説明

ビニル系共重合体の製造方法

【課題】反応容器の天井部、内壁、攪拌機の攪拌翼や軸部等へのビニル系単量体類の付着と、これに伴う重合物やゲル化物の発生を効果的に抑制することができるビニル系共重合体の製造方法を提供すること。
【解決手段】エポキシ基含有ビニル系単量体、シクロカーボネート基含有ビニル系単量体、カルボキシル基含有ビニル系単量体、無水酸基含有ビニル系単量体および水酸基含有ビニル系単量体からなる群から選ばれる1種以上のビニル系単量体(a1)を必須成分とするビニル系単量体類(A)と、ラジカル重合開始剤(B)を、それぞれ別の供給部から反応容器内に供給してラジカル重合させるビニル系共重合体の製造方法であって、前記ビニル系単量体類(A)を有機溶剤(C)の液中に攪拌下に液状で連続又は断続で供給することを特徴とするビニル系共重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ基含有ビニル系単量体、シクロカーボネート基含有ビニル系単量体、カルボキシル基含有ビニル系単量体、無水酸基含有ビニル系単量体および水酸基含有ビニル系単量体からなる群から選ばれる1種以上のビニル系単量体を必須成分として含有するビニル系単量体類を反応容器内で溶液重合するに際して、反応容器の天井部、内壁、コンデンサー部、攪拌機の攪拌軸部等への前記ビニル系単量体の付着と、これに伴う重合物やゲル化物の発生を抑制できるビニル系共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニル系共重合体の溶液重合による製造方法、なかでもエポキシ基含有ビニル系単量体、シクロカーボネート基含有ビニル系単量体、カルボキシル基含有ビニル系単量体、無水酸基含有ビニル系単量体、水酸基含有ビニル系単量体等のラジカル反応性の高いビニル系単量体を含有するビニル系単量体類を用いたビニル系共重合体の溶液重合による製造方法としては、反応容器に仕込まれた有機溶剤中に、前記ビニル系単量体を含有するビニル系単量体類とラジカル重合開始剤を、それぞれ別の供給部から滴下して重合させる方法が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。
【0003】
しかしながら、これら特許文献1や特許文献2に記載されている溶液重合によるビニル系共重合体の製造方法では、ラジカル反応性の高いビニル系単量体を用いているため、これらビニル系単量体のミストが反応容器の天井部、内壁、攪拌機の攪拌翼や軸部等へ付着して重合し、ゲル化するため、付着した重合物やゲル化物の除去作業に時間を要し、生産性が低下するという問題や、重合して得られたビニル系共重合体の取出時に反応容器の天井部、内壁、攪拌機の攪拌翼や軸部等へ付着していた重合物やゲル化物が混入するという問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開平04−175359号公報
【特許文献2】特開平06−264122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、エポキシ基含有ビニル系単量体、シクロカーボネート基含有ビニル系単量体、カルボキシル基含有ビニル系単量体、無水酸基含有ビニル系単量体および水酸基含有ビニル系単量体からなる群から選ばれる1種以上のビニル系単量体を必須成分として含有するビニル系単量体類を反応容器内で溶液重合するに際して、反応容器の天井部、内壁、攪拌機の攪拌翼や軸部等への前記ビニル系単量体類の付着と、これに伴う重合物やゲル化物の発生を抑制できるビニル系共重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決しようと鋭意検討を行った結果、前記ビニル系単量体を必須成分とする単量体類と、ラジカル重合開始剤を、それぞれ別の供給部から有機溶剤(C)が充填された反応容器内に供給してラジカル重合させるビニル系共重合体の製造方法であって、前記単量体類を有機溶剤の液中に攪拌下に液状で連続又は断続で供給するビニル系共重合体の製造方法では、反応容器の天井部、内壁、攪拌機の攪拌翼や軸部等へのビニル系単量体類の付着と、これに伴う重合物やゲル化物の発生を効果的に抑制することができ、発生した重合物やゲル化物の混入のないビニル系共重合体を容易に製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は、エポキシ基含有ビニル系単量体、シクロカーボネート基含有ビニル系単量体、カルボキシル基含有ビニル系単量体、無水酸基含有ビニル系単量体および水酸基含有ビニル系単量体からなる群から選ばれる1種以上のビニル系単量体(a1)を必須成分とするビニル系単量体類(A)(ただし、エポキシ基含有ビニル系単量体とカルボキシル基含有ビニル系単量体の併用と、無水酸基含有ビニル系単量体と水酸基含有ビニル系単量体の併用を除く。)と、ラジカル重合開始剤(B)を、それぞれ別の供給部から有機溶剤(C)が充填された反応容器内に供給してラジカル重合させるビニル系共重合体の製造方法であって、前記単量体類(A)を有機溶剤(C)の液中に攪拌下に液状で連続又は断続で供給することを特徴とするビニル系共重合体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、反応容器の天井部、内壁、攪拌機の攪拌翼や軸部等へのビニル系単量体類の付着と、これに伴う重合物やゲル化物の発生を効果的に抑制することができるため、発生した重合物やゲル化物の除去作業による生産性の低下が防止できると共に、重合物やゲル化物の混入のない高品質のビニル系共重合体を容易に製造できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の詳細について述べる。
