ビティス・ビニフェラの種抽出物の調製方法及び該抽出物を含む関節リウマチの予防または治療用の医薬組成物
本発明は、ビティス・ビニフェラ(Vitis vinifera)の種抽出物の改善された調製方法を提供する。また、本発明は、有効成分としてビティス・ビニフェラの種抽出物を含む関節リウマチの予防または治療用の医薬組成物を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビティス・ビニフェラ(Vitis vinifera)の種抽出物の調製方法、及び有効成分としてビティス・ビニフェラの種抽出物を含む関節リウマチの予防または治療用の医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ビティス(Vitis)属は、クロウメモドキ目(Rhamnales)ブドウ科(Vitaceae)に属する蔓性植物であり、赤道付近や緯度50゜以上の地域を除外した地球上全域で自生あるいは栽培されている。11属700種がブドウ科に属する。ビティス・ビニフェラ、ビティス・ラブルスカ(Vitis labrusca)、ビティス・リパリア(Vitis riparia)、ビティス・ルペストリス(Vitis rupestris)、ビティス・ベルラディエリ(Vitis berladieri)、ヤマブドウ(Vitis coignetiae)、ビスティス・アムレンシス(Vitis amurensis)などが果実採取のために栽培されている。
【0003】
ビティス・ビニフェラの種から得られる抽出物は、(−)エピカテキン、プロアントシアニジンB1やB2、(+)カテキン、及びそれらの重合誘導体の混合物を含み、この重合誘導体は、プロシアニドールオリゴマーまたはフラバノールオリゴマーとして知られている(特許文献1及び特許文献2)。この抽出物は、循環系疾患の治療に有用であることが知られている。
【0004】
特許文献3は、ビティス・ビニフェラ、望ましくは、ビティス・ビニフェラの葉から得られた抽出物が、NOシンターゼ(Nitric Oxide-synthase)を抑制することから、細胞の分化及び/または増殖、表皮増殖及び/または過剰増殖性疾患、細胞の退化及び破壊、免疫及び/または炎症の亢進のようなNOシンターゼと関連した様々な疾患を抑制するのに使われうることを開示している。
【0005】
一方、特許文献4は、サリゲニン(saligenin)またはサリックス・ルブラ(Salix rubra)抽出物;ボスウェラ酸(boswellic acid)またはボスウェリア・セラタ(Boswellia serrata)抽出物;ビティス・ビニフェラまたはカメリア・シネンシス(Camellia sinensis)から得られたプロシアニジン(望ましくは、リン脂質との複合体)、レイン(rhein)またはレインの脂溶性誘導体;N−アセチル−グルコサミン;及びグルクロン酸またはグルクロノラクトンを含む関節炎治療用製剤を開示している。特許文献4によれば、プロシアニジンは、サリックス(Salix)及びボスウェリア(Boswellia)の抽出物に存在するシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2:cyclooxygenase−2)阻害成分と相乗的に作用する。しかし、いかなる成分が、具体的に関節炎治療のための活性成分として作用しているかは開示していない。プロシアニジンは、特許文献1(及び特許文献2)、または特許文献5に開示されている抽出方法により得られる。
【0006】
特許文献6は、ビティス・ビニフェラ抽出物のリン脂質複合体を含有する化粧料組成物を開示しており、前記抽出物はまた、特許文献2(すなわち、特許文献1)に記載の方法によって得られる。
【0007】
特許文献1(及び特許文献2)によれば、オリゴマーを抽出すると同時に、不純物を沈殿(すなわち、部分的な沈殿)させて除去するために、体積1の水に対し、体積3ないし4のアセトンを含有したアセトン−水混合溶媒が、一次抽出溶媒として使われる。すなわち、ビティス・ビニフェラ(例えば、種)を、体積1の水に対して体積3ないし4のアセトンを含有したアセトン−水混合溶媒で処理し、蒸留によってアセトンを除去する。その後、沈殿した不純物を濾過し、水性濾液を、酢酸エチルのような、水と混和しない有機溶媒で処理する。その後、有機溶媒を除去し、残渣を除去する。残存する不純物は、塩化ナトリウムを加えて沈殿させることによって除去し、水性濾液を、酢酸エチル及びクロロホルムで処理する。特許文献1によれば、過剰量の水を使うと、部分的な沈殿が発生しないので、過剰量の水の使用は、大量生産に効果的に適用することができない。
【0008】
特許文献1に開示されている抽出は、一次抽出溶媒として、過剰量のアセトンを含む混合溶媒を使用し、アセトンの沸点(約57℃)の温度で行わねばならず、また過剰量のアセトンは、蒸留によって除去されねばならない。従って、加熱条件及び長い蒸留時間によって、抽出コストが増加し、さらに、過剰量のアセトンの使用による環境汚染が発生しうる。また、最終的に得られる抽出物に、アセトンが残留しうる。さらに、塩化ナトリウムを加える前に、酢酸エチルのような水と混和しない有機溶媒を使用した処理及び酢酸エチルの除去が必要であるために、抽出工程が長くなりうる。
【0009】
特許文献5は、3,000ないし600のカットオフ値のメンブレンでの限外濾過を使用し、エーテル、エステル、または酢酸エチルと芳香族炭化水素との混合溶媒を使用した選択的抽出方法を開示している。しかし、特許文献1に開示されている方法に比べて、さらに多くの抽出工程が必要であり、また限外濾過装置のような追加の装置を使用する必要があるので、抽出コストが高い。
【0010】
一方、特許文献7は、ニレ樹皮(Ulmi cortex)から、カラム・クロマトグラフィを含む多工程の抽出工程により得られたプロシアニジンオリゴマー(カテキン−4−フロログルシノール)が、マトリックス・メタロプロテアーゼ(MMP)の活性を抑制することから、ガン転移、歯周疾患、関節リウマチ、炎症、副甲状腺亢進症、糖尿病、角膜潰瘍、骨粗鬆症、胃潰瘍、外傷、シワ、にきび、エイズ、火傷、動脈硬化、骨折のような疾患を予防及び治療するのに効果的に使われうることを開示している。しかし、この先行技術は、ビティス・ビニフェラの抽出物を得る方法を開示しているわけではない。また、特許文献7は、プロシアニジンオリゴマーが、ニレ樹皮、ブドウ種、大黄(rhubarb)、ツルドクダミ(Pleuropterus multiflorus)、クスノキ(camphor trees)、桂皮(cinnamon)、コノテガシワ(Thuja orientalis)、ツバキ(camellia)、キビ(millet)、ソバ(buckwheet)、オーク(oak)などに豊富であると開示しているだけであり、ブドウの種抽出物、特にビティス・ビニフェラの抽出物が関節リウマチに関連していることは開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】英国特許公開第1541469号公報
【特許文献2】仏国特許公開第2092743号公報
【特許文献3】米国特許公開第2003/0165589号公報
【特許文献4】米国特許公開第2006/0280811号公報
【特許文献5】米国特許第5,484,594号明細書(欧州特許公開第348,781号公報)
【特許文献6】米国特許第4,963,527号明細書
【特許文献7】大韓民国特許第10−0509119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らは、ビティス・ビニフェラの抽出物を簡単な工程を通じて調製するための改善された方法を開発しようと研究を行った。その結果、本発明者らは、一次抽出溶媒として、比較的少量のアセトンを含有する水−アセトン混合溶媒を使用してビティス・ビニフェラの種を抽出し、蒸留してアセトンを除去した後、得られた水層を塩化ナトリウムで直接処理することによって、室温(約25℃)で抽出できること、また簡単に蒸留できることを発見した。また、水と混和しない有機溶媒を使用した抽出工程を行う必要がないために、抽出工程を簡易化できることを発見した。
【0013】
また、本発明者らは、第1抽出物及び第2抽出物を別々に調製し、それらを混合することを含む、本発明の抽出物の改善された調製方法を発見した。すなわち、前記抽出物は、アセトン−水混合溶媒を使用して抽出を行った後、酢酸エチルを使用して抽出を行うことによって第1抽出物を調製し、抽出溶媒として水だけを使用して抽出を行い、次いでエタノールを使用して抽出を行うことによって第2抽出物を調製し、第1抽出物及び第2抽出物を混合することによって調製することができる。この方法によって、アセトンの使用量を減らすことができ、塩化ナトリウム飽和やクロロホルム抽出が不要であるので、抽出工程が簡単になり、また有機溶媒の使用による環境汚染を最小限に抑えられる。特に、抽出物の収率を約10倍に増加させることができる。
【0014】
本発明者らは、ビティス・ビニフェラの種抽出物に係わる様々な薬理効果についての研究を行い、ビティス・ビニフェラの種抽出物が、関節リウマチの予防及び治療に優れた効果を有するということを明らかにした。これは、ビティス・ビニフェラ抽出物が、関節リウマチに関連しうると報告されたことがないために、非常に驚くべきことである。
【0015】
従って、本発明は、ビティス・ビニフェラの種抽出物の改善された調製方法を提供する。
【0016】
本発明はまた、有効成分としてビティス・ビニフェラの種抽出物を含む関節リウマチの予防または治療用の医薬組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様によって、(a)粉砕したビティス・ビニフェラの種を、1:1〜2の体積比のアセトンと水との混合溶媒を用いて室温で抽出した後、濾過する工程と、(b)工程(a)で得られた濾液を蒸留してアセトンを除去し、塩化ナトリウムで飽和させた後で濾過する工程と、(c)工程(b)で得られた濾液を酢酸エチルで抽出した後で濃縮する工程と、(d)工程(c)で得られた濃縮液にクロロホルムを加えた後、濾過して沈殿物を得る工程とを含むビティス・ビニフェラの種抽出物の調製方法が提供される。
【0018】
工程(a)の混合溶媒中のアセトンと水との体積比は、1:1.5とすればよい。工程(a)及び工程(c)の抽出は、2,3回繰り返してもよい。工程(b)の蒸留は、50℃以下の減圧下で行えばよく、工程(b)の濾過は、塩化ナトリウムによる飽和後、2〜3時間静置した後、行えばよい。工程(c)の濃縮は、抽出液総体積の0.4ないし0.7倍の体積になるように行えばよい。
【0019】
本発明の他の様態によって、(A)(i)粉砕したビティス・ビニフェラの種を、3〜5:1の体積比のアセトンと水との混合溶媒で抽出した後、濾過する工程;(ii)工程(i)で得られた濾液を濃縮してアセトンを除去した後で濾過する工程;(iii)工程(ii)で得られた濾液を酢酸エチルで抽出する工程;及び(iv)工程(iii)で得られた抽出液を乾燥する工程によって、第1抽出物を調製する工程と、(B)(p)粉砕したビティス・ビニフェラの種を水で抽出した後で濾過する工程;(q)工程(p)で得られた濾液をエタノールで抽出した後で濾過する工程;及び(r)工程(q)で得られた濾液を乾燥する工程によって、第2抽出物を調製する工程と、(C)第1抽出物及び第2抽出物を混合する工程とを含むビティス・ビニフェラの種抽出物の調製方法が提供される。
【0020】
工程(i)の混合溶媒中のアセトンと水との体積比は、4:1とすればよい。工程(iii)または(q)の抽出は、2,3回繰り返してもよい。工程(iii)は、抽出液を脱水することをさらに含むことができる。工程(iv)の乾燥は、工程(iii)で得られた抽出液を濃縮して酢酸エチルを除去し、濃縮物を水に溶解した後、噴霧乾燥することによって行えばよい。工程(r)の乾燥は、工程(q)で得られた濾液を噴霧乾燥することによって、または工程(q)で得られた濾液を濃縮した後、濃縮液を噴霧乾燥することによって行えばよい。第1抽出物及び第2抽出物の混合比は、1:0.5〜1.5の重量比とすればよい。
【0021】
上記の調製方法で得られるビティス・ビニフェラの種抽出物は、80〜130%のプロシアニドール値(PCV:Procyanidolic value)、30%以下の(+)カテキン及び(−)エピカテキン、及び95〜105%のプロアントシアニジンを有することが望ましい。
【0022】
本発明のさらに他の様態によって、有効成分としてビティス・ビニフェラの種抽出物及び薬学的に許容可能な担体を含む関節リウマチの予防または治療用の医薬組成物が提供される。望ましくは、ビティス・ビニフェラの種抽出物は上述した調製方法によって調製される。さらに望ましくは、ビティス・ビニフェラの種抽出物は、80〜130%のプロシアニドール値(PCV)、30%以下の(+)カテキン及び(−)エピカテキン、及び95〜105%のプロアントシアニジンを有する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によって、一次抽出溶媒として比較的少量のアセトンを含有する水−アセトン混合溶媒を使用して抽出が行われる。従って、蒸留によりアセトンが簡単に除去され、残留溶媒が最小限に抑えられる。また、室温(約25℃)で抽出できるため、加熱工程が不要であり、また塩化ナトリウムを加える前に、水と混和しない有機溶媒を使用した抽出が不要である。従って、本発明によるビティス・ビニフェラの種抽出物の調製方法は、簡単かつコスト効率的であるので、産業上の大量生産に好適に用いられる。
【0024】
また、第1抽出物及び第2抽出物を別々に調製し、それらを混合することによって、ビティス・ビニフェラの種抽出物を調製する方法によれば、アセトンの使用量を減少させることができ、塩化ナトリウム飽和やクロロホルム抽出が不要であるので、抽出工程が簡単になり、また有機溶媒の使用による環境汚染を最小限に抑えられる。特に、抽出物の収率を約10倍に増加させることができる。
【0025】
また、上記の抽出方法によって得られたビティス・ビニフェラの種抽出物は、天然抽出物として優れた安全性を有するとともに、例えば、コラーゲン誘導関節炎(CIA)動物モデルで、関節リウマチの予防または治療に優れた効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】コラーゲン誘導関節炎(CIA)動物、ビティス・ビニフェラの種抽出物(GSPE)を100mg/kgの用量で5回反復的に腹腔内投与したCIA動物、及び生理食塩水を5回反復的に腹腔内投与したCIA動物に対する、10週間の観察期間中の関節炎指数を示したグラフである。
【図2】屠殺前の、CIA動物、ビティス・ビニフェラの種抽出物を投与したCIA動物、及び正常動物の関節部位を示す写真である。
【図3】屠殺後の、CIA動物、50mg/kg及び10mg/kgのそれぞれの用量でビティス・ビニフェラの種抽出物を投与したCIA動物、及び正常動物の関節や軟骨組織の破壊の程度を示す組織染色像である。
【図4】100mg/kgの用量でビティス・ビニフェラの種抽出物を投与したCIA動物、生理食塩水を投与したCIA動物、及び正常動物の、血清中の2型コラーゲン特異的抗体(抗CII抗体IgG1及び抗CII抗体IgG2a)量を示すグラフである。
【図5】100mg/kgの用量でビティス・ビニフェラの種抽出物を投与したCIA動物、または生理食塩水を投与したCIA動物から得られた胸腺CD4+ T細胞と脾臓のCD11c+樹状細胞とを、10:1の割合で3日間共培養した後、酵素免疫測定法(ELISA)によって測定した培養上清中のIL−17及びTNF−αの量を示すグラフである。
【図6】図5に記載の方法で得られた細胞を、10μg/mlのビティス・ビニフェラの種抽出物を含む培地、20μg/mlの該抽出物を含む培地、または該抽出物を含まない培地を用いて、3日間、抗CD3抗体刺激下で共培養した後、ELISAによって測定した培養上清中のIL−17及びIL−4の量を示すグラフである。
