説明

ピリミジン−5−イル酢酸誘導体のコリン塩の多形体を調製する方法

[4,6−ビス(ジメチルアミノ)−2−(4−{[4−(トリフルオロメチル)ベンゾイル]アミノ}ベンジル)ピリミジン−5−イル]酢酸のコリン塩を調製する方法が提供される。本発明の方法は、該塩をより純粋な塩形態で調製するのに有用である。また、[4,6−ビス(ジメチルアミノ)−2−(4−{[4−(トリフルオロメチル)ベンゾイル]アミノ}ベンジル)ピリミジン−5−イル]酢酸のより純粋な形態のコリン塩が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、[4,6−ビス(ジメチルアミノ)−2−(4−{[4−(トリフルオロメチル)ベンゾイル]アミノ}ベンジル)ピリミジン−5−イル]酢酸のコリン塩を調製する方法に関する。本発明の方法は、より純粋な形態の該塩を調製するのに有用である。
【背景技術】
【0002】
CRTH2は、Th2細胞、好酸球および好塩基球上に発現されるGタンパク質共役型化学誘引物質受容体である(Nagataら、J.Immunol.1999,162,1278〜1286;Hiraiら、J.Exp.Med.2001,193,255〜261)。プロスタグランジンD2(PGD2)は、肥満細胞から産生される重要な炎症メディエーターであり、CRTH2に対する天然リガンドである。最近、PGD2によるCRTH2の活性化が、Th2細胞および好酸球の遊走および活性化を誘導することが示され、CRTH2は、アレルギー疾患において炎症を促進する役割を演じる可能性があることを示唆している(Hiraiら、J.Exp.Med.2001,193,255〜261;Gervaisら、J.Allergy Clin.Immunol.2001,108,982〜988)。また、アトピー性皮膚炎の患者において、CRTH2を発現している循環性T細胞の、該疾患の重症度に相関する増加が存在することがわかっている(Cosmiら、Eur.J.Immunol.2000,30,2972〜2979;Iwazakiら、J.Investigative Dermatology 2002,119,609〜616)。アレルギー性炎症の開始および持続におけるPGD2の役割は、喘息のマウスモデルにおいて、PGD2シンターゼによるインビボでのPGD2の過剰産生が気道炎症を悪化させることを示すことによって、さらに立証されている(Fujitaniら、J.Immunol.2002,168,443〜449)。したがって、CRTH2拮抗薬は、アレルギー性鼻炎、アレルギー性喘息、気管支狭窄、アトピー性皮膚炎、または全身性炎症性障害などのCRTH2介在性障害または疾患を治療するのに潜在的に有用である。
【0003】
国際公開第2008/15678号には、式(I)
【化1】

を有する、遊離酸形態の[4,6−ビス(ジメチルアミノ)−2−(4−{[4−(トリフルオロメチル)ベンゾイル]アミノ}ベンジル)ピリミジン−5−イル]酢酸が開示されており、該化合物はCRTH2拮抗薬として有用であることが報告されている。
国際公開第2008/156780号には、遊離酸形態の式(I)の化合物の2種の結晶性多形体が開示されている。
国際公開第2008/156781号には、式(I)の化合物の結晶性コリン塩を含むアミン塩が開示されている。しかし、国際公開第2008/156781号には、開示の方法で調製されるコリン塩の収率またはその純度が記載されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書中で開示するのは、式(I)の化合物の結晶性コリン塩の改善された調製方法であり、該方法は、前記コリン塩を高収率および高純度で提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのもっとも広範な実施形態において、本発明は、式(I)の化合物の結晶形のコリン塩を調製する方法に関するものであり、該方法は、
(a)イソプロパノールおよび水を含む溶媒中で、式(I)の化合物のコリン塩の第1混合物を形成するステップ、
(b)ステップ(a)の第1混合物を貧溶媒(anti−solvent)と接触させて、第2混合物を提供するステップ、および
(c)ステップ(b)の前記第2混合物から式(I)の化合物のコリン塩を結晶化させて、結晶形の式(I)の化合物を提供するステップ、を含む。
【0006】
便宜上、上記方法を、本明細書中で「本発明の方法」または「本発明の工程」と呼ぶ。
本発明の方法によって製造されるコリン塩は、約6.6、15.2、16.1、18.6、19.5、20.0、21.6、26.5°の2θ角を含む粉末X線回折パターンを示し、該パターンは、国際公開第2008/156781号中で式(I)の化合物のコリン塩に関して記載されている粉末X線回折パターンに実質上類似している。
【0007】
別の実施形態において、本発明は、式(I)の化合物の結晶性コリン塩(「本発明のコリン塩」)に関するものであり、ここで、式(I)の化合物の前記結晶性コリン塩は、2−(4−(ジメチルアミノ)−6−ヒドロキシ−2−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)ピリミジン−5−イル)酢酸(化合物A)およびN−(4−((5−(シアノメチル)−4,6−ビス(ジメチルアミノ)ピリミジン−2−イル)メチル)フェニル)−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド(化合物B)を、化合物A、化合物B、コリン、および式(I)の化合物の総質量に対して約0.30質量%未満含む:
【化2】

さらに別の実施形態において、本発明は、薬学的有効量の本発明のコリン塩、少なくとも1種の薬学的に許容される担体または賦形剤、および任意選択で1種または複数のさらなる活性化合物を含む医薬組成物(「本発明の医薬組成物」)に関する。別の実施形態において、本発明は、患者に治療有効量の本発明のコリン塩を投与することを含む、CRTH2介在性疾患または障害の1つまたは複数の症状を治療または予防する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】式(I)の化合物の本発明の方法によって作られたコリン塩の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図2】式(I)の化合物の本発明の方法によって作られたコリン塩の示差走査熱量分析(DSC)および熱重量分析(TGA)のサーモグラフを示す図である。
【図3】式(I)の化合物の本発明の方法によって作られたコリン塩の動的蒸気吸着(DVS)等温線プロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
前に言及したように、主題発明は、式(I)の化合物の結晶形のコリン塩を調製する方法に関するものであり、該方法は、
(a)イソプロパノールおよび水を含む溶媒中で、式(I)の化合物のコリン塩の第1混合物を形成するステップ(「混合ステップ」)、
(b)ステップ(a)の第1混合物を貧溶媒と接触させて(「貧溶媒添加ステップ」)、第2混合物を提供するステップ、および
(c)ステップ(b)の前記第2混合物から式(I)の化合物のコリン塩を結晶させることを可能にして、結晶形の式(I)の化合物を提供するステップ(「結晶化ステップ」)、を含む。
本出願者らは、本発明の方法が、国際公開第2008/156781号に記載の方法を用いるのに比べて、式の化合物のコリン塩をより高い収率およびより高い純度で提供することを見出した。本発明の方法は、また、それが、結晶化のより優れた計画、および化合物の加水分解を抑制するための溶媒の選択を提供するので、国際公開第2008/156781号に記載の方法に比べて、大規模製造にとって受け入れやすい。一実施形態において、本発明の方法は、また、所望の粒度分布を備えた最終生成物を直接的に製造することができる、粉砕された種晶を使用し、それによって、生成物を粉砕する必要性を回避する。
【0010】
式(I)の化合物の本発明の方法で製造されるコリン塩は、表1に示すように2θ角およびd−面間隔値を含む粉末X線回折パターンによって特徴付けられる(後記参照)。式(I)の化合物のコリン塩について表1に報告した値は、国際公開第2008/156781号中に報告されている値に実質上類似しており、該方法が実質的に類似の多形体をもたらすことを示している。
混合ステップで使用される式(I)の化合物のコリン塩は、結晶性もしくは非晶性固体の、溶媒和物(例えば、水和物)もしくは非溶媒和物(例えば、無水物)、またはこれらの任意の組合せなどの前もって形成された固体の形態で存在することができる。
【0011】
別法として、混合ステップで使用される式(I)の化合物のコリン塩は、(1)式(I)の化合物のコリン塩および(2)イソプロパノール、水、またはこれらの組合せを含む、液体、例えば、溶液またはスラリーの形態で存在することができる。
別の選択肢では、前記混合ステップで使用される式(I)の化合物のコリン塩は、遊離酸形態の式(I)の化合物および水酸化コリンがイソプロパノールおよび水の中で反応して式(I)の化合物のコリン塩を形成することを可能にすることによって、インサイチュで生成または形成することができる(「塩形成ステップ」)。