本発明で用いるビニル系単量体類(A)としては、エポキシ基含有ビニル系単量体、シクロカーボネート基含有ビニル系単量体、カルボキシル基含有ビニル系単量体、無水酸基含有ビニル系単量体および水酸基含有ビニル系単量体からなる群から選ばれる1種以上のビニル系単量体(a1)を必須成分として含有するもの(ただし、エポキシ基含有ビニル系単量体とカルボキシル基含有ビニル系単量体の併用と、無水酸基含有ビニルル系単量体と水酸基含有ビニル系単量体の併用を除く。)であればよく、特に限定されないが、なかでも、エポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体、シクロカーボネート基含有(メタ)アクリル系単量体、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系単量体および水酸基含有(メタ)アクリル系単量体からなる群から選ばれる1種以上の(メタ)アクリル系単量体を必須成分として含有する(メタ)アクリル系単量体(a11)を用いることが好ましい。
【0010】
なお、前記した、エポキシ基含有ビニル系単量体、シクロカーボネート基含有ビニル系単量体、カルボキシル基含有ビニル系単量体、無水酸基含有ビニル系単量体および水酸基含有ビニル系単量体としては、エポキシ基、シクロカーボネート基、カルボキシル基、無水酸基および水酸基からなる群から選ばれる2種以上の官能基を併有するものであってもよい。
【0011】
また、前記ビニル系単量体類(A)としては、前記ビニル系単量体(a1)とその他のビニル系単量体(a2)を含有するビニル系単量体混合物であることが好ましく、例えば、ビニル系単量体類(A)100重量%に対してビニル系単量体(a1)の含有率が10〜70重量%であるビニル系単量体混合物が挙げられる。このようなビニル系単量体混合物としてのビニル系単量体類(A)のなかでも、反応容器の天井部、内壁、攪拌機の攪拌翼や軸部等への(メタ)アクリル系単量体の付着の抑制効果が高く、高品質のビニル系共重合体が製造できることから、ビニル系単量体類(A)100重量%に対して、ビニル系単量体(a1)の含有率が10〜70重量%、より好ましくは15〜65重量%で、かつ、エポキシ基含有ビニル系単量体の含有率が60重量%以下、シクロカーボネート基含有ビニル系単量体の含有率が30重量%以下、カルボキシル基含有ビニル系単量体および無水酸基含有ビニル系単量体の合計の含有率が50重量%以下、水酸基含有ビニル系単量体の含有率が50重量%以下であることがより好ましい。
【0012】
さらに、前記ビニル系単量体類(A)が、エポキシ基含有ビニル系単量体、シクロカーボネート基含有ビニル系単量体、カルボキシル基含有ビニル系単量体、無水酸基含有ビニル系単量体および水酸基含有ビニル系単量体からなる群から選ばれる2種以上のビニル系単量体を含有する場合には、(メタ)アクリル系単量体の付着の抑制効果が特に顕著に発現し、高品質のビニル系共重合体が容易に製造できることから、より好ましい。
【0013】
前記エポキシ基含有ビニル系単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有ビニル単量体;(2−オキソ−1,3−オキソラン)メチル(メタ)アクリレート等の(2−オキソ−1,3−オキソラン)基含有ビニル単量体;3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート等の脂環式エポキシ基含有ビニル単量体などが挙げられ、なかでも共重合性に優れることからエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体が好ましい。
【0014】
前記シクロカーボネート基含有ビニル系単量体としては、例えば、シクロカーボネート基(1,3−ジオキソラン−2−オン−4−イル基)として下記一般式〔I〕
【0015】
【化1】

(ただし、式中のR、RおよびRは、それぞれ同一であっても異なってもよい、水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。)
で示される基を含有するビニル系単量体が挙げられる。その具体例としては、
【0016】
【化2】

(ただし、式中のRは、水素原子またはメチル基、R、RおよびRは、それぞれ同一であっても異なってもよい、水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、また、nは1〜6の整数を表す。〕
で示されるような、2,3−カーボネートプロピル(メタ)アクリレート、2−メチル−2,3−カーボネートプロピル(メタ)アクリレート、4−メチル−3,4−カーボネートブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3,4−カーボネートブチル(メタ)アクリレート、5−エチル−5,6−カーボネートヘキシル(メタ)アクリレート、7,8−カーボネートオクチル(メタ)アクリレート等のシクロカーボネート基含有(メタ)アクリル系単量体や、2,3−カーボネートプロピルビニルエーテル、メチル−2,3−カーボネートプロピルマレート、メチル−2,3−カーボネートプロピルクロトネート等が挙げられ、なかでも共重合性に優れることからシクロカーボネート基含有(メタ)アクリル系単量体が好ましく、前記一般式〔II〕で示されるシクロカーボネート基含有(メタ)アクリル系単量体がさらに好ましい。
【0017】
