説明

ビール安定化処理用シリカゲル、およびビール安定化処理方法

【課題】従来品と同様にタンパク質を除去可能で、しかも、クロスフローメンブレン濾過機で長時間にわたる使用が可能なビール安定化処理用シリカゲルと、そのビール安定化処理用シリカゲルを使用したビール安定化処理方法を提供すること。
【解決手段】本発明のビール安定化処理用シリカゲルは、濾過性能を示すDarcy係数が0.29〜1.0、濃度1重量%水スラリーを2時間静置した後の透過率が50%以上とされている。このビール安定化処理用シリカゲルにおいては、比表面積が700〜1000m2/g、細孔容積が1.1〜1.6ml/g、平均細孔径が6〜10nmとされていると好ましい。さらに、本発明のビールの安定化処理方法は、上記のように構成されるビール安定化処理用シリカゲルとビールを接触させた後、シリカゲルをクロスフローメンブレン濾過にて分離することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビールの混濁安定性を改善するために用いられるビール安定化処理用シリカゲルと、ビール安定化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビールの混濁安定性を改善するため、シリカゲルを利用してビールに含まれるタンパク質を除去する技術は知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、国内の大規模醸造所においては、上記のようなビール安定化処理用シリカゲルとビールとを接触させてビール中に含まれるタンパク質をシリカゲルに吸着させた後、ビールとシリカゲルを含む混合物を珪藻土濾過機へと導入することで、ビールからシリカゲルを除去している。
【0003】
このような工程によってビール中に含まれる不要なタンパク質を除去すると、ビール中に含まれるポリフェノールがタンパク質と結合しなくなるため、混濁原因物質の生成が抑制され、ビールの混濁安定性を改善することができる。
【0004】
しかし、上記のような珪藻土濾過機を使用すると、どうしても多量の珪藻土スラッジが発生する。この珪藻土スラッジは、副産物として再利用するものの、多大なコストを要する。また、珪藻土濾過機には、製品を切り替える時のロスが大きいという問題もある。
【0005】
そのため、コスト面の問題や環境問題への配慮から、現在、ビール業界では、珪藻土濾過機とは別の濾過システムを使用することが検討され、その有力な候補の一つとして、クロスフローメンブレン濾過機が注目されている。
【0006】
クロスフローメンブレン濾過機では、管状の膜モジュールの内側流路に濾過前液を高速で循環させ、この流れと垂直方向に濾液を得る。循環による膜表面の掻き取り効果のために透過流速および非濾液側と濾液側との間の膜間圧力(以下、膜間差圧と呼ぶ)が維持され、長時間濾過が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平09−025114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述のようにシリカゲルを利用してビールの安定化処理を行っている場合、クロスフローメンブレン濾過機を、珪藻土濾過機の単なる代替手段として利用することはできなかった。
【0009】
具体的には、従来のビール安定化処理用シリカゲルを、ビールとともにクロスフローメンブレン濾過機に通すと、ごく短時間で膜細孔が目詰まりするため、膜間差圧が直ちに上がってしまい、長時間の使用に耐えられない、という問題があった。
【0010】
一方、クロスフローメンブレン濾過機は、既に、海外の一部においてはビール業界での普及も始まっている。ただし、海外では、安定化処理剤として一般的にポリビニルポリピロリドン(以下、PVPPと略称する)が利用されている。
【0011】
安定化処理剤としてPVPPを用いた場合、ビールに含まれるポリフェノールが除去され、これにより、ビール中に含まれるタンパク質がポリフェノールと結合しなくなるため、混濁原因物質の生成が抑制されることになる。
【0012】
しかし、このようにPVPPでポリフェノールを除去すると、シリカゲルでタンパク質を除去する従来方式とは、最終的に得られるビールの味の特徴が変わってしまう、という問題がある。そのため、既存のビールと同じ味を維持するためには、単にPVPPをシリカゲルの代替品として使用することはできない、という問題があった。
