説明

ピッチのコントロール方法

本発明は、媒体中に、表面反応した天然炭酸カルシウムまたは表面反応した炭酸カルシウムを含み20℃で測定したpHが6.0より高い水性懸濁液を添加することによる、水性媒体中のピッチのコントロール方法であって、表面反応した炭酸カルシウムが、天然炭酸カルシウムと二酸化炭素および1種または複数の酸との反応生成物である方法、ピッチコントロールのための表面反応した天然炭酸カルシウムの使用、ならびにピッチコントロールのための表面反応した天然炭酸カルシウムとタルクとの組合せ、およびそれによって生じた複合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピッチのコントロール方法、ピッチコントロールのための表面反応した天然炭酸カルシウムの使用、ならびに表面反応した天然炭酸カルシウムとタルクとの組合せおよび場合によってタルクを含む、表面反応した炭酸カルシウムとピッチとの複合物に関する。
【背景技術】
【0002】
紙産業において、「ピッチ問題」がしばしば発生し、主として水性懸濁液からの製紙装置への有機性の粘着性物質の沈着または紙のウェブ自体の染みとして報告されている。
【0003】
製紙における主要な繊維源は木材であり、木材はパルプ化の過程で破砕、熱処理、化学処理の組合せによって構成繊維にされる。この方法においては、木材中に含まれる天然樹脂は、微細な液滴の形でプロセス水中に放出される。これらの液滴は、ピッチと呼ばれる。問題は、コロイド状のピッチが本来の乳化形態から不安定化し、抄紙工場のウェットエンド工程において、その表面に沈着するときに生じ、そこで粒子は凝集体を形成し、最終的には遊離して紙の上の黄色から黒色の目に見える染みとなって現れる可能性がある。
【0004】
ピッチの化学組成は、一般にi)脂肪および脂肪酸、ii)ステリルエステルおよびステロール、iii)テルペノイドならびにiv)ワックスの4つの脂溶性成分のクラスに分類される。この化学的組成は、木の種類などの繊維源、およびサンプルが製造される季節的成長によって決まる。これらの脂溶性のピッチ化合物は、リグノスルホン酸塩および多糖類の存在により安定化することができる。
【0005】
ピッチの形成は、概念的には3つの主要な機構によって生じると説明することができる。第1の機構経路は、有機物質膜の形成であり、膜は、透明なこともあり、半透明なこともある。膜の厚さは、濃度によって変わり、膜が最初の融合体を形成するには核が必要である。この型のピッチは、ピッチの形成機構が示唆するように、膜状と呼ばれる。第2の型のピッチは、凝固して直径0.1−1.0μmの球状となることのできるピッチであり、このため、球状ピッチと命名されている。第3の普通に生じるピッチの形成の型は、凝集体、またはピッチボール形態であり、システムにおいてピッチ沈着に関する最大の問題を含んでいるとしばしば認識されている。この形成されたボールは、直径1−120μmである。膜状または球状の状態においては、ピッチは一般には問題を引き起こさないが、凝集体が一旦形成されると、紙の品質問題が生じ始める。
【0006】
木材のピッチ的性質は、季節、木材チップの新鮮さおよびパルプ化処理の種類に大きく依存する可能性がある。粘着性が最も大きくなるのは通常、液体的性質と固体的性質の間の中間状態と関係するので、取り扱いにくい状況となり得る。これらの特性は、温度、油や樹脂など他の物質の存在、およびpHによって影響を受ける。硬度イオンであるカルシウムおよび特にマグネシウムは、しばしば粘着性のレベルが高いことと関連がある。木材ピッチの重合によって物質のガラス転移温度がシフトすることがあり、このため粘着性の最大値も高温側にシフトする。
【0007】
現在、製紙のpHはますます中性または弱アルカリ性となっており、このため、ピッチの除去はもはや、ミョウバンを使用すればよいという自動的な帰結ではなく、タルクなど他の吸着物質が、このコントロールにおいてむしろより重要な役割を果たしつつある。pHを擬中性に高めることは中質紙において増大傾向にあり、したがってこのような条件下でピッチを除去することに関する研究も重要性を増しつつある。その上、機械パルプは、溶解物質およびコロイド状物質を化学パルプや再生パルプよりもはるかに多く保持している。
【0008】
タルクは、非常に有効なピッチ沈着コントロール剤として受け入れられており、最近の研究によれば、タルクは沈着物の増加を脱粘着化機構によってコントロールしていることが示唆されている。しかし、ピッチのコントロールにおけるタルクの作用は、厳密に確立されているわけではない。タルクは、ピッチ状物質または粘着物の粘着性を減じて、凝集体を形成したり、製紙装置上に沈着したり、製品に染みを作ったりする傾向を低下させると推定されている。また、タルクの機能は、既に沈着した物質の粘着性を減じて、それらの表面への粘着物質のさらなる蓄積を遅らせることである。したがって、システム中の表面の全体的な粘着性を減じるのに十分なタルクを加えることが重要である。
【0009】
しかし、タルクの1つの問題は、十分なタルクを用いなければ、単に粘着物質の沈着物または凝集体に単に取り込まれる傾向があることである。さらに、タルクは、本質的に非極性種を吸着することが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、タルクより良好な性能を提供し、極性種および荷電種をも吸着できる代替物質に対するニーズが引き続き存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、水性媒体中におけるピッチをコントロールする方法によって解決された。この方法において、表面反応した天然炭酸カルシウム、または表面反応した炭酸カルシウム(SRCC)を含み、20℃で測定したpHが6.0より高い水性懸濁液が、前記媒体に添加される。前記表面反応した炭酸カルシウムは、天然炭酸カルシウムと二酸化炭素および1種または複数の酸との反応生成物である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の方法で使用する表面反応した天然炭酸カルシウムは、天然炭酸カルシウムを酸および二酸化炭素と反応することによって得られ、この際二酸化炭素は、酸処理によってその場で形成される、および/または外部供給源から供給される。
