説明

ビス−(アルファ−アミノ−ジオール−ジエステル)を含有するポリエステルアミドを含むコーティング

本発明は、少なくとも1種の生分解性ポリマーを含むコーティングであって、このポリマーが、構造式(II)



(式中、Rは、(C〜C20)アルキレン、(C〜C20)アルケニレン、−(R−CO−O−R10−O−CO−R)−、−CHR11−O−CO−R12−COOCR11−、およびこれらの組合せからなる群から独立に選択され;個々のコモノマーmまたはpにおけるRおよびRは、それぞれ、水素、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルケニル、(C〜C)アルキニル、(C〜C10)アリール、(C)アルキル、−(CH)SH、−(CHS(CH)、−CHOH、−CH(OH)CH、−(CHNH、−(CHNHC(=NH)NH、−CHCOOH、(CH)COOH、−CH−CO−NH、−CHCH−CO−NH、−CHCHCOOH、CH−CH−CH(CH)−、式(a)、HO−p−Ph−CH−、(CHCH−CH−、Ph−NH−、NH−(CH−C−、NH−CH=N−CH=C−CH−からなる群から独立に選択され;RまたはRは、1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環部分からまたは(C〜C20)アルキレン、(C〜C20)アルケニレン、アルキルオキシ、Mwが44Da〜700Daまでの範囲にあるオリゴエチレングリコール、−CH−CH−(CHOH)、CHCH(OH)CHからなる群から独立に選択され、RおよびRは同一でなく、Rは、水素、(C〜C10)アリール、(C)アルキル、またはベンジル等の保護基であるか、または生物活性剤であり;Rは、独立に、(C〜C20)アルキルまたは(C〜C20)アルケニルであり;RまたはR10は、C〜C12アルキレンまたはC〜C12アルケニレンから独立に選択され;R11またはR12は、H、メチル、C〜C12アルキレン、またはC〜C12アルケニレンから独立に選択される)によって表される化学式を有する少なくとも1種のポリ(エステルアミド)(PEA)またはそのブレンドを含む、コーティングに関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、α−アミノ酸−ジオール−ジエステルを含有するポリエステルアミド(PEA)を含むコーティングに関する。
【0002】
α−アミノ酸−ジオール−ジエステルをベースとするポリエステルアミド(PEA)は当該技術分野において周知であり、G.TsitlanadzeらによるJ.Biomater.Sci.Polym.Edn.(2004)15:1〜24には酵素媒介による表面分解を示すことが開示されており、また、炎症性(inflammation profile)が低いことが示されている(K.DeFifeら,Transcatheter Cardiovascular Therapeutics−TCT 2004 Conference)。こうした性質を有するPEAは、多種多様な医療および医薬品用途に極めて優れた材料である。これらを合成する際には、構成単位の3種の成分であるアルファ−アミノ酸、ジオール、および脂肪族ジカルボン酸を単純に変化させることによって物理および機械的性質に加えて生分解特性(biodegradable profile)も調整することができる。
【0003】
α−アミノ酸−ジオール−ジエステルをベースとするポリエステルアミドを含むコーティングおよびステント等の医療器具におけるこれらのポリマーの使用が、欧州特許出願公開第1603485A号に開示されている。欧州特許出願公開第1603485A号明細書は、アルファ−アミノ酸−ジオール−ジエステルをベースとする式I
【化1】



(式中、:
−mは、約0.1〜約0.9であり、pは、約0.9〜約0.1であり、nは、約50〜約150であり、
−R1は、それぞれ独立に、(C1〜C20)アルキレンであり、Rは、それぞれ独立に、水素または(C〜C10)アリール(C1〜C)アルキルであり、
−Rは、それぞれ独立に、水素、(C1〜C)アルキル、(C〜C)アルケニル、(C〜C)アルキニル、または(C〜C10)アリール(C〜C)アルキルであり、R4は、それぞれ独立に、(C〜C20)アルキレンである)のポリエステルアミド(PEA)(さらにPEA−lとも称される)を含むコーティングに関するものである。
【0004】
PEA−lは、アルファ−アミノ酸、ジオール、および脂肪族ジカルボン酸を含む共重合体であり、脂肪族ジカルボン酸にリシンを共重合させたものである。リシン部分のカルボキシル基に生物活性剤を共有結合させることができる。
【0005】
実施例に示されているように、PEA−lのコーティングおよび共有結合した生物活性剤(4−アミンTEMPO等)が一緒にステント上で試験に供されている。このポリマーが安全な形態の生体吸収性ポリマーであることが示されている。しかしながら、この用途は、生物活性剤である4−アミン−TEMPOをPEA−lコーティングから放出させることについては言及していない。
【0006】
一方、PEAおよび生物活性剤を含むコーティングは、そこからの放出が均一であるとともに、そこからの生物活性剤の放出速度を調整できることが必要である。
【0007】
したがって、本発明の目的は、PEAおよび生物活性剤を含むコーティングであって、そこからの放出および放出速度を容易に調整できるコーティングを提供することにある。
【0008】
本発明のさらなる目的は、PEAおよび生物活性剤を含むコーティングであって、そこからの放出パターンが均一であり、最初の24時間に急激な放出が起こらないコーティングを提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、PEAおよび生物活性剤を含むコーティングであって、より長期間に亘る放出パターンを示すことができるコーティングを提供することにある。
【0010】
