説明

ビタミンB12の改良生産法

この発明は、遺伝子改変されたバチルスメガテリウム菌株を含んでなる培養を用いてビタミンB12を生産する方法、遺伝子改変されたバチルスメガテリウム菌株、およびそれを製造するためのベクターに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子改変されたバチルスメガテリウム(Bacillus megaterium)菌株を用いてビタミンB12を生産する方法、および遺伝子改変されたバチルス属(Bacillus)の細菌を製造するためのベクターに関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンB12は、それがヒトの身体に与える効果から、George MinotおよびWilliam Murphyにより早くも1920年代に間接的に発見された(Stryer, L., 1988, 「生化学(Biochemie)」, 第4版, pp.528-531, Spektrum Akademischer Verlag GmbH, Heidelberg, Berlin, New York)。ビタミンB12は1948年に初めて精製されかつ単離されて、わずか8年後の1956年にはDorothy Hodgkinがその複雑な3次元結晶構造を解明するのに成功した(Hodgkin, D. C.ら, 1956, 「ビタミンB12の構造(Structure of Vitamine B12.)」 Nature 176, 325-328 and Nature 178, 64-70)。ビタミンB12生合成の天然最終産物は5'-デオキシアデノシルコバラミン(補酵素B12)およびメチルコバラミン(MeCbl)である一方、ビタミンB12はシアノコバラミン(CNCbl)としても定義されていて、後者が工業的に主に生産されかつ取り扱われている形態である。本発明においては、特に断らない限り、ビタミンB12は全ての3種の類似分子を一様に意味する。
【0003】
バチルスメガテリウム菌種は、De Baryにより100年以上前に(1884年に)初めて記載された。バチルスメガテリウム菌は一般的に土壌菌として記載されたが、様々な他の生息地、例えば海水、堆積物、コメ、乾燥肉、牛乳または蜂蜜においても検出されることがある。バチルスメガテリウム菌はシュードモナス菌(pseudomonads)およびアクチノミセス菌(actinomyces)を伴うことが多い。バチルスメガテリウム菌はその近縁のバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)(枯草菌)と同様にグラム陽性菌であり、なかでも(その名前の由縁であるが)2×5μmという比較的際立ったサイズ、ほぼ38%というG+C含有量、および非常に顕著な胞子形成能力が特徴である。増殖培地中のごく僅かのマンガンですら、この種が完全な胞子形成を行うために十分であり、この能力は数種の好熱性バチルス菌の胞子形成効率のみが匹敵しうるものである。そのサイズおよびその非常に効率的な胞子形成と発芽がきっかけとなってバチルスメガテリウム菌におけるこれらの事象の分子的基礎に関する広範な研究が行われた結果、今までに、バチルスメガテリウム菌の胞子形成と発芽に関わる150種を超える遺伝子が記載されている。バチルスメガテリウム菌についての生理学的な研究(Priest, F.G.ら, 1988, 「バチルス属の数値分類(A Numerical Classification of the Genus Bacillus)」, J. Gen. Microbiol. 134, 1847-1882)により、この種は偏性好気性胞子形成細菌であって、ウレアーゼ陽性およびフォゲス‐プロスカウアー(Voges-Proskauer)陰性でありかつ硝酸還元能力を持たない細菌として分類された。バチルスメガテリウム菌の最も際だった特性の1つは、多様な炭素源を利用する能力である。従ってバチルスメガテリウム菌は非常に数多くの糖類を利用し、例えばコーンシロップ、食肉産業からの廃棄物、さらには石油化学産業廃棄物中にも見出されている。この非常に広い範囲の炭素源を代謝する能力の点では、バチルスメガテリウム菌はシュードモナス菌と全く同等であると言ってもよい(Vary, P.S., 1994, Microbiology, 40, 1001-1013, 「バチルスメガテリウム菌のゴールデンアワー(Prime time for Bacillus megaterium)」)。
【0004】
バチルスメガテリウム菌を広範囲の酵素、ビタミンなどの工業生産に広く利用することは広汎な利点がある。確かな1つの利点はその遺伝学で比較的高度に研究されていることであり、バチルス属内でこれを越えるのは枯草菌(B. subtilis)だけである。第2の利点として、バチルスメガテリウム菌はアルカリプロテアーゼを有せず、従って異種タンパク質の生産中に実質的に分解が観察されることはない。さらに、バチルスメガテリウム菌は商業的に重要な産物を効率的に分泌することが知られており、例えば、α-およびβ-アミラーゼの生産に利用されている。その上、バチルスメガテリウム菌はサイズが大きいので、高いバイオマスを蓄積することができ、最後は過度に高い集団密度を生じて死に至る。さらに、バチルスメガテリウム菌の方法による工業生産において最も重要なことは、バチルスメガテリウム菌種は廃棄物および安価な物質から高価かつ非常に高品質の産物を生産することができるという有利な事実である。非常に広い基質スペクトルを代謝するバチルスメガテリウム菌の可能性はまた、シアン化物、除草剤および残留性農薬すら分解することができる土壌解毒生物としてのバチルスメガテリウム菌の用途にも反映されている。最後に、バチルスメガテリウム菌は完全に非病原性であっていずれの毒素も産生しないという事実が、特に食品および化粧品の生産において極めて重要である。これらの様々な利点があるので、バチルスメガテリウム菌は既に多数の工業的応用、例えば、α-およびβ-アミラーゼ、ペニシリンアミダーゼの生産、有毒廃棄物の浄化またはビタミンB12の好気性生産に採用されている(総括については、Vary, P. S., 1994, Microbiology, 40, 1001-1013, 「バチルスメガテリウム菌のゴールデンアワー(Prime time for Bacillus megaterium)」を参照)。
【0005】
工業的に重要な様々な生産物のバイオテクノロジー生産の用途においてバチルスメガテリウム菌は数多くの利点を有するので、この菌の利用は経済的に非常に重要である。経済的に重要な生産物の生産性を向上するために、遺伝子的に最適化された細菌株の利用が増えている。しかし、遺伝子改変された細菌株は通常、それらが含有する自由に複製しうるプラスミドの安定性に問題がある。その上、生産物の収量を最適に制御するために、細菌発酵の間のビタミンB12への代謝フラックスおよび染色体上にコードされた遺伝子発現の指令制御におけるさらなる改善が所望される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ビタミンB12生産のさらなる改善を可能にする遺伝子改変されたバチルスメガテリウム菌株を提供することである。
【0007】
このためにはさらに、グルタミル-tRNAからウロポルフィリノーゲンIII型を生成する酵素の過剰発現、ならびに、有利なのは、hem生合成経路の抑制とともにビタミンB12への代謝フラックスの増加を可能にする好適なベクターの提供を必要とする。同時に、本発明によるベクターは、所望の遺伝的改変の、細菌株染色体中への安定な組込みを可能にしなければならない。さらに、染色体上にコードされたhemAXCDBLオペロンの遺伝子発現の誘導および/または発酵中のhem生合成経路の抑制は標的の定められた方法で制御可能でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、遺伝子改変されたバチルスメガテリウム菌株であって、フィードバック耐性グルタミル-tRNAレダクターゼをコードする配列番号4に示した遺伝子hemA[KK]および/またはアンチセンスRNA(ashemZ)としての配列番号1に示したhemZ遺伝子のヌクレオチド配列(hemZ)の部分を含んでなる上記菌株の提供により達成される。
【0009】
本発明のさらなる実施形態は、遺伝子改変されたバチルスメガテリウム菌株であって、フィードバック耐性グルタミル-tRNAシンターゼをコードしかつhemA[KK]XCDBLオペロンに組織化されている配列番号4に示した遺伝子hemA[KK]および/または配列番号3に示したアンチセンスRNA(ashemZ)を含んでなる上記菌株を含む。
【0010】
本発明はまた、コプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼをコードする配列番号1に示したヌクレオチド配列も含む。
【0011】
本発明によるこのヌクレオチド配列は、さらに、コプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼをコードするhemZ遺伝子の領域に先行する(5'側、または上流の)および/または後続する(3'側、または下流の)調節機能をもつ配列を含んでなることを特徴とする。
【0012】
本発明の目的に対して、調節機能をもつ配列は、転写、RNA安定性またはRNAプロセシング、および翻訳に影響を与えることができる配列を意味すると理解される。調節配列の例には、なかでも、プロモーター、エンハンサー、オペレーター、ターミネーターまたは翻訳エンハンサーが含まれる。しかし、この例示は本発明を限定するものではない。
【0013】
配列番号1に示した本発明によるヌクレオチド配列は、好ましくはバチルスメガテリウム菌に由来する。この関連において、本発明はまた、単離された核酸として知られる核酸にも関する。本発明によれば、単離された核酸、または単離された核酸断片は、1本鎖または2本鎖であってもよくかつ場合によっては天然の、化学的に合成した、修飾したまたは人工のヌクレオチドであってもよいRNAまたはDNAポリマーを意味すると理解される。この関連において、用語DNAポリマーはまた、ゲノムDNA、cDNAまたはこれらの混合物も含む。
【0014】
さらに配列番号2に示したコプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼが本発明の態様でもある。配列番号2に示したアミノ酸配列は、好ましくは、配列番号1に示したヌクレオチド配列によりコードされる。しかし、コプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼをコードする配列番号1に示したヌクレオチド配列の対立遺伝子も本発明に包含される。
【0015】
本発明によれば、対立遺伝子は、機能的に等価のヌクレオチド配列、すなわち、本質的に同じ意味で作用するヌクレオチド配列を意味すると理解される。機能的に等価な配列は、逸脱するヌクレオチド配列であっても、例えば遺伝子コードの縮重の結果として所望の機能をなお保持する配列である。従って、機能性等価体は本明細書に記載の配列の天然の変異体だけでなく、人工のヌクレオチド配列、例えば、化学合成により得られたおよび場合によっては宿主生物のコドン使用に適合するよう工夫されたヌクレオチド配列も含む。さらに、機能的に等価の配列は、例えば酵素の阻害剤に対する非感受性または耐性を与える改変されたヌクレオチド配列をもつ配列を含む。
【0016】
原則として、ビタミンB12生産株として好適である全ての通常のバチルスメガテリウム菌株は、本発明の目的に、すなわち、遺伝子改変されたバチルスメガテリウム菌株を作製するために利用することができる。
【0017】
本発明の目的では、ビタミンB12生産菌株は、バチルスメガテリウム菌株または相同的な微生物であって、伝統的および/または分子遺伝学的な方法によってその代謝フラックスがビタミンB12またはその誘導体の生合成の増加に向けて指令される方法(代謝工学)で改変された上記菌株または微生物を意味すると理解される。これらの生産菌株において、例えば代謝経路を決定する重要な位置(ボトルネック)の(従って複雑な調節に携わる)1以上の遺伝子および/または対応する酵素は、その調節機能が改変されるかまたは事実上脱調節される。この関連において、本発明は、バチルス(Bacillus)属または相同的生物の全ての公知のビタミンB12生産菌株を含む。本発明によって有利である菌株には、特にバチルスメガテリウムDSMZ 32、DSMZ 509およびDSMZ 2894の菌株が含まれる。
