説明

ビタミンC効能増強組成物

【課題】 従来のプロビタミンC含有組成物は、人体内部でのビタミンCの濃度を速効的に高レベルかつ持続的に保持する薬効に優れていなかったころから、これらの欠点克服と薬効をもたらす具体的な抗酸化剤組成物の構成要件と最適化を探索することを課題とする。
【解決手段】 プロビタミンC供給源としての枸杞(クコ)の実・枸杞の葉・当該加工物から成る群より選択された1種類または2種類以上、および、プロビタミンCをビタミンCに変換させる酵素および/または当該酵素含有物から成る群より選択された1種類または2種類以上を含有するビタミンC効能増強組成物とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミンC、すなわち、L−アスコルビン酸それ自体ではなく、プロビタミンC、すなわち、ビタミンC誘導体および/またはビタミンC前駆体を含有する組成物に関し、特にプロビタミンCをビタミンCに変換する酵素を含有させた組成物(ビタミンC効能増強組成物)に関する。かかるビタミンC効能増強組成物は、例えば健康サプリメント・医薬・化粧品・家畜/ペット向け飼料添加に利用することができる。
【背景技術】
【0002】
ビタミンCすなわちアスコルビン酸又はその誘導体・前駆体・類縁体等の抗酸化物質・還元物質は、医薬品、化粧品、食品、畜水産動物向け飼料、ペット動物食餌、細胞や微生物培養用の培地又は培養液等のビタミン強化剤用途、抗酸化用途及びフィルム、印画紙、印刷用紙等の工業用還元剤、抗酸化剤として幅広く利用されている。最近では、日焼けによるシミ、そばかす等を予防するためにアスコルビン酸又はその誘導体等の還元物質が有効であるとされ、医薬部外品や化粧品などにアスコルビン酸又はその誘導体の誘導体が使用されている。
【0003】
通常のL−アスコルビン酸は水溶液になると不安定になり酸化分解されるため、酸化分解され難い誘導体に化学修飾される工夫が凝らされているが、これら誘導体は、酸化抵抗性を高めるほど、それに応じてビタミンCへの変換効率が悪く、このため、ビタミンC効能が発揮され難いと言う致命的欠陥が内在していた。この逆に、ビタミンC効能を発揮しやすいビタミンC誘導体は、ビタミンC分子の2,3-エンジオール部分を保護しないことになり、その結果、酸化分解されやすく、褐変を起こして酸化分解されやすく製剤にしても不安定なためにそのままでは実用に耐えることが困難だった。従来のL−アスコルビン酸誘導体の中には、安定性が十分でなく、特に水溶液中での安定性が不良であり、熱ストレスや酸化によるジケトグロン酸などへの不可逆的な加水分解、沈殿、着色、臭気、増粘剤との併用時での粘性の変化等のさまざまな問題点があった。
【0004】
アスコルビン酸すなわちビタミンCの誘導体は生体、生体部分または生体成分に投与や添加してビタミンC効能を発揮するためには、投与後や添加後にプロビタミンCすなわちビタミンC誘導体からビタミンCそれ自体へ変換される必要があるが、この変換作用は、投与または添加を受けた生体、生体部分または生体成分に元来含有されている酵素、特に、プロビタミンCの種類に応じてビタミンCへ変換する酵素に依存していて、受動的なビタミンC変換だったことになる。
【0005】
なお、本願出願人は、人体内部において、(1)ビタミンCの濃度を高レベルに上昇させること、(2)ビタミンC高濃度化に速効性があること、(3)ビタミンC高レベルをリバウンドなく持続的に保持するべく、特許文献1(特開2007−23008号公報)において新規な抗酸化剤含有組成物を開示している。
【0006】
また、特許文献2(特開2005−194255号公報)では、ビタミンC誘導体を使用するものとして、安全性が極めて高く活性増強されていて、悪性腫瘍の予防治療のための内服および/または注射用組成物を開示している。
【特許文献1】特開2007−23008号公報
【特許文献2】特開2005−194255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであり、生体へ投与および/または添加されたプロビタミンCがビタミンCへ変換される速度と変換率を適切に制御するようにしたビタミンC効能増強組成物を提供することを目的とする。
