説明

ヒータ用炭化ケイ素焼結体及びその製造方法

【課題】高純度で高耐久性のヒータ用炭化ケイ素焼結体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】窒素含有量が0.1体積%以上のβ型炭化ケイ素粉体を焼結して得られるヒータ用炭化ケイ素焼結体であって、ヒータ用炭化ケイ素焼結体を構成する粒子間の結合部の直径は100μm以上であり、ヒータ用炭化ケイ素焼結体を1000℃で1000時間加熱した後の前記ヒータ用炭化ケイ素焼結体の抵抗増加率は15%以下であり、ヒータ用炭化ケイ素焼結体はα型炭化ケイ素からなるヒータ用炭化ケイ素焼結体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒータ用炭化ケイ素焼結体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素ヒータは、急速昇温・降温特性に優れているため半導体ウェハの各種熱処理用ヒータとして提案されている。しかし、炭化ケイ素ヒータは金属シリコンを始めとする不純物を含有するため、金属シリコンの融点以上では使用できないという欠点があった。
【0003】
上記課題を改善する方法としては、ホットプレス法で製造された高寿命の炭化ケイ素ヒータがあるが、非常に高価でしかも形状に制限があった。また炭化ケイ素ヒータの表面に化学気相成長(CVD)法により炭化ケイ素被膜を形成する方法が提案されているが非常に高価であった(特許文献1参照)。また工業上使用する上でさらなる耐久性が求められていた。
【特許文献1】特開平10−28747211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高純度で高耐久性のヒータ用炭化ケイ素焼結体及びその製造方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち本発明は以下の記載事項に関する:
(1)窒素含有量が0.1体積%以上のβ型炭化ケイ素粉体を焼結して得られるヒータ用炭化ケイ素焼結体であって、ヒータ用炭化ケイ素焼結体を構成する粒子間の結合部の直径は100μm以上であり、ヒータ用炭化ケイ素焼結体を1000℃で1000時間加熱した後の前記ヒータ用炭化ケイ素焼結体の抵抗増加率は15%以下であり、ヒータ用炭化ケイ素焼結体はα型炭化ケイ素からなるヒータ用炭化ケイ素焼結体。
(2)粒径1〜20μmの炭化ケイ素微粉末を含むスラリーを作製する工程と、スラリーを型に流し込み乾燥させてグリーン体を得る工程と、成形体を窒素雰囲気下1800℃以上で仮焼して仮焼体を得る工程と、仮焼体を粒径30μm以上の炭化ケイ素微粉末に埋め込み、アルゴン及び窒素混合ガス雰囲気下2200℃以上の温度で焼成する工程と、を有するヒータ用炭化ケイ素焼結体の製造方法。
(3)アルゴン(Ar)及び窒素(N)混合ガスの混合比は、焼成雰囲気ガスの全重量基準でAr:N=1:1〜9:1である上記2記載のヒータ用炭化ケイ素焼結体の製造方法。
(4)スラリーを作製する工程における前記炭化ケイ素微粉末は、窒素含有量が0.1体積%以上のβ型炭化ケイ素粉体である上記(2)又は(3)記載のヒータ用炭化ケイ素焼結体の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば高純度で高耐久性のヒータ用炭化ケイ素焼結体及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に実施形態を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されない。
炭化ケイ素焼結体は機械的強度が高く、一般に押し出し成形されるため複雑形状に加工することが困難であるが、炭化ケイ素焼結体を鋳込み成形品とすることで上記課題は改善される。しかしながら、前述の炭化ケイ素焼結体は抵抗に温度依存性がありヒータ用部品としての使用が制限されていた。そのため抵抗の温度依存性の小さいヒータ用部品としての炭化ケイ素焼結体及びそれらの製造方法が求められていた。
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、炭化ケイ素焼結体を多孔体とすることで温度依存性の問題が改善されることを見出し、特開2005−206449号公報に開示するヒータ用炭化ケイ素焼結体の製造方法を完成するに至った。しかしかかる炭化ケイ素焼結体ヒータを構成する粒子は小さく、図2に示すように粒子50,60の結合部分70の最大直径X2はこの粒子径よりさらに小さいため酸化雰囲気等に曝されるとすぐに抵抗が増加するため耐久性に改善の余地が残されていた。本発明者らはさらに鋭意検討した結果、炭化ケイ素ヒータの寿命に影響する要素としては、ヒータを構成する粒子の粒子径ではなく、図1の斜線で示される粒子5,7同士の結合部分7の大きさであり、この結合部分7の矢印Aで示される最大直径X1が100μm以上になると飛躍的に寿命が延びることを知見した。
