説明

ビルドラインを有さない、シリコーンで被覆されたローラを製造する方法

【課題】ビルドラインを有さない、巻付け技術によってシリコーン表面被覆されたローラを製造する。
【解決手段】押し出された、顔料/充填剤を含有する付加硬化可能なシリコーンゴムストリップを、隣接し合うストリップのエッジが当接しながら接触するように支持体上に巻き付け、支持体上に一体の硬化させられたシリコーンゴム層を形成するために、硬化性シリコーンゴムを硬化させ、その後、表面被覆されたローラの露出したシリコーン表面を機械加工し、顔料及び/又は充填剤が、硬化したシリコーンエラストマがビルドラインを示さないような寸法及び形態のものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルドラインを有さない、ビルトアップのノンキャストのシリコーンローラを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマによって表面被覆されたローラは長い間産業で使用されている。ポリマ表面被覆は、騒音を低減し、化学的耐性を提供し、ローラが接触する面に対するローラの接触を緩衝する。このような"表面被覆されたローラ"のために、特にポリウレタンを含む多くのポリマが使用されている。
【0003】
シリコーンは、表面被覆されたローラを形成するために使用される特別なクラスのポリマである。シリコーンは、極めて柔軟なエラストマから硬い材料まで、広範囲の硬さにおいて利用できる。さらに、シリコーンは、あるローラ用途に対してローラを特に適したものにする物理的及び化学的特徴を有している。例えば、シリコーンは、極めて化学的に耐性であり、熱応力に対する耐性も高く、多くの従来使用されているポリマ表面被覆材、例えばポリウレタンの表面被覆材よりも、高い作動温度を提供する。さらに、シリコーンは、高い剥離性を有する傾向があり、感圧接着剤のための剥離皮膜として長年、薄い層の形式(皮膜)で使用されている。従って、シリコーンは、表面被覆されたローラの市場において貴重な位置を確立している。
【0004】
小さな直径のローラは、キャスティング及び射出成形等の従来の熱可塑性又は熱硬化性技術によって、シリコーンによって表面被覆されるのに対し、大きな直径のローラ又は長いローラ及び同様の製品は、このようなプロセスによって形成することができない。むしろ、このようなローラは、複合構造において、例えば、ローラの周囲に硬化性シリコーンゴムを螺旋状に巻き付けることによって、又はローラの全周囲に、硬化性のシリコーンゴムの連続した層を巻き付けることによって製造される。これらの技術は図1及び図2に示されており、図1は、金属コア若しくは"ボス"1の周囲にシリコーンゴムの押し出されたストリップ2を螺旋状に巻き付けることを示しており、図2は、同心状の巻付けを示している。その他の巻付け方法も可能である。
【0005】
ローラボス1は、概して金属から成るが、その他の材料、例えば熱可塑性又は熱硬化性ポリマ、木材、セラミック等から形成されていてもよい。コスト、耐久性、及び弾性率及び歪みからの解放等の物理的特性の理由から、アルミニウム又は鋼等の金属が一般に使用されている。
【0006】
ボス又はその他の支持体は、概して、ボスへのシリコーンの付着を促進するように処理される。例えば、金属ボスの表面は、凹凸が形成されるか又はその他の機械加工が行われるか、溝が設けられるか、時には、ローラの軸線又は中心に向かうよりもローラの表面において狭まっている溝が設けられるか("アンダカット")、又はブラスティング、例えばサンドブラスティングによって処理されてよい。不透明又は半透明のシリコーンを提供した後、ボス表面を遮蔽又は実質的に遮蔽することができるので、ボスの見た目のよい表面を形成するときの注意を省略することができる。これは慣例の手順である。ローラを表面被覆するために、充填剤及び顔料を含有するシリコーンゴムが使用され、これにより、粗い面を遮蔽する。顔料は、見た目のよい又は目立つ色を提供するために使用されてよい。ボスの微細な機械加工若しくは仕上げを回避することにより、付着の損失なしに製造の経済性を提供し、この付着の損失のために表面処理が使用される。ボスを硬化性シリコーンゴムで表面被覆した後、シリコーンゴムを硬化させるために複合体は加熱されるか又はその他の処理が行われる。