説明

ヒートシーラー

【課題】孔が形成されたフィルム状の被シール物の孔の周囲を効率よくシールすることができるヒートシーラーを提供する。
【解決手段】孔が形成されたフィルム状の被シール物を、孔を通る線で折り曲げた状態で、第1圧接部4と第2圧接部5の間に挟み込み、孔の周囲をヒータ13からの熱で熱溶着させるためのヒートシーラー1であって、ヒータ13は、第1圧接部4と第2圧接部5のいずれか一方に配置され、孔を取り囲むことができるようなU字形に形成されていることを特徴とする。ヒータ13は、断面円形の線状ヒータであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔が形成されたフィルム状の被シール物を、孔を通る線で折り曲げた状態で、第1圧接部と第2圧接部の間に挟み込み、孔の周囲をヒータからの熱で熱溶着させるためのヒートシーラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
第1圧接部と第2圧接部の間に被シール物を挟み込み、ヒータからの熱で被シール物を熱溶着させるヒートシーラーとして、下記特許文献1に開示されるハンディシーラが知られている。被シール物は、通常、袋状に形成されるものであり、袋の内部に内容物を収納した後、開口部がヒートシーラーにより熱溶着される。したがって、シール部の形状は直線状であり、ヒータも直線状に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−132449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、被シール物として、通常の袋の開口部をシールする形態以外の被シール物がある。例えば、図7は、畑の畝の上に被せられるフィルム状のシートW(被シール物)であり、所定間隔ごとに小さな孔Waが形成されている。かかるシートWは、草が生えてこないようにするために被せられるものであり、孔Waから注射器で土壌消毒剤を注入する。土壌消毒剤を注入した後は、効率良く土壌消毒するため、孔Waをふさぐ必要がある。上記の先行技術で開示されるヒートシーラーを用いて、孔Waの周囲をシールすることも可能であるが、孔Waの大きさに比べてシールする領域が広すぎ、無駄なエネルギーを投入することになる。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、孔が形成されたフィルム状の被シール物の孔の周囲を効率よくシールすることができるヒートシーラーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明に係るヒートシーラーは、
孔が形成されたフィルム状の被シール物を、孔を通る線で折り曲げた状態で、第1圧接部と第2圧接部の間に挟み込み、孔の周囲をヒータからの熱で熱溶着させるためのヒートシーラーであって、
前記ヒータは、第1圧接部と第2圧接部のいずれか一方に配置され、孔を取り囲むことができるようなU字形に形成されていることを特徴とするものである。
【0007】
かかる構成によるヒートシーラーの作用・効果を説明する。図7に例示するフィルムシートに形成された孔をシールする場合の手順を説明する。図8(a)に示すように、孔を通る線Lでシートを2つに折り曲げる。折り曲げた状態が図8(b)に示される。折り曲げる領域は、孔の周囲のみでよい。孔の周囲を第1圧接部と第2圧接部の間に挟み込む。挟み込んだ後、ヒータにより熱溶着を行うが、ヒータの形状は孔を取り囲むことができるようにU字形をしている。したがって、熱溶着される部分は、図8(b)にSで示されるように、孔を取り囲むように設定されている。これにより、孔を実質的にふさぐことができる。このように、孔の周囲の必要最小限の領域のみを熱溶着するようにしており、エネルギーの無駄も生じることがなく、短時間でのシール動作が可能になる。その結果、孔が形成されたフィルム状の被シール物の孔の周囲を効率よくシールすることができるヒートシーラーを提供することができる。
【0008】
本発明に係るヒータは、断面円形の線状ヒータであることが好ましい。断面円形の線状ヒータを用いることで、必要な領域のみを効率よく熱溶着させてシールすることができる。また、ヒータの製作も容易に加工することができる。
【0009】
本発明に係るヒータは、前記第1圧接部または第2圧接部の端部よりも内側に配置されており、ヒータと前記端部の間に前記被シール物のつかみ代が形成されていることが好ましい。