【0018】
本発明により遺伝子改変された細菌株は、原理的に、伝統的な突然変異誘発、好ましくは特異的分子生物学的技術と好適な選択方法により作製することができる。特異的組換え操作の興味深い手法は、なかでも、ビタミンB12に導く生合成経路の部位の枝分かれについてであり、代謝フラックスを最大ビタミンB12生産を狙う方法で制御することができる。代謝物フラックスの調節に関わる具体的な遺伝子の改変にはまた、構造遺伝子前後の調節領域の研究および改変、例えば、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、リボソーム結合部位などの最適化および/または置換が含まれる。本発明にはまた、例えばヌクレアーゼまたはプロテアーゼによる分解をそれぞれ減少または防止することによる、DNA、mRNAまたはそれらがコードするタンパク質の安定性の改善も包含される。
【0019】
本発明の一実施形態においては、配列番号4に示したhemA[KK]遺伝子を、遺伝子改変されたバチルスメガテリウム菌株の細菌染色体に組込む。
【0020】
遺伝子改変されたバチルスメガテリウム菌株のさらなる実施形態は、アンチセンスRNA(ashemZ)としてのhemZ遺伝子の部分がプラスミドにコードされた、増加したコピー数でこの細菌中に存在することを特徴とする。
【0021】
本発明の目的では、hemZ遺伝子の部分は、配列番号1に示したhemZ遺伝子のヌクレオチド配列から出発して得ることができる様々なアンチセンスRNAの調製物を意味すると理解される。アンチセンスRNAを製造する方法、例えばPCR経由の方法は当業者におよび現在の実験室技法として公知である。色々なアンチセンスRNAが、例えば、作製されたアンチセンスRNAの長さ、またはアンチセンスRNAが由来するhemZヌクレオチド配列の領域の選択から生じうる。この関連において、アンチセンスmRNA配列は、その長さが、例えばコード領域の数ヌクレオチド〜全配列セグメントまで変化しうる。本発明によって好ましいのは、配列番号3に示したアンチセンスRNA(ashemZ)である。
【0022】
コピー数の増加は、コピー数増加をもたらす好適なベクターの複製増加の結果であってもよい。
【0023】
原理的に、コピー数の増加はまた、遺伝子もしくはその一部分の細菌染色体中への多重組込みによって達成することもできる。
【0024】
本発明にはまた、遺伝子改変されたバチルスメガテリウム菌株であって、hemA[KK]遺伝子が細菌染色体中に組込まれかつアンチセンスRNA(ashemZ)としてのhemZ遺伝子の部分が増加したコピー数で存在する上記バチルスメガテリウム菌株も含まれる。
【0025】
本発明の他の態様は、遺伝子改変されたバチルスメガテリウム菌株であって、hemA[KK]XCDBLオペロンと結合したhemA[KK]遺伝子および/またはアンチセンスRNA(ashemZ)としてのhemZ遺伝子の部分が誘導性プロモーターの制御下にある上記バチルスメガテリウム菌株である。誘導性プロモーターの例は、キシロース誘導XylAプロモーターまたはβ-ガラクトシダーゼ誘導性プロモーター(Miller, J.H., 1972, Experiments in Molecular Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York)である。本発明による好ましいキシロース誘導性プロモーターはpWH1520からのキシロースオペロンのxylAプロモーター(Rygus, T.ら, 1991, Appl. Microbiol. Biotechnol., 35: 594-599)である。キシロースを培地に加えることにより、XylAプロモーターの制御下の遺伝子転写の開始、すなわちこの関連においては、hemA[KK]XCDBLおよび/またはashemZの遺伝子発現を増加することができる。
【0026】
上記の遺伝子改変されたバチルスメガテリウム菌株を調製するために、本発明に好適でありかつ同様に本発明の態様であるベクターを構築した。
【0027】
従って、本発明は、配列番号4に示したフィードバック耐性グルタミル-tRNAレダクターゼをコードする遺伝子hemA[KK]、ならびにそれと機能しうる形で連結された、遺伝子発現の誘導、選択、複製および/または宿主細胞の染色体中への組込みのための配列を含んでなる組込みベクターを含む。
【0028】
組込みベクターは、部位特異的組換えによって宿主細胞染色体中の規定した部位に組込まれ、そこで染色体と一緒に複製することを特徴とするベクターを意味すると理解される。本発明による一実施形態においては、この部位特異的組換えはhemA遺伝子の相同的配列を介して起こる。
【0029】
本発明によれば、相同的配列は、本発明によるヌクレオチド配列と相補的であるおよび/またはそれらとハイブリダイズする配列を意味すると理解される。本発明によれば、用語ハイブリダイズする配列は、公知のストリンジェントな条件下で上記のヌクレオチド配列と特異的相互作用(結合)を起こすDNAまたはRNAから成る群からの実質的に類似したヌクレオチド配列を含む。
【0030】
配列番号4に記載のDNA配列またはこれらの配列の部分から出発して、かかる相同的配列を他の生物から、例えば慣用のハイブリダイゼーション方法またはPCR技法を利用して単離することができる。これらのDNA配列は上記の配列と標準条件のもとでハイブリダイズする。ハイブリダイゼーションを実施するには、例えば保存領域からの、短いオリゴヌクレオチドを用いるのが有利であり、当業者はこれらの保存領域を他のhemA遺伝子との比較を介して公知の方法で決定することができる。しかしハイブリダイゼーションに、本発明による核酸のさらに長い断片、または完全な配列を用いることも可能である。使用する核酸(オリゴヌクレオチド、より長い断片または完全な配列)に応じて、またはハイブリダイゼーションに用いる核酸のタイプ(DNAまたはRNA)に応じて、これらの標準条件は変りうる。従って、例えば、DNA:DNAハイブリッドの融点は、同じ長さのDNA:RNAハイブリッドの融点よりほぼ10℃低い。
【0031】
核酸に応じて、標準条件は、例えば、42℃〜58℃の温度で0.1〜5 x SSC(1 X SSC=0.15 M NaCl、15 mMクエン酸ナトリウム、pH 7.2)の濃度のバッファー水溶液中であるかまたはさらに50%ホルムアミドが存在すること(例えば、42℃、5 x SSC、50%ホルムアミドなど)を意味すると理解される。DNA:DNAハイブリッドに対するハイブリダイゼーション条件は、有利なのは、0.1 x SSC中でほぼ20℃〜45℃、好ましくはほぼ30〜45℃の温度である。DNA:RNAハイブリッドに対しては、ハイブリダイゼーション条件は、有利なのは、0.1 x SSC中でほぼ30℃〜55℃、好ましくはほぼ45〜55℃の温度である。これらのハイブリダイゼーション用の上記温度は、ほぼ100ヌクレオチドの長さと50%のG+C含量をもつ核酸に対する、ホルムアミド不在のもとで計算した融点値の例である。DNAのハイブリダイゼーションに対する実験条件は、遺伝学関係の教科書、例えば、Sambrookら, 「分子クローニング(Molecular Cloning)」, Cold Spring Harbor Laboratory, 1989に記載されていて、当業者が慣用する式を用いて、核酸の長さ、ハイブリッドのタイプまたはG+C含量に応じて計算することができる。当業者はハイブリダイゼーションの対象についてのさらなる情報を、次の教科書から得ることができる:Ausubelら (編), 1985, 「分子生物学における現行プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」, John Wiley & Sons, New York;HamesおよびHiggins (編), 1985, 「核酸ハイブリダイゼーション:実用的手法(Nucleic Acids Hybridization: A Practical Approach)」, IRL Press at Oxford University Press, Oxford;Brown (編), 1991, 「必須の分子生物学:実用的手法(Essential Molecular Biology: A Practical Approach)」, IRL Press at Oxford University Press, Oxford。
【0032】
さらに、配列番号4に記載した配列の相同的配列は、例えば、誘導されるアミノ酸レベルにおいて少なくとも95%相同性、好ましくは少なくとも96%相同性、特に好ましくは少なくとも97または98%相同性、とりわけ特に好ましくは少なくとも99または99.9%の相同性を有する変異体を意味すると理解される。相同性は、全アミノ酸領域にわたって計算された。プログラムPileUp(J. Mol. Evolution., 25, 351-360, 1987, Higginsら, CABIOS, 5 1989: 151-153)を用いた。本発明の目的では、相同性は同一性を意味すると理解される。両用語は同義語である。
【0033】
機能しうる形の連結は、例えば、プロモーター、コード領域、ターミネーターおよび、もし適当であれば、さらなる調節エレメントの連続的配置であって、それぞれの調節エレメントがコード配列の発現において意図した機能を遂行できるような方法での上記配置を意味すると理解される。これらの調節ヌクレオチド配列は天然に由来するものでもまたは化学合成により得たものでもよい。
【0034】
好適なプロモーターは、原則的に、問題の宿主生物中の遺伝子の発現を制御することができるプロモーターである。本発明によれば好ましいのは化学的誘導性プロモーターであって、それを用いることにより、プロモーターにより処理される遺伝子の発現が宿主細胞の特定の時点において制御され得る。ここで一例を挙げれば、β-ガラクトシダーゼ、アラビノースまたはキシロース誘導系である。本発明によれば好ましいのはキシロース誘導系であって、この系内にpWH1520からのxylAプロモーターを有することである(Rygus, T.ら, 1991, Appl. Microbiol. Biotechnol., 35: 594-599)。
【0035】
従って、本発明はまた、遺伝子発現がxylAプロモーターの制御下にある上記のタイプの組込みベクターも含む。
【0036】
選択、複製および/または宿主細胞染色体中への組込みのための配列の多数の例が文献に記載されている。このように、アンピシリン、テトラサイクリン、カナマイシンまたはエリスロマイシンに対する耐性を与える様々な選択マーカーが公知である。しかし、以上の列挙は最終的なものでなくまたは本発明を限定するものでない。本発明によれば、有利である選択配列は大腸菌(E.coli)中のベクターを選択するためのアンピシリン耐性遺伝子またはバチルスメガテリウム菌中のベクターを選択するためのエリスロマイシン耐性遺伝子である。
【0037】
複製起点の有利な実施形態は、大腸菌(E.coli)中ではpBR322(Sutcliffe, J.G., 1979, Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol., 43, Pt 1: 77-90)であり、またバチルスメガテリウム菌中ではpE194tsもしくはrepFである。バチルスメガテリウム菌に対する温度感受性起点pE194tsは40℃以下の複製だけが可能であり、それにより、この「許容」温度を越えると染色体中への組込みに対する選択圧を形成することができる(Rygusら, 1992)。repF遺伝子産物はトランスに作用するエレメントであってグラム陽性菌中のプラスミドの複製に必要であると記載されている(Villafaneら, 1987)。
【0038】
本発明による組込みベクターのさらなる実施形態は、少なくとも1つの温度感受性複製起点を有することを特徴とする。温度感受性複製起点pE194tsを有する組込みベクターが好ましい。
【0039】
