ヒートシンク
【課題】水冷ジャケットの着脱作業性を低下させることなく、冷却効率の向上を図る。
【解決手段】ヒートシンクAは、冷却水の水路17を有する水冷ジャケット10と、CPU51(発熱部材)の近傍に設けられ、水冷ジャケット10の着脱を可能としたベース部材30と、CPUから受けた熱を水路17内の冷却水に伝達するための熱伝達経路49を構成する受熱板35(受熱部)と、受熱板35をCPU51に当接した状態に保持する保持手段45とを備えている。
【解決手段】ヒートシンクAは、冷却水の水路17を有する水冷ジャケット10と、CPU51(発熱部材)の近傍に設けられ、水冷ジャケット10の着脱を可能としたベース部材30と、CPUから受けた熱を水路17内の冷却水に伝達するための熱伝達経路49を構成する受熱板35(受熱部)と、受熱板35をCPU51に当接した状態に保持する保持手段45とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水冷タイプのヒートシンクが開示されている。このヒートシンクは、ガイドレールに案内されることにより、並列配置された複数の電子機器の隙間に挿入するように設けられており、ガイドレールに沿って電子機器の間から抜き取ることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−53348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のヒートシンクは、ヒートシンクを着脱する際の摺動抵抗に起因する作業性低下を回避するために、ヒートシンクと電子機器との間に隙間が空くようになっているのであるが、このような隙間が空くと、電子機器からヒートシンクへの熱伝達効率が悪いという問題がある。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、水冷ジャケットの着脱作業性を低下させずに、冷却効率の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、冷却水の水路を有する水冷ジャケットと、発熱部材の近傍に設けられ、前記水冷ジャケットの着脱を可能としたベース部材と、発熱部材から受けた熱を前記水路内の冷却水に伝達するための熱伝達経路を構成する受熱部と、前記受熱部を発熱部材に当接した状態に保持する保持手段とを備えているところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記保持手段は、前記受熱部を発熱部材に当接する方向へ付勢する当接バネを備えて構成されているところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のものにおいて、前記受熱部が前記ベース部材に設けられ、前記ベース部材は、前記水冷ジャケットに係止して前記水冷ジャケットを装着状態に保持する係止状態と、前記水冷ジャケットに対する係止を解除する解除状態との間で変位可能な係止部材と、前記係止部材を係止方向へ付勢するとともに、前記係止部材を介して前記水冷ジャケットを前記受熱部に当接する方向へ付勢する兼用バネとを備えているところに特徴を有する。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のものにおいて、空冷用のフィンを備えているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
<請求項1の発明>
水冷ジャケットをベース部材に取り付け、保持手段によって受熱部を発熱部材に当接させると、発熱部材から発せられた熱は、直接、受熱部に伝達され、熱伝達経路を通って水冷ジャケット内の冷却水に伝達される。受熱部を発熱部材に直接、接触させたので、受熱部と発熱部材との間に隙間が介在する場合に比べると、冷却効率が良い。
【0010】
<請求項2の発明>
受熱部を当接バネによって発熱部材に当接する方向へ付勢しているので、各部材の熱膨張や寸法公差を吸収して、受熱部を発熱部材に確実に当接させることができる。
【0011】
<請求項3の発明>
兼用バネは、係止部材を係止方向へ付勢して水冷ジャケットを装着状態に保持する機能と、水冷ジャケットを受熱部に当接させて冷却効率を高める機能とを兼ね備えているので、両機能を別々のバネで発揮させる場合に比べると、部品点数が少なくてすむ。
【0012】
<請求項4の発明>
空冷用のフィンを備えているので、万一、冷却水による冷却機能に支障が生じても、冷却機能の大幅な低下を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態1のヒートシンクを回路基板に取り付けた状態をあらわす断面図
【図2】ヒートシンクの断面図
【図3】ベース部材の一部切欠平面図
【図4】ベース部材の一部切欠底面図
【図5】水冷ジャケットの平面図
【図6】伝熱板を外した状態の水冷ジャケットの底面図
【図7】水冷ジャケットの断面図
【図8】実施形態2のヒートシンクを回路基板に取り付けた状態をあらわす断面図
【図9】ヒートシンクの断面図
【図10】ベース部材の平面図
【図11】水冷ジャケットの平面図
【図12】受熱板の平面図
【図13】ベース部材に水冷ジャケットを係止した状態をあらわす断面図
【図14】ベース部材に対する水冷ジャケットの係止を解除した状態をあらわす断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1〜図7を参照して説明する。本実施形態1のヒートシンクAは、水平に配置した回路基板50に取り付けられ、回路基板50の上面に実装したCPU51(本発明の構成要件である発熱部材)を冷却するためのものである。CPU51の上面は、回路基板50と平行な放熱面52となっており、ヒートシンクAは、この放熱面52の熱を奪って冷却を行う。
【0015】
ヒートシンクAは、内部に冷却水の水路17を有する水冷ジャケット10と、CPU51の近傍に設けられ、水冷ジャケット10の着脱を可能としたベース部材30と、CPU51から受けた熱を水路17内の冷却水に伝達するための熱伝達経路49を構成する受熱板35(本発明の構成要件である受熱部)と、受熱板35をCPU51に当接した状態に保持する保持手段45とを備えている。
【0016】
