説明

ビスフェノール類の製造方法

【課題】 フェノール/ホルムアルデヒドのモル比をさほど高めなくとも高純度のビスフェノールFを得ることができる製造方法を提供する。
【解決手段】 フェノール類とホルムアルデヒド類を、酸触媒の存在下に縮合反応させてビス(ヒドロキシフェニル)メタン類を製造するにあたり、フェノール類とホルムアルデヒド類、酸触媒の3種を同時に含まない反応原料液又は触媒液からなる2液の内の少なくとも1液を幅1〜500μmの複数の微小流路から混合空間に供給し、且つ2液の流路の中心軸が1点で交差させるようにして、2液を混合し、反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂原料等として有用なビスフェノールFの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モノフェノール類とホルムアルデヒド類との反応により製造されるビスフェノール、例えばビス(ヒドロキシフェニル)メタン(以下、ビスフェノールFという)は、ビスフェノールAを原料とするいわゆるビスA型エポキシ樹脂より低粘性で耐熱性に優れたエポキシ樹脂を提供できるほか、エポキシ樹脂用硬化剤やフェノール樹脂改質剤としても利用されており、注目されている。中でも、エポキシ樹脂用途では、ニーズの多様化に伴って更なる粘性及び耐熱性の改善が強く望まれている。
【0003】
一般に、ビスフェノールFは、酸性触媒、例えば蓚酸を触媒としてフェノールとホルムアルデヒドとの縮合反応により製造されるが、生成したビスフェノールF中には、4,4'‐ビスフェノールF、2,4'‐ビスフェノールF及び2,2'‐ビスフェノールFの三種類の異性体(二核体)に加え、更にホルムアルデヒドが付加し、引き続きフェノールと高次に重縮合した三核体をはじめとする多様な重質物が含まれている。これら重質物を含むビスフェノールFをエポキシ化して得られるエポキシ樹脂は高粘度となり、ビスフェノールFエポキシの特徴である低粘度性を大きく損なう。また、重質物を含むビスフェノールFエポキシ樹脂を構成成分とする塗料は高純度ビスフェノールFエポキシ樹脂を構成成分とする塗料よりも、塗膜の耐蝕性、耐薬品性等の点で劣ることも報告されている(特開平2-166114号公報)。
【0004】
従って、ビスフェノールF製造においては、重質物の生成を抑制するための様々な方法が検討されている。例えば、現在用いられている純度90〜94%のビスフェノールFは、前記の蓚酸触媒による均一反応系において、フェノール/ホルムアルデヒドのモル比を理論モル比の15倍以上である30〜40としている。そのため、反応終了後に過剰のフェノールを蒸留回収するのに長い時間と運転コストを必要としており、釜生産性も10%以下と非常に低いものになっている。
【0005】
下記特許文献1には、85%の高濃度リン酸を多量に用いて、フェノール/ホルムアルデヒドのモル比を5程度で、反応温度を45℃で行い純度88%のビスフェノールFを得る方法が記載されている。また、特許文献2には、多量のトルエン等の有機溶剤と水と蓚酸等の触媒を用い、フェノール/ホルムアルデヒドを低モル比で、トルエン等を主体とする液相と水及び蓚酸等を主体とする液相との撹拌下の液‐液不均一系で反応を行い、反応後、トルエン等の有機溶剤及びフェノールを蒸留回収し、ビスフェノールFを得る方法が開示されている。更に、特許文献3には、50〜80%リン酸水を触媒として、原料アルデヒドを逐次的に加え、生成するビスフェノールFを速やかにフェノール相に抽出することで、重質分の副生を抑える方法が提案されている。しかしながら、いずれの場合も、生産性と品質を共に満足できる方法を提供するには至っていない。
【0006】
【特許文献1】特公平3-72049号公報
【特許文献2】特開平6-135872号公報
【特許文献3】特開平09-67287号公報
【特許文献4】特開2002-346355号公報
【特許文献5】特表2002-512272号公報
【0007】
