説明

ヒートシンク

【課題】簡易に製造することができると共に自然空冷による冷却性能の優れたヒートシンクを提供する。
【解決手段】ヒートシンク20は、鉛直に立設されるベースプレート22と、ベースプレート22にVの字に取付けられて、それぞれに複数の切起し25が設けられている2枚の仕切り板24A,24Bと、ベースプレート22とは反対側の仕切り板24A,24Bの端部を架橋するカバー板26と、を備える。これにより、ヒートシンク20の内部で煙突効果が生じ、ヒートシンク20の内部に引き込まれる空気の勢いを大きくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CPU、集積回路、半導体素子等の電子機器を始めとする冷却対象を冷却するのに用いられるヒートシンクに関する。
【背景技術】
【0002】
CPU、集積回路、半導体素子などの電子機器を始めとする各種機器において冷却(放熱)のためにヒートシンクが用いられることがある。近年、例えば電子機器の高密度化などに伴いこれらの機器の発熱量、発熱密度が増大する傾向にあることから、より冷却性能に優れた高性能のヒートシンクが求められるようになってきた。
【0003】
更に、特にこれらの機器が自動車に搭載されて用いられる場合等を中心として、ヒートシンクの軽量化に対する要望も強くなってきた。そのためには、ヒートシンクに冷却ファンなどを用いることなく、自然空冷によって所望の性能を実現し得ることが好ましい。
【0004】
また、近年の各種機器は小型化が進み、そのために、例えば冷却対象であるCPU、集積回路、半導体素子などの電子機器にヒートシンクを装着することができても、冷却ファンなどを装着する空間的な余裕を確保することは困難な場合も少なくない。この観点からも、自然空冷によって所望の性能を実現し得るようなヒートシンクが望まれる。
【0005】
そして、冷却ファンを用いなくても所望の性能を示すようなヒートシンクが実現できるならば、冷却ファンを必要としないために製造コストが低減される点からも好ましいことはいうまでもない。上記したような理由から、自然空冷によっても所望の性能を示すヒートシンクの実現が強く求められている。
【0006】
従来、自然空冷によるヒートシンクとしては、自然対流現象で上昇する空気が衝突するようにフィンを配設することによってフィンでの熱交換率を大きくするものや(例えば特許文献1参照)、上下方向に延在して設けられたフィンに切れ目を設けることによって伝熱境界層(フィンから冷却空気への熱伝達を低下させる空気層)が発達するのを阻止するものが提案されている(例えば特許文献2参照)。また、自然空冷によるヒートシンクとして、鉛直方向に形成される基体とフィンとによって鉛直方向に延びる熱対流空間が形成され、熱対流空間は、フィンが基体に接する側の幅より先端側の幅が広く形成されるものが提案されている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平08―88301号公報
【特許文献2】特開平06―104583号公報
【特許文献3】特開2010―251730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
自然空冷によるヒートシンクでの冷却用流体の移動は、主として、温められた空気によって生じる上昇気流(自然対流)に依る。このため、自然空冷によるヒートシンクの冷却性能を向上させるには、上昇気流を大きくすることが望ましい。また、こうしたヒートシンクでは、簡易に製造できることが望まれる。
【0009】
この発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、簡易に製造することができると共に自然空冷による冷却性能の優れたヒートシンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本願の請求項に係るヒートシンクは、
冷却対象を冷却するのに用いられるヒートシンクであって、
前記冷却対象から発せられる熱によって生じる上昇気流が板面に沿って流れるように立設されるベースプレートと、
鉛直上方の端部に比して鉛直下方の端部が互いに近くなるように水平方向に対向して前記ベースプレートに立設された2枚の板状部材を有し、前記2枚の板状部材のそれぞれには、鉛直下方の端部から鉛直上方の端部に向けて所定間隔ごとに複数の板状のフィンが設けられていると共に前記複数のフィン同士の間に間隙が形成されている放熱ユニットと、
前記ベースプレートとは反対側の前記2枚の板状部材の端部を架橋して設けられるカバー板と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
