説明

ヒートシンク

【課題】鉄道車両、とくに高速鉄道車両において、床下に設置される放熱装置として好適に使用されるヒートシンクを提供する。
【解決手段】薄板材からなり、該薄板材の下端部に突出片をそなえた断面L字形の複数のフィン2を、基板上に突出片が基板に当接するよう並設し、基板と突出片とをろう付け接合してなるヒートシンクであって、突出片が長さ方向に部分的に切除され、突出片5,6,7を残したものとする。
【効果】突出片の下部にろう付けのろうが引かれる度合いが少なくなり、強固な接合部の形成が可能となり、又、接合状態の目視でチェックが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシンク、詳しくは、鉄道車両とくに新幹線などの高速鉄道車両の床下に配置され放熱器として機能するヒートシンクに関する。
【背景技術】
【0002】
高速鉄道車両の床下には、車両用電源装置などの発熱体から発生する熱を放出するために、放熱器が配置されており、基板上に多数の薄板状フィンを並設してなるヒートシンクの使用が試みられている。
【0003】
従来、基板上に、下端部に突出片をそなえた断面L字形の複数の薄板状フィンを、突出片が基板に当接するよう並設し、基板と突出片とをろう付け接合してなる放熱器やヒートシンクは基本的には公知である(特許文献1、特許文献2参照)が、高速鉄道車両の放熱装置として適用する場合にはつぎのような問題がある。
【0004】
例えば、列車走行時に線路の敷石が飛んできて、フィンに高速で衝突することが少なくなく、図5に示すように、基板3上にろう付けにより立設された複数のフィン2をそなえたヒートシンク1は、矢印で示す列車の進行方向に対して図示する向きに設置されるから、とくに突出片4の長さ方向の端部は石が直接当たり易く、この場合、フィンが脱落しないように、強固なろう付け接合が必要となる。
【0005】
従来のように、薄板材の下端部の長さ方向の全体に突出片をそなえた断面L字形の複数のフィンを基板上に並設し、これらのフィンを、基板と突出片とをブレージングシートを介してろう付け接合することにより基板に立設してなるヒートシンクにおいては、突出片の下部にろうが引かれるためフィンの直下に引け巣が生じ易く、また、真空ろう付けによる場合には、溶融したろう材から蒸発したMgの逃げ場がないことに起因してブローホールが生じ易いことが経験されている。
【特許文献1】特開平11−17080号公報
【特許文献2】実開昭61−42850号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
引け巣やブローホールの形成は、フィンと基板との結合を弱め、高速鉄道車両の放熱装置として適用する上で問題となる。発明者らは、薄板材の下端部に突出片をそなえた断面L字形の複数のフィンを基板上に並設、ろう付け接合してなるヒートシンクにおける上記従来の問題点を解消するために、フィンの形状とろう付けによる接合性との関連について試験、検討を行った結果、薄板材からなるフィンの下端部の突出片の長さ方向に切除部を形成することにより接合性が改善されることを見出した。
【0007】
本発明は、上記の知見に基いてさらに検討を加えた結果としてなされたものであり、その目的は、フィンと基板とのろう付け接合部において、引け巣やブローホールの発生が抑制されて強固な接合部の形成が可能となり、鉄道車両、とくに高速鉄道車両において、床下に設置される放熱装置として好適に使用されるヒートシンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための請求項1によるヒートシンクは、薄板材からなり、該薄板材の下端部に突出片をそなえた断面L字形の複数のフィンを、基板上に該突出片が基板に当接するよう並設し、基板と突出片とをろう付け接合してなるヒートシンクであって、突出片が長さ方向に部分的に切除されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2によるヒートシンクは、請求項1において、前記突出片が、突出片の長さ方向の両端部を除く部分において、長さ方向に部分的に切除されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3によるヒートシンクは、請求項1において、前記突出片が、突出片の長さ方向の両端部と中央部を除く部分において、長さ方向に切除されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4によるヒートシンクは、請求項1〜3のいずれかにおいて、前記薄板材の上端部に突出片をそなえていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、突出片が長さ方向に部分的に切除されているから、フィンと基板とのろう付け接合部において、突出片の下部にろうが引かれる度合いが少なくなってフィン直下での引け巣の発生が抑制され、切除された部分が蒸発したMgの逃げ場となるからブローホールの発生も抑制されて強固な接合部の形成が可能となり、鉄道車両、とくに高速鉄道車両において、床下に設置される放熱装置として好適に使用されるヒートシンクが提供される。
【0013】