【0009】
〔炭化ケイ素焼結体の製造方法に用いられる成分〕
まず、本発明の実施形態にかかる炭化ケイ素多孔体の製造方法に用いられる成分について説明する。
(炭化ケイ素粉末)
炭化ケイ素粉末としてα型、β型、非晶質あるいはこれらの混合物等が挙げられる。また、高純度の炭化ケイ素焼結体を得るためには、原料の炭化ケイ素粉末として、高純度の炭化ケイ素粉末を用いることが好ましい。
このβ型炭化ケイ素粉末のグレードには特に制限はなく、例えば、一般に市販されているβ型炭化ケイ素を用いることができる。炭化ケイ素粉末の粒径は、高密度の観点からは、小さいことが好ましく、具体的には、0.01μm〜10μm程度、さらに好ましくは、0.05μm〜5μmである。粒径が、0.01μm未満であると、計量、混合等の処理工程における取扱いが困難となりやすく、10μmを超えると、比表面積が小さく、即ち、隣接する粉末との接触面積が小さくなり、高密度化し難くなるため好ましくない。
【0010】
ここで「粒径」とは走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影した写真から任意に選んだ200個の炭化ケイ素微粒子について個々の粒子の粒径を測定したときの炭化ケイ素微粒子の平均粒径をいうものとする。炭化ケイ素粉末の粒径は、得られた炭化ケイ素粉末をジェットミルで粉砕することにより例えば1μmから20μmの粉体に作製することができる。
【0011】
高純度の炭化ケイ素粉末は、例えば、少なくとも1種以上のケイ素化合物を含むケイ素源と、少なくとも1種以上の加熱により炭素を生成する有機化合物を含む炭素源と、重合又は架橋触媒と、を溶媒中で溶解し、乾燥した後に得られた粉末を非酸化性雰囲気下で焼成する工程により得ることができる。
【0012】
上記ケイ素化合物を含むケイ素源(以下、「ケイ素源」という。)としては、液状のものと固体のものとを併用することができるが、少なくとも1種は液状のものから選ばれなくてはならない。液状のものとしては、アルコキシシラン(モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−)及びテトラアルコキシシランの重合体が用いられる。アルコキシシランの中ではテトラアルコキシシランが好適に用いられ、具体的には、メトキシシラン、エトキシシラン、プロポキシシラン、ブトキシシラン等が挙げられるが、ハンドリングの点からは、エトキシシランが好ましい。また、テトラアルコキシシランの重合体としては、重合度が2〜15程度の低分子量重合体(オリゴマー)及びさらに重合度が高いケイ酸ポリマーで液状のものが挙げられる。これらと併用可能な固体状のものとしては、酸化ケイ素が挙げられる。上記反応焼結法において酸化ケイ素とは、SiOの他、シリカゲル(コロイド状超微細シリカ含有液、内部にOH基やアルコキシル基を含む)、二酸化ケイ素(シリカゲル、微細シリカ、石英粉末)等を含む。これらケイ素源は、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0013】
これらケイ素源の中でも、均質性やハンドリング性が良好な観点から、テトラエトキシシランのオリゴマー及びテトラエトキシシランのオリゴマーと微粉末シリカとの混合物等が好適である。また、これらのケイ素源は高純度の物質が用いられ、初期の不純物含有量が20ppm以下であることが好ましく、5ppm以下であることがさらに好ましい。
【0014】
炭素源として用いられる物質は、酸素を分子内に含有し、加熱により炭素を残留する高純度有機化合物であることが好ましい。具体的には、フェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂やグルコース等の単糖類、蔗糖等の少糖類、セルロース、デンプン等の多糖類などの等の各種糖類が挙げられる。これらはケイ素源と均質に混合するという目的から、常温で液状のもの、溶媒に溶解するもの、熱可塑性あるいは熱融解性のように加熱することにより軟化するものあるいは液状となるものが主に用いられる。なかでも、レゾール型フェノール樹脂やノボラック型フェノール樹脂が好適である。特に、レゾール型フェノール樹脂が好適に使用される。