また、前記複数のフィン及び前記間隙は、前記板状部材の一部が切り起されることにより形成されてもよい。
【0012】
また、前記2枚の板状部材と前記カバー板とは、一枚の板材を折り曲げることにより一体に形成されてもよい。
【0013】
また、前記放熱ユニットは、前記2枚の板状部材が2組以上水平方向に繰り返して設けられてもよい。
【0014】
また、前記2組以上の2枚の板状部材のうち少なくとも一部は、一枚の板材を折り曲げることにより一体に形成され、隣り合う2組の前記2枚の板状部材を連結する前記板材の部分は、前記ベースプレートに取付けられてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のヒートシンクによれば、簡易に製造することができると共に冷却性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態のヒートシンクの構成の一例を示す斜視図である。
【図2】カバー板を取り除いたときのヒートシンクの構成の一例を示す斜視図である。
【図3】シミュレーション計算の条件を説明するための図である。
【図4】シミュレーション計算による空気速度分布図である。
【図5】カバー板を断熱材としたときのシミュレーション計算による空気速度分布図である。
【図6】第2実施形態のヒートシンクの構成の一例を示す斜視図である。
【図7】カバー板を取り除いたときのヒートシンクの構成の一例を示す斜視図である。
【図8】第2実施形態におけるシミュレーション計算による空気速度分布図である。
【図9】第3実施形態のヒートシンクの構成の一例を示す斜視図である。
【図10】第3実施形態の仕切り板やカバー板を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態を詳細に説明する。本発明のヒートシンクは、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金など熱伝導性が良好な材料で形成することが望ましい。ただし、後述するカバー板は、同様に熱伝導性が良好な材料で形成することが望ましいが、主として煙突効果を増進させるために設けられているので、熱伝導性があまり良好でない材料で形成しても構わない。
【0018】
また、本発明のヒートシンクの表面に、熱放射を高める表面処理を施してもよい。自然空冷によるヒートシンクでは、ファンなどによって送風を行うヒートシンクと比べて、対流熱伝達率が小さくなって放射熱伝達率の寄与が相対的に大きくなる傾向があるので、熱放射を高める表面処理を施して放射熱伝達率を高めることは特に有効と考えられる。例えば、ヒートシンクがアルミニウムまたはアルミニウム合金の材料で形成されている場合には、黒色アルマイト処理などのアルマイト処理を表面に施すことが簡便であると共に複雑形状に対しても可能な方法であり好適である。
【0019】
また、高放射率の塗装をヒートシンクに施すことも同様の理由で好適である。ヒートシンクが板材から構成される場合には、予め高放射率となる塗装が施された、いわゆるプレコート材を用いてヒートシンクを製造してもよい。こうすれば、ヒートシンクを簡便に製造することができると共に高い放射率を実現することができる。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態のヒートシンク20を示す斜視図である。本発明の第1実施形態のヒートシンク20は、図示するように、鉛直下方が頂点となるように鉛直に立設された逆三角形状のベースプレート22と、ベースプレート22に対して垂直に立設された2枚の仕切り板24A,24Bと、ベースプレート22とは反対側の仕切り板24A,24Bの端部を架橋するカバー板26と、を備える。
【0021】
ベースプレート22は、鉛直に立設され、一方の板面に図示しない冷却対象が熱的に接続して設けられると共に、他方の板面に2枚の仕切り板24A,24Bが垂直に立設されている。ここで、発熱部品としての機器などの冷却対象は、例えば、ベースプレート22の板面中央に熱的に接続して設けられればよい。なお、ベースプレート22は、鉛直に立設されるものに限定されるものではなく、冷却対象が発生する熱によって生じる上昇気流がその板面に沿って流れることができるように配置されていればよい。具体的には、ベースプレート22の板面と鉛直方向との傾きが+45°から−45°の範囲内であればよく、+30°から−30°の範囲内であれば良好な冷却性能が得られる。さらに+10°から−10°の範囲内であれば特に良好な冷却性能が得られる。また、ベースプレート22は、この実施形態では、鉛直方向の上端の水平方向の端部の幅(三角形の底辺の長さ)Wb=28.3mm、鉛直方向の長さ(三角形の高さ)Hb=67.7mm、板厚=1mmの略二等辺三角形状に形成されている。