前記カルボキシル基含有ビニル系単量体しては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基ビニル系単量体;フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノイソブチル、フマル酸モノtert−ブチル、フマル酸モノヘキシル、フマル酸モノオクチル、フマル酸モノ2−エチルヘキシル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノイソブチル、マレイン酸モノtert−ブチル、マレイン酸モノヘキシル、マレイン酸モノオクチル、マレイン酸モノ2−エチルヘキシル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル、イタコン酸モノイソブチル、イタコン酸モノヘキシル、イタコン酸モノオクチル、イタコン酸モノ2−エチルヘキシル等のカルボン酸モノアルキルエステルなどが挙げられ、なかでも共重合性に優れることからカルボキシル基含有(メタ)アクリル系単量体が好ましい。
【0018】
前記無水酸基含有ビニル系単量体しては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラハイドロ無水フタル酸、ヘキサハイドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0019】
前記水酸基含有ビニル系単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;このような(メタ)アクリレートと、ε−カプロラクトンの付加反応生成物;
【0020】
2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等の水酸基含有ビニルエーテル;このようなビニルエーテルと、ε−カプロラクトンとの付加反応生成物;
【0021】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アリルエーテル、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル、4−ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテル、3−ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル(メタ)アリルエーテル、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アリルエーテル、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アリルエーテル等の水酸基含有アリルエーテル;このようなアリルエーテルと、ε−カプロラクトンとの付加反応生成物などが挙げられ、なかでも共重合性に優れることから水酸基含有(メタ)アクリル系単量体が好ましい。
【0022】
また、その他のビニル系単量体(a2)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルオクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリルまたは(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル;
【0023】
エチルカルビトール(メタ)アクリレート等のアルキルカルビトール(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;エチレン、プロピレン、ブテン−1等のα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のフルオロオレフィンを除く各種のハロゲン化オレフィン類(ハロ・オレフィン類);スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル単量体;フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、イタコン酸ジオクチル等の不飽和ジカルボン酸と、炭素数1〜18の1価アルコールとのジエステル類;
【0024】
N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有アミド系不飽和単量体類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類;tert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、ピロリジニルエチル(メタ)アクリレート、ピペリジニルエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有単量体類;
【0025】
ジエチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジブチル−2−(メタ)アクリロイルオキシブチルフォスフェート、ジオクチル−2−(メアクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジフェニル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート等の燐酸エステル基含有単量体類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、炭素数9〜11の分岐状(分枝状)脂肪族カルボン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の脂肪族カルボン酸ビニル類;シクロヘキサンカルボン酸ビニル、メチルシクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、p−tert−ブチル安息香酸ビニル等の環状構造を有するカルボン酸のビニルエステル類;
【0026】