本発明のさらなる実施形態は組込みベクターであって、hemA遺伝子の遺伝子改変されたヌクレオチド配列(hemA[KK])を含んでなることを特徴とし、上記ヌクレオチド配列はフィードバック耐性グルタミルtRNAシンターゼをコードし、そのシンターゼのアミノ酸配列は少なくとも2個の正に荷電したアミノ酸の挿入を含んでなる上記組込みベクターを含む。組込みベクター中に存在する遺伝子改変されたヌクレオチド配列は、好ましくは2〜6個、好ましくは2〜4個そして特に好ましくは2個のさらなるアミノ酸を含むフィードバック耐性グルタミルtRNAをコードする。これらのさらなるアミノ酸は、それらをコードするヌクレオチド配列のレベルで2個、または対応して、6個までのトリプレットを、当業者が慣用する方法、例えばPCRを介して、コードするヌクレオチド配列中に挿入することにより導入することができる。
【0040】
好ましい組込みベクターの実施形態はhemA遺伝子の遺伝子改変されたヌクレオチド配列(hemA[KK])を含んでなり、上記ヌクレオチド配列はフィードバック耐性グルタミルtRNAシンターゼをコードし、そのシンターゼのアミノ酸配列はN末端の3および4の位置に挿入された2個の正に荷電したアミノ酸の挿入を含んでなる。正に荷電したアミノ酸は好ましくはリシン残基である。
【0041】
酵素のフィードバック耐性型は、その活性が代謝経路(または代謝経路の分枝)の最終産物により抑制されることのないタンパク質を意味すると理解される。本発明によれば、これはまた、バチルスメガテリウム菌由来のhemA[KK]遺伝子がコードする配列番号5に示したアミノ酸配列をもつフィードバック耐性グルタミル-tRNAレダクターゼ酵素も含む。
【0042】
この関連においてhemA遺伝子の遺伝子改変されたヌクレオチド配列(hemA[KK])は、本明細書に記載のhemA配列の天然変異体を含むだけでなく、人工的ヌクレオチド配列、例えば化学合成により得られた、適当であれば、宿主生物のコドン使用に適応するヌクレオチド配列も含む。遺伝子改変は、1個以上のヌクレオチド残基の置換、付加、欠失、交換または挿入を含む。
【0043】
上記の遺伝子改変にはまた、タンパク質レベルにおいて、例えば、保存アミノ酸の置換はありうるがタンパク質の活性に基本的な変化のない、従って機能に影響を与えないセンス突然変異として知られる遺伝子改変も含まれる。この場合、例えば、ある特定のアミノ酸を、類似の物理化学的特性(空間分布、塩基度、疎水性など)を持つアミノ酸により置き換えることができる。例えば、リシン残基をアルギニン残基に、イソロイシン残基をバリン残基に、またはグルタミン酸残基をアスパラギン酸残基に置換する。この遺伝子改変にはまた、タンパク質レベルでタンパク質のNまたはC末端に関わるヌクレオチド配列の改変であって、タンパク質の触媒機能に影響を与えないけれど、実際、活性の調節に重要な悪影響を与える上記ヌクレオチド配列の改変も含まれる。これらの改変は、それだけでなく、タンパク質構造に対する安定化効果を果たしうる。
【0044】
コードヌクレオチド配列中に、バチルスメガテリウム菌のコドン使用に応じてリシンをコードする6個のヌクレオチドを導入することが好ましい。これらの改変は公知の方法により実施することができる。
【0045】
さらに、本発明は、アンチセンスRNA(ashemZ)としての配列番号1に示したヌクレオチド配列(hemZ)の部分を、および、それと機能しうる形で連結された、誘導による遺伝子発現、選択、複製および/または宿主細胞の染色体中への組込みのための配列を含んでなるベクターを含んでなる。好ましい本発明によるベクターの実施形態は、配列番号3に示したアンチセンスRNA(ashemZ)および、それと機能しうる形で連結された、誘導による遺伝子発現、選択、複製および/または宿主細胞の染色体中への組込みのための配列を含んでなる。
【0046】
好ましいのは、ベクターの複製の増加がアンチセンスRNA(ashemZ)、好ましくは配列番号3に示したアンチセンスRNA(ashemZ)としてのhemZ遺伝子の部分のコピー数の増加をもたらすことである。
【0047】
遺伝子発現を増加(過剰発現)するために、問題の遺伝子のコピー数を増加することが可能である。さらに、構造遺伝子の上流に位置する、プロモーターおよび/または調節領域および/またはリボソーム結合部位を、対応して、発現速度の増加が起こるように、改変することができる。構造遺伝子の上流に組込まれた発現カセットは類似の作用をすることができる。誘導性プロモーターを利用することにより、さらにビタミンB12の生産中の発現を増加することが可能である。mRNAの寿命を延長する対策も同様に発現を改善する。遺伝子または遺伝子構築物はプラスミド中に色々なコピー数で存在してもよいしあるいは染色体中に組込まれて増幅されてもよい。
【0048】
さらに、酵素の活性それ自身を高めることが可能であり、例えば触媒活性を高めることにより、または阻害剤に対する脱調節性もしくはフィードバック脱感受性(すなわち、フィードバック耐性)活性により、または酵素タンパク質の分解が防止されるという事実により、酵素活性を増加することも可能である。しかし、問題の遺伝子の過剰発現はさらに、培地組成および培養方法を改変することにより達成することができる。
【0049】
アンチセンスRNA(ashemZ)としてhemZ遺伝子の部分を含んでなる宿主細胞において、得られる(発現される)アンチセンスRNAはコプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼをコードするmRNAの対応する(相補的な)領域とアニーリングする。
【0050】
好ましくは、上記アンチセンスRNAは、それにより、例えばhemZ遺伝子のリボソーム結合部位をブロックし、従って、hem生合成に関わる重要な酵素の翻訳と発現を抑制する。この抑制は、その後に、hem生合成を低下し、ビタミンB12の産生のための代謝フラックスを増加する利点がある。
【0051】
本発明はさらに、配列番号1に示したヌクレオチド配列(hemZ)の部分をアンチセンスRNA(ashemZ)として、好ましくは遺伝子発現がxylAプロモーターの制御下にある配列番号3に示したアンチセンスRNA(ashemZ)として含んでなるベクターである。
【0052】
原理的に、このベクターはさらにまた、例えば温度感受性の複製起点を備えていると、宿主細胞の染色体中に組込むこともできる。すなわち、このベクターの一実施形態は、少なくとも1つの温度感受性複製起点を含む。好ましくは、かかるベクター変異体は温度感受性複製起点pE194tsを含む。
【0053】
本発明によるベクターは、上記成分、例えばプロモーター、コード遺伝子セグメント、複製起点、選択のための遺伝子などを、例えば、Sambrook, J.ら, 1989, 「分子生物学:実験室マニュアル(Molecular cloning; a laboratory manual)」. 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New Yorkに記載の慣用の組換えおよびクローニング技法を用いて融合することによって製造される。
【0054】
DNA断片を互いに連結するために、アダプターまたはリンカーを断片に付加することができる。
【0055】
本発明はさらに、本発明により遺伝子改変されたバチルスメガテリウム菌株を製造するための、上記タイプのhemA[KK]遺伝子を含んでなる組込みベクターの使用に関する。
【0056】
同様に本発明は、配列番号3に示したアンチセンスRNA(ashemZ)を製造するための、配列番号1に示したヌクレオチド配列の使用を含む。さらに本発明は、配列番号3に示したアンチセンスRNA(ashemZ)として配列番号1に示したhemZ遺伝子の部分を含んでなる上記タイプのベクターを製造するための、配列番号3に示したアンチセンスRNA(ashemZ)の使用を含む。本発明はさらに、本発明によるタイプの遺伝子改変されたバチルスメガテリウム菌株を製造するための、配列番号3に示したアンチセンスRNA(ashemZ)としての配列番号1に示したhemZ遺伝子の部分を含んでなるベクターの使用に関する。本発明によればまた、hemA[KK]遺伝子を含んでなる組込みベクターおよびアンチセンスRNA(ashemZ)遺伝子を含んでなるベクターを好適なバチルスメガテリウム菌株中に導入し、そして得られる遺伝子改変された菌株をビタミンB12の生産に用いることも可能である。
【0057】
従って本発明はまた、ビタミンB12を生産するための、記載したタイプの遺伝子改変されたバチルスメガテリウム菌株の使用にも関する。
【0058】
本発明はさらに、記載したタイプの遺伝子改変されたバチルスメガテリウム菌株を含んでなる培養物を用いてビタミンB12を生産する方法であって、発酵を好気性条件のもとで実施する上記方法に関する。
【0059】
本発明による方法の一実施形態においては、好気性発酵細胞の指数増殖期中に好気性から嫌気性発酵条件への移行が起こる。ビタミンB12生産は、シフトとして知られるこの工程によるかまたは2段発酵法によって、なおさらに増加することができる。
【0060】
この関連において本発明により有利なのは、好気性から嫌気性発酵への転移が、好気性培養物がその最高光学密度、そうでなければ少なくともほぼ2〜3の光学密度に到達すると直ぐに起こることを特徴とする方法である。通例では光学密度を570〜600nmにて測定する。
【0061】
本発明の目的での嫌気性条件は、細菌を最初に好気性で増殖し、次いで細菌を嫌気性ボトル中に移してそこで発酵させるときにあてはまる条件を意味すると理解される。嫌気性ボトルへ移すタイミングは、特に2段階法では、好気性で増殖した細菌細胞が指数増殖期に入ると直ぐである。この条件は、嫌気性ボトルへ移した後に細菌がボトル中に存在する酸素を消費してしまうと、酸素をさらに供給しないことを意味する。これらの条件はまた、半嫌気性とも呼ばれる。対応する方法は通常の実験室で行われる操作であり、当業者に公知である。
【0062】
比較しうる条件はまた、細菌を最初に発酵槽内にて好気性で増殖し、次いで酸素供給を徐々に減少して最後に半嫌気性条件を確立させるときにもあてはまる。代わりに、酸素を、不活性ガス、例えば窒素を通すことにより積極的に排除することもできる。
【0063】
本発明の特別な実施形態においては、例えば培地に還元剤を加えて、厳密な嫌気性条件を作り出すことも可能である。
【0064】
一般的に、嫌気性条件下(半嫌気性または厳密な嫌気性のいずれにしろ)の本発明の発酵にとって、好気性で培養(前培養)した細菌が絶対的に必要ではない。これは、細菌を嫌気性条件下で増殖し、次いでさらに半嫌気性または厳密な嫌気性条件下で発酵させてもよいことを意味する。また種菌を維持管理用菌株から直接採取して嫌気性条件下のビタミンB12生産に用いることも考えられる。
【0065】
本発明により遺伝子改変したバチルスメガテリウム菌株を、回分培養で発酵させてもよい。回分供給または連続供給培養で発酵させる実施形態も本発明に包含される。
【0066】
本発明によって有利なのは、hemA[KK]XCDBLオペロンの発現および/またはhemZ遺伝子のアンチセンスRNAをコードするヌクレオチド配列(ashemZ)の発現を、発酵培地へのキシロースの添加により誘導する方法である。
【0067】
本発明はまた、ビタミンB12を生産するための上記方法の一実施形態であって、配列番号4に示したhemA[KK]XCDBLオペロンの発現および/または配列番号3に示したhemZ遺伝子のアンチセンスRNAをコードするヌクレオチド配列(ashemZ)の発現を発酵培地へのキシロースの添加により誘導する上記実施形態にも関する。
【0068】
ビタミンB12を生産するための本発明による方法においては、ほぼ0.1〜1%のキシロース濃度が好都合であることが分かっている。ほぼ0.2〜0.5%のキシロースの培地への添加が好ましい。とりわけ好ましいのは、好気性発酵条件下ではほぼ0.20〜0.25%、特に0.23%、そして嫌気性発酵条件下では0.4〜0.5%、特に0.5%のキシロースの添加である。
【0069】
染色体に組込まれたxylAプロモーターの誘導制御下にあるhemA[KK]XCDBLオペロンを含んでなる遺伝子改変されたバチルスメガテリウム菌株(「組込まれた菌株」)中の本発明によるhemA[KK]XCDBLオペロンの過剰発現は、バチルスメガテリウム菌株DSMZ509を「組込まれた」菌株と比較すると、少なくとも15〜40、好ましくは20〜35、特に好ましくは22の力価でのビタミンB12含量の増加(μg/l x OD)をもたらす。ビタミンB12生産の増加をμg/lで計算すると、少なくとも15〜40、好ましくは20〜35、特に好ましくは30の力価の増加をもたらす。
【0070】