【0008】
また従来のプロビタミンC含有組成物は、市販品・研究開発を問わず、通常のプロビタミンCを単体として扱い、他の混合成分として、プロビタミンCからビタミンCへ変換する酵素は含有されていず、このため、プロビタミンCの摂取後の血中ビタミンC濃度と組織内ビタミンC濃度の立上がり初速度・高濃度レベル達成度・持続性、および、体内吸収後のビタミンCの安定性・体内分布範囲・組織深部浸透力の点に劣っていたが、この結果、人体内部でのビタミンCの濃度を速効的に高レベルかつ持続的に保持する薬効に優れていず、これらの欠点克服と薬効をもたらす具体的な抗酸化剤組成物の構成要件と最適化を探索することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究の結果、プロビタミンC、および、当該プロビタミンCからビタミンCへの変換速度と変換率を適切に制御する特定の変換酵素を含有するビタミンC効能増強組成物により、生体で変換されるビタミンCの変換速度と変換率を飛躍的に改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は前記課題を解決するために、プロビタミンC供給源としての枸杞(クコ)の実・枸杞の葉・当該加工物から成る群より選択された1種類または2種類以上、および、プロビタミンCをビタミンCに変換させる酵素および/または当該酵素含有物から成る群より選択された1種類または2種類以上を含有するビタミンC効能増強組成物(即ち、ビタミンCの効能を増強させたプロビタミンC含有組成物)を提供する。
【0011】
前記のビタミンC効能増強組成物では、プロビタミンC供給源としての枸杞(クコ)の実の加工物が枸杞の実の乾燥粉末および/または水溶性抽出物であることが望ましい。
【0012】
またプロビタミンCをビタミンCに変換させる酵素の含有物がアーモンドの実・当該加工物・当該乾燥粉末・当該水溶性抽出物から成る群より選択された1種類または2種類以上であることが望ましい。
【0013】
またプロビタミンCをビタミンCに変換させる酵素がベータ-グルコシダーゼ(beta-glucosidase)であることが望ましい。
【0014】
またプロビタミンC供給源としての枸杞の実の乾燥粉末および/または当該水溶性抽出物を、生体高分子および/または腸溶性高分子で被覆した微粒子、および、ベータ-グルコシダーゼ含有物としてのアーモンドの実および/または食用麹の乾燥粉末・水溶性抽出物を、生体高分子および/または腸溶性高分子で被覆した微粒子から成ることが望ましい。
【0015】
またプロビタミンC供給源としての枸杞の実の乾燥粉末および/または当該水溶性抽出物を、生体高分子および/または腸溶性高分子で被覆した枸杞の実由来微粒子と、ベータ-グルコシダーゼ含有物としてのアーモンドの実および/または食用麹の乾燥粉末・水溶性抽出物を、生体高分子および/または腸溶性高分子で被覆したアーモンドの実由来微粒子とを含有し、枸杞の実由来微粒子に含有されるアスコルビン酸-2-O-ベータ-グルコシド1ミリモル(約338ミリグラム)に対して、アーモンドの実由来微粒子に含有されるベータ-グルコシダーゼの酵素活性成分を20-500 unit(国際単位ユニット)配合することが望ましい。
【0016】
そして、生体高分子はコラーゲン・ゼラチン・キチン・キトサン・ポリ乳酸・ポリ−L−リジンから成る群より選択された1種類または2種類以上である事が望ましい。
【0017】
上記本発明の効能増強組成物は、プロビタミンC含有組成物を主体としつつ、この混合成分として、プロビタミンCからビタミンCへ変換する酵素を含有する組成物について、配合組み合せと特定配合率に工夫を凝らして設定した組成物であり、さらには、当該混合組成物に、これらと相性の良いことを見い出した特定種の抗酸化剤、および/または、同じく相性の良いことを見い出した天然由来ポリマーを配合した組成物である。これら本発明の抗酸化剤含有組成物は、ビタミンCおよび/またはプロビタミンCが効率的に血液から体内分布して各組織の深部に浸透しプロビタミンCおよびプロビタミンCから変換されたビタミンCが血液および各組織深部でのビタミンC濃度を速効的に高レベルかつ持続的に保持することを可能にする。
