説明

ビームスプリッタ及びそれを用いた光通信モジュール

【課題】本発明は、簡単な構成により、分岐比を適切に設定して入射光を透過光と反射光とに分岐することが可能なビームスプリッタ及びそれを用いた光通信モジュールを提供することを目的とする。
【解決手段】入射光を反射光と透過光とに分岐させるビームスプリッタ1において、入射光の光軸に対して臨界角より大きい角度で傾斜して形成された反射面11と、前記入射光の一部を透過させる透過面12と、を有し、透過面12は、入射光の光軸に対してブリュースタ角以下の傾斜角を有して反射面11の一部に形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビームスプリッタ及びそれを用いた光通信モジュールに関し、特に簡単な構成により、分岐比を適切に設定して入射光を透過光と反射光とに分岐することが可能なビームスプリッタ及びそれを用いた光通信モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットやデータ通信の拡大に伴い、光ファイバにより信号を伝送する光通信システムが広く普及している。光通信システムにおいて用いられる光通信モジュールは、光源としての半導体レーザ、伝送媒体としての光ファイバ、及びコリメータレンズや集光レンズ等の光学素子を有して構成されている。光通信モジュールにおいて、半導体レーザから出射された光は、コリメータレンズや集光レンズ等の光学素子を透過して、高い結合効率で光ファイバの端面に結合される。
【0003】
半導体レーザから出射される光は、使用環境の温度変化や経年劣化の影響により波長が変化することが知られている。この波長変動により、光通信モジュールで伝送される複数の信号間で干渉が生じて受信感度が低下するおそれがある。これを防ぐため、伝送経路の途中に光分岐素子としてビームスプリッタを挿入して、半導体レーザからの光を光ファイバに受光させるとともに、半導体レーザからの光の一部を分岐させて波長変動をモニタリングしている。波長変動をモニタリングすることにより、例えば半導体レーザの温度や駆動電流を調整して出射光の波長を適宜制御する事ができる。このようなビームスプリッタを用いた光通信モジュールは、特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【0004】
図10には光通信モジュールに用いられる従来例のビームスプリッタ101を示す。図10に示すように、従来例のビームスプリッタ101は45°の傾斜面を有する2つの三角柱形状のプリズム110a、110bを有して構成されており、互いの傾斜面が接着剤層109を介して貼り合わされている。このような構成のビームスプリッタ101は、特許文献3に開示されている。
【0005】
図10に示す従来のビームスプリッタ101において、X1方向から入射光が入射された場合、2つの三角柱状のプリズム110a、110bの貼り合わされた傾斜面どうしの界面において、X2方向へ透過する透過光と、Z1方向へ反射される反射光とに分岐される。特許文献1に記載されているように、透過光と反射光とは通常約50%ずつに分岐されて光ファイバやフォトダイオードへと伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−60937号公報
【特許文献2】特開平10−079551号公報
【特許文献3】特開2009−244201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光通信モジュールにおいては、通常、光ファイバに受光される光信号よりも小さい強度の光で波長モニタリングが可能であり、例えば、半導体レーザの出射光の10〜20%程度の光強度があればモニタリングが可能となる。しかし、特許文献1に示されるように、ビームスプリッタ101を用いて半導体レーザからの光を分岐する場合、半導体レーザの出射光の約50%が波長モニタリングのためにフォトダイオードへと分岐される。この分岐された光は、光ファイバに受光されないため信号の伝送には寄与しない。したがって、従来例のビームスプリッタ101を用いた光通信モジュールにおいて、反射光と透過光とが約50%ずつに分岐されると、光通信に寄与しない光が増大するとともに光ファイバに受光される光の強度が低下して信号の品質が劣化するおそれがある。
【0008】