【0022】
2枚の仕切り板24A,24Bのそれぞれは、鉛直方向の上端同士の距離Ltに比して鉛直方向の下端同士の距離Lbが小さくなるよう(Lb<Lt)板面と鉛直方向との成す角度が各々10°(+10°及び−10°)に配置され、且つ、ベースプレート22に対して垂直に立設されている(図2参照)。つまり、2枚の仕切り板24A,24Bは、鉛直下方側が互いに突き合わされて鉛直上方側が上方に開くVの字形に配置されている。この実施形態では、2枚の仕切り板24A,24Bの鉛直方向の下端は、互いに2.5mmの間隙を有するようにベースプレート22に溶着されるものとしたが(Lb=2.5mm)、互いに接するように配置されてもよい(Lb=0mm)。また、仕切り板24A,24Bは、その上端および下端が水平となるように形成され、ベースプレート22やカバー板26と溶着する端部は、平行四辺形状であるものとしたが、こうしたものに限定されるものではない。
【0023】
仕切り板24A,24Bのそれぞれは、長さ(ベースプレート22と接する端部の長さ)Lc=68.5mm、幅(ベースプレート22からの高さ)Wc=20mm、板厚=1mmの略直方体状の板状部材で形成されている。また、仕切り板24A,24Bのそれぞれの板面には、コの字型に切り込みが入れられると共にその切り込みが曲げて起された多数の切起し(フィン)25が設けられている。切起し25はそれぞれ、仕切り板24A,24Bの水平方向両端に2mmの部位を残して、長さLa=16mm、幅Wa=4.5mmの略長方形の部位が鉛直方向上端側を端部として外側に切り起して形成されている。また、多数の切起し25は、仕切り板24A,24Bにおける鉛直下端から鉛直上端に向けて、2.7mmずつの間隔を空けて並列的に設けられている。
【0024】
多数の切起し25のそれぞれは、この実施形態では、鉛直方向に対して45°(仕切り板24A,24Bの板面に対して55°)となるように外側に切り起して形成されるものとした。しかし、前記した切起し間隔及びこの切起し角度は、ここに記載した例に限定されるものではなく、ヒートシンクが実際に用いられる個々の具体的な使用環境に応じてそれに最も良く適合するように設計されれば良い。但し、自然空冷という点から言えば、切起し角度を鉛直方向に対して20°〜70°の範囲に選択することが一つの目安になる。また、多数の切起し25のそれぞれは、外側に切り起して形成されるものに限定されるものではなく、例えば、仕切り板24A,24Bの内側に切り起して形成されてもよいし、一方の仕切り板24Aでは外側に切り起して形成されると共に他方の仕切り板24Bでは内側に切り起して形成されてもよい。また、2枚の仕切り板24A,24Bのそれぞれにおいて、切起し25が外側と内側に交互に切り起して形成されてもよい。
【0025】
カバー板26は、ベースプレート22に対向して配置され、ベースプレート22とは反対側の仕切り板24A,24Bの端部を架橋するように仕切り板24A,24Bに接続される。この実施形態では、カバー板26は、ベースプレート22と同じ形状であるものとした。なお、カバー板26は、ベースプレート22が鉛直方向に対して傾斜して立設される場合、ベースプレート22と平行となるように設けられてもよいし、ベースプレート22とは鉛直方向に対する角度の正負が反対となるように設けられてもよい(例えば、ベースプレート22と鉛直方向との角度が10°であり、カバー板26と鉛直方向との角度が−10°であるなど)。これらの場合、仕切り板24A,24Bは、ベース22とカバー板24とに端部がそれぞれ接続されるように平行四辺形状としたり台形状とすればよい。
【0026】
こうした第1実施形態のヒートシンク20の冷却性能が優れていることをシミュレーション計算により確認した。その結果について説明する。比較のために、カバー板26が無いヒートシンク(図2参照)についてのシミュレーション計算を併せて示す。
【0027】
シミュレーション計算は、図3に示すように、ヒートシンク20を開放空間に配置した状態について行なった。シミュレーション計算の条件として、ヒートシンク20はアルミニウム合金で形成されるものとし、周囲環境は大気圧25℃とし、ベースプレート22の裏面中央の幅15mm、長さ(高さ)10mmの範囲に均等に5Wの熱が供給されるものとした。
【0028】