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の不飽和結合含有シラン化合物;ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、アリルアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等の1分子中に複数個不飽和基を持ったエチレン性不飽和単量体等が挙げられ、なかでも(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることが好ましい。なお、これらその他のビニル系単量体(a2)は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
本発明の製造方法では、前記ビニル系単量体(a1)を必須成分とし、更に必要によりその他のビニル系単量体を含有するビニル系単量体類(A)を、反応容器内の有機溶剤(C)の液中に、攪拌下に、液状で連続又は断続で供給し、別の供給部から供給されたラジカル重合開始剤(B)の存在下で、ビニル系単量体類(A)をラジカル重合させればよく、例えば、供給口先端部が、ビニル系単量体類(A)供給開始時の反応容器内の有機溶剤(C)の液面と同一又は液面より下の液中部となる位置に、好ましくはビニル系単量体類(A)供給開始時の反応容器内の有機溶剤(C)の液面からの深さが10cm以上の液中部となる位置に設置されたビニル系単量体類(A)供給装置の供給口から、ビニル系単量体類(A)を、連続又は断続で、好ましくは連続で60〜200℃、好ましくは80〜180℃の温度、必要により加圧下、好ましくは0.01〜1MPaの加圧下、より好ましくは0.1〜1MPaの加圧下で、1〜10時間、好ましくは2〜6時間かけて供給しつつラジカル反応させた後、更に30分〜12時間、好ましくは1〜10時間ラジカル反応を続行して熟成させる方法が挙げられる。なお、ビニル系単量体類(A)供給開始時の反応容器内の有機溶剤(C)中には、ビニル系単量体類(A)の一部が予め混合されていてもよく、この際のビニル系単量体類(A)の含有率としては、有機溶剤(C)とビニル系単量体類(A)の合計100重量%に対して30重量%以下であることが好ましい。
【0028】
本発明で用いる前記ビニル系単量体類(A)は、供給に際して液状であることが必要であるが、前記ビニル系単量体類(A)中で他の液状ビニル系単量体に溶解させて用いるのであれば、単独では固形のビニル系単量体が含有されてもよい。また、本発明で用いる前記ビニル系単量体類(A)が2種以上のビニル系単量体を含有してなるものである場合には、通常予め混合したものを1個の供給装置から有機溶剤(C)の液中に1個の供給口から供給するが、必要に応じて供給口を2個以上に分割してもよいし、2個以上の供給装置を用いて2個以上の供給口から供給してもよい。
【0029】
本発明の製造方法で使用するラジカル重合開始剤(B)としては、種々の化合物を使用することができ、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス−メチルブチロニトリル、2,2'−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1'−アゾビス−シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート、4,4'−アゾビス−4−シアノ吉草酸、2,2'−アゾビス−(2−アミジノプロペン)2塩酸塩、2−tert−ブチルアゾ−2−シアノプロパン、2,2'−アゾビス(2−メチル−プロピオンアミド)2水和物、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロペン]、2,2'−アゾビス(2,2,4−トリメチルペンタン)等のアゾ化合物;過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、カリウムパーサルフェート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス−tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、tert−ブチルパーオキシーラウレート、tert−ブチルパーオキシイソフタレート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジ−tert−アミルパーオキシド等のケトンパーオキシド類;パーオキシケタール類;ハイドロパーオキシド類;ジアルキルパーオキシド類;ジアシルパーオキシド類;パーオキシエステル類;パーオキシジカーボネート類;過酸化水素などが挙げられる。
【0030】
前記ラジカル重合開始剤(B)の使用量としては、例えば、ビニル系単量体類(A)100重量部に対して0.5〜25重量部、好ましくは1.0〜20重量部の範囲である。
【0031】
前記ラジカル重合開始剤(B)の有機溶剤(C)が充填された反応容器内への供給方法としては、特に限定はなく、攪拌下に連続又は断続で反応容器内の有機溶剤(C)へ滴下する方法や、有機溶剤(C)の液中への供給する方法等が挙げられるが、なかでも連続で滴下する方法や、液中への供給する方法が好ましい。また、ラジカル重合開始剤(B)の供給は、前記ビニル系単量体類(A)の供給に平行して供給することが好ましい。
【0032】
本発明の製造方法で用いる有機溶剤(C)としては、種々の有機溶剤を使用することができ、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール等のアルキルアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;
【0033】