【0013】
つまり、従来と同等な味わいのビールを製造したい場合、安定化処理剤としてシリカゲルを使用することは必須であるが、シリカゲルを使うとクロスフローメンブレン濾過機の使用が困難になる、という問題があった。
【0014】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、従来品と同様に不要なタンパク質を除去可能で、しかも、クロスフローメンブレン濾過機で長時間にわたる使用が可能なビール安定化処理用シリカゲルと、そのビール安定化処理用シリカゲルを使用したビール安定化処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以下、本発明において採用した特徴的構成について説明する。
請求項1に記載のビール安定化処理用シリカゲルは、濾過性能を示すDarcy係数が0.29〜1.0、濃度1重量%水スラリーを2時間静置した後の透過率が50%以上であることを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載のビール安定化処理用シリカゲルは、請求項1に記載のビール安定化処理用シリカゲルにおいて、比表面積が700〜1000m2/g、細孔容積が1.1〜1.6ml/g、平均細孔径が6〜10nmであることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載のビールの安定化処理方法は、請求項1または請求項2に記載のビール安定化処理用シリカゲルとビールを接触させた後、前記シリカゲルをクロスフローメンブレン濾過にて分離することを特徴とする。
【0018】
以上のように構成される本発明のビール安定化処理用シリカゲルは、寒冷混濁の原因となるタンパク質除去性能を従来品と同等に保ちながら、クロスフローメンブレン濾過にも対応し、長時間安定した濾過を可能とする新規なものである。
【0019】
一般に、Darcy係数は濾過性能の指標の一つとなり、上記特許文献1においても着目されているが、クロスフローメンブレン濾過の場合は、珪藻土などの濾過助剤を使用しないため、プレコート層もなく直接膜によって濾過される。そのため、Darcy係数だけに着目して物性の最適化を図っても、膜の目詰まりが著しくなる場合があり、クロスフローメンブレン濾過を正常に実施することができないことがある。
【0020】
そこで、本件発明者らは、Darcy係数と同時に透過率の制御を行い、これらのパラメータを同時に最適化することで、正常にクロスフローメンブレン濾過が行えることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0021】
また、そのような検討を行う中で、優れた吸着性能を確保するには、比表面積を700〜1000m2/g、細孔容積を1.1〜1.6ml/g、平均細孔径を6〜10nmとすると好適であることも確認した。
【0022】
より詳しくは、本件発明者らが実験的に確認したところ、Darcy係数および透過率の数値が、共に低い場合、またはどちらかが低い場合、そのようなシリカゲルでは差圧上昇速度が速く、実用に耐えないものであった。具体的には、Darcy係数が0.29未満の場合、あるいは、濃度1重量%水スラリーを2時間静置した後の透過率が50%未満の場合は、クロスフロー濾過膜にシリカゲルが詰まりやすくなる傾向があり、膜間差圧が過剰に上昇しやすくなるため、長時間にわたる安定した処理ができなくなる傾向がある。
【0023】
また、Darcy係数が高いシリカゲルは、差圧上昇速度は良好であるが、濾過ビールの分析において、感受性タンパクの値が高く吸着性能、濾過の効果が劣ることを確認した。すなわち、Darcy係数1.0以上になると、吸着性能が維持できなくなるため、これも望ましくない。
【0024】
濾過差圧の上昇と品質は、相反の関係にあり、シリカゲルの物性は適切な範囲にしなければならない。より好ましくは、感受性タンパクが低く、差圧上昇速度が遅いシリカゲルであるが、Darcy係数が低ければ感受性タンパクも低くなる傾向にある。したがって、差圧上昇が遅く、できるだけDarcy係数が低いシリカゲルがより望ましいと言える。
【0025】
さらに、従来品と同等以上の吸着性能を維持するには、比表面積が700m2/g以上であると好ましく、比表面積が700m2/g未満になると、従来品と同等以上の吸着性能を維持することは難しくなる傾向がある。一方、シリカゲルの比表面積は大きいほど望ましいが、比表面積が1000m2/g超過となるものは、工業的な製造が困難となるため現実的ではない。
