説明

ヒートシール包装装置

【課題】容器取り数を変更する場合に熱板を取り換えなくても、蓋用フィルムに損傷を与えることなく迅速に包装作業を開始できるヒートシール包装装置を提供する。
【解決手段】被包装物Wを収容する容器2を搬送する容器搬送部と、前記容器の開口部を被覆する蓋用フィルム供給部と、前記被包装物が投入された容器の開口部に、前記蓋用フィルム3を熱溶着するシール部Eと、を備えたヒートシール包装装置において、前記シール部Eは、前記容器を支持する下枠部8と対向する上部に、発熱部10を有する平板状の熱板9を備え、該熱板に、少なくとも容器の開口部を覆う蓋用フィルム面上に対し空気を吹き付ける空気吹付け部11を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に被包装物を投入し、容器の開口部を蓋用フィルムで覆うと共に、該蓋用フィルムを容器の開口部周縁に熱溶着するヒートシール包装装置に関し、特に熱溶着を行うシール部の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
容器用フィルムを深絞り成形して容器を形成し、その容器に被包装物を投入し、被包装物の投入後、所定位置で該容器の開口部に蓋用フィルムを被せ、蓋用フィルムはシール部で前記容器の開口部周縁に熱溶着されて包装が完成される所謂深絞り包装装置が、食品、医薬等多くの分野の包装部門で採用されている。
そして、この深絞り包装装置では、一般的にシール部における一度のシール動作で複数の容器に蓋用フィルムが熱溶着される。
【0003】
即ち、シール部の下枠部は一度のシール動作で熱溶着する容器の個数(容器取り数)に合わせて選択され、その下枠部を用い容器用フィルムから深絞り成形して容器を形成し、或いは事前に形成された容器が嵌合セットされて搬送される。そして、前記容器の移動に合わせて蓋用フィルムを供給して容器の開口部を覆い、蓋用フィルムは前記下枠部に支持される容器の縁部形状と対応する形状に形成された熱板で容器の開口部周縁に熱溶着シールされる。
【0004】
従って、一度のシール動作で熱溶着シールする容器の個数を変更(容器取り数の増加、減少)する場合は、前記下枠部の変更に合わせて対応する熱板も取り換える必要がある。
しかし、蓋用フィルムを容器の開口部周縁に熱溶着するのは前記熱板が所定の温度に加熱されて行われるため、前記個数の変更に伴って熱板を換えた場合、取り換えた熱板が所定の温度になるまで時間が掛かり、変更後の包装作業を迅速に再開できないという問題を有する。
【0005】
この問題に対し、容器取り数の変更に伴い下枠部を取り換えても、熱板は取り換える必要がないよう、全面に熱が帯びるようにした熱板を使用して熱溶着シールすることが一部で行われている。
しかし、全面に熱が帯びる熱板を設けると、蓋用フィルムにおける容器の開口部周縁と対応する部分以外、即ち蓋用フィルムにおける開口部を覆う部分にも熱板の熱が伝わり、その結果、蓋用フィルムの前記部分が溶けたり、或いは孔が開いたりする虞れがある。さらに、容器に収容した被包装物に熱が伝わり、被包装物が熱で変化する虞れもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−115066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたもので、容器取り数を変更する場合に熱板を取り換えなくても、蓋用フィルムに損傷を与えることなく迅速に包装作業を開始できるヒートシール包装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する為に本発明のヒートシール包装装置は、被包装物を収容する容器を搬送する容器搬送部と、前記容器の開口部を被覆する蓋用フィルム供給部と、前記被包装物が投入された容器の開口部に、前記蓋用フィルムを熱溶着するシール部と、を備えたヒートシール包装装置において、前記シール部は、前記容器を支持する下枠部と対向する上部に、発熱部を有する平板状の熱板を備え、該熱板に、少なくとも容器の開口部を覆う蓋用フィルム面上に対し空気を吹き付ける空気吹付け部を設けたことを特徴とする(請求項1)。