【発明の効果】
【0018】
本発明はビタミンC効能増強組成物であり、具体的なビタミンC効能としては、従来のL−アスコルビン酸又はその誘導体含有組成物の効能を総て含むと同時に、更に作用持続性と効能増強をもたらすことができ、例えば健康サプリメント、医薬品、医薬部外品、化粧品、洗浄剤、食品、飼料に使用できる。即ち、かかるビタミンC効能増強組成物の用途としては、L−アスコルビン酸又はその誘導体またはその塩が一般に用いられている用途に使用可能で、特に、持続型抗酸化剤、ビタミンC強化剤、ざそう予防治療剤、美白剤、色素沈着予防治療剤、メラニン色素抑制還元剤、フリーラジカル(活性酸素)疾患予防治療剤、アレルギー性疾患予防治療剤、創傷治癒剤などが挙げられ、これらの用途において優れた効果を発揮する。
【0019】
本発明の抗酸化剤含有組成物の適用範囲と対象疾患は、本発明組成物中のプロビタミンCが血中や組織内や皮膚に浸透した後にアスコルビン酸に変換され損傷した血管壁や組織や皮膚及び皮下組織のコラーゲン合成、エラスチン合成を促進し、細胞増殖や組織再生を助長し、スーパーオキシド、ヒドロキシルラジカル、過酸化水素、一重項酸素、一酸化窒素、ヒドロキシペルオキシド、脂質ヒドロペルオキシド、一酸化窒素、ペルオキシナイトライトなどの活性酸素をスカベンジングするために各種炎症や組織損傷や各種生活習慣病に効果的である。本発明組成物はプロビタミンCによる薬効を介して、メラニン抑制、UV傷害防御、シワ/タルミ防御に効果的である。
【0020】
本発明のビタミンC効能増強組成物によってビタミンC効能を増強し、その結果ビタミンCで消去できる活性酸素・フリーラジカルとは、不対電子をもつ分子及び原子を含む反応性に富む酸素を含む分子又は原子であり、特にスーパーオキシドアニオンラジカル、ヒドロキシルラジカル、過酸化水素、一重項酸素、一酸化窒素、ヒドロキシペルオキシド等を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明で使用される枸杞とは、クコの実(Lycium barbarum)、クコ(Lycium chinense)、枸杞(ナス科)の実、枸杞子、クコ(Lycium chinense Mill)の葉などを指し、自生植物・栽培植物・薬膳原料などとして通常に入手できる。
【0022】
プロビタミンCとは、通常、ビタミンC誘導体・ビタミンC前駆体・ビタミンC類縁体・アスコルビン酸誘導体・アスコルビン酸前駆体・アスコルビン酸類縁体などの様々な名称で呼ばれているものを総称して示すものである。本発明でのプロビタミンCはアスコルビン酸-グルコシドを主に指すが、従来アスコルビン酸-グルコシドと言えば、アスコルビン酸-2-O-アルファ-グルコシドと敢えて表示しなくとも分かるくらいアスコルビン酸-グルコシドの代名詞であったが、本発明では、近年一部の研究で知られるようになったアスコルビン酸-2-O-ベータ-グルコシド(ascorbic
acid-2-O-beta-glucoside)を特に指す。
【0023】
アスコルビン酸-2-O-ベータ-グルコシドは、枸杞(クコ)特にその実を破砕して調製した乾燥粉末に含有される。あるいは、枸杞(クコ)の実の破砕物から分画した水溶性成分として調製できる。アスコルビン酸-2-O-ベータ-グルコシドとしての同定はHPLC(高性能液体クロマトグラフィ)などで水溶性成分を分離し、純正物質の保持時間、ベータ-グルコシダーゼ作用によるアスコルビン酸とグルコースの1:1モル比の生成によって検証できる。
【0024】
プロビタミンCをビタミンCに変換する酵素とは、プロビタミンCの種別に相応して酵素の種別も異なるが、本発明では、アスコルビン酸-2-O-ベータ-グルコシドをアスコルビン酸に変換させるベータ-グルコシダーゼ(beta-glucosidase)を主に指す。
【0025】