これは、発明の属する技術の分野において公知の多くの方法によって行われてよい。例えば、表面は、適切な型又は圧力ブラダ(pressure bladder)によって適度な圧力下に配置され、高温で硬化させられてよい。硬化の後、今や一体となったシリコーン表面被覆材は機械加工され、周方向に均一でかつ所望の滑らかさを有する表面を提供する。しばしば、硬化させられていない、ビルトアップされたローラに、ポリマ織物がきつく巻き付けられ、次いで、加熱又は"オートクレーブ"される。熱膨潤による直径の増大は、このシリコーン層を織物に対して圧力下に配置するために十分であり、圧密(consolidation)を促進する。シリコーンゴムは、隣接し合うストリップ若しくは層が接するところにおいて融合若しくは合体し、一体のシリコーン表面を形成する。
【0007】
このような用途において使用されるシリコーンは、概して顔料及び/又は充填剤が加えられている。顔料は、認識可能な色を生ぜしめるために及びボス表面を遮蔽するために使用されるのに対し、充填剤は、比較的高価なシリコーンを安価な充填剤と交換することによって表面被覆材のコストを低下させかつ表面被覆材の耐摩耗性を高めるために働く。しかしながら、顔料及び充填剤を含んだシリコーンローラ表面被覆材は、いわゆる"ビルドライン"を有することが分かった。このビルドラインは、硬化/圧密の前にシリコーンゴムのエッジが存在していたところである。これらのビルドラインは、しばしば、硬化されていないシリコーン表面のエッジが存在していたところの近くにおける高さ又は色の違いとして視覚的に観察可能である。機械加工の後でさえも、潜在的なビルドラインが存在し、これは、特にローラが、溶剤が使用される環境において使用された時に、顕在化する。シリコーンは、このような条件において膨潤する傾向があるが、膨潤は、表面に沿って均一ではない。むしろ、ビルドライン3の位置(図1及び図2)における膨潤は、ローラの他の部分4における膨潤とは異なる。従って、ローラのこれらの部分は、ビルドライン位置において、ローラの下を移動する支持体に異なる圧力を加える。この圧力差は、このようなローラを使用することによって製造された製品において、製品表面の突出部又は凹みとして出現する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ビルドラインを有さない、巻付け技術によってシリコーン表面被覆されたローラを製造することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
出願人は、驚くべきことにかつ予期せずに、顔料及び充填剤の粒子寸法及び異方性が低くかつ押し出しされたシリコーンゴムの"リボン"若しくはシートのエッジにおける著しい粒子配向を生じないように顔料及び充填剤を選択することによって、巻き付けられた、シリコーン表面被覆されたローラにおいて、ビルドラインが回避されることを発見した。異なって配向されていない、顔料/充填剤を含有するシリコーンゴムは、従って、ビルドラインを回避する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】支持体にシリコーンゴムのストリップを螺旋状に巻き付けることを示している。
【図2】支持体にシリコーンゴムの幅広のリボン若しくは"シート"を同心状に巻き付けることを示している。
【図3】らせん状に巻き付けられた複合ローラにおける、溶剤によって膨潤させられたビルドラインを示している。
【図4】同心状に巻き付けられたシリコーン表面被覆されたローラにおける"ビルドライン"若しくは"膨潤"を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において使用されるシリコーンゴムは、硬化する前に固体又は半固体であるような極めて高い粘度を特徴とする。「固体又は半固体」とは、シリコーンゴムの押し出されたリボン又はシート(以下、ストリップという)が、室温及び室温に近い周囲温度における通常の取扱いにおいて、その押し出しされた形状を維持することを意味する。高温、例えば50℃を超える温度において、ゴムの軟化が生じる場合がある。変形を生ぜしめるこの軟化は、特に、一体の製品を提供するためにシリコーンが流動して隣接するストリップと融合するように、硬化温度又は硬化温度に近い温度において、必要である。発明は、室温において流動可能な粘度のシリコーン、すなわち、いわゆる液体シリコーンゴム(Liquid Silicone Rubber, LSR)には関係しない。
