説明

ヒートシンク

【課題】半導体デバイスを冷却するためのヒートシンクにおいて、装置の大型化やコストアップを招くことなく、許容温度の異なる半導体デバイスを効率良く動作させつつ効果的に冷却できるような構成を提供する。
【解決手段】上記半導体デバイス2、3は、相対的に許容温度の低い低温デバイス2と該低温デバイスよりも許容温度の高い高温デバイス3とを有している。ヒートシンク1を、上記低温デバイスを冷却するための低温用放熱部11と、上記高温デバイスを冷却するための高温用放熱部12と、上記低温用放熱部と高温用放熱部との間に位置し、それらよりも熱抵抗の大きい接続部13とを備えた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスを冷却するためのヒートシンクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体デバイスを冷却するためにヒートシンクが用いられている。このようなヒートシンクは、例えば特許文献1に開示されるように、半導体デバイスに当接するように設けられていて、該半導体デバイスで発生した熱を外部へ放熱するように構成されている。
【0003】
ところで、現在、半導体デバイスの主材料としては、シリコンが用いられているが、例えば特許文献2に開示されるように、シリコンよりも許容温度が高く、低損失で高速動作が可能なSiCなどのワイドバンドギャップ半導体を半導体デバイスの主材料として用いることが考えられている。
【特許文献1】特開2004−146574号公報
【特許文献2】特開2008−61414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、半導体デバイスの主材料を、現在、一般的に用いられているシリコンから上述のワイドバンドギャップ半導体へ移行する場合、その過渡期には、シリコンを主材料としたものとワイドバンドギャップ半導体を主材料としたものとが混在した状態になることが考えられる。そうすると、シリコンを主材料とする半導体デバイス(以下、シリコンデバイスともいう)と、ワイドバンドギャップ半導体を主材料とする半導体デバイス(以下、ワイドバンドギャップ半導体デバイスともいう)とでは、許容温度が異なるため、各半導体デバイスの温度が許容温度以下になるような冷却構造を採用する必要がある。
【0005】
そのような冷却構造の一つとして、例えば、上記シリコンデバイス及びワイドバンドギャップ半導体デバイスに対して別々にヒートシンクを設けることが考えられるが、この場合には、ヒートシンクの取付ネジなどの部品数が増加するとともに、取付作業の工数が増加するという問題が生じる。
【0006】
これに対し、上記シリコンデバイス及びワイドバンドギャップ半導体デバイスを共通のヒートシンクによって冷却しようとすると、ワイドバンドギャップ半導体デバイスの動作温度がシリコンデバイスの許容温度以下となるように、該ワイドバンドギャップ半導体デバイスの動作を制限するか、上記ワイドバンドギャップ半導体デバイスで発生した熱を十分、放熱できるような大型のヒートシンクを設ける必要がある。したがって、このような構成では、半導体デバイスの性能を十分に発揮できなかったり、装置の大型化やコストアップを招いたりするなどの問題が生じる。
【0007】
本発明は、斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、半導体デバイスを冷却するためのヒートシンクにおいて、装置の大型化やコストアップを招くことなく、許容温度の異なる半導体デバイスを効率良く動作させつつ効果的に冷却できるような構成を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るヒートシンク(1)では、低温デバイス(2)を冷却するための低温用放熱部(11,25)と、高温デバイス(3)を冷却するための高温用放熱部(12,26)と、それらの間に位置し、それらよりも熱抵抗の大きい接続部(13,27)とを備えた構成にすることで、放熱部(11,25,12,26)の一体化を可能にした。
【0009】
具体的には、第1の発明では、半導体デバイス(2,3)を冷却するためのヒートシンクを対象とする。そして、上記半導体デバイス(2,3)は、相対的に許容温度の低い低温デバイス(2)と該低温デバイス(2)よりも許容温度の高い高温デバイス(3)とを有し、上記低温デバイス(2)を冷却するための低温用放熱部(11,25)と、上記高温デバイス(3)を冷却するための高温用放熱部(12,26)と、上記低温用放熱部(11,25)と高温用放熱部(12,26)との間に位置し、それらよりも熱抵抗の大きい接続部(13,14,27)とを備えているものとする。