水冷ジャケット10は、熱伝導率の高い金属材料からなるジャケット本体11と、熱伝導率の高い金属材料からなり、ジャケット本体11に対しその下面全体を覆うように固定された伝熱板16(本発明の構成要件である熱伝達経路49)とを備えている。ジャケット本体11の後端縁部は、肉厚の基部12となっており、ジャケット本体11のうち基部12よりも前方の広い領域は、肉薄のカード状をなす吸熱部13となっている。
【0017】
基部12の内部には、基部12の後面に開口する左右一対の接続孔14が形成され、各接続孔14には、軸線を前後方向(回路基板50及び放熱面52と略平行な方向)に向けたプラグ15が液密状に取り付けられている。一対のプラグ15には、冷却水を循環させるための冷却水循環装置(図示省略)から延ばしたホース(図示省略)が接続されるようになっている。
【0018】
吸熱部13内には、ジャケット本体11の下面を溝状に切欠することによって九十九折り状に屈曲した形態であって、伝熱板16で液密状に閉塞された1本の水路17が形成されている。水路17の両端は、連通孔18を介して一対の接続孔14に連通している。一方のプラグ15から流入した冷却水は、一方の接続孔14、一方の連通孔18、水路17、他方の連通孔18、他方の接続孔14を順に通り、他方のプラグ15から水冷ジャケット10外へ流出する。伝熱板16は水路17に直接臨んでいるので、冷却水は、伝熱板16の上面に接触しながら水路17を通過する。水路17を通過する間に、冷却水は、伝熱板16から熱を奪う。
【0019】
ジャケット本体11には、吸熱部13の後端部上面を浅く凹ませた形態の係止凹部19が形成されている。基部12には、前後方向に相対変位可能な操作部材20が貫通して設けられている。操作部材20の前端部には、略L字形に屈曲した板状をなす解除部材21が固定され、解除部材21の前端部が係止凹部19内に収容されている。解除部材21は、通常は、退避バネ22の付勢により係止凹部19の後端部へ退避した状態に保持されている。
【0020】
ベース部材30は、ハウジング31と、ハウジング31を回路基板50に対し上下方向(回路基板50の板面と略直角な方向)へ変位し得るように取り付けるための4組の保持手段45とを備えている。ハウジング31は、熱伝導率の高い金属材料からなり回路基板50と略平行をなす方形のフレーム32と、フレーム32の中央に形成した方形の貫通形態の取付孔33を上から覆い隠すようにフレーム32に取り付けたカバー34と、熱伝導率の高い金属材料からなり取付孔33を下面側から塞ぐようにフレーム32に取り付けた受熱板35とから構成される。受熱板35の下面は、フレーム32の下面よりも下方へ突出している。
【0021】
フレーム32の上面側には、カバー34と受熱板35とで囲まれて、後面側のみにおいて横長のスリット状に開口する収容空間36が形成されている。収容空間36の下面壁は、受熱板35で構成され、受熱板35の上面が収容空間36内に臨んでいる。収容空間36内の後端部には、前後方向へのスライドが可能な押圧部材37が収容されている。押圧部材37は、戻しバネ38により後方へ付勢されている。
【0022】
収容空間36の内部には、前端部の揺動軸39を支点として上下方向への揺動を可能に支持された板状をなす係止部材40が収容されている。係止部材40の後端縁よりも少し前方の位置には、下方へ突出する係止突起41が形成されている。係止部材40には、係止突起41の下端縁から係止部材40の前端縁に向かって斜め上後方へ延びた傾斜面42が形成されている。傾斜面42は、前後方向(ベース部材30に対する水冷ジャケット10の着脱方向)及び上下方向(係止部材40の揺動方向)の両方向に対して傾斜している。係止部材40の揺動範囲は、係止部材40の前端縁部がカバー34の天井面に当たる最上端位置(解除状態)と、ストッパピン43に当接する最下端位置(係止状態)との間となっている。係止部材40は、通常は、係止部材40の上面とカバー34の天井面との間に設けた兼用バネ44により、最下端位置に保持されている。
【0023】
保持手段45は、フレーム32の四隅を下向きに貫通するビス46と、フレーム32の下方においてビスに螺合された筒状のスペーサ47と、フレーム32の上面とビスの頭部との間に装着された圧縮コイルバネからなる当接バネ48とから構成される。ベース部材30を回路基板50から外した状態では、フレーム32が、当接バネ48の付勢によりスペーサ47の上端面に押し付けられた状態に保持されている。
【0024】
ヒートシンクAを回路基板50に取り付ける際には、CPU51を上から覆うようにベース部材30を配置し、ビス46を回路基板50の所定位置にねじ込んで、スペーサ47の下端を回路基板50の上面に当接させる。ここで、スペーサ47の高さは、回路基板50の上面を基準とするCPU51の放熱面52(上面)の高さよりも低く、しかも、受熱板35はフレーム32の下面よりも下方へ突出している。したがって、受熱板35の下面がCPU51の放熱面52に当接し、フレーム32は、当接バネ48を弾性変形させた状態でスペーサ47の上面よりも上方に配置される。この当接バネ48の弾性復元力により、受熱板35の下面が、放熱面52に対し弾性的に押圧された状態で面接触する。
【0025】
ベース部材30を回路基板50に取り付けた状態で、水冷ジャケット10のカード状をなす吸熱部13を収容空間36内に挿入する。挿入過程では、吸熱部13の前端縁が、兼用バネ44の付勢に抗して係止部材40の前端部を押し上げるので、係止部材40は解除状態へ変位する。また、挿入過程の終期では、吸熱部13の前端縁が押圧部材37を戻しバネ38の付勢に抗して前方(収容空間36の奥方)へ押し動かす。
【0026】
そして、水冷ジャケット10が正規の挿入状態に至ると、係止部材40が下方の係止状態へ弾性復帰して係止突起41が係止凹部19の前端内壁に係止し、この係止作用により、水冷ジャケット10がベース部材30に対して後方への抜けを規制された状態にロックされる。このとき、兼用バネ44は、係止凹部19に対する係止突起41の係止代を増す方向へ付勢している。また、戻しバネ38は、係止突起41を係止凹部19の前端内壁に押し付けて両者の摩擦抵抗を増す方向へ付勢する。水冷ジャケット10が正しくベース部材30に取りつけられた状態では、係止突起41が、兼用バネ44の付勢により吸熱部13を下方へ弾性的に押圧するので、伝熱板16の下面が受熱板35の上面に対して弾性的に面接触した状態に保持される。
【0027】
このように水冷ジャケット10をベース部材30に取り付けた状態では、CPU51で発生した熱は、受熱板35と伝熱板16を介して水路17内の冷却水に伝達される。この間、熱を奪った冷却水が水冷ジャケット10外へ流出するとともに、低温の冷却水が水冷ジャケット10内に流入するので、CPU51が効果的に冷却される。