【0013】
天然炭酸カルシウムは、大理石、白亜、方解石、ドロマイト、石灰石およびこれらの混合物を含む群から選択するのが好ましい。
【0014】
好ましい実施形態において、天然炭酸カルシウムは、酸および二酸化炭素との処理の前に粉砕される。粉砕ステップは、当業者に知られている製粉機など従来の粉砕装置のいずれかで行うことができる。
【0015】
本発明の方法で使用する表面反応した天然炭酸カルシウムは、20℃で測定したpHが6.0より高く、好ましくは6.5より高く、より好ましくは7.0より高く、さらにより好ましくは7.5より高い水性懸濁液として調製される。後述するように、表面反応した天然炭酸カルシウムは、前記水性懸濁液を水性媒体に添加することによって水性媒体と接触させることができる。水性懸濁液のpHは、前記水性媒体に添加する前に、例えば、追加の水で希釈することにより変更することも可能である。あるいは、水性懸濁液を乾燥し、前記の水と接触させる表面反応した天然炭酸カルシウムを、粉末形態または顆粒形態とすることもできる。言い換えると、本明細書で述べる有益な吸着性を有する表面反応した炭酸カルシウムを提供するには、酸および二酸化炭素で処理した後、pHを6.0より高くすることが必要である。
【0016】
水性懸濁液を調製するための好ましい方法において、天然炭酸カルシウムは、粉砕などによって微細化して、または微細化せずに、水に懸濁させる。このスラリーは、天然炭酸カルシウムの含有率がスラリーの重量に対して好ましくは1重量%から80重量%、より好ましくは3重量%から60重量%、さらにより好ましくは5重量%から40重量%の範囲内である。
【0017】
次のステップにおいて、天然炭酸カルシウムを含む水性懸濁液に酸が加えられる。この酸は、25℃でpK2.5以下が好ましい。25℃におけるpKが0以下であれば、酸は、硫酸、塩酸またはこれらの混合物から選択するのが好ましい。25℃におけるpKが0から2.5であれば、この酸は、HSO、HSO、HPO、シュウ酸またはこれらの混合物から選択するのが好ましい。
【0018】
前記1種または複数の酸は、濃縮溶液として、またはより希釈した溶液として、前記懸濁液に加えることができる。酸の天然炭酸カルシウムに対するモル比は、好ましくは0.05から4、より好ましくは0.1から2である。
【0019】
別法として、酸は、天然炭酸カルシウムを懸濁する前に水に加えてもよい。
【0020】
次のステップにおいて、天然炭酸カルシウムは、二酸化炭素で処理される。天然炭酸カルシウムの酸処理のために硫酸または塩酸のような強酸を使用する場合には、二酸化炭素は自動的に発生する。別法として、または追加として、二酸化炭素を外部供給源から供給することもできる。
【0021】
酸処理および二酸化炭素処理は、強酸を使用した場合のように、同時に行ってもよい。また、まず、例えば、pKが0から2.5の範囲の中程度の強酸で酸処理を行い、次いで外部供給源から供給した二酸化炭素による処理を行ってもよい。
【0022】
二酸化炭素ガスの懸濁液中の体積濃度は、比(懸濁液の体積):(COガスの体積)を1:0.05から1:20にするのが好ましく、1:0.05から1:5がさらにより好ましい。
【0023】
好ましい実施形態において、酸処理ステップおよび/または二酸化炭素処理ステップは、少なくとも1回、さらに好ましくは数回繰り返す。
【0024】
酸処理および二酸化炭素処理の後、20℃で測定した水性懸濁液のpHは自然に、6.0より高い、好ましくは6.5より高い、より好ましくは7.0より高い、さらにより好ましくは7.5より高い値となり、それによって、表面反応した天然炭酸カルシウムが、pHが6.0より高い、好ましくは6.5より高い、より好ましくは7.0より高い、さらにより好ましくは7.5より高い水性懸濁液として調製される。水性懸濁液を平衡になるまで放置すれば、pHは7より高くなる。水性懸濁液の攪拌を十分な時間、好ましくは1時間から10時間、さらに好ましくは1から5時間継続すれば、塩基を追加しなくても、6.0より高いpHに調節できる。
【0025】
別法では、7より大きいpHで生じる平衡に達する前に、二酸化炭素処理に引き続き塩基を添加して、水性懸濁液のpHを6より高い値に引き上げてもよい。苛性ソーダまたは苛性カリのような従来のいかなる塩基でも使用することができる。
【0026】
上記の方法の各ステップ、すなわち酸処理、二酸化炭素処理および、好ましくは、pH調節によって、いくつかのピッチ種に対して良好な吸着性を有する表面反応した天然炭酸カルシウムが得られる。
【0027】
表面反応した天然炭酸カルシウムの調製についてのさらなる詳細は、国際公開第00/39222号パンフレットおよび米国特許公開第2004/0020410Al号明細書に開示されており、そこでは表面反応した天然炭酸カルシウムは紙製造用の充填材として記載されており、これらの参照文献の内容は参照により本明細書に組み込む。
【0028】