前記容器搬送部で搬送する容器は、容器用フィルムを搬送し、その搬送過程で成形型を用いて前記容器用フィルムに一定間隔で容器(凹部)を成形し搬送する形態、或いは、予め成型した容器を搬送部で支持して搬送する形態、の何れでもよい。又、前記容器搬送部で搬送する容器は、単列、複数列(二列、三列等)など、限定されない。
【0009】
前記蓋用フィルム供給部は、ロール状に巻かれたフィルムを回転可能に支持し、下流のシール部で容器の上面開口部に熱溶着され、その容器の搬送により蓋用フィルムが一緒にフィードされる形態、或いは容器搬送部とは別の専用の駆動部を有し、前記容器搬送部の駆動と同期するようにする。尚、前記蓋用フィルムには容器に投入される被包装物の商品名や重量、値段等を直接表示(印字)或いは間接表示(ラベル貼付)するため、被包装物の商品情報を表示した蓋用フィルムと、当該被包装物が投入された容器の対応関係がずれないように合わせる必要がある。
【0010】
前記シール部は、被包装物を収容した容器の開口部に蓋用フィルムを被せ、熱溶着して包装を完成するもので、その包装方式は、含気包装(シール型に搬送された容器を、そのままの状態で上面開口部を蓋用フィルムで覆い、蓋用フィルムの周縁を容器の開口部周縁に熱溶着する)、真空(バキューム)包装(シール型内部で容器内の空気を吸引し真空状態を作り、蓋用フィルムの周縁を容器の開口部周縁に熱溶着する)、ガス充填包装(シール型内部で容器内の空気を吸引し、気体(酸素/二酸化炭素/窒素等)を注入し、容器内環境を改善する)の何れの方式でもよい。
【0011】
また、シール部の熱板は、シール板の上に発熱部(ヒータープレート)が積層配置された積層体、或いはシール板と発熱部(ヒータープレート)が一体化した一枚もの等、何れでもよい。また、前記発熱部は平面視矩形状の平板の全面に設ける(請求項2)。或いは熱溶着する必要箇所(下枠部の容器を区画する仕切り壁)に対応して例えば、平行状、格子状に配設するなど何れでもよい。
前記熱板に設けられる空気吹付け部の穴の大きさ、穴の数、及び穴の位置は限定されない。即ち、容器の開口部を覆うフィルム面以外の場所にも空気が吹き出てもよいが、前記熱溶着箇所以外の箇所、例えば、容器の開口部(周壁で囲まれた範囲内)を覆う蓋用フィルム面上に対してのみ、空気を吹き付ける位置に設けてもよい(請求項3)。
【0012】
上記手段によれば、容器の開口部を覆う蓋用フィルム面に空気を吹き付ける空気吹付け部が熱板に設けられていることで、容器の開口部上に位置する蓋用フィルムは前記空気吹付け部からの空気の吹付けによって凹状に撓み、該開口部内に垂れるようになる。それにより、開口部上の蓋用フィルムは熱板の表面から離間し、該部分のフィルムには熱板の熱が伝わりにくくなる。また、容器の開口部周縁上に位置する蓋用フィルム部分は、下枠部の仕切り壁で支持されている容器の開口部周縁面に熱板で圧着されるため確実に熱溶着される。
また、空気吹付け部の位置を、容器の開口部を覆う蓋用フィルム面上に対してのみ空気が吹付けられるようにした場合は、必要な箇所に対して効率よく空気を吹くことができるので、最低限必要な空気の量にて確実にフィルムが撓むようになり、該部分のフィルムが溶ける、或いは皺が生じることがなくなる。
よって、容器の開口部周縁に熱溶着される蓋用フィルムの溶着部以外の部分が、熱で溶ける、或いは皺が生じる、孔が開く等の問題を生じることがない。
従って、略全面に発熱部を有する熱板を用い、容器取り数を変えるために下枠部を交換した場合でも、シール部の熱板を交換するする必要がなく、ヒートシール包装の蓋用フィルムに損傷を与えることがない。
【0013】
前記空気吹付け部の形態としては、例えば、前記熱板に配置した発熱部以外の箇所に形成(請求項4)等が挙げられる。尚、1個の熱板で複数の下枠部に対応できるようにする為、該装置で成型する最大の容器取り数の下枠部に合わせて空気吹付け部を配置形成する。その場合、容器取り数が1個の場合は全ての空気吹付け部から開口部を覆う蓋用フィルムに空気が吹付けられるため該フィルムは下方に多く撓むようになるが、該空気吹付け部から吐出される空気の量は適宜調整して、包装完成の外観を損ねないようにする。
【0014】
上記手段によれば、容器取り数が異なる下枠部の変更に関係なく、各下枠部における容器の開口部と対応する蓋用フィルムの面、即ち蓋用フィルムにおける容器への溶着部分以外のフィルム面を確実に熱板から離間し、非接触状態に確保することができる。
