説明

ビアダマンタンフェノール誘導体及びビアダマンタンフェノール誘導体の製造法

【課題】 溶媒に対する溶解性に優れ、電気特性、熱特性などに優れた機能性材料の原料として有用な新規なビアダマンタンフェノール誘導体を提供する。
【解決手段】 ビアダマンタンフェノール誘導体は、下記式(1)


(式中、R1〜R6は、水素原子、下記式(2)


で表される基、又はその他の置換基を示す。但し、R1〜R6のうち少なくとも1つは式(2)で表される基である。)で表される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル配線板(ベース材、カバー材)材料、CCL(銅張り積層板)材料、半導体デバイスや多層配線基板の層間絶縁膜材料、液晶配向膜材料、塗料材料、光学材料等の原料、添加剤等として用いることができる新規なビアダマンタンフェノール誘導体、及びビアダマンタンフェノール誘導体の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
アダマンタン誘導体は安定な炭素骨格構造を有していることから、耐熱性、耐水性、光学特性、光透過性、低誘電率性、吸水性、密着性などの電気特性、熱特性、機械特性及び物理特性などに優れた各種高機能性ポリマー等の機能性材料の原料として用いられている。なかでもアダマンタン骨格が2つ結合したビアダマンタン誘導体は熱特性などに優れるため、いくつかの化合物が製造され、それらは電子部品材料、光学部品材料等の高機能性材料の原料としての利用が検討されている。
【0003】
米国特許第3342880号明細書には、3,3′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1′−アダマンタンが開示されている。しかしながら、この化合物は溶媒への溶解性に乏しく、用途展開を行う上で不利である。したがって、溶解特性に優れた機能材料用原料として好適なビアダマンタンフェノール誘導体が求められている。なお、フェノールは、ポリカーボネート樹脂やエポキシ樹脂等の原料となるビスフェノール類や、フェノール樹脂(電子材料、接着剤、塗料用材料等に使用)の原料などとして用いられている。前記フェノール樹脂はフェノールとホルムアルデヒドから製造される。
【0004】
【特許文献1】米国特許第8342880号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、溶媒に対する溶解性に優れ、電気特性、熱特性、機械特性、光学特性、物理特性などに優れた機能性材料の原料として有用な新規なビアダマンタンフェノール誘導体、及びビアダマンタンフェノール誘導体の効率の良い製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、アダマンタン環に置換基を有する新規なビアダマンタンフェノール誘導体を見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、下記式(1)
【化1】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は、同一又は異なって、水素原子、下記式(2)
【化2】

(式中、R9は水素原子、フェノール性ヒドロキシル基の保護基、又はフェノール塩を形成する原子又は原子団を示す。ベンゼン環は−OR9以外の置換基を有していてもよい)
で表される基、又はその他の置換基を示す。R7、R8は、それぞれ、アダマンタン環の橋頭位以外に結合している置換基を示す。m、nは、それぞれ、0〜12の整数を示す。式(2)で表される基が複数個存在する場合、各R9は同一であっても異なっていてもよい。また、R7、R8は、それぞれ、複数個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。但し、R1、R2、R3、R4、R5、R6のうち少なくとも1つは式(2)で表される基であり、R1、R2、R3、R4、R5、R6、m個のR7、n個のR8のうち少なくとも1つはハロゲン原子を有していてもよいアルキル基である。式中の2つのアダマンタン環に式(2)で表される基がそれぞれ1つずつ結合している場合には、2つのR9は同時にアルキル基であることはない]
で表されるビアダマンタンフェノール誘導体を提供する。
【0008】
このビアダマンタンフェノール誘導体において、好ましい化合物には、R1、R3、R4、R6が、それぞれ、炭素数1〜6のハロゲン原子を有していてもよいアルキル基であり、R2及びR5のうち1つ又は2つが式(2)で表される基である化合物が含まれる。
【0009】
本発明は、また、下記式(3)
【化3】

[式中、X1、X2、X3、X4、X5、X6は、同一又は異なって、水素原子、下記式(2)
【化4】

(式中、R9は水素原子、フェノール性ヒドロキシル基の保護基、又はフェノール塩を形成する原子又は原子団を示す。ベンゼン環は−OR9以外の置換基を有していてもよい)
で表される基、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基、又はその他の置換基を示す。R7、R8は、それぞれ、アダマンタン環の橋頭位以外に結合している置換基を示す。m、nは、それぞれ、0〜12の整数を示す。式(2)で表される基が複数個存在する場合、各R9は同一であっても異なっていてもよい。R7、R8は、それぞれ、複数個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。但し、X1、X2、X3、X4、X5、X6のうち少なくとも1つは脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基である]
で表されるビアダマンタン誘導体と、下記式(4)
【化5】

(式中、R9は水素原子、フェノール性ヒドロキシル基の保護基、又はフェノール塩を形成する原子又は原子団を示す。このR9は前記式(2)におけるR9と同一でもよく異なっていてもよい。ベンゼン環は−OR9以外の置換基を有していてもよい)
で表されるフェノール又はその誘導体とを反応させて、下記式(5)
【化6】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は、同一又は異なって、水素原子、下記式(2)
【化7】