また、従来のビームスプリッタ101で光の分岐比を調整するためには、2つのプリズム110a、110bの傾斜面の一方に誘電体層や金属層からなる多層膜を形成する必要がある。誘電体層や金属層からなる多層膜を形成する場合、誘電率の異なる複数の材料を用いて分岐比に応じて多層膜の各膜厚や構成を設計する必要があり、積層数が数十層に及ぶ場合もあるため、製造コストが増大する。さらに、接着剤層109の厚みによっても分岐比が変化してしまうため、接着剤層109の厚みの精度が厳密に要求される。また、プリズム110a、110b間の多層膜や接着剤層109において多重反射や光吸収が生じて、光効率が低下するという課題も生じる。したがって、従来の構成のビームスプリッタ101においては、透過光と反射光との分岐比を適切に分岐することが困難であった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決し、簡単な構成により、分岐比を適切に設定して入射光を透過光と反射光とに分岐することが可能なビームスプリッタ及びそれを用いた光通信モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のビームスプリッタは、入射光の光軸に対して臨界角より大きい角度で傾斜して形成された反射面と、前記入射光の一部を透過させる透過面と、を有し、前記透過面は、入射光の光軸に対してブリュースタ角以下の傾斜角を有して前記反射面の一部に設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、ビームスプリッタに入射する入射光は臨界角より大きい傾斜角を有する反射面で全反射される。また、入射光の一部は、ブリュースタ角以下の傾斜角を有する透過面を透過する。透過光と反射光との分岐比は、誘電体層や金属膜層からなる多層膜を設けることなく、透過面と反射面との面積比率を変更することにより容易に設定することができ、また、入射光の強度分布に対する透過面の位置を変更することによっても設定することができる。したがって、本発明のビームスプリッタによれば、簡単な構成により、分岐比を適切に設定して入射光を透過光と反射光とに分岐することが可能となる。
【0012】
本発明のビームスプリッタは、プリズムを有して構成されており、前記反射面及び前記透過面は前記プリズムと一体に形成されていることが好ましい。これによれば、2つのプリズムを用意して接着剤層を介して貼り合わせることなく、反射面と透過面とが1つのプリズムで形成されているため製造コストを低減することができる。また、誘電体層や金属膜層からなる多層膜及び接着剤層での多重反射や光吸収を低減して、効率よく入射光を反射光と透過光とに分岐させることができる。
【0013】
前記透過面には反射防止膜が形成されていることが好ましい。こうすれば、入射光が透過面で反射されて、半導体レーザ等の光源方向に戻ってしまうことを防ぐことができるため、光損失を抑制することが可能である。
【0014】
本発明のビームスプリッタは、前記入射光が入射する入射面と、前記反射光が出射する出射面とを有し、前記入射面及び前記出射面の少なくとも一方には光学機能面が形成されていることが好適である。ここで光学機能面とは、入射する光を集光させる機能、平行光へと変換する機能、ビーム形状の整形機能などの光学的な機能を有する面である。これによれば、入射面に光学機能面が形成される場合、入射光が発散光から平行光となって進行するため、ビームスプリッタ内部での反射や散乱を防止して適切な分岐比で分岐することが可能となる。また、反射面で反射された光が出射面の光学機能面を透過することにより、光ファイバ等の伝送媒体の端面に効率よく集光される。したがって、ビームスプリッタで分岐された光は、効率よく外部へと伝達される。さらに、ビームスプリッタを光通信モジュールとして組み立てたときに光学素子数の削減や光路長の低減を図ることができ、光通信モジュールの光結合効率を向上させることができる。また、部品点数を削減できるため製造コストを低減することができる。
【0015】