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;ソルベッソ100、ソルベッソ150(エクソンモービル社製)等の芳香族炭化水素を含有する混合炭化水素類;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素類;アイソパーC、アイソパーE、エクソールDSP100/140、エクソールD30(いずれもエクソンモービル社製)、IPソルベント1016(出光石油化学社製)等の脂肪族炭化水素を含有する混合炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、n−アミルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、3−エトキスプロピオン酸エチル等のエステル類等が挙げられる。
【0034】
前記有機溶剤(C)の使用量としては、例えば、ビニル系単量体類(A)100重量部に対して10〜200重量部、好ましくは15〜150重量部の範囲である。
【0035】
前記有機溶剤(C)は、通常、予め反応容器内に充填して使用するが、必要に応じて追加供給しても良い。なお、前記したように、予め反応容器内に充填する有機溶剤(C)中には、ビニル系単量体類(A)の一部が混合されていてもよい。
【0036】
本発明の製造方法で得られたビニル系共重合体は、その用途に特に制限はないが、特に高品質で重合物やゲル化物の混入等がないことから、例えば、自動車(新車)の外板用ベースコート塗料用樹脂やトップコート塗料用樹脂、更には自動車補修塗料用樹脂として好適である。
【実施例】
【0037】
次に、本発明を参考例、実施例及び比較例により、一層具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の例中において、特に断りのない限り、「部」および「%」は、それぞれ「重量部」および「重量%」を意味する。
【0038】
尚、以下の例においてはすべて同じステンレス製反応装置を使用しており、反応容器上面部に接続されている各出入り口、反応容器の内部構造の概略は次のようになっている。即ち、反応容器の上面部には、外部に設置のコンデンサーに通じる出入り口、内部に通水し得る形の緊急冷却用の蛇管式コイルの出入り口、および、圧力計に通じる各専用口が設置されており、加えて、温度計、窒素ガス導入口、ビニル系単量体類(A)の供給口およびラジカル重合開始剤(B)の供給口がそれぞれ反応容器の上面から内部に向かって挿入される形で設置されている。前記ビニル系単量体類(A)の供給口先端部は、実施例1〜5では、ビニル系単量体類(A)供給開始時の反応容器内の有機溶剤(C)の液面からの深さが1〜4cmの液中部となるように設定されており、ビニル系単量体類(A)は有機溶剤(C)の液中に直接供給されることとなるが、比較例1〜4では、ビニル系単量体類(A)供給開始時の反応容器内の有機溶剤(C)の液面から23〜26cm上部となるように設定されており、ビニル系単量体類(A)は有機溶剤(C)の液面に滴下により供給されることとなる。また、ラジカル重合開始剤(B)の供給口先端部は、実施例1〜5と比較例1〜4のいずれにおいても、ラジカル重合開始剤(B)供給開始時の反応容器内の有機溶剤(C)の液面から23〜26cm上部となるように設定されており、ラジカル重合開始剤(B)は有機溶剤(C)の液面に滴下により供給されることとなる。一方、反応容器の内部には攪拌シャフト上に2段にわたってそれぞれ4枚で構成される傾斜型パドル式の攪拌翼および前記の蛇管式コイルが付属している。さらに、加熱および冷却は反応容器に付属したジャケット方式を採用し、油を熱媒体としたポンプ循環型であることから局部過熱は避けられる構造となっている。
【0039】
実施例1(水酸基含有メタクリル系単量体およびエポキシ基含有メタクリル系単量体を含んだビニル系単量体類を、常圧下、液中供給の方式で反応させる例)
前記のステンレス製反応容器にソルベッソ100(芳香族炭化水素系混合溶剤、エクソンモービル社製)223.7部、n−ブタノール107.0部および3−エトキシプロピオン酸エチル42.8部を仕込み、125℃まで昇温し、この温度を保ちながらスチレン104.6部、n−ブチルメタクリレート5.2部、2−エチルヘキシルアクリレート151.7部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート104.6部およびグリシジルメタクリレート156.9部からなるビニル系単量体類(A1)と、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート49.2部およびソルベッソ100 52.3部からなる重合開始剤溶液とをそれぞれ供給ポンプを用いて7時間に亘って同時に並行供給した。尚、ビニル系単量体類(A1)の供給開始時の供給口先端部は、ビニル系単量体類(A1)供給開始時の反応容器内の混合溶剤の液面からの深さが4cmの液中に浸かっている状態であった。一方、ラジカル重合開始剤溶液の供給開始時の供給口先端部は、ラジカル重合開始剤溶液供給開始時の反応容器内の混合溶剤の液面から23cm上部にある状態であった。
【0040】
ビニル系単量体類(A1)の供給終了後、同供給口よりソルベッソ100 3.5部をポンプで供給し、ビニル系単量体類(A1)供給ラインを洗浄した。また、重合開始剤溶液の供給終了後、同供給口よりソルベッソ100 1.6部を供給し、重合開始剤溶液供給ラインを洗浄した。ビニル系単量体類(A1)と重合開始剤溶液の供給終了後も8時間に亘って125℃を保って反応を継続させた。その結果、不揮発分が56.0%、ガードナー粘度がE、濁度が0.0の透明なアクリル系共重合体溶液が得られた。反応終了後、反応容器の内部を観察したところ正常なアクリル系共重合体溶液液から遊離している不溶物はいずれの箇所においても認められなかった。