(式中、R9は水素原子、フェノール性ヒドロキシル基の保護基、又はフェノール塩を形成する原子又は原子団を示す。ベンゼン環は−OR9以外の置換基を有していてもよい)
で表される基、又はその他の置換基を示す。R7、R8は、それぞれ、アダマンタン環の橋頭位以外に結合している置換基を示す。m、nは、それぞれ、0〜12の整数を示す。式(2)で表される基が複数個存在する場合、各R9は同一であっても異なっていてもよい。また、R7、R8は、それぞれ、複数個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。但し、R1、R2、R3、R4、R5、R6のうち少なくとも1つは式(2)で表される基である]
で表されるビアダマンタンフェノール誘導体を得ることを特徴とするビアダマンタンフェノール誘導体の製造法を提供する。
【0010】
この製造法において、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基としてヒドロキシル基を有する式(3)で表されるビアダマンタン誘導体と、式(4)で表されるフェノール又はその誘導体とを、酸触媒存在下で反応させて、式(5)で表されるビアダマンタンフェノール誘導体を得てもよい。また、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基としてハロゲン原子を有する式(3)で表されるビアダマンタン誘導体と、式(4)で表されるフェノール又はその誘導体とを、加熱下又はルイス酸触媒存在下で反応させて、式(5)で表されるビアダマンタンフェノール誘導体を得てもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、溶媒に対する溶解性に優れ、電気特性、熱特性、機械特性、光学特性、物理特性などに優れた機能性材料の原料として有用な新規なビアダマンタンフェノール誘導体が提供される。また、本発明によれば、ビアダマンタンフェノール誘導体を工業的に効率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のビアダマンタンフェノール誘導体は前記式(1)で表される。式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は、同一又は異なって、水素原子、前記式(2)で表される基、又はその他の置換基を示す。また、R7、R8は、それぞれ、アダマンタン環の橋頭位以外に結合している置換基を示す。
【0013】
前記R1、R2、R3、R4、R5、R6におけるその他の置換基、及びR7、R8における置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子を有していてもよいアルコキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル(ハロ)アルキル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいスルホ基、保護基で保護されていてもよいアシル基、シアノ基、ニトロ基、オキソ基(=O)等の非金属原子含有基などが挙げられる。
【0014】
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどの炭素数1〜15程度のアルキル基(好ましくはC1-10アルキル基、さらに好ましくはC1-6アルキル基);トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル基などの炭素数1〜15程度のハロアルキル基(好ましくはC1-10ハロアルキル基、さらに好ましくはC1-6ハロアルキル基)などが挙げられる。ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基として、特に炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のハロアルキル基が好ましい。ハロゲン原子を有していてもよいアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブチルオキシ、s−ブチルオキシ、t−ブチルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ基などの炭素数1〜15程度のアルコキシ基(好ましくはC1-10アルコキシ基、さらに好ましくはC1-6アルコキシ基);トリフルオロメトキシ基などの炭素数1〜15程度のハロアルコキシ基(好ましくはC1-10ハロアルコキシ基、さらに好ましくはC1-6ハロアルコキシ基)などが挙げられる。ヒドロキシ(ハロ)アルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル基、2,2,2−トリフルオロ−1−トリフルオロメチル−1−ヒドロキシエチル基など(好ましくは、ヒドロキシ−C1-4アルキル基、ヒドロキシ−C1-4ハロアルキル基等)が挙げられる。
【0015】
前記ヒドロキシル基や、ヒドロキシ(ハロ)アルキル基におけるヒドロキシル基の保護基としては、有機合成の分野で慣用の保護基、例えば、アルキル基(例えば、メチル、t−ブチル基などのC1-4アルキル基など)、アルケニル基(例えば、アリル基など)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基など)、アリール基(例えば、2,4−ジニトロフェニル基など)、アラルキル基(例えば、ベンジル基など);置換メチル基(例えば、メトキシメチル、メチルチオメチル、ベンジルオキシメチル、t−ブトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル基など)、置換エチル基(例えば、1−エトキシエチル基など)、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、1−ヒドロキシアルキル基(例えば、1−ヒドロキシエチル基など)等の、ヒドロキシル基とアセタール又はヘミアセタール基を形成可能な基;アシル基(例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ピバロイル基などのC1-6脂肪族アシル基;アセトアセチル基;ベンゾイル基などの芳香族アシル基など)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基などのC1-4アルコキシ−カルボニル基など)、アラルキルオキシカルボニル基、置換又は無置換カルバモイル基、置換シリル基(例えば、トリメチルシリル基など)など、及び、分子内にヒドロキシル基(ヒドロキシメチル基を含む)が2以上存在するときには、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基(例えば、メチレン、エチリデン、イソプロピリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、ベンジリデン基など)などが例示できる。
【0016】
前記アミノ基の保護基としては、例えば、前記ヒドロキシル基の保護基として例示したアルキル基、アラルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基などが挙げられる。保護基で保護されたスルホ基としては、アルコキシスルホニル基(例えば、メトキシスルホニル、エトキシスルホニル、ブトキシスルホニル基等のC1-6アルコキシスルホニル基など)、シクロアルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アラルキルオキシスルホニル基、トリアルキルシリルオキシスルホニル基、置換又は無置換スルファモイル基などが挙げられる。前記アシル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ピバロイル基などのC1-6脂肪族アシル基;アセトアセチル基;ベンゾイル基などの芳香族アシル基などが挙げられる。アシル基の保護基としては有機合成分野で慣用の保護基を使用できる。アシル基の保護された形態として、例えば、アセタール(ヘミアセタールを含む)などが挙げられる。
【0017】
カルボキシル基の保護基、アミノ基の保護基、ヒドロキシル基の保護基等の保護基は、本発明の化合物使用時において脱離しなくてもよい。
【0018】
式(2)中、R9は水素原子、フェノール性ヒドロキシル基の保護基、又はフェノール塩を形成する原子又は原子団を示す。前記フェノール性ヒドロキシル基の保護基としては、有機合成の分野で一般に用いられる保護基が挙げられる。保護基は本発明の化合物使用時において脱離しなくてもよい。フェノール性ヒドロキシル基の保護基の代表的な例として、例えば、メチル、メトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル、メチルチオメチル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、フェナシル(=ベンゾイルメチル)、アリル、イソプロピル、シクロヘキシル、t−ブチル、ベンジル基等の置換基を有していてもよい炭化水素基又は複素環式基(例えば、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C3-15脂環式炭化水素基、C6-15アリール基、C7-16アラルキル基等)などの、フェノール性ヒドロキシル基と共にエーテル(アセタールを含む)を形成する基;アセチル、プロピオニル、ピバロイル、ベンゾイル基等の置換基を有していてもよいアシル基(例えば、炭素数1〜15程度の脂肪族、脂環式、芳香族又は複素環式アシル基等)などの、フェノール性ヒドロキシル基と共にエステルを形成する基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、2,2,2−トリクロロエチルオキシカルボニル、ビニルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル基等の置換基を有していてもよい炭化水素基置換オキシカルボニル基(例えば、C1-15アルコキシ−カルボニル基等)などの、フェノール性ヒドロキシル基と共にカーボネートを形成する基;N−メチルカルバモイル、N−エチルカルバモイル、N−イソブチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル基等のN−置換又は無置換カルバモイル基(例えばN−モノ又はジ−C1-15炭化水素基置換又は無置換カルバモイル基等)などの、フェノール性ヒドロキシル基と共にカーバメートを形成する基;メタンスルホニル、トリフルオロメタンスルホニル、エタンスルホニル、ベンゼンスルホニル、p−トルエンスルホニル基等の置換基を有していてもよいスルホニル基などの、フェノール性ヒドロキシル基と共にスルホネートを形成する基などが挙げられる。
【0019】
前記フェノール塩を形成する原子又は原子団としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属原子;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属原子;銅、亜鉛などの遷移金属原子などの金属原子;アンモニウム、トリエチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウムなどのN−置換又は無置換アンモニウム基などが挙げられる。
【0020】
式(2)において、−OR9基は、それぞれ、アダマンタン環との結合位置に対してオルト位、メタ位、パラ位の何れであってもよいが、ポリマーの単量体等として用いる場合には、反応(重合)しやすいことからパラ位が特に好ましい。
【0021】
式(2)中に示されるベンゼン環は−OR9以外の置換基を有していてもよい。ベンゼン環が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基、フェニル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、ハロゲン原子を有していてもよいアルコキシ基などが挙げられるがこれらに限定されない。前記ヒドロキシル基は塩(金属塩、アンモニウム塩等)を形成していてもよい。ハロゲン原子、ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子を有していてもよいアルコキシ基としては、前記R1等におけるその他の置換基として例示したハロゲン原子等と同様である。置換基の数は0〜4である。
【0022】
式(1)において、m、nは、それぞれ0〜12の整数を示す。m、nは、好ましくは0〜4、さらに好ましくは0又は1である。式(2)で表される基が複数個存在する場合、各R9は同一であっても異なっていてもよい。また、R7、R8は、それぞれ、複数個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。但し、R1、R2、R3、R4、R5、R6のうち少なくとも1つ(1〜6、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1つ又は2つ)は式(2)で表される基であり、R1、R2、R3、R4、R5、R6、m個のR7、n個のR8のうち少なくとも1つはハロゲン原子を有していてもよいアルキル基である。式(1)中の2つのアダマンタン環に式(2)で表される基がそれぞれ1つずつ結合している場合には、2つのR9は同時にアルキル基であることはない。
【0023】
本発明のビアダマンタンフェノール誘導体はフェノール性ヒドロキシル基を利用した重合により、或いはフェノール性ヒドロキシル基に重合性基を導入した重合性単量体の重合により機能性ポリマーに誘導することができる。例えば、式(2)で表される基を1つ有する化合物は、フェノール性ヒドロキシル基に重合性基を導入することにより、側鎖にビアダマンタン環を有するポリマー(ペンダント型)のモノマー原料として利用できる。また、式(2)で表される基を2つ有する化合物は、フェノール性ヒドロキシル基を利用した縮合反応により合成されるポリマー(主鎖型)のモノマー原料として使用できる。さらに、式(2)で表される基を3つ以上有する化合物は、3次元網目構造を有する高次重合体の原料等として利用できる。これらの観点からすると、式(2)で表される基の少なくとも1つは、R9が水素原子であるか又は加水分解や中和等により容易にヒドロキシル基に転化できるような置換基(例えば、フェノール性ヒドロキシル基と共にアセタール、エステル、カーバメート又はスルホネートを形成する基(保護基);フェノール塩を形成する原子又は原子団)である基が好ましい。式(1)中に含まれるすべての式(2)で表される基においてR9がアルキル基である場合には、遊離のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物に変換することが困難になりやすい。
【0024】
式(1)で表されるビアダマンタンフェノール誘導体は、アダマンタン環にハロゲン原子を有していてもよいアルキル基が少なくとも1つ結合しているため、溶媒に対する溶解性が高く、反応により種々の誘導体への誘導が容易である。
【0025】
式(2)におけるR9がフェノール性ヒドロキシル基の保護基であるビアダマンタンフェノール誘導体は、慣用の脱保護反応に付すことにより、式(2)におけるR9が水素原子であるビアダマンタンフェノール誘導体に変換することができる。また、式(2)におけるR9がフェノール塩を形成する原子又は原子団であるビアダマンタンフェノール誘導体は、酸(例えば、塩酸、硫酸等の無機酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸等)と反応させて塩を遊離化することにより、式(2)におけるR9が水素原子であるビアダマンタンフェノール誘導体に変換することができる。
【0026】