本発明の光通信モジュールは、半導体レーザと、前記半導体レーザからの光を受光する光ファイバと、前記半導体レーザからの光を受光する受光素子と、前記半導体レーザと前記光ファイバ、及び前記半導体レーザと前記受光素子とを光学的に結合させるビームスプリッタとを有し、該ビームスプリッタは、上記いずれかのビームスプリッタであることを特徴とする。これによれば、従来のビームスプリッタを用いた場合に比べて、誘電体層や金属膜層からなる多層膜を設ける必要がなく、簡単な構成で、分岐比を適切に設定して入射光を透過光と反射光とに分岐することが可能となる。また、光通信に寄与する光とモニタリングに要する光との分岐比を適切に設定することができ、半導体レーザと光ファイバとの光結合効率を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ビームスプリッタに入射する入射光は臨界角より大きい傾斜角を有する反射面で全反射される。また、入射光の一部は、ブリュースタ角以下の傾斜角を有する透過面を透過する。透過光と反射光との分岐比は、誘電体層や金属膜層からなる多層膜を設けることなく、透過面と反射面との面積比率を変更することにより容易に設定することができ、また、入射光の強度分布に対する透過面の位置を変更することによっても設定することができる。したがって、本発明のビームスプリッタによれば、簡単な構成により、分岐比を適切に設定して入射光を透過光と反射光とに分岐することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるビームスプリッタの斜視図である。
【図2】第1の実施形態のビームスプリッタにおける、光の分岐を示す模式断面図である。
【図3】第1の実施形態における第1の変形例を示す、斜視図である。
【図4】第1の実施形態における第2の変形例を示す、斜視図である。
【図5】第1の実施形態における第3の変形例を示す、斜視図である。
【図6】本発明の第2の実施形態におけるビームスプリッタの模式断面図である。
【図7】第2の実施形態における第1の変形例を示す、模式断面図である。
【図8】第2の実施形態における第2の変形例を示す、模式断面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態における光通信モジュールの模式平面図である。
【図10】従来例におけるビームスプリッタの透過斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について、図面に基づいて説明をする。図1には、第1の実施形態におけるビームスプリッタ1の斜視図を示し、図2には、入射する光を反射光と透過光とに分岐する方法を説明するための、ビームスプリッタ1の模式断面図を示す。
【0019】
図1に示すように、本実施形態のビームスプリッタ1は三角柱状のプリズム10を有して構成されている。本実施形態において三角柱状のプリズム10は、屈折率1.5程度の光学ガラス材料を用いて直角三角柱状に形成されている。ビームスプリッタ1は、入射光が入射する入射面13(X1側の面)と、入射面13に対して約45°傾斜する反射面11と、反射面11で反射される光が外部へと透過する出射面14(Z1側の面)を有して構成される。入射面13と出射面14とは互いに略直交する位置に形成 されている。
【0020】
そして、反射面11の一部には入射光の一部を透過させる透過面12が形成されている。図1に示すように、本実施形態において透過面12は、反射面11の一部が前記透過光の進行方向(X2方向)に突出して形成されている。また、透過面12は、入射光の光軸に対して略垂直の入射角度となるように三角柱状のプリズム10と一体に形成されている。
【0021】
図2に示すように、ビームスプリッタ1の入射面13に対して略垂直に入射光Aが入射される。入射光Aは、例えば半導体レーザ等の光源からの光をコリメートレンズ等の光学素子により平行光としたものである。入射光Aは、入射面13を透過して反射面11及び透過面12に向かって(X2方向)進行する。反射面11に向かう入射光Aは、反射面11で反射されて出射面14方向(Z1方向)へと進行方向が変換される。そして、出射面14から外部へと出射される反射光Bは、例えば、集光レンズ等の光学素子を通して、光ファイバへと受光される(図示しない)。反射面11は、入射光Aに対して臨界角度以上の入射角D(本実施形態においては約45°で形成している)を有するように傾斜して形成されている。これにより、入射光Aは反射面11で全反射されるため、ビームスプリッタ1の反射面11における光損失が低減されて、光ファイバへと伝送される光信号の強度を向上させることができる。
【0022】
なお、入射角とは、入射する光の光軸と入射する面の法線とがなす角度を示す。また、臨界角は、入射光が全反射される最も小さな入射角であり、材料の屈折率によって決定される角度である。本実施形態においては、屈折率約1.5の光学ガラス材料を用いており、ガラスから空気へと進行する光に対する臨界角は約42°である。また、異なる屈折率の材料を用いた場合には、臨界角も変化して、例えば屈折率1.7の光学ガラス材料を用いた場合の臨界角は約36°となる。したがって、本実施形態における傾斜角度45°に限らず、臨界角より大きい入射角Dを有するように反射面11を傾斜させることにより、入射光Aが全反射される。