【図7】50mg/kg及び10mg/kgのそれぞれの用量でビティス・ビニフェラの種抽出物を投与したCIA動物、または生理食塩水を投与したCIA動物から得られた流入領域リンパ節(dLN:draining lymph nodes)を、抗CD3抗体,CIIまたはリポポリサッカライド(LPS)の刺激下、10μg/mlのビティス・ビニフェラの種抽出物を含む培地、または該抽出物を含まない培地中で3日間培養した後、リアルタイムPCRで測定したIL−17mRNAの発現の程度を示すグラフである。
【図8】自己免疫関節炎動物モデルであるIL−1Ra−/−から得られた胸腺CD4+ T細胞と脾臓のCD11c+樹状細胞とを、10:1の割合で、10μg/mlのビティス・ビニフェラの種抽出物を含む培地、または該抽出物を含まない培地を用いて、抗CD3抗体、CPGまたはCII刺激下で6日間共培養した後、蛍光標示式細胞分取器(FACS)を使用して測定した結果を示すグラフである。
【図9】CIA動物から得られた胸腺CD4+ T細胞と脾臓のCD11c+樹状細胞とを、10:1の割合で、10μg/mlのビティス・ビニフェラの種抽出物を含む培地、または該抽出物を含まない培地を用いて、抗CD3抗体、CPGまたはCII刺激下で6日間共培養した後、蛍光標示式細胞分取器(FACS)を使用して測定した結果を示すグラフである。
【図10】生理食塩水、セレコクシブ、もしくは10%DMSOを腹腔内投与したCIA動物、またはビティス・ビニフェラの種抽出物を経口投与したCIA動物の関節炎指数を示したグラフである。
【図11】生理食塩水、セレコクシブ、もしくは10%DMSOを腹腔内投与したCIA動物、またはビティス・ビニフェラの種抽出物を経口投与したCIA動物の関節切片のヘマトキシリン・エオジン染色像である。
【図12】生理食塩水を腹腔内投与したCIA動物、またはビティス・ビニフェラの種抽出物を経口投与したCIA動物の総IgG抗体の亜型を示すグラフである。
【図13】生理食塩水を腹腔内投与したCIA動物、またはビティス・ビニフェラの種抽出物を経口投与したCIA動物の総IgG抗体の亜型を示すグラフである。
【図14】生理食塩水、セレコクシブ、もしくは10%DMSOを腹腔内投与したCIA動物、またはビティス・ビニフェラの種抽出物を経口投与したCIA動物におけるIL−17の量を示すグラフである。
【図15】生理食塩水、セレコクシブ、もしくは10%DMSOを腹腔内投与したCIA動物、またはビティス・ビニフェラの種抽出物を経口投与したCIA動物におけるTNF−αの量を示すグラフである。
【図16】生理食塩水、セレコクシブ、もしくは10%DMSOを腹腔内投与したCIA動物、またはビティス・ビニフェラの種抽出物を経口投与したCIA動物におけるIL−1βの量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、(a)粉砕したビティス・ビニフェラの種を、1:1〜2の体積比のアセトンと水との混合溶媒を用いて室温で抽出した後、濾過する工程と、(b)工程(a)で得られた濾液を蒸留してアセトンを除去し、塩化ナトリウムで飽和させた後で濾過する工程と、(c)工程(b)で得られた濾液を酢酸エチルで抽出した後で濃縮する工程と、(d)工程(c)で得られた濃縮液にクロロホルムを加えた後、濾過して沈殿物を得る工程とを含むビティス・ビニフェラの種抽出物の調製方法を含む。
【0028】
粉砕したビティス・ビニフェラ(Vitis vinifera)の種は、ビティス・ビニフェラを圧搾して皮、種、枝を得て、それらを水で洗浄し、オーブンを使用して乾燥し、種を単離した後、その種を通常の方法で粉砕することによって得られる。
【0029】
本発明の調製方法において、従来の抽出(例えば、特許文献1に開示されている)で使われるものに比べてアセトン含有量が低いアセトン−水混合溶媒が、一次抽出溶媒として使われ、この一次抽出工程は、加熱せずに室温(約25℃)で行われる。本明細書において、アセトン及び水の混合溶媒におけるアセトンと水との体積比は、1:1〜2、望ましくは約1:1.5とすればよい。一次抽出は、一回のみ行ってもよく、または数回、望ましくは2,3回繰り返してもよい。工程(a)の濾過は、通常の方法で行われ、次の工程のために濾液を回収する。
【0030】
本発明の調製方法は、工程(a)で得られた濾液を蒸留してアセトンを除去し、塩化ナトリウムで飽和させた後、濾過する工程[工程(b)]を含む。蒸留の間、比較的低い沸点を有するアセトンが除去され、アセトンに溶解していた不純物が沈殿する。蒸留は、通常の方法で、例えば減圧下で行えばよい。蒸留は、約50℃以下の減圧下で行えばよい。蒸留により得られた抽出液は、有機溶媒を使用した抽出に用いられることなく、塩化ナトリウムで飽和した後で濾過される。この抽出液(すなわち、アセトンを留去した抽出液)を塩化ナトリウムで飽和させると、タンニンのような不純物が沈殿し、これは濾過により除去される。塩化ナトリウム飽和による不純物の沈殿及び濾過において、濾過は、塩化ナトリウムによる飽和後、2,3時間静置した後に行えばよい。濾過は、通常の方法で行われ、次の工程のために濾液を回収する。
【0031】
本発明の調製方法は、工程(b)で得られた濾液を酢酸エチルで抽出した後、濃縮する工程[工程(c)]を含む。酢酸エチルを利用した抽出(二次抽出)は、一回のみ行ってもよく、または数回、望ましくは2,3回繰り返してもよい。濃縮は、得られた抽出液総体積の0.4ないし0.7倍の体積になるように行えばよい。
【0032】
本発明の調製方法は、工程(c)で得られた濃縮液にクロロホルムを加えた後、濾過して沈殿物を得る工程[工程(d)]を含む。すなわち、クロロホルムを濃縮液に加えれば、クロロホルムに溶解しないオリゴマーを含む有効成分が沈殿する。ビティス・ビニフェラの種抽出物は、この沈殿物を濾過することによって簡単に単離することができる。濾過によって得られた沈殿物を通常の方法で乾燥することによって、乾燥粉末が得られる。乾燥は、減圧下で、例えば50℃以下の減圧下で行えばよい。
【0033】
また、本発明は、(A)(i)粉砕したビティス・ビニフェラの種を、3〜5:1の体積比のアセトンと水との混合溶媒で抽出した後、濾過する工程;(ii)工程(i)で得られた濾液を濃縮してアセトンを除去した後で濾過する工程;(iii)工程(ii)で得られた濾液を酢酸エチルで抽出する工程;及び(iv)工程(iii)で得られた抽出液を乾燥する工程によって、第1抽出物を調製する工程と、(B)(p)粉砕したビティス・ビニフェラの種を水で抽出した後で濾過する工程;(q)工程(p)で得られた濾液をエタノールで抽出した後で濾過する工程;及び(r)工程(q)で得られた濾液を乾燥する工程によって、第2抽出物を調製する工程と、(C)第1抽出物及び第2抽出物を混合する工程とを含むビティス・ビニフェラの種抽出物の調製方法を含む。
【0034】
粉砕したビティス・ビニフェラの種は、上記と同様にして調製することができる。ビティス・ビニフェラの種抽出物は、第1抽出物及び第2抽出物を別々に調製し、それらを混合することによって調製することができる。従って、本発明の調製方法によって、アセトンの量を減らすことができる。また、塩化ナトリウム飽和やクロロホルム抽出が不要であるので、抽出が簡単となり、有機溶媒によって発生しうる環境汚染が最小限に抑えられる。また、抽出物の収率を約10倍に増加させることができる。
【0035】
第1抽出物の調製において、工程(i)は、粉砕したビティス・ビニフェラの種を3〜5:1、さらに望ましくは、4:1の体積比のアセトンと水との混合溶媒で抽出した後、濾過することによって行われる。抽出は、一回のみ行ってもよく、または数回、望ましくは2,3回繰り返してもよい。工程(i)の濾過は、通常の方法で行われ、次の工程のために濾液を回収する。
【0036】
第1抽出物の調製において、工程(ii)は、工程(i)で得られた濾液を濃縮してアセトンを除去した後、濾過することによって行われる。濃縮中に、比較的低い沸点を有するアセトンが除去され、従って、アセトンに溶解していた不純物が沈殿する。濃縮は、通常の減圧濃縮(または減圧蒸留)、例えば、減圧条件下での蒸留によって行えばよい。沈殿物は、濾過によって除去され、得られた濾液を回収する。
【0037】
第1抽出物の調製において、工程(iii)は、工程(ii)で得られた濾液を酢酸エチルで抽出することによって行われる。酢酸エチルを利用した抽出(二次抽出)は、一回のみ行ってもよく、または数回、望ましくは2,3回繰り返してもよい。また、工程(iii)は、酢酸エチルを利用した抽出後、例えば、無水硫酸ナトリウムを使用した脱水工程をさらに含むことができる。
【0038】
第1抽出物の調製において、工程(iv)は、工程(iii)で得られた抽出液を乾燥することによって行われる。乾燥は、通常の方法、例えば50℃以下の減圧下で行えばよい。さらに望ましくは、乾燥は、工程(iii)で得られた抽出液を濃縮して酢酸エチルを除去し、濃縮物を水に溶解した後、噴霧乾燥することによって行われる。
【0039】
第2抽出物の調製において、工程(p)は、粉砕したビティス・ビニフェラの種を水で抽出した後、濾過することによって行われ、工程(q)は、工程(p)で得られた濾液をエタノールで抽出した後、濾過することによって行われる。工程(q)の抽出は、一回のみ行ってもよく、または数回、望ましくは2,3回繰り返してもよい。
【0040】
第2抽出物の調製において、工程(r)は、工程(q)で得られた濾液を乾燥することによって行われる。工程(r)の乾燥は、工程(q)で得られた濾液を噴霧乾燥することによって、あるいは工程(q)で得られた濾液を濃縮した後、濃縮液を噴霧乾燥することによって行えばよい。濃縮は、工程(q)で得られた濾液総体積の0.4ないし0.7倍の体積になるように行えばよいが、これに限定されるものではない。
【0041】
第1抽出物及び第2抽出物の混合は、単純にこれらの抽出物を混合することによって実施できる。第1抽出物及び第2抽出物の混合比は、1:0.5〜1.5の重量比とすればよい。
【0042】
本発明の調製方法によって得られたビティス・ビニフェラの種抽出物は、80〜130%のプロシアニドール値(PCV:Procyanidolic value);30%以下の(+)カテキン及び(−)エピカテキン;及び95〜105%のプロアントシアニジンを有する。
【0043】
本明細書で、「プロシアニドール値(PCV)」は、下記の通り計算される。
【0044】
[1]標準液の調製
ビティス・ビニフェラの種抽出物の標準品100mgを正確に計り取り、イソプロパノールと混合して50mlの溶液を調製する。この溶液10mlを3M塩酸10mlと混合した後、得られた溶液をイソプロパノールと混合し、50mlの標準液を調製する。
【0045】
[2]検液の調製
各検体100mgを用いて、標準液の調製と同じ方法で検液を調製する。
【0046】
[3]測定
各検液または標準液を10mlずつ5本の試験管に入れて栓をする。その後、各試験管を100℃の水浴中で45分間加熱する。加熱後、試験管を冷水中で冷却し、各試験管から得られた溶液2mlをイソプロパノール20mlと混合する。検液及び標準液に対し、イソプロパノールを対照液として使用し、550nmで吸光度を測定し、各5本の平均吸光度を計算する。
【0047】
[4]計算
PCV=105×[A(t)×Mt×(100−Et)]/[A(s)×M×(100−E)]
A(t):検液の平均吸光度
A(s):標準液の平均吸光度
Mt:標準品の量(mg)
M:検体の量(mg)
Et:標準品の水分含有量(%)
E:検体の水分含有量(%)
【0048】
(+)カテキン及び(−)エピカテキンは、次の通り定量される。
【0049】
[1]標準液の調製
(+)カテキン標準品または(−)エピカテキン標準品を50mg、アセトニトリルと希釈リン酸との混合溶媒(5:95)に溶解し、それぞれ100mlの標準液を調製する。
【0050】
[2]検液調製
各検体50mgをアセトニトリルと希釈リン酸との混合溶媒(5:95)に溶解し、それぞれ10mlの検液を調製する。
【0051】
[3]分析条件
−カラム:オクタデシルシリル化されたシリカゲルで充填されたカラム(0.46×25cm、5μm)
−移動相
【表1】
【0052】
[4]計算
エピカテキンとしてのカテキンの含有量(%)
=[A1×Me×100×100]/[Ae×M1×(100−E)×10]
エピカテキンの含有量(%)
=[A2×Me×100×100]/[Ae×M1×(100−E)×10]
A1:検液中のカテキンのピーク面積
A2:検液中のエピカテキンのピーク面積
Ae:標準液中のエピカテキンのピーク面積
Me:標準液中のエピカテキンの量(mg)
M1:検液中の抽出物の量(mg)
E:抽出物中の水分含有量(%)
【0053】
また、「プロアントシアニジン含有量」は、下記の方法により計算する。
【0054】
[1]内部標準液の調製
2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)30.0mgを100mlフラスコに加え、移動相を標線まで加えて内部標準液を調製した。
【0055】
[2]検液1の調製
検体10mgを10mlフラスコに加えた後、5mlの内部標準液に溶解し、内部標準液を標線まで加えて検液1を調製した。
【0056】
[3]検液2の調製
検体10mgを10mlフラスコに加えた後、5mlの内部標準液に溶解し、内部標準液を標線まで加えて検液2を調製した。
【0057】
[4]標準液の検量線作成
−標準液1:プロアントシアニジン標準品8mgを10mlフラスコに入れて5mlの内部標準液に溶解し、内部標準液を標線まで加えて標準液1を調製した。
−標準液2:プロアントシアニジン標準品10mgを10mlフラスコに入れて5mlの内部標準液に溶解し、内部標準液を標線まで加えて標準液2を調製した。
−標準液3:プロアントシアニジン標準品12mgを10mlフラスコに入れて5mlの内部標準液に溶解し、内部標準液を標線まで加えて標準液3を調製した。
【0058】
[5]分析条件
−カラム:PL Gel Column(7.6×300mm、5μm)、またはこれと類似のカラム
−検出器:UV検出器(波長:280nm)
−移動相:テトラヒドロフランと臭化リチウム溶液との混合溶媒(95:5)
*臭化リチウム溶液:臭化リチウム1.04gを1,000mlフラスコに加え、水を標線まで加える。
−流速:1.0ml/分
−注入量:10μl
−測定時間:15分
【0059】
[6]方法
標準液1,2,3及び検液1,2を下記の液体クロマトグラフィを使用して二回ずつ分析する。標準液の濃度、主ピークとISピークとの比(Aproanthocyanidin/ABHT)を用いて標準液の検量線を作成し、次の通り計算する。
【0060】
[7]計算式
−Ti%={[(Aproanthocyanidin/ABHT)test−a]/b}×(1/Ctest)×100
Aproanthocyanidin=検液中のプロアントシアニジンのピーク面積
ABHT=検液中のBHTのピーク面積
a=標準液検量線のY切片
b=標準液検量線の傾度
Ctest=検液の濃度(mg/ml)
−プロアントシアニジン含有量(%)=Ti%×[(100−KFstd)/(100−KFtest)]
KFstd=標準物質の水分含有量(%)
KFtest=検体の水分含有量(%)
【0061】
本発明は、有効成分としてビティス・ビニフェラの種抽出物及び薬学的に許容可能な担体を含む関節リウマチの予防または治療用の医薬組成物を含む。
【0062】
前記ビティス・ビニフェラの種抽出物は、上述した調製方法によって調製することができる。さらに望ましくは、前記ビティス・ビニフェラの種抽出物は、80〜130%のプロシアニドール値(PCV)、30%以下の(+)カテキン及び(−)エピカテキン、及び95〜105%のプロアントシアニジンを有する。
【0063】
下記試験例に記述される通り、例えば、コラーゲン誘導関節炎(CIA)動物において、本発明の調製方法によって得られたビティス・ビニフェラの種抽出物は、関節リウマチの予防及び治療に対して優れた効果を示す。
【0064】