【0015】
また、前記空気吹付け部による空気の吹付けのタイミングは、容器と蓋用フィルムが下枠部と熱板で挾着される以前であれば良く、例えば、容器を支持する下枠部の上昇時とする(請求項5)。
【0016】
上記手段によれば、空気吹付け部による空気の吹付けが、容器を支持する下枠部の上昇時に行われることで、容器の開口部上に位置する蓋用フィルムの該当部分を確実に撓ませて、熱板表面と離間状態にすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のヒートシール包装装置は、請求項1記載の構成により、容器取り数を変更する場合でも熱板は交換不要で、しかも容器取り数に関係なく容器の開口部周縁と蓋用フィルムの対応部分を確実に熱溶着でき、且つ前記溶着部以外のフィルム部分が溶ける、孔が開く等の損傷の発生を防止できるヒートシール包装装置を提供できる。そして、熱板を交換する必要がないため、従来の下枠部の交換に合わせて熱板も交換していたときの休止時間(交換熱板が熱溶着可能な所定の温度に到達するまでの時間)はなくなり、迅速な包装再開が可能となる。
また、請求項2記載の構成により、容器取り数の異なる複数の下枠部に対して1個の熱板で確実に対応することができる。
また、請求項3記載の構成により、必要な箇所に対して効率よく空気を吹くことができるので、最低限必要な空気の量にて確実にフィルムが撓むようになり、該部分のフィルムが溶ける、或いは皺が生じることがなくなる。
【0018】
又、請求項4記載の構成により、容器取り数が異なる下枠部の変更に関係なく、各下枠部における容器の開口部と対応する蓋用フィルムの面、即ち蓋用フィルムにおける容器への溶着部分以外のフィルム面を確実に熱板から離間し、非接触状態に確保することができる。
また、請求項5記載の構成により、容器の開口部上に位置する蓋用フィルムの該当部分を確実に撓ませて、熱板表面と離間状態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るヒートシール包装装置の実施の形態の一例を示す該略図。
【図2】同平面図。
【図3】容器搬送部及び容器成形部の拡大図で、(a)は正面図、(b)は同平面図。
【図4】シール部分の縦断面図で、(a)は下枠部が上昇する前の状態、(b)は下枠部が上昇してシールする状態を示す。
【図5】同縦断側面図。
【図6】熱板に形成される空気吹付け部の形態を示し、(a)、(b)は熱板に空気吹付け部を2個形成した例を示し、(a)は下枠部の容器取り数が2個、(b)は下枠部の容器取り数が1個、(c)、(d)は熱板に空気吹付け部を多数形成した例を示し、(c)、(d)は下枠部の容器取り数が2個の例を示す。
【図7】空気吹付け部の吹付けのタイミングの一例を示すフローチャート図。
【図8】シール部の他の例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るヒートシール包装装置の実施の形態の一例を図面に基づき説明する。尚、以下に示す実施の形態は、容器用フィルムの搬送過程で容器(凹部)を成形型で成型し、その容器に被包装物を投入し、容器の開口部を蓋用フィルムで被覆し、該蓋用フィルムを容器に熱溶着(ヒートシール)して包装を完了する装置について説明する。
【0021】
図1は、ヒートシール包装装置の全体構成を示す概略図で、ロール状に巻かれた容器用フィルム1からフィルムを引き出し水平且つ直線状に搬送する容器搬送部Aと、その容器搬送部Aで搬送される容器用フィルム1の搬送ライン上に容器(凹部)2を型成形する容器成形部Bと、その容器成形部B上に被包装物Wの重量を計量する計量部Cが、更に前記容器搬送部Aとは別ラインで容器搬送部によって搬送される容器2の開口部を被覆する蓋用フィルム供給部Dと、前記容器成形部Bより下流位置で前記蓋用フィルム供給部Dから供給される蓋用フィルム3を容器搬送部Aで搬送される容器2の上面に合流させ熱溶着するシール部Eと、更に前記シール部Eより下流側にカット部Fを、更に前記蓋用フィルム供給部Dからシール部Eに至る蓋用フィルム3の供給経路に、該蓋用フィルム3に前記容器2に投入される被包装物Wの重量値を含む商品情報を表示(印字)する表示手段Gが配置されて構成されている。
【0022】