【0026】
また、平均細孔径は、6nm未満になると、著しい吸着性能の低下がみられるので好ましくなく、一方、10nm超過となると、比表面積700m2/g以上といった大きな表面積を維持することが困難となる点で好ましくない。
【0027】
加えて、シリカゲルにおける比表面積、細孔径、細孔容積は、互いに従属的な関係を有するため、細孔容積に関しては比表面積、細孔径を上述の如き範囲で制御する場合、1.1〜1.6ml/g程度の範囲が妥当である。
【0028】
以上のような本発明のシリカゲルは、従来の珪藻土濾過機で使用されていたシリカゲルと同等の優れた吸着性能を有し、ビールと接触させることで有効に安定化処理を行うことができるものである。しかも、従来の珪藻土濾過機で使用されていたシリカゲルとは異なり、クロスフローメンブレン濾過機で使用しても、長時間にわたって濾過性能を損ねることがないものである。なお、このような効果は、後述する実施形態の中で、さらに具体的に明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の実施形態について一例を挙げて説明する。
〔1〕シリカゲルの製造方法
まず、SiO2濃度が10〜20重量%となるように珪酸塩と無機酸を反応させてシリカヒドロゾルを生成し、そのシリカヒドロゾルをゲル化する。珪酸塩としては、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸アンモニウム等を使用できるが、工業的には珪酸ナトリウムが多く使われている。また、無機酸としては、硫酸、硝酸、塩酸等を使用できるが、一般的には硫酸が用いられる。
【0030】
次いで、得られたシリカヒドロゲルを水洗すると、シリカヒドロゲルに含まれる無機酸塩が除去される。このシリカヒドロゲルに対して水熱処理を行うことで、シリカゲルの比表面積、平均細孔径および細孔容積を調整することができる。
【0031】
具体的には、シリカゲルに対し、pH2〜10、温度20〜100℃の水で水熱処理すると、細孔径および細孔容積が増大する一方、比表面積が低下する傾向がある。このとき水熱重合に用いる水のpHおよび温度設定に応じて、シリカゲルの比表面積、細孔径、細孔容積が調整される。
【0032】
次に、このシリカヒドロゲルを、10〜30μmの平均粒子径となるようにロッドミル、ボールミル、ジェットミルなどの微粉砕機で粉砕して、温度100〜1000℃で、1〜100秒間乾燥し、慣性分級や遠心分級型の乾式分級機またはふるい分け分級機により分級を行う。ここで、粉砕および分級工程は濾過性能の指標であるDarcy係数及び透過率を決めるための重要なファクターとなるため、双方をコントロールすることによって、Darcy係数が0.29〜1.0、濃度1重量%水スラリーを2時間静置した後の透過率50%以上の物性を得ることが出来る。
【0033】
以上のような手順で得られたシリカゲル(実施例1〜実施例7,および比較例1〜比較例3)の粉体物性を[表1]に示す。また、[表1]には市販の珪藻土濾過機対応のシリカゲル(比較例4)の粉体物性も併記してある。
【0034】
【表1】

上記[表1]において、シリカゲルの各物性値の測定・算出は、以下のように行った。
【0035】
(比表面積)
シリカゲル試料を180℃でオーブン乾燥し、簡便窒素吸着法(迅速表面積測定装置SA−1000、柴田科学器工業株式会社製)により決定した。
【0036】
(細孔容積)
シリカゲル試料を180℃でオーブン乾燥し、水による滴定法で決定した。一般的に、細孔容積は、窒素吸着等温線から求められることが多いが、シリカゲルの細孔径が大きい場合、窒素吸着等温線から正確な細孔容積を求めることはできない。そこで、乾燥したサンプルを約100mlのマヨネーズ瓶に5g秤量し、水を滴下して粉体が舞い上がらなくなったところを終点として細孔容積とした。
【0037】
(細孔径)
次式により決定した。
細孔径(APD)=(4000×細孔容積)/比表面積
(平均粒子径)
レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2200、株式会社島津製作所製)にて測定した。
【0038】
(Darcy係数)