本発明のビアダマンタンフェノール誘導体のうちビアダマンタンモノフェノール誘導体の代表的な例として、例えば、3−(4−ヒドロキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンなどの、アダマンタン環の橋頭位にメチル基が4つ結合したビアダマンタンモノフェノール誘導体;3−(4−ヒドロキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラエチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)−5,5′,7,7′−テトラエチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)−5,5′,7,7′−テトラエチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)−5,5′,7,7′−テトラエチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)−5,5′,7,7′−テトラエチル−1,1′−ビアダマンタンなどの、アダマンタン環の橋頭位にエチル基が4つ結合したビアダマンタンモノフェノール誘導体;3−(4−ヒドロキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラブチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)−5,5′,7,7′−テトラブチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)−5,5′,7,7′−テトラブチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)−5,5′,7,7′−テトラブチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)−5,5′,7,7′−テトラブチル−1,1′−ビアダマンタンなどの、アダマンタン環の橋頭位にブチル基が4つ結合したビアダマンタンモノフェノール誘導体;3−(4−ヒドロキシフェニル)−5,5′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−ヒドロキシフェニル)−5′,7′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)−5,5′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)−5,5′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)−5,5′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)−5,5′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタンなどの、アダマンタン環の橋頭位にメチル基が2つ結合したビアダマンタンモノフェノール誘導体;前記アダマンタン環の橋頭位にメチル基が2つ結合したビアダマンタンモノフェノール誘導体に対応するアダマンタン環の橋頭位にエチル基が2つ結合したビアダマンタンモノフェノール誘導体;前記アダマンタン環の橋頭位にメチル基が2つ結合したビアダマンタンモノフェノール誘導体に対応するアダマンタン環の橋頭位にブチル基が2つ結合したビアダマンタンモノフェノール誘導体;3−(4−ヒドロキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−ヒドロキシフェニル)−5,5′−ビス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ビス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−ヒドロキシフェニル)−5′,7′−ビス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタンなどの、アダマンタン環の橋頭位にトリフルオロメチル基が結合したビアダマンタンモノフェノール誘導体;3−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラブチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラブチル−1,1′−ビアダマンタンなどの、ベンゼン環に置換基を有するビアダマンタンモノフェノール誘導体;及びこれらの化合物のフェノール性ヒドロキシル基が保護基で保護された化合物又は塩などが挙げられる。
【0027】
本発明のビアダマンタンフェノール誘導体のうちビアダマンタンビスフェノール誘導体の代表的な例として、例えば、3,3′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンなどの、アダマンタン環の橋頭位にメチル基が4つ結合したビアダマンタンビスフェノール誘導体;3,3′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラエチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)−5,5′,7,7′−テトラエチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)−5,5′,7,7′−テトラエチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)−5,5′,7,7′−テトラエチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)−5,5′,7,7′−テトラエチル−1,1′−ビアダマンタンなどの、アダマンタン環の橋頭位にエチル基が4つ結合したビアダマンタンビスフェノール誘導体;3,3′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラブチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)−5,5′,7,7′−テトラブチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)−5,5′,7,7′−テトラブチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)−5,5′,7,7′−テトラブチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)−5,5′,7,7′−テトラブチル−1,1′−ビアダマンタンなどの、アダマンタン環の橋頭位にブチル基が4つ結合したビアダマンタンビスフェノール誘導体;3,3′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,5′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5′,7′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)−5,5′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)−5,5′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)−5,5′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)−5,5′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタンなどの、アダマンタン環の橋頭位にメチル基が2つ結合したビアダマンタンビスフェノール誘導体;前記アダマンタン環の橋頭位にメチル基が2つ結合したビアダマンタンビスフェノール誘導体に対応するアダマンタン環の橋頭位にエチル基が2つ結合したビアダマンタンビスフェノール誘導体;前記アダマンタン環の橋頭位にメチル基が2つ結合したビアダマンタンビスフェノール誘導体に対応するアダマンタン環の橋頭位にブチル基が2つ結合したビアダマンタンビスフェノール誘導体;3,3′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,5′−ビス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ビス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5′,7′−ビス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタンなどの、アダマンタン環の橋頭位にトリフルオロメチル基が結合したビアダマンタンビスフェノール誘導体;3,3′−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラブチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラブチル−1,1′−ビアダマンタンなどの、ベンゼン環に置換基を有するビアダマンタンビスフェノール誘導体;及びこれらの化合物のフェノール性ヒドロキシル基が保護基で保護された化合物又は塩などが挙げられる。
【0028】
本発明のビアダマンタンフェノール誘導体のなかでも、2つのアダマンタン環の何れか一方に式(2)で表される基が1つ結合した化合物、及び2つのアダマンタン環のそれぞれに1つずつ式(2)で表される基が結合した化合物が好ましい。また、とりわけ、R1、R3、R4、R6が、それぞれ、炭素数1〜6のハロゲン原子を有していてもよいアルキル基であり、R2及びR5のうち1つ又は2つが式(2)で表される基である化合物が好ましい。
【0029】
本発明のビアダマンタンフェノール誘導体は、本発明のビアダマンタンフェノール誘導体の製造法により得ることができる。本発明の製造法では、前記式(3)で表されるビアダマンタン誘導体と、前記式(4)で表されるフェノール又はその誘導体とを反応させて、前記式(5)で表されるビアダマンタンフェノール誘導体を得る。
【0030】
式(3)中、X1、X2、X3、X4、X5、X6は、同一又は異なって、水素原子、前記式(2)で表される基、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基、又はその他の置換基を示す。R7、R8は、それぞれ、アダマンタン環の橋頭位以外に結合している置換基を示す。m、nは、それぞれ、0〜12の整数を示す。式(2)で表される基が複数個存在する場合、各R9は同一であっても異なっていてもよい。R7、R8は、それぞれ、複数個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。但し、X1、X2、X3、X4、X5、X6のうち少なくとも1つは脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基Zである。
【0031】
1〜X6における前記その他の置換基としては、前記R1等におけるその他の置換基と同様である。式(2)で表される基、R7、R8、m、nは前記と同じである。
【0032】
脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基として、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、−ONO2、ヒドリド(H)などが挙げられる。特に、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、−ONO2が好ましい。
【0033】
式(3)で表される化合物の代表的な例[脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基としてヒドロキシル基、ハロゲン原子又は−ONO2を1つ有する化合物]として、例えば、3−ブロモ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−クロロ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−ヨード−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−フルオロ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−ヒドロキシ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−ニトロオキシ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンなどの、アダマンタン環の橋頭位にメチル基が4つ結合したビアダマンタン誘導体;3−ブロモ−5,5′,7,7′−テトラエチル−1,1′−ビアダマンタン、3−クロロ−5,5′,7,7′−テトラエチル−1,1′−ビアダマンタン、3−ヨード−5,5′,7,7′−テトラエチル−1,1′−ビアダマンタン、3−フルオロ−5,5′,7,7′−テトラエチル−1,1′−ビアダマンタン、3−ヒドロキシ−5,5′,7,7′−テトラエチル−1,1′−ビアダマンタン、3−ニトロオキシ−5,5′,7,7′−テトラエチル−1,1′−ビアダマンタンなどの、アダマンタン環の橋頭位にエチル基が4つ結合したビアダマンタン誘導体;3−ブロモ−5,5′,7,7′−テトラブチル−1,1′−ビアダマンタン、3−クロロ−5,5′,7,7′−テトラブチル−1,1′−ビアダマンタン、3−ヨード−5,5′,7,7′−テトラブチル−1,1′−ビアダマンタン、3−フルオロ−5,5′,7,7′−テトラブチル−1,1′−ビアダマンタン、3−ヒドロキシ−5,5′,7,7′−テトラブチル−1,1′−ビアダマンタン、3−ニトロオキシ−5,5′,7,7′−テトラブチル−1,1′−ビアダマンタンなどの、アダマンタン環の橋頭位にブチル基が4つ結合したビアダマンタン誘導体;3−ブロモ−5,5′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−ブロモ−5,7−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−ブロモ−5′,7′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−クロロ−5,5′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−ヨード−5,5′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−フルオロ−5,5′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−ヒドロキシ−5,5′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−ヒドロキシ−5,7−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−ヒドロキシ−5′,7′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−ニトロオキシ−5,5′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタンなどの、アダマンタン環の橋頭位にメチル基が2つ結合したビアダマンタン誘導体;前記アダマンタン環の橋頭位にメチル基が2つ結合したビアダマンタン誘導体に対応するアダマンタン環の橋頭位にエチル基が2つ結合したビアダマンタン誘導体;前記アダマンタン環の橋頭位にメチル基が2つ結合したビアダマンタン誘導体に対応するアダマンタン環の橋頭位にブチル基が2つ結合したビアダマンタン誘導体;3−ブロモ−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3−クロロ−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3−ヨード−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3−フルオロ−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3−ヒドロキシ−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3−ニトロオキシ−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3−ブロモ−5,5′−ビス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3−ブロモ−5,7−ビス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3−ブロモ−5′,7′−ビス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3−ヒドロキシ−5,5′−ビス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3−ヒドロキシ−5,7−ビス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3−ヒドロキシ−5′,7′−ビス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタンなどの、アダマンタン環の橋頭位にトリフルオロメチル基が結合したビアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0034】
