説明

ビデオゲーム機

【課題】視線交差判定などの複雑な処理を回避し、処理量を軽減することができるビデオゲーム機を提供する。
【解決手段】ビデオゲーム機10は、遊技者の操作情報が入力されるIO20と、複数のポリゴンが配置された仮想3次元空間内で、操作情報に基づいて車(移動体)を移動させ、その車をカメラ(仮想視点)で追尾させ、そのカメラから見た車の映像を映像情報として出力するCPU50と、映像情報に基づいて映像を表示する表示装置70とを備える3DCGゲーム機であって、各ポリゴンにおけるカメラの位置情報(視点高さ情報など)を予め記憶している路面情報データリスト43と、車がいずれのポリゴンを通過しているのかを判定するヒット判定部51と、路面情報データリスト43の位置情報、及び、ヒット判定部51の判定結果に基づいて、カメラの位置を変更する視点調整部54などとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のポリゴンが配置された仮想3次元空間内で移動体が移動してゲームが進行するビデオゲーム機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のビデオゲーム機には、例えば、車のレースゲームがあり、この車のレースゲームでは、遊技者がコースと車との関係を把握しやすいように、車の後方の高い位置に仮想視点を設定することがある(鳥瞰視点)。
この鳥瞰視点は、通常の3人称視点(後方視点)よりも、仮想視点の位置が高いので、トンネルや木立、標識などがあると、その中に仮想視点が潜り込んでしまったり、それらの障害物が邪魔となって、車が見えなくなってしまうことがあった。
そこで、仮想視点の前に障害物があるときには、仮想視点の位置を下げる必要があるが、そのときに行う視線交差判定は、計算量が増加してしまう欠点があった(例えば、特許文献1)。
【0003】
図8は、従来のビデオゲーム機を示すブロック図であり、図9は、ビデオゲームの進行イメージを示す図である。
従来のビデオゲーム機10Aは、ヒット判定部51,車挙動制御部52,照明制御部53,視点調整部54及び視線交差判定部55を有するCPU50と、表示用ポリゴンデータ41,ヒット判定用データ42,路面情報データリスト43及び視線交差判定用データ44を有するメモリ40と、描画装置60などとを備え、CPU50がメモリ40から各種データを読み出し、描画装置60を介してディスプレイ(不図示)に映像を表示して、ゲームが進行する。
【0004】
そして、上述した鳥瞰視点でゲームを進行していると、図9(A)に示すように、仮想視点となるカメラCが、トンネルTに潜り込んでしまうことがある。
そこで、図9(B)に示すように、カメラCを下げる処理が必要となるが、この処理は、非常に複雑な処理となってしまう。
【0005】
この理由は、メモリ40の視線交差判定用データ44(図8参照)に、視線交差判定用のトンネルTのポリゴンを予め記憶させておかなければならず、また、CPU50の視線交差判定部55は、そのトンネルTのポリゴンとカメラCの視線とが交差しているか否かの判定を常に行わなければならないからである。
【0006】
また、視線交差判定部55は、視線が交差していると判定したときには、視点調整部54に判定結果を送信し、視点調整部54は、どの方向やどの位置にカメラCを移動させればよいかの演算を行う必要があるので、処理がさらに複雑になってしまっていた。
【特許文献1】特開2003−135844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、視線交差判定などの複雑な処理を回避し、処理量を軽減することができるビデオゲーム機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施例に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、遊技者の操作情報が入力される入力部(20)と、複数のポリゴンが配置された仮想3次元空間内で、前記操作情報に基づいて移動体(100)を移動させ、その移動体(100)を仮想視点(C)で追尾させ、その仮想視点(C)から見た前記移動体(100)の映像を映像情報として出力する制御部(50)と、前記映像情報に基づいて映像を表示する表示部(70)とを備えるビデオゲーム機であって、前記各ポリゴンにおける前記仮想視点(C)の位置情報を予め記憶している記憶部(40)と、前記移動体(100)がいずれのポリゴンを通過しているのかを判定する判定部(51)と、前記記憶部(40)の位置情報、及び、前記判定部(51)の判定結果に基づいて、前記仮想視点(C)の位置を変更する視点位置変更部(54)と、を備えるビデオゲーム機である。