【0023】
また、図2に示すように、入射光Aの一部は透過面12に向かい進行し、透過面12から透過光CとしてX2方向へと出射される。そして、透過光Cは、半導体レーザの光の波長変動をモニタリングするために、フォトダイオード等の受光素子へと受光される(図示しない)。透過面12は、入射光Aの光軸に対してブリュースタ角以下の傾斜角を有していることが好ましい。こうすれば、透過面12で入射光Aが反射されることを抑制して、効率的に透過面12を透過させることができる。
【0024】
なお、ブリュースタ角とは、入射する面に平行な偏光成分であるp偏光の反射率が0になる角度であり、入射角を0°から大きくしていくと、p偏光の反射率は徐々に小さくなり、ブリュースタ角で反射率が0となる。そして、ブリュースタ角以上になるとp偏光の反射率は急激に大きくなる傾向を示す。また、入射する面に垂直な成分であるs偏光については、入射角を0°から大きくしていくと反射率が徐々に大きくなり、ブリュースタ角以上では反射率が増大する。そして、p偏光、s偏光ともに臨界角以上の入射角度で、全反射する。したがって、入射光Aに対する透過面12の角度をブリュースタ角以下とすることにより、透過面12での反射率の増大を抑えて、効率的に透過光Cを取り出すことができる。例えば、屈折率約1.5の光学ガラス材料の場合、ブリュースタ角は約33°であり、屈折率1.7の光学ガラス材料の場合は、ブリュースタ角は約30°である。
【0025】
本実施形態のビームスプリッタ1において、反射光Bと透過光Cとの分岐比は、入射光Aが照射される領域における透過面12と反射面11との面積比率を変更することにより容易に設定することができる。また、入射光Aの強度分布に対する透過面12の位置を変更することによっても設定することができる。光源としての半導体レーザのビームは、ガウシアン分布に従った強度分布を有することが知られている。入射光Aの光路に垂直な断面形状における中央部付近はビーム強度が大きく、周縁部に向かうにしたがってビーム強度が小さくなる。したがって、入射光Aの中央部付近に透過面12を形成する場合は、より小さい面積で必要な透過光Cを取り出すことが可能である。また、入射光Aの外縁付近に透過面12を形成する場合には、比較的大きい面積で形成する必要があるが、この場合、ビーム強度が大きい中央部分付近の光を、反射光Bとして光ファイバ等に結合させることができるため、光信号の品質を向上させることが可能である。このように、入射光Aのビーム強度分布を考慮して反射面11と透過面12との面積比及び透過面12の位置を決めることにより、反射光Bと透過光Cとの分岐比を適切に設定することが可能となる。したがって、本発明のビームスプリッタ1によれば、誘電体層や金属層からなる多層膜を設計して形成することなく、簡単な構成により、分岐比を適切に設定して入射光Aを透過光Cと反射光Bとに分岐することが可能となる。
【0026】
図1に示すように、本実施形態のビームスプリッタ1において、透過面12は反射面11の中央付近よりもZ1側によせて位置するように形成されており、Y1−Y2方向に延出して設けられている。ただし、この態様に限定されるものではなく、入射光Aのビーム径やビーム形状、または、分岐させる光の分岐比に応じて、適宜、透過面12の形状や面積を設定することができる。
【0027】
従来のビームスプリッタ101において、入射光は、2つのプリズム110a、110b間の接着剤層109や誘電体層などからなる多層膜を透過または反射されて分岐することになる。この場合、接着剤層109や多層膜において多重反射や光の吸収が発生して光の損失が発生して、光信号の出力が低下するおそれがある。また、2つの三角柱形状のプリズム110a、110bの貼り合わせの界面に空気層が介在すると、光の損失が生じて伝送される信号が劣化するおそれがある。また、貼り合わせの界面に空気層が介在する場合、接着強度が低下するという問題や、空気中の水分の侵入により耐環境性が十分に得られないという問題が発生する。そのため、ビームスプリッタ101の製造においては高度な接着技術が要求されている。
【0028】