【0028】
回路基板50のメンテナンスや交換等のために、CPU51の冷却を一時的に中断する際には、水冷ジャケット10をベース部材30から外す。このとき、操作部材20を後方へ押し込むと、解除部材21が係止部材40の傾斜面42を押して、係止部材40を押し上げるので、係止突起41と係止凹部19との係止状態が解除される。これに伴い、水冷ジャケット10が、戻しバネ38の付勢により後方へ押されるので、収容空間36外へ排出される。この後は、基部12を掴んで、水冷ジャケット10を収容空間36外へ引き抜けばよい。
【0029】
本実施形態1のヒートシンクAは、水冷ジャケット10をベース部材30に取り付け、保持手段45によって受熱板35をCPU51に当接させると、CPU51から発せられた熱は、直接、受熱板35に伝達され、熱伝達経路49(受熱板35と伝熱板16)を通って水冷ジャケット10内の冷却水に伝達される。受熱板35をCPU51に直接、接触させたので、受熱板35とCPU51との間に隙間(空気)が介在する場合に比べると、冷却効率が良い。このように、本実施形態によれば、水冷ジャケット10の着脱作業性を低下させずに、冷却効率の向上を図ることができる。
【0030】
また、保持手段45は、受熱板35をCPU51に当接する方向へ付勢する当接バネ48を備えて構成されているので、各部材の熱膨張や寸法公差を吸収して、受熱板35をCPU51に確実に当接させることができる。
【0031】
また、受熱板35がベース部材30に設けられ、ベース部材30は、水冷ジャケット10に係止して水冷ジャケット10を装着状態に保持する係止状態と、水冷ジャケット10に対する係止を解除する解除状態との間で変位可能な係止部材40と、係止部材40を係止方向へ付勢するとともに、係止部材40を介して水冷ジャケット10を受熱板35に当接する方向へ付勢する兼用バネ44とを備えている。兼用バネ44は、係止部材40を係止方向へ付勢して水冷ジャケット10を装着状態に保持する機能と、水冷ジャケット10を受熱板35に当接させて冷却効率を高める機能とを兼ね備えているので、両機能を別々のバネで発揮させる場合に比べると、部品点数が少なくて済む。
【0032】
<実施形態2>
次に、本発明を具体化した実施形態2を図8〜図14を参照して説明する。本実施形態2のヒートシンクBは、水平に配置した回路基板50に取り付けられ、回路基板50の上面に実装したCPU51(本発明の構成要件である発熱部材)を冷却するためのものである。CPU51の上面は、回路基板50と平行な放熱面52となっており、ヒートシンクBは、この放熱面52の熱を奪って冷却を行う。
【0033】
ヒートシンクBは、内部に冷却水の水路67を有す水冷ジャケット60と、CPU51の近傍に設けられ、水冷ジャケット60の着脱を可能としたベース部材80と、CPU51から受けた熱を水路67内の冷却水に伝達するための熱伝達経路79を構成する受熱板65(本発明の構成要件である受熱部)と、受熱板65をCPU51に当接した状態に保持する保持手段70とを備えている。
【0034】
水冷ジャケット60は、熱伝導率の高い金属材料からなるジャケット本体61と、熱伝導率の高い金属材料からなり、ジャケット本体61に対しその下面のほぼ全体を覆うように固定された略方形の受熱板65とを備えている。ジャケット本体61には、その上面に開口する左右一対の接続孔62が形成され、各接続孔62には、軸線を上下方向(回路基板50及び放熱面52と略直角な方向)に向けたプラグ63が液密状に取り付けられている。一対のプラグ63には、冷却水を循環させるための冷却水循環装置(図示省略)から延ばしたホース(図示省略)が接続されるようになっている。
【0035】
ジャケット本体61には、その下面を略方形に浅く凹ませた形態の収容凹部64が形成されている。上記一対の接続孔62は、収容凹部64の天井面における左右両端部に連通している。この収容凹部64は、受熱板65によって液密状に閉塞されている。受熱板65の上面には、左右方向に細長い板状に突出した形態の複数のリブ66が、前後方向に一定ピッチで形成されており、この複数のリブ66が収容凹部64内に収容されている。左右方向におけるリブ66の形成範囲は、収容凹部64の左右両端部を除いた領域であり、リブ66の上端縁が収容凹部64の天井面に対して当接又は、接近して対向している。このリブ66により、受熱板65で閉塞された収容凹部64内には、左右方向(一対のプラグ63を結ぶ方向)に貫通して前後方向に並列配置された複数の貫通流路68から構成される水路67が形成されている。
【0036】
一方のプラグ63から流入した冷却水は、一方の接続孔62、複数の貫通流路68、他方の接続孔62を順に通り、他方のプラグ63から水冷ジャケット60外へ流出する。受熱板65の上面は、水路67に直接臨んでいるので、冷却水は、受熱板65の上面に接触しながら水路67を通過する。そして、水路67を通過する間に、冷却水は受熱板65から熱を奪う。また、水冷ジャケット60には、ジャケット本体61の上面から突出する複数の板片から構成される空冷用のフィン69が形成されている。このフィン69の形成領域は、水路67の形成両隊と概ね対向している。
【0037】
保持手段70について説明する。水冷ジャケット60の左右両端部には、一対の支持部71が形成されている。支持部71の下面は受熱板65の下面よりも上方に位置する。支持部71には前後一対のビスからなる連結部材72が貫通され、連結部材72の下端部には係止板73が固定され、連結部材72の上端部には押さえ板74が固定されている。また、支持部71内には、軸線を上下方向に向けた圧縮コイルバネからなる当接バネ75が収容され、当接バネ75の上端が押さえ板74の下面に当接している。この当接バネ75の付勢により、水冷ジャケット60は、支持部71を係止板73の上面に当接させた状態に保持される。
【0038】
ベース部材80は、中央に方形の取付孔82が貫通形成されたフレーム81と、フレーム81の左右両側縁部に設けた一対の収容部83とを備える。一対の収容部83は、互いに対向する内向きの側面と上面とに開口されており、収容部83内には、係止部材84が、左右方向へのスライドを可能に収容されている。係止部材84には、収容部83の内向きの側面の開口から突出する係止突起85と、収容部83の上面の開口から突出する操作部86とを有する。係止部材84は、係止バネ87により、係止突起85を内向きに突出させる方向へ付勢されている。