遺伝子改変された、例えばDSMZ509などのバチルスメガテリウム菌株におけるashemZ遺伝子の本発明による過剰発現は、例えば細胞中のコピー数の増加の結果に基づくものでありかつさらにキシロースを培地に加えることにより誘導することができるものであり、キシロースによる誘導後ほぼ3時間の時点において、比較菌株を越えてほぼ15〜40%、好ましくは20〜35%、特に好ましくは22%の率でビタミンB12含量の増加をもたらす。キシロースによる誘導後ほぼ6時間の時点において、例えば、ほぼ16%のビタミンB12含量の増加が存在しうる。比較菌株は、同様にベクターを有するがashemZインサートを有しないバチルスメガテリウム菌株を意味すると理解される。
【0071】
本発明による一実施形態においては、少なくともコバルトおよび/または5-アミノレブリン酸を培地に加える。
【0072】
発酵は、好気性条件下ではほぼ250μMコバルトを添加して行うのが有利であり;嫌気性条件下では500μM以下のコバルトを添加して行うのが有利である。5-アミノレブリン酸を加えるときは、好気性条件および嫌気性条件下で300μM以下が有利である。本発明による方法の一実施形態においては、培地1リットル当たりほぼ200〜750μM、好ましくは250〜500μMのコバルトの添加によりビタミンB12含量を上昇させることができる。
【0073】
コバルトとALA(5-アミノレブリン酸)を用いる増殖の場合、遺伝子改変されたバチルスメガテリウム菌DSMZ509-pHBasHemZでは、キシロースによる誘導後6時間に、比較菌株より少なくとも1〜25%、好ましくは5〜18%、そして特に好ましくは10%多いビタミンB12が生成される。
【0074】
これは、アンチセンスhemZ RNAの転写がhemの合成を抑制するだけでなく、同時にビタミンB12生成の増加をもたらすことを示す。hem合成の抑制は、ビタミンB12合成経路へ向かうテトラピロール合成の代謝フラックスを増加的に指令する。
【0075】
発酵後、得られる生成ビタミンB12を発酵培地から処理することができる。かかる手法は通常の実験室技法であり、本明細書にさらに詳しく記載しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0076】
本発明を、以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、この説明は本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0077】
細菌株とプラスミド
以下で使用する全ての細菌株とプラスミドを表1および表2に示す。
【表1】

【表2】

【0078】
バッファーと溶液
最少培地
Mopso最少培地
Mopso (pH 7.0) 50.0mM
Tricin (pH 7.0) 5.0mM
MgCl2 520.0μM
K2SO4 276.0μM
FeSO4 50.0μM
CaCl2 1.0mM
MnCl2 100.0μM
NaCl 50.0mM
KCl 10.0mM
K2HPO4 1.3mM
(NH4)6Mo7O24 30.0pM
H3BO3 4.0nM
CoCl2 300.0pM
CuSO4 100.0pM
ZnSO4 100.0pM
D-グルコース 20.2mM
NH4Cl 37.4mM
滴定試薬はKOH溶液であった。
【0079】
15 g/l 寒天-寒天を固体培地に加えた。
【0080】
バチルスメガテリウム菌のプロトプラスト形質転換用溶液
SMMPバッファー
抗生物質培地 No.3(Difco)17.5g/l
スクロース 500.0mM
マレイン酸Na(pH 6.5) 20.0mM
MgCl2 20.0mM
滴定試薬はNaOH溶液であった。
【0081】
PEG-P溶液
PEG 6000 40.0 %(w/v)
スクロース 500.0mM
マレイン酸Na(pH 6.5) 20.0mM
MgCl2 20.0mM
滴定試薬はNaOH溶液であった。
【0082】
cR5上部寒天
スクロース 300.0mM
Mops (pH 7.3) 31.1mM
NaOH 15.0mM
L-プロリン 52.1mM
D-グルコース 50.5mM
K2SO4 1.3mM
MgCl2 x 6 H2O 45.3mM
KH2PO4 313.0μM
CaCl2 13.8mM
寒天-寒天 4.0%(w/v)
カザミノ酸 0.2% (w/v)
酵母エキス 10.0% (w/v)
滴定試薬はNaOH溶液であった。
【0083】
培地および培地添加物
特に断らない限り、Sambrookら(1989)に記載のLuria-Bertaniブロス(LB)完全培地を用いた。さらに固体培地1リットル当たり15gの寒天を加えた。
【0084】
添加物
炭素源、アミノ酸、抗生物質または塩などの添加物は、培地に加えて一緒にオートクレーブ処理するかまたは濃縮ストック水溶液として作製し、滅菌するかまたは濾過滅菌した。上記物質を、オートクレーブ処理しかつ50℃以下に冷却しておいた培地に加えた。テトラサイクリンのような光感受性のある物質の場合、暗所でインキュベートするように注意した。通常使用した最終濃度は以下のとおりであった;しかしこれは変更できないことを意味するのではない。
【0085】
ALA 298μM
アンピシリン(大腸菌(E.coli)用) 296μM
CoCl2(好気性培養にて) 250μM
エリスロマイシン(バチルスメガテリウム菌用) 0.55μM
グルコース 22mM
リゾチーム 1mg/ml
テトラサイクリン(固体培地中) 23μM
テトラサイクリン(液体培地中) 68μM
キシロース 33mM
微生物学技術
滅菌
特に断らない限り、すべての培地およびバッファーは120℃およびゲージ圧1バールで20分間蒸気滅菌した。
【0086】
熱感受性物質は濾過滅菌(フィルターの孔直径0.2 μm)し、ガラス器具は180℃で少なくとも3時間加熱滅菌した。
【0087】
細菌の液体培養の一般的増殖条件
滅菌ループを用いて細菌をLB寒天平板培地またはグリセロール培養物から採取し、必要に応じて、抗生物質を含有する栄養培地中に接種した。
【0088】
好気性細菌培養はバッフル付フラスコ中で37℃にて回転速度180rpmでインキュベートした。インキュベーション時間はその細菌培養液の所望の光学密度に応じて変更した。
【0089】
バチルスメガテリウム菌の増殖条件
好気性培養物は、可能な最良の曝気をするためにバッフル付フラスコ中で250rpmで37℃にてインキュベートした。嫌気性培養物は、150ml嫌気性ボトル中において37℃、100rpmにて、150mlの容量で培養した。いずれの場合も、一夜培養物から1:100の比で接種すること、および一夜培養物に一定の条件を用いることに注意した。嫌気性条件下でより高い細胞バイオマス収量を得るために、バチルスメガテリウム菌培養液を好気性でプレインキュベートして、密度が所望値に到達すると、嫌気性増殖条件に替えた。この目的のために、バチルスメガテリウム菌を最初はバッフルフラスコ中で37℃にて250rpmでインキュベートした。指数増殖の中期に、または静止期の開始点に、全培養物を150ml嫌気性フラスコ中に移し、37℃にて100rpmで増殖した。
【0090】
細菌の平板培養
滅菌ループを用いてグリセロール培養物から細菌を取り出し、LB寒天平板培地上に画線した。なお上記LB寒天平板培地は、必要に応じて、好適な抗生物質により処理しておき、37℃で一夜インキュベーションした後に平板培地上で単一コロニーを識別できるようにした。もし液体培養からの細菌を用いる場合は、Drygalskiスパチュラを用いてLB寒天平板培地上に画線し、次いで37℃で一夜インキュベートした。
【0091】
細胞密度の決定
細菌培養物の細胞密度は、578nmの光学密度(OD)を測定することにより決定し、OD578=1は1×109個の細胞数に相当すると仮定した。
【0092】
細菌の保存
細菌の長期保存のために、いわゆるグリセロール培養物を調製した。この目的のために、細菌の一夜培養物の850μlを滅菌85%グリセロールの150μlと十分に混合し、その後、-80℃にて保存した。
【0093】
分子生物学的手法
上記分子生物学的手法はSambrookら(1989)に記載されている。
【0094】
コンピテント細胞の生産
コンピテント大腸菌(E.coli)細胞を調製するために、500mLの液体培養をLB培地を用いて増殖し、OD578=0.5〜1とした。培養物を氷上で冷却し、次いで遠心分離した(4000×g;15分;4℃)。細胞沈殿物を滅菌脱イオン水中に十分に再懸濁させ、遠心分離し(4000×g;8分;4℃)、滅菌脱イオン水で再洗浄し、再び遠心分離した(4000×g;8分;4℃)。沈殿物を10%濃度(v/v)グリセロール溶液を用いて洗浄した後、その混合物を遠心分離し(4000×g;8分;4℃)、そして沈殿物をできるだけ小量の10%(v/v)濃度のグリセロール溶液中に再懸濁させた。このコンピテント大腸菌(E.coli)細胞を直ちに形質転換に用いるかまたは-80℃に凍結した。
【0095】
エレクトロポレーションによる細菌の形質転換
形質転換は、パルスコントローラーの付いたGene Pulser(BioRad社)を使ってエレクトロポレーションにより行った。この目的のために、それぞれの事例で、40μlのコンピテント大腸菌(E.coli)細胞および1μgのプラスミドDNAを形質転換キュベット中に移し、Gene Pulser内で25μFおよび平行抵抗200Ωにて12kV/cmの電場強度に曝した。2μlを越えるプラスミドDNAを加える必要がある場合は透析を実施した。
【0096】
続いて再生するために、形質転換した細胞を、形質転換後直ちに37℃の加熱新と振とう器内の1mlのLB培地中で半時間インキュベートした。その後、これらのバッチの色々な容積を、抗生物質を適当に加えたLB平板培地上に画線し、37℃で一夜インキュベートした。
【0097】
バチルスメガテリウム菌のプロトプラスト形質転換
プロトプラストの調製
LB培地50mlにバチルスメガテリウム菌の一夜培養物1mLを接種し、37℃でインキュベートした。OD578が1になると、細胞を遠心分離し(10000×g;15分;4℃)、新しく調製したSMMPバッファー5ml中に再懸濁させた。SMMPバッファーにリゾチームを加えた後、懸濁液を37℃で60分間インキュベートし、顕微鏡のもとでプロトプラスト形成をモニターした。細胞を遠心分離(3000×g;8分;室温)により回収し、次いで細胞沈殿物を注意深くSMMPバッファー5ml中に再懸濁させ、そして2回目の遠心分離および洗浄工程を行った。その後、10%(w/v)のグリセロールを加えた後、プロトプラスト懸濁液を部分に分割し、それらを-80℃にて凍結させることができた。
【0098】
形質転換
プロトプラスト懸濁液500μlを、SMMPバッファー中のDNA 0.5〜1μgを用いて処理し、PEG-P溶液1.5mlを加えた。室温にて2分間インキュベートした後、SMMPバッファー5mlを加え、注意深く混合し、そして懸濁液を遠心分離した(3000×;5分;室温)。その直後に、上清を取り除き、辛うじて見える沈殿物をSMMPバッファー500μl中に再懸濁させた。懸濁液を37℃にておだやかに振とうしながら90分間インキュベートした。次に、形質転換した細胞50〜200μlをcR5上部寒天2.5mlと混合し、選択に適した抗生物質を含有するLB-寒天平板培地上に載せた。37℃にて1日間インキュベートした後、形質転換したコロニーを識別することができた。
【0099】
バチルスメガテリウム菌由来のhemZ遺伝子のクローニングと配列決定
バチルスメガテリウム菌DSMZ509由来のhemZ遺伝子を配列決定するためにゲノムDNAを単離し、そして次のプライマー:
PCRプライマー1:5'-TTTATATTCATATTCCATTTTG-3'
PCRプライマー2:5'-GGTAATCCAAAAATAAAATC-3'
によるPCR反応のテンプレートとして、使用した。
【0100】
枯草菌(B. subtilis)由来のhemZ遺伝子と65.1%同一性を有しかつバチルスメガテリウム菌由来のhemZ遺伝子の部分配列を構成する480bpのPCR断片を増幅した。hemZ部分配列を相補するために、一方向PCR、すなわち、いわゆるベクトレット(vectorette)PCRを、Sigma Geneosys社のベクトレットシステムを用いて実施した。
【0101】
ベクトレットPCRは、既知配列セグメントと境界をなす未知DNA領域の増幅を可能にする。ここで、第1プライマーは既知DNA配列に基づいて設計した。ハイブリダイゼーションに必要な第2PCRプライマーの既知DNA配列を確立するために、ゲノムを制限酵素を用いて切断し、そして得られる全ての末端を既知の短いDNA配列と連結した。1次鎖を合成した後、この短い配列(ベクトレット)は第2のプライマーに対する標的配列として作用する。