ロール状に巻かれた容器用フィルム1からフィルムを引き出し搬送する容器搬送部Aは、図3に示すように、無端回動する前後一対のチェーン4にグリッパー5が所定間隔をおき連結されて構成されている。これにより、容器用フィルム1は、チェーン4に連結されたグリッパー5でフィルム1の幅方向の両側部が挾着され、チェーン4の駆動回転でフィードされる。尚、容器搬送部Aを構成するチェーン4の駆動は間欠駆動で、駆動によって容器用フィルム1が設定されたステップ(搬送量)ずつ、フィードされる。
前記容器搬送部Aの間欠駆動による1ステップとは、容器成形部Bの1回の成形動作で成形される容器(図示例ではフィルム幅方向に2個並列形成)を一定間隔で成形する為の搬送量を意味する。
又、容器搬送部Aは、カット部Fで容器用フィルム1から包装済容器が切断分離される位置まで延長配置されている。そして、前記グリッパー5は、無端回動するチェーン4の往路側は閉じて容器用フィルム1の幅方向両側を挟持して搬送し、往路から復路に切り替わる段階で開放されて容器用フィルム1の挟持を開放し、復路から往路に切り替わる段階で閉じて容器用フィルム1を挟持する。
【0023】
前記容器成形部Bは、図3に示すように、容器用フィルム1を熱と成形型を用いて容器(凹部)2を成形する今日周知の深絞り方式の成形部で、前記容器搬送部Aで水平に搬送される容器用フィルム1のフィルム面を挟んで配置される。
その容器成形部Bは、容器用フィルム1の下側に配置される成形型6aと、容器用フィルム1の上側に配置されるヒータプレート6bとで構成されている。
【0024】
上記構成により、容器用フィルム1は成形型6a内で下からの圧縮空気で吹き上げられ、ヒータプレート6bに接触して暖められる。そして、暖められた容器用フィルム1は、ヒータプレート6bにある噴射孔から圧縮空気が設定された時間吹きつけられることで成形型6aの内面に沿って密着成形され、容器(凹部)2が成形される。成形後、型内を換気し成形型6aを下降させ、前記容器搬送部Aの作動で成形した容器2を容器成形部Bから搬送方向前方に移動させる。即ち、前記容器搬送部Aの間欠駆動によって、容器用フィルム1の長手方向に沿って容器2が一定間隔毎に成形される。尚、容器成形部Bの1回の動作で成形される容器2の数は、図示するフィルムの幅方向に2個を並列成形する形態に限定されず、例えば1個、或いは3個(3列)、更には複数列・複数行(例えば2×2の4個)等、任意である。
【0025】
前記容器成形部Bで成形された容器(凹部)2は、容器搬送部Aの間欠駆動で下流側のシール部Eに向けて搬送されるが、その搬送の途中に被包装物Wが前記容器2に投入される。尚、図示例では、被包装物Wは容器2に投入する前に計量部Cで重量が計量され、その計量した重量値及びその重量値に基づいて算出される値段を含む商品情報は、蓋用フィルム供給部Dで搬送される蓋用フィルム3に表示手段Gで印刷表示され、その所定事項が印刷表示された蓋用フィルム3は当該被包装物Wが投入された容器2の開口部を被覆するよう対応関係が調整されてシール部Eに搬送される。
【0026】
前記蓋用フィルム供給部Dは、図1に示すように、被包装物Wが投入された容器2の開口部を被覆する蓋用フィルム3を供給するもので、ロール状に巻かれた蓋用フィルム3がガイドローラ7を介して容器搬送部Aで搬送される容器2の開口部上面に案内され、シール部Eで容器2の上面開口部に熱溶着される。それにより、蓋用フィルム3のフィードは、容器搬送部Aの駆動で搬送される容器2と蓋用フィルム3が熱溶着で一体となるため、容器2(容器用フィルム1)の移動とともに1ステップ分宛、一定時間間隔でフィードされる。
そして、前記蓋用フィルム3の供給経路におけるシール部Eから所定距離上流位置には該蓋用フィルム3に、被包装物Wの計量データ(重量値)を含む商品情報を印字(表示)する表示手段Gが配置されている。
【0027】
シール部Eは、容器搬送部Aで搬送される被包装物Wが投入された容器2の開口部を、該容器に投入された被包装物Wに関する商品情報が印字された蓋用フィルム3で被覆し、且つ容器2に熱溶着するものである。
図4(a)、(b)は含気包装方式によるシール部Eの構成を示す。含気包装は、下枠部(シール型)25に搬送された被包装物Wが投入された容器2の開口部をそのままの状態で蓋用フィルム3により被覆し、熱溶着する。