【0039】
ヒートシンクBを回路基板50に取り付ける際には、取付孔82がCPU51と対応するようにベース部材80を配置し、ビス(図示省略)によりフレーム81(ベース部材80)を回路基板50に固定する。この後、上から取付孔82内に落とし込むようにして水冷ジャケット60をベース部材80に組み付ける。組付けの途中で、係止板73が係止部材84に当接するので、それ以降は、押さえ板74を上から押すことにより、係止バネ87の付勢に抗して係止部材84を側方へ退避させながら、水冷ジャケット60の組付けを進める。
【0040】
水冷ジャケット60が正規の組付け状態になると、係止板73が、係止突起85に係止して上方への変位を規制される。また、組み付けの終期で受熱板65の下面がCPU51の上面(放熱面52)に当接するので、水冷ジャケット60は、当接バネ75の付勢に抗して係止板73に対して上昇する。そして、当接バネ75の付勢により、受熱板65の下面がCPU51の放熱面52に対して弾性的に面接触した状態に保持される。
【0041】
水冷ジャケット60をベース部材80に取り付けた状態では、CPU51で発生した熱が、受熱板65を介して水路67内の冷却水に伝達される。そして、熱を奪った冷却水が水冷ジャケット60外へ流出するとともに、低温の冷却水が水冷ジャケット60内に流入するので、CPU51が効果的に冷却される。
【0042】
回路基板50のメンテナンスや交換等のために、CPU51の冷却を一時的に中断する際には、水冷ジャケット60をベース部材80から外す。このとき、操作部86に指を掛け、係止バネ87の付勢に抗して、係止突起85が係止板73から外れる方向へ係止部材84をスライドさせる。係止突起85が係止板73から外れると、当接バネ75の付勢により、係止板73と押さえ板74が水冷ジャケット60に対して相対的に上方へ変位する。この後は、水冷ジャケット60を持ち上げればよい。
【0043】
本実施形態2のヒートシンクBは、水冷ジャケット60をベース部材80に取り付け、保持手段70によって受熱板65をCPU51に当接させると、CPU51から発せられた熱は、熱伝達経路79を構成する受熱板65に、直接伝達され、水冷ジャケット60内の冷却水に伝達される。受熱板65をCPU51に直接、接触させたので、受熱板65とCPU51との間に隙間が介在する場合に比べると、冷却効率が良い。このように、本実施形態によれば、水冷ジャケット60の着脱作業性を低下させずに、冷却効率の向上を図ることができる。
【0044】
また、保持手段70は、受熱板65をCPU51に当接する方向へ付勢する当接バネ75を備えて構成されているので、各部材の熱膨張や寸法公差を吸収して、受熱板65をCPU51に確実に当接させることができる。また、空冷用のフィン69を備えているので、万一、冷却水による冷却機能に支障が生じても、冷却機能の大幅な低下を回避できる。
【0045】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態1では、受熱部をベース部材のみに設けたが、受熱部をベース部材と水冷ジャケットの両方に設けてもよい。
(2)上記実施形態2では、受熱部を水冷ジャケットのみに設けたが、受熱部を水冷ジャケットとベース部材の両方に設けてもよい。
(3)上記実施形態1では、兼用バネが、係止部材を係止方向へ付勢して水冷ジャケットを装着状態に保持する機能と、水冷ジャケットを受熱部に当接させて冷却効率を高める機能とを兼ね備えるようにしたが、この両機能を別々のバネで発揮させてもよい。
(4)上記実施形態1では、ホースが接続されるプラグの軸線を、水冷ジャケットの着脱方向と略平行に向けたが、プラグの軸線は、水冷ジャケットの着脱方向と交差する方向に向けてもよい。この場合、プラグの軸線は、受熱部の板面と平行な方向と、受熱部の板面と交差する方向のいずれでもよい。
(5)上記実施形態2では、ホースが接続されるプラグの軸線を、水冷ジャケットの着脱方向と略平行に向けたが、プラグの軸線は、水冷ジャケットの着脱方向と交差する方向に向けてもよい。
(6)上記実施形態1,2では、2つの接続部の軸線を平行にしたが、2つの接続部の軸線は互いに異なる向きであってもよい。
(7)上記実施形態1において、ベース部材又は水冷ジャケットに空冷用のフィンを設けてもよい。
(8)上記実施形態2において、水冷ジャケットに空冷用のフィンを設けない形態としてもよく、水冷ジャケットとベース部材の両方に空冷用のフィンを設ける構成としてもよい。
(9)上記実施形態1の水路の形態は実施形態2にも適用することができ、実施形態2の水路の形態は実施形態1にも適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
A…ヒートシンク
10…水冷ジャケット
16…伝熱板(熱伝達経路)
17…水路
30…ベース部材
35…受熱板(受熱部)
40…係止部材
45…保持手段
44…兼用バネ
48…当接バネ
49…熱伝達経路
B…ヒートシンク
60…水冷ジャケット
65…受熱板(受熱部)
67…水路
69…フィン
70…保持手段
75…当接バネ
79…熱伝達経路
80…ベース部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水冷タイプのヒートシンクが開示されている。このヒートシンクは、ガイドレールに案内されることにより、並列配置された複数の電子機器の隙間に挿入するように設けられており、ガイドレールに沿って電子機器の間から抜き取ることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−53348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のヒートシンクは、ヒートシンクを着脱する際の摺動抵抗に起因する作業性低下を回避するために、ヒートシンクと電子機器との間に隙間が空くようになっているのであるが、このような隙間が空くと、電子機器からヒートシンクへの熱伝達効率が悪いという問題がある。