【0102】
全てのベクトレットユニットと融合した制限酵素消化物は一種の遺伝子ライブラリー、ベクトレットライブラリーとみなしうるので、このライブラリーを使って任意の所望の配列を増幅することができる。ベクトレットは一部が対合していないオリゴヌクレオチド2本鎖から成るので、第2の増幅サイクルのための相補性PCRプライマーは、既知配列領域に特異的であるプライマーが伸長されて相補的配列を生じる時にだけハイブリダイズすることができる。これは所望のDNAだけが増幅されることを保証する。
【0103】
ベクトレットPCRを成功させるためには、所望のDNAの断片サイズが増幅できるサイズであることが必要である。ここで、断片サイズは、特異的DNAポリメラーゼ(Taq)が断片を末端まで途絶えることなく合成できるように6〜7kbを超えてはならない。ゲノムDNAを消化するための適切な制限酵素は、予備的サザンブロット分析により決定される。この目的のために制限酵素ClaIを選んだ。サザンブロット分析により確認しておいた断片サイズにより、予想されるPCR断片のサイズの計算が可能であり、従ってその同定が容易になる。
【0104】
ベクトレットPCRにより、バチルスメガテリウム菌由来の完全なhemZ遺伝子の1本鎖の単離物を得た。この配列から出発し、逆PCRを用いて、全てのhemZ遺伝子をその全体について増幅しかつ配列決定することができた。配列を配列番号1に示す。
【0105】
ベクター構築物
pHBintEの構築
用いた出発プラスミドは、pWH1967E(Schmiedel, D.ら, 1997, Appl. Microbiol. Biotechnol., 47 (5): 543-546)およびpMM1520(Malten, Marco, 2002, 「バチルスメガテリウム菌におけるデキストランスクラーゼの生産と分泌(Produktion und Sekretion einer Dextransucrase in Bacillus megaterium)」 PhD thesis, Institute of Microbiology (Prof. Dr D. Jahn), Technical University Brunswick)であった。最初に、2つのプラスミドをそれぞれPstIおよびHindIIIにより切断した。その後、完全な混合物をそれぞれ1つのアガロースゲルにアプライし、目的の断片を溶出した。溶出したpWH1967E(4198bp)の断片は、エリスロマイシン耐性、repF遺伝子、温度感受性起点pE194tsおよびアンピシリン耐性の半分を含有した。pMM1520(1485bp)の断片は、バチルスメガテリウム菌由来のxylA'プロモーター、およびプロモーターの直接上流部分、マルチプルクローニングサイト、pBR322由来の起点、およびアンピシリン耐性を相補するアンピシリン耐性遺伝子の第2部分を含有した。次いで両断片の付着末端を連結した。得られるプラスミドをpHBintEと名付けた。クローニング計画を図1に模式図で示した。
【0106】
従って、クローン化されたプラスミドpHBintE(図1)は次の特性を有する。このプラスミドは大腸菌(E.coli)形質転換体を選択するためのアンピシリン耐性およびバチルスメガテリウム菌形質転換体を選択するためののエリスロマイシン耐性を有する。大腸菌(E.coli)中の複製に重要なエレメント(pBR322)およびバチルスメガテリウム菌中の複製に重要なエレメント(pE194tsおよびrepF)が存在する。バチルスメガテリウム菌の温度感受性起点pE194tsは40℃以下の複製だけを許容し、それによってこの「許容」温度を越えると染色体中への組込みのための選択圧を形成することが可能である(Rygusら、1992)。repF遺伝子産物はトランスで作用しかつグラム陽性菌中のプラスミドの複製に必要であるエレメントとして記載されている(Villafaneら、1987)。さらに、このプラスミドは直接上流にマルチプルクローニングサイトを有するxylA'プロモーターを含有する。このプロモーターは、キシロースにより、マルチプルクローニングサイト中に挿入された遺伝子の誘導を可能にする。
【0107】
pHBiHemA[KK]の構築
図2は、「KKで脱調節された HemA」を有するバチルスメガテリウム菌、バチルスメガテリウム菌野生型、およびエス.チフィムリウム菌(S. typhimurium;ネズミチフス菌)のHemAに対するアラインメント報告の最初の27個のアミノ酸を示す。この図もまた、挿入が起こった部位を明らかに示している。
【0108】
HemA[KK]突然変異体をPCRによりクローニングした。使用したテンプレートはバチルスメガテリウム菌由来の染色体DNAであった。バチルスメガテリウム菌のhemA遺伝子の配列は公知であるので、プライマーを誘導することができた。プライマーの配列を以下に示す。
【0109】
フォワード:5' GGGGACTAGTCAAATGCATAAAAAAATTATAGCAGTCGG 3'
リバース: 5' CTGGGGTACCCCATATCAACCATTATTCAATCC 3'
誘導したプライマーはバチルスメガテリウム菌と完全な相同性を持たなかった。第1に、6塩基を、フォワードプライマー中のSpeI切断部位(イタリック)と交換した。第2に、hemA[KK]突然変異体をクローニングするために、さらなる6塩基を、長さが6塩基で2つのリシンをコードするDNA配列(下線部)により置換した。挿入部位は、「KK挿入」がアミノ酸配列のN末端の第3および第4位になるように選んだ。遺伝子コードには縮重があるので、バチルスメガテリウム菌のコドン使用を用いて最も可能性の高い配列を決定した。コドン使用は、ある特定の塩基トリプレットが生物のゲノム中のアミノ酸をコードする確率を表す。バチルスメガテリウム菌の場合、%使用が76%の「AAA」は、リシンに対する頻度が最も高いトリプレットである。リバースプライマー中にはKpnI酵素切断部位を導入した。プライマーはMWG、Ebersbachにより合成された。
【0110】
PCRを介して増幅しておいたhemA[KK]突然変異体を、PCR精製キット(Quiagen)を用いて精製し、SpeIおよびKpnIで切断し、そして再び精製した。プラスミドpHBintEを同様にSpeIおよびKpnIで切断し、PCR精製キット(Quiagen)を用いて精製した。濃度を確認した後、これらの2つの断片を1:4のベクター/インサート比で連結して組込みベクターを得てpHBiHemAKKと名付けた。プラスミドpHBiHemAKKのクローニング計画を図3に模式図で示す。
【0111】
pHBiHemAKKは、本質的にhemA[KK]突然変異体の挿入だけがpHBintEと異なるので、pHBintEの特性を保持する。さらに、大腸菌(E.coli)の選択およびバチルスメガテリウム菌の選択のためのアンピシリン耐性およびエリスロマイシン耐性がそれぞれ存在する。起点pBR322は大腸菌(E.coli)の複製に役立ち、かつ温度感受性起点pE194tsおよびrepFはバチルスメガテリウム菌の複製に役立つ。Xyl A'とhemA[KK]突然変異体が連結されて翻訳融合体(translational fusion)となり、xylプロモーターの制御下にある。hemA[KK]が挿入された結果、pHBiHemAKKは、バチルスメガテリウム菌染色体と相同性のセグメントを有し、従ってさらに単一クロスオーバー組換えを介する染色体中への組込みの可能性がある。
【0112】
温度感受性起点pE194tsはこの組込み事象の選択にとって重要である。プラスミドは30℃にて複製されるので、バチルスメガテリウム菌の形質転換体をこの温度でエリスロマイシンに対して選択することができる。温度を42℃に増加すると、プラスミドはもはや複製することができない。これは、このプラスミド、従ってエリスロマイシン耐性をその染色体中に組込んだ形質転換体だけが増殖できることを意味する。
【0113】
pHBiHemA[KK]のバチルスメガテリウム菌染色体中への組込みは、こうして、全てのhemAXCDBLオペロンのキシロース誘導過剰発現を可能にする。さらに、フィードバック脱調節されたHemAタンパク質の突然変異体の結果として、プラスミドはビタミンB12の過剰生産への改善の可能性を含む。組込まれたプラスミドpHBiHemA[KK]をもつバチルスメガテリウム菌株DSMZ509を、以後HBBm1と呼ぶ。
【0114】
pHBasHemZの構築
バチルスメガテリウム菌 DSMZ509から単離したゲノムDNAから出発して、PCRおよび次に記載するプライマーを用いて、通常の実験室技法により、hemZ遺伝子のmRNAの5'領域からの129bp BamHI/SpeI断片を、アンチセンスRNAの形態で増幅した。
【0115】
フォワードプライマー(ashemZ):
5'-GCGGGATCCCTTGAACTGAGCACCTTGACCGG-3'
はBamHi切断部位を含有する。
【0116】
リバースプライマー(ashemZ):
5'-TCGACTAGTCGGACGTAAAAAACGTTCATCTTCTATACC-3'
はSpeI切断部位を含有する。
【0117】
PCR条件:
1回:7分/95℃;
30回:1分/95℃、1分/64℃および1分/72℃;そして
1回:7分/72℃。
【0118】
その後、増幅したBamHI/SpeIアンチセンスRNA断片を精製し、そして制限酵素SpeIおよびBamHIを用いて予め線状化しておいたベクターpWH1520(Rygus, T.ら, 1991, Appl. Microbiol. Biotechnol., 35: 594-599)中にクローニングした。得られるプラスミドpHBasHemZはxylAプロモーターの制御下にあるアンチセンスhemZ RNAを含有し、これを図4に示す。
【0119】
配列番号3に示した挿入されたアンチセンスhemZ RNAは長さ129bpであり、また、実際のhemZ遺伝子開始コドンの前の82ヌクレオチドで開始する。アンチセンスhemZ RNAの位置の概観は以下に見ることができる。
【表3】

【0120】
従って、アンチセンスRNAの転写物はhemZ mRNAと一緒に2本鎖RNAを形成し、そしてリボソームに対するhemZ遺伝子のリボソーム結合部位をブロックする。
【0121】
バチルスメガテリウム菌の形質転換およびpHBiHemAKKの組込み
本発明の組込みベクターの染色体中への組込みを可能にするため、バチルスメガテリウム菌DSMZ509を最初にpHBiHemAKKを用いてプロトプラスト形質転換法で形質転換した。形質転換した菌株を寒天平板培地上でエリスロマイシン(1μg/mlおよび75μg/ml)を添加して増殖した。培養温度は、プラスミドが複製できる温度として30℃を選んだ。
【0122】
24時間の増殖後、コロニーをエリスロマイシンの全ての記述した濃度について同定した。また、いくつかのコロニーをエリスロマイシンを加えた寒天平板培地(75μg/ml))上に移しても、上記条件が支配する条件で、24時間後に増殖が起こった。従って、バチルスメガテリウム菌DSMZ509中へのpHBiHemAKKの形質転換は成功した。
【0123】
5μg/mlエリスロマイシンおよび0.23%キシロースを補充したLB培養110mlにこれらの形質転換体を接種し、30℃にて好気性条件のもとで(250rpmで振とうしながら)インキュベートした。ほぼ12時間後、温度を42℃に上昇して、プラスミドのさらなる複製ができないようにし、そして組込みのための選択圧を形成した。12時間後に、培養物をそれぞれ新しいLB培地に移し、全3日間、42℃にてインキュベーションを続けた。この時以後、LB培地の良いコロニー形成が観察された;これはプラスミドの染色体中への組込みを示すものである、というのは、自由に複製しうるプラスミドを持つ形質転換体はこれらの条件下で複製によりプラスミドをさらに与えることができないからである。
【0124】
遺伝子改変されたバチルスメガテリウム菌 DSMZ509の増殖挙動
好気性条件下におけるpHBiHemA[KK]が組込まれたバチルスメガテリウム菌DSMZ509
新しい菌株の増殖能力を調べるために、増殖曲線を5μg/mlエリスロマイシンおよび0.23%キシロースを添加したLB培地において42℃で好気性条件下で記録した。培地中に小量のキシロースが存在すると、pHBiHemAKK組込み形質転換体の良い好気性増殖が示された。