ベータ-グルコシダーゼ供給源としてのアーモンドは食用材料として広く入手できるが、未加熱素材が好ましい。アーモンドの実をフレンチプレスやボルテックスミキサーなどによって細かく破砕し、乾燥粉末として用いることができる。アーモンドの実の破砕物から分画した水溶性成分として調製できる。特に本発明にかかるビタミンC効能増強組成物は、アスコルビン酸-2-O-ベータ-グルコシド含有成分(クコの実など)と、プロビタミンCをビタミンCに変換させる酵素(ベータグルコシターゼ)含有成分との単一有効成分単剤が2種類共存する形態であり、その内のアスコルビン酸-2-O-ベータ-グルコシド含有成分としてクコの実抽出物を選択した場合には、当該不純物の多いクコの実抽出物に対して、単剤2種類併用のうちのビタミンCに変換させる酵素(ベータグルコシターゼ)含有成分として、不純物の多いアーモンド抽出物が適している。
【0026】
なお、ベータ-グルコシダーゼ供給源としては、紅麹・白麹・黒麹などの食用麹や、食用酵母・酢酸菌・乳酸菌も使用できる。特にビール・ワイン・酒類・食酢・ヨーグルト・ケールなどの食用に使われる微生物であれば好ましい。これらは培養液を除外した菌体自体であることが望ましく、また菌体破砕物であることが望ましい。ただし、菌体破砕物から分画した水溶性成分としても調製できる。
【0027】
本発明における枸杞(クコ)の実の乾燥粉末および/または水溶性抽出物などのアスコルビン酸-2-O-ベータ-グルコシド含有成分は、ベータ-グルコシダーゼと当初から接触しないことが有利であり、このため、当該枸杞(クコ)の実の加工物は、生体由来の高分子および/または腸溶性高分子で被覆した微粒子として賦形することが有利である。微粒子での当該枸杞(クコ)の実の加工物の添加量は、1〜50重量%が好ましく、より好ましくは5〜20重量%である。
【0028】
本発明において使用されるベータ-グルコシダーゼ含有成分は、消化器官から分泌される消化液による分解を防ぐために、生体由来の高分子および/または腸溶性高分子で被覆した微粒子として賦形することが有利である。微粒子での当該菌体の加工物の添加量は、0.05〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.2〜3重量%である。
【0029】
上記生体由来の高分子としては、特にコラーゲン・ゼラチンなどのタンパク質、スターチ・アルギン酸・セルロース・キチン・キトサンなどの多糖類、ポリ乳酸・ポリ−L−リジンなどの有機酸・アミノ酸ポリマーなどを使用でき、特に枸杞(クコ)の実の加工物を被覆する生体由来の高分子としては、ビタミンCと相互作用が強くビタミンC捕捉力が大きいと考えられるキトサンがより有利であり、蟹甲羅由来キチンおよび/または当該脱アセチル体であるキトサンが最も有利である。
【0030】
また、腸溶性高分子としては、Eudragit、中和されたヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートポリマー(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートHP50(HPMCP−HP50)(USP/NF
220824)、HP55(HPMCP−HP55)(USP/NF タイプ200731)およびHP55S、信越化学から入手可能、CoatericTM(ポリビニルアセテートフタレート)(Colorcon Ltd.)、SuretericTM(ポリビニルアセテートフタレート)(Colorcon
Ltd.)、またはAquatericTM(セルロースアセテートフタレート)(FMC Corp.)等を使用することができる。かかる腸溶性高分子は、腸内で溶解し得る高分子であり、pH5.5以上で可溶性となり始め、6.5より大きいpHで最大の溶解速度となるのが一般的であるが、本発明にかかるビタミンC効能増強組成物は2種類の単剤を含有する形態であるので、先にアーモンドの実などに含まれるベータグルコシダーゼ含有物が被膜溶解によって放出され、やや時差を経て、プロビタミンC含有のクコの実抽出物が次の段階に放出されるものが選択されることが望ましい。
【0031】