本明細書中で使用する場合、用語「遊離酸」は、それが式(I)の化合物に関する場合、式(I)の化合物の塩でない形態を指す。
インサイチュでの塩形成に関し、インサイチュでの塩形成に使用される遊離酸形態の式(I)の化合物の水酸化コリンに対するモル比は、約3:1〜1:3、約2:1〜1:2、または約1:1で変えることができる。式(I)の化合物のコリン塩の生じた結晶は、約1:1である遊離酸形態の式(I)の化合物とコリンとのモル比を有する。インサイチュでの塩形成に使用される式(I)の化合物の形態は、遊離酸形態の式(I)の化合物の溶媒和物もしくは水和物でよく、非晶性または結晶性の、例えば、国際公開第2008/156780号中に記載の形態Iでよい。別法として、塩形成ステップで使用される式(I)の遊離酸化合物は、非晶性無水物および/または非溶媒和物でよい。
【0012】
したがって、別の実施形態において、本発明は、式(I)の化合物のコリン塩の調製方法に関するものであり、該方法は、
(a)イソプロパノールおよび水の存在下で、遊離酸形態の式(I)の化合物を水酸化コリンと合わせて、式(I)の化合物のコリン塩を含む第1混合物を提供するステップ(「混合ステップ」)、
(b)ステップ(a)の第1混合物を貧溶媒と接触させて(「貧溶媒添加ステップ」)、第2混合物を提供するステップ、および
(c)ステップ(c)の前記第2混合物から式(I)の化合物のコリン塩を結晶させることを可能にして、結晶形の式(I)の化合物を提供するステップ(「結晶化ステップ」)を含む。
【0013】
上記実施形態の混合ステップは、式(I)の化合物のコリン塩の少なくとも大部分が溶解することを可能にするのに十分な時間および温度で実施される。したがって、一実施形態において、式(I)の化合物のコリン塩の少なくとも大部分は、混合ステップで溶解され、別の実施形態では、式(I)の化合物のコリン塩の本質的にすべてが混合ステップで溶解される。
混合ステップに適した温度は、約25℃〜溶媒のほぼ還流温度、別の実施形態では約25℃〜約80℃、別の実施形態では約25℃〜約60℃、別の実施形態では約40℃〜約65℃、別の実施形態では約60℃〜65℃である。混合ステップに適切な時間は、典型的には約15分〜約24時間、約15分〜約5時間、約15分〜約2時間である。混合ステップは、温度をある時間一定に保持することができるプラトーを包含する1つまたは複数の温度傾斜を含むことができると解釈される。
【0014】
混合ステップで使用されるイソプロパノールおよび水の量は、混合温度、および溶媒系中に存在する水量に応じて変更することができる。典型的には、混合ステップで使用されるイソプロパノールおよび水の総量は、混合物中の式(I)の化合物のコリン塩をその混合温度で実質上すべて溶解するのに必須な量である。一実施形態において、混合ステップで使用されるイソプロパノール/水溶媒系の総量は、イソプロパノール、水、式(I)の化合物、および水酸化コリンの総質量に対して、約25質量%〜約95質量%、または約60質量%〜約65質量%でよい。イソプロパノール/水溶媒系中に存在する水の量は、イソプロパノールおよび水の総質量に対して、約1質量%〜約50質量%、約5質量%〜約25質量%、または約23質量%でよい。
【0015】
一実施形態において、混合ステップは、イソプロパノールおよび水を含む溶媒を用いて実施される。
別の実施形態において、混合ステップは、本質的にはイソプロパノールおよび水からなる溶媒を用いて実施される。
さらに別の実施形態において、混合ステップは、イソプロパノールおよび水からなる溶媒を用いて実施される。
【0016】
前に考察したように、コリン塩は、混合ステップ中にインサイチュで生成させることもできる(前記の塩形成ステップ)。塩形成ステップは、利用するなら、水酸化コリンおよび遊離酸形態の式(I)の化合物の少なくとも大部分が反応してコリン塩を形成することを可能にするのに十分な時間および温度で実施される。典型的には、塩形成ステップは、約25℃〜溶媒系のほぼ還流温度、別の実施形態では約25℃〜約40℃、別の実施形態では約40℃〜約65℃、約60℃〜約70℃、別の実施形態では約60℃〜約65℃で実施される。塩形成ステップに適切な時間は、利用するなら、典型的には約15分〜約24時間、約15分〜約5時間、または約15分〜約2時間である。混合ステップは、温度をある時間一定に保持することができるプラトーを包含する1つまたは複数の温度傾斜を含むことができると解釈される。
塩形成ステップにおける遊離酸形態の式(I)の化合物および水酸化コリンの添加順序は、決定的問題ではない。典型的には、水酸化コリンの水溶液を、遊離酸形態の式(I)の化合物およびイソプロパノールを含む混合物に添加する。式(I)の化合物、水酸化コリン、イソプロパノール、および水を含む生成混合物を、次いで、混合ステップに関して前に記載したと同様の方式で処理する。
【0017】
本発明の方法は、貧溶媒添加ステップをさらに含む。本発明の方法で有用な貧溶媒の非限定的例には、アセトン、イソプロパノールおよびヘプタンが含まれる。一実施形態において、貧溶媒添加ステップで使用される貧溶媒はヘプタンを含む。好ましい実施形態において、混合ステップで使用される溶媒は、本質的にはイソプロパノールおよび水からなり、貧溶媒添加ステップで使用される貧溶媒は、本質的にはアセトンからなる。別の実施形態において、貧溶媒添加ステップで使用される貧溶媒は、アセトンからなる。
【0018】
貧溶媒添加ステップで使用される貧溶媒の量は、混合物の温度および使用される具体的貧溶媒に応じて変更することができる。一般に、貧溶媒は、第2混合物中で形成される、式(I)の化合物のコリン塩の少なくとも大部分を沈殿(結晶化)させるのに十分な量で使用される。使用される貧溶媒の量は、一実施形態において、混合ステップで使用されるイソプロパノール、水およびアセトンの総量に対して、25質量%〜約95質量%、または約80質量%〜約85質量%である。上記実施形態中の貧溶媒添加ステップは、第2混合物から式(I)の化合物のコリン塩の少なくとも大部分が沈殿(結晶化)することを可能にするのに十分な時間および温度で実施される。貧溶媒添加ステップに適切な時間は、約0.25時間〜約10時間、約0.5時間〜約10時間、または約1時間〜約4時間である。
貧溶媒添加ステップに適切な温度は、一実施形態では約−20℃〜生じる溶媒系のほぼ還流温度、別の実施形態では約−10℃〜約40℃、別の実施形態では約0℃〜約40℃である。一実施形態において、貧溶媒添加ステップは、混合物の温度が低下するのと同時的に実施される。貧溶媒添加ステップは、一実施形態において、混合物の温度が20℃〜約40℃である時点で始まり、混合物の温度が約−10℃〜約10℃である時点で完了する。別の実施形態において、貧溶媒添加ステップは、混合物の温度が約40℃である時点で始まり、混合物の温度が約0℃である時点で完了する。
【0019】
上記実施形態における結晶化は、第2混合物から式(I)の化合物のコリン塩の少なくとも大部分が結晶化または沈殿することを可能にするのに十分な時間および温度で実施される。結晶化ステップに適切な温度は、約−20℃〜約40℃、別の実施形態では約−10℃〜約30℃、別の実施形態では約0℃である。結晶化ステップに適切な時間は、典型的には約1時間〜約72時間、約1時間〜約48時間、または約2時間〜約24時間である。結晶化ステップは、温度をある時間一定に保持できるプラトーを包含する1つまたは複数の温度傾斜を含むことができると解釈される。
一実施形態において、本発明の方法は、ステップ(a)の第1混合物に播種するステップをさらに含む(「播種ステップ」)。播種ステップは、利用するなら、典型的には、式(I)の化合物のコリン塩の粒子(「播種粒子」)を用いて実施される。したがって、別の実施形態において、本発明の方法は、式(I)の化合物のコリン塩の播種粒子を用いて、ステップ(a)の第1混合物に播種する播種ステップをさらに含む。第1混合物への添加に先立って、播種粒子を、適切な担体液体(例えば、アセトン)と合わせて、第1混合物に添加されるスラリーを形成することができる。別法として、播種粒子を、乾燥固体として、すなわちどんな担体液もなしに第1混合物に添加することができる。
【0020】
播種粒子の大きさは、利用するなら、約1μmから約500μmまで変更できる。したがって、一実施形態において、播種粒子の平均直径は、約1μmから約500μmまでである。別の実施形態において、播種粒子の少なくとも約90%は、約100μm未満の直径を有する。別の実施形態において、播種粒子の少なくとも90%は、約50μm未満の直径を有する。別の実施形態において、播種粒子の少なくとも90%は、約40μm未満の直径を有する。
一実施形態において、本発明の方法は、一実施形態では約0.1μmから約150μmまで、一実施形態では約1μmから約150μmまで、別の実施形態では約25μmから約100μmまで、別の実施形態では約0.1μmから約10μmまで、別の実施形態では約0.5μmから約5μmまで、別の実施形態では約75μm、別の実施形態では約50μmの直径を有する播種粒子を使用して、ステップ(a)の第1混合物に播種するステップをさらに含む。
【0021】