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、水冷ジャケットの着脱作業性を低下させずに、冷却効率の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、冷却水の水路を有する水冷ジャケットと、発熱部材の近傍に設けられ、前記水冷ジャケットの着脱を可能としたベース部材と、発熱部材から受けた熱を前記水路内の冷却水に伝達するための熱伝達経路を構成する受熱部と、前記受熱部を発熱部材に当接した状態に保持する保持手段とを備えているところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記保持手段は、前記受熱部を発熱部材に当接する方向へ付勢する当接バネを備えて構成されているところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のものにおいて、前記受熱部が前記ベース部材に設けられ、前記ベース部材は、前記水冷ジャケットに係止して前記水冷ジャケットを装着状態に保持する係止状態と、前記水冷ジャケットに対する係止を解除する解除状態との間で変位可能な係止部材と、前記係止部材を係止方向へ付勢するとともに、前記係止部材を介して前記水冷ジャケットを前記受熱部に当接する方向へ付勢する兼用バネとを備えているところに特徴を有する。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のものにおいて、空冷用のフィンを備えているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
<請求項1の発明>
水冷ジャケットをベース部材に取り付け、保持手段によって受熱部を発熱部材に当接させると、発熱部材から発せられた熱は、直接、受熱部に伝達され、熱伝達経路を通って水冷ジャケット内の冷却水に伝達される。受熱部を発熱部材に直接、接触させたので、受熱部と発熱部材との間に隙間が介在する場合に比べると、冷却効率が良い。
【0010】
<請求項2の発明>
受熱部を当接バネによって発熱部材に当接する方向へ付勢しているので、各部材の熱膨張や寸法公差を吸収して、受熱部を発熱部材に確実に当接させることができる。
【0011】
<請求項3の発明>
兼用バネは、係止部材を係止方向へ付勢して水冷ジャケットを装着状態に保持する機能と、水冷ジャケットを受熱部に当接させて冷却効率を高める機能とを兼ね備えているので、両機能を別々のバネで発揮させる場合に比べると、部品点数が少なくてすむ。
【0012】
<請求項4の発明>
空冷用のフィンを備えているので、万一、冷却水による冷却機能に支障が生じても、冷却機能の大幅な低下を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態1のヒートシンクを回路基板に取り付けた状態をあらわす断面図
【図2】ヒートシンクの断面図
【図3】ベース部材の一部切欠平面図
【図4】ベース部材の一部切欠底面図
【図5】水冷ジャケットの平面図
【図6】伝熱板を外した状態の水冷ジャケットの底面図
【図7】水冷ジャケットの断面図
【図8】実施形態2のヒートシンクを回路基板に取り付けた状態をあらわす断面図
【図9】ヒートシンクの断面図
【図10】ベース部材の平面図
【図11】水冷ジャケットの平面図
【図12】受熱板の平面図
【図13】ベース部材に水冷ジャケットを係止した状態をあらわす断面図
【図14】ベース部材に対する水冷ジャケットの係止を解除した状態をあらわす断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1〜図7を参照して説明する。本実施形態1のヒートシンクAは、水平に配置した回路基板50に取り付けられ、回路基板50の上面に実装したCPU51(本発明の構成要件である発熱部材)を冷却するためのものである。CPU51の上面は、回路基板50と平行な放熱面52となっており、ヒートシンクAは、この放熱面52の熱を奪って冷却を行う。
【0015】
ヒートシンクAは、内部に冷却水の水路17を有する水冷ジャケット10と、CPU51の近傍に設けられ、水冷ジャケット10の着脱を可能としたベース部材30と、CPU51から受けた熱を水路17内の冷却水に伝達するための熱伝達経路49を構成する受熱板35(本発明の構成要件である受熱部)と、受熱板35をCPU51に当接した状態に保持する保持手段45とを備えている。
【0016】
水冷ジャケット10は、熱伝導率の高い金属材料からなるジャケット本体11と、熱伝導率の高い金属材料からなり、ジャケット本体11に対しその下面全体を覆うように固定された伝熱板16(本発明の構成要件である熱伝達経路49)とを備えている。ジャケット本体11の後端縁部は、肉厚の基部12となっており、ジャケット本体11のうち基部12よりも前方の広い領域は、肉薄のカード状をなす吸熱部13となっている。
【0017】
基部12の内部には、基部12の後面に開口する左右一対の接続孔14が形成され、各接続孔14には、軸線を前後方向(回路基板50及び放熱面52と略平行な方向)に向けたプラグ15が液密状に取り付けられている。一対のプラグ15には、冷却水を循環させるための冷却水循環装置(図示省略)から延ばしたホース(図示省略)が接続されるようになっている。
【0018】
吸熱部13内には、ジャケット本体11の下面を溝状に切欠することによって九十九折り状に屈曲した形態であって、伝熱板16で液密状に閉塞された1本の水路17が形成されている。水路17の両端は、連通孔18を介して一対の接続孔14に連通している。一方のプラグ15から流入した冷却水は、一方の接続孔14、一方の連通孔18、水路17、他方の連通孔18、他方の接続孔14を順に通り、他方のプラグ15から水冷ジャケット10外へ流出する。伝熱板16は水路17に直接臨んでいるので、冷却水は、伝熱板16の上面に接触しながら水路17を通過する。水路17を通過する間に、冷却水は、伝熱板16から熱を奪う。
【0019】
ジャケット本体11には、吸熱部13の後端部上面を浅く凹ませた形態の係止凹部19が形成されている。基部12には、前後方向に相対変位可能な操作部材20が貫通して設けられている。操作部材20の前端部には、略L字形に屈曲した板状をなす解除部材21が固定され、解除部材21の前端部が係止凹部19内に収容されている。解除部材21は、通常は、退避バネ22の付勢により係止凹部19の後端部へ退避した状態に保持されている。
【0020】
ベース部材30は、ハウジング31と、ハウジング31を回路基板50に対し上下方向(回路基板50の板面と略直角な方向)へ変位し得るように取り付けるための4組の保持手段45とを備えている。ハウジング31は、熱伝導率の高い金属材料からなり回路基板50と略平行をなす方形のフレーム32と、フレーム32の中央に形成した方形の貫通形態の取付孔33を上から覆い隠すようにフレーム32に取り付けたカバー34と、熱伝導率の高い金属材料からなり取付孔33を下面側から塞ぐようにフレーム32に取り付けた受熱板35とから構成される。受熱板35の下面は、フレーム32の下面よりも下方へ突出している。