このシミュレーション計算結果では、ベースプレート20の最高温度上昇値ΔTは、比較のカバー板26の無いもの(図2参照)では49.2℃であるのに対して、カバー板26を備えた本発明の第1実施形態のヒートシンク20(図1参照)では41.6℃となり、本発明の第1実施形態の方が冷却性能が優れていることが分った。
【0029】
図4にベースプレートから10mmの位置での鉛直平面(仕切り24A,24Bの中央を通過する鉛直平面)における空気速度分布を示す。図4では、空気速度が大きい場所ほど濃い黒色で示されている。図4に示す空気速度分布から、第1実施形態のヒートシンク20は、カバー板26が無い比較のヒートシンクと比べて中央に大きな上昇気流が生まれており、切起し(フィン)25間を通過する空気の速度も大きいことが分かる。
【0030】
カバー板26を有する第1実施形態のヒートシンク20では、ヒートシンク20の内側は、ベースプレート22と仕切り板24A,24Bとカバー板26とによって四方が囲まれている。このため、冷却対象である機器からの熱で、ベースプレート22の周りの空気が暖められて上昇気流が発生したときに、ヒートシンク20の内側で一種の「煙突効果」が生じ、ヒートシンク20の内側中央に大きな上昇気流が生まれると共に仕切り板24A,24Bの切起し25間を通過する空気の流れも速くなっていると考えられる。このように実施形態のヒートシンク20では、ヒートシンク20の内側や切起し25間を通過する空気の流れが速くなるので、効率よく熱交換が行われて冷却性能が高まる。
【0031】
ここで、図2に示す比較のカバー板26の無いヒートシンクの場合、切起し25間の他に、仕切り板24A,24Bのベースプレート22と反対側の開放空間からもヒートシンク20の内側に空気が自由に出入りでき、空気の流れが比較的自由になる。したがって、ベースプレート22と反対側の開放空間からヒートシンク20の内側に空気が流れ込む分だけ、切起し25間を通過する空気の量が少なくなってヒートシンクの冷却性能が低下する。また、比較のカバー板26の無いヒートシンクでは、仕切り板24A,24Bを迂回してベースプレート22と反対側の開放空間を通り抜ける空気の流れにより、ヒートシンクの内側の空気の流れが不規則な乱流となって煙突効果が十分に生じず、上昇気流が生じにくくなっている。
【0032】
これに対して、第1実施形態のカバー板26を有するヒートシンク20では、カバー板26がベースプレート22と反対側の仕切り板24A,24Bの端部を架橋するように設けられているので、上述した仕切り板24A,24Bを迂回する空気の流れが阻止される。つまり、ヒートシンク20の内側に引き込まれる空気の流入経路は、仕切り板24A,24Bの板面に設けられた多数の切起し25同士の狭い間隙、及び2枚の仕切り板24A,24Bの下端同士の2.5mmの間隙に限られる。このため、これらの間隙を通過する空気の勢いが一段と大きくなる。
【0033】
さらに、カバー板26によってヒートシンク20の内側に流れる空気の流れはより整えられるので、煙突効果がより強くなって切起し25同士の間隙を通過する空気の勢いが一段と大きくなる。したがって、切起し25同士の狭い間隙を大きい速度で空気が通過し、仕切り板24A,24Bと空気との間で効率良く熱交換がされてヒートシンク20の冷却性能が向上する。この結果が、上述した実施形態のヒートシンク20と比較のヒートシンクとのベースプレート22における温度差として表れていると考えられる。
【0034】
次に、ヒートシンク20のカバー板26の材料をアルミニウム合金から熱伝導、熱伝達、熱放射しない断熱材に変えた場合についても、シミュレーション計算を行なった。なお、シミュレーション計算は、カバー板26の材料を断熱材に変えたほかは、諸条件を同一とした。
【0035】
このシミュレーション計算結果では、ベースプレート22の最高温度上昇値ΔTが、比較のカバー板26の無いものでは49.2℃であるのに対して、カバー板26を備えた本発明の第1実施形態のヒートシンク20では44.8℃となり、カバー板26を断熱材に変更しても本発明の第1実施形態の方が冷却性能が優れていることが分った。即ち、カバー板26の熱交換等による効果を除去してもカバー板26が存在することによってヒートシンクの冷却性能は向上しており、「煙突効果」によって冷却性能が向上することが分かった。
【0036】
図5に、このシミュレーション計算結果におけるベースプレートから10mmの位置の鉛直平面(仕切り板24A,24Bの中央を通過する鉛直平面)における空気速度分布を示す。図4及び図5に示すように、カバー板26が断熱材で形成されていても、ヒートシンク20の内側を通過する空気速度分布に大きな変化はない。