【0010】
この構成により、許容温度の高い高温デバイス(3)で発生した熱が、高温用放熱部(12,26)から低温用放熱部(11,25)に伝わるのを接続部(13,14,27)によって抑制することができるため、低温デバイス(2)を冷却するための低温用放熱部(11,25)と、高温デバイス(3)を冷却するための高温用放熱部(12,26)とを一体化してヒートシンク(1,1')を構成することが可能になる。
【0011】
したがって、上述の構成によって放熱部(11,25,12,26)を一体化することで、上記低温デバイス(2)及び高温デバイス(3)を冷却するためのヒートシンクをそれぞれ設ける場合に比べて、ヒートシンク(1,1')を電装品箱に取り付けるための取付ネジの本数を低減できるとともに取付作業も軽減することができる。
【0012】
また、上述のように放熱部(11,25,12,26)を一体化することで、電装品箱にヒートシンク(1,1')を嵌め込んで固定する場合には、取付作業が容易になるとともに、該ヒートシンク(1,1')を電装品箱の一部として利用することもできる。
【0013】
上述の構成において、上記低温用放熱部(11)及び高温用放熱部(12)は、それぞれ別部材によって形成されていて、上記接続部(13,14)によって接続されているものとする(第2の発明)。
【0014】
このように、低温デバイス(2)を冷却するための低温用放熱部(11)及び高温デバイス(3)を冷却するための高温用放熱部(12)をそれぞれ別の部材によって形成し、両者を接続部(13,14)によって接続することで、上記第1の発明の構成を容易に実現することができる。すなわち、上述のような構成にすることで、複雑な加工を行うことなく、放熱部(11,12)が一体化されたヒートシンク(1,1')を実現できる。
【0015】
上記接続部(13)は、上記低温用放熱部(11)と高温用放熱部(12)との接続方向に延びる柱状に形成されているのが好ましい(第3の発明)。これにより、低温用放熱部(11)及び高温用放熱部(12)に対する接続部(13)の接触面積を小さくすることができるため、該接続部(13)の熱抵抗をより大きくすることができ、放熱部(11,12)間の伝熱をより確実に抑制することができる。
【0016】
特に、上記接続部(13,14)は、断熱材によって構成されているのが好ましい(第4の発明)。このように、低温デバイス(2)を冷却するための低温用放熱部(11)と高温デバイス(3)を冷却するための高温用放熱部(12)との間に設ける接続部(13,14)を、断熱材によって構成することで、上記高温用放熱部(12)から低温用放熱部(11)への伝熱を確実に抑制することができる。したがって、上記低温デバイス(2)が高温デバイス(3)で発生した熱の影響を受けるのを確実に防止することができ、これにより、該低温デバイス(2)の許容温度で上記高温デバイス(3)の動作が制限されるのを防止することができる。
【0017】
一方、上記低温用放熱部(25)、高温用放熱部(26)及び接続部(27)は、一体形成されていて、上記接続部(27)には、上記低温用放熱部(25)と高温用放熱部(26)との間の伝熱面積を減少させる断面積減少部(28)が設けられていてもよい(第5の発明)。
【0018】
このように、低温用放熱部(25)、高温用放熱部(26)及び接続部(27)を一体形成し、該接続部(27)に伝熱面積を減少させる断面積減少部(28)を設けることによっても、上記第1の発明の構成を実現することができる。しかも、上述のような構成にすることで、複数の部材によってヒートシンク(20)を組み立てる作業が不要になり、ヒートシンク製造時の作業の軽減を図れる。
【0019】
具体的には、上記低温用放熱部(25)及び高温用放熱部(26)は、1枚のベース板(21)上にそれぞれフィン部(22,23)を立設することにより構成され、上記接続部(27)の断面積減少部(28)は、上記ベース板(21)に穴部(21a)が形成されてなるものとする(第6の発明)。これにより、上記第5の発明の構成を実現することができる。
【0020】
また、上記低温デバイス(2)は、シリコンを主材料として構成されていて、上記高温デバイス(3)は、ワイドバンドギャップ半導体を主材料として構成されているものとする(第7の発明)。このような構成でも、上記第1から第6の発明のような構成にすることで、該第1から第6の各発明の作用が得られる。
【0021】
