、10C、10Kの構成の説明は省略する。
画像形成ユニット10Yに設けられた感光体ドラム11Yは、中間転写ベルト18の下方において中間転写ベルト18に対向した状態で矢印Z方向に回転可能に配置されている。感光体ドラム11Yの下方には、感光体ドラム11Yに対向して帯電器12Yが配置されている。感光体ドラム11Yは、帯電器12Yによって表面が一様に帯電され、帯電された感光体ドラム11Yの表面に、画像形成ユニット10Yの下方に設けられたプリントヘッド13Yから照射されるレーザ光によって静電潜像が形成される。
【0026】
感光体ドラム11Yの表面に形成された静電潜像は、現像器14YによってY色のトナーにより現像される。現像器14Yは、Y色のトナーを担持する現像ローラを備えており、現像バイアス電圧が印加された現像ローラの回転によって、Y色のトナーが現像ローラの周面を搬送されて、感光体ドラム11Yと対向する位置において、感光体ドラム11Yの表面に形成された静電潜像に付着する。これにより、感光体ドラム11Yの表面に、Y色のトナー画像が形成される。
【0027】
中間転写ベルト18の周回移動域の内側には、中間転写ベルト18を挟んで感光体ドラム11Yに対向する1次転写ローラ15Yが配置されており、感光体ドラム11Y上に形成されたトナー画像は、転写バイアス電圧が印加された1次転写ローラ15Yによって形成される電界の作用により、感光体ドラム11Yから中間転写ベルト18上に1次転写される。
【0028】
なお、フルカラー画像を形成する場合には、各感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kの表面に形成されたそれぞれのトナー画像が中間転写ベルト18上の同じ領域に多重転写されるように、各画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kのそれぞれの画像形成動作タイミングがずらされる。
モノクロ画像を形成する場合には、選択された1つの画像形成ユニット(例えばKトナー用の画像形成ユニット10K)のみが駆動されることによって、その画像形成ユニットに設けられた感光体ドラム上にトナー画像が形成されて、中間転写ベルト18における所定領域上に転写される。
【0029】
トナー画像が形成された中間転写ベルト18の搬送方向下流側の端部(図1において右側の端部)は、駆動ローラ17aに巻き掛けられており、駆動ローラ17aに巻き掛けられた中間転写ベルト18の外周面に対向して、2次転写ローラ19が配置されている。2次転写ローラ19は、中間転写ベルト18に当接しており、両者の間に転写ニップN1が形成されている。
【0030】
中間転写ベルト18の下方には、記録シートSが収容された給紙カセット22が設けられており、給紙カセット22の内部の記録シートSが、給紙ローラ21によって、一対のレジストローラ28にまで搬送されると、レジストローラ28は、記録シートSを、中間転写ベルト18の周回移動に同期して転写ニップN1へ搬送する。
転写ニップN1へ搬送される記録シートSは、周回移動される中間転写ベルト18の外周面(搬送面)に密着した状態で転写ニップN1を通過する。中間転写ベルト18上に転写されたトナー画像は、記録シートSが転写ニップN1を通過する間に、転写バイアス電圧が印加された2次転写ローラ19によって形成される電界の作用により、記録シートSに2次転写される。
【0031】
転写ニップN1においてトナー画像が2次転写された記録シートSは、転写ニップN1の上方に配置された定着装置50へ搬送される。
図2は、定着装置50の構成を説明するための模式図である。図2に示すように、定着装置50は、ヒータランプ51が内蔵された加熱ローラ52と、加熱ローラ52に圧接された加圧ローラ53とを有しており、加熱ローラ52と加圧ローラ53との間に定着ニップN2が形成されている。ヒータランプ51は、加熱ローラ52の軸心部に沿って配置されており、加熱ローラ52を加熱する。加熱ローラ52の外周面には、その外周面の温度を検出するサーミスタ54が対向して配置されている。
【0032】
トナー画像が転写された記録シートSは、定着ニップN2へ搬送されて、定着ニップN2を通過する間に、記録シートS上のトナー画像が、ヒータランプ51にて加熱された加熱ローラ52によって加熱されるとともに、加熱ローラ52および加圧ローラ53によって加圧されることにより、記録シートSに定着される。ヒータランプ51は、サーミスタ54による検出結果に基づいて、加熱ローラ52の外周面が所定の定着温度になるように、制御される。
【0033】
図1に示すように、定着ニップN2を通過した記録シートSは、排紙ローラ24へ搬送される。排紙ローラ24は、画像形成装置の上部に設けられた排紙トレイ23の側方に配置されている。排紙ローラ24は、定着装置50から搬送される記録シートSは、排紙ローラ24によって排紙トレイ23上に排出される。
<定着装置の制御系の構成>
図3は、定着装置50に設けられたヒータランプ51に対する電力を制御する制御系のブロック図である。ヒータランプ51は、通常、商用の交流電源55から供給される50Hzまたは60Hzの交流電力が、整流回路56およびスイッチング素子57を介してヒータランプ51に与えられるとともに、ゼロクロス信号生成部58に与えられている。
【0034】
整流回路56は、時定数が小さなダイオード等の整流素子を有しており、交流電源55から出力される正弦波(サインカーブ)状の交流電流を、サインカーブにおけるマイナス側の波形をプラス側に反転させることにより全波整流するようになっている。整流回路56によって整流された電流は、スイッチング素子57を介してヒータランプ51に与えられている。
【0035】
スイッチング素子57は、例えば、IGBT、FET等によって構成されており、電力制御部59によって導通制御されるようになっている。スイッチング素子57は、制御部59のオン指示によって、整流回路56から出力される電流をヒータランプ51に供給するオン状態になり、制御部59のオフ指示によって、整流回路56からヒータランプ51に供給される電流を遮断するオフ状態になる。電力制御部59は、ゼロクロス信号生成部58から出力されるゼロクロス信号に基づいて、スイッチング素子57を所定のタイミングでオン状態およびオフ状態とする。
【0036】
ゼロクロス信号生成部58は、交流電源55から供給される交流電圧がグランドレベル(ゼロレベル)になるタイミングを検出してゼロクロス信号を生成する。このために、交流電圧の絶対値が所定の閾値以下になった場合に、ローレベルのオン信号(アクティブ信号)を出力する。通常、交流電圧がグランドレベル(ゼロレベル)になるゼロクロス点は、ゼロクロス信号のアクティブ期間の中央になる。
【0037】
電力制御部59は、CPU59aと、ROM59bと、RAM59cと、入出力インターフェース(I/O)59dとを有している。
