説明

ピオグリタゾン塩、例えば硫酸ピオグリタゾン、およびそれを使用した医薬組成物および方法

ピオグリタゾンの水溶性塩、特に硫酸ピオグリタゾンは、医薬用途に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、ピオグリタゾンの水溶性塩を包含するピオグリタゾンの塩、これらの塩を含む医薬組成物、およびこれらの塩を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
式(1)で示されるピオグリタゾン、化学名5−[[4−[2−(5−エチル−2−ピリジニル)−エトキシ]フェニル]メチル]−2,4−チアゾリジンジオンは、糖尿病薬である:
【化1】

ピオグリタゾンを塩酸塩として含む医薬組成物は、II型糖尿病の治療用に、商品名「ACTOS」(登録商標)(「武田薬品工業」(Takeda Chemical Ind.))として市販されている。塩酸ピオグリタゾンは、融点193〜194℃の無臭白色結晶性粉末であると一般的に考えられている。それは、無水エタノールに僅かに可溶性、アセトンおよびアセトニトリルに極僅かに可溶性、水に実質的に不溶性、エーテルに不溶性であることが知られている。しかし、塩酸ピオグリタゾンは、N,N−ジメチルホルムアミドおよびジメチル−スルホキシドによく溶解する。
【0003】
欧州特許第193256号および対応する米国特許第4687777号は、チアゾリジンジンオン誘導体の種類、特にピオグリタゾンを開示している。これらの文献は、酸または塩基を使用して、チアゾリジンジオン誘導体を薬理学的に許容される塩に変換し得ることも開示している。該塩の種類としては、無機塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩等)、有機酸塩(例えば、琥珀酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩等)、およびスルホン酸塩(例えば、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩等)が挙げられる。塩基性塩としては、アルカリ金属塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、およびアルカリ土類金属塩、例えばカルシウム塩等が挙げられる。これらの文献における実施例は、ピオグリタゾンを塩基およびナトリウム塩として分離することを含む;それぞれ、米国特許第4687777号の実施例1(d)および1(e)を参照。
【0004】
塩酸ピオグリタゾンは、多くの医薬目的に好適な特性を示す。それは、取扱いが容易な結晶質であり、室温および湿分下に安定である。しかし、それは、水に極めて不溶性であり、医薬水溶液の製造に適していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
製造および/または配合目的のために、ピオグリタゾンの水溶性塩が望ましい。例えば、そのような塩は、液体医薬投与形態、例えば経口液剤または注射可能製剤を製造するのに有用である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要旨
本発明は、水溶性ピオグリタゾン塩の発見、およびピオグリタゾン塩における水の作用に関する。特に、本発明の第一の態様は、硫酸ピオグリタゾンに関する。硫酸ピオグリタゾンは、固体形態、好ましくは結晶形態、ならびに溶解形態を包含する任意の形態であってよい。
【0007】
本発明の他の態様は、硫酸ピオグリタゾンおよび少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤を含む医薬組成物に関する。医薬的に許容される賦形剤は、好ましくは液体担体、例えば水、または固体担体、結合剤または希釈剤である。水性組成物において、溶解安定剤、例えばポリマーも含有するのが好ましい。
【0008】
本発明のさらに他の態様は、有効量の本発明医薬組成物を、治療を必要とする患者に投与することを含む低血糖疾患の治療法に関する。
【0009】