本実施形態のビームスプリッタ1においては、透過面12は、三角柱状のプリズム10と一体に形成されている。したがって、2つのプリズムを用意して接着剤層を介して貼り合わせることなく、反射面11と透過面12とが1つのプリズム10で形成されるため、誘電体層や金属層からなる多層膜及び接着剤層109での多重反射や光吸収を低減して、効率よく反射光Bと透過光Cとを出射させることができる。
【0029】
本実施形態においては、図1及び図2に示すように、透過面12は入射光Aに対して略垂直の角度(入射角D=0°)を有して形成されている。こうすれば、入射光Aの透過面12での反射を抑制して、プリズム10内部へと戻っていく光を低減させることが可能であり、透過面12に入射する入射光Aを効率よく透過させることが可能である。また、同様に入射面13を入射光Aに対して略垂直に形成して、出射面14を反射光Bに対して略垂直に形成することが好ましい。こうすれば、入射面13での入射光Aの反射を防ぐとともに、反射光Bの出射面14での反射を抑制して、光結合効率を向上させることができる。
【0030】
本実施形態におけるビームスプリッタ1は、屈折率1.5程度の光学ガラス材料を用いてプレス成形により形成することができる。したがって、反射面11の一部に突出する透過面12についても、プレス成形に用いられる金型を変更することで、従来例に示した三角柱状のプリズム110a、110bを製造する工程と同様の工程により、一体に成形することができる。また、本実施形態のビームスプリッタ1によれば、従来のビームスプリッタ101のように2つの三角柱状のプリズム110a、110bを用意して貼り合わせる工程が不要であるため製造コストを低減することができる。
【0031】
なお、本実施形態では透過面12がプリズム10と一体に形成されたビームスプリッタ1について示したが、反射面11と透過面12とを別体で設けることも可能である。この場合、大きさの異なる2つのプリズムを用意して貼り合わせることにより、反射面11の一部に透過面12が設けられる。このような態様であっても、誘電体層や金属膜層からなる多層膜を設ける必要がないため、簡単な構成により、分岐比を適切に設定して入射光Aを透過光Cと反射光Bとに分岐することが可能となる。また、反射面11と透過面12とを別体で設ける構成であっても、反射光Bは接着剤層の影響を受けることなく反射面11で全反射されるため、光損失を低減させることができる。すなわち、光通信信号を伝達するために分岐される反射光Bが、効率よく分岐されることになる。
【0032】
また、本実施形態のビームスプリッタ1では三角柱状のプリズム10が用いられているが、このような態様に限定されるものではない。平板状、多角形状等、他の形状のプリズムであっても、本実施形態と同様に反射面の一部に透過面を設けることによって、簡単な構成で分岐比を適切に設定して入射光を透過光と反射光とに分岐することが可能となる。
【0033】
図3〜図5には、それぞれ本実施形態の変形例である、ビームスプリッタ1の斜視図を示す。図3に示す第1の変形例においては、透過面12がプリズム10のY1−Y2方向の幅と等しい長さに設けられておらず、Y1−Y2方向の一部に設けられている。したがって、図1のビームスプリッタ1に比べて透過面12の面積を小さくすることが可能であり、透過光Cの分岐比を小さくすることが可能である。また、入射光Aがガウシアン強度分布を有する場合、より中央部付近に透過面12を形成すれば、より小さい透過面12の面積で同等の透過光Cの分岐比を得ることができる。
【0034】
また、図4に示す第2の変形例におけるビームスプリッタ1においては、Y1−Y2方向に延出する透過面12が、Z1−Z2方向に間隔を設けて複数形成されている。このように、透過面12を複数設けることにより、透過面12の面積を大きくして、透過光Cの分岐比を大きくすることも可能である。この場合、大きい光強度を有する中央部付近の入射光Aが、反射面11で反射されて光ファイバへと受光されることになるため、信号強度の低下が抑制される。
【0035】
図1から図4に示したビームスプリッタ1においては、三角柱状のプリズム10の反射面11の一部を突出させて透過面12を形成している。しかし、これに限らず、図5に示す第3の変形例のビームスプリッタ1のように、反射面11の一部を入射面13に向かいへこませることにより透過面12を形成してもよい。このような態様であっても、図3、図4と同様に、透過面12の面積や位置を変えることが可能であり、反射光Bと透過光Cとの分岐比を適切に設定することができる。
【0036】