すなわち、ビティス・ビニフェラの種抽出物を100mg/kgの用量でCIA動物に腹腔内投与した場合、関節炎指数が有意に低くなった(図1及び図2)。また、慢性炎症性関節炎を有する関節リウマチ動物モデル(IL−Ra−/−)でも、関節炎の緩和が観察された。組織学的分析の結果、ビティス・ビニフェラの種抽出物を100mg/kgの用量で投与した動物の関節の破壊の程度が正常マウスとほぼ同じであり、軟骨の破壊も改善された(図3)。また、血清学的試験の結果、ビティス・ビニフェラの種抽出物を100mg/kgの用量で投与した場合、Th2型抗CII抗体IgG1のレベルは変化しなかったが、Th1型のCII特異的なIgG2aの生成量が減少した(図4)。Th1型のCII特異的なIgG2aの生成量が減少するので、ビティス・ビニフェラの種抽出物投与によって、関節リウマチが効果的に治療される可能性があることが分かる。
【0065】
また、ビティス・ビニフェラの種抽出物を投与した場合、関節リウマチの炎症性サイトカインとして知られているIL−17とTNF−αの量が有意に減少し(図5)、ビティス・ビニフェラの種抽出物で試験管内(in vitro)で処理した場合、炎症性サイトカインであるIL−17は、抗炎症性サイトカインであるIL−4と負の相関関係を示した(図6)。転写レベルでのIL−17のプロファイルについても、同様のパターンが見られた。試験管内で、CIIまたはLPSで刺激した後、ビティス・ビニフェラの種抽出物で処理した場合、CIIまたはLPSによって上昇したIL−17のmRNA発現レベルが低下した(図7)。
【0066】
関節リウマチは、免疫細胞(特に、慢性炎症性T細胞)の過剰な活性と関連するので、CD4 T細胞の調節が治療のターゲットになる可能性がある。CIA動物とIL−1Ra−/−動物をビティス・ビニフェラの種抽出物で処理した場合、Foxp3+制御性CD4 T細胞の誘導が増強された。CIA動物のCD4 T細胞をCII及びビティス・ビニフェラの種抽出物で処理した場合、CIIのみで処理した群に比べて、Foxp3+制御性CD4 T細胞の誘導が増強された(図8及び図9)。これは、ビティス・ビニフェラの種抽出物によってCII特異的な制御性CD4 T細胞が生成されることにより、慢性炎症性T細胞の増殖が効果的に阻害される可能性があることを示唆する。
【0067】
従って、ビティス・ビニフェラの種抽出物は、炎症性サイトカインの生成を抑制し、抗炎症性サイトカインと制御性T細胞を誘導することによって、関節リウマチの予防及び治療に対して優れた活性を示すことが分かる。
【0068】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体を含み、通常の方法によって、例えば散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアゾールなどの経口投与形態;外用剤(external dosage forms);坐剤;または滅菌注射剤に製剤化される。望ましくは本発明の医薬組成物は、錠剤に製剤化される。薬学的に許容可能な担体としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレートまたは鉱物油などが挙げられる。前記医薬組成物はまた、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または添加剤をさらに含むことができる。固形経口用製剤としては、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤またはカプセル剤などが挙げられる。このような固形製剤は、例えば澱粉、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース、及びゼラチンから選択される少なくとも1つの添加剤を含むことができる。また、このような固形製剤は、マグネシウムステアレートまたはタルクのような潤滑剤をさらに含むことができる。液状経口用製剤としては、懸濁剤、液剤、エマルジョン、シロップなどが挙げられる。また、液状経口用製剤は水やリキッドパラフィンなどの希釈剤;湿潤剤;甘味剤;芳香剤;または保存剤を含むことができる。非経口用製剤としては、滅菌水溶液剤、非水溶液剤、懸濁剤、エマルジョン、凍結乾燥製剤、または坐剤などが挙げられる。非水性溶媒または懸濁化剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような天然オイル、エチルオレエートのような注射可能なエステルなどが挙げられる。坐剤の基剤としては、ウィテプソール(witepsol)、マクロゴール、ツウィーン61(Tween 61)、カカオバター、ラウリンまたはグリセロゼラチンなどが挙げられる。
【0069】
本発明の医薬組成物において、前記ビティス・ビニフェラの種抽出物の投与量は、患者の状態や体重、病気の重症度、投与形態、投与経路及び投与期間によって異なるが、当業者によって適切に決定されうる。例えば、前記ビティス・ビニフェラの種抽出物は、1日1ないし100mg/kg、望ましくは5ないし50mg/kg、さらに望ましくは約5ないし10mg/kgの用量で、一日に一回または数回投与すればよい。本発明の医薬組成物はまた、他の関節リウマチ治療剤と組み合わせて投与してもよい。組み合わせて投与する場合、他の治療剤を時間をずらしてまたは同時に投与することができる。組み合わせて投与する場合、それぞれの投与量は、最大治療効果を示す最小量で決定され、当業者によって適切に決定される。
【0070】
本発明の医薬組成物は、ラット、マウス、家畜、またはヒトのような哺乳動物に対して、例えば、経口、直腸内、静脈内、筋肉内、皮下などの多様な経路で投与され、望ましくは、経口で投与される。
【0071】
以下、本発明について実施例により、さらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、説明のためだけに提供されるものであり、よって本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0072】
実施例1.ビティス・ビニフェラの種抽出物の調製
ビティス・ビニフェラを圧搾して(compress)得られたビティス・ビニフェラの皮、種、枝を水で洗浄し、回転オーブンで乾燥し、ビティス・ビニフェラの種を単離した。この種1kgを粉砕し、精製水(300ml)及びアセトン(200ml)の混合溶媒500mlを加え、室温で抽出した。抽出を三回繰り返した後、抽出液を合わせて濾過した。濾液を50℃以下の減圧下で蒸留してアセトンを除去し、塩化ナトリウムで飽和させた。これを室温で3時間静置した後で濾過した。濾液を、酢酸エチル250mlを使用して三回抽出し、無水硫酸ナトリウムで脱水した。抽出液を液量が約125mlになるまで濃縮した。クロロホルム約600mlを濃縮液に加えて沈殿物を形成させた後、濾過した。沈殿物を50℃以下で真空オーブンで乾燥し、褐色のビティス・ビニフェラの種抽出物粉末約3.5gを得た。得られた抽出物を希釈酸性溶液中で加熱して加水分解し、プロシアニドールオリゴマーを定量化することによりPCVを測定した。その結果、PCVは、約105であった。また、上述した方法で測定した結果、プロアントシアニジンの含有量は、103%であった。従って、前記抽出物は、(+)カテキン及び(−)エピカテキンのようなモノマーが少なくとも2個重合したオリゴマーを多量に含有する。
【0073】
実施例2.ビティス・ビニフェラの種抽出物の調製
ビティス・ビニフェラを圧搾して(compress)得られたビティス・ビニフェラの皮、種、枝を水で洗浄し、回転オーブンで乾燥し、ビティス・ビニフェラの種を単離した。ビティス・ビニフェラの種1kgを粉砕した後、アセトン水溶液(アセトン/水=8/2、v/v)500mlを使用して抽出した。抽出を三回繰り返した後、抽出液を合わせて濾過した。濾液を減圧濃縮してアセトンを除去した後、濾過した。濾液を酢酸エチル250mlを使用して三回抽出し、無水硫酸ナトリウムで脱水した。抽出液を減圧濃縮して酢酸エチルを除去し、得られた濃縮物を水500mlに溶解し、この溶液を噴霧乾燥して抽出物粉末(第1抽出物)約20gを得た。
【0074】
ビティス・ビニフェラを圧搾して得られたビティス・ビニフェラの皮、種、枝を水で洗浄し、回転オーブンで乾燥し、ビティス・ビニフェラの種を単離した。ビティス・ビニフェラの種1kgを粉砕し、精製水500mlを使用して抽出した。抽出を三回繰り返した後、抽出液を合わせて濾過した。濾液をエタノール250mlを使用して三回抽出した後、濾過した。濾液を減圧濃縮し、得られた濃縮液を噴霧乾燥し、抽出物粉末(第2抽出物)約15gを得た。
【0075】
第1抽出物及び第2抽出物を混合し、ビティス・ビニフェラの種抽出物約35gを得た。得られた抽出物を希釈酸性溶液中で加熱して加水分解し、プロシアニドールオリゴマーを定量化することによりPCVを測定した。その結果、PCVは、約98であった。また、上述した方法で測定した結果、プロアントシアニジンの含有量は、98.5%であった。従って、前記抽出物は、(+)カテキン及び(−)エピカテキンのようなモノマーが少なくとも2個重合したオリゴマーを多量に含有する。
【0076】
試験例1.腹腔内投与時の関節炎に対する治療効能の評価
1.動物モデルの準備及びビティス・ビニフェラの種抽出物の投与
コラーゲン誘導関節炎(CIA:collagen induced arthritis)動物モデルを準備し、実施例1で調製したビティス・ビニフェラの種抽出物を、次の通り投与した。
【0077】
6〜7週齢のDBA−1雄性マウスを使用した。2型コラーゲン(CII)を4mg/mlの濃度になるように0.1N酢酸溶液に溶解した後、透析緩衝液(dialysis buffer:50mM Tris、0.2N NaCl)で透析した。これを、結核菌(M.tuberculosis)を含有するフロイント完全アジュバント(Complete Freund's adjuvant)(CFA、Chondrex)と同量混合し、免疫原100μl(すなわち、100μl/100μg)をマウスの尻尾の付け根に皮下注射した(hypodermically injected)(一次注射)。
【0078】
一次注射から1週間後、100mg/kgの用量でビティス・ビニフェラの種抽出物(生理食塩水に溶解したもの)200μl、または対照群として生理食塩水200μlをマウスに腹腔内投与した。1週間後(すなわち、一次注射から2週間後)、CIIを同量のフロイント不完全アジュバント(IFA、Chondrex)と混合し、この混合液100μl(すなわち100μl/100μg)を一方の後足に注射した(二次注射)。二次注射後、3日間隔で全4回100mg/kgの用量でビティス・ビニフェラの種抽出物、または対照群として生理食塩水を腹腔内投与した。
【0079】
各群5匹のマウスを使用し、評価は10週間行った。関節炎指数が有意に変化した時点で、それぞれのマウスを屠殺し、血液、細胞、関節組織の関節炎の活動度を測定し、様々な試験管内試験を行った。
【0080】
2.CIA動物における関節リウマチに対するビティス・ビニフェラの種抽出物の治療効果の評価
(2−1)Rosioniecによる平均関節炎指数の評価
試験について知らない観察者三人が、最初の注射以降3週間ないし10週間まで、毎週三回関節における炎症の重症度(seriousness)を評価した。関節炎の評価は、Rosioniec EFによる平均関節炎指数に基づき、二次注射の際にCII/CFAを投与した足を除外した3本の足から得られた平均点数を求め、3人の観察者による平均値をとることによって行った。関節炎の重症度を0ないし4スケールの平均関節炎指数で記録した。
【0081】
関節炎評価のための点数と基準は、次の通りである。
0点:むくみや腫脹がない
1点:足または足首関節に若干の浮腫及び発赤
2点:足首関節から中足骨(metatarsal)にわたる若干の浮腫及び発赤
3点:足首関節から足根骨(tarsal)にわたる中等度の浮腫及び発赤
4点:足首から足全体に浮腫及び発赤
1本の足に対する関節炎指数は最大で4であるから、マウスの1匹当たりの関節炎指数は最大で16である。
【0082】
ビティス・ビニフェラの種抽出物を投与した動物で、関節炎指数が徐々に低くなることが観察された。一方、CIA動物、及び生理食塩水を投与した対照群の動物では、関節炎の正常な発生が観察された。従って、ビティス・ビニフェラの種抽出物処理群と、ビティス・ビニフェラの種抽出物非処理群とでは関節炎の臨床症状が異なった(図1)。
【0083】
関節炎指数を確認するために、試験群の写真を撮影した。図1の関節炎指数と同様に、ビティス・ビニフェラの種抽出物を投与した動物では、腫れた関節が正常マウスの関節と同じレベルまで治癒された(図2)。
【0084】
(2−2)組織学的検査
上記と同じ方法で、ビティス・ビニフェラの種抽出物を50mg/kg及び10mg/kgのそれぞれの用量で、上記で準備したCIA動物に投与した。8週間後にマウスを屠殺した。それぞれのマウスの後足を10%ホルマリンで固定し、石灰分を除去してパラフィンで包埋した。関節切片(5〜7μm)をヘマトキシリンとエオジンで染色した。また、軟骨の破壊の程度を確認するために、トルイジンブルーとサフラニンOで染色し、組織学的検査を実施した。
【0085】
組織学的検査の結果、CIA動物及び生理食塩水を投与した動物の関節で、多くの免疫細胞が浸潤し、パンヌス形成、軟骨破壊及び骨侵食などが観察された。一方、ビティス・ビニフェラの種抽出物を投与したマウスの関節や軟骨の破壊の程度は、正常マウスとほぼ同じであった(図3)。
【0086】
(2−3)血清学的検査(コラーゲン特異的抗体の測定)
血清学的検査により、CII特異的なIgG抗体の亜型を調べるために、酵素免疫測定法(ELISA)を使用した。IgG抗体の亜型のうちIgG1は、マウスにおいて、炎症を抑制する調節因子として機能する。一方、IgG2aは、炎症反応の促進・媒介因子として機能する。DBA−1マウスで関節炎が誘導されるとき、主にTh1反応を起こすIgG2aが特異的に増加することが知られている。
【0087】
各試験群の血清を1:8,000の割合で希釈し、CII特異的な血清IgG抗体の亜型を測定した。その結果、CIA動物と比較すると、ビティス・ビニフェラの種抽出物を投与した動物では、Th2型IgG1は変化しなかったが、Th1型のCII特異的なIgG2aは減少した(図4)。
【0088】
3.ビティス・ビニフェラの種抽出物によるサイトカイン調節の評価
(3−1)IL−17量とTNF−α量の測定
各群の動物を屠殺した後、胸腺のCD4+ T細胞と脾臓のCD11c+樹状細胞とを単離し、10:1の割合で3日間共培養した後、上清中のTh17型のサイトカインであるIL−17及びTh1型のサイトカインであるTNF−αの量を、ELISAを使用して測定した。
【0089】
その結果、CIA動物と比較すると、ビティス・ビニフェラの種抽出物を投与した動物では、二種のサイトカインはいずれも有意に減少した(図5)。
【0090】
(3−2)TCR刺激によるIL−17及びIL−4生成に対するビティス・ビニフェラの種抽出物の効果
各群の動物から得られた胸腺CD4+ T細胞と脾臓のCD11c+樹状細胞とを、10μg/mlのビティス・ビニフェラの種抽出物を含む培地、20μg/mlの該抽出物を含む培地、または該抽出物を含まない培地を用いて、抗CD3抗体刺激下で3日間培養し、上清中のIL−17とIL−4をELISAを利用して測定した。
【0091】
生理食塩水を投与したCIA動物で、TCR刺激によって増加したIL−17の生成量が、試験管内で処理したビティス・ビニフェラの種抽出物の濃度に依存して減少し、抗炎症性サイトカインであるIL−4の生成量は、濃度依存的に増加した。一方、ビティス・ビニフェラの種抽出物を投与した動物における試験管内のIL−17の生成量は、CIA動物よりも大幅に濃度依存的に減少し、また、ビティス・ビニフェラの種抽出物を投与した動物における試験管内のIL−4の生成量は、CIA動物よりも大幅に濃度依存的に増加した(図6)。
【0092】
結果として、ビティス・ビニフェラの種抽出物を投与した動物では、試験管内試験において、抗炎症性サイトカインであるIL−4を生産できる細胞が優勢である一方、Th17細胞は減少した。これは、ビティス・ビニフェラの種抽出物が、炎症性サイトカインと抗炎症性サイトカインの生成量を調節することによって、関節炎を治療するということを意味する。また、IL−4は、制御性T細胞を誘導できるサイトカインである。従って、ビティス・ビニフェラの種抽出物によって、制御性T細胞が誘導される可能性があることが分かる。