表面反応した天然炭酸カルシウムの調製の好ましい実施形態において、天然炭酸カルシウムは、珪酸塩、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウムもしくはアルミン酸カリウムなどのアルカリ土類アルミン酸塩、酸化マグネシウム、またはこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物の存在下に、酸および/または二酸化炭素と反応させられる。少なくとも1種の珪酸塩は、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、またはアルカリ土金属珪酸塩から選択するのが好ましい。これらの成分は、酸および/または二酸化炭素を添加する前に、天然炭酸カルシウムを含む水性懸濁液に添加してもよい。あるいは、珪酸塩および/またはシリカおよび/または水酸化アルミニウムおよび/またはアルカリ土類アルミン酸塩および/または酸化マグネシウム成分は、天然炭酸カルシウムと酸および二酸化炭素との反応が既に始まっている間に、天然炭酸カルシウムの水性懸濁液に添加してもよい。少なくとも1種の珪酸塩および/またはシリカおよび/または水酸化アルミニウムおよび/またはアルカリ土類アルミン酸塩成分の存在下における表面反応した天然炭酸カルシウムの調製のさらなる詳細は、国際公開第2004/083316号パンフレットに開示されており、この参照文献の内容は参照により本明細書に組み込む。
【0029】
表面反応した天然炭酸カルシウムは、場合によっては分散剤によって、さらに安定化させ懸濁状態に保持することができる。当業者に知られている従来の分散剤を使用することができる。好ましい分散剤は、ポリアクリル酸である。
【0030】
あるいは、上記水性懸濁液は、乾燥させ、これによって表面反応した天然炭酸カルシウムを顆粒形態または粉末形態で得ることができる。
【0031】
好ましい実施形態において、表面反応した天然炭酸カルシウムは、窒素を用いてISO9277によるBET法で測定して、5m/gから200m/g、より好ましくは20m/gから80m/g、さらにより好ましくは30m/gから60m/g、例えば、43m/gの比表面積を有する。
【0032】
さらに、表面反応した天然炭酸カルシウムは、沈降法で測定して0.1から50μm、より好ましくは0.5から25μm、さらにより好ましくは0.8から20μm、特に1から10μm、例えば、4から7μmの平均粒径を有する。沈降法は、重力場における沈降挙動の分析である。測定はMicromeritics Instrument CorporationのSedigraph(商標)5100で行う。この方法および装置は当業者に知られており、充填剤および顔料の粒径の測定に一般に用いられている。測定は、0.1重量%のNa水溶液中で行う。サンプルは、高速攪拌機および超音波を用いて分散させた。
【0033】
好ましい実施形態において、表面反応した天然炭酸カルシウムは、15から200m/gの範囲内の比表面積および0.1から50μmの範囲内の平均粒径を有する。20から80m/gの範囲内の比表面積および0.5から25μmの範囲内の平均粒径が、より好ましい。比表面積は、30から60m/gの範囲内であり、平均粒径は、0.7から7μmの範囲内であるのがさらにより好ましい。
【0034】
本発明の方法において、表面反応した炭酸カルシウムは、当業者に知られている従来のいずれかの供給手段でピッチを含有する水性媒体に添加される。表面反応した天然炭酸カルシウムは、水性懸濁液、例えば、上記の懸濁液として添加することができる。あるいは、表面反応した天然炭酸カルシウムは、固形、例えば、顆粒形態、粉末形態またはケーキ形態で添加することができる。本発明の文脈内では、固定相、例えば、表面反応した天然炭酸カルシウムを含むケーキ形態または層を設け、水性媒体を前記固定相を通して通過させることもできる。このことは、以下にさらに詳しく論じる。
【0035】
好ましい実施形態において、ピッチを含有する水性媒体のpHは、表面反応した炭酸カルシウムを添加する前に、6.0より高い、より好ましくは6.5より高い、さらにより好ましくは7.0より高い値に調節する。
【0036】
表面反応した天然炭酸カルシウムは、ピッチを含有する水性媒体中で、例えば、攪拌手段により懸濁するのが好ましい。表面反応した天然炭酸カルシウムの量は、吸着するピッチのタイプまたはピッチ種によって決まる。好ましくは、オーブン(100℃)で乾燥した繊維の重量に対して、0.05−25重量%、より好ましくは0.25−10重量%、最も好ましくは0.5−2重量%の量が添加される。
【0037】
本発明の方法において、表面反応した天然炭酸カルシウムは、機械パルプ、例えば、砕木、TMP(熱機械パルプ)、または化学熱機械パルプ(CTMP)、および化学パルプ、例えば、クラフトパルプまたは硫酸塩パルプ、または製紙工程で用いられる再生パルプなどのピッチを含有する水性媒体に添加される。
【0038】
本発明の方法の対象となるピッチを含有するパルプは、特に木材パルプ由来のものであり、木材パルプは、製紙に使用される最も一般的な材料である。木材パルプは一般に、トウヒ、マツ、モミ、カラマツおよびアメリカツガなどの軟質樹木から作られるが、ユーカリおよびカバノキなどのある種の硬質木材からも作られる。
【0039】
本発明によってコントロールすることのできるピッチは、脂肪および脂肪酸、ステリルエステルおよびステロール、テルペノイド、ならびにワックスなどの種を含んでいてもよい。化学組成は、木の種類などの繊維源、およびサンプルが製造される季節的成長に依存する。
【0040】
処理しようとする水サンプルに、添加物を場合によって添加してもよい。この中にはpH調節剤などが含まれる。
【0041】
好ましい実施形態で、上述の如く表面反応していない天然炭酸カルシウムも同様に添加される。
【0042】
表面反応した炭酸カルシウムのイオン吸着性/極性吸着性と、タルクの主として脂溶性の特性との組合せが、ピッチの吸着に関して相加的結果ばかりでなく、相乗効果も提供することが見出された。
【0043】
特定の理論に縛られることは望まないが、コロイド状ピッチの吸着は、鉱物粒子自体および、この選択吸着のピッチの表面化学依存性の、両方の表面化学との関係において、表面モルホロジーと粒径の相対的役割に依存していると考えられる。
【0044】