また、透過面12には反射防止膜20を設けることが好ましい。これによって、入射光Aが透過面12で反射されて、ビームスプリッタ1の内部に戻ることを抑制することができる。反射防止膜20として、フッ化マグネシウム(MgF)を用いることができ、蒸着法等の薄膜法により形成される。フッ化マグネシウム(MgF)は、屈折率が約1.38の低屈折材料であり、単層で反射光を抑制することが可能であり光の吸収や損失も小さい。
【0037】
なお、入射面13及び出射面14についても、同様に反射防止膜20を形成することも可能である。こうすれば、入射光Aが入射面13で反射されて光源側へと戻る光を防止することができる。また、反射光Bが出射面14で反射されてプリズム10の内部に戻る光が抑制される。
【0038】
<第2の実施形態>
図6には、第2の実施形態におけるビームスプリッタ2の模式断面図を示す。なお、第1の実施形態におけるビームスプリッタ1と同じ構成要素については、同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0039】
図6に示すように、第2の実施形態におけるビームスプリッタ2において、第1の実施形態と同様に、入射光Aを反射させる反射面11が形成されているとともに、入射光Aの一部を透過させる透過面12が反射面11の一部に設けられている。これにより、分岐比を適切に設定して入射光Aを反射光Bと透過光Cとに分岐することが可能である。
【0040】
図6に示すように、本実施形態においては、入射面13の一部に光学機能面22が形成されている。本実施形態において光学機能面22は、発散光を平行光へと変換するコリメートレンズである。図6に示すように、半導体レーザ31からの発散光が入射光Aとして入射されて光学機能面22を透過すると、ビームスプリッタ2の内部では平行光となって進行する。平行光は反射面11で反射されて反射光Bとして外部へ出射され、平行光の一部は透過面12を透過して透過光Cとして分岐される。半導体レーザ31からの発散光が平行光に変換されずにビームスプリッタ2に入射すると、ビームスプリッタ2の内部における不要な反射が増大して、光損失が大きくなってしまう。本実施形態のビームスプリッタ2によれば、光学機能面22により発散光が平行光へと変換されるため、内部反射を抑制して光の損失を抑えることができる。また、入射光Aが平行光へと変換されて反射面11及び透過面12に進行することにより、分岐比を適切に設定して反射光Bと透過光Cとに分岐させることが可能となる。
【0041】
なお、光学機能面22は、入射面13における入射光Aの断面形状よりも大きい形状となるように形成することが好ましい。こうすれば、入射面13における光損失を低減することができ、入射光Aのほとんどが平行光へと変換される。
【0042】
また、本実施形態のビームスプリッタ2を組み込んで光通信モジュールとしたときに、半導体レーザ31とビームスプリッタ2との間にコリメートレンズ等の光学素子を設ける必要がないため、光学部品を削減して製造コストを低減することが可能である。また、半導体レーザ31とビームスプリッタ2との間の光路長を短くすることができ、光結合効率の向上及び光通信モジュールの小型化に有利である。
【0043】
本実施形態におけるビームスプリッタ2は、第1の実施形態のビームスプリッタ1と同様に、光学ガラス材料を用いてプレス成形により形成することができる。すなわち、入射面13に光学機能面22を設ける場合であっても、三角柱状のプリズム10と光学機能面22及び突出面12が同一の工程で一体に成形されるため、製造コストが抑制される。
【0044】
図7は、第2の実施形態の第1の変形例を示す、ビームスプリッタ2の模式断面図である。本変形例においては、出射面14に光学機能面23が形成されている。光学機能面23は特に限定されるものではないが、反射光Bを光ファイバ33の端面へと受光させるための集光レンズとすることができる。この場合、光学機能面23は、球面収差を補正する非球面レンズとすることが好ましい。また、光学機能面23は反射光Bの断面形状よりも大きい形状で形成されることが好ましい。これによれば、出射面14での光損失を抑制して、反射面11で分岐された反射光Bが効率よく光ファイバ33の端面に結合される。
【0045】
また、このようなビームスプリッタ2を組み込んで通信モジュールとした場合に、反射光Bを光ファイバ33の端面へと集光させる集光レンズを別体で設ける必要がなくなることから、光ファイバ33とビームスプリッタ2との間の光路長を短くすることができ、光結合効率の向上及び光通信モジュールの小型化につながる。また、各光学部材を設置する際に、反射光Bと光ファイバ33との位置合わせのみで済むことから、光結合効率を向上させることが容易である。