本発明の目的は、少なくとも1種の生分解性ポリマーおよび分散された生物活性剤を含むコーティングであって、このポリマーが、構造式(II)
【化2】



(式中、
−mは、約0.01〜約0.99であり、pは、約0.99〜約0.01であり、qは、約0.99〜0.01であり、nは、約5〜約100であり、
−Rは、(C〜C20)アルキレン、(C〜C20)アルケニレン、−(R−CO−O−R10−O−CO−R)−、−CHR11−O−CO−R12−COOCR11−、およびこれらの組合せからなる群から独立に選択され、
−個々のコモノマーmまたはpにおけるRおよびRは、それぞれ、水素、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルケニル、(C〜C)アルキニル、(C〜C10)アリール、(C〜C)アルキル、−(CH)SH、−(CHS(CH)、−CHOH、−CH(OH)CH、−(CHNH、−(CHNHC(=NH)NH、−CHCOOH、−(CH)COOH、−CH−CO−NH、−CHCH−CO−NH、−CHCHCOOH、CH−CH−CH(CH)−、(CH−CH−CH−、HN−(CH−、Ph−CH−、CH=C−CH−、HO−p−Ph−CH−、(CH−CH−、Ph−NH−、
【化3】



からなる群から独立に選択され、
−RまたはRは、1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環部分からまたは(C〜C20)アルキレン、(C〜C20)アルケニレン、アルキルオキシ、Mwが44Da〜700Daまでの範囲にあるオリゴエチレングリコール、−CH−CH−(CHOH)、CHCH(OH)CHからなる群から独立に選択され、RおよびRは同一ではなく、RまたはRの少なくとも一方は1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環部分であり、
−Rは、水素、(C〜C10)アリール、(C〜C)アルキル、またはベンジル等の保護基、または生物活性剤であり、
−Rは、独立に、(C〜C20)アルキルまたは(C〜C20)アルケニルであり、
−RまたはR10は、C〜C12アルキレンまたはC〜C12アルケニレンから独立に選択され、
−R11またはR12は、H、メチル、C〜C12アルキレン、またはC〜C12アルケニレンから独立に選択される)で表される化学式を有する少なくとも1種のポリ(エステルアミド)(PEA)またはそのブレンドを含み、留置器具(implantable device)用コーティングとして好適なコーティングを提供することにより達成される。
【0011】
本発明のコーティングは、上に開示した式Iの従来技術のPEAと比較するとブロックpが追加されたポリエステルアミドをベースとするものである。この種のPEAブロック共重合体は生物活性剤の放出という観点で非常に優れた特性を示すとともに、m、p、qブロックの量を調整することにより生物活性剤の放出が調整されるという観点で非常に優れた特性を示すことが見出された。さらに、このポリマーは、共有結合させなくても薬物を保持するので、それによって初期の急激な放出が回避できることが見出された。さらに、このコーティングは、少なくとも20日間生物活性剤を確実に均一に放出する。
【0012】
このようなPEAポリマーは当該技術分野において周知であり、米国特許出願第2008/0299174号明細書に開示されている。米国特許出願第2008/0299174号は、2種類のビス−(a−アミノ酸)をベースとする構成単位を含むビス−(a−アミノ酸)−ジオール−ジエステルをベースとするPEAポリマーを開示しており、このポリマーの機械的性質が大幅に改善されたことを示している。少なくとも2種の線状飽和または不飽和脂肪族ジオール残基をこの2種のビス−(a アミノ酸)ベース(例えば、PEAのビス−(a−アミノ酸)−ジオール−ジエステルコモノマー)に組み込むと、結果として得られるポリマーの伸び特性が向上する。PEA共重合体は、疎水性、比較的高いガラス転移温度(Tg)、および様々な伸び特性または可撓性を両立させることが必要な特定の用途に適しているようである。PEAから作製された固定器具を体腔内部位に固定するさらなる方法が開示されている。この器具は生分解性を有し、実質的に生体適合性を有する分解産物を生成しながら体腔内部位を固定する。同様に、PEA組成物を用いて作製された生体適合性を有する手術器具も開示されている。しかしながら、この開示内容は、生物活性剤を放出するためのPEAベースのコーティングについては言及していない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】PEA IIおよびPEA IIIコーティングに関する4回の測定結果の平均値である。
【0014】
したがって、好ましい実施形態においては、本発明は、一般構造式(II)
(式中、
−mは、約0.01〜約0.99であり、pは、約0.99〜約0.01であり、−qは、約0.99〜0.01であり、nは、約5〜約100であり、
−Rは、(C〜C10)アルキレン((CHや(CH等)または(C〜C20)アルケニレンおよびこれらの組合せからなる群から独立に選択され、
−個々のコモノマーmまたはpにおけるRおよびRは、は、それぞれ、水素、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルケニル、(C〜C)アルキニル、(C〜C10)アリール(C〜C)アルキル、および−(CHS(CH)からなる群から独立に選択され、
−Rは、構造式(III)
【化4】



の1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環部分から選択され、
−Rは、(C〜C20)アルキレン(シクロヘキサンジオール等)、(C〜C20)アルケニレン、またはアルキルオキシからなる群から選択され、
−Rは、ベンジルであり、