ところで、2以上の微小流路と混合空間又は混合領域を有するマイクロミキサは上記特許、文献4〜5等で知られているが、これがビスフェノールFの製造装置として適することを教えるものはない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、フェノール/ホルムアルデヒドのモル比をさほど高めることなく優れた生産性を有する上に、生成するビスフェノールFの純度を向上できる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記事情に鑑み鋭意研究を行った結果、フェノール類とホルムアルデヒド類を、酸触媒の存在下に縮合反応させてビス(ヒドロキシフェニル)メタン類を製造するにあたり、フェノール類とホルムアルデヒド類、酸触媒の3種を同時に含まない2液の少なくとも1つが、幅1〜500μmの複数の微小流路から混合空間に供給され、且つ2液の流路の中心軸を1点で交差させることで、重質物の生成比率を小さくすることができることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、フェノール類とホルムアルデヒド類を、酸触媒の存在下に縮合反応させてビス(ヒドロキシフェニル)メタン類を製造するにあたり、フェノール類とホルムアルデヒド類、酸触媒の3種を同時に含まない反応原料液又は触媒液からなる2液の内の少なくとも1液を幅1〜500μmの複数の微小流路から混合空間に供給し、且つ2液の流路の中心軸が1点で交差させるようにして、2液を混合し、反応させることを特徴とするビス(ヒドロキシフェニル)メタン類の製造方法である。
そして、2液を供給する少なくとも1つの流路が、途中で分岐して複数の微小流路を形成し、混合空間に供給されること、分岐した複数の流路が、流れ方向に直角に切断した断面形状が同一形状であること、又は2液の内の少なくとも1液が、複数の微小流路から混合空間に供給される際の線速度が1m/sec以上であることのいずれか1以上を満足させることにより好ましい結果が得られることを見出した。
【0011】
以下、本発明の反応条件について説明する。
反応原料は、フェノール類及びホルムアルデヒド類である。また、触媒として酸性触媒を使用する。そして、フェノール類及びホルムアルデヒド類を含む液を反応原料液といい、反応原料を含まず酸性触媒を含む液を触媒液という。したがって、フェノール類及びホルムアルデヒド類のいずれかと酸性触媒を含む液の場合は、反応原料液という。反応原料液及び触媒液を総称して原料液又は液といい、反応が進行して生成物を含む液を反応液という。そして、フェノール類、ホルムアルデヒド類及び酸性触媒を同時に含む反応原料液は使用しない。
【0012】
フェノール類としては、ビスフェノールFを生成するフェノールが好ましいが、その他に耐熱性その他物性を制御する目的で、モノ、ジ置換フェノールなども使用できる。置換フェノールとしては、クレゾール、キシレノール等の低級アルキル置換フェノール類が好ましく挙げられる。
【0013】
ホルムアルデヒド類としては、ホルムアルデヒドの他、ホルマリンや反応系でホルムアルデヒドを生じるパラホルムアルデヒド、トリオキサン及びテトラオキサンが挙げられるが、好ましくはパラホルムアルデヒドである。
上記のように、本発明でいうフェノールとホルムアルデヒドは、その誘導体を含む場合があるが、理解を容易にするため、誤解の生じない範囲で、フェノール類とホルムアルデヒド類をフェノールとホルムアルデヒドということがあり、ビス(ヒドロキシフェニル)メタン類をビスフェノールFで代表させることがある。
【0014】
酸触媒としては、塩酸、硫酸、りん酸等の無機鉱酸、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンモリブドタングステン酸等のヘテロポリ酸、塩化亜鉛、塩化アルミニウム等のハロゲン化金属塩、トリクロル酢酸、ジクロル酢酸等のハロゲン化カルボン酸、芳香族スルホン酸、蟻酸、蓚酸が挙げられるが、中でも蓚酸や無機鉱酸、芳香族スルホン酸が好適である。酸触媒は単独で供給することも可能だが、フェノール類又はホルムアルデヒド類中、好ましくはフェノール中に存在させて供給するのが有利である。
【0015】
フェノール、ホルムアルデヒド及び酸触媒は液体状態で供給するため、反応温度で固体である場合は、溶媒に溶かして使用することができ、液体である場合も必要に応じ溶媒に溶かして使用できる。溶媒としては、フェノール、ホルムアルデヒド及び酸触媒を溶解するものなら支障無いが、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素や1,4‐ジオキサン、ジフェニルエーテルなどのエーテル類、ベンゾニトリルなどが好ましい。フェノールは反応温度にて液体である上、ホルムアルデヒド、酸触媒を容易に溶解するため、反応原料として使用されるだけでなく、溶媒としても好適に使用される。反応原料の使用割合としては、フェノールをホルムアルデヒドに対し、理論量より大過剰とすることが不純物の抑制に有効であるので、フェノールを過剰に使用し、フェノール中にホルムアルデヒド又は酸触媒のいずれか一方を存在させることが有利である。