CPU59aは、電源投入時、サーミスタ54によって検出される加熱ローラ52の外周面の温度変化等によって、加熱ローラ52の温度を上昇および低下させる場合に、ヒータランプ51に対する電力制御を実行するようになっている。また、CPU59aは、ヒータランプ51の電力制御を実行する場合には、交流電源55から供給される交流電力に基づいて、スイッチング素子57の制御タイミングを補正するためのパラメータを取得するパラメータ取得制御を、ヒータランプ51の電力制御と並行して実行する。
【0038】
電力制御部59のCPU59aは、ヒータランプ51の給電開始時において、ヒータランプ51に電流を断続的に供給するとともに、電流が供給されない待機時間(電力供給の停止時間)を徐々に短くすることにより、ヒータランプ51に供給される電流量を徐々に増加させるスルーアップ制御を実行する。これにより、ヒータランプ51に対する電力供給開始時における電力量が大きく変動することを防止している。スルーアップ制御が終了すると、ヒータランプ51に対して連続的に電力が供給される。
【0039】
また、CPU59aは、加熱ローラ52における外周面の温度が上昇した場合等において、ヒータランプ51に電流を断続的に供給するとともに、電流が供給されない待機時間を徐々に長くすることにより、ヒータランプ51に供給される電流を徐々に減少させて給電停止状態とするスルーダウン制御を実行する。これによっても、ヒータランプ51に対する電力供給終了時において、電力量が急激に減少することを防止している。
【0040】
CPU59aは、スルーアップ制御においては、ゼロクロス信号生成部58から周期的に出力されるゼロクロス信号のアクティブ信号に基づいて、それぞれの周期毎に電力の供給と停止とを実行しつつ、各周期における停止時間を徐々に短くするようになっている。
すなわち、アクティブ信号終了エッジ(アクティブ期間の終了時、すなわち、ゼロクロス信号がローレベルでアクティブになる場合には、ローレベルからハイレベルになる立ち上がりエッジ)を基準として、n回(nは任意の整数)にわたってアクティブ信号終了エッジが検出される度に、所定のアップ待機時間Tu1〜Tunがそれぞれ経過するのを待って、ローレベルでアクティブ状態になるヒータ点灯信号を出力して、スイッチング素子57をオン状態とする。第1〜第nのアップ待機時間tu1〜tunは、徐々に長くなっている。
【0041】
また、スルーダウン制御においても、CPU59aは、ゼロクロス信号生成部58から周期的に出力されるゼロクロス信号のアクティブ信号に基づいて、それぞれの周期毎に電力の供給と停止とを実行しつつ、各周期における停止時間を徐々に長くする。
すなわち、ゼロクロス信号におけるアクティブ信号の終了エッジを基準として、n回にわたってアクティブ信号終了エッジが検出される度に、ダウン待機時間td1〜tdnがそれぞれ経過するのを待って、ローレベルのヒータ点灯信号を出力する。ダウン待機時間td1〜tdnは、徐々に短くなっている。
【0042】
第1〜第nのアップ待機時間tu1〜tun(nは任意の整数)は、スルーアップ制御の実行に際して、予め設定された基準アップ待機時間Tu1〜Tunに基づいて設定される。同様に、第1〜第nのダウン待機時間td1〜tdnも、スルーダウン制御の実行に際して、予め設定された基準ダウン待機時間Td1〜Tdnに基づいて設定される。
ROM59bには、基準アップ待機時間Tu1〜Tunが予め設定されたスルーアップテーブルと、基準ダウン待機時間Td1〜Tdnが予め設定されたスルーダウンテーブルがそれぞれ記憶されている。
【0043】
図4(a)は、スルーアップテーブルの一例であり、図4(b)は、スルーダウンテーブルの一例である。図4(a)および(b)のスルーアップテーブルおよびスルーダウンテーブルでは、n=15になっており、スイッチング素子57としてトライアックを使用した従来のスルーアップ制御およびスルーダウン制御におけるテーブルを使用している。
図4(a)および(b)のスルーアップテーブルおよびスルーダウンテーブルには、ヒータランプ51に供給される交流電力の周波数が50Hzおよび60Hzのそれぞれの場合について示されている。ヒータのオン時間は、交流電力の周波数が50Hzの場合には、1周期(サイクル)を20ms(1/2サイクルでは10ms)として、60Hzの場合には、1サイクルを16.66ms(1/2サイクルでは8.33msまたは8.34ms)として、それぞれ設定している。また、基準アップ待機時間Tukおよび基準ダウン待機時間Tdkは、それぞれ、50Hzの場合には500μsの間隔、60Hzの場合には、420μsの間隔で変化している。
【0044】
<ヒータランプに対する電力制御>
CPU59aは、ヒータランプ51の電力制御において、ゼロクロス信号におけるアクティブ信号のアクティブ期間Tzc(図5参照)を測定して平均値を算出し、算出されたアクティブ期間Tzcの平均値に基づいて、基準アップ待機時間Tu1〜Tunおよび基準ダウン待機時間Td1〜Tdn(但し、nは任意の整数)を補正して、アップ待機時間tu1〜tunおよびダウン待機時間td1〜tdnのそれぞれを補正する。この補正方法については後述する。
【0045】
CPU59aは、算出されたアップ待機時間tu1〜tunおよびダウン待機時間td1〜tdnを用いてスルーアップ制御およびスルーダウン制御をそれぞれ実行する。
<スルーアップ制御の概要>
図5(a)は、CPU59aにおいて実行されるスルーアップ制御の一例を示すタイムチャートである。スルーアップ制御が開始されると、最初(第1番目)の第1アクティブ信号Zc1における終了エッジ(ローレベルからハイレベルへの立ち上がりエッジ)Ee1から第1のアップ待機時間tu1が経過した後に、ローレベルのヒータ点灯信号(ローレベルのオン信号)が出力されて、スイッチング素子57がオン状態になる。スイッチング素子57がオン状態になると、整流回路56によって整流された電力がヒータランプ51に供給される。
【0046】
ヒータ点灯信号は、次の第2アクティブ信号Zc2における終了エッジ(ローレベルからハイレベルへの立ち下がりエッジ)Ee2でオフ状態になる。これにより、スイッチング素子57がオフ状態になり、この時点で、ヒータランプ51への電力供給が停止される。従って、ヒータランプ51へは、第2アクティブ信号Zc2におけるアクティブ期間においても、整流回路56によって整流された電力が供給される。
【0047】
このように、第1番目の第1アクティブ信号Zc1が生成されると、その第1アクティブ信号Zc1における終了エッジEe1から第1のアップ待機時間tu1が経過したタイミングで、ヒータランプ51に電力が供給される。この場合のヒータランプ51へ供給される電力量は、図5(a)における交流電力の変化を示すグラフ(i)において、ハッチングで示された領域に相当する第1電力量Wu1になる。
【0048】
同様に、第2アクティブ信号Zc2の終了エッジEe2から第2のアップ待機時間tu2(但し、tu1>tu2)が経過すると、ヒータ点灯信号がオン状態(ローレベル)とされる。これにより、スイッチング素子57がオン状態になり、電流がヒータランプ51に供給される。