特に、上記ワイドバンドギャップ半導体は、SiC、GaNまたはダイヤモンドのいずれかであるのが好ましい(第8の発明)。これにより、低損失で高速動作可能な半導体デバイスを実現することができる。そして、このような半導体デバイスを用いる場合でも、上記第1から第6の発明のような構成にすることで、該第1から第6の各発明の作用が得られる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るヒートシンク(1)によれば、低温デバイス(2)を冷却するための低温用放熱部(11,25)と、高温デバイス(3)を冷却するための高温用放熱部(12,26)と、両者間に位置し、それらよりも熱抵抗の大きい接続部(13,14,27)とを備えているため、放熱部(11,25,12,26)を一体化することができ、装置の大型化やコストアップを招くことなく、各半導体デバイス(2,3)を効率良く動作させつつ該各半導体デバイス(2,3)を効果的に冷却することができる。
【0023】
また、第2の発明によれば、上記低温用放熱部(11)及び高温用放熱部(12)は、それぞれ別部材によって形成されていて、両者は接続部(13,14)によって接続されているため、上記第1の発明の構成を容易に実現することができ、該第1の発明の効果を容易に得ることができる。
【0024】
また、第3の発明によれば、上記接続部(13)は、上記放熱部(11,12)の接続方向に延びるように柱状に形成されているため、該放熱部(11,12)間の伝熱をより確実に抑制することができ、各半導体デバイス(2,3)をより確実に効率良く動作させることができる。
【0025】
また、第4の発明によれば、上記接続部(13,14)は、断熱材によって構成されているため、上記低温用放熱部(11)と高温用放熱部(12)との間の伝熱をさらに確実に抑制することができ、各半導体デバイス(2,3)をさらに確実に効率良く動作させることが可能となる。
【0026】
また、第5の発明によれば、上記低温用放熱部(25)、高温用放熱部(26)及び接続部(27)は一体形成されていて、上記接続部(27)には、両者間の伝熱面積を減少させるような断面積減少部(28)が設けられているため、ヒートシンクの組立作業が不要になって、ヒートシンク製造時の作業の軽減を図れる。第6の発明のように、一枚のベース板(21)上にそれぞれフィン部(22,23)を立設することで上記放熱部(25,26)を構成し、上記ベース板(21)に穴部(21a)を形成することで上記断面積減少部(28)を構成することにより、上記第5の発明の構成を容易に実現することができる。
【0027】
また、第7の発明によれば、上記低温デバイス(2)はシリコンを主材料としていて、上記高温デバイス(3)はワイドバンドギャップ半導体を主材料としている場合でも、上記第1から第6の各発明のような構成にすることで、該各発明の効果が得られる。
【0028】
特に、第8の発明によれば、上記ワイドバンドギャップ半導体は、SiC、GaN、ダイヤモンドのいずれかであるため、低損失で高速動作可能な高温デバイス(3)を実現でき、この構成においても、上記第1から第6の各発明のような構成にすることで、該各発明の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0030】
《実施形態1》
図1に、本発明の実施形態1に係るヒートシンク(1)の概略構成を示す。このヒートシンク(1)は、例えば空気調和装置の冷媒回路に設けられた圧縮機などに対して電力を供給するための電力変換装置の半導体デバイス(2,3)を冷却するためのものであり、図示しない電装品箱に取付固定されている。
【0031】
なお、この実施形態では、上記電力変換装置を構成する半導体デバイス(2,3)として、許容温度の低い半導体デバイス(2)(低温デバイス)及び許容温度の高い半導体デバイス(3)(高温デバイス)を用いている。ここで、本実施形態では、許容温度の低い半導体デバイス(2)は、シリコンを主材料とするものであり、許容温度の高い半導体デバイス(3)は、SiCやGaN、ダイヤモンドなどによって構成されるワイドバンドギャップ半導体を主材料とするものである。
【0032】
上記ヒートシンク(1)は、許容温度の異なる半導体デバイス(2,3)をそれぞれ冷却するための放熱部(11,12)(低温用放熱部、高温用放熱部)とそれらの間に設けられた接続部(13)とを備えている。上記放熱部(11,12)は、それぞれ、板状のベース部(11a,12a)と、該ベース部(11a,12a)上に立設された複数のフィン部(11b,12b)とを備えている。この放熱部(11,12)は、ベース部(11a,12a)が上記半導体デバイス(2,3)に当接するように配設されている。これにより、上記半導体デバイス(2,3)で発生した熱が上記ベース部(11a,12a)を介してフィン部(11b,12b)に伝わって、該フィン部(11b,12b)から外部へ放熱される。
【0033】