【0093】
4.ビティス・ビニフェラの種抽出物による制御性CD4 T細胞の誘導及びTh17細胞の抑制
関節リウマチに対するビティス・ビニフェラの種抽出物の治療メカニズムを究明するために、ビティス・ビニフェラの種抽出物によって誘導または抑制される免疫系を調べた。
【0094】
(4−1)ビティス・ビニフェラの種抽出物によるIL−17のmRNA発現変化
50mg/kg及び10mg/kgのそれぞれの用量でビティス・ビニフェラの種抽出物を、または生理食塩水をCIA動物に投与した。これらの動物を屠殺して得られた流入領域リンパ節(dLN)を、ビティス・ビニフェラの種抽出物10μg/mlを含む培地、または該抽出物を含まない培地を用いて、抗CD3抗体、CIIまたはLPS(lipopolysaccharide)の刺激下で3日間培養した。その後、IL−17のmRNAの発現の程度を、リアルタイムPCR(real-time PCR)で測定した。
【0095】
転写レベルでのIL−17のプロファイルについても、図6と同じパターンが見られた。試験動物をCIIまたはLPSで刺激し、ビティス・ビニフェラの種抽出物で処理した場合、CIIまたはLPSによって増加したIL−17のmRNAが減少した(図7)。
【0096】
(4−2)ビティス・ビニフェラの種抽出物による制御性CD4 T細胞(regulatory CD4 T cells)の誘導
CIA動物または他の関節リウマチ動物であるIL−1Ra−/−動物から得られた胸腺CD4+ T細胞と脾臓のCD11c+樹状細胞とを、10:1の割合で、ビティス・ビニフェラの種抽出物10μg/mlを含む培地、または該抽出物を含まない培地を用いて、抗CD3抗体、CPGまたはCII刺激下で6日間共培養した。その後、Foxp3発現細胞の誘導の程度を、蛍光標示式細胞分取器(FACS)を利用して測定した。
【0097】
CIA動物をビティス・ビニフェラの種抽出物だけで処理した場合に比べて、CIA動物をCII及びビティス・ビニフェラの種抽出物で処理した場合、制御性T細胞の誘導がさらに増強された。また、IL−1Ra−/−動物において、ビティス・ビニフェラの種抽出物で試験管内で刺激した場合、Foxp3+制御性CD4 T細胞の誘導が確認された(図8及び図9)。
【0098】
結果として、CII及びビティス・ビニフェラの種抽出物で処理した場合、CIIだけで処理した場合に比べて、制御性CD4 T細胞の誘導が増強され、これによりCII特異的な制御性細胞が生成された。従って、関節リウマチに関連した慢性炎症性T細胞の過剰増殖が抑制され、炎症性サイトカインと抗炎症性サイトカインとが均衡をなすことによって、関節リウマチの進行が抑制され、関節リウマチが治療されうる。
【0099】
試験例2.経口投与時の関節炎に対する治療効能の評価
1.動物モデルの準備及びビティス・ビニフェラの種抽出物の投与
コラーゲン誘導関節炎動物モデルを準備し、実施例2で調製したビティス・ビニフェラの種抽出物を、次の通り投与した。
【0100】
6〜7週齢のDBA−1雄性マウスを使用した。2型コラーゲン(CII)を4mg/mlの濃度になるように0.1N酢酸溶液に溶解した後、透析緩衝液(dialysis buffer:50mM Tris、0.2N NaCl)で透析した。これを、結核菌(M.tuberculosis)を含有するフロイント完全アジュバント(Complete Freund's adjuvant)(CFA、Chondrex)と同量混合し、免疫原100μl(すなわち、100μl/100μg)をマウスの尻尾の付け根に皮下注射した(hypodermically injected)(一次注射)。
【0101】
一次注射から1週間後、300mg/kgの用量でビティス・ビニフェラの種抽出物(生理食塩水に溶解したもの)をマウスに経口投与した。これとは別に、200μlの生理食塩水、3mg/kg用量のセレコクシブ(10%DMSOに溶解したもの)、または10%DMSOをマウスに腹腔内投与した。経口投与及び腹腔内投与から1週間後(すなわち、一次注射から2週間後)、CIIを同量のフロイント不完全アジュバント(IFA、Chondrex)と混合し、この混合液100μl(すなわち100μl/100μg)を一方の後足に注射した(二次注射)。二次注射後、3日間隔で、全四回300mg/kg用量のビティス・ビニフェラの種抽出物、生理食塩水、3mg/kg用量のセレコクシブ、または10%DMSOを腹腔内投与した。
【0102】
各群5匹のマウスを使用し、評価は8週間行った。関節炎指数が有意に変化した時点で、それぞれのマウスを屠殺し、血液、細胞、関節組織の関節炎の活動度を測定し、様々な試験管内試験を行った。
【0103】
2.CIA動物における関節リウマチに対するビティス・ビニフェラの種抽出物の治療効果の評価
試験例1の(2−1)と同じ方法で平均関節炎指数を測定し、その結果を図10に示した。ビティス・ビニフェラの種抽出物またはセレコクシブを投与した動物の関節炎指数が低くなることが観察された。一方、生理食塩水または10%DMSOを投与した動物では、関節炎の正常な発生が観察された。従って、ビティス・ビニフェラの種抽出物処理群と、ビティス・ビニフェラの種抽出物非処理群とでは、関節炎の臨床症状が異なった(図10)。
【0104】
試験例1の(2−2)と同じ方法で、関節切片をヘマトキシリンとエオジンで染色し、その結果を図11に示した。組織学的検査の結果、生理食塩水または10%DMSOを投与した動物の関節で、多くの免疫細胞が浸潤し、パンヌス形成、軟骨破壊及び骨侵食などが観察された。一方、ビティス・ビニフェラの種抽出物またはセレコクシブを投与したマウスの関節や軟骨の破壊の程度は、正常マウスとほぼ同じであった(図11)。
【0105】
試験例1の(2−3)と同じ方法で血清学的検査を行い、その結果を図12及び図13に示した。各試験群の血清を1:8,000の割合で希釈し、総IgG抗体の亜型を測定した。生理食塩水を投与した動物と比較すると、ビティス・ビニフェラの種抽出物を投与した動物では、Th2型IgG1は変化しなかったが(図12)、Th1型のCII特異的なIgG2aは減少した(図13)。
【0106】
3.ビティス・ビニフェラの種抽出物によるサイトカイン調節の評価
試験例1の3と同じ方法で、IL−17、TNF−α、及びIL−1βの量を測定した。その結果、生理食塩水投与群と比較すると、ビティス・ビニフェラの種抽出物投与群では、IL−17、TNF−α2、及びIL−1βの量が有意に減少した(図14ないし図16)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビティス・ビニフェラ(Vitis vinifera)の種抽出物の調製方法、及び有効成分としてビティス・ビニフェラの種抽出物を含む関節リウマチの予防または治療用の医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ビティス(Vitis)属は、クロウメモドキ目(Rhamnales)ブドウ科(Vitaceae)に属する蔓性植物であり、赤道付近や緯度50゜以上の地域を除外した地球上全域で自生あるいは栽培されている。11属700種がブドウ科に属する。ビティス・ビニフェラ、ビティス・ラブルスカ(Vitis labrusca)、ビティス・リパリア(Vitis riparia)、ビティス・ルペストリス(Vitis rupestris)、ビティス・ベルラディエリ(Vitis berladieri)、ヤマブドウ(Vitis coignetiae)、ビスティス・アムレンシス(Vitis amurensis)などが果実採取のために栽培されている。
【0003】
ビティス・ビニフェラの種から得られる抽出物は、(−)エピカテキン、プロアントシアニジンB1やB2、(+)カテキン、及びそれらの重合誘導体の混合物を含み、この重合誘導体は、プロシアニドールオリゴマーまたはフラバノールオリゴマーとして知られている(特許文献1及び特許文献2)。この抽出物は、循環系疾患の治療に有用であることが知られている。
【0004】
特許文献3は、ビティス・ビニフェラ、望ましくは、ビティス・ビニフェラの葉から得られた抽出物が、NOシンターゼ(Nitric Oxide-synthase)を抑制することから、細胞の分化及び/または増殖、表皮増殖及び/または過剰増殖性疾患、細胞の退化及び破壊、免疫及び/または炎症の亢進のようなNOシンターゼと関連した様々な疾患を抑制するのに使われうることを開示している。
【0005】
一方、特許文献4は、サリゲニン(saligenin)またはサリックス・ルブラ(Salix rubra)抽出物;ボスウェラ酸(boswellic acid)またはボスウェリア・セラタ(Boswellia serrata)抽出物;ビティス・ビニフェラまたはカメリア・シネンシス(Camellia sinensis)から得られたプロシアニジン(望ましくは、リン脂質との複合体)、レイン(rhein)またはレインの脂溶性誘導体;N−アセチル−グルコサミン;及びグルクロン酸またはグルクロノラクトンを含む関節炎治療用製剤を開示している。特許文献4によれば、プロシアニジンは、サリックス(Salix)及びボスウェリア(Boswellia)の抽出物に存在するシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2:cyclooxygenase−2)阻害成分と相乗的に作用する。しかし、いかなる成分が、具体的に関節炎治療のための活性成分として作用しているかは開示していない。プロシアニジンは、特許文献1(及び特許文献2)、または特許文献5に開示されている抽出方法により得られる。
【0006】
特許文献6は、ビティス・ビニフェラ抽出物のリン脂質複合体を含有する化粧料組成物を開示しており、前記抽出物はまた、特許文献2(すなわち、特許文献1)に記載の方法によって得られる。
【0007】
特許文献1(及び特許文献2)によれば、オリゴマーを抽出すると同時に、不純物を沈殿(すなわち、部分的な沈殿)させて除去するために、体積1の水に対し、体積3ないし4のアセトンを含有したアセトン−水混合溶媒が、一次抽出溶媒として使われる。すなわち、ビティス・ビニフェラ(例えば、種)を、体積1の水に対して体積3ないし4のアセトンを含有したアセトン−水混合溶媒で処理し、蒸留によってアセトンを除去する。その後、沈殿した不純物を濾過し、水性濾液を、酢酸エチルのような、水と混和しない有機溶媒で処理する。その後、有機溶媒を除去し、残渣を除去する。残存する不純物は、塩化ナトリウムを加えて沈殿させることによって除去し、水性濾液を、酢酸エチル及びクロロホルムで処理する。特許文献1によれば、過剰量の水を使うと、部分的な沈殿が発生しないので、過剰量の水の使用は、大量生産に効果的に適用することができない。
【0008】
特許文献1に開示されている抽出は、一次抽出溶媒として、過剰量のアセトンを含む混合溶媒を使用し、アセトンの沸点(約57℃)の温度で行わねばならず、また過剰量のアセトンは、蒸留によって除去されねばならない。従って、加熱条件及び長い蒸留時間によって、抽出コストが増加し、さらに、過剰量のアセトンの使用による環境汚染が発生しうる。また、最終的に得られる抽出物に、アセトンが残留しうる。さらに、塩化ナトリウムを加える前に、酢酸エチルのような水と混和しない有機溶媒を使用した処理及び酢酸エチルの除去が必要であるために、抽出工程が長くなりうる。
【0009】
特許文献5は、3,000ないし600のカットオフ値のメンブレンでの限外濾過を使用し、エーテル、エステル、または酢酸エチルと芳香族炭化水素との混合溶媒を使用した選択的抽出方法を開示している。しかし、特許文献1に開示されている方法に比べて、さらに多くの抽出工程が必要であり、また限外濾過装置のような追加の装置を使用する必要があるので、抽出コストが高い。
【0010】
一方、特許文献7は、ニレ樹皮(Ulmi cortex)から、カラム・クロマトグラフィを含む多工程の抽出工程により得られたプロシアニジンオリゴマー(カテキン−4−フロログルシノール)が、マトリックス・メタロプロテアーゼ(MMP)の活性を抑制することから、ガン転移、歯周疾患、関節リウマチ、炎症、副甲状腺亢進症、糖尿病、角膜潰瘍、骨粗鬆症、胃潰瘍、外傷、シワ、にきび、エイズ、火傷、動脈硬化、骨折のような疾患を予防及び治療するのに効果的に使われうることを開示している。しかし、この先行技術は、ビティス・ビニフェラの抽出物を得る方法を開示しているわけではない。また、特許文献7は、プロシアニジンオリゴマーが、ニレ樹皮、ブドウ種、大黄(rhubarb)、ツルドクダミ(Pleuropterus multiflorus)、クスノキ(camphor trees)、桂皮(cinnamon)、コノテガシワ(Thuja orientalis)、ツバキ(camellia)、キビ(millet)、ソバ(buckwheet)、オーク(oak)などに豊富であると開示しているだけであり、ブドウの種抽出物、特にビティス・ビニフェラの抽出物が関節リウマチに関連していることは開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】英国特許公開第1541469号公報
【特許文献2】仏国特許公開第2092743号公報
【特許文献3】米国特許公開第2003/0165589号公報
【特許文献4】米国特許公開第2006/0280811号公報
【特許文献5】米国特許第5,484,594号明細書(欧州特許公開第348,781号公報)
【特許文献6】米国特許第4,963,527号明細書
【特許文献7】大韓民国特許第10−0509119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らは、ビティス・ビニフェラの抽出物を簡単な工程を通じて調製するための改善された方法を開発しようと研究を行った。その結果、本発明者らは、一次抽出溶媒として、比較的少量のアセトンを含有する水−アセトン混合溶媒を使用してビティス・ビニフェラの種を抽出し、蒸留してアセトンを除去した後、得られた水層を塩化ナトリウムで直接処理することによって、室温(約25℃)で抽出できること、また簡単に蒸留できることを発見した。また、水と混和しない有機溶媒を使用した抽出工程を行う必要がないために、抽出工程を簡易化できることを発見した。
【0013】
また、本発明者らは、第1抽出物及び第2抽出物を別々に調製し、それらを混合することを含む、本発明の抽出物の改善された調製方法を発見した。すなわち、前記抽出物は、アセトン−水混合溶媒を使用して抽出を行った後、酢酸エチルを使用して抽出を行うことによって第1抽出物を調製し、抽出溶媒として水だけを使用して抽出を行い、次いでエタノールを使用して抽出を行うことによって第2抽出物を調製し、第1抽出物及び第2抽出物を混合することによって調製することができる。この方法によって、アセトンの使用量を減らすことができ、塩化ナトリウム飽和やクロロホルム抽出が不要であるので、抽出工程が簡単になり、また有機溶媒の使用による環境汚染を最小限に抑えられる。特に、抽出物の収率を約10倍に増加させることができる。
【0014】
本発明者らは、ビティス・ビニフェラの種抽出物に係わる様々な薬理効果についての研究を行い、ビティス・ビニフェラの種抽出物が、関節リウマチの予防及び治療に優れた効果を有するということを明らかにした。これは、ビティス・ビニフェラ抽出物が、関節リウマチに関連しうると報告されたことがないために、非常に驚くべきことである。
【0015】
従って、本発明は、ビティス・ビニフェラの種抽出物の改善された調製方法を提供する。
【0016】
本発明はまた、有効成分としてビティス・ビニフェラの種抽出物を含む関節リウマチの予防または治療用の医薬組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様によって、(a)粉砕したビティス・ビニフェラの種を、1:1〜2の体積比のアセトンと水との混合溶媒を用いて室温で抽出した後、濾過する工程と、(b)工程(a)で得られた濾液を蒸留してアセトンを除去し、塩化ナトリウムで飽和させた後で濾過する工程と、(c)工程(b)で得られた濾液を酢酸エチルで抽出した後で濃縮する工程と、(d)工程(c)で得られた濃縮液にクロロホルムを加えた後、濾過して沈殿物を得る工程とを含むビティス・ビニフェラの種抽出物の調製方法が提供される。