シリカゲル20gを脱イオン水500ml中に分散させ、目開き33μmで60mm径の金網を用い、吸引圧40cmHgで濾過する。この時400mlから150mlまでの濾過に要した時間を計る。その後、すべて濾過し、堆積したシリカのケーキを取り出して厚みを測る。濾過特性を示すDarcy係数は次式により算出した。
【0039】
Darcy係数=(ケーキ厚[cm]×時間あたりの濾過量[250ml]×水の粘度[mPa・s])/(濾過時間[sec]×濾過面積[cm2]×(吸引圧[cmHg]/76))。
【0040】
(透過率)
シリカゲル1gと蒸留水99gを100mlのねじ口瓶に入れ、1分間攪拌する。直ちにスラリー4mlを量り取り、石英セル(サイズ:10×10×45mm)に注入する。紫外線可視分光光度計(V−550、日本分光株式会社製)に装着して静置し、2時間後の透過率(波長350nm)を測定した。
【0041】
〔2〕シリカゲルでの安定化処理およびクロスフローメンブレン濾過による分離除去
パイロットプラントにより製造した試験用ビールに、上記の各シリカゲルをビール1キロリットルあたり300gの割合でボディフィードした。一定時間シリカゲルとビールを接触させた後、濾過流量15L/minのクロスフローメンブレン濾過機にて試験用ビール約1500Lの濾過を行った。
【0042】
各シリカゲルを使用したときのクロスフローメンブレン濾過機の膜間差圧上昇速度と濾過ビールの特性を[表2]に示す。
【0043】
【表2】

上記[表2]において、濾過性能および吸着性能は以下の方法により評価した。
【0044】
(膜間差圧上昇速度)
濾過中の膜間差圧の上昇を単位時間当たりで表したもの。膜間差圧上昇速度0.65kPa/min以下ならばクロスフローメンブレン濾過機による実用が可能。
【0045】
(感受性タンパク)
タンノメーター(Pfeuffer社製)による測定。
[表2]の結果より、Darcy係数が0.29〜1.0の範囲で、濃度1重量%水スラリーを2時間静置した後の透過率が50%以上であるシリカゲル(実施例1〜実施例7)に関しては、膜間差圧上昇速度、濾過ビールの物性も良好であることが認められた。
【0046】
これに対し、Darcy係数および透過率の数値が共に低いシリカゲル比較例1、比較例2および比較例4では膜間差圧上昇速度が速く、実用に耐えないものであった。また、Darcy係数が1.0を超えるシリカゲル比較例3は、膜間差圧上昇速度は良好であるが、濾過ビールの分析において、感受性タンパクの値が高く吸着性能が劣ることを確認した。
【0047】
〔3〕クロスフローメンブレン濾過の長時間運転試験
上記〔2〕の試験において良好な結果が得られた実施例2のシリカゲルについて、更に実用化の可能性を確認するために、クロスフローメンブレン濾過の長時間運転を行った。クロスフロー濾過の方法は上記〔2〕の試験と同様。運転時間は6時間で約5400Lのビール処理を行った。結果を[表3]に示す。
【0048】
【表3】

上記[表3]において、ビールの特性は以下のように測定した。
【0049】
(pH)……………pHメーターによる測定。
(アルコール)……EBC(European Brewery Convention)法に準ずる。
測定はSCABA Automatic Beer Analyserによる。
【0050】
(原麦汁エキス)…EBC(European Brewery Convention)法に準ずる。
測定はSCABA Automatic Beer Analyserによる。
(外観エキス)……EBC(European Brewery Convention)法に準ずる。
【0051】
測定はSCABA Automatic Beer Analyserによる。
(色度)……………EBC(European Brewery Convention)法に準ずる。
測定はSCABA Automatic Beer Analyserによる。
【0052】
(寒冷混濁)………EBC(European Brewery Convention)法に準ずる。
(泡持ち時間)……EBC(European Brewery Convention)法に準ずる。
測定はNIBEM−T meterを使用。
【0053】
[表3]の結果から、上記実施例2のシリカゲルによれば、6時間のクロスフローメンブレン濾過における運転での膜間差圧には問題なく、且つ、濾過ビールの物性に関しても安定したものが得られることがわかった。
【0054】