【0046】
また、図6及び図7に示したビームスプリッタ2において、入射面13に光学機能面22を設けるとともに、出射面14にも光学機能面23を設けることも可能である。こうすれば、光通信モジュールとしたときに、コリメートレンズや集光レンズ等の光学部材を省くことができ、通信モジュールの小型化が可能となる。また、光源である半導体レーザ31から受光部である光ファイバ33までの光学長を短くできることから、光結合効率を向上させることが可能である。
【0047】
図8には、第2の実施形態の第2の変形例である、ビームスプリッタ2の模式断面図を示す。本変形例のように、透過面12に光学機能面24を設けてもよい。透過光Cをフォトダイオード32の受光面に受光させる場合に、集光レンズ等の光学機能面24を設けることにより効率よく受光させることが可能となる。また、透過面12が複数形成されている場合においても、それぞれに光学機能面24を形成することにより、透過光Cは効率的にフォトダイオード32の受光面に受光されることになる。
【0048】
<第3の実施形態>
図9には、第1の実施形態のビームスプリッタ1を用いた光通信モジュール3の模式平面図を示す。光通信モジュール3は、光源としての半導体レーザ31、伝送媒体としての光ファイバ33、波長変動をモニタリングするためのフォトダイオード32、半導体レーザ31からの光を分岐するビームスプリッタ1等がパッケージ50内に配置されて構成される。半導体レーザ31から出射された発散光は、コリメートレンズ41を透過して平行光へと変換される。コリメートレンズ41を透過した平行光は、入射光Aとしてビームスプリッタ1の入射面13に入射されて、入射光Aの一部は反射面11で反射されて出射面14に向かい進行して反射光Bとして出射される。反射光Bは、集光レンズ42で集光されて光ファイバ33の端面へと結合される。このようにして、半導体レーザ31からの光信号がビームスプリッタ1を介して光ファイバ33に結合されて、光ファイバ33を伝送媒体とする光通信を実現することができる。
【0049】
また、半導体レーザ31から出射される光の波長は、温度や経年劣化の影響により変化する場合がある。波長変動が発生するとクロストークや受信感度の低下が生じて、伝送特性が劣化するおそれがある。このような不具合を防ぐために、半導体レーザ31からの光の一部をモニタリングして、半導体レーザ31からの光の波長を制御することが行われている。
【0050】
図9に示すように、本実施形態の光通信モジュール3においては、入射光Aの一部は透過面12を透過して、波長変動をモニタリングするためフォトダイオード32へと結合される。透過面12とフォトダイオード32との間には、バンドパスフィルタ43が配置されており、所定の波長領域の光のみが透過されてフォトダイオード32へと結合される。バンドパスフィルタ43は、例えば、半導体レーザ31の波長を中心波長として、一定の範囲の光を透過させる特性を有する。また、フォトダイオード32は、受光する光量に応じて電流を発生させる素子である。したがって、半導体レーザ31からの光の波長変動が生じた場合、バンドパスフィルタ43を透過する透過光Cの一部が制限されて、フォトダイオード32への受光量が変化する。これにより生じるフォトダイオード32の電流変化は、波長制御部(図示しない)へと伝達されて、電流信号の変化に基づいて半導体レーザ31の光の波長が制御される。
【0051】
本実施形態の光通信モジュール3において、光信号の伝達に寄与するのは、入射光Aのうち光ファイバ33に受光される反射光Bであり、入射光Aから分岐されてモニタリングに用いられる透過光Cは、光通信信号には用いられない。したがって、透過光Cの光量が大きくなると、相対的に光ファイバ33に受光される反射光Bの光量が小さくなり、光信号の品質が劣化するという課題が生じる。本実施形態においては、ビームスプリッタ1を用いることにより、簡単な構成により、反射光Bと透過光Cとの分岐比を適切に設定することができる。これにより、モニタリングに必要な光量を透過光Cとして分岐させることができるため、光ファイバ33へ受光される反射光Bの光量を十分確保することができる。また、従来例のビームスプリッタ101では、2つの三角柱状のプリズム110a、110bの接合面に設けられた接着剤層109や多層膜によって光の吸収や損失が生じるが、本実施形態においては、1つのプリズム10で構成されているため、効率よく入射光Aが分岐される。したがって、本実施形態の光通信モジュール3によれば、半導体レーザ31と光ファイバ33との光結合効率を向上させることが可能となる。