【0016】
フェノール類、ホルムアルデヒド類と酸触媒の3成分は、反応空間に供給する前には混合しない。したがって、混合する場合は、1)フェノール類とホルムアルデヒド類の混合、2)フェノール類と酸触媒の混合、3)ホルムアルデヒド類と酸触媒の混合の態様がある。2種の液を流路から反応空間に供給する場合は、上記1)の場合は、他方の流路には触媒液又は酸触媒といずれか一方の反応原料とを含む反応原料が流れる。上記2)の場合は、他方の流路にはホルムアルデヒド類又はホルムアルデヒド類と酸触媒又はフェノール類とホルムアルデヒド類とからなる反応原料が流れる。上記3)の場合は、他方の流路にはフェノール類又はフェノール類と酸触媒又はフェノール類とホルムアルデヒド類とからなる反応原料が流れる。しかし、酸触媒は反応原料のいずれか一方を含む反応原料液の1又は2に混合させて供給することが有利であり、より好ましくはフェノール類を含む反応原料液に混合させて供給することである。なお、有利には2液を2以上の微小流路から供給するが、触媒溶液を含む3成分を3液に分割して供給することを妨げない。
【0017】
このようにして、フェノール、ホルムアルデヒド、酸触媒の3種を同時に含まないような反応原料液又は触媒液を調製するが、反応に供するフェノール/ホルムアルデヒドのモル比は2〜30(HCHO換算)、好ましくは5〜15である。このモル比が30を超えると生産性が大きく低下し、経済的ではない。モル比2は量論比であるが、2〜5の範囲では、条件によっては混合空間内での反応が終結せず、2核体含有率(2核体/2核体以上の多核体)が低くなる場合がある。5〜15の範囲において2核体含有率の高いビスフェノールを効率よく製造できる。
【0018】
反応温度は、50〜170℃、好ましくは80〜140℃である。50℃未満では、反応が十分進行せず、混合空間内だけでは反応が終結しない。また、170℃を超えると生成物の着色などにより品質低下が起こるほか、溶媒や未反応フェノールの部分気化により、混合空間内での生成物の閉塞などが懸念される。
【0019】
次に、本発明で使用する反応装置について詳細に説明する。
反応装置としては、流入した2種の原料液をそれぞれ独立して混合空間に供給する装置であって、少なくとも1種の原料液を供給する供給チャンネルは、この原料液を混合空間に供給する複数のサブチャンネルを有してなり、複数のサブチャンネルの中心軸、若しくは分岐しない場合は、その液体を混合空間に供給するチャンネルの、すべての中心軸が1点で交差するように、供給チャンネル及びサブチャンネルが形成されて、速やかに均一混合される構成とされた構造の装置が望ましく、例えばこのような構造を有するマイクロミキサが好ましく例示される。ここで言う、「チャンネル」とは液体が流れる流路であり、「サブチャンネル」はチャンネルから複数に分岐した各々の流路を指す。
【0020】
本発明の製造方法では、迅速かつ均一な混合を行うことで、反応原料を一斉に反応させることが重要であり、かかる装置としては、反応原料として供給する2液の少なくとも1つが、幅1〜500μm、好ましくは50〜300μmの複数の微小流路から混合空間に供給され、且つ2液の流路の中心軸が1点で交差するような構造のものである。そして、サブチャンネルが微小流路となることがよい。
【0021】
つまり、少なくとも1種の原料液を供給するチャンネルは、混合空間に流入する複数のサブチャンネルを有してなり、そして、これらのサブチャンネルから液を混合空間に供給する。一方の原料液を流すチャンネルが、分岐しない場合は、1つのチャンネルが原料液を混合空間に供給する。そして、それら供給チャンネル及び複数のサブチャンネルのすべての中心軸が一点で交差するように、形成される。中心軸が交差する点は、混合空間内に位置する。しかし、これは数学的意味の点である必要はなく、多少の広がりを有しうる。
【0022】