式(3)で表される化合物の他の代表的な例[脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基としてヒドロキシル基、ハロゲン原子又は−ONO2を、2つのアダマンタン環にそれぞれ1つずつ有する化合物]として、例えば、3,3′−ジブロモ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジクロロ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジヨード−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジフルオロ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジヒドロキシ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(ニトロオキシ)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンなどの、アダマンタン環の橋頭位にメチル基が4つ結合したビアダマンタン誘導体;3,3′−ジブロモ−5,5′,7,7′−テトラエチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジクロロ−5,5′,7,7′−テトラエチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジヨード−5,5′,7,7′−テトラエチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジフルオロ−5,5′,7,7′−テトラエチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジヒドロキシ−5,5′,7,7′−テトラエチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(ニトロオキシ)−5,5′,7,7′−テトラエチル−1,1′−ビアダマンタンなどの、アダマンタン環の橋頭位にエチル基が4つ結合したビアダマンタン誘導体;3,3′−ジブロモ−5,5′,7,7′−テトラブチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジクロロ−5,5′,7,7′−テトラブチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジヨード−5,5′,7,7′−テトラブチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジフルオロ−5,5′,7,7′−テトラブチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジヒドロキシ−5,5′,7,7′−テトラブチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(ニトロオキシ)−5,5′,7,7′−テトラブチル−1,1′−ビアダマンタンなどの、アダマンタン環の橋頭位にブチル基が4つ結合したビアダマンタン誘導体;3,3′−ジブロモ−5,5′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジブロモ−5,7−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ブロモ−5′,7′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジクロロ−5,5′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン3,3′−ジヨード−5,5′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジフルオロ−5,5′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジヒドロキシ−5,5′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ヒドロキシ−5,7−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジヒドロキシ−5′,7′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(ニトロオキシ)−5,5′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタンなどの、アダマンタン環の橋頭位にメチル基が2つ結合したビアダマンタン誘導体;前記アダマンタン環の橋頭位にメチル基が2つ結合したビアダマンタン誘導体に対応するアダマンタン環の橋頭位にエチル基が2つ結合したビアダマンタン誘導体;前記アダマンタン環の橋頭位にメチル基が2つ結合したビアダマンタン誘導体に対応するアダマンタン環の橋頭位にブチル基が2つ結合したビアダマンタン誘導体;3,3′−ジブロモ−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジクロロ−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジヨード−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジフルオロ−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジヒドロキシ−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(ニトロオキシ)−5,5′、7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジブロモ−5,5′−ビス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジブロモ−5,7−ビス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジブロモ−5′,7′−ビス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジヒドロキシ−5,5′−ビス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジヒドロキシ−5,7−ビス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジヒドロキシ−5′,7′−ビス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタンなどの、アダマンタン環の橋頭位にトリフルオロメチル基が結合したビアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0035】
前記式(4)において、R9は水素原子、フェノール性ヒドロキシル基の保護基、又はフェノール塩を形成する原子又は原子団を示す。このR9は前記式(2)におけるR9と同一でもよく異なっていてもよい。ベンゼン環は−OR9以外の置換基を有していてもよい。−OR9基は式中に示す水素原子の結合部位に対して、オルト位、メタ位、パラ位の何れであってもよいが、パラ位であるのが特に好ましい。R9におけるフェノール性ヒドロキシル基の保護基、フェノール塩を形成する原子又は原子団は前記と同様である。また、式(4)において、ベンゼン環が有していてもよい置換基としては、前記式(2)の場合と同様である。
【0036】
式(4)で表されるフェノール又はその誘導体の代表的な例として、フェノール、カテコール、2−ブロモフェノール、3−ブロモフェノール、2−クロロフェノール、3−クロロフェノール、2−フルオロフェノール、3−フルオロフェノール、2−ヨードフェノール、3−ヨードフェノール、2−メチルフェノール、3−メチルフェノール、2−エチルフェノール、3−エチルフェノール、2−プロピルフェノール、3−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、2−ブチルフェノール、3−ブチルフェノール、2−イソブチルフェノール、3−イソブチルフェノール、2−s−ブチルフェノール、3−s−ブチルフェノール、2−t−ブチルフェノール、3−t−ブチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2−フェニルフェノール、3−フェニルフェノール;及びこれらの化合物のフェノール性ヒドロキシル基が保護基で保護された化合物又は塩などが挙げられる。
【0037】
式(3)で表されるビアダマンタン誘導体と式(4)で表されるフェノール又はその誘導体との反応において、式(3)で表されるビアダマンタン誘導体としては、単独の化合物を用いてもよく、2種以上の化合物の混合物を用いてもよい。
【0038】
式(3)で表されるビアダマンタン誘導体と式(4)で表されるフェノール又はその誘導体との反応は、反応に不活性な溶媒の存在下又は溶媒非存在下で行われる。前記溶媒として、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエンなどの炭化水素;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの鎖状又は環状エーテル;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル;酢酸エチルなどのエステル;酢酸などのカルボン酸;N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン;ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ化合物;これらの混合物などが挙げられる。
【0039】
式(4)で表されるフェノール又はその誘導体の使用量は、式(2)で表される基の導入個数に応じて適宜選択できる。例えば、式(3)で表されるビアダマンタン誘導体1分子当たり式(2)で表される基を1個導入する場合には、式(4)で表されるフェノール又はその誘導体の使用量は、一般に、式(3)で表されるビアダマンタン誘導体1モルに対して、0.8〜30モル、好ましくは1〜20モル、さらに好ましくは1.5〜10モル程度である。フェノール又はその誘導体を大過剰量用いてもよい。
【0040】
本発明の方法では、反応を促進させるため、系内にプロトン酸やルイス酸、塩基を添加するのが好ましい。例えば、式(3)で表されるビアダマンタン誘導体として、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基がヒドロキシル基又は−ONO2基である化合物を用いる場合には、反応速度を速くするため、酸(特にプロトン酸)の存在下で反応を行うのが好ましい。酸としては、例えば、硫酸、塩化水素、臭化水素、硝酸、リン酸等の無機酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのスルホン酸類;酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸;ヘテロポリ酸;陽イオン交換樹脂などが挙げられる。これらのなかでも、強酸、例えば、塩化水素、硫酸などの無機酸、p−トルエンスルホン酸などのスルホン酸類、ヘテロポリ酸、強酸性陽イオン交換樹脂などが好ましい。酸の使用量は、例えば、式(3)で表されるビアダマンタン誘導体1モルに対して、0.01〜50モル、好ましくは0.1〜20モル程度である。
【0041】
また、式(3)で表されるビアダマンタン誘導体として、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基がハロゲン原子である化合物(ビアダマンタンハライド誘導体)を用いる場合には、通常加熱下で反応を行う。この際、副生するハロゲン化水素を捕捉するため、反応を適宜な塩基の存在下で行ってもよい。また、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基がハロゲン原子である化合物を用いる場合には、ルイス酸(FeBr3、FeCl3、AlBr3、AlCl3など)の存在下で反応(フリーデルクラフト反応)を行ってもよい。ルイス酸の使用量は、例えば、式(3)で表されるビアダマンタン誘導体1モルに対して、0.001〜50モル、好ましくは0.05〜20モル程度である。
【0042】
式(3)で表されるビアダマンタン誘導体と式(4)で表されるフェノール又はその誘導体との反応における反応温度は、反応成分の種類等に応じて適宜選択できる。例えば、式(3)で表されるビアダマンタン誘導体として、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基がヒドロキシル基である化合物(ビアダマンタノール誘導体)等を用いる場合には、反応温度は、例えば10〜200℃、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは60〜130℃程度である。また、式(3)で表されるビアダマンタン誘導体として、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基がハロゲン原子である化合物等を用いる場合には、反応温度は、例えば100〜250℃、好ましくは130〜220℃程度である。なお、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基がハロゲン原子である化合物を用いる場合において、ルイス酸を使用する時には、反応温度は、例えば−50℃〜200℃、好ましくは−20℃〜150℃、さらに好ましくは−10℃〜100℃程度である。
【0043】
なお、式(4)で表されるフェノール又はその誘導体の使用量[式(3)で表されるビアダマンタン誘導体との当量比]やその他の反応条件を調整することにより、式(3)で表されるビアダマンタン誘導体中の脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基としてのハロゲン原子やヒドロキシル基等の一部を未反応のまま残して、分子内にフェノール骨格と共にハロゲン原子やヒドロキシ基等を有する式(5)で表される化合物を製造することができる。反応は、回分式、半回分式、連続式等の何れの方式で行ってもよい。上記の触媒や反応促進剤は、反応の初期に一括添加してもよく、反応の進行と共に逐次添加してもよい。
【0044】