上記生体由来の高分子および/または腸溶性高分子による被覆に関し、アスコルビン酸-2-O-ベータ-グルコシド含有成分と、ベータ-グルコシダーゼ含有成分とは双方共に被覆されていることが望ましい。仮にいずれか一方の成分だけを被覆したとしても、有効な作用効果は得られないためである。即ち、ビタミンCへの変換酵素として機能するベータ-グルコシダーゼは蛋白であるため、コーティングなしでは胃液のペプシンなどで分解して酵素活性消失を来すし、アスコルビン酸-2-O-ベータ-グルコシド等のプロビタミンCもコーティングなしでは腸に到達するまで希釈されると考察される為である。
【0032】
更に、アスコルビン酸-2-O-ベータ-グルコシド含有成分と、ベータ-グルコシダーゼ含有成分とを、腸溶性高分子で形成されたカプセル内に分けて収容した腸溶カプセルとして形成することも望ましい。両性分を分画するにか、それぞれの成分を前記の通り被覆しておくか、あるいは区画された室を有するカプセルとして、それぞれの室に各成分を収容することができる。このように形成すれば、アスコルビン酸-2-O-ベータ-グルコシド含有成分と、ベータ-グルコシダーゼ含有成分が腸で初めて接触するだけでなく、更に両者接触確率が格段に増大して、作用効果を高めることができるためである。
【0033】
本発明品を安定化できる還元物質としては、カテキン、カテキン誘導体、ルチン、ルチン誘導体、タウリン、チオタウリン、卵殻膜抽出物、没食子酸、没食子酸誘導体、クエルセチン、クエルシトリン、酵母抽出物、霊芝抽出物、ヤシャジツ抽出物、ゲンノショウコ抽出物、ボタンピ抽出物、メリッサ抽出物、パセリ抽出物及びジコッピ抽出物、スーパーオキサイドディスムターゼ、マンニトール、ビリルビン、コレステロール、トリプトファン、ヒスチジン、レチノール及びその誘導体(パルミチン酸レチノール、酢酸レチノール等)、レチナール及びその誘導体、デヒドロレチナール等のビタミンA類、カロチン、アスタキサンチン、リコピン、クリプトキサンチン等のカロチノイド類、チアミン類(チアミン塩酸塩、チアミン硫酸塩等)、リボフラビン類(リボフラビン、酢酸リボフラビン等)、ピリドキシン類(塩酸ピリドキシン、ピリドキシンジオクタノエート等)、フラビンアデニンヌクレオチド、シアノコバラミン、葉酸類、ニコチン酸類(ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等)、コリン類等のビタミンB類;エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、ジヒドロキシスタナール等のビタミンD類、トコフェリルリン酸塩、トコフェロール及びその誘導体(dl−α(β、γ)−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸−dl−α−トコフェロール、リノール酸−dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール等)、及びその他のビタミンE誘導体類、ユビキノン、コエンザイムA、ビタミンK類等の還元性ビタミン類、ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。
【0034】
本発明のビタミンC効能増強組成物に水溶性高分子を配合することは好ましいが、この場合は、特にその粘度の安定性を向上することができ、経時的な粘度の低下や上昇の変化を防いで一定に保つことができる。組成物中のL−アスコルビン酸又はその誘導体またはその塩の温度安定性、酸化防止、析出抑制、及び/または色不変性を向上させる従来方法も効果的である。
【0035】
本発明のビタミンC効能増強組成物の剤型として、錠剤、顆粒剤、カプセル剤が適しているが、クリーム、ローション、化粧水、ジェル、スプレー、パウダー、パップ剤、浴用剤、育毛養毛剤、シャンプー、リンス、パック、ドリンクまたは点眼剤なども含まれ、特に制限はない。
【実施例1】
【0036】
以下に本発明の実施例を挙げるが、当該実施例は本発明の一部に過ぎず、当該実施例だけによって本発明を限定するものではない。
【0037】
〈実施例1〉