【0021】
フレーム32の上面側には、カバー34と受熱板35とで囲まれて、後面側のみにおいて横長のスリット状に開口する収容空間36が形成されている。収容空間36の下面壁は、受熱板35で構成され、受熱板35の上面が収容空間36内に臨んでいる。収容空間36内の後端部には、前後方向へのスライドが可能な押圧部材37が収容されている。押圧部材37は、戻しバネ38により後方へ付勢されている。
【0022】
収容空間36の内部には、前端部の揺動軸39を支点として上下方向への揺動を可能に支持された板状をなす係止部材40が収容されている。係止部材40の後端縁よりも少し前方の位置には、下方へ突出する係止突起41が形成されている。係止部材40には、係止突起41の下端縁から係止部材40の前端縁に向かって斜め上後方へ延びた傾斜面42が形成されている。傾斜面42は、前後方向(ベース部材30に対する水冷ジャケット10の着脱方向)及び上下方向(係止部材40の揺動方向)の両方向に対して傾斜している。係止部材40の揺動範囲は、係止部材40の前端縁部がカバー34の天井面に当たる最上端位置(解除状態)と、ストッパピン43に当接する最下端位置(係止状態)との間となっている。係止部材40は、通常は、係止部材40の上面とカバー34の天井面との間に設けた兼用バネ44により、最下端位置に保持されている。
【0023】
保持手段45は、フレーム32の四隅を下向きに貫通するビス46と、フレーム32の下方においてビスに螺合された筒状のスペーサ47と、フレーム32の上面とビスの頭部との間に装着された圧縮コイルバネからなる当接バネ48とから構成される。ベース部材30を回路基板50から外した状態では、フレーム32が、当接バネ48の付勢によりスペーサ47の上端面に押し付けられた状態に保持されている。
【0024】
ヒートシンクAを回路基板50に取り付ける際には、CPU51を上から覆うようにベース部材30を配置し、ビス46を回路基板50の所定位置にねじ込んで、スペーサ47の下端を回路基板50の上面に当接させる。ここで、スペーサ47の高さは、回路基板50の上面を基準とするCPU51の放熱面52(上面)の高さよりも低く、しかも、受熱板35はフレーム32の下面よりも下方へ突出している。したがって、受熱板35の下面がCPU51の放熱面52に当接し、フレーム32は、当接バネ48を弾性変形させた状態でスペーサ47の上面よりも上方に配置される。この当接バネ48の弾性復元力により、受熱板35の下面が、放熱面52に対し弾性的に押圧された状態で面接触する。
【0025】
ベース部材30を回路基板50に取り付けた状態で、水冷ジャケット10のカード状をなす吸熱部13を収容空間36内に挿入する。挿入過程では、吸熱部13の前端縁が、兼用バネ44の付勢に抗して係止部材40の前端部を押し上げるので、係止部材40は解除状態へ変位する。また、挿入過程の終期では、吸熱部13の前端縁が押圧部材37を戻しバネ38の付勢に抗して前方(収容空間36の奥方)へ押し動かす。
【0026】
そして、水冷ジャケット10が正規の挿入状態に至ると、係止部材40が下方の係止状態へ弾性復帰して係止突起41が係止凹部19の前端内壁に係止し、この係止作用により、水冷ジャケット10がベース部材30に対して後方への抜けを規制された状態にロックされる。このとき、兼用バネ44は、係止凹部19に対する係止突起41の係止代を増す方向へ付勢している。また、戻しバネ38は、係止突起41を係止凹部19の前端内壁に押し付けて両者の摩擦抵抗を増す方向へ付勢する。水冷ジャケット10が正しくベース部材30に取りつけられた状態では、係止突起41が、兼用バネ44の付勢により吸熱部13を下方へ弾性的に押圧するので、伝熱板16の下面が受熱板35の上面に対して弾性的に面接触した状態に保持される。
【0027】
このように水冷ジャケット10をベース部材30に取り付けた状態では、CPU51で発生した熱は、受熱板35と伝熱板16を介して水路17内の冷却水に伝達される。この間、熱を奪った冷却水が水冷ジャケット10外へ流出するとともに、低温の冷却水が水冷ジャケット10内に流入するので、CPU51が効果的に冷却される。
【0028】
回路基板50のメンテナンスや交換等のために、CPU51の冷却を一時的に中断する際には、水冷ジャケット10をベース部材30から外す。このとき、操作部材20を後方へ押し込むと、解除部材21が係止部材40の傾斜面42を押して、係止部材40を押し上げるので、係止突起41と係止凹部19との係止状態が解除される。これに伴い、水冷ジャケット10が、戻しバネ38の付勢により後方へ押されるので、収容空間36外へ排出される。この後は、基部12を掴んで、水冷ジャケット10を収容空間36外へ引き抜けばよい。
【0029】
本実施形態1のヒートシンクAは、水冷ジャケット10をベース部材30に取り付け、保持手段45によって受熱板35をCPU51に当接させると、CPU51から発せられた熱は、直接、受熱板35に伝達され、熱伝達経路49(受熱板35と伝熱板16)を通って水冷ジャケット10内の冷却水に伝達される。受熱板35をCPU51に直接、接触させたので、受熱板35とCPU51との間に隙間(空気)が介在する場合に比べると、冷却効率が良い。このように、本実施形態によれば、水冷ジャケット10の着脱作業性を低下させずに、冷却効率の向上を図ることができる。
【0030】
また、保持手段45は、受熱板35をCPU51に当接する方向へ付勢する当接バネ48を備えて構成されているので、各部材の熱膨張や寸法公差を吸収して、受熱板35をCPU51に確実に当接させることができる。
【0031】
また、受熱板35がベース部材30に設けられ、ベース部材30は、水冷ジャケット10に係止して水冷ジャケット10を装着状態に保持する係止状態と、水冷ジャケット10に対する係止を解除する解除状態との間で変位可能な係止部材40と、係止部材40を係止方向へ付勢するとともに、係止部材40を介して水冷ジャケット10を受熱板35に当接する方向へ付勢する兼用バネ44とを備えている。兼用バネ44は、係止部材40を係止方向へ付勢して水冷ジャケット10を装着状態に保持する機能と、水冷ジャケット10を受熱板35に当接させて冷却効率を高める機能とを兼ね備えているので、両機能を別々のバネで発揮させる場合に比べると、部品点数が少なくて済む。