以下、シール部Eの構成を簡単に説明すると、図4(a)に示すように、水平搬送される容器2を挟むように、容器2の下側に上下動可能に配置した下枠部(シール型)8と、該下枠部(シール型)8の上面を閉鎖する熱板(シール板)9と、前記熱板(シール板)9の上面に積層載置し熱線等10bが略全面に亘って配置された発熱部(ヒータプレート)10、熱板(シール板)9と発熱部(ヒータプレート)10とを垂下支持する基台17、コンプレッサー(不図示)から供給される空気が通る配管18と、該配管18と接続され基台17と発熱部(ヒータプレート)10と熱板(シール板)9を貫通して設けられた空気路19と、前記熱板(シール板)9に設けられた空気吹付け部11で構成されている。下枠部8と熱板9で容器2と蓋用フィルム3を挾着し、容器2の開口部周縁2aに蓋用フィルム3を熱溶着した後、下枠部8は熱板9から離れる方向に移動し型開きして、包装が完了した容器は容器搬送部Aの駆動でシール部Eから離れ、代わって次の容器2と蓋用フィルム3のセットがシール部Eに位置する。尚、下枠部(シール型)8が下方に位置するときに、蓋用フィルム3は搬送されるが、その際は図4(a)に示すように蓋用フィルム3と略全面に熱を帯びる熱板(シール板)9との間に一定の距離Lを有しているので、その状態で蓋用フィルム3が熱板(シール板)9の影響を受けることはない。また、発熱部(ヒータプレート)10から発せられる熱が熱板(シール板)9に伝わることで該熱板(シール板)9が所定温度まで上昇し、図4(b)に示すように下枠部(シール型)8が上昇した時に前記蓋用フィルム3が上昇前の位置(図4(a)参照)よりも突き上げられて熱板(シール板)9と下枠部(シール型)8の仕切り壁8aとの接触により蓋用フィルム3の当該部分が溶着されるが、後述のように、容器2の開口部におけるフィルムには、下枠部(シール型)8が上昇する時に、空気吹付け部11から空気が吹付けられ、該開口部を覆うフィルムは下方へ撓むようになるので、該部分で熱板(シール板)9からの熱を受けにくくなるので該部分のフィルムに皺ができたり、フィルムが溶けたりすることがない。
【0028】
シール部Eを構成する下枠部(シール型)8は、前記容器成形部Bで成形された容器2を収容支持するもので、該成形部Bの1回の成形動作で成形される個数の容器(図示例は、容器取り数:2個並列)を収容し得るように成形型6aと略同じ形状に形成されている。従って、容器成形部Bの成形型6aに合わせて下枠部(シール型)8も変更される。
前記下枠部8の上下動作は、エアーシリンダ、或いはモータによって行われる。
そして、前記下枠部8は、容器取り数が複数の場合、各容器を隔離して支持するための仕切り壁8aが起立形成されている。容器取り数が2個(並列)の場合は、図5、及び図6(a)、(c)、(d)に示すように下枠部8の幅方向(容器の搬送方向と直交する方向)を左右に二分する略中央位置に仕切り壁8aが起立形成され、容器取り数が3個(並列)の場合(図示省略)は、下枠部8の幅方向を三等分する二箇所に仕切り壁8aが起立形成される。また、容器取り数が2個2列の合計4個の場合(図示省略)は、下枠部8に平面視略十字状(格子状)に仕切り壁8aを起立形成する。
【0029】
前記下枠部(シール型)8と対向して配置される熱板(シール板)9は、前記下枠部(シール型)8の開口上面を閉鎖する大きさを有した金属製の平板で構成され、その熱板9の上面には発熱部(ヒータプレート)10が一体的に積層固着されている。
そして、発熱部10が発熱することで、その下部にある熱板(シール板)9に熱が伝わり、熱板(シール板)9と下枠部8の仕切り壁8aとの間で蓋用フィルム3が容器2の開口部周縁に溶着される。
【0030】
前記発熱部10は、前記熱板と略同形の金属製平板10aに発熱体として熱線等10bが埋設されて構成された今日周知のものである。
前記熱線等10bの配設は、図6(a)、(b)に示すように、金属製平板10aの略全面が均一に所定の温度になるよう前記平板10aの内部に均等に配設する、或いは、図6(c)、(d)に示すように、本装置で成形する複数種類の容器取り数の下枠部8の仕切り壁8aと対応する箇所(図示例は容器取り数が2個を示す)に熱線等10bを配設する何れの形態でもよい。