請求項2の発明は、請求項1に記載のビデオゲーム機において、前記位置情報は、前記仮想視点(C)の高さを定める高さ情報であること、を特徴とするビデオゲーム機である。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のビデオゲーム機において、前記位置情報は、前記移動体(100)の進行方向と略直交する横方向の位置を定める情報であること、を特徴とするビデオゲーム機である。
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のビデオゲーム機において、前記視点位置変更部(54)は、前記仮想視点(C)の位置を変更するとともに、前記移動体(100)と前記仮想視点(C)との距離を変更すること、を特徴とするビデオゲーム機である。
請求項5の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のビデオゲーム機において、前記視点位置変更部(54)は、前記仮想視点(C)の位置を変更するとともに、前記仮想視点(C)の視線方向を変更すること、を特徴とするビデオゲーム機である。
請求項6の発明は、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のビデオゲーム機において、前記視点位置変更部(54)は、前記仮想視点(C)の位置を変更するとともに、画角を変更すること、を特徴とするビデオゲーム機である。
請求項7の発明は、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のビデオゲーム機において、前記視点位置変更部(54)は、前記仮想視点(C)を移動させてその位置を変更すること、を特徴とするビデオゲーム機である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、仮想視点の位置情報を予め記憶させておき、その位置情報に基づいて仮想視点の位置を変更するので、仮想視点と障害物との視線交差判定を行う必要がなくなり、処理量が軽減される。
また、各ポリゴンに、移動体の動作情報が予め記憶されている場合には、その動作情報とともに仮想視点の位置情報を記憶することによって、簡単に処理量を軽減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、視線交差判定などの複雑な処理を回避し、処理量を軽減することができるビデオゲーム機を提供するという目的を、路面情報とともに仮想視点としてのカメラの位置情報を予め記憶させておき、車の移動に対応させてカメラを移動させることにより実現する。
【実施例】
【0011】
以下、図面等を参照して、本発明の実施例について、さらに詳しく説明する。
図1は、本発明によるビデオゲーム機の実施例を示す図であって、図1(A)は、ビデオゲーム機のハードウェアの概略構成を示すブロック図であり、図1(B)は、ビデオゲーム機の各機能部及び処理の流れを示すブロック図である。
本実施例によるビデオゲーム機10は、車のレースゲームを例にした3DCG(3次元コンピュータグラフィックス)ゲーム機であって、図1(A)に示すように、IO(入力部)20と、ストレージ30と、メモリ(記憶部)40と、CPU(制御部)50と、描画装置60と、表示装置(表示部)70などとを備える。
【0012】
IO20は、遊技者の操作情報が入力される部分であり、遊技者が実際に操作するハンドルなどに接続されている。
【0013】
ストレージ30は、ゲーム内容や処理プログラムを記憶している部分であり、例えば、HDDやCDなどである。
【0014】
メモリ40は、ポリゴンデータやヒットデータなどを記憶している部分であり、図1(B)に示すように、コース,マップ及び車を表示するための表示用ポリゴンデータ41と、コースヒット及び路面情報用のヒット判定用データ42と、路面状態情報,照明情報及び視点高さ情報用の路面情報データリスト43とを備える。
路面情報データリスト43の視点高さ情報には、各ポリゴンにおけるカメラ(仮想視点)の位置情報が予め記憶されており、その位置情報は、カメラの高さを定める情報である。
【0015】
CPU50は、ビデオゲーム機10やゲームの内容を制御している部分であり、複数のポリゴンが配置された仮想3次元空間内で、IO20からの操作情報に基づいて車(移動体)を移動させ、その車をカメラで追尾させ、そのカメラから見た車の映像を映像情報として出力する部分であり、ヒット判定部(判定部)51と、車挙動制御部52と、照明制御部53と、視点調整部(視点位置変更部)54とを備える。
【0016】
ヒット判定部51は、表示用ポリゴンデータ41やヒット判定用データ42からの情報に基づいて、車がいずれのポリゴンを通過しているのかを判定する部分であり、その判定結果を路面情報インデックスとして、路面情報データリスト43及び車挙動制御部52に送信する。
【0017】
車挙動制御部52は、路面情報データリスト43からの路面状態情報、及び、ヒット判定部51からの判定結果に基づいて、車の向きや傾きなどの車姿勢情報を出力する部分である。