プロビタミンC供給源として、通常に栽培された植物素材としての枸杞(クコ)の実を25℃以下で冷風乾燥し、ミルサーで粉砕して得られた粉末を無気泡下でPotter型テフロンホモジェナイザーと液体窒素での凍結融解を施し、再度ミルサーで粉砕して20〜60ミクロンの粉状とし、60〜220kg/cm2の真空圧力で凍結乾燥して粉末を調製する。一方、プロビタミンCをビタミンCに変換させる酵素としてアーモンドの実を非加熱で粉砕乾燥して乾燥粉末を調製する。クコの実の乾燥粉末1グラムに対して、アーモンドの実の乾燥粉末を100,200,500,1000ミリグラムを各々混合した組成物を、18時間絶食させたモルモット(1試験区8匹)に1匹当り、ビタミンC不含有飼料10グラムに混入して食べ切りで摂取させて、摂取後12時間後の血液中ビタミンCを還元剤(16 mM dithiothreitol)を添加して、20μLを ODSカラムに注入し、HPLCで分離してクーロメトリックECDで計測した結果、クコの実もアーモンドの実も含まない飼料を摂取した対照動物では、3.17±0.18ppmだったのに対して、クコの実の乾燥粉末に対してアーモンドの実の乾燥粉末を0%、1%, 2%, 5%, 10%の比率で混合した飼料の場合は、各々の血中ビタミンC濃度は、3.24±0.25ppm, 6.07±0.39ppm, 9.74±0.54ppm, 11.60±0.83ppm, 9.33±0.74ppmだった。血中ビタミンC濃度がクコの実の乾燥粉末とアーモンドの実の乾燥粉末が混合されることによって上昇することが判明した。
【0038】
〈実施例2〉
通常方法で栽培された植物素材としての枸杞(クコ)の実を25℃以下で冷風乾燥し、ミルサーで粉砕し、得られた粉末に2倍量の冷水を加え、ボルテックスミキサーで撹拌し、その懸濁液を遠心分離して上澄液を保存し、沈殿物は再度同量の冷水を加え、ボルテックスミキサーで撹拌し、その懸濁液を遠心分離して2回目の上澄液を保存し、初回の上澄液と合わせて、凍結乾燥しクコ(KK)の実の水溶性抽出物(Kk-bGAsc)とする。一方、プロビタミンCをビタミンCに変換させる酵素の含有物としての食用関連素材、特にアーモンド (Am)は、 非加熱で味付けなしの実を乳鉢で粉砕してエタノール滅菌後に遠心分離する。得た沈殿部にミリQ超純水を5倍量添加して抽出(25℃、1時間、攪拌)し、凍結乾燥する(Am-bGase)。オリエンタル酵母工業(株)(〒564-0043大阪府吹田市南吹田4-4-1、電話06-6384-1222)から購入したbetaーGlucosidase from
Almond (Oy-bGase)は比活性36.8U/mg
の粉末であり、この使用も好ましい。クコの実の水溶性抽出物KK-bGAscを70mg/mLの濃度に100mg/mL蟹甲羅由来キトサン水溶液に溶解させ、当量のトルエンと混合して、アスピレータ減圧下、100rpmで回転させてエバポレーターで処理し、粒度が80メッシュ以下のAm-bGAsc細粒を調製する。他方、2種類のアーモンド抽出ものとして、Am-bGase, Oy-bGaseは各々70mg/mLの濃度に100mg/mL蟹甲羅由来キトサン水溶液に溶解させ、当量のトルエンと混合して、アスピレータ減圧下、100rpmで回転させてエバポレーターで処理し、粒度が80メッシュ以下のAm-bGase, Oy-bGaseの細粒を調製した。これらを混合してプロビタミンCであるascorbic acid-2-O-β-glucoside含有物とそれをアスコルビン酸に変換する酵素含有物の細粒混合物が得られる。
【0039】
〈実施例3〉
実施例2で調製したプロビタミンCであるascorbic acid-2-O-β-glucoside含有物とそれをアスコルビン酸に変換する酵素含有物の20:1重量比の細粒混合物を21-57才の日本人12名を1群3名の4群にグループ分けし、4週間ずつのインターバルを空けて16週間掛けて、すべての群が4種類の摂取形態を受けるようにローテーション方式でに摂取試験を行ない、摂取2時間後の血中ビタミンCを比較した。その計測法は、採血をMolCutを用いてタンパク除去し、総ビタミンC(還元型と酸化型の総和)を文献(J.Cancer Res. Clin. Oncol. 126:511-518(2000))記載と同様の方法にて測定した。ODSカラムのHPLCで分離してクーロメトリックECDで計測した結果、有効成分を除去した基剤だけの偽薬(プラシーボ)を摂取した対照群では、8.43±0.42ppmだったのに対して、クコの実由来KK-bGAsc細粒だけ摂取した群は11.37±1.32ppm, KK-bGAsc細粒とアーモンドの実由来Am-bGase細粒の混合体を摂取した群は16.85±1.40ppm, Am-bGase細粒だけ摂取した群は7.52±0.98ppmだった。血中ビタミンC濃度がクコの実の水溶性成分のascorbic acid-2-O-β-glucosideに対するアーモンドの実の水溶性成分β-グルコシダーゼによる緩やかなビタミンC変換によって上昇することが判明した。