【0125】
シフト実験におけるpHBasHemZを持つバチルスメガテリウム菌 DSMZ509
いわゆる「シフト実験」において、バチルスメガテリウム菌を最初に高細胞密度を達成するために好気性条件下で増殖した。細菌は嫌気性条件下で実質的により高いビタミンB12含量を達成するので(Barg, H., 2000, 「バチルスメガテリウム菌によるビタミンB12生産(Vitamin B12-Produktion durch Bacillus megaterium」, diploma thesis, Albert Ludwig University, Freiburg)、その後、指数増殖期の終わりに培養を嫌気性条件に移した。
【0126】
炭素源としてグルコースを含むMopso最小培地により増殖した時の、非形質転換菌株バチルスメガテリウム菌DSMZ509ならびに形質転換体DSMZ509-pWH1520およびDSMZ509-pHBasHemZを比較した。形質転換体培養に、再び30μg/mlテトラサイクリンを加えた。9時間増殖した後に、0.5%(w/v)キシロースにより誘導した。これは好気性から嫌気性条件へのシフトの1時間前であることを意味する。
【0127】
アンチセンスhemZ RNAを形成する形質転換体の増殖と比較形質転換体の増殖との間に顕著な相違は見出されなかったので、CoCl2とALAを添加して増殖を比較した。ALAの添加もhem合成経路への代謝フラックスの増加をもたらす。従ってアンチセンスhemZ RNAによる抑制は、比較形質転換体についての増殖に顕著な相違を表すに違いない。このシフト実験において、形質転換の培養物に、再びテトラサイクリン30μg/mlを添加しかつさらに250μM CoCl2および298μM ALAを添加した。0.5%(w/v)キシロースによる誘導を、10時間の増殖後(シフトの1時間前に相当する)に実施した。
【0128】
図5は、298μM ALAおよび250μM CoCl2を添加すると、バチルスメガテリウム菌DSMZ509-pHBasHemZ(-!-)のその全コースにわたる増殖は、比較しうる形質転換体DSMZ509-pWH1520(-+-)の場合より著しく悪いことを示す。これは、アンチセンスRNAによるhem生成の減少が起こったことを意味する。ALA(全てのテトラピロールの前駆体分子)の添加は、アンチセンスhemZ RNAによるコプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼ(hemZ)の抑制が増殖に影響を与える程度まで、テトラピロール合成を刺激するようである。
【0129】
ALAとCoCl2の添加により達成される細胞密度は、これらの添加物なしの増殖の場合より低い。形質転換体の場合、達成した細胞密度はアンチセンス形質転換体のOD578が3.9、そして比較形質転換体のOD578が5.2であった(無添加では8.7および8.8)。非形質転換菌株DSMZ509(-三角-)はその全コースにわたって最も良い増殖を示し、シフトの時点において、最高の細胞密度である7.8のOD578(無添加では10.8)であった。
【0130】
非形質転換菌株と比較した形質転換体の不利な増殖は、プラスミドのさらなる複製および培地への抗生物質添加が原因である。
【0131】
好気性条件下においてコバルトとALAを添加したときのバチルスメガテリウムDSMZ509-pHBasHemZ
以上のシフト実験においては、好気性条件下でわずか1時間の誘導後増殖が起こった。hemは主に好気性条件下で要求されるので、2種のバチルスメガテリウム菌形質転換体DSMZ509-pWH1520とDSMZ509-pHBasHemZの増殖比較を、グルコースを炭素源とするMopso最小培地で250μM CoCl2および298μM ALAを添加して、好気性条件のもとで実施した。0.5%キシロース(w/v)による誘導をOD578=2にて実施した。
【0132】
図6は、形成されたアンチセンスhemZ RNAが増殖を抑制することを立証する。再び、DSMZ509-pHBasHemZ(-!-)の増殖が各時点において比較形質転換体(-+-)より劣った。従って、アンチセンスhemZ-RNAを形成する形質転換体が最大値OD578=8.3に達するのに対して、比較形質転換体の最大値OD578は10.0である。これは、コプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼの抑制が起こったことを意味する。
【0133】
ビタミンB12の定量分析
ビタミンB12を定量するために2つの異なる方法を用いた。最初の測定は、エス.チフィムリウム(S. typhimurium) metE cysG二重突然変異体の増殖に基づく方法であり、第2の測定は、Fusion型プレートリーダー(Packard社)と組み合わせたRIDASCREEN(登録商標)FASTビタミンB12ELISAアッセイ(r-biopharm社)に基づく方法であった。
【0134】
エス.チフィムリウム菌(S. typhimurium) metE cysG二重突然変異体を用いるビタミンB12の測定
サンプルをバチルスメガテリウム菌培養から異なる増殖期に採取した。OD578の測定後、細胞を培地から遠心分離により分離した(4000 x g;15分;4°C)。次いで、得た細胞沈降物および取り出した培地を凍結乾燥した。エス.チフィムリウム菌(S. typhimurium) metE cysG 二重突然変異体を37℃にて一夜、メチオニンおよびシステインを含有する最小培地上で培養し、そして平板培地から採取し、NaCl等張液40mlを用いて洗浄した。遠心分離後、細胞沈降物を塩類等張液中に再懸濁させた。洗浄した細菌培養を、400mlのシステインを含有する最小培地寒天と47〜48℃の温度で注意深く混合した。
【0135】
脱イオン滅菌水中に再懸濁させて15分間水浴で煮沸しておいた10μlのバチルスメガテリウム菌サンプルを、冷却した平板培地上に置いて18時間37℃でインキュベートした。ここで、増殖したサルモネラ菌コロニーの直径は、アプライしたバチルスメガテリウム菌サンプルのビタミンB12含量に比例する。0.01、0.1、1、10および40pmolビタミンB12を添加して作った較正曲線と比較すると、試験サンプル中のビタミンB12含量を決定することができる。この標準的方法を用いると、生物学的材料中の小量のビタミンB12を速やかにかつ高い再現性で検出することができる。
【0136】
ELISAアッセイによるビタミンB12測定
アッセイの原理
アッセイは抗原/抗体反応に基づき、マイクロタイタープレートのウエルをビタミンB12に対する特異的抗体を用いてコーティングする。酵素標識したビタミンB12(酵素複合体)とサンプル溶液またはビタミンB12標準溶液を加えた後に、遊離ビタミンB12と酵素標識ビタミンB12がビタミンB12抗体結合部位との結合を競合する(競合酵素イムノアッセイ)。
【0137】
次いで未結合の酵素標識ビタミンB12を洗浄工程で除去する。検出は基質/色素原溶液(テトラメチル-ベンジジン/尿素過酸化物)の添加による、結合した酵素複合体は色素原を青色の最終産物に転化する。停止試薬を加えると、青色から黄色へ色変が生じる。この色変を光度計により450nmにて測定する。従って、溶液の吸収はサンプル中のビタミンB12含量に逆比例する。
【0138】
操作
測定すべきバチルスメガテリウム菌の液体培養から異なる増殖時点に2mlサンプルを採取し、OD578を決定した。続いて細胞を培地から遠心分離(4000 x g;5分;4°C)により分離し、上清を捨てて沈降物を凍結乾燥した。
【0139】
次いで、試験キットの所要の試薬(標準物質、酵素複合体および洗浄バッファー濃縮液)を室温に置いて準備し、そして付随するプロトコルに記載の通り希釈した。
【0140】
試験実施直前にサンプルを調製した。この目的で、凍結細胞を0.5mlの滅菌脱イオン水に再懸濁させた。定量的細胞破壊は、50μlのリゾチーム溶液(1mg/ml)の添加、次いでインキュベーション(30分;37°C;300rpmでの振とう)、音波処理(5分)および煮沸(3分;100°C)により実施した。次いでサンプルを氷冷して室温とし、遠心分離(4000 x g;5分;15°C)した。上清を除去し、サンプル希釈バッファーにより1:5に希釈した。次いで、それぞれ、50μlの希釈サンプルおよび50μlのビタミンB12希釈標準液をマイクロタイタープレートのキャビティ中にピペットで注入した。50μlの希釈酵素複合体の添加後、(Fusion型デバイスの振とう機能により)サンプルを混合してインキュベートした(15分;RT)。インキュベーション後、マイクロタイタープレートを軽く叩いてキャビティを空にし、キャビティ1個当たり250μlの洗浄バッファーを用いて洗浄した。再び、キャビティを軽く叩いて空にし、洗浄工程を2回繰返した。次いでキャビティ1個当たり2滴の停止試薬を同時に加え、混合し、そして暗所で10分間室温でインキュベートした。キャビティ1個当たり2滴の停止試薬を同時に加えた後、450nmでの吸収をPackardのFusion型デバイスで測定した。評価のために、吸収(%)を次式で計算した:
(標準物質またはサンプルの吸収)/(ブランク標準物質の吸収)×100=吸収(%)
次いで吸収(%)対log(ppb)をプロットして、較正直線を確立した。それ以後、直線式、希釈ファクターおよび既知の細胞密度(OD578)を介して、サンプルのビタミンB12含量をμg/(l x OD)で示すことが可能になった。
【0141】
pHBiHemAKKが組込まれたバチルスメガテリウムDSMZ509菌のビタミンB12含量を決定するためのELISAアッセイ
キシロース誘導hemA[KK]XCDBLオペロンをもつ培養物のビタミンB12含量をチェックするために、pHBiHemAKKが組込まれた菌株、ならびに、比較菌株として、DSMZ509およびZ509-pWH1520-cobAを好気性で増殖した。10時間の増殖と5時間の後誘導(t=5)の後に、サンプルを、確立したELISAビタミンB12アッセイによって消化し、ビタミンB12含量を測定した。黄色のDSMZ509比較培養物と比較して赤褐色の着色によって、遠心分離した細胞ペレットは既にテトラピロール含量が増加していることを示した。図7および8に示したように、このことをELISAアッセイにより立証した。推測されるhemA[KK]XCDBLオペロンの過剰発現は、野生型菌株(DSMZ509)のビタミンB12含量0.07μg/l*OD578からpHBiHemAKKが組込まれた菌株のビタミンB12含量1.59μg/l*OD578への増加をもたらした。これは22倍の増加に相当する。もし増加をμg/lで計算すると、その結果は30倍を超える(DSMZ509の場合の0.26μg/lからpHBiHemAKKが組込まれたDSMZ509の場合の8.51μg/lへ)。
バチルスメガテリウムDSMZ509-pHBasHemZのビタミンB12ELISAアッセイ
シフト実験において、バチルスメガテリウム菌形質転換体DSMZ509-pWH1520およびDSMZ509-pHBasHemZのサンプルを、キシロースによる誘導後、3時間(T=3)および6時間(T=6)に採取した。これらのサンプルを、材料と方法のセクションで詳しく記載したELISAアッセイ(R-Biopharm社)によりビタミンB12を分析した。
【0142】
シフト実験においては、好気性条件から嫌気性条件への移動が誘導後1時間に起こる。
【0143】
図9および図10は、グルコースによる増殖(1、2、5、6)の結果とグルコースならびに298μM ALAおよび250μM CoCl2の添加による増殖(3、4、7、8)の結果を示す。
【0144】
図9は、問題の培養の細胞密度に基づくビタミンB12濃度を示す。4事例のうちの3事例(2、6、8番)において、DSMZ509-pHBasHemZは比較形質転換体(1、5、7番)より多くのビタミンB12を生成した。従って、添加物なしの増殖の事例においては、アンチセンスhemZ-RNA形成形質転換体のビタミンB12含量は、比較形質転換体の事例より、時点T=3(2番)で21%高く、T=6(6番)の事例で16%高い。コバルトおよびALAを伴う増殖の事例においては、DSMZ509-pHBasHemZは誘導後6時間において、DSMZ509-pWH1520より10%多いビタミンB12を生成する。
【0145】
図10では、コバルトおよびALAを添加した培養と無添加の培養との間の相違は一層顕著である。その理由は、無添加での増殖により達成される細胞密度がより高いからである。