【0018】
工程(a)の混合溶媒中のアセトンと水との体積比は、1:1.5とすればよい。工程(a)及び工程(c)の抽出は、2,3回繰り返してもよい。工程(b)の蒸留は、50℃以下の減圧下で行えばよく、工程(b)の濾過は、塩化ナトリウムによる飽和後、2〜3時間静置した後、行えばよい。工程(c)の濃縮は、抽出液総体積の0.4ないし0.7倍の体積になるように行えばよい。
【0019】
本発明の他の様態によって、(A)(i)粉砕したビティス・ビニフェラの種を、3〜5:1の体積比のアセトンと水との混合溶媒で抽出した後、濾過する工程;(ii)工程(i)で得られた濾液を濃縮してアセトンを除去した後で濾過する工程;(iii)工程(ii)で得られた濾液を酢酸エチルで抽出する工程;及び(iv)工程(iii)で得られた抽出液を乾燥する工程によって、第1抽出物を調製する工程と、(B)(p)粉砕したビティス・ビニフェラの種を水で抽出した後で濾過する工程;(q)工程(p)で得られた濾液をエタノールで抽出した後で濾過する工程;及び(r)工程(q)で得られた濾液を乾燥する工程によって、第2抽出物を調製する工程と、(C)第1抽出物及び第2抽出物を混合する工程とを含むビティス・ビニフェラの種抽出物の調製方法が提供される。
【0020】
工程(i)の混合溶媒中のアセトンと水との体積比は、4:1とすればよい。工程(iii)または(q)の抽出は、2,3回繰り返してもよい。工程(iii)は、抽出液を脱水することをさらに含むことができる。工程(iv)の乾燥は、工程(iii)で得られた抽出液を濃縮して酢酸エチルを除去し、濃縮物を水に溶解した後、噴霧乾燥することによって行えばよい。工程(r)の乾燥は、工程(q)で得られた濾液を噴霧乾燥することによって、または工程(q)で得られた濾液を濃縮した後、濃縮液を噴霧乾燥することによって行えばよい。第1抽出物及び第2抽出物の混合比は、1:0.5〜1.5の重量比とすればよい。
【0021】
上記の調製方法で得られるビティス・ビニフェラの種抽出物は、80〜130%のプロシアニドール値(PCV:Procyanidolic value)、30%以下の(+)カテキン及び(−)エピカテキン、及び95〜105%のプロアントシアニジンを有することが望ましい。
【0022】
本発明のさらに他の様態によって、有効成分としてビティス・ビニフェラの種抽出物及び薬学的に許容可能な担体を含む関節リウマチの予防または治療用の医薬組成物が提供される。望ましくは、ビティス・ビニフェラの種抽出物は上述した調製方法によって調製される。さらに望ましくは、ビティス・ビニフェラの種抽出物は、80〜130%のプロシアニドール値(PCV)、30%以下の(+)カテキン及び(−)エピカテキン、及び95〜105%のプロアントシアニジンを有する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によって、一次抽出溶媒として比較的少量のアセトンを含有する水−アセトン混合溶媒を使用して抽出が行われる。従って、蒸留によりアセトンが簡単に除去され、残留溶媒が最小限に抑えられる。また、室温(約25℃)で抽出できるため、加熱工程が不要であり、また塩化ナトリウムを加える前に、水と混和しない有機溶媒を使用した抽出が不要である。従って、本発明によるビティス・ビニフェラの種抽出物の調製方法は、簡単かつコスト効率的であるので、産業上の大量生産に好適に用いられる。
【0024】
また、第1抽出物及び第2抽出物を別々に調製し、それらを混合することによって、ビティス・ビニフェラの種抽出物を調製する方法によれば、アセトンの使用量を減少させることができ、塩化ナトリウム飽和やクロロホルム抽出が不要であるので、抽出工程が簡単になり、また有機溶媒の使用による環境汚染を最小限に抑えられる。特に、抽出物の収率を約10倍に増加させることができる。
【0025】
また、上記の抽出方法によって得られたビティス・ビニフェラの種抽出物は、天然抽出物として優れた安全性を有するとともに、例えば、コラーゲン誘導関節炎(CIA)動物モデルで、関節リウマチの予防または治療に優れた効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】コラーゲン誘導関節炎(CIA)動物、ビティス・ビニフェラの種抽出物(GSPE)を100mg/kgの用量で5回反復的に腹腔内投与したCIA動物、及び生理食塩水を5回反復的に腹腔内投与したCIA動物に対する、10週間の観察期間中の関節炎指数を示したグラフである。
【図2】屠殺前の、CIA動物、ビティス・ビニフェラの種抽出物を投与したCIA動物、及び正常動物の関節部位を示す写真である。
【図3】屠殺後の、CIA動物、50mg/kg及び10mg/kgのそれぞれの用量でビティス・ビニフェラの種抽出物を投与したCIA動物、及び正常動物の関節や軟骨組織の破壊の程度を示す組織染色像である。
【図4】100mg/kgの用量でビティス・ビニフェラの種抽出物を投与したCIA動物、生理食塩水を投与したCIA動物、及び正常動物の、血清中の2型コラーゲン特異的抗体(抗CII抗体IgG1及び抗CII抗体IgG2a)量を示すグラフである。
【図5】100mg/kgの用量でビティス・ビニフェラの種抽出物を投与したCIA動物、または生理食塩水を投与したCIA動物から得られた胸腺CD4+ T細胞と脾臓のCD11c+樹状細胞とを、10:1の割合で3日間共培養した後、酵素免疫測定法(ELISA)によって測定した培養上清中のIL−17及びTNF−αの量を示すグラフである。
【図6】図5に記載の方法で得られた細胞を、10μg/mlのビティス・ビニフェラの種抽出物を含む培地、20μg/mlの該抽出物を含む培地、または該抽出物を含まない培地を用いて、3日間、抗CD3抗体刺激下で共培養した後、ELISAによって測定した培養上清中のIL−17及びIL−4の量を示すグラフである。
【図7】50mg/kg及び10mg/kgのそれぞれの用量でビティス・ビニフェラの種抽出物を投与したCIA動物、または生理食塩水を投与したCIA動物から得られた流入領域リンパ節(dLN:draining lymph nodes)を、抗CD3抗体,CIIまたはリポポリサッカライド(LPS)の刺激下、10μg/mlのビティス・ビニフェラの種抽出物を含む培地、または該抽出物を含まない培地中で3日間培養した後、リアルタイムPCRで測定したIL−17mRNAの発現の程度を示すグラフである。
【図8】自己免疫関節炎動物モデルであるIL−1Ra−/−から得られた胸腺CD4+ T細胞と脾臓のCD11c+樹状細胞とを、10:1の割合で、10μg/mlのビティス・ビニフェラの種抽出物を含む培地、または該抽出物を含まない培地を用いて、抗CD3抗体、CPGまたはCII刺激下で6日間共培養した後、蛍光標示式細胞分取器(FACS)を使用して測定した結果を示すグラフである。
【図9】CIA動物から得られた胸腺CD4+ T細胞と脾臓のCD11c+樹状細胞とを、10:1の割合で、10μg/mlのビティス・ビニフェラの種抽出物を含む培地、または該抽出物を含まない培地を用いて、抗CD3抗体、CPGまたはCII刺激下で6日間共培養した後、蛍光標示式細胞分取器(FACS)を使用して測定した結果を示すグラフである。
【図10】生理食塩水、セレコクシブ、もしくは10%DMSOを腹腔内投与したCIA動物、またはビティス・ビニフェラの種抽出物を経口投与したCIA動物の関節炎指数を示したグラフである。
【図11】生理食塩水、セレコクシブ、もしくは10%DMSOを腹腔内投与したCIA動物、またはビティス・ビニフェラの種抽出物を経口投与したCIA動物の関節切片のヘマトキシリン・エオジン染色像である。
【図12】生理食塩水を腹腔内投与したCIA動物、またはビティス・ビニフェラの種抽出物を経口投与したCIA動物の総IgG抗体の亜型を示すグラフである。
【図13】生理食塩水を腹腔内投与したCIA動物、またはビティス・ビニフェラの種抽出物を経口投与したCIA動物の総IgG抗体の亜型を示すグラフである。
【図14】生理食塩水、セレコクシブ、もしくは10%DMSOを腹腔内投与したCIA動物、またはビティス・ビニフェラの種抽出物を経口投与したCIA動物におけるIL−17の量を示すグラフである。
【図15】生理食塩水、セレコクシブ、もしくは10%DMSOを腹腔内投与したCIA動物、またはビティス・ビニフェラの種抽出物を経口投与したCIA動物におけるTNF−αの量を示すグラフである。
【図16】生理食塩水、セレコクシブ、もしくは10%DMSOを腹腔内投与したCIA動物、またはビティス・ビニフェラの種抽出物を経口投与したCIA動物におけるIL−1βの量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、(a)粉砕したビティス・ビニフェラの種を、1:1〜2の体積比のアセトンと水との混合溶媒を用いて室温で抽出した後、濾過する工程と、(b)工程(a)で得られた濾液を蒸留してアセトンを除去し、塩化ナトリウムで飽和させた後で濾過する工程と、(c)工程(b)で得られた濾液を酢酸エチルで抽出した後で濃縮する工程と、(d)工程(c)で得られた濃縮液にクロロホルムを加えた後、濾過して沈殿物を得る工程とを含むビティス・ビニフェラの種抽出物の調製方法を含む。
【0028】
粉砕したビティス・ビニフェラ(Vitis vinifera)の種は、ビティス・ビニフェラを圧搾して皮、種、枝を得て、それらを水で洗浄し、オーブンを使用して乾燥し、種を単離した後、その種を通常の方法で粉砕することによって得られる。
【0029】
本発明の調製方法において、従来の抽出(例えば、特許文献1に開示されている)で使われるものに比べてアセトン含有量が低いアセトン−水混合溶媒が、一次抽出溶媒として使われ、この一次抽出工程は、加熱せずに室温(約25℃)で行われる。本明細書において、アセトン及び水の混合溶媒におけるアセトンと水との体積比は、1:1〜2、望ましくは約1:1.5とすればよい。一次抽出は、一回のみ行ってもよく、または数回、望ましくは2,3回繰り返してもよい。工程(a)の濾過は、通常の方法で行われ、次の工程のために濾液を回収する。
【0030】
本発明の調製方法は、工程(a)で得られた濾液を蒸留してアセトンを除去し、塩化ナトリウムで飽和させた後、濾過する工程[工程(b)]を含む。蒸留の間、比較的低い沸点を有するアセトンが除去され、アセトンに溶解していた不純物が沈殿する。蒸留は、通常の方法で、例えば減圧下で行えばよい。蒸留は、約50℃以下の減圧下で行えばよい。蒸留により得られた抽出液は、有機溶媒を使用した抽出に用いられることなく、塩化ナトリウムで飽和した後で濾過される。この抽出液(すなわち、アセトンを留去した抽出液)を塩化ナトリウムで飽和させると、タンニンのような不純物が沈殿し、これは濾過により除去される。塩化ナトリウム飽和による不純物の沈殿及び濾過において、濾過は、塩化ナトリウムによる飽和後、2,3時間静置した後に行えばよい。濾過は、通常の方法で行われ、次の工程のために濾液を回収する。
【0031】
本発明の調製方法は、工程(b)で得られた濾液を酢酸エチルで抽出した後、濃縮する工程[工程(c)]を含む。酢酸エチルを利用した抽出(二次抽出)は、一回のみ行ってもよく、または数回、望ましくは2,3回繰り返してもよい。濃縮は、得られた抽出液総体積の0.4ないし0.7倍の体積になるように行えばよい。
【0032】
本発明の調製方法は、工程(c)で得られた濃縮液にクロロホルムを加えた後、濾過して沈殿物を得る工程[工程(d)]を含む。すなわち、クロロホルムを濃縮液に加えれば、クロロホルムに溶解しないオリゴマーを含む有効成分が沈殿する。ビティス・ビニフェラの種抽出物は、この沈殿物を濾過することによって簡単に単離することができる。濾過によって得られた沈殿物を通常の方法で乾燥することによって、乾燥粉末が得られる。乾燥は、減圧下で、例えば50℃以下の減圧下で行えばよい。
【0033】
また、本発明は、(A)(i)粉砕したビティス・ビニフェラの種を、3〜5:1の体積比のアセトンと水との混合溶媒で抽出した後、濾過する工程;(ii)工程(i)で得られた濾液を濃縮してアセトンを除去した後で濾過する工程;(iii)工程(ii)で得られた濾液を酢酸エチルで抽出する工程;及び(iv)工程(iii)で得られた抽出液を乾燥する工程によって、第1抽出物を調製する工程と、(B)(p)粉砕したビティス・ビニフェラの種を水で抽出した後で濾過する工程;(q)工程(p)で得られた濾液をエタノールで抽出した後で濾過する工程;及び(r)工程(q)で得られた濾液を乾燥する工程によって、第2抽出物を調製する工程と、(C)第1抽出物及び第2抽出物を混合する工程とを含むビティス・ビニフェラの種抽出物の調製方法を含む。
【0034】
粉砕したビティス・ビニフェラの種は、上記と同様にして調製することができる。ビティス・ビニフェラの種抽出物は、第1抽出物及び第2抽出物を別々に調製し、それらを混合することによって調製することができる。従って、本発明の調製方法によって、アセトンの量を減らすことができる。また、塩化ナトリウム飽和やクロロホルム抽出が不要であるので、抽出が簡単となり、有機溶媒によって発生しうる環境汚染が最小限に抑えられる。また、抽出物の収率を約10倍に増加させることができる。
【0035】
第1抽出物の調製において、工程(i)は、粉砕したビティス・ビニフェラの種を3〜5:1、さらに望ましくは、4:1の体積比のアセトンと水との混合溶媒で抽出した後、濾過することによって行われる。抽出は、一回のみ行ってもよく、または数回、望ましくは2,3回繰り返してもよい。工程(i)の濾過は、通常の方法で行われ、次の工程のために濾液を回収する。
【0036】
第1抽出物の調製において、工程(ii)は、工程(i)で得られた濾液を濃縮してアセトンを除去した後、濾過することによって行われる。濃縮中に、比較的低い沸点を有するアセトンが除去され、従って、アセトンに溶解していた不純物が沈殿する。濃縮は、通常の減圧濃縮(または減圧蒸留)、例えば、減圧条件下での蒸留によって行えばよい。沈殿物は、濾過によって除去され、得られた濾液を回収する。
【0037】
第1抽出物の調製において、工程(iii)は、工程(ii)で得られた濾液を酢酸エチルで抽出することによって行われる。酢酸エチルを利用した抽出(二次抽出)は、一回のみ行ってもよく、または数回、望ましくは2,3回繰り返してもよい。また、工程(iii)は、酢酸エチルを利用した抽出後、例えば、無水硫酸ナトリウムを使用した脱水工程をさらに含むことができる。
【0038】
第1抽出物の調製において、工程(iv)は、工程(iii)で得られた抽出液を乾燥することによって行われる。乾燥は、通常の方法、例えば50℃以下の減圧下で行えばよい。さらに望ましくは、乾燥は、工程(iii)で得られた抽出液を濃縮して酢酸エチルを除去し、濃縮物を水に溶解した後、噴霧乾燥することによって行われる。
【0039】
第2抽出物の調製において、工程(p)は、粉砕したビティス・ビニフェラの種を水で抽出した後、濾過することによって行われ、工程(q)は、工程(p)で得られた濾液をエタノールで抽出した後、濾過することによって行われる。工程(q)の抽出は、一回のみ行ってもよく、または数回、望ましくは2,3回繰り返してもよい。
【0040】
第2抽出物の調製において、工程(r)は、工程(q)で得られた濾液を乾燥することによって行われる。工程(r)の乾燥は、工程(q)で得られた濾液を噴霧乾燥することによって、あるいは工程(q)で得られた濾液を濃縮した後、濃縮液を噴霧乾燥することによって行えばよい。濃縮は、工程(q)で得られた濾液総体積の0.4ないし0.7倍の体積になるように行えばよいが、これに限定されるものではない。
【0041】
第1抽出物及び第2抽出物の混合は、単純にこれらの抽出物を混合することによって実施できる。第1抽出物及び第2抽出物の混合比は、1:0.5〜1.5の重量比とすればよい。
【0042】