SRCCは、本質的に、エステル鹸化物などの広範な荷電種を吸着する能力で特徴づけられ、表面空隙率に対して比較的大きな表面積を示し、ピッチのある部分は、単独でまたは混合表面としてのいずれかで、クーロン電荷相互作用を示すと考えられるとの示唆を支持している。ピッチが極性および非極性の混合した表面エネルギーを有しているとの仮説は、SRCCをタルクと組み合わせて使用した場合の吸着相乗効果という証拠によって確かめられる。
【0045】
したがって、本発明の特に好ましい実施形態では、ピッチを含有する水性媒体に、タルクを追加して加える。
【0046】
本発明で有用なタルクは例えば、ソトカモ(フィンランド)スリースプリング(オーストラリア)、ハイチェン(中国)、アルペス(ドイツ)、フローレンス(イタリア)、チロル(オーストリア)、シェトランド(スコットランド)、トランスバール(南アフリカ)、アパラチア、カリフォルニア、バーモントおよびテキサス(アメリカ合衆国)のタルクなど、市販のタルクであればいずれでもよい。
【0047】
粗タルクの産出源に応じて、緑泥石、ドロマイトおよびマグネサイト、角閃石、黒雲母、橄欖石、輝石、石英および蛇紋石などのいくつかの不純物がこの中に含まれている可能性がある。
【0048】
本発明において使用するのに好ましいのは、>90重量%、例えば>95重量%または>97重量%および>100重量%までの純タルク含有率のタルクである。
【0049】
本発明において使用するタルク粒子は、上述の如く沈降法で測定したd50が0.1から50μm、例えば、0.2から40μm、好ましくは0.3から30μm、より好ましくは0.4から20μm、特に0.5から10μm、例えば、1、4または7μmの範囲とすることができる。
【0050】
タルクの比表面積は3と100g/mの間、好ましくは7g/mと80g/mの間、より好ましくは9g/mと60g/mの間、例えば、51g/m、特に10と50g/mの間、例えば30g/mとすることができる。
【0051】
タルクは、ピッチを含有する水性媒体中に、例えば攪拌手段によって、表面反応した炭酸カルシウムと一緒に懸濁するのが好ましい。タルクの量は、吸着するピッチのタイプまたはピッチの種に依存する。オーブン(100℃)で乾燥した繊維の重量に対して、好ましくは、0.05−25重量%、より好ましくは0.25−10重量%、最も好ましくは0.5−2重量%の量で添加する。
【0052】
SRCC/タルクのブレンドの相乗効果は、このブレンドの観測された正のピッチ吸着値が、純粋な鉱物を別々に作用させたときの値を加えたものより大きい場合に生じる。
【0053】
相乗効果の発生は、成分の比表面積およびピッチの組成に依る。しかし、相乗効果の起こる比率は、実施例で詳細に記載したように、比率を変えた一連のテストを行うことにより、容易に決定できる。
【0054】
吸着が完結した後に、表面反応した炭酸カルシウムとピッチ、および場合によってタルクとの複合物を沈降および濾過などの当業者に知られた従来の分離手段により、水性媒体から分離することができる。
【0055】
別法では、浄化しようとする液体を、表面反応した天然炭酸カルシウムを含み前記液体が重力でおよび/または真空でおよび/または加圧で通過する際に、サイズ排除によって不純物をフィルター表面に保持することのできる、浸透性のフィルターを通過させるのが好ましい。この方法は、「表面濾過」と呼ばれる。
【0056】
深層濾過として知られている別の好ましい技術において、直径および配置の変化するいくつかの曲がりくねった通路で構成された濾過助剤が、その通路内にある表面反応した天然炭酸カルシウム上に、不純物を吸着する分子力および/または電気力を与えることによって不純物を保持し、ならびに/または不純物粒子が全フィルター層厚さを通過するのに大きすぎる場合、サイズ排除によりそれらを保持する。
【0057】
深層濾過および表面濾過の技術はさらに、深層濾過層を表面フィルターの上に設置して組み合わせてもよい。この配置により、さもなければ表面フィルターの孔をブロックするはずの粒子が、深層濾過層に保持されるという利点がもたらされる。
【0058】
深層濾過層を表面フィルターの上に導入するための1つの選択肢として、濾過すべき液体中に凝集助剤を懸濁し、次いでこの助剤が表面フィルター上に析出するときに不純物のすべてまたは一部を凝集させるようにデカンテーションさせ、それによって深層濾過層を形成する。これは堆積濾過システムとして知られている。堆積濾過を始める前に、表面フィルター上に深層濾過物質の最初の層を場合によってプレコートしてもよい。
【0059】
上記で定義したようなピッチコントロールにおいて、表面反応した炭酸カルシウムが良好な結果をもたらすことに鑑み、本発明のさらなる態様は、ピッチコントロールにそれを用いるだけでなく、上記の如くそれをタルクとの組合せで使用し、相乗効果を提供することである。
【0060】
多くの異なる種が除去されなければならない非常に不均一なピッチの場合、後者は特に重要である。このような場合、実施例に記載したように、それに応じて選択された表面反応した炭酸カルシウムとタルクとの組合せを用いる方が、別々の成分を単独で用いるよりも優れている可能性がある。
【0061】
したがって、上で定義した表面反応した炭酸カルシウムとタルクとの組合せも、本発明のさらなる態様である。
【0062】
最後に、上で定義した表面反応した炭酸カルシウムとそれに吸着したピッチとの複合物も、本発明のさらなる態様であり、上で定義したタルクも場合によって含まれる。
【0063】
実施例において、表面反応した炭酸カルシウムの有効性だけでなく、表面反応した炭酸カルシウムとタルクとの相乗効果も示される。さらに、結果として得られるpHも調べた。pHの上昇は、より多くのエステルが鹸化され、より多くのアニオン性種が生じたことを示している。さらに、SCD(荷電電流計当量(Streaming Current Detector Equivalency))が低くなっても、カチオンの量が同じレベルのままであることが見出されたが、これはSRCCがアニオン性種を吸着したことを示している。一方、タルクの場合は、SCDは同じレベルのままであり、タルクが主として非荷電種を吸着したことを示している。