【0010】
圧接部の端部にヒータが位置していると、圧接力と加熱により、ヒータが被シール物を溶断してしまう可能性がある。そこで、ヒータの周囲につかみ代を形成すれば、かかる溶断を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るヒートシーラーの構成例を示した平面図である。
【図2】図1のヒートシーラーのA−A断面図である。
【図2A】圧接部の構成を示す拡大側面図
【図2B】ヒータの構成を示す平面図
【図3】ヒートシーラーの断面図であり、図2の状態から操作レバーを引いた状態を示している。
【図4】ヒートシーラーの断面図であり、図3の状態から操作レバーをさらに引いた状態を示している。
【図5】ヒートシーラーの電気的構成の一例を示したブロック図である。
【図6】操作レバーの操作に伴い制御基板が行う制御の一例を示したフローチャートである。
【図7】被シール物の一例を示す図
【図8】被シール物の孔の周囲をシールするときの様子を示す図
【図9】U字形ヒータによる熱溶着の別実施形態を示す図
【図10】ヒータの別実施形態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るヒートシーラーの好適な実施形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るヒートシーラー1の構成例を示した平面図である。図2は、図1のヒートシーラー1のA−A断面図である。図2Aは、圧接部を拡大して示す側面図である。図2Bは、ヒータの拡大平面図を示す。図3は、ヒートシーラー1の断面図であり、図2の状態から操作レバー3を引いた状態を示している。図4は、ヒートシーラー1の断面図であり、図3の状態から操作レバー3をさらに引いた状態を示している。
【0013】
このヒートシーラー1は、シーラー本体2及び操作レバー3を備え、図2に二点鎖線で示すように、シーラー本体2及び操作レバー3を片方の手Hで同時に把持することにより使用することができるようなハンディタイプのヒートシーラーである。
【0014】
シーラー本体2は、細長い形状に形成され、このシーラー本体2の長手方向中央部に、可動部材6及び連結部材7を介して操作レバー3が取り付けられている。可動部材6は、その一端部に形成された支軸6aを中心に、シーラー本体2に対して回動可能に取り付けられており、可動部材6の他端部には、被シール物の一方の面に圧接される第1圧接部4が保持されている。また、シーラー本体2の一端部には、被シール物の他方の面に圧接される第2圧接部5が保持されている。
【0015】
第1圧接部4及び第2圧接部5は、シーラー本体2の長手方向に対して直交方向に延び、互いに平行な状態で取り付けられている。第1圧接部4は、図2Aにも示すように、可動部材6と一体結合された圧接本体部40と、この圧接本体部40の表面に取り付けられる圧接ゴム41により構成される。圧接本体部40は、アルミニウム等の金属製であり、圧接ゴム41は、シリコンゴム等の弾性材料により形成され、その表面が第1圧接部4の被シール物に対する圧接面4aとして機能する。
【0016】
第2圧接部5は圧接本体部50と、被シール物に対する圧接面5aとは反対側の外周面に、側面視でコ字形状の断面を有する保護カバー14が設けられている。圧接本体部50の圧接面5a側の表面は、絶縁シート51、さらにその表面が第1樹脂シート52で覆われている。この第1樹脂シート52の表面にヒータ13が設けられ、さらにその表面が第2樹脂シート53で被覆されている。この第2樹脂シート53の表面が、被シール物に対する圧接面5aとして機能する。第1・第2樹脂シート52,53は、ガラス繊維にフッ素樹脂が含浸された樹脂シートにより形成されている。
【0017】
図2Bに示すように、ヒータ13は平面視でU字形を呈している。ヒータ13は、ピアノ線等の金属製の材料で形成され、断面形状は円形である。例えば、φ0.45mmの線が用いられるが、径の大きさは、目的に応じて適宜変更することができる。ヒータ13の配置は、第2圧接部5の端部5cよりも少し内側に配置されており、つかみ代5bが端部5cとヒータ13の間に形成されている。ヒータ13を加熱することで、被シール物の一例である樹脂製のフィルムを熱溶着するが、溶断しないようにする必要がある。特に、ヒータ13が線材で形成されることから、加熱する際の応力も高くなり、ヒータ13を端部に配置すると、大きな剪断力が作用する可能性がある。そこで、図2Bのように、つかみ代5bを設けることで、ヒータ13の周囲の所定領域を圧接するようにし、大きな剪断力の作用で被シール物が溶断されることを防止することができる。