これに対し、市販の珪藻土濾過機対応のシリカゲル(上記比較例4のシリカゲル)は1時間15分程度で膜間差圧の限界点まで達し、使用できないという結果になった。
〔4〕変形例等
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な一実施形態に限定されず、この他にも種々の形態で実施することができる。
【0055】
例えば、上記実施形態では、濾過性能を示すDarcy係数と、濃度1重量%水スラリーを2時間静置した後の透過率について、特定の数値を持つ7種のシリカゲルを実施例1〜7として例示したが、本発明はこれらの具体的な実施例に限定されるものではない。
【0056】
発明者らが確認したところ、Darcy係数については、0.29未満の場合は、クロスフロー濾過膜にシリカゲルが詰まりやすくなる傾向があり、膜間差圧が過剰に上昇しやすくなるため、長時間にわたる安定した処理ができなくなる傾向があった。一方、Darcy係数1.0以上になると、吸着性能が維持できなくなる傾向があった。したがって、Darcy係数については0.29〜1.0の範囲内に調整すると好ましいと考えられる。
【0057】
また、濃度1重量%水スラリーを2時間静置した後の透過率については、50%未満になると、クロスフロー濾過膜にシリカゲルが詰まりやすくなる傾向があり、膜間差圧が過剰に上昇しやすくなる。そのため、長時間にわたる安定した処理ができなくなる傾向があるので、透過率については50%以上に調整すると好ましいと考えられる。
【0058】
つまり、Darcy係数が0.29〜1.0の範囲内で、かつ透過率が50%以上となっていれば、クロスフローメンブレン濾過で用いるのに好適なシリカゲルとなる。
また、上記実施形態では、シリカゲルの比表面積、細孔容積、平均細孔径についても、特定の数値を持つ7種のシリカゲルを実施例1〜7として例示したが、これらのパラメータについても、上記実施例1〜7が持つ値に限定されるものではない。
【0059】
発明者らが確認したところ、比表面積が700m2/g未満になると、従来品と同等以上の吸着性能を維持することは難しくなる傾向があった。一方、シリカゲルの比表面積は大きいほど望ましいが、比表面積が1000m2/g超過となるものは、工業的な製造が困難となるため現実的ではない。
【0060】
また、平均細孔径は、6nm未満になると、著しい吸着性能の低下がみられた。一方、平均細孔径が10nm超過となると、比表面積700m2/g以上といった大きな表面積を維持することが困難であった。
【0061】
さらに、シリカゲルにおける比表面積、細孔径、細孔容積は、互いに従属的な関係を有するため、細孔容積に関しては比表面積、細孔径を上述の如き範囲で制御する場合、1.1〜1.6ml/g程度の範囲が妥当であることが判明した。
【0062】
したがって、これらの事項を勘案すると、シリカゲルの比表面積、細孔容積、平均細孔径については、比表面積が700〜1000m2/gの範囲内、細孔容積が1.1〜1.6ml/gの範囲内、平均細孔径が6〜10nmの範囲内となっていれば、クロスフローメンブレン濾過で用いるのに好適なシリカゲルとなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過性能を示すDarcy係数が0.29〜1.0、濃度1重量%水スラリーを2時間静置した後の透過率が50%以上である
ことを特徴とするビール安定化処理用シリカゲル。
【請求項2】
比表面積が700〜1000m2/g、細孔容積が1.1〜1.6ml/g、平均細孔径が6〜10nmである
ことを特徴とする請求項1に記載のビール安定化処理用シリカゲル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のビール安定化処理用シリカゲルとビールを接触させた後、前記シリカゲルをクロスフローメンブレン濾過にて分離する
ことを特徴とするビールの安定化処理方法。

【公開番号】特開2010−17177(P2010−17177A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130456(P2009−130456)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000237112)富士シリシア化学株式会社 (38)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】