本発明の調製方法によって得られたビティス・ビニフェラの種抽出物は、80〜130%のプロシアニドール値(PCV:Procyanidolic value);30%以下の(+)カテキン及び(−)エピカテキン;及び95〜105%のプロアントシアニジンを有する。
【0043】
本明細書で、「プロシアニドール値(PCV)」は、下記の通り計算される。
【0044】
[1]標準液の調製
ビティス・ビニフェラの種抽出物の標準品100mgを正確に計り取り、イソプロパノールと混合して50mlの溶液を調製する。この溶液10mlを3M塩酸10mlと混合した後、得られた溶液をイソプロパノールと混合し、50mlの標準液を調製する。
【0045】
[2]検液の調製
各検体100mgを用いて、標準液の調製と同じ方法で検液を調製する。
【0046】
[3]測定
各検液または標準液を10mlずつ5本の試験管に入れて栓をする。その後、各試験管を100℃の水浴中で45分間加熱する。加熱後、試験管を冷水中で冷却し、各試験管から得られた溶液2mlをイソプロパノール20mlと混合する。検液及び標準液に対し、イソプロパノールを対照液として使用し、550nmで吸光度を測定し、各5本の平均吸光度を計算する。
【0047】
[4]計算
PCV=105×[A(t)×Mt×(100−Et)]/[A(s)×M×(100−E)]
A(t):検液の平均吸光度
A(s):標準液の平均吸光度
Mt:標準品の量(mg)
M:検体の量(mg)
Et:標準品の水分含有量(%)
E:検体の水分含有量(%)
【0048】
(+)カテキン及び(−)エピカテキンは、次の通り定量される。
【0049】
[1]標準液の調製
(+)カテキン標準品または(−)エピカテキン標準品を50mg、アセトニトリルと希釈リン酸との混合溶媒(5:95)に溶解し、それぞれ100mlの標準液を調製する。
【0050】
[2]検液調製
各検体50mgをアセトニトリルと希釈リン酸との混合溶媒(5:95)に溶解し、それぞれ10mlの検液を調製する。
【0051】
[3]分析条件
−カラム:オクタデシルシリル化されたシリカゲルで充填されたカラム(0.46×25cm、5μm)
−移動相
【表1】
【0052】
[4]計算
エピカテキンとしてのカテキンの含有量(%)
=[A1×Me×100×100]/[Ae×M1×(100−E)×10]
エピカテキンの含有量(%)
=[A2×Me×100×100]/[Ae×M1×(100−E)×10]
A1:検液中のカテキンのピーク面積
A2:検液中のエピカテキンのピーク面積
Ae:標準液中のエピカテキンのピーク面積
Me:標準液中のエピカテキンの量(mg)
M1:検液中の抽出物の量(mg)
E:抽出物中の水分含有量(%)
【0053】
また、「プロアントシアニジン含有量」は、下記の方法により計算する。
【0054】
[1]内部標準液の調製
2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)30.0mgを100mlフラスコに加え、移動相を標線まで加えて内部標準液を調製した。
【0055】
[2]検液1の調製
検体10mgを10mlフラスコに加えた後、5mlの内部標準液に溶解し、内部標準液を標線まで加えて検液1を調製した。
【0056】
[3]検液2の調製
検体10mgを10mlフラスコに加えた後、5mlの内部標準液に溶解し、内部標準液を標線まで加えて検液2を調製した。
【0057】
[4]標準液の検量線作成
−標準液1:プロアントシアニジン標準品8mgを10mlフラスコに入れて5mlの内部標準液に溶解し、内部標準液を標線まで加えて標準液1を調製した。
−標準液2:プロアントシアニジン標準品10mgを10mlフラスコに入れて5mlの内部標準液に溶解し、内部標準液を標線まで加えて標準液2を調製した。
−標準液3:プロアントシアニジン標準品12mgを10mlフラスコに入れて5mlの内部標準液に溶解し、内部標準液を標線まで加えて標準液3を調製した。
【0058】
[5]分析条件
−カラム:PL Gel Column(7.6×300mm、5μm)、またはこれと類似のカラム
−検出器:UV検出器(波長:280nm)
−移動相:テトラヒドロフランと臭化リチウム溶液との混合溶媒(95:5)
*臭化リチウム溶液:臭化リチウム1.04gを1,000mlフラスコに加え、水を標線まで加える。
−流速:1.0ml/分
−注入量:10μl
−測定時間:15分
【0059】
[6]方法
標準液1,2,3及び検液1,2を下記の液体クロマトグラフィを使用して二回ずつ分析する。標準液の濃度、主ピークとISピークとの比(Aproanthocyanidin/ABHT)を用いて標準液の検量線を作成し、次の通り計算する。
【0060】
[7]計算式
−Ti%={[(Aproanthocyanidin/ABHT)test−a]/b}×(1/Ctest)×100
Aproanthocyanidin=検液中のプロアントシアニジンのピーク面積
ABHT=検液中のBHTのピーク面積
a=標準液検量線のY切片
b=標準液検量線の傾度
Ctest=検液の濃度(mg/ml)
−プロアントシアニジン含有量(%)=Ti%×[(100−KFstd)/(100−KFtest)]
KFstd=標準物質の水分含有量(%)
KFtest=検体の水分含有量(%)
【0061】
本発明は、有効成分としてビティス・ビニフェラの種抽出物及び薬学的に許容可能な担体を含む関節リウマチの予防または治療用の医薬組成物を含む。
【0062】
前記ビティス・ビニフェラの種抽出物は、上述した調製方法によって調製することができる。さらに望ましくは、前記ビティス・ビニフェラの種抽出物は、80〜130%のプロシアニドール値(PCV)、30%以下の(+)カテキン及び(−)エピカテキン、及び95〜105%のプロアントシアニジンを有する。
【0063】
下記試験例に記述される通り、例えば、コラーゲン誘導関節炎(CIA)動物において、本発明の調製方法によって得られたビティス・ビニフェラの種抽出物は、関節リウマチの予防及び治療に対して優れた効果を示す。
【0064】
すなわち、ビティス・ビニフェラの種抽出物を100mg/kgの用量でCIA動物に腹腔内投与した場合、関節炎指数が有意に低くなった(図1及び図2)。また、慢性炎症性関節炎を有する関節リウマチ動物モデル(IL−Ra−/−)でも、関節炎の緩和が観察された。組織学的分析の結果、ビティス・ビニフェラの種抽出物を100mg/kgの用量で投与した動物の関節の破壊の程度が正常マウスとほぼ同じであり、軟骨の破壊も改善された(図3)。また、血清学的試験の結果、ビティス・ビニフェラの種抽出物を100mg/kgの用量で投与した場合、Th2型抗CII抗体IgG1のレベルは変化しなかったが、Th1型のCII特異的なIgG2aの生成量が減少した(図4)。Th1型のCII特異的なIgG2aの生成量が減少するので、ビティス・ビニフェラの種抽出物投与によって、関節リウマチが効果的に治療される可能性があることが分かる。
【0065】
また、ビティス・ビニフェラの種抽出物を投与した場合、関節リウマチの炎症性サイトカインとして知られているIL−17とTNF−αの量が有意に減少し(図5)、ビティス・ビニフェラの種抽出物で試験管内(in vitro)で処理した場合、炎症性サイトカインであるIL−17は、抗炎症性サイトカインであるIL−4と負の相関関係を示した(図6)。転写レベルでのIL−17のプロファイルについても、同様のパターンが見られた。試験管内で、CIIまたはLPSで刺激した後、ビティス・ビニフェラの種抽出物で処理した場合、CIIまたはLPSによって上昇したIL−17のmRNA発現レベルが低下した(図7)。
【0066】
関節リウマチは、免疫細胞(特に、慢性炎症性T細胞)の過剰な活性と関連するので、CD4 T細胞の調節が治療のターゲットになる可能性がある。CIA動物とIL−1Ra−/−動物をビティス・ビニフェラの種抽出物で処理した場合、Foxp3+制御性CD4 T細胞の誘導が増強された。CIA動物のCD4 T細胞をCII及びビティス・ビニフェラの種抽出物で処理した場合、CIIのみで処理した群に比べて、Foxp3+制御性CD4 T細胞の誘導が増強された(図8及び図9)。これは、ビティス・ビニフェラの種抽出物によってCII特異的な制御性CD4 T細胞が生成されることにより、慢性炎症性T細胞の増殖が効果的に阻害される可能性があることを示唆する。
【0067】
従って、ビティス・ビニフェラの種抽出物は、炎症性サイトカインの生成を抑制し、抗炎症性サイトカインと制御性T細胞を誘導することによって、関節リウマチの予防及び治療に対して優れた活性を示すことが分かる。
【0068】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体を含み、通常の方法によって、例えば散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアゾールなどの経口投与形態;外用剤(external dosage forms);坐剤;または滅菌注射剤に製剤化される。望ましくは本発明の医薬組成物は、錠剤に製剤化される。薬学的に許容可能な担体としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレートまたは鉱物油などが挙げられる。前記医薬組成物はまた、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または添加剤をさらに含むことができる。固形経口用製剤としては、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤またはカプセル剤などが挙げられる。このような固形製剤は、例えば澱粉、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース、及びゼラチンから選択される少なくとも1つの添加剤を含むことができる。また、このような固形製剤は、マグネシウムステアレートまたはタルクのような潤滑剤をさらに含むことができる。液状経口用製剤としては、懸濁剤、液剤、エマルジョン、シロップなどが挙げられる。また、液状経口用製剤は水やリキッドパラフィンなどの希釈剤;湿潤剤;甘味剤;芳香剤;または保存剤を含むことができる。非経口用製剤としては、滅菌水溶液剤、非水溶液剤、懸濁剤、エマルジョン、凍結乾燥製剤、または坐剤などが挙げられる。非水性溶媒または懸濁化剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような天然オイル、エチルオレエートのような注射可能なエステルなどが挙げられる。坐剤の基剤としては、ウィテプソール(witepsol)、マクロゴール、ツウィーン61(Tween 61)、カカオバター、ラウリンまたはグリセロゼラチンなどが挙げられる。
【0069】
本発明の医薬組成物において、前記ビティス・ビニフェラの種抽出物の投与量は、患者の状態や体重、病気の重症度、投与形態、投与経路及び投与期間によって異なるが、当業者によって適切に決定されうる。例えば、前記ビティス・ビニフェラの種抽出物は、1日1ないし100mg/kg、望ましくは5ないし50mg/kg、さらに望ましくは約5ないし10mg/kgの用量で、一日に一回または数回投与すればよい。本発明の医薬組成物はまた、他の関節リウマチ治療剤と組み合わせて投与してもよい。組み合わせて投与する場合、他の治療剤を時間をずらしてまたは同時に投与することができる。組み合わせて投与する場合、それぞれの投与量は、最大治療効果を示す最小量で決定され、当業者によって適切に決定される。
【0070】
本発明の医薬組成物は、ラット、マウス、家畜、またはヒトのような哺乳動物に対して、例えば、経口、直腸内、静脈内、筋肉内、皮下などの多様な経路で投与され、望ましくは、経口で投与される。
【0071】
以下、本発明について実施例により、さらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、説明のためだけに提供されるものであり、よって本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0072】
実施例1.ビティス・ビニフェラの種抽出物の調製
ビティス・ビニフェラを圧搾して(compress)得られたビティス・ビニフェラの皮、種、枝を水で洗浄し、回転オーブンで乾燥し、ビティス・ビニフェラの種を単離した。この種1kgを粉砕し、精製水(300ml)及びアセトン(200ml)の混合溶媒500mlを加え、室温で抽出した。抽出を三回繰り返した後、抽出液を合わせて濾過した。濾液を50℃以下の減圧下で蒸留してアセトンを除去し、塩化ナトリウムで飽和させた。これを室温で3時間静置した後で濾過した。濾液を、酢酸エチル250mlを使用して三回抽出し、無水硫酸ナトリウムで脱水した。抽出液を液量が約125mlになるまで濃縮した。クロロホルム約600mlを濃縮液に加えて沈殿物を形成させた後、濾過した。沈殿物を50℃以下で真空オーブンで乾燥し、褐色のビティス・ビニフェラの種抽出物粉末約3.5gを得た。得られた抽出物を希釈酸性溶液中で加熱して加水分解し、プロシアニドールオリゴマーを定量化することによりPCVを測定した。その結果、PCVは、約105であった。また、上述した方法で測定した結果、プロアントシアニジンの含有量は、103%であった。従って、前記抽出物は、(+)カテキン及び(−)エピカテキンのようなモノマーが少なくとも2個重合したオリゴマーを多量に含有する。
【0073】
実施例2.ビティス・ビニフェラの種抽出物の調製
ビティス・ビニフェラを圧搾して(compress)得られたビティス・ビニフェラの皮、種、枝を水で洗浄し、回転オーブンで乾燥し、ビティス・ビニフェラの種を単離した。ビティス・ビニフェラの種1kgを粉砕した後、アセトン水溶液(アセトン/水=8/2、v/v)500mlを使用して抽出した。抽出を三回繰り返した後、抽出液を合わせて濾過した。濾液を減圧濃縮してアセトンを除去した後、濾過した。濾液を酢酸エチル250mlを使用して三回抽出し、無水硫酸ナトリウムで脱水した。抽出液を減圧濃縮して酢酸エチルを除去し、得られた濃縮物を水500mlに溶解し、この溶液を噴霧乾燥して抽出物粉末(第1抽出物)約20gを得た。
【0074】
ビティス・ビニフェラを圧搾して得られたビティス・ビニフェラの皮、種、枝を水で洗浄し、回転オーブンで乾燥し、ビティス・ビニフェラの種を単離した。ビティス・ビニフェラの種1kgを粉砕し、精製水500mlを使用して抽出した。抽出を三回繰り返した後、抽出液を合わせて濾過した。濾液をエタノール250mlを使用して三回抽出した後、濾過した。濾液を減圧濃縮し、得られた濃縮液を噴霧乾燥し、抽出物粉末(第2抽出物)約15gを得た。
【0075】
第1抽出物及び第2抽出物を混合し、ビティス・ビニフェラの種抽出物約35gを得た。得られた抽出物を希釈酸性溶液中で加熱して加水分解し、プロシアニドールオリゴマーを定量化することによりPCVを測定した。その結果、PCVは、約98であった。また、上述した方法で測定した結果、プロアントシアニジンの含有量は、98.5%であった。従って、前記抽出物は、(+)カテキン及び(−)エピカテキンのようなモノマーが少なくとも2個重合したオリゴマーを多量に含有する。
【0076】
試験例1.腹腔内投与時の関節炎に対する治療効能の評価
1.動物モデルの準備及びビティス・ビニフェラの種抽出物の投与
コラーゲン誘導関節炎(CIA:collagen induced arthritis)動物モデルを準備し、実施例1で調製したビティス・ビニフェラの種抽出物を、次の通り投与した。
【0077】
6〜7週齢のDBA−1雄性マウスを使用した。2型コラーゲン(CII)を4mg/mlの濃度になるように0.1N酢酸溶液に溶解した後、透析緩衝液(dialysis buffer:50mM Tris、0.2N NaCl)で透析した。これを、結核菌(M.tuberculosis)を含有するフロイント完全アジュバント(Complete Freund's adjuvant)(CFA、Chondrex)と同量混合し、免疫原100μl(すなわち、100μl/100μg)をマウスの尻尾の付け根に皮下注射した(hypodermically injected)(一次注射)。
【0078】