【0037】
以上説明したように、第1実施形態のヒートシンク20は、冷却対象である機器から発せられる熱によって生じる上昇気流が板面に沿って流れるように立設されるベースプレート22と、鉛直上方の端部に比して鉛直下方の端部が互いに近くなるように(Lb<Lt)水平方向に対向してベースプレート22に立設され、鉛直下方の端部から鉛直上方の端部に向けて複数の切起し25が設けられている2枚の仕切り板24A,24Bと、ベースプレート22とは反対側の仕切り板24A,24Bの端部を架橋して設けられるカバー板26と、を備えるから、ヒートシンク20内で煙突効果が生じてヒートシンク20の内側を通過する空気の勢いを大きくすることができ、ヒートシンク20の自然空冷による冷却性能を向上することができる。
【0038】
また、複数の切起し25が形成された仕切り板24A,24Bを用いてヒートシンク20を構成することによって、ヒートシンク20を簡易に組立てることができる。また、一枚の金属板にプレス処理を施すことによって複数の切起し25が形成された仕切り板24A,24Bを容易に成形することができる。ただし、上記したヒートシンク20の冷却メカニズムの説明から明らかなように、この発明においては必ずしも複数の切起し25が形成された仕切り板24A,24Bを用いる必要は無い。つまり、2枚の仕切り板のそれぞれに、鉛直下方の端部から鉛直上方の端部に向けて所定間隔ごとに仕切り板の板面に対して傾斜する複数の板状のフィンが設けられていると共にこの複数のフィン同士の間に間隙が形成されていればよく、例えば仕切り板の板面上に多数の板状のフィンが一つずつ独立して立設されていてもよい。
【0039】
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態のヒートシンク120の構成の一例を示す斜視図である。本発明の第2実施形態のヒートシンク120は、第1実施形態のヒートシンク20をベースプレート22の含まれる平面上の水平方向に3つ並べで配置したものである(つまり、第1実施形態の仕切り板24A,24Bも当然に3つ並べて配置されている)。繰り返しの単位の、各部分の寸法は第1実施形態と同じである。
【0040】
第2実施形態のヒートシンク120の冷却性能が優れていることをシミュレーション計算により確認した。その結果について具体的に説明する。比較のために、図7に示すカバー板26が無いヒートシンクについてもシミュレーション計算を行った。
【0041】
シミュレーション計算は、各ベースプレート22の裏面中央の幅15mm、長さ(高さ)10mmの領域に各々1.67W、3つの合計で5Wの熱が伝えられるものとし、その他の諸条件については、第1実施形態で説明したシミュレーション計算と同様のものとした。
【0042】
このシミュレーション計算結果では、ベースプレート22の最高温度上昇値ΔTが、比較のカバー板26の無いものでは21.5℃であるのに対して、本発明の第2実施形態のヒートシンク120では19.7℃となり、本発明の第2実施形態の方が冷却性能が優れていることが分った。
【0043】
図8に、ベースプレート22から10mmの位置の鉛直平面(仕切り板24A,24Bの中央を通過する鉛直平面)における空気速度分布を示す。図8では、図4や図5と同様に、空気速度が大きい場所ほど濃い黒色で示されている。図8に示す速度分布から、第2実施形態のカバー板26を備えたヒートシンク120は、比較のカバー板26の無いものに比べて風速が大きく、強い「煙突効果」が生じていることが分かる。この結果、切起し25間を通過する空気の風速も大きくなっている。なお、このような効果は、仕切り板24A,24Bが連続して水平に3つ並んだものだけでなく、2つでも、また、4つ以上でも、同様に発揮されるものである。
【0044】
上述した第2実施形態のヒートシンク120では、第1実施形態のヒートシンク20が水平方向に繰り返して設けられているため、複数枚のベースプレート22やカバー板26によってヒートシンク120におけるベースプレートやカバー板が構成されているが、第2実施形態のヒートシンク120におけるベースプレートやカバー板は、一枚板で構成されてもよい。
【0045】
また、第2実施形態では仕切り板24A,24Bが水平方向に繰り返して設けられているが、繰り返す方向は鉛直方向や斜め方向であってもよい。
【0046】
(第3実施形態)