【0018】
照明制御部53は、路面情報データリスト43からの照明情報に基づいて、車のライティングの有無を決定するための車照明情報を出力する部分である。
【0019】
視点調整部54は、路面情報データリスト43からの視点高さ情報に基づいて、カメラの高さを変更するための視点情報を出力する部分である。
なお、車姿勢情報及び車照明情報は、車の描画に使用され、視点情報は、映像全体の描画に使用される。
【0020】
描画装置60は、ポリゴンなどの描画を行う部分であり、メモリ40の表示用ポリゴンデータ41、及び、CPU50で生成された各情報(車姿勢情報、車照明情報、視点情報)に基づいて、ゲームの映像を描画し、表示装置70に映像情報を送信する。
【0021】
表示装置70は、描画装置60からの映像情報に基づいて、ゲームの映像を表示する部分であり、例えば、ディスプレイなどである。
【0022】
次に、車のレースゲームに使用する仮想3次元空間の作製手順について説明する。
図2〜図6は、各ポリゴンを模式的に示す図である。
まず、図2に示すように、表示用のマップポリゴンを用意する。
ついで、図3に示すように、コースヒット用のラインLを作製する。本実施例では、コースの中央と両端の3本のラインであるが、状況に応じてライン数を増減させてもよい。
さらに、図4に示すように、コースを格子状に区切り、路面情報用のポリゴンを作製する。
【0023】
そして、図5に示すように、ダートD、草地G、トンネルT、日陰になる部分Sなどのポリゴンを作製する。
最後に、上述した各ポリゴンをまとめて表示すると、図6に示すようなものになり、車の位置から路面方向に垂直に伸ばした線にぶつかるポリゴンの情報を読み取ることでヒット判定が行え、その場所の路面情報(路面の種類、路面の高さなど)や、車のコース上の位置(コース内か否か、スタート地点からの位置など)がわかる。なお、表示用のポリゴンをヒット判定に使用してもよい。
【0024】
次に、図1及び図7を参照しながら、本実施例によるビデオゲーム機10の動作について説明する。
図7は、ビデオゲームの進行イメージを示す図である。
ゲームを開始し、遊技者がIO20(図1参照)を操作すると、CPU50は、その操作情報に応じて、車を走行させる。
そして、図7(A)に示すように、車100がトンネルTに近づく。
ここで、カメラCの位置情報として、Aの路面には、通常の高さが設定されており、Bの路面には、低い高さが設定されている。
【0025】
そして、車100がトンネルTに入ると、図7(B)に示すように、CPU50の視点調整部54は、Bの路面に設定されている位置情報に基づいて、カメラCの位置を下方に変更する。
このとき、カメラCの位置を急に変更すると、遊技者は、映像が切り替わったような感覚を受けるので、カメラCを徐々に移動させて、その位置を変更するとよい。
【0026】
また、カメラCを単純に下げるだけだと、カメラCが車100に接近しすぎてしまい、見え方がよくない可能性があるので、図7(C)に示すように、車100とカメラCとの距離を変更して(離して)カメラCの水平位置を変更したり、カメラCの向きを変更して(車に向けて)視線方向を変更したり、ズーミング(ワイド側にズーミング)するようにして画角を変更してもよい。
【0027】
このように、本実施例によれば、以下のような効果がある。
(1)カメラCの位置情報を予め記憶させておき、その位置情報に基づいてカメラCの位置を変更するので、カメラCとトンネルTとの視線交差判定を行う必要がなくなり、トンネルTへの潜り込み防止の処理が簡略化され、処理量を軽減することができる。
【0028】
(2)通常の3DCGゲーム機は、移動体の挙動を調節決定するため、地面のヒット情報に場所ごとの情報が含まれている場合が多い。特に、レースゲームでは、路面情報として、舗装路、砂利道、雪などの車の挙動に影響を与える情報や、日向、日陰などのライティングの情報が設定されている場合が多い。そこで、本実施例のように、これらの情報とともに、カメラCの位置情報を記憶しておくことによって、簡単に処理量を軽減させることができ、しかも、制御プログラムなどの大幅な変更も必要ない。
【0029】
(3)コース上のポリゴンに対応して、カメラCの位置情報が記憶されているので、決まったコース上を移動する車のレースゲームに効果的である。
【0030】
(変形例)
以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。
(1)ゲームの種類は、車のレースゲームに限られず、例えば、ロボット同士の対戦ゲーム、競馬ゲーム、スキーゲーム、電車ゲームなどであってもよい。
(2)本実施例では、初めから鳥瞰視点で車を見ているゲームの例で説明したが、複数の視点の中から鳥瞰視点を選択できるようなゲームであってもよい。
【0031】