供給チャンネル又はサブチャンネルの中心軸とは、混合空間に流入する液体の質量中心(又は重心)の移動方向に沿った軸(又は直線)を意味し、交差させるとはその中心軸が延長線上で交わることをいう。具体的には、混合空間に流入する原料液の供給チャンネル又はサブチャンネルが円筒又は角筒状である場合、筒の長さ方向に垂直な断面(即ち、円形又は矩形)の重心(円の中心又は対角線の交点)を通過して筒の長さ方向に沿った軸が、中心軸に相当する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、フェノールとホルムアルデヒドのモル比を高めることなく優れた生産
性を有する上に、生成するビスフェノールFの純度を向上できる。また、同一の二核体含
有率を得る場合には、ホルムアルデヒドのモル比を高め、生産性を向上させることができ
る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図面を参照して、反応装置をより具体的に説明する。
図1に、本発明での原料液の流れ及び混合を模式的に示した。矢印で示すように、2種の原料液A及びBが、それぞれ供給チャンネル12、供給チャンネル18を経由して流れ、その後、液体Aは分岐点14にて分割されてサブチャンネル16及び16'を経由して、混合空間10に供給される。液体Bは、供給チャンネル18を経由したまま、分割されることなく混合空間10に供給される。
【0025】
図示するように、サブチャンネル16及び16'を経由して混合空間10に流入した液体Aの中心軸、分割されることなく供給チャンネル18を経由して混合空間10に流入した液体Bの中心軸を一点鎖線で示す。図示した態様は、チャンネル及びサブチャンネルは円筒状又は角筒状である場合を示し、従って、中心軸がチャンネル及びサブチャンネルの実質的に中央を通過するように描き、中心軸が点20で交差する様子を示す。
【0026】
また、図1では液体A、Bが合流した混合空間10に関して、更に混合液体の排出チャンネル26が始まり、これらの全てのチャンネルが実質的に同一の平面内で配置されている。この時の各供給サブチャンネル16、16'と排出チャンネル26の成す角度α、α'及び供給チャンネル18と供給サブチャンネル16、16'との成す角度β、β'は、それぞれ0°より大きく180°以下の値を採り得るが、αとα'、βとβ'は、それぞれ等しい方がより好ましい。また、供給チャンネル18と排出チャンネル26の成す角度も、同様に0°より大きく180°以下の値を採り得る。
【0027】
チャンネル及びサブチャンネルから供給された原料液は、混合空間で速やかに均一に混合されて反応が生じる。混合空問の容積は所定の滞留時間が得られるように調整されるが、反応が十分でない場合は、その後に続く排出チャンネル26にて引き続き反応が進行しても良く、排出チャンネル26も複数であってもよい。
【0028】
チャンネル及びサブチャンネルは、それぞれ半円形や矩形、その他の断面を持つが、同じ液体が流れるサブチャンネルは同じ断面を持つことが好ましい。更に、サブチャンネルはその液体が流れるチャンネルと同じ、若しくは更に小さな断面を持つことが好ましい。チャンネル及びサブチャンネルの深さは、幅と同じ若しくは小さい値が好ましく、その流路長さには制限はない。
【0029】
次に、別の反応装置の例を図2及び図3により説明するが、これに限定されない。
図2は、装置100を構成する3つのパーツを分解した様子を示す斜視図である。供給部102では、液体A、Bが、断面が矩形の環状チャンネル108及び110に到るボア112及び114より供給される。合流部104では、環状チャンネルの周方向で等間隔に配置された貫通ボア116、118を経由して、液体A、Bは各4つに分割されたサブチャンネル124及び126から中心128に向かって流入する。言うまでも無く、サブチャンネル124の中心軸とサブチャンネル126の中心軸は、中心128にて交差しており、合流した液体Cは、ボア130を経由して装置外部に排出される。
【0030】