−Rは、独立に、(C〜C)アルキルまたは(C〜C)アルケニルである)で表される化学構造を有するPEA共重合体組成物を含むコーティングを提供する。
【0015】
本明細書において用いられる「アルキル」という用語は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ヘキシル等の直鎖または分枝鎖の炭化水素基を指す。
【0016】
本明細書において用いられる「アルケニル」または「アルケニレン」という用語は、本明細書においては、少なくとも1個の不飽和結合を主鎖または側鎖に含む2価の分枝または非分枝の炭化水素鎖を意味する構造式を指す。
【0017】
本明細書において用いられる「アルキニル」は、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を含む直鎖または分枝鎖の炭化水素基を指す。
【0018】
本明細書における構造式を参照して用いられる「アリール」という用語は、フェニル基または少なくとも1個の環が芳香族である約9〜10個の環原子を有するオルト縮合二環式炭素環式基を指す。アリールとしては、これらに限定されるものではないが、フェニル、ナフチル、およびニトロフェニルが挙げられる。
【0019】
共重合体中に使用されるアルファ−アミノ酸の少なくとも1種は天然のアルファ−アミノ酸である。例えば、RまたはRがCHPhである場合、合成に使用される天然のアルファ−アミノ酸はL−フェニルアラニンである。RまたはRがCH−CH(CHである別法においては、共重合体は天然のアミノ酸であるロイシンを含む。本明細書に記載した2種のコモノマーの変化の範囲内でRおよびRを独立に変化させることにより、他の天然のアルファ−アミノ酸、例えば、グリシン(RまたはRがHである場合)、アラニン(RまたはRがCHである場合)、バリン(RまたはRがCH(CHである場合)、イソロイシン(RまたはRがCH(CH)−CH−CHである場合)、フェニルアラニン(RまたはRがCH−Cである場合)、リシン(RまたはRが(CH−NHである場合)、またはメチオニン(RまたはRが−(CHS(CH)である場合、およびこれらの混合物も使用することができる。
【0020】
PEA共重合体は、好ましくは、数平均分子量(Mn)が15,000〜200,000ダルトンの範囲にある。本明細書に記載されたPEA共重合体は、様々な分子量で、かつ共重合体の2種類のビス−(アルファアミノ酸)含有単位および任意的なリシンベースのモノマーの相対的比率を幅広く変化させて作製することができる。具体的な使用に適切な分子量は当業者によって容易に決定される。好適なMnは約15,000〜約100,000ダルトン、例えば、約30,000〜約80,000または約35,000〜約75,000程度であろう。Mnは、THF中、ポリスチレン標準を用いてGPCにより測定される。
【0021】
PEAのさらなる特性および製造方法が米国特許出願第2008/0299174号明細書に開示されており、これを引用により本明細書に組み込む。
【0022】
PEAポリマーの性質がコーティングの表面特性を定める重要な役割を果たすことが見出された。例えば、コーティングの完全性はコーティングを形成するポリマーの性質に大きく依存する。非常に低いTgを付与するポリマーを用いた場合に生成することになるアモルファスのコーティング材は、しわ(crimping)や膨張等の機械的な乱れ(mechanical perturbation)が生じた際のレオロジー挙動が許容できるものではない。他方、高Tgまたは非常に結晶性の高いコーティング材を供するポリマーの場合は、例えば、医療器具にコーティングすると歪みの大きい領域で脆化することになる。本発明のコーティングに使用されるPEAには、2種類のビス(a−アミノ酸)ベースの構成単位の少なくとも一方にジオール残基として組み込まれている1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環部分が含まれ、これによって体温を超えるTgが付与される。PEA中の他の構成単位をさらに変化させることによりTgをさらに調整することができる。好ましくは、PEAのTgは、約40〜約65の範囲にある。TgはDSCにより測定される。
【0023】
驚くべきことに、ポリマーの構成単位を変化させることおよびPEA共重合体のm、p、qブロックの量を変化させることによって放出時間を容易に調整できることが見出された。さらに、ポリマー/薬物比は放出の調整に重要な役割を果たす。好ましくは、ポリマー/薬物比は60/40(重量%/重量%)、より好ましくは、ポリマー/薬物比は70/30(重量%/重量%)である。よりさらに好ましくは、ポリマー/薬物比は75/25(重量%/重量%)である。しかしながら、ポリマー/薬物比は、生物活性剤の性質、用途、および所望のコーティング厚さに依存する。
【0024】
本発明によるコーティングは、好ましくは単層コーティングである。従来技術のコーティングは、通常は生物活性剤の放出を調整するかまたは薬物を含有するPEA層を留置器具表面に付着させるためのさらなる層を必要とするのに、単層コーティングからの放出を調整できるというのは一層驚くべきことである。
【0025】
本発明によるコーティングの厚みは、好ましくは約1μm〜100μmである。より好ましくは、コーティングの厚みは約2〜75μm、よりさらに好ましくは、厚みは約2〜50μm、最も好ましくは、厚みは約2〜15μmである。コーティングは、約12ヵ月以内にその質量を100%喪失することになる。
【0026】