(3)従来の視線交差判定と、本実施例の視点調整とを併用するようにしてもよい。例えば、対戦ゲームであれば、仮想視点が潜り込みやすい場所に、簡単なポリゴンを配置して、本実施例のような視点調整を行い、その他の場所では、従来の視線交差判定を使用するようにする。このようにすれば、処理の効率化が図れる。
【0032】
(4)位置情報は、カメラCの高さを定める情報の例で説明したが、車100の進行方向と略直交する横方向の位置を定める情報としてもよい。例えば、トンネルがカーブしている場合には、車100とともにカメラCがふられてしまうことがあるが、トンネル内では、カメラCの横方向の位置を、センターライン上に固定するように設定しておけば、トンネルの側壁にカメラCが潜り込んでしまうことを防止できる。
(5)障害物は、トンネルの例で説明したが、例えば、木立、標識などであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明によるビデオゲーム機の実施例を示す図である。
【図2】各ポリゴンを模式的に示す図である。
【図3】各ポリゴンを模式的に示す図である。
【図4】各ポリゴンを模式的に示す図である。
【図5】各ポリゴンを模式的に示す図である。
【図6】各ポリゴンを模式的に示す図である。
【図7】ビデオゲームの進行イメージを示す図である。
【図8】従来のビデオゲーム機を示すブロック図である。
【図9】ビデオゲームの進行イメージを示す図である。
【符号の説明】
【0034】
10、10A ビデオゲーム機
20 IO(入力部)
30 ストレージ
40 メモリ(記憶部)
41 表示用ポリゴンデータ
42 ヒット判定用データ
43 路面情報データリスト
44 視線交差判定用データ
50 CPU(制御部)
51 ヒット判定部(判定部)
52 車挙動制御部
53 照明制御部
54 視点調整部(視点位置変更部)
55 視線交差判定部
60 描画装置
70 表示装置(表示部)
100 車(移動体)
C カメラ(仮想視点)
D ダート
G 草地
S 日陰になる部分
T トンネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技者の操作情報が入力される入力部と、
複数のポリゴンが配置された仮想3次元空間内で、前記操作情報に基づいて移動体を移動させ、その移動体を仮想視点で追尾させ、その仮想視点から見た前記移動体の映像を映像情報として出力する制御部と、
前記映像情報に基づいて映像を表示する表示部とを備えるビデオゲーム機であって、
前記各ポリゴンにおける前記仮想視点の位置情報を予め記憶している記憶部と、
前記移動体がいずれのポリゴンを通過しているのかを判定する判定部と、
前記記憶部の位置情報、及び、前記判定部の判定結果に基づいて、前記仮想視点の位置を変更する視点位置変更部と、
を備えるビデオゲーム機。
【請求項2】
請求項1に記載のビデオゲーム機において、
前記位置情報は、前記仮想視点の高さを定める高さ情報であること、
を特徴とするビデオゲーム機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のビデオゲーム機において、
前記位置情報は、前記移動体の進行方向と略直交する横方向の位置を定める情報であること、
を特徴とするビデオゲーム機。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のビデオゲーム機において、
前記視点位置変更部は、前記仮想視点の位置を変更するとともに、前記移動体と前記仮想視点との距離を変更すること、
を特徴とするビデオゲーム機。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のビデオゲーム機において、
前記視点位置変更部は、前記仮想視点の位置を変更するとともに、前記仮想視点の視線方向を変更すること、
を特徴とするビデオゲーム機。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のビデオゲーム機において、
前記視点位置変更部は、前記仮想視点の位置を変更するとともに、画角を変更すること、
を特徴とするビデオゲーム機。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のビデオゲーム機において、
前記視点位置変更部は、前記仮想視点を移動させてその位置を変更すること、
を特徴とするビデオゲーム機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−236075(P2006−236075A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−50957(P2005−50957)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(306019111)株式会社タイトー (475)
【Fターム(参考)】