【0041】
実施例2(水酸基含有メタクリル系単量体およびエポキシ基含有メタクリル系単量体を含んだビニル系単量体類を加圧下、液中供給の方式で反応させる例)
前記のステンレス製反応容器にソルベッソ100(芳香族炭化水素系混合溶剤、エクソンモービル社製)190.0部を仕込み、160℃に向けて昇温した。途中100℃にて窒素ガスにて反応容器の内圧を相対圧0.1MPaにし、さらに160℃まで昇温した。160℃に到達した後、この温度を保ちながらスチレン135.3部、n−ブチルメタクリレート6.8部、2−エチルヘキシルアクリレート196.1部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート135.3部およびグリシジルメタクリレート202.9部からなるビニル系単量体類(A2)と、ジ−t−ブチルパーオキサイド33.8部およびソルベッソ100 33.8部からなる重合開始剤溶液とをそれぞれ供給ポンプを用いて3時間に亘って同時に並行供給した。尚、ビニル系単量体類(A2)の供給開始時の供給口先端部は、ビニル系単量体類(A1)供給開始時の反応容器内の混合溶剤の液面からの深さが1cmの液中に浸かっている状態であった。一方、ラジカル重合開始剤溶液の供給開始時の供給口先端部は、ラジカル重合開始剤溶液供給開始時の反応容器内の混合溶剤の液面から26cm上部にある状態であった。
【0042】
ビニル系単量体類(A2)の供給終了後、同供給口よりソルベッソ100 4.0部をポンプで供給し、ビニル系単量体類(A2)供給ラインを洗浄した。また、重合開始剤溶液の供給終了後、同供給口よりソルベッソ100 4.0部を押出し供給し、重合開始剤溶液供給ラインを洗浄した。この時点での反応容器内圧力は0.4MPaであった。ビニル系単量体類(A2)と重合開始剤溶液の供給終了後も2時間に亘って160℃を保って反応を継続させた。その後冷却し、途中100℃において反応容器の内圧を常圧に戻した後、n−ブタノール58.0部を添加した。その結果、不揮発分が72.2%、ガードナー粘度がX−Y、濁度が0.0の透明なアクリル系共重合体溶液が得られた。反応終了後、反応容器の内部を観察したところ正常なアクリル系共重合体溶液から遊離している不溶物はいずれの箇所においても認められなかった。
【0043】
実施例3(シクロカーボネート基含有メタクリル系単量体、水酸基含有メタクリル系単量体およびカルボキシル基含有メタクリル系単量体を含んだビニル系共重合体類を常圧下、液中供給の方式で反応させる例)
前記のステンレス製反応容器にソルベッソ100 224.1部、n−ブタノール55.5部および3−エトキシプロピオン酸エチル43.4部を仕込み、125℃まで昇温し、この温度を保ちながらスチレン79.6部、2−エチルヘキシルアクリレート217.6部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート98.2部、グリセリルシクロカーボネートメタクリレート75.9部およびメタクリル酸59.4部からなるビニル系単量体類(A3)と、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート33.4部、ジ−t−ブチルパーオキサイド1.6部、ソルベッソ100 53.1部およびn−ブタノール53.1部からなる重合開始剤溶液とをそれぞれ供給ポンプを用いて7時間に亘って同時に並行供給した。尚、ビニル系単量体類(A3)の供給開始時の供給口先端部は、ビニル系単量体類(A3)供給開始時の反応容器内の混合溶剤の液面からの深さが3cmの液中に浸かっている状態であった。一方、ラジカル重合開始剤溶液の供給開始時の供給口先端部は、ラジカル重合開始剤溶液供給開始時の反応容器内の混合溶剤の液面から24cm上部にある状態であった。
【0044】
ビニル系単量体類(A3)の供給終了後、同供給口よりソルベッソ100 3.5部をポンプで供給し、ビニル系単量体類(A3)供給ラインを洗浄した。また、重合開始剤溶液の供給終了後、同供給口よりソルベッソ100 1.6部を供給し、重合開始剤溶液供給ラインを洗浄した。ビニル系単量体類(A3)と重合開始剤溶液の供給終了後も8時間に亘って125℃を保って反応を継続させた。その結果、不揮発分が56.0%、ガードナー粘度がV、濁度が0.0の透明なアクリル系共重合体溶液が得られた。反応終了後、反応容器の内部を観察したところ正常なアクリル系共重合体溶液から遊離している不溶物はいずれの箇所においても認められなかった。
【0045】
実施例4(シクロカーボネート基含有メタクリル系単量体および無水酸基含有ビニル系単量体を含んだビニル系単量体類を常圧下、液中供給の方式で反応させる例)
前記のステンレス製反応容器にソルベッソ100 90.6部および酢酸ブチル287.1部を仕込み、125℃まで昇温し、この温度を保ちながらスチレン143.5部、2−エチルヘキシルメタクリレート120.1部、2−エチルヘキシルアクリレート47.4部、グリセリルシクロカーボネートメタクリレート47.8部および無水マレイン酸119.6部からなるビニル系単量体類(A4)と、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート43.1部およびソルベッソ100 95.7部からなる重合開始剤溶液とをそれぞれ供給ポンプを用いて6時間に亘って同時に並行供給した。尚、ビニル系単量体類(A4)の供給開始時の供給口先端部は、ビニル系単量体類(A4)供給開始時の反応容器内の混合溶剤の液面からの深さが4cmの液中に浸かっている状態であった。一方、ラジカル重合開始剤溶液の供給開始時の供給口先端部は、ラジカル重合開始剤溶液供給開始時の反応容器内の混合溶剤の液面から23cm上部にある状態であった。
【0046】