一次注射から1週間後、100mg/kgの用量でビティス・ビニフェラの種抽出物(生理食塩水に溶解したもの)200μl、または対照群として生理食塩水200μlをマウスに腹腔内投与した。1週間後(すなわち、一次注射から2週間後)、CIIを同量のフロイント不完全アジュバント(IFA、Chondrex)と混合し、この混合液100μl(すなわち100μl/100μg)を一方の後足に注射した(二次注射)。二次注射後、3日間隔で全4回100mg/kgの用量でビティス・ビニフェラの種抽出物、または対照群として生理食塩水を腹腔内投与した。
【0079】
各群5匹のマウスを使用し、評価は10週間行った。関節炎指数が有意に変化した時点で、それぞれのマウスを屠殺し、血液、細胞、関節組織の関節炎の活動度を測定し、様々な試験管内試験を行った。
【0080】
2.CIA動物における関節リウマチに対するビティス・ビニフェラの種抽出物の治療効果の評価
(2−1)Rosioniecによる平均関節炎指数の評価
試験について知らない観察者三人が、最初の注射以降3週間ないし10週間まで、毎週三回関節における炎症の重症度(seriousness)を評価した。関節炎の評価は、Rosioniec EFによる平均関節炎指数に基づき、二次注射の際にCII/CFAを投与した足を除外した3本の足から得られた平均点数を求め、3人の観察者による平均値をとることによって行った。関節炎の重症度を0ないし4スケールの平均関節炎指数で記録した。
【0081】
関節炎評価のための点数と基準は、次の通りである。
0点:むくみや腫脹がない
1点:足または足首関節に若干の浮腫及び発赤
2点:足首関節から中足骨(metatarsal)にわたる若干の浮腫及び発赤
3点:足首関節から足根骨(tarsal)にわたる中等度の浮腫及び発赤
4点:足首から足全体に浮腫及び発赤
1本の足に対する関節炎指数は最大で4であるから、マウスの1匹当たりの関節炎指数は最大で16である。
【0082】
ビティス・ビニフェラの種抽出物を投与した動物で、関節炎指数が徐々に低くなることが観察された。一方、CIA動物、及び生理食塩水を投与した対照群の動物では、関節炎の正常な発生が観察された。従って、ビティス・ビニフェラの種抽出物処理群と、ビティス・ビニフェラの種抽出物非処理群とでは関節炎の臨床症状が異なった(図1)。
【0083】
関節炎指数を確認するために、試験群の写真を撮影した。図1の関節炎指数と同様に、ビティス・ビニフェラの種抽出物を投与した動物では、腫れた関節が正常マウスの関節と同じレベルまで治癒された(図2)。
【0084】
(2−2)組織学的検査
上記と同じ方法で、ビティス・ビニフェラの種抽出物を50mg/kg及び10mg/kgのそれぞれの用量で、上記で準備したCIA動物に投与した。8週間後にマウスを屠殺した。それぞれのマウスの後足を10%ホルマリンで固定し、石灰分を除去してパラフィンで包埋した。関節切片(5〜7μm)をヘマトキシリンとエオジンで染色した。また、軟骨の破壊の程度を確認するために、トルイジンブルーとサフラニンOで染色し、組織学的検査を実施した。
【0085】
組織学的検査の結果、CIA動物及び生理食塩水を投与した動物の関節で、多くの免疫細胞が浸潤し、パンヌス形成、軟骨破壊及び骨侵食などが観察された。一方、ビティス・ビニフェラの種抽出物を投与したマウスの関節や軟骨の破壊の程度は、正常マウスとほぼ同じであった(図3)。
【0086】
(2−3)血清学的検査(コラーゲン特異的抗体の測定)
血清学的検査により、CII特異的なIgG抗体の亜型を調べるために、酵素免疫測定法(ELISA)を使用した。IgG抗体の亜型のうちIgG1は、マウスにおいて、炎症を抑制する調節因子として機能する。一方、IgG2aは、炎症反応の促進・媒介因子として機能する。DBA−1マウスで関節炎が誘導されるとき、主にTh1反応を起こすIgG2aが特異的に増加することが知られている。
【0087】
各試験群の血清を1:8,000の割合で希釈し、CII特異的な血清IgG抗体の亜型を測定した。その結果、CIA動物と比較すると、ビティス・ビニフェラの種抽出物を投与した動物では、Th2型IgG1は変化しなかったが、Th1型のCII特異的なIgG2aは減少した(図4)。
【0088】
3.ビティス・ビニフェラの種抽出物によるサイトカイン調節の評価
(3−1)IL−17量とTNF−α量の測定
各群の動物を屠殺した後、胸腺のCD4+ T細胞と脾臓のCD11c+樹状細胞とを単離し、10:1の割合で3日間共培養した後、上清中のTh17型のサイトカインであるIL−17及びTh1型のサイトカインであるTNF−αの量を、ELISAを使用して測定した。
【0089】
その結果、CIA動物と比較すると、ビティス・ビニフェラの種抽出物を投与した動物では、二種のサイトカインはいずれも有意に減少した(図5)。
【0090】
(3−2)TCR刺激によるIL−17及びIL−4生成に対するビティス・ビニフェラの種抽出物の効果
各群の動物から得られた胸腺CD4+ T細胞と脾臓のCD11c+樹状細胞とを、10μg/mlのビティス・ビニフェラの種抽出物を含む培地、20μg/mlの該抽出物を含む培地、または該抽出物を含まない培地を用いて、抗CD3抗体刺激下で3日間培養し、上清中のIL−17とIL−4をELISAを利用して測定した。
【0091】
生理食塩水を投与したCIA動物で、TCR刺激によって増加したIL−17の生成量が、試験管内で処理したビティス・ビニフェラの種抽出物の濃度に依存して減少し、抗炎症性サイトカインであるIL−4の生成量は、濃度依存的に増加した。一方、ビティス・ビニフェラの種抽出物を投与した動物における試験管内のIL−17の生成量は、CIA動物よりも大幅に濃度依存的に減少し、また、ビティス・ビニフェラの種抽出物を投与した動物における試験管内のIL−4の生成量は、CIA動物よりも大幅に濃度依存的に増加した(図6)。
【0092】
結果として、ビティス・ビニフェラの種抽出物を投与した動物では、試験管内試験において、抗炎症性サイトカインであるIL−4を生産できる細胞が優勢である一方、Th17細胞は減少した。これは、ビティス・ビニフェラの種抽出物が、炎症性サイトカインと抗炎症性サイトカインの生成量を調節することによって、関節炎を治療するということを意味する。また、IL−4は、制御性T細胞を誘導できるサイトカインである。従って、ビティス・ビニフェラの種抽出物によって、制御性T細胞が誘導される可能性があることが分かる。
【0093】
4.ビティス・ビニフェラの種抽出物による制御性CD4 T細胞の誘導及びTh17細胞の抑制
関節リウマチに対するビティス・ビニフェラの種抽出物の治療メカニズムを究明するために、ビティス・ビニフェラの種抽出物によって誘導または抑制される免疫系を調べた。
【0094】
(4−1)ビティス・ビニフェラの種抽出物によるIL−17のmRNA発現変化
50mg/kg及び10mg/kgのそれぞれの用量でビティス・ビニフェラの種抽出物を、または生理食塩水をCIA動物に投与した。これらの動物を屠殺して得られた流入領域リンパ節(dLN)を、ビティス・ビニフェラの種抽出物10μg/mlを含む培地、または該抽出物を含まない培地を用いて、抗CD3抗体、CIIまたはLPS(lipopolysaccharide)の刺激下で3日間培養した。その後、IL−17のmRNAの発現の程度を、リアルタイムPCR(real-time PCR)で測定した。
【0095】
転写レベルでのIL−17のプロファイルについても、図6と同じパターンが見られた。試験動物をCIIまたはLPSで刺激し、ビティス・ビニフェラの種抽出物で処理した場合、CIIまたはLPSによって増加したIL−17のmRNAが減少した(図7)。
【0096】
(4−2)ビティス・ビニフェラの種抽出物による制御性CD4 T細胞(regulatory CD4 T cells)の誘導
CIA動物または他の関節リウマチ動物であるIL−1Ra−/−動物から得られた胸腺CD4+ T細胞と脾臓のCD11c+樹状細胞とを、10:1の割合で、ビティス・ビニフェラの種抽出物10μg/mlを含む培地、または該抽出物を含まない培地を用いて、抗CD3抗体、CPGまたはCII刺激下で6日間共培養した。その後、Foxp3発現細胞の誘導の程度を、蛍光標示式細胞分取器(FACS)を利用して測定した。
【0097】
CIA動物をビティス・ビニフェラの種抽出物だけで処理した場合に比べて、CIA動物をCII及びビティス・ビニフェラの種抽出物で処理した場合、制御性T細胞の誘導がさらに増強された。また、IL−1Ra−/−動物において、ビティス・ビニフェラの種抽出物で試験管内で刺激した場合、Foxp3+制御性CD4 T細胞の誘導が確認された(図8及び図9)。
【0098】
結果として、CII及びビティス・ビニフェラの種抽出物で処理した場合、CIIだけで処理した場合に比べて、制御性CD4 T細胞の誘導が増強され、これによりCII特異的な制御性細胞が生成された。従って、関節リウマチに関連した慢性炎症性T細胞の過剰増殖が抑制され、炎症性サイトカインと抗炎症性サイトカインとが均衡をなすことによって、関節リウマチの進行が抑制され、関節リウマチが治療されうる。
【0099】
試験例2.経口投与時の関節炎に対する治療効能の評価
1.動物モデルの準備及びビティス・ビニフェラの種抽出物の投与
コラーゲン誘導関節炎動物モデルを準備し、実施例2で調製したビティス・ビニフェラの種抽出物を、次の通り投与した。
【0100】
6〜7週齢のDBA−1雄性マウスを使用した。2型コラーゲン(CII)を4mg/mlの濃度になるように0.1N酢酸溶液に溶解した後、透析緩衝液(dialysis buffer:50mM Tris、0.2N NaCl)で透析した。これを、結核菌(M.tuberculosis)を含有するフロイント完全アジュバント(Complete Freund's adjuvant)(CFA、Chondrex)と同量混合し、免疫原100μl(すなわち、100μl/100μg)をマウスの尻尾の付け根に皮下注射した(hypodermically injected)(一次注射)。
【0101】
一次注射から1週間後、300mg/kgの用量でビティス・ビニフェラの種抽出物(生理食塩水に溶解したもの)をマウスに経口投与した。これとは別に、200μlの生理食塩水、3mg/kg用量のセレコクシブ(10%DMSOに溶解したもの)、または10%DMSOをマウスに腹腔内投与した。経口投与及び腹腔内投与から1週間後(すなわち、一次注射から2週間後)、CIIを同量のフロイント不完全アジュバント(IFA、Chondrex)と混合し、この混合液100μl(すなわち100μl/100μg)を一方の後足に注射した(二次注射)。二次注射後、3日間隔で、全四回300mg/kg用量のビティス・ビニフェラの種抽出物、生理食塩水、3mg/kg用量のセレコクシブ、または10%DMSOを腹腔内投与した。
【0102】
各群5匹のマウスを使用し、評価は8週間行った。関節炎指数が有意に変化した時点で、それぞれのマウスを屠殺し、血液、細胞、関節組織の関節炎の活動度を測定し、様々な試験管内試験を行った。
【0103】
2.CIA動物における関節リウマチに対するビティス・ビニフェラの種抽出物の治療効果の評価
試験例1の(2−1)と同じ方法で平均関節炎指数を測定し、その結果を図10に示した。ビティス・ビニフェラの種抽出物またはセレコクシブを投与した動物の関節炎指数が低くなることが観察された。一方、生理食塩水または10%DMSOを投与した動物では、関節炎の正常な発生が観察された。従って、ビティス・ビニフェラの種抽出物処理群と、ビティス・ビニフェラの種抽出物非処理群とでは、関節炎の臨床症状が異なった(図10)。
【0104】
試験例1の(2−2)と同じ方法で、関節切片をヘマトキシリンとエオジンで染色し、その結果を図11に示した。組織学的検査の結果、生理食塩水または10%DMSOを投与した動物の関節で、多くの免疫細胞が浸潤し、パンヌス形成、軟骨破壊及び骨侵食などが観察された。一方、ビティス・ビニフェラの種抽出物またはセレコクシブを投与したマウスの関節や軟骨の破壊の程度は、正常マウスとほぼ同じであった(図11)。
【0105】
試験例1の(2−3)と同じ方法で血清学的検査を行い、その結果を図12及び図13に示した。各試験群の血清を1:8,000の割合で希釈し、総IgG抗体の亜型を測定した。生理食塩水を投与した動物と比較すると、ビティス・ビニフェラの種抽出物を投与した動物では、Th2型IgG1は変化しなかったが(図12)、Th1型のCII特異的なIgG2aは減少した(図13)。
【0106】
3.ビティス・ビニフェラの種抽出物によるサイトカイン調節の評価
試験例1の3と同じ方法で、IL−17、TNF−α、及びIL−1βの量を測定した。その結果、生理食塩水投与群と比較すると、ビティス・ビニフェラの種抽出物投与群では、IL−17、TNF−α2、及びIL−1βの量が有意に減少した(図14ないし図16)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)粉砕したビティス・ビニフェラの種を、1:1〜2の体積比のアセトンと水との混合溶媒を用いて室温で抽出した後、濾過する工程と、
(b)工程(a)で得られた濾液を蒸留してアセトンを除去し、塩化ナトリウムで飽和させた後で濾過する工程と、
(c)工程(b)で得られた濾液を酢酸エチルで抽出した後で濃縮する工程と、
(d)工程(c)で得られた濃縮液にクロロホルムを加えた後、濾過して沈殿物を得る工程とを含むビティス・ビニフェラの種抽出物の調製方法。
【請求項2】
工程(a)の混合溶媒中のアセトンと水との体積比が、1:1.5であることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
工程(a)及び工程(c)の抽出が、2〜3回繰り返されることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項4】
工程(b)の蒸留が、50℃以下の減圧下で行われることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項5】
工程(b)の濾過が、塩化ナトリウムによる飽和後、2〜3時間静置した後、行われることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項6】
工程(c)の濃縮が、抽出液総体積の0.4ないし0.7倍の体積になるように行われることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項7】
(A)(i)粉砕したビティス・ビニフェラの種を、3〜5:1の体積比のアセトンと水との混合溶媒で抽出した後、濾過する工程;(ii)工程(i)で得られた濾液を濃縮してアセトンを除去した後で濾過する工程;(iii)工程(ii)で得られた濾液を酢酸エチルで抽出する工程;及び(iv)工程(iii)で得られた抽出液を乾燥する工程によって、第1抽出物を調製する工程と、
(B)(p)粉砕したビティス・ビニフェラの種を水で抽出した後で濾過する工程;(q)工程(p)で得られた濾液をエタノールで抽出した後で濾過する工程;及び(r)工程(q)で得られた濾液を乾燥する工程によって、第2抽出物を調製する工程と、
(C)第1抽出物及び第2抽出物を混合する工程とを含むビティス・ビニフェラの種抽出物の調製方法。
【請求項8】
工程(i)の混合溶媒中のアセトンと水との体積比が、4:1であることを特徴とする請求項7に記載の調製方法。
【請求項9】
工程(iii)または(q)の抽出が、2〜3回繰り返されることを特徴とする請求項7に記載の調製方法。
【請求項10】
工程(iii)で抽出液を脱水することをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の調製方法。
【請求項11】
工程(iv)の乾燥が、工程(iii)で得られた抽出液を濃縮して酢酸エチルを除去し、濃縮物を水に溶解した後、噴霧乾燥することによって行われることを特徴とする請求項7に記載の調製方法。
【請求項12】
工程(r)の乾燥が、工程(q)で得られた濾液を噴霧乾燥することによって行われることを特徴とする請求項7に記載の調製方法。
【請求項13】