【0040】
〈実施例4〉
プロビタミンCをビタミンCに変換させる酵素の含有物としての食用関連素材、特に、黄麹菌(Aspergillus oryzae)由来の酵素製剤、商品名ビオザイム(Bz)も使用する。天野実業株式会社製エンザイム、食品添加用α-アミラーゼ製剤ビオザイ ムにはF10SD,A,Lの3種類あり、各々、F10SD、Aは製パン用、Lはマルトース・オリゴ糖製造用とされるうちから、F10SD粉末(BzF10D)とL(BzL)の粉末を選ぶ。次に、(株)ビオック製の米麹用麹菌乾燥粉末を50~100%エタノール洗浄後、ミリQ超純 水で2-10倍希釈したもの(Kj)であり、1gの菌体乾燥粉末を70%エタノール洗浄後、遠心分離して得た沈殿部に
5mLのミリQ超純水を添加してボルテックスミキサーで撹拌した懸濁液を凍結乾燥する。これらを各々70mg/mLの濃度に100mg/mL豚由来ゼラチン水溶液に溶解させ、当量のトルエンと混合して、アスピレータ減圧下、100rpmで回転させてエバポレーターで処理し、粒度が80メッシュ以下の細粒を調製した。これらを混合してプロビタミンCであるascorbic acid-2-O-β-glucoside含有物とそれをアスコルビン酸に変換する酵素含有物の20: 0.3重量比の細粒混合物が得られる。
【0041】
〈実施例5〉
実施例4で調製したプロビタミンCであるascorbic
acid-2-O-β-glucoside含有物とそれをアスコルビン酸に変換する酵素含有物の20:0.3重量比の細粒混合物を21-57才の日本人12名を1群3名の4群にグループ分けし、4週間ずつのインターバルを空けて16週間掛けて、すべての群が4種類の摂取形態を受けるようにローテーション方式でに摂取試験を行ない、摂取2時間後の血中ビタミンCを比較した。その計測法は、採血をMolCutを用いてタンパク除去し、総ビタミンC(還元型と酸化型の総和)を文献(J.Cancer Res. Clin. Oncol. 126:511-518(2000))記載と同様の方法にて測定した。ODSカラムのHPLCで分離してクーロメトリックECDで計測した結果、有効成分を除去した基剤だけの偽薬(プラシーボ)を摂取した対照群では、6.98±0.70ppmだったのに対して、クコの実由来KK-bGAsc細粒だけ摂取した群は8.91±2.87ppm, KK-bGAsc細粒とビオザイムBzF10D細粒の混合体を摂取した群は16.85±4.08ppm, KK-bGAsc細粒と米麹用麹菌酵素Kjの混合体を摂取した群は17.26±1.86ppmだった。血中ビタミンC濃度がクコの実の水溶性成分のascorbic acid-2-O-β-glucosideに対するビオザイムと米麹用麹菌酵素のβ-グルコシダーゼ作用による緩やかなビタミンC変換によって上昇することが判明した。
【0042】
〈実施例6〉
実施例2において、蟹甲羅由来キトサン水溶液にかえて、腸溶性高分子(信越化学工業製HPMCP(ヒプロメロースフタル酸エステル))を使用した以外は前記実施例2と同じ方法で、クコの実の水溶性抽出物(Kk-bGAsc)の腸溶性高分子コーティング成分(以下、「コーティングKk-bGAsc」)、およびアーモンド由来変換酵素(Am-bGase)の腸溶性高分子(信越化学工業製HPMCP(ヒプロメロースフタル酸エステル))コーティング成分(以下、コーティングAm-bGase)を作成し、両者を含有する混合物をさらに信越化学工業製HPMCP(ヒプロメロースフタル酸エステル) で包含した二重被膜カプセルを作成した。
【0043】