本発明のさらに他の態様は、ピオグリタゾン、または硫酸ピオグリタゾン以外のその塩を溶媒中で硫酸と反応させることを含む、硫酸ピオグリタゾンの製造法に関する。好ましくは、溶媒はメタノールである。
【0010】
他の態様において、本発明は、固体ピオグリタゾン塩基がそれから沈殿するのに充分な時間にわたって、ピオグリタゾン塩と水とを接触させることを含む方法に関する。水は、中和剤を含有しないのが好ましい。
【0011】
発明の説明
簡単に言えば、本発明は、水溶性ピオグリタゾン塩、特に硫酸ピオグリタゾンのような水溶性酸付加塩の発見を含む。該水溶性塩は、少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤も含有する医薬組成物に、含有されていてもよい。これらの医薬組成物は、低血糖疾患の治療法に使用され得る。
【0012】
ここに使用されるピオグリタゾン塩は、たとえ一時的にすぎなくても、蒸留水中25℃で少なくとも7mg/mLの塩濃度に達することができれば、「水溶性」であると考えられる。好ましくは、塩は、少なくとも10mg/mL、より好ましくは少なくとも20mg/mLの水溶性を示す。
【0013】
ピオグリタゾンは、酸(「酸付加塩」)または塩基(「塩基性塩」)との塩を形成し得る。ピオグリタゾン酸付加塩を製造するためには、ピオグリタゾン分子の弱塩基性の故に、一般的に強酸が必要とされる。これに関して、弱酸は、ピオグリタゾン塩を生成しない場合が多い。例えば、弱酸(1.5以上のpKaを有する酸、例えばマレイン酸または燐酸)のメタノール溶液中のピオグリタゾン塩基の懸濁液を撹拌した後、出発物質が全て回収され、塩が形成されない。
【0014】
強酸または塩基から誘導されたいくつかのピオグリタゾン塩の水溶性を、下記の表に示す。下記の表において「(dec.)」は、融解の前に分解した塩を示す。
【0015】
【表1】

【0016】
いくつかピオグリタゾン塩、例えば硫酸塩、メシレートおよびエタン−ジ−スルホン酸(エジシレート)塩は、水に瞬時に溶解した。塩酸塩は、従来技術における理解と一致して、水に溶解しなかった。塩基性塩も水に溶解したが、それらは典型的に、不透明溶液を形成した。以下に記載するように、ピオグリタゾンの水溶性塩は、特に固体形態の、ピオグリタゾン医薬組成物の製造における活性剤として有用である。
【0017】
驚くことに、前記の塩の水溶液(溶解した場合)は、完全に安定であるわけではなく、最終的に懸濁液を生じる。塩に依存して、数分以内かまたは数時間後に、固形物の沈殿が始まる。沈殿の時間は、核形成にも依存する。特に、一度固形物が形成されると、溶液はすぐに沈殿して、完全な懸濁液を形成する。沈殿した固形物は、意外にも、ピオグリタゾン塩基であり、ピオグリタゾン塩ではない。
【0018】
興味深いことに、ピオグリタゾンHCl塩のメタノール溶液を水に注いだ場合、酸性塩を中和する塩基(中和剤)を使用せずに、ピオグリタゾン塩基が素早く沈殿する。この水中での沈殿は、ピオグリタゾン塩基の水への溶解性が低いので、平衡がピオグリタゾン塩基の形成に完全にシフトすることを示す。
【0019】
理論に縛られるものではないが、ピオグリタゾン塩基は両性イオンでなく中性非イオン種であると考えられる。この理論は、塩基および塩のピリジン環における1H NMRプロトンシフトの大きな違いによって裏付けられる。
【0020】
本発明の一態様は、この現象に基づく。特に、ピオグリタゾン塩を充分量の水に充分な時間にわたって接触させることによって、ピオグリタゾン塩基を沈殿させる。前記塩は、酸付加塩または塩基性塩であってよく、水溶性または水不溶性であってよい。接触は、ピオグリタゾン塩の有機溶媒溶液を水と合わすか、またはピオグリタゾンの水溶性塩を水性媒質に溶解させることによって行うことができる。接触時間は、特に限定されないが、実際的に考えれば、1時間以内、より好ましくは30分以内、一般的には実質的に接触後すぐ、例えば5分以内に、沈殿するのが通常は好ましい。水の量は特に限定されないが、沈殿作用を生じるのに充分であればよい。一般的に、水の量は、少なくとも1mL/10g塩、例えば1mL/1g、または1mL/0.1gに対応するがそれらに限定されない。中和剤、即ち酸または塩基が存在してよいが、必ずしも必要ではなく、存在しないのが好ましい。この方法は、粗反応媒質からピオグリタゾン塩基を分離するのに特に有用である。ピオグリタゾンを酸または塩基と反応させて塩を形成し、次に、水を添加して、ピオグリタゾン塩基の沈殿を誘発することができる。または、ピオグリタゾン塩、特にピオグリタゾンの水溶性塩を形成し、反応媒質から沈殿させ、分離し、次に、水性媒質に溶解させ、それによって、充分な時間後にピオグリタゾン塩基を沈殿させる。2種類の媒質を使用することによって、粗ピオグリタゾン塩基から親水性および親油性不純物の両方を除去し得る。