ビニル系単量体類(A4)の供給終了後、同供給口よりソルベッソ100 3.5部をポンプで供給し、ビニル系単量体類(A4)供給ラインを洗浄した。また、重合開始剤溶液の供給終了後、同供給口よりソルベッソ100 1.6部を供給し、重合開始剤溶液供給ラインを洗浄した。ビニル系単量体類(A4)と重合開始剤溶液の供給終了後も8時間に亘って125℃を保って反応を継続させた。その結果、不揮発分が52.2%、ガードナー粘度がS、濁度が0.0の透明なアクリル系共重合体溶液が得られた。反応終了後、反応容器の内部を観察したところ正常なアクリル系共重合体溶液から遊離している不溶物はいずれの箇所においても認められなかった。
【0047】
実施例5(シクロカーボネート基含有メタクリル系単量体および無水酸基含有ビニル系単量体を含んだビニル系単量体類を常圧下、断続的な液中供給の方式で反応させる例)
前記のステンレス製反応容器にソルベッソ100 90.6部および酢酸ブチル287.1部を仕込み、125℃まで昇温し、この温度を保ちながらスチレン143.5部、2−エチルヘキシルメタクリレート120.1部、2−エチルヘキシルアクリレート47.4部、グリセリルシクロカーボネートメタクリレート47.8部および無水マレイン酸119.6部からなるビニル系単量体類(A4)を均等に10分割したものを1分割分ずつ、1分割分と次の1分割分の供給間隔を40分間開けながら計6時間に亘って断続的に供給した。各1分割分はそれぞれ実施例4の場合と同じ供給口に繋がるものの、ポンプ自体は経由しないでバイパスラインを通して一度に供給した。一方、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート43.1部およびソルベッソ100 95.7部からなる重合開始剤溶液は供給ポンプを用いて6時間に亘って連続供給した。尚、ビニル系単量体類(A4)の供給開始時の供給口先端部は、ビニル系単量体類(A4)供給開始時の反応容器内の混合溶剤の液面からの深さが4cmの液中に浸かっている状態であった。一方、ラジカル重合開始剤溶液の供給開始時の供給口先端部は、ラジカル重合開始剤溶液供給開始時の反応容器内の混合溶剤の液面から23cm上部にある状態であった。
【0048】
ビニル系単量体類(A4)の供給終了後、同バイパスラインよりソルベッソ100 1.6部を供給ポンプを使用して供給し、ビニル系単量体類(A4)供給のバイパスラインを洗浄した。また、重合開始剤溶液の供給終了後、同供給口よりソルベッソ100 1.6部を供給し、重合開始剤溶液供給ラインを洗浄した。ビニル系単量体類(A4)と重合開始剤溶液の供給終了後も8時間に亘って125℃を保って反応を継続させた。その結果、不揮発分が51.8%、ガードナー粘度がR−S、濁度が0.0の透明なアクリル系共重合体溶液が得られた。反応終了後、反応容器の内部を観察したところ正常なアクリル系共重合体溶液から遊離している不溶物はいずれの箇所においても認められなかった。
【0049】
比較例1(水酸基含有メタクリル系単量体およびエポキシ基含有メタクリル系単量体を含んだビニル系単量体類を常圧下、液面への滴下による供給方式で反応させる例)
ビニル系単量体類(A1)を、ビニル系単量体類(A1)の供給開始時には供給口先端部がビニル系単量体類(A1)供給開始時の反応容器内の混合溶剤の液面から23cm上部となるように設定された供給口から気相部を通して混合溶剤の液面に向けて滴下することにより供給した以外は実施例1と同様にして、アクリル系共重合体の合成を行った。尚、この際、ビニル系単量体類(A1)の供給開始から終了に至るまで供給口先端部が混合溶剤を含有してなる反応液に浸る状態にはならなかった。その結果、不揮発分が56.0%、ガードナー粘度がE、濁度が1.3の濁りが視認できるアクリル系共重合体溶液が得られた。反応終了後、反応容器の内部を観察したところ攪拌翼の一部および反応終了時点の液面部付近の反応容器側面部にゲル状物が観察された。このゲル状物はテトラハイドロフランに不溶であった。
【0050】
比較例2(水酸基含有メタクリル系単量体およびエポキシ基含有メタクリル系単量体を含んだビニル系単量体類を加圧下、液面への滴下による供給方式で反応させる例)
ビニル系単量体類(A2)を、ビニル系単量体類(A2)の供給開始時には供給口先端部がビニル系単量体類(A2)供給開始時の反応容器内の混合溶剤の液面から26cm上部となるように設定された供給口から気相部を通して混合溶剤の液面に向けて滴下することにより供給した以外は実施例2と同様にして、アクリル系共重合体の合成を行った。この時点での反応容器内圧力は0.4MPaであった。尚、この際、ビニル系単量体類(A2)の供給開始から終了に至るまで供給口先端部が混合溶剤を含有してなる反応液に浸る状態にはならなかった。その結果、不揮発分が71.5%、ガードナー粘度がX−Y、濁度が2.5の明らかに濁りが視認できるアクリル系共重合体溶液が得られた。反応終了後、反応容器の内部を観察したところ攪拌翼の一部、反応終了時点の液面部付近の釜側面部および反応中気相部であった釜上部にゲル状物が観察された。このゲル状物はテトラハイドロフランに不溶であった。
【0051】
比較例3(シクロカーボネート基含有メタクリル系単量体、水酸基含有メタアクリル系単量体およびカルボキシル基含有メタクリル系単量体を含んだビニル系単量体類を常圧下、液面への滴下による供給方式で反応させる例)
ビニル系単量体類(A3)を、ビニル系単量体類(A3)の供給開始時には供給口先端部がビニル系単量体類(A3)供給開始時の反応容器内の混合溶剤の液面から24cm上部となるように設定された供給口から気相部を通して混合溶剤の液面に向けて滴下することにより供給した以外は実施例3と同様にして、アクリル系共重合体の合成を行った。尚、この際、ビニル系単量体類(A3)の供給開始から終了に至るまで供給口先端部が混合溶剤を含有してなる反応液に浸る状態にはならなかった。その結果、不揮発分が56.4%、ガードナー粘度がV、濁度が4.3の明らかに濁りが視認できるアクリル系共重合体溶液が得られた。反応終了後、反応容器の内部を観察したところ攪拌翼の一部、反応終了時点の液面部付近の反応容器側面部にゲル状物が観察された。特に攪拌翼へのゲル状物付着が顕著であった。このゲル状物はテトラハイドロフランに不溶であった。