PEAに分散される生物活性剤は、治療薬、予防薬、診断薬等の任意の薬剤であってもよい。これらの薬剤は、抗増殖性または抗炎症性を有するものであってもよいし、あるいは、抗悪性腫瘍性、抗血小板性、抗凝固性、抗フィブリン性、抗血栓性、抗有糸分裂性、抗菌性、抗アレルギー性、または酸化防止性等の他の性質を有するものであってもよい。さらにこれらの薬剤は、シストスタティック(cystostatic)剤、内皮治癒促進剤、または内皮細胞の接着、遊走、および増殖を促進すると同時に平滑筋細胞増殖を阻止する薬剤であってもよい。好適な治療薬および予防薬としては、例えば、治療、予防、または診断活性を有する合成無機および有機化合物、蛋白質およびペプチド、多糖および他の糖類、脂質、ならびにDNAおよびRNA核酸配列が挙げられる。核酸配列としては、遺伝子、相補DNAに結合して転写を阻止するアンチセンス分子、およびリボザイムが挙げられる。他の生物活性剤の幾つかの例として、抗体、受容体リガンド、酵素、接着ペプチド、血液凝固因子、ストレプトキナーゼや組織プラスミノーゲン活性化因子等の阻害薬または血栓溶解剤、免疫化抗原、ホルモンおよび成長因子、アンチセンスオリゴヌクレオチドやリボザイム等のオリゴヌクレオチド、ならびに遺伝子治療用レトロウイルスベクターが挙げられる。抗増殖剤の例としては、ラパマイシンおよびその機能性(functional)または構造誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)およびその機能性または構造誘導体、パクリタキセルならびにその機能性および構造誘導体が挙げられる。ラパマイシン誘導体の例としては、ABT−578、40−0−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、および40−0−テトラゾール−ラパマイシンが挙げられる。パクリタキセル誘導体の例としては、ドセタキセルが挙げられる。抗悪性腫瘍薬および/または抗有糸分裂薬の例としては、メトトレキサート、アザサイオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、塩酸ドキソルビシン(例えば、Pharmacia AND Upjohn,Peapack NJからのAdriamycin(登録商標))、およびマイトマイシン(例えば、Bristol−Myers Squibb Co.,Stamford,Conn.からのMutamycin(登録商標))が挙げられる。この種の抗血小板薬、抗凝固薬、アンチフィブリン、およびアンチトロンビンの例としては、ヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン、ヘパリノイド、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリンおよびプロスタサイクリン同族体、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成アンチトロンビン)、ジピリダモール、糖蛋白Hb/nia血小板膜受容抗体、組換えヒルジン、Angiomax(Biogen,Inc.,Cambridge,Mass.)等のトロンビン阻害薬、カルシウムチャネルブロッカー(ニフェジピン等)、コルヒチン、線維芽細胞増殖因子(FGF)拮抗薬、魚油(オメガ3−脂肪酸)、ヒスタミン拮抗薬、ロバスタチン(HMG−CoA還元酵素の阻害剤、コレステロール低下薬、Merck AND Co.,Inc.,Whitehouse Station,NJからの商標名Mevacor(登録商標))、モノクローナル抗体(血小板由来成長因子(PDGF)受容体に特異的なもの等)、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害薬、プロスタグランジン阻害薬、スラミン、セロトニン受容体拮抗薬(serotonin blocker)、ステロイド、チオプロテアーゼ(thioprotease)阻害薬、トリアゾロピリミジン(PDGF拮抗薬)、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣薬、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリシン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、エストラジオール、抗癌薬、各種ビタミン類等の栄養補助食品、ならびにこれらの組合せが挙げられる。抗炎症薬の例としては、ステロイド系および非ステロイド系抗炎症薬(バイオリムス、タクロリムス、デキサメタゾン、クロベタゾール、コルチコステロイド等)またはこれらの組合せが挙げられる。この種の細胞増殖抑制剤の例としては、アンジオペプチン(angiopeptin)、カプトプリル(例えば、Bristol−Myers Squibb Co.,Stamford,Conn.からのCapoten(登録商標)およびCapozide(登録商標))、シラザプリルまたはリシノプリル(例えば、Merck AND Co.,Inc.,Whitehouse Station,NJからのPrinivil(登録商標)およびPrinzide(登録商標))等のアンジオテンシン変換酵素阻害薬が挙げられる。抗アレルギー薬の例としては、パーミロラスト(permirolast)カリウムがある。適切となり得る他の治療物質またや治療薬としては、アルファ−インターフェロン、ピメクロリムス、メシル酸イマチニブ、ミドスタウリン、および遺伝子組換えされた上皮細胞が挙げられる。前述の物質はまた、そのプロドラッグまたは薬物複合体(codrug)の形態で使用することができる。前述の物質にはまた、その代謝物および/または代謝物のプロドラッグも含まれる。例示的な前述の物質を列挙するが、これらに限定されるものではない。
【0027】
本発明によるコーティングはさらに生物活性剤(これは第2の生物活性剤、さらには第3の生物活性剤も意味している)を含んでいてもよい。このさらなる生物活性剤は上述の生物活性剤から選択することができる。好ましくは、さらなる生物活性剤は、成長因子(VEGF、FGF、MCP−1、PIGF、抗菌薬、抗炎症化合物、血栓形成抑制化合物、跛行改善薬、抗不整脈薬、抗動脈硬化薬、抗ヒスタミン物質、抗癌薬、血管薬、眼科用薬、アミノ酸、ビタミン類、ホルモン類、神経伝達物質、神経ホルモン、酵素、造影剤、シグナル伝達分子、および向精神薬から選択される。