上記接続部(13)は、例えば樹脂材料などの断熱材からなる柱状の部材(図1の例では円柱状)であり、上記放熱部(11,12)のベース部(11a,12a)同士を接続するように配設されている。すなわち、上記接続部(13)は、上記放熱部(11,12)のベース部(11a,12a)同士を接続する方向(接続方向)に延びるように柱状に形成されていて、該放熱部(11,12)は、それらのベース部(11a,12a)同士が上記接続部(13)を介して接続されている。これにより、上記放熱部(11,12)と接続部(13)との接触面積が小さくなって、該接続部(13)の熱抵抗を大きくすることができる。したがって、上記接続部(13)を介して放熱部(11,12)間で熱が伝わるのを抑制することができる。しかも、上記接続部(13)は、断熱材からなるため、放熱部(11,12)間の伝熱がより確実に抑制される。
【0034】
特に図示しないが、上記接続部(13)と放熱部(11,12)との接続は、互いに嵌合させることによって実現してもよいし、ボルトの締結によって実現してもよい。すなわち、嵌合構造の場合には、上記放熱部(11,12)のベース部(11a,12a)の側面に、略円柱状の接続部(13)の端部が嵌合可能な穴部を形成して、該ベース部(11a,12a)の穴部内に接続部(13)の両端部を嵌合させることにより、上記放熱部(11,12)及び接続部(13)の接続を実現することができる。一方、ボルト締め構造の場合には、上記接続部(13)を円筒状に形成するとともに、一方の放熱部(11)のベース部(11a)には貫通穴を形成し、他方の放熱部(12)にはねじ穴を形成して、該一方の放熱部(11)及び接続部(13)をボルトによって貫通させて他方の放熱部(12)のねじ穴に螺合させることにより、上記放熱部(11,12)同士の間に接続部(13)を挟み込んだ状態でボルトによって締結固定することができる。また、上記以外のボルト締め構造として、上記接続部(13)の両端にねじ穴を形成するとともに、放熱部(11,12)のベース部(11a,12a)に貫通穴を形成して、該放熱部(11,12)の貫通穴にそれぞれボルトを挿通させた状態で上記接続部(13)のねじ穴に螺合させることにより、締結固定する構造であってもよい。なお上述のような接続構造に限らず、上記放熱部(11,12)と接続部(13)とを接着剤によって接着固定することにより、該放熱部(11,12)と接続部(13)とを接続するようにしてもよい。
【0035】
−実施形態1の効果−
以上の構成により、許容温度の異なる半導体デバイス(2,3)を冷却するための放熱部(11,12)を接続部(13)を介して接続することで、放熱部(11,12)を一体化させたヒートシンク(1)が得られるので、該ヒートシンク(1)を電装品箱に取り付ける際のネジの本数を低減できるとともに、取付作業も軽減することができる。特に、電装品箱にヒートシンク(1)を嵌め込んで固定する場合には、取付作業が容易になるとともに、該ヒートシンク(1)を電装品箱の一部として利用することもできる。
【0036】
しかも、上述のように、許容温度の異なる半導体デバイス(2,3)に対応した放熱部(11,12)を一体化することで、許容温度の高い半導体デバイス(3)も十分冷却できるような大型のヒートシンクを設ける場合に比べてヒートシンク全体のサイズを小さくすることができ、装置全体の小型化及びコスト低減を図れる。
【0037】
また、上述のように、上記ヒートシンク(1)の放熱部(11,12)間に断熱材からなる接続部(13)を設けることで、該放熱部(11,12)間で熱が伝わるのを抑制することができるので、許容温度の低い半導体デバイス(2)に合わせて、許容温度の高い半導体デバイス(3)の動作を制限する必要がなくなる。したがって、各半導体デバイス(2,3)の効率の良い動作が可能になる。
【0038】
また、放熱部(11,12)及び接続部(13)をそれぞれ別部材によって構成し、それらを組み立てて一体化させることにより、上記放熱部(11,12)や接続部(13)の加工が容易になり、一体化したヒートシンク(1)を容易に得ることができる。
【0039】
−実施形態1の変形例−
この変形例に係るヒートシンク(1')は、図2に示すように、接続部(14)が柱状ではなく、放熱部(11,12)のベース部(11b,12b)と同等の厚み及び幅を有する直方体状である点で上記実施形態1とは異なる。なお、上記実施形態1の構成と異なる部分についてのみ以下で説明し、同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