【0021】
さらに、ピオグリタゾンの水溶性塩に関して、胃および腸液が水性媒質であることを考えれば、ピオグリタゾン塩基を沈殿させる能力は、ピオグリタゾン塩基の送達用の医薬組成物を設計するのに有用である。
【0022】
水溶性塩のうち、硫酸ピオグリタゾンが最も好ましい。ここに使用される「硫酸ピオグリタゾン」は、ピオグリタゾンおよび硫酸から形成される塩を意味する。前記塩は、特に固体形態において、ピオグリタゾン成分/硫酸成分のモル比約1:1を有するのが好ましい。それは優れた水溶性を有し、水溶液中で何時間にもわたって安定に維持し得る。硫酸ピオグリタゾンは、白色またはほぼ白色の結晶質として固体状態で分離し得る。それは、約105〜115℃の温度で分解せずに融解する。DSC分析は、1つの融解吸熱を示す。固体化合物は、吸湿性でない。従って、硫酸ピオグリタゾンは、例えば活性剤として、医薬製剤製造用のピオグリタゾンの特に有用な形態である。
【0023】
硫酸ピオグリタゾンの水溶液は、微量の固形物が現れた後に、最終的にピオグリタゾン塩基の懸濁液になるが、硫酸ピオグリタゾン溶液を安定化させることができる。特に、溶液安定剤を硫酸ピオグリタゾン水溶液に効果的に添加して、安定性を高めることができる。ここに使用される「溶液安定剤」は、硫酸ピオグリタゾン水溶液に、ある量で存在する場合に、同じ条件下にあるが溶液安定剤を含有しない同じ溶液と比較して、溶液からのピオグリタゾン塩基の沈殿を統計的に顕著に遅延させる添加剤である。好ましくは、安定化した溶液、即ち、溶液安定剤を含有する硫酸ピオグリタゾン溶液は、密閉容器中25℃において、少なくとも1週間、より好ましくは少なくとも1ヶ月間、さらに好ましくは少なくとも3ヶ月間、さらに好ましくは少なくとも6ヶ月間、ピオグリタゾン塩基を沈殿させない。典型的に、溶液安定剤は、ポリマー、例えば水溶性ポリマー、またはクラウンエーテル等である。溶液安定剤は、水溶液に完全に溶解してもよく、部分的に溶解してもよく、および/または膨潤してもよく、または溶解しなくてもよいが、それに溶解しているのが好ましい。溶液安定剤は、好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルピロリドンまたはシクロデキストリンであり、最も好ましくはHPMCである。溶液安定剤の量は、溶液中、一般的に1〜500mg/mL範囲内、典型的には1〜200mg/mL、より典型的には10〜100mg/mLである。従って、安定化した硫酸ピオグリタゾン溶液は、液体医薬製剤として、および/または液体医薬製剤の製造用に、特に有用である。
【0024】
本発明のピオグリタゾン塩は、溶媒中でのピオグリタゾンと適切な酸との従来の塩形成反応によって製造できる。硫酸ピオグリタゾンは、例えば、溶媒中でのピオグリタゾン塩基またはその塩(硫酸ピオグリタゾン以外)と硫酸との反応によって製造できる。一般的に、溶媒は、低級脂肪族アルコール、アセトン等の低級脂肪族ケトン、または、ジエチルエーテル等のエーテル類、または、テトラヒドロフランである。好ましくは、溶媒は、全てまたは部分的に、低級脂肪族アルコール(例えば、C1〜C4アルコール)、例えばメタノールから成る。なぜなら、それらはピオグリタゾン塩基を好適な程度に溶解させ、それらは塩の形成に使用される多くの酸および塩基を溶解させることもできるからである。もし、ピオグリタゾン塩基または酸のアルコール溶媒への溶解性が、意図する目的に不充分であることが分かった場合、一般的な方法、例えば、混合物の加熱(任意に、還流するまで)または溶解性を高める補助溶媒の添加によって、溶解性を増加し得る。
【0025】