図9は、本発明の第3実施形態のヒートシンク220を示す斜視図であり、図10は、ヒートシンク220のうちベースプレート222を取り除いた様子を示す斜視図である。本発明の第3実施形態のヒートシンク220は、第2実施形態と同様に第1実施形態のヒートシンク20(仕切り板24A,24B)をベースプレート22の含まれる平面上の水平方向に3つ並べで配置したものであるが、本第3実施形態では、図10に示すように、仕切り板24A〜カバー板26〜仕切り板24B〜ベース並行板228〜仕切り板24Aの順にそれぞれが一枚の板材227から一体に形成され、隣り合う1組の仕切り板24A,24Bを連結するベース並行板228がベースプレート222に取付けられてヒートシンク220が構成される。
【0047】
第3実施形態のヒートシンク220は、このように、複数組の仕切り板24A,24Bやカバー板26が一体に形成されているため、一枚の金属板をプレス成形し、折り曲げることによって容易に成形することができ、製造上のメリットが大きい。
【0048】
なお、仕切り板24A,24Bをベースプレート222の含まれる平面上の水平方向に並べる回数については、ヒートシンクが横に3つ並んだものだけでなく、2つでも、また、4つ以上でも、構わない。
【0049】
また、仕切り板24A〜カバー板26〜仕切り板24B〜ベース並行板228〜仕切り板24Aの順にそれぞれが一枚の板材227から一体に形成されるものに限定されるものではなく、その一部のみが一枚の板材から一体に形成されるものでもよいし、ベースプレートが仕切り板24A,24Bと一体に形成されてもよい。
【0050】
なお、本発明に係るヒートシンクは、電子機器を始めとする各種機器の発熱体を自然空冷によって冷却するために利用することができる。冷却ファンを用いることなく自然空冷のみによって高い冷却性能を実現し得るので、自動車搭載用など軽量化に対する要望が強い用途への利用には特に好適である。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、様々な変更をなし得ることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0052】
20、120、220 … ヒートシンク
22、222 … ベースプレート
24 … 仕切り板
25 … 切起し
26 … カバー板
227 … 板材
228 … ベース並行板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却対象を冷却するのに用いられるヒートシンクであって、
前記冷却対象から発せられる熱によって生じる上昇気流が板面に沿って流れるように立設されるベースプレートと、
鉛直上方の端部に比して鉛直下方の端部が互いに近くなるように水平方向に対向して前記ベースプレートに立設された2枚の板状部材を有し、前記2枚の板状部材のそれぞれには、鉛直下方の端部から鉛直上方の端部に向けて所定間隔ごとに複数の板状のフィンが設けられていると共に前記複数のフィン同士の間に間隙が形成されている放熱ユニットと、
前記ベースプレートとは反対側の前記2枚の板状部材の端部を架橋して設けられるカバー板と、
を備えることを特徴とするヒートシンク。
【請求項2】
前記複数のフィン及び前記間隙は、前記板状部材の一部が切り起されることにより形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項3】
前記2枚の板状部材と前記カバー板とは、一枚の板材を折り曲げることにより一体に形成される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のヒートシンク。
【請求項4】
前記放熱ユニットは、前記2枚の板状部材が2組以上水平方向に繰り返して設けられる、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のヒートシンク。
【請求項5】
前記2組以上の2枚の板状部材のうち少なくとも一部は、一枚の板材を折り曲げることにより一体に形成され、隣り合う2組の前記2枚の板状部材を連結する前記板材の部分は、前記ベースプレートに取付けられる、
ことを特徴とする請求項4に記載のヒートシンク。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−84661(P2013−84661A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221868(P2011−221868)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000107538)古河スカイ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】