この場合も、ヒータランプ51への電力供給は、次の第3アクティブ信号Zc3においてハイレベルに立ち上がる終了エッジEe3まで継続し、図5(a)における(i)の交流電力の変化を示すグラフにおいてハッチングで示された領域に相当する第2電力量Wu2が供給される。第2電力量Wu2は、第1電力量Wu1よりも大きくなる。
【0049】
以下、同様の制御が順番に実施され、ヒータランプ51に対して、電力量が徐々に増加するように断続的に電力が供給される。第k番目(但し、kは1≦k≦nの任意の整数)のアクティブ信号Zckを基準としてヒータランプ51に供給される電力量は、第k電力量Wukになる。
その後、最終である第15番目(第n番目)の第15アクティブ信号Zc15がハイレベルに立ち上った終了エッジEe15から第15番目のアップ待機時間tu15が経過した時点で、ヒータ点灯信号がオン状態とされ、第15電力量Wu15がヒータランプ51に供給される。
【0050】
これにより、スルーアップ制御が終了し、以後は、ヒータランプ51に対して連続して電力供給を行う全点灯制御が行われる。この全点灯制御時に、ヒータランプ51によって所定の定着温度に加熱された加熱ローラ52によって、記録シートSにトナー画像が定着される。
本実施形態のスルーアップ制御では、ゼロクロス信号におけるアクティブ期間の終了エッジに同期して、スイッチング素子57がオフされるために、アクティブ期間中はヒータランプ51に電力が供給されることになる。従って、図6に示すように、交流電力の電圧変動によって、ゼロクロス信号におけるアクティブ期間(パルス幅)が変動しても、アクティブ期間の変動に応じて、ヒータランプ51に対する電力供給量も変動する。その結果、アクティブ期間が長くなると、ヒータランプ51に対する電力供給量は増加し、アクティブ期間が短くなると、ヒータランプ51に対する電力供給量が減少する。
【0051】
すなわち、アクティブ期間の終了エッジから待機時間tukの計測を開始する場合、アクティブ期間が長くなると(図6に一点鎖線で示す)、ヒータランプ51に対する電力供給の開始タイミングが遅くなるが、この場合には、アクティブ期間が長くなることによって、次のアクティブ期間の終了エッジの立ち上がりタイミングも遅れることになるので、ヒータランプ51への電力供給の停止までに供給される電力量が増加する。これにより、トライアックを用いてゼロレベルになった時点で電力供給が停止される従来の構成に比較して、ヒータランプ51に対する電力供給が停止されるタイミングが遅れることにより供給電力量が減少することは抑制されることになる。
【0052】
同様に、アクティブ期間が短くなると(図6に点線で示す)、ヒータランプ51に対する電力供給の開始タイミングが早くなるが、この場合には、アクティブ期間が短くなることによって、アクティブ期間における電力供給量が低下する。従って、ヒータランプ51に対する電力供給の開始タイミングが早くなることにより供給電力量が増加することは抑制されることになる。
【0053】
以上のことにより、スルーアップ制御を安定的に実行することができる。
なお、待機時間tukの計測は、アクティブ期間の終了エッジから開始する構成に限らず、アクティブ期間の開始エッジから開始する構成としてもよい。
図5(b)は、スイッチング素子としてトライアックを使用して、スルーアップテーブルに記憶された基準アップ待機時間Tu1〜Tun(n=15)に基づいて実行される従来のスルーアップ制御を示すタイムチャートである。
【0054】
基準アップ待機時間Tuk(但し、kは1≦k≦nの任意の整数)は、第k番目の第kアクティブ信号Zckにおける開始エッジ(ローレベルからハイレベルへの立ち上がりエッジ)Eskからの待機時間(ヒータランプ51に電力供給が開始されるまでの待機時間)を示している。従って、第kアクティブ信号Zckにおける開始エッジEskから基準アップ待機時間Tukが経過すると、ローレベルのヒータ点灯信号(ローレベルのオン信号)が出力されて、スイッチング素子であるトライアックがオン状態になり、その後に、トライアックを通過する電流量がゼロレベルになった時点でヒータランプへの電力供給が停止する。
【0055】
本実施形態のスルーアップ制御においては、アップ待機時間tukが、図5(b)における交流電力の変化を示すグラフ(i)においてハッチングで示された領域に相当する第k基準電力量Wuskに基づいて設定されている。すなわち、トライアックを用いた従来技術と同じテーブルを用いる場合、本実施形態と従来技術とでは、タイマーのカウント開始タイミングと、電力供給停止タイミングとが異なるので、第k電力量Wukが、図5(b)に示された第k基準電力量Wuskに等しくなるようにするには、基準アップ待機時間Tukに基づいて、アップ待機時間tukを補正する必要がある。
【0056】
図7は、図5(a)および(b)にてそれぞれ示すスルーアップ制御において、ヒータランプ51に供給される電力量の説明図である。
図5(a)に示すスルーアップ制御では、ヒータランプ51に供給される第1電力量Wu1は、第1アップ待機時間tu1が経過してから、交流電圧がゼロレベルになるまでの時間(第2アクティブ信号のアクティブ期間の1/2の時間)に供給される主電力量wu1と、交流電圧がゼロレベルになってから第2アクティブ信号Zc2の終了エッジEe2までの時間(第2アクティブ信号のアクティブ期間の1/2の時間)に供給される副電力量Δwu1との合計である(Wu1=wu1+Δwu1)。
【0057】
図5(b)に示す従来のスルーアップ制御では、ヒータランプ51に供給される第1基準電力量Wus1は、第1アップ基準待機時間Tu1が経過してから、第1アップ待機時間tu1が経過するまでの時間に供給される補正電力量wus1と、第1アップ待機時間tu1が経過してから、交流電圧がゼロレベルになるまでの時間(第2アクティブ信号におけるアクティブ期間の1/2の時間)に供給される主電力量Δwu1との合計である(Wus1=wus1+wu1)。
【0058】
第1電力量Wu1(=wu1+Δwu1)と第1基準領域Wus1(=wus1+wu1)とを等しくするためには、補正電力量wus1と副電力量Δwu1とを等しくすればよい(wus1=Δwu1)。副電力量Δwu1は、第2アクティブ信号Zc2のアクティブ期間Tzcの1/2に相当する時間内にヒータランプ51に供給される電力量とみなすことができる。
【0059】
第2アクティブ信号Zc2の開始エッジからの基準アップ待機時間Tu1において、ヒータランプ51への電力供給を開始した場合に、供給される電力量の総量と補正電力量Δwus1とを等しくするために必要とされる時間を補正時間Th1とすると、第1のアップ待機時間tu1は、基準アップ待機時間Tu1から、第2アクティブ信号Zc2のアクティブ期間であるTzcを減算した差に、補正時間Th1を加えた時間になる。
【0060】