【0064】
以下の図面、実施例および試験は、本発明を説明するものであって、決して本発明を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】比表面積の小さいタルクのSEMイメージを示す図である。
【図2】TMP濾液の上部液体相、FT−LSSAまたはSRCCの単独処理、およびFT−LSSA処理に引き続きFT−LSSAまたはSRCCのいずれかの処理を行ったTMP濾液の濁度値を示す図である。
【図3】TMP濾液の上部液体相、FT−LSSAまたはSRCCの単独処理、およびFT−LSSA処理に引き続きFT−LSSAまたはSRCCのいずれかの処理を行ったTMP濾液のCOD値を示す図である。
【図4】TMP濾液の上部液体相、FT−LSSAまたはSRCCの単独処理、およびFT−LSSA処理に引き続きFT−LSSAまたはSRCCのいずれかの処理を行ったTMP濾液の重量分析値を示す図である。
【図5】FT−LSSAまたはSRCCの単独処理、およびFT−LSSA処理に引き続きFT−LSSAまたはSRCCのいずれかの処理を行ったTMP濾液の下部沈降鉱物相の純減量率(重量%)として表した熱重量分析を示す図である。
【実施例】
【0066】
A.物質
1.表面反応した炭酸カルシウム(SRCC)
フランスのオメイ(Omey)原産の微細化された天然炭酸カルシウムの、乾燥重量に基づいて約20重量%の懸濁液を調製した。次いで、このようにして形成したスラリーに約55℃の温度でリン酸をゆっくり添加して処理した。
【0067】
得られたスラリーは、ISO標準92777によるBET比表面積が43m/gであり、Micromeritics(商標)のSedigraph(商標)5100を用いて測定したd50は1.5μmであった。
【0068】
本発明で使用した表面反応した炭酸カルシウムは、図1のSEMイメージで示されるものであり、皺の多い表面で構成されているそのナノ改変した表面が、微粒子全体に分布していることを示している。
【0069】
2.タルク
本研究のタルク粉末は、蛍光X線(XRF)[ARL 9400 Sequential XRF]およびX線回折(XRD)[Bruker AXS D8 Advanced XRDシステムを使用し、CuKα放射、自動化発散スリットおよび線形位置感知検出器によるfrpm5−100°2θブラッグ回折の両方によって分析される。管電流および電圧はそれぞれ50mAおよび35kVであった。ステップサイズは0.02°2θであり、計測時間はステップあたり0.5秒であった。]
フィンランド原産のタルクグレード(FT−LSSA)は、比表面積が小さかった。これは鉱物タルク、緑泥石およびマグネサイトを含んでいる。このタルクの純度は約97%であり、純度はFT−IR[Perkin Elmer Spectrum One Spectrometer]分析およびXRFによって確認した。
【0070】
これをジェットミルで粉砕し、その結果、BET比表面積は9m−1となり、d50は2.2μmとなった。
鉱物モルホロジーを図1に示す(FT−LSSA)。
【0071】
3.ピッチを含有するパルプ
2006年1月に、スイスの統合紙パルプ工場の漂白ステップ(過酸化物漂白)前で、90℃の温度でスクリーンの受け入れ液(accept)から6.0kgの未使用湿潤パルプ(固形分含有率3.7w/w%)を採取した。サンプリング位置におけるプロセス水はTMPプラント内のみを循環しており、このため充填剤を含んでいない。このようにして得られ、以下の実験のピッチ源として使用した熱機械パルプは、70重量%がトウヒで構成され、残余は、モミと少量のマツからなっていた。パルプサンプルのpHは25℃で6.7−6.8の間であった。パルプは、孔サイズ2μmのフィルター(濾紙、円形602EH)で湿潤状態で圧搾した。
【0072】
このようにして得られた濾液/液5.0リットルからのサンプルを光学顕微鏡(Olympus AX−70)で試験してフィブリルをチェックした。フィブリルは、存在すると、純粋な吸着の結果を歪曲するように働くことがある。
【0073】
このTMP濾液のゼータ電位をPenKem500装置で測定し−15mVの値が得られた。このアニオン性は電荷収集性の表面反応した炭酸カルシウムの吸着電位を考慮する上で重要な要因である。全電荷を、荷電電流計(SCD)滴定(Mutek PCD−02)で決定したところ、−0.45μEqg−1であり、パルプ濾液の多価電解質滴定では、−2.6μEqg−1であることが分かった。ここで1Eq(当量)は、1グラムの水素と反応または置換するその物質のグラムでの重量である。TMPサンプルのイオンクロマトグラフィー(Dionex DX 120 Ion−Chromatograph)は次に示すアニオンがTMP濾液中に存在すると報告する。:SO2−=256ppm、PO3−=33ppm、Cl=20ppmおよびNO2−=2ppm
【0074】
B.方法
熱機械パルプ(TMP)(3.7重量/重量%)から2μmのフィルターにより回収された5リットルの濾液をガラス瓶に、各瓶に濾液200gずつ分けて入れ、それに1重量/重量%のタルクまたはSRCC(分散剤なしの10重量/重量%スラリー)を加えた。次いで、この瓶を閉じて2時間攪拌した。2時間攪拌した後、懸濁液を遠心分離器(IG Instruments社のJouan C 312)で3500rpmの速さで15分間遠心分離した。
【0075】
上部液体相と下部沈降鉱物含有相の2つの相を集める。比較として鉱物を用いない参照サンプルを使用した。遠心分離後に得られた上部液体相と下部固体相を分離し、以下に示すように2つの測定法により測定して分析した。
【0076】
上部液体相−重量分析、濁度および、化学的酸素要求量COD