硫酸ピオグリタゾンに関して、ピオグリタゾン塩基に対して化学量論当量の硫酸が一般的に使用されるが、僅かに過剰の硫酸、例えば10%モルまでの過剰の硫酸も使用し得る。2:1のような他の比率も使用できる。接触温度は周囲温度であってよいが、任意に溶媒の還流まで、反応混合物を加熱することもでき、一般的に10〜50℃の範囲である。
【0026】
硫酸ピオグリタゾンは溶液から自発的に沈殿することができるが、冷却、濃縮、種結晶の添加、または反溶媒(コントラ溶媒、contrasolvent)の添加のような、ある工程を行うことが有利および/または必要である可能性が高い。硫酸ピオグリタゾンはメタノールに可溶性であるので、反溶媒の添加は、固体状の塩を沈殿させるのに好都合である。有用な反溶媒、即ち、該溶媒中で塩が溶液溶媒より低い溶性である溶媒としては、より低い極性の溶媒、例えば、エーテル;または、ヘキサンまたはヘプタン等の脂肪族炭化水素;、またはそれらの両方の組合せが挙げられる。形成される結晶の大きさおよび形は、既知の方法、例えば沈殿法または結晶化調節剤の使用によって、変化させ得る。
【0027】
沈殿の前に、硫酸ピオグリタゾンの溶液を、活性炭またはシリカのような好適な吸着物質によって処理して、微量の不純物、例えば着色不純物等を除去して、生成物の総体的純度を増加し得る。
【0028】
沈殿後、濾過または遠心分離のような方法によって、硫酸ピオグリタゾンを反応混合物から分離し、任意に、好適な液体(例えば反溶媒等)で洗浄し、例えば真空等において、乾燥し得る。分離生成物は溶媒和化合物の形態で分離し得るが、溶媒を乾燥によって除去してもよい。
【0029】
固体状態の硫酸ピオグリタゾンは安定であり、取扱いが容易な固体物質であり、ピオグリタゾンで治療可能な疾患の治療用の医薬組成物において、塩酸ピオグリタゾンの等価物として使用し得る。前記の多くの態様において、硫酸塩は、塩酸塩よりかなり優れている。
【0030】
ピオグリタゾン塩は、分離しているか分離していないかに関係なく、少なくとも70%、例えば、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%の純度を有し得る(パーセントは重量に基づく)。医薬投与組成物における使用を意図する場合、ピオグリタゾン塩は典型的に少なくとも99.8%、例えば99.9%の純度を有する。
【0031】
医薬用途において、ピオグリタゾン塩、例えば硫酸ピオグリタゾンは、種々の固体、半固体または液体組成物に製剤し得る。
【0032】
組成物は、ピオグリタゾン塩および少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤を含む。医薬的に許容される賦形剤は、当分野で既知であり、担体、希釈剤、充填剤、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、流動促進剤、着色剤、顔料、矯味剤、甘味剤、可塑剤およびあらゆる許容される補助物質、例えば、吸収促進剤、浸透促進剤、界面活性剤、補助界面活性剤および特殊油等が挙げられる。適切な賦形剤は、投与形態、意図する投与法、意図する放出速度、および製造信頼性に部分的に基づいて選択される。一般的な種類の賦形剤の例は、種々のポリマー、ワックス、燐酸カルシウム、糖等である。ポリマーとしては、セルロースおよびセルロース誘導体、例えば、HPMC、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、カルシウムカルボキシメチルセルロースおよびエチルセルロース等;ポリビニルピロリドン;ポリエチレンオキシド;ポリアルキレングリコール類、例えば、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール等;およびポリアクリル酸、それらのコポリマーおよび架橋ポリマー、例えば、「Carbopol」(登録商標)(B.F. Goodrich)、「Eudragit」(登録商標)(Rohm)、ポリカルボフィルおよびキトサンポリマー等が挙げられる。ワックスとしては、サラシ蜜蝋、ミクロクリスタリンワックス、カルナウバ蝋、水素化ヒマシ油、グルセリルベヘネート、グリセリルパルミトステアレートおよび飽和ポリグリコール化グリセレートが挙げられる。燐酸カルシウムとしては、第二燐酸カルシウム、無水第二燐酸カルシウムおよび第三燐酸カルシウムが挙げられる。糖としては、単純糖、例えば、ラクトース、マルトース、マンニトール、フルクトース、ソルビトール、サッカロース、キシリトール、イソマルトースおよびグルコース、ならびに複合糖(多糖等)、例えば、マルトデキストリン、アミロデキストリン、デンプンおよび加工デンプン等が挙げられる。