また、薄板状フィンの下端部の長さ方向の全体に突出片が形成されている場合には、ろう付け接合の状態を目視で観察することが困難であったが、本発明によるヒートシンクにおいては、ろう付け後、突出片のない部分の薄板状フィンと基板とのろう付け部の接合状態および突出片へのろうのまわりなど接合状態を目視で簡単にチェックすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、薄板材からなり、この薄板材の下端部に突出片をそなえた断面L字形の複数のフィンを、基板上に突出片が基板に当接するよう並設し、基板と突出片とをろう付け接合してなるヒートシンクであって、例えば図1に示すように、突出片4(図5参照)が長さ方向に部分的に切除され、突出片5、6、7を残したものとする。
【0015】
フィン2の寸法例としては、厚さtが3mm、高さLが120mmで、突出片5、6、7の突出長さLが10mm、厚さtが2mm、突出片5、6、7の長さL、L、Lはそれぞれ100mm、切除部の長さL、Lはそれぞれ300mm、従ってフィン2の長さは900mmである。
【0016】
本発明に係るフィン2は、図2に示すように、基部を肉厚とし、先端部を肉薄とすることもできる。この場合の寸法例は、基部の厚さtが6mm、先端部の厚さtが3mmである。
【0017】
本発明において、突出片の長さ方向の両端部は、前記のように使用時に線路の敷石が高速で衝突することが少なくなく、強固なろう付け接合が必要であるから、図1〜2に示すように、突出片5,7が存在することが望ましく、両端部の突出片5,7を除く部分において、長さ方向に切除部を形成するのが好ましい。
【0018】
実施形態において、両端部または両端部の一方の突出片5,7の端縁側に切除部を設ける場合には、図4に示すように、端縁からL(=(フィンの厚さ)〜(フィンの厚さの10倍))程度の長さを切除することが望ましい。
【0019】
図1〜2に示すように、突出片を突出片の長さ方向の両端部(突出片5、7)と中央部(突出片6)に設け、残りの部分を切除する形態とした場合には、使用時に石の衝突に耐える強固なろう付け接合が得られるとともに、フィン立設の安定性が得られ、フィン間隔を所定の距離に保持することができる。
【0020】
また、図3に示すように、フィン2を構成する薄板材の上端部に突出片8、9、10を設けた場合には、フィン間隔を一定の距離に保持するのにさらに効果的である。上端部の突出片は使用態様に応じて1個でも複数個でもよく、これらの突出片は、隣接するフィンにろう付けされることもできる。
【0021】
フィン2を構成する薄板材としては、A1050などのアルミニウムまたはアルミニウム合金の薄板材を適用するのが好ましく、フィン2が立設される基板3も、アルミニウムまたはA6061などのアルミニウム合金の板材を使用することが望ましい。フィン2と基板3とろう付け接合は、例えば、両者の間にアルミニウムまたはアルミニウム合金の芯材の両面にAl−Si系ろう材をクラッドしたブレージングシートを介挿し、加熱、ろう付けすることにより行われる。基板3にはヒートパイプを埋め込むこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例を示す斜視図である。
【図2】本発明の他の実施例を示す斜視図である。
【図3】本発明のさらに他の実施例を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施例を示すもので、本発明のヒートシンクの下端部の隅角部を示す拡大斜視図である。
【図5】薄板状フィンを並設してなる鉄道車両用ヒートシンクを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
1 ヒートシンク
2 フィン(薄板材から構成されるフィン)
3 基板
4 突出片
5 突出片
6 突出片
7 突出片
8 突出片
9 突出片
10 突出片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板材からなり、該薄板材の下端部に突出片をそなえた断面L字形の複数のフィンを、基板上に該突出片が基板に当接するよう並設し、基板と突出片とをろう付け接合してなるヒートシンクであって、突出片が長さ方向に部分的に切除されていることを特徴とするヒートシンク。
【請求項2】
前記突出片が、突出片の長さ方向の両端部を除く部分において、長さ方向に部分的に切除されていることを特徴とする請求項1記載のヒートシンク。
【請求項3】
前記突出片が、突出片の長さ方向の両端部と中央部を除く部分において、長さ方向に切除されていることを特徴とする請求項1記載のヒートシンク。
【請求項4】
前記薄板材の上端部に突出片をそなえていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のヒートシンク。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−229001(P2006−229001A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−41582(P2005−41582)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000002277)住友軽金属工業株式会社 (552)
【出願人】(000004732)株式会社日本アルミ (64)
【Fターム(参考)】