以上のことから、スルーアップ制御において、ゼロクロス信号のアクティブ期間が一定の時間Tzcであるとすると、第k番目のアップ待機時間tukは、第k番目の基準アップ待機時間Tukと、その基準アップ待機時間Tukにおいて決定される補正時間Thkとに基づいて、次の(1)式に基づいて算出される。
tuk=Tuk−Tzc+Thk・・・(1)
なお、最終の第15番目の基準アップ待機時間Tu15が、第15アクティブ信号のアクティブ期間Tzcよりも長くなっていない場合には、アップ待機時間tu15の算出を行うことなく、ヒータ点灯信号をオフ状態とする。ヒータランプ51に対する電力供給を確実に停止させるためである。
【0061】
<スルーダウン制御の概要>
図8(a)は、CPU59aにおいて実行されるスルーダウン制御の一例を示すタイムチャートである。通電終了時に実行されるスルーダウン制御では、制御開始から最初(第1番目)のアクティブ信号Zc1の終了エッジEe1において、ヒータ点灯信号はハイレベルのオフ状態になり、ヒータランプ51への電力供給が停止された状態になる。
【0062】
ヒータ点灯信号は、第1の待機時間td1が経過するまでオフ状態を維持する。その後、第1のダウン待機時間td1が経過すると、ヒータ点灯信号は、ローレベルのオン状態になる。これにより、スイッチング素子57がオン状態になり、整流回路56によって整流された電力がヒータランプ51に供給される。
ヒータランプ51への電力供給は、ヒータ点灯信号がオフ状態になるまで継続する。従って、ヒータランプ51へは、第2アクティブ信号Zc2におけるアクティブ期間の間においても、整流回路56によって整流された電力が供給され、図8(a)における交流電力の変化を示すグラフ(i)において、ハッチングで示された領域に相当する第1電力量Wd1が供給される。
【0063】
同様に、第2アクティブ信号Zc2の終了エッジEe2から第2のダウン待機時間td2(但し、td2>td1)が経過すると、ヒータ点灯信号がオン状態(ローレベル)とされる。これにより、スイッチング素子57がオン状態になり、電流がヒータランプ51に供給される。
この場合も、ヒータランプ51への電力供給は、次の第3アクティブ信号Zc3における終了エッジEe3になるまで継続し、図8(a)における交流電力の変化を示すグラフ(i)においてハッチングで示された領域に相当する第2電力量Wd2が供給される。第2電力量Wd2は、第1電力量Wd1よりも小さくなる。
【0064】
以下、同様の制御が順番に実施されて、ヒータランプ51に対して、電力量が徐々に減少するように断続的に電力が供給される。第k番目(但し、kは1≦k≦nの任意の整数)のアクティブ信号Zckを基準としてヒータランプ51に供給される電力量は、第k電力量Wdkになる。
その後、最終(第n番目)である第15アクティブ信号zc15がハイレベルに立ち上った終了エッジEe15から第15のダウン待機時間td15が経過すると、スルーダウン制御が終了し、以後は、ヒータランプ51に対して電力が供給されない電力供給停止状態になる。
【0065】
本実施形態のスルーダウン制御においても、ゼロクロス信号におけるアクティブ期間の終了エッジに同期して、スイッチング素子57がオフされるために、アクティブ期間中はヒータランプ51に電力が供給されることになる。従って、交流電力の電圧変動によって、アクティブ期間(パルス幅)が変動しても、アクティブ期間中は電力供給が継続される。この場合も、アクティブ期間の変動に応じて、ヒータランプ51に対する電力供給量も変動することになる。
【0066】
すなわち、アクティブ期間の終了エッジから待機時間tdkの計測を開始する場合、アクティブ期間が長くなると、ヒータランプ51に対する電力供給の開始タイミングが遅くなるが、この場合には、アクティブ期間が長くなることによって、アクティブ期間中に供給される電力量が増加する。これにより、ヒータランプ51に対する電力供給の開始タイミングが遅れることによる供給電力量の減少は抑制される。
【0067】
同様に、アクティブ期間が短くなると、ヒータランプ51に対する電力供給の開始タイミングが早くなるが、この場合には、アクティブ期間が短くなることによって、アクティブ期間における電力供給量が低下する。従って、ヒータランプ51に対する電力供給の開始タイミングが早くなることにより供給電力量が増加することは抑制されることになる。
以上により、スルーダウン制御を安定的に実行することができる。
【0068】
なお、待機時間tdkの計測は、アクティブ期間の終了エッジから開始する構成に限らず、アクティブ期間の開始エッジから開始する構成としてもよい。
図8(b)は、スイッチング素子としてトライアックを使用して、スルーダウンテーブルに記憶された基準ダウン待機時間Td1〜Tdn(n=15)に基づいて実行される従来のスルーダウン制御を示すタイムチャートである。
【0069】
基準ダウン待機時間Tdk(但し、kは1≦k≦nの任意の整数)は、第k番目の第kアクティブ信号Zckにおける開始エッジ(ローレベルからハイレベルへの立ち上がりエッジ)Eskからの待機時間(ヒータランプ51に電力供給が開始されるまでの待機時間)を示している。従って、第kアクティブ信号Zckにおける開始エッジEskから基準ダウン待機時間Tdkが経過すると、ローレベルのヒータ点灯信号(ローレベルのオン信号)が出力されて、スイッチング素子であるトライアックがオン状態になり、その後に、トライアックの通過電流量がゼロレベルになった時点でヒータランプへの電力供給が停止する。
【0070】
本実施形態のスルーアップ制御においても、ダウン待機時間tdkが、図8(b)における交流電力の変化を示すグラフ(i)においてハッチングで示された領域に相当する第k基準電力量Wdskに基づいて設定されている。すなわち、第k電力量Wukが、図8(b)に示された第k基準電力量Wdskに等しくなるように、基準ダウン待機時間Tdkに基づいて、ダウン待機時間tdkが設定される。
【0071】
ヒータランプ51には、図8(b)における交流電力の変化を示すグラフ(i)において、ハッチングで示された領域に相当する第k基準電力量Wdskが供給されるように、基準ダウン待機時間Tdkが設定されている。図8(a)における実施形態では、第k電力量Wdkが、この第k基準電力量Wdskに等しくなるように、基準ダウン待機時間Tdkに基づいて、ダウン待機時間tdkが設定される。
【0072】
図9は、図8(a)および(b)にてそれぞれ示すスルーダウン制御において、ヒータランプ51に供給される電力量の説明図である。
図8(a)に示すスルーダウン制御では、ヒータランプ51に供給される第1電力量Wd1は、第1ダウン待機時間td1が経過してから、交流電圧がゼロレベルになるまでの時間(第2ゼロクロス信号のアクティブ期間の1/2の時間)に供給される主電力量wd1と、交流電圧がゼロレベルになってから第2アクティブ信号Zc2の終了エッジEe2までの時間(第2アクティブ信号のアクティブ期間の1/2の時間)に供給される副電力量Δwd1との合計である(Wd1=wd1+Δwd1)。
【0073】