所望の大きさの播種粒子は、例えば、式(I)の化合物のコリン塩のより大きな粒子を所望の大きさが得られるまで粉砕することを含む、通常の方法を利用して調製することができる。通常の粉砕方法には、ジェット粉砕、および衝突粉砕、例えばピン粉砕が含まれる。
本出願者らは、播種粒子の形態(例えば、大きさおよび形状)が、本発明の方法で製造される式(I)の化合物のコリン塩の形態に影響を及ぼすことを見出した。例えば、任意選択の播種ステップを、播種粒子の90%が50μm未満の直径を有する播種粒子を使用して実施すると、本発明の方法によって製造されるコリン塩粒子の90%は100μm未満の直径を有する。
【0022】
本発明の方法は、ステップ(b)でアセトンと接触させることに先立って、および利用するなら任意の播種ステップに先立って、ステップ(a)の混合物を濾過するのに行使される仕上げ濾過ステップをさらに含むことができる。したがって、本発明は、式(I)の化合物のコリン塩を調製するための前記実施形態のいずれかに関するものであり、該方法は、ステップ(b)でアセトンと接触させることに先立って、およびいずれか任意の播種ステップに先立って、ステップ(a)の混合物を濾過するステップをさらに含む。仕上げ濾過ステップは、利用するなら、典型的には、約25℃から溶媒のほぼ還流温度まで、別の実施形態では約25℃〜約80℃、別の実施形態では約40℃〜約70℃、別の実施形態では約65℃〜約70℃で実施される。
【0023】
別の実施形態において、本発明の方法は、仕上げ濾過に先立って、ステップ(a)の混合物を活性炭で処理することをさらに含むことができる。理論によって限定されるものではないが、本出願者らは、活性炭での処理は痕跡量の不純物、例えば、最終製品を着色する可能性のある不純物を除去するものと考える。
本発明の方法は、結晶化ステップで形成された式(I)の化合物のコリン塩を単離、洗浄および乾燥することをさらに含むことができる。したがって、一実施形態において、前記実施形態中に記載の本発明の方法は、前記混合物からステップ(c)の式(I)の化合物の前記結晶性コリン塩を分離するステップ(「分離ステップ」)をさらに含むことができる。分離ステップでは、例えば、濾過、遠心分離、および/またはデカントを含む、固/液分離に有用な任意の通常的方法を利用することができる。
【0024】
混合物の液相から分離したら、式(I)の化合物のコリン塩を、残留不純物を除去するために1または複数回洗浄することができる(「洗浄ステップ」)。任意選択の洗浄ステップで使用される洗浄溶媒の量および組成は、混合ステップで使用された溶媒の種類および量に応じて変わる。典型的には、洗浄溶媒は、最初はイソプロパノールを含む。洗浄ステップは、同一または異なる溶媒での単回または複数回洗浄を含むことができると解釈される。例えば、最初にイソプロパノールで洗浄した後、式(I)の化合物のコリン塩を、イソプロパノールと混和性である脂肪族炭化水素溶媒で洗浄することができる。イソプロパノールと混和性である洗浄ステップで有用な脂肪族炭化水素の非限定的例には、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、これらの混合物、およびこれらの異性体が含まれる。一実施形態において、イソプロパノールと混和性である1種または複数の脂肪族炭化水素は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、これらの混合物、およびこれらの異性体から選択される。別の実施形態において、イソプロパノールと混和性である脂肪族炭化水素はヘプタンである。
【0025】
本発明の方法は、前記実施形態のいずれかにより調製された式(I)の化合物の結晶性コリン塩を乾燥するステップをさらに含むことができる(「乾燥ステップ」)。乾燥ステップは、利用するなら、減圧下に、または窒素、ヘリウムもしくはアルゴンなどの乾燥不活性ガス流の下で実施することができる。乾燥ステップは、利用するなら、約0℃〜約100℃、典型的には約50℃〜約80℃の温度で実施することもできる。
好ましい実施形態において、本発明は、式(I)の化合物の結晶形のコリン塩を調製する方法に関するものであり、該方法は、
(a)イソプロパノールおよび水を含む溶媒中で、式(I)の化合物のコリン塩の第1混合物を形成するステップ、
(b)ステップ(a)の前記第1混合物を濾過して、第1濾液を提供するステップ、
(c)ステップ(b)の前記第1濾液に式(I)の化合物のコリン塩の種晶粒子を播種して、播種された濾液を提供するステップ(ここで、式(I)の化合物のコリン塩の種晶粒子の少なくとも約90%は、約50μm未満の直径を有する)、
(d)ステップ(c)の播種された濾液を、アセトンを含む貧溶媒と接触させて、第2混合物を提供するステップ、および
(e)ステップ(d)の第2混合物から式(I)の化合物のコリン塩が結晶化することを可能にして、結晶形の式(I)の化合物を提供するステップ、を含む。
前に言及したように、本出願者らは、本発明の方法が、式(I)の化合物のコリン塩を高度に純粋な形態で提供することを見出した。例えば、式(I)の化合物のコリン塩を調製する方法は、化合物A、化合物B、コリン、および式(I)の化合物の総質量に対して0.3質量%未満の化合物Aおよび化合物Bを含む製品を提供する。
【0026】
一実施形態において、本発明の方法は、化合物A、化合物B、コリン、および式(I)の化合物の総質量に対して、一実施形態では約0.30質量%未満の化合物Aおよび化合物B、別の実施形態では約0.20質量%未満の化合物Aおよび化合物B、別の実施形態では約0.10質量%未満の化合物Aおよび化合物B、別の実施形態では約0.05質量%未満の化合物A、別の形態では約0.20質量%未満の化合物B、別の実施形態では約0.10質量%未満の化合物B、別の実施形態では約0.05質量%未満の化合物Bを含む、式(I)の化合物の結晶性コリン塩を提供する。
理論によって限定されるものではないが、本出願者らは、これらの不純物(すなわち化合物AおよびB)は、式(I)の化合物の加水分解、またはより前の合成ステップで生成された副生物に由来すると考える。本出願者らは、アセトンが、貧溶媒として機能し、そのうえ結晶性生成物から化合物Aおよび化合物Bを排除するのに有効であると考える。
【0027】
別の実施形態において、本発明は、化合物A、化合物B、コリン、および式(I)の化合物の総質量に対して、一実施形態では約0.30質量%未満の化合物Aおよび化合物B、別の実施形態では約0.20質量%未満の化合物Aおよび化合物B、別の実施形態では約0.10質量%の化合物Aおよび化合物B、別の実施形態では約0.05質量%未満の化合物A、別の実施形態では約0.20質量%未満の化合物B、別の実施形態では約0.10質量%未満の化合物B、別の実施形態では約0.05質量%未満の化合物Bを含む、式(I)の化合物の結晶性コリン塩に関する。
キャラクタリゼーション
前に言及したように、本発明の方法によって製造された式(I)の化合物のコリン塩は、下表1に示すような2θ角およびd−面間隔値を含む粉末X線回折パターンによって特徴付けられる。
【0028】
【表1】

式(I)の化合物のコリン塩に関する表1に報告の値は、国際公開第2008/156781号中に報告の値に実質上類似しており、該方法が実質上類似の多形体をもたらすことを示している。
【0029】
DVSデータ(図3)は、本発明のコリン塩が、25℃で75%の相対湿度まで非吸湿性であることを示している。
【0030】
医薬組成物
本発明の医薬組成物は、吸入、経口、静脈内、局所、皮下、筋内、腹膜内、鼻腔内、経皮、または直腸投与に適した形態で調製することができる。
【0031】
A)経口製剤
一実施形態において、本発明は、本発明のコリン塩および1種もしくは複数の薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、経口投与に適した本発明の医薬組成物に関する。
別の実施形態において、本発明は、本質的には本発明のコリン塩からなる、経口投与に適した医薬組成物に関する。
経口製剤の非限定的例には、不活性および非毒性の薬学的に許容される賦形剤または溶媒と一緒でもよい、錠剤、被覆錠剤、丸剤、顆粒剤もしくは顆粒粉剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、または溶液剤が含まれる。
【0032】
適切な錠剤は、例えば、活性物質を既知の賦形剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムもしくは乳糖などの不活性希釈剤;トウモロコシデンプンもしくはアルギン酸などの崩壊剤;デンプンもしくはゼラチンなどの結合剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはタルクなどの滑沢剤;および/またはカルボキシメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、もしくはポリ酢酸ビニルなどの遅延放出のための薬剤と混合することによって得ることができる。錠剤は、また、いくつかの層を含むことができる。