【0033】
ピオグリタゾン塩の経口投与用の固体組成物は、組成物からの活性物質の即時または長時間放出を示し得る。固体医薬組成物は、錠剤に製剤し得る。錠剤は、崩壊性または一体構造であってよい。錠剤は、任意の錠剤形成法、例えば、湿式造粒、乾式造粒、または直接圧縮によって製造し得る。
【0034】
一実施形態において、ピオグリタゾン塩を、急速崩壊錠剤、即ち、嚥下の必要なく口腔内で直接崩壊する錠剤に製剤し得る。急速崩壊用のあらゆる一般的な系/配合を使用できる。しかし、好ましい錠剤は、2003年4月16日に出願された共有米国特許仮出願第60/463027号(その全ての内容は引用することにより本明細書の一部をなす)に開示されている少なくとも50%珪化微結晶性セルロースを含む経口崩壊錠剤である。珪化微結晶性セルロースは、好ましくは、米国特許第5585115号に開示されているコロイド状二酸化珪素と微結晶性セルロースとの均質物理的混合物である。二酸化珪素の量は、通常0.1〜20wt%の範囲内、より典型的には1.25〜5wt%、例えば約2wt%等である。珪化微結晶性セルロースの量は、錠剤の重量に基づいて、好ましくは50%〜90%、より好ましくは60%〜80%である。
【0035】
ピオグリタゾン塩を、小丸剤に配合するのに好適な組成物にブレンドしてもよい。ピオグリタゾンの単一用量を含む複数の小丸剤を、硬質ゼラチンのような医薬的に許容される材料から造られたカプセルに封入してもよい。他の方法において、複数の小丸剤を好適な結合剤および崩壊剤と共に圧縮して、摂取した際に分解して小丸剤を放出する崩壊性錠剤を形成してもよい。さらに他の方法において、複数の小丸剤を小袋に充填してもよい。
【0036】
液体組成物、特に水性組成物は、上述したような溶液安定剤を含有してよい。安定剤は、好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのような水溶性ポリマーを含む。溶液中のポリマーの濃度は、上述のいずれかの範囲内であってよいが、最も好ましくは全容量の0.1〜10%(w/V)の範囲内である。硫酸ピオグリタゾンの水溶液は、約4のpHを典型的に有し、これは非経口および経口組成物の両方に充分に適している。
【0037】
液体組成物は、非経口組成物であってもよいが、それらは一般的に経口組成物である(実際的な医療使用による)。これらの溶液は水性であってよく、これは、水が少量の溶媒を含むことを意味する。通常、水は、液体担体の少なくとも50%、例えば、液体担体の少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%または実質的に100%を占める。液体担体の残りは、例えばエタノールであってよい。溶液は、安定剤を含む水性溶液に、固体ピオグリタゾン塩、例えば硫酸ピオグリタゾンを溶解させることによって製造でき、それらは、好適な不活性成分、例えば、緩衝剤、香味剤、甘味剤等を含んでもよい。必要であれば、好適な酸または塩基で滴定することによって溶液のpHを所望の値に調節してもよい。
【0038】
液体組成物は、ピオグリタゾン塩基をモル当量の硫酸と共に溶解させることによって形成してもよい(「in situ」法)。溶液形成の前または後に、安定剤を添加してよい。任意に、pHを所望の値(例えば3〜5)に調節してよい。
【0039】
液体組成物は、濃厚溶液または懸濁液として先ず製造し、次に、完成投与形態濃度の溶液または懸濁液に希釈することができる。あるいは、安定剤、および任意に他の賦形剤、例えばpH調節剤、塩等を使用するかまたは使用せずに、硫酸ピオグリタゾンの乾燥粉末を再構成することによって、溶液または懸濁液を形成することができる。再構成溶液は相対的に早く消費されるので、溶液安定剤は必要でない場合もある。
【0040】