上記反応(脱ハロゲン化水素反応、脱水縮合反応等)により、式(3)で表される化合物における脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基の結合部位に、式(2)で表される基が結合した対応する式(5)で表されるビアダマンタンフェノール誘導体が生成する。式(5)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6は、同一又は異なって、水素原子、前記式(2)で表される基、又はその他の置換基を示す。R7、R8は、それぞれ、アダマンタン環の橋頭位以外に結合している置換基を示す。m、nは、それぞれ、0〜12の整数を示す。式(2)で表される基が複数個存在する場合、各R9は同一であっても異なっていてもよい。また、R7、R8は、それぞれ、複数個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。但し、R1、R2、R3、R4、R5、R6のうち少なくとも1つは、反応により導入された式(2)で表される基である。
【0045】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8における式(2)で表される基、その他の置換基、アダマンタン環の橋頭位以外に結合している置換基は前記と同様である。
【0046】
反応終了後、反応生成物は、例えば、液性調整、濾過、濃縮、晶析、洗浄、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の一般的な分離精製手段により分離精製できる。
【0047】
式(5)で表されるビアダマンタンフェノール誘導体を晶析により精製する場合、晶析溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタンなどの環状又は鎖状エーテル;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン;トルエン、シクロヘキサン、ヘキサンなどの炭化水素(芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、脂肪族炭化水素);クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール;酢酸エチルなどのエステル;酢酸などのカルボン酸;アセトニトリルなどのニトリル;水;これらの混合溶媒などが挙げられる。
【0048】
晶析法としては、例えば、反応生成物を適宜な溶媒(例えば、テトラヒドロフラン等のエーテル、アセトン等のケトン、トルエン等の炭化水素、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素、エタノール等のアルコール、これらの混合液など)に(加熱)溶解させ、必要に応じて濃縮した後、冷却する方法、良溶媒と貧溶媒とを組み合わせた方法、水溶性有機溶媒(テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、アセトン、メタノール、エタノール、ブタノール、アセトニトリルなど)と水とから晶析する方法などが挙げられる。
【0049】
式(5)で表されるビアダマンタンフェノール誘導体において、R9がフェノール性ヒドロキシル基の保護基である化合物は、上記方法により式(3)で表される化合物とフェノールとを反応させてR9が水素原子である式(5)の化合物を製造した後、この化合物のフェノール性ヒドロキシル基に、所望の保護基を慣用の保護基導入反応(アシル化反応、エーテル化反応等)を用いて導入することにより製造することもできる。
【0050】
また、式(5)で表されるビアダマンタンフェノール誘導体において、R9がフェノール塩を形成する原子又は原子団である化合物は、上記方法により式(3)で表される化合物とフェノールとを反応させてR9が水素原子である式(5)の化合物を製造した後、この化合物に塩基(例えば、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩、アミン等)を反応させることにより製造することもできる。
【0051】
なお、式(5)で表されるビアダマンタンフェノール誘導体のうち、R9やベンゼン環の置換基が互いに異なる式(2)で表される基を2以上有する化合物は、例えば、上記方法によって式(2)で表される基を1つ有する式(5)で表される化合物を合成した後、異なる置換基を有する式(2)で表される基を導入すべき位置に、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基を導入し、再び上記の方法にしたがって式(4)で表されるフェノール又はその誘導体を反応させることにより得ることができる。脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基の導入は後述の方法により行うことができる。
【0052】
本発明のビアダマンタンフェノール誘導体の製造法において原料として用いる前記式(3)で表されるビアダマンタン誘導体は、例えば以下の方法により得ることができる。式(3)で表されるビアダマンタン誘導体のうち、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基がハロゲン原子であるハロビアダマンタン誘導体(ビアダマンタンハライド誘導体)は、ハロゲン原子を導入すべき位置が水素原子である対応するビアダマンタン誘導体にハロゲン化剤を反応させることにより製造できる。
【0053】
前記ハロゲン化剤としては、例えば、フッ素(F2)、塩素(Cl2)、臭素(Br2)、ヨウ素(I2)のハロゲン;第3級アルキルハライド(例えば、t−ブチルブロミド、t−ブチルクロリド、t−アミルブロミド、t−アミルクロリドなど)、N−ブロモスクシンイミド、三臭化ホウ素、四臭化炭素、塩化スルフリルなどの系中でハロゲンを発生するハロゲン化剤などが挙げられる。反応は反応に不活性な溶媒の存在下又は溶媒非存在下で行われる。溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、臭化メチレン、ジブロモプロパン、ジブロモブタン、ブロモクロロメタン、ブロモクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素などが好ましく用いられる。反応速度や選択率を向上させるために、上記ハロゲン化剤ととともに触媒を用いることもできる。触媒としては、例えば、無水塩化第二鉄、無水臭化第二鉄、無水塩化アルミニウム、無水臭化アルミニウム、無水塩化亜鉛、無水臭化亜鉛、無水四塩化チタン等のルイス酸、五酸化リン(P25)、五塩化リン(PCl5)等のリン化合物、三臭化ホウ素(BBr3)等のホウ素化合物などが挙げられる。
【0054】
ハロゲン化剤の使用量は、ハロゲン化剤の種類や導入するハロゲン原子の数などによって適宜選択できる。ハロゲン化剤としてハロゲンを用いる場合、その量は、一般に、ハロゲン化反応に付すビアダマンタン誘導体1モルに対して、0.8〜100モル程度であり、ハロゲンを大過剰量用いてもよい。ハロゲンと共にルイス酸等の触媒を用いる場合の触媒の量は、例えば、ハロゲン化反応に付すビアダマンタン誘導体に対して0.01〜50重量%程度の範囲から適宜選択できる。ハロゲン化反応の反応温度は、例えば−20℃〜150℃、好ましくは0〜80℃程度である。反応は、回分式、半回分式、連続式等の何れの方式で行ってもよい。上記ハロゲン化反応により、アダマンタン環の前記水素原子がハロゲン原子に置き換わったハロビアダマンタン誘導体が生成する。反応終了後、反応生成物は、必要に応じて残存するハロゲン化剤を還元して分解した後、液性調整、抽出、晶析、洗浄、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の一般的な分離精製手段に付すことにより分離精製できる。
【0055】
なお、上記のハロゲン原子を導入すべき位置が水素原子である対応するビアダマンタン誘導体は、ハロモノアダマンタン誘導体のカップリング反応(クロスカップリング反応を含む)により得ることができ、また、前記ハロモノアダマンタン誘導体は、モノアダマンタン誘導体のハロゲン化することにより製造することができる。カップリング反応及びハロゲン化反応は公知の方法により行うことができる。
【0056】
式(3)で表されるビアダマンタン誘導体のうち、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基がヒドロキシル基であるヒドロキシビアダマンタン誘導体は、ヒドロキシル基を導入すべき位置がハロゲン原子である対応するハロビアダマンタン誘導体(前記ハロビアダマンタン誘導体)を加水分解することにより製造できる。
【0057】
加水分解は、酸加水分解、アルカリ加水分解等の通常行われる加水分解法を採用できる。酸加水分解で用いる酸としては、例えば、塩酸、硫酸等の無機酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のスルホン酸類、強酸性陽イオン交換樹脂などが挙げられる。アルカリ加水分解で用いるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物などのアルカリ金属含有化合物などが挙げられる。アルカリの使用量及び水の使用量は、ヒドロキシル基の導入数等により適宜選択できる。酸は触媒量用いてもよい。反応は水の存在下で行われるが、反応成分の溶解性を高めるため、反応系に有機溶媒を添加してもよい。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類などの水溶性有機溶媒が用いられる。反応温度は、例えば30〜110℃程度である。加水分解は、回分式、半回分式、連続式等の何れの方式で行ってもよい。このような加水分解反応により、アダマンタン環の前記ハロゲン原子がヒドロキシル基に置き換わったヒドロキシビアダマンタン誘導体が生成する。反応生成物は、液性調整、抽出、晶析、洗浄、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の一般的な分離精製手段により分離精製できる。
【0058】
なお、本発明におけるビアダマンタンフェノール誘導体のうちアダマンタン環にフェノール骨格と共に、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子を有していてもよいアルコキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル(ハロ)アルキル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいスルホ基、保護基で保護されていてもよいアシル基、シアノ基、ニトロ基、オキソ基(=O)等の置換基を有する化合物において、これらの置換基の導入は、ビアダマンタンフェノール誘導体を製造するどの段階で行ってもよい。すなわち、例えば、モノアダマンタン誘導体をハロゲン化してハロモノアダマンタン誘導体とし、このハロモノアダマンタン誘導体をカップリング反応に付してビアダマンタン誘導体を得、このビアダマンタン誘導体をハロゲン化してハロビアダマンタン誘導体とし、さらにこのハロビアダマンタン誘導体から本発明におけるビアダマンタンフェノール誘導体を製造するか、又は、前記ハロビアダマンタン誘導体を上記のように加水分解してヒドロキシビアダマンタン誘導体をし、このヒドロキシビアダマンタン誘導体から本発明におけるビアダマンタン誘導体を製造する場合、前記モノアダマンタン誘導体、ビアダマンタン誘導体等のどの段階で前記置換基を導入してもよい。また、本発明におけるビアダマンタンフェノール誘導体のフェノール骨格に結合している置換基の導入も、フェノール又はその誘導体の段階で導入してもよく、ビアダマンタンフェノール誘導体のベンゼン環に導入してもよい。これらの置換基の導入は、公知の方法又は公知の反応を利用することにより行うことができる。
【0059】
式(1)で表されるビアダマンタンフェノール誘導体は、非常に安定で対称性に優れた炭素骨格であるアダマンタン骨格が2つ直接結合しており、反応性官能基として利用できるフェノール骨格を有しているとともに、溶媒に対する溶解性に優れるので誘導体の合成が容易である。そのため、耐熱性、耐水性、光学特性、光透過性、低誘電率性、吸水性、密着性などの電気特性、熱特性、機械特性及び物理特性などに優れた各種高機能性ポリマー等の機能性材料、例えば、フレキシブル配線板(ベース材、カバー材)材料、CCL(銅張り積層板)材料、半導体デバイスや多層配線基板の層間絶縁膜材料、液晶配向膜材料、塗料材料、光学材料等の原料(モノマー)、添加剤などとして有用である。
【実施例】
【0060】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0061】
製造例1
窒素雰囲気下、1−ブロモ−3,5−ジメチルアダマンタン50.0g(0.21mol)、n−オクタン100.0g、ナトリウム1.55g(66.8mmol)の混合溶液を110℃に加熱撹拌した。2時間後、ナトリウム4.6g(0.20mol)を8時間かけて少しずつ加え、その後、2時間加熱撹拌した。反応混合液を60℃まで冷却し、エタノールを50g加えて30分撹拌した後、熱濾過し、エタノール、水、エタノールで順次洗浄した。得られた結晶とトルエン100gを80℃で1時間加熱撹拌した後、熱濾過し、濾液を濃縮した。濃縮液を冷却し、メタノール40gを加えて晶析し、析出した結晶を濾別し、乾燥した。その結果、3,3′,5,5′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンを36.9g、収率55%で得られた。
【0062】
製造例2
窒素雰囲気下、3,3′,5,5′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン20g(61.2mmol)と四塩化炭素360g、臭素244g(1.53mol)の混合溶液を30℃で70時間撹拌した。反応混合液を300gの氷水に加え、亜硫酸ナトリウムで未反応臭素を還元した。還元後の溶液にクロロホルム120gを加えて分液した。有機層を水で洗浄した後、該有機層を40℃で濃縮した。濃縮後、カラムクロマトグラフィーにより単離したところ、3−ブロモ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンが29%の収率で得られた。
【0063】
製造例3
3−ブロモ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン20g(49.3mmol)、5重量%塩酸221.9g、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)360gの混合溶液を100℃、24時間加熱撹拌した。反応溶液を10℃まで冷却し、析出した結晶を濾別し、水、アセトンで洗浄したところ、3−ヒドロキシ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンが90%の収率で得られた。
【0064】
実施例1
窒素雰囲気下、3−ヒドロキシ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン1.3g(3.8mmol)と2−ブロモフェノール4.8g(28mmol)、濃硫酸0.41g(4.1mmol)の混合液を90℃で2時間加熱撹拌した。反応混合液を60℃に冷却後、メタノールを添加し、さらに冷却して室温になった時に10重量%水酸化ナトリウム水溶液と水を加え、析出した結晶を濾別した。結晶にテトラヒドロフラン(THF)とエタノールを加え、60℃で加熱撹拌した後、熱濾過し、濾液を濃縮した。濃縮液にメタノールを添加して晶析し、析出した結晶を濾別したところ、下記式で表される3−(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンが40%の収率で得られた。
1H−NMR(CDCl3, 500MHz) δ:0.8(s, 6H), 0.9(s, 6H), 1.2(m, 17H), 1.4(m, 7H), 2.0(m, 1H), 6.9(d, 1H), 7.2(dd, 1H), 7.4(d,1H)
GC/MS−spectrometry 498 m/z [EI法]
【化8】