被覆錠剤は、錠剤に類似して製造されたコアを、錠剤被覆に通常的に使用される物質、例えば、コリドンもしくはセラック、アラビアガム、タルク、二酸化チタンまたは糖で被覆することによって調製することができる。遅延放出を達成するため、または配合禁忌を防ぐため、コアは、いくつかの層からなることもできる。同様に、錠剤の被覆は、遅延放出を達成するために、錠剤に関して前に言及した賦形剤をことによると使用するいくつかの層からなることができる。
【0033】
本発明による活性物質またはその組合せを含むシロップ剤は、サッカリン、シクラメート、グリセロールまたは糖などの甘味剤、および香味増強剤、例えば、バニリンまたはオレンジエキスなどの香味剤を付加的に含むことができる。それらのシロップ剤は、また、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどの懸濁補助剤もしくは増粘剤;例えば、脂肪アルコールとエチレンオキシドとの縮合生成物などの湿潤化剤;またはp−ヒドロキシベンゾエートなどの保存剤を含むことができる。
1種または複数の活性物質または活性物質の組合せを含むカプセル剤は、例えば、活性物質を乳糖またはソルビトールなどの不活性担体と混合すること、およびそれらをゼラチンカプセル中に充填することによって調製することができる。
使用できる担体または賦形剤としては、例えば、水;パラフィン(例えば、石油留分)、植物油(例えば、落花生またはゴマ油)、単官能性または多官能性アルコール(例えば、エタノールまたはグリセロール)などの薬学的に許容される有機溶媒;天然鉱物性粉末(例えば、カオリン、クレー、タルク、チョーク)、合成鉱物性粉末(例えば、高分散性ケイ酸およびシリケート)、糖(例えば、蔗糖、乳糖およびブドウ糖)などの担体;乳化剤(例えば、リグニン、亜硫酸パルプ廃液、メチルセルロース、デンプンおよびポリビニルピロリドン);および滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸およびラウリル硫酸ナトリウム)が挙げられる。
錠剤は、デンプン、好ましくはバレイショデンプン、ゼラチンなどの種々の添加剤と一緒に、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウムおよびリン酸カルシウムなどの添加剤を付加的に含むことができる。さらに、打錠工程のために、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびタルクなどの滑沢剤を同時に使用することができる。
水性懸濁剤は、前述の賦形剤に加えて、種々の香味増強剤または着色剤と組み合わせることができる。
本発明のコリン塩を含む経口製剤のそれぞれは、後記のような1種または複数のさらなる活性化合物を含んでいてもよいと解釈される。
【0034】
B)吸入製剤
一実施形態において、本発明は、本発明のコリン塩および1種もしくは複数の薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、吸入に適した医薬組成物に関する。
【0035】
別の実施形態において、本発明は、本質的には本発明のコリン塩および少なくとも1種の薬学的に許容される担体または賦形剤からなる、吸入に適した医薬組成物に関する。
吸入に適した調合物の非限定的例には、吸入可能粉末剤、噴射剤を含む計量エアゾール剤、および噴射剤を含まない吸入可能溶液剤が含まれる。吸入製剤は、後記のような不活性で非毒性の薬学的に許容される賦形剤または溶媒を含んでいてもよい。
【0036】
B.1)粉末製剤
本発明の医薬組成物は、一実施形態において、薬学的に許容される賦形剤を含んでいてもよい吸入可能粉末の形態で存在することができる。
粉末製剤に有用な薬学的に許容される賦形剤の非限定的例には、単糖(例えば、ブドウ糖またはアラビノール)、二糖(例えば、乳糖、蔗糖、麦芽糖、トレハロース)、オリゴおよび多糖(例えば、デキストラン)、多価アルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール、キシリトール)、シクロデキストリン(例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、χ−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン)、塩(例えば、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム)、またはこれらの賦形剤の互いとの混合物が含まれる。好ましくは、単糖または二糖が使用され、一方、乳糖、トレハロースまたはブドウ糖の使用は、排他的ではないが、とりわけそれらの水和物の形態で好まれる。
【0037】
本発明による吸入可能粉末剤の範囲内で、賦形剤は、一実施形態では約250μmまでの、別の実施形態では約10〜約250μm、別の実施形態では約10〜約150μm、別の実施形態では約15〜約80μmの平均最大粒径を有する。
吸入可能粉末剤は、前述の賦形剤に対して1〜9μmの平均粒径を有するより微細な賦形剤画分をさらに含むことができる。これらのより微細な賦形剤は、また、前に挙げた可能な賦形剤の群から選択される。本発明による吸入可能粉末剤を調製するには、好ましくは0.5〜10μm、より好ましくは1〜6μmの平均粒径を有する微粉化形態の本発明のコリン塩(および、存在するなら、1種または複数のさらなる活性化合物)を賦形剤混合物に添加する。摩砕および微粉化によって、ならびに最終的には成分を一緒に混合することによって、本発明による吸入可能粉末剤を製造する方法は、当技術分野で公知である。
一実施形態において、本発明は、その活性成分として本発明のコリン塩のみを含む、吸入可能粉末剤の形態の医薬組成物に関する。
【0038】
本発明による吸入可能粉末剤は、先行技術から公知の吸入器を使用して投与することができる。1種または複数の生理学的に許容される賦形剤を含む、本発明による吸入可能粉末剤は、例えば、米国特許第4570630号に記載のように計量チャンバーを利用する供給源から単回用量を送達する吸入器を使用して、またはドイツ特許出願公開第3625685号に記載のような他の手段によって投与することができる。生理学的に許容される賦形剤と一緒になっていてもよい本発明のコリン塩を含む、本発明による吸入可能粉末剤は、例えば、Turbuhaler(登録商標)の名称で知られる吸入器を使用して、または例えば欧州特許出願公開第237507号中に開示されているような吸入器を使用して投与することができる。好ましくは、生理学的に許容される賦形剤を含む本発明による吸入可能粉末剤は、例えば国際公開第94/28958号中に記載のような、吸入器中で使用されるカプセル中に(いわゆるインハレット(inhalette)を生じさせるために)充填される。本発明による吸入可能粉末剤を使用するのにとりわけ好ましい吸入器は、Handyhaler(登録商標)の名称で知られる吸入器である。
本発明による吸入可能粉末剤を、前記の好ましい使用のためにカプセル(吸入器)中に充填するなら、各カプセル中に充填される量は、カプセルにつき1〜30mgであるべきである。
【0039】
B.2)噴射剤を含む吸入可能エアゾール剤
別の実施形態において、本発明は、噴射剤を含む吸入可能エアゾール剤の形態の医薬組成物に関する。このような製剤は、本発明のコリン塩、および任意選択で1種または複数のさらなる活性化合物を溶解されたおよび/または分散された形態で含む。
噴射剤を含む吸入可能エアゾール剤で有用な噴射剤ガスの非限定的例には、n−プロパン、n−ブタンもしくはイソブタンなどの炭化水素;またはメタン、エタン、プロパン、ブタン、シクロプロパンもしくはシクロブタンの塩素化および/もしくはフッ素化誘導体などのハロ炭化水素が含まれる。
【0040】
別の実施形態において、噴射剤を含む吸入可能エアゾール剤中で使用される噴射剤は、TG11(トリクロロフルオロメタン)、TG12(ジクロロジフルオロメタン)、TG134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)、TG227(1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン)、またはこれらの混合物である。別の実施形態において、噴射剤は、TG134a、TG227、またはこれらの混合物である。
噴射剤を含む本発明による吸入可能エアゾール剤は、また、共溶媒、安定剤、界面活性剤、酸化防止剤、滑沢剤、およびpH調整剤などの他の成分を含むことができる。これらの成分は、すべて、当技術分野で公知である。
噴射剤を含む本発明による吸入可能エアゾール剤は、5質量%までの本発明のコリン塩、および任意選択で1種または複数のさらなる活性化合物を含むことができる。本発明によるエアゾール剤は、例えば0.002〜5質量%、0.01〜3質量%、0.015〜2質量%、0.1〜2質量%、0.5〜2質量%、または0.5〜1質量%の本発明のコリン塩、および任意選択のさらなる活性化合物を含む。
【0041】
本発明のコリン塩および任意選択のさらなる活性化合物が分散された形態で存在するなら、活性物質の粒子は、一実施形態では約10μmまでの平均粒径、別の実施形態では約0.1〜約6μm、別の実施形態では約1〜約5μmの平均粒径を有する。