【0052】
比較例4(シクロカーボネート基含有メタクリル系単量体、無水酸基含有単量体およびカルボキシル基含有メタクリル系単量体を含んだビニル系単量体類を常圧下、液面への滴下による供給方式で反応させる例)
ビニル系単量体類(A4)を、ビニル系単量体類(A4)の供給開始時には供給口先端部がビニル系単量体類(A4)供給開始時の反応容器内の混合溶剤の液面から23cm上部となるように設定された供給口から気相部を通して混合溶剤の液面に向けて滴下することにより供給した以外は実施例4と同様にして、アクリル系共重合体の合成を行った。尚、この際、ビニル系単量体類(A4)の供給開始から終了に至るまで供給口先端部が混合溶剤を含有してなる反応液に浸る状態にはならなかった。その結果、不揮発分が52.0%、ガードナー粘度がR−S、濁度が4.8の明らかに濁りが視認できるアクリル系共重合体溶液が得られた。反応終了後、反応容器の内部を観察したところ攪拌翼の一部、反応終了時点の液面部付近の反応容器側面部にゲル状物が観察された。特に攪拌翼へのゲル状物付着が顕著であった。このゲル状物はテトラハイドロフランに不溶であった。
【0053】
上記実施例1〜5および比較例1〜4における配合、得られた各アクリル系共重合体の性状および反応後のゲル化物の発生状況釜内の様子について第1表および第2表にまとめた。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
濁度の測定方法
日本電色社製の濁度測定器「TURBIDMETER MODEL T−2600DA」を使用し、校正液をイオン交換水として測定したもの。測定の際に使用したセルのサイズは50mm×36mm×55mm。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ基含有ビニル系単量体、シクロカーボネート基含有ビニル系単量体、カルボキシル基含有ビニル系単量体、無水酸基含有ビニル系単量体および水酸基含有ビニル系単量体からなる群から選ばれる1種以上のビニル系単量体(a1)を必須成分とするビニル系単量体類(A)(ただし、エポキシ基含有ビニル系単量体とカルボキシル基含有ビニル系単量体の併用と、無水酸基含有ビニル系単量体と水酸基含有ビニル系単量体の併用を除く。)と、ラジカル重合開始剤(B)を、それぞれ別の供給部から反応容器内に供給してラジカル重合させるビニル系共重合体の製造方法であって、前記ビニル系単量体類(A)を有機溶剤(C)の液中に攪拌下に液状で連続又は断続で供給することを特徴とするビニル系共重合体の製造方法。
【請求項2】
ビニル系単量体類(A)100重量%に対して、ビニル系単量体(a1)の割合が10〜70重量%である請求項1に記載のビニル系共重合体の製造方法。
【請求項3】
ビニル系単量体類(A)100重量%に対して、ビニル系単量体(a1)の含有率が10〜70重量%で、かつ、エポキシ基含有ビニル系単量体の含有率が60重量%以下、シクロカーボネート基含有ビニル系単量体の含有率が30重量%以下、カルボキシル基含有ビニル系単量体および無水酸基含有ビニル系単量体の合計の含有率が50重量%以下、水酸基含有ビニル系単量体の含有率が50重量%以下である請求項1に記載のビニル系共重合体の製造方法。
【請求項4】
ビニル系単量体類(A)が、エポキシ基含有ビニル系単量体、シクロカーボネート基含有ビニル系単量体、カルボキシル基含有ビニル系単量体、無水酸基含有ビニル系単量体および水酸基含有ビニル系単量体からなる群から選ばれる2種以上のビニル系単量体を含有するビニル系単量体混合物である請求項1に記載のビニル系共重合体の製造方法。
【請求項5】
ビニル系単量体類(A)が、エポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体、シクロカーボネート基含有(メタ)アクリル系単量体、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系単量体および水酸基含有(メタ)アクリル系単量体からなる群から選ばれる1種以上の(メタ)アクリル系単量体(a11)を必須成分とする(メタ)アクリル系単量体類(A1)である請求項1〜4のいずれか1項に記載のビニル系共重合体の製造方法。
【請求項6】
ラジカル重合開始剤(B)が有機過酸化物である請求項1〜5のいずれか1項に記載のビニル系共重合体の製造方法。
【請求項7】
ビニル系単量体類(A)の供給終了後、更にラジカル反応を続行して熟成させる請求項1〜5のいずれか1項に記載のビニル系共重合体の製造方法。
【請求項8】
ビニル系単量体類(A)を、1〜10時間かけて供給しつつ60〜200℃の温度でラジカル反応させた後、更に60〜200℃の温度で30分〜12時間ラジカル反応を続行して熟成させる請求項1〜5のいずれか1項に記載のビニル系共重合体の製造方法。
【請求項9】
ビニル系単量体類(A)を60〜200℃の温度、0.01〜1MPaの加圧下でラジカル反応させる請求項1〜5のいずれか1項に記載のビニル系共重合体の製造方法。


【公開番号】特開2007−308628(P2007−308628A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−140149(P2006−140149)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】