図3は別の反応装置100を同様に3つのパーツに分けて示す斜視図である。図3において使用する符号は、図2と同一なものはそれと対応する。図3の反応装置は、液体Bを供給部102の中央から導入できるようになっている。液体Aは、断面が矩形の環状チャンネル108及び110に到るボア112及び114より供給され、液体Bは供給部102の中央を貫通するチャンネル132より供給される。合流部104では、2つの環状チャンネルの周方向で等間隔に配置された貫通ボア116、118を経由して、液体Aが8つに分割されたサブチャンネル124及び126から中心128に向かって流入するのに対し、液体Bは、分割されること無く、チャンネル134を経由して中心128に流入する。言うまでも無く、サブチャンネル124、126の中心軸とチャンネル134の中心軸は、中心128にて交差しており、合流した液体Cは、ボア130を経由して装置外部に排出される。
【0031】
これら各反応装置において、2つの原料液は、合流した後の混合空間にて反応が進行し、フェノール/ホルムアルデヒドのモル比や触媒濃度、反応温度は、すべて混合空間における混合物の状態で決定される。したがって、各液体の混合前の温度、流量、経路については混合空間における所定の条件を満足するような任意の値を取り得る。但し、混合空間に供給されるチャンネルの断面積に応じた流量で供給され(逆に、供給される液体の流量に応じたチャンネルの断面積が決定される)、その線速度は1m/sec以上が好ましく、より好ましくは2m/sec以上である。
【0032】
このように本発明では、合流する液体の中心軸が一点で交差するように衝突・接触するので、これら流体は、それが有する運動エネルギーによって瞬間的により小さい流体塊に分割(又は微細化)すると共に流体塊の接触状態も改善される。その結果、合流する液体同士の接触界面積が急激に増加し、これらの液体間の混合が促進され、よって、より迅速かつ均一な混合が達成される。故に、このような装置を用いることで、高速逐次反応を制御することが可能となり、その顕著な成果がビスフェノール類の製造法と言える。
【0033】
反応終了後は、従来法(例えば蒸留、抽出など)により溶媒や未反応フェノール、触媒などを除去することで、二核体含有率の高いビスフェノールを容易に得ることができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。なお、分析は高速液体クロマトグラフを用いて行った。また、%は特に断りのない限り重量%である。
【0035】
反応装置としては、図2又は図3に示す装置を使用した。装置の材質は、ステンレススチールであり、各チャンネル、サブチャンネル、ボアの仕様は以下のようであった:
環状チャンネル108の断面形状、幅、深さ、直径:矩形断面、1.5mm、1.5mm、25mm
環状チャンネル110の断面形状、幅、深さ、直径:矩形断面、1.5mm、1.5mm、20mm
ボア112の直径、長さ1.5mm、10mm(円形断面)
ボア114の直径、長さ1.5mm、10mm(円形断面)
ボア132の直径、長さ1.5mm、10mm(円形断面)
ボア116の直径、長さ0.5mm、4mm(円形断面)
ボア118の直径、長さ0.5mm、4mm(円形断面)
ボア134の直径、長さ0.5mm、4mm(円形断面)
マイクロチャンネル124の断面形状、幅、深さ、長さ:矩形断面、200μm、200μm、12.5mm
マイクロチャンネル126の断面形状、幅、深さ、長さ:矩形断面、200μm、200μm、10mm
ボア130の直径、長さ:1mm、10mm(円形断面)
【0036】
実施例1
フェノール60g(0.638mol)に、94%パラホルムアルデヒド2.71g(0.085mol)を加え、80℃の水浴中で加熱撹拌しパラホルムアルデヒドを溶解させたものをA液とし、フェノール60g(0.638mol)に、パラトルエンスルホン酸一水和物2.33g(0.012mol)を加え、80℃の水浴中で加熱撹拌しパラトルエンスルホン酸一水和物を溶解させたものをB液とした。A液、B液の各入り口上流側に50cmのステンレス管(外径1.6mm、内径1.0mm)をらせん状に巻いた予熱部を備えた図2に示す反応装置を油浴中に浸漬し、これに原料液A、B液を、共に9.0ml/分で流した。混合器の出口後部に装備した30cmのテフロン(登録商標)管(外径1.6mm、内径1.0mm)を油浴中に浸し、反応部とした。反応温度は110℃であった。生成物は急速に冷却し反応を停止したのち、分析した。ホルムアルデヒド転化率及び2核体含有率を表1に示した。
【0037】
実施例2