噴射剤で駆動される本発明による吸入エアゾール剤は、当技術分野で公知の吸入器(MDI=計量吸入器)を使用して投与することができる。したがって、別の態様において、本発明は、これらのエアゾール剤を投与するのに適した1種または複数の吸入器と組み合わせた、前記のような噴射剤で駆動されるエアゾール剤の形態の医薬組成物に関する。加えて、本発明は、それらが、本発明による前記の噴射剤ガスを含むエアゾール剤を含むことを特徴とする吸入器に関する。本発明は、また、適切な吸入器で使用できる適切な弁を取り付けられ、かつ前述の本発明による噴射ガスを含む吸入エアゾール剤の1種を含むカートリッジに関する。適切なカートリッジ、およびこれらのカートリッジに噴射剤ガスを含む本発明による吸入可能エアゾール剤を充填する方法は、先行技術から公知である。
【0042】
B.3)噴射剤を含まない吸入可能エアゾール剤
別の実施形態において、本発明は、噴射剤を含まない吸入可能エアゾール剤の形態の医薬組成物に関する。
噴射剤を含まない本発明による吸入可能エアゾール剤は、溶液または懸濁液の形態で存在する。噴射剤を含まない本発明による吸入可能溶液剤および懸濁剤は、例えば、水性またはアルコール性、好ましくはエタノール性溶媒を、場合によっては水性溶媒と混合されたエタノール性溶媒を含む。水性/エタノール性溶媒混合物を使用するなら、水と対比したエタノールの相対比率は、限定はされないが、好ましくは、最大が、70体積%までの、より詳細には60体積%までのエタノールである。体積の残りは水から構成される。本発明のコリン塩および任意選択のさらなる活性化合物を含む溶液または懸濁液は、別個にまたは一緒に、適切な酸を使用して2〜7、好ましくは2〜5のpHに調整される。pHは、無機または有機酸から選択される酸を使用して調整することができる。とりわけ適切な無機酸の例には、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、および/またはリン酸が含まれる。とりわけ適切な有機酸の例には、アスコルビン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸、フマル酸、酢酸、ギ酸、および/またはプロピオン酸などが含まれる。好ましい無機酸は、塩酸および硫酸である。活性物質の1種とすでに酸付加塩を形成している酸を使用することも可能である。有機酸の中では、アスコルビン酸、フマル酸、およびクエン酸が好ましい。所望なら、上記酸の混合物を、例えば、クエン酸またはアスコルビン酸のように、それらの酸性化資質に加えて、例えば、香味剤、酸化防止剤または錯化剤としての他の特性を有する酸の場合において特に、使用することができる。本発明によれば、塩酸を使用してpHを調整するのがとりわけ好ましい。
【0043】
本発明によれば、安定剤または錯化剤としてのエデト酸(EDTA)またはその既知塩の1種、エデト酸ナトリウムは、本発明の製剤で必須ではない。他の実施形態は、この化合物またはこれらの化合物を含むことができる。好ましい実施形態において、エデト酸ナトリウムを基準にした含有量は、100mg/100mL未満、好ましくは50mg/100mL未満、より好ましくは20mg/100mL未満である。一般に、エデト酸ナトリウムの含有量が0〜10mg/100mLである吸入可能溶液剤が好ましい。
【0044】
噴射剤を含まない本発明による吸入可能溶液剤に、共溶媒および/またはその他の賦形剤を添加することができる。好ましい共溶媒は、ヒドロキシル基またはその他の極性基を含む溶媒、例えば、アルコールとりわけイソプロピルアルコール;グリコールとりわけプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール;グリコールエーテル;グリセロール;ポリオキシエチレンアルコール;およびポリオキシエチレン脂肪酸エステルである。この文脈中の用語「賦形剤」および「添加剤」は、活性物質ではないが、活性物質製剤の品質特性を改善するために薬理学的に適切な溶媒中で活性物質または活性物質(複数可)と共に製剤化され得る、任意の薬理学的に許容される物質を意味する。好ましくは、これらの物質は、所望の療法に関して薬理学的効果を有さないか、感知できず、または少なくとも望ましくない薬理学的効果を有さない。賦形剤および添加剤としては、例えば、大豆レシチン、オレイン酸などの界面活性剤;ポリソルベートなどのソルビタンエステル;ポリビニルピロリドン;最終医薬製剤の貯蔵寿命を保証もしくは延長するその他の安定剤、錯化剤、酸化防止剤および/もしくは保存剤;香味剤;ビタミン;ならびに/または当技術分野で公知のその他の添加剤が挙げられる。添加剤としては、また、等張剤としての塩化ナトリウムなどの薬理学に許容される塩が挙げられる。
【0045】
好ましい賦形剤としては、例えばpHを調整するためにすでに使用されてはいないとの条件で、アスコルビン酸などの酸化防止剤、ビタミンA、ビタミンE、トコフェロールおよび類似のビタミン、ならびに人体中に見出されるプロビタミンが挙げられる。
保存剤は、製剤を病原体による汚染から保護するのに使用することができる。適切な保存剤は、当技術分野で公知の濃度の当技術分野で公知である保存剤、とりわけ、セチルピリジニウムクロリド、塩化ベンザルコニウム、または安息香酸もしくは安息香酸ナトリウムなどのベンゾエートである。前述の保存剤は、好ましくは50mg/100mLまでの、より好ましくは5〜20mg/100mLの濃度で存在する。
【0046】
一実施形態において、噴射剤を含まない吸入可能溶液剤は、水、本発明のコリン塩、および保存剤を含む。別の実施形態において、噴射剤を含まない吸入可能溶液剤は、水、本発明のコリン塩、ならびに塩化ベンザルコニウムおよびエデト酸ナトリウムから選択される保存剤を含む。さらに別の実施形態において、噴射剤を含まない吸入可能溶液剤は、水、本発明のコリン塩、および塩化ベンザルコニウムを含む。さらに別の実施形態において、噴射剤を含まない吸入可能溶液剤は、水、本発明のコリン塩、およびエデト酸ナトリウムではない保存剤を含む。
【0047】
噴射剤を含まない本発明による吸入可能溶液剤は、治療的吸入に適したエアゾールを生成させるために数秒以内で治療用量の少量の液体製剤を霧化する能力のある部類の吸入器を使用して投与することができる。本発明の範囲内で、好ましい吸入器は、100μL未満、好ましくは50μL未満、より好ましくは20〜30μLの量の活性物質溶液を、好ましくは1回の噴霧行為で霧化して、エアゾールの吸入可能部分が治療有効量に相当するような方式で、20μm未満、好ましくは10μm未満の平均粒径を有するエアゾールを形成する吸入器である。
【0048】
吸入用液体医薬組成物の計量された量を噴射剤なしで送達するためのこの部類の装置は、例えば、国際公開第91/14468号、さらには国際公開第97/12687号中(とりわけ、図6aおよび6bを参照)に記載されている。その中に記載のネブライザー(装置)は、Respimat(登録商標)の名称で知られている。
一実施形態において、本発明は、他の共溶媒および/または賦形剤を含んでいてもよい吸入可能溶液剤の形態の医薬組成物に関する。
別の実施形態において、本発明は、ヒドロキシル基またはその他の極性基を含む少なくとも1種の共溶媒、例えば、アルコールとりわけイソプロピルアルコール;グリコールとりわけプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール;グリコールエーテル;グリセロール;ポリオキシエチレンアルコール;およびポリオキシエチレン脂肪酸エステルを含む吸入可能溶液剤の形態の医薬組成物に関する。
さらに別の実施形態において、本発明は、界面活性剤、安定剤、錯化剤、酸化防止剤および/もしくは保存剤、香味剤、薬理学的に許容される塩、ならびに/またはビタミンから選択される賦形剤を含む吸入可能溶液剤の形態の医薬組成物に関する。
【0049】
噴射剤を含まない吸入可能エアゾール剤がさらなる活性化合物を含む場合、本発明による組合せに適用可能な用量は、単回適用ごとの用量を指すと解釈されたい。しかし、これらは、本発明による組合せを多回で投与する可能性を排除しないと解釈される。医学的必要性に応じて、患者は、多回吸入適用を受けることもできる。例えば、患者は、本発明による組合せを、各治療日の朝に例えば2または3回(粉末吸入器、MDIなどを用いて2または3吹き)で受け入れることができる。前記の用量例は、単に、単回適用ごとの(すなわち1吹きごとの)用量例と解釈されるべきであるので、本発明による組合せの多回適用は、前記例の多回投与につながる。本発明による組成物の適用は、例えば、1日1回、または薬剤の作用持続期間に応じて1日2回、または2もしくは3日おきに1回でよい。
前記投与量は、計量される用量の単なる例と解されるべきであり、すなわち、前記用量は、実際に肺に到達する本発明による組合せの有効用量と解釈されるべきでない。肺に送達される用量が、投与される活性成分の計量された用量に比べて、一般により低いことは、当業者にとって明白である。
【0050】
単位剤形および投与方法
前に言及したように、本発明の医薬組成物は、吸入、経口、静脈内、局所、皮下、筋内、腹膜内、鼻腔内、経皮、または直腸投与に適した調合物の形態で投与することができる。本発明の医薬組成物は、患者に単位剤形として適用される。