【0028】
本発明によるコーティングは、分散された生物活性剤または微粒子、ナノ粒子、もしくはミセル形態にあるさらなる生物活性剤を含んでいてもよい。
【0029】
さらなる実施形態においては、本発明によるコーティングは、本明細書に記載したPEAポリマーのみから、または1種もしくはそれ以上の他のポリマーと一緒に形成される。代表的なポリマーとしては、これらに限定されるものではないが、ポリ(エステルアミド)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)(ポリ(3−ヒドロキシプロパノエート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3−ヒドロキシヘプタノエート)、ポリ(3−ヒドロキシオクタノエート)等)、ポリ(4−ヒドロキシアルカノエート)、(ポリ(4−ヒドロキシブチレート)、ポリ(4−ヒドロキシバレレート)、ポリ(4−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(4−ヒドロキシヘプタノエート)、ポリ(4−ヒドロキシオクタノエート)等)、および本明細書に記載された3−ヒドロキシアルカノエートまたは4−ヒドロキシアルカノエートモノマーのいずれかを含む共重合体またはそのブレンド、ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(L−乳酸)、ポリグリコール酸、ポリ(D,L−乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ(L−乳酸−コ−グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリ(乳酸−コ−カプロラクトン)、ポリ(グリコール酸−コ−カプロラクトン)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(酸無水物)、ポリ(チロシンカーボネート)およびその誘導体、ポリ(チロシンエステル)およびその誘導体、ポリ(イミノカーボネート)、ポリ(グリコール酸−コ−トリメチレンカーボネート)、ポリリン酸エステル、ポリリン酸エステルウレタン(polyphosphoester urethane)、ポリ(アミノ酸)、ポリシアノアクリレート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリウレタン、ポリホスファゼン、シリコーン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイソブチレンおよびエチレン−アルファオレフィン共重合体、アクリル系ポリマーおよび共重合体、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化ビニルポリマーおよび共重合体、ポリビニルメチルエーテル等のポリビニルエーテル、ポリ塩化ビニリデン等のポリハロゲン化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリスチレン等のポリビニル芳香族化合物、ポリ酢酸ビニル等のポリビニルエステル、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニルモノマー同士の共重合体およびビニルモノマーとオレフィンとの共重合体、ナイロン66、ポリカプロラクタム等のポリアミド、アルキド樹脂、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリ(グリセリルセバシン酸)、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリ(メタクリル酸n−ブチル)、ポリ(メタクリル酸sec−ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸tert−ブチル)、ポリ(メタクリル酸n−プロピル)、ポリ(メタクリル酸イソプロピル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸メチル)、エポキシ樹脂、ポリウレタン、レーヨン、レーヨン−トリアセテート、セルロースアセテート、セルロースブチレート、セルロースアセテートブチレート、セロハン、硝酸セルロース、セルロースプロピオネート、セルロースエーテル、カルボキシメチルセルロース、ポリ(エチレングリコール)(PEG)等のポリエーテル、コポリ(エーテル−エステル)(例えば、PEO/PLA)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)等のポリアルキレンオキシド、ポリ(エーテルエステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、ホスホリルコリン、コリン、ポリ(アスピリン)、HEMA、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、ヒドロキシプロピルメタクリルアミド、PEGアクリレート(PEGA)、PEGメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、n−ビニルピロリドン(VP)等のヒドロキシル含有モノマーの重合体および共重合体、メタクリル酸(MA)、アクリル酸(AA)、アルコキシメタクリレート、アルコキシアクリレート、3−トリメチルシリルプロピルメタクリレート(TMSPMA)等のカルボン酸含有モノマー、ポリ(スチレン−イソプレン−スチレン)−PEG(SIS−PEG)、ポリスチレン−PEG、ポリイソブチレン−PEG、ポリカプロラクトン−PEG(PCL−PEG)、PLA−PEG、ポリ(メタクリル酸メチル)−PEG(PMMA−PEG)、ポリジメチルシロキサン−コ−PEG(PDMS−PEG)、ポリ(フッ化ビニリデン)−PEG(PVDF−PEG)、PLURONIC(商標)界面活性剤(ポリプロピレンオキシド−コ−ポリエチレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)、ヒドロキシ官能性ポリ(ビニルピロリドン)、コラーゲン、キトサン、アルギン酸塩、フィブリン、フィブリノゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン、デキストラン、デキストリン、ヒアルロン酸の断片および誘導体、ヘパリン、ヘパリンの断片および誘導体、グリコサミノグリカン(GAG)、GAG誘導体、多糖類、エラスチン、キトサン、アルギン酸塩等の生体分子、またはこれらの組合せが挙げられる。幾つかの実施形態においては、本明細書に記載されたコーティングは上述したいずれかのポリマーを含まなくてもよい。