【0065】
実施例2
窒素雰囲気下、3−ブロモ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン1.0g(1.7mmol)とフェノール2.3g(24mmol)の混合液を80℃で30分加熱撹拌した後、160℃に昇温し、1時間熟成した。反応混合液を80℃に冷却後、水を添加し、さらに冷却して60℃になった時にメタノールを加え、析出した結晶を濾別した。結晶にテトラヒドロフラン(THF)とエタノールを加え、60℃で加熱撹拌して結晶を溶解させた後、濾過し、濾液を濃縮した。濃縮液にメタノールを添加して晶析し、析出した結晶を濾別したところ、下記式で表される3−(4−ヒドロキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンが51%の収率で得られた。
1H−NMR(CDCl3, 500MHz) δ:0.8(s, 6H), 0.9(s, 6H), 1.1(m, 15H), 1.4(m, 6H), 1.6(s, 3H), 2.0(m, 1H), 4.6(s, 1H), 6.8(d, 2H), 7.2(d, 2H)
GC/MS−spectrometry 418 m/z [EI法]
【化9】

【0066】
実施例3
窒素雰囲気下、3,3′−ジブロモ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン2.0g(4.1mmol)とフェノール9.8g(103.2mmol)の混合液を160℃で3時間加熱撹拌した。反応混合液を30℃に冷却後、アセトニトリルを加え、析出した結晶を濾別した。結晶にテトラヒドロフラン(THF)を加え、60℃で加熱溶解し、濃縮後、水及びアセトニトリルを添加して晶析した。析出した結晶を濾別したところ、下記式で表される3,3′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンが82%の収率で得られた。
1H−NMR(d-THF, 500MHz) δ:0.6(s, 12H), 0.8(q, 4H), 0.9-1.2(m, 20H), 6.3(d, 4H), 6.8(d, 4H), 7.5(s, 2H)
LC/MS−spectrometry 509 m/z [M-H]-
【化10】