図8(b)に示すスルーダウン制御では、ヒータランプ51に供給される第1基準電力量Wds1は、第1ダウン基準待機時間Td1が経過してから、第1ダウン待機時間td1が経過するまでの時間に供給される補正電力量wds1と、第1ダウン待機時間td1が経過してから、交流電圧がゼロレベルになるまでの時間(第2アクティブ信号のアクティブ期間の1/2の時間)に供給される主電力量wd1との合計である(Wds1=wds1+wd1)。
【0074】
第1電力量Wd1(=wd1+Δwd1)と第1基準領域Wds1(=wds1+wd1)とを等しくするためには、補正電力量wds1と副電力量Δwd1とを等しくすればよい(wds1=Δwd1)。副電力量Δwd1は、第2アクティブ信号Zc2のアクティブ期間Tzcの1/2に相当する時間内にヒータランプ51に供給される電力量である。
【0075】
従って、ダウン待機時間tdkも、アップ待機時間tukと同様に、アクティブ期間が一定の時間Tzcであるとすると、第k番目の基準ダウン待機時間Tdkと、その基準ダウン待機時間Tdkにおいて決定される補正時間Thkとに基づいて、次の(2)式に基づいて算出される。
tdk=Tdk−Tzc+Thk・・・(2)
なお、最終の第15番目のダウン待機時間td15を算出する場合には、ダウン待機時間td15がアクティブ期間Tzcよりも短くならないように、補正時間として、Thに代えて2Thを使用する。ヒータランプ51に対する電力供給を確実に停止させるためである。
【0076】
<ゼロクロス信号サンプリング制御>
図10および図11は、定着制御部59のCPU59aにおいて、ヒータランプ51の電力制御と並行して実行されるゼロクロス信号のアクティブ期間Tzc等を取得するためのゼロクロス信号サンプリング制御の処理手順を示すフローチャートである。
このゼロクロス信号サンプリング制御は、定着装置33における電力制御の指示によって開始され、CPU59aは、まず、ゼロクロス信号生成部58から出力されるゼロクロス信号の測定が開始されているかを確認する(図10のステップS12参照、以下同様)。
【0077】
ゼロクロス信号の測定が開始されていない場合(ステップS12において「NO」)には、ゼロクロス信号生成部58から出力されるアクティブ信号の開始エッジ(立下りエッジ)から終了エッジ(立ち上がりエッジ)までのアクティブ(ローレベル)期間(時間)Tzcの測定を開始する(ステップS13)。また、そのアクティブ信号の終了エッジ(立ち上がりエッジ)から次のアクティブ信号の開始エッジ(立下りエッジ)までの非アクティブ(ハイレベル)期間(時間)Tnzcの測定を開始する(ステップS14)。
【0078】
次いで、アクティブ期間Tzcおよび非アクティブ期間Tnzcのそれぞれの時間が取得できるまで、すなわち、1周期のアクティブ信号が出力されるまで待機状態になる(ステップS15)。
なお、ステップS12において、アクティブ信号の測定がすでに開始されている場合(ステップS12において「YES」)には、ステップS15に進んで、交流電流における1サイクルのアクティブ期間Tzcおよび非アクティブ期間Tnzcのそれぞれが取得されるまで待機状態になる。
【0079】
その後、1周期のアクティブ信号が出力されると(ステップS15において「YES」)、そのアクティブ信号のアクティブ期間Tzcを取得し(ステップS16)、また、非アクティブ期間Tnzcを取得する(ステップS17)。取得されたアクティブ期間Tzcおよび非アクティブ期間Tnzcのそれぞれは、RAM59cに一時的に記憶される。
次に、この時点で、ヒータランプ51の全点灯制御が実行されているかについて確認する(ステップS18)。全点灯制御が実行されていない場合(ステップS18において「NO」)には、アクティブ期間Tzcおよび非アクティブ期間Tnzcのそれぞれが所定回数(所定のサイクル数)にわたってサンプリングされたかを確認する(ステップS19)。
【0080】
所定回数のサンプリングが完了していない場合には(ステップS19において「NO」)、ステップS15に戻り、交流電流における1サイクル毎に、アクティブ期間Tzcの取得(ステップS15)と、非アクティブ期間Tnzcの取得(ステップS16)とを、所定のサンプリング回数になるまで繰り返す。
ゼロクロス信号における非アクティブ期間Tnzcおよびアクティブ期間Tzcの取得は、ヒータランプ51の全点灯制御が開始された後にも、ヒータランプ51の全点灯制御に並行して実行される。しかし、全点灯制御が実行される場合(ステップS18において「YES」)には、ゼロクロス信号のアクティブ期間Tzcに基づくスルーアップ制御およびスルーダウン制御が実行されないために、取得されてRAM59cに記憶された非アクティブ期間Tnzcおよびアクティブ期間Tzcをクリアし(ステップS27)、また、サンプリング回数もクリアして(ステップS28)、ステップS15に戻る。
【0081】
このように、ヒータランプ51の全点灯制御が実行されている場合には、ゼロクロス信号の非アクティブ期間Tnzcおよびアクティブ期間Tzcの取得が実行されるものの、RAM59cに記憶されないために、全点灯制御が終了してスルーダウン制御が開始された場合に、RAM59cに記憶された古いデータを用いてスルーダウン制御が実行されるおそれがない。しかも、スルーダウン制御が開始される場合にも、アクティブ期間Tzcの取得が実行されていることから、迅速にスルーダウン制御を開始することができる。
【0082】
ステップS19において、非アクティブ期間Tnzcの取得とアクティブ期間Tzcとが所定回数にわたってサンプリングされると(ステップS19において「YES」)、サンプリングされたアクティブ期間(ローレベル期間)Tzcの平均値AVEを算出し(ステップS20)、また、サンプリングされた非アクティブ期間Tnzc(ハイレベル期間)の平均値AVEを算出する(ステップS21)。
【0083】
さらには、交流電力における1サイクルの平均時間、すなわち、連続する非アクティブ期間(ハイレベル期間)とアクティブ期間(ローレベル期間)との合計時間の平均値AVEL+Hを算出する(ステップS22)。
このようにして、アクティブ期間Tzcの平均値AVEと、非アクティブ期間Tnzcの平均値AVEと、交流電力における1サイクルの時間の平均値AVEL+Hとが算出されると、これらに基づいて、アクティブ期間Tzcおよび非アクティブ期間Tnzcをそれぞれ補正する(以下、それぞれの補正値を、それぞれの最適値とする)。これにより、それぞれの最適値が算出される(ステップS23)。算出された最適値は、スルーアップ制御、スルーダウン制御において使用される。
【0084】
ゼロクロス信号Tzcの最適値が算出されると、算出されたゼロクロス信号Tzcの最適値に基づいて、ヒータランプ51に供給されている交流電流における周波数(50Hzまたは60Hz)を算出する(ステップS24)。
交流電流の周波数が算出されると、取得されたゼロクロス信号における非アクティブ期間Tnzcとアクティブ期間Tzcのそれぞれのデータをクリアし(ステップS25)、また、サンプリング回数もクリアして(ステップS26)、図11のステップS32に進む。