【0012】
シリコーンゴムは、付加架橋されたシリコーンゴムである。ほとんどの部分のために、これらのシリコーンゴムは、架橋システムと共に、エチレン的に又はエチリン的に不飽和のグループを支持するシリコーン(オルガノポリシロキサン)から成る一部分シリコーンゴムである。架橋システムは、遊離基開始剤、好適には過酸化水素であってよいか、又はSi−H機能的架橋剤及びヒドロシリル化触媒であってよい。ヒドロシリル化硬化性単一成分シリコーンゴムが使用される場合、高い硬化温度においてのみ明瞭に活性である潜触媒が用いられるか、又は触媒阻害物質が使用されることが概して必要である。しばしば、潜触媒と阻害物質との組合せが使用される。両方のタイプの付加硬化シリコーンゴム(HTVゴム)は当業者に公知である。凝縮架橋可能シリコーンゴムは、発明の範囲に含まれないが、付加硬化性ゴムは、シラノールグループ又はアルコキシグループ等の凝縮可能なグループの一部を含んでよく、このグループは、不飽和グループの硬化中に硬化することができるが、ローラの初期製造及び圧密の後に主として硬化する。
【0013】
ここで言う「ローラ」とは、搬送システム、紙製造等において使用されるもの、及び例えばニップローラとして使用されるより大きなローラ若しくは"ドラム"等のローラを意味する。「ローラ」は、周囲にシリコーンゴムが巻き付けられた金属ボス又は"支持体"を含み、"ローラ"の寸法又は最終用途は制限されない。ここで言う「ローラ」はこのような構造に該当するが、"巻き付けられた複合構造"と呼ばれてもよい。
【0014】
本発明の"巻付け"は、硬化性シリコーン配合物をストリップとして押し出すことによって準備される。ストリップは、あらゆる適切な幅、例えば10cm〜40cm、又は支持体の周囲への巻付けを容易にするあらゆる幅を有していてよい。厚さは、小さく、すなわち1mm以下であってよいが、通常は、所望の厚さと、ローラを構成するために使用される巻付けの形式とに応じて、より大きい。数mm〜数cmの厚さが典型的である。ここで言う"シート"は、厚さに対して比較的大きな幅を備えるストリップを単に一まとめにしたものを意味し、その寸法は重要ではない。以下の開示及び請求の範囲では、"ストリップ"は両者のために使用される。
【0015】
ビルドラインの原因は完全に明らかであるわけではなく、それによって制限されることを望まないが、出願人は、ビルドラインは、押し出されたシリコーンストリップのエッジの近傍における大きくかつ"非対称"の顔料及び充填剤の配向によって生ぜしめられると考えている。熱プラスチックの押し出しにおいて、例えば、スリットダイの中央の近傍における押出物は、ダイのエッジの近傍におけるよりも小さな応力に曝されることが知られており、スリットダイの角部において生ぜしめられるより大きな摩擦は、押出物の他の部分とは異なる形式で粒子を配向する傾向があると考えられている。その結果、エッジにおける押出物の特性は、エッジから離れたところの特性とは物理的に異なっている。例えば、発明者は、予期せず、二本ロール機等のロール機を用いて準備されたより幅広の材料を裁断することによって準備されたストリップは、表面被覆されたローラを製造するために使用された場合にはビルドラインを形成しないことを発見した。
【0016】
従って、発明者は、表面被覆されたローラのビルドラインが、充填剤/顔料を含むシリコーンゴム、特にシリコーンゴムに含まれた充填剤及び顔料を、ストリップのエッジの近傍における配向が生じないように選択することによって、排除することができることを発見した。これは、例えば、極めて小さな粒径の充填剤及び顔料を選択することによって、又は小さなアスペクト比、好適には実質的には球形を有する充填剤及び顔料を選択することによって、又はこれらの両方法によって、達成することができる。選択的に、発明のより好ましくない態様においては、シリコーンの押し出されたストリップのエッジを、配向を生じた部分を除去するためにトリミングすることができるか、又はエッジ配向を生じない方法によって製造してもよい。いずれの場合にも、様々な充填剤及び顔料を使用することができるが、前者のプロセスは、比較的高価な硬化性シリコーンを無駄にすることになり、後者のプロセスは、技術的により複雑である。