【0018】
ヒータ13の両端部には、一対の第1端子54が設けられ、ヒータ13を押さえつけて電気的および機械的な接続を行う。また第1端子54と同じ位置に第2端子55を挟み込み、リード線56を接続する。リード線56は、不図示の加熱回路に接続されており、これにより、ヒータ13に対する駆動制御を行うことができる。第1端子54と第2端子55は、ネジにより圧接本体部50に一体結合される。
【0019】
操作レバー3は、ユーザが指で把持しやすいように湾曲形状に形成されており、その一端部に形成された支軸3bにより、可動部材6に対して回動可能に取り付けられている。また、操作レバー3における支軸3bよりも中央寄りの位置には、当該操作レバー3を連結部材7に対して回動可能に連結する支軸3aが形成されている。連結部材7は、一直線状に延びる棒状の部材であり、その一端部において上記支軸3aを介して操作レバー3に回動可能に連結されるとともに、他端部において支軸7aを介してシーラー本体2に回動可能に連結されている。
【0020】
可動部材6における支軸3bと支軸6aの間には、第1付勢部材としての引張ばね9の一端部が取り付けられており、この引張ばね9の他端部がシーラー本体2における支軸6aと支軸7aとの間に取り付けられている。これにより、可動部材6は、引張ばね9の付勢力によって、第1圧接部4を第2圧接部5から離間させる方向へ付勢されている。
【0021】
シーラー本体2における第2圧接部5が取り付けられている端部とは反対側の端部には、ユーザが掌を当接させて把持するための把持部2aが形成されている。この把持部2aは、把持したときの手Hの形に対応する凹部により形成されている。このヒートシーラー1を使用する際には、図2に二点鎖線で示すように、ユーザは、片方の手Hの掌をシーラー本体2の把持部2aに当接させるとともに、親指を把持部2aの外周に当接させ、さらに操作レバー3の把持部3cに他の4本の指の先端部を当接させることにより、当該ヒートシーラー1を把持することができる。
【0022】
この状態で、手Hの握力によって操作レバー3をシーラー本体2側に引き寄せれば、操作レバー3が支軸3aを中心に図2における反時計回りに回転するとともに、連結部材7が支軸7aを中心に図2における時計回りに回転し、引張ばね9の付勢力に抗して、可動部材6が支軸6aを中心に図2における時計回りに回転する。これにより、図3に示すように、可動部材6に取り付けられている第1圧接部4を第2圧接部5に接近する方向へ相対移動させ、これらの第1圧接部4及び第2圧接部5の間に被シール物Wを挟み込むことができる。
【0023】
第2圧接部5は、シーラー本体2に対して矢印Bの方向へ変位可能に取り付けられている。この矢印Bの方向は、第2圧接部5が第1圧接部に対して平行状態を維持したまま近接又は離間する方向である。第2圧接部5には、図1に示すように、上記矢印Bに沿って延びる2つの圧縮ばね8が取り付けられている。これらの圧縮ばね8は、第2圧接部5を矢印Bに沿って第1圧接部4側へ付勢する第2付勢部材である。
【0024】
なお、圧縮ばね8は、第2圧接部5における長手方向中央部に1つ設けてもよいし、第2圧接部5における長手方向両端部に2つ設けられた構成であってもよい。また、圧縮ばね8は、2つに限らず1つであってもよいし、3つ以上であってもよいが、当該ヒートシーラー1の中心線A−Aに対して対称配置されていることが好ましい。
【0025】
圧縮ばね8は、保護カバー14の内面と、圧接本体部50の圧接面5aとは反対側の面の間に配置されている。コの字の保護カバー14を貫通するように、正面視でネジ14aが左右2か所に設けられており、圧接本体部50に形成された長孔50aにネジ14aを貫通させる。このネジ14aと長孔50aが、圧接本体部50が矢印B方向に移動する際のガイド機構として機能する。
【0026】
図3の状態から、手Hの握力によって操作レバー3をさらにシーラー本体2側に引き寄せた場合には、操作レバー3が支軸3aを中心に図3における反時計回りにさらに回転するとともに、連結部材7が支軸7aを中心に図3における時計回りにさらに回転する。このとき、引張ばね9の付勢力に抗して、可動部材6が支軸6aを中心に図3における時計回りにさらに回転するとともに、第1圧接部4の押圧力によって第2圧接部5が押圧され、図4に示すように、圧縮ばね8の付勢力に抗して第2圧接部5が矢印Bの方向に沿って変位される。