【0085】
ステップS32では、ヒータランプ51に供給される交流電力における電圧のモニタを開始する。この場合、ステップS24において算出された交流電力の周波数に応じた周期によって、ヒータランプ51に供給される交流電圧がサンプリングされる。例えば、ステップS24において算出された交流電力の周波数が50Hzの場合には、500μsの周期でサンプリングされ、60Hzの場合には、420μsの周期で電圧がサンプリングされる。
【0086】
なお、交流電力の周波数が50Hzの場合におけるサンプリング周期の500μsは、図4(a)のスルーアップテーブルおよび(b)のスルーダウンテーブルにおいて示された徐々に長くなるように変化する待機時間の差分に相当する。60Hzの場合におけるサンプリング周期の420μsも、図4(a)のスルーアップテーブルおよび(b)のスルーダウンテーブルにおいて示された徐々に短くなるように変化する待機時間の差分に相当する。
【0087】
ステップS32において、ヒータランプ51に供給される交流電力の電圧のモニタが開始されると、予め設定された所定回数にわたって電圧がサンプリングされるまで待機状態になる(ステップS33)。その後、予め設定された所定回数にわたる電圧のサンプリングが終了すると(ステップS33において「YES」)、サンプリングされた交流電力の電圧から、モニタされた期間の全体にわたる電圧の変化(サインカーブ)を算出する(ステップS34)。
【0088】
また、ステップS23において算出されたゼロクロス信号のアクティブ期間Tzcの最適値を取得する(ステップS35)。
次いで、ステップS34にて算出された電圧の変化と、ステップS35にて取得されたアクティブ期間Tzcの最適値とに基づいて、ゼロクロス信号のアクティブ期間Tzcの間に供給されるゼロクロス電力量wzcを、前記サインカーブにおけるアクティブ期間Tzcの積分によって算出する(ステップS36)。このゼロクロス電力量は、ゼロクロス信号におけるアクティブ期間Tzcの1/2の時点が、ゼロレベルになる時点にほぼ等しいことから、図7および図9にそれぞれ示された補正電力量(Δwu1、Δwu2、Δwu3およびΔwd1、Δwd2、Δwd3)の2倍に対応する。
【0089】
このようにして、ゼロクロス信号のアクティブ期間Tzcにおいて供給されるゼロクロス電力量wzcが算出されると、その1/2の補正電力量Δwzc(=wzc/2)を算出する(ステップS37)。
補正電力量Δwzcが算出されると、サンプリングされた全ての交流電力の電圧をクリアし(ステップS38)、また、サンプリング回数のカウント値もクリアする(ステップS39)。
【0090】
その後、ヒータランプ51に対する電力制御が必要であるかを、例えばメインスイッチのオフによって確認し(ステップS40)、必要である場合(ステップS40において「YES」)には、図10のステップS15に戻って、前述した制御を繰り返す。電力制御が必要でない場合(ステップS40において「NO」)には、電力制御を終了する。
<ヒータランプの電力制御>
図12は、CPU59aが実行するヒータランプ51の電力制御における処理手順を示すフローチャートである。CPU59aにて実行されるヒータランプ51の電力制御は、スルーアップ制御の指示によって開始される(図12のステップS41参照、以下同様)。スルーアップ制御は、画像形成装置における電源投入時、サーミスタ54にて検出された温度が所定値以下に低下した場合等に指示される。
【0091】
スルーアップ制御は、図10および図11に示されたゼロクロス信号サンプリング制御に並行して実行されるが、スルーアップ制御を開始するに当たり、ステップS37において少なくとも1つの補正電力量Δwzcが算出されている必要がある。このために、補正電力量Δwzcが算出されていない場合には、正電力量Δwzcが算出されるまで待機状態(ステップS42)になる。
【0092】
補正電力量Δwzcが算出されると(ステップS42において「YES」)、1〜n個の待機時間の全てを用いてのスルーアップ制御が終了したことを示すフラグFuがセット状態(Fu=1)であるかを確認する(ステップS43)。
スルーアップ制御の開始当初は、スルーアップ制御終了フラグFuがセットされていないために(ステップS43において「NO」)、ステップS44に進み、ゼロクロス信号サンプリング制御において算出された交流電力の周波数と、交流電力の電圧変化と、ゼロクロス信号におけるアクティブ期間Tzcの最適値と、補正電力量Δwzcとのそれぞれの最新のデータを取得する。
【0093】
これらのデータは、並行して実行されるゼロクロス信号サンプリング制御において、随時書き換えられている。このために、スルーアップ制御の実行に際して、最新のデータをRAM59cから読み出して取得することができる。
次いで、1〜n個のアップ待機時間の順番を示すカウンタのカウント値kを初期値(k=1)にリセットする(ステップS45)。また、ヒータランプ51に供給される交流電流の周波数(50Hzまたは60Hz)に対応するスルーアップテーブルから、k番目の基準アップ待機時間Tukを取得する(ステップS46)。
【0094】
基準アップ待機時間Tukが取得されると、交流電力の電圧変化と、補正電力量Δwzcとに基づいて、基準アップ待機時間Tukに対応する補正時間Thkを算出する(ステップS47)。
その後、ステップS48に進んで、カウント値kが、最後のn番目の待機時間であるかを確認する。n番目の待機時間でない場合(ステップS48において「NO」)には、ステップS49に進んで、スルーアップ制御の実行に用いられる待機時間をカウントするカウンタのカウント値kを1つ増加させる(k=k+1)。
【0095】
次いで、基準アップ待機時間Tukに対するアップ待機時間tukを算出する(ステップS50)。
この場合のアップ待機時間tukは、前述したように、ステップS51にて算出された補正時間Thkと、ゼロクロス信号におけるアクティブ期間Tzcとを用いて、前記(1)式に基づいて算出される。
【0096】
このような状態になると、アクティブ信号の終了エッジが検出されるまで待機状態になり(ステップS51)、アクティブ信号の終了エッジが検出されると(ステップS51において「YES」)、ヒータランプ51の点灯信号をオフ状態とする(ステップS52)。その後、アクティブ信号の終了エッジから、算出されたアップ待機時間tukが経過すると(ステップS53)、ヒータランプ51の点灯信号をオン状態とし(ステップS54)、ステップS43に戻る。
【0097】
最初の第1アップ待機時間tu1が算出されて、その第1アップ待機時間tu1に基づいてヒータランプ51に対する電力供給が開始されるとステップS43に戻る。この場合、スルーアップ制御が終了していない(Fu=1でない)ことから(ステップS43において「NO」)、ステップS44に進み、ステップS44〜S50において、スルーアップ制御における第2番目のアップ待機時間tu2が算出される。