【0017】
顔料及び充填剤は、好適には板状ではなく、実質的に球形、又はその他のコンパクトな例えば立方体であり、2.0以下、好適には1.5以下、最も好適には約1.0のアスペクト比を有している。顔料及び充填剤のこの比較的球形の性質は、特に、大きな直径の充填剤及び顔料、すなわち約70μm以上の平均粒径(最も長い寸法)を有するものに該当する。ビルドラインを予想することができる充填剤及び顔料の例は、膨潤させられた又は膨潤させられていない、粉砕雲母等の板状材料、層状粘土材料、石英粉末及び石灰石等の相当な非球形度を備える粉末鉱物充填剤、及びあらゆる相当な長さの繊維充填剤を含む。
【0018】
充填剤及び顔料の最大粒径は、70μm未満、より好適には60μm未満、さらにより好適には60μm未満、最も好適には50μm未満であることが好ましい。約44μm以下の粒径が特に有効であることが証明された。例外的に小さな充填剤、すなわち50μm未満の充填剤の場合、形態(morphology)に関して僅かな増大された公差を許容することができる。
【0019】
"顔料/充填剤を含む"又は同様の表現は、顔料又は充填剤のうちの少なくとも一方、又はそれらの両方を含む、硬化されていないシリコーンゴムを意味する。時には、顔料であるものと、充填剤であるものとを区別することは困難であり、この程度までは、これらの用語は、そうでないと示されない限り、交換可能であると考えられてよい。しかしながら、充填剤は、ゴムの強度特性を相当に増大させるものではないより大きな粒径の添加物であると一般に考えられる。1つの例外は、物理的特性を高めることができる、概して50m2/g〜400m2/gの特定の表面積を有するいわゆる"強化充填剤"である。これらの後者の充填剤は、概して、シリコーンゴムの粘度をも実質的に高めるのに対し、慣用のより大きな粒径の充填剤は、粘度をほとんど増大させない。このようなより大きな粒径の充填剤は、しばしば、重量又は体積ベースでのゴムのコストを低減するために、又はスリップ特性を提供するために、又は耐摩耗性を高めるために添加される。
【0020】
顔料は、概して、極めて小さな寸法でかつ強く着色された粒子であると理解され、これらの粒子は、比較的少量で使用される白及び黒も"色"として含んでいる。このような顔料は、物理的特性又は耐摩耗性等を高めるのではなく、色又は不透明性を提供するために添加される。しかしながら、顔料と充填剤との粒径及び形態はある程度の重なりがある。
【0021】
充填剤の例は、石灰石、ドロマイト、大理石、ルチル、石英及び長石等の様々な粉砕された天然物、及び沈降炭酸カルシウム、沈降シリカ(コロイドシリカ)等の沈降充填剤を含んでいる。このリストは限定しない。本発明において、顕著なアスペクト比を有する充填剤は、特により大きな寸法の充填剤においては、回避すべきである。
【0022】
顔料の例は、カーボンブラック、フュームド二酸化チタン、フュームド酸化鉄等の顔料、及び様々なクラスの有機顔料を含んでいる。有機染料と顔料との区別があり、前者は可溶性であるのに対し、後者は可溶性ではない。
【0023】
"形態"とは、顔料又は充填剤であるかにかかわらず、粒子の形状を意味する。押し出し中の配向がプロセス応力に依存しないように、ここで使用される粒子は実質的に球形であることが好ましい。アスペクト比は、概して1.5未満であることが好ましい。球形の充填剤は1.0のアスペクト比を有するのに対し、立方体の充填剤は1.4のアスペクト比(最小幅に対する最大幅の比)を有している。
【0024】
例えば、黒、茶色、赤、及び黄色の範囲の色で利用可能な標準的な酸化鉄顔料は、1.5重量パーセントの濃度においてビルドラインを生じる恐れがあることが分かった。しかしながら、フュームドシリカ、フュームド酸化鉄、及びフュームド二酸化チタン等のフュームド顔料は、10重量%の濃度においてもビルドラインを生じず、さらに高い濃度もビルドラインを生じないことが合理的に予想される。
【0025】