【0015】
高純度の炭化ケイ素粉末の製造に用いられる重合及び架橋触媒としては、炭素源に応じて適宜選択でき、炭素源がフェノール樹脂やフラン樹脂の場合、トルエンスルホン酸、トルエンカルボン酸、酢酸、しゅう酸、硫酸等の酸類が挙げられる。これらの中でも、トルエンスルホン酸が好適に用いられる。
【0016】
反応焼結法に使用される原料粉末である高純度炭化ケイ素粉末を製造する工程における、炭素とケイ素の比(以下、C/Si比と略記)は、混合物をl000℃にて炭化して得られる炭化物中間体を、元素分析することにより定義される。化学量論的には、C/Si比が3.0の時に生成炭化ケイ素中の遊離炭素が0%となるばずであるが、実際には同時に生成するSiOガスの揮散により低C/Si比において遊離炭素が発生する。この生成炭化ケイ素粉末中の遊離炭素量が焼結体等の製造用途に適当でない量にならないように予め配合を決定することが重要である。通常、1気圧近傍で1600℃以上での焼成では、C/Si比を2.0〜2.5にすると遊離炭素を抑制することができ、この範囲を好適に用いることができる。C/Si比を2.55以上にすると遊離炭素が顕著に増加するが、この遊離炭素は結晶成長を抑制する効果を持つため、得ようとする結晶成長サイズに応じてC/Si比を適宜選択しても良い。但し、雰囲気の圧力を低圧又は高圧とする場合は、純粋な炭化ケイ素を得るためのC/Si比は変動するので、この場合は必ずしも上記C/Si比の範囲に限定するものではない。
【0017】
以上より、特に高純度の炭化ケイ素粉末を得る方法としては、本願出願人が先に出願した特開平9−48605号の単結晶の製造方法に記載の原料粉末の製造方法が挙げられる。即ち、高純度のテトラアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン重合体から選択される1種以上をケイ素源とし、加熱により炭素を生成する高純度有機化合物を炭素源とし、これらを均質に混合して得られた混合物を非酸化性雰囲気下において加熱焼成して炭化ケイ素粉末を得る炭化ケイ素生成工程と;得られた炭化ケイ素粉末を、1700℃以上2000℃未満の温度に保持し、上記温度の保持中に、2000℃〜2100℃の温度において5〜20分間にわたり加熱する処理を少なくとも1回行う後処理工程と;を含み、上記2工程を行うことにより、各不純物元素の含有量が0.5ppm以下である炭化ケイ素粉末を得る高純度炭化ケイ素粉末の製造方法等を利用することができる。この様にして得られた炭化ケイ素粉末は、大きさが不均一であるため、解粉、分級により上記粒度に適合するように処理することが好ましい。
【0018】
炭化ケイ素粉末を製造する工程において窒素を導入する場合は、まずケイ素源と、炭素源と、窒素源からなる有機物質と、重合又は架橋触媒と、を均質に混合するが、上記如く、フェノール樹脂等の炭素源と、ヘキサメチレンテトラミン等の窒素源からなる有機物質と、トルエンスルホン酸等の重合又は架橋触媒とを、エタノール等の溶媒に溶解する際に、テトラエトキシシランのオリゴマー等のケイ素源と十分に混合することが好ましい。また炭化ケイ素粉末を製造する際に窒素雰囲気中で焼成して窒素を多く固溶させることが好ましい。
【0019】
(溶媒)
溶媒としては、水、エチルアルコール等の低級アルコール類やエチルエーテル、アセトン等が挙げられる。溶媒としては不純物の含有量が低いものを使用することが好ましい。消泡剤としてはシリコーン消泡剤等が挙げられる。また、炭化ケイ素粉末からスラリー状の混合粉体を製造する際に有機バインダーを添加してもよい。有機バインダーとしては、高分子エマルジョンラテックス等が挙げられ、解膠剤としては、導電性を付与する効果をさらに上げる点で窒素系の化合物が好ましく、例えばアンモニア、ポリアクリル酸アンモニウム塩等が好適に用いられる。粉体粘着剤としては、ポリビニルアルコールウレタン樹脂(例えば水溶性ポリウレタン)等が好適に用いられる。
【0020】
〔鋳込み成形法〕
以下の工程により炭化ケイ素ヒータに適した炭化ケイ素焼結体(多孔体)が得られる:
(実施形態1)
(1)スラリー状の混合粉体を得る工程
まず炭化ケイ素粉末と消泡剤を溶媒中に分散させてスラリー状の混合粉体を製造する。次に、ミキサー、遊星ボールミルなどの攪拌混合手段を用いて、6時間〜48時間、特に12時間〜24時間に渡って攪拌混合を行う。攪拌混合が十分に行われていないと、グリーン体中に気孔が均一分散されなくなるからである。炭化ケイ素粉末としては、窒素を0.1wt.%〜0.6wt.%含有していることが好ましい。また炭化ケイ素粉末の粒径は、1μmから20μmが好ましい。この場合、炭化ケイ素粉末としては、粒径が1種類単独のものを用いても、また2種類以上を混合して用いても構わない。例えば粒径2μmと粒径10μmの炭化ケイ素粉末を1:1で配合した混合粉体を用いることができる。