具体的には、上記接続部(14)は、断熱材からなる直方体状の部材であり、放熱部(11,12)の板状のベース部(11b,12b)と同等の厚み及び幅を有するように形成されている。なお、上記接続部(14)は、接着剤によって上記放熱部(11,12)に固定されてもよいし、上記実施形態1のように、接続部(14)及び一方の放熱部(11)の内部に貫通穴を形成するとともに、他方の放熱部(11)にねじ穴を形成し、ボルトを該接続部(14)及び一方の放熱部(11)に挿通させた状態で他方の放熱部(12)に螺合させてもよい。また、放熱部(11,12)の内部に貫通穴を形成するとともに、上記接続部(14)にねじ穴を形成して、該放熱部(11,12)の貫通穴にそれぞれボルトを挿通させた状態で上記接続部(14)のねじ穴に螺合させてもよい。
【0041】
以上の構成により、上記放熱部(11,12)間を、断熱材からなる接続部(14)によってより確実に断熱することができ、許容温度の低い半導体デバイス(2)が、許容温度の高い半導体デバイス(3)で発生した熱の影響を受けるのをより確実に防止することができる。
【0042】
《実施形態2》
図3に本発明の実施形態2に係るヒートシンク(20)を示す。このヒートシンク(20)は、許容温度の異なる半導体デバイス(2,3)を冷却するための放熱部(25,26)が一体形成されている点でのみ上記実施形態1と異なる。そのため、上記実施形態1と同一の部分には同一の符号を付して、異なる部分について以下で説明する。
【0043】
具体的には、上記ヒートシンク(20)は、平面視で長方形状の平板からなるベース板(21)と、該ベース板(21)上の長手方向両端部の2箇所に立設された複数のフィン部(22,23)とを備えている。詳しくは、上記ベース板(21)の長手方向中央部分には、平面視で矩形状の穴部(21a)が該ベース板(21)の幅方向に延びるように形成されていて、該ベース板(21)上には、上記穴部(21a)を挟んで上記複数のフィン部(22,23)がベース板(21)の長手方向に沿って延びるように立設されている。すなわち、上記穴部(21a)は、上記ベース板(21)のフィン部(22)とフィン部(23)との間に、該ベース板(21)の幅方向両端部を残すように形成されている。
【0044】
これにより、上記ベース板(21)の穴部(21a)よりも長手方向一方側と、その上に立設されたフィン部(22)とによって、許容温度の低い半導体デバイス(2)を冷却するための放熱部(25)(低温用放熱部)が構成される。また、上記ベース板(21)の穴部(21a)よりも長手方向他方側と、その上に立設されたフィン部(23)とによって、許容温度の高い半導体デバイス(3)を冷却するための放熱部(26)(高温用放熱部)が構成される。そして、上記ベース板(21)のフィン部(22)とフィン部(23)との間に接続部(27)が構成され、該ベース板(21)の穴部(21a)が形成されている部分によって断面積減少部(28)が構成される。
【0045】
−実施形態2の効果−
以上より、この実施形態によれば、許容温度の異なる半導体デバイス(2,3)を冷却するための放熱部(25,26)や接続部(27)を一体形成することにより、該放熱部や接続部を別部材で形成した場合のように複数の部材を組み立てる必要がなくなり、その分、ヒートシンク(10)の製造時の作業を軽減することができる。
【0046】
しかも、放熱部(25,26)同士の間は、ベース板(21)に形成された穴部(21a)によって、伝熱面積が小さくなっているため、該放熱部(25,26)の間で熱が伝わるのを抑制することができる。したがって、許容温度の低い半導体デバイス(2)に、許容温度の高い半導体デバイス(3)で発生した熱が伝わるのを抑制することができ、該許容温度の高い半導体デバイス(3)の発熱を抑えるために動作を制限する必要がなくなる。よって、許容温度の異なる半導体デバイス(2,3)を効率良く動作させつつ効果的に冷却することが可能となる。
【0047】
また、上述のように、ベース板(21)に形成した穴部(21a)によって、放熱部(25,26)の間の伝熱を抑制する接続部(27)の断面積減少部(28)を構成することにより、上記実施形態1の場合のような断熱材からなる接続部(13)を設ける必要がなくなり、その分、コスト低減を図れる。
【0048】
さらに、上記穴部(21a)は、ベース板(21)の幅方向両端部分を残すように形成されているため、該ベース板(21)の接続部分は半導体デバイス(2,3)から比較的、離れており、許容温度の高い半導体デバイス(3)で発生した熱が、該半導体デバイス(3)を冷却するための放熱部(26)から許容温度の低い半導体デバイス(2)を冷却するための放熱部(25)に伝わるのを極力、防止することができる。
【0049】
《その他の実施形態》