【0098】
その後のステップS51において、アクティブ信号の終了エッジが検出されると(ステップS51において「YES」)、点灯信号はオフ状態とされる(ステップS52)。すなわち、第1番目のアップ待機時間tu1が経過した時点でオン状態になった点灯信号が、このアクティブ信号の終了エッジが検出されるまで継続される。
点灯信号がオフされると、第2アップ待機時間tu2が経過した時点で(ステップS53)、点灯信号がオン状態になり(ステップS54)、ヒータランプ51に対する電力供給が開始される。
【0099】
このようなスルーアップ制御は、カウンタのカウント値kが最終値nに達するまで繰り返される。
カウント値kがnになり(ステップS49」)、その後にステップS43に戻ると、前述と同様にして、n番目の基準アップ待機時間Tunが取得されて(ステップS46)、その基準アップ待機時間Tunに対するアップ待機時間tunが算出され(ステップS47)、ステップS48に進む。ステップS48では、カウント値kがnになっているために(ステップS48において「YES」)、ステップS55に進み、最終の基準アップ待機時間Tunが、ゼロクロス信号のアクティブ期間Tzcよりも長くなっているかを判定する。
【0100】
最終の基準アップ待機時間Tunが、アクティブ期間Tzcよりも長い場合(ステップS55において「YES」)には、最終のアップ待機時間tunを算出し(ステップS56)、スルーアップ制御の終了を示すフラグFuをセット状態(Fu=1)とする(ステップS57)。その後は、ステップS52に進み、ヒータランプ51の点灯信号をオフ状態として、ゼロクロス信号におけるアクティブ信号の終了エッジから、算出されたアップ待機時間tunが経過すると(ステップS53)、ヒータランプ51の点灯信号をオン状態とし(ステップS54)、ステップS43に戻る。
【0101】
最終の基準アップ待機時間Tunが、アクティブ期間Tzcよりも長くない場合(ステップS55において「NO」)には、最終のアップ待機時間tunを算出することなく、ヒータランプ51の点灯信号をオン状態として(ステップS58)、スルーアップ制御の終了を示すフラグFuをセット状態(Fu=1)とする(ステップS59)。その後、ステップS43に戻る。
【0102】
n回の待機時間によるヒータランプ51のオフが実行されると、ステップS43では、スルーアップ制御の終了を示すフラグFuがセット状態(Fu=1)になっていることから(ステップS43において「YES」)、ステップS61に進んで、ヒータランプ51に対して連続して給電する全点灯制御を実行する。その後、スルーダウン指示があるまで全点灯制御の実行が継続される(ステップS62)。
【0103】
ヒータランプ51に対する全点灯制御が実行されている状態において、加熱ローラ52の温度を低下させるためのスルーダウン制御が指示されると(ステップS62において「YES」)、図13のフローチャートに示すスルーダウン制御が実行される。
スルーダウン制御では、1〜n個の待機時間の全てを用いてのスルーダウン制御が終了したことを示すフラグFdがセット状態(Fd=1)であるかを確認する(ステップS71)。
【0104】
スルーダウン制御の開始当初は、スルーダウン制御終了フラグFdがセットされていないために(ステップS71において「NO」)、ステップS72に進み、ゼロクロス信号サンプリング制御において算出された交流電力の周波数と、交流電力の電圧変化と、ゼロクロス信号におけるアクティブ期間Tzcの最適値と、補正電力量Δwzcと、非アクティブ期間Tnzcの最適値とのそれぞれの最新のデータを取得する。
【0105】
次いで、スルーダウン制御において、1〜n個のダウン待機時間の順番を示すカウンタのカウント値kを初期値(k=1)にリセットする(ステップS73)。また、ヒータランプ51に供給される交流電流の周波数(50Hzまたは60Hz)に対応するスルーダウンテーブルから、k番目の基準アップ待機時間Tdkを取得する(ステップS74)。
基準ダウン待機時間Tdkが取得されると、交流電力の電圧変化と、補正電力量Δwzcとに基づいて、基準ダウン待機時間Tdkに対応する補正時間Thkを算出する(ステップS75)。
【0106】
その後、ステップS76に進んで、カウント値kが、最後のn番目の待機時間であるかを確認する。n番目の待機時間でない場合(ステップS76において「NO」)には、ステップS77に進んで、スルーダウン制御の実行に用いられる待機時間をカウントするカウンタのカウント値kを1つ増加させる(k=k+1)。
次いで、基準ダウン待機時間Tdkに対するダウン待機時間tdkを算出する(ステップS78)。
【0107】
この場合のダウン待機時間tdkは、前述したように、ステップS71にて算出された補正時間Thkと、ゼロクロス信号におけるアクティブ期間Tzcとを用いて、前記(2)式に基づいて算出される。
このような状態になると、ゼロクロス信号におけるアクティブ信号の終了エッジが検出されるまで待機状態になり(ステップS79)、アクティブ信号の終了エッジが検出されると(ステップS79において「YES」)、ヒータランプ51の点灯信号をオフ状態とする(ステップS80)。その後に、アクティブ信号の終了エッジから、算出されたダウン待機時間tdkが経過すると(ステップS81)、ヒータランプ51の点灯信号をオン状態とし(ステップS82)、ステップS71に戻る。
【0108】
このようなスルーダウン制御は、前述したスルーアップ制御と同様であり、カウンタのカウント値kが最終のnに達するまで繰り返される。
カウント値kがnになると、ステップS71〜ステップS75の処理が実行されて、n番目の基準アップ待機時間Tdnに対するアップ待機時間tdnが算出される(ステップS75)。その後のステップS76において、カウント値kがnになっていることによって(ステップS76において「YES」)、ステップS84に進み、最後の基準ダウン待機時間Tdnに対するダウン待機時間tdkを算出する。
【0109】
次いで、算出されたダウン待機時間tdkが非アクティブ期間Tnzcよりも長い時間になっているかを判定する(ステップS85)。
ダウン待機時間tdkが、非アクティブ期間Tnzcよりも長い場合(ステップS85において「YES」)には、スルーダウン制御の終了を示すフラグFdをセット状態(Fd=1)とする(ステップS86)。その後は、ステップS80に進み、ヒータランプ51の点灯信号をオフ状態として、ゼロクロス信号におけるアクティブ信号の終了エッジから、算出されたダウン待機時間tdnが経過すると(ステップS81)、ヒータランプ51の点灯信号をオン状態とし(ステップS82)、ステップS71に戻る。
【0110】
最終のダウン待機時間tdnが、非アクティブ期間Tnzcよりも長くなっていない場合(ステップS85において「NO」)には、最終のアップ待機時間tdnを算出することなく、ヒータランプ51の点灯信号をオフ状態として(ステップS87)、スルーダウン制御の終了を示すフラグFdをセット状態(Fd=1)とする(ステップS88)。その後、ステップS71に戻る。