重量分析のために、上部液体水相の100cmサンプルを、予め重量を量ったアルミニウム製ビーカーに入れ、オーブン(90℃、24時間)で乾燥し、水相中の全不揮発残渣量、すなわち鉱物表面に吸着されなかったすべての有機物および無機物を得た。
【0077】
別の45cmのサンプルを、NOVASINA 155 Model NTM−S(152)による、鉱物によって分離されなかったコロイド状ピッチ粒子によって引き起こされる濁度の分析に供した。この機器では、光ファイバープローブを通して、近赤外線スペクトルの光を送り、出現したビームは懸濁している微粒子によって散乱される。180°に後方散乱した光を、プローブ中で並行した光ファイバーによって集め、フォトダイオードに集光する。得られた信号を増幅し、入射光の通路からの、方法で指定した角度における、懸濁粒子によって散乱、減衰または吸収された指定波長の光の強度として規定されるネフェロメトリー濁度単位(Nephlometric Turbidity Unit)(NTU)で、合成化学的に調製した標準と比較して、直接表示する。変調した透過シグナルの採用により、遮光したサンプル取り扱いシステムの必要性なく、環境光による干渉が排除される。
【0078】
また、2cmのサンプルを化学的酸素要求量(COD)分析に供した。この分析は全有機物、すなわち吸着されなかった有機物質の含有値を与えるものである。COD分析は有機物質をCOに酸化するのに必要な酸素量を表し、LASA 1/プラスキュベットを備えた1000−10000mgdm−3範囲のLange CSB LCK 014を使用して測定した。
下部沈降鉱物相−熱重量分析
熱重量分析はMettler Toledo製示差走査熱分析計(SDTA851)で、30℃から1000℃まで20℃min−1の定速加熱で行った。加熱時の減量は沈降物中に存在する非鉱物性成分を反映している。吸着種を決定するため、この結果を純鉱物と比較した。
【0079】
C.結果
TMP濾液から物質を除去する際に、2つの異なる鉱物は、コロイド種についても他の種についても異なる吸着挙動を示すことが見出された。
【0080】
しかし、表面積の小さいタルク(FT−LSSA)とSRCCの間には、明らかな相乗相互作用が存在することも見出された。
【0081】
これらの効果をさらに詳細に研究するために、一連の実験で鉱物の個々の活性を調べた。まず、TMP濾液を上記の如く、表面積の小さいタルク(FT−LSSA)またはSRCCのいずれかで処理した。次いで、前に記載した方法に従ってFT−LSSAでまず処理し、遠心分離したTMPを用い、その上部液体相を2度目にSRCCまたは再度FT−LSSAで処理する第2ステップを行った。
【0082】
a)pH
第1のステップとして、pH、荷電電流計当量(SCD)、およびナトリウム/カルシウムバランスを決定した。これらの測定は、参照としての未処理TMP濾液、SRCCまたはFT−LSSAによる予備処理、および相補的な鉱物による2次処理について行った。
【0083】
結果として得られた値を表3に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
TMP濾液をSRCCで処理するとpHはアルカリ性となり、第1の予備処理の後では約6.8から約7.9に変化した。TMP濾液を表面積の小さいタルクで処理すると、pHは約6.8から約7.2に変化しただけであった。
【0086】
SRCCによる2次処理では、液体相のpHは再びアルカリ化し、約8.0と決定された。FT−LSSAによる相補的な2次処理では、pHは再度わずかに約7.5にアルカリ化した。
【0087】
この傾向は、SRCCのアルカリ性に起因するのみではなく、脂肪酸等の潜在的酸性化合物が吸着されたことを示している。pHの上昇は、より多くのエステルが鹸化されてアニオン性の種がより多く生成したことを示している。
【0088】
b)荷電電流計当量(SCD)
SCD滴定によって懸濁液中の全荷電種が測定される。TMP濾液では−0.45μEqg−1であることが分かった。
【0089】
タルク処理は、この値にはわずかな効果しか示さなかった。SRCC処理では大きな効果が見出され、この場合アニオン性種の量は、−0.1μEqg−1未満に減少し、SRCC単独で用いる卓越した効果と、組合せで用いる改良された効果を示している。
【0090】
c)ナトリウム/カルシウムバランス
最後に、イオンバランスはカルシウムおよびナトリウムにはなんら本質的な変化を示さず、マグネシウム、カリウム、リン酸イオン、硫酸イオン、亜塩素酸イオン、硝酸イオンなどの他のイオンについても同様であった。SCDが減少してもカチオンの量は同じレベルに保たれているので、SRCCがアニオン性の種を吸着したことは明らかである。一方、タルクの場合、SCDは同じレベルのままであり、したがってタルクは主として非荷電種を吸着したことになる。
【0091】
d)濁度、COD、重量分析および熱重量分析に及ぼす鉱物の影響
図2、図3および図4の分析は絶対値で表している。これは対応する参照が予備処理と2次処理の間すなわち第1処理の後で変わるためである。
【0092】
したがって、第1処理の参照は、TMP濾液(黒棒)であり、第2処理の参照は、表面積の小さいタルクで一度処理したTMP濾液(黒の切れ目付き白棒)である。処理結果と相当する参照との差をパーセントで表す。
【0093】
濁度値を図2に示す。TMP濾液のFT−LSSAによる第1処理(左から2番目)は既に以前測定した値を確認している。また、SRCCで処理したパルプ液(真ん中)は、SRCCがコロイド状粒子を除去するのに非常に効果的であるというポイントを確認している。
【0094】
第2のFT−LSSA処理(右から2番目)では、まだコロイド状種を多少除去することが可能であるが、第1処理と比べると有効性は明らかに減少している。最後に、FT−LSSA処理したTMP濾液の上部液体相を再度SRCCで処理しても(右)、SRCCの有効性は変わらない。