【0067】
試験例1
実施例1で得られた3−(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン10mgを、エタノール1g、メチルエチルケトン1g、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−モノアセテート1g、N−メチル−2−ピロリドン1gの各溶媒に溶解させたところ、何れの場合も容易に溶解した。
【0068】
比較試験例1
3−(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタン10mgを、エタノール1g、メチルエチルケトン1g、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−モノアセテート1g、N−メチル−2−ピロリドン1gの各溶媒に溶解させたところ、何れの場合もほとんど溶解しなかった。
【0069】
試験例2
実施例3で得られた3,3′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン10mgを、エタノール1g、アセトン1g、テトラヒドロフラン1g、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−モノアセテート1g、N−メチル−2−ピロリドン1gの各溶媒に溶解させたところ、何れの場合も容易に溶解した。
【0070】
比較試験例2
3,3′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタン10mgを、エタノール1g、アセトン1g、テトラヒドロフラン1g、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−モノアセテート1g、N−メチル−2−ピロリドン1gの各溶媒に溶解させたところ、何れの場合もほとんど溶解しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は、同一又は異なって、水素原子、下記式(2)
【化2】

(式中、R9は水素原子、フェノール性ヒドロキシル基の保護基、又はフェノール塩を形成する原子又は原子団を示す。ベンゼン環は−OR9以外の置換基を有していてもよい)
で表される基、又はその他の置換基を示す。R7、R8は、それぞれ、アダマンタン環の橋頭位以外に結合している置換基を示す。m、nは、それぞれ、0〜12の整数を示す。式(2)で表される基が複数個存在する場合、各R9は同一であっても異なっていてもよい。また、R7、R8は、それぞれ、複数個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。但し、R1、R2、R3、R4、R5、R6のうち少なくとも1つは式(2)で表される基であり、R1、R2、R3、R4、R5、R6、m個のR7、n個のR8のうち少なくとも1つはハロゲン原子を有していてもよいアルキル基である。式中の2つのアダマンタン環に式(2)で表される基がそれぞれ1つずつ結合している場合には、2つのR9は同時にアルキル基であることはない]
で表されるビアダマンタンフェノール誘導体。
【請求項2】
1、R3、R4、R6が、それぞれ、炭素数1〜6のハロゲン原子を有していてもよいアルキル基であり、R2及びR5のうち1つ又は2つが式(2)で表される基である請求項1記載のビアダマンタンフェノール誘導体。
【請求項3】
下記式(3)
【化3】