本発明は、上記各実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0050】
上記各実施形態では、ヒートシンク(1)が、許容温度の低い半導体デバイス(2)及び許容温度の高い半導体デバイス(3)に対応する2つの放熱部(11,12)を備えた構成としているが、この限りではなく、3つ以上の半導体デバイスを冷却可能なように3つ以上の放熱部を備えていてもよい。
【0051】
また、上記実施形態1では、接続部(13,14)を断熱材によって構成しているが、この限りではなく、放熱部(11,12)よりも熱抵抗が大きければ、どのような材料であってもよい。
【0052】
また、上記実施形態2では、ベース板(21)に穴部(21a)を形成して、接続部(27)の断面積減少部(28)を構成するようにしているが、この限りではなく、放熱部(25,26)同士の間の伝熱面積を低減できるような構成であれば、どのような構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上説明したように、本発明のヒートシンクは、許容温度の異なる半導体デバイスを冷却する冷却構造に特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、本発明の実施形態1に係るヒートシンクの概略構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、実施形態1の変形例に係るヒートシンクの図1相当図である。
【図3】図3は、実施形態2に係るヒートシンクの図1相当図である。
【符号の説明】
【0055】
1,1',20 ヒートシンク
2 半導体デバイス(低温デバイス)
3 半導体デバイス(高温デバイス)
11,25 放熱部(低温用放熱部)
11a ベース部
11b,22 フィン部
12,26 放熱部(高温用放熱部)
12a ベース部
12b,23 フィン部
13,14,27 接続部
21 ベース板
21a 穴部
28 断面積減少部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイス(2,3)を冷却するためのヒートシンクであって、
上記半導体デバイス(2,3)は、相対的に許容温度の低い低温デバイス(2)と該低温デバイス(2)よりも許容温度の高い高温デバイス(3)とを有し、
上記低温デバイス(2)を冷却するための低温用放熱部(11,25)と、
上記高温デバイス(3)を冷却するための高温用放熱部(12,26)と、
上記低温用放熱部(11,25)と高温用放熱部(12,26)との間に位置し、それらよりも熱抵抗の大きい接続部(13,14,27)とを備えていることを特徴とするヒートシンク。
【請求項2】
請求項1において、
上記低温用放熱部(11)及び高温用放熱部(12)は、それぞれ別部材によって形成されていて、上記接続部(13,14)によって接続されていることを特徴とするヒートシンク。
【請求項3】
請求項2において、
上記接続部(13)は、上記低温用放熱部(11)と高温用放熱部(12)との接続方向に延びる柱状に形成されていることを特徴とするヒートシンク。
【請求項4】
請求項2または3において、
上記接続部(13,14)は、断熱材によって構成されていることを特徴とするヒートシンク。
【請求項5】
請求項1において、
上記低温用放熱部(25)、高温用放熱部(26)及び接続部(27)は、一体形成されていて、
上記接続部(27)には、上記低温用放熱部(25)と高温用放熱部(26)との間の伝熱面積を減少させる断面積減少部(28)が設けられていることを特徴とするヒートシンク。
【請求項6】
請求項5において、
上記低温用放熱部(25)及び高温用放熱部(26)は、1枚のベース板(21)上にそれぞれフィン部(22,23)を立設することにより構成され、
上記接続部(27)の断面積減少部(28)は、上記ベース板(21)に穴部(21a)が形成されてなることを特徴とするヒートシンク。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一つにおいて、
上記低温デバイス(2)は、シリコンを主材料として構成されていて、
上記高温デバイス(3)は、ワイドバンドギャップ半導体を主材料として構成されていることを特徴とするヒートシンク。
【請求項8】
請求項7において、
上記ワイドバンドギャップ半導体は、SiC、GaNまたはダイヤモンドのいずれかであることを特徴とするヒートシンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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