【0027】
この状態では、圧縮ばね8の付勢力によって、第1圧接部4及び第2圧接部5の間により大きな押圧力が作用する押圧状態となる。したがって、この状態でヒータ13に通電を行うことにより、第1圧接部4及び第2圧接部5の間に挟み込まれた被シール物Wをヒータ13からの熱で良好に熱溶着させることができる。
【0028】
本実施形態では、操作レバー3に連結されている可動部材6及び連結部材7が、操作レバー3に対する操作力を増大して第1圧接部4及び第2圧接部5の間に押圧力を付与するための倍力機構20を構成している。より具体的には、操作レバー3が支軸3a(第1支点)を中心に回動可能であり、操作レバー3及び可動部材6の連結部である支軸3b(作用点)と支軸3aとの距離が、支軸3aに対して支軸3bとは反対側に延びる把持部3cの長さよりも短く形成されている。
【0029】
このような構成によれば、支軸3aに対して支軸3bまでの距離よりも反対側に長い把持部3cを把持して、操作レバー3を操作することができる。これにより、支軸3aに対して支軸3bまでの距離よりも反対側に離れた位置において、把持部3cに操作力を作用させることができるので、てこの原理により、支軸3bにおいてより大きな作用力を得ることができる。したがって、より小さい操作力で可動部材6を変位させ、第1圧接部4を第2圧接部5に対してより大きな押圧力で押圧することができる。
【0030】
このように、倍力機構20を設けることにより、シーラー本体2及び操作レバー3を片手で同時に把持した状態で、操作レバー3を操作することによって、その操作力を倍力機構20により増大して第1圧接部4及び第2圧接部5の間に押圧力を付与することができる。シーラー本体2及び操作レバー3を片手で把持した状態では、シーラー本体を設置面上に設置した状態で使用するようなヒートシーラーと比べて、操作レバー3に対して大きな操作力を与えることが困難であるが、本実施形態のように、倍力機構20によって操作力を増大することにより、被シール物Wを良好に熱溶着させるのに必要な押圧力を容易に得ることができる。したがって、より小さい操作力で第1圧接部4と第2圧接部5との間に大きな押圧力を作用させることができる。
【0031】
また、本実施形態では、操作レバー3の操作に基づいて、操作レバー3が支軸3a(第1支点)を中心に回動するとともに、当該支軸3aに連結された連結部材7が、シーラー本体2との連結部である支軸7a(第2支点)を中心に回動する。これにより、図2〜図4に示すように、操作レバー3の操作に基づいて支軸3aを変位させることができるので、当該支軸3aの位置により規定される操作レバー3の可動範囲を操作しやすい範囲に設定することができ、操作性がさらに向上する。
【0032】
本実施形態では、操作レバー3を操作していない状態では、図2に示すように、引張ばね9によって可動部材6が第1圧接部4を第2圧接部5から離間させる方向へ付勢される。したがって、この状態で第1圧接部4及び第2圧接部5の間に形成される空間に被シール物Wを配置し、その後に操作レバー3を操作して第1圧接部4及び第2圧接部5の間に被シール物Wを挟み込むことにより、被シール物を容易に熱溶着させることができる。
【0033】
また、図4に示す押圧状態では、支軸3a及び支軸3bを結ぶ直線Cが、引張ばね9が延びる方向に対して平行になることにより、操作レバー3を回動させる方向に付勢力がほとんど作用しなくなる。したがって、押圧状態では、あまり大きな操作力を操作レバー3に作用させずに押圧状態を維持することができるので、より小さい操作力で第1圧接部4と第2圧接部5との間に大きな押圧力を作用させることができる。
【0034】
さらに、図4に示す押圧状態では、圧縮ばね8の付勢力によって第1圧接部4と第2圧接部5との間により大きな押圧力を作用させることができるので、被シール物Wをより良好に熱溶着させることができる。このように圧縮ばね8を設けた場合であっても、押圧状態では、支軸3a及び支軸3bを結ぶ直線Cが、引張ばね9が延びる方向に対して平行になることにより、操作レバー3を回動させる方向に付勢力がほとんど作用しなくなるので、あまり大きな操作力を操作レバー3に作用させずに押圧状態を維持することができる。したがって、より小さい操作力で被シール物Wを良好に熱溶着させることができる。
【0035】