任意の水溶性ピオグリタゾン塩、例えば硫酸ピオグリタゾンを含んでおり、投与用の最終投与形態として意図された医薬組成物は、ピオグリタゾンの単位用量、即ち、一般的に単一用量投与用の治療有効量のピオグリタゾンを含有する。単位用量における、ピオグリタゾン塩基によって表されるピオグリタゾン塩の量は、1〜100mg、2〜50mg、または15〜45mgの該化合物、例えば、2.5、5、10、15、20、30または45mgのピオグリタゾンである。そのような組成物は、通常1日に1〜3回、例えば1日に1回摂取される。実際には、医師が、個々の患者に最も適した実際の投与量および投与計画を決める。
【0041】
錠剤形態の単位用量は、同時に投与される1個またはそれ以上の錠剤であってよい。この場合、いくつかのより小さい錠剤をゼラチンカプセルに充填して、単位用量を形成してもよい。カプセル形態の粒質物または小丸剤の単位用量が、1つのカプセルを構成し得る。経口液剤はバイアルまたは多用量容器で輸送されると考えられ、その場合、単位用量を、液滴、小匙の数によるかまた目盛り付きバイアルによって規定し得る。
【0042】
経口または非経口液剤中のピオグリタゾンの濃度は、特に限定されない。例えば、それは1〜10mg/mL、例えば約3mg/mLであってよい。
【0043】
ピオグリタゾン塩、例えば硫酸ピオグリタゾンは、糖尿病、特にII型糖尿病、および血糖レベルの不足によって生じる類似疾患を治療するのに使用することができる。ピオグリタゾンによって治療できるそのような疾患は、当分野で既知である。本発明は、これらの疾患のいずれか1つまたはそれ以上を治療および/または予防する薬剤の製造における、ピオグリタゾン塩の使用も含む。ピオグリタゾン組成物は、医療用途、例えば特定の型の糖尿病の治療において、単独で、または他の抗糖尿病薬、例えばメトフォルミンと組み合わせて、使用してよい。組合せは、単一の組合せ製剤の形態であるか、または前記物質を含有する薬剤の分離投与によってもよい。
【0044】
治療法は、抗糖尿病的有効量のピオグリタゾン塩、例えば硫酸ピオグリタゾンを、それを必要とする哺乳動物患者に投与することを含む。有効量は一般的に、体重の0.1〜1.0mg/kgの範囲内、または10〜70mg/日である。ピオグリタゾン塩、例えば硫酸ピオグリタゾンは、前記のような単位投与形態として投与し得る。
【0045】
前記の各特許は全体として、本明細書に参照して組み込まれる。以下に示す非限定的実施例を参照して本発明をさらに説明する。
【実施例1】
【0046】
硫酸ピオグリタゾンの製造
硫酸24gを、室温で、メタノール250mLにゆっくり添加し、次に、ピオグリタゾン塩基80gを撹拌しながら添加した。混合物が透明溶液になった。エーテル250mLをゆっくり添加し、次に、ヘプタン500mLを添加した。固形物が沈殿し、懸濁液を3時間撹拌した。固形物(98.4g、収率96.5%)を濾過によって収集し、エーテルで1回洗浄した。固形物は融点113.5〜116.5℃を有していた(メタノールから再結晶)。
【実施例2】
【0047】
ピオグリタゾン塩を比較する溶解実験
室温で、各ピオグリタゾン塩(0.25mmol)をH2O(10mL)に撹拌しながら添加した。
【0048】
実験1(トシレート)および実験2(2−ナプシレート)は、1分以内に不透明溶液を生じた。次に、それらは直ちに懸濁液になった。
【0049】
実験3(エタンジスルホネート)および実験4(硫酸塩)は、透明溶液を生じた。次に、それらはゆっくり懸濁液になった。
【0050】
【表2】

【実施例3】
【0051】
安定溶液の製造
HPMCを添加剤として使用して、下記の系を試験した。硫酸ピオグリタゾン(100mg)は、HPMC水溶液(2%、25mL)に容易に溶解して、透明溶液を形成した。該溶液(硫酸ピオグリタゾン濃度0.4%w/v)は、室温で少なくとも4週間にわたって、固形物の明白な沈殿を生じずに安定であった。
【実施例4】
【0052】
飲むことができる溶液の製造
25mLのH2O中のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)1.0gの透明溶液に、硫酸ピオグリタゾン125mgを撹拌しながら添加した。透明溶液が形成され、これを室温で1ヶ月以上撹拌した。明白な固形物は現れなかった。