【0052】
なお、モニタリングに用いられる透過光Cの分岐比は、半導体レーザ31の光の強度、フォトダイオード32の受光感度等により決定されるが、例えば、半導体レーザ31から出射される光の10%〜20%程度が透過光Cとして分岐されると波長のモニタリングが可能である。本実施形態においては、反射面11における透過面12の位置、面積を適切に設けることにより、10%〜20%の分岐比で分岐することができ、半導体レーザ31の光の80%〜90%が光ファイバ33へと結合される。
【0053】
また、光通信モジュール3において、第2の実施形態で示したビームスプリッタ2を用いることもできる。これによれば、入射面13及び出射面14の少なくとも一方に光学機能面22、23が形成されることから、コリメートレンズ41または集光レンズ42、あるいはその両方の機能がビームスプリッタ2に付加される。したがって、光学部材のうちコリメートレンズ41及び集光レンズ42の少なくとも一方を省く事が可能であり、光通信モジュール3の小型化、低コスト化が実現できる。さらに、半導体レーザ31から光ファイバ33の光路長を短縮することができるため、光通信モジュール3の小型化及び光結合効率の向上が可能となる。
【0054】
本実施形態の光通信モジュール3は、反射光Bを光ファイバ33へと結合させて、透過光Cを波長モニタリングに用いているが、この態様に限定されるものではなく、透過光Cを光ファイバ33へと結合させて、反射光Bを波長モニタリングに用いるような構成であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1、2 ビームスプリッタ
3 光通信モジュール
10 プリズム
11 反射面
12 透過面
13 入射面
14 出射面
20 反射防止膜
22、23、24 光学機能面
31 半導体レーザ
32 フォトダイオード
33 光ファイバ
41 コリメートレンズ
42 集光レンズ
43 バンドパスフィルタ
50 パッケージ
A 入射光
B 反射光
C 透過光
D 入射角


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を反射光と透過光とに分岐させるビームスプリッタにおいて、
入射光の光軸に対して臨界角より大きい角度で傾斜して形成された反射面と、
前記入射光の一部を透過させる透過面と、を有し、
前記透過面は、入射光の光軸に対してブリュースタ角以下の傾斜角を有して前記反射面の一部に設けられていることを特徴とするビームスプリッタ。
【請求項2】
プリズムを有して構成されており、前記反射面及び前記透過面は前記プリズムと一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のビームスプリッタ。
【請求項3】
前記透過面には反射防止膜が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のビームスプリッタ。
【請求項4】
前記入射光が入射する入射面と、前記反射光が出射する出射面とを有し、
前記入射面及び前記出射面の少なくとも一方には光学機能面が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のビームスプリッタ。
【請求項5】
半導体レーザと、前記半導体レーザからの光を受光する光ファイバと、前記半導体レーザからの光を受光する受光素子と、前記半導体レーザと前記光ファイバ及び前記半導体レーザと前記受光素子とを光学的に結合させるビームスプリッタとを有し、
該ビームスプリッタは、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のビームスプリッタであることを特徴とする光通信モジュール。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−61587(P2013−61587A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201352(P2011−201352)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】