【0032】
<実施形態2>
次に、本発明を具体化した実施形態2を図8〜図14を参照して説明する。本実施形態2のヒートシンクBは、水平に配置した回路基板50に取り付けられ、回路基板50の上面に実装したCPU51(本発明の構成要件である発熱部材)を冷却するためのものである。CPU51の上面は、回路基板50と平行な放熱面52となっており、ヒートシンクBは、この放熱面52の熱を奪って冷却を行う。
【0033】
ヒートシンクBは、内部に冷却水の水路67を有す水冷ジャケット60と、CPU51の近傍に設けられ、水冷ジャケット60の着脱を可能としたベース部材80と、CPU51から受けた熱を水路67内の冷却水に伝達するための熱伝達経路79を構成する受熱板65(本発明の構成要件である受熱部)と、受熱板65をCPU51に当接した状態に保持する保持手段70とを備えている。
【0034】
水冷ジャケット60は、熱伝導率の高い金属材料からなるジャケット本体61と、熱伝導率の高い金属材料からなり、ジャケット本体61に対しその下面のほぼ全体を覆うように固定された略方形の受熱板65とを備えている。ジャケット本体61には、その上面に開口する左右一対の接続孔62が形成され、各接続孔62には、軸線を上下方向(回路基板50及び放熱面52と略直角な方向)に向けたプラグ63が液密状に取り付けられている。一対のプラグ63には、冷却水を循環させるための冷却水循環装置(図示省略)から延ばしたホース(図示省略)が接続されるようになっている。
【0035】
ジャケット本体61には、その下面を略方形に浅く凹ませた形態の収容凹部64が形成されている。上記一対の接続孔62は、収容凹部64の天井面における左右両端部に連通している。この収容凹部64は、受熱板65によって液密状に閉塞されている。受熱板65の上面には、左右方向に細長い板状に突出した形態の複数のリブ66が、前後方向に一定ピッチで形成されており、この複数のリブ66が収容凹部64内に収容されている。左右方向におけるリブ66の形成範囲は、収容凹部64の左右両端部を除いた領域であり、リブ66の上端縁が収容凹部64の天井面に対して当接又は、接近して対向している。このリブ66により、受熱板65で閉塞された収容凹部64内には、左右方向(一対のプラグ63を結ぶ方向)に貫通して前後方向に並列配置された複数の貫通流路68から構成される水路67が形成されている。
【0036】
一方のプラグ63から流入した冷却水は、一方の接続孔62、複数の貫通流路68、他方の接続孔62を順に通り、他方のプラグ63から水冷ジャケット60外へ流出する。受熱板65の上面は、水路67に直接臨んでいるので、冷却水は、受熱板65の上面に接触しながら水路67を通過する。そして、水路67を通過する間に、冷却水は受熱板65から熱を奪う。また、水冷ジャケット60には、ジャケット本体61の上面から突出する複数の板片から構成される空冷用のフィン69が形成されている。このフィン69の形成領域は、水路67の形成両隊と概ね対向している。
【0037】
保持手段70について説明する。水冷ジャケット60の左右両端部には、一対の支持部71が形成されている。支持部71の下面は受熱板65の下面よりも上方に位置する。支持部71には前後一対のビスからなる連結部材72が貫通され、連結部材72の下端部には係止板73が固定され、連結部材72の上端部には押さえ板74が固定されている。また、支持部71内には、軸線を上下方向に向けた圧縮コイルバネからなる当接バネ75が収容され、当接バネ75の上端が押さえ板74の下面に当接している。この当接バネ75の付勢により、水冷ジャケット60は、支持部71を係止板73の上面に当接させた状態に保持される。
【0038】
ベース部材80は、中央に方形の取付孔82が貫通形成されたフレーム81と、フレーム81の左右両側縁部に設けた一対の収容部83とを備える。一対の収容部83は、互いに対向する内向きの側面と上面とに開口されており、収容部83内には、係止部材84が、左右方向へのスライドを可能に収容されている。係止部材84には、収容部83の内向きの側面の開口から突出する係止突起85と、収容部83の上面の開口から突出する操作部86とを有する。係止部材84は、係止バネ87により、係止突起85を内向きに突出させる方向へ付勢されている。
【0039】
ヒートシンクBを回路基板50に取り付ける際には、取付孔82がCPU51と対応するようにベース部材80を配置し、ビス(図示省略)によりフレーム81(ベース部材80)を回路基板50に固定する。この後、上から取付孔82内に落とし込むようにして水冷ジャケット60をベース部材80に組み付ける。組付けの途中で、係止板73が係止部材84に当接するので、それ以降は、押さえ板74を上から押すことにより、係止バネ87の付勢に抗して係止部材84を側方へ退避させながら、水冷ジャケット60の組付けを進める。
【0040】
水冷ジャケット60が正規の組付け状態になると、係止板73が、係止突起85に係止して上方への変位を規制される。また、組み付けの終期で受熱板65の下面がCPU51の上面(放熱面52)に当接するので、水冷ジャケット60は、当接バネ75の付勢に抗して係止板73に対して上昇する。そして、当接バネ75の付勢により、受熱板65の下面がCPU51の放熱面52に対して弾性的に面接触した状態に保持される。
【0041】
水冷ジャケット60をベース部材80に取り付けた状態では、CPU51で発生した熱が、受熱板65を介して水路67内の冷却水に伝達される。そして、熱を奪った冷却水が水冷ジャケット60外へ流出するとともに、低温の冷却水が水冷ジャケット60内に流入するので、CPU51が効果的に冷却される。
【0042】
回路基板50のメンテナンスや交換等のために、CPU51の冷却を一時的に中断する際には、水冷ジャケット60をベース部材80から外す。このとき、操作部86に指を掛け、係止バネ87の付勢に抗して、係止突起85が係止板73から外れる方向へ係止部材84をスライドさせる。係止突起85が係止板73から外れると、当接バネ75の付勢により、係止板73と押さえ板74が水冷ジャケット60に対して相対的に上方へ変位する。この後は、水冷ジャケット60を持ち上げればよい。
【0043】