【実施例5】
【0053】
経口崩壊錠剤
組成物1: % mg/錠剤
硫酸ピオグリタゾン 18.0 45.0
Prosolv(珪化微結晶性セルロース) 72.0 180.0
低置換ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC) 5.00 12.5
アスパルテーム 2.00 5.0
ミント香味剤 2.00 5.0
ステアリルフマル酸ナトリウム 1.00 2.5
合計 100.0 250
【0054】
硫酸ピオグリタゾン、Prosolv、L−HPC、アスパルテームおよびミント香味剤を、フリーフォールミキサーによって25rpmで30分間ブレンドする。ステアリルフマル酸ナトリウムを添加し、25rpmで5分間混合する。硬度約40Nの錠剤を製造する。
【0055】
組成物2: %
硫酸ピオグリタゾン 31.8
ラクトース 13.2
デンプングリコール酸ナトリウム 6.0
ポリビニルピロリドン 4.0
Prosolv 40.0
アスパルテーム 2.0
ミント香味剤 2.0
ステアリン酸マグネシウム 1.0
合計 100.0
【0056】
硫酸ピオグリタゾン、ラクトース、デンプングリコール酸ナトリウムおよびポリビニルピロリドンを、高剪断ミキサーに装填する。水を結合溶液として使用して、湿式造粒を実施する。粒質物を流動床装置で乾燥する。粒質物と、Prosolv、アスパルテーム、ミント香味剤およびデンプングリコール酸ナトリウムとを、フリーフォールミキサーによって25rpmで30分間ブレンドする。ステアリン酸マグネシウムを添加し、25rpmで5分間ブレンドする。硬度約30Nの錠剤100mgを製造する。
【0057】
組成物3: %
硫酸ピオグリタゾン 31.8
ラクトース 18.2
デンプングリコール酸ナトリウム 6.0
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC) 4.0
Prosolv 35.0
スクラロース 2.0
ミント香味剤 2.0
ステアリルフマル酸ナトリウム 1.0
合計 100.0
【0058】
硫酸ピオグリタゾン、ラクトース、デンプングリコール酸ナトリウムおよびHPCを、高剪断ミキサーに装填する。水を結合溶液として使用して、湿式造粒を実施する。粒質物を流動床装置で乾燥する。粒質物と、Prosolv、スクラロース、ミント香味剤およびデンプングリコール酸ナトリウムとを、フリーフォールミキサーによって30分間ブレンドする。ステアリルフマル酸ナトリウムを添加し、25rpmで5分間ブレンドする。硬度約30Nの錠剤100mgを製造する。
【0059】
上述した本発明の説明を考慮して、本発明の趣旨を逸脱せずに本発明を種々に変更することができ、全てのそのような変更は請求の範囲に記載されている本発明の範囲に含まれることは、当業者に明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸ピオグリタゾン。
【請求項2】
固体状態の、請求項1に記載の硫酸ピオグリタゾン。
【請求項3】
結晶状態の、請求項1または2に記載の硫酸ピオグリタゾン。
【請求項4】
ピオグリタゾン成分/硫酸成分のモル比約1:1を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の硫酸ピオグリタゾン。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の硫酸ピオグリタゾンおよび少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬的に許容される賦形剤が、液体担体である請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記硫酸ピオグリタゾンが、前記液体担体に溶解している請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記液体担体が、少なくとも50%の水を含有する請求項6または7に記載の組成物。
【請求項9】
硫酸ピオグリタゾンの水溶液である請求項7または8に記載の組成物。