【0030】
さらなる実施形態においては、コーティングは生体に有益な(biobeneficial)材料をさらに含み得る。生体に有益な材料は、ポリマーであっても非ポリマーであってもよい。生体に有益な材料は、好ましくは、実質的に無毒性、非抗原性、かつ非免疫原性である。生体に有益な材料は、防汚性、血液適合性、能動的な血栓形成抑制性、または抗炎症性(いずれも医薬活性を有する薬剤の放出に依存しない)を有することにより器具の生体適合性を高めるものである。
【0031】
生体に有益な材料の代表的なものとしては、これらに限定されるものではないが、ポリ(エチレングリコール)等のポリエーテル、コポリ(エーテル−エステル)(例えば、PEO/PLA)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)等のポリアルキレンオキシド、ポリ(エーテルエステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、ホスホリルコリン、コリン、ポリ(アスピリン)、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、メタクリル酸ヒドロキシプロピル(HPMA)、ヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)アクリレート(PEGA)、PEGメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、≪−ビニルピロリドン(VP)等のヒドロキシル含有モノマーの重合体および共重合体、メタクリル酸(MA)、アクリル酸(AA)、アルコキシメタクリレート、アルコキシアクリレート、3−トリメチルシリルプロピルメタクリレート(TMSPMA)等のカルボン酸含有モノマー、ポリ(スチレン−イソプレン−スチレン)−PEG(SIS−PEG)、ポリスチレン−PEG、ポリイソブチレン−PEG、ポリカプロラクトン−PEG(PCL−PEG)、PLA−PEG、ポリ(メタクリル酸メチル)−PEG(PMMA−PEG)、ポリジメチルシロキサン−コ−PEG(PDMS−PEG)、ポリ(フッ化ビニリデン)−PEG(PVDF−PEG)、PLURONIC(商標)界面活性剤(ポリプロピレンオキシド−コ−ポリエチレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)、ヒドロキシ官能性ポリビニルピロリドン)、フィブリン、フィブリノゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン、デキストラン、デキストリン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の断片および誘導体、ヘパリン、ヘパリンの断片および誘導体、グリコサミノグリカン(GAG)、GAG誘導体、多糖類、エラスチン、キトサン、アルギン酸塩等の生体分子、シリコーン、PolyActive(商標)、またはこれらの組合せが挙げられる。幾つかの実施形態においては、コーティングは、上述のいずれかのポリマーを含まなくてもよい。PolyActive(商標)という用語は可撓性を有するポリ(エチレングリコール)およびポリ(ブチレンテレフタレート)ブロックを有するブロック共重合体(PEGTVPBT)を指す。PolyActive(商標)は、PEGやPBT等のセグメントを含む、AB、ABA、BAB型共重合体(例えば、ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(ブチレンテレフタレート)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)(PEG−PBT−PEG)を包含することを意図している。
【0032】
さらに本発明は、本発明によるコーティングを含む留置器具に関する。本明細書において、この留置器具は、アテローム性動脈硬化、血栓症、再狭窄、出血、血管の解離または穿孔、動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、跛行、吻合部狭窄(anastomotic proliferation)(静脈および人工血管の場合)、胆道等の医学的状態の治療、予防、または緩和に使用することができる。
【0033】