【0021】
(2)グリーン体を得る工程
得られたスラリー状の混合粉体を鋳込み成形用型に流し込む。その後、放置、脱型した後、40℃〜60℃の温度条件下で加熱乾燥又は自然乾燥して溶媒を除去する。このようにして規定寸法のグリーン体、即ちスラリー状の混合粉体から溶媒を除去して得られる多くの気孔が内在する炭化ケイ素成形体が得られる。成形方法は鋳込み成形に限定されることなく、他にプレス成形(乾式、湿式)やCIP成形、押し出し成形等を用いることができる。中でも一番形状の自由度が大きい点で鋳込成形が好ましい。また鋳込成形と併せてプレス成形(乾式、湿式)やCIP成形、押し出し成形等を施しても構わない。
【0022】
(3)仮焼工程
得られたグリーン体を真空雰囲気下300℃〜600℃まで約4時間程度かけて昇温する。加熱温度が300℃未満だと脱脂が不十分になる。また脱脂は600℃前後で終了する。そのため、前述の加熱温度範囲内の一定の温度で加熱する。昇温速度は、配合物中のバインダーの急激な熱分解による爆裂を防止するため300℃/1hr以下とする。そして、一定の温度に達した後、真空雰囲気下その温度条件に30分間保持することで仮焼体が得られる。
【0023】
(4)焼成工程
次に、図3に示すように仮焼体1を粒径30μm以上のα型の炭化ケイ素微粉末2を備える炭素からなる容器3に埋め込む。そして、アルゴン及び窒素混合ガス雰囲気下2000℃以上、好ましくは2200〜2400℃で焼成する。図4に示すように仮焼体1を炭化ケイ素微粉末2に埋め込まずに2000℃以上で焼成すると、仮焼体表面1aで炭化ケイ素(SiC)が分解し、ケイ素(Si)が拡散することで仮焼体表面1aが炭素(C)化する。ところが図3に示すように仮焼体1を炭化ケイ素微粉末2に埋め込むことで、仮焼体表面1aに代わって炭化ケイ素微粉末2が分解されるので仮焼体表面1aの分解を防止できる。埋め焼きに使用する炭化ケイ素微粉末2の粒径が大きいほど焼結時に流すNの比率を多くでき、これにより抵抗値の温度依存性を小さく出来る。同様のことは埋め焼きに使用する炭化ケイ素微粉末2に炭素粉を混合することによっても得られる。これは、埋め焼きに使用する粒径や炭素粉の添加により焼成時のケイ素(Si)成分の雰囲気の制御を行っている。Si成分が希薄な場合は焼成時のN比率を多くでき、Si成分が多い場合はNの比率を低くする必要がある。
【0024】
焼成時のアルゴン(Ar)と窒素(N)の混合比率は、重量基準でAr:N=1:1〜9:1が好ましい。1:1よりN比率が高くなると大粒にはならず、9:1よりもN比率が小さくなると体積抵抗値が高くなりヒータとしては使用しにくくなる。この比率は焼成温度により範囲が変化し、温度が高くなればよりN比率が高い領域で焼成可能となる。焼成温度は2200℃から2400℃が適当であるが2200℃以下では粒成長が遅く、2400℃以上では焼成に使用する真空炉の消耗が激しく実質上使用できない。
【0025】
(実施形態2)
実施形態1の(1)スラリー状の混合粉体を得る工程において、炭化ケイ素微粉末として窒素含有量が0.1体積%以上のβ型炭化ケイ素粉体を用いたことを除いて実施形態1と同様にしてヒータ用炭化ケイ素焼結体を製造する。
【0026】
実施形態2によれば、窒素含有量が0.1体積%以上のβ型炭化ケイ素粉体を焼結して得られるヒータ用炭化ケイ素焼結体であって、上記ヒータ用炭化ケイ素焼結体を構成する粒子間の結合部の直径は100μm以上であり、上記ヒータ用炭化ケイ素焼結体を1000℃で1000時間加熱した後の上記ヒータ用炭化ケイ素焼結体の抵抗増加率は15%以下であり、上記ヒータ用炭化ケイ素焼結体はα型炭化ケイ素からなるヒータ用炭化ケイ素焼結体が得られる。
【0027】
このように、実施形態1、2によれば、高純度で高耐久性のヒータ用炭化ケイ素焼結体が提供される。
【実施例】
【0028】
以下に、本発明の実施例を示すが、本発明はこれら実施例に何ら制限されない:
(実施例1)
窒素を0.32wt%含む粒径2μmと10μmのβ型炭化ケイ素粉を各50重量部と、純水40重量部、バインダー(三井化学 WA320)3重量部、分散剤(中京油脂 D735)0.5重量部をボールミルで混合しスラリーを作製した。
スラリーを石膏型に流し込み乾燥させてグリーン体を得た。