【0111】
ステップS71では、スルーダウン制御の終了を示すフラグFdがセット状態(Fd=1)になっていることから(ステップS71において「YES」)、ステップS91に進んで、点灯信号をオフ状態として、ヒータランプ51に対する電力供給を停止する。その後、ヒータランプ51に対する電力制御が必要であるかを確認し(ステップS92)、電力制御が必要である場合(ステップS92において「YES」)には、図12のステップS41に戻り、スルーアップ制御が指示されるまで待機状態になる。電力制御が必要でない場合(ステップS92において「NO」)には、制御を終了する。
【0112】
以上のように、スルーアップ制御およびスルーダウン制御において、ゼロクロス信号におけるアクティブ信号の終了エッジから、所定の待機時間を経過した時点で電力供給を開始し、ゼロクロス信号におけるアクティブ信号の終了エッジに同期してスイッチング素子57をオフしているために、アクティブ期間が変動した場合に、ヒータランプ51に対する供給電力量の変動を抑制することができる。
【0113】
これにより、スルーアップ制御およびスルーダウン制御の信頼性を向上させることができる。
また、ゼロクロス信号におけるアクティブ期間、交流電力の電圧等を測定して、測定されたアクティブ期間に基づいて、電力供給を開始するタイミングを補正することで、ゼロクロス信号のアクティブ期間が変動した場合におけるヒータランプ51に対する供給電力量の変動をさらに抑制することができる。これにより、スルーアップ制御およびスルーダウン制御の信頼性を、一層向上させることができる。
【0114】
[変形例]
上記実施の形態では、スルーアップ制御とスルーダウン制御の両方を実行する構成であったが、いずれか一方のみを実行する構成であってもよい。
また、スルーアップテーブルおよびスルーダウンテーブルとして、スイッチング素子57としてトライアックを使用した従来のスルーアップテーブルおよびスルーダウンテーブルを使用する構成であったが、このような構成に限らず、本実施形態において使用されるアップ待機時間tu1〜tunおよびダウン待機時間td1〜tdnがそれぞれ予め設定されたスルーアップテーブルおよびスルーダウンテーブルとしてもよい。この場合には、基準アップ待機時間Tu1〜Tunおよび基準ダウン待機時間Td1〜Tdnのそれぞれを補正してアップ待機時間tu1〜tunおよびダウン待機時間td1〜tdnを求める必要がない。
【0115】
さらに本発明のヒータ制御装置は、定着装置のヒータに限らず、通常のヒータを制御する場合にも適用することができる。
なお、定着装置50としては、加熱ローラ52と加圧ローラ53とによって定着ニップN2を形成する構成に限らず、ベルトとローラ、ベルトとベルト、ベルトまたはローラと固定部材等によって定着ニップN2を形成する構成であってもよい。
【0116】
さらに、上記実施の形態では、タンデム型カラーデジタル複写機について説明したがこれに限るものではなく、FAX、MFP(Multiple Function Peripheral)等の画像形成装置であってもよく、また、モノクロの画像形成装置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明は、記録シートに転写されたトナー画像を記録シート上に定着する定着装置等において使用されるヒータを制御するヒータ制御装置において、電力供給開始時および終了時において供給される電力量が急激に増加または減少することを抑制する技術として有用である。
【符号の説明】
【0118】
10 画像プロセス部
10Y、10M、10C、10K 画像形成ユニット
18 中間転写ベルト
20 給紙部
30 画像読取部
40 自動原稿搬送装置(ADF)
50 定着装置
51 ヒータランプ
52 加熱ローラ
53 加圧ローラ
55 交流電源
56 整流回路
57 スイッチング素子
58 ゼロクロス信号生成部
59 電力制御部
59a CPU
59b ROM
59c RAM
59d 入出力インターフェース(I/O)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力を整流する整流回路から出力される電力を、スイッチング素子を介してヒータに供給を開始する際に、前記交流電力がゼロクロスポイントになる直前および直後にわたってアクティブ信号を出力するゼロクロス信号生成手段から複数周期にわたってアクティブ信号が出力される間に、それぞれの周期毎にヒータへの電力の供給と停止とを実行しつつ、各周期におけるヒータへの電力供給の停止時間を徐々に短くするスルーアップ制御と、ヒータへの電力の供給を終了する際に、前記ゼロクロス信号生成手段から複数周期にわたってアクティブ信号が出力される間に、それぞれの周期毎に電力の供給と停止とを実行しつつ、各周期における停止時間を徐々に長くするスルーダウン制御とのいずれか一方または両方を実行するヒータ制御装置であって、
前記スイッチング素子は、オン指示があると前記ヒータに対して電力の供給を開始して、オフ指示があるまで電力の供給を継続する構成であり、
前記スルーアップ制御および前記スルーダウン制御のそれぞれにおいて、前記スイッチング素子のオン指示は、前記アクティブ信号の開始または終了に対して所定のタイミングで発せられ、オフ指示は、次のアクティブ信号の終了に同期して発せられることを特徴とするヒータ制御装置。
【請求項2】
各周期における前記停止時間は、予め設定されていることを特徴とする請求項1に記載のヒータ制御装置。
【請求項3】
前記停止時間として、商用の交流電力の異なる周波数のそれぞれに対応して異なる時間が設定されており、前記スルーアップ制御が開始される前に、前記アクティブ信号をサンプリングして得られる周波数に対応する停止時間が選択されることを特徴とする請求項1または2に記載のヒータ制御装置。
【請求項4】
前記スイッチング素子が、IGBTまたはFETであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のヒータ制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載されたヒータ制御装置によって制御されるヒータにより、記録シート上のトナー画像を加熱して定着させることを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項5に記載の定着装置を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−69269(P2012−69269A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210768(P2010−210768)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】