顔料及び充填剤が本発明の方法に適しているかどうかの決定は、当業者による過度の実験なしに、容易になされる。適した特定の粒径及び粒子形態は、硬化性シリコーン塩基組成の性質、例えばチキソトロピー組成の場合には粘度及びチキソトロピーに応じて、ある程度異なってよく、また、特定の押出ダイの形状、及び押出温度、圧力、押出速度等に応じて異なってもよい。従って、シグマブレードミキサ、バンバリーミキサ、ドウミキサ、一軸及び二軸スクリュー押出機、混練りカスケード、往復ニーダ等を使用するような慣用の混合方法によって、充填剤及び/又は顔料を含有する硬化性シリコーンを準備し、所望の厚さ及び幅のストリップを押し出し、提案された表面被覆されたローラを製造するときに使用されるのと同じ形式でこれらのストリップを隣接させることによって、充填剤及び顔料の適性を迅速に試験することが好ましい。これらの層は、隣接し合う面における圧密を生ぜしめるのに十分な圧力が加えられながら高温で硬化させられる。決定は、たとえより高いコストにおいても、フルサイズの支持体において容易に行われてよい。時にはこれは望ましい。なぜらば、時には実験室において硬化パラメータを再現することは困難であるからである。
【0026】
硬化時及び冷却後に、ビルドラインの存在は多くの方法によって評価されてよい。その第1の方法は、触覚又は視覚による観察である。この方法は、初期硬化の後、ローラ表面の機械加工の前には、最適である。同様の形式で使用されてよい第2の方法は、側面計による計測である。側面計は広く利用されており、触覚試験よりも敏感である。
【0027】
滑らかで均一な表面を形成するための機械加工の後は、触覚検査及び側面計計測は、概して、以下に示す場合を除き、利用できない。しかしながら、反射率測定をローラに亘って行うことができる。好適には、反射率は、ローラ表面のある程度の浸透を許容する波長で測定される。顔料又は充填剤の配向は、ビルドラインの近傍における反射率の変化として観察できる。時には、この変化は、機械加工の前後に、視覚的にも観察可能であり、ビルドラインの存在を示す。
【0028】
特に機械加工の後に、ビルドラインを検出する1つの極めて適切な手段は、溶剤膨潤の利用である。多くの一般的な溶剤は、シリコーンゴムによって吸収され、アルコール、ケトン、及び芳香族又はパラフィン族炭化水素等の多くの溶剤が、ローラが使用されるプロセスにおいて使用される。ゴムは架橋されているので、溶解せず、逆に溶剤が存在すると膨潤する。膨潤すると、機械加工の後でさえ、ビルドラインは概して、触覚によって、すなわちローラの表面に沿って指を軽くなぞることによってさえも検出可能である。ビルドラインにおける領域は、ローラの他の部分と比較して、明らかに異なる量を膨潤し、側面計計測は、概して、ビルドラインを検出するためには不要であるが、ビルドラインを定量化するために使用されてよい。溶剤で膨潤したビルドラインは、図3に符号5で示されており、図4における同心状に巻き付けられたローラのエッジにおいて、ビルドラインの高さ及び厚さは、分かりやすくするために誇張されている。
【0029】
ビルドラインが上記方法のうちの1つによって観察可能であるならば、顔料及び/又は充填剤は、例えばより小さな平均粒径に、又はより小さなアスペクト比を備える、すなわちより球形に近い充填剤/顔料に、又はこれら両者に変更されることが必要とされる。驚くべきことに、予期せず、球形に近い形態の小さな顔料及び充填剤が使用されたときにビルドラインが概して検出されないことが分かった。有効であることが証明された経験則の1つは、透明であるように十分に小さな、すなわち完全に不透明な硬化されたシリコーン製品を生じない、顔料/充填剤の使用である。適切な選択及び量により、ローラは、依然として、それ自体がローラである場合に、支持体、若しくは"ボス"を遮蔽するある程度の着色が依然として提供されてよい。コロイドシリカが充填剤として特に適している。なぜならば、この沈降シリカは比較的均一な球状形態を有しているからである。同じことが、ニードル状形態とは反対の球を成す他の沈降充填剤にも当てはまる。フュームド顔料は、例外的に利用できることが証明された。
【0030】