本実施形態2のヒートシンクBは、水冷ジャケット60をベース部材80に取り付け、保持手段70によって受熱板65をCPU51に当接させると、CPU51から発せられた熱は、熱伝達経路79を構成する受熱板65に、直接伝達され、水冷ジャケット60内の冷却水に伝達される。受熱板65をCPU51に直接、接触させたので、受熱板65とCPU51との間に隙間が介在する場合に比べると、冷却効率が良い。このように、本実施形態によれば、水冷ジャケット60の着脱作業性を低下させずに、冷却効率の向上を図ることができる。
【0044】
また、保持手段70は、受熱板65をCPU51に当接する方向へ付勢する当接バネ75を備えて構成されているので、各部材の熱膨張や寸法公差を吸収して、受熱板65をCPU51に確実に当接させることができる。また、空冷用のフィン69を備えているので、万一、冷却水による冷却機能に支障が生じても、冷却機能の大幅な低下を回避できる。
【0045】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態1では、受熱部をベース部材のみに設けたが、受熱部をベース部材と水冷ジャケットの両方に設けてもよい。
(2)上記実施形態2では、受熱部を水冷ジャケットのみに設けたが、受熱部を水冷ジャケットとベース部材の両方に設けてもよい。
(3)上記実施形態1では、兼用バネが、係止部材を係止方向へ付勢して水冷ジャケットを装着状態に保持する機能と、水冷ジャケットを受熱部に当接させて冷却効率を高める機能とを兼ね備えるようにしたが、この両機能を別々のバネで発揮させてもよい。
(4)上記実施形態1では、ホースが接続されるプラグの軸線を、水冷ジャケットの着脱方向と略平行に向けたが、プラグの軸線は、水冷ジャケットの着脱方向と交差する方向に向けてもよい。この場合、プラグの軸線は、受熱部の板面と平行な方向と、受熱部の板面と交差する方向のいずれでもよい。
(5)上記実施形態2では、ホースが接続されるプラグの軸線を、水冷ジャケットの着脱方向と略平行に向けたが、プラグの軸線は、水冷ジャケットの着脱方向と交差する方向に向けてもよい。
(6)上記実施形態1,2では、2つの接続部の軸線を平行にしたが、2つの接続部の軸線は互いに異なる向きであってもよい。
(7)上記実施形態1において、ベース部材又は水冷ジャケットに空冷用のフィンを設けてもよい。
(8)上記実施形態2において、水冷ジャケットに空冷用のフィンを設けない形態としてもよく、水冷ジャケットとベース部材の両方に空冷用のフィンを設ける構成としてもよい。
(9)上記実施形態1の水路の形態は実施形態2にも適用することができ、実施形態2の水路の形態は実施形態1にも適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
A…ヒートシンク
10…水冷ジャケット
16…伝熱板(熱伝達経路)
17…水路
30…ベース部材
35…受熱板(受熱部)
40…係止部材
45…保持手段
44…兼用バネ
48…当接バネ
49…熱伝達経路
B…ヒートシンク
60…水冷ジャケット
65…受熱板(受熱部)
67…水路
69…フィン
70…保持手段
75…当接バネ
79…熱伝達経路
80…ベース部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水の水路を有する水冷ジャケットと、
発熱部材の近傍に設けられ、前記水冷ジャケットの着脱を可能としたベース部材と、
発熱部材から受けた熱を前記水路内の冷却水に伝達するための熱伝達経路を構成する受熱部と、
前記受熱部を発熱部材に当接した状態に保持する保持手段とを備えていることを特徴とするヒートシンク。
【請求項2】
前記保持手段は、前記受熱部を発熱部材に当接する方向へ付勢する当接バネを備えて構成されていることを特徴とする請求項1記載のヒートシンク。
【請求項3】
前記受熱部が前記ベース部材に設けられており、
前記ベース部材は、
前記水冷ジャケットに係止して前記水冷ジャケットを装着状態に保持する係止状態と、前記水冷ジャケットに対する係止を解除する解除状態との間で変位可能な係止部材と、
前記係止部材を係止方向へ付勢するとともに、前記係止部材を介して前記水冷ジャケットを前記受熱部に当接する方向へ付勢する兼用バネとを備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のヒートシンク。
【請求項4】
空冷用のフィンを備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のヒートシンク。
【請求項1】
冷却水の水路を有する水冷ジャケットと、
発熱部材の近傍に設けられ、前記水冷ジャケットの着脱を可能としたベース部材と、
発熱部材から受けた熱を前記水路内の冷却水に伝達するための熱伝達経路を構成する受熱部と、
前記受熱部を発熱部材に当接した状態に保持する保持手段とを備えていることを特徴とするヒートシンク。
【請求項2】
前記保持手段は、前記受熱部を発熱部材に当接する方向へ付勢する当接バネを備えて構成されていることを特徴とする請求項1記載のヒートシンク。
【請求項3】
前記受熱部が前記ベース部材に設けられており、
前記ベース部材は、
前記水冷ジャケットに係止して前記水冷ジャケットを装着状態に保持する係止状態と、前記水冷ジャケットに対する係止を解除する解除状態との間で変位可能な係止部材と、
前記係止部材を係止方向へ付勢するとともに、前記係止部材を介して前記水冷ジャケットを前記受熱部に当接する方向へ付勢する兼用バネとを備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のヒートシンク。
【請求項4】
空冷用のフィンを備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のヒートシンク。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−26307(P2013−26307A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157565(P2011−157565)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(595105032)ナスコフィッティング株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(595105032)ナスコフィッティング株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
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