図6(c)、(d)の場合は、容器取り数:1、容器取り数:2の2種類に対応する例で、外周と、容器取り数:2の場合の中央の仕切り壁8aに対応する箇所に熱線等10bが配設される。そして、前記発熱部の熱線等10bへの通電は、容器取り数の変更に伴う下枠部8の交換に関係なく、全部に通電する。勿論、容器取り数に合わせて使用する下枠部8に応じて、発熱部10の発熱領域を制御してもよい。
【0031】
又、前記熱板9には該熱板9より下方で容器2の開口部上に被覆される蓋用フィルム3の開口部と対応するフィルム面に対して空気を吹付ける空気吹付け部11が形成され、それにより容器の開口部を覆うフィルム面は容器2に向けて下方に撓み、熱板9の表面から離間される。
前記空気吹付け部11の形成位置と、空気を吐出する孔の大きさ、孔の数は特に限定されない。例えば、図6(a)、(b)の場合、空気吹付け部11として比較的大きな孔が2個形成される。その2個の空気吹付け部11の位置は、容器取り数が最大の2個(並列)を前提に、各容器に空気吹付け部11が対応するように配置形成する。それにより、容器取り数が2個の場合は、各容器に1個の空気吹付け部11が対応して開口部を被覆するフィルム面を下方に撓ませ、容器取り数が1個の場合は容器1個に2個の空気吹付け部11が対応して開口部を被覆するフィルム面を下方に撓ませる。
【0032】
また、図6(c)、(d)は、容器取り数が最大の2個(並列)を前提に、容器取り数が1個、2個の何れの下枠部8に対しても空気吹付け部11が対応するように配置形成されている。具体的には、図6(c)は容器取り数が2個の場合、各容器にはそれぞれ9個(3列×3個)の空気吹付け部11が対応し、容器取り数が1個の場合は18個(6列×3個)全部の空気吹付け部11が対応して開口部を被覆するフィルム面を下方に撓ませる。
【0033】
図6(a),(b)のように熱板(シール板)9の全面に亘り略均一の熱が帯びる場合、容器取り数が変わることで熱板9の下に位置する下枠部8の仕切り壁8aがどの場所に位置したとしても、仕切り壁8aと熱板9とで挟まれる容器2の開口部周縁と蓋用フィルム3の該当部分が熱溶着される。即ち、(a)は一度のヒートシール加工で2個の容器を溶着する場合の例で、外周の仕切り壁及び中央の仕切り壁8aの部分で該仕切り壁8aと熱板9との間に蓋用フィルム3が挟まれ、該位置で蓋用フィルム3は容器2の開口部周縁に溶着されるが、容器の開口部にあたる部分には、空気吹付け部11から吹き出される空気により、前記開口部を覆うフィルムは下方に撓むので、開口部を覆うフィルムが熱板9と接することはない。
また、(b)のように、容器取り数が1個の場合は、(a)と同様に、空気吹付け部11から吹き出される空気により、開口部を覆うフィルムは下方へ撓むので、開口部を覆うフィルムが熱板9と接することはない。
つまり、容器取り数が1個でも2個であっても熱板9を変えることなく、必要箇所を確実に熱溶着することができる。
また、(a)、(b)のように熱板9の全面に亘り略均一の熱が帯びる場合の他、当該装置で、変更する容器取り数が1個、或いは2個と決まっている場合には、(c)に示すように周縁と周縁で囲まれた領域を左右に二分する中央部のみに熱が加わるようにし、2個取りの場合には、中央の熱線部分には下枠部8の仕切り壁8aが対応して上昇し、該位置で蓋用フィルム3が容器の開口部周縁に溶着されることで、2個の容器が同時にヒートシールされる。また、1個取りの場合は、前記中央の熱線部分が熱を帯びたとしても、開口部を覆う蓋用フィルム3に対し空気吹付け部11から空気が吹き付けられて下方に撓むが、下枠部8の該当位置には仕切り壁が存在しないので、前記下方に撓んだフィルムが熱板に押し付けられることはなく、従って、開口部を覆う蓋用フィルム部分が熱板9の熱によって孔が開いたり、皺がよったりすることがない。
つまり、(a)、(b)のように、熱板(シール板)9の全面に熱が帯びるのではなく、使用する容器取り数の全ての場合に溶着できるよう仕切り壁8aと対応する位置のみに熱線等10bを設ければ、容器取り数が変わったとしても、蓋用フィルム3と対向する仕切り壁8aが無い部分に関しては、空気により撓むようになり、また、仕切り壁8aが存在する箇所は熱線等10b部分との接触により蓋用フィルム3が熱溶着されるようになるので、熱板(シール板)9を取り替えることなく、確実に熱溶着することができる。
【0034】