発明の択一的な実施の形態において、押し出された、硬化されていないシリコーンストリップは、顔料/充填剤が配向されているストリップの部分を除去するためにエッジにおいてトリミングされてよい。巻付け及び硬化の後、ビルドラインの存在又は不在は、上記方法によって評価されてよい。この場合、粒子の寸法及び形態はさほど重要ではない。なぜならば、トリミングプロセスは、顔料/充填剤の配向が他の部分とは実質的に異なるストリップの全て又は実質的に全てを除去するからである。あいにく、この実施の形態は、トリミングされた部分の廃棄又は再加工を伴うので、経済的ではない。
【0031】
本発明の第3の択一的な実施の形態は、ロール機において顔料/充填剤を含有した硬化性シリコーンエラストマを準備し、このように製造されたシートをストリップに裁断することによって、顔料及び充填剤の配向を回避することである。この技術によって、押出ダイのエッジの近傍において生じた配向が排除される。このように製造されたストリップは、慣用の形式で巻き付けられかつ硬化させられる。
【0032】
図3は、溶剤により膨潤したビルドラインを示しており、符号1は支持体を示しており、この支持体の周囲に、硬化性シリコーンストリップが螺旋状に巻き付けられている。破線3は、圧密及び硬化の前に、巻き付けられたストリップが隣接していたところを示しており、符号5は、シリコーンゴムの元の隣接部3の近傍における膨潤したセクションを示している。
【0033】
図4は、同心状の巻付けの場合に観察可能な、溶剤により膨潤したビルドラインを示している。この場合、ビルドラインは、ローラのエッジを構成している。一方のエッジだけが示されている。溶剤がローラ上に均一に吸収されたとしても、ローラを包囲するために使用されたシートのエッジを表すエッジは、巻成体の他の部分とは異なる程度に膨潤させられ、これにより、溶剤により膨潤した直径D1は、エッジから離れた直径D2よりも概して大きくなっている。
【0034】
顔料及び充填剤以外の、本発明の付加硬化させられたシリコーンゴムは、慣用のものである。硬化されていない状態における好適なシリコーンゴムは、15〜100、より好適には25〜90、最も好適には40〜80のムーニー粘度を有している。このような硬化可能なシリコーンゴムは、例えばミシガン州エイドリアン所在のワッカー・ケミカル・コーポレーションから販売されているELASTOSIL(R) R401/30からR401/80までの過酸化物硬化性シリコーンゴム、及びELASTOSIL(R) R plus 4001/30からR plus 4001/80プラチナ触媒された付加硬化シリコーンゴムとして、市販されている。このような硬化性シリコーンゴムの別の例は、特許文献、例えば米国特許第5260364号明細書、米国特許第6294635号明細書、米国特許第6362299号明細書及び米国特許第7592400号明細書に見られ、例えばWalter Noll, Chemistry And Technology Of Silicones, Academic Press, (C)1968に記載されている。このようなHTVゴムは、その他の商業ソースから利用可能である。
【0035】
顔料/充填剤は、シリコーン流体に分散させられた、同じシリコーンゴムベース又はその成分における濃縮されたマスターバッチとして、乾燥した状態でベースシリコーンゴムに付加することができるか、又はあらゆる慣用の方法によって、二本ロール機又は三本ロール機等において、前に特定したもののような混合装置において、付加することができる。顔料/充填剤の量は、顔料/充填剤が付加されたシリコーンゴムの全重量に基づき、0.5〜60重量パーセント、より好適には1〜50重量パーセント、さらに有利には2〜45重量パーセント、最も好適には2〜30重量パーセントであってよい。
【0036】
顔料及び充填剤は親水性であってよいか、又は疎水性化又はより親水性でなくするために、すなわちシラン、オルガノポリシロキサン、脂肪酸、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸性塩、又はワックスを用いる処理によって、処理されていてよい。このような疎水性化された顔料及び充填剤は、多くのソースから市販されているか、又は当業者に公知の慣用の技術によって準備することができる。
【0037】