【0146】
バチルスメガテリウムDSMZ509-pHBasHemZのバイオアッセイビタミンB12測定
シフト実験において、バイオアッセイの方法によって、ビタミンB12含量を測定するために、サンプルを3つの異なる時点に採取した。サンプルを採取した時点は、1)誘導の時点(T=0)、2)誘導後3時間(T=3)および3)誘導後6時間の静止期(T=静止期)である。ここで、好気性から嫌気性条件へのシフトは誘導後1時間に起こった。バチルスメガテリウム菌株DSMZ509、DSMZ509-pWH1520およびDSMZ509-pHBasHemZのビタミンB12含量を測定した。最初に、グルコースを用いた増殖について、第2に、グルコースを用いてかつ250μM CoCl2および298μM ALAを添加した増殖について測定した。測定は、エス.チフィムリウム(S. typhimurium) metE cysG二重突然変異体AR3612を用いて実施した。ビタミンB12含量はpmol/OD578およびμg/l(図11-12)で示した。
【0147】
図11は、グルコースを用いた増殖の場合、DSMZ509-pHBasHemZについては、細胞密度に基づくビタミンB12含量はいずれの時点(3、6および9番)においても最高であることを示す。再びこの結果は、hem合成の抑制がビタミンB12の代謝フラックスの増加をもたらすことを示す。
【0148】
細菌培養の1リットル当たりμgの結果を示す図(図12)は、再びアンチセンスhemZ-RNAを転写する形質転換体(3、6および9番)が全体で最高量のビタミンB12を生産したが、この形質転換体について低い細胞密度を得たことを示す。
【0149】
図13は、CoCl2およびALAの培地への添加により、アンチセンスhemZ-RNAを転写する形質転換体は誘導後のわずか3時間後に最高のビタミンB12含量を達成することを示す(6番)。この現象の説明として最初に考えられるのは、誘導は直ぐ最高のプラスミド複製に導くのではなく、開始期を必要とするようである。細菌培養1リットル当たりのビタミンB12含量を考慮すると、そのより良い増殖の結果として、非形質転換株DSMZ509は他の2種の形質転換菌株より多くのビタミンB12を生産するのが見られる(図14)。
【0150】
相対的コプロポルフィリノーゲンIII測定:方法
蛍光スペクトル
サンプル2mlを、増殖の異なる時点に、測定すべきバチルスメガテリウム菌液体培養から採取してOD578を測定した。次いで細胞を遠心分離(4000 x g;5分;4℃)により培地から分離し、上清を捨て、沈降物を凍結乾燥した。
【0151】
測定の直前に、サンプルを1mlの滅菌脱イオン水中に再懸濁させ、次いで水で希釈して光学密度を調節した。これらの調整したサンプル1mlを次いでリゾチーム(1mg/ml)50μlを用いて処理し、振とう器内で30分間37℃および300rpmにてインキュベートした。次いで、サンプルを10分間超音波浴中に置き、その後、3分間4000 x gにて遠心分離した。上清の蛍光測定を次の設定により実施した:
開始: 430 nm
終了: 680 nm
励起: 409 nm
Exスリット: 12 nm
Emスリット: 12 nm
走査速度: 200 nm/分。
【0152】
CoCl2およびALAを添加した増殖曲線は、hemの合成がアンチセンスhemZ RNAにより抑制される最初の徴候を与えた。キシロース誘導アンチセンスhemZ RNAは、hemZ mRNAを占有することによりリボソーム結合部位を阻害し、そしてhemZへの翻訳を妨げる。これはコプロポルフィリノーゲンIIIからプロトポルフィリノーゲンIXへの反応を触媒するhemZタンパク質生成の低下をもたらす。実際の代謝フラックスはこの点で中断されるので、コプロポルフィリノーゲン-IIIが蓄積する。
【0153】
コプロポルフィリノーゲンIIIは空気中で酸化されてコプロポルフィリンIIIを与えるので、サンプル中のコプロポルフィリノーゲンIIIの直接検出は困難である。予備実験は、コプロポルフィリンIIIの蛍光スペクトルはほぼ579nmおよびほぼ620nmの発光ピークを有することを明らかにした。従って、蛍光スペクトルによって酸化型(コプロポルフィリンIII)を測定することにより、間接的にコプロポルフィリノーゲン-IIIの相対量を検出することは可能であるに違いない。
【0154】
DSMZ509-pHBasHemZ中の、および、比較形質転換体DSMZ509-pWH1520中のコプロポルフィリノーゲンIIIの相対量の差を実証するために、蛍光測定を実施した。グルコースを炭素源として用いて298μM ALAおよび250μM CoCl2を加えたMopso最小培地を用いた増殖実験から、0.5%(w/v)キシロースによる誘導後3時間に、形質転換体DSMZ509-pHBasHemZおよびDSMZ509-pWH1520のサンプルを採取した。最初に、サンプルの光学密度を水で希釈することにより調整した。その後、細胞を破壊して細胞抽出物を測定した。
【0155】
これらのサンプルの個々のスペクトルは類似のコースを示し、アンチセンスhemZ RNAを有する形質転換体は常により高い蛍光レベルを示した。2つのスペクトルの差はピーク(579nmおよび612nm)においてさらに広くなるようであった。
【0156】
この差を実証するために、図15は2つのサンプルの示差スペクトル(DSMZ509-pHBasHemZよりDSMZ509-pWH1520を差引いた値)を示す。579.83nmと617.86nmのピークは、アンチセンスRNAを形成する形質転換体が比較形質転換体と比較して、コプロポルフィリノーゲンIIIを蓄積することを示す。これは、hem生合成の抑制がアンチセンスRNAによって達成された事実の明確な証明である。従って、DSMZ509-pHBasHemZを用いると、キシロースによる誘導を標的とすることによりhem生合成経路を阻止することが可能であり、その後、ビタミンB12合成経路に向かう妨げられない代謝フラックスが可能になるに違いない。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】バチルスメガテリウム菌用の組込みプラスミドpHBintEのクローニングの模式図を示す。出発プラスミドpWH1967EとpMM1520を、制限酵素PstIおよびHindIIIにより切断した。pWH1967Eの4198bp断片(PstI-2786とHindIII-6984の間)およびpMM1520の1485bp断片(HindIII-7212とPstI-1307の間)を溶出させて連結した。
【図2】1)エス.チフィムリウム菌(S. typhimurium;ネズミチフス菌)HemA、2)バチルスメガテリウム菌HemAおよび3)バチルスメガテリウム菌HemAKKのアラインメント報告の最初の27個のアミノ酸を表す。下線部:N末端の位置3および4における2個の正に荷電したリシン残基(KK)。
【図3】プラスミドpHBiHemAKKのクローニング戦略の模式図を示す。PCR増幅したhemA[KK]突然変異体とベクターpHBintEをそれぞれSpeIおよびKpnIにより切断し、得られる付着末端を連結して組込みベクターpHBiHemAKKを得た。
【図4】プラスミドpHBasHemZの模式図を示す。図に示した切断部位SpeIおよびBamHIを利用してアンチセンスRNAを挿入した。
【図5】バチルスメガテリウム菌株DSMZ509およびこの菌株の形質転換体の増殖挙動であって、炭素源としてグルコースを含みかつ298μM ALAおよび250μM CoCl2を添加したMopso最小培地における37℃での上記増殖挙動を示す。好気性から嫌気性増殖へのシフトは指数増殖期の終わり(11時間後)に起こった。DSMZ509非形質転換体(-三角-)、DSMZ509 pWH1520(-+-)およびDSMZ509 pHBasHemZ(-!-)の増殖を示す。pHBasHemZおよびpWH1520上のxylA プロモーターの遺伝子発現の誘導は、10時間の増殖後に0.5%(w/v)キシロースの添加により起こった。記載した時間に、サンプルを採取し、578nmの光学密度を測定した。
【図6】バチルスメガテリウム菌株DSMZ509-pWH1520(-+-)およびDSMZ509-pHBasHemZ(-!-)の増殖挙動であって、炭素源としてグルコースを含みかつ298μM ALAおよび250μM CoCl2を添加したMopso最小培地中の好気性増殖条件下での上記増殖挙動を示す。誘導は、0.5%(w/v)キシロースの添加によりOD578=2で実施した。記載した時間に、サンプルを採取し、578nmの光学密度を測定した。
【図7】ELISAアッセイで測定した、好気性増殖条件下で、LB培地中のバチルスメガテリウムDSMZ509(1)、DSMZ509-pWH1520-cobA(2)およびpHBiHemAKKが組込まれたDSMZ509(3)のμg/l*ODで表したビタミンB12含量を示す。誘導は、0.5%(w/v)キシロースの添加により5時間の増殖後に実施し、細胞は10時間の増殖後に収穫した。
【0158】
1=DSMZ509
2=DSMZ509-pWH1520-cobA
3=pHBiHemAKKが組込まれたDSMZ509
【図8】ELISAアッセイで測定した、好気性増殖条件下で、LB培地中のバチルスメガテリウムDSMZ509(1)、DSMZ509-pWH1520-cobA(2)およびpHBiHemAKKが組込まれたDSMZ509(3)のμg/lで表したビタミンB12含量を示す。誘導は、0.5%(w/v)キシロースの添加により5時間の増殖後に実施し、細胞は10時間の増殖後に収穫した。
【0159】
1=DSMZ509
2=DSMZ509-pWH1520-cobA
3=pHBiHemAKKが組込まれたDSMZ509
【図9】シフト実験において、炭素源としてグルコースを含むMopso最小培地中のバチルスメガテリウム菌DSMZ509-pWH1520およびDSMZ509-pHBasHemZの、ELISA試験で測定したビタミンB12生産を示す。誘導は、0.5%(w/v)キシロースを用いて9時間の増殖および10時間の増殖後に実施した(それぞれ1、2、5、6および3、4、7、8)。好気性から嫌気性へのシフトは誘導後1時間に起こった。ビタミンB12含量は細菌培養1リットル当たりのμgとOD578で示した。
【0160】
1=無添加物のDSMZ509-pWH1520、誘導後3時間
2=無添加物のDSMZ509-pHBasHemZ、誘導後3時間
3=250μM CoCl2および298μM ALAを加えたDSMZ509-pWH1520、誘導後3時間
4=250μM CoCl2および298μM ALAを加えたDSMZ509-pHBasHemZ、誘導後3時間
5=無添加物のDSMZ509-pWH1520、誘導後6時間
6=無添加物のDSMZ509-pHBasHemZ、誘導後6時間
7=250μM CoCl2および298μM ALAを加えたDSMZ509-pWH1520、誘導後6時間
8=250μM CoCl2および298μM ALAを加えたDSMZ509-pHBasHemZ、誘導後6時間
【図10】シフト実験において、炭素源としてグルコースを含むMopso最小培地中のバチルスメガテリウム菌DSMZ509-pWH1520およびDSMZ509-pHBasHemZの、ELISA試験で測定したビタミンB12生産を示す。誘導は、0.5%(w/v)キシロースを用いて9時間の増殖および10時間の増殖後に実施した(それぞれ1、2、5、6および3、4、7、8)。好気性から嫌気性へのシフトは誘導後1時間に起こった。ビタミンB12含量は細菌培養1リットル当たりのμgで示した。
【0161】
1=無添加物のDSMZ509-pWH1520、誘導後3時間
2=無添加物のDSMZ509-pHBasHemZ、誘導後3時間
3=250μM CoCl2および298μM ALAを加えたDSMZ509-pWH1520、誘導後3時間
4=250μM CoCl2および298μM ALAを加えたDSMZ509-pHBasHemZ、誘導後3時間
5=無添加物のDSMZ509-pWH1520、誘導後6時間
6=無添加物のDSMZ509-pHBasHemZ、誘導後6時間
7=250μM CoCl2および298μM ALAを加えたDSMZ509-pWH1520、誘導後6時間
8=250μM CoCl2および298μM ALAを加えたDSMZ509-pHBasHemZ、誘導後6時間