得られたグリーン体を雰囲気炉に入れ1800℃、窒素雰囲気、1atomの条件で1時間仮焼きして仮焼体を得た。
得られた仮焼体を粒径40μmのα型炭化ケイ素粉に埋め雰囲気炉に入れ2200℃、Ar:N(重量比)=9:1、圧力1atomの条件で10時間焼成した。
出来上がった炭化ケイ素ヒータは粒径500から1000μmのα型炭化ケイ素の粒子から構成されていた。粒子の結合部分の直径X1は107μmであった。出来上がったヒータを酸化雰囲気中で発熱させ1000℃で1000時間保持したところ1000時間での抵抗増加率は12%であった。
【0029】
(実施例2〜4)(比較例1〜8)
実験条件を表1に示す内容にしたことを除いて実施例1と同様の実験を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
【表1】

【0030】
実験結果より、1000℃で1000時間保持したときの実施例1〜4の抵抗増加率は低かった。これにより実施例によれば高純度で高耐久性のヒータ用炭化ケイ素焼結体の製造方法が提供されることが示された。実施例3と実施例4の実験結果より、焼成温度が2300℃よりも2400℃のほうが抵抗増加率が低くなることが示された。
一方、比較例1、4からは、アルゴン(Ar)及び窒素(N)混合ガスの混合比が本発明の範囲内であっても、焼成温度が低いと抵抗増加率が高くなることが示された。
比較例2、3、7からは、焼成温度が本発明の範囲内であっても、アルゴン及び窒素混合ガスの混合比が本発明の範囲内にないと、抵抗増加率が高くなることが示された。
比較例5からは、焼成温度や、アルゴン及び窒素混合ガスの混合比が本発明の範囲内にあっても、スラリー用β型炭化ケイ素微粉末窒素含有量(wt%)が低いと、抵抗増加率が高くなることが示された。
比較例6からは、焼成温度や、アルゴン及び窒素混合ガスの混合比が本発明の範囲内にあっても、埋め焼き用α型炭化ケイ素微粉末粒径が小さいと、抵抗増加率が高くなることが示された。
比較例8と実施例2からは、スラリー用炭化ケイ素微粉末としては、β型炭化ケイ素微粉末のほうが良好であることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は本実施形態にかかる炭化ケイ素粒子間の結合部分を表わす概念図を示す。
【図2】図2は従来の炭化ケイ素粒子間の結合部分を表わす概念図を示す。
【図3】図3は本実施形態の焼成工程の概念図を示す。
【図4】図4は従来の焼成工程の概念図を示す。
【符号の説明】
【0032】
1…仮焼体
1a…仮焼体表面
2…炭化ケイ素微粉末
3…容器
4…配置台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素含有量が0.1体積%以上のβ型炭化ケイ素粉体を焼結して得られるヒータ用炭化ケイ素焼結体であって、
前記ヒータ用炭化ケイ素焼結体を構成する粒子間の結合部の直径は100μm以上であり、
前記ヒータ用炭化ケイ素焼結体を1000℃で1000時間加熱した後の前記ヒータ用炭化ケイ素焼結体の抵抗増加率は15%以下であり、
前記ヒータ用炭化ケイ素焼結体はα型炭化ケイ素からなることを特徴とするヒータ用炭化ケイ素焼結体。
【請求項2】
粒径1〜20μmの炭化ケイ素微粉末を含むスラリーを作製する工程と、
前記スラリーを型に流し込み乾燥させてグリーン体を得る工程と、
前記成形体を窒素雰囲気下1800℃以上で仮焼して仮焼体を得る工程と、
前記仮焼体を粒径30μm以上の炭化ケイ素微粉末に埋め込み、アルゴン及び窒素混合ガス雰囲気下2200℃以上の温度で焼成する工程と、
を有することを特徴とするヒータ用炭化ケイ素焼結体の製造方法。
【請求項3】
前記アルゴン(Ar)及び窒素(N)混合ガスの混合比は、焼成雰囲気ガスの全重量基準でAr:N=1:1〜9:1であることを特徴とする請求項2記載のヒータ用炭化ケイ素焼結体の製造方法。
【請求項4】
前記スラリーを作製する工程における前記炭化ケイ素微粉末は、窒素含有量が0.1体積%以上のβ型炭化ケイ素粉体であることを特徴とする請求項2又は3記載のヒータ用炭化ケイ素焼結体の製造方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−277030(P2007−277030A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103477(P2006−103477)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】