また、図6(d)は空気吹付け部11を構成する孔が小さな孔で形成された例を示し、その小さな孔は仕切り壁8aに掛からないように配置形成されている。尚、空気吹付け部11を構成する孔が針の孔のように微細な孔である場合は、熱溶着の支障とならなければ仕切り壁8aと対応する部分に形成されていてもよい。
【0035】
また、前記空気吹付け部11から空気を吐出するタイミングは、図7に示すように、容器2(容器用フィルム1)と蓋用フィルム3が合着されて1ステップ移動し、シール部Eに到達停止する。容器2と蓋用フィルム3がシール部Eに位置すると、下枠部8が上昇を開始する。そして、下枠部8の上昇開始から上昇停止(熱板9とで容器2と蓋用フィルム3を挾着)までの間に空気吹付け部11の空気吹付け動作が開始され、少なくとも下枠部8の上昇が停止して熱板9とで蓋用フィルム3が挾着される時点では、容器の開口部を被覆する蓋用フィルム3の該当部分が熱板9の表面から離間した状態となるようにする。そして、その後、熱板9によって容器2の開口部周縁に蓋用フィルム3が熱溶着されシールされる。
【0036】
シール部Eで容器2と蓋用フィルム3が熱溶着されて包装を完了した包装済みの容器は、搬送方向下流側に配置したカット部Fで容器用フィルム1から切り離される。
カット部Fは、図1及び図2に示すように、容器用フィルム1の搬送方向(長手方向)に沿って一定間隔で形成される容器2相互間を切り離す横切断用の横カッター12と、容器用フィルム1の幅方向に沿って形成される容器(図示は2列)間及び該容器用フィルム1の幅方向両側の不要部分(カス部分)を切断する縦カッター13とで構成されている。そして、横カッター12と縦カッター13は容器搬送部Aの搬送方向に沿い所定間隔、例えば1ステップ分間隔をおいて配置されている。図中、14はフィルムカス巻取り軸、15は包装済み商品W’を包装装置から排出する排出コンベアである。
【0037】
図8はシール部Eを構成する熱板(シール板)9と発熱部10の他の例を示し、通常(シール時以外)、熱板(シール板)9と発熱部10は上枠16内に収容配置され、熱板(シール板)9はその下方を搬送される蓋用フィルム3と一定の間隔をおいて保持されている(図8中の仮想線の位置)。そして、下枠部8が上昇する時に、前記上枠16内に収容されていた熱板(シール板)9と発熱部10のみがエアーシリンダ(図示省略)で下降され、上昇する下枠部8の仕切り壁8aと熱板(シール板)9とで容器2の開口部周縁2a及び蓋用フィルム3を挾着し、蓋用フィルム3を熱溶着する。この場合でも、蓋用フィルム3が搬送されるときに、熱板(シール板)9と蓋用フィルム3が接することがないので、容器2の開口部を塞ぐ蓋用フィルム3に皺が生じたり、蓋用フィルムが溶けたりすることはない。尚、前記実施例で示した部材と同じ部材は同一の符号を付し、説明は省略する。
【0038】
上記の如く構成したヒートシール包装装置は、容器取り数を変更する場合、容器成形部Bの成形型6a及びシール部Eの下枠部8を成形しようとする容器取り数に合わせて取り換えるが、下枠部8と対応する熱板9(発熱部10を含む)はそのまま取り換える必要なく使用できる。
何故ならば、シール部Eにおいて下枠部8に収容支持された容器2の開口部は熱板9の下面側に供給される蓋用フィルム3で被覆され、該蓋用フィルム3は下枠部8で支持されている容器2の開口部周縁2aに熱板9で熱溶着される。この時、前記熱板9には容器2の開口部上を被覆する蓋用フィルム3の当該部分に空気を吹付けて前記フィルム面を下方に撓ませ、熱板9の表面から離間させる空気吹付け部11が形成されている為、前記開口部周縁に対する熱溶着以外は蓋用フィルム3に熱板9の熱が作用してとける、或いは孔が開く等の損傷が発生することはない。
そして、下枠部を交換しても熱板9(発熱部10を含む)はそのまま使用できるため、熱板の温度変化はなく、下枠部の交換後、直ぐに包装作業を再開することができる。
また、熱板9に空気吹付け部11を設けたことで、該熱板9は平板構造でよく、熱板の製作コストを低減できる経済的利点が得られる。
【0039】
本発明のヒートシール包装装置は図示した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
(1)実施の形態では、容器用フィルムの搬送中に容器成形部により該フィルムに容器を成形して搬送する形態を示したが、予め成形した容器を容器搬送部に載せて搬送するようにしてもよい。