本明細書中で使用する場合、句「単位剤形」は、本発明の医薬組成物をそれによって患者に投与する実際の製品を指す。単位剤形の非限定的例には、錠剤、ロゼンジ剤、カプセル剤、吸入粉末カプセル剤、単位用量バイアル剤、計量吸入器(MDI)によって提供される計量剤、注射バイアル剤、および当業者によって一般的に知られたその他の剤形が含まれる。
一実施形態において、本発明は、それを必要とする患者に医薬組成物を経口で投与する方法に関する。経口投与は、患者への1日投与量を達成するために、1日に1または複数回行うことができる。別に実施形態において、本発明のコリン塩は、1日に2回経口で投与される。別の実施形態において、本発明のコリン塩は、1日に1回経口で投与される。
【0051】
別の実施形態において、本発明は、それを必要とする患者に医薬組成物を投与するための吸入方法に関する。さらに別の実施形態において、吸入方法は、吸入可能粉末剤、噴射剤を含む計量エアゾール剤、および噴射剤を含まない吸入可能溶液剤から選択される医薬組成物を含む。別の実施形態において、吸入方法は、吸入可能粉末剤を含む。別の実施形態において、吸入方法は、噴射剤を含む計量エアゾール剤を含む。および別の実施形態において、吸入方法は、噴射剤を含まない吸入可能溶液剤を含む。
別の実施形態において、本発明は、それを必要とする患者に医薬組成物を投与するための座剤の使用に関する。適切な座剤は、例えば、天然脂肪もしくはプロピレングリコールまたはこれらの誘導体などの、この目的のために提供される担体と混合することによって調製することができる。
【0052】
本発明の医薬組成物は、単位剤形を介して1回の投与または1回を超えるサブ投与で患者に適用することができる。一実施形態において、本明細書中で前に言及した1日投与量は1日3回(t−d)の投与スキームで患者に投与され、別に実施形態では本明細書中で前に言及した1日投与量は1日2回(b−i−d)の投与スキームで患者に投与され、別の実施形態では本明細書中で前に言及した1日投与量は1日1回(q−d)の投与スキームで患者に投与される。
一実施形態において、単位剤形は、本発明のコリン塩を、約1mg〜約1000mg、別の実施形態では約5mg〜約800mg、別の実施形態では約10mg〜約700mg、別の実施形態では約15mg〜約600mg、別の実施形態では約20mg〜約500mg、別の実施形態では約25mg〜約400mgの量で含む。
【0053】
医学的適応症
本発明のコリン塩は、優れたCRTH2拮抗作用を示す。したがって、それは、CRTH2活性に関連した疾患を予防および治療するのに適している。本明細書に記載の医薬組成物は、気管支鎮痙、ならびに気道の炎症;口−鼻咽頭、皮膚または眼のアレルギー性疾患;関節の炎症性疾患;および炎症性腸疾患の軽減に関して有益な効果を有することが見出された。
【0054】
一実施形態において、本発明は、
・急性気管支炎、慢性気管支炎、慢性閉塞性気管支炎(COPD)、咳、肺気腫などの、粘液産生の増加もしくは変化を伴う気道および肺の疾患、ならびに/または気道の炎症性および/もしくは閉塞性疾患;
・アレルギー性もしくは非アレルギー性の鼻炎または副鼻腔炎、慢性の副鼻腔炎または鼻炎;
・鼻ポリープ、慢性鼻副鼻腔炎、急性鼻副鼻腔炎:
・喘息、アレルギー性気管支炎、肺胞炎、農夫病、過反応性気道;
・感染、例えば、細菌、ウイルス、蠕虫、真菌、原虫、もしくはその他の病原体による感染に起因する気管支炎または肺炎;
・小児喘息、気管支拡張症;
・肺線維症;
・成人呼吸窮迫症候群、気管支および肺の浮腫;
・種々の起源、例えば、毒性のある気体、蒸気の吸引、吸入に起因する気管支炎または肺炎もしくは間質性肺炎;
・心不全、X線、放射線、化学療法に起因する気管支炎または肺炎もしくは間質性肺炎;
・膠原病、例えば、エリテマトーデス、全身性皮膚硬化症に付随する気管支炎または肺炎もしくは間質性肺炎;
・石綿肺、珪肺症、M.ベックもしくはサルコイドーシス、肉芽腫症を含む種々の起源の、肺線維症、特発性肺線維症(IPF)、間質性肺疾患または間質性肺炎;
・嚢胞性線維症または膵嚢胞性線維症:あるいは
・α−1−アンチトリプシン欠損症;
から選択される適応症(A)の治療に関する。
【0055】
したがって、一実施形態において、本発明は、前記の適応症(A)から選択される呼吸器の疾患および状態を治療するための薬剤を製造するための、本発明の医薬組成物の使用に関する。
別の実施形態において、本発明は、それを必要とする患者に治療有効量の本発明の医薬組成物を投与することを含む、前記(A)から選択される適応症を治療する方法に関する。
【0056】
さらに別の実施形態において、本発明は、慢性気管支炎、慢性閉塞性気管支炎(COPD)、慢性副鼻腔炎、鼻ポリープ、アレルギー性鼻炎、慢性鼻副鼻腔炎、急性鼻副鼻腔炎、および喘息から選択される適応症(A)を治療する方法に関するものであり、該方法は、それを必要とする患者に治療有効量の本発明の医薬組成物を投与することを含む。
一実施形態において、本発明は、
・炎症性偽ポリープ、クローン病、潰瘍性大腸炎などの、種々の起源の消化管の炎症性疾患;
・リウマチ様関節炎などの、関節の炎症性疾患;または
・口−鼻咽頭、皮膚もしくは眼のアレルギー性炎症性疾患;から選択される適応症(B)の治療に関する。
したがって、一実施形態において、本発明は、上記適応症(B)から選択される呼吸器の疾患および状態を治療するための薬剤を製造するための、本発明の医薬組成物の使用に関する。
別の実施形態において、本発明は、それを必要とする患者に治療有効量の本発明の医薬組成物を投与することを含む、適応症(B)から選択される適応症を治療する方法に関する。
【0057】
別の実施形態において、本発明は、口−鼻咽頭、皮膚もしくは眼のアレルギー性炎症性疾患、クローン病または潰瘍性大腸炎から選択される適応症(B)を治療する方法に関する。
一実施形態において、本発明は、1種または複数のさらなる活性化合物を含んでいてもよい本発明の医薬組成物を使用することによって、前述の疾患および状態のいずれかを治療するための薬剤を調製する方法に関する。
別の実施形態において、本発明は、1種または複数のさらなる活性化合物を含んでいてもよい本発明のコリン塩を含む医薬組成物を使用することによって、喘息、ならびにアレルギー性および非アレルギー性鼻炎を治療するための薬剤を調製する方法に関する。
さらなる活性化合物
本発明の医薬組成物は、1種または複数のさらなる活性化合物を含んでいてもよい。したがって、一実施形態において、本発明は、治療有効量の本発明のコリン塩、少なくとも1種の薬学的に許容される担体または賦形剤、および少なくとも1種のさらなる活性化合物を含む医薬組成物(「組合せ」)に関する。別の実施形態において、本発明は、それを必要とする患者に本発明のコリン塩および少なくとも1種のさらなる活性化合物を投与する方法に関する。
組合せの活性物質は、同時に、別個に、または逐次的に投与することができる。好ましい投与経路は、治療すべき適応症によって決まる。
【0058】
一実施形態において、少なくとも1種のさらなる活性化合物は、β2−アドレナリン受容体作用薬(短期および長期作用性β模倣薬)、抗コリン作用薬(短期および長期作用性)、抗炎症性ステロイド(経口および局所性コルチコステロイド)、解離性グロココルチコイド模倣薬、PDE3阻害薬、PDE4阻害薬、PDE7阻害薬、LTD4拮抗薬、EGFR阻害薬、PAF拮抗薬、リポキシンA4誘導体、FPRL1調節薬、LTB4受容体(BLT1、BLT2)拮抗薬、ヒスタミン受容体拮抗薬、PI3キナーゼ阻害薬、例えばLYN、LCK、SYK、ZAP−70、FYN、BTKまたはITKのような非受容体型チロシンキナーゼの阻害薬、例えばp38、ERK1、ERK2、JNK1、JNK2、JNK3またはSAPのようなMAPキナーゼの阻害薬、例えばIKK2キナーゼ阻害薬のようなNF−κBシグナル伝達経路の阻害薬、iNOS阻害薬、MRP4阻害薬、例えば5−リポキシゲナーゼ(5−LO)阻害薬、cPLA2阻害薬、リューコトリエンA4ヒドロラーゼ阻害薬またはFLAP阻害薬のようなリューコトリエン生合成阻害薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、DPI受容体調節薬、トロンボキサン受容体拮抗薬、CCR1拮抗薬、CCR2拮抗薬、CCR3拮抗薬、CCR4拮抗薬、CCR5拮抗薬、CCR6拮抗薬、CCR7拮抗薬、CCR8拮抗薬、CCR9拮抗薬、CCR10拮抗薬、CXCR1拮抗薬、CXCR2拮抗薬、CXCR3拮抗薬、CXCR4拮抗薬、CXCR5拮抗薬、CXCR6拮抗薬、CX3CR1拮抗薬、ニューロキニン(NK1、NK2)拮抗薬、スフィンゴシン1−ホスフェート受容体調節薬、スフィンゴシン1ホスフェートリアーゼ阻害薬、例えばA2a作用薬のようなアデノシン受容体調節薬、例えばP2X7阻害薬のようなプリン作動性受容体の調節薬、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)活性化薬、ブラジキニン(BK1、BK2)拮抗薬、TACE阻害薬、PPARγ調節薬、Rho−キナーゼ阻害薬、インターロイキン1−β変換酵素(ICE)阻害薬、Toll様受容体(TLR)調節薬、HMG−CoAレダクターゼ阻害薬、VLA−4拮抗薬、ICAM−1阻害薬、SHIP作用薬、GABAa受容体阻害薬、ENaC阻害薬、メラノコルチン受容体(MC1R、MC2R、MC3R、MC4R、MC5R)調節薬、CGRP拮抗薬、エンドセリン拮抗薬、粘液調節薬、免疫療法薬、抗気道腫脹化合物、抗咳化合物、CB2作用薬、レチノイド、免疫抑制薬、肥満細胞安定薬、メチルキサンチン、オピオイド受容体作用薬、弛緩薬、消泡剤、抗痙攣薬、5−HT4作用薬、およびこれらの任意の組合せからなる部類から選択される。