シリコーンゴムストリップは、慣用の形式で支持体に巻き付けられ、高温で圧力をかけながら硬化させられる。圧力は、エアブラダー、閉鎖可能な数個割り型、オートクレーブ又はオーブンにおける熱膨潤、又は巻き付けられたゴムが硬化されていないゴムの別の部分に当接するところをゴムが圧密することを許容するあらゆる同様の技術によって、提供することができる。硬化は、概して、100℃〜200℃、より好適には120℃〜180℃、最も好適には150℃〜170℃の温度で行われる。
【実施例】
【0038】
比較例1
ミシガン州エイドリアン所在のワッカー・ケミカルから市販されている硬化性シリコーンゴムベース、ELASTOSIL(R) R401/80が、1.5重量%の、Gayson SDIから市販されている慣用の赤色酸化鉄顔料マスターバッチ、SILCOGUM(R) Red 042と配合される。硬化されていないゴムは、幅1インチ(25.4mm)、厚さ0.25インチ(6.1mm)の連続的なストリップとして押し出され、ローラ支持体の周囲に螺旋状に巻き付けられ、ナイロン織物が巻き付けられ、150℃に加熱され、8時間硬化させられる。硬化させられた表面被覆されたローラは、滑らかに研削され、溶剤が提供される。ビルドラインは、硬化されていない、らせん状に巻き付けられたストリップの接触領域の近傍におけるローラにおける突出部として、触ることによって明白である。ローラの表面材料は、80ショアーA硬度の硬さを有していた。
【0039】
比較例2
比較例1が、9重量パーセントの慣用の酸化鉄顔料を用いて繰り返される。ビルドラインは再び明白である。
【0040】
実施例3
比較例1に従うが、慣用の酸化鉄顔料は、約0.5μmの平均粒径を有する、ワッカー・シリコーンズから市販されているフュームドシリカ、HDK N20Pと交換される。ビルドラインは検出されない。
【0041】
実施例4
比較例1に従うが、1.5重量パーセントの慣用の酸化鉄の代わりに、約2重量パーセントのフュームドシリカ、HDK-N 20Pと、0.040重量パーセントのSILCOGUM(R) 243A Blue、Gayson SDIから市販されているフタロシアニンブルー顔料分散体が使用される。ビルドラインは検出されない。
【0042】
実施例5
実施例4が繰り返されるが、フタロシアニンブルー顔料の代わりに、約0.1重量パーセントの量の、Dispersion Technology, Inc.から市販されているフュームド二酸化チタン、K-73995 25 Masterbatchが使用される。ミルキーホワイト硬化性エラストマが生じる。ビルドラインは検出不能である。
【0043】
実施例6
実施例5が繰り返されるが、フュームド二酸化チタンは、赤色フュームド酸化鉄と交換されており、ベースの成分KE 7021 Uは、信越シリコーンから市販されている。ペイルレディッシュエラストマが製造される。ビルドラインは検出不能である。
【0044】
参照例7
フェニルメチルシロキシグループを含みかつ充填剤を含まない天然着色70ショアーAエラストマが使用される。表面被覆されたローラはビルドラインを示さない。
【0045】
実施例8
参照例7が繰り返されるが、1重量パーセントのフュームド二酸化チタンが、色がオフホワイトのより耐熱性のエラストマを製造するために顔料/充填剤として添加される。ビルドラインは検出不能である。
【0046】
発明の実施の形態を例示及び説明したが、これらの実施の形態が発明の全ての可能な形態を例示及び記載していることは意図されていない。むしろ、明細書において使用された用語は、限定ではなく説明の言葉であり、発明の思想及び範囲から逸脱することなく様々な変更がなされてもよいことが理解される。
【符号の説明】
【0047】
1 ローラボス、 2 ストリップ、 3 ビルドライン、 4 ローラの残りの部分、 5 膨潤したセクション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビルドラインを有さない、顔料/充填剤を含有するシリコーンで表面被覆されたローラを製造する方法において、
押し出された、顔料/充填剤を含有する付加硬化可能なシリコーンゴムストリップを、隣接し合うストリップのエッジが当接しながら接触するように支持体上に巻き付け、
支持体上に一体の硬化させられたシリコーンゴム層を形成するために、硬化性シリコーンゴムを硬化させ、
その後、表面被覆されたローラの露出したシリコーン表面を機械加工し、