シーラー本体2には、以上の構成の他にも、制御基板10、マイクロスイッチ11、熱電対12及び通電ランプ16などが備えられている。制御基板10には、CPU(Central Processing Unit)を含む制御回路が形成されている。マイクロスイッチ11は、操作レバー3の操作を検出するための操作検出部であり、操作レバー3が操作されて、図4に示す押圧状態となったときに、操作レバー3に形成された突出部3dがマイクロスイッチ11に接触し、検出信号が出力されるようになっている。
【0036】
シーラー本体2におけるマイクロスイッチ11に対向する壁面には、開口部2bが形成されており、図4に示す押圧状態では、操作レバー3の突出部3dが当該開口部2bを介してシーラー本体2内に進入し、マイクロスイッチ11に接触するようになっている。突出部3dの根元部は、ストッパとして機能するようになっており、図4に示す押圧状態で当該突出部3dの根元部が上記開口部2bの周縁部に当接することにより、操作レバー3をシーラー本体2側にそれ以上引き寄せることができないようになっている。
【0037】
タイマー12は、通電時間を計測する機能を有する。本実施形態の場合、マイクロスイッチ11をONしてから所定時間(例えば、0.2秒)ヒータ13に通電するようにしている。所定時間が経過した後、自動的にヒータ13への通電はOFFにされる。なお、通電時間は、被シール物Wの材質等を考慮して適宜決めることができる。なお、タイマーで制御する代わりに次に説明するような熱電対18による制御を行ってもよい。
【0038】
熱電対18は、第2圧接部5におけるヒータ13の近傍に設けられ、ヒータ13からの熱が所定温度に達したことを検出する温度センサを構成している。制御基板10は、この熱電対18による上記所定温度の検出に基づいて、ヒータ13に対する通電状態を制御する通電制御部として機能する。通電ランプ16は、シーラー本体2に設けられ、ヒータ13の通電中に点灯することにより、通電状態をユーザに報知する。
【0039】
<制御ブロック図>
図5は、ヒートシーラー1の電気的構成の一例を示したブロック図である。この図5に示すように、制御基板10には、上述のマイクロスイッチ11、熱電対12、ヒータ13、熱電対18及び通電ランプ16などの電気部品が電気的に接続されており、蓄電装置17から供給される電力が、制御基板10を介して各電気部品に供給されるようになっている。蓄電装置17としては、一次電池や二次電池などの各種蓄電装置を採用することができる。
【0040】
<作動フローチャート>
図6は、操作レバー3の操作に伴い制御基板10が行う制御の一例を示したフローチャートである。ユーザが操作レバー3を操作して、図4に示す押圧状態とすることにより、第1圧接部4及び第2圧接部5の間に被シール物Wが挟み込まれるとともに、操作レバー3に形成されている突出部3dがマイクロスイッチ11に接触すると、マイクロスイッチ11から検出信号が出力され(ステップS101でYes)、この検出信号に基づいてヒータ13に対する通電が開始される(ステップS102)。
【0041】
なお、被シール物Wについては、図7で説明したような、畑の畝に被せられるシートWで説明する。孔Waをシールする場合には、図8(a)のように、孔Waを通る線LでシートWを2つに折り曲げる。折り曲げた状態が図8(b)に示される。折り曲げる領域は、孔Waの周囲のみでよい。孔Waの周囲を第1圧接部4と第2圧接部5の間に挟み込むようにする。
【0042】
上記のマイクロスイッチ11からの検出信号により、ヒータ13からの熱によって、第1圧接部4及び第2圧接部5の間に挟み込まれた被シール物Wが加熱され、熱溶着される。その後、所定時間が経過したことがタイマー12により検出されると(ステップS103でYes)、ヒータ13に対する通電が停止される(ステップS104)。これにより、被シール物Wを熱溶着させるために必要最低限の電力のみを供給し、被シール物Wが必要以上に加熱されて破断するのを防止することができる。また、ヒータ13により熱溶着される形状は図8(b)に符号Sで示される。この形状はヒータ13のU字形状に対応している。
【0043】
上記のようなヒータ13を用いることで、孔Waの周囲を効率よくシールすることができる。線状にシールすることで、必要最小限の領域を熱溶着することができ、投入するエネルギーも最小限に抑制することができる。
【0044】
本実施形態のようなハンディタイプのヒートシーラー1では、持ち運び可能な蓄電装置17からヒータ13に電力を供給することが可能であるが、このように蓄電装置17を使用する場合には、消費電力を極力抑えるようにしなければ、蓄電装置17に蓄えられている電力が短時間で消費され、蓄電装置17の交換又は充電を頻繁に行わなければならないといった問題がある。そこで、本実施形態のように必要最低限の電力のみを供給するような構成とすることにより、上記のような問題を抑制することができる。