[式中、X1、X2、X3、X4、X5、X6は、同一又は異なって、水素原子、下記式(2)
【化4】

(式中、R9は水素原子、フェノール性ヒドロキシル基の保護基、又はフェノール塩を形成する原子又は原子団を示す。ベンゼン環は−OR9以外の置換基を有していてもよい)
で表される基、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基、又はその他の置換基を示す。R7、R8は、それぞれ、アダマンタン環の橋頭位以外に結合している置換基を示す。m、nは、それぞれ、0〜12の整数を示す。式(2)で表される基が複数個存在する場合、各R9は同一であっても異なっていてもよい。R7、R8は、それぞれ、複数個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。但し、X1、X2、X3、X4、X5、X6のうち少なくとも1つは脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基である]
で表されるビアダマンタン誘導体と、下記式(4)
【化5】

(式中、R9は水素原子、フェノール性ヒドロキシル基の保護基、又はフェノール塩を形成する原子又は原子団を示す。このR9は前記式(2)におけるR9と同一でもよく異なっていてもよい。ベンゼン環は−OR9以外の置換基を有していてもよい)
で表されるフェノール又はその誘導体とを反応させて、下記式(5)
【化6】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は、同一又は異なって、水素原子、下記式(2)
【化7】

(式中、R9は水素原子、フェノール性ヒドロキシル基の保護基、又はフェノール塩を形成する原子又は原子団を示す。ベンゼン環は−OR9以外の置換基を有していてもよい)
で表される基、又はその他の置換基を示す。R7、R8は、それぞれ、アダマンタン環の橋頭位以外に結合している置換基を示す。m、nは、それぞれ、0〜12の整数を示す。式(2)で表される基が複数個存在する場合、各R9は同一であっても異なっていてもよい。また、R7、R8は、それぞれ、複数個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。但し、R1、R2、R3、R4、R5、R6のうち少なくとも1つは式(2)で表される基である]
で表されるビアダマンタンフェノール誘導体を得ることを特徴とするビアダマンタンフェノール誘導体の製造法。
【請求項4】
脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基としてヒドロキシル基を有する式(3)で表されるビアダマンタン誘導体と、式(4)で表されるフェノール又はその誘導体とを、酸触媒存在下で反応させて、式(5)で表されるビアダマンタンフェノール誘導体を得る請求項3記載のビアダマンタンフェノール誘導体の製造法。
【請求項5】
脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基としてハロゲン原子を有する式(3)で表されるビアダマンタン誘導体と、式(4)で表されるフェノール又はその誘導体とを、加熱下又はルイス酸触媒存在下で反応させて、式(5)で表されるビアダマンタンフェノール誘導体を得る請求項3記載のビアダマンタンフェノール誘導体の製造法。

【公開番号】特開2006−199676(P2006−199676A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−168735(P2005−168735)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】