【図11】シフト実験における、炭素源としてグルコースを含むMopso最小培地中のバチルスメガテリウム菌DSMZ509、DSMZ509-pWH1520およびDSMZ509-pHBasHemZのビタミンB12生産を示す。好気性から嫌気性へのシフトは誘導後1時間に起こった。誘導は、0.5%(w/v)キシロースを用いて9時間の増殖後に実施した。細胞バイオマス当たりのビタミンB12含量はpmol/OD578で示した。
【0162】
1=DSMZ509、誘導時点
2=DSMZ509-pWH1520、誘導時点
3=DSMZ509-pHBasHemZ、誘導時点
4=DSMZ509、誘導後3時間
5=DSMZ509-pWH1520、誘導後3時間
6=DSMZ509-pHBasHemZ、誘導後3時間
7=DSMZ509、誘導後6時間
8=DSMZ509-pWH1520、誘導後6時間
9=DSMZ509-pHBasHemZ、誘導後6時間
【図12】シフト実験における、炭素源としてグルコースを含むMopso最小培地中のバチルスメガテリウム菌DSMZ509、DSMZ509-pWH1520およびDSMZ509-pHBasHemZのビタミンB12生産を示す。好気性から嫌気性へのシフトは誘導後1時間に起こった。誘導は、0.5%(w/v)キシロースを用いて9時間の増殖後に実施した。ビタミンB12含量は細菌培養1リットル当たりのμgで示した。
【0163】
1=DSMZ509、誘導時点
2=DSMZ509-pWH1520、誘導時点
3=DSMZ509-pHBasHemZ、誘導時点
4=DSMZ509、誘導後3時間
5=DSMZ509-pWH1520、誘導後3時間
6=DSMZ509-pHBasHemZ、誘導後3時間
7=DSMZ509、誘導後6時間
8=DSMZ509-pWH1520、誘導後6時間
9=DSMZ509-pHBasHemZ、誘導後6時間
【図13】シフト実験における、炭素源としてグルコースを含み、298μM ALAおよび250μM CoCl2を加えたMopso最小培地中のバチルスメガテリウム菌DSMZ509、DSMZ509-pWH1520およびDSMZ509-pHBasHemZのビタミンB12生産を示す。好気性から嫌気性へのシフトは誘導後1時間に起こった。誘導は、0.5%(w/v)キシロースを用いて10時間の増殖後に実施した。細胞バイオマス当たりのビタミンB12含量はpmol/OD578で示した。
【0164】
1=DSMZ509、誘導時点
2=DSMZ509-pWH1520、誘導時点
3=DSMZ509-pHBasHemZ、誘導時点
4=DSMZ509、誘導後3時間
5=DSMZ509-pWH1520、誘導後3時間
6=DSMZ509-pHBasHemZ、誘導後3時間
7=DSMZ509、誘導後6時間
8=DSMZ509-pWH1520、誘導後6時間
9=DSMZ509-pHBasHemZ、誘導後6時間
【図14】シフト実験における、炭素源としてグルコースを含み、298μM ALAおよび250μM CoCl2を加えたMopso最小培地中のバチルスメガテリウム菌DSMZ509、DSMZ509-pWH1520およびDSMZ509-pHBasHemZのビタミンB12生産を示す。好気性から嫌気性へのシフトは誘導後1時間に起こった。誘導は、0.5%(w/v)キシロースを用いて10時間の増殖後に実施した。ビタミンB12含量は細菌培養1リットル当たりのμgで示した。
【0165】
1=DSMZ509、誘導時点
2=DSMZ509-pWH1520、誘導時点
3=DSMZ509-pHBasHemZ、誘導時点
4=DSMZ509、誘導後3時間
5=DSMZ509-pWH1520、誘導後3時間
6=DSMZ509-pHBasHemZ、誘導後3時間
7=DSMZ509、誘導後6時間
8=DSMZ509-pWH1520、誘導後6時間
9=DSMZ509-pHBasHemZ、誘導後6時間
【図15】409nmで励起したバチルスメガテリウム菌DSMZ509-pHBasHemZの蛍光スペクトルからDSMZ509-pWH1520の蛍光スペクトルを差引いた示差蛍光スペクトルを示す。579nmおよび618nmにおける発光ピークはコプロポルフィリンIIIを示し、従ってDSMZ509-pWH1520と比較したDSMZ509-pHBasHemZにおけるこの代謝物の蓄積を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子改変されたバチルスメガテリウム(Bacillus megaterium)菌株であって、フィードバック耐性グルタミルtRNAレダクターゼをコードする配列番号4に示した遺伝子hemA[KK]および/またはアンチセンスRNA(ashemZ)としての配列番号1に示したhemZ遺伝子のヌクレオチド配列(hemZ)の部分を含んでなる上記菌株。
【請求項2】
hemA[KK]XCDBLオペロンに組織化された配列番号4に示した遺伝子hemA[KK]および/または配列番号3に示したアンチセンスRNA(ashemZ)を含んでなる、請求項1に記載の遺伝子改変されたバチルスメガテリウム菌株。
【請求項3】
hemA[KK]遺伝子が細菌の染色体中に組込まれている、請求項1または2に記載の遺伝子改変されたバチルスメガテリウム菌株。
【請求項4】
hemZ遺伝子の部分がプラスミドにコードされたアンチセンスRNA(ashemZ)として、増加したコピー数で存在する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の遺伝子改変されたバチルスメガテリウム菌株。
【請求項5】
hemA[KK]XCDBLオペロンに組織化されたhemA[KK]遺伝子および/またはアンチセンスRNA(ashemZ)としてのhemZ遺伝子の部分が誘導性プロモーターの制御下にある、請求項1〜4のいずれか1項に記載の遺伝子改変されたバチルスメガテリウム菌株。
【請求項6】
誘導性プロモーターとしてxylAプロモーターを含んでなる、請求項5に記載の遺伝子改変されたバチルスメガテリウム菌株。
【請求項7】
フィードバック耐性グルタミルtRNAレダクターゼをコードする配列番号4に示した遺伝子hemA[KK]、ならびにそれと機能しうる形で連結された、誘導された遺伝子発現、選択、複製および/または宿主細胞の染色体中への組込みのための配列を含んでなる組込みベクター。
【請求項8】
遺伝子改変されたhemA遺伝子のヌクレオチド配列(hemA[KK])を含んでなり、該ヌクレオチド配列がフィードバック耐性グルタミルtRNAシンターゼをコードし、そのアミノ酸配列が少なくとも2個の正に荷電したアミノ酸の挿入を含有することを特徴とする、請求項7に記載の組込みベクター。
【請求項9】
遺伝子改変されたhemA遺伝子のヌクレオチド配列(hemA[KK])を含んでなり、該ヌクレオチド配列がフィードバック耐性グルタミルtRNAシンターゼをコードし、そのアミノ酸配列がN末端の位置3および4に2個の正に荷電したアミノ酸の挿入を含有することを特徴とする、請求項8に記載の組込みベクター。
【請求項10】
挿入された正に荷電したアミノ酸がリシンであることを特徴とする、請求項8に記載の組込みベクター。
【請求項11】
遺伝子発現がxylAプロモーターの制御下にあることを特徴とする、請求項7〜10のいずれか1項に記載の組込みベクター。
【請求項12】
少なくとも1つの温度感受性複製起点を含有することを特徴とする、請求項7〜11のいずれか1項に記載の組込みベクター。
【請求項13】
温度感受性複製起点pE194tsを含有することを特徴とする、請求項7〜12のいずれか1項に記載の組込みベクター。
【請求項14】
コプロポルフィリノーゲン-IIIオキシダーゼをコードする、配列番号1に示したヌクレオチド配列。
【請求項15】
コプロポルフィリノーゲン-IIIオキシダーゼをコードするhemZ遺伝子の領域の上流および/または下流に配置された調節機能をもつ配列を含んでなる、請求項14に記載のヌクレオチド配列。
【請求項16】
バチルスメガテリウム菌に由来することを特徴とする、請求項14または15の1項に記載のヌクレオチド配列。
【請求項17】
配列番号2に示したアミノ酸配列をもつコプロポルフィリノーゲン-IIIオキシダーゼ。
【請求項18】
請求項14〜16のいずれか1項に記載のヌクレオチド配列によってコードされる、請求項17に記載のコプロポルフィリノーゲン-IIIオキシダーゼ。
【請求項19】
アンチセンスRNA(ashemZ)としての配列番号1に示したhemZ遺伝子のヌクレオチド配列(hemZ)の部分、ならびに、それと機能しうる形で連結された、誘導された遺伝子発現、選択、複製および/または宿主細胞の染色体中への組込みのための配列を含んでなるベクター。
【請求項20】
配列番号3に示したアンチセンスRNA(ashemZ)、ならびに、それと機能しうる形で連結された、誘導された遺伝子発現、選択、複製および/または宿主細胞の染色体中への組込みのための配列を含んでなる、請求項19に記載のベクター。
【請求項21】
遺伝子発現がxylAプロモーターの制御下にある、請求項19または20に記載のベクター。
【請求項22】
少なくとも1つの温度感受性複製起点を含有することを特徴とする、請求項19〜21のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項23】
温度感受性複製起点pE194tsを含有することを特徴とする、請求項19〜22のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項24】
培養によりビタミンB12を生産する方法であって、請求項1〜6のいずれか1項に記載の遺伝子改変されたバチルスメガテリウム菌株を含む培養によるものであり、ここで発酵が好気性条件下で行われるものである上記方法。
【請求項25】
hemA[KK]XCDBLオペロンの遺伝子発現および/またはhemZ遺伝子のアンチセンスRNA(ashemZ)をコードするヌクレオチド配列の発現が発酵培地へのキシロースの添加により誘導されることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
配列番号4に示したhemA[KK]XCDBLオペロンの発現および/または配列番号3に示したhemZ遺伝子のアンチセンスRNA(ashemZ)をコードするヌクレオチド配列の発現が発酵培地へのキシロースの添加により誘導されることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
好気性で発酵させた細胞の指数増殖期に好気性から嫌気性発酵条件への移行が起こることを特徴とする、請求項24〜26に記載の方法。
【請求項28】
少なくともコバルトおよび/または5-アミノレブリン酸を培養培地に加えることを特徴とする、請求項24〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
配列番号3に示したアンチセンスRNA(ashemZ)を製造するための、請求項14〜16のいずれか1項に記載のヌクレオチド配列の使用。
【請求項30】
請求項19〜23のいずれか1項に記載のベクターを製造するための、配列番号3に示したアンチセンスRNA(ashemZ)の使用。
【請求項31】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の遺伝子改変されたバチルスメガテリウム菌株を製造するための、請求項19〜23のいずれか1項に記載のベクターの使用。
【請求項32】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の遺伝子改変されたバチルスメガテリウム菌株を製造するための、請求項7〜13のいずれか1項に記載の組込みベクターの使用。
【請求項33】
ビタミンB12を生産するための、請求項1〜6のいずれか1項に記載の遺伝子改変されたバチルスメガテリウム菌株の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2006−512913(P2006−512913A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−565964(P2004−565964)
【出願日】平成15年12月12日(2003.12.12)
【国際出願番号】PCT/EP2003/014102
【国際公開番号】WO2004/063360
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】