工程(r)の乾燥が、工程(q)で得られた濾液を濃縮した後、濃縮液を噴霧乾燥することによって行われることを特徴とする請求項7に記載の調製方法。
【請求項14】
第1抽出物及び第2抽出物の混合比が、1:0.5〜1.5の重量比であることを特徴とする請求項7に記載の調製方法。
【請求項15】
得られるビティス・ビニフェラの種抽出物が、80〜130%のプロシアニドール値(PCV)、30%以下の(+)カテキン及び(−)エピカテキン、及び95〜105%のプロアントシアニジンを有することを特徴とする請求項1ないし請求項14のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項16】
有効成分としてビティス・ビニフェラの種抽出物及び薬学的に許容可能な担体を含む関節リウマチの予防または治療用の医薬組成物。
【請求項17】
前記ビティス・ビニフェラの種抽出物が、
(a)粉砕したビティス・ビニフェラの種を、1:1〜2の体積比のアセトンと水との混合溶媒を用いて室温で抽出した後、濾過する工程と、
(b)工程(a)で得られた濾液を蒸留してアセトンを除去し、塩化ナトリウムで飽和させた後で濾過する工程と、
(c)工程(b)で得られた濾液を酢酸エチルで抽出した後で濃縮する工程と、
(d)工程(c)で得られた濃縮液にクロロホルムを加えた後、濾過して沈殿物を得る工程とを含む調製方法によって得られることを特徴とする請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
工程(a)の混合溶媒中のアセトンと水との体積比が、1:1.5であることを特徴とする請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
工程(a)及び工程(c)の抽出が、2〜3回繰り返されることを特徴とする請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項20】
工程(b)の蒸留が、50℃以下の減圧下で行われることを特徴とする請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項21】
工程(b)の濾過が、塩化ナトリウムによる飽和後、2〜3時間静置した後、行われることを特徴とする請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項22】
工程(c)の濃縮が、抽出液総体積の0.4ないし0.7倍の体積になるように行われることを特徴とする請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記ビティス・ビニフェラの種抽出物が、
(A)(i)粉砕したビティス・ビニフェラの種を、3〜5:1の体積比のアセトンと水との混合溶媒で抽出した後、濾過する工程;(ii)工程(i)で得られた濾液を濃縮してアセトンを除去した後で濾過する工程;(iii)工程(ii)で得られた濾液を酢酸エチルで抽出する工程;及び(iv)工程(iii)で得られた抽出液を乾燥する工程によって、第1抽出物を調製する工程と、
(B)(p)粉砕したビティス・ビニフェラの種を水で抽出した後で濾過する工程;(q)工程(p)で得られた濾液をエタノールで抽出した後で濾過する工程;及び(r)工程(q)で得られた濾液を乾燥する工程によって、第2抽出物を調製する工程と、
(C)第1抽出物及び第2抽出物を混合する工程とを含む調製方法によって得られることを特徴とする請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項24】
工程(i)の混合溶媒中のアセトンと水との体積比が、4:1であることを特徴とする請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
工程(iii)または(q)の抽出が、2〜3回繰り返されることを特徴とする請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項26】
工程(iii)で抽出液を脱水することをさらに含むことを特徴とする請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項27】
工程(iv)の乾燥が、工程(iii)で得られた抽出液を濃縮して酢酸エチルを除去し、濃縮物を水に溶解した後、噴霧乾燥することによって行われることを特徴とする請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項28】
工程(r)の乾燥が、工程(q)で得られた濾液を噴霧乾燥することによって行われることを特徴とする請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項29】
工程(r)の乾燥が、工程(q)で得られた濾液を濃縮した後、濃縮液を噴霧乾燥することによって行われることを特徴とする請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項30】
第1抽出物及び第2抽出物の混合比が、1:0.5〜1.5の重量比であることを特徴とする請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記ビティス・ビニフェラの種抽出物が、80〜130%のプロシアニドール値(PCV)、30%以下の(+)カテキン及び(−)エピカテキン、及び95〜105%のプロアントシアニジンを有することを特徴とする請求項16ないし請求項30のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項1】
(a)粉砕したビティス・ビニフェラの種を、1:1〜2の体積比のアセトンと水との混合溶媒を用いて室温で抽出した後、濾過する工程と、
(b)工程(a)で得られた濾液を蒸留してアセトンを除去し、塩化ナトリウムで飽和させた後で濾過する工程と、
(c)工程(b)で得られた濾液を酢酸エチルで抽出した後で濃縮する工程と、
(d)工程(c)で得られた濃縮液にクロロホルムを加えた後、濾過して沈殿物を得る工程とを含むビティス・ビニフェラの種抽出物の調製方法。
【請求項2】
工程(a)の混合溶媒中のアセトンと水との体積比が、1:1.5であることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
工程(a)及び工程(c)の抽出が、2〜3回繰り返されることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項4】
工程(b)の蒸留が、50℃以下の減圧下で行われることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項5】
工程(b)の濾過が、塩化ナトリウムによる飽和後、2〜3時間静置した後、行われることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項6】
工程(c)の濃縮が、抽出液総体積の0.4ないし0.7倍の体積になるように行われることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項7】
(A)(i)粉砕したビティス・ビニフェラの種を、3〜5:1の体積比のアセトンと水との混合溶媒で抽出した後、濾過する工程;(ii)工程(i)で得られた濾液を濃縮してアセトンを除去した後で濾過する工程;(iii)工程(ii)で得られた濾液を酢酸エチルで抽出する工程;及び(iv)工程(iii)で得られた抽出液を乾燥する工程によって、第1抽出物を調製する工程と、
(B)(p)粉砕したビティス・ビニフェラの種を水で抽出した後で濾過する工程;(q)工程(p)で得られた濾液をエタノールで抽出した後で濾過する工程;及び(r)工程(q)で得られた濾液を乾燥する工程によって、第2抽出物を調製する工程と、
(C)第1抽出物及び第2抽出物を混合する工程とを含むビティス・ビニフェラの種抽出物の調製方法。
【請求項8】
工程(i)の混合溶媒中のアセトンと水との体積比が、4:1であることを特徴とする請求項7に記載の調製方法。
【請求項9】
工程(iii)または(q)の抽出が、2〜3回繰り返されることを特徴とする請求項7に記載の調製方法。
【請求項10】
工程(iii)で抽出液を脱水することをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の調製方法。
【請求項11】
工程(iv)の乾燥が、工程(iii)で得られた抽出液を濃縮して酢酸エチルを除去し、濃縮物を水に溶解した後、噴霧乾燥することによって行われることを特徴とする請求項7に記載の調製方法。
【請求項12】
工程(r)の乾燥が、工程(q)で得られた濾液を噴霧乾燥することによって行われることを特徴とする請求項7に記載の調製方法。
【請求項13】
工程(r)の乾燥が、工程(q)で得られた濾液を濃縮した後、濃縮液を噴霧乾燥することによって行われることを特徴とする請求項7に記載の調製方法。
【請求項14】
第1抽出物及び第2抽出物の混合比が、1:0.5〜1.5の重量比であることを特徴とする請求項7に記載の調製方法。
【請求項15】
得られるビティス・ビニフェラの種抽出物が、80〜130%のプロシアニドール値(PCV)、30%以下の(+)カテキン及び(−)エピカテキン、及び95〜105%のプロアントシアニジンを有することを特徴とする請求項1ないし請求項14のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項16】
有効成分としてビティス・ビニフェラの種抽出物及び薬学的に許容可能な担体を含む関節リウマチの予防または治療用の医薬組成物。
【請求項17】
前記ビティス・ビニフェラの種抽出物が、
(a)粉砕したビティス・ビニフェラの種を、1:1〜2の体積比のアセトンと水との混合溶媒を用いて室温で抽出した後、濾過する工程と、
(b)工程(a)で得られた濾液を蒸留してアセトンを除去し、塩化ナトリウムで飽和させた後で濾過する工程と、
(c)工程(b)で得られた濾液を酢酸エチルで抽出した後で濃縮する工程と、
(d)工程(c)で得られた濃縮液にクロロホルムを加えた後、濾過して沈殿物を得る工程とを含む調製方法によって得られることを特徴とする請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
工程(a)の混合溶媒中のアセトンと水との体積比が、1:1.5であることを特徴とする請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
工程(a)及び工程(c)の抽出が、2〜3回繰り返されることを特徴とする請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項20】
工程(b)の蒸留が、50℃以下の減圧下で行われることを特徴とする請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項21】
工程(b)の濾過が、塩化ナトリウムによる飽和後、2〜3時間静置した後、行われることを特徴とする請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項22】
工程(c)の濃縮が、抽出液総体積の0.4ないし0.7倍の体積になるように行われることを特徴とする請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記ビティス・ビニフェラの種抽出物が、
(A)(i)粉砕したビティス・ビニフェラの種を、3〜5:1の体積比のアセトンと水との混合溶媒で抽出した後、濾過する工程;(ii)工程(i)で得られた濾液を濃縮してアセトンを除去した後で濾過する工程;(iii)工程(ii)で得られた濾液を酢酸エチルで抽出する工程;及び(iv)工程(iii)で得られた抽出液を乾燥する工程によって、第1抽出物を調製する工程と、
(B)(p)粉砕したビティス・ビニフェラの種を水で抽出した後で濾過する工程;(q)工程(p)で得られた濾液をエタノールで抽出した後で濾過する工程;及び(r)工程(q)で得られた濾液を乾燥する工程によって、第2抽出物を調製する工程と、
(C)第1抽出物及び第2抽出物を混合する工程とを含む調製方法によって得られることを特徴とする請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項24】
工程(i)の混合溶媒中のアセトンと水との体積比が、4:1であることを特徴とする請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
工程(iii)または(q)の抽出が、2〜3回繰り返されることを特徴とする請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項26】
工程(iii)で抽出液を脱水することをさらに含むことを特徴とする請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項27】
工程(iv)の乾燥が、工程(iii)で得られた抽出液を濃縮して酢酸エチルを除去し、濃縮物を水に溶解した後、噴霧乾燥することによって行われることを特徴とする請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項28】
工程(r)の乾燥が、工程(q)で得られた濾液を噴霧乾燥することによって行われることを特徴とする請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項29】
工程(r)の乾燥が、工程(q)で得られた濾液を濃縮した後、濃縮液を噴霧乾燥することによって行われることを特徴とする請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項30】
第1抽出物及び第2抽出物の混合比が、1:0.5〜1.5の重量比であることを特徴とする請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記ビティス・ビニフェラの種抽出物が、80〜130%のプロシアニドール値(PCV)、30%以下の(+)カテキン及び(−)エピカテキン、及び95〜105%のプロアントシアニジンを有することを特徴とする請求項16ないし請求項30のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図1】
【図9】
【図10】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図1】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2010−538058(P2010−538058A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523948(P2010−523948)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際出願番号】PCT/KR2008/005203
【国際公開番号】WO2009/031826
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(510058863)カトリック ユニバーシティ インダストリー アカデミック コーオペレイション ファウンデーション (6)
【出願人】(510058874)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際出願番号】PCT/KR2008/005203
【国際公開番号】WO2009/031826
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(510058863)カトリック ユニバーシティ インダストリー アカデミック コーオペレイション ファウンデーション (6)
【出願人】(510058874)
【Fターム(参考)】
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