【請求項10】
溶液安定剤をさらに含む請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記溶液安定剤が、ポリマーである請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリマーが、前記溶液に溶解している請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンおよびシクロデキストリンからなる群から選択される請求項11または12に記載の組成物。
【請求項14】
前記ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記溶液安定剤が、クラウンエーテルである請求項10に記載の組成物。
【請求項16】
前記溶液安定剤が、前記組成物中に1〜500mg/mL範囲内の濃度で含有されている請求項10〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記硫酸ピオグリタゾンが、前記組成物中に1〜10mg/mL範囲内の濃度で含有されている請求項5〜16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記医薬的に許容される賦形剤が、固体結合剤、担体または希釈剤である請求項5に記載の組成物。
【請求項19】
固体経口投与形態である請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
低血糖疾患の治療法であって、請求項5〜19のいずれか一項に記載の医薬組成物の有効量を、そのような治療を必要とする患者に投与することを含む治療法。
【請求項21】
ピオグリタゾン、または、硫酸ピオグリタゾンではないピオグリタゾンの塩と、硫酸とを溶媒中で反応させて硫酸ピオグリタゾンを生成する工程を含む方法。
【請求項22】
前記溶媒が、メタノールを含有する請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記硫酸ピオグリタゾンを沈殿させる工程をさらに含む請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記沈殿させる工程が、硫酸ピオグリタゾンを含有する前記溶媒と反溶媒とを接触させる段階を含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記反溶媒が、エーテル、脂肪族炭化水素またはそれらの組合せである請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ピオグリタゾン塩を、充分な水に、固体ピオグリタゾン塩基がそれから沈殿するのに充分な時間にわたって、接触させる工程を含む方法。
【請求項27】
前記水が、中和剤を含有しない請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ピオグリタゾン塩が、前記接触工程において、溶媒に溶解する請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
請求項21〜28のいずれか一項に記載の方法によって得られるピオグリタゾン化合物。
【請求項30】
治療用、特に低血糖疾患用の薬剤の製造における、請求項1〜4ないし29のいずれか一項に記載の物質の使用。
【請求項31】
治療用、特に低血糖疾患用の薬剤の製造における、請求項5〜19のいずれか一項に記載の組成物の使用。

【公表番号】特表2006−528948(P2006−528948A)
【公表日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529805(P2006−529805)
【出願日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005133
【国際公開番号】WO2004/101561
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(500415715)シントン・ベスローテン・フェンノートシャップ (10)
【Fターム(参考)】