そして、以下に示す組成物を、1-57才の日本人12名を1群3名の4群にグループ分けし、4週間ずつのインターバルを空けて16週間かけて、すべての群が4種類の摂取形態を受けるようにローテーション方式でに摂取試験を行ない、摂取2時間後の血中ビタミンCを比較した。その計測法は、採血をMolCutを用いてタンパク除去し、総ビタミンC(還元型と酸化型の総和)を文献(J.Cancer Res. Clin. Oncol. 126:511-518(2000))記載と同様の方法にて測定した。ODSカラムのHPLCで分離してクーロメトリックECDで計測した結果を以下に示す。
【0044】
(1)Kk-bGAsc細粒とAm-bGase細粒の両方を別個にコーティングした混合物をさらにコーティングしたものを摂取した群では、24.79±1.53ppmであった。
(2)Kk-bGAsc細粒だけをコーティングしたもの(Am-bGase細粒はコーティングせず)を摂取した群では、14.66±2.79ppmであった。
(3)Am-bGase細粒だけをコーティングしたもの(Kk-bGAsc細粒はコーティングせず)を摂取した群では、9.03±1.45ppmであった。
(4)コーティングを行わない(Kk-bGAsc細粒とAm-bGase細粒)のそれぞれを別個にコーティングした腸溶カプセルに包含させた単剤の混合物を摂取した群では、19.33±1.87ppmであった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロビタミンC供給源としての枸杞(クコ)の実・枸杞の葉・当該加工物から成る群より選択された1種類または2種類以上、および、プロビタミンCをビタミンCに変換させる酵素および/または当該酵素含有物から成る群より選択された1種類または2種類以上を含有することを特徴とするビタミンC効能増強組成物。
【請求項2】
プロビタミンC供給源としての枸杞(クコ)の実の加工物が枸杞の実の乾燥粉末および/または水溶性抽出物であることを特徴とする請求項1に記載のビタミンC効能増強組成物。
【請求項3】
プロビタミンCをビタミンCに変換させる酵素の含有物がアーモンドの実・当該加工物・当該乾燥粉末・当該水溶性抽出物から成る群より選択された1種類または2種類以上であることを特徴とする請求項1に記載のビタミンC効能増強組成物。
【請求項4】
プロビタミンCをビタミンCに変換させる酵素がベータ-グルコシダーゼ(beta-glucosidase)であることを特徴とする請求項1に記載のビタミンC効能増強組成物。
【請求項5】
プロビタミンC供給源としての枸杞の実の乾燥粉末および/または当該水溶性抽出物を、生体高分子および/または腸溶性高分子で被覆した微粒子、および、ベータ-グルコシダーゼ含有物としてのアーモンドの実および/または食用麹の乾燥粉末・水溶性抽出物を生体高分子および/または腸溶性高分子で被覆した微粒子から成ることを特徴とする請求項1に記載のビタミンC効能増強組成物。
【請求項6】
プロビタミンC供給源としての枸杞の実の乾燥粉末および/または当該水溶性抽出物を生体高分子および/または腸溶性高分子で被覆した微粒子に含有されるアスコルビン酸-2-O-ベータ-グルコシド1ミリモル(約338ミリグラム)に対して、ベータ-グルコシダーゼ含有物としてのアーモンドの実の乾燥粉末・水溶性抽出物を、生体高分子および/または腸溶性高分子で被覆した微粒子に含有されるベータ-グルコシダーゼの酵素活性成分を20-500 unit(国際単位ユニット)配合することを特徴とするビタミンC効能増強組成物。
【請求項7】
生体高分子がコラーゲン・ゼラチン・キチン・キトサン・ポリ乳酸・ポリ−L−リジンから成る群より選択された1種類または2種類以上であることを特徴とする請求項5又は6に記載のビタミンC効能増強組成物。

【公開番号】特開2008−74844(P2008−74844A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−216548(P2007−216548)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(502316784)
【Fターム(参考)】