本明細書において用いられる留置器具は、患者または患畜に留置することができる任意の好適な医療用基材であってもよい。この種の医療器具としては、自己拡張型ステント、バルーン拡張型ステント、ステントグラフト、グラフト(例えば、大動脈グラフト)、人工心臓弁、髄液シャント、ペースメーカー電極、カテーテル、および心内膜リード(例えば、Guidant Corporation,Santa Clara,CAより入手可能なFINELINEおよびENDOTAK)、吻合器およびコネクタ、整形外科用インプラント(ねじ、脊椎インプラント、電気刺激装置等)が挙げられる。この器具に備わる構造は実質的にいかなる設計のものであってもよい。この器具は金属材料または合金(これらに限定されるものではないが、コバルトクロム合金(ELGILOY)、ステンレス鋼(316L)、高窒素ステンレス鋼、例えば、BIODUR 108、コバルトクロム合金L−605「MP35N」、「MP20N」、ELASTINITE(Nitinol)、タンタル、ニッケルチタン合金、白金インジウム合金、金、マグネシウム、またはこれらの組合せ等)から作製されていてもよい。「MP35N」および「MP20N」は、Standard Press Steel Co.,Jenkintown,PAより入手可能な、コバルト、ニッケル、クロム、およびモリブデンの合金の商品名である。「MP35N」、コバルト35パーセント、ニッケル35パーセント、クロム20パーセント、およびモリブデン10パーセントからなる。「MP20N」は、コバルト50パーセント、ニッケル20パーセント、クロム20パーセント、およびモリブデン10パーセントからなる。生体吸収性(例えば、生体吸収性ステント)または生体安定性ポリマーから作製された器具も本発明の実施形態に使用することができる。
【0034】
好ましくは、留置器具はステントである。本明細書に記載するステントは様々な医療処置、例えば、胆管、食道、気管/気管支、および他の生物学的通路の腫瘍による閉塞の処置等に有用である。上述のコーティングを有するステントは、脂質沈着、単球もしくはマクロファージの浸潤、もしくは内皮機能不全、もしくはこれらの組合せに起因する血管病変の治療、または平滑筋細胞の異常もしくは不適切な遊走および増殖、血栓症、および再狭窄に起因する血管閉塞の治療に特に有用である。ステントは頚部動脈でも静脈でも様々な血管に留置することができる。部位の代表的な例としては、腸骨、腎臓、頸動脈、および冠動脈が挙げられる。
【0035】
本明細書に記載されたポリマーを、留置器具の表面に多くの方法、例えば、ディップコーティング、スプレーコーティング、イオン蒸着等を用いてコーティングすることができ、これは当該技術分野において周知である。好ましくは、本発明のコーティングは留置器具にスプレーコーティングされる。
【0036】
好ましい治療効果を得るために必要とされる生物活性剤の投与量または濃度は、生物活性剤が有毒作用を示す量を下回ると同時に治療効果が得られない量を上回るべきである。生物活性剤の投与量または濃度は、患者の具体的な環境、外傷の性質、所望の治療の性質、投与された成分が血管部位に留まる時間、および他の活性剤を用いるか否か、物質または物質の組合せの性質および種類等の因子に依存する可能性がある。治療有効投与量は、経験的に、例えば、好適な動物モデルシステムを用いて血管に注入し(infusing)、免疫組織化学的、蛍光、または電子顕微鏡法を用いて薬剤およびその効果を見極めるかまたは好適なin vitro研究を実施することにより決定することができる。投与量を決定するための標準的な薬理学的試験手順は当業者に理解されている。
【0037】
本明細書において用いられる「生分解性」とは、少なくとも当該ポリマーが体の通常の機能において無害の生物活性な産物に分解されることが可能であることを意味する。生分解性ポリマーは、生物分解性を付与する加水分解性エステル結合を有し、典型的にはカルボキシル基で末端封止されている。
【0038】
本明細書において用いられる「アルファ−アミノ酸」という用語は、アミノ基、カルボキシル基、および本明細書に定義したRまたはR基を含む化学的化合物を意味する。本明細書において合成に用いられるアルファアミノ酸は、天然のL−フェニルアラニン、ロイシン、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、リシン、またはメチオニン、またはこれらの混合物である。さらなる天然のアミノ酸としては、リシンおよびオルニチンが挙げられる。
【0039】
本明細書において用いられる「生物活性剤」という用語は、例えば、本明細書に記載したように、人間を含む哺乳動物に対し治療、治癒、または緩和効果を示す薬剤を意味する。本明細書に開示した生物活性剤は、共重合体の主鎖に組み込まれずに、PEA共重合体内部に分散する。一実施形態においては、少なくとも2種の異なる生物活性剤が共重合体中に分散されている。本明細書において用いられる「分散される」は、生物活性剤について言及するための用語であり、生物活性剤が、PEA共重合体と混合、溶解、または均質化されていることを意味する。
【0040】
ここで本発明を以下の非限定的な実施例を参照しながら詳細に説明するが、これらは例示のみを目的とするものである。
【0041】
[実施例]
[材料および方法]
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)をBiochrom AGより購入した。
Cfm Oskar Tropitzsch e.Kより入手したラパマイシンを使用した。
【0042】
[In vitro放出法:]
金属合金ステントを37℃のPBS緩衝液2ml中、静止状態でインキュベートする。所定の時間が経過したら緩衝液を交換する。278nmのUV吸光度測定により薬物(ラパマイシン)の放出を求める。
【0043】
[実施例1]
ラパマイシンおよび式IVの3Bzポリマー(PEA III)を容易に蒸発する溶剤に溶解させることによりコーティング剤を調製する。コーティング剤をステントにスプレーコーティングし、室温で乾燥する。結果として得られたコーティングのポリマー/薬物比は60/40(重量%/重量%)であり、コーティング厚さは約5〜6μmである。
【化5】



【0044】
[実施例2]
ラパマイシンおよび式VのPEA−2Bz(PEA II)ポリマーを容易に蒸発する溶剤に溶解させることによりコーティング剤を調製する。コーティング剤をステントにスプレーコーティングし、室温で乾燥する。結果として得られたコーティングのポリマー/薬物比は60/40(重量%/重量%)であり、コーティング厚さは約7μmである。
【化6】



【0045】
[結果:]