【0059】
別の実施形態において、少なくとも1種のさらなる活性化合物は、PDE4阻害薬である。さらに別の実施形態において、少なくとも1種のさらなる活性化合物は、PDE4阻害薬ロフルミラストである。
別の実施形態において、少なくとも1種のさらなる活性化合物は、LTD4拮抗薬である。さらに別の実施形態において、少なくとも1種のさらなる活性化合物は、モンテルカスト、プランルカストおよびザフィルルカストから選択されるLTD4拮抗薬である。
【0060】
別の実施形態において、少なくとも1種のさらなる活性化合物は、ヒスタミン受容体拮抗薬である。さらに別の実施形態において、少なくとも1種のさらなる活性化合物は、アゼラスチン、セチリジン、デスロラチジン、エバスチン、エピナスチン、フェキソフェナジン、ヒドロキシジン、ケトチフェン、レボセチリジン、ロラタジンおよびオロパタジンから選択されるヒスタミン受容体拮抗薬である。
別の実施形態において、少なくとも1種のさらなる活性化合物は、5−LO阻害薬である。さらに別の実施形態において、少なくとも1種のさらなる活性化合物は、5−LO阻害薬ジリュートンである。
【0061】
別の実施形態において、少なくとも1種のさらなる活性化合物は、CCR5拮抗薬である。さらに別の実施形態において、少なくとも1種のさらなる活性化合物は、CCR5拮抗薬マラビロクである。
【0062】
別の実施形態において、少なくとも1種のさらなる活性化合物は、CCR9拮抗薬である。さらに別の実施形態において、少なくとも1種のさらなる活性化合物は、CCR9拮抗薬トラフィセット(Trafficet)である。
【0063】
別の実施形態において、少なくとも1種のさらなる活性化合物は、スルホンアミドである。さらに別の実施形態において、少なくとも1種のさらなる活性化合物は、メサラジンおよびスルファサラジンから選択されるスルホンアミドである。
本発明のコリン塩および少なくとも1種のさらなる活性化合物は、例えば、1つの製剤中に活性成分を一緒に含む固定用量配合物として単一調合物中で、または同時的、個別的もしくは逐次的投与のために構成された部分からなるキットとして2つ以上の別個の製剤中に含めて、組み合わせることができる。本発明の医薬組成物が1種または複数のさらなる活性化合物を含む場合には、単一調合物が好ましい。
【0064】
さらなる活性化合物と組み合わせて使用する場合、本発明による吸入可能粉末剤配合物は、本発明のコリン塩および1種もしくは複数のさらなる活性化合物の双方を含む単一粉末混合物の形態で、または本発明のコリン塩のみ、もしくは1種もしくは複数のさらなる活性化合物のみを含む別々の吸入可能粉末剤の形態で調製し、投与することができる。
少なくとも1種のさらなる活性化合物の1日投与量は、存在するなら、約1mg〜約1000mg、別の実施形態では約2mg〜800mg、別の実施形態では約3mg〜約500mg、別の実施形態では約4mg〜約300mg、別の実施形態では約5mg〜約200mg、別の実施形態では約6mg〜約150mgである。
【0065】
実験の項
式(I)の化合物のコリン塩は、粉末X線回折(XRPD)、示差走査熱量法(DSC)、熱重量分析(TGA)、蒸気吸/脱着、および元素分析を利用して特徴付けられる。
XRPDデータは、Rigaku Miniflex II粉末回折装置(ウッドランド、テキサス州)で記録した。照射はCuKa(30kV、15mA)とした。データは、25℃で、ステップごとに1.67秒、ステップごとに0.02°で、3から35°までの2θで収集した。試料は、シリコン(510)試料ホルダー上に、溶媒を含まない粉末材料の薄層として調製した。
DSCは、TA Instruments Q1000示差走査熱量計を使用して実施した。試料は、参照としての空のアルミニウムパンと一緒の分析のために、密封されたアルミニウムパン中に配置した。20℃〜300℃の温度範囲にわたって10℃/分の加熱速度を採用した。
【0066】
TGAは、TA Instruments Q500熱重量分析装置を使用して実施した。試料は、白金製の試料パン中に配置した。25℃〜300℃の温度範囲にわたって10℃/分の加熱速度を、採用した。
蒸気の吸/脱着は、表面測定装置DVS−HTを使用して実施した。試料は、試料パン上に配置されたホイルインサート中に配置した。試料の水吸着および水脱着を、相対湿度を5%から95%まで段階的に変化させ、2サイクルの吸/脱着で観察した。各ステップの平衡点は、0.002%の質量変化に達した場合に到達したものとした。
粒度分布の測定は、RODOS/M 乾式分散装置を備えたSympatec HELOS System H1588を使用して実施した。粒度分布(PSD)の結果を表2に示す。
HPLC分析は、Agilent1200クロマトグラフ装置を使用して実施した。分離は、Halo C18順相カラム(4.6×150mm、2.7μm)で達成された。移動相は、0.1%H3PO4、20nM HN4PF6を含む水およびアセトニトリルとした。希釈剤はメタノールとした。流速は1.4mL/分、注入体積は5μLとした。定量に使用するUV検出波長は254nmとした。検出限界は、面積基準で0.05%であった。
【0067】
種結晶の調製
式(I)の化合物のコリン塩の種結晶は、式(I)の化合物を粉砕することによって調製される。粉砕は、粒径の低下が、空気ジェットによって誘発される粒子−粒子衝突によって完遂されるジェットミル、または粒径の低下が粒子と粉砕機の移動部分もしくは壁との衝突によって完遂されるインパクトミルを使用して実施される。粉砕は、粒子の90%が50mm未満の直径を有するまで継続される。次いで、粉砕された粒子を捕集し、使用するまで外界条件で貯蔵した。
【実施例】
【0068】
(実施例1a)
ステップ1.種晶スラリーを、式(I)のコリン塩をジェット粉砕して上記のように調製した(流体エネルギーループミル)。粉砕された固体(0.2g)を、次いで、使用に先立って21.25gのアセトン中に懸濁した。
ステップ2.遊離塩基形態の[4,6−ビス(ジメチルアミノ)−2−(4−{[4−(トリフルオロメチル)ベンゾイル]アミノ}ベンジル)ピリミジン−5−イル]酢酸(20g、39.88ミリモル)およびイソプロパノール(30g)からなる懸濁液を60℃まで加熱し、11.31gの44.86質量%水酸化コリン水溶液(5.07g、41.86ミリモル)と処理する。2.718gのH2Oを使用して水酸化コリンの瓶を濯ぐ。生じた溶液を、60℃で0.5〜1時間保持し濾過する。イソプロパノール(1.5g)およびH2O(0.448g)の溶液を使用して反応器および濾過器を濯ぐ。生じた濾液を合わせ、次いで40℃まで冷却し、種晶スラリーを用いて播種し、40℃で30分間撹拌する。生じた懸濁液を、次いで、アセトン(191.25g)を同時に徐々に添加しながら、1.5時間かけて0℃まで冷却する。懸濁液を0℃で4時間維持し、そして濾過する。得られた固体を、次いで25mLのイソパノールで2回、そして20mLのヘプタンで1回洗浄する。次いで、固体を減圧下に70℃で乾燥して、灰白色から白色の結晶性固体として[4,6−ビス(ジメチルアミノ)−2−(4−{[4−(トリフルオロメチル)ベンゾイル]アミノ}ベンジル)ピリミジン−5−イル]酢酸のコリン塩を得る。収量:22.4g、37ミリモル、92%。不純物(化合物Aおよび化合物Bを含むはHPLCで検出されない(検出限界:0.05面積%)。結果は、生成物がいずれの不純物も本質的に含まないことを示している。
【0069】
生成物は、図1および表1に示すように、国際公開第2008/156781号中に記載のコリン塩に関して報告されているものに実質上類似している粉末X線回折パターンを有する。
生成物の顕微鏡による観察は、小さなプリズム状結晶を示した。PSDデータを表2に示す。
生成物の熱分析を図2(DSCおよびTGA)および図3(DVS)に示す。
(実施例1b)
ステップ1.播種結晶は、式(I)のコリン塩を衝突粉砕することによって、前記のように調製する(動的分級機を備えた対向式ジェットミル)。粉砕された固体は、使用に先立って懸濁することなく、直接的に添加される。
【0070】
ステップ2.遊離酸形態の式(I)の化合物(50g、0.100モル)を、2−プロパノール(85mL)および水(4.5mL)中に25℃で懸濁する。生じた無色の懸濁液を、70℃まで暖め、28.2gの45%水酸化コリン水溶液(12.6g、0.105ミリモル)と処理する。生じた黄色溶液を濾過し、フィルターを2−プロパノール(82mL)で洗浄する。合わせた濾液を40℃まで冷却し、0.5gの式(I)の化合物のコリン塩を播種する。生じた懸濁液を、約30分間撹拌し、次いで、アセトン(300mL)を同時に徐々に添加しながら、90分以内に約5℃まで冷却する。次いで、混合物を濾過する。捕集した固体を,2−プロパノール(125mL)で洗浄し、減圧下に60℃で約12時間乾燥して、[4,6−ビス(ジメチルアミノ)−2−(4−{[4−(トリフルオロメチル)ベンゾイル]アミノ}ベンジル)ピリミジン−5−イル]酢酸のコリン塩を得る。収量:53.4g、88.2ミリモル、88%。化合物の純度は、HPLCで99.95%を超える。