顔料及び/又は充填剤が、硬化したシリコーンエラストマがビルドラインを示さないような寸法及び形態のものであることを特徴とする、ビルドラインを有さない、顔料/充填剤を含有するシリコーンで表面被覆されたローラを製造する方法。
【請求項2】
顔料及び/又は充填剤が、実質的にコンパクトであり、2未満のアスペクト比を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
顔料及び/又は充填剤が、70μm以下の平均粒径を有する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
顔料及び充填剤が、70μm以下の平均粒径を有する、請求項2記載の方法。
【請求項5】
充填剤及び/又は顔料が、コロイドシリカ、フュームドシリカ、フュームド金属酸化物から成るグループから選択されている、請求項1記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの顔料が、70μm未満の粒径を有する有機顔料である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
顔料及び充填剤が、合計で、顔料/充填剤を含有する硬化性シリコーンエラストマの全重量に基づいて、0.5重量パーセント〜約60重量パーセントまでの量で存在している、請求項1記載の方法。
【請求項8】
顔料及び充填剤が、約50μm未満の平均粒径を有している、請求項1記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの顔料又は充填剤が、1.5未満のアスペクト比を有しており、2.0よりも大きなアスペクト比を有する全ての顔料及び充填剤が、70μm以下の平均粒径を有している、請求項1記載の方法。
【請求項10】
ビルドラインを有さない、顔料/充填剤を含有するシリコーンで表面被覆されたローラを製造する方法において、
押し出された、顔料/充填剤を含有する付加硬化可能なシリコーンゴムのストリップを、ローラ支持体上に巻き付け、押し出されたシリコーンゴムのストリップのエッジ領域は除去されており、除去されたエッジ領域は、ストリップを押し出すために使用されたダイのエッジ領域に対応しており、これにより、ビルドラインを形成することができるエッジ部分が存在せず、巻付けは、エッジが除去されたストリップの隣接し合う部分が当接しながら接触するように行われ、
支持体上に一体の硬化したシリコーンゴム層を形成するために、付加硬化可能なシリコーンゴムを硬化させ、
その後、ビルドラインを有さない表面被覆されたローラを形成するために、表面被覆されたローラの露出したシリコーン表面を機械加工し、
少なくとも1つの充填剤又は顔料が、ストリップを押し出すために使用された押出機からストリップが出る時に、押し出されたストリップのエッジの近傍における顔料/充填剤の配向を、ストリップの他の部分とは異なるようにするような寸法及び/又は形態を有していることを特徴とする、ビルドラインを有さない、顔料/充填剤を含有するシリコーンで表面被覆されたローラを製造する方法。
【請求項11】
ビルドラインを備えない、顔料/充填剤を含有するシリコーンで表面被覆されたローラを製造する方法において、
ロール機において準備された後にストリップに裁断された、付加硬化可能なシリコーンゴムの顔料/充填剤を含有するストリップを、該ストリップのエッジが当接しながら接触するようにローラ支持体上に巻き付け、
ローラ上に一体のシリコーン層を形成するためにシリコーンゴムを硬化させ、
ビルドラインを示さない表面被覆されたローラを形成するために、表面被覆されたローラの露出したシリコーン表面を機械加工することを特徴とする、ビルドラインを有さない、顔料/充填剤を含有するシリコーンで表面被覆されたローラを製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−245859(P2011−245859A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−115609(P2011−115609)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】