PEA IIおよびPEA IIIから同等の条件下で調製したラパマイシンを含むステントコーティングでは、PEA IIを用いた方が放出がより速かった。PEA IIのコーティングはラパマイシンを約20日間放出することができたが、一方、PEAIIIのコーティングはラパマイシンを約45日間放出することができた。これらの結果を図1に示す。図1は、PEA IIおよびPEA IIIコーティングに関する4回の測定結果の平均値である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の生分解性ポリマーおよび分散された生物活性剤を含むコーティングであって、前記ポリマーが、式(II)
【化1】



(式中、
−mは、約0.01〜約0.99であり、pは、約0.99〜約0.01であり、qは、約0.99〜0.01であり、nは、約5〜約100であり、
−Rは、(C〜C20)アルキレン、(C〜C20)アルケニレン、−(R−CO−O−R10−O−CO−R)−、−CHR11−O−CO−R12−COOCR11−、およびこれらの組合せからなる群から独立に選択され、
−個々のコモノマーmまたはpにおけるRおよびRは、それぞれ、水素、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルケニル、(C〜C)アルキニル、(C〜C10)アリール、(C〜C)アルキル、−(CH)SH、−(CHS(CH)、−CHOH、−CH(OH)CH、−(CHNH、−(CHNHC(=NH)NH、−CHCOOH、−(CH)COOH、−CH−CO−NH、−CHCH−CO−NH、−CHCHCOOH、CH−CH−CH(CH)−、
【化2】



HO−p−Ph−CH−、(CH−CH−、Ph−NH−、NH−(CH−C−、NH−CH=N−CH=C−CH−からなる群から独立に選択され、
−RまたはRは、1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環部分からまたは(C〜C20)アルキレン、(C〜C20)アルケニレン、アルキルオキシ、Mwが44Da〜700Daまでの範囲にあるオリゴエチレングリコール、−CH−CH−(CHOH)、CHCH(OH)CHからなる群から独立に選択され、RおよびRは同一でなく、RまたはRの少なくとも一方は1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環部分であり、
−Rは、水素、(C〜C10)アリール、(C〜C)アルキル、またはベンジル等の保護基であるか、または生物活性剤であり、
−Rは、独立に、(C〜C20)アルキルまたは(C〜C20)アルケニルであり、
−RまたはR10は、C〜C12アルキレンまたはC〜C12アルケニレンから独立に選択され、
−R11またはR12は、H、メチル、C〜C12アルキレン、またはC〜C12アルケニレンから独立に選択される)で表される化学構造を有する少なくとも1種のポリ(エステルアミド)(PEA)またはそのブレンドを含む、留置器具のコーティングに好適な、コーティング。
【請求項2】
が、−(CHまたは−(CHから選択される、請求項1に記載のコーティング。
【請求項3】
が、1,4:3,6−ジアンヒドロソルビトール(DAS)である、請求項1〜2のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項4】
前記RまたはRが、水素、−CH−CH(CH、−CH、−CH(CH、−CH(CH)−CH−CH、−CH−C、−(CHNH、または−(CHSCHから選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項5】
前記Rが、−(CH−である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項6】
さらに生物活性剤を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項7】
前記生物活性剤が、成長因子(VEGF、FGF、MCP−1、PIGF、抗菌薬、抗炎症化合物、血栓形成抑制化合物、跛行改善薬、抗不整脈薬、抗動脈硬化薬、抗ヒスタミン物質、抗癌薬、血管薬、眼科用薬、アミノ酸、ビタミン類、ホルモン類、神経伝達物質、神経ホルモン、酵素、造影剤、シグナル伝達分子、および向精神薬から選択される、請求項6に記載のコーティング。
【請求項8】
前記生物活性剤が、微粒子、ナノ粒子、またはミセル形態で存在することができる、請求項6〜7のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項9】
厚みが約2〜15μmである、請求項1〜8のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のコーティングを備える留置器具。
【請求項11】
前記器具が、心臓ペースメーカーおよび除細動器、前述のものに用いるためのリードおよび電極、神経、膀胱、括約筋、および横隔膜刺激装置等の器官刺激装置(organ stimulator)、装具、ロッド、人工血管、自己拡張型ステント、バルーン拡張型ステント、ステントグラフト、グラフト、カテーテル、人工心臓弁、ならびに髄液シャントを含む、請求項10に記載の留置器具。

【図1】
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【公表番号】特表2013−507217(P2013−507217A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533657(P2012−533657)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065663
【国際公開番号】WO2011/045443
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】