【0045】
<ヒーターの別実施形態>
図8(b)は、U字形ヒータ13のU字の全領域を使用して熱溶着した例を示しているが、U字形の一方のコーナーのみを利用して熱溶着を行ってもよい。この場合の熱溶着のラインは、図9の符号Sで示される。孔の形状、大きさ等を考慮して適宜使い勝手の良い方法でシールすることができる。
【0046】
図10は、ヒータ13の形状の別実施形態を示す図である。本発明において、U字形という場合には、厳密なU字形のみを示すのではなく、概略U字形であればよい。図10(a)は、U字形のコーナーがアール形状ではなく、角ばっている。全体として門型(あるいは、コの字)であるが、これもU字形に含まれる。(b)は、C字形に近いが、これもU字形に含まれる。(c)はV字形に近いが、これもU字形に含まれる。(d)は、U字形のコーナーを面取りしたような形状であるが、これもU字形に含まれる。U字形に形成する技術的意義は、孔を取り囲むようにシールをすることであり、かかる機能を発揮する形状であれば、すべてU字形の概念に含まれるので、図10に例示するもの以外にも種々の変形例が考えられる。
【0047】
被シール物の例として、畝の上に被せられるフィルムシートを説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、ビニールハウスのシートに孔があいた場合に、これを補修する目的で使用することができる。その他にも、シート状材料の孔をふさぐ種々の目的として応用することができる。
【0048】
本実施形態では、ヒータ13は、第2圧接部5の側に設けられているが、第1圧接部4の側に設けられていてもよい。
【0049】
以上の実施形態では、可動部材6が、支軸6aを中心に回動するような構成について説明したが、このような構成に限らず、可動部材6がスライド変位するような構成であってもよい。
【0050】
また、倍力機構20は、上記のような可動部材6及び連結部材7を含むような構成に限らず、操作レバー3に対する操作力を増大して第1圧接部4及び第2圧接部5の間に押圧力を付与するような構成であれば、他の各種構成を採用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 ヒートシーラー
2 シーラー本体
2a 把持部
3 操作レバー
3a 支軸
3b 支軸
3c 把持部
3d 突出部
4 圧接部
4a 圧接面
40 圧接本体部
41 圧接ゴム
5 圧接部
5a 圧接面
5b つかみ代
5c 端部
50 圧接本体部
51 絶縁シート
52 第1樹脂シート
53 第2樹脂シート
6 可動部材
6a 支軸
7 連結部材
7a 支軸
10 制御基板
11 マイクロスイッチ
12 タイマー
13 ヒータ
17 蓄電装置
20 倍力機構
W 被シール物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔が形成されたフィルム状の被シール物を、孔を通る線で折り曲げた状態で、第1圧接部と第2圧接部の間に挟み込み、孔の周囲をヒータからの熱で熱溶着させるためのヒートシーラーであって、
前記ヒータは、第1圧接部と第2圧接部のいずれか一方に配置され、孔を取り囲むことができるようなU字形に形成されていることを特徴とするヒートシーラー。
【請求項2】
前記ヒータは、断面円形の線状ヒータであることを特徴とする請求項1に記載のヒートシーラー。
【請求項3】
前記ヒータは、前記第1圧接部または第2圧接部の端部よりも内側に配置されており、ヒータと前記端部の間に前記被シール物のつかみ代が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のヒートシーラー。


【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−116011(P2011−116011A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274757(P2009−274757)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000236964)富士インパルス株式会社 (35)
【Fターム(参考)】