(2)実施の形態では、熱板と発熱部が別体の積層構造を示したが、熱板と発熱部を一枚の部材で構成してもよい。
(3)実施の形態では、蓋用フィルムに重量値や品名等を印字する例を示したが、これに限らず、ラベルに前記印字内容と同様に内容を印字し、該ラベルを蓋用フィルム上に貼付するようにしてもよい。
(4)実施の形態では、発熱部の発熱体として熱線の例を示したが、これに限らず、今日採用されている発熱体を選択採用してもよい。
(5)実施の形態における空気吹付け部から吹付けられる空気の量や、圧は、空気吹付け部の大きさや、位置、また、その数、更に使用するフィルムの厚さや、質に応じて変えるようにしてもよい。
(6)実施の形態では、空気吹付け部から空気を吹くタイミングとして下枠部の上昇時を挙げたが、該空気吹付け部が空気を吹くタイミングは、前記タイミングに限定されず、例えば、下枠部の上昇に関係なく、常時、空気が吹き出るようにしてもよい。その場合は、熱板(シール板)と蓋用フィルムとの間隔が広くなる為、熱板(シール板)の影響を受けることを更に少なくできる。
(7)実施の形態では、容器取り数が1個と2個の場合について説明したが、容器取り数は3個以上でも勿論可能である。
(8)実施の形態では、コンプレッサーから供給される空気が、配管18から基台17と発熱部(ヒータプレート)10と熱板(シール板)9を貫通して設けられた空気路を通って、空気吹付け部11から蓋用フィルム3に吹付けられる例を示したが、これに限らず、例えば、基台17と発熱部(ヒータプレート)10との間に、外部に通じる空気の配管を設け、空気が空気吹付け部11から吹き付けられるようにしてもよい。また、下枠部8がエアーシリンダにより上下動する場合には、該エアーシリンダに空気を供給するコンプレッサーを利用して、空気を空気吹付け部11から吹付けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
A…容器搬送部 D…蓋用フィルム供給部
E…シール部 W…被包装物
2…容器 2a…容器の開口部周縁
3…蓋用フィルム 8…下枠部
8a…仕切り壁 9…熱板
10…発熱部 11…空気吹付け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被包装物を収容する容器を搬送する容器搬送部と、前記容器の開口部を被覆する蓋用フィルム供給部と、前記被包装物が投入された容器の開口部に、前記蓋用フィルムを熱溶着するシール部と、を備えたヒートシール包装装置において、
前記シール部は、前記容器を支持する下枠部と対向する上部に、発熱部を有する平板状の熱板を備え、該熱板に、少なくとも容器の開口部を覆う蓋用フィルム面上に対し空気を吹き付ける空気吹付け部を設けたことを特徴とするヒートシール包装装置。
【請求項2】
前記発熱部は、熱板の全面に設けられていることを特徴とする請求項1記載のヒートシール包装装置。
【請求項3】
前記空気吹付け部は、前記容器の開口部を覆う蓋用フィルム面上に対してのみ、空気を吹付ける位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載のヒートシール包装装置。
【請求項4】
前記空気吹付け部は、前記熱板に配置した発熱部以外の箇所に形成されていることを特徴とする請求項1記載のヒートシール包装装置。
【請求項5】
前記空気吹付け部による空気の吹付けは、前記容器を支持する下枠部の上昇時に行われることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載のヒートシール包装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−121621(P2011−121621A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282080(P2009−282080)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000145068)株式会社寺岡精工 (317)
【出願人】(509216108)ウルマ パッケージング テクノロジカル センター エス コープ (2)
【Fターム(参考)】