【0095】
TMP濾液は、未処理の参照サンプルとして使用するが、濁度値は360NTUであった。TMP濾液をFT−LSSAで処理すると、濁度は、この第1ステップの処理では107NTUに低下した。これは70%の減少である。
【0096】
この前処理した処理パルプ液を、FT−LSSAで追加2次処理すると、濁度は再び107NTUから60NTUにある程度低下した。これは44%の減少である。
【0097】
一方、SRCCで1回処理すると、前と同様コロイド状粒子に対して強い親和性を示した。濁度はほぼ除去され98−99%の減少となった。
【0098】
FT−LSSAで前処理したパルプ液を相補的な2次SRCC処理を行うと、濁度は再度事実上排除された。これもまた95%の減少であり、組合せによる相乗効果を示している。
【0099】
COD分析(図3)は、処理後に残っている、酸化可能な、大抵は有機である化合物に対する親和性を示している。
【0100】
TMP濾液は、4250mgOdm−3を消費することが見出された。この液をFT−LSSAで処理すると、この値は、3970mgOdm−3(左から2番目)に減少した。これは約7%の減少である。
【0101】
FT−LSSAによる2次処理はCODにいかなる効果も示さなかった。
【0102】
SRCCは有機化合物にも強い親和性を示した。SRCC単独処理後の残りとして、2230mgOdm−3しか測定されなかった。これは48%という大きな減少である。
【0103】
FT−LSSAで前処理したパルプ液を引き続きSRCCで処理し、少量の有機化合物を除去した。この値は3970から3390mgOdm−3に減少した。これは、15%の減少である。
【0104】
図4は、重量分析の結果を、遠心後の上部液体相100cmあたりの残渣mgで示す。
【0105】
TMP濾液は、100cm−3あたり348mgを示した。FT−LSSA処理によって残渣が100cm−3あたり310mgに減少し、これは11%の減少である。
【0106】
この液をさらにFT−LSSAで処理すると、残渣はまた100cm−3あたり290mgに減少した。これは、7%の減少である。
【0107】
SRCCで処理したTMP濾液では、280mgdm−3の残渣が測定され、これは20%の減少である。
【0108】
FT−LSSAによる前処理に引き続くSRCC処理の後で、重量分析では上部液体相の残渣は271mgdm−3であった。これは12.5%の減少に相当する。
【0109】
最後に、他の結果のチェックのために、熱重量分析を図5に報告する。ここで、対応する鉱物による1回処理による物質減を黒棒で示し、タルク前処理に引き続く各鉱物による2次処理を、薄灰色で示す。ここで、左側の黒棒はLSSAによる1回処理後の結果を表す。右側の棒は、SRCCによる1回処理の結果を表す。左側の灰色の棒はLSSAによる第1処理およびLSSAによる第2処理の後の結果に関し、一方右側の灰色の棒は、LSSAによる第1処理およびSRCCによる第2処理の結果を示す。
【0110】
表面積の小さいタルクでの遠心分離後の残渣(左の黒棒)は1000℃に加熱したとき2%の揮発物質を失った。
【0111】
この前処理サンプルをFT−LSSAで再処理した場合(左の灰色の棒)は、さらに1.1%失ったのみであった。SRCCは表面に2.3%の物質を吸着した。(右の黒棒)FT−LSSAで前処理したTMP濾液をさらに、SRCCで処理すると、1.3%の物質をSRCC残渣に吸着しただけであるという結果だった。(右の灰色の棒)
【0112】
したがって、サンプル由来の粒子物質を効果的に浄化するにはSRCCが好ましく、一方、細かいコロイド状ピッチの有機物質を捕捉するにはタルクが好ましい。
【0113】
したがって、特別に表面反応した炭酸カルシウムは製紙環境におけるピッチ種を容易に吸着することが示された。典型的なピッチコントロールタルクはパルプ液に含まれ得るすべての成分に対応するに十分な表面積を有していないことが明らかである。さらに、タルクが脂溶性成分を前選択するということは、クーロン相互作用は実質的に存在しないことを意味する。表面反応した炭酸カルシウムまたは極性の活性表面反応した炭酸カルシウムと非極性タルクとの組合せは、TMP木材ピッチに対するような相乗的水システム処理の可能性を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面反応した天然炭酸カルシウム、または表面反応した炭酸カルシウムを含み、20℃で測定したpHが6.0より高い水性懸濁液が、水性媒体に添加され、表面反応した炭酸カルシウムが、天然炭酸カルシウムと二酸化炭素および1種または複数の酸との反応生成物である、水性媒体中におけるピッチのコントロール方法。
【請求項2】
表面反応した天然炭酸カルシウムが、20℃で測定したpHが6.5より高い、好ましくは7.0より高い、最も好ましくは7.5である水性懸濁液として調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
天然炭酸カルシウムが、大理石、方解石、白亜およびドロマイト、石灰石ならびにこれらの混合物を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
酸が、25℃において2.5以下のpKを有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
酸が、塩酸、硫酸、亜硫酸、硫酸水素塩、リン酸、シュウ酸およびこれらの混合物を含む群から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