【0071】
(比較例2)
遊離塩基形態の[4,6−ビス(ジメチルアミノ)−2−(4−{[4−(トリフルオロメチル)ベンゾイル]アミノ}ベンジル)ピリミジン−5−イル]酢酸(60g、119.6ミリモル)および2.5質量%のトルエンを含むエタノール(347.04g)からなる懸濁液を、65℃まで加熱し、33.82gの45質量%水酸化コリン/メタノール溶液(15.21g、125.6ミリモル)と処理する。生じた溶液を65℃で0.5時間保持し濾過する。次いで、生じた濾液を、50℃まで冷却し、前記のように0.3gの式(I)の化合物の乾燥種結晶を播種し、50℃で30分間撹拌する。生じた懸濁液を、次いで、ヘプタン(347.04g)を同時に徐々に添加しながら、1時間かけて0℃まで冷却する。生じた懸濁液を0℃で3時間維持し、そして濾過する。生じた固体を、120gのヘプタンで1回洗浄する。次いで、固体を減圧下に70℃で乾燥して、灰白色から白色の結晶性固体として[4,6−ビス(ジメチルアミノ)−2−(4−{[4−(トリフルオロメチル)ベンゾイル]アミノ}ベンジル)ピリミジン−5−イル]酢酸のコリン塩を得る。収量:64g、105.8ミリモル、88.9%。純度:HPLCで99.2%。HPLC分析は、生成物が0.09面積%の化合物Aおよび0.26面積%の化合物Bを含むことをさらに示している。
【0072】
生成物は、表1に示すように、国際公開第2008/156781号に記載のコリン塩に関して報告されているものに実質上類似した粉末X線回折パターンを有する。
生成物の顕微鏡による観察は、大きな菱面体結晶を示す。PSDデータを表2に示す。
(比較例3)
式(I)の化合物のコリン塩を、国際公開第2008/156781号の実施例5に記載のものに類似した方式で調製する。遊離塩基形態の[4,6−ビス(ジメチルアミノ)−2−(4−{[4−(トリフルオロメチル)ベンゾイル]アミノ}ベンジル)ピリミジン−5−イル]酢酸(3.493g、6.96ミリモル)、イソプロパノール(50mL)および1.943gの50質量%水酸化コリン水溶液(0.97g、8ミリモル)からなる懸濁液を、澄明溶液が得られるまで、還流加熱する。生じた溶液を25℃まで放冷し、さらに2時間撹拌する。生じた混合物を濾過し、固体を28mLのイソプロパノール/ヘプタン(1:1、v/v)で洗浄する。次いで、固体を減圧下に25℃で乾燥して、黄色の大きな板状固体として生成物を得る。収量:3.49g、5.7ミリモル、82%。純度:HPLCで99.2面積%。HPLC分析は、生成物が0.10%の化合物Aおよび0.22%の化合物Bを含むことをさらに示している。
PSDデータを表2に示す。
【0073】
(比較例4)
式(I)の化合物のコリン塩を、混合物を40℃から0℃に冷却する際に反応混合物にアセトンを添加しないことを除き、前記実施例1に記載のものに類似した方式で調製する。収率:31%。純度:HPLCで99.3面積%。HPLC分析は、生成物が0.10%の化合物Aおよび0.26%の化合物Bを含むことをさらに示している。
PSDデータを表2に示す。
【0074】
【表2】

*低収率(31%)
【0075】
実施例1aおよび2aならびに比較例2〜4に関して上に示した結果は、本発明の方法が、高い純度、および粉砕の必要なしに医薬組成物の成分にとって有用な所望の小さな粒径を有する、式(I)の化合物のコリン塩を生成することを示している。
【0076】
上に示した実施例は、実施形態を構成および利用する方法の完全な開示および説明を当業者に付与するために提供され、開示の範囲を限定することを意図していない。当業者にとって明白である開示を実施するための前記方式の変態は、本発明の範囲に包含されると解釈される。本明細書中で引用されるすべての刊行物、特許および特許出願は、このような刊行物、特許および特許出願のそれぞれが、あたかも参照により本明細書中に組み込まれていると具体的かつ個別的に解釈されるがごとく、参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】

の結晶形のコリン塩の調製方法であって、
(a)イソプロパノールおよび水を含む溶媒中で、式(I)の化合物のコリン塩の第1混合物を形成するステップ、
(b)ステップ(a)の第1混合物を貧溶媒と接触させて、第2混合物を提供するステップ、および
(c)ステップ(b)の前記第2混合物から式(I)の化合物のコリン塩を結晶化させて、結晶形の式(I)の化合物を提供するステップ、を含む方法。
【請求項2】
ステップ(a)の第1混合物が、遊離酸形態の式(I)の化合物を水酸化コリンと合わせることによって調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(a)が、本質的にはイソプロパノールおよび水からなる溶媒を用いて実施される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(a)で形成された第1混合物が、ステップ(b)を実施する前に、仕上げ濾過される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(a)で形成された第1混合物が、仕上げ濾過の前に、活性炭で処理される、請求項5に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(a)で形成された第1混合物に、ステップ(b)を実施する前に、播種粒子を播種する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
播種粒子が、約0.1μmから約150μmまでの直径を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
播種粒子が、約25μmから約100μmまでの直径を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
播種粒子が、約0.5μmから約5μmまでの直径を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(c)で使用される貧溶媒が、アセトン、イソプロパノールおよびヘプタンから選択される、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(c)で使用される貧溶媒が、アセトンである、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
[4,6−ビス(ジメチルアミノ)−2−(4−{[4−(トリフルオロメチル)ベンゾイル]アミノ}ベンジル)ピリミジン−5−イル]酢酸の結晶性コリン塩であって、2−(4−(ジメチルアミノ)−6−ヒドロキシ−2−4(トリフルオロメチル)ベンズアミド)ピリミジン−5−イル)酢酸(化合物A)およびN−(4−((5−(シアノメチル)−4,6−ビス(ジメチルアミノ)ピリミジン−2−イル)メチル)フェニル)−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド(化合物B)を、化合物A、化合物Bおよび[4,6−ビス(ジメチルアミノ)−2−(4−{[4−(トリフルオロメチル)ベンゾイル]アミノ}ベンジル)ピリミジン−5−イル]酢酸の総質量に対して約0.30質量%未満含む、結晶性コリン塩。
【請求項13】
化合物A、化合物Bおよび[4,6−ビス(ジメチルアミノ)−2−(4−{[4−(トリフルオロメチル)ベンゾイル]アミノ}ベンジル)ピリミジン−5−イル]酢酸の総質量に対して約0.10質量%未満の化合物Aおよび化合物Bを含む、請求項12に記載の結晶性コリン塩。
【請求項14】
請求項12または13に記載の[4,6−ビス(ジメチルアミノ)−2−(4−{[4−(トリフルオロメチル)ベンゾイル]アミノ}ベンジル)ピリミジン−5−イル]酢酸の結晶性コリン塩、および少なくとも1種の薬学的に許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項15】
CRTH2活性と関連する疾患を治療する方法であって、それを必要とする患者に請求項12または13に記載の化合物を含む治療有効量の医薬組成物を投与することを含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−512242(P2013−512242A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541119(P2012−541119)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/057312
【国際公開番号】WO2011/066176
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】