フェノール140g(1.488mol)に、94%パラホルムアルデヒド3.39g(0.106mol)を加え、80℃の水浴中で加熱撹拌しパラホルムアルデヒドを溶解させたものをA液とし、フェノール10g(0.106mol)に、パラトルエンスルホン酸一水和物2.92g(0.015mol)を加え、80℃の水浴中で加熱撹拌しパラトルエンスルホン酸一水和物を溶解させたものをB液とした。A液、B液の各入り口上流側に50cmのステンレス管(外径1.6mm、内径1.0mm)をらせん状に巻いた予熱部を備えた図2に示す反応装置を油浴中に浸漬し、これに原料液A、B液を、各々14.0ml/分、1.0ml/分で流した。それ以外の条件は実施例1と同様にした。
【0038】
実施例3
フェノール140g(1.488mol)に、94%パラホルムアルデヒド3.39g(0.106mol)を加え、80℃の水浴中で加熱撹拌しパラホルムアルデヒドを溶解させたものをA液とし、フェノール10g(0.106mol)に、パラトルエンスルホン酸一水和物2.92g(0.015mol)を加え、80℃の水浴中で加熱撹拌しパラトルエンスルホン酸一水和物を溶解させたものをB液とした。A液、B液の各入り口上流側に50cmのステンレス管(外径1.6mm、内径1.0mm)をらせん状に巻いた予熱部を備えた図3に示す反応装置を油浴中に浸漬し、これに原料液A、B液を、各々14.0ml/分、1.0ml/分で流した。それ以外の条件は実施例1と同様にした。
【0039】
比較例1
200mlのバッフル付きセパラブルフラスコに、フェノール120g(1.275mol)、パラホルムアルデヒド2.71g(0.085mol)を入れ、油浴中で加熱、タービン翼で撹拌した。内温は110℃であった。パラホルムアルデヒドが溶解したのち、パラトルエンスルホン酸一水和物2.33gを加え、600rpmで30分間撹拌し、反応を終了した。
【0040】
比較例2
図2に示した混合器に替えて、流路幅800μmの流路を有する図4に示すようなPEEK製T字流路ミキサーとした以外は、すべて実施例1と同じ反応を行った。
分析結果を表1にまとめて示す。
【0041】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】混合様式の模式図
【図2】反応装置の分解斜視図
【図3】他の反応装置の分解斜視図
【図4】従来例のミキサの模式図
【符号の説明】
【0043】
100:反応装置、102:供給部、108及び110:環状チャンネル、112及び114:ボア、104:合流部、116、118:貫通ボア、124及び126:サブチャンネル、128:交差中心、130:排出ボア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール類とホルムアルデヒド類を、酸触媒の存在下に縮合反応させてビス(ヒドロキシフェニル)メタン類を製造するにあたり、フェノール類とホルムアルデヒド類、酸触媒の3種を同時に含まない反応原料液又は触媒液からなる2液の内の少なくとも1液を幅1〜500μmの複数の微小流路から混合空間に供給し、且つ2液の流路の中心軸が1点で交差させるようにして、2液を混合し、反応させることを特徴とするビス(ヒドロキシフェニル)メタン類の製造方法。
【請求項2】
2液を供給する少なくとも1つの流路が、途中で分岐して複数の微小流路を形成し、混合空間に供給される請求項1に記載のビス(ヒドロキシフェニル)メタン類の製造方法。
【請求項3】
分岐した複数の流路が、流れ方向に直角に切断した断面形状が同一形状である請求項2に記載のビス(ヒドロキシフェニル)メタン類の製造方法。
【請求項4】
2液の内の少なくとも1液が、複数の微小流路から混合空間に供給される際の線速度が1m/sec以上である請求項1〜3のいずれかに記載のビス(ヒドロキシフェニル)メタン類の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−8633(P2006−8633A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191229(P2004−191229)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成15年度、新エネルギー・産業技術総合開発機構革新的部材産業創出プログラム「マイクロ分析・生産システムプロジェクト」委託研究、産業活力再生特別処置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】