天然炭酸カルシウムが、少なくとも1種の珪酸塩および/またはシリカ、水酸化アルミニウム、アルカリ土類金属アルミン酸塩、酸化マグネシウムまたはこれらの混合物の存在下に、酸および/または二酸化炭素と反応させられることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1種の珪酸塩が、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウムおよびアルカリ金属珪酸塩を含む群から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
表面反応した天然炭酸カルシウムが、窒素を使用しISO9277のBET法によって測定して、5m/gから200m/g、好ましくは20m/gから80m/g、より好ましくは30m/gから60m/g、例えば、43m/gの比表面積を有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
表面反応した天然炭酸カルシウムが、沈降法によって測定して、0.1から50μm、好ましくは0.5から25μm、より好ましくは0.8から20μm、特に1から10、例えば4から7μmの平均粒径d50を有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
表面反応した天然炭酸カルシウムの水性懸濁液が、1種または複数の分散剤で安定化されていることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
表面反応した天然炭酸カルシウムが、粉末形態および/または顆粒形態で使用されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
表面反応した天然炭酸カルシウムが、オーブン(100℃)で乾燥した繊維の重量に対して0.05−25重量%、より好ましくは0.25−10重量%、最も好ましくは0.5−2重量%の量で添加されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
表面反応した天然炭酸カルシウムを添加する前に、前記ピッチを含有する水性媒体のpHが>6、より好ましくは>6.5、より好ましくは>7の値に調節されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ピッチを含有する水性媒体が、製紙工程で使用される機械パルプ、例えば、砕木、TMP(熱機械パルプ)、または化学熱機械パルプ(CTMP)および化学パルプ、例えば、クラフトパルプもしくは硫酸塩パルプ、または再生パルプを含む群から選択されることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ピッチを含有する媒体に、タルクがさらに加えられることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
タルクが、>90重量%、例えば>95重量%または>97重量%および>100重量%までの純度を有することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
タルク粒子が、沈降法によって測定して、0.1から50μm、例えば、0.2から40μm、好ましくは0.3から30μm、より好ましくは0.4から20μm、特に0.5から10μm、例えば、1、4または7μmのd50値を有することを特徴とする、請求項15または16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
タルクが、3と100g/mの間、好ましくは7g/mと80g/mの間、より好ましくは9g/mと60g/mの間、例えば、51g/m、特に10と50g/mの間、例えば30g/mの比表面積を有することを特徴とする、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
タルクが、オーブン(100℃)で乾燥した繊維の重量に対して0.05−25重量%、より好ましくは0.25−10重量%および最も好ましくは0.5−2重量%の量で加えられることを特徴とする、請求項15から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
浄化しようとする水が、表面濾過、深層濾過および/または堆積濾過によって前記表面反応した天然炭酸カルシウムと接触させられることを特徴とする、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
請求項1から14のいずれか一項に記載の表面反応した天然炭酸カルシウムの、ピッチコントロールへの使用。
【請求項22】
表面反応した天然炭酸カルシウムが、請求項15から19のいずれか一項に記載のタルクと組み合わせて使用されることを特徴とする、請求項20に記載の使用。
【請求項23】
ピッチコントロールのための、請求項1から14のいずれか一項に記載の表面反応した天然炭酸カルシウムと、請求項15から19のいずれか一項に記載のタルクとの組合せ。
【請求項24】
請求項1から14のいずれか一項に記載の表面反応した天然炭酸カルシウムと、水性媒体から除去したピッチとの複合物。
【請求項25】
請求項15から19のいずれか一項に記載のタルクをさらに含む、請求項23に記載の複合物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2010−521595(P2010−521595A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−554023(P2009−554023)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/053335
【国際公開番号】WO2008/113839
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(505018120)オムヤ・デイベロツプメント